Microsoft PowerPoint - 商法Ⅱ　第9-10回.pptx

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1 抗弁 とは 商法 Ⅱ 第 9 回 ~ 第 10 回 11/6,10 民法 468 条 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは 譲渡人に対抗することができた事由があっても これをもって譲受人に対抗することができない 債権者からの請求に対し債務者が対抗できる事由 = 抗弁 指名債権譲渡における抗弁の原則は 債務者が異議をとどめずに承諾 抗弁の対抗不可 そうでない場合 抗弁の対抗可 譲渡時点で支払を拒めるのであれば 債権者が誰に債権を譲渡しても 債務者は支払を拒めるのが原則になる 手形を振り出した場合 抗弁のうち一定のもの ( 人的抗弁 : 後述 ) は 直接の相手方には対抗できるが 裏書譲渡が行われた場合 所持人が 債務者を害することを知りて 手形を取得したのでない限り 切断される ( 主張不可になる 77 条 1 項 1 号 17 条但書 ) 人的抗弁の切断 抗弁のうち一定のもの ( 物的抗弁 無権利の抗弁 : 後述 ) は 切断されることはなく 債務者は 誰に対しても対抗できる 抗弁が切断されることは 手形を振り出すことによる債権者 ( その後の取得者含む ) にとってのメリットであり 債務者 ( 振出人 裏書人 ) にとってのデメリットの一つである 約束手形を譲り受ければ 害意がない限り 原因関係のトラブルと関係なく 手形金を受け取ることができる = キャッシュが入ってくる 指名債権のままなら 抗弁があれば 対抗できて請求を拒めたのに 手形を振り出すと 手形金を支払うことが強制される 支払った後 不当利得の返還請求という 手形外での処理となる 抗弁の種類 物的抗弁 手形債務の不発生 変更 消滅に関係 ( 特定の ) 手形債務者が 誰に対しても主張可 無権利の抗弁 所持人が無権利であるという抗弁 すべての手形債務者が 特定の所持人に主張可 人的抗弁 原因関係上の抗弁 ( 特定の ) 手形債務者が 原則として直接の相手方に対してのみ主張可 物的抗弁 手形上の債務自体の不発生 変更 消滅 ( そもそも自分は債務者ではない など ) 手形行為の効力に関する抗弁 手形上の有効な記載に基づく抗弁 証券の性質上の抗弁 手形の形式上または実質上 自己の手形債務が存在しない旨を主張する抗弁が中心 手形行為の効力に関する抗弁の例 絶対的強迫 ( より程度の強い強迫 ) であれば そもそも意思表示がないので債務を負わない 意思無能力者 制限行為能力者の手形行為 偽造 変造 無権代理 ( 表見代理 権利外観責任の可能性有 ) これらの物的抗弁事由は 解釈上 行為者の静的安全を重視し 手形取引の安全の犠牲を払ってでも行為者を保護するべきとされてきたもの いずれも 債務者が 誰に対しても 自分が手形債務を負わないことを主張できる 債務を負わされるいわれはないから 手形の記載から明らかではないので 手形流通保護を重視して その範囲は縮小傾向 1

2 偽造 変造 無権代理 偽造 : 手形行為の主体を偽ること 例 :B が自らを A と偽り A が振り出したかのようにして手形を振り出した ( 手形面上の主体の表示は A 真実は B) 無権代理 : 代理権のない者が手形行為を代理して行うこと 例 : 勝手に A 代理人 B として手形を譲渡した ( 手形面上の主体の表示は A 代理人 B 真実は B が A を無権代理 ) 変造 :( 既発生の ) 手形債務の内容を偽ること 例 :150 万円の手形債務だったはずなのに 勝手に誰かが 1500 万円と改めた ( 変造後の者から見て手形面上の債務の表示は 1500 万円 真実は変造前の 150 万円 ) 手形上の有効な記載に基づく抗弁 満期が未到来 ( 満期に払う証券だから ) 裏書の連続がない ( あなたは権利者ではありませんね? という主張 所持人が請求するためには 自己が権利者であることを立証しなければならない ) 手形債務の時効消滅の抗弁 手形面に 抗弁事由が出ているので その抗弁は誰に対して対抗できてもよい 