識レベ識レベ重要重要信度信度シナリオ / シーン影響因子 29 現状認識 検出性への影響 度知ル確サイジング精度への影響 現状認識 度知ル確への入射 1 被検体表面の凹凸および表面粗さ 超音波を効率的に入射させたり 意図した方向へ入射させたりする事は非常に重要である 探傷する前に表面を研磨 加工する

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1 識レベ識レベ重要重要信度信度超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子に対する現状認識と重要度 / 知識レベルのランクキング結果 添付資料 1-1 シナリオ / シーン影響因子 29 現状認識 検出性への影響 度知ル確サイジング精度への影響 現状認識 度知ル確1 印加電圧 欠陥信号振幅に影響するが その効果は自明 M K H 端部エコー振幅に影響するが その効果は自明 M K H 2 励振波形 ( インピーダ通常のパルス波励振装置では規格化されているため影響は A. 探傷器 ( 探傷波ンスの影響等 ) 少ない L K H 影響は検出性の場合と同様 L K H 形の印加 ) 印加電圧および励振波形ともに特殊な励振方式では欠陥の 影響は検出性の場合と同様であるが き裂先端部近傍への 3 特殊励振方式 開閉口あるいは欠陥信号の非線形性に影響する可能性があり 検出性への影響は未知 H U H 作用によるサイジング精度への影響の方が大きいと考えられる H U H 1 探触子の中心周波数 検査対象材料の材質や溶接部組織によっては低周波の方影響は検出性の場合と同様 また 中心周波数は端部エコが あるいは選択的な周波数において超音波の伝搬が良好 M P H ーの長さに影響し サイジング精度に影響を及ぼすため な場合が有り 検査対象に応じて事前に判断 選定してお適切な周波数を選定する必要がある く必要がある M P H ダンピングの良い波形 即ち広帯域探触子の方が近接欠陥ダンピングの良い波形 即ち広帯域探触子の方が欠陥コーの分解能等は良く減衰の大きな材料での透過性も良いが 2 探触子の周波数帯域ナーエコーと端部エコーの分離が良く サイジング精度に感度が不足する場合があるため 検査対象に応じて ある L K H ( 波形特性 ) 影響するため 検査対象および想定される欠陥に応じて事いは想定される欠陥の分布に応じて事前に判断 選定して前に判断 選定しておく必要がある おく必要がある M K H 送信波のパワーや近距離音場限界に影響するが 通常 検 3 探触子寸法 査員が検査対象に応じて探傷距離 深さを考慮し選定して L K H サイジング精度への影響は検出性の場合と同様 L K H いる B. 超音波の発生例えば検査対象の内面から発生した欠陥などの欠陥位置が検出されたき裂の深さや長さサイジングに適用する場合 4 探触子タイプ / フォー想定される場合は 検出性は向上するが検査効率は低下す H K H は 超音波ビームが絞られているためサイジング精度は向 H K H カスる また 近接多重欠陥などの欠陥の様相が想定される上する 場合も効果的に適用する事が可能 溶接金属部や異方性の強い材料の探傷においては 超音波 5 超音波のモード ( 縦のモード ( 縦波 横波 (SH 波 SV 波 )) により異方性の影響波 横波 (SH 波 SV 波 )) の受け方が異なり超音波の直進性や減衰などが異なるため 材料に適した波のモードを選択する必要がある M K H 影響は検出性の場合と同様 M K H 通常は 検査員がき裂の方向 ( 例えば管状被検体の周方向き裂検出に用いるコーナーや面エコーと 深さサイジング 6 超音波の屈折角 ( き裂欠陥や軸方向欠陥 ) や き裂位置と探傷可能位置 および L K H に用いる端部エコーでは最適な条件が異なるため 注意をへの入射角 ) き裂への超音波入射角を考慮して探触子屈折角を選定して要するが コーナーエコーよりは屈折角の影響は小さい いる L K H C. 超音波の被検体 1 接触媒質 特殊な環境以外では影響は少ない L K H 影響は検出性の場合と同様 L K H 29 検査の技術的な項目を検討する事を主眼としているため 個人の技量や手順に関する項目は挙げていない 2-993

2 識レベ識レベ重要重要信度信度シナリオ / シーン影響因子 29 現状認識 検出性への影響 度知ル確サイジング精度への影響 現状認識 度知ル確への入射 1 被検体表面の凹凸および表面粗さ 超音波を効率的に入射させたり 意図した方向へ入射させたりする事は非常に重要である 探傷する前に表面を研磨 加工するなど調整しておく必要がある 事前の調整が不可能な場合は 表面粗さや凹凸の影響の少ない接触媒質を用いる事や 表面状態を計測して超音波の入射への補正を行うなどの対応が必要となる場合もある H P H 超音波が想定外の方向に入射したり入射方向が分散したりすると き裂先端部近傍に入射した超音波ビームに着目するサイジングにおいて影響が大きい 探傷面の粗さ等を探傷する前に整えておく事が不可能な場合は 表面粗さや凹凸の影響の少ない伝音材 ( 接触媒質を含む ) を用いる事や 表面状態を計測して超音波の入射への補正を行うなどの対応の必要性は 検出性の場合以上に大きい H P H 欠陥エコーの SN 比などの面で探傷結果への影響が大きい D. 被検体健全部における入射波の伝搬 1 被検体材質の超音波特性 ( 音速 減衰 拡散特性 ( 結晶粒度 析出物等依存性 )) 2 超音波の直進性 ( 被検体内の不均質性 異方性 ) ため 探傷する前に同種の材料で測定などして減衰特性 音速等は知っておくべきもの ( 特に Ni 基合金溶接部 ステンレス鋳鋼や照射された材料等 ) また 結晶粒による散乱減衰と材料吸収による減衰の区別も重要 同種材料での測定等が不可能な場合は検査対象そのものの垂直探傷などの結果から推定しておく事が必要 不均質性や異方性があると超音波ビームが想定通りの方向に伝搬しないため 検出性および欠陥位置の評価等に関して影響が大きい 溶接部の異方性や結晶組織の違方性が大きい材料においては事前に音速や減衰の異方性を測定等により求めておくべきであり 更には検査結果にどの様に影響するか あるいは影響を考慮して評価する手法等が重要である M P H H P H 影響は検出性の場合と同様 但し欠陥先端位置が材料ノイズの高い部分に存在する場合の SN 比に及ぼす影響は検出性に関してよりも大きい き裂先端近傍の超音波入射 反射 回折特性が影響するサイジングにおいては 超音波ビームの伝搬方向が想定通りではない事の影響は 検出性に関してよりも大きい H P H H P H き裂の発生位置 即ち探傷面側に存在するき裂と裏面側に 存在するき裂では探傷条件 ( 即ち屈折角 余盛りと探触子 E. 疲労き裂面およびき裂先端近傍における入射波の反射 回折 透過特性 1き裂位置 2き裂寸法 の干渉 探触子の不感帯など ) に及ぼす影響が異なるが 通常は検査員が探傷条件を選定している き裂位置と溶接部の位置関係の影響は F-1 項にて述べる 特定の欠陥においては パルス反射法によるき裂の面積が欠陥信号振幅に及ぼす影響のデータは低合金鋼 ステンレス鋼 Ni 基合金等で得られており き裂深さに関する POD 曲線も得られているが 環境疲労によるき裂に関してはデータの蓄積が必要 L K H 影響は検出性の場合と同様 L K H 検出されたき裂であっても 深さサイジングが可能か否か や深さ測定精度は き裂寸法そのもの及び検査手法に影響 M P H される 特定の検査対象材質やき裂の種類においてはデ M P H ータが有るが 環境疲労によるき裂に関してはデータの蓄 積が必要 き裂が存在する場合の維持規格による構造物の力学的評価 3 き裂の 2 次元形状 一定の深さ以上のき裂であれば検出性に及ぼすき裂形状の影響は小さい L P H はき裂の長さと最大深さで代表される半楕円き裂として扱う事が一般的である しかし より適切な評価を行うためには き裂の形状を測定できる事が必要な場合がある H U H 2-994

3 識レベ識レベ重要重要信度信度シナリオ / シーン影響因子 29 現状認識 検出性への影響 度知ル確サイジング精度への影響 現状認識 度知ル確き裂先端近傍の凹凸 ファセット寸法 分岐等の状況によ 4き裂性状 ( き裂面およびき裂先端部近傍の凹凸 ファセット寸法 分岐 ) 欠陥信号に及ぼす影響は大きい き裂寸法が小さな段階では特に影響が大きく 材料ノイズに埋もれがちな欠陥信号を識別するために信号処理や画像化技術が必要となる場合がある き裂面の凹凸 ファセット寸法 分岐などの個々の影響は解明されていない H U H っては 超音波入射方向との関係で端部エコーが得にくい場合もあるため サイジング精度に及ぼす影響は大きい また 検査対象の材料や結晶組織によってはき裂先端部の形状が著しく特異な場合があり この場合はサイジング精度に大きく影響する可能性がある これら凹凸 ファセット寸法 分岐等のサイジング精度への影響は解明されていない H U H 環境疲労等で発生 伝搬するき裂に関して腐食生成物等の 5き裂内物質の状態 ( 腐食生成物の有無 疎密 ) 化学的物性 特性は分かっている場合もあるが 超音波の伝搬に影響する物理的状態 特性は明らかになっていない また超音波の伝搬への影響も僅かの事例を除き明らかにはされていない H U H き裂先端部近傍における影響は検出性の場合と同様あるいはそれ以上と考えられる H U H き裂の周囲の応力状態 ( 大きさと分布 ) によってはき裂の 6き裂の閉口状態 ( 密着性 ) とその分布 閉口状態を生ずる原因となり 検出性に及ぼす影響は大きい 探傷を実施する前に応力解析等により評価しておくことが必要 また 環境疲労等で発生 伝搬するき裂に関して 腐食生成物等の密着性およびその結果として生ずるき裂の閉口状態に関しては明らかになっていないため 超音波の伝搬への影響も明らかでなく 小さな 浅い欠陥では検出性への影響は大きいと考えられる H U H 残留応力等によるき裂の閉口がき裂先端近傍ほど大きい場合も有り また環境疲労等で発生 伝搬するき裂に関して 腐食生成物等の密着性およびき裂の閉口状態の影響はき裂先端近傍で影響が一層大きいと考えられる なお 閉口状態を一時的にあるいは継続的に変化させる事が出来ればサイジング精度が向上する可能性はあると考えられる H U H 超音波の入射方向 ( 探傷方向 ) と欠陥の方向性 あるいは 探傷面や裏面に対する欠陥の発生 伝搬方向 ( 角度 ) は欠 陥検出特性に影響するため 検査対象の応力状態等を事前 7 き裂の方向 ( 角度 ) に検討しき裂の発生方向やき裂に対する超音波入射角を考慮した探傷条件を選定することが必要 また 想定されるき裂の発生方向等に対して最適な探傷条件 ( 超音波入射方向など ) が実現できない場合は 探傷方向への依存性が少ない探傷方法の採用が必要である H P M 影響は検出性の場合と同様 M P H 8 入射波の反射率 透過率 欠陥信号への直接の反映はこれら要因により生ずるが 物理的な要因は上記の数項目であるため ここでは記載しない 本項目の取扱いに関しては検出性の場合と同様 F. 被検体底面での 入射波の反射 透 過 1 底面の形状不連続 溶接部境界 欠陥エコーと誤認識した場合の構造物の評価に及ぼす影響が大きいため 誤認識する可能性のある形状不連続 ( 例えばカウンターボアや裏波 ) や溶接部境界の存在が分かって H P M 形状不連続によるエコーを SCC 等の欠陥エコーと誤認識する場合は き裂の端部エコーと溶接部境界のエコーを誤認識する可能性も高いため サイジング結果としても誤った H P M 2-995

4 識レベ識レベ重要重要信度信度シナリオ / シーン影響因子 29 現状認識 検出性への影響 度知ル確サイジング精度への影響 現状認識 度知ル確G. 被検体内での反射波の伝搬 H. 反射波の探触子内への伝搬 (Cに同じ ) I. 探傷器 ( 探傷信号の受信 ) いる あるいは想定される場合は 誤認識の低減法や溶接 結果を生ずる場合が有る 部境界に留意した欠陥位置の評価法を検討しておくことが 必要 欠陥エコーの振幅値に及ぼす影響はあるが ここで取り上 ここで取り上げる環境疲労のき裂が発生する可能性のある 2 底面の表面粗さ 腐食げる環境疲労のき裂が発生する可能性のある部位に関して部位に関しては 表面粗さや腐食による影響は生じないと 等は 表面粗さや腐食による影響は生じないと考えられるの考えられるので 評価対象外とする また き裂先端の回 で 評価対象外とする 折信号を扱う深さサイジングに対しての影響は少ない (Dに同じ) (Cに同じ) 探傷器の受信回路の周波数特性および周波数特性を調整す るフィルター機能の特性は 通常の探傷器では受信波形に 1 受信回路のフィルタ影響し近接欠陥の検出特性 ( 分解能 ) に得影響を及ぼすが ー機能 特性受信波形の広い周波数領域の特性に着目する探傷手法では H U H 影響は検出性の場合と同様 H U H 検出性に対して更に影響が大きい 2-996

5 超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 添付資料 1-2 影響因子 (Phenomena) A-1: 印加電圧 備考 対象検出性への影響サイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 30 る ランキング評価影響のメカニズ ム 現状の評価 重要度 知識レベル 探触子を構成する振動子の出力が印加電圧と一義的に対応する( 通常 直線関係 ) 範囲では 印加電圧を増加させれば発生する超音波の振幅値が増加するため 体積欠陥の反射エコーやき裂欠陥のコーナーエコーは一義的に増加し SN 比が十分な場合は 一般には欠陥検出性が向上する 超音波の透過性が悪い材料の探傷等のために 通常の印加電圧よりも数倍以上の高電圧を印加できる探傷器も市販されている [1] 評価 :M 根拠 : 印加電圧の増加は欠陥コーナーエコーや端部エコー等の振幅値に一義的に影響する 評価 :K 根拠 : 印加電圧の増加が欠陥コーナーエコーや端部エコー等の振幅値に及ぼす効果は自明である き裂欠陥の高さ寸法を測定する端部エコー法においても 振動子への印加電圧を増加させれば 端部エコーの振幅値も増加するため [1] SN 比が十分な場合は 振幅値が小さく検出及び識別が難しい端部エコーとコーナーエコーの識別性が向上し き裂欠陥の深さサイジング性やサイジング精度が向上す評価 : M 根拠 : 同左評価 :K 根拠 : 同左 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :H [1] 例えば 1000 Volt 印加可能なパルサーなど [1] EDM スリット等による基礎試験 あるいはシミュレーション解析により確 認可能 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low) 30 試験結果 解析結果 実機事例等の事実に基づく現状の知見を整理する 2-997

6 超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 A-3: 特殊励振方式の影響 (Phenomena) 対象検出性への影響サイジング精度への影響 備考 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 ランキング評価重要度 知識レベル 特殊励振方法には周波数変調 符号化 ( パルス圧縮 ) なども含まれるが ここ ではき裂面に大変位を与える事により生じる非線形超音波を念頭にした特殊 な励振方法の範囲とし 大振幅超音波を発生させるための方法と その欠陥検 出性に与える影響について述べる 大振幅の超音波を発生させる方法の一つに 探傷器から高電圧のパルスあるい はバースト波を出力する方法がある 大振幅超音波をき裂の計測に用いた場 合 き裂からのエコーも組織からの散乱ノイズも共に振幅が増加するため検出 性向上の効果は無いと考えられるが ランダムな組織散乱波を空間的平均化処 理で減らす手法等の検討の余地はある 高電圧での励振だけでは十分な大変位が得られない場合に特殊な振動子を用い 高電圧での励振だけでは十分な大変位が得られない場合に特殊な振動子を用い る方法が研究されている これにより生ずる非線形超音波の計測においては 線形計測とは異なる挙動を 示すことが確認されており [1 2] 周波数域のフィルタリング技術との併用で 欠陥エコーの検出性に有効な可能性がある 評価 :H 根拠 : 非線形超音波応用や 従来の探傷でも一定の条件で 大振幅超音波の利用 評価 :U 技術は欠陥検出性を大幅に向上させる可能性がある 根拠 : 高電圧励振の探傷における有効性については コンクリート等を対象に過 去に検討された例はあるものの [3] 有効性などは明確になっていない 過去の高電圧励振装置は 探傷器 探触子を含めた測定装置の信頼性が低 く 良い結果を得られなかった 非線形超音波計測については 特に探傷 応用について 不明な点が多い 特殊励振方法には周波数変調 符号化 ( パルス圧縮 ) なども含まれるが ここ ではき裂面に大変位を与える事により生じる非線形超音波を念頭にした特殊 な励振方法の範囲とし 大振幅超音波を発生させるための方法と その欠陥サ イジング精度に与える影響について述べる 大振幅の超音波を発生させる方法の一つに 探傷器から高電圧のパルスあるい はバースト波を出力する方法がある 大振幅超音波をき裂の計測に用いた場 合 端部エコーも組織からの散乱ノイズも共に振幅が増加するためサイジング 精度向上の効果は無いと考えられるが ランダムな組織散乱波を積算平均で減 らす手法等の検討の余地はある る方法が研究されている これにより生ずる非線形超音波の計測においては 線形計測とは異なる挙動を 示すことが確認されており [1 2] 周波数域のフィルタリング技術との併用で 欠陥エコーのサイジング精度に有効な可能性がある 評価 :H 根拠 : 非線形超音波応用や 従来の探傷でも一定の条件で 大振幅超音波の利用 評価 :U 確信度評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] A. Moussatov V. Gusev B. Castagnede Self-induced hysteresis for nonlinear acoustic waves in cracked material Phys. Rev. Lett (2003) [2] I. Y. Solodov C. A. Vu Popping nonlinearity and chaos in vibrations of a contact interface between solids Acoust. Phys (1993) 476 [3] 例えば印加電圧最大 1800V のパルサーレシーバ 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low) 技術はサイジング性を大幅に向上させる可能性がある 根拠 : 高電圧励振の探傷における有効性については コンクリート等を対象に過 去に検討された例はあるものの [3] 有効性などは明確になっていない 過去の高電圧励振装置は 探傷器 探触子を含めた測定装置の信頼性が低 く 良い結果を得られなかった 非線形超音波計測については 特に探傷 応用について 不明な点が多い

7 ランキング評価超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) B-1: 探触子の中心周波数 備考 対象検出性への影響サイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 超音波減衰の大きな材料や組織不均質性の強い材料 極厚板 およびこれらの材料の溶接部などにおいては 材料組織に関連する超音波の散乱や減衰のために 1MHz や 500kHz と言った低周波 あるいは選択的な周波数において超音波の伝搬が良好な場合が有る [1] コンクリートなどの場合[2] には数十 khz 程度の方が欠陥の検出性が良い場合が有るため 検査対象に応じて用いる探触子の中心周波数は事前に判断 選定しておく必要がある 欠陥から反射される超音波の振幅は波長の関数[3] でもあるので 探触子の中心周波数は検出性にも影響を及ぼす 欠陥のサイジング性に関しては き裂先端などの当該部まで超音波が伝わっている事が重要であるため 探触子中心周波数の影響は検出性の場合と同様 ただし 周波数が低いほど波長が長くなるため 端部エコー等の信号の長さが長くなり コーナーエコー等との識別性が低下するため [1] 検査対象欠陥やその寸法に応じて事前に判断 選定しておく必要がある 重要度 知識レベル 評価 :M 根拠 : 探触子の中心周波数は検査対象物によっては超音波の伝搬に影響する 評価 :P 根拠 : 探触子の中心周波数の影響は 一般論としては分かっているが 個々の検査対象材料に関しては 事前に実験し 確認しておく必要がある 評価 :M 根拠 : 探触子の中心周波数は検査対象物によっては超音波の伝搬に影響する 評価 :P 根拠 : 探触子の中心周波数の影響は 一般論としては分かっているが 個々の検査対象材料に関しては 事前に実験し 確認しておく必要がある 確信度 評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] 例えばステンレス鋼溶接部 Ni 基合金溶接部 ステンレス鋳鋼とその溶接部 コンクリートなど [2] コンクリートの探傷結果 探傷条件 [3] 例えば非破壊検査便覧 [1] EDM スリット等による基礎試験 あるいはシミュレーション解析により確認 可能 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low) 2-999

8 超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) B-2: 探触子の周波数帯域 ( 波形特性 ) 備考 対象検出性への影響サイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 ダンピングの良い波形 即ち広帯域探触子は 送信超音波および受信信号の波の数が少ないため 近接欠陥の分解能等が良く また広い帯域幅の超音波が送信されるため 減衰の大きな材料等でも選択的な周波数において透過性が良い場合が有る 但し 狭帯域探触子に比べ超音波減衰が大きい材料等で感度が不足する場合があり この様な場合には分解能を犠牲にして狭帯域の 波の数の多い探触子を用いる場合もある き裂欠陥の深さサイジングを行う場合にも 欠陥コーナーエコーと端部エコーの識別をする必要が有り ダンピングの良い波形 即ち広帯域探触子の方が き裂コーナーエコーと端部エコーの分離が良く [1] サイジング精度が良好であるため 検査対象材料および想定される欠陥とその寸法に応じて事前に判断 選定しておく必要がある ランキング評価重要度 知識レベル 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :L 評価 :M 根拠 : 材料ノイズ等と欠陥エコーとの識別などに 探触子の周波数帯域は影響根拠 : 探触子の波形特性 ( ダンピング特性 ) はき裂深さサイジングの為の端部エを及ぼすが その影響は大きくはない コーの識別と その位置の測定に影響する 評価 :K 評価 :K 根拠 : 探傷感度と欠陥の識別性を考慮し 超音波伝搬特性の悪い材料でない限り根拠 : 端部エコーとコーナーエコーの識別 位置の測定などにはダンピングの良広帯域探触子を用いる場合と 感度の向上を考慮して狭帯域探触子を用いい波形 ( 広帯域 ) が良い事は自明 る場合があり 検査員が判断して決めている 評価 :H 評価 :H [1] EDM スリット等による基礎試験 あるいはシミュレーション解析により確認可能 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

9 ランキング評価超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) B-4: 探触子タイプ / フォーカス 備考 対象 検出性への影響 サイジング精度への影響 き裂端部エコーの識別性は SN 比に依存し 近接欠陥の分離特性はビーム幅に き裂端部エコーの識別性は SN 比に依存し 近接欠陥の分離特性はビーム幅に 依存する 依存する フォーカスには 探触子の幾何形状によるもの アレイ探触子の各素子を遅延 フォーカスには 探触子の幾何形状によるもの アレイ探触子の各素子を遅延 影響因子に対する 則に従って励振することによるもの及びそれらを組み合わせたものがあるが フォーカスでは 送信超音波がフォーカス点近傍に絞られるため 空間分解能の向上と振幅増幅効果が得られる [1] 則に従って励振することによるもの及びそれらを組み合わせたものがあるが フォーカスでは 送信超音波がフォーカス点近傍に絞られるため 空間分解能の向上と振幅増幅効果が得られる [1] 現状認識 例えば 検査対象の内面から発生した欠陥などを固定焦点で検査する場合 フ 例えば 検査対象の内面から発生した欠陥などを固定焦点で検査する場合 フ 影響のメカニズム 現状の評価 ォーカスによる振幅増大で検出性は向上するが送信超音波がフォーカス点近傍に絞られるため検査効率は低下する ォーカスによる振幅増大でサイジング精度は向上するが送信超音波がフォーカス点近傍に絞られるため検査効率は低下する また 近接多重欠陥などの欠陥の様相が想定される場合もその検出に効果的に また 近接多重欠陥などの欠陥の様相が想定される場合もそのサイジングに効 適用することが可能である 果的に適用することが可能である 閉じたき裂の検出性向上のための非線形超音波で必要な大振幅超音波の発生に 閉じたき裂のサイジング精度向上のための非線形超音波で必要な大振幅超音波 も フォーカス点近傍での振幅増幅効果は有効である の発生にも フォーカス点近傍での振幅増幅効果は有効である 重要度 知識レベル 評価 :H 根拠 : フォーカスによる空間分解能向上や振幅増幅効果はき裂の検出性に大きく影響する 評価 :K 根拠 : フォーカスによる空間分解能の向上や振幅増大効果が得られることは自明である 評価 :H 根拠 : フォーカスによる空間分解能向上や振幅増幅効果はき裂のサイジング精度に大きく影響する 評価 :K 根拠 : フォーカスによる空間分解能の向上や大振幅超音波が得られることは自明である 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :H [1] 例えば 超音波便覧 丸善 pp [1] 例えば 超音波便覧 丸善 pp 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

10 ランキング評価超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) B-5: 超音波のモード ( 縦波 横波 (SV 波 SH 波 )) 備考 対象検出性への影響サイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 一般には 垂直法は縦波が 斜角法は横波(SV 波 ) が用いられている TOFD 法は一般に縦波が用いられる 欠陥の傾き等によってはモード変換により反射率が変化するが 適切な屈折角を選定することで影響を少なくできる 縦波を使用する場合には 裏面開口欠陥のコーナー反射で反射率が低下するため ノッチ等を使った感度の校正を行う必要がある 音響異方性材料では モードによって異方性の影響( 異常な屈折等 ) の度合いが異なる 例えば オーステナイト系鋼溶接金属部の探傷では 音響異方性の影響を受けにくく透過性が良いという経験を基に 斜角法であっても縦波を使用することが多い 同様の理由でSH 波を用いた方法も報告されている 一般には 垂直法は縦波が 斜角法は横波(SV 波 ) が用いられている TOFD 法は一般に縦波が用いられる 欠陥の傾き等によってはモード変換により反射率が変化するが 適切な屈折角を選定することで影響を少なくできる 縦波を使用する場合には 裏面開口欠陥のコーナー反射で反射率が低下するため ノッチ等を使った感度の校正を行う必要がある 音響異方性材料では モードによって異方性の影響( 異常な屈折等 ) の度合いが異なる 例えば オーステナイト系鋼溶接金属部の探傷では 音響異方性の影響を受けにくく透過性が良いという経験を基に 斜角法であっても縦波を使用することが多い 同様の理由でSH 波を用いた方法も報告されている 重要度 評価 :M 根拠 : 金属組織の異方性の有無や適用する探傷方法により縦波あるいは横波を選定する必要がある 評価 :M 根拠 : 金属組織の異方性の有無や適用する探傷方法により縦波あるいは横波を選定する必要がある 知識レベル 評価 :K 根拠 : 結晶構造が明らかで均質な材料に対しては 超音波のモードと伝搬の挙動は把握されている 評価 :K 根拠 : 結晶構造が明らかで均質な材料に対しては 超音波のモードと伝搬の挙動は把握されている 不均質な材料組織に対しては別 項目で評価 確信度 参考文献 / 注釈 評価 : H 評価 :H [1] 非破壊検査便覧 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

11 ランキング評価超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) C-2: 被検体表面の凹凸および表面粗さ 備考 対象 検出性への影響 サイジング精度への影響 表面粗さは プローブの径や超音波の波長と比較して 相対的に定義されるも 表面粗さは プローブの径や超音波の波長と比較して 相対的に定義されるも のである 形状と探傷面の粗さが超音波探傷の検出性や感度に与える影響が大きいことは 一般には知られている 特に接触型プローブ ( 斜角探触子やフェ のである 表面の凹凸や粗さによって 超音波が想定外の方向に入射したり入射方向が分散したりする恐れがあり 特にき裂先端部近傍に入射した超音波ビ ーズドアレイ探触子 ) において 検出性に大きく影響する ームに着目するサイジングにおいては影響が顕著である 影響因子に対する 被検体中への超音波の伝搬は 被検体の表面粗さによって大きく変化するため 表面粗さに応じて 探傷に必要な伝搬特性が得られる接触媒質を選定すること現状認識探傷に必要な伝搬特性が得られる接触媒質を選定することが重要である [1] が重要である [1] 影響のメカニズム 超音波が効率的に伝搬し 意図した方向へ入射させるため 探傷する前に被検 探傷する前に被検体の表面を研磨し 平滑化する等の調整をしておく必要があ 現状の評価体の表面を研磨し 平滑化する等の調整をしておく必要がある る 凹凸に対応するため 表面形状を計測して超音波の入射への補正を行う[2] な 凹凸に対応するため 表面形状を計測して超音波の入射への補正を行う[2] な どの対応が必要となる場合もある どの対応が必要となる場合もある 重要度 知識レベル 評価 :H 根拠 : 被検体表面の凹凸および表面粗さが 検出性に及ぼす影響は大きい 評価 :P 根拠 : 超音波を効率的に伝搬させるため 表面を平滑化したり 適切な接触媒質を選択したりすることは良く行われる 一方 凹凸面に対する信号補正法の知見は少ない 評価 : H 根拠 : 被検体表面の凹凸および表面粗さが サイジング精度に及ぼす影響は大きい 評価 :P 根拠 : 超音波を効率的に伝搬させるため 表面を平滑化したり 適切な接触媒質を選択したりすることは良く行われる 一方 凹凸面に対する信号補正法の知見は少ない 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :H [1] JIS Z 鋼溶接部の超音波探傷試験方法 [1] JIS Z 鋼溶接部の超音波探傷試験方法 [2] O. Casula C. Poidevin G. Cattiaux and P. Dumas Control of complex [2] O. Casula C. Poidevin G. Cattiaux and P. Dumas Control of complex components with smart flexible phased arrays Ultrasonics Vol.44 components with smart flexible phased arrays Ultrasonics Vol.44 pp.e647-e pp.e647-e 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

12 ランキング評価超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 D-1: 被検体材質の超音波特性 ( 音速 減衰 拡散特性 ( 結晶粒度 析出物等依存性 )) (Phenomena) 対象検出性への影響サイジング精度への影響 備考 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 粗大な結晶粒によって超音波は散乱 減衰することは 定性的には知られてお 粗大結晶粒等による超音波の散乱 減衰は き裂検出に用いるコーナーエコーり き裂エコーの SN 比を低下させるため この影響度合いを評価することは以上に端部エコーの SN 比を低下させるため サイジング精度に及ぼす影響は重要である 大きい 粒界部による減衰 拡散は 検出性に影響することは一般的に知られている Ni 基合金溶接部やステンレス鋳鋼等は 柱状晶組織であるため 音響異方性 しかし 粒界散乱によるノイズはランダムノイズに相当するため 空間的平均化処理などの波形処理や合成処理によって き裂エコーの SN 比を改善できる可能性があることが示唆されている [1] による超音波の音速の局所的変化があるため サイジング精度に大きく影響する 但し この影響は解析的に推定可能[1] である また 粒界による減衰 拡散までも定量的にモデル化した研究 [2] は少ない 重要度 知識レベル 確信度 評価 :M 評価 : H 根拠 : 検査対象材料の材質によっては 散乱 減衰 音速分布等により検出性に根拠 : 材質の音速分布や 減衰特性を予め把握することは き裂の端部エコーの 影響を及ぼすため 対象材料の超音波特性を把握することは き裂の検出性向上にとって重要である 発生位置の評価や SN 比を向上に寄与し サイジング性能に大きく影響する 評価 :P 評価 :P 根拠 : 材質の結晶構造に起因して 粒界部で散乱 減衰することは定性的に知ら根拠 : 材質の結晶構造に起因して 粒界部で散乱 減衰することは定性的に知ら れているが 定量的に影響を評価した事例は少ない れているが 定量的に影響を評価した事例は少ない 評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] S. Kitazawa et al. Advanced inspection technologies for energy infrastructure Hitachi Reviews Vol.59 No [1] A.H. Harker J.A. Ogilvy and J.A.G. Temple Modeling ultrasonic inspection of austenitic welds Journal of Nondestructive Evaluation Vol. 9 pp [2] 坂本一信ら ステンレス鋳鋼配管における超音波伝搬シミュレーション 保全学 Vol.11 No 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

13 ランキング評価超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) D-2: 超音波の直進性 ( 被検体内の不均質性 異方性 ) の影響 対象 検出性への影響 サイジング精度への影響 備考 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 超音波ビームが想定通りの方向に伝搬しないため検出性への影響が大きい 欠陥からの反射波 回折波も想定通りでない超音波伝搬経路の影響を受けるた 溶接部の異方性や結晶組織の異方性が大きい材料においては事前に音速( あるめ 欠陥位置の評価および先端部の位置の評価 ( 即ちサイジング精度 ) への影いは逆速度 : スローネス ) 分布を測定等により求めておくべきであり 異方性響も大きい が検査結果にどの様に影響するかを明らかにし 異方性を考慮した探傷条件の 溶接部の異方性や結晶組織の異方性が大きい材料においては事前に音速を実測設定方法や 更には探傷結果を異方性の影響を考慮して評価する手法等が重要等により求めておくこと また探傷結果を異方性の影響を考慮して評価するこである と等が重要である 不均質性 異方性の超音波ビームの偏向や屈曲への影響[1] や これらを考慮 不均質性 異方性の超音波ビームの偏向や屈曲への影響[1] や これらを考慮した探傷条件の設定 [2] に関しては一部の研究事例がある した探傷条件の設定 [2] に関しては一部の研究事例がある 重要度 知識レベル 評価 :H 評価 : H 根拠 : 超音波伝搬経路を精度良く探傷条件等に反映する事により 検出性が向上根拠 : 超音波伝搬経路を精度良く探傷条件等に反映する事により サインジング する 精度が向上する 評価 :P 評価 :P 根拠 : 不均質性 異方性による超音波ビームの偏向や屈曲を考慮した探傷条件の根拠 : 不均質性 異方性による超音波ビームの偏向や屈曲を考慮した探傷条件の 設定に関する知見は少なく 探傷結果の評価に関しては殆ど知見がない 設定に関する知見は少なく 探傷結果の評価に関しては殆ど知見がない 確信度 評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] 中畑和之 廣瀬壮一 M. BARTH 他 2 名 : " 異材溶接部のイメージベース波動伝搬シミュレーションとその実験的検証 " 保全学 Vol.10. No.2 July pp.49 (2011) [2] Jing Ye Hak-Joon Kim Sung-Jin Song et.al; "Development of an Ultrasonic Ray Model for Phased Array Ultrasonic Testing in Austenitic Weldments" 17th World Conference on Nondestructive Testing Oct 2008 Shanghai China (2008) [1] 中畑和之 廣瀬壮一 M. BARTH 他 2 名 : " 異材溶接部のイメージベース波動伝搬シミュレーションとその実験的検証 " 保全学 Vol.10. No.2 July pp.49 (2011) [2] Jing Ye Hak-Joon Kim Sung-Jin Song et.al; "Development of an Ultrasonic Ray Model for Phased Array Ultrasonic Testing in Austenitic Weldments" 17th World Conference on Nondestructive Testing Oct 2008 Shanghai China (2008) 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

14 ランキング評価超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) E-2: き裂寸法 備考 対象検出性への影響サイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 一般にき裂寸法が大きいほど欠陥検出性が向上することは 理論的 実験的に確認されている 欠陥検出性に関しては パルス反射法によるき裂の面積が欠陥信号振幅に及ぼす影響のデータは低合金鋼 ステンレス鋼 Ni 基合金等で得られており き裂深さに関する POD 曲線も得られているが [1][2] 環境疲労によるき裂に関してはデータが十分ではない 検出されたき裂であっても 深さサイジングが可能か否かや深さ測定精度は き裂寸法そのもの及び検査手法に影響される 特定の検査対象材質やき裂の種類においてはデータが有るが [1] 環境疲労によるき裂に関してはデータが十分ではない 重要度 知識レベル 確信度 評価 :M 評価 : M 根拠 : き裂寸法は超音波を反射する面の面積に関連するため 検出性に及ぼす影根拠 : 検出されたき裂の深さサイジングが可能かや測定精度は き裂寸法と直接響は比較的大きい 的には関連しないが 現実的には影響を及ぼす事が多い 評価 :P 評価 :P 根拠 : き裂寸法とき裂の検出性の関係は 特定の材料 欠陥に関してはデータが根拠 : き裂の深さサイジングが可能かや測定精度に及ぼすき裂寸法の影響は 特有る 例えば配管における評価不要欠陥寸法の前後の欠陥寸法に関して定の材料に関しては知られている は検出性の評価データはあるが 環境疲労によるき裂に関してはデータの蓄積が必要 評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] JNES 事業報告書 平成 16 年度原子力発電施設検査技術実証事業に関する報告書 ( 超音波探傷試験における欠陥検出性及びサイジング精度の確認に関するもの ) 05 基材報 -001 [ 総括版 ] 05 基材報 -002 [2] JNES 事業報告書 平成 20 年度ニッケル基合金溶接部の非破壊検査技術実証に関する事業報告書 09 原高報 [1] JNES 事業報告書 平成 20 年度ニッケル基合金溶接部の非破壊検査技術実 証に関する事業報告書 09 原高報 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

15 超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) E-3: き裂の 2 次元形状 備考 対象検出性への影響サイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 き裂の輪郭形状が半楕円等ではなく き裂長さ方向の一部が著しく浅い ある いは深い場合などは き裂形状は検出性に影響を及ぼすが ある程度の深さ寸 法以上があれば影響は少ない き裂が存在する構造物の構造健全性を維持規格により力学的に評価する場合は き裂の長さと最大深さで代表される半楕円き裂として扱う事が一般的であるが [1] より適切な評価を行うためには き裂の輪郭形状を測定できる事が必要となる場合がある ( 安全のための裕度を取りすぎない評価など ) き裂が その長さ方向の一部において著しく深く進展している場合などでは その最深部を特定してサイジングする事ができない場合があり 力学的評価に影響を及ぼす き裂の輪郭形状を画像化している事例もあるが[2] 輪郭形状を正確に測定した例はほとんどない ランキング評価重要度 知識レベル 評価 :L 評価 :H 根拠 : ある程度の深さ寸法以上のき裂であれば 検出性に及ぼす影響は少ない 根拠 : き裂が存在する場合の構造物の力学的評価をより適切に行うにはき裂の輪郭形状を測定できる事が必要である 評価 :P 評価 :U 根拠 : 特定の材料における比較的一様な形状のき裂の検出性に関してはデータが根拠 : 最大深さや長さ以外に き裂の輪郭形状を正確に測定した例はほとんどな有るが 環境疲労によるき裂に関してはデータの蓄積が必要 い 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :H [1] 日本機械学会 発電用原子力設備規格維持規格 [2] I. Komura T. Furukawa: " Improvement of SCC Depth Sizing Capability by 3D-SAFT UT Method in Ni Alloy Weld " 8th International Conference on NDE in Relation to Structural Integrity for Nuclear and Pressurized Components Th.1.C.1 (2010) 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

16 ランキング評価超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) E-4: き裂性状 ( き裂面およびき裂先端部近傍の凹凸 ファセット寸法 分岐 ) 備考 対象検出性への影響サイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 き裂面の凹凸 ファセット寸法 分岐が超音波の反射方向の分散などを生じ き裂先端の凹凸 ファセット寸法 分岐によっては 超音波入射方向との関係 探触子に戻って検出される信号の振幅値等に大きく影響するため 検出性に影響を及ぼす き裂寸法が小さな段階ではき裂面の凹凸 ファセット寸法 分岐のゆえに 欠陥信号が材料ノイズに埋もれがちになる場合もあり 信号処理や画像処理技術で欠陥信号を抽出する事が望ましい が適正でない場合 ( き裂先端がサイジングのための端部エコーが得にくい方向を向いているなど ) もあり得るため サイジング精度に及ぼす影響は大きい また 検査対象の材料や結晶組織によってはき裂先端部の形状が著しく特異な場合があり この場合はサイジング精度に大きく影響する可能性がある [1] 重要度 知識レベル 評価 :H 根拠 : き裂面の凹凸 ファセット寸法 分岐の検出性への影響は大きい 評価 :U 根拠 : き裂面の凹凸 ファセット寸法 分岐の影響は解明されていない 評価 :H 根拠 : き裂先端の凹凸 ファセット寸法 分岐のサイジング精度への影響は大きい 評価 :U 根拠 : き裂先端近傍のき裂面の凹凸 ファセット寸法 分岐等の影響は解明されていない 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :H [1] JNES 事業報告書 平成 17 年度ニッケル基合金溶接部の非破壊検査技術実 証に関する事業報告書 06 基材報 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

17 ランキング評価超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) E-5: き裂内物質の状態 ( 腐食生成物の有無 疎密 ) 備考 対象検出性への影響サイジング精度への影響 環境疲労等で発生 伝搬するき裂に関して腐食生成物等の化学的物性 特性[1] 環境疲労等で発生 伝搬するき裂に関して腐食生成物等の化学的物性 特性[1] は分かっている場合もあるが 超音波の伝搬に影響する物理的状態 特性は明は分かっている場合もあるが 超音波の伝搬に影響する物理的状態 特性は明らかになっていない らかになっていない 影響因子に対する き裂内の腐食生成物の有無や疎密により 超音波エコーが発生せず透過する現 き裂内の腐食生成物の有無や疎密により 超音波エコーが発生せず透過する現現状認識象は き裂の過小評価や見逃しを引き起こす要因となり得るため その評価法象は き裂の過小評価や見逃しを引き起こす要因となり得るため その評価法 影響のメカニズムの確立が重要である の確立が重要である 現状の評価 き裂内への酸化膜生成の検出性への影響やその対策に関する研究事例は一部し き裂内への酸化膜生成のサイジング精度への影響やその対策に関する研究事例かない [2] は一部しかない [2] 重要度 知識レベル 評価 :H 根拠 : 評価手法を確立しなければ き裂検出において見逃しを引き起こす可能性がある 評価 :U 根拠 : 検出性に対するき裂内物質の状態の影響に関しては殆ど知見がない 評価 :H 根拠 : 評価手法を確立しなければ き裂サイジングにおいて過小評価を引き起こす可能性がある 評価 :U 根拠 : サイジング精度に対するき裂内物質の状態の影響に関しては殆ど知見がない 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :H [1]T. Terachi K. Fujii K. Arioka; Microstructural Characterization [1]T. Terachi K. Fujii K. Arioka; Microstructural Characterization of SCC Crack Tip and Oxide Film for SUS 316 Stainless Steel in Simulated of SCC Crack Tip and Oxide Film for SUS 316 Stainless Steel in Simulated PWR Primary Water at 320 Journal of Nuclear Science and Technology PWR Primary Water at 320 Journal of Nuclear Science and Technology Vol. 42 No. 2 pp (2005) Vol. 42 No. 2 pp (2005) [2] S. Horinouchi M. Ikeuchi Y. Shintaku Y. Ohara K. Yamanaka; [2] S. Horinouchi M. Ikeuchi Y. Shintaku Y. Ohara K. Yamanaka; Evaluation of Closed Stress Corrosion Cracks in Ni-Based Alloy Weld Evaluation of Closed Stress Corrosion Cracks in Ni-Based Alloy Weld Metal Using Subharmonic Phased Array Japanese Journal of Applied Metal Using Subharmonic Phased Array Japanese Journal of Applied Physics Vol. 51 July pp.07gb (2012). Physics Vol. 51 July pp.07gb (2012). 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

18 ランキング評価超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) E-6: き裂の閉口状態 ( 密着性 ) とその分布 備考 対象検出性への影響サイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 き裂周囲の応力状態によってはき裂の閉口状態を生ずる原因となり 超音波が き裂周囲の応力状態によってはき裂の閉口状態を生ずる原因となり 超音波がき裂閉口部を透過し過小評価や見逃しを引き起こす要因となり得るため 検出き裂閉口部を透過し過小評価や見逃しを引き起こす要因となり得るため サイ性に及ぼす影響は大きい ジング精度に及ぼす影響は大きい 環境疲労等で発生 伝搬するき裂に関して 腐食生成物等の密着性およびその 環境疲労等で発生 伝搬するき裂に関して 腐食生成物等の密着性およびその結果として生ずるき裂の閉口状態が明らかになっていないため 超音波の伝搬結果として生ずるき裂の閉口状態が明らかになっていないため 超音波の伝搬への影響も明らかではなく 小さな 浅い欠陥では検出性への影響は大きいとへの影響も明らかではなく き裂先端が閉口する場合 サイジング精度への影考えられる 響は大きいと考えられる 閉口状態のき裂の影響やその対策に関する実験的及び理論的研究事例は一部し 閉口状態のき裂の影響やその対策に関する実験的及び理論的研究事例は一部しかない [1 2] かない [1 2] 重要度 知識レベル 評価 :H 根拠 : 評価手法を確立しなければ き裂検出において見逃しを引き起こす可能性がある 評価 :U 根拠 : 検出性に対するき裂の閉口状態の影響やその対策に関しては殆ど知見がない 評価 :H 根拠 : 評価手法を確立しなければ き裂サイジングにおいて過小評価を引き起こす可能性がある 評価 :U 根拠 : サイジング精度に対するき裂の閉口状態の影響やその対策に関しては殆ど知見がない 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :H [1] Y. Ohara H. Endo T. Mihara K. Yamanaka; Ultrasonic Measurement [1] Y. Ohara H. Endo T. Mihara K. Yamanaka; Ultrasonic Measurement of Closed Stress Corrosion Crack Depth Using Subharmonic Phased Array of Closed Stress Corrosion Crack Depth Using Subharmonic Phased Array Japanese Journal of Applied Physics Vol. 48 pp. 07GD (2009). Japanese Journal of Applied Physics Vol. 48 pp. 07GD (2009). [2] Kazushi Yamanaka Yoshikazu Ohara Miyuki Oguma and Yohei Shintaku; [2] Kazushi Yamanaka Yoshikazu Ohara Miyuki Oguma and Yohei Shintaku; Two-Dimensional Analyses of Subharmonic Generation at Closed Cracks Two-Dimensional Analyses of Subharmonic Generation at Closed Cracks in Nonlinear Ultrasonics Applied Physics Express (2011). in Nonlinear Ultrasonics Applied Physics Express (2011). 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

19 超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) E-7: き裂の方向 ( 角度 ) 備考 対象検出性への影響サイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 ランキング評価重要度 知識レベル 確信度 超音波の入射方向( 探傷方向 ) と欠陥の方向性 あるいは探傷面や裏面に対す き裂の検出は 斜角探傷によるコーナーエコーを用いるため 探傷方向に対する欠陥の発生 伝搬方向 ( 角度 ) は欠陥検出特性に影響するため 検査対象のるき裂の方向 ( 角度 ) の影響は大きいが き裂の深さサイジングはき裂先端部応力状態等を事前に検討しき裂の発生方向等を想定しておくことが必要 を認識する端部エコーを用いるため コーナーエコーほど方向性の影響は少な 検査対象物の形状の影響等( 接近限界距離等 ) で 想定されるき裂の発生方向いと考えられる 等に対して最適な探傷条件 ( 超音波入射方向など ) が実現できない場合は 探傷方向への依存性が少ない探傷方法等を採用する必要がある 評価 :H 評価 :M 根拠 : き裂の方向が検出性に及ぼす影響は大きい 根拠 : 端部エコーに対する超音波入射方向の影響はき裂検出の際に対象とするコーナーエコーに比べれば少ないと考えられる 評価 :P Kの意見もあり 評価 :P 根拠 : き裂の方向と超音波入射方向の影響を評価した事例は少なく [1] 環境疲根拠 : き裂の深さサイジングのための端部エコーに関して 超音波入射方向の影労に関する知見はほとんど無い また超音波入射方向の影響の少ない探傷響を評価した事例は少なく [1] 環境疲労に関する知見はほとんど無い 方法の事例 [1] は更に少ない 評価 :M 評価 :H 一般的にはき裂に正対する方向から探傷するのが原則だが ここでは斜め方向から探傷せざるを得ない場合を取り上げている [1] 古村一朗 古川敬 : " 開口合成 3 次元超音波探傷法による Ni 基合金溶接部参考文献 / 注釈 SCC の探傷特性 " 平成 23 年度火力原子力発電大会論文集 pp (2011)[CD-ROM] 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low) [1] 古村一朗 古川敬 : " 開口合成 3 次元超音波探傷法による Ni 基合金溶接部 SCC の探傷特性 " 平成 23 年度火力原子力発電大会論文集 pp (2011)[CD-ROM]

20 超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) F-1: 底面の形状不連続 溶接部境界 対象検出性への影響サイジング精度への影響備考 溶接部裏波の様に欠陥エコーと誤認識する可能性のある形状不連続の存在が予想される場合は その影響を探傷の前に評価しておき 2 次クリーピング波法影響因子に対するを用いた誤認識の低減法や 溶接部境界に留意した欠陥位置の評価など [1] の現状認識対応を検討しておく必要がある 影響のメカニズム また手探傷などの際には欠陥指示の位置を注意しないとカウンターボアの角部 現状の評価のエコーと誤認識する可能性もあり 設計図面等に照らして その影響を探傷の前に評価しておくことが必要 SCC 等のき裂が発生する可能性の高い位置は溶接部境界に隣接しているため これを欠陥エコーと誤認識する場合は SCC の端部エコーと溶接境界エコーを誤認識する場合も多くなるため サイジング結果としても誤った結果を生ずる場合が有る 超音波探傷結果に及ぼす影響因 子として き裂等欠陥エコー及 びノイズエコーの振幅値に影響 を及ぼす因子を取り上げたが 本因子のみ欠陥エコーと他のエコーの識別性に関して言及している ランキング評価重要度 知識レベル 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :H 根拠 : 誤認識の要因となる形状不連続部や溶接境界位置を事前に検討しておく事根拠 : 形状不連続や溶接境界と SCC 等き裂を御認識すると 溶接境界からの信号で その影響を排除する探傷方法をとる事が可能であるが 誤認識をしたを端部エコーと御認識する事が多く この場合は検査対象物の健全性評価例もあり その場合の影響が大きい に対する影響も大きい 評価 :P 評価 :P 根拠 : 溶接部裏波エコーやカウンターボア等の誤認識要因に関しては対応策が知根拠 : 溶接境界と端部エコーの識別は個々の検査対象物の状況を評価する必要がられている あり 経験に裏付けられた技術者はこの要因に関する知識を有している 評価 :M 評価 :M [1] JNES 事業報告書 平成 16 年度原子力発電施設検査技術実証事業に関する報告書 ( 超音波探傷試験における欠陥検出性及びサイジング精度の確認に関するもの ) 05 基材報 -001 [ 総括版 ] 05 基材報 -002 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

21 超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) I-1: 受信回路のフィルター機能 特性 対象検出性への影響サイジング精度への影響備考 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 ランキング評価重要度 知識レベル 確信度 参考文献 / 注釈 一般に超音波探傷器の受信回路には ハイパス ローパス バンドパスフィル 一般に超音波探傷器の受信回路には ハイパス ローパス バンドパスフィルタが使用されることがあり 主に電気的なノイズ低減に用いられ 送信周波数タが使用されることがあり 主に電気的なノイズ低減に用いられ 送信周波数と受信周波数は同一という前提で選定されてきた ここでは 非線形超音波をと受信周波数は同一という前提で選定されてきた ここでは 非線形超音波を念頭に フィルターの機能 特性が欠陥検出特性に与える影響について述べる 念頭に フィルターの機能 特性が欠陥検出特性に与える影響について述べる き裂に大振幅超音波を入射した場合の非線形超音波を用いる場合は き裂で発 き裂に大振幅超音波を入射した場合の非線形超音波を用いる場合は き裂で発生した超音波の周波数成分のみを受信できれば SN 比を改善でき 検出性を向生した超音波の周波数成分のみを受信できれば SN 比を改善でき 検出性を向上させることができる可能性がある そのため 送信周波数とは異なる周波数上させることができる可能性がある そのため 送信周波数とは異なる周波数成分を選別するフィルターが必要となる 成分を選別するフィルターが必要となる 適用例としては デジタル信号処理を用いたフィルターを利用した方法などが 適用例としては デジタル信号処理を用いたフィルターを利用した方法などが報告されている [1-3] 報告されている [1-3] 評価 :H 評価 :H 根拠 : 受信回路のフィルター特性を把握し 適切に選択することが重要であり 根拠 : 受信回路のフィルター特性を把握し 適切に選択することが重要であり その影響は大きい その影響は大きい 評価 :U 評価 :U 根拠 : 非線形超音波発生の定量特性は必ずしも明らになっていないため 周波数根拠 : 非線形超音波発生の定量特性は必ずしも明らになっていないため 周波数特性の利用方法は未解決なことが多い 特性の利用方法は未解決なことが多い 評価 :H 評価 :H [1] Y. Ohara S. Yamamoto T. Mihara and K. Yamanaka Ultrasonic Evaluation of Closed Cracks Using Subharmonic Phased Array. JJAP 47(5) (2008) [2] Y. Ohara H. Endo T. Mihara K. Yamanaka Ultrasonic Measurement of Closed Stress Corrosion Crack Depth Using Subharmonic Phased Array. JJAP 48(7) (2009) 07GD [3] S. Horinouchi M. Ikeuchi Y. Shintaku Y. Ohara K. Yamanaka Evaluation of Closed Stress Corrosion Cracks in Ni-Based Alloy Weld Metal Using Subharmonic Phased Array JJAP 51 (2012) 07GB 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

22 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子に対する現状認識と重要度 / 知識レベルのランクキング結果 添付資料 2-1 シナリオ / シーン A. 励磁電流の発生と励磁コイルへの供給 影響因子 1 励磁電圧強度 励磁電流強度 2 周波数 ( 単一周波数励磁の場合 ) 3 励磁周波数の数 ( 複数周波数励磁の場合 ) 4 特殊励磁 ( 矩形波 パルス波など ) 検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 現状認識 き裂信号に対して線形に影響するものであり その効果は自明である 電気ノイズなどに対する SN 比確保のためには重要なパラメータではあるが 通常は測定者が意図的に変更する必要に迫られることは少ない 高周波であるほど表面に渦電流が集中し かつ ( ピックアップコイルを用いた場合であれば ) 検出信号も大となるため 表面開口き裂の検出という観点からは一般的には高周波であることが望ましい ただしコイルインピーダンス 装置内部回路により実用上の上限下限が存在する 現状定量的な知見が蓄積されているとは言い難いが 問題は生じていない SG 管の検査においては 複数の周波数の信号を用いることで ( 多重演算処理により ) 外部構造物の影響を除去することが行われている 一般構造物に発生したき裂検出において 多重周波数信号の融合によりき裂の検出性を向上できる ( 典型的なノイズ信号を除去できる ) 可能性はあるが 検討はされていない 矩形波とパルス波には複数の周波数成分が含まれることから 最終的に同期検波を行うのであれば複数周波数励磁を用いた信号検出と同一である 同期検波を行わず 時間領域で評価するのであれば SN 比は劣化する 直接係る評価データの公表例はないが 原理的には自明である 重要度 知識レベル 確信度 現状認識 M K H き裂長さサイジングにおける情報量の増大をもたらすものではない H K H H U H M P H 検出性への影響 における説明に加え 一般的には高周波を用いるほど空間分解能を高めることが出来るため き裂長さサイジングには有利であるとは考えられる ただし 現実的な範囲であれば プローブ位置決め精度等に比して 周波数の向上による著しい差異は生じない 多重周波数信号の融合によりき裂長さサイジング精度を向上できる可能性はある ただし 現状の単一周波数に基づく評価で実用上の問題は少ない 矩形波とパルス波には複数の周波数成分が含まれることから 最終的に同期検波を行うのであれば複数周波数励磁を用いた信号検出と同一である 同期検波を行わず 時間領域で評価するのであれば SN 比は劣化する 直接係る評価データの公表例はないが 原理的には自明である 重要度 知識レベル 確信度 現状認識 L K H き裂深さサイジングにおける情報量の増大をもたらすものではない L K H M U M M P H 高周波であるほど表層に渦電流が集中するため き裂深部の情報を抽出するためには低周波を用いる必要がある ただし定量的な議論は現状困難である 複数周波数の融合によりき裂サイジング精度を高める可能性が指摘されているが 現状知見は乏しい 同左 ただし特殊励磁により得られた信号はいわば正弦波信号の融合であるため 結果として信号の融合を行ったことによるサイジング精度向上の可能性はある 重要度 知識レベル 確信度 L K H H P H H U H M P H B. 励磁コイルによる変動磁場の発生 1 励磁コイル形状 ( 矩形 円形など ) 2 励磁コイルの大きさ 矩形であるか円形であるかによる本質的な差異は無く ( 通常表面へのならい等により決定 ) 他の因子に比して有意な影響を与えるものではない 検出信号の空間分解能は実際には励磁コイルと検出コイルの大きさに依存することから検出性への影響は大きい ただし 通常は検出コイルの大きさで議論されており 現状それで大きな問題点はない L K H H K H 矩形であるか円形であるかによる本質的な差異は無く ( 通常表面へのならい等により決定 ) 他の因子に比して有意な影響を与えるものではない 検出信号の空間分解能は実際には励磁コイルと検出コイルの大きさに依存することから長さサイジング性への影響は大きい ただし 通常は検出コイルの大きさで議論されており 現状それで大きな問題点はない L K H H K H 矩形であるか円形であるかによる本質的な差異は無く ( 通常表面へのならい等により決定 ) 他の因子に比して有意な影響を与えるものではない 深いき裂のサイジング報告において用いられているプローブは励磁コイルが大である傾向があり き裂深さサイジング精度における重要な因子である可能性は否定出来ない L M K H U M

23 シナリオ / シーン C. 健全部における渦電流の誘起 影響因子 3 励磁コイル巻数 4 励磁コイル配置 ( 対向 / 垂直 ) 5 励磁コイルリフトオフ 6 励磁コイル構成 ( アレイ化など ) 1 電磁気的均一性 ( 母材 ) 2 溶接の有無 検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 現状認識 本質的であるのは励磁コイルに流れる総励磁電流であり 巻数そのものは検出性に影響しない 通常探傷器回路により決まる適切なインピーダンス範囲となるように調整される プローブのリフトオフ変化に起因するノイズの増減に影響を与える 一般的に被検査面に対して垂直に励磁コイルを配置した場合のほうがリフトオフノイズは小さい リフトオフが大きくなると試験体の渦電流は低下し 検出信号も小さくなる き裂信号を大とすることが目的であるならば リフトオフは小であることが望ましい ただし リフトオフが小であるほど 僅かなリフトオフ変化により発生するノイズが大となる 検出性への影響は大きい アレイ化によるメリットは走査速度の向上であり 純粋な意味では検出信号に対する影響はない ( 不感帯の影響はあるが それは単一コイルの場合の走査線間隔と等価 ) 母材での導電率 透磁率のばらつきは小さく 欠陥の検出に影響することはない 溶接部での導電率 透磁率のばらつきは小さく 溶接金属内での検出に問題はないが 母材と溶接部内での導電率の違いは明白で 両者の境界に欠陥が存在する場合の検出性は明らかではない 重要度 知識レベル 確信度 L K H H K H H K H L K M L K H M P H 現状認識 同左 き裂長さサイジングにおける情報量の増大をもたらすものではない 直接的なき裂長さサイジングという観点からは き裂端部で探傷信号が得られるようなコイル配置が望ましい また そのようなコイル配置の場合 なだらかな輪郭のき裂に対しては信号が得づらく また深さが急激に変化するき裂では端部以外でも信号が発生するため 実際のき裂に対してはどちらが有利かということは ( き裂性状に依存するため ) 不明 ただしこれは励磁コイルだけではなく検出コイルのは位置にも依存するものである プローブを被検査体に近づけるほど空間分解能は向上するため 長さサイジング精度という観点からはリフトオフは小であることが望ましい アレイ化によるメリットは走査速度の向上であり 純粋な意味では検出信号に対する影響はない ( 不感帯の影響はあるが それは単一コイルの場合の走査線間隔と等価 ) 母材での導電率 透磁率のばらつきは小さく 長さサイジングに影響は少ない 溶接部での導電率 透磁率のばらつきは小さく 溶接金属内での長さサイジングに問題はないが 母材と溶接部内での導電率の違いは明白で 両者の境界にき裂端部が存在する場合 その端部の検出 ( 長さサイジング ) は明らかではない 重要度 知識レベル 確信度 L K H H P H H P H L K M L K H M P H 現状認識 同左 き裂深さサイジングにおける情報量の増大をもたらすものではない 同左 かつどのような配置がき裂深さサイジングに対して有利かは不明である プローブを被検査体に近づけるほど空間分解能は向上するため 深さサイジング精度という観点からはリフトオフは小であることが望ましい 同左 ただし複数の励磁コイルによる渦電流分布を重ね合わせることによる情報量増大の可能性が指摘されてもいる 母材での導電率 透磁率のばらつきは小さいが 欠陥の深さサイジングに渦電流探傷を適用する場合 高度に微弱な電磁場の変化を計測する必要があり 深さサイジングという観点で十分な知識が得られているとは言えない 検出と同じであるが 溶接部内での電磁気的不均一性がある場合には 深さサイジングへの影響は大きい 重要度 L H H H M P H U 知識レベル 確信度 K H U H P H P H M M

24 検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 シナリオ / シーン 影響因子 現状認識 重要度 知識レベル 確信度 現状認識 重要度 知識レベル 確信度 現状認識 重要度 知識レベル 確信度 3 表面粗さ 表面粗さが大きくなると見かけ上の導電率は下がる場合があるが 検出には影響を与えるものではない M P M 表面粗さが大きくなると見かけ上の導電率は下がる場合があるが 長さサイジングには影響を与えるものではない M P M 表面粗さが大きくなると見かけ上の導電率は下がる場合があるが 深さサイジングには影響を与えるものではない H P M 4 表面形状 ( うねり 凹凸 ) 5 酸化被膜 6 スケール 探傷プローブのサイズより大きいサイズでのうねりに関しては検出性の問題はない 探傷プローブと同等ないしより小さいサイズのうねりに対しては 検出感度に影響するが 具体的なプローブとうねりの形状がわからないと影響因子は評価できない 表面の酸化被膜は極薄い領域でありき裂信号が大きく変化する要因ではない スケールの材質 付着状況に依存するため 明確な影響因子の知見はない ある程度の厚みの鉄クラッドを想定すると 渦電流探傷は適用できないと考えられので 評価対象外とする M P H L P H 探傷プローブのサイズより大きいサイズでのうねりに関しては長さサイジングの問題はない 探傷プローブと同等ないしより小さいサイズのうねりに対しては サイジング精度に影響するが 具体的なプローブとうねりの形状がわからないと影響因子は評価できない 表面の酸化被膜は極薄い領域でありき裂信号が大きく変化する要因ではない スケールの材質 付着状況に依存するため 明確な影響因子の知見はない ある程度の厚みの鉄クラッドを想定すると 渦電流探傷は適用できないと考えられので 評価対象外とする M P H L P H 探傷プローブのサイズより大きいサイズでのうねりに関しては深さサイジングの問題はない 探傷プローブと同等ないしより小さいサイズのうねりに対しては サイジング精度に影響するが 具体的なプローブとうねりの形状がわからないと影響因子は評価できない 表面の酸化被膜は極薄い領域でありき裂信号が大きく変化する要因ではない スケールの材質 付着状況に依存するため 明確な影響因子の知見はない ある程度の厚みの鉄クラッドを想定すると 渦電流探傷は適用できないと考えられので 評価対象外とする M P M L P H 7 表面曲率半径 表面曲率半径に応じた探傷プローブを用いることで き裂の検出は問題なくされている L K H 表面曲率に応じたプローブを選択することでサイジングの問題はなくなる L K H 表面曲率に応じたプローブを選択することでサイジングの問題はなくなる L P M D. き裂による渦電流の乱れ 1 き裂寸法 2 き裂の 2 次元形状 3 き裂 3 次元性状 ( き裂面の 3 次元形状 ファセット寸法 分岐 ) き裂幅 長さ 深さは検出信号の振幅と位相に影響をもたらす そのため き裂が小さい場合には 検出信号が小さくなり検出性は低下することとなる しかし き裂が ECT コイルに対して充分に大きければ検出は可能である 現状では 深さ 0.5mm 以上のき裂は検出可能とされている 表面開口部が検出性に大きく影響するため アスペクト比等の内部の情報の影響は小さい 表面近傍の複雑性は 検出自体に大きな影響を及ぼさないものと考えられる M K H L K H L K H き裂長さ方向の信号変化を 12dB ドロップ指示長さ 信号消失指示長さ等を用いてプローブにあった長さ評価が行われている そのため き裂端部の検出信号変化を捉える必要がある 表面開口部が長さサイジングに大きく影響するため アスペクト比等の内部の情報の影響は大きくない き裂表面開口部の複雑な分岐構造は 長さサイジングに影響を及ぼすものの その誤差は大きくはない M K H M P M M P H 疲労割れに対しては プローブや試験条件が許すき裂深さ以内の範囲であればき裂深さはサイジング精度への影響は大きくない 応力腐食割れについては き裂深さ自体がサイジング精度に影響を及ぼすという報告はなく き裂の性状とあわせて今後議論を進めていく必要がある 開口部の長さに対して深さが大きなき裂については そもそも ECT の適用範囲外である可能性が大きい 応力腐食割れに対しては渦電流探傷信号からその形状を推定するという逆問題の不適切性は大きく人工スリットに対して開発されたアルゴリズムでは必ずしも正しい推定が可能であるとは限らないことは周知である M P M U H P M M H

25 検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 シナリオ / シーン 影響因子 現状認識 重要度 知識レベル 確信度 現状認識 重要度 知識レベル 確信度 現状認識 重要度 知識レベル 確信度 4 き裂周辺の応力状態 ( 分布 大きさ ) 残留応力の非破壊評価法については ニーズがあるもののニッケル基合金 オーステナイト系ステンレス鋼では Inconel718 のみが報告されている [1] ショットピーニングによる残留応力により導電率が数 % 程度変わることに着目し 渦電流試験法により評価するものであるが この程度の導電率の変化であれば探傷には影響はないものと考えられる L K H 残留応力の非破壊評価法については ニーズがあるもののニッケル基合金 オーステナイト系ステンレス鋼では Inconel718 のみが報告されている [1] ショットピーニングによる残留応力により導電率が数 % 程度変わることに着目し 渦電流試験法により評価するものであるが この程度の導電率の変化であれば探傷には影響はないものと考えられる L K H 残留応力の非破壊評価法については ニーズがあるもののニッケル基合金 オーステナイト系ステンレス鋼では Inconel718 のみが報告されている [1] ショットピーニングによる残留応力により導電率が数 % 程度変わることに着目し 渦電流試験法により評価するものであるが この程度の導電率の変化であれば探傷には影響はないものと考えられる L K H E. 乱れた渦電流が生じる磁場の変動 F. 変動磁場の検出 5 き裂内物質の状態 ( 腐食生成物の有無 疎密 ) 6 き裂の閉口状態 ( 密着性 ) とその分布 7 き裂の方向 ( 角度 ) 8 き裂の発生 進展に伴う母材の電磁特性の変化 開口部における酸化物等の腐食生成物の影響は小さいものと考えられる 開口部におけるき裂面の接触抵抗への影響は小さいものと考えられる L P H M P M 開口部における酸化物等の腐食生成物の影響は小さいものと考えられる 開口部におけるき裂面の接触抵抗への影響は小さいものと考えられる L P H M U M 開口部の影響が大きいので 影響は小さい L K H 開口部の影響が大きいので 影響は小さい L K H 安定なオーステナイトではない SUS304 については き裂進展に伴いき裂周辺にマルテンサイト相が生じ 渦電流信号に影響を及ぼすことが報告されている ただし 300 程度の実機温度環境においては マルテンサイト変態は生じないものと材料組織学上考えられている L P M 安定なオーステナイトではない SUS304 については き裂進展に伴いき裂周辺にマルテンサイト相が生じ 渦電流信号に影響を及ぼすことが報告されている ただし 300 程度の実機温度環境においては マルテンサイト変態は生じないものと材料組織学上考えられている L U M き裂内部における酸化物等の腐食生成物は き裂面における接触抵抗に影響を与えるものと考えられるが 系統的な調査はなされていない 閉口き裂は き裂面の接触抵抗に影響を与えるものと考えられるが その影響は大きくないとの報告がある 傾いたき裂に対する渦電流信号の影響については 多くの議論がなされている ( たとえば [1]) が 逆問題にまで踏み込んだ議論はない 安定なオーステナイトではないSUS304については き裂進展に伴いき裂周辺にマルテンサイト相が生じ 渦電流信号に影響を及ぼすことが報告されている ただし 300 程度の実機温度環境においては マルテンサイト変態は生じないものと材料組織学上考えられている 1 磁場の検出方式 ( サーチコイル 磁気センサー ) 通常では サーチコイルを用いて変動磁場を検出する 低周波の場合 検出信号は周波数に依存しない磁気センサーを利用することによって検出性を確保する また 極微小欠陥の検査に微小な磁気素子の利用は欠陥検出が良いという見解がある ただし サーチコイルと磁気センサーとを明確に比較した知見はない L P H 空間分解能が高い検出方式は 長さサイジングに有利であり また 微小欠陥の検出において 欠陥サイズに相当する大きさの検出センサーを使用することは欠陥検出に有利との見方がある M P H 磁気センサーを使用することによって低周波検査が可能となり より深いところの情報が得られ 深さサイジングに有利との見方がある H U M P M P M P M P H M H M H

26 検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 シナリオ / シーン 影響因子 2 検出コイル形状 ( 矩形 円形など ) 3 検出コイルの大きさ 4 検出コイル巻き線数 5 磁場検出成分 6 検出コイルリフトオフ 7 検出方式 ( 単一方式 / 自己比較方式 / 標準比較方式 ) 8 検出コイル構成 ( アレイ化など ) 現状認識 矩形であるか円形であるかによる本質的な差異は無い ( 通常はコイルを貫く磁束量で決まる ) 検出信号の空間分解能は実際には励磁コイルと検出コイルの大きさに依存することから検出性への影響は大きい 現状では 欠陥が極微小な場合を除いて 適切なプローブを選ぶことで対処が可能である 巻き数を増やすことによって 検出感度が上がる一方 探傷器回路により決まる適切なインピーダンス範囲となるように調整必要がある 励磁電流自身が生じる磁場を検出しないこと また検出磁場方向の選択によりエッジノイズ 溶接線ノイズなどのノイズ信号を検出しないことが理想である 適切な磁場成分を検出することによって き裂の検出性を向上させることが必要である リフトオフは小であることが望ましいが 表面へのならいの関係で あまりに小さい場合 リフトオフノイズの度合いが高くなる可能性がある 単一方式は対ノイズ性が悪く SN 比が低下する傾向があり 欠陥検出を利用する際注意すべきである 自己比較方式 ( 差動式 ) は温度ドリフトやリフトオフ ガタノイズなどの影響を受けにくくなるため 単一方式と比べ より安定した信号があらわれる ただし 差動ではき裂に対する方向性が発生することがある 複数の検出コイルを配置することにより 検出にかかる時間を短縮することが可能である また 一度の走査で多数の検出信号の情報を得られる 重要度 知識レベル 確信度 L K H H K H L K H H K H H K H H K H L M H 現状認識 矩形であるか円形であるかによる本質的な差異は無い ( 通常はコイルを貫く磁束量で決まる ) 長さサイジング精度は基本的に検出コイルの大きさによるものである 空間分解能がよい小型コイルを利用することによって長さサイジング精度はよくなると認識されている 巻き数の増加による感度向上とコイルサイズのキープのバランスをとる必要がある 重要度 知識レベル 確信度 L K H H K H L K H 長さサイジングに注目する場合 長さ方向による乱れ信号を測定することが理想である H P H リフトオフは小であることが望ましいが 表面へのならいの関係で あまりに小さい場合 リフトオフノイズの度合いが高くなる可能性がある 単一方式は対ノイズ性が悪く SN 比が低下する傾向があり 欠陥検出を利用する際注意すべきである 自己比較方式 ( 差動式 ) は温度ドリフトやリフトオフ ガタノイズなどの影響を受けにくくなるため 単一方式と比べ より安定した信号があらわれる ただし 差動ではき裂に対する方向性が発生することがある 複数の検出コイルを配置することにより 一度の走査で多数の検出信号が得られるが 長さサイジングに関して 検出コイルの間隔は長さサイジングに影響を与えないように注意すべきである M K H H K H L K H 現状認識 矩形であるか円形であるかによる本質的な差異は無い ( 通常はコイルを貫く磁束量で決まる ) 検出コイルは小さいほど空間 ( 表面 ) 分解能が増すが 深さサイジング精度への影響に関しての知見は少ない 巻き数を増やすことによって検出感度が上がり 周波数がより低くなっても ( 即ち より深く浸透する ) 信号が取られることがあるが ノイズ信号も大きくなることが予想される 深さサイジングに注目する場合 深さ方向の渦電流乱れによる変動磁場を検出すべきである また いくつかの成分の融合によるサイジング精度向上は予想されるが 現状は不明である リフトオフは小であることが望ましいが 表面へのならいの関係で あまりに小さい場合 リフトオフノイズの度合いが高くなる可能性がある 差動型では 局所的な変化があるところだけ信号が発生する ( 欠陥性状変化が無い箇処 たとえば 長い同じ深さ欠陥 に信号は現れない ) ため 欠陥性状に対応しなくなることがあり 欠陥深さサイジングする際にコイルの走査方向に注意すべきである 即ち 深さサイジングが要求される場合 き裂深さに対応できる信号をとるべきである 一つの励磁コイルに対して複数の検出コイルを配置することにより 同じ測定位置での複数の情報を得られる可能性がある 重要度 L K M P L K H U M P H P H P 知識レベル 確信度 H H H H M H M 9 検出対象磁場 4. き裂による渦電流の乱れ による磁場のみを検出信号とするのが理想である L K H 4. き裂による渦電流の乱れ による磁場のみを検出信号とするのが理想である L K H 4. き裂による渦電流の乱れ による磁場のみを検出信号とするのが理想である L K H

27 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 添付資料 2-2 影響因子 (Phenomena) A-1 励磁電圧強度 励磁電流強度 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 31 影響のメカニズ ム 現状の評価 渦電流探傷においては き裂信号は被検査体に誘導される渦電流強度に比例する また 雑音には被検査体に誘導される渦電流強度に比例するものと無関係なものの2 種類が存在する 被検査体に誘導される渦電流の強度は励磁コイルに流れる励磁電流に比例する また基本的には励磁電流は励磁電圧に比例するものである 被検査体に誘導される渦電流の強度に無関係なノイズに対する SN 比の確保という点で ある程度以上の励磁電圧 ( 電流 ) 強度を確保する必要がある き裂信号に対して線形に影響する き裂長さサイジングにおける情報量の増大をもたらすものではない き裂信号に対して線形に影響する き裂深さサイジングにおける情報量の増大をもたらすものではない ランキング評価重要度 評価 :M 根拠 :SN 比の確保のために重要なパラメータではあるが 通常は探傷器とプローブの仕様により決まっており 測定者が意図的に変更する必要に迫られることは少ない 評価 :L 根拠 : 励磁電圧強度 励磁電流強度はき裂長さサイジングにおける情報量の増大をもたらすものではない 評価 :L 根拠 : 励磁電圧強度 励磁電流強度はき裂長さサイジングにおける情報量の増大をもたらすものではない 知識レベル 評価 :K 根拠 : 自明 評価 :K 根拠 : 自明 評価 :K 根拠 : 自明 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 : H 評価 : H [1] 渦電流探傷試験 [I] [II] 非破壊検査協会 [2] 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low) 31 試験結果 解析結果 実機事例等の事実に基づく現状の知見を整理する

28 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) A-2 周波数 ( 単一周波数励磁の場合 ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 ランキング評価重要度 知識レベル 確信度 磁束密度の変化によって発生する電界は磁束密度の時間的な変化の割合に比例するので 磁束密度が時間に関して正弦波状に変化するときは 起電力もやはり正弦波状となるが その振 高周波を用いるほど空間分解能を高めることが出来る 原理的には高周波であるほどき裂長さサイジングには有利であるとは考えられるが 現実的な範囲であればプローブ位置決 励磁コイルが発生する磁界は導体内部に侵入するに従って減衰するが その程度を表す浸透深さは 周波数が高くなるほど浅くなる すなわち 試験体中の渦電流分布が狭い範囲に集中 幅は角周波数に比例する 従って 周波数が高ければ高いほど め精度等に比して 周波数の向上による著しい差異が生じない することとなる ( 表皮効果 ) また 浸透深さは試験体の導電 渦電流を誘導する力となる電界は強くなる 従って 周波数が高いほど渦電流は活発に流れる 逆に周波数が低ければ 渦電流は小さくなる 表面開口き裂の検出という観点からは一般的には大であるこ 率及び透磁率に大きく影響を受ける 高周波であるほど表層に渦電流が集中するため き裂深部の情報を抽出するためには低周波を用いる必要がある 定量的な議論は現状困難である とが望ましい ただしコイルインピーダンス 装置内部回路により実用上の上限下限が存在する 評価 :H 評価 :L 評価 :H 根拠 : 浅い開口き裂の検出には高周波励磁が必要である 根拠 : 他の因子 ( プローブサイズ プローブ位置決め精度等 ) 根拠 : 渦電流の浸透の度合いは周波数に大きく依存することか に比して特に重要視すべきものではない ら き裂深さサイジング精度に有意な影響を及ぼすもの であることは疑いようがない 評価 :K 評価 :K 評価 :P 根拠 : 定量的な知見が蓄積されているとは言い難いが 現状問 根拠 : 定量的な知見が蓄積されているとは言い難いが 現状問 根拠 : 非導電性のき裂に対しては 系統だってはいないものの 題なし 題なし ただし 従来の渦電流探傷法で用いられること 実験室のような理想条件下における探傷信号からのサ の少なかった 1kHz 以下の低周波 もしくは 1MHz 以上の イジング性については 多少の知識があるともいえる 高周波励磁を用いるのであれば 検討が必要となる可能 しかしながら き裂が導電性を有することにより き裂 性はある 深さによる探傷信号の変化の度合いは大きく異なった ものとなる ( 深さの影響が出づらくなる ) ため 導電性 のき裂に対するき裂サイジング性への影響については 不明 評価 :H 評価 : H 評価 : H [1] 渦電流探傷試験 [Ⅲ] 非破壊検査協会 [1] L. Janousek M. Alman M. Smetana The 15 th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics Napoli Italy 2012/09/ 参考文献 / 注釈 [2] N. Yusa H. Huang K. Miya. Numerical evaluation of the ill-posedness of eddy current problems to size cracks NDT&E international 40 (2007) 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

29 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) A-3 励磁周波数の数 ( 複数周波数励磁の場合 ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 多重周波数による渦電流探傷試験は異なる試験周波数によって得られた探傷信号について ノイズの振幅と位相とを一致させて差し引き 雑音を除去する方法である この場合 探傷信号におけるき裂信号とノイズの振幅及び位相が周波数によって異なれば ノイズを消去することにより き裂信号のみが残り SN 比は向上する 複数の周波数の信号を融合することで SN 比を向上させる事ができる可能性はある (SG 管の検査においては 複数の周波数の信号を用いることで ( 多重演算処理により ) 外部構造物の影響を除去することが行われている ) 現状多重周波数信号の融合による一般構造物のき裂の検出性向上に関する検討はほとんど行われていない 複数の周波数の信号を融合することで き裂長さに関する情報量を増大させる事ができる可能性はある 現状多重周波数信号の融合によるき裂長さサイジング精度向上に関する検討はほとんど行われていない き裂長さサイジングは実際には単一の周波数で行われるのが普通であり 実用上問題は生じていない 浸透深さの違う複数周波数の融合によりき裂サイジング精 度を高められる可能性が指摘されている 現状具体的な検討は殆ど行われていない 重要度 評価 :H 根拠 : 多重周波数信号の融合によりき裂の検出性を向上できる ( 典型的なノイズ信号を除去できる ) 可能性はある 評価 :M 根拠 : 多重周波数信号の融合によりき裂長さサイジング精度を向上できる可能性はある ただし 現状の単一周波数に基づく評価で実用上の問題は少ない 評価 :H 根拠 : 多重周波数信号の融合によりき裂深さサイジング精度を向上できる可能性はある ランキング評価知識レベル 評価 :U 根拠 : 現状多重周波数信号の融合によるき裂検出性の向上に関する検討はほとんど行われていない 評価 :U 根拠 : 現状多重周波数信号の融合によるき裂長さサイジング精度向上に関する検討はほとんど行われていない 評価 :U 根拠 : 現状多重周波数信号の融合によるき裂深さサイジング精度向上に関する検討はほとんど行われていない 確信度 参考文献 / 注釈 評価 : H 評価 : M 評価 : H [1] 渦電流探傷試験 [Ⅲ] 非破壊検査協会 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

30 影響因子 (Phenomena) 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 A-4 特殊励磁 ( 矩形波 パルス波など ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム ( 尚 励磁周波数を増やすことによる検出性への影響は 励磁周波数の数 にて評価するものである ) ランキング評価 現状の評価 矩形波とパルス波には複数の周波数成分が含まれることから 最終的に同期検波を行うのであれば複数周波数励磁と同一である 同期検波を行なわず 検出信号の評価を ( オシロスコープなどを用いて ) 時間領域で行う場合でも 基本的には周波数領域で信号を見るか時間領域で見るかの違いであり 原理的には差は無い ( 対象が磁性体でかつ励磁磁場が大である場合など 非線形性が発現しうる場合を除く ) 同期検波を用いないため SN 比という点での劣化を避ける事はできない よって 検出性は低下する ( 尚 励磁周波数を増やすことによる検出性への影響は 励磁周波数の数 にて評価するものである ) 最終的に同期検波を行うのであれば複数周波数励磁と同一である 同期検波を行なわず 検出信号の評価を( オシロスコープなどを用いて ) 時間領域で行う場合でも 基本的には周波数領域で信号を見るか時間領域で見るかの違いであり 原理的には差は無い ( 対象が磁性体でかつ励磁磁場が大である場合など 非線形性が発現しうる場合を除く ) 近年パルス励磁適用の報告例が多いが 複数の正弦波励磁に対する優位性について根拠のある説明はなく また定量的に比較した報告例も少ない 後者に関する数少ない報告例である下記参考文献 [1][2] は いずれもパルス励磁は複数の正弦波励磁に対して探傷速度以外の優位性はないと結論づけている 重要度 評価 :M 根拠 : 同期検波を行わないのであれば SN 比は劣化する ( 有意な影響がある ) 評価 :M 根拠 : 特殊励磁により得られた信号はいわば正弦波信号の融合であり き裂長さサイジング精度を向上できる可能性はある ただし 現状の単一周波数に基づく評価で実用上の問題は少ない 評価 :M 根拠 : 特殊励磁により得られた信号はいわば正弦波信号の融合であり き裂深さサイジング精度を向上できる可能性はある ただし 物理的根拠も不明瞭であることから 実質的に同一内容である A-3に関する検討を優先させるべきである 知識レベル 評価 :P 根拠 : 直接関わる評価データの公表例は無い ただし原理的には自明である 評価 :P 根拠 : パルス励磁と正弦波励磁の比較に関する報告例は少ないが 原理的には自明である 確信度評価 :H 評価 :H 評価 :H [1] M. Morozov GY. Tian Comparison of PEC and SFEC NDE techniques Nondestructive Testing and Evaluation 24 (2009) [2] M. Smetana L. Janousek Evaluation of inductance coil and fluxgate magnetometer under harmonic and pulsed 参考文献 / 注釈 excitations in ECT The 15 th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics Napoli Italy 2012/09/ 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

31 影響因子 (Phenomena) 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 B-2 励磁コイルの大きさ 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 ランキング評価重要度 知識レベル 励磁コイルの直径を大きくするほど コイルと導体の電磁誘 導的な相互作用が保たれる距離が長くなる すなわち 大きな コイルほど導体に対して反応する距離が長くなる これは 試 験コイルの直径が大きいほどコイルの周りの磁束密度分布が広 がるからである 小さいコイル程 それがつくる渦電流の分布 はコイル近傍に集中する傾向にある 検出信号の空間分解能 すなわち微細欠陥に対する検出性は 実際には励磁コイルと検出コイルの大きさに依存する 検出信号の空間分解能は通常は検出コイルの大きさから議論 されており 現状それで大きな問題点はない 評価 :H 根拠 : 実際には検出コイルと同様に影響は大きい 評価 :K 根拠 : 計算による予想が可能である 検出信号の空間分解能は実際には励磁コイルと検出コ イルの大きさに依存する 検出信号の空間分解能は通常は検出コイルの大きさか ら議論されており 現状それで大きな問題点はない 評価 :H 根拠 : 実際には検出コイルと同様に影響は大きい 評価 :K 根拠 : 計算による予想が可能である メカニズムは現状不明 励磁コイルが大であるほど良いとも言われているが 現状評価 に足る十分な知見の蓄積はない 評価 :M 根拠 : 深いき裂のサイジング報告において用いられているプロー 評価 :U 確信度評価 :H 評価 :H 評価 :M 参考文献 / 注釈 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) ブは励磁コイルが大である傾向があり き裂深さサイジン グ精度における重要な因子である可能性は否定出来ない 根拠 : 現状十分な知見の蓄積はない ただし 例えばき裂深さサ イジング精度の評価基準として表層における渦電流強度と 材料深部における渦電流強度の比を採用するのであれば 一般的な形状の励磁コイルが誘導する渦電流の解析解は導 出されており [1][2[3] また有限要素法等の数値解析技術 も確立されていることから 今後比較的容易に本因子の影 響度合いを評価することができるとも考えられる [1] 渦電流探傷試験 [Ⅲ] 非破壊検査協会 [1] Dodd CV and Deeds WE 1968 Analytical solutions of 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low) eddy-current probe-coil problems Journal of Applied Physics 39(6) [2] Bowler JR 1987 Eddy current calculations using half-space Green s function Journal of Applied Physics 61(3) [3] Theodoulidis TP Kriezis EE 2002 Impedance evaluation of rectangular coils for eddy current testing of planar media NDT&E International

32 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) B-4 励磁コイル配置 ( 対向 / 垂直 ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 ランキング評価重要度 知識レベル 確信度 き裂検出時の主要なノイズの一つがリフトオフノイズであるが 励磁コイルを垂直とすることで 検査対象とプローブの電磁気的結合の度合いが減少し ひいては有意にリフトオフノイズが低減することになる 垂直の励磁コイルを有するプローブはリフトオフノイズに対する SN 比という観点で有利である 直接的なき裂長さサイジングという観点からは き裂端部で探傷信号が得られるようなコイル配置が望ましい ただしこれは励磁コイルだけではなく検出コイルの位置にも依存するものである き裂端部で探傷信号が得られるコイル配置の場合 なだらかな輪郭のき裂に対しては信号が得づらく また深さが急激に変化するき裂では端部以外でも信号が発生するため 実際のき裂に対してはどちらが有利かということは ( き裂性状に依存するため ) 不明 メカニズムは現状不明 現状評価に足る十分な知見の蓄積はない 評価 :H 評価 :H 評価 :H 根拠 : プローブのリフトオフ変化に起因するノイズの増減に 根拠 : 励磁コイルの配置により 探傷信号が得られる ( き裂信 根拠 : 励磁コイルの配置により 探傷信号が得られる ( き裂信 影響を与える 号が最大化する ) 位置は変化する よって信号に含まれ 号が最大化する ) 位置は変化する よって信号に含まれ るき裂長さに関する情報量も変化するはずである るき裂深さに関する情報量も変化するはずである 評価 :K 評価 :P 評価 :U 根拠 : コイルを対向 / 垂直とした場合のリフトオフ変化に対 根拠 : き裂端部にて探傷信号が得られるのであれば 一般的に 根拠 : 現状知見の蓄積はない する渦電流分布の変化は既に解析解が得られている はき裂長さサイジングにおいて有利と考えられる ただ [1][2] き裂信号がどのように変化するのかについて し 上述の通り輪郭形状が複雑な実際のき裂の場合は も 有限要素法解析により個別に対応可能である これはかえって信号の解釈を複雑化する可能性もあり 現状統一的見解は得られていない 評価 :H 評価 :H 評価 :H [1] Dodd CV and Deeds WE 1968 Analytical solutions of eddy-current probe-coil problems Journal of Applied Physics 39(6) [2] Bowler JR 1987 Eddy current calculations using half-space Green s function Journal of Applied 参考文献 / 注釈 Physics 61(3) [3] Theodoulidis TP Kriezis EE 2002 Impedance evaluation of rectangular coils for eddy current testing of planar media NDT&E International 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

33 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) B-5 励磁コイルリフトオフ 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 ランキング評価重要度 知識レベル リフトオフが大きくなると試験体の渦電流は低下し 検出信号も小さくなる き裂信号を大とすることが目的であるならば リフトオフは小であることが望ましい ただし リフトオフが小であるほど 僅かなリフトオフ変化により発生するノイズが大となる 対象に応じた適切な選択が必要( ただし実際にはプローブを対象に押し当てて検査を行うことが多く 詳細検討の必要性は小さい ) 評価 :H 根拠 : リフトオフノイズは主要ノイズの一つであり リフトオフノイズの低減はき裂検出性向上のために肝要である 評価 :K 根拠 : どの程度までリフトオフを大とすることが出来るのかについては 系統だった知見は得られていない プローブを被検査体に近づけるほど空間分解能は向上するため き裂サイジング精度という観点からはリフトオフは小であることが望ましい 現状知見の蓄積はない 評価 :H 根拠 : リフトオフは空間分解能に影響を与える 評価 :P 根拠 : プローブリフトオフによるき裂長さ / 深さサイジング精度については系統だった知見は無い ただし 実際にはプローブサイズ等他の要因と複雑に絡み合ったものであると考えられる 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :H 評価 :H [1] 渦電流探傷試験 [Ⅲ] 非破壊検査協会 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

34 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) B-6 励磁コイル構成 ( アレイ化など ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 アレイ化によるメリットは走査速度の向上であり 純粋な意味では検出信号に対する影響はない ( アレイ化されたコイル間の不感帯の影響はあるが それは単一コイルの場合の走査線間隔と等価である ) 基本的には単一コイルの各走査点における信号を用いた評価と同じである [1] 走査速度以外の観点からは励磁コイルをアレイ化する必要は無い アレイ化によるメリットは走査速度の向上であり 純粋な意味では検出信号に対する影響はない ( アレイ化されたコイル間の不感帯の影響はあるが それは単一コイルの場合の走査線間隔と等価である ) 基本的には単一コイルの各走査点における信号を用いた評価と同じである [1] き裂長さサイジング精度に影響を与えない アレイ化によるメリットは走査速度の向上であり 純粋な意味では検出信号に対する影響はない ( アレイ化されたコイル間の不感帯の影響はあるが それは単一コイルの場合の走査線間隔と等価である ) 基本的には単一コイルの各走査点における信号を用いた評価と同じである [1] き裂深さサイジング精度に影響を与えない ただし 複数の励磁コイルによる渦電流分布を重ね合わせることによる情報量増大の可能性が指摘されてもいる [2 3] 重要度 評価 :L 根拠 : 本質的な影響はない ただし 不感帯については要検討 [1] 評価 :L 根拠 : 本質的な影響はない 評価 :H 根拠 : 本質的な影響はない ただし 複数の励磁コイルによる渦電流分布を重ね合わせることによる情報量増大の可能性が指摘されてもいる [2 3] ランキング評価知識レベル 評価 :K 根拠 : 単一コイルの場合と同等 評価 :K 根拠 : 単一コイルの場合と同等 評価 :P 根拠 : 単一コイルの場合と同等 ただし複数の励磁コイルによる渦電流分布を重ね合わせることによる情報量増大手法については未解明な点が多い 確信度 評価 :H 評価 :H 評価 :M [1] H. Huang N. Sakurai T. Takagi T. Uchimoto Design of eddy-current array probe for crack sizing in steam generator tubes NDT&E International 36 (2003) 参考文献 / 注釈重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low) [1] H. Huang N. Sakurai T. Takagi T. Uchimoto Design of eddy-current array probe for crack sizing in steam generator tubes NDT&E International 36 (2003) [1] H. Huang N. Sakurai T. Takagi T. Uchimoto Design of eddy-current array probe for crack sizing in steam generator tubes NDT&E International 36 (2003) [2] L. Janousek K. Capova N. Yusa K. Miya Multiprobe inspection for enhancing sizing ability in eddy current nondestructive testing IEEE Transactions on Magnetics [3] 遊佐訓孝 Ladislav Janousek 宮健三. 導体内部交流電流分布制御によるき裂深さ定量的評価の試み- 実験的検証 非破壊検査 55 (10) (2006)

35 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) C-1 電気的不均一性 ( 母材 ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 導電率と透磁率は渦電流の表皮効果と試験コイルのインピ ーダンスに影響を与えるが 母材での導電率 透磁率のばら つきは小さく 欠陥の検出に影響することはない [1] 母材での導電率 透磁率のばらつきは小さく 欠陥の長さサイ ジングへの影響は小さい [1] 文献 [1] にあるように 母材での導電率 透磁率のばらつきは小さいが 欠陥の深さサイジングに渦電流探傷を適用する場合 高度に微弱な電磁場の変化を計測する必要があり 深さサイジングという観点で十分な知識が得られているとは言えない 重要度 評価 :L 根拠 : 電気的均一性の乱れが検出性に影響することは少ないという十分な知見が得られており 検出性という観点からの重要度は小さい 評価 :L 根拠 : 電気的均一性の乱れが長さサイジングに影響することは少ないという十分な知見が得られており 長さサイジングという観点からの重要度は小さい 評価 :M 根拠 : 深さサイジングでは 高度に微弱な電磁気特性の計測を必要とするので 電気的均一性の乱れが影響しないと断言することはできないので M 評価とした ランキング評価知識レベル 評価 :K 根拠 : 電気的均一性の乱れが検出性に影響することは少ないという実験結果が文献により示されており 知識としても十分である 評価 :K 根拠 : 電気的均一性の乱れが長さサイジングに影響することは少ないという実験結果が文献により示されており 知識としても十分である 評価 :P 根拠 : 深さサイジングでは 高度に微弱な電磁気特性の計測を必要とするので 電気的均一性の乱れの深さサイジングへの影響度合いは明らかになっていない 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :H 評価 :M 浅ければ出来るかもしれない [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉内構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

36 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) C-2 溶接の有無 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 文献 [1] にあるように 溶接部での導電率 透磁率のばらつきは小さく 溶接金属内での検出に問題はないが 母材と溶接部内での導電率の違いは明白で 両者の境界に欠陥が存在する場合の検出性は明らかではない 文献 [1] にあるように 溶接部での導電率 透磁率のばらつきは小さく 溶接金属内での長さサイジングに問題はないが 母材と溶接部内での導電率の違いは明白で 両者の境界にき裂端部が存在する場合 その端部の検出 ( 長さサイジング ) は明らかではない 文献 [1] にあるように 溶接部での導電率 透磁率のばらつきは小さいが 欠陥の深さサイジングに渦電流探傷を適用する場合 高度に微弱な電磁場の変化を計測する必要があり 深さサイジングという観点で十分な知識が得られているとは言えな い ランキング評価重要度 評価 :M 根拠 : 溶接部内では 電気的均一性の乱れが検出性に影響することは少ないという知見が得られているが 母材との境界での電気的特性の違いが 検出性を阻害する可能性があるので 重要度 Mとした 評価 :M 根拠 : 溶接部内では 電気的均一性の乱れが検出性に影響することは少ないという知見が得られているが 母材との境界での電気的特性の違いが 長さサイジングを阻害する可能性があるので 重要度 Mとした 評価 :H 根拠 : 深さサイジングでは 高度に微弱な電磁気特性の計測を必要とするので 母材と溶接金属の間の電気的特性の違いが影響する 影響度合いの評価にはいろいろな課題が予想されるので H 評価とした 知識レベル 評価 :P 根拠 : 溶接部内では 電気的均一性の乱れが検出性に影響することは少ないという知見が得られているが 母材との境界での電気的特性の違いが検出性に与える影響は明らかでないので 知識レベルPとした 評価 :P 根拠 : 溶接部内では 電気的均一性の乱れが検出性に影響することは少ないという知見が得られているが 母材との境界での電気的特性の違いが長さサイジングに与える影響は明らかでないので 知識レベルPとした 評価 :U 根拠 : 深さサイジングでは 高度に微弱な電磁気特性の計測を必要とするので 電気的均一性の乱れ 特に 母材と溶接部境界での深さサイジングへの影響度合いは明らかになっていない 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :H 評価 :M 知識があるかもしれない [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉内構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

37 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) C-3 表面粗さ 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズムる ( 文献 [1]) 現状の評価重要度ランキング評価知識レベル 確信度 参考文献 / 注釈 表面粗さが大きくなると見かけ上の導電率が下がるが 検出信号に影響を与えることはほとんどない ( 文献 [1]) 表面粗さが大きくなると見かけ上の導電率が下がるが 長さサイジングに影響を与えることはほとんどない ( 文献 [1]) 表面粗さが大きくなると見かけ上の導電率が下がる 微弱な電磁気特性の変化を計測する深さサイジングには影響がありう 評価 :M 評価 :M 評価 :H 根拠 : 表面粗さは 検出器と欠陥の間の距離の変化を通して 根拠 : 表面粗さは 検出器と欠陥の間の距離の変化を通して検 根拠 : 表面粗さは 検出器と欠陥の間の距離の変化を通して検 検出信号の強さに影響する 実際の欠陥発生場所の表 出信号の強さに影響する 実際の欠陥発生場所の表面状 出信号の強さに影響する 深さサイジングでは微弱な渦 面状況と探傷プローブの形状に応じて影響度合いが違 況と探傷プローブの形状に応じて影響度合いが違うの 電流計測を必要とするので その影響度合いは大きいと うので 評価をMとした で 評価をMとした 考えられるため 評価をHとした 評価 :P 評価 :P 評価 :P 根拠 : 実際の欠陥発生場所の表面状況と探傷プローブの形状 根拠 : 実際の欠陥発生場所の表面状況と探傷プローブの形状に 根拠 : 実際の欠陥発生場所の表面状況と探傷プローブの形状に に応じて影響度合いが違うが 多様なプローブでこの 応じて影響度合いが違うが 多様なプローブでこの影響 応じて影響度合いが違うが 多様なプローブでこの影響 影響度合いがすべて明らかになっているわけではない 度合いがすべて明らかになっているわけではないので 度合いがすべて明らかになっているわけではないので ので 評価をPとした 評価をPとした 評価をPとした 評価 :M 重要度レベルが Lかもしれない 評価 :M 重要度レベルが Lかもしれない 評価 :M 重要度レベルが Lかもしれない [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉内構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

38 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) C-4 表面形状 ( うねり 凹凸 ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 探傷プローブのサイズより大きいサイズでのうねりに関しては検出性の問題はない 探傷プローブと同等ないしより小さいサイズのうねりに対しては 検出感度に影響するが 具体的なプローブとうねりの形状がわからないと影響因子は評価できない ( 文献 [1 2]) 探傷プローブのサイズより大きいサイズでのうねりに関しては長さサイジングの問題はない 探傷プローブと同等ないしより小さいサイズのうねりに対しては サイジング精度に影響するが 具体的なプローブとうねりの形状がわからないと影響因子は評価できない ( 文献 [1 2]) 探傷プローブのサイズより大きいサイズでのうねりに関しては深さサイジングの問題はない 探傷プローブと同等ないしより小さいサイズのうねりに対しては サイジング精度に影響するが 具体的なプローブとうねりの形状がわからないと影響因子は評価できない ( 文献 [1 2]) 重要度 評価 :M 根拠 : うねりは 検出器と欠陥の間の距離の変化を通して検出信号の強さに影響する 実際の欠陥発生場所の表面状況と探傷プローブの形状に応じて影響度合いが違うので 評価をMとした 評価 :M 根拠 : うねりは 検出器と欠陥の間の距離の変化を通して長さサイジング精度に影響する 実際の欠陥発生場所の表面状況と探傷プローブの形状に応じて影響度合いが違うので 評価をMとした 評価 :M 根拠 : うねりは 検出器と欠陥の間の距離の変化を通して深さサイジング精度に影響する 実際の欠陥発生場所の表面状況と探傷プローブの形状に応じて影響度合いが違うので 評価をMとした ランキング評価知識レベル 評価 :P 根拠 : 実際の欠陥発生場所の表面状況と探傷プローブの形状に応じて影響度合いが違うが 多様なプローブでこの影響度合いがすべて明らかになっているわけではないので 評価をPとした 評価 :P 根拠 : 実際の欠陥発生場所の表面状況と探傷プローブの形状に応じて影響度合いが違うが 多様なプローブでこの影響度合いがすべて明らかになっているわけではないので 評価をPとした 評価 :P 根拠 : 実際の欠陥発生場所の表面状況と探傷プローブの形状に応じて影響度合いが違うが 多様なプローブでこの影響度合いがすべて明らかになっているわけではないので 評価をPとした 確信度 評価 :H 評価 :H 評価 :M 参考文献 / 注釈 [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉内構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 [2] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 容器貫通部狭隘部の非破壊検査技術実証に関する事業報告書 H21 年 [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉内構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 [2] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 容器貫通部狭隘部の非破壊検査技術実証に関する事業報告書 H21 年 [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉内構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 [2] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 容器貫通部狭隘部の非破壊検査技術実証に関する事業報告書 H21 年 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

39 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) C-5 酸化被膜 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 表面の酸化被膜は極薄い領域であり 見かけ上の導電率は変化するが き裂信号が大きく変化する要因ではない 従って き裂の検出性への影響は少ないといえる 文献 [1] で記載されている各種試験結果でも 酸化被膜によって検出が阻害されたという報告はない 表面の酸化被膜は極薄い領域であり 見かけ上の導電率は変化するが き裂信号が大きく変化する要因ではない 従って き裂の長さサイジングの影響は少ないといえる 文献 [1] で記載されている各種試験結果でも 酸化被膜によって長さサイジングが阻害されたという報告はない 表面の酸化被膜は極薄い領域であり 見かけ上の導電率は変化するが き裂信号が大きく変化する要因ではない 従って き裂の深さサイジングの影響は少ないといえる 文献 [1] で記載されている各種試験結果では 酸化被膜によって深さサイジングが阻害されたという報告はない 重要度 評価 :L 根拠 : 酸化被膜の検出性への影響は少ないということから 評価 Lとした 評価 :L 根拠 : 酸化被膜の長さサイジングへの影響は少ないということから 評価 Lとした 評価 :L 根拠 : 酸化被膜の深さサイジングへの影響は少ないということから 評価 Lとした ランキング評価知識レベル 評価 :P 根拠 : 酸化被膜の検出性への影響は少ないが 全ての酸化被膜の状況が調べられているわけではないので 知識レベルをPとした 評価 :P 根拠 : 酸化被膜の長さサイジングへの影響は少ないが 全ての酸化被膜の状況が調べられているわけではないので 知識レベルをPとした 評価 :P 根拠 : 酸化被膜の深さサイジングへの影響は少ないが 全ての酸化被膜の状況が調べられているわけではないので 知識レベルをPとした 確信度 評価 :H 評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉 内構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉内 構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉内 構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

40 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) C-7 表面曲率半径 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 文献 [1] で記載されている各種試験結果では 表面曲率半径に応じた探傷プローブを用いることで き裂の検出は問題なくされている 文献 [1] で記載されている各種試験結果では 表面曲率半径に応じた探傷プローブを用いることで き裂の長さサイジングは問題なくされている 文献 [1] で記載されている各種試験結果では 深さサイジングそのものに課題が残っており 新しいプローブの開発などによる深さサイジング高精度化や 浅い欠陥のみを対象とした深さサイジングなど 今後の研究要素が残されている 重要度 評価 :L 根拠 : 表面曲率半径に応じたプローブを用いることで検出できるので Lとした 評価 :L 根拠 : 表面曲率半径に応じたプローブを用いることでサイジングできるので Lとした 評価 :L 根拠 : 表面曲率半径に応じたプローブを用いることで 曲率自体の問題は回避できるので Lとした ランキング評価知識レベル 評価 :K 根拠 : 表面曲率については十分な知識があるので Kとした 評価 :K 根拠 : 表面曲率については十分な知識があるので Kとした 評価 :P 根拠 : 表面曲率については十分な知識があるが 深さサイジングへの影響までは明らかになっていないので Pとした 確信度 評価 :H 評価 :H 評価 :M 参考文献 / 注釈 [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉 内構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉内 構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 [1] ( 独 ) 原子力安全機構基盤 (JNES) 成果報告書 NNW( 炉内 構造物等特殊材料溶接部検査技術調査 ) 事業報告書 H15 年 ~H20 年 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

41 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) D-1 き裂寸法 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 き裂幅 長さ 深さは検出信号の振幅と位相に影響をもたらす そのため き裂が小さい場合には 検出信号が小さくなり検出性は低下することとなる しかし き裂が ECT コイルに対して充分に大きければ検出は可能である 現状では 深さ 0.5mm 以上のき裂は検出可能とされている き裂長さ方向の信号変化を 12dB ドロップ指示長さ 信号消失指示長さ等を用いてプローブにあった長さ評価が行われている そのため き裂端部の検出信号変化を捉える必要がある き裂長さ方向のプローブの走査間隔が広いと誤差は大きくなる また き裂が ECT コイルに対して非常に小さい時に長さサイジング精度が低下する影響が考えられる 渦電流の流路は試験体中で閉じている 流路の途中に長く浅い開口き裂があった場合 渦電流は長さ方向に回り込むよりも抵抗が小さいき裂の低部を通って閉回路を形成する また き裂が深くて長さが短ければ 渦電流は深さ方向に回るよりも抵抗が小さい長さ方向に回り込んで通る 従って き裂深さを評価する場合 得られた信号にはき裂深さ 長さの影響が含まれて変化していることを考慮しなければならない 疲労割れに対しては プローブや試験条件が許すき裂深さ以内の範囲であればき裂深さはサイジング精度への影響は大きくない [1] 応力腐食割れについては き裂深さ自体がサイジング精度に影響を及ぼすという報告はなく き裂の性状とあわせて今後議論を進めていく必要がある 重要度 評価 :M 根拠 : き裂の幅 長さ 深さは検出信号に影響を与える要因であるが 現状はき裂深さ 0.5mm 以上で検出が可能である 評価 :M 根拠 : き裂が ECT コイルに対して小さい場合に長さサイジング精度の低下が考えられるが [1] においては大きな影響ではない 評価 : M 根拠 : 応力腐食割れについては き裂深さ自体が深さサイジング精度に影響を及ぼすという報告はないが その影響度について今後検討する必要がある ランキング評価知識レベル 評価 :K 根拠 : 一部のプローブについては 国プロを通して十分に検討されている [1] 評価 :K 根拠 : 一部のプローブについては 国プロを通して十分に検討されており [1] 規格化されている[2] 評価 :P 根拠 : 疲労割れについては 文献 [1] により報告されているものの 応力腐食割れについては今後検討が必要である 確信度 評価 :H 評価 :H 評価 :M 参考文献 / 注釈 [1] 平成 20 年度ニッケル基合金溶接部の非破壊検査技術実証に関する事業報告書 ( 原子力安全基盤機構 ) [2] 原子力発電所用機器における渦電流探傷試験指針 JEAG ( 日本電気協会原子力規格委員会 ) [1] W.Cheng I. Komura M. Shiwa and K. Kanemoto Eddy current examination of fatigue cracks in Inconel welds Journal of Pressure Vessel Technology 129 pp (2007) 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

42 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) D-2 き裂の 2 次元形状 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 き裂の検出は き裂による試験体表面近傍の渦電流の乱れを検出することである そのため き裂が表面近傍に存在する限りは その形状が検出性に大きな影響を与えるものではない アスペクト比によりき裂端部付近の深さが変化することにより検出信号に影響を与えることが考えられる EDM ノッチと SCC を比較した場合 12dB ドロップ指示長さと EDM ノッチ長さは良好な関係であったが SCC 長さは短く評価されている [1] また SCC でき裂が内部で広がっている場合に 正確な長さサイジングが出来ない可能性がある 開口部の長さに対して深さが大きなき裂 ( 渦電流の浸透深さによる検出信号の飽和状態 ) については そもそもECTの適用範囲外である可能性が大きい アスペクト比による適用限界については 系統的な議論はなく 今後検討が必要である 重要度 評価 : L 根拠 : き裂形状が検出性に与える影響は小さい 評価 : M 根拠 : き裂端部の形状が長さ評価に影響を与える可能性がある 評価 : M 根拠 : き裂形状 ( アスペクト比など ) が深さサイジング精度に及ぼす影響度について今後検討する必要がある ランキング評価知識レベル 評価 :K 根拠 : 自明 評価 :P 根拠 : 国プロを通して一部検討されている [1] 評価 :U 根拠 : き裂形状 ( 特にアスペクト比 ) と深さサイジングの関係を議論した論文は見当たらない 確信度 参考文献 / 注釈 評価 :H 評価 :M 評価 :M [1] 平成 20 年度ニッケル基合金溶接部の非破壊検査技術実証 に関する事業報告書 ( 原子力安全基盤機構 ) 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

43 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) D-3 き裂 3 次元性状 ( き裂面の 3 次元形状 ファセット寸法 分岐 ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 き裂の検出は き裂による試験体表面近傍の渦電流の乱れを 検出することである そのため き裂が表面近傍に存在する限 りは き裂性状が検出性に大きな影響を与えるものではない き裂端部の表面開口部の複雑な分岐構造は 検出信号に変化もたらし長さサイジングに影響を及ぼすものと考えられる き裂表面開口部の複雑な分岐構造を正確に評価するためのプローブと信号処理の検討を注意深く行う必要がある き裂性状が複雑な応力腐食割れに対しては渦電流探傷信号からその形状を推定するという逆問題の不適切性は大きく人工スリットに対して開発されたアルゴリズムでは必ずしも正しい推定が可能であるとは限らないことは周知である また 文献 [1] [2] 等でき裂の3 次元的形状を評価するという試みも行われているが モデルの議論にとどまり 実際のき裂の性状との比較まで至っていない 重要度 評価 :L 根拠 : き裂性状が検出性に与える影響は少ない 評価 :M 根拠 : き裂性状は長さサイジングに影響を及ぼす可能性があるが その影響は大きくないと考えられる 評価 :H 根拠 : き裂の分岐 ファセットなどのき裂性状は深さサイジングに大きな影響を与える ランキング評価知識レベル 評価 :K 根拠 : 自明 評価 :P 根拠 : 報告書 [1] においては 応力腐食割れの複雑な表面開口部のモデル化 評価のための信号処理法等が検討されているが データの蓄積が必要である 評価 :P 根拠 : 文献 [2] [3] 等でき裂の3 次元的形状を評価するという試みも行われているが モデルの議論にとどまっている 確信度 評価 :H 評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] 平成 14 年度革新的実用原子力技術開発費補助事業 ( エネ ルギー総合理工研究所 ) 構造物適応型の電磁誘導非破壊検 査システムの実用化開発 成果報告書 [2] D. Premel A. Baussard. Eddy-current evaluation of three-dimensional flaws in flat conductive material using a Bayesian approach. Inverse Problems 18 (2002) [3] DD. Reis M. Lambert D. Lesselier. Eddy-current evaluation of three-dimensional defects in a metal plate. Inverse Problems 18 (2002) 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

44 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) D-5 き裂内物質の状態 ( 腐食生成物の有無 疎密 ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 き裂内物質は き裂内部における酸化物等の腐食生成物などが考えられ それらはき裂内の接触抵抗 導電率に変化をもたらすが 検出性への影響は小さい き裂内物質は き裂内部における酸化物等の腐食生成物などが考えられ それらはき裂内の接触抵抗に変化をもたらすが き裂長さサイジング精度への影響は小さい き裂内部における酸化物等の腐食生成物は き裂面における接触抵抗に影響を与えるものと考えられるが 系統的な調査はなされていない 文献 [1] において 酸化物によりき裂の渦電流信号が変化することが報告されている 重要度 評価 :L 根拠 : き裂内物質の状態は 導電率の変化をもたらすと考えられるが 検出性に影響を与えるものではない 評価 : L 根拠 : き裂内物質の状態は 導電率の変化をもたらすと考えられるが 長さサイジングに影響を与えるものではない 評価 :H 根拠 : き裂内部における酸化物等の腐食生成物は き裂面における接触抵抗に変化をもたらし 深さサイジングに大きく影響を与える ランキング評価知識レベル 評価 :P 根拠 : 実機条件における酸化物の種類と量を含む系統的な調査が必要である 評価 :P 根拠 : 実機条件における酸化物の種類と量を含む系統的な調査が必要である 評価 :U 根拠 : 酸化物と深さサイジングとの関係を議論した論文は見当たらない 確信度 評価 :H 評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] T. Uchimoto T. Takagi K. Ohtaki Y. Takeda and A. Kawakami Electromagnetic Modeling of Fatigue Cracks in Plant Environment for Eddy Current Testing International Journal of Applied Electromagnetics and Mechanics in press. [1] T. Uchimoto T. Takagi K. Ohtaki Y. Takeda and A. Kawakami Electromagnetic Modeling of Fatigue Cracks in Plant Environment for Eddy Current Testing International Journal of Applied Electromagnetics and Mechanics in press. 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

45 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) D-6 き裂の閉口状態 ( 密着性 ) とその分布 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 閉口き裂ではき裂面の接触により抵抗が変化するが検出性へ影響は小さいものと考えられる き裂の閉口状態ではき裂面の接触により抵抗が変化するが長さサイジングへ影響は小さいものと考えられる 閉口き裂は き裂面の接触抵抗に影響を与えるものと考えられるが 深さサイジングへの影響は大きくないとの報告がある 現実的な閉口圧の範囲で影響度のデータの蓄積が必要である 重要度 評価 :M 根拠 : き裂閉口状態は検出性に影響を及ぼす可能性があるが その影響は明らかではなく 今後調査の必要がある 評価 : M 根拠 : き裂閉口状態は長さサイジング精度に影響を及ぼすが その影響は明らかではなく 今後調査の必要がある 評価 :M 根拠 : き裂閉口状態は深さサイジング精度に影響を及ぼすが その影響は大きくない ランキング評価知識レベル 評価 :P 根拠 : 文献 [1] において 応力腐食割れ 疲労割れについてのき裂閉口による信号の影響は大きくはないとの報告があるが データの蓄積が必要である 文献 [2] では アルミ合金について 閉口圧が信号に及ぼす影響が議論されている 評価 :U 根拠 : 閉口状態と長さサイジングとの関係を議論した論文は見当たらない 評価 :P 根拠 : 文献 [1] において 応力腐食割れ 疲労割れについてのき裂閉口による信号の影響は大きくはないとの報告があるが データの蓄積が必要である 文献 [2] では アルミ合金について 閉口圧が信号に及ぼす影響が議論されている 確信度 評価 :M 重要度レベルが L の意見もある 評価 :M 重要度レベルが L の意見もある 評価 :M 重要度レベルが L の意見もある 参考文献 / 注釈 [1] N. Yusa S. Perrin K. Mizuno Z. Chen and K. Miya Eddy current inspection of closed fatigue and stress corrosion cracks Meas. Sci. Technol. Vol. 18 (2007) pp [2] A. Rosell G. Persson Finite element modelling of closed cracks in eddy current testing International Journal of Fatigue Vol. 41 (2012) pp [1] N. Yusa S. Perrin K. Mizuno Z. Chen and K. Miya Eddy current inspection of closed fatigue and stress corrosion cracks Meas. Sci. Technol. Vol. 18 (2007) pp [2] A. Rosell G. Persson Finite element modelling of closed cracks in eddy current testing International Journal of Fatigue Vol. 41 (2012) pp 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

46 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) D-7 き裂の方向 ( 深さ方向の角度 ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 深さ方向に傾いたき裂は 深部で渦電流の変化をもたらすが 表面近傍での影響は少なく 検出性への影響は小さい 深さ方向に傾いたき裂は 深部で渦電流の変化をもたら すが 表面近傍での影響は少なく 検出性への影響は小さ い 深さ方向に傾いたき裂は 深部で渦電流の変化をもたらすと考えられる 深さ方向に傾いたき裂に対する渦電流信号の影響については 多くの議論がなされている ( たとえば [1]) が 逆問題にまで踏み込んだ議論はない き裂の傾きを考慮に入れた際の逆問題の不適切性を議論する必要がある 重要度 評価 :L 根拠 : き裂の深さ方向の傾きは 検出性に影響を与えるものではない 評価 :L 根拠 : き裂の深さ方向の傾きは 検出性に影響を与えるものではない 評価 : M 根拠 : 深さ方向に傾いたき裂は 深部で渦電流の変化をもたらすため 深さサイジングに影響を及ぼすと考えられる ランキング評価知識レベル 評価 :K 根拠 : 国プロにおいても検討がなされている 評価 :K 根拠 : 国プロにおいても検討がなされている 評価 :P 根拠 : モデルの議論はあるが き裂の傾きと逆問題解析との関係を議論した論文は見当たらない 確信度 評価 :H 評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] 平成 20 年度ニッケル基合金溶接部の非破壊検査技術実証 に関する事業報告書 ( 原子力安全基盤機構 ) [1] 平成 20 年度ニッケル基合金溶接部の非破壊検査技術実 証に関する事業報告書 ( 原子力安全基盤機構 ) [1] Ph. Beltrame and N. Burais Generalization of the Ideal Crack Model in Eddy-Current Testing IEEE trans. on magnetics Vol. 40 (2004) pp 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

47 ランキング評価渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) D-8 き裂の発生 進展に伴う母材の電磁特性の変化 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 安定なオーステナイトではない SUS304 については き裂進展に伴いき裂周辺にマルテンサイト相が生じ 渦電流信号に影響を及ぼすことが報告されている [1] ただし 300 程度の実機温度 環境においては マルテンサイト変態は生じないものと材料組織学上考えられているが その反証も報告されており今後注意深く検討を行う必要がある 重要度 評価 :L 根拠 : 安定なオーステナイトではない SUS304 については き裂の発生 進展に伴う母材の電磁気的変化は検出性へ影響を及ぼすが その影響度は明らかではない 評価 :L 根拠 : 安定なオーステナイトではない SUS304 については き裂の発生 進展に伴う母材の電磁気的変化は長さサイジング精度へ影響を及ぼす可能性があるが そのメカニズムと影響度は今後検討する必要がある 評価 :M 根拠 : 安定なオーステナイトではない SUS304 については き裂の発生 進展に伴う母材の電磁気的変化は深さサイジング精度へ影響を及ぼす可能性があり 今後系統的に調査する必要がある 知識レベル 評価 :P 根拠 : 文献 [1] では き裂進展に伴う磁性層を検出に用いる目的で行われた研究であり 逆に検出性を向上させる可能性はある 評価 :P 根拠 : き裂進展に伴う磁性層が長さサイジングに及ぼす影響を議論した論文は見当たらない 評価 :P 根拠 : 文献 [3] において 室温でのき裂進展に伴う磁性層による影響が議論されているが それ以外の文献は見当たらない 確信度 評価 :M 評価 :M 評価 :M 参考文献 / 注釈 [1] S. Takaya T. Suzuki Y. Matsumoto K. Demachi M. Uesaka Estimation of stress corrosion cracking sensitivity of type 304 stainless steel by magnetic force microscope JOURNAL OF NUCLEAR MATERIALS (2004) Vol. 327 pp [2] S. Takaya and Y. Nagae Magnetic property change of type 304 stainless steel due to accumulation of fatigue damage at elevated temperature International Journal of Applied Electromagnetics and Mechanics Vol. 25 (2007) pp [3] T. Uchimoto T. Takagi K. Ohtaki Y. Takeda and A. Kawakami Electromagnetic Modeling of Fatigue Cracks in Plant Environment for Eddy Current Testing International Journal of Applied Electromagnetics and Mechanics in press. 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

48 ランキング評価渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) F-1 磁場の検出方式 ( サーチコイル 磁気センサ ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 通常 ECT はサーチコイルを用いて変動磁場を検出する 低周波を使用する場合 サーチコイルの検出感度は低下する事があ 空間分解能が高い検出方式は 長さサイジングに有利であり また 微小欠陥の検出において 欠陥サイズに相当する大きさ 浅い欠陥に対しては サーチコイルと磁気センサーで性能に大差はなく サーチコイルを使用するのが一般的である 深 るため 低周波数まで対応できる磁気センサーを利用することの検出センサーを使用することは欠陥検出に有利との見方がい欠陥の場合 低周波数まで対応できる磁気センサーの使用影響因子に対するによって 検出感度を確保する また プローブのサイズを欠ある によって低周波による検査が可能となり 検査対象の深い領現状認識陥サイズ相当とする方が微小欠陥検出に有利との見方がある 域の情報が得られ 深部欠陥の深さサイジングに有利との見 影響のメカニズムサーチコイルの小型化には限界があるため 寸法が小さい磁気方がある 現状の評価センサーは微小欠陥の検出への活用が期待されている ただし 同じ欠陥に対するサーチコイルと磁気センサーの明確 な比較は見当たらなかった 評価 :L 評価 :M 評価 :M 根拠 : 極微小欠陥及び深層欠陥を除いて表面開口欠陥の検出を 根拠 : 検出センサーのサイズ 即ち サーチコイルや磁気セン 根拠 : 励磁周波数は渦電流の浸透深さに直接影響し 周波数 目的とする場合 サーチコイルか磁気センサーであるか サーのサイズは微小欠陥の検出や長さサイジングに大 が低いほど浸透深さが大きくなる 一方で 周波数が 重要度 にかかわらず 欠陥検出に十分な感度が得られる周波数 きな影響を及ぼすことがある 検出感度へ与える影響はサーチコイルと磁気センサー を使用すれば 欠陥検出に問題ないと考えられる では異なり 特に周波数が低くなるとサーチコイルの 検出感度が悪くなる これより 磁場の検出方式は 十分な深さ情報を得られるかに関わると考えられる 評価 :P 評価 :P 評価 :P 根拠 : サーチコイル及び磁気センサーの特徴を論じ サーチコ 根拠 : 網羅的な調査結果とは言えないが 具体な評価事例 根拠 : サーチコイルあるいは磁気センサーで得られた信号に 知識レベル イルや磁気センサーを用いた欠陥検査に関する論文はたとえば あるサーチコイルと磁気センサーの欠陥長さよる欠陥深さサイジングの事例報告がある一方 ( 磁気多数あるが 同じ欠陥に対して サーチコイルと磁気セサイジングにおける比較は見当たらなかった センサーによる検査は検出のみに留まるケースが多 ンサーを用いた場合の明確な比較はない い ) サーチコイルと磁気センサーの使用による深さサ イジングに与える影響の差は明らかになっていない 確信度 評価 :H 評価 :H 評価 :H [1] Non-destructive Techniques based on eddy current testing Javier Garcia-Martin et al. Sensors DOI: /s [1] Non-destructive Techniques based on eddy current testing Javier Garcia-Martin et al. Sensors DOI: /s [1] Non-destructive Techniques based on eddy current testing Javier Garcia-Martin et al. Sensors DOI: /s [2] New direction in eddy current sensing Teodor Dogaru [2] New direction in eddy current sensing Teodor Dogaru [2] New direction in eddy current sensing Teodor Dogaru 参考文献 / 注釈 Carl H. Smith et al. tes/new_directions_in_eddy_current_sensing.pdf accessed on Aug. 2nd 2012 Carl H. Smith et al. tes/new_directions_in_eddy_current_sensing.pdf accessed on Aug. 2 nd 2012 [3] Giant magnetoresistance-based eddy current sensor Teodor Dogaru Stuart T. Smith IEEE Trans. Mag. Vol.37 No Carl H. Smith et al. otes/new_directions_in_eddy_current_sensing.pdf accessed on Aug. 2nd 2012 [3] Giant magnetoresistance-based eddy current sensor Teodor Dogaru Stuart T. Smith IEEE Trans. Mag. Vol.37 No

49 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) F-3 検出コイルの大きさ 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 検出信号の空間分解能は 励磁と検出コイルの大きさに依存し 通常は特に検出コイルの大きさで議論される 現状では 欠陥が極微小な場合を除いて 適切なプローブを選ぶことで対処が可能である 検出信号の空間分解能は 励磁と検出コイルの大きさに依存 し 通常は特に検出コイルの大きさで議論される 検出コイル の大きさは長さサイジング精度に影響を与える 検出コイルの検出感度は 巻き数 ( サイズとインピーダンスとの相互関係がある ) に影響を受けるため 検出感度と空間分解能を総合的に考慮した検出コイルの選択が欠陥検出及びサイジングにおいて重要である また 貫通コイルや内挿コイルを用いて 棒や管を検査する場合 検査対象に合う検出コイルのサイズを選ぶことが重要であ る ランキング評価重要度 知識レベル 評価 :H 根拠 : 検出信号の空間分解能は実際には励磁コイルと検出コ 評価 :K イルの大きさに依存することから検出性への影響は大 きい 根拠 : 様々な検出コイルが開発され 渦電流探傷に使用され ている 検査の第一の目的は欠陥検出であるため そ れらのコイルの欠陥検出性は十分検討されたと考えら れる 評価 :H 根拠 : 原子力発電所用機器における渦電流探傷試験指針には 評価 :K 渦電流探傷試験で欠陥長さを測定する場合 信号消失 指示長さ 12dB ドロップ指示長さなどを求める方法で 振幅チャートにより欠陥長さ方向の端部に該当する振 幅の位置座標を求め その座標をもとに指示長さを求め る なお 長さ測定法は 使用目的 試験コイルの特性 や測定精度を考慮して選択するとよい との記述があ り 即ち 試験コイルの特性 ( コイルのサイズを含め ) や測定精度を考慮して選択する必要がある 根拠 : 原子力発電所用機器における渦電流探傷試験指針が既に 策定されており 数種類の検査コイルの特徴に対応した 長さサイジング法が提案されており 指針に明記されて いる なお コイルの大きさの影響は明確でない 評価 :M 根拠 : 検出コイルサイズは 良い探傷データを得るために重 評価 :P 確信度評価 :H 評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] Giant magnetoresistance-based eddy current sensor Teodor Dogaru Stuart T. Smith IEEE Trans. Mag. Vol.37 No 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low) [1] 渦電流探傷における欠陥形状復元のための新しい信号処 理法 兼本茂 程衛英 他 保全学 Vol. 5 No. 1 (2006) [2] 原子力発電所用機器における渦電流探傷試験指針 JAEG [3] 渦電流探傷試験 I II 非破壊検査協会 要である また 貫通コイルや内挿コイルを用いて棒や 管を検査する場合 検出感度は充填率 (fill factor) に大きく影響され その充填率はコイルのサイズに依存 する 根拠 : 貫通コイル及び内挿コイルのサイズが欠陥検査に与える 影響についての一般的な知見はあるが 上置コイルにつ いての知見は少ない また 励磁コイルのサイズについ ての議論は多い一方で 検出コイルの大きさが深さサイ ジングに与える影響についての知見は少ない [1] 渦電流探傷試験 I II 非破壊検査協会 [2] Nondestructive evaluation of the severity of discontinuities in flat conductive materials by an eddy-current transducer with orthogonal coils R. Grimbeg A. Savin et al. IEEE Trans. MAG. Vol. 36 No

50 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) F-5 磁場検出成分 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対す る 現状認識 影響のメカニズ ム 現状の評価 ランキング評価重要度 知識レベ ル 確信度 検出コイルは欠陥による変動磁場以外に 印加磁場や溶接線による変動磁場 エッジによる乱れ磁場等も検出する これらの磁場の影響によって欠陥検出が困難になる事がある なお これらの磁場は それぞれ ほとんど一定の主方向を持っているため 磁場検出成分の選択によって これらの ノイズ 磁場の影響を受けず 欠陥検出性を高める事が可能である 原理的に欠陥は X Y Z 諸方向の変動磁場を生じるが 欠陥の性状と印加磁場の性状 ( 励磁コイルの構造によるもの ) 及びその相対関係によって 欠陥性状 ( 幅 長さ 深さ ) はこの 3 成分への影響が異なる 欠陥の長さをよく反映する磁場成分信号は長さサイジングに有利と考えられる なお 実際にはこの点を十分意識せず計測を行う事は多い 原理的に欠陥は X Y Z 諸方向の変動磁場を生じるが 欠陥の性状と印加磁場の性状 ( 励磁コイルの構造によるもの ) 及びそれらの相対関係によって 欠陥性状 ( 幅 長さ 深さ ) はこの 3 成分への影響が異なる 欠陥の深さをよく反映する磁場成分は深さサイジングに有利と考えられる なお 実際にはこの点を十分意識せず計測を行う事は多い また 通常の渦電流探傷法において 深さサイジングは要求されていないため 検出及び長さサイジングに有利になる成分を利用することが多い 評価 :H 評価 :H 評価 :H 根拠 : 上記の印加磁場や溶接線磁場 エッジ磁場などノイズ磁場 根拠 : 欠陥による変動磁場の各成分の中で 長さをよく反映す 根拠 : 欠陥による変動磁場の成分の中で 深さをよく反映す は検出信号として計測され その影響により欠陥検出が困 る成分を使うことは長さサイジングに一番有利と考え る成分を使うことは深さサイジングで一番有利である 難になる可能性がある られるが 実際には 必ずしもその成分が利用されてい が 実際には必ずしもその成分を計測するわけではな るわけではない その場合 長さサイジング精度を低下 い たとえば 長さ方向差動となるプローブにより得 になる可能性があると考えられる られた計測データでは 深さサイジングが不可能であ ると予想されるため Hと評価した 評価 :K 評価 :P 評価 :U 根拠 : 印加磁場 欠陥性状 構造物の性状などを総合的に考慮し 根拠 : 渦電流探傷は表面欠陥検査の手法として知られ 欠陥長 根拠 : 渦電流探傷は表面欠陥検査の手法として知られ 欠陥 て 個別に対応している ただ 総合的に論じている文献 さサイジングは 渦電流探傷試験指針 などで定められ 長さサイジングは 渦電流探傷試験指針 などで定め は見当たらない ている それらは 大雑把な 渦電流探傷信号 による られているが 深さサイジングについてはまだ十分検 長さサイジングであり 各成分が長さサイジングへの影 討できていない 各磁場成分 または各成分のデータ 響は明らかにしていない 融合による深さサイジング精度の向上はまだ明らかに なっていない 評価 :H 評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] New direction in eddy current sensing Teodor Dogaru Carl H. Smith et al. /new_directions_in_eddy_current_sensing.pdf accessed on Aug. 2 nd 2012 [1] 原子力発電所用機器における渦電流探傷試験指針 JAEG [1] 原子力発電所用機器における渦電流探傷試験指針 JAEG 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

51 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) F-6 検出コイルリフトオフ 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する 現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 リフトオフは小であることが望ましいが 表面へのならいの関係で あまりに小さい場合 リフトオフノイズの度合いが高くなる可能性がある リフトオフは小であることが望ましいが 表面へのならいの関係で あまりに小さい場合 リフトオフノイズの度合いが高くなる可能性がある リフトオフの変動により信号の大きさを大きく変化する事があり 深さサイジング精度への影響が考慮すべきである 重要度 評価 :H 根拠 : リフトオフは信号振幅とノイズ強度に影響を与える ただし リフトオフは 一定であれば多少あっても検出においては問題にならない 評価 : M 根拠 : 長さサイジングは 信号レベルではなく 信号検出位置が問題になるので 検出ができていれば問題ない 評価 : H 根拠 : 検出コイルのリフトオフ変化が信号に与える影響を明らかにする あるいは リフトオフが信号に与える影響を除去することは欠陥深さサイジングに重要である ランキング評価知識レベル 評価 :K 根拠 : 自明である 評価 :K 根拠 : 自明である 評価 :P 根拠 : あるリフトオフの条件で計測した信号をもちいて深さサイジングするケースバイケースの研究報告があったが リフトオフが深さサイジングへ与える影響の研究は見当たらなかった 確信度 評価 :H 評価 :H 評価 :M 参考文献 / 注釈 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

52 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) F-7 検出方式 ( 単一方式 / 自己比較方式 / 標準比較方式 ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 単一方式は対ノイズ性が悪く SN 比が低下する傾向があるため 欠陥検出に利用する場合に十分な注意を払うべきである 自己比較方式 ( 差動式 ) では 温度ドリフトやリフトオフ ガタノイズなどの影響を受けにくくなるため 単一方式と比べ より安定な信号が得られる 一方 2 つのコイルの並ぶ方向に長い欠陥の場合には 欠陥の初めと終わりにおいてのみ信号が発生したり 場合によって信号がほとんど発生しなかったりするので このような長い欠陥の検査には適さない また 標準比較式は材質評価などによく使われている 単一方式は対ノイズ性が悪く SN 比が低下する傾向があるため 欠陥検出に利用する場合に十分な注意を払うべきである 自己比較方式 ( 差動式 ) では 温度ドリフトやリフトオフ ガタノイズなどの影響を受けにくくなるため 単一方式と比べ より安定した信号が得られる また 自己比較方式は欠陥性状が局所的に変動するところで信号が現すため 欠陥の初めと終わりに欠陥指示が現れる この特徴を生かして欠陥長さサイジングが可能である 検出性及び長さサイジング性とほぼ同じである 自己比較方式 ( 差動 ) では 局所的な変化があるところのみに欠陥指示が発生するため 欠陥性状を反映しなくなることがあり 欠陥の深さサイジングをする場合は コイルの走査方向に注意すべきである 深さサイジングが要求される場合 深さを反映した信号を計測すべきである 重要度 評価 :H 根拠 : 試験対象に応じて適切な検出方式を選択することが大切である 評価 :H 根拠 : 試験対象に応じて適切な検出方式を選択することが大切である 評価 :H 根拠 : 試験対象に応じた検出方式を選択することが深さサイジングにおいて大切である ランキング評価知識レベル 評価 :K 根拠 : 検出方式は十分論じられており 知識レベルを Kと評価した 評価 :K 根拠 : 検出方式は十分論じられており 知識レベルを K と評価した 評価 :P 根拠 : 現状の渦電流探傷において 深さサイジングは必ずしも要求されてないため 検出方式に関するこれまでの議論は 検出 を目標にするものが多く 検査を行う際に必ずしも深さを反映した信号を計測していない 確信度 評価 :H 評価 :H 評価 :H 参考文献 / 注釈 [1] 渦電流探傷試験 [I] [II] 非破壊検査協会 [1] 渦電流探傷試験 [2] 原子力発電所用機器における渦電流探傷試験指針 JAEG [1] 渦電流探傷試験 I II 非破壊検査協会 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

53 ランキング評価渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子の重要度および知識レベルのランキングとその根拠 影響因子 (Phenomena) F-8 検出コイルの構成 ( アレイ化など ) 対象検出性への影響き裂長さサイジング精度への影響き裂深さサイジング精度への影響 影響因子に対する現状認識 影響のメカニズム 現状の評価 複数の検出コイルを配置 ( アレイ化 ) することにより 検査にかかる時間は短縮される また 同一の励磁コイルに対して複数の検出コイルを用いた場合 一度の走査で多数の検出信号が得られ 情報量が多くなる 複数の検出コイルを配置 ( アレイ化 ) することにより 検査にかかる時間が短縮される また 同一の励磁コイルで複数の検出コイルを用いた場合 一度の走査で多数の検出信号が得られ 情報量は多くなる 長さサイジングに関して 検出コイルの間隔は長さサイジング精度に影響を与えないように注意を払う必要がある 複数の検出コイルを配置 ( アレイ化 ) することにより 検査にかかる時間が短縮可能となる また 同一の励磁コイルに対して複数の検出コイルを配置することにより 同じ測定位置で複数の情報を得られる可能性がある 重要度 知識レベル 確信度 評価 :L 根拠 : 時間短縮のみを目的にする アレイ化 は 検査の現場作業においてメリットが大きいが 長さサイジングについてはシングルプローブのジグザグ走査とあまり変わらないと考えられる 評価 :L 根拠 : 時間短縮のみを目的する アレイ化 は 検査現場でのメリットは大きいが 長さサイジングについてはシングルプローブのジグザグ走査とあまり変わらないと考えられる 評価 :H 根拠 : 時間短縮のみを目的する アレイ化 は 現場検査でのメリットは大きいが 深さサイジングについてはシングルプローブのジグザグ走査とあまり変わらないと考えられる 同一の励磁コイルで複数の検出コイルを用いた場合 情報量が多くなるため 検出あるいは欠陥判断に有利になる可能性があり 欠陥深さサイジングにも有利になると期待される 評価 :K 評価 :K 評価 :P 根拠 : 様々なアレイプローブが開発され 検査に使用されたが 根拠 : 様々なアレイプローブが開発され 検査に使用されたが 根拠 : 様々なアレイプローブが開発されて検査に使用された 検出についてはそれぞれの特徴に応じてケースバイケ 長さサイジングについてはそれぞれの特徴に応じてケ が 深さサイジングについてはそれぞれの特徴を生かし ースで検討されてきた また アレイの構成 ( コイルの ースバイケースで判断する てケースバイケースで解析する また 同じ測定位置で 配置など ) に関して 経験などに基づいたものが多い 複数の情報を用いた深さサイジングについての具体的 な検討はまだ不十分であるため 評価を Pとした 評価 :H 評価 :H 評価 :M 参考文献 / 注釈 [1] 数値シミュレーション支援によるアレイマルチコイル型 渦電流探傷プローブの開発 桜井望 高木敏行 他 日本 機械学会論文集 A 編 68(676) 2002 [1] 数値シミュレーション支援によるアレイマルチコイル型 渦電流探傷プローブの開発 桜井望 高木敏行 他 日本 機械学会論文集 A 編 68(676) 2002 [2] 渦電流探傷における欠陥形状復元のための新しい信号処理法 兼本茂 程衛英 他 保全学 Vol. 5 No. 1 (2006) 重要度 :H (High) M (Medium) L (Low) 知識レベル :K (Known) P (Partially Known) U (Unknown) 確信度 :H (High) M (Medium) L (Low)

54 添付資料 3 PIRT におけるランクとその基準 検出性に関する重要度 知識レベル ランク 基準 ランク 基準 H (High) M (Medium) 信号振幅に関する影響が大きい ( 超音波探傷検査の場合 ) 信号対雑音比 (SN 比 ) に関する影響が大きい ( 渦電流探傷検査の場合 ) ( 注目パラメータに支配的な影響を及ぼす現象 ) 信号振幅に関する影響が比較的大きい ( 超音波探傷検査の場合 ) 信号対雑音比 (SN 比 ) に関する影響が比較的大きい ( 渦電流探傷検査の場合 ) ( 注目パラメータに中程度の影響を及ぼす現象 ) K (Known) P (Partially known) 公開された論文 報告書に結果が報告されている さらに 理論若しくは実験によりメカニズムが概ね明らかにされている 1 公開された論文 報告書に結果が報告されている しかし 理論若しくは実験によりメカニズムが明らかにされていない 2 公開された論文 報告書がほとんどない しかし 理論若しくは実験によりメカニズ L (Low) 信号振幅に関する影響が小さい ( 超音波探傷検査の場合 ) 信号対雑音比 (SN 比 ) に関する影響が小さい ( 渦電流探傷検査の場合 ) ( 注目パラメータへの影響が小さい現象 ) U (Unknown) ムが概ね明らかにされている 公開された論文 報告書がほとんどない さらに 理論若しくは実験によりメカニズムが明らかにされていない 長さサイジング精度に関する重要度 ランク 基準 確信度 ( 重要度と知識レベルの判定に対する確信度 ) ランク基準 H (High) M (Medium) 長さサイジングのための情報量を増加させる あるいは減少させる観点で影響が大きい ( 注目パラメータに支配的な影響を及ぼす現象 ) 長さサイジングのための情報量を増加させる あるいは減少させる観点で影響が比較的大きい ( 注目パラメータに中程度の影響を及ぼす現象 ) H (High) M (Medium) L (Low) 各エキスパートが重要度あるいは知識レベルの判定に或る程度 自信を持っており かつ その事についてエキスパートの間で意見がほぼ一致している エキスパートの半数程度の意見は一致しているが 異なる意見も相当数ある エキスパートの意見に大きなバラツキが見られる L (Low) 長さサイジングのための情報量を増加させる あるいは減少させる観点で影響が小さい ( 注目パラメータへの影響が小さい現象 ) 注 ) ただし 他要因による信号対雑音比は十分に確保されているとする

55 添付資料 4-1 H (High) M (Medium) L (Low) 優先順位 1 優先順位 2 A-3: 特殊励振方式の影響 ( 検出性 サイジング精度 )H C-2: 被検体表面の凹凸および表面粗さ ( 検出性 サイジ E-3: き裂の 2 次元形状 ( サイジング精度 )H ング精度 )H E-4: き裂性状 ( き裂面およびき裂先端部近傍の凹凸 フ D-1: 被検体材質の超音波特性 ( 音速 減衰 拡散特性 ( 結 ァセット寸法 分岐 )( 検出性 サイジング精度 )H 晶粒度 析出物等依存性 ))( サイジング精度 )H E-5: き裂内物質の状態 ( 腐食生成物の有無 疎密 )( 検 D-2: 超音波の直進性 ( 被検体内の不均質性 異方性 ) の 出性 サイジング精度 )H 影響 ( 検出性 サイジング精度 )H E-6: き裂の閉口状態 ( 密着性 ) とその分布 ( 検出性 サ E-7: き裂の方向 ( 角度 )( 検出性 )M イジング精度 )H F-1: 底面の形状不連続 溶接部境界 ( 検出性 サイジン I-1: 受信回路のフィルター機能 特性 ( 検出性 サイジ グ精度 )M ング精度 )H 優先順位 2 優先順位 3 B-1: 探触子の中心周波数 ( 検出性 サイジング精度 )H 重D-1: 被検体材質の超音波特性 ( 音速 減衰 拡散特性 ( 結 要晶粒度 析出物等依存性 ))( 検出性 )H 超音波探傷検査の性能に影響を与える影響因子のランクキング結果集計表 (PIRT 表 ) 度D-1: 被検体材質の超音波の減衰 拡散特性 ( 結晶粒度 析出物等依存性 )( 検出性 サイジング精度 )H E-2: き裂寸法 ( 検出性 サイジング精度 )H E-7: き裂の方向 ( 角度 )( サイジング精度 )H 優先順位 4 優先順位 5 E-3: き裂形状 ( 検出性 )H F-2: 底面の表面粗さ 腐食等 ( 検出性 )H 優先順位 6 B-4: 探触子タイプ / フォーカス ( 検出性 サイジング精度 )H 優先順位 6 A-1: 印加電圧 ( 検出性 サイジング精度 )H B-2: 探触子の周波数特性 ( 波形特性 )( サイジング精度 ) H B-5: 超音波のモード ( 縦波 横波 (SV 波 SH 波 ))( 検出性 サイジング精度 )H 優先順位 6 A-2: 励振波形 ( インピーダンスの影響等 )( 検出性 サイジング精度 )H B-2: 探触子の周波数特性 ( 波形特性 )( 検出性 )H B-3: 探触子寸法 ( 検出性 サイジング精度 )H B-6: 超音波の屈折角 ( き裂への入射角 )( 検出性 サイジング精度 )H C-1: 接触媒質 ( 検出性 サイジング精度 )H E-1: き裂位置 ( 検出性 サイジング精度 )H F-2: 底面の表面粗さ 腐食等 ( サイジング精度 )H U (Unknown) P (Partially known) K (Known) 知識レベル ( 注 ) 本表中に列挙された研究課題項目の末尾にあるアルファベットは エキスパートによる 重要度 と 知識レベル に対するエキスパート自身の確信度 (High Medium Low) を示す

56 添付資料 4-2 H (High) 優先順位 1 A-3 励磁周波数の数 ( 検出性 深さサイジング精度 )H B-4 励磁コイル配置 ( 深さサイジング精度 )H C-2 溶接の有無 ( 深さサイジング精度 )M D-5 き裂内物質の状態 ( 深さサイジング精度 ) H F-5 磁場検出成分 ( 深さサイジング精度 )H 渦電流探傷検査の性能に影響を与える影響因子のランクキング結果集計表 (PIRT 表 ) 重要度優先順位 2 優先順位 2 A-2 周波数 ( 深さサイジング精度 )H B-4 励磁コイル配置 ( 長さサイジング精度 )H B-5 励磁コイルリフトオフ ( 長さ / 深さサイジング精度 )H C-3 表面粗さ ( 深さサイジング精度 )M F-5 磁場検出成分 ( 長さサイジング精度 )H F-7 検出方式 ( 深さサイジング精度 )H F-8 検出コイル構成 ( 深さサイジング精度 )M 優先順位 3 優先順位 6 A-2 周波数 ( 検出性 ) B-2 励磁コイルの大きさ ( 検出性 長さサイジング精度 ) B-4 励磁コイル配置 ( 検出性 ) B-5 励磁コイルリフトオフ ( 検出性 ) F-3 検出コイルの大きさ ( 検出性 長さサイジング ) F-5 磁場検出成分 ( 検出性 ) F-6 検出コイルリフトオフ ( 検出性 ) F-7 検出方式 ( 検出性 長さサイジング精度 ) 優先順位 6 M (Medium) B-2 励磁コイルの大きさ ( 深さサイジング精度 )M D-2 き裂の 2 次元形状形状 ( 深さサイジング精度 )M D-3 き裂 3 次元性状性状 ( 深さサイジング精度 )H A-3 励磁周波数の数 ( 長さサイジング精度 )M A-4 特殊励磁 ( 検出性 長さ 深さサイジング精度 ) B-6 励磁コイル構成 ( 深さサイジング精度 ) C-1 電磁気的均一性 ( 母材 )( 深さサイジング精度 ) C-2 溶接の有無 ( 検出性 長さサイジング精度 ) C-3 表面粗さ ( 検出性 長さサイジング精度 ) C-4 表面形状 ( 検出性 長さサイジング 深さサイジング精度 ) D-2き裂形状 ( 長さサイジング精度 ) D-3き裂性状 ( 長さサイジング精度 ) D-1き裂寸法 ( 深さサイジング精度 ) D-6き裂の閉口状態とその分布 ( 検出性 深さサイジング精度 ) D-7き裂の方向 ( 角度 )( 深さサイジング精度 ) F-1 磁場の検出方式 ( 長さサイジング 深さサイジング精度 ) F-3 検出コイルの大きさ ( 深さサイジング精度 ) F-6 検出コイルリフトオフ ( 深さサイジング精度 ) 優先順位 4 優先順位 5 A-1 励磁電圧強度 励磁電流強度 ( 検出性 ) D-1 き裂寸法 ( 検出性 長さサイジング精度 ) D-6 き裂の閉口状態とその分布 ( 長さサイジング精度 ) 優先順位 6 L (Low) U (Unknown) C-5 酸化被膜 ( 検出性 長さサイジング 深さサイジング精度 ) C-7 表面曲率半径 ( 深さサイジング精度 ) D-4 き裂周辺の応力状態 ( 深さサイジング精度 ) D-5 き裂内物質の状態 ( 検出性 長さサイジング精度 ) D-8 き裂の発生 進展に伴う母材の電磁的特性変化 ( 深さサイジング精度 ) F-1 磁場の検出方式 ( 検出性 ) P (Partially known) 知識レベル A-1 励磁電圧強度 励磁電流強度 ( 長さ / 深さサイジング精度 ) A-2 周波数 ( 長さサイジング精度 ) B-1 励磁コイル形状 ( 検出性 長さ / 深さサイジング精度 ) B-3 励磁コイル巻数 ( 検出性 長さ / 深さサイジング精度 ) B-6 励磁コイル構成 ( 検出性 長さサイジング精度 ) C-1 電磁気的均一性 ( 検出性 長さサイジング精度 ) C-3 表面粗さ ( 検出性 長さ / 深さサイジング精度 ) C-7 表面曲率半径 ( 検出性 長さサイジング精度 ) D-2 き裂の 2 次元形状 ( 検出性 ) D-3 き裂の 3 次元性状 ( 検出性 ) D-4 き裂周辺の応力状態 ( 検出性 長さサイジング精度 ) D-7 き裂の方向 ( 検出性 長さサイジング ) D-8 き裂の発生 進展に伴う母材の電磁的特性変化 ( 検出性 長さサイジング精度 ) F-2 検出コイル形状 ( 検出性 長さ / 深さサイジング精度 ) F-4 検出コイル巻き線数 ( 検出性 長さ / 深さサイジング精度 ) F-6 検出コイルリフトオフ ( 長さサイジング精度 ) F-8 検出コイル構成 ( アレイ化など )( 検出性 長さサイジング精度 ) F-9 検出対象磁場 ( 検出性 長さ / 深さサイジング精度 ) K (Known) ( 注 ) 本 PIRT 表中に列挙された研究課題項目の末尾のアルファベットは エキスパートによる 重要度 と 知識レベル の判定に対するエキスパート自身の確信度 (High Medium Low) を示す

57 e) UT 及び ECT の基本パラメータ ( エッセンシャルパラメータ ) に関する調査及びPIRT 結果との差異に関する調査原子力発電設備の超音波探傷試験 (UT) 及び渦電流探傷試験 (ECT) に関して 環境疲労き裂の検出及び寸法測定結果に様々な影響を及ぼすと考えられる Essential Parameter( 基本的パラメータ ) が定められた経緯とその内容についての調査結果を示す また 基本的パラメータへの理解を深めるために ASME Code Sec. XI App. VIII に示された基本的パラメータの出所等についても調査を行った さらに 基本的パラメータと前項で検討された欠陥の検出及び寸法等の測定に影響する 重要因子 に関する評価プロセス PIRT についての考え方の比較分析を試みた (ⅰ) 基本的パラメータが定められた経緯非破壊検査において 欠陥の検出性や欠陥寸法測定精度に影響を及ぼす様々な因子については技術開発の段階で様々な検討や実証試験が行われている これらの検討を通して UT の場合は 波のモード 試験周波数 探傷屈折角等が重要な因子であると捉えられている また ECT では コイルの種類や大きさ 試験周波数あるいは周波数の組合せなどの因子が欠陥の検出及びサイジングに大きな影響を持つことが確認されている これらの影響因子のうち重要な因子を Essential Parameters: 基本的パラメータ としてまとめて取り扱うようになったのは 非破壊検査技術の性能実証試験 (PD:Performance Demonstration) の要求によるものであった すなわち PD 試験では 試験体 と 装置 + 手順書 + 検査員 の条件を組み合わせて性能実証試験が行われるが 実証された技術がどの範囲まで拡大適用が許容されるかを判断する指標が 基本的パラメータ と定義されたことによる この基本的パラメータの考え方は欧州の ENIQ(European Network for Inspection Qualification) の中で検討され 1998 年 11 月に ENIQ Report nr. 6 ENIQ RECOMMENDED PRACTICE 1:INFLUENTIAL/ESSENTIAL PARAMETERS ISSUE 1 として発行されている 32 また 2005 年 6 月の追補版では基本的パラメータの具体的な活用法について 規制側と使用者側の意見を聴取した結果が報告されている 内容的には基本的パラメータの使い方に関するものであり 基本的パラメータそのものに関しては ISSUE 1 と実質的には同じ内容となっている 33 この基本的パラメータの内容を PD 規定として具体的にしたものが ASME B&P Code Section XI Appendix VIII( 以下 App. VIII) に Essential Valuablesと称して記載されている この Essential Valuablesの基本的な考え方はENIQを踏襲した内容となっている 32 ENIQ Report nr. 6 ENIQ RECOMMENDED PRACTICE 1:INFLUENTIAL/ESSENTIAL PARAMETERS ISSUE 1 33 ENIQ Report nr. 24 ENIQ RECOMMENDED PRACTICE 1 : INFLUENTIAL/ESSENTIAL PARAMETERS ISSUE

58 34 日本国内の PD 資格試験を定めている日本非破壊試験協会規格 NDIS 0603 超音波探傷試験システムの性能実証における技術者の資格及び認証 にも基本的パラメータが定められている NDIS 0603 の場合は App. VIII との整合が図られており 実質的な記載内容は同じものとなっている 以下に 基本的パラメータの考え方とその内容について記載する (ⅱ) ENIQの基本的パラメータ ENIQ の基本的パラメータの考え方に関する報告書には次の項目が記載されている 基本的パラメータについての考え方 PD 試験の中での使い方 基本的パラメータの分類方法 溶接部の UTと蒸気発生器のECTを例にしたパラメータ抽出の例 1 基本的パラメータの考え方非破壊検査の結果に影響する因子は多数あり それらは PD 対象となる検査技術のケース毎に抽出されるべきものであるとしている また それらの影響因子は図 2.4.3(3)-15 に示すように 3グループに分類できるとしている 次に これらの影響因子を図 2.4.3(3)-16 に示すように非破壊検査の結果に大きく影響する因子 ( 基本的パラメータ ) と 結果に影響しない因子に分類する 更に 基本的パラメータは 固定値とするべきパラメータとある範囲で変動幅を考慮すべきパラメータに分類する必要がある Influential/Essentialパラメータの検討は以下のステップで行う - 対象とする検査についてどのパラメータを考慮すべきか検討する - 基本的パラメータをリストアップする - 基本的パラメータが 固定値 / 範囲 のどちらのカテゴリーに入るのか決定する - 入力の基本的パラメータの許容値あるいは範囲を決定する - 検査手順と装置の基本的パラメータの許容値あるいは範囲を決定する 34 S. Bush Performance Demonstration by ASME Section XI Present and Future: a Review of Appendices VII and VIII Proceedings of the International Workshop on the Contribution of PISC to Codes and Standards in Particular to Performance Demonstration PISC Report No.29 Ispra 1-2 October

59 Input Parameters( 入力パラメータ ) 検査対象物の性状や対象欠陥の性状に関するもの これにより検査手法などが決定される 例 ) サイズ / 材質 / 形状 / 対象とする欠陥 Procedure Parameters( 検査手順のパラメータ ) 使用される非破壊検査法に関するもので検査手順書に記載されるべきもの 技術の検証 (Technical Justification) の目的の一つにこれの決定がある これらのいくつかについては検査に影響しない範囲で変更することが可能である 例 ) 探傷モード ( 縦波 / 横波 )/ 周波数 / 探傷屈折角 Equipment Parameters( 装置パラメータ ) 検査に使用する装置の情報これらのいくつかについても検査に影響しない範囲で許容範囲がありうる また 装置の校正はこのパラメータが許容値内であることを確認するためのものである これらの中には Procedure Parameterと関連するものがある 例 ) 探傷屈折角 図 2.4.3(3)-15 影響因子のカテゴリー区分

60 Influential parameters Essential parameters ( 基本的パラメータ ) Non-essential parameters 考慮の必要なし 固定値で規定するパラメータ要領書等で許容値を定めるもの これらについてはパラメータの測定法も定めるべきである 主に装置パラメータがこれに相当する 範囲で規定するパラメータ全範囲について有効であることの実証が必要なもの 限界あるいは最悪のケースもレンジ内に入るように試験あるいは Technical Justification を行って定める これに相当するパラメータは少ない 主に入力パラメータがこれに相当する 図 2.4.3(3)-16 PD における基本的パラメータの分類手順

61 2 基本的パラメータの例 以下に溶接部の UT と蒸気発生器のチューブの ECT の基本的パラメータの例を示す カテゴリー入力パラメータ検査手順パラメータ 表 2.4.3(3)-4 溶接部のUT に関する基本的パラメータの例検査部位 形状 接近性( 放射線環境なども顧慮 ) 表面状態 溶接部表面( 余盛 ) の形状 溶接部開先形状 配管の肉厚 配管の外径 内面加工部の有無 溶接の目違い 母材のマクロ組織 溶接部のマクロ組織 バタリングの有無( 異材継手の場合 ) 温度欠陥 欠陥のタイプ 劣化のメカニズム 欠陥の形 板厚中の欠陥の存在範囲 板厚方向の欠陥位置 欠陥の傾斜角度 欠陥のねじれ角度 欠陥の粗さ/ 分岐程度 残留応力の有無 超音波のモード 探触子のタイプ 探触子サイズ 周波数 ビーム入射角度 パルス長さ 収束特性( 二分割探触子の場合 ) 走査及び記録の感度 走査ステップ

62 装置パラメ ータ 送受信器及びデータ収録ハードウエア ( これらのパラメータは通常検査手順書に記載の範囲内で固定されるものである ) ケーブル探触子スキャナ 走査速度 検査員のトレーニング 経験及び認定資格 欠陥寸法測定方法 記録及び欠陥識別のしきい値 データ解析手法 振幅直線性( スクリーン高さ ) 時間軸直線性 デジタイザの分解能 平均化処理率 Aスコープのデータ点数 送信器のパルス振幅 送信器のパルス幅 送信器のパルス降下時間 送信器のパルス立ち上がり時間 受信器の帯域幅 受信器の実効利得 受信器の帯域フィルタ パルスエコー法の場合の時間軸設定法 TOFD 法の場合の時間軸設定法 データ採取ゲート 長さ インピーダンス 周波数 超音波入射点位置 屈折角( シューの角度 ) シューの偏り角度( 斜め方向 ) 二分割探触子の集束特性 帯域幅 位置測定の直線性 位置再現精度 位置の分解能 水距離( 水浸探傷の場合 ) 下記については検査要領の項で記述済 走査パターン及び走査ステップ 探傷速度 被検面上での走査範囲

63 表 2.4.3(3)-5 蒸気発生器チューブの ECT に関する基本的パラメータの例カテゴリー入力パラメ検査部位と環境 接近性ータ チャンネルヘッドの形状 アクセスハッチの形状 放射線環境 内部構造物管の形状 外径 肉厚 U ベント部の半径 長さ 拡管部の形状 堆積物の性状( 銅 スラッジ他 ) 凹みの存在など チューブサポートや振れ止め金具の存在欠陥 欠陥のタイプ 劣化のメカニズム 欠陥の起点( 外面あるいは内面 ) 欠陥の板厚方向の大きさ 欠陥長さ 欠陥の方向 欠陥の位置検査手順パ プローブ数ラメータ プローブの型式 プローブの大きさ 周波数 複数周波数の励起法( 同時あるいは多重化 ) チャンネル数( プローブ数 / 周波数 ) 走査及び記録感度 走査パターン 走査速度 検査員のトレーニング 経験及び認定資格 欠陥検出法 欠陥寸法測定法 記録及び欠陥識別レベル データ解析手法

64 装置パラメ ータ 発信器受信器 AD コンバータケーブルプローブ走査装置 total harmonic distortion 出力インピーダンス 位相の直線性 信号強度の直線性 入力インピーダンス 増幅器の直線性と安定性 帯域幅 分解能 ダイナミックレンジ データサンプリングレート 形式 長さ インピーダンス一般 プローブの形式 インピーダンス 周波数帯域 共振周波数(resonance frequency) ボビンコイル 有効試験長 (Effective scan field width) full factor coefficient depth coefficient axial length coefficient Transverse width coefficient 位相角 深さ評価曲線 DC Saturation strength パンケーキコイル 有効試験長 (Effective scan field width) リフトオフ depth coefficient axial width coefficient Transverse width coefficient 位相角- 深さ評価曲線 走査長さ方向精度 走査速度精度 速度調整範囲

65 (ⅲ) App. VIII における規定 App. VIII が規定するPDでは 探傷装置 手順書及び検査員の技量を組み合わせた能力の実証が要求されている したがって PD 試験を受験するためには手順書の提示が求められるが その手順書の記載項目が基本的パラメータ (Essential Valuables) となっている 図 2.4.3(3)-17に App. VIIIの各項に記載された基本的パラメータに係る内容を示す Ⅷ-1000 General PD の実施者及び対象者 Ⅷ-2000 General Examination System Requirement 要領書への記載事項 探傷条件 ( 材料 板厚 外径 形状等 ) 基本的パラメータ Ⅷ-3000 Qualification Requirements PD の合格基準 基本的パラメータの同等性の定義 再認証試験を実施する条件と範囲 Ⅷ-4000 Essential Variable Tolerances 無試験で要領書の書き換え 装置の交換が出来る 基本的パラメータの許容値 図 2.4.3(3)-17 基本的パラメータに関する App. VIII の記載内容 1 手順書へ記載すべき項目手順書には以下の基本的パラメータの明示が求められている 内容的にはこれまでの検査手順書及び探傷機器校正記録の記載項目に周波数に関する要求が追加されている a. 探傷装置あるいは探傷システム送信部 受信部 増幅器の製造者 型式あるいはシリーズ番号 b. 探触子

66 1 製造者 型式あるいはシリーズ番号及び公称周波数 中心周波数及び比帯域幅あるいはエコー幅 ( 図 2.4.3(3)-18) 2 超音波の伝播モード及び公称屈折角 3 振動子及びクサビあるいはシューの数 寸法 形状及び配置 中心周波数及び比帯域幅の測定法 エコー幅の測定法 図 2.4.3(3)-18 波の中心周波数 比帯域幅 エコー幅の定義 c. 探傷ケーブル 1 型式

67 2 最大長さ 3 最大コネクタ数 d. 欠陥検出及び欠陥寸法測定手法 1 走査パターン及び探傷ビームの方向 2 最大走査速度 3パルス繰返し周波数の最大値及び最小値 4 自動記録を使用する場合は最小サンプリング速度 5 走査範囲及び走査が出来ない場合の処置 e. 探傷及び欠陥寸法測定における感度校正方法探傷を継続する場合の探傷感度と増幅及び時間軸直線性の確認方法を含む f. 記録すべき検査結果及び感度校正データ g. 記録の採取法 h. 使用する場合は記録装置 ( チャート アナログテープ デジタル化等 ) i. 欠陥を区別する方法と判定方法形状エコーと欠陥エコー判別法及び欠陥の長さと高さの測定法 j. 検査のための表面仕上げの条件 2 基本的パラメータの許容範囲 Article VIII-4000に Essential Variable Tolerances としてその許容値が示されている この許容範囲内であれば再試験無しに装置の取り換えや要領書の書き換えが可能となる 主な項目についてその内容を示す a. 超音波探傷システムの機器あるいは送信部は無誘導抵抗 50Ωの条件で測定し 元の超音波探傷器と比較して下記の範囲内にあれば再試験無しに交換可能である 送信パルスの振幅 ±10% 送信パルスの立ち上がり時間 ±10% 送信パルスの幅 ±10%

68 図 2.4.3(3)-19 送信パルスの立ち上がり時間 送信パルスの振幅 図 2.4.3(3)-20 送信パルスの振幅 b. 超音波探傷システムの機器あるいは受信部は 元の超音波探傷器と比較して下記の許容値内にあれば取り換えが可能である -6dBにおける下限周波数及び上限周波数が ±0.2MHz 比帯域幅が 30% 未満の場合 中心周波数が ±5% 比帯域幅が 30% 以上の場合 中心周波数が ±10% c. 探触子の製造者 型式 寸法及び公称周波数が同じものは再試験無しに使用可能である d. 探触子のメーカ 型式 寸法及び公称周波数が異なる場合は元の探触子と比較して下記の許容値内にあるものは再試験無しに使用可能である 超音波のモードが同じ実測屈折角が ±3 度以内比帯域幅が 30% 未満の場合 中心周波数が ±5%

69 比帯域幅が 30% 以上の場合 中心周波数が ±10% -20dBで測定したエコー幅が どちらか大きいほうで1/2 波か 20% 以内 あるいは比帯域幅が ±10% 以内なお 探触子の特性計測はサインバースト方式かショックウエーブ方式で行い ショックウエーブ方式で実施する場合は性能試験に使用する送信部と超音波探傷器の送信部は同等とされる許容範囲にあることが求められている e. 上記の 5 つの要素の代わりに探傷システムが元の超音波探傷システムに比較して下記の許容値を満たす場合は交換可能である 比帯域幅が 30% 未満の場合 中心周波数が ±5% 比帯域幅が 30% 以上の場合 中心周波数が ±10% システムの比帯域幅が ±10% 基本的パラメータの許容値に関する要求を簡略化したものを図 2.4.3(3)-21 に示す

70 超音波探傷器 超音波探傷システム 送信部受信部探触子 製造者 型式あるいは製造シリーズが同じ超音波探傷器 探触子は無条件で交換が可能 下記の許容値以内 送信パルス振幅 ±10% 立ち上がり時間 ±10% パルス幅 ±10% 中心周波数が比帯域幅 <30% で ±5% 比帯域幅 30% で ±10% 比帯域幅が 10% 以内 -6dBの上限/ 下限周波数が ±0.2MHz 中心周波数が比帯域幅 <30% で ±5% 比帯域幅 30% で ±10% 超音波の伝播モードが同じ 実測屈折角が ±3 度以内 中心周波数が比帯域幅 <30% で ±5% 比帯域幅 30% で ±10% -20dB エコー幅が 1/2 波か 20% 以内あるいは比帯域幅が10% 以内 コンピュータ解析 アルゴリズム 以前採取したデータを使用す る場合は合格者が出れば合格 感度校正 以前の方法と比較して 2dB を 下回らなければ合格 図 2.4.3(3)-21 機器の代替が可能な基本的パラメータの許容基準

71 3 許容範囲設定の根拠 ENIQ 及び App. VIIIに要求される基本的パラメータの項目は これまでの手順書の記載内容を踏襲したものとなっている しかしながら App. VIIIに記載された周波数特性に関する許容範囲についてはその根拠を文献調査で探し出すことは出来なかった 唯一同等性の考え方の手掛かりになりそうなのは図 2.4.3(3)-21 の感度校正の規定にある 以前と比較して 2dBを下回らない との規定となっている 他に根拠が見出せそうな文献に PISC の報告書があり 基本的パラメータの決定にあたっては PISCでの経験をベースとしている事が報告されているが (3) PISC では 検査装置 探触子 ケーブルの影響について 調査は行われたものの 探傷結果が要領書あるいは検査員の差に大きく影響される結果となったため これらの因子の影響についての詳細な解説は行われていない ENIQでは推奨する基本的パラメータを定めているもののその許容範囲は各国が検査対象と要求により定めることとしており 具体的な数値は示されていない また 下記の資料が App. VIIIの周波数特性等の測定方法のベースになっているが これらでは測定法を定めているが 許容範囲は定めていない ASTM E 1324 Guide for Measuring Some Electronic Characteristics of Ultrasonic Instrument ASTM E 1065 Evaluation of the Characteristics of Ultrasonic Search Units 上記 ASTM 規格に相当する国内の規格に下記のものがあり 基本的な部分についてはその内容は同一である また これらの国内規格でも許容値に付いては触れられていない JIS Z 超音波探触子の性能測定方法 JIS Z 超音波探傷器の電気的性能測定方法 JIS Z 超音波探傷装置の性能測定方法 4ECTに関する基本的パラメータ ASME Section XI では ECT に関する PD は未だ規定されていない したがって ECT についてはどのような基本的パラメータが要求されているべきかについての調査はできていない

72 (ⅳ) PART と基本的パラメータの比較原子力発電所システム全体の安全性を管理する仕組みを構築するための一ステップとして 環境疲労き裂の非破壊検査に関する課題をできるだけ客観性を持った体系的な方法で抽出 整理する必要がある このため 前項で環境疲労き裂の非破壊検査の性能に影響を与える数多くの因子から客観的で体系的な手法で重要な因子を抽出する手法である PIRT(Phenomena Identification and Ranking Table) を使用して 重要度と知識 / 知見の観点から重要課題を抽出する作業が行われている ここでは PIRT 手法による影響因子の抽出と PDの示す 基本パラメータ との比較で重要課題抽出の検討を試みた 基本的パラメータと今回のPIRT 手法による影響因子の抽出との差異と改善策を下記に示す 1 対象とする機器 部位 材料について基本的パラメータでは決定プロセスの規定や 各種実証試験プログラムが特定の部位を対象に実施されているが 今回の PIRT での対象として材料はオーステナイト系ステンレス鋼 ステンレス鋳鋼 異材継手 あるいは低合金鋼までを 部材として管から容器まで 検査法として欠陥側及び反欠陥側からの探傷を全て網羅して一括して扱っている PIRT 手法において対象とする部位を特定することにより 2の 影響因子の対象 と抽出された影響因子の重要度 知識レベルの評価が明確になると考える 2 影響因子の対象について基本パラメータでは 材料 対象の形状 検査手順パラメータ 装置パラメータ を対象としているが 影響因子の抽出の根拠は明らかにされていない 一方で今回の PIRT 手法では 影響因子の抽出の根拠として 純粋に被検体内の物理現象 を対象として検討がなされている また 今回のPIRT 手法により UT で選定された影響因子は 超音波の特性 と 欠陥の特性 が中心となっているが これらは基本パラメータの中に含まれているがさらに細分化されている PIRT 手法において影響因子の対象を1で特定された部位に対応した 材料 対象の形状 とし その上で 検査手順パラメータ 装置パラメータ を対象に加え また影響因子の抽出の根拠を明確にすることにより検査を困難にする様々な影響因子を的確に抽出できると考える 3パラメータ 影響因子の評価基本的パラメータでは 影響因子の許容値あるいは範囲を定量的に定めているが 影響因子が設定された根拠や許される範囲の設定根拠について必ずしも明瞭でない 一方で 今回のPIRT 手法では 検出性, サイジング精度 の重要性 知識レベルを評価し 影

73 響因子を重要度と知識レベルを基に明確にランキングしている PIRT 手法において 検出性, サイジング精度 の重要性 知識レベルをより定量的 に評価することが望まれる 基本的パラメータは探傷に影響する物理現象に着目した今回の PIRT 手法による評価 抽出と同じ考え方であり 相反するものではないと考える 今後の PIRT 手法の適用法として 疲労健全性評価グランドデザインの欠陥発生 進展の予測に対して疲労割れ非破壊評価の対象機器 部位を選定し 材料 対象の形状 検査手順パラメータ 装置パラメータ を対象としてその影響因子を抽出し 検出性 及び サイジング性 の重要度及び知識レベルをより定量的に評価しそれらをランキングすることにより 重要課題の設定が明確になると考える (ⅴ) まとめ本調査では 原子力発電設備の環境疲労き裂の非破壊評価技術の高信頼化を目指す中で UT 及びECTによる欠陥検出性及びサイジング性に重要な影響を及ぼすと考えられる因子について調査を行った 欧米では検査結果に影響を及ぼすと考えられる重要因子は Essential Parameter(ENIQ) あるいは Essential Valuables(ASME) として試験対象毎にリスト化がなされている しかし これらの重要因子は この範囲を超えると影響があるのでその場合は実証が必要 との条件設定に使用されているのみで それが重要因子として設定された根拠や 許される範囲の設定根拠については必ずしも明確になっていない 上記の点で 影響因子を重要度と知識レベルを基に分類する PIRTの手法はより本格的なアプローチと考えられる しかし PIRT 手法を適用するにあったって 対象を広くとらえ過ぎたきらいがあり 各要因の重要度の絞り込みが難しくなった可能性がある 本研究を 疲労割れグランドデザインの観点から見た研究課題の抽出が目的とすれば 現実に問題となっている項目に対象を絞り込んだ後に PIRT を適用すれば重要因子の絞り込みとそれから導かれる研究課題の設定がより容易にできると考えられる なお 影響因子の抽出には 本調査で述べた基本的パラメータや PIRT で拾い出した内容を活用することができると考える

74 (c) 各種検査手法における影響因子の影響度合いの評価 a) 励磁制御渦電流探傷法による破面接触の影響評価 (i) 疲労割れの破面接触度合いの評価 1 渦電流探傷法による評価 ( ア ) インコネル平板に導入した熱疲労割れの破面接触度評価 平成 23 年度事業において インコネル平板 ( 円盤 ) に人為的に熱疲労割れを導入した試 験体を製作し 各種非破壊検査信号に対する応答の評価が実施された 本年度事業におい ては 当該試験体の破壊試験を実施し 試験体に導入されていた熱疲労割れの断面形状の 確認を行い 得られた断面形状及び平成 23 年度に収集された渦電流探傷信号の有限要素法 解析に基づく分析により 熱疲労割れの破面接触度の評価を実施した 対象とした試験体の外観を図 2.4.3(3)-22 に示す 厚み 20mm 直径 200mm のインコネル 600 製円盤 2 体であり 試験体 1 には 2 体の 試験体 2 には 1 体の熱疲労割れが試験体の ほぼ中央に加工されている 以後試験体 1 に加工された 2 体を TFC-1 TFC-2 試験体 2 に 加工された 1 体を TFC-3 と呼ぶ TFC-1 と TFC-2 の間隔は 10mm 程度である 図 2.4.3(3)-23 がきずの表面開口の様子を撮影した写真である 試験体の破壊試験は きずに対して直交する断面におけるきずの形状を確認することに より行った 一例としてきずのほぼ中央部におけるきず形状観察結果を図 2.4.3(3)-24 に 示す きず開口部は明瞭であるが 蛇行して進展しており また深部に行くに従って開口 幅が小となっていることが確認できる 破壊試験の結果確認された各きずの最大深さを 破壊試験に先立った表面観察の結果確認された表面長さとともに表 2.4.3(3)-6 に示す 分析対象としたのは 大きさ 5mm 角の自己誘導差動型プラスポイントプローブを用いた 測定により得られた渦電流探傷信号である プローブの巻線幅は 3mm 巻線厚みは 0.8mm であり リフトオフは 1.2mm 励磁周波数は 25kHz 100kHz 及び 400kHz である 分析は 磁気ベクトルポテンシャル A を未知変数とした 3 次元有限要素法解析を用いて行った より具体的には 対象とするきずを破壊試験結果に基づく輪郭形状及び一定幅かつ一様な 内部導電率を有する領域としてモデル化し 探傷試験において得られたきず信号を再現す るような きずの幅及び内部導電率の値をパラメータサーベイにより決定した 解析にお ける平板の電磁気的特性はインコネル 600 材の値として一般的に用いられている 導電率 1.0MS/m 比透磁率 1.0 とした 解析の結果得られた各きずの幅及び導電率の値を表 2.4.3(3)-7 にまとめる SUS304 材 に導入された熱疲労割れに対して同様の分析を行った従来研究 35 においては 破面の接触 による影響ときず進展に伴う材料の磁気的特性の変化による影響の分離が困難であるとい う課題があったが SUS304 材に比して磁気的に安定であるインコネル材を対象とした本試 験の結果に基づくと 熱疲労割れの破面の電気的な接触の度合いは非常に小さいものであ 35 Jing Wang, Noritaka Yusa, Hongliang Pan, Toshiyuki Takagi, Hidetoshi Hashizume, Discussion of numerical modeling of thermal fatigue cracks based on eddy current signals, NDT&E International (to appear)

75 るということができる 表 2.4.3(3)-6 熱疲労割れ表面長さ 平均開口幅 最大深さ ID Length [mm] Average opening [μm] Maximum Depth [mm] TFC TFC TFC 表 2.4.3(3)-7 熱疲労割れモデル化における幅と導電率の値 ID Freq. [khz] Width [mm] Conductivity [% base metal] Eq. Resistance TFC TFC TFC 図 2.4.3(3)-22 インコネル平板熱疲労割れ試験体外観 平成 23 年度事業報告書より

76 (a) TFC-1 (b) TFC-3 図 2.4.3(3)-23 インコネル熱疲労割れ表面観察写真 500μm 500μm 500μm TFC-1 TFC-2 TFC-3 図 2.4.3(3)-24 断面観察結果例

77 ( イ )SUS316L 平板に導入した熱疲労割れの破面接触度評価 前節においてインコネル円盤に導入した熱疲労割れの破面の電気的接触の度合いの評価 を行ったが 図 2.4.3(3)-23 のように当該きずは表面の開口が明瞭であり 当該きずの分 析のみで熱疲労割れは破面の電気的接触がほぼ 0 と結論付けることは必ずしも適切ではな いと考えられる そのため 本年度事業において より開口の度合いが小である熱疲労割 れを導入し 同様の評価を実施した 製作した試験体の外観を図 2.4.3(3)-25 に示す 厚さ 25mm の SUS316L 平板に 4 体の熱疲 労割れを導入したものであり 図 2.4.3(3)-26 は割れの表面開口の様子を撮影したもので ある 各割れの表面長さ 開口幅 そして破壊試験の結果明らかとなった最大深さは表 2.4.3(3)-8 に示すとおりであり 表 2.4.3(3)-6 の値と比較すると 確かに開口の度合い は小であることが確認できる 渦電流探傷信号の収集に用いたのは 前節において用いたものと同じ 5mm 角の自己誘 導差動型プラスポイントプローブである ただし 対象とするきずがより小であることを 踏まえて 励磁周波数は 100, 200, 400kHz プローブリフトオフは 0.7mm と設定した 得 られた探傷信号及び探傷試験の後行われた破壊試験によるきず断面写真を図 2.4.3(3)-27 ~ 図 2.4.3(3)-34 に示す 探傷試験信号は深さ 5mm 長さ 20mm の矩形人工スリットからの 信号の最大値が 10V となるように校正されたものであるため いずれのきずからも有意な 信号が得られていると言える また きずには有意な分岐はないものの 複雑に曲がりな がら進展した様子が確認できる 試験により得られた各きずの最大深さは表 2.4.3(3)-8 に示したとおりである 各きず信号の比較のため きず直上を通る走査線からの信号を示 したものが図 2.4.3(3)-35 である 信号の差異の程度は大きいものではない 破壊試験結果に基づいてきずを一定幅かつ一様な内部導電率を有する半楕円領域として モデル化を行い 前節における分析と同様に探傷信号を再現するようなきずパラメータの 値を 3 次元有限要素法解析により評価した結果を 図 2.4.3(3)-36~ 図 2.4.3(3)-39 に示 す いずれの条件においても 幅 導電率ともに小としたときに探傷信号の再現性が高い ことが確認できる より定量的な議論のため 各図縦軸に error として示した 解析によ り得られた信号と探傷信号との差を最小化させた幅及び導電率の値をまとめたものが表 2.4.3(3)-9 である 当該熱疲労割れの電気抵抗は 前節において対象とした熱疲労割れの 値と比べるとやや小ではあるが 文献 37 において報告されている応力腐食割れの値と比べ ると明らかに大である 以上は電磁的非破壊検査の観点からの疲労割れの評価であったが 参考のため破壊試験 に先立って同一試験体に対する超音波探傷試験も実施した 探傷には菱電湘南エレクトロ ニクス社製超音波探傷器 UI-25II 及びジャパンプローブ社製入射角 45 度 60 度 65 度 37 Noritaka Yusa, Hidetoshi Hashizume, Evaluation of stress corrosion cracking as a function of its resisntace to eddy currents, Nuclear Engineering and Design, Vol. 239, pp (2009)

78 70 度の横波斜角探触子 (5Z10x10A45, 5Z10x10A60, 5Z10x10A65, 5Z10x10A70) 及び入射角 60 度の横波集束探触子 (5Z15A60) を用い いずれも手探傷にて行った また 得られた信号評価のための距離振幅特性曲線は 同一試験体に対して 検査面から深さ 10, 20, 30mm の位置に追加で加工されたφ2.4mm の貫通横穴を用いて作成した 得られたきず反射波の振幅を 距離特性曲線比 (DAC%) として示したものが図 2.4.3(3)-40である 各きずの渦電流探傷信号の差異は小でありまた実際破面の電磁気的接触の度合いは同程度であったが 超音波探傷信号振幅には有意な差異があり 電磁非破壊検査と超音波検査におけるきず信号影響因子は異なることを明瞭に示した結果となっている

79 表 2.4.3(3)-8 熱疲労割れ表面長さ 表面開口幅 最大深さ ID Length [mm] Average opening [μm] Maximum Depth [mm] 279BCB BCB BCB BCB 表 2.4.3(3)-9 熱疲労割れモデル化における幅と導電率の値 ID Freq. [khz] Width [mm] Conductivity [% base metal] Eq. Resistance 279BCB BCB BCB BCB 図 2.4.3(3)-25 SUS316L 熱疲労割れ試験体

80 (a) 279BCB1774 (b) 289BCB1776 (c) 300BCB1785 (d) 297BCB1786 図 2.4.3(3)-26 SUS316L 熱疲労割れ表面観察写真

81 (a) 100 khz (b) 200 khz (c) 400 khz 図 2.4.3(3) BCB1774 渦電流探傷信号 (a) 中央 -2mm (b) きず中央 (c) 中央 +2mm 図 2.4.3(3)-28 熱疲労割れ 279BCB1774 金相試験結果 ( スケール :200μm)

82 (a) 100 khz (b) 200 khz (c) 400 khz 図 2.4.3(3) BCB1776 渦電流探傷信号 (a) 中央 -2mm (b) きず中央 (c) 中央 +2mm 図 2.4.3(3)-30 熱疲労割れ 289BCB1776 金相試験結果 ( スケール :200μm)

83 (a) 100 khz (b) 200 khz (c) 400 khz 図 2.4.3(3) BCB1785 渦電流探傷信号 (a) 中央 -2mm (b) きず中央 (c) 中央 +2mm 図 2.4.3(3)-32 熱疲労割れ 300BCB1785 金相試験結果 ( スケール :200μm)

84 (a) 100 khz (b) 200 khz (c) 400 khz 図 2.4.3(3) BCB1786 渦電流探傷信号 (a) 中央 -2mm (b) きず中央 (c) 中央 +2mm 図 2.4.3(3)-34 熱疲労割れ 297BCB1786 金相試験結果 ( スケール :200μm)

85 297BCB BCB BCB BCB1774 (a) 100 khz (b) 200 khz (c) 400 khz 図 2.4.3(3)-35 熱疲労割れきず直上走査線信号リサージュ

86 (a) 100 khz (b) 200 khz (c) 400 khz 図 2.4.3(3) BCB1774 渦電流探傷信号分析結果 (a) 100 khz (b) 200 khz (c) 400 khz 図 2.4.3(3) BCB1776 渦電流探傷信号分析結果 (a) 100 khz (b) 200 khz (c) 400 khz 図 2.4.3(3) BCB1785 渦電流探傷信号分析結果

87 (a) 100 khz (b) 200 khz (c) 400 khz 図 2.4.3(3) BCB1786 渦電流探傷信号分析結果 図 2.4.3(3)-40 熱疲労割れ超音波信号振幅 DAC% 2 四端子法による直接測定 a)(i)1 において渦電流探傷信号の分析により熱疲労割れの破面接触度合い評価を行い 熱疲労割れの破面の電磁気的な接触の度合いは応力腐食割れに比してはるかに小であるということを明らかにした ここでは 得られた結果のさらなる検証のため 四端子法によるより直接的な抵抗値測定を実施した 測定に用いた試験体の製作手順を図 2.4.3(3)-41 に示す 割れを切断後円柱状樹脂に埋め込んだ後 さらに割れに垂直に試験体を切断することで 中央部に貫通した割れが存在

88 する柱状の試験体を製作した 柱状試験体は各円柱状樹脂からきず発生面側から4 体 きず発生面と反対面側から1 体切り出しているが きず発生面側から切り出した柱状試験体に関しては 金属顕微鏡を用いて割れの貫通が確認されたもののみを抵抗測定試験に使用し またきず発生面と反対面側から切り出したものは値の規格化のために用いる母材の抵抗率を測定するために用いている 抵抗値の測定には日置電機製抵抗計 3541および四端子リード 9453 を用いた 尚 ここでの測定対象とした熱疲労割れは a)(i)1において用いられたものと同一である 得られた試験結果を表 2.4.3(3)-10 に示す 表中柱状試験体採集位置とある値が小であるほど当該試験体がきずの開口面側から採集されたことを示しており 特に値が1 とあるのは表層部から採集されたものである Δ(RS)σ 0 とあるのは試験体断面積差異の補正を行い さらにきずの存在による抵抗値の上昇を母材の電気的導電率の値で規格化することで得られた値であり この値が大であるほど電気的抵抗が大であることを意味している 対象が人工スリットのような導電性を有さないきずであればこの値は となり 電流を全く乱さないきずであれば0となるものである 表より 局所的にみると導電性がない 即ち破面の接触が0である部位が存在するものの 全体としては接触の接触は存在すると言えること またその度合いは実際には空間的に分布を有するということが確認できる さらに 同一断面では概ねきず開口部が最も抵抗値が大 即ち接触の度合いが小であり きず深部に行くに従って接触の度合いが大きくなっていることもまた確認できる 熱疲労割れと応力腐食割れの破面接触の度合いの比較のため 従来研究において行われ 38 た 応力腐食割れに対する同様な評価試験の結果と本試験の結果を図として示したものが図 2.4.3(3)-42 である 応力腐食割れに比べると熱疲労割れの破面の電気的接触の度合いは明らかに小であるということができる 38 N. Yusa, H. Hashizume, Four-terminal measurement of the distribution of electrical resistance across stress corrosion cracking, NDT&E International, Vol. 44, pp (2011)

89 図 2.4.3(3)-41 試験体製作手順 図 2.4.3(3)-42 熱疲労割れと応力腐食割れの電気的抵抗値比較

90 表 2.4.3(3)-10 熱疲労割れ抵抗値測定結果 きず番号断面番号 ( 円柱状樹脂番号 ) 柱状試験体採取位置 Δ(RS)σ 0 [mm/%σ 0] E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E

91 (ii) 破面接触度が検査信号に与える影響の評価 1)(c)a)(i) における各種分析の結果 熱疲労割れの破面接触の度合いは応力腐食割れに比べると小であることが確認された 本節においては 得られた知見に基づき 破面接触度が渦電流探傷信号及び渦電流探傷信号に基づくきず深さ担保精度に及ぼす影響について 数値解析による評価を行った ( ア ) 熱疲労割れの破面接触度が渦電流探傷信号に影響を与える度合いの評価電磁非破壊検査の観点からは熱疲労割れは多くの場合はスリットと等価 即ち無限大の抵抗を有すると見なされうるが 応力腐食割れの場合と比べると小ではあるものの 破面の電気的な接触が存在することが明らかとなった よって ここでは3 次元有限要素法解析により 熱疲労割れの破面接触度が渦電流探傷信号に影響を与える度合いを評価する 一般的にきずによる電流の乱れを利用する電磁非破壊検査の有限要素法解析においてきずを一定幅かつ一様な内部導電率を有する領域としてモデル化した場合 きずの破面接触の度合いは きず領域の幅を内部導電率の値で除した値でかなりの程度整理されうるとされている ここでの解析においては 表 2.4.3(3)-7 表 2.4.3(3)-9 に示された結果における最小値を採用し この値として 0.1を採用した 解析において用いたのは1)(c)a)(i) における探傷試験において用いられたものと同一の 5mm 角自己誘導差動型プラスポイントプローブであり リフトオフは 0.7mm 励磁周波数は100kHz と設定した 対象としたのは長さ20mm の矩形きずであり 深さが 1~5mmそれぞれの場合について 内部接触がきず信号に与える影響を評価した 対象はオーステナイト系ステンレス鋼を想定しており 本条件における表皮深さは約 1mmである 尚 1)(c)a)(i) における評価結果及び一般的に疲 39 労割れをモデル化する際の幅の値は小であるという知見に基づき ここでのきずの幅は最大で 0.5mmとした 得られた結果を図 2.4.3(3)-43 図 2.4.3(3)-44 にまとめる 比較のため 各図においては同一形状ではあるが内部導電率を有しない理想きず 即ち人工スリットからの信号も併せて示している 図より きず深さが表皮深さ程度である場合には 破面接触が渦電流探傷信号に及ぼす影響は小であり 最も接触の度合いが大である場合であっても 熱疲労割れからの信号と人工スリットからの信号との間に大きな差異を確認することは出来ない きずが深くなるに従って破面接触の影響が大となるが 破面接触に起因する信号強度の低下の度合いは 最大でも同一形状の人工スリットからの信号に比して4 割程度であることが確認できる 39 Zhenmao Chen et al., A nondestructive strategy for distinction of natural fatigue and stress corrosion cracks based on signals of the eddy current testing, Journal of Pressure Vessel Technology, Vol. 129, pp (2007)

92 きず深さ 5mm きず深さ 4mm きず深さ 3mm きず深さ 2mm きず深さ 1mm 図 2.4.3(3)-43 破面接触の影響 ( きず幅 = 左 : 幅 0.01mm 中 : 幅 0.02mm 右 : 幅 0.05mm)

93 きず深さ 5mm きず深さ 4mm きず深さ 3mm きず深さ 2mm きず深さ 1mm 図 2.4.3(3)-44 破面接触の影響 ( きず幅 = 左 : 幅 0.1mm 中 : 幅 0.2mm 右 : 幅 0.5mm)

94 ( イ ) 熱疲労割れの破面接触度が渦電流探傷信号に基づくきず深さ担保精度に及ぼす影響を 与える度合いの評価 電磁非破壊検査技術は深いきずのサイジング能は低いものの 浅いきずの定量化におい ては既存の超音波探傷技術に比して優位性があると考えられている そのため 電磁非破 壊検査をきず深さがある一定以下であることを確実に担保するための技術として用いるこ とは 原子力プラント全体の安全性向上に資すること大であると期待される しかしなが らその一方 電磁非破壊検査により得られる探傷信号からはきず深さに関する情報が直接 的には得られるものではないため 何らかの逆解析技術を用いる必要があり 逆問題の不 適切性に起因する評価誤差が危惧される 以上の観点に基づき 渦電流探傷信号からの深さ評価における不適切性を 熱疲労割れ を対象とすることを想定し 3 次元有限要素法解析により評価した 解析体系を図 2.4.3(3)-45 に示す 導電性平板中央部に存在する十分に長いきずの深さ を 渦電流探傷信号から評価することを想定したものである きずは一定幅 w 一定深さ d そして一様内部導電率 s を有する矩形領域としてモデル化されており 用いた各パラメー タの値は表 2.4.3(3)-11 に示すとおりである 1)(c)a)(i) における知見を反映し 解析に 用いたきず内部導電率の値は 幅を導電率で割った値が 0.1(mm/% 母材導電率 ) 以上となる よう きず幅の値に応じて表のように 6 段階に変化させた 用いたプローブは 外枠 4.77mm のフィラメント状プラスポイントプローブであるが プラスポイントプローブの出力信号 は差分を取らず プローブを構成する 2 つの矩形コイルの信号を独立に評価した 信号計 算点は きず中央直上から きずに垂直な方向に 1mm 間隔で 10mm まで移動させた箇所まで の 計 11 点である プローブの励磁周波数は 100 khz リフトオフは 1mm と設定した 平 板はインコネル 600 を想定し その導電率は 1MS/m 比透磁率は 1 である 平板厚みは 4.77mm であり これは励磁周波数 100kHz における表皮深さの 3 倍に等しい 評価に用いる指標として 深さ d1 幅 w1 内部導電率 s1 であるきず 1 からの渦電流探 傷信号を d1, w1, 1 深さ d2 幅 w2 内部導電率 s2であるきず2からの渦電流探傷信号を V2, i s d 2, w2, 2 V1, i s とし 両信号の差異を 11 i 1 V 11 2, i d2, w2, s2 V1, i d1, w1, s1 / V1, i d1, w1, s1 i 1 により定義する 表 2.4.3(3)-11 示したきずに関する全ての組み合わせについての値を 評価し を満たす組み合わせを抽出した 尚 本評価手法自体は平成 23 年度事 業におけるものと同一であるが 平成 23 年度事業においては応力腐食割れを想定したモデ ルであったのに対し 本年度解析では 1)(c)a)(i) において得られた知見に基づき 熱疲労 割れを想定して実施したものとなっている 得られた結果を図 2.4.3(3)-46 図 2.4.3(3)-47に示す 各図 (a) 中の数値は を 満たす組み合わせの数であり 図 (b) は を満たす全組み合わせに対する深さ誤差 の標準偏差である 比較のため 図 (b) には平成 23 年度事業において評価を行った 応力

95 腐食割れモデルを対象とした時の値も併せて示した きずが深くなると共に定量的な深さ評価が困難にはなってはいるが その度合いは応力腐食割れを対象とした場合と比べると著しく小であることが確認できる よって 熱疲労割れに対しては 破面の接触の度合いが浅いきずの深さ推定誤差に与える影響は 表皮深さの程度までであれば小であると考えられる これは 1)(c)a)(ii)( ア ) において得られた知見とも合致するものである (iii) 本年度のまとめ電磁非破壊検査における主たる影響因子の一つである破面接触の度合い及びその影響の定量評価を 熱疲労割れを対象として行った 熱疲労割れの破面接触の度合いは 渦電流探傷信号の有限要素法による分析 及び四端子法による直接測定にて実施した 平成 23 年度製作のものに加えて本年度新規に製作した開口幅が小である熱疲労割れを対象としたが いずれの結果においても 熱疲労割れの破面接触の度合いは小であり 破面接触に起因する電気的抵抗の値は最も低い場合でも応力腐食割れのものの10 倍ほどであった 続いて行った破面接触の影響の評価解析の結果 熱疲労割れの評価においては 割れの深さが表皮深さ程度までであれば 破面接触の影響はわずかであることが明らかとなった また 併せて実施した超音波探傷試験により 電磁非破壊検査と超音波検査でのきず影響因子は明らかに異なることを確認した 本年度業務により 電磁非破壊検査の観点から熱疲労割れと応力腐食割れの差異について定量的な知見が得られた 今後割れの破面接触度に関するデータの更なる拡充及び発生メカニズム毎の整理により 破面接触度が探傷信号に及ぼす影響の定量的な評価が可能となり 検査信号評価時のより適切な裕度の設定につながると考えられる 表 2.4.3(3)-11 きずパラメータパラメータ値きず深さ (d) * 1/15, 2/15, 3/15, 4/15, 5/15, 6/15, 7/15, 8/15, 9/15, 10/15, 11/15, 12/15, 13/15, 14/15, 15/15 きず幅 (w) ** 0.01, 0.02, 0.05, 0.10, 0.20, 0.50 内部導電率 (s) *** 0, 2 w, 4 w, 6 w, 8 w, 10 w * 試験体厚さに対する比 ** 単位 : mm *** 単位 : % 母材導電率 図 2.4.3(3)-45 解析体系図

96 d1* d2* (a) きず深さ分布 * unit: (100/15)%t (b) 標準偏差値 図 2.4.3(3)-46 プラスポイントプローブ励磁 - きず平行コイル検出

97 d1* d2* (a) きず深さ分布 * unit: (100/15)%t (b) 標準偏差 図 2.4.3(3)-47 プラスポイントプローブ励磁 - きず垂直コイル検出

98 b) 疲労割れにおけるき裂面酸化皮膜の渦電流試験への影響評価 PIRT 手法により抽出された重要課題の一つである疲労割れにおけるき裂面の酸化被膜の影響を評価し その知見を提供する 具体的には SUS316 の試験体に予き裂として試験体中央に半円形の切欠きを加工して4 点曲げによる疲労試験により切欠きから予き裂を進展させる その後 切欠きを切削加工により取り除き 再び4 点曲げ疲労試験によりき裂を進展させて深さの異なる疲労割れ試験片を作成する 得られた試験体を電気炉にて異なる温度 時間で加熱処理を加えき裂内部に酸化被膜を形成して 渦電流信号への影響の度合いを評価する また 割れが閉口する方向と開口する方向に応力を加えて酸化被膜の渦電流信号への影響の度合いを評価する (ⅰ) 酸化被膜の渦電流信号への影響評価 1 4 点曲げによる疲労割れ試験片の作成図 2.4.3(3)-48に試験体の概要を示す 材質は SUS316 である 大きさは mm 厚さ 20mm で 板の中央に予き裂として切欠きを加工する 切欠きの寸法はR37.5mm 角度が 60 深さが 0.5mm( 長さ約 12mm 幅 0.6mm) に加工する 図 2.4.3(3)-49に使用する曲げ試験機を示す 使用する曲げ試験機はインストロンジャパン 8802 型である 図 2.4.3(3)-50 に試験体の取付け状態を示す 4 点曲げは図 2.4.3(3)-51 に示すように 外側と内側 2 点ずつの支点で試験片に曲げモーメントを付加するもので 軸荷重の圧縮疲労試験機に4 点曲げ冶具を取り付けて実施する 割れ試験面である引張側面の試験片中央部の内側支点間では 最大引張り応力が均一となる 表 2.4.3(3)-12に試験条件を示す 4 点曲げの内側支点間隔を 50mm 外側支点間隔を 200mmとして最大荷重 50kN 最小荷重 5kN として試験周波数を 15Hz とする 振動回数を 3 万回 予き裂深さ約 0.8mm を初期き裂として試験体を作成する 次に 予き裂を導入した試験片の表面を0.6mm 切削加工することにより切欠き部を除去したのち 再度疲労試験により振動回数をそれぞれ 5,000 回 27,000 回 45,000 回加えてき裂を進展させ 疲労割れの目標深さを1mm 3mm 5mmとして試験片を作成する 図 2.4.3(3)-52と図 2.4.3(3)-53 に加熱処理試験後の試験片の疲労割れ部分を切断して断面観察した写真を 図 2.4.3(3)-54 に試験前の表面観察写真を示す 表 2.4.3(3)-13に断面観察及び表面観察より求めた割れ深さと長さの測定結果を示す 2 疲労われの熱処理 ( ) による酸化被膜の影響試験疲労割れ試験片を電気炉内 ( 大気中 ) で加熱温度 で加熱処理して 24 時間毎に 時間で電気炉から取り出し室温まで冷却して 疲労割れの渦電流探傷を行い ECT 信号への影響を確認する 図 2.4.3(3)-55 に使用する渦電流探傷装置の外観を示す 使用する渦電流探傷装置は ASSORT PCⅡ( アスワン社製 ) である 図 2.4.3(3)-56 に使用するプローブの概要を示す

99 使用するプローブはコイル外形がφ5mm で自己誘導自己比較のコイルで二つのパンケーキ型コイルの巻き数は 337 回巻である 試験周波数を 50kHz とし 基準信号を材質 SUS316 に加工された深さ 1mm 幅 0.33mm の EDM スリットの信号を振幅 1.0V 最大振幅の位相を 90 に設定する 疲労割れのプローブの走査は 割れ中央部を割れに対して直行するように割れを中心にして距離を 20mm 測定間隔を 0.1mmとする また き裂全体を探傷するためにき裂を中央にして直行方向に 20mm 並行方向に 40mm 測定間隔を0.2mmとして測定する 3 結果と考察図 2.4.3(3)-57と図 2.4.3(3)-58に450 加熱処理による渦電流探傷信号の変化を示す 図 2.4.3(3)-57は割れ中心部を加熱前と加熱時間 時間で測定した渦電流信号のリサージュ波形であり 図 2.4.3(3)-58は加熱前と加熱 24 時間での割れ全体を探傷した結果である ともに ECT 信号に大きな違いは見られなかった 図 2.4.3(3)-59 と図 2.4.3(3)-60 に600 加熱処理による渦電流探傷信号の変化を示す 図 2.4.3(3)-59 は割れ中心部を加熱前と加熱時間 時間での測定した結果である 図 2.4.3(3)-60は加熱前と加熱 24 時間での割れ全体を測定した結果である 加熱前の信号に比べ 600 加熱後の信号の振幅は小さく 位相が 90 方向に回転していることが確認された また 試験片 No.5 6 の割れ全体の ECT 信号は加熱前の信号振幅に広がりがみられるが 加熱後では広がりがなく同一線上で増減している 表 2.4.3(3)-14に ECT 信号の最大振幅と最大振幅における位相の比較を示す 600 加熱処理試験片では振幅が小さくなり 割れが深くなるとECT 信号の位相が大きく変化することが分かった 図 2.4.3(3)-61にSUS316の標準試験片の EDMスリットの ECT 信号と 600 熱処理の信号の比較を示す 磁性を持っていない標準試験片の信号位相に 600 で熱処理をした試験片の信号位相が近づいていることが分かる 図 2.4.3(3)-62 に硫酸銅 + 塩酸 + エタノール+ 水溶液によるエッジング処理後の割れ断面の組織観察の写真を示す この溶液によるエッジング処理によりマルテンサイトは濃く オーステナイトは白く フェライトは中間色で観察される 450 での熱処理ではマルテンサイト フェライトが多くオーステナイトがわずかに観測された これは 4 点曲げ試験による割れ導入時の応力により加工誘起マルテンサイトが発生して割れ周辺に磁性が表れた可能性がある また 600 の熱処理ではマルテンサイト フェライトが観測されなかったことから 600 の熱処理によりき裂周辺で逆マルテンサイト変態が起きて磁性を失ったと考えられる

100 このことから 酸化被膜の影響よりも応力によるマルテンサイトの誘起による磁性発生の 効果が渦電流探傷信号に与える影響が大きい ただし 図 2.4.3(3)-63 に示す深さと ECT 信号の関係からその影響は大きくない 表 2.4.3(3)-12 試験条件 項目 条件 内側支点間隔 50mm 外側支点間隔 200mm 最大荷重 50kN 最小荷重 5kN 試験周波数 15Hz

101 図 2.4.3(3)-48 試験片及び切り欠き断面図

102 図 2.4.3(3)-49 インストロンジャパン 8802 型外観 曲げ冶具 ( 内側支点 ) 試験体 曲げ冶具 ( 外側支点 ) 図 2.4.3(3)-50 試験体取付け状態

103 内側支点間隔 :50mm 外側支点間隔 :200mm 割れ試験面 図 2.4.3(3)-51 4 点曲げ 表 2.4.3(3)-13 疲労割れ試験片の深さ 長さ評価結果 No. 測定深さ [mm] 測定長さ [mm] 試験片内容 熱処理 熱処理 熱処理 熱処理 熱処理 熱処理

104 1mm No Hr No Hr No Hr 図 2.4.3(3)-52 試験片断面写真 (450 加熱処理試験片 ) 1mm No Hr No Hr No Hr 図 2.4.3(3)-53 試験片断面写真 (600 加熱処理試験片 )

105 1mm No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 図 2.4.3(3)-54 表面観察写真

106 図 2.4.3(3)-55 渦電流探傷装置 (ASSORT PC Ⅱ) 図 2.4.3(3)-56 渦電流探傷プローブ

107 表 2.4.3(3)-14 ECT 信号の最大振幅と最大振幅における位相の比較 No. No.1 No.2 No3 No.4 No.5 No.6 目標き裂深さ 1.2mm 2.3mm 4.4mm 0.9mm 2.5mm 4.1mm 熱処理 最大振幅 [V] 位相 [ ] 測定値差測定値差 Before Hr Before Hr Before Hr Before Hr Before Hr Before Hr

108 No.1 き裂深さ 1.2mm No.2 き裂深さ 2.3mm No.3 き裂深さ 4.4mm 図 2.4.3(3) 加熱処理の渦電流信号比較 ( 割れ ) 中心

109 No.1 き裂深さ 1.2mm No.2 き裂深さ 2.3mm No.3 き裂深さ 4.4mm 図 2.4.3(3) 加熱処理の渦電流信号比較 ( 割れ全体 )

110 No.4 き裂深さ 0.9mm No.5 き裂深さ 2.5mm No.6 き裂深さ 4.1mm 図 2.4.3(3) 加熱処理の渦電流信号比較 ( 割れ中心部 )

111 No.4 き裂深さ 0.9mm No.5 き裂深さ 2.5mm No.6 き裂深さ 4.1mm 図 2.4.3(3) 加熱処理の渦電流信号比較

112 図 2.4.3(3)-61 No.6 試験片 (600 熱処理 ) と標準試験片 EDM スリットの信号との比較 200 m a) 450 熱処理試験片 b) 600 熱処理試験片 図 2.4.3(3)-62 硫酸銅 + 塩酸 + エタノール + 水溶液によるエッジング断面写真

113 図 2.4.3(3)-63 割れ深さと ECT 信号振幅の比較 (ⅱ) 割れ開口と閉口方向の応力に対する酸化被膜の影響 1 試験内容試験片は前項同様に 4 点曲げによる疲労試験により目標深さ 3mm として作成し 測定装置 プローブは同様のものを使用する 図 2.4.3(3)-64 にプローブの取り付け状態を示す 試験片の割れの中央で ECT 信号が最大となる個所にプローブを固定し プローブの横に歪ゲージを接着して 4 点曲げ試験機にセッティングする 試験片の変形に対して プローブにリフトオフが出ないようにプローブホルダー内のバネにより均一の力で試験片表面に押しつけるようにしてある 図 2.4.3(3)-65 に試験片の取り付け状態を示す 4 点曲げ冶具の内側支点に割れを置いた場合には割れに対して閉口方向の応力が加わり 外側支点では開口方向に応力が加わることとなる 加重制御で0kNから 30kN までを0.5kN ごとに加重を増加させて渦電流信号を測定する 2 結果と考察図 2.4.3(3)-66 a) に割れ閉口方向の応力に対する渦電流探傷信号を示す また 図 2.4.3(3)-68 に割れに閉口方向に応力をかけたときの歪と ECT 信号の測定結果を示す 割れ閉口応力の増加に対して加熱処理なしの試験片の ECT 信号の振幅に減少がみられた 600 加熱処理した試験片には信号の変化は見られなかった 図 2.4.3(3)-67にき裂の導電

114 率を変化させたときの渦電流信号の変化を示す 図からき裂領域の導電率が大きくなると, 渦電流信号の振幅が小さくなることがわかる 酸化被膜がない場合には 疲労試験による歪により割れが開口した状態になっており 閉口応力が加わることによってき裂面において接触が起きたことが原因で導電率が大きくなったと考えられる また 600 熱処理試験体では 疲労試験による歪で開口した割れが熱処理により閉口状態になったため閉口応力が加わっても信号に変化がなかったと考えられる 図 2.4.3(3)-66 b) に割れ開口方向の応力に対する渦電流探傷信号を示す 図 2.4.3(3)-69 に開口方向の応力をかけたときの歪と ECT 信号の測定結果を示す 加熱処理なしの試験片の ECT 信号に大きな変化は見られなかった 600 加熱処理した試験片の ECT 信号の振幅が増加し 位相が変化している 歪が 400 m/m 付近で振幅に大きな変化が表れているが これは熱処理により試験片の歪が除去されて割れの先端部で閉口したき裂が開口応力によって開口することにより導電率が小さくなり渦電流信号が増加したものと考えられる 渦電流信号に対して き裂面の酸化被膜の影響よりも 試験片の歪によるき裂の閉口 開口が影響した可能性がある まとめ本年度は 疲労割れにおけるき裂面酸化被膜の渦電流試験への影響評価として酸化被膜の渦電流信号への影響と割れ開口と閉口方向の応力に対する酸化被膜の影響を評価した その結果 加工誘起マルテンサイトによる磁性発生の効果が渦電流探傷信号に影響を与える可能性を示した また 試験片の歪が閉口 開口方向の応力に影響を与えることを示した しかし 本試験で生成したき裂面の酸化被膜の影響は小さいという知見を得た 今後はより実機に近い条件下での疲労割れの導入と酸化被膜の生成を検討する必要がある 図 2.4.3(3)-64 プローブの取り付け

115 図 2.4.3(3)-65 試験片の取り付け a) 割れ閉口方向の応力 b) 割れ開口方向の応力 図 2.4.3(3)-66 割れ閉開口方向の応力に対する ECT 信号

116 図 2.4.3(3)-67 導電率を変化したき裂の EC 信号の数値解析結果

117 a) き裂閉口方向応力熱処理なし試験片 b) き裂閉口方向応力 600 熱処理試験片 図 2.4.3(3)-68 き裂閉口方向応力による歪と ECT 信号の関係

118 a) き裂開口方向応力熱処理なし試験片 b) き裂開口方向応力 600 熱処理試験片 図 2.4.3(3)-69 き裂開口方向応力による歪と ECT 信号の関係

119 c) き裂先端部の閉口がサイジング精度に及ぼす影響評価 (ⅰ) 目的 40,41,42 43,44,45 圧縮残留応力やき裂面間での酸化膜生成によりき裂先端が閉じるき裂閉口が 46,47,48,49 生じると 超音波が透過してしまうため き裂深さの過小評価や見逃しを引き起こす 原子炉実機ではき裂深さの計測精度が重要だが き裂閉口が生じると精度低下の問題が起こる可能性がある この問題の解決法として 固体内界面での超音波の非線形現象を利用した方法 ( 非線形超音波 ) が注目されている 50,51 非線形超音波計測では 大振幅超音波 ( 周波数 f) の引張応力でき裂閉口部を開かせ 開閉振動を誘起することで その部位で発生する高調波 (2f, 3f, ) 52,53,54,55 やサブハーモニック波 (f/2, f/3, ) 56,57,58,59,60 40 W. Elber. Fatigue crack closure under cyclic tension., Fracture Mechanics, Vol. 2, No. 1, pp , (1970). 41 A. Steuwer, L. Edwards, S. Pratihar, S. Ganguly, M. Peel, M. E. Fitzpatrick, T. J. Marrow, P. J. Withers, I. Sinclair, K. D. Singh, N. Gao, T. Buslaps, J. -Y. Buffiere. In situ analysis of cracks in structural materials using synchrotron X-ray tomography and diffraction., Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, Vol. 246, pp A. Steuwer, M. Rahman, A. Shterenlikht, M. E. Fitzpatrick, L. Edwards, P. J. Withers. The evolution of crack-tip stresses during a fatigue overload event., Acta Materialia, Vol. 58, pp , (2010) 43 庄子哲雄 : 応力腐食割れのモデル化と進展予測., 非破壊検査 Vol. 54 No. 12 pp (2005). 44 N. Yusa, S. Perrin, K. Mizuno, Z. Chen, K. Miya. Eddy current inspection of closed fatigue and stress corrosion cracks., Measurement Science and Technology, Vol. 18, pp , (2007). 45 S. Horinouchi, M. Ikeuchi, Y. Shintaku, Y. Ohara, K. Yamanaka. Evaluation of closed Stress corrosion cracks in Ni-based alloy weld metal using subharmonic phased array., Japnese Journal of Applied Physics, Vol. 51, pp. 07GB15-1-5, (2012). 46 O. Buck, C. L. Ho, H. L. Marcus, R. B. Thompson. Rayleigh waves for continuous monitoring of a propagating crack front., ASTM STP 513, pp , (1972). 47 O. Buck. Characterization of a propagating crack by ultrasonic techniques., International Journal of Fracture, Vol. 8, No. 1, pp , (1972). 48 O. Buck, C. L. Ho, H. L. Marcus. Plasticity effects in crack propagation., Engineering Fracture Mechanics, Vol. 5, No. 1, pp , (1973). 49 J. D. Frandsen, R. V. Inman, O. Buck. A comparison of acoustic and strain gauge techniques for crack closure., International Journal of Fracture, Vol. 11, No.2, pp.23-34, (1975). 50 Y. Zheng, R. G. Maev, I. Y. Solodov, Nonlinear acoustic applications for material characterization: A review., Canadian Journal of Physics, Vol. 77, pp , (1999). 51 K. Y. Jhang, Nonlinear ultrasonic techniques for non-destructive assessment of micro damage in material: A review., International Journal of Precision Engineering and Manufacturing, Vol. 10, No. 1, pp , (2009). 52 O. Buck, W. L. Morris, J. M. Richardson. Acoustic harmonic generation at unbounded interfaces and fatigue cracks., Applied Physics Letters, Vol. 33, No. 5, pp , (1978). 53 Y. Ohara, K. Kawashima. Detection of internal micro defects by nonlinear resonant ultrasonic method using water immersion., Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 43, No. 5B, pp , (2004)

120 を用いる これに関し 接触型音響非線形性 (contact acoustic nonlinearity: CAN) 61 や非線形弾性波スペクトロスコピー (nonlinear elastic wave spectroscopy: NEWS) 62,63 の概念も提示された これらの中でも 深さ計測の有望な手法として サブハーモニック波とフェーズドアレイを組み合わせた映像装置 SPACE(subharmonic phased array for crack evaluation) 64,65,66,67,68 が挙げられる また 超音波探傷で使用される MHz 帯域の周波数に 54 川嶋紘一郎 村瀬守正 小原良和 山田龍三 松嶋正道 植松充良 藤田文雄 宮武和 : ナノメートルオーダーの隙間を持つ微細損傷 不完全結合部検出のための非線形超音波画像化システム., 非破壊検査 Vol. 54 No. 9 pp (2005). 55 S. Biwa, S. Hiraiwa, E. Matsumoto. Experimental and theoretical study of harmonic generation at contacting interface., Ultrasonics, Vol. 44, pp. e1319-e1322, (2006). 56 I. Y. Solodov, C. A. Vu. Popping nonlinearity and chaos in vibrations of a contact interface between solids., Acoust. Phys., Vol. 39, pp (1993). 57 I. Solodov, J. Wackerl, K. Pfleiderer, G. Busse. Nonlinear self-modulation and subharmonic acoustic spectroscopy for damage detection and location., Applied Physics Letters, Vol. 84, No. 26, pp , (2004). 58 K. Yamanaka, T. Mihara, T. Tsuji. Evaluation of closed cracks by model analysis of subharmonic ultrasound., Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 43, pp (2004). 59 R. Sasaki, T. Ogata, Y. Ohara, T. Mihara, K. Yamanak. Simulation and analysis of subharmonics and tail effect for ultrasonic nondestructive evaluation of closed cracks., Japnese Journal of Applied Physics, Vol. 44, No. 6B, pp , (2005). 60 Y. Ohara, T. Mihara, K. Yamanaka. Effect of adhesion force between crack planes on subharmonic and DC responses in nonlinear ultrasound., Ultrasonics, Vol. 44, No. 2, pp , (2006). 61 K. S. Len, F. M. Severin, I. Y. Solodov. Experimental observation of the influence of contact nonlinearity on the reflection of bulk acoustic waves and the propagation of surface acoustic waves., Soviet Physics Acoustics, Vol. 37, No. 6, pp , (1999). 62 K. E. -A. V. D. Abeele, P. A. Johnson, A. Sutin. Nonlinear elastic wave spectroscopy (NEWS) techniques to discern material damage, Part I: nonlinear wave modulation spectroscopy (NWMS)., Research in Nondestructive Evaluation, Vol. 12, pp , (2000). 63 K. E. -A. V. D. Abeele, J. Carmeliet, J. A. Tencate, P. A. Johnson. Nonlinear elastic wave spectroscopy (NEWS) techniques to discern material damage, Part II: single-mode nonlinear resonance acoustic spectroscopy., Research in Nondestructive Evaluation, Vol. 12, pp , (2000). 64 Y. Ohara, T. Mihara, R. Sasaki, T. Ogata, S. Yamamoto, Y. Kisihimoto, K. Yamanaka. Imaging of closed cracks using nonloinear response of elastic waves at subharmonic frequyency., Appl. Phys. Lett., Vol. 90, pp (2007). 65 Y. Ohara, S. Yamamoto, T. Mihara, K. Yamanaka. Ultrasonic evaluation of closed cracks using subharmonic phased array., Appl. Phys. Lett., Vol. 47, pp (2008). 66 Y. Ohara, H. Endo, T. Mihara, K. Yamanaka. Ultrasonic measurement of closed stress corrosion crack depth using subharmonic phased array., Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 48, pp. 07GD01-1-6, (2009). 67 小原良和 堀之内聡 新宅洋平 柴崎亮 山口雄一 田上稔 山中一司. 単一アレイのサブハーモニック超音波フェーズドアレイ SPACE の開発とステンレス鋼溶接部の閉じた応力腐食割れの高選択性映像化., 非破壊検査 Vol. 60 No. 11 pp (2011). 68 Y. Ohara, S. Horinouchi, M. Hashimoto, Y. Shintaku, K. Yamanaka. Nonlinear ultrasonic imaging method for closed cracks using subtraction of responses at different external loads., Ultrasonics, Vol. 51, pp , (2011)

121 おける閉じたき裂のサブハーモニック波発生に関する解析法として 減衰 2 重節点 (damped double node: DDN) モデル 69 が提案され 発生メカニズムや適切な映像化条件の検討に関する研究も始まった 70,71 本節では 閉じたき裂の映像化のため DDN モデルを横き裂モデルから実機で問題となることが多い縦き裂モデルへと拡張し 閉じたき裂映像化の解析を行う さらに き裂先端部の閉口がサイジング精度に及ぼす影響評価を実験的に検証するため SPACE (subharmonic phased array for crack evaluation) の共焦点化を行い その基本性能を検証する (ⅱ) DDN モデルによる解析 1 DDN モデルの縦き裂への拡張 これまでに開発した解析モデルでは き裂が底面に平行な配置であったため 実際に発 生するき裂に近い底面に垂直な縦き裂モデルに拡張した 図 2.4.3(3)-70 において u w は xおよび z 方向の粒子速度 T 1 Txx T 3 Tzz T 5 Txzは引張およびせん断応力を表す - き裂面は閉じた状態では通常の節点を持ち 開いた状態では u とu という 2つの節点に分 離すると仮定し さらに減衰項を導入する 各状態間の遷移は次の判定基準により行う 閉じた状態において x iにおけるき裂面の引張応力を 左右の応力計算節点 x i と n n 1M { 1 1 j x i 1における応力の場合は加算平均 T T ( i, j) T ( i 1, )}/ 2 として計算する T 1M のnは計算時の時間ステップを表している 開口条件として残留応力 Tth を設定し T 1M T の場合は閉じた状態を継続し T 1 M T th の場合はき裂が開いた状態に遷移する 開いた状態において き裂面とき裂面に隣接する粒子速度の相対速度に比例する粘性減 衰力が働くと仮定する このことから u とuは th u n 1 n ( i, j) u ( i, j) 2V PLT1 n ( i, j) { u n ( i, j) n u ( i 1, j)} (2.4.3(3)-1) u n 1 n ( i, j) u ( i, j) 2V PLT1 n ( i, j) { u n ( i, j) n u ( i 1, j)} (2.4.3(3)-2) で表される は減衰係数である 粒子速度を時間で積分すると 粒子変位が得られる 69 K. Yamanaka, Y. Ohara, M. Oguma, Y. Shintaku. Two-dimensional analyses of subharmonic generation at closed cracks in nonlinear ultrasonics., Applied Physics Express, Vol. 4, pp , (2011). 70 山中一司 小原良和 小熊みゆき 新宅洋平. 減衰 2 重節点を用いた閉口き裂における分調波発生の 2 次元解析., 非破壊検査 Vol. 61 No. 3 pp , (2012). 71 Y. Ohara, Y. Shintaku, S. Horinouchi, M. Ikeuchi, K. Yamanaka. Enhancement of selectivity in nonlinear ultrasonic imaging of closed cracks using amplitude difference phased array., Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 51, pp. 07GB18-1-6, (2012)

122 二重節点での粒子変位の差 u はき裂開口変位 (COD) であり u n u n u n と表される u 0 であればき裂は開いた状態を継続し u 0となれば き裂は閉じた状態へと遷移する 本研究ではこのモデルを用いてシミュレーションを行う Z X 閉じたき裂 w T5 T5 T 5 u u T 5 w w T 1 T 3 T 1 T 3 u u T 5 w w w T 1 T 3 T 1 T 5 T T5 5 u u T 3 T 5 w w w T 1 T 3 T 1 T 3 開閉の基準圧縮残留応力 : OPEN CLOSE き裂開口変位 : T 5 T 5 u u T 5 u w w w 開いたき裂 T 1 T 3 T 1 T 3 T 5 u u u u u w w w T 1 T 3 T 1 T 3 T T1 1 T 5 T 5 T 5 u u u T 3 T 3 図 2.4.3(3)-70 DDN の縦き裂モデル 2 解析条件 本研究では 原子力発電プラントの構造部材にも用いられている SUS316L を想定してシ ミュレーションを行った 計算領域 送受信アレイ き裂配置を図 2.4.3(3)-71 に示す 入射波の周波数は 8 MHz サイクル数は 3 アレイ素子数 32 個 入力波は焦点を遠方にと ることで平面波を作り その中心がき裂の中心に当たるように設定した また 圧縮残留 応力 Tth を 100 MPa アレイの励振振幅を 80 nm 100 nm 160 nm と変化させて解析を行っ た

123 IA(1) IA(32) X=-50 Z=0 80 V1 Z=400 Z Closed crack V2 C Back surface B FDTD image X= 図 2.4.3(3)-71 シミュレーション条件 X FDTD analysis area Imaging area 3 解析結果 解析結果の z 方向変位を用いて入射波がき裂に到達した時間 ( t µs) でのスナップ ショットを図 2.4.3(3)-72 に示す 小振幅入射 (80 nm) での解析結果 ( 図 2.4.3(3)-72(a)) では 入射波がき裂面に到達しても通常の弾性振動が観察されただけであった これは き裂での引張応力 ( T 1 M ) が圧縮残留応力 ( T th ) より小さかったため通常の弾性体の節点 配置である閉じたき裂のモデルのままで 開いたモデルに遷移しなかったからである こ れにより小振幅では入射波がき裂を透過してしまう現象を再現した 入射波振幅 100 nm の場合 大振幅を入射した解析結果のスナップショット ( 図 2.4.3(3)-72(b)) では き裂 の中央部では開閉振動が起こり 散乱波が発生した しかし き裂の上端や下端は開閉振 動しなかった そこで 入射波振幅を 160 nm まで増大させると 入射波がき裂に到達する につれてき裂が開き そのき裂面による平面波の非線形反射波が観察された しかし 反 射波の伝搬方向は底面側のため受信アレイでは検出できないと考えられる 一方 き裂の 上端と下端から同心円状に広がる散乱波も観察された これらの散乱波は上方に伝搬して いることから 受信アレイでも検出できると考えられる 入射波がき裂面に到達すると き裂面全体開閉振動が観察された これは入射波の引張応力が圧縮残留応力より大きく き裂が開いたためである これによって き裂からの非線形反射波が再現された 次に き裂での開閉振動が観察された縦裂モデルの大振幅入射条件で き裂中心の変位 波形を図 2.4.3(3)-73 左に示す 上からき裂開口変位 (COD) u 2 重節点の透過側 u 入射側 u の変位波形である u の波形から t 1. 1µs あたりから 2 度の開閉を繰り返し ていることがわかる また この時刻で各 2 重節点の波形が歪んでいる このことから低 周波成分の存在が予想できる そこで次に それぞれの波形について t 0µs から1.8 µs の時間範囲でウェーブレット 変換を行った ( 図 2.4.3(3)-73 右 ) 全ての結果で 2f 高周波成分や f/2 のサブハーモニ

124 ック波成分を観察できた このことから 閉じたき裂でのサブハーモニック波の発生を再 現できることがわかる また サブハーモニック波成分を用いた映像化が可能であると考 えられる (a) Circular scattered shear waves (b) Circular scattered shear waves (c) 45 V1 23 V2 longitudinal waves Incident amplitude:80 nm longitudinal waves Incident amplitude:100 nm Incident amplitude:160 nm nm 100 Frequency MHz nm COD nm 図 2.4.3(3)-72 z 方向変位のスナップショット t= f f/2 f f/ s f f/ Time Time ms ms 図 2.4.3(3)-73 き裂中心の変位波形とウェーブレット変換結果

125 (b) V2 (a) V1 3f/2 f 0 f 3f/4 f/2 0 3f/2 f/2 f/ f/ f/ Time t [ s] Time t [ s] 図 2.4.3(3)-74 き裂端部でのシフト加算波形とウェーブレット変換結果 シミュレーションにより得られた受信波に SPACE のアルゴリズムを適用して映像化を行 った 線形散乱源からの応答は基本波 周波数 f であるが 非線形散乱源である閉じた き裂の応答にはサブハーモニック波 周波数 f/2 が含まれる これらを受信し ディジ タルフィルタを用いて各周波数成分に分離することで FA fundamental array 像と非線 形の SA subharmonic array 像を作る 本解析で得られた SA 像を図 2.4.3(3)-75 に示す 開閉振動が観察されなかった小振幅入射 80 nm では 図 2.4.3(3)-75(a)で示すよう にき裂からの応答はなく底面からの応答のみ観察された 次に 入射波振幅 100 nm の SA 像 図 2.4.3(3)-75(b) では き裂の中央部が映像化さ れた しかし き裂の上端や下端は映像化されなかった 特に上端はき裂深さの計測精度 に影響を及ぼすため この振幅では閉じたき裂の映像化には不十分であることが分かった そこで 入射波振幅を 160 nm まで増大させた結果 SA 像 図 2.4.3(3)-75(c) では 2 つに分かれたき裂の応答が得られた これらの応答は 各々き裂の上端と下端からの散乱 波によると考えられる ここで SUS316L の閉じた疲労試験片での SPACE を用いた実験結果72とシミュレーション 結果を図 2.4.3(3)-76 で比較する 実験の SA 像 b ではき裂閉口部の上端の A 下端の B が観察された これは シミュレーション結果と同様である これより 縦き裂モデルの シミュレーションにおける SA 像は 実験結果の特徴を再現できた 72 Y. Ohara, T. Mihara, R. Sasaki, T. Ogata, S. Yamamoto, Y. Kishimoto, K. Yamanaka. Imaging of closed cracks using nonlinear response of elastic waves at subharmonic frequency., Applied Physics Letters, Vol. 90, pp , (2007)

126 (a) SA (80 nm) (b) SA (100 nm) (c) SA (160 nm) V1 V2 図 2.4.3(3)-75 閉じたき裂の映像化結果 図 2.4.3(3)-76 実験とシミュレーションの比較

127 (ⅲ) 共焦点 SPACE 1 測定装置共焦点 SPACEの原理と構造を図 2.4.3(3)-77 に示す アレイ探触子から焦点に集束させることで大振幅超音波 ( 周波数 f) を送信する これにより 送信超音波が照射される領域の開いたき裂では線形散乱 ( 周波数 f) が起こり 閉じたき裂では非線形散乱 ( 周波数 f/2) が起こる これらの線形 非線形散乱波は同じアレイ探触子で受信される この受信波形からディジタルフィルタで基本波成分およびサブハーモニック波成分を分離した後 遅延則に従ってシフト加算 ( 受波フォーカシング ) することで 基本波 (fundamental array; FA) 像とサブハーモニック波 (subharmonic array; SA) 像が形成される これにより FA 像では開いたき裂や底面などの線形散乱源が SA 像では閉じたき裂などの非線形散乱源が映像化される 送信焦点固定の場合 有効な映像化範囲は送信焦点近傍に限定されるが 共焦点 SPACEでは送信焦点を走査するため 広範囲を一度に映像化できる 上述の原理を定式化する 送信超音波を集束させるための遅延則は rn r f tt n (r f ) (2.4.3(3)-3), V である ここで r f は送信焦点の位置ベクトル r n はアレイの n 番目の素子の位置ベクト ル,V は試験片の音速であり 集束させた場合の分解能は次式で表される r d f D (2.4.3(3)-4) ここで は波長, d f は焦点までの距離,Dはアレイの開口幅である 式(2.4.3(3)-4) より, Dが大きいほど 分解能が高い しかし r が小さいほど 一度の送信での見逃しのリスクは高くなる 一方 d f もしくは r f が無限大の場合は平面波の送信に等しい この場合 集束効果は得られないが 一度に広範囲の送信が可能である 任意の位置ベクトル r の映像強度は I tc F, S ( F, S r, tc r ) u t dt (2.4.3(3)-5) と表される ここで t C はくさびを用いた場合の伝搬時間やトリガー遅延などの補正項 は入射波のサイクル数に依存して決める時間幅 F N u ( r, t) u t t r (2.4.3(3)-6) n 1 F, n n

128 S N u ( r, t) u t t r (2.4.3(3)-7) n 1 S, n n rs r r rn t n ( r) (2.4.3(3)-8) V である ここで N はアレイの総素子数 u F ( r, t) はバンドパスフィルタで周波数 f 付近の 成分だけを抽出された波形 u S ( r, t) はバンドパスフィルタで周波数 f/2 付近の成分だけを 抽出された波形 t (r n ) はアレイ中心の位置ベクトル r s から r を経由して r n への伝搬時間で ある 尚 共焦点 SPACE の受波フォーカシングで複数の送信焦点で一つの映像を形成する場合 図 2.4.3(3)-78に示すように 送信焦点を r ) 刻みを半径方向 角度方向各々 R n( R n, n とすると R n R/ 2~ R n R / 2および n / 2~ / 2 n の領域の映像化には 送信焦点 rnで受信された波形を用いる これを異なる送信焦点に対して順次行うことで 広範囲の映像を形成する FA(Fundamental Array) Image [f] Open Crack SA(Subharmonic Array) Image [f/2] Closed Crack Burst Generator, Phased Array Total Number N f r f z f, f/2 x Digital Filter Array Sensor nth Element r n Center of Array r s 図 2.4.3(3)-77 共焦点 SPACE

129 焦点位置 図 2.4.3(3)-78 共焦点 SPACE の概念図 2 実験結果まず共焦点 SPACEの映像化アルゴリズムの検証を行うため 丸穴試験片 ( アルミニウム合金 A7075) で基礎実験を行った 測定配置を図 2.4.3(3)-79に示す 深さ 15 mm 25 mm 35 mm の位置の丸穴を PZT アレイ探触子 ( 周波数 5 MHz 32 素子 0.5 mm ピッチ ) で映像化を行った 送信焦点の走査条件として 図 2.4.3(3)-80 に示すように 角度 10 ~37 (3 刻み ) 深さ 10 mm~40 mm(10 mm 刻み ) を選択した 測定配置 y x z PZT アレイ探触子 (32 素子, 0.5 mm) A B C 図 2.4.3(3)-79 丸穴試験片の測定配置

130 図 2.4.3(3)-80 送信焦点の走査条件 各送信焦点で得られた映像を図 2.4.3(3)-81 に示す これにより 送信焦点位置により 映像化された散乱源が異なった これは 送信焦点近傍に超音波ビームが集束するため その近傍の散乱波強度が強くなったためと考えられる そこで 3 つの丸穴が明瞭に観察 された映像を図 2.4.3(3)-82 に示す これより 送信焦点を適切に選択することで 散乱 源を効果的に映像化できることがわかった しかし 単一の送信焦点の場合 1 つの映像 で 3 つの丸穴を同時に映像化することはできない これは 単一送信焦点では 映像化可 能範囲が限定されることを示唆している そこで 図 2.4.3(3)-80 に示すように 送信焦点近傍の映像を貼りあわせて 1 つの映 像を合成した結果を図 2.4.3(3)-83 に示す これにより 1 つの映像で 3 つの丸穴を明瞭 に映像化することに成功した これは 広範囲を 1 度に映像化することを示し き裂端部 の位置が不明の実際の検査では検査時間を大幅に短縮できることを示唆している mm C 2 B A 40 mm 図 2.4.3(3)-81 各送信焦点で得られた丸穴試験片映像

131 A B C 2 図 2.4.3(3)-82 各丸穴欠陥に焦点が合った条件の映像化結果 A B C 底面 図 2.4.3(3)-83 共焦点 SPACE による丸穴の映像化結果

132 (ⅳ) 本年度のまとめ閉じたき裂の映像化のため DDN モデルを横き裂モデルから実機で問題となることが多い縦き裂モデルへと拡張し 閉じたき裂映像化の解析を行った さらに き裂先端部の閉口がサイジング精度に及ぼす影響評価を実験的に検証するため 閉じたき裂の映像法 SPACEの共焦点化を行い 丸穴試験片でその基本性能を検証した

133 d) き裂輪郭形状がサイジング精度に及ぼす影響評価ここでは (a) の c) で現状の非破壊検査技術の課題としてあげられた アスペクト比が大きなき裂に対して超音波探傷試験 (UT) で深さサイジングが行えなかった事例を受けて き裂輪郭形状が UTによるき裂サイジング精度に及ぼす影響について検討する き裂輪郭形状がサイジング精度に及ぼす影響を調べるために 2 種類のUT 手法により熱疲労き裂の計測を行い その結果を分析した 使用するUT 手法の一つは 従来 UT 法としてフェーズドアレイ UT 法を選び また もう一手法は き裂輪郭形状を再現できると考えられる 3 次元開口合成 (3-Dimensional Synthetic Aperture Focusing Technique, 3D SAFT) 法を選んだ 3D SAFT 法は 原子力安全 保安院高経年化対策強化基盤整備事業 ( 平成 18~22 年度 ) において ニッケル基合金溶接金属内の応力腐食割れに対して比較的複雑な形状であっても高精度な深さサイジングが行える可能性が示されている 以下に 熱疲労き裂が入った同一の試験体の欠陥評価をフェーズドアレイ UT 法と 3D SAFT 法の両方で行った結果を比較する (ⅰ) 熱疲労き裂試験体図 2.4.3(3)-84に使用した試験体を示す これらの試験体は 疲労割れ非破壊評価高度化検討会で準備したものであり 材料が 600 系ニッケル基合金 ( 母材 ) で 直径 200 mm 厚さ 20 mmの円板状であり 円板の中央に熱疲労き裂が付与されている 位置決めの目印として 円周の縁の一部を切り落とし き裂面に平行な直線部を作った 試験体は B1553 と B1554の 2 体である 以下に記述する測定では これらの試験体について熱疲労き裂の開口面の裏面 ( 反開口面 ) から探傷を行った また 座標系は 探傷面 ( 反開口面 ) の中心を原点とし 図 2.4.3(3)-84 に示すように X 軸方向と Y 軸方向を定め 探傷面から板厚方向を Z 軸方向とした き裂開口面からの図 Y X 図 2.4.3(3)-84 熱疲労き裂付与試験体

134 (ⅱ) フェーズドアレイUT による測定結果図 2.4.3(3)-85は フェーズドアレイ UT による測定で使用した探触子である 測定における試験周波数は 3 MHz または 5 MHz とした 対象となる試験体の材料はニッケル基合金の母材であるが 最終的には溶接金属内のき裂の評価を念頭に縦波を用いた探傷を行った そのため入射角 16.5 の縦波斜角用のくさびを使用して超音波を送受信した 探傷器は栄進化学 ( 株 ) 製のフェーズドアレイ UT 装置 MC-256 を使用し 受信波形の収録は独自に開発した波形収録ソフトで行った 測定では き裂面に対して垂直に超音波が入射されるよう探触子を配置し 探触子とき裂との距離を一定に保ちながら探触子をき裂面方向に走査し 1 mm 刻みで探傷データを取得した 図 2.4.3(3)-86は フェーズドアレイUT 法の測定により得られたDスコープ画像の例 ( 試験体 B1554 周波数 5 MHz) であり き裂面の端面から投影した画像である 画像の色合いは振幅に対応しており青系の色は振幅が小さく 赤系の色は振幅が大きいことを示す 強く広い範囲で現れている指示は 欠陥の開口部から戻ってくるコーナーエコーである これに対して 板厚からわかる底面位置を白の破線で入れている 一方 コーナーエコーの上方にある小さな指示は き裂先端部で生じる散乱波による端部エコーである 従来 UT 法による端部エコーは 一般的に き裂最深部付近の一部からのみ得られる これは き裂深さが大きく変化する部分からの端部エコーは観測しにくいからであると考えられる よって 従来 UT 法では 観測されたコーナーエコーと端部エコーからき裂深さを求め これをき裂の最大深さとする ただし これが成り立つのはき裂の最深部がある程度平坦である場合であり き裂輪郭形状のアスペクト比が大きいなどき裂形状が特殊な場合は 端部エコーが得られないことや端部エコーが得られてもそれがき裂最深部からのものでないことがあり 著しく深さサイジング精度が低下することが懸念される 図 2.4.3(3)-87は フェーズドアレイ UT 法により得られた D スコープ画像をまとめたものである いずれもごく一部の範囲でしか端部エコーが得られていない

135 (a) 探触子 (3 MHz) (b) 探触子 (5 MHz) (c) くさび ( 屈折角 16.5 縦波用 ) 図 2.4.3(3)-85 使用した探触子 コーナーエコー 端部エコー 底面 図 2.4.3(3)-86 フェーズドアレイ UT 法による D スコープ画像例 ( 試験体 B1554 周波数 5 MHz)

136 3 MHz 5 MHz B 端部 底面 端部 底面 9 端部 12 端部 B1554 底面 底面 図 2.4.3(3)-87 フェーズドアレイ UT 法による D スコープ画像 (ⅲ) 3D SAFT による測定結果図 2.4.3(3)-88 は 3D SAFT 法の測定に使用した探傷装置である 探傷器は ( 株 ) 東芝製の 3 次元超音波探傷器 Matrixeye TM 256 チャンネル機 (S/N ) を使用した 探触子は 256 チャンネル (16 16) で 2 MHz と 5 MHz のものを使用した くさびは ポリスチレン製の斜角用で 公称屈折角はステンレス鋼で縦波 45 である 探触子は き裂開口面の反対側から超音波ビーム中心がき裂面に垂直にき裂中心方向に向くように配置した 画像化領域は き裂開口部 き裂先端部 き裂開口部の左右両端が同時に確認できるように設定した 表 2.4.3(3)-15 に詳細な探傷条件を示す 図 2.4.3(3)-89は 3D SAFT 法の測定により得られた Dスコープ画像の例 ( 試験体 B1554 周波数 2 MHz) である 欠陥の開口部からのコーナーエコーとき裂先端部による端部エコーが確認できる 3D SAFT 法では最深部を中心として広い範囲で端部エコーが得られているのがわかる 一方 前述のフェーズドアレイ UT 法では端部エコーがごく一部の範囲でしか得られなかった 図 2.4.3(3)-90 は 3D SAFT 法により得られた D スコープ画像をまとめたものである 他の探傷画像でも大まかな輪郭形状が推定できる程度の端部エコーが得られている

137 超音波探触子 くさび (a) Matrixeye TM 256ch 機 図 2.4.3(3)-88 探傷装置 (b) UT 探触子 表 2.4.3(3)-15 探傷条件一覧表 項目 2 MHz 斜角探傷 5 MHz 斜角探傷 試験方式 直接接触法 接触媒質 ソニコート 周波数 2 MHz 5 MHz 素子数 16 16(3 mmピッチ ) A/Dサンプリング 30 MHz シュー ポリスチレン (2,360 m/s) 検査対象音速 5,750 m/s X B1553は40 mm B1554は50 mm 画像化範囲 Y 40 mm ( メッシュサイス ) Z mm 屈折角 ( 計算上 ) 45.1 画像化中心 深さ 20 mm ゲイン 30 db アベレージング 4 発受信パターン Ttidori-Rall

138 端部エコー コーナーエコー 図 2.4.3(3)-89 3D SAFT 法による D スコープ画像例 ( 試験体 B1554 周波数 2 MHz) 2 MHz 5 MHz B1553 B1554 図 2.4.3(3)-90 3D SAFT 法による D スコープ画像

139 (ⅳ) 2 種類の UT 手法による測定結果の比較図 2.4.3(3)-91は 上述のフェーズドアレイ UT 法と 3D SAFT 法による測定データを基にしたき裂深さサイジングの結果と試験体の切断調査によるき裂評価の結果を比較したグラフである き裂深さサイジングには端部エコーが必要となるため フェーズドアレイ UT 法 ( グラフ凡例の PA) では 端部エコーが得られたき裂深さ変化が小さいき裂最深部付近でしかき裂深さサイジングを行えていない 一方 3D SAFT 法では より広い範囲でき裂深さが得られており おおよそのき裂輪郭形状が推定できている ただし 3D SAFT 法でも き裂深さ変化がより大きいき裂開口面付近では端部エコーが得られず き裂深さを評価することが困難であった ここで得られた結果から き裂深さが急激に変化する部分のき裂深さサイジングは従来 UT 法では難しく これがき裂最深部であった場合は (a) のc) で取り上げた大飯原子力発電所 3 号機での事例の様に き裂最大深さを大きく読み誤る可能性を示している 一方で 3D SAFT 法では き裂深さが変化する部分でもある程度き裂深さサイジングが可能であり 大まかなき裂の輪郭形状が把握できるため アスペクト比が大きく 従来 UT 法では端部エコーが捉えづらいき裂に対しても そのき裂輪郭形状を推定し より適切な条件でサイジングを行うことにより より正確な深さサイジングを行えることが期待できる 表 2.4.3(3)-16と表 2.4.3(3)-17 は 2 種類のUT 手法のサイジング結果をまとめたものである 表 2.4.3(3)-16より 最大深さサイジングについては両手法で精度に大きな差はない 表 2.4.3(3)-17 のき裂長さサイジングについては 3D SAFT 法の方が精度の良い結果となっているが フェーズドアレイ UT 法も実用上問題ない精度だと考えられる よって 一般的なき裂の最大深さ 長さをサイジングする目的ではフェーズドアレイ UT 法で十分な精度が確保できていると言える (Ⅴ) まとめここでは 熱疲労き裂付与試験体をフェーズドアレイUT 法 ( 従来 UT 法 ) と3D SAFT 法 ( 新検査技術 ) により測定した結果を分析することにより き裂輪郭形状がサイジング精度に及ぼす影響を評価した その結果 フェーズドアレイ UT 法では き裂深さが急変する部分の深さサイジングが困難あるいは精度が低下することを確認した 一方 3D SAFT 法では き裂深さが急変する部分であっても深さサイジングが可能であり き裂全体の大まかな輪郭形状が捉えられることがわかった

140 き裂深さ (mm) 切断結果 PA 3MHz PA 5MHz 3D SAFT 2MHz 3D SAFT 5MHz X (mm) (a) 試験体 B1553 き裂深さ (mm) 切断結果 PA 3MHz PA 5MHz 3D SAFT 2MHz 3D SAFT 5MHz X (mm) (b) 試験体 B1554 図 2.4.3(3)-91 2 種類の UT 手法によるき裂深さサイジング結果の比較

141 表 2.4.3(3)-16 き裂最大深さサイジング結果 ( 単位 :mm) 手法フェーズドアレイ 3D SAFT 周波数 3 MHz 5 MHz 2 MHz 5 MHz 切断結果 B B 表 2.4.3(3)-17 き裂長さサイジング結果 ( 単位 :mm) 手法 フェーズドアレイ 3D SAFT 周波数 3 MHz 5 MHz 2 MHz 5 MHz 表面観察 閾値 -6 db -12 db -6 db -12 db -12 db -12 db B B

142 e) き裂性状が散乱波に及ぼす影響 および被検体材質の超音波伝搬特性の検討本事業では 溶接部に対する超音波非破壊検査の高度化を意図して き裂性状の高度模擬化による散乱エコーの特徴を把握すること および 溶接金属の超音波伝搬特性 ( 音速 減衰 拡散等 ) を明らかにすることを具体的な検討事項とする これらの結果から 3D SAFT 法や非線形超音波法等 き裂のサイジングや映像化の精度を改善するために有益となるデータを洗い出し 得られた知見を知識ベース化することで 溶接部の健全度評価の高度化に貢献することを目的とする 本事業では モデル化およびシミュレーションの厳密性に力点を置いて 検査対象の部材 形状に制限を設けず 幅広い状況に応用可能な汎用的な解析法を採用することで健全度評価グランドデザイン ひいてはシステム安全のためのツールを提示し その有用性を検証する (ⅰ) き裂エコーの高度模擬化に関する検討 1 影響因子に対する現状認識き裂面の凹凸 ファセット寸法 分岐は き裂端部において超音波の散乱エネルギーを分散させる 従って 探触子に戻って検出される信号の振幅値等に大きく影響するため 検出性に影響を及ぼす き裂寸法が小さな段階ではき裂面の凹凸 ファセット寸法 分岐のために 欠陥信号が材料ノイズに埋もれがちになる場合もあり 検出性への影響は大きい また き裂先端にこれらの影響因子が存在する場合には 超音波入射方向との関係が適正でないとき ( き裂先端がサイジングのための端部エコーが得にくい方向を向いているなど ) には サイジング精度に及ぼす影響も大きい 検査対象の材料や結晶組織によっては き裂先端部の形状が著しく特異な場合があり この場合はサイジング精度に大きく影響する可能性がある 73 以上より き裂面あるいはき裂先端近傍の凹凸 ファセット寸法 分岐は 検出性とサイジング精度の双方に大きく影響を及ぼすため これらの影響を予め評価することは重要である 本事業では 数値解析によってき裂の性状が き裂エコーの波形に及ぼす影響を明らかにする 2 き裂性状のモデル化ここでは フェーズドアレイ探触子から送信した超音波が固体内のき裂に達した場合に 74 発生するき裂エコーを数値解析する 解析手法として多重極境界要素法 (FMBEM) を用いた これで定常解が得られるのでフーリエ変換をすることで非定常解 すなわちき裂エコーを求めた 前年度の検討事項において 疲労割れ 応力腐食割れ 環境助長割れの性状について調べており 共通する事項としては き裂面が粗さを有していることである き 73 JNES 事業報告書 平成 17 年度ニッケル基合金溶接部の非破壊検査技術実証に関する事業報 告書 06 基材報 V. Rokhlin, Rapid solution of integral equation of scattering theory in two dimensions, Journal of Computational Physics, Vol.86, pp ,

143 裂の性状をモデル化するに際して この粗さを定量的に表現することは重要である 粗さ によるき裂からの散乱波形の違いをパラメトリックスタディによって調べる ( ア ) 表面粗さの定義表面粗さの定義は JISで規格化されており ここでは JIS B に基づき 凹凸間の長さとして粗さ曲線要素平均長さRsmと算術平均粗さRaの2つを粗度パラメータとして用いた 図 2.4.3(3)-92に示すように Rsm は滑らかなき裂を折り曲げたときの凹凸の間の平均長さであり 次式で定義される Rsm 1 n X si n i 1 (2.4.3(3)-9) また Ra は折り曲げたときの凹凸の平均高さを表し 次式で定義される Ra 1 L m 0 L m f ( x) dx (2.4.3(3)-10) 上式から分かるように Rsm が小さいほど き裂は x 方向に折れ曲がり数が多いことを表 す また Ra が大きいほど き裂の凹凸は急峻であることを示している 図 2.4.3(3)-92 表面粗さの定義 ( 凹凸間の平均長さの指標 Rsm 凹凸の平均高さの指標 Ra) ( イ ) 超音波の発生き裂の性状による散乱波形の影響を調べるため 母材の非均質性や音響異方性 端部エコーのモード変換等の影響を除外して解析を行う 従って ここでは 等方均質な鋼材の表面に設置されたフェーズドアレイ探触子からスカラー波を入射した場合に き裂からのエコー形状を数値解析する 被検体はステンレス鋼とし フェーズドアレイ探触子は開口幅 A=23.9mm ピッチ d=1.0mm 全素子数 N=24とし 中心周波数 2.0MHz のパルス波をき裂 75 日本規格協会 JIS ハンドブック 34 金属表面処理 pp.17-28,

144 の表面に向けて送信する 図 2.4.3(3)-93 に示すように き裂の高さは 10mm とし ステン レス鋼の内部に存在するものとする 図 2.4.3(3)-93 内部き裂とアレイ探触子による超音波送信 2 き裂エコーのパラメトリックスタディ表面粗さのパラメータは Ra=0.05mm 0.5mmの2 種類を考える このとき Rsmはそれぞれ 1.8mm 1.25mm 0.75mm 0.5mmの4 種類とした すなわち 計 2 4=8パターンのエコーを計算した まず Ra=0.05mmを一定とし Rsm を変化させた場合のき裂からのエコーを図 2.4.3(3)-94に示す 45 sあたりの振幅がき裂上端からの回折波 49 sあたりの振幅がき裂下端からの回折波に相当する Rsm=1.8mmと1.25mmの場合は 上端回折波と下端回折波を明確に分離するのは難しい Rsmが小さくなると 上端と下端回折波の間の波の数が増加する様子がみられた これはき裂の折り曲げによる屈曲点の増加によるものである さらに Rsmが小さくなると き裂の折り曲げに起因する振幅が見られなくなる 周波数が 2MHzの超音波を送信しているため 大凡の波長は1.5mm 程度であるから 波長の1/3 程度の Rsmの場合は き裂性状の折り曲げ数による粗さの影響は小さいということがいえる 次に Ra=0.5mm と一定にして Rsmを変化させた場合の欠陥エコーの計算結果を図 2.4.3(3)-95 に示す Raが大きくなる すなわち き裂の凹凸の平均高さが大きくなることによって欠陥エコーの波の数も増加している 図 2.4.3(3)-94のRa=0.05mm と比較すると 上端回折波と下端回折波の識別が困難になり かつ 粗さに起因する振動が長く継続することがわかった また Rsm が小さくなると 波の数が増加しており これは図 2.4.3(3)-94 と同様の傾向である 以上のことから Rsm が小さくなれば き裂の折り曲げによる屈曲点の増加によって 波の数が増加することがわかった しかし 送信波の波長に比べて Rsm が十分に小さい場合には 粗さに起因する振動が減少し 滑らかなき裂面からの欠陥エコーの形状に近づくことがわかった Ra を大きくした場合 2 つの端部回折波の識別が難しくなることが見られた また 粗さに起因する振動が長く継続する様子も見られた

145 図 2.4.3(3)-94 Ra=0.05mm を一定にして Rsm を変化させた場合のエコーの変化 図 2.4.3(3)-95 Ra=0.50mm を一定にして Rsm を変化させた場合のエコーの変化 3 応力腐食割れを模擬したき裂モデルに対するエコー計算実際に現場で発生した応力腐食割れを対象にフェーズドアレイ探触子を用いた欠陥エコーの数値解析を行う 環境助長割れと疲労割れについては 被検体が手に入らなかったため ここでは 応力腐食割れについてのみ き裂エコーのシミュレーションを行う ただ

146 し 環境助長割れや疲労割れについても解析の手順や手間は同じである 応力腐食割れの詳細断面写真 ( 図 2.4.3(3)-96) をスキャンし 折曲点の接点を用いて FMBEM の数値メッシュを作成した ( イメージベース処理 ) 図 2.4.3(3)-96の写真では き裂の開口幅は一定ではないが 要素作成の簡略化のため ここではき裂の開口幅は区間一定で 0.05 mmとした 応力腐食割れの高さは 4.85 mmでありフェーズドアレイ探触子の中心から左に 40mm 離れた被検体内部に存在するものとする 図 2.4.3(3)-97 (a)(b) ではフェーズドアレイ探触子から入射波が生成され き裂方向に向かっていることがわかる 図 2.4.3(3)-97 (c) では 入射波がき裂の上端部に到達し 上端回折波が発生していることがわかる その後 き裂の表面を伝わりき裂下端部に到達し下端回折波が発生している また 図 2.4.3(3)-94 と図 2.4.3(3)-95 のパラメトリックスタディでみられたように 表面粗さに起因する振動が発生していることがわかる この場合も き裂の端部エコーに表面粗さに起因する振動成分が含まれてしまうので エコーの識別が困難となることがわかる 図 2.4.3(3)-96 実際の応力腐食割れの写真から再構成したき裂モデルの数値メッシュ

147 図 2.4.3(3)-97 応力腐食割れからの超音波散乱の可視化 (ⅱ) 溶接組織中の波動伝搬特性 ( 音速 散乱 減衰 ) に関する検討 1 影響因子に対する現状認識管台セーフエンドの異材継手は 板厚が 90mm 以上のものあり 溶接による加熱 冷溶が金属組織に影響を及ぼすため 結晶粒の成長方向が局所的に異なることが知られている このため 音響異方性を呈し 超音波伝搬において屈曲を生じる また 粗大な結晶粒によって 超音波が散乱 減衰し き裂エコーの S/N 比を低下させる 以上のように 溶接部の超音波伝搬特性を明らかにし これがき裂の検出性やサイジングに及ぼす影響の度合いを評価することは重要である 粒界における散乱 減衰が 非破壊検査の信頼性を低下させることは一般的には知られている 粒界散乱によるノイズは ランダムノイズに相当するため 空間的平均化処理などの波形処理や合成処理によって き裂エコーの S/N 比を改善できる可能性があることが示唆されている 76 しかし き裂検出に用いるコーナーエコー以上に端部エコーの SN 比を低下させるため サイジング精度に及ぼす影響は大きい また ニッケル基合金溶接部は 76 S. Kitazawa, et al., Advanced inspection technologies for energy infrastructure, Hitachi Reviews, Vol.59, No.3,

148 溶接の結果 局所的に方向が異なる柱状晶組織となるため この音響異方性を考慮する必要がある しかし フェーズドアレイ UTにおける音響異方性の影響を補正する試みは 最近の報告事例としてあるものの 実機検査の規格としては整備されていない 77 音速の局 78 所的変化については解析的に推定が可能であり 多くの研究事例があるが 粒界による減衰 拡散までも厳密にモデル化した研究は少ない 以上より 溶接部の音速分布や 散乱 減衰の特性を予め把握することは き裂の端部エコーの評価や S/N 比の向上に寄与し 検出性 サイジング性能を改善することにつなが 79 る ここでは イメージベース波動伝搬解析を応用して 溶接金属中を伝搬する超音波の高精度推定を検証する 2 溶接金属のモデル化ここでは溶接金属として ニッケル基合金を対象とする 管台セーフエンドの異材継手は 板厚が90mm 以上のものあり 溶接による加熱 冷却が金属組織の変化を生じ 結晶粒の成長方向が局所的に異なる また結晶粒は10mm 程度まで大きくなることもあり これらを無視して検査することは UT の信頼性を著しく低下させる 本事業では 組織観察によって得られたミクロスケールの結晶分布を超音波伝搬解析シミュレータに組み込み 解析を実行することで 溶接部の波動伝搬特性を明らかにする ここでは 溶接部を含む試験体の EBSPデータから金属組織の成長方向を計測し このデータを解析に反映し 現実的な数値モデルを作成する また 溶接部の材料定数は EMAR 計測によって結晶粒の弾性定数を算出した ( ア ) 溶接組織のミクロ構造の同定 80 ここでは 後方散乱電子回折像 (Electron Back Scattering Pattern: EBSP) を測定することで 結晶の方位 大きさ 成長方向を同定する 図 2.4.3(3)-98にV 開先の一部を切り出した原子力プラントのモックアップ部材から切り出した溶接試験体 ( 幅 115mm 高さ 25mm 板厚 5mm) の観察写真を示す 左側は SM490 右側が SUS316であり 多層盛溶接によって接合されている 溶接部の構成金属は約 70% がニッケルであり その他にクロム 鉄 マンガン等を含んだ合金となっている この溶接部の金属組織を詳細に観察するために EBSP 測定を行った EBSP は結晶粒毎の情報を得ることができ 結晶粒の方位分布 77 古川敬 南康雄 杉林卓也 古村一朗 音響異方性材料へのフェーズドアレイ UT 法の適用 溶接 非破壊検査技術センター技術レビュー Vol.7 pp A.H. Harker, J.A. Ogilvy and J.A.G. Temple, Modeling ultrasonic inspection of austenitic welds, Journal of Nondestructive Evaluation, Vol. 9, pp , 中畑和之 イメージベースモデリングによる超音波伝搬シミュレーション 日本音響学会誌 Vol.67 No.7 pp Edited by B. L. Adams et al.: Electron Backscatter Diffraction in Materials Science, Kluwer Academic/Plenum Publishers,

149 が測定できる EBSP 測定は東レリサーチセンター ( 株 ) に委託した 写真の断面を x 1 x 3 断面とし EBSP 測定時の座標軸のTD(Transverse Direction) をx 1 軸に RD(Rolling Direction) を x 3 軸とした ND(Normal Direction) は板厚方向 (x 2 軸方向 ) とした ニッケルは立方晶であるので 以下は立方晶の方位分布について述べる 図 2.4.3(3)-99と図 2.4.3(3)-100 に それぞれ TDと RD 方向から見た結晶方位分布を色付け ( ミラー指数 [001] に近いほど赤が強い ) したものを示す 一般の溶接金属に比べて 金属粒が大きく 局所的に異なる方向を向いていることがわかる 図 2.4.3(3)-98 溶接試験体の断面写真 ( 材質はインコネル ) 図 2.4.3(3)-99 溶接部の EBSP 撮影図 (Transverse direction:td) 図 2.4.3(3)-100 溶接部の EBSP 撮影図 (Rolling direction:rd) 集合組織の方位を見るために 図 2.4.3(3)-98 の赤い領域 (Pole figure と指示 ) の極点

150 図を図 2.4.3(3)-101 に示す これは ND 方向から観察した場合に {001} {101} {111} の配向の集合程度を表している つまり 値が大きくなるほど向きが揃った結晶粒が多いことを示している {001} のみ RD 方向に赤色が強くなっていることから 主として RD 方向を向く {001} 面が多いことがわかる なお {001} の TD 方向も赤色が強くなっているため TD 方向を向いているとも言えるが ニッケルは立方晶であるので {001} 面が RD 方向を向いていることと等価である 一方 {101} と {111} 面は全体的にランダムである これらのことから Pole figure の金属結晶は RD 軸に垂直な断面内でランダムに分布していると言える この傾向は全ての視野で同様である 図 2.4.3(3)-101 極点図 ( 図 2.4.3(3)-98 に示す赤い領域 ) ( イ ) 溶接組織の材料定数および音速の同定金属組織の分布は EBSP 測定によって把握できた 金属粒の大きさは大きいもので数 mm 程度以上ある この金属粒の弾性定数を特定する ここでは電磁超音波共鳴 81 (Electro-Magnetic Acoustic Resonance:EMAR) 法により ニッケル基合金の溶接試料の弾性定数を解析する 電磁超音波共鳴とは 電磁超音波センサ (electromagnetic acoustic transducer: EMAT) によって金属内にMHz 帯域の共鳴を発生させる新しい計測方法である 共鳴スペクトルから共鳴周波数を また共鳴時の残響にあたる緩和曲線から減衰係数を測定する EMAT は永久磁石とコイルで構成され 電磁気的作用で金属試料の表面に直接超音波を励起させるので非接触測定が可能である 得られた共鳴周波数を逆解析することにより すべての独立な弾性定数を決定できる 測定は 日本テクノプラス ( 株 ) に依頼した 81 荻博次 平尾雅彦 本田崇 福岡秀和 EMAR 法による超音波伝達減衰と金属材料結晶粒径の非接触測定 日本金属学会誌 Vol.58, No.9, pp ,

151 溶接試験体を 10mm 立方に切り出し 材料定数の測定を行った ニッケルは立方晶であるが 図 2.4.3(3)-101 のPole Figureから軸対称にランダムに結晶が分布しているため マクロ的にみれば横等方性となる EMAR 法によって算出される弾性定数は測定試料の大きさに依存するため ここでは横等方性を仮定して逆解析を行った この結果 次のようなマクロ な材料定数 C M ijkl が得られた C C C M M M M M C1111 C1133 M C3333 sym. C M 2323 C 0 0 M 2323 C 0 M sym 単位 (GPa) (2.4.3(3)-11) さて EBSP で得られた結晶分布は 立方晶であるニッケル金属に対するものであった こ の結晶分布と結晶毎の材料定数を用いて 後に示すイメージベース波動伝搬解析を実施す るので ここでは 横等方性を仮定したマクロな材料定数 C 定数 C O mnpq ( 立方晶 ) に変換する これらの関係は次式で表される M ijkl から 結晶のミクロな材料 cos sin 0 O C 2 M mnpq Cijkl mi nj pk qld, sin cos 0 (2.4.3(3)-12) 上式を解いて 立方晶の材料定数 C は O mnpq C C C O O O O O C1111 C1122 O C1111 sym. C O 2323 C 0 0 O 2323 C 0 O sym 単位 (GPa) (2.4.3(3)-13) と算定した 式 (2.4.3(3)-13) の材料定数を元に 位相速度の逆数 ( スローネス ) および群速度の理論解を求めた この解のx 1-x 3 断面の分布を図 2.4.3(3)-102にプロットした 均質な等方性材料では 縦 (P) 波も横 (S) 波も全方位一定の音速で伝搬するが 異方性材料の場合は方向によって位相速度が異なり さらにはエネルギーの伝搬速度である群速度が位相速度と一致しないこともあり この溶接金属もその典型例である ここで用いる溶接金属の場合 P 波に加えて音速の異なるS 波が2 種類 (S1 波 S2 波 ) 存在し 両者の偏向方向も異なる

152 図 2.4.3(3)-102 EMAR 法から得られた材料定数をもとに算定したニッケル金属の音速分 布 2 溶接金属中を伝搬する超音波の数値計算図 2.4.3(3)-99と図 2.4.3(3)-100 に示すように 溶接部の結晶方向は EBSP 計測によって 0.05mmピッチで得られている このピッチを 1 画素とし 画素毎に結晶方向を表すデータ ( オイラー角 ) を有するものとする なお 材料定数は溶接金属領域で一定とする ここではイメージベース処理を用いて 画素情報を読み取り 画素の持つオイラー角を反映させながら有限積分法を実行する このとき 有限積分法の1つの積分セルが1 画素となるように設定する このように 画素イメージをもとに数値解析を実行する方法を イメージベース波動伝搬解析という 本シミュレーションでは x 2 方向を面外方向とし x 1-x 3 面の面内波動を計算するため 2 次元の有限積分法を採用した 図 2.4.3(3)-102 で示したように 波動理論的にはこの溶接金属材料には 2つの横波 (S1 波 S2 波 ) が現れる オイラー角によっては S1 波とS2 波は x 2 方向へ偏向する成分もあるが 計算の便宜上 ここでは x 2 方向成分への寄与は無いとする 計算は 愛媛大学で開発されたイメージベース波動伝搬シミュレータを用いて計算を行った このシミュレータは GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units) 技術の導入によって高速化されており 今回の計算に要する時間は僅か数十秒であった パラメータスタディをするには十分な計算速度である 図 2.4.3(3)-98の溶接部の上部に探触子 (φ=10mm) を設置し ここから周波数 4MHz でパルス波を送信する場合を考える EBSP データを基にイメージベース波動伝搬シミュレータによって計算した超音波の伝搬結果 ( 詳細モデルと呼ぶ ) を図 2.4.3(3)-103の左側に示す これは 固体の変位の絶対値 u u u に色をつけたものである なお 比較のため 前年度の高経年化技術評価高度化事業で実施した技術を使って エッチング写真から結晶 方位を簡易的に模擬し イメージベース波動伝搬シミュレータによって計算した超音波の 伝搬結果 ( 簡易モデルと呼ぶ ) を図 2.4.3(3)-103 の右側に示す 溶接部は音響異方性を呈

153 するため x 3 方向の真下に超音波を送信しているにも関わらず P 波は探触子から真下よりすこし左に逸れて伝搬している 詳細モデルと簡易モデル共に 超音波の伝搬方向は概ね一致している しかし 詳細モデルでは P 波が伝搬する際には波面が崩れ 伝搬した後は粒界による超音波の多重散乱に起因する成分が見られるが 簡易モデルにはこれらが見られない 図 2.4.3(3)-103 EBSP によるミクロ構造を考慮した場合の可視化結果 ( 左 ) と エッチング 写真による結晶方位を簡易的に模擬した場合の可視化結果 ( 右 )

154 図 2.4.3(3)-104 に 実験で得られた超音波の可視化結果を示す これは 試験体内部を 82 伝搬する超音波の面外変位 u 2 をレーザー振動計によって計測し可視化した結果である これは ドイツの Fraunhofer 研究所 IZFP に依頼して計測を行った この結果から P 波が左下方向に伝搬していることがわかる また 超音波が伝搬した後の溶接部内部で 粒界による散乱波と波動の拡散が見られる 詳細モデルの粒界散乱の発生は実験結果よりも少ないが この理由として 今回計測した試験体の板厚が 5mm 程度と薄かったため 面外方向を往復する多重反射波が顕著に発生するためである 数値計算では面外方向の散乱はモデル化していないため 解析と実験にこのような差異が見られると考える 以上の結果より 本事業で構築した詳細モデルは 実際の波動伝搬 ( 伝搬方向 速度 粒界散乱 ) を正確に模擬できていることがわかった 特に 伝搬方向と速度という点では実験結果と解析結果は非常に良い一致を示している 非破壊検査の高度化の観点からはビームの方向を精度良く予測できるという意味で 本シミュレータの妥当性および有用性は示されたと言える また 本事業では 散乱減衰の定量的な評価までは行うことはできなかったが 粒界散乱による波面の局所的な崩れを再現することができた 今後はパラメトリックスタディによって 金属粒の大きさや 結晶の向きの違いによる散乱 減衰の特性を明らかにしていくことが肝要である さらに 内部 ( 吸収 ) 減衰の影響についても検証する必要があるが これも今後の課題である (ⅲ) 本年度のまとめ 1 本年度の目的本事業では 溶接部に対する超音波非破壊検査の高度化を意図して き裂性状の高度模擬化による散乱エコーの特徴を把握すること および 溶接金属の超音波伝搬特性 ( 音速 減衰 拡散等 ) を明らかにすることを具体的な検討事項とした これらの結果から 3D SAFT や非線形超音波法等 き裂のサイジングや映像化の精度を改善するために有益となるデータを洗い出し 得られた知見を知識ベース化することで 溶接部の健全度評価の高度化に資することを目的とする 本事業では モデル化およびシミュレーションの厳密性に力点を置いて 検査対象の部材 形状に制限を設けず 幅広い状況に応用可能な汎用的な解析法を採用することで システム安全のためのツールを提示し その有用性を検証した 2 本年度の内容と結果 (ⅰ) き裂エコーの高度模擬化に関する検討き裂面あるいはき裂先端近傍の凹凸 ファセット寸法 分岐は 検出性とサイジング精度に大きく影響を及ぼすため これらの影響を評価することは重要である 本事業では 数値解析によってき裂の性状がき裂エコーに及ぼす影響を明らかにした ここでは き裂 82 B. Koehler, F. Schubert, G. Hentges and N. Meyendorf, Application of photo and particle acoustic methods, Proceedings of SPIE, 5766, pp.70-77,

155 の粗さを表す2 種類のパラメータ (RsmとRa) を設定し パラメトリックスタディを行った Rsm が小さくなれば き裂の折り曲げによる屈曲点の増加によって 波の数が増加することがわかった しかし 送信波の波長に比べて Rsm が十分に小さい場合には 粗さに起因する振動が減少し 滑らかなき裂面からの欠陥エコーの形状に近づくことがわかった Ra を大きくした場合 2つの端部回折波の識別が難しくなることが見られた また 粗さに起因する振動が長く継続する様子も見られた 図 2.4.3(3)-104 レーザー振動計測による超音波伝搬の可視化結果 ( 左 ) と実験の様子 ( 右 )

156 (ⅱ) 溶接組織中の波動伝搬特性 ( 音速 散乱 減衰 ) に関する検討原子力配管の異材溶接は一般的に 溶接金属の結晶粒の成長によって 音響異方性による超音波の音速の変化と屈曲を生じる また 粗大な粒界による超音波の散乱 減衰が生じる 溶接部の音速分布や 散乱 減衰の特性を予め把握することは き裂の端部エコーの評価や S/N 比の向上に寄与し 検出性 サイジング性能を改善することにつながる ここでは 組織観察によって得られたミクロスケールの結晶分布を超音波伝搬解析シミュレータに組み込み 解析を実行することで 溶接部の波動伝搬特性を明らかにすることを試みた まず 溶接部を含む試験体の EBSPデータから金属組織の成長方向を計測し このデータを解析に反映し 現実的な数値モデルを作成する 次に 溶接部の材料定数を EMAR 計測によって計測し 結晶粒の弾性定数を算出した この結果 本事業で構築した詳細モデルは 実際の波動伝搬 ( 伝搬方向 速度 粒界散乱 ) を正確に模擬できていることがわかった 特に 前年の事業の課題であった粒界による超音波の散乱を高精度にモデル化でき 粗大粒による波面の局所的な崩れを再現した 3 今後の課題粒界による超音波の散乱 減衰については パラメトリックスタディによって 粒の大きさや 結晶の向きの違いによる影響を定量的に検証していくことが肝要である 本年度得られた知見は 3D SAFT 法や非線形超音波法等 き裂のサイジングや映像化のために陽な形で活用していくことが望まれる ここで 構築したモデル化およびシミュレーション法は 検査対象の部材 形状に制限を設けておらず 幅広い状況に応用可能な汎用的な解析法である これらを 健全度評価グランドデザイン ひいてはシステム安全のための共通ツールとして使用できるような整備環境を整えることが重要だと考える 以上 モデリングおよび数値解析では 2 年間で予定通りの成果が得られた しかし 愛媛大は計測装置を有していないため実機適用試験等に参画することは難しく, 来年度以降は本事業に陽な形で参加することは控える モデリング シミュレーションから本事業をサポートする側に回り, 必要なデータを裏方から提供する立場とさせて頂きたい

157 2) 複数の非破壊検査手法に基づく検査精度の高度化 高信頼化の検討 (a) データ融合によるキズ評価スキームの検討 a) はじめに疲労評価グランドデザインの観点から検査分野において必要不可欠と考えられる検査精度に関する重要事項について重点検討する 具体的には 多様な欠陥に対して 異なる計測原理とデータ処理手法を組み合わせたより定量的かつ信頼性の高いきず評価スキームを検討する b) 実施方法関連するデータ融合手法 / アルゴリズムの検討の実施により 多様な欠陥に対して 異なる計測原理とデータ処理手法を組み合わせたより定量的かつ信頼性の高いきず評価スキーム構築を目的に 複雑形状を持つ模擬欠陥試験片の非破壊検査データ ( 渦電流探傷 ) に対して 機械学習アルゴリズムを適用し 定量的で信頼性の高いきず評価スキームを構築する 評価スキームの検討概要を 図 2.4.3(3)-105 に示す 今年度は 検査対象の欠陥として 金属板に EDM 加工で人工的に付加した複雑な形状 ( 近接並行欠陥ならびに斜め欠陥 ) を用いた検討を行う この複雑な形状の欠陥を 渦電流探傷法で計測し その結果に機械学習の方法を適用して ある深さ以上の欠陥であるかどうかを判定する方法を検討する このとき 単一の周波数や探傷プローブではなく 複数の周波数で探傷し さらに 探傷プローブを複数使用することで 多様な計測情報を融合して 欠陥評価精度を向上させる方法を検討する さらには 多様な計測情報を融合して 信頼性のある評価結果を得るために 近年発展の目覚しい機械学習法を適用する この機械学習法も 多様な方法が提案されているため 複数の方法を適用して 相互に比較することで それぞれの方法の長所短所を明らかにし 定量的で信頼性の高いきず評価スキームの構築に役立てる 図 2.4.3(3)-105 評価スキームの概要

158 c) 機械学習アルゴリズム機械学習は 人間が自然に行っている学習能力と同様の機能をコンピュータで実現しようとする技術 手法のことである パターン認識と呼ばれることもあるように 識別したい対象から得られる観測データ ( 画像や音響データ 非破壊検査の探傷データなど ) から 対象の種類をクラス分け ( ラベル付 ) する方法ということができる 教師ありの学習と教師なしの学習方法があるが ここでは 教師ありの学習手法を 非破壊検査における欠陥の深さの分類問題に適用することを試みる 教師ありの学習アルゴリズムのため 識別モデルのパラメータを 答えの分かっている訓練データ ( 学習データとも呼ぶ ) から求め この識別モデルを用いて 未知の対象を 観測データに基づいてクラス分けする 最も古典的な識別モデルは 図 2.4.3(3)-106に示す 線形判別法 (Linear Discriminant Analysis LDA) である ここで 識別対象が二つの場合 例えば 欠陥深さが2mm 以下と 2mm 以上の2 種類の非破壊検査データを想定する 観測されたデータから前処理によって求めた二つの特徴データ ( 属性データ ) 空間に これらの二つのクラスのデータをプロットすると 簡単な識別問題では 図のように 二つのグループに別れる これらのどのクラスに属するかを決めるための最も古典的な方法が 図内に示した線形識別関数である 関数内の係数 Wは 訓練データから学習して求めることができる ( 詳細アルゴリズムは省略する ) すると 未知の対象から観測された特徴データ X を入力して この線形識別関数の値を求めることができるが その値の正負によって 二つのクラスのどちらに属するかを判別できる 実際の問題では この特徴データをどのように求めるか 2 次元ではなく 多次元空間での識別になるため これをどのように表示するかといった問題が生じる この 古典的な線形手法に対して その後 非線形のクラス分類手法が多く提案されている 図 2.4.3(3)-107 は その中の代表的なものの一つで Adaboost と呼ばれる分類機である これは 多くの弱識別機を集め その個々の識別機の重みを訓練データによる学習で最適化し 最終的な強識別機を作るブースティングと呼ばれる識別機の一つの方法である 弱い識別器を追加する際 ある方法で重み付けをするが その重み付けは弱い学習機の正確さに関連する 弱い識別機が追加されると その予測精度に応じて データの重み付けが見直される すなわち 誤分類される例は重みを増し 正しく分類される例は重みを減らす 従って 新たに追加される弱い識別機は それまでの弱い識別機が誤分類していた例に注目して より正確な識別を行うことになる これを一定の識別機分だけ繰り返して 最終的な強識別機を作る 図内の H(x) が この強識別機に相当し 右辺のα t が t 番目の弱識別機の重みになる この重みの大きい弱識別機ほど 全体の識別への寄与が大きいことになるので 弱識別機の利用した特徴量 ( 通常は クラス分類の対象となる多次元空間の特徴量を 寄与の大きいものから一つずつ順番に用いて弱識別機を作る ) が 識別に重要であることがわかる これは ブースティング手法が 対象のクラス分けに役立つだけでなく クラス分けに寄与する重要な属性の発見 ( 知識発見 ) にも役立つという

159 ことを示している 図 2.4.3(3)-108 は ランダムフォレスト (RF) と呼ばれる分類手法である 訓練データから ブートストラップと呼ばれる方法で 複数個の部分集合を取り出し 部分集合ごとに分類木を学習し さらに 取り出した複数の分類木の分類結果を多数決によって一つのクラス分類を行う 部分集合ごとの分類木は 古典的な CART(Classification and Regression Tree) 法により作成する これは Gini 係数と呼ばれる一様性の尺度に基づいて この減少を最大にするように 分類木を作ってゆく方法である 分類木の欠点のひとつは 上位の分類キーの選択に応じて 結果が異なってくるということで 訓練データへの依存性が高く 一般的な分類手法になりにくいということであったが RF では ランダムに部分集合を取り出して学習するため 普遍性を持った分類木にできるという特徴がある また 分類に用いた属性の重要度を 平均 Gini 係数減少度というパラメータで評価できることから 上述の クラス分けに寄与する重要な属性の発見 ( 知識発見 ) にも役立つことが期待できる 以下では ここで述べた3 種の識別機 (LDA,Adaboost,RF) を 非破壊検査の傷の程度の識別に用いて クラス分けの信頼度という観点と 知識発見という観点から 比較評価する 図 2.4.3(3)-106 線形判別分析

160 図 2.4.3(3)-107 Adaboost による識別 図 2.4.3(3)-108 ランダムフォレストによる識別

161 d) 適用結果図 2.4.3(3)-109 は 対象とする複雑形状欠陥である ここでは EDM 加工により作成した 10 通りの近接並行欠陥と 13 通りの斜め欠陥を対象とした これらは 2mm,4mm 6mmの深さを持つスリットであるが 開口幅が異なったり スリットの形状が矩形 三角形 楕円というように異なったり 斜めにスリットが切ってあったり さらには 二本の異なる深さの欠陥が並行して並んでいたりというように 複雑な形状で作成している このような複雑な欠陥の最大深さを非破壊検査で知ることは 強度評価上大事なことであるが 特に 渦電流探傷 (ECT) のような 欠陥の深さの間接的な計測手法では 信号の強度が深さだけではなく その他の形状の複雑さに影響されるために 簡単な問題ではなくなる 電磁理論を用いた解析的な方法と計測データを組み合わせて欠陥の深さを推定する手法もしばしば用いられるが 欠陥の形状がわからないと解析的な方法は用いることができない そこで 本報告では 前述の3 通りの統計的識別機とそれに付随した知識発見手法を適用し 欠陥の深さを識別可能か さらには その識別に最も寄与する計測情報は何か という問題を検討する 図 2.4.3(3)-110~ 図 2.4.3(3)-112は 2mm 4mm 6mmのいくつかの欠陥について 二種類のプローブ ( クロスコイル型 (ZPP) パンケーキ型(PanCake)) と 4 種類の探傷周波数 ( kHz) で計測した結果を示したものである いずれも 欠陥に対して直交方向にプローブをスキャンし その際の応答波形の実部と虚部をりサージュ波形としてプロットしたものである 各図で4 種の曲線が示されているが これは 探傷周波数の違いによるものであり 探傷周波数が大きくなるほど 信号強度が強くなるという一般的傾向がある 図から直感的に分かるように 欠陥の深さと信号の強度は単純には対応しない 図 2.4.3(3)-113 には 欠陥の最大深さと計測値の関係を見るために クロスコイル型プローブ パンケーキ型プローブぞれぞれについて 400kHzの探傷時の最大振幅と位相を両軸にとって 欠陥深さの分布を示した これからも分かるように 同じ欠陥深さのデータが同じ位置に重なっているわけではなく 複雑に分布している

162 図 2.4.3(3)-109 複雑形状の模擬欠陥 単純形状近接並行欠陥斜め欠陥 D2L20W02/ZPP(400,200,100,50kHz) D2L20W02Ds1/ZPP(400,200,100,50kHz) D2A30/ZPP(400,200,100,50kHz) Imag 0 Imag 0 Imag Real D2L20W02/PC(400,200,100,50kHz) Real D2L20W02Ds1/PC(400,200,100,50kHz) Real D2A30/PC(400,200,100,50kHz) 5 Imag 0 Imag 0 Imag Real Real Real 図 2.4.3(3)-110 2mm 深さ欠陥の ECT 探傷結果 ( クロスコイル ( 上段 ) とパンケーキ ( 下 段 ) プローブ )