証券の性質上の抗弁 除権決定 ( 手形を紛失した場合などに 権利と紙の結合を解く手続 除権決定により 手形だったものはただの紙きれになる ) がなされた旨の主張 遡求権の保全がなされていない旨の主張 通常は振出人が支払うのであり遡求義務者は支払う必要がないが 振出人が支払えなかった場合 遡求義務者に遡求するためには その保全が必要となる 遡求の要件 = 支払拒絶 (77 条 1 項 4 号 43 条 1 号 ) 保全の要件 = 満期における呈示 (77 条 1 項 4 号 53 条 1 項 2 項 ) 無権利の抗弁 所持人は無権利者であるので 全ての手形債務者から支払いを拒まれる 所持人の取得原因が盗取であったり それらの者から悪意 重過失で取得した者 (= 善意取得していない者 ) が対抗を受ける 治癒するのは 善意取得 (77 条 1 項 1 号 16 条 2 項 ) である 裏書の連続との関係 裏書の連続がない 所持人が権利者であることを立証 裏書の連続がある 無権利の抗弁を対抗するためには債務者が所持人の無権利を立証 人的抗弁 手形外の法律関係に基づく抗弁 原因関係上の抗弁 ( ほとんどはこれ ) 典型的には 売買契約の解除 原因関係以外の法律関係に基づく抗弁 手形上の法律関係に基づく抗弁 手形上に記載できるが記載しなかったもの ( 書けば物的抗弁 書かなければそれが存在するかわからないから人的抗弁 ) 手形上に記載できないもの 原因関係上の抗弁 手形上の権利は 原因関係とは別個 ( 設権証券性 ) 独立 ( 無因性 ) のものである 原因関係に瑕疵があっても それが手形関係には影響を及ぼさず 有効なままであるのが原則となる 手形上の権利は有効であり所持人は依然として権利者であるが 債務者は 悪意の所持人に対しては 原因関係から発生した抗弁を対抗し 支払を拒める 例 : 買主が売主に手形を振り出したが 売主が納品をしない場合 手形が有効だからと言って手形金を支払わなければならないということにはならない これを 人的抗弁の問題として処理する 2

3 人的抗弁の例 解除権 錯誤 [Ⅶ 5] 強迫 [ 最判 S 民集 ] 判例 通説の立場は 民法の規定を適用すれば表意者が保護されるような場合でも 第三者保護の必要性が手形取引では高いため 人的抗弁の問題として処理する ( 表意者保護を後退させる ) 傾向にある ただし 未成年者による手形行為の取消などは物的抗弁として認めると考えられる 善意取得と人的抗弁の関係 手形理論によって ある事象がどちらの守備範囲なのかが変わってくる問題がある 一般的には 前者が無権利である場合に 手形上の権利を取得できるか否かが善意取得の問題であり 譲り受けた権利自体は有効であるが 原因関係上の理由から 前者が請求したら拒まれるような場合が人的抗弁の問題となる ( 全体的に 創造説の処理が特殊 ) 人的抗弁の切断 指名債権譲渡の場合と異なり 債務者の異義をとどめない承諾がなくとも 裏書譲渡という手形法独自の方式により約束手形を譲渡すれば 人的抗弁は切断される 指名債権の場合 抗弁があるかどうかを調べなければ安心して債権を譲り受けられない 手形の場合 取得者は 原因関係を調べる必要がない 譲受人にとっては 調査コストの低減 債務者にとっては 与信のメリット > 不利になる法的立場 誰が原因関係の問題をコントロールできるか 請求 人的抗弁 A 対抗可 B C 原因関係上解除権 原則対抗不可 請求 例外 : 悪意の抗弁 裏書により手形を取得した者は 原因関係上の抗弁の対抗を受けないのが原則 債務者を害することを知って ( 手 17 但書 ) 手形を取得した場合にまで抗弁を切断することは手形制度の健全性を害する 抗弁の切断を排除する特殊の抗弁と言われる 債務者を害することを知りて ( 害意 ) 通常の 悪意 とは異なる 手形の取得時と満期までの時差が理由 今は商品を納品していなくても 満期までに商品が納品され 手形金は支払われるだろう 今 原因関係上の債権を行使しても拒まれることがわかっている つまり 抗弁の存在は知っている この段階で手形を取得したとして 満期に手形金請求ができないのはおかしい 抗弁は 存在していたとしても 主張されるとは限らない 抗弁の対抗を認めるべきは 単純な知 不知では決められない どのような場合に認めるか? 3