163 単純形状近接並行欠陥斜め欠陥 D4L20W02/ZPP(400,200,100,50kHz) 5 D4L20W02Ds1/ZPP(400,200,100,50kHz) D4A30/ZPP(400,200,100,50kHz) 5 5 Imag 0 Imag 0 Imag Real D4L20W02/PC(400,200,100,50kHz) Real Real D4L20W02Ds1/PC(400,200,100,50kHz) D4A30/PC(400,200,100,50kHz) 5 5 Imag 0 Imag 0 Imag Real Real Real 図 2.4.3(3)-111 4mm 深さ欠陥の ECT 探傷結果クロスコイル ( 上段 ) とパンケーキ ( 下 段 ) プローブ ) 単純形状斜め複数欠陥斜め欠陥 D6L20W02/ZPP(400,200,100,50kHz) 5 VD6A0D2A30/ZPP(400,200,100,50kHz) D6A30/ZPP(400,200,100,50kHz) 5 5 Imag 0 Imag 0 Imag Real D6L20W02/PC(400,200,100,50kHz) Real VD6A0D2A30/PC(400,200,100,50kHz) Real D6A30/PC(400,200,100,50kHz) 5 Imag 0 Imag 0 Imag Real Real Real 図 2.4.3(3)-112 6mm 深さ欠陥の ECT 探傷結果クロスコイル ( 上段 ) とパンケーキ ( 下 段 ) プローブ )

164 ZPP(400k)-phase R(o): 2mmD, G(v):4mmD, B(x):6mmD mm(O) 4mm( ) 6mm( ) ZPP(400k)-gain クロスコイル型プローブ ( 探傷周波数 :400kHz) PC(400k)-phase R(o): 2mmD, G(v):4mmD, B(x):6mmD 40 2mm(O) 20 6mm( ) mm( ) PC(400k)-gain パンケーキ型プローブ ( 探傷周波数 :400kHz) 図 2.4.3(3)-113 ECT 信号の振幅 位相と欠陥深さの相関 ( 左 : クロスコイル 右 : パン ケーキ ) 本報告では このような複雑な問題に対して 2mm 以下の欠陥と それ以外 (4mm と 6mm) を分類する識別機として 先に述べた三つの手法の優劣を検討する この優劣の比較のために ここでは receiver operating characteristic (ROC) curve と呼ばれる図を利用する ROC は 分類機により 正しく分類した割合 (True Positive,TP) と 間違って分類した割合 (False Positive,FP) を求めて 図 2.4.3(3)-114 のように表示して評価に利用する 今回は 2mm 以下の欠陥を正しき識別した割合 (TP %) と 4mm 以上の欠陥を 2mm 以下と間違って識別した割合 (FP,%) を表示する これが 図の左上に位置することは 正常識別率が高く ご識別率が低いことを意味するので 識別機となる 表 2.4.3(3)-18は 識別結果の一覧を示したものである ここでは 先に述べた3 通りの識別機と RF で用いられている二分類木 CART 法の結果を示している また 分類に用いた特徴量 ( 属性値 ) を クロスコイル型プローブ (ZPP という略号で記載 ) と パンケーキ型プローブ (PanCake と記載 ) の探傷周波数 ならびに 計測値の最大振幅のゲイン (G) 実部(Re) 虚部(Im) という記号を用いて示している 例えば 表の一行目は LDA 手法を クロスコイルプローブの 400kHz の探傷データのゲインと実部 虚部の三つの属性データを用いて分類した結果 TP=100%,FP=21.4% の分類結果が得られたということを示している Adaboostに関しては 弱識別機の数を変えた結果も示している なお 今回の分析では データ数が限られていることから 識別機の学習に用いた訓練データと TP,FP の評価に用いるテストデータは同じものを用いている この表から分かるように 用いる分類機 属性値の組み合わせによって 識別性能が異なる これらのデータをROC 図にまとめたのが 図 2.4.3(3)-115 である 図より LDAではクロスコイル型プローブの探傷データで 4つの周波数の結果を用いた場合は 100% の識別率が得られているが 属性値の

165 数を減らしたり プローブを変えたりすると 誤識別率が増えることがわかる 一方 Adaboost や RFでは 少ない属性値でも良い識別結果が得られている 知識発見という観点で RF の解析結果で得られる平均 Gini 係数減少率を見たのが 図 2.4.3(3)-116 である これは 分類に用いる属性の中で 分類での重要度を示したものであるが クロスコイル型 50kHz の振幅データが最も重要度が大きいことを示している CART 法の結果を見ても 最上部での分類には 同じ属性が用いられている この結果より 複雑な形状の欠陥の渦電流探傷を想定した場合に 2mm 以下の欠陥深さを識別する上で 比較的低周波の探傷周波数の振幅値が最も重要であるという知識が 統計分析から得られたことになる これらは 渦電流探傷を用いた非破壊検査の実施に際して有用な知識となりうる 図 2.4.3(3)-114 ROC による分類機の評価スキーム

166 表 2.4.3(3)-18 識別結果の一覧 分類手法 分類に用いた属性 属性数 TP FP LDA1 ZPP400kHz(G,Re,Im) LDA2 ZPP400kHz(Re,Im) LDA3 ZPP50,100,200,400kHz(G,Re,Im) LDA4 PanCake400kHz(G,Re,Im) LDA5 PanCake400kHz(Re,Im) LDA6 PanCake50,100,200,400kHz(G,Re,Im) LDA7 ZPP+PanCake400k(Re,Im) LDA8 ZPP+PanCake400k(G,Re,Im) ADB1 ZPP400kHz(G,Re,Im) 3(T=3) ADB2 ZPP400kHz(G,Re,Im) 3(T=10) ADB3 ZPP400kHz(Re,Im) 2(T=3) ADB4 ZPP400kHz(Re,Im) 2(T=10) ADB5 ZPP50,100,200,400kHz(G,Re,Im) 12(T=3) ADB6 PanCake400kHz(G,Re,Im) 3(T=3) ADB7 PanCake400kHz(G,Re,Im) 3(T=20) ADB8 PanCake400kHz(Re,Im) 2(T=3) ADB9 PanCake400kHz(Re,Im) 3(T=20) ADB10 PanCake50,100,200,400kHz(G,Re,Im) 12(T=3) ADB11 PanCake50,100,200,400kHz(G,Re,Im) 12(T=10) ADB12 PanCake50,100,200,400kHz(G,Re,Im) 12(T=20) ADB13 ZPP+PanCake400k(Re,Im) 4(T=4) ADB14 ZPP+PanCake400k(Re,Im) 4(T=10) ADB15 ZPP+PanCake400k(G,Re,Im) 6(T=3) ADB16 ZPP+PanCake400k(G,Re,Im) 6(T=10) RF ZPP400kHz(G,Re,Im) RF ZPP50,100,200,400kHz(G,Re,Im) CART ZPP400kHz(G,Re,Im) CART ZPP50,100,200,400kHz(G,Re,Im) 注 )LDA: 線形識別器 ADB:Adaboost 法 (T は弱識別器数 ) RF: ランダムフォレスト法 CART:Gini 係数を用いたニ分類木 LDA(ZPP50-400k) ADB(ZPP400k) ADB(PC400k) RF(ZPP400k) TP 正識別割合 (%) LDA(PC50-400k) ADB(PC50-400k) ROC LDA(ZPP400k) LDA(PC400k) 系列 FP 誤識別割合 (%) 図 2.4.3(3)-115 ROC による識別結果の評価

167 図 2.4.3(3)-116 評価スキームの概要 e) まとめ多様な欠陥に対して 異なる計測原理とデータ処理手法を組み合わせたより定量的かつ信頼性の高いきず評価スキームを検討することを目的に 渦電流探傷を例にとって 複雑な欠陥の深さ評価を行う統計分析を行った 複雑形状を持つ模擬欠陥試験片の非破壊検査データ ( 渦電流探傷 ) に対して 二つのプローブと4つの探傷周波数 さらには 3 種類の異なる機械学習アルゴリズムを適用し 各識別機の性能を 正識別率 (TP) 誤識別率 (FP) を用いた ROC 図で評価することで 信頼性の高い評価手法を求めた ROC は 多様な評価手法を総合的に評価する上で役立つことが確認できた 今後 識別機の入力となる特徴量を抽出する前処理法に関して 専門家の知見を踏まえた改良を行い より専門家の直感に近い評価スキームを構築することが大事になる (b) 3D SAFT 法と従来 UT 法の融合によるきず輪郭形状評価の高度化 1) の (b) では 試験体に付与した熱疲労き裂をフェーズドアレイ UT 法 ( 従来 UT 法 ) と 3D SAFT 法 ( 新検査技術 ) により評価した結果を比較し フェーズドアレイ UT 法ではき裂深さが急変する部分の深さサイジングが困難であるのに対し 3D SAFT 法ではき裂深さが急変する部分であっても深さサイジングが可能であり き裂全体の大まかな輪郭形状が捉

168 えられることを示した 深さサイジング手法としての 3D SAFT 法の有効性は確認されたが きずの探傷 ( 検出 ) に適用するには実用上いくつかの課題が存在する ( 例えば 規格が整備されていないこと 現状で装置が高価 現状では測定時間が長い等 ) ため 現行の UT を 3D SAFT 法によって置き換えることは合理的でないと考えられる そこで フェーズドアレイ UT 法と3D SAFT 法の適用性を広く把握し 最適な融合手法を検討した ここで前提とした条件は より複雑なきずの探傷を想定し き裂面に対して斜め方向から超音波が入射されるような場合に対する適用性も考慮した この様な場合のき裂評価能力を比較するため 1) の (b) と同じ熱疲労き裂付与試験体を使用し フェーズドアレイ UT 法と 3D SAFT 法により 図 2.4.3(3)-117 のように き裂面に対する超音波の入射方向を変えた場合の探傷結果を分析した 図 2.4.3(3)-117 き裂面に対して入射方向を変えた測定

169 a) フェーズドアレイ UT 法による測定結果前述のように 図 2.4.3(3)-84の2 個の熱疲労き裂付与試験体 B1553とB1554に対して 超音波の入射方向を変えつつフェーズドアレイ UT 法による測定を行った このとき 超音波が試験体の中心に向かう探触子位置を中央とし 入射方向に垂直な方向に沿って探触子を 1 mmずつ動かして各位置で得られた反射波を記録した また 試験周波数は 3 MHzとした 図 2.4.3(3)-118 と図 2.4.3(3)-119は この測定で得られた D スコープ画像である 超音波の入射方向がき裂面に垂直な方向から 15 ずれると端部エコーがやや識別しにくくなり 30 ずれると端部エコーを見つけることが難しくなっている よって フェーズドアレイ UT 法では 入射方向がき裂面に垂直な方向からずれると き裂サイジングの信頼性が顕著に低下すると言える b) 3D SAFT 法による測定結果同様に 熱疲労き裂付与試験体 B1553 と B1554 に対して 3D SAFT でも超音波ビームの中心方向を変えつつ測定を行った 試験周波数は 2 MHzと5 MHzとした 図 2.4.3(3)-120 から図 2.4.3(3)-123 は この測定で得られた Dスコープ画像である 超音波の入射方向がき裂面に垂直な方向から 45 までずれると き裂からのエコーの像が少し崩れる傾向にあるが それでも 大まかな輪郭形状は残している 図 2.4.3(3)-124 から図 2.4.3(3)-127は 測定データを基にしたき裂深さサイジングの結果の比較である やはり 超音波の入射方向がき裂面に垂直な方向から 45 までずれると 明らかに深さサイジング精度が落ちているが おおよそのき裂形状が推定できていると言える よって 3D SAFT 法では 超音波の入射方向がき裂面に対して垂直でなくても 垂直方向から ±45 程度の範囲内であれば き裂輪郭形状が検出できる可能性がある c) まとめ表 2.4.3(3)-19は フェーズドアレイ UT 法と 3D SAFT 法のき裂の最大深さのサイジング結果を比較したものである これより フェーズドアレイ UT 法では 入射方向がき裂面に垂直な方向からずれると 著しく精度が低下しているのがわかる 一方 3D SAFT 法では 全体的に過大評価気味であるが 入射方向がずれても大きな精度の差は見られない これより 入射方向がき裂面に垂直な方向からずれている場合は3D SAFT 法の方がより信頼性の高いサイジングが行えると言える 1) の (b) と以上の結果より得られた知見から考察すると フェーズドアレイUT 法によりき裂の検出とサイジングを行い サイジングが困難な場合に3D SAFT 法によりき裂輪郭形状の検出を行い この結果より 対象のき裂のサイジングに最適な条件を見つける両者の融合的手法が有効であると考える

170 方向 D スコープ画像方向 D スコープ画像 高さ 4.9mm 底面 高さ 4.7mm 底面 高さ 6.5mm 底面 高さ 5.1mm 底面 高さ 7.7mm 底面 高さ 6.9mm 底面 高さ 4.5mm 底面 高さ 5.3mm 底面 端部エコー識別不可 底面 高さ 4.3mm 底面 図 2.4.3(3)-118 入射方向を変えたフェーズドアレイ UT 法による D スコープ画像 1 ( 試験体 B1553 周波数 3 MHz)

171 方向 D スコープ画像方向 D スコープ画像 高さ 5.4mm 端部エコー識別不可 -30 底面 -150 底面 高さ 6.6mm 高さ 6.2mm -15 底面 -165 底面 高さ 7.9mm 高さ 7.2mm 0 底面 180 底面 高さ 6.8mm 高さ 5.6mm 15 底面 165 底面 高さ 3.6mm 高さ 6.2mm 30 底面 150 底面 図 2.4.3(3)-119 入射方向を変えたフェーズドアレイ UT 法による D スコープ画像 2 ( 試験体 B1554 周波数 3 MHz)

172 方向 D スコープ画像方向 D スコープ画像 図 2.4.3(3)-120 入射方向を変えた 3D SAFT 法による D スコープ画像 1 ( 試験体 B1553 周波数 2 MHz)

173 方向 D スコープ画像方向 D スコープ画像 図 2.4.3(3)-121 入射方向を変えた 3D SAFT 法による D スコープ画像 2 ( 試験体 B1553 周波数 5 MHz)

174 方向 D スコープ画像方向 D スコープ画像 図 2.4.3(3)-122 入射方向を変えた 3D SAFT 法による D スコープ画像 3 ( 試験体 B1554 周波数 2 MHz)

175 方向 D スコープ画像方向 D スコープ画像 図 2.4.3(3)-123 入射方向を変えた 3D SAFT 法による D スコープ画像 4 ( 試験体 B1554 周波数 5 MHz)

176 き裂深さ (mm) 切断結果 X (mm) (a) 入射方向 -45 から0 き裂深さ (mm) 切断結果 X (mm) (b) 入射方向 0 から 45 図 2.4.3(3)-124 入射方向に対する 3D SAFT 法のき裂深さサイジング結果 1 ( 試験体 B1553 周波数 2 MHz)

177 き裂深さ (mm) 切断結果 X (mm) (a) 入射方向 -45 から0 き裂深さ (mm) 切断結果 X (mm) (b) 入射方向 0 から 45 図 2.4.3(3)-125 入射方向に対する 3D SAFT 法のき裂深さサイジング結果 2 ( 試験体 B1553 周波数 5 MHz)

178 き裂深さ (mm) 切断結果 X (mm) (a) 入射方向 -45 から 0 き裂深さ (mm) 切断結果 X (mm) (b) 入射方向 0 から 45 図 2.4.3(3)-126 入射方向に対する 3D SAFT 法のき裂深さサイジング結果 3 ( 試験体 B1554 周波数 2 MHz)

179 き裂深さ (mm) 切断結果 X (mm) (a) 入射方向 -45 から 0 き裂深さ (mm) 切断結果 X (mm) (b) 入射方向 0 から 45 図 2.4.3(3)-127 入射方向に対する 3D SAFT 法のき裂深さサイジング結果 4 ( 試験体 B1554 周波数 5 MHz)

180 表 2.4.3(3)-19 入射方向に対するき裂最大深さサイジング結果 ( 単位 :mm) 手法 フェーズドアレイ 3D SAFT 法 周波数 3 MHz 2 MHz 5 MHz -45 未測定 B 評価不可 未測定 未測定 B 未測定 切断結果

181 (c) 励磁制御渦電流法の信号融合によるき裂長さ 深さの評価本研究の目的は 疲労割れに対するサイジングの信頼性向上と深さ評価方法の高度化を図り システムの安全を評価する上での裕度の拡大へ反映することである 渦電流探傷試験法 (ECT) に関しては 複数の視点からの信号 即ち 多次元信号の活用により き裂評価の信頼性を高める 具体的には ECT のメカニズムの分析と数値解析により きずの形状に対応する信号の特徴を把握し 多次元信号を計測するシステムを構築し また このシステムによる計測データを使って多次元データの融合によるき裂長さ及びき裂深さの評価を行い きず深さがある一定値以下であることを担保するために最適な電流制御手法及びデータ融合条件を明らかにする 昨年度は シミュレーション解析を用いて ECT で使われる数種類の代表的な励磁 検出方式 ( 自己誘導 標準比較式のパンケーキプローブ 自己誘導 自己比較式のプラスポイントプローブ 相互誘導 標準比較式の一様渦電流プローブのき裂長さ方向磁場検出と試験片厚さ方向磁場検出 ) の耐ノイズ性 ( ここでは 被検体の電磁気特性 即ち 導電率及び透磁率のバラツキによる信号変化 ) 及びサイジング精度を調査した その結果 一様渦電流プローブのき裂長さ方向磁場検出が優れた耐ノイズ性と深さサイジング精度を持つことを示した この結果を踏まえ 今年度 (H24 年度 ) は 一様渦電流プローブで得られる検出磁場の X, Y, Zの3 軸方向成分の特徴をさらに明確にするために シミュレーション解析を行い 等価電流の観点から検出磁場の各方向成分の特徴を分析する また X, Y, Z の 3 軸方向の磁場を計測できる ECT プローブを作製し 検出信号収集システムを構築して 測定試験を行う それぞれの方向の信号 あるいは それらを組み合わせたデータを活用したき裂サイジングの精度及び信頼性の向上について検討する a) 渦電流の乱れ 等価電流及び検出信号 ECT は 励磁コイルで試験片に渦電流を誘導させて き裂が存在するとき渦電流の流れが乱れ この渦電流の乱れが生じる信号変化を検出することによりき裂の有無を判断し また き裂の寸法を評価する手法である 渦電流は 流れる方向がき裂面と垂直な場合 き裂による渦電流の乱れが最も大きくなり き裂の検出感度が最も高くなる 一様渦電流励磁コイルが試験片の X 方向に流れる渦電流を誘導する場合 ( 図 2.4.3(3)-128) X 方向と垂直のYOZ 面に平行なき裂による渦電流の乱れがもっとも大きい このようなき裂に阻まれた渦電流は主に 2 方向に回り込む 一つは図 2.4.3(3)-129 (a) に示すようなき裂下面への回り込み もう一つは図 2.4.3(3)-130 (a) に示すようなき裂の長手方向端部へ回り込む 渦電流のき裂下面へ回り込みによる変化は図 2.4.3(3)-129 (b) に実線で示すリング電流で近似でき き裂長さ方向全てのリング電流が一個のソレノイドコイルとして近似できる このとき ソレノイドコイル内部から外側へ図 2.4.3(3)-129 (b) に点線で示す閉回路の磁束が生じる ECT が計測するのは ソレノイドコイル外部の磁束である この等価ソレノ

182 イドコイルと平行部分の磁束を Y 方向と仮定する場合 コイル端部の磁束は-Y 方向である ソレノイドコイル外部の磁束密度の計算は複雑であるが 近似的には ソレノイドコイルの直径 ( ここでは き裂の深さに相当 ) リングの巻数( ここでは き裂の長さに相当 ) また リング電流密度 ( ここでは 渦電流密度の変化量に相当 ) に関係していると考えられる なお リング電流は き裂下面へ回り込む電流に対応しているため これにより生じる磁束密度は主にき裂の深さを反映すると考えられる また き裂の長さは励磁電流の影響する範囲の幅を超えると き裂長さの変化による Byの変化はほとんどないと考えられる このとき き裂の長手方向の磁束密度 By はき裂深さのみを反映する また 磁束密度 By はき裂の長手方向端部で向きが変わることにより これに着目することでき裂の端部が見つけられ き裂の長さ評価につながると考えられる 一方 き裂の長手方向端部へ回り込む渦電流変化は 図 2.4.3(3)-130 (b) に実線で示す楕円ループ電流で近似できる 図 2.4.3(3)-130 (b) にこの電流が生じる磁束を点線で示す このとき き裂の真上の磁束はZ 方向を向いている き裂の深さが一様 ( 即ち き裂が長方形 ) で 一様励磁コイルがき裂の長手方向の中心に位置しているとき 電流の大きさが同じかつ逆向きの楕円ループ電流により き裂の長手方向の中心点でZ 方向の磁束密度は 0 である 励磁コイルがき裂の長手方向の中心から離れると 二つの楕円ループ電流のループ形状と電流の大きさは等しくなくなり この二つのループ電流が作る磁束が合わさった結果 励磁コイルがき裂の端部に近付くほど Bzが大きくなり き裂の端部付近で Bzが最大となる このとき 磁束密度 Bzはき裂両端で逆向きである 励磁電流の影響範囲内では この Bzは楕円ループの大きさ 主にはき裂の長さに関係しているため この成分によりき裂の長さを評価できると考えられる また 励磁コイルがき裂の真上から離れると この楕円ループ電流が生じる磁束は他の方向に広がるため Bx 成分でも検出できる Ie0 Z X Y 図 2.4.3(3)-128 一様渦電流プローブにより誘導される X 方向渦電流 ( 欠陥なし )

183 By R Ie By X Z Y L Ir (a) き裂の下面へ回り込む渦電流 (b) 等価リング電流及びそれが生じる磁束 図 2.4.3(3)-129 き裂の下面へ回り込む渦電流 等価リング電流及び磁束 Bz Ie Ic Z L Bz X Y (a) き裂の端部へ回り込む渦電流 (b) 等価楕円ループ電流及びそれが生じる磁束 図 2.4.3(3)-130 き裂の端部へ回り込む渦電流 等価ループ電流及び磁束

184 上記の等価電流による磁束の定性的な説明は 以下のシミュレーションで明確に示される 図 2.4.3(3)-131 に示す一様渦電流励磁コイルを 220 mm 200 mm 30 mmの試験片の中央にある幅 0.2 mm 長さ 15 mm 深さ 4 mm のき裂 ( 以下 L15D4 と表記する ) の真上に 図 2.4.3(3)-132に示すように 10 mm 浮かせて配置して き裂なしとき裂 L15D4 ありの条件でそれぞれ解析を行い その磁束密度の変化量を求める 一様渦電流励磁コイルの幅は 12 mm 即ち 一様励磁電流が影響を及ぼす範囲の幅は約 12 mm である 試験片の導電率を1 MS/m 比透磁率を 1 励磁周波数を20 khz とした この場合 渦電流の標準浸透深さ δ は 1 f により約 5 mmである 試験片表面の Z 座標を 0 mm とし 試験片表面から垂直に 1.5 mm 離れた平面を Z=1.5 mm 平面と表記する 図 2.4.3(3)-133 図 2.4.3(3)-134 及び図 2.4.3(3)-135は き裂 L15D4 があるときの Z=1.5 mm 平面上での各軸方向の磁束密度成分 (Bx, By, Bz) の実数部 虚数部及び絶対値の分布である ( 図中の点線はき裂の位置を表す ) これらから以下のことがわかる Bx 信号 :Bx 信号の実数部及び虚数部は き裂の長手方向の中心及びき裂面に関して逆対称であり これらの対称面で Bx 信号は 0である Bx 信号の絶対値は き裂両端部で最大になる By 信号 : き裂の中心にピークが現れ き裂端部とき裂長さ部分の By 信号の位相は逆転している また き裂端部の外側にも小さなピーク値が現れる Bz 信号 : き裂の中心を通りき裂長手方向に垂直な面に関して Bz 信号は逆対称であり この対称面で Bz 信号は 0である 以上のシミュレーションで得られた磁束信号は 等価電流ループに基づいた分析とよく一致している このように信号の特徴を踏まえて磁気センサーを適切に配置することがき裂の検出 サイジングの改善につながると考えられる Iex 40 図 2.4.3(3)-131 一様渦電流励磁コイル

185 10 (a) 励磁コイルと試験片の配置 ( 側面 ) (b) 励磁コイルとき裂の位置関係 図 2.4.3(3)-132 試験片 き裂及び一様渦電流励磁コイルの配置

186 (a) Bx 信号の実数部 (b) Bx 信号の虚数部 (c) Bx 信号の絶対値 図 2.4.3(3)-133 Z=1.5 mm 平面上 Bx 信号の分布 ( 点線は L15D4 き裂の位置を示す )

187 (a) By 信号の実数部 (b) By 信号の虚数部 (c) By 信号の絶対値 図 2.4.3(3)-134 Z=1.5 mm 平面上の By 信号の分布 ( 点線は L15D4 き裂の位置を示す )

188 (a) Bz 信号の実数部 (b) Bz 信号の虚数部 (c) Bz 信号の絶対値 図 2.4.3(3)-135 Z=1.5 mm 平面上 Bz 信号の分布 ( 点線は L15D4 き裂の位置を示す )

189 b) き裂の長さ 深さと信号 ここでは a) の定性的な分析に基づいて き裂の性状と各軸方向信号の関係について調 べる シミュレーションに用いた全てのき裂の幅は 0.2 mm である (ⅰ) き裂の深さによる信号変化昨年度は 長さ 10 mm 深さ1 mm 4 mm 6 mm 8 mmのき裂を対象に 一様渦電流プローブにおける欠陥長手方向信号 ( 本報告の Y 方向 ) と試験片厚さ方向信号 ( 本報告では Z 方向 ) を解析した き裂が深くなるにつれ き裂の長手方向信号の振幅値は最も飽和しにくい また き裂深さの増加に伴う渦電流探傷信号の位相角度の変化が最も大きい したがって き裂の長手方向信号 (Y 方向信号 ) はき裂の深さサイジングに有利であることが示された (ⅱ) き裂長さによる信号の変化今年度は さらにき裂の長さと信号の関係について検討した き裂の深さを固定し 長さを変化させ き裂長さ変化による信号の変化を調査し き裂長さと信号の関係を調べた き裂深さを標準浸透深さ以下の 1 mmと4 mm き裂長さを励磁コイル幅の 12 mm より短い5 mm 若干短い 10 mm 若干長い15 mm 長い20 mmとしてシミュレーションを行った 以下では き裂の長さをL 深さを D で表しており たとえば 深さ 1 mm 長さ 10 mm のき裂を L10D1 と表記する 長手方向に深さが一定のき裂に対して 全ての信号 (Bx, By, Bz) はき裂の長手方向の中心に関して対称 逆対称であるため き裂長手方向の中心から片方の走査のみをシミュレーションした き裂長手方向を Y 方向 き裂中心をY=0 とした場合 プローブはき裂中心の Y=0 からき裂端部より十分離れた Y=25 mm まで走査することとした 磁束密度の 3 方向の成分 Bx, By, Bzは共にき裂の寸法に関係しているが Bx と Bz は共にき裂長手方向端部へ回り込む渦電流より発生しており また き裂の真上の走査線上で Bx は0 であるため ここでは Bx 信号の解析は行わず ByとBz 成分のみを解析した 1 By 信号図 2.4.3(3)-136に深さ4 mmのき裂に対するby 信号の振幅と位相の走査位置に伴う変化を示す き裂の長手方向の中心はプローブ位置の 0 点であるため 長さ5 mm 10 mm 15 mm 20 mm のき裂の端部はそれぞれプローブ位置が 2.5 mm 5 mm 7.5 mm 10 mm のときである 図 2.4.3(3)-136 (a) に示すように 長さ 5 mm 10 mm 15 mm 20 mm のき裂の By 信号の位相逆転はプローブ位置が 3 mm と 4 mmの間 4 mm と 5 mmの間 7 mm と8 mm の間 10 mmと 11 mm の間に発生している これらの By 信号の位相変化点はそれぞれき裂の端部位置とほぼ一致している また 図 2.4.3(3)-136 (b) は各長さのき裂の By 信号の振幅走査図である き裂長さが大きくなっても By 信号の最大振幅が必ずしも大きくなるわけでは

190 ない これは By 信号の振幅によるき裂長さ推定が必ずしも適切ではないことを意味する 2 Bz 信号プローブをき裂長手方向 (Y 方向 ) に走査した場合の Z 方向信号 Bz の振幅と走査位置の関係を図 2.4.3(3)-137に示す き裂深さが1 mmか4 mm かに関わらず 長さ 5 mm 10 mm 15 mm 20 mmのき裂に対する Bz 信号振幅のピーク値はき裂の端部とほぼ一致するY=2 mm 4 mm 7 mm 10 mm で得られる き裂長さに対する Bz 信号振幅に関しては き裂長さが励磁コイル幅 12 mmより短い ( 長さ 5 mmと10 mm) 場合 信号の最大振幅はき裂が長くなるにつれて大きくなる き裂長さが励磁コイル幅より長い ( 長さ 15 mm と 20 mm) 場合 き裂長さ変化による信号の最大振幅変化はほとんどない 即ち き裂の長さは励磁コイルの幅より短い場合 Bz 信号の振幅値はき裂の長さを反映している 長さ 5 mm 深さ1 mmのl5d1 き裂信号の最大振幅を 1 として 深さごとの信号の最大振幅とき裂長さの関係を図 2.4.3(3)-138にまとめた き裂長さが励磁コイルの幅 12 mmより短い場合 By 信号の最大振幅はき裂長さの増加と共に大きくなるが き裂長さが励磁コイルの幅より長い場合 By 信号の最大振幅は逆に小さくなる 一方 Bz 信号の場合 き裂長さが 15 mm 以上になると信号の最大振幅が飽和する傾向にあるが 長さが15 mm 以下のき裂に対してはき裂が長くなるほど Bz 信号の最大振幅は大きくなる Bz 信号はき裂長さ推定に適すると言える ここでは き裂長手方向に深さが一定のき裂を対象にして き裂の寸法 ( 長さ 深さ ) と磁束密度信号 (Byと Bz) の関係を調べた 実際のき裂の性状はもっと複雑であるため 実際の信号はもっと複雑である ただし By 信号が Bz 信号よりき裂の深さを反映し また Bz 信号がよりき裂の長さを反映することは変わらない

191 Phase Angle of By ( ) LXD4, 20kHz Probe Position (mm) L5D4 L10D4 L15D4 L20D4 (a) By 信号の位相と走査位置の関係 LXD1, D4, 20kHz By (Tesla) 1.6E E E E E E E E E Probe Position (mm) L5D1 L10D1 L15D1 L20D1 L5D4 L10D4 L15D4 L20D4 (b) By 信号の振幅と走査位置の関係 図 2.4.3(3)-136 深さ 4 mm 長さ 5 10,15 20 mm のき裂による By 信号

192 Bz (Tesla) 2.5E E E E E-07 LXD1,D4, 20k Hz L5D4 L10D4 L15D4 L20D4 L5D1 L10D1 L15D1 L20D1 0.0E Probe Position (mm) 図 2.4.3(3)-137 Bz 信号の振幅と走査位置の関係 Maximum Amplitude (Calibrated) By (D=4mm) Bz (D=4mm) By (D=1mm) Bz (D=1mm) Length (mm) 図 2.4.3(3)-138 By 及び Bz 信号の最大振幅とき裂長さの関係

193 c) 磁束の 3 方向成分を検出可能な一様渦電流プローブによる疲労割れの測定 a) b) では 磁束密度信号とき裂の長さ 深さの関係について検討した 一般の渦電流探傷試験では 検出コイルを用いて磁束の変化 即ち 検出コイル面を貫通する磁束量の時間変化量を検出する 検出コイル面に通る磁束量と一点の磁束密度は異なるが コイル面積が小さいほど両者は近くなる 本研究では 図 2.4.3(3)-139に示す X, Y, Zの3 方向の磁束変化を検出できる一様渦電流プローブを作製した 励磁は a) や b) で述べた一様渦電流コイルであるが 検出は 3 方向の磁束変化を測定できる小型四角形検出コイルである Z 方向信号を検出する検出コイルの大きさは 3 mm 3 mm 2 mm X 及び Y 方向信号を検出する検出コイルの大きさは 3.5 mm 5 mm 2 mmである 図 2.4.3(3)-140にプローブの写真を示す Z Y X 励磁コイル き裂 検出コイル 図 2.4.3(3)-139 X, Y, Z 成分を検出できる一様渦電流プローブの概念図 図 2.4.3(3)-140 一様渦電流プローブの写真

194 このプローブを用いて 本事業で作製した熱疲労割れ試験体 W299 W319 B1553 B1554 を測定した 励磁周波数は 25 khzとした 表 2.4.3(3)-20 表 2.4.3(3)-21 表 2.4.3(3)-22 表 2.4.3(3)-23に各熱疲労割れき裂に対するX 方向 Y 方向 Z 方向信号の実数及び虚数部のCスキャン図を示す 表 2.4.3(3)-20 と表 2.4.3(3)-21に示す W299とW319 の各方向信号のCスキャンは 図 2.4.3(3)-133 図 2.4.3(3)-134 図 2.4.3(3)-135 に示したき裂 L15D4 による Bx By Bz 信号の Z=1.5 mm 平面上の分布に良く似ているが 表 2.4.3(3)-22と表 2.4.3(3)-23に示すB1553 及びB1554 の C スキャン図には変わった模様が現れた これは 近傍の複数のき裂による影響と考えられる 小型パンケーキプローブ及びプラスポイントプローブによる測定も行い ( パンケーキプローブの径はおよそ 3 mm プラスポイントプローブの大きさは約 4.5 mm 5.0 mm 1.5 mm である ) これらの熱疲労割れ試験体 B1554 の測定結果の C スキャン図を表 2.4.3(3)-24 に示す ( パンケーキプローブ及びプラスポイントプローブによる測定の励磁周波数は共に 400 khzである ) パンケースプローブの CスキャンはB1554が3 個以上の近接割れで構成されることを示した 本研究に使われた一様渦電流プローブのピックアップコイルのサイズは小さいが 励磁コイルのサイズは割と大きく 励磁渦電流の及ばす範囲が広いため その範囲内の渦電流の乱れによる磁束変化は全て検出コイルに拾われ 空間分解能は低くなる 即ち 大型一様渦電流励磁コイルを用いたプローブは一定範囲内の欠陥 あるいは欠陥の集合体の検出 サイジングに適している 欠陥細部の検査 評価には 励磁コイルの小型化などの工夫が必要である また 一様渦電流プローブの深さサイジング性と小型プローブの優れた空間分解能を利用して それぞれのプローブの特徴を活かした欠陥評価法は欠陥の検出 サイジング性の向上につながると考えられる

195 表 2.4.3(3)-20 一様渦電流プローブによる W299 の C スキャン図 実数成分 虚数成分 X 軸方向 信号 Y 軸方向 信号 Z 軸方向 信号

196 表 2.4.3(3)-21 一様渦電流プローブによる W319 の C スキャン図 実数成分 虚数成分 X 軸方向 信号 Y 軸方向 信号 Z 軸方向 信号

197 表 2.4.3(3)-22 一様渦電流プローブによる B1553 の C スキャン図 実数成分 虚数成分 X 軸方向 信号 Y 軸方向 信号 Z 軸方向 信号

198 表 2.4.3(3)-23 一様渦電流プローブによる B1554 の C スキャン図 実数成分 虚数成分 X 軸方向 信号 Y 軸方向 信号 Z 軸方向 信号

199 表 2.4.3(3)-24 パンケーキプローブ及びプラスポイントプローブによる B1554 の C スキ ャン図 ( 励磁周波数 400 khz) 実数成分 虚数成分 パンケー キプロー ブ プラスポ イントプ ローブ

200 d) 多方向信号の融合によるき裂サイジングの基礎検討 a) 及び b) での分析では 一様渦電流プローブによる各軸方向の検出信号は き裂形状 ( 深 さ 長さ ) をそれぞれ反映していることを示した 式 (2.4.3(3)-14) のように目的関数を用いて 走査点ごとに信号を比較して欠陥プロファ イルを求める場合 a) 及び b) の中で述べた信号の位相変化や振幅の最小 最大値位置など から得られる欠陥端部 欠陥中心などの情報が十分活用されない 式 (2.4.3(3)-14) で c は求める欠陥プロファイル mは走査点 Mは全走査点数 Z mea m は走査点 mでの測定信号 m は走査点 m の信号の重み係数である M m 1 mea 2 ( c ) m Z m ( c) Z m (2.4.3(3)-14) 以下では 一様渦電流プローブから得られたき裂長手方向信号と試験片厚さ方向信号 ( 即 ち 表 2.4.3(3)-20 から表 2.4.3(3)-23 の Y 軸方向信号と Z 軸方向信号 ) また 信号位相 の変化 信号のピークが現れる位置などの情報を総合的に活用したき裂サイジングについ て検討する 本研究では 式 (2.4.3(3)-14) のような目的関数に基づいたモデルベースのサ イジング法ではなく 信号の特徴量及びデータの学習に基づいたモデルフリーのサイジン グ法でき裂の寸法を推定する なお 今年度作製した一様渦電流プローブの空間分解能は 不十分で き裂の細部を反映できないため き裂の詳細なプロファイルではなく き裂の 長さ 平均的な深さのみを求める (ⅰ) Y 方向 Z 方向信号とその特徴量の抽出一様渦電流プローブを図 2.4.3(3)-132に示すようにき裂の真上に配置して き裂の長手方向に走査する 図 2.4.3(3)-141において (a) は8 mm 深さ 3 mm の半楕円状き裂の断面形状 (b) は走査点ごとの Y 軸方向信号 ( 実数部 虚数部 振幅値及び近傍走査点からの振幅値変化 ) (c) はZ 軸方向信号 ( 実数部 虚数部及び振幅値 ) である 走査はY=-20 mm から Y=20 mm まで き裂は走査線の中央に位置している 図 2.4.3(3)-141 (b) に示す Y 軸方向信号の最大振幅はき裂長手方向の中心 走査点 0に現れ 振幅が走査点 Y=-4 mm と 4 mm 付近で最も大きく変化する この二つの走査点の距離 (8 mm) はき裂の長さに相当する Y 軸方向信号から信号の最大振幅値 g max 最大振幅値点の位相 p max 最大振幅になる走査点 i max 振幅が最も大きく変化する走査点 it 1 it 2 を抽出した feat y [ g max, pmax, imax, it1, it2 ]; 図 2.4.3(3)-141 (c) に示すように 長さ 8 mm 深さ 3 mm の半楕円状き裂に対する Z 軸方向信号に二つのピークが現れた この二つのピークが走査点 Y=-4 mm とY=4 mmに現れ それらの間隔はき裂の長さに関係している Z 方向信号から二つのピーク値 g m1, g m2 及びそのピーク点信号の位相 p m1, p m2, peak-to-peak 振幅 g pp その位相角度 ph pp ピーク点の走査点位置を ip 1, ip 2 を抽出した

201 feat z [ g m1, pm1, g m2, pm2, g pp, phpp, ip1, ip2 ]; (ⅱ) き裂長さ 深さ推定 ここでは モデルフリーの Similarity-based Modeling (SBM) アルゴリズムを用いて き裂の長さ 深さを推定する SBM では多変量を用い 類似度 に基づいた識別手法であ る このアルゴリズムを実施するために 学習用のデータベースを用意する必要がある 図 2.4.3(3)-132 に示すような励磁コイルとき裂配置になる場合 励磁コイルが影響を及ぼす 範囲より長いき裂の長さは Y 方向信号への影響はほとんどないため ここでは 長さを励 磁コイルが影響を及ぼす範囲の 16 mm 以下にした 4 mm から 16 mm また 深さは 0.5 mm から 6 mm のき裂を用意し これらに対する一様渦電流プローブによる検出信号 (Y 軸方向 信号と Z 軸方向信号 ) を計算し 特徴量 feat y と feat z を抽出して 学習用入力信号 X tr 築する 学習用データの出力信号 Y tr はこれらのき裂の深さ 長さで構築する 二つのベクトル U と V の類似度は以下の非線形類似作用素で計算する を構 2 ( U V ) 1 2 2h U V e (2.4.3(3)-15) 2 2 h また 長さ 深さが未知のき裂の観測信号から得られた特徴量によって X est を構築して 求めたいパラメータ ( これらのき裂の長さ 深さ ) Y est は以下の計算で求められる ここで Yest Ytr w (2.4.3(3)-16) w W W (2.4.3(3)-17) T 1 W ( X X ) ( X X ) (2.4.3(3)-18) tr tr tr 各軸方向の信号のき裂サイジングへの適用性及びデータ融合によるサイジング性を評価するために こちらでは 3 つの学習データを用いてサイジングを行う est 1 Y 方向信号の特徴量のみを用いた長さ 深さ推定 Y 方向信号を用いて SBM 用の学習用入力信号 X tr を構築する X tr [ g max, pmax, imax, lg i ]; i 1, 2, i i i ここで N は学習に使われたき裂の数で lg は feat y の it 1 と it 2 から得られた特徴量であ る,N 2 Z 方向信号の特徴量のみを用いた長さ 深さ推定

202 Z 方向信号を用いて SBM 用の学習用入力信号 X tr を構築する X tr gm1, pm1, g, p, l pp ]; i 1,2,, N [ i i pp i pp i, ここで N は学習に使われたき裂の数で l pp は feat z の二つのピーク位置 ip 1 と ip 2 から得 られた特徴量である i 3 Y と Z 方向信号の特徴量の組み合わせを用いた長さ 深さ推定 Y と Z 方向信号の特徴量を組み合わせて SBM 用学習用入力信号 X tr X tr gmax, pmax, lgi, gm1, pm1, g, p pp ]; i 1,2,, N [ i i i i pp i i, を構築する なお これらの学習データの出力信号 Y trは共にき裂の長さ length と深さ depth である Ytr [ lengthi, depthi ]; i 1,2,, N 長さ 4 mm から 16 mm 深さ 0.5 mm から 6 mm の 87 個のき裂 ( その中の多くは長方形き 裂であるが 半楕円状 階段状のき裂も含めている ) から それぞれの Y 方向信号のみ Z 方向信号のみ または Y 方向と Z 方向信号の組み合わせの Y X を作り そこからラン ダムに 82 個の学習データを選び X tr て使い Y est を求める と tr Y を構築し 残る 5 個をテストデータの X est とし それぞれの学習入力データを用いて 4 回の SBM 解析を実行し 計 20 個のテストデータの 深さ 長さサイジングを行った 表 2.4.3(3)-25 に長さサイジング結果をまとめた いず れにおいても推定値と真値がよく一致している 表 2.4.3(3)-26 は 深さサイジング結果 のまとめである Y 方向信号や Z 方向信号のみを使う場合 表中のグレーのセルに示した ような外れた推定が出ているが Y と Z 方向信号の組み合わせによる推定には そのよう な外れは発生しなかった したがって このように 2 方向信号の組み合わせによってサイ ジングの信頼性が高まった e) まとめ今年度の事業では 励磁とき裂の相対関係から 渦電流探傷信号としての磁束の方向性 振幅変化などを分析し それぞれのき裂サイジング精度を評価した上 X, Y, Z 方向信号を収集できる一様渦電流プローブを作製し 疲労割れき裂の渦電流探傷試験を行った また 各方向信号及びそれらの組み合わせデータによるサイジングを行い 多方向信号の融合によるき裂サイジングの基礎検討を行った結果 多方向信号の活用によるサイジングの信頼性の向上を示した 今後は 多周波数 多センサーデータなどを含め この手法のさらなる高度化を図り 実測データによるサイジングを行う予定である

203 (a) 長さ 8 mm 深さ 3 mm の半楕円状き裂 (1 は欠陥 0 は母材 縦方向 0.5 mm ピッチ 横方向 1 mm ピッチ ) L8D3-Semiellipse Y-direction Signal (Arbitrary unit) 2.5E E E E E E E E E E E Probe Position (mm) Re. Im. Abs. ΔAbs (b) Y 方向信号 (Re: 実数成分 Im: 虚数成分 Abs: 振幅値 ) L8D3-Semiellipse Z-direction Signal (Arbitrary unit) 2.5E E E E E E E E E E E Probe Position (mm) Re. Im. Abs. (c) Z 方向信号 (Re: 実数成分 Im: 虚数成分 Abs: 振幅値 ) 図 2.4.3(3)-141 長さ 8 mm 深さ 3 mm の半楕円状き裂及びその信号

204 表 2.4.3(3)-25 長さサイジング結果 Y-Direction Signal Z-Direction Signal Y/Z-Direction Signal True (mm) Estimated (mm) True (mm) Estimated (mm) True (mm) Estimated (mm) 表 2.4.3(3)-26 深さサイジング結果 Y-Direction Signal Z-Direction Signal Y/Z-Direction Signa True (mm) Estimate d (mm) True (mm) Estimated (mm) True (mm) Estimated (mm)

205 (d) マイクロ波によるきず特徴量抽出技術の構築 a) はじめに高経年プラントの長期安全性を確保する上で 保守 点検により損傷を早期に発見し構造部材の残存寿命予測や交換などを適切に行うことが重要である 非破壊検査を行うことにより構造材料の健全性の指標を示すことは グランドデザインやシステム安全に寄与する 非破壊検査手法は超音波探傷法や渦電流探傷法などの既存技術があるが この既存技術を補完し非破壊検査精度を向上させるために本研究ではマイクロ波法を取り上げた 特に 環境因子を考慮したマイクロ波によるき裂サイジング評価を行い マイクロ波法によるきず特徴量の抽出技術を開発すると共に非破壊検査への課題を抽出することを目的とした この目的を達成するために 以下の調査を行った まず き裂サイジング評価の信頼性向上を図るために 測定データを蓄積し これまでに構築した評価モデルの改良 ならびにマイクロ波検査技術の適用範囲の検証を行った また 複数種のき裂を計測し環境などの影響因子について検討した マイクロ波によるきず特徴量抽出技術を構築するために 従来 ET/UTによるきず評価を補完するマイクロ波応答より き裂性状 ( 応力腐食割れ 熱疲労き裂 機械的疲労き裂の判別等 ) 被測定物表面のき裂長さの評価を行う技術の開発を行った さらに 実機への応用を検討するために 構造部材に生じたき裂の検出 サイジング評価を行うためのセンサを作製した 開発したセンサのき裂検出感度を実験的に評価し 実機適用に向けた技術課題を抽出した b) 測定原理 (ⅰ) マイクロ波マイクロ波は 300 MHz~300 GHzの電磁波であり 反射や透過等の特性が材料の電気的物性に依存する マイクロ波を導電性材料に照射したとき 導電率が高いほどまた反射率が高いほど反射率が大きくなり 透過率が小さくなる特性がある この特性から マイクロ波は金属に照射するとほとんど反射する また金属表面上にき裂がある場合 マイクロ波はき裂面内部にマイクロ波電流を誘起し 誘起された電流によりエネルギーを失い 反射波を減衰する特性もある ここでマイクロ波によってき裂面内部に誘起される電流をマイクロ波電流 それによる損失を導体損失と呼ぶ これらの特性によりマイクロ波を用いて金属表面上のき裂を検出することができる き裂の非破壊検出手法として 超音波や渦電流が挙げられる それらと比較してマイクロ波が優れている点を挙げる マイクロ波は 超音波では過小評価などの問題のある閉じた疲労き裂を検出することができる また超音波に比べ金属表面における測定感度が高いという利点がある 更に本研究にて用いた同軸ケーブルセンサは 超音波や渦電流と比べて高い空間分解能を持つ これらの特長から 非破壊検査手法としてマイクロ波を用いることは有用であることが言える

206 (ⅱ) 測定装置図 2.4.3(3)-142 で示したように 本研究で用いたマイクロ波近接場顕微鏡を示す マイクロ波近接場顕微鏡は x y z 方向に制御できるステージ センサ取り付け具 ベクトルネットワークアナライザ コンピュータからなる ベクトルネットワークアナライザとは周波数領域で信号分析をする測定器であり 送受信器を取り付け マイクロ波の反射波の振幅 位相を測定するために用いる き裂の検出に用いた同軸ケーブルセンサの写真を図 2.4.3(3)-143 に示す この同軸ケーブルセンサは従来と比べ 広い周波数範囲を扱うことができ さらに空間分解能に優れている 図 2.4.3(3)-144 に同軸ケーブルセンサの先端部の構造を示す センサ先端部は内部導体と外部導体で構成され 内部導体と外部導体の間には電界が存在し 電界と垂直になる磁界が存在する 実験にあたって センサが試験体に対して常に垂直になる状態で実験を行った マイクロ波の周波数を 110 GHz スタンドオフ距離を 60 m に設定してマイクロ波を試験体に照射し 試験体からの反射波を測定した Network analyzer Computer Specimen Sensor x-y-z stage 図 2.4.3(3)-142 マイクロ波近接場顕微鏡

207 1 mm 図 2.4.3(3)-143 同軸ケーブルセンサ 図 2.4.3(3)-144 同軸ケーブルセンサ先端断面図 (ⅲ) マイクロ波によるき裂の検出マイクロ波を用いたき裂の検出原理について説明する 図 2.4.3(3)-145 の左はき裂がセンサの内部導体と外部導体の中間に位置している場合である このとき き裂面内部にマイクロ波電流が生じ導体損失が起こる 誘起されたマイクロ波電流は磁界方向とき裂面の法線が垂直となる時に最大となる よってマイクロ波の反射波は大きく減衰する 図 2.4.3(3)-145の中央はセンサが移動し 内部導体がき裂真上に位置している場合である き裂面の法線と垂直になる磁界が存在しないため導体損失は起こらず 反射波は減衰しない 図 2.4.3(3)-145の右はさらにセンサが移動し き裂面の法線と磁界が再び垂直となる位置にある状態である 反射波は再び減衰し 計測結果は特徴的な W 型となる 1 1 Saka, M., Ju, Y., Luo, D. and Abé, H. A Method for Sizing Small Fatigue Cracks in Stainless Steel Using Microwaves. JSME International Journal A,Vol.45,No.4, pp.573-8, (2002)

208 図 2.4.3(3)-145 き裂検出の手順 以下マイクロ波の減衰量を A とし W 型計測信号の 2 つのピークの平均値と 未損傷部 分における値の差と定義する (ⅳ) き裂深さの評価法 マイクロ波伝播理論に基づいて 金属表面に生じたき裂の深さを求める手法を考案した き裂を平行板導波路であるとモデル化した 金属表面から距離 z における き裂内部を伝 播するマイクロ波の電界 E は式 (2.4.3(3)-19) のように表される E E exp( z ) (2.4.3(3)-19) i ここで E i はき裂面における z =0 の電界 α は減衰定数を表し 平行板線路における減衰 定数は以下のように表される R S 0 0 w (2.4.3(3)-20) ここで 0 は誘電率 0 は透磁率 w はき裂幅を示す また R S は表面抵抗を表し 以下 のように表される f 0 R S (2.4.3(3)-21) ここで は導電率 f はマイクロ波の周波数を示す 式 (2.4.3(3)-19) から 深さ d のき 裂内部を伝播し 反射して再び金属表面に戻ってきた時の電界 E d は以下の式で表される E E exp( 2 d ) (2.4.3(3)-22) d i マイクロ波の反射係数とき裂深さの関係は次式で表される E E d i 0 exp( 2 d) (2.4.3(3)-23) ここではき裂部の反射係数 は未損傷部分の d = 0 における反射係数である マイク ロ波計測におけるリターンロスの単位は db で測定されるため式 (2.4.3(3)-23) を以下の

209 式のように変換する 20 log10 20 log (log 10 e) d (2.4.3(3)-24) 本研究ではマイクロ波の振幅の変化量を考えているため 式 (2.4.3(3)-24) においてマイ クロ波減衰量は以下の式のように表される A 20 log log10 40(log 10 e) d (2.4.3(3)-25) 式 ( ) を変形してき裂深さを表した式 (2.4.3(3)-26) を得ることができる d A 40(log e) 10 (2.4.3(3)-26) 式 (2.4.3(3)-26) からき裂の深さを求めるためには 減衰定数を求める必要がある しか し 式 (2.4.3(3)-20) の減衰定数は き裂内部を伝播するマイクロ波について議論してい るが センサ開口端やき裂周辺の表面で反射し き裂内部を伝播していないマイクロ波に よる影響を考慮していない そこで センサから照射された大気中の電力とき裂内部に伝 播する電力の比を考慮して減衰定数を補正した係数を式 (2.4.3(3)-27) に示す P2 P 1 (2.4.3(3)-27) ここで P 1 はセンサから照射された大気中の電力 P 2 はき裂内部の電力を表す また電力 は E 1 を大気中の電界 Z 1 を大気中の特性インピーダンスとし E 2 をき裂内部の電界 Z 2 を平行板線路の特性インピーダンスとすると式 (2.4.3(3)-28) で表される 2 2 E1 E2 1, P2 2Z1 2Z2 P (2.4.3(3)-28) 大気中の特性インピーダンス Z 1 及び平行板線路の特性インピーダンス Z 2 は以下に示す また はセンサ直径を表し センサ直径は 1 mm である Z w Z Z (2.4.3(3)-29) , 2 0 r 大気から平行板線路を接続したときの透過率は式 (2.4.3(3)-30) で表される. T 2Z2 Z Z 1 2 式 (2.4.3(3)-29)~(2.4.3(3)-30) より係数は式 (2.4.3(3)-31) で表される 4Z1Z2 ( Z Z ) 1 2 この係数を用いた減衰定数を式 (2.4.3(3)-32) に示す 上記を考慮して以下熱疲労き裂深さを評価した式を示す d 2 A 40(log e) 10 (2.4.3(3)-30) (2.4.3(3)-31) (2.4.3(3)-32) (2.4.3(3)-33)

210 c) 熱疲労き裂深さの評価本研究では 式 (2.4.3(3)-33) を用いて熱疲労き裂深さの評価を行った 今年度は き裂内部に伝播する電力の透過割合を考慮して決定した係数を用いることで減衰定数を決めた 更に その減衰定数を用いて熱疲労き裂深さの評価を行い 破壊試験による実際のき裂深さと比較した (ⅰ) 試験体図 2.4.3(3)-146 及び図 2.4.3(3)-147 に 測定に用いた試験体の詳細図を示す 平成 24 年度試験体 No.1 は Ni 基合金であるインコネル 600 で直径 200 mm 厚さ 20 mm を有する また中央に 2 種類の熱疲労き裂が導入されている 表面のき裂の長さが 28 mm のき裂を crack 1 表面のき裂の長さが12 mmのき裂をcrack 2 と呼称する 平成 24 年度試験体 No.2 は Ni 基合金 ( インコネル 600) で直径 200 mm 厚さ20 mmを有する また中央に熱疲労き裂が導入されている このき裂をcrack 3と呼称する また表 2.4.3(3)-27にこれらの熱疲労き裂における実験条件をまとめた表を示す それぞれの熱疲労き裂の深さと長さとは 破壊試験によって判明した真の深さ及び長さである なお 下記の表 2.4.3(3)-27 における x y 方向はそれぞれき裂面に垂直な方向 き裂長さ方向に対応している 測定に用いたマイクロ波の周波数は 110 GHz センサの先端と試験体の表面の距離を表すスタンドオフ距離は 60 mとした また 図 2.4.3(3)-148にcrack 1のき裂周辺部の写真及び crack 1を測定した際のマイクロ波イメージングを示す これを見ると イメージングによって熱疲労き裂の分布を視覚的に捉えることができている 図 2.4.3(3)-148の破線部におけるマイクロ波の応答を図 2.4.3(3)-149 に示す 熱疲労き裂を測定した際には 図 2.4.3(3)-149 のように W 型の応答が得られることがわかる 表 2.4.3(3)-27 熱疲労き裂の寸法及び実験条件

211 図 2.4.3(3)-146 平成 24 年度試験体 No.1 の詳細図 図 2.4.3(3)-147 平成 24 年度試験体 No.2 の詳細図

212 2 mm 2 mm 図 2.4.3(3)-148 crack 1 におけるき裂周辺の写真及びマイクロ波イメージング Amplitude, A db Position, x mm 図 2.4.3(3)-149 crack 1 におけるマイクロ波応答

213 (ⅱ) 熱疲労き裂の評価深さの比較結果ここでは 熱疲労き裂深さを評価するために必要な減衰定数について説明し 熱疲労き裂の評価深さと実際のき裂深さの比較を行う これまでに SCC における減衰定数の求め方として 深さが既知の SCC の測定結果を用いて決定する手法 ( 平成 21 年度 ) き裂内のマイクロ波伝播をモデル化することで決定する手法 ( 平成 22 年度 ) シミュレーション結果を用いる手法 ( 平成 23 年度 ) の 3つが提案されてきた 本年度は深さ既知の測定結果を用いずに減衰定数を決定するモデル化の改良を行った これは 深さ既知の測定結果を用いずに減衰定数が決定できるため 電力の透過割合を考慮した新たなモデルを構築した 本研究ではき裂内部のマイクロ波伝播をモデル化し 減衰定数を求める方法を用いた この手法で用いる減衰定数は式 (2.4.3(3)-20) に示した 平行板線路における減衰定数である これはき裂を平行板線路と仮定したからである 各き裂の最大き裂幅及び本手法におけるき裂幅最大の点での減衰定数を表 2.4.3(3)-28 示す 以下図 2.4.3(3)-150~ 図 2.4.3(3)-152 に表 2.4.3(3)-28 に示す減衰定数を用いてき裂ごとにそれぞれの評価結果を比較した結果と破壊試験によって得られた実際のき裂深さを示す また表 2.4.3(3)-29 に実際の深さが最大の点におけるマイクロ波による評価深さと実際の深さの誤差を示す 実際の最大深さの点において誤差を調べたのは き裂の非破壊評価において き裂の最大深さを評価することが極めて重要であるからである 本研究の評価法はcrack 3を除いて 最大深さ点におけるマイクロ波による評価深さは実際の深さと同程度となっているが き裂の端部では誤差が大きいことがわかる また すべてのき裂において過小評価となっている 過小評価の原因としてはマイクロ波の結果はき裂を平行板線路とみなしているが 実際のき裂ではき裂幅が一定でないということが挙げられる また 図 2.4.3(3)-153に示すようにき裂の深部にいくほどきき裂が屈曲している部分も存在していることからき裂の先端までマイクロ波が伝播せず反射していることが考えられる また 図 2.4.3(3)-154 に示すようにき裂端部ではき裂断面の傾きが大きいことから図 2.4.3(3)-155 に示すように反射波の方向が変わり真っ直ぐセンサに返ってきていない可能性がある それにより 実際のセンサの位置とずれた位置から反射した反射波をセンサが受信していることが考えられる これらの結果から き裂をモデル化することにより 熱疲労き裂のサイジング精度が向上する可能性が示唆された しかし 誤差が大きい熱疲労き裂も存在することやすべてのき裂において深さを過小評価するという問題があるため 今後さらに精度よく評価できるように評価法を改善 発展させていく必要がある

214 表 2.4.3(3)-28 き裂幅と減衰定数 8 7 Evaluated depth Actual depth Crack depth, d mm Position along crack length, y mm 図 2.4.3(3)-150 crack 1 の比較結果 5 Crack depth, d mm Evaluated depth Actual depth Position along crack length, y mm 図 2.4.3(3)-151 crack 2 の比較結果

215 Evaluated depth Actual depth Crack depth, d mm Position along crack length, y mm 図 2.4.3(3)-152 crack 3 の比較結果 1 mm 図 2.4.3(3)-153 crack 3 の y=3 における断面図

216 5 mm 図 2.4.3(3)-154 crack 1 におけるき裂断面図 Sensor Metal surface Crack cross section 図 2.4.3(3)-155 き裂端部における反射の模式図 表 2.4.3(3)-29 最大深さの点における実際の深さとの誤差

217 (ⅲ) 検出限界の検討ここでは 熱疲労き裂の評価長さ 深さと実際のき裂長さ 深さを比較し どの程度のき裂を検出できているかマイクロ波検査技術の適用範囲の検証を行う 図 2.4.3(3)-156 に破壊試験によって得られた熱疲労き裂の実際の深さと今年度用いた評価法による熱疲労き裂の評価深さの比較を示す また マイクロ波の反応が現れた長さを熱疲労き裂長さとして評価し 図 2.4.3(3)-157に熱疲労き裂の実際の長さと評価長さの比較を示す 7 Crack depth, d mm crack 1 crack 2 crack Actual depth, d mm 図 2.4.3(3)-156 熱疲労き裂の実際の深さと評価深さの比較 40 Evaluated crack length, mm crack1 crack2 crack Actual crack length, mm 40 図 2.4.3(3)-157 熱疲労き裂の実際の長さと評価長さの比較

218 図 2.4.3(3)-156 より 深さ3 mm 程度の熱疲労き裂までは検出できていることがわかるが 3 mm 以下の領域では検出できていない 図 2.4.3(3)-157 より 熱疲労き裂長さはほぼ正確に検出できていることがわかる しかし データ数が少ないため 今後より多くのデータを蓄積し 適用範囲について検証していくことが必要となる d) 影響因子ここでは マイクロ波による複数種のき裂を計測することで環境などの影響因子について検討した 図 2.4.3(3)-158~ 図 2.4.3(3)-160に熱疲労き裂 SCC 閉じた疲労き裂の測定結果を示す 図 2.4.3(3)-158~ 図 2.4.3(3)-160の (a) はそれぞれのマイクロ波 2 次元イメージングを表す 図 2.4.3(3)-158~ 図 2.4.3(3)-160 の (b) はそれぞれの (a) の破線部分におけるマイクロ波の反射波の振幅応答のグラフを示す 熱疲労き裂及び閉じた疲労き裂は特徴的な W 型の波形を示していることがわかる それに対し SCC のマイクロ波応答をみると V 型の波形が現れる部分があることがわかる これは SCC が複雑な分岐構造をしていることに起因するマイクロ波の干渉が原因であることが考えられる また振幅差の値を見ても SCC のみ振幅差が小さいことがわかる これらの結果から SCC と疲労き裂及び熱疲労き裂の区別をできるのではないかと考えられる さらに この結果から SCC など酸化物等の環境因子によりき裂が閉口した場合においても 式 (2.4.3(3)-20) 式(2.4.3(3)-21) 式(2.4.3(3)-29) の誘電率 透磁率 導電率を考慮することにより深さ評価精度を上げることができるのではないかと考えられる

219 Amplitude, A db mm Position, x mm (b) (a) 図 2.4.3(3)-158 熱疲労き裂の測定結果 : (a) マイクロ波 2 次元イメージング ;(b) 破線部における応答 Amplitude, A db mm Position, x mm (a) (b) 図 2.4.3(3)-159 SCC の測定結果 : (a) マイクロ波 2 次元イメージング ;(b) 破線部における応答

220 mm Crack depth, d mm Position along crack length, y mm (a) (b) 図 2.4.3(3)-160 閉じた疲労き裂の測定結果 : (a) マイクロ波 2 次元イメージング ;(b) 破線部における応答 e) 熱疲労き裂及びSCCの評価深さ 長さの比較結果図 2.4.3(3)-161 に平成 24 年度 ( 熱疲労き裂 ) のcrack 1~crack 3 及び平成 22 年度試験体 (SCC) のcrack 1~crack 3の最大深さにおける評価深さと実際の深さを比較した図を示す 熱疲労き裂においては今年度提案した電力の透過割合を考慮することによって評価した評価深さを用い SCC においては平成 22 年度に提案されたモデル化によって補正係数を導入し評価した評価深さを用いてそれぞれ実際のき裂深さと比較した SCC は測定誤差が大きいき裂が存在し, 熱疲労き裂では過小評価しているき裂も存在することから今後モデルの改良を検討する必要がある 図 2.4.3(3)-158~ 図 2.4.3(3)-160 はき裂長さ方向に対してマイクロ波が反応したことを表している よって き裂長さ方向のマイクロ波減衰量を用いて マイクロ波の反応が現れた長さをき裂長さとして評価した 図 2.4.3(3)-162に平成 24 年度試験体 ( 熱疲労き裂 ) の crack 1~crack 3 及び平成 22 年度試験体 (SCC) のcrack 1~crack 3 の実際の長さと評価長さを比較した図を示す 熱疲労き裂の評価長さはやや過小評価となっているが 全体として 3 mm 以下の誤差で評価できていることがわかる き裂の長さにおいてはほぼ正確に評価できるのではないかと考えられる

221 8 Evaluated crack depth, d mm Thermal fatigue crack SCC crack 1 crack 1 crack 2 crack 2 crack 3 crack 3 図 2.4.3(3)-161 き裂の実際の深さと評価深さの比較 4 Actual crack depth, d mm Evaluated crack length, mm Thermal fatigue crack SCC crack 1 crack 1 crack 2 crack 2 crack 3 crack Actual crack length, mm 40 図 2.4.3(3)-162 き裂の実際の長さと評価長さの比較

222 f) 手動センサの開発及び測定実機構造材料におけるき裂測定を考慮し 手動でき裂を測定することができるセンサの開発を目指す 今年度は金属平板上において手動で測定可能なセンサの開発を行い ノッチ及び疲労き裂の検出を行った (ⅰ) センサの開発図 2.4.3(3)-163 に今年度作製したセンサの写真を示す このセンサは実験で用いていた同軸センサを樹脂埋めして固定させたものである 同軸センサの導体部の構成材料は銀であり 内部導体と外部導体の間の誘電体はテフロンを使用した 図 2.4.3(3)-163 手動センサの写真 (ⅱ) 手動センサによる測定ここでは 作製したセンサを用いて 手動でノッチ及び疲労き裂を測定した結果を述べ 従来のマイクロ波近接場顕微鏡 ( 自動ステージ ) によって測定した結果と比較を行った結果について述べる 1 試験体ここでは 測定に用いた 3 種類の試験体について説明する ノッチ試験体の詳細を 図 2.4.3(3)-164 に示す 閉じた疲労き裂試験体の詳細を図 2.4.3(3)-165 に示す CT 試験体の詳細を図 2.4.3(3)-166 に示す ノッチ試験体はオーステナイト系ステンレス鋼 (SUS304) で 長さ 250 mm 幅 35 mm 厚さ 25 mm を有する また中央部に幅 1.5 mm 深さ 5 mm 長さ 35 mm のノッチが導入されている 疲労き裂試験体はオーステナイト系ステンレス鋼 (SUS304) で 長さ 250 mm 幅 35 mm 厚さ 20 mmを有する また中央部に長さ 35 mm の疲労き裂が導入されている なお この疲労き裂の深さは分かっていないが 閉じた疲労き裂である

223 CT 試験体はオーステナイト系ステンレス鋼 (SUS316) で 長さ 62.5 mm 幅 60 mm 厚さ 3 mm を有する また中央部に幅 2 mm 長さ 23 mm のノッチが導入されており そこから長 さ 20 mm の疲労き裂が導入されている 図 2.4.3(3)-164 ノッチ試験体の詳細図 図 2.4.3(3)-165 閉じた疲労き裂試験体の詳細図 Fatigu e 図 2.4.3(3)-166 CT 試験体の詳細図

224 2 実験手順本実験ではマイクロ波の発振器及び受信器としてベクトルネットワークアナライザ (Agilent Technologies 社製 E8361A NPA Network Analyzer) を採用した 図 2.4.3(3)-167 に使用したネットワークアナライザの写真を示す 今回使用したベクトルネットワークアナライザは10 MHz から 67 GHzまでの周波数帯を伝播することが可能である 今回の実験では最大周波数の 67 GHzを用いた ネットワークアナライザから直径 1.75 mm の同軸ケーブルを介して手動センサを取り付け き裂部を走査した 図 2.4.3(3)-168に き裂部を走査する様子を示す なお 比較のために測定した自動ステージの写真を図 2.4.3(3)-142 に示す このネットワークアナライザは75 GHz~110 GHz までの周波数帯を伝播することができる ここでは手動センサでの測定に用いた 67 GHzに近づけるため 一番低い周波数である 75 GHzで測定を行った 図 2.4.3(3)-167 実験装置の写真 図 2.4.3(3)-168 手動センサを用いたき裂部走査の様子

225 3 手動センサによるノッチの測定及び自動ステージによる測定結果との比較図 2.4.3(3)-169 に 自動ステージを用いてノッチを測定した際のマイクロ波波形を示す この図を見ると 図 2.4.3(3)-145 に示したようなW 型の波形をしていない 導体損失による影響よりもスタンドオフ距離の変化の影響が強く出ていることが考えられる これはき裂幅が大きいことが原因と考えられる また 図 2.4.3(3)-170 に 手動センサを用いてノッチを測定した結果を示す この図を見ると 測定点 70~80の範囲において自動ステージによる測定結果と同様の波形が得られていることがわかる Amplitude, A db Measuring points 図 2.4.3(3)-169 自動ステージによるノッチの測定結果 図 2.4.3(3)-170 手動センサによるノッチの測定結果

226 4 手動センサによる疲労き裂の測定及び自動ステージによる測定結果との比較図 2.4.3(3)-171 に 自動ステージを用いて疲労き裂を測定した際のマイクロ波波形を示す この図を見ると き裂部において特徴的な W 型が現れていることがわかる また 図 2.4.3(3)-172 に 手動センサを用いて疲労き裂を測定した結果を示す 測定点 200~300 の範囲において W 型の応答が現れていることがわかる さらに 手動センサで得られた応答の振幅差から熱疲労き裂と同様に式 (2.4.3(3)-33) を適用し 深さ評価を行った 今回はき裂部分を横から走査しているため 実際のき裂深さは板厚と等しいとみなせる また 図 2.4.3(3)-173に CT 試験片の疲労き裂部の SEM 写真を示す SEM 写真よりき裂幅を計測した 手動センサにより得られた振幅差と SEM 写真より得られたき裂幅より評価深さを算出した 実際の深さと手動センサによる深さ評価の比較を表 2.4.3(3)-30 に示す 表 2.4.3(3)-30 より 実際の深さと評価深さは誤差が小さく 手動センサにおいてもき裂の深さ評価をできる可能性が示された Amplitude, A db Measuring points 図 2.4.3(3)-171 自動ステージによる疲労き裂の測定結果 Amplitude, A db Measuring points 図 2.4.3(3)-172 手動センサによる疲労き裂の測定結果

227 10μm 図 2.4.3(3)-173 CT 試験片の疲労き裂部の SEM 写真 表 2.4.3(3)-30 手動センサによる深さ評価の比較 5 手動センサによる閉じた疲労き裂の測定及び自動ステージによる測定結果との比較図 2.4.3(3)-174 に 自動ステージを用いて閉じた疲労き裂を測定した際のマイクロ波波形を示す この図を見ると き裂部において特徴的なW 型が現れていることがわかる また 図 2.4.3(3)-175に 手動センサを用いて閉じた疲労き裂を測定した結果を示す 測定点 60~80あたりにW 型の応答が現れていることがわかる しかし 手動で走査する際の金属表面の傷や凹凸による振動によるノイズの影響が大きく マイクロ波の減衰によるW 型の応答を見つけにくい 今年度得られた結果より 手動センサでも自動ステージと同様に閉じた疲労き裂も検出できるのではないかと考えられるが 今後より精度よく検出し 正確な応答を得るためには 今回の実験で現れたノイズを除去するようにより滑らかに走査させる必要がある

228 -7.50 Amplitude, A db Measuring points 図 2.4.3(3)-174 自動ステージによる閉じた疲労き裂の測定結果 図 2.4.3(3)-175 手動センサによる閉じた疲労き裂の測定結果 g) 本年度のまとめ本年度の研究成果について 以下にまとめる (1) き裂をモデル化し 電力の透過割合を考慮することにより熱疲労き裂深さを評価した 本手法における評価は最大深さ点における誤差は4 mm 以内で評価できることがわかった また 評価深さと実際の深さを比較することによってマイクロ波検査技術の適用範囲の検証を行った 深さ3 mm 以上のき裂は検出できることがわかった また 提案したき裂深さ評価手法はき裂内部の導電率 誘電率を考慮した形で評価しているためき裂内部の環境因子の影響についても評価可能である (2) 熱疲労き裂に加え 応力腐食割れ 機械的疲労き裂についてき裂の非破壊評価を行った その結果 各き裂のマイクロ波の反射応答の違いにより き裂種を判別可能であることが分かった また試験体表面のき裂長さについてもき裂種が異なっていても3 mm 以内の精度で評

229 価可能であることが分かった (3) 実機構造材料における欠陥検出のための準備段階として 手動によるき裂測定が可能となるセンサの開発を行った 開発した手動センサを用いて ノッチ及び疲労き裂の測定を行った その結果 自動ステージと同様なマイクロ波応答が得られることが示された また 今年度提案した評価式によってき裂深さ評価を行った結果 精度よくき裂深さ評価することが出来た 上記が本年度の成果であるが 本研究で提案したき裂深さ評価法は熱疲労き裂の深さを過小評価する傾向にあり 長手方向のき裂端では測定誤差が大きくなることから今後 さらに精度よく評価できるように評価法を改善 発展させていく必要がある また データ数を蓄積し より詳細なマイクロ波検査技術の適用範囲の検証を行っていく必要がある SCCなど複数種のき裂に適用できる評価法の考案が必要となるため 分岐したき裂に対しても評価可能な方法を考える必要がある また 手動センサは金属表面を走査させる際 振動の影響を受けやすく導体損失による応答が判別しにくいという問題点があるため ノイズを減らしスタンドオフ距離を一定に保つセンサの開発を行っていくことが必要である 以上が今後の検討課題として考えられる

230 (e) 非線形超音波と従来型 UT の融合による閉口きず先端部評価技術の確立 a) はじめに超音波探傷では 特に構造部材の強度保証の観点から 欠陥のサイジングやその高精度化が求められる 従来の実用超音波探傷手法として フェーズドアレイ法や TOFD 法 あるいは集束計測等 用途や部材に応じて既に確立された多くの手法が用いられてきた ただ超音波探傷は欠陥反射エコーの計測を前提とするため 疲労き裂に生じる残留圧縮応力によるき裂の閉口や SCCき裂内の酸化物の生成時等で 明確な反射が得にくくなると 欠陥の見逃しや 過小評価を生じる可能性がある 従来の計測手法では これらのき裂については物理的に対応することは困難で 高い測定精度や高い信頼性が求められる例えば原子力発電機器の検査において重要な課題と認識されながらこれまでは 熟練技術者の技量や経験に頼って運用されてきた 一方 閉口き裂に大変位超音波を入力した場合 閉口き裂で入力周波数以外の超音波が発生する現象として 非線形超音波計測が注目されている 非線形超音波は き裂に大変位超音波を入射した際に き裂部で入射波と異なる周波数の超音波成分が発生する現象で 高調波とサブハーモニック波の 2 つに大別される このうち高調波は 液体の存在で極めて大きな高調波が発生することが知られており き裂に依存する高調波を例えば計測に不可欠なカップラントで発生する高調波と判別して計測に利用するための大きな障害と考えられている 一方サブハーモニック波は き裂以外例えばカップラントでは発生し無いと考えられるため 実機き裂のサイジングや き裂性状の評価手法として期待されている 非線形超音波の発生原理の詳細は必ずしも明確ではないが 少なくともき裂開口以上の大振幅超音波入力が不可欠と考えられ また実用に向けては 非線形超音波の発生の有無を探傷時に把握する必要があるため 非線形超音波の映像化技術の確立も不可欠である 我々はこれまでに 多くの非線形超音波計測の研究者が標準的に利用する大変位超音波計測用パルサーと市販のフェーズドアレイシステムを組み合わせることで サブハーモニック超音波き裂評価システム (SPACE) を提案し有効性を検証してきた しかしこれまでのSPACE 計測では 実機で発生する広範なき裂うち き裂開口の小さい一部のき裂で有効性が検証できたに過ぎない サブハーモニック波はき裂面の叩き合いで生じると定性的には考えられているが より広範なき裂でもサブハーモニック波を発生させるためには サブハーモニック波発生のメカニズムを詳細に検討する一方 数 nm からサブμm 程度までの開口を持つ実機き裂を想定した より大変位超音波を送信できる計測システムの構築が不可欠であると考えた 大変位超音波の利用については 減衰の大きな難探傷部材の一部で 例えば社会インフラのコンクリート構造物の精密探傷目的や航空宇宙機器の複合材料の精密探傷目的等で 数千ボルト程度の高価で特殊な大電圧超音波パルサーが開発適用されてきた これら線形超音波計測における大変位超音波は 大電圧化で端部エコーと共に組織散乱のノイズもともに増加し 計測のSN 比の向上につながらない事例が多いものの現在も開発が進められている これに対しサブハーモニック波計測では 大変位超音波をき裂に入射した場合 サブハーモニック波はき裂でのみ発生し ノ

231 イズ源である組織散乱では入射周波数成分が散乱するだけで サブハーモニック波は発生しない 従って き裂に大変位超音波を入射し サブハーモニック成分に着目して端部エコーを観察すれば 従来の線形計測とは異なり き裂端部エコーの識別性が向上することが期待できる 昨年までの研究で 我々はき裂に入射する MHz 帯の超音波の大変位化を目的として 積層圧電素子と多チャンネルパルサーを組み合わせるシステムを提案し 8チャンネル積層探触子と8チャンネルバーストパルサーを試作し これらの基礎特性の検討を進めてきた これまでに積層探触子の作製基本手順を確立し 昨年度は 1.6MHz 程度までの 比較的低周波数の大振幅超音波送信システムを作製した しかし この探触子のサブハーモニック波は半分の 800kHz で 探傷に実用するには低周波数だったため 今年度は 2.5MHz 積層探触子の試作と さらにこれとは別個に トランスを用いた昇圧回路と耐圧探触子のシステムによる大変位超音波送信技術についても開発を行い それぞれ有効性を確認した さらに これらの大変位超音波送信技術のき裂探傷における有効性を検証するため 既存のサブハーモニック波映像化システムの SPACEに組み込み き裂端部識別性向上の有効性を検証した b)mhz 域の積層探触子の試作と送信波形 (ⅰ) 高周波積層探触子の試作と要素技術の改善著者らは 各積層素子を個別の超音波パルサーで独立に励振する 積層圧電素子と多チャンネルパルサーを組み合わせた計測システムを開発してきた 積層素子それぞれを 独立したパルサーで励振するため 積層枚数を増しても 原理的に電気インピーダンスも 共振周波数も低下しないため MHz 帯域の大変位超音波素子の作製が容易になる 本積層探触子の模式図は 図 2.4.3(3)-176に示すように 圧電素子 2 枚を 1 ブロックとした構造の積層圧電素子である 本年度試作する高周波積層探触子では 昨年試作した低周波積層探触子より各素子厚が薄いため 接着層の厚さも薄くし 超音波透過時の減衰を減らす必要がある これまで積層探触子に用いてきた接着剤は2 液等量混合型エポキシ樹脂系接着剤 A( 硬化開始時間は約 30 分 約 6 時間 50 に保持硬化 ) である 接着剤塗布作業には一定の時間を要するが 作業環境で効果が早まると 作製した探触子性能に支障を生じる可能性がある また接着剤の粘度を下げて接着層を薄くするため これまでは恒温機で温度を 50 に保持したが 素子の外部と内部で温度分布が生じると 接着層の性状に影響を与え 積層素子の性能を低下させている可能性がある そこで新たに 粘性が低く効果速度の遅い 2 液等量混合型エポキシ樹脂系接着剤 B( 硬化開始時間は約 2 時間 約 24 時間常温で硬化 ) を用いた これは粘性が低く接着層を薄くし易いことと 主剤と硬化剤混合後の硬化開始時間が2 時間と長いため 接着剤塗布中に硬化が生じないこと等から 均一な薄い接着層形成が期待できる また従来 本研究室では素子同士を接着させる際にコンピュータ制御が可能な自動圧縮

232 機を用いてきた 自動圧縮機でかけられる最大荷重は約 15kgf 素子に加わる応力は約 0.25 ~1MPa だったが 接着時の圧縮加重を増加させる事で従来よりも接着層を薄くすることにした ここでは接着の際に図 2.4.3(3)-177 の最大荷重 5000kgf まで加圧可能な油圧ジャッキを使用したが 圧電素子は材質が脆弱で 特に MHz オーダーの高周波素子は素子厚さが薄いため 加圧力によっては素子を破損する恐れがある このため ガラス試験片を用いて圧縮試験を行うこととした 試験に用いたのは サイズ 20 20mm 厚さが 0.2mm の方形プレパラートガラスで このガラス板が破損する荷重の約半分の約 3MPa で 積層素子を圧縮することとした 前節で述べた新たな接着方法で圧電素子を接着し 試作した積層素子間の接着層厚さを測定するため 積層素子を切断し 断面を 1000 番の研磨紙で磨いた後 デジタルマイクロスコープで観察した 得られた接着層の画像を図 2.4.3(3)-178 に示す 取得した画像の 2 点間の距離を測る機能により接着層の厚さを測定した 図 2.4.3(3)-178 のように接着層の厚さには場所によってかなりのばらつきがある為 各接着層の任意の数箇所を測定し その平均値を算出した結果 接着層厚さは 2.13μm となった 接着厚さをより薄くするためには 圧電素子の表面状態を平滑にする必要がある 圧電素子表面をマイクロスコープで測定した結果を 図 2.4.3(3)-179 に示し これを 3D 化して図 2.4.3(3)-180 に示す 図 2.4.3(3)-179 図 2.4.3(3)-180 より 圧電素子表面に数十 μm レベルの凹凸があることが分かった そのまま接着すると この凹凸に接着層が入り込むと共に 電極層も超音波伝搬の障害となるため 素子表面を研磨した 研磨後の表面状態を図 2.4.3(3)-181 3D 化した画像を図 2.4.3(3)-182 に示す 図 2.4.3(3)-182 より 表面を研磨することにより 素子表面の凹凸を 10μm 程度まで減らすことができた そこで 圧電素子 2 枚を前の節で変更した作製条件で圧縮し その接着層の厚さを測定した結果を図 2.4.3(3)-183 に示す 図 2.4.3(3)-183 の接着層部分の厚さ測定により 平均で 1μm となり 素子研磨は有効だった 接着層に着目して作製方法を改良したが 接着層に比べ電極層厚が 10μm 程度存在することは 複数の積層構造を持つ本探触子において性能を律速している可能性があり 今後 蒸着装置やスパッタ装置での薄膜電極付与のための 装置導入が課題になる 図 2.4.3(3)-176 積層探触子の模式図

233 図 2.4.3(3)-177 油圧ジャッキ 図 2.4.3(3)-178 マイクロスコープによる接着層の接着部写真

234 図 2.4.3(3)-179 圧電素子の表面状態 図 2.4.3(3)-180 圧電素子の表面状態 (3D 図 )

235 図 2.4.3(3)-181 研磨後の表面状態 図 2.4.3(3)-182 研磨後の 3D 画像

236 図 2.4.3(3)-183 接着層厚さ (ⅱ) 高周波積層探触子の試作と性能評価次に 以上検討した作製条件で8チャンネル積層探触子を試作した 昨年度までの積層探触子では 通常の探触子で通常利用される素子裏面のバッキングの構造がなかった 図 2.4.3(3)-184に示す様にバッキング材は 素子で発生する超音波が裏面を回り込んで送信エコーに重なる現象を低減するためのものだが 積層探触子ではたくさんの素子を積層することで複雑な裏面反射エコーが発生していると考えられ 先年までの積層探触子でも送信エコー波形後方に尾を引く顕著な現象が見られたため その対策を検討した 本研究では 大変位超音波の発生を第一の目的とするため 一般に用いられる裏面反射波を打ち消す減衰材料の貼り付けは避け 反射波を後方に逃がす構造のバッキング材を積層探触子裏面に載せる構造とした 裏面での反射を抑えるためのバッキング材には 各積層圧電素子と同じ材質の M6 材圧電素子 (200kHz) を素子としてではなく音響インピーダンスが素子と同じ材料として使用し 反射エコーを透過させて反射エコーを遠方に移動することで送信エコーと分離する設計とした 図 2.4.3(3)-185 に新しく試作した 8 チャンネル積層探触子のインピーダンスの測定結果を示す 図 2.4.3(3)-185 のインピーダンススペクトラムでは 多数のピークが見られる複雑な挙動を示した この積層圧電素子の設計周波数は 2.5MHz であるが スペクトラムから 2.5MHz 近辺に複数のインピーダンスの負のピークが存在する事がわかる 次に試作した積層圧電素子の各 chを2.5mhzで励振した波形を図 2.4.3(3)-186に示す 測定条件は 200V バースト 10 波で励振し 素子底面をレーザー振動計で測定した 測定の結果 昨年までに試作した積層圧電素子の波形と比べると 裏面バッキング構造に

237 より波形は 励振波形 10 波に対応した部分の振幅が強く 後方に尾を引く部分の振幅が低減しており 設計通りの改善がみられた 次に 図 2.4.3(3)-187 に全 ch 励振した波形と高周波積層構造による有効性を検討するために試作した中心周波数が 2.5MHz の5MHz 素子 2 層 1ch 探触子と積層素子を中心周波数で矩形波 10 波を 200V で励振した際の波形を示す 図 2.4.3(3)-187 左図は比較用に試作した 1ch 素子の波形 右図は積層素子を全 ch 遅延励振した波形を示す 図 2.4.3(3)-187 より 同構造の 2 層 1ch 素子と比較すると約 4 倍の変位が得られ 高周波積層探触子を用いた大変位超音波送信が達成された バッキング構造導入の影響もあり 1 チャンネルに比べて 8チャンネルで 4 倍の振幅増加となったが 本構造は送信波形の整形と受信時のSN 比向上のために必要と考えられる ただ 図 2.4.3(3)-186 の各チャンネルの励振波形を比較すると 伝搬波形はそれぞれ異なっており 接着層厚 接着条件 電極付加 素子加工等 現在の手順に 尚改善の余地があることを示しており 積層探触子の性能についてもなお改善できる可能性があると考えられる 図 2.4.3(3)-184 積層探触子とバッキング材模式図 図 2.4.3(3)-185 各 ch のインピーダンス波形

238 図 2.4.3(3)-186 各 ch の励振波形 図 2.4.3(3) 層 1ch 素子と 8ch 励振との比較 c) トランスによる昇圧と 1 素子での大変位超音波送信 (ⅰ) トランスによる昇圧システムこれまで本研究室では 超音波計測における電気インピーダンスマッチングのための特殊なトランスを用いるノウハウを有しており 整合トランスを用いたインピーダンスマッチングの有効性を確認してきた 一般に電源回路 ( 超音波計測においてはパルサー ) と負荷抵抗 ( 超音波計測においては探触子 ) の間のインピーダンス整合は 負荷抵抗における消費電力を最大とすることを目的としており 電圧源回路と負荷抵抗の接続は図

239 2.4.3(3)-188の等価回路で表せる Z 0 は内部抵抗 Z 1 は外部負荷の電気インピーダンスを表し R とX はそれぞれのレジスタンス成分とリアクタンス成分である 通常は 図 2.4.3(3)-188 のトランスを電気インピーダンス整合のために 電源回路 ( パルサー ) と負荷抵抗 ( 探触子 ) の間に入れて 電気インピーダンスの整合を図る 本研究では このパルサーと探触子のインピーダンス整合トランス回路を パルサーに付加した回路であると考えると 励振電圧を昇圧する昇圧トランス回路として利用できる点に着目した トランスは本来電圧の増減を主目的に広く利用されている 鋼構造物の超音波探傷では数百ボルトの高電圧で数メガヘルツの高周波超音波を励起するため 本研究で対象とする整合トランスに利用するためには 市販の電源トランス等は耐電圧や周波数特性が適合せず 本研究には流用できない この他にも 超音波利用目的で幾つかのトランスを用いた研究や市販の装置が実用されているが インピーダンス整合により一定の効率向上の効果が得られるものの 出力波形の歪みも生じる場合が多く 超音波計測においては大きな問題を生じて汎用性が低い技術と認識されている 本研究では 耐電圧の高い市販の同軸ケーブルを利用した伝送経路トランスを利用して整合トランスを試作した 同軸ケーブルは芯線と編線の2 つの導体が平行に配置され 導体間の絶縁体はケーブル全体の特性インピーダンスを一定に保つため あらゆる断面で一定の厚さを保っており 安定した昇圧トランスを作成する上で都合がよい 同軸ケーブルによる伝送経路トランスでは ケーブル内の芯線と編線を入力側 出力側それぞれのコイルに見立てて使用する この手法は 新しいものではないが 通常利用されるトランス技術に比べて 出力波形の歪みが少ない利点があり 特殊な用途でノウハウとして限定的に使われてきた (ⅱ) トランスによる昇圧大変位超音波送信システムの試作と性能評価 1:2 トランスと 1:3 トランスを製作しそれらを直列につなぎ合わせることで 1:4 トランス 1:6 トランス 1:8 トランスを構成し 複数の単一素子を試作 計測した結果 一番電気インピーダンスが高いかった2MHz 素子サイズ 5mm 5mm の素子を用いて 昇圧トランスによる効果の限界を調査した 図 2.4.3(3)-189に昇圧トランスによる電圧の変化の波形を示した 赤色の波形がトランスの入力側電圧 ( パルサー出力 ) を示し 青色の波形がトランスの出力側電圧を示す 図 2.4.3(3)-189 より 1:2 トランスではトランス入力側電圧 ( パルサー出力 ) が211V に対し トランス出力側電圧は 444V であり 2.1 倍の昇圧効果を確認し 1:3 トランスでは 211V から 617Vと2.9 倍 1:4 トランスでは 180V から739V と4.1 倍 1:6 トランスでは 136Vから 817Vと6 倍 1:8 トランスでは126V から 925Vと7.3 倍と変化し ほぼ巻き数比通りの結果となった トランス無しと 各トランスをつけた場合での探触子表面振幅の変化を示す

240 図よりトランス無しの表面振幅 26nmと比較すると 1:2トランスでは63.5nmで2.4 倍 1:3トランスでは93nmで3.6 倍 1:4トランスでは101nmで3.9 倍 1:6トランスでは120nm で 4.6 倍 1:8 トランスでは 111nm で 4.2 倍の超音波送信変位振幅の増加が確認できた 1:6 トランスまでは昇圧による振幅の向上を確認することができたが 1:8 トランス以上では 振幅は上昇せず低下していく すなわち パルサーのインピーダンスと探触子のインピーダンスの差異から マッチングが有効な範囲内でのみ昇圧効果は発現している パルサーの設定電圧を 50V 100V 150V 200V 250V 300V 400 Vと変更したときのトランス無しと 各種トランスを接続したときの探触子への印加電圧の変化とその時の表面振幅の変化を一覧にまとめて図 2.4.3(3)-191 に示す 適用に限界はあるものの 各種トランスを接続することで パルサーの印加電圧を昇圧し それに伴い超音波送信振幅を増加出来ることを確認した 以上 2MHzの素子を用いて昇圧トランスと耐圧探触子の基礎特性の検証を行ってきた しかし 発電機器用部材の計測に非線形計測を適用することを考えると 利用できるサブハーモニック波は送信波の半分の 1MHz である そこでこれまでの検証結果を元に 更なる高周波探触子への適用として 5MHzの探触子を試作して有効性を確認した 昇圧パルサーを用いた方法は 積層構造に比べ素子は 1 枚であり 耐圧構造の確認ができれば作製は容易である 以上 昇圧トランスによるパルサーの大電圧化は 大変位超音波送信に直結しており 積層探触子技術と共に大変位超音波送信技術として有効であることを確認した 図 2.4.3(3)-188 電気インピーダンス整合回路模式図と昇圧トランス模式図

241 Non Trans:250V 1-4 Trans:180V 739V 1-2 Trans:211V 444V 1-6 Trans:136V 817V 1-3 Trans:202V 617V 1-8 Trans:126V 925V 図 2.4.3(3)-189 昇圧トランスによる電圧変化 Non Trans:26nm 1-4 Trans:101nm 1-2 Trans:63 5nm 1-6 Trans:120nm 1-3 Trans:93nm 1-8 Trans:111nm 図 2.4.3(3)-190 昇圧トランスによる振幅変化

242 400 Displacement [nm] Non Trans 1-2 Trans 1-3 Trans Trans 1-6 Trans 1-8 Trans Voltage [V] 図 2.4.3(3)-191 印加電圧と表面振幅の関係 d)space 計測によるき裂端部エコー識別性向上の検証 (ⅰ)SPACE