4 害意 重要なのは 債務者が 今 ではなくて 満期 に支払を拒む理由があるかどうか しかも 拒むかもしれない 程度では足りない ( 満期までに商品を納品しないかもしれないことを知っていた だから満期に納品されなかったから支払を拒める という結論は変 ) 大審院時代からの判例から定式化された いわゆる河本 ( かわもと ) フォーミュラが一般に使われる 河本フォーミュラ 以下の場合に 害意 あり ( 説明のため 細分化する 通常は2 要件 or3 要件に分解される ) 所持人が 手形取得時に ( 取得後に知った事情は考慮しない ) 満期において ( 債務者が支払うべき時に対抗できるか ) 手形債務者が 自己の直接の前者に対し 抗弁を主張して支払を拒むことが確実という認識を有していた ( 抗弁提出の蓋然性の認識 ) 抗弁切断の効果 抗弁を切断された者は 債務者から人的抗弁の対抗を受けない 人的抗弁が一度切断されると その後の取得者は たとえ抗弁事由を知っていても 抗弁の対抗を受けない ( 絶対的構成 ) 善意者のもとで きれいな権利 完全な権利 になる等と説かれる 仮に抗弁の対抗を受けると 悪意の者が善意の者から手形を譲り受けることを差し控えざるを得ず また 拒めるとすると 訴訟の循環が起きる 例外 : 前者が藁人形だったり 善意者に独立の経済的利益がない場合 考えてみよう 甲は Y を欺いて 不良品を売りつけ その代価として約束手形を振り出させた 甲は この手形を 以下の者に譲渡した Y は支払を拒めるか 詐欺の事情の一切を知らない P 詐欺の事情を知っている Q 甲のことをうさんくさいとは感じているが この手形については何もしらない R Y から 訳ありの手形 と説明されていたが 詳細は知らない S 考えてみよう 2 甲が乙に対して振り出した約束手形の支払を拒めるとすれば どのような理由か 丙が 乙の手元から約束手形を盗んだ 丙 乙をだまして約束手形を裏書譲渡させた 丙が 乙の手元から盗んだ約束手形を 丁に裏書譲渡した 丁は盗難の事実を知っていた 丙が 乙をだまして裏書譲渡させた約束手形を 丁に裏書譲渡した 丁は詐欺の事実を知っていた 考えてみよう 3 丁が 甲が乙に対して振り出した約束手形の支払を請求した どのような法律構成 要件で丁の請求は認められるか 丙が 乙の手元から盗んだ約束手形を 丁に裏書譲渡した 丁は盗難の事実を知らなかった 丙が 乙をだまして裏書譲渡させた約束手形を 丁に裏書譲渡した 丁は詐欺の事実を知らなかった 4

5 考えてみよう 4 A が B に手形を振り出し B が C に C が D に裏書譲渡した A が B に対して有する抗弁は C のところで切断されている D は AB 間の抗弁について悪意である このような事例で A が D の請求を拒めるとした場合に生じる 訴訟の循環 とはどのようなものか 訴訟の循環 による解決で C が負担するリスクは何か A が D からの請求を AB 間の人的抗弁を理由に拒む場合 通説からは A は 何を立証しなければいけないだろうか 裏話 : 手形取引の 善意の第三者 手形法は 善意者に対して 善意取得 人的抗弁の切断という保護手段を用意しており 仮に前者が無権利でも権利を取得でき 仮に権利あり 抗弁付きだったとしても 抗弁を切断できることになる その結果 善意者が保護されるし 伝統的な判例 学説は この価値判断を是とする 逆に言えば 盗難手形の事例では 窃盗団とグルになった金融業者が 善意の第三者 を介在させて 手形金を請求するような事例が多い 手形債務者による立証は困難 特に最近の下級審判例では 盗難手形であることが伺われるような事例で 善意取得を否定するものが目立っている 手形法の 建前 を どのような事実認定 法的判断で突破するかは いいトレーニングの素材ではないかと思われる 手形抗弁の特殊な例 ノーマルな商業手形 ( 商取引の裏付けがあり振り出された手形 ) であれば 以上のような説明で足りる この説明では容易に解決できない問題 融通手形の抗弁 戻裏書 後者の抗弁 二重無権の抗弁 融通手形 融通者が 金銭を貸与するのではなく 他人に信用を供与する目的で振り出された約束手形を融通手形という 被融通者 = 受取人は 第三者に割り引いてもらい 資金を獲得する 見せ手形 は 信用を仮装するために 見せるだけ で振り出された手形だが 融通手形 は 通常の手形と同様に割り引いてもらう前提 融通手形 A が B に対して金銭を貸すというのが通常の融資であるとすると A に資金がなくて 金銭を貸せない時に B 自身に A が振り出した手形を使って他人から調達させるパターン 見ての通り 危ない A が B に貸したときは 期限に B が A に対して借りた金銭 + 利息を返すが 同様に 融通手形の場合 原因関係は融通契約であり そこでは A に責任を負わせない手段が講じられることになる 満期までに 手形金相当額を B が A に払う 満期までに 割り引いてもらった人から手形を買い戻す 融通手形 A が B に対して融通手形を振出し C がこれを割り引いた ( 裏書譲渡を受け 買い取った ) C が融通手形であることを知らずに割り引いたのであれば 抗弁は切断される B が A に対して請求すれば 当然 A は拒む ( 他人から資金を調達するからこその融通手形 ) C が融通手形であることを知って割り引いた場合 河本フォーミュラから素直に考えると A は C に抗弁を対抗できることになる? いわば C は AB の計画への協力者なのに それはひどいのでないか? 5

6 Ⅶ 14 判例 対抗できる? A B C 融通手形 注 ) 判例の事案では A は Y B は A C は X である 請求 融通手形であることを知って取得 原則としては Cは 知不知にかかわらず 抗弁の対抗を受けない [Ⅶ 14] 第三者に割り引いてもらうための手形だから当然 手形振出人になんら手形上の責任を負わせない等当事者間の特段の合意があり所持人が係る合意の存在を知って手形を取得したような場合は格別 旧学説 伝統的な疑問 :CがBの地位を承継するなら 融通手形の事例では 前者に存在していた抗弁ではないものを対抗するのか? 融通手形の抗弁が 一般の人的抗弁と異なり 継承されることのない特殊な 生来的な人的な抗弁であり このような場合に一般悪意の抗弁成立 融通手形であること以外の付加的事情に基づいて 融通手形とは別個の人的抗弁成立 悪意の抗弁 学説 現在の通説 ( おそらく ): 通常の悪意の抗弁と整理することができる 悪意の対象が 融通手形であること ではなく 融通契約違反があること ( 対価欠缺の抗弁 という表現も ) C が B が満期までに買い戻すつもりがないことを知っていたような場合は B の融通契約違反により C が手形を取得することで A が害されること を知って C が約束手形を取得したことを理由として A は C に対して抗弁を対抗できる 戻裏書 ( もどりうらがき ) 戻裏書とは 既に手形上の債務者である者に対してなされる裏書 A が B に振り出し B が C に裏書譲渡した後 再度 C が B に対して裏書譲渡した (A B C B) というような例 混同により消滅しない ( 手 11 条 3 項 77 条 1 項 1 号 ) B は 受取人という立場であると同時に 第二被裏書人という立場に立つ 戻裏書 振出人 A が受取人 B に対して人的抗弁を有しているが C のところで切断されるとしよう C から B が戻裏書を受けた場合 B は A から人的抗弁の対抗を受けるだろうか? 受取人としての B は抗弁の対抗を受けるはずである 第二被裏書人としての B は C のところで切断された結果 抗弁の対抗を受けないはずである 6

7 戻裏書と人的抗弁 A B C B 人的抗弁 Q: 第二被裏書人の B は 受取人 B 同様に 抗弁の対抗を受け 請求ができないのか? 第一被裏書人のところで抗弁が切断され C 同様に 請求ができるのか? 戻裏書 A B C B で A B の抗弁がある場合 第二被裏書人としての B が A に請求したとしても 受取人としての B が対抗を受けた人的抗弁については 対抗を受ける [Ⅶ 15] 判例 :B が 自己の裏書譲渡 (B C) 前の地位よりも有利な地位を取得するべき理由がない 戻裏書で 以前の地位を回復するという考え方もあるが 戻裏書により被裏書人は権利を再取得するが 人的抗弁が人に付着する ( 属人的である ) と説明する方が普通 Ⅶ 15 Y A B C B X Y の主張 Y A の振出時点で B は A の債務不履行の蓋然性を知って裏書譲渡を受けた悪意の取得者 B のところで切断されず かつ X でも切断されない X は B から隠れた取立委任裏書を受けている ( 隠れた取立委任裏書は次回 ) 譲渡裏書でも X は 上記事情を知って手形を取得 Ⅶ 15 原審 :B が悪意でも C が善意で取得 C の権利を B は取得 B は抗弁の対抗を受けない X は抗弁の対抗を受けない 最高裁 : B は抗弁の対抗を受ける地位にあった B は B より有利な地位を取得しない Y B は対抗できる Y B の抗弁を X に対抗できるかは X のところで人的抗弁が切断されるかの問題である =Y の主張に従えば隠れた取立委任裏書であるか (X 悪意でも同じ ) 破棄差戻し 戻裏書と人的抗弁 Y B C B 人的抗弁 第二被裏書人としての B は 受取人としての B 同様に A から人的抗弁の対抗を受ける C から きれいな権利 を譲り受けているが C 以前に一度は抗弁の対抗を受ける立場であったので C を介しても請求できない 後者の抗弁 ( 権利濫用の抗弁 ) A B C と手形が譲渡され B が C に人的抗弁を有している C が B に請求したならば B はこれを拒めることになるが A に請求したらどうだろうか? 例 :A が B に手形を振り出し B が BC 間の動産売買の代金の支払のために C にこの手形を裏書譲渡したが C が商品を引き渡さないまま満期が到来した A から見て後者である B の有する抗弁を援用して C に対抗できるか という問題 7

8 原則論 人的抗弁は個別的なものであり BC 間の抗弁は C の A に対する請求に影響しないはず この結論を貫くと不合理? C は 本来ならば B に手形金を請求できない ( 手形を返却しなければならない ) 立場にある C は 手形金を受け取ったとしても B から不当利得の返還請求を受ければこれに応じなければならない立場にある 後者の抗弁 請求 A B C A は B の有する人的抗弁により C の請求を拒めるか 人的抗弁? 判例 通説の立場 このような場合 C が A に請求するのは 権利濫用であり 手形法 17 条但書の趣旨に徴し 支払いを拒めるとして A による抗弁の対抗を認める [Ⅶ 17] C は 仮に手形金の支払を受けても その金銭は不当利得として B に返還しなければならない立場にあり 手形金の支払を受けるべき固有の権利を有していない 後者の抗弁 が認められないが 権利濫用の抗弁 が認められるという言い方をするなど混乱しがちである ( 後者の抗弁という見出しを使うかも分かれる ) 中身を理解すること 問題のさらなる分析 A B C の事案で A は B に支払おうが C に支払おうが 自己の手形債務は消滅するので 誰に対して支払っても同じはずである なぜ A は B の有する抗弁を主張して C からの請求を拒もうとするのか? 融通手形なら当然である A が C でなく B に支払う ( 債務を負う ) ことに経済的利益がある場合がある どういう場合だろうか? 例 手形金額は 500 万円で B は 1 億円の債務超過 A C とも B に対して 1000 万円の貸金返還請求権を有している A が C の請求を拒めない場合 C は手形金を A から取得し B の C に対する 500 万円の不当利得返還請求に対し 相殺の抗弁を提出可能 A が C の請求を拒める場合 A は B の 500 万円の手形金支払請求に対し 相殺の抗弁を提出可能 この場合 A と C のどちらに相殺の担保的効力による保護を与えるか が真の争点である 二重無権の抗弁 A B C と手形が裏書譲渡 A B の原因関係 B C の原因関係のいずれもが無効である ( どちらも人的抗弁 ) A は C による請求を拒めることに異論はない C には独立の経済的利益がない このような C は抗弁切断の利益を享受できない A は A B の抗弁を C に対抗できる [ 百選 36] 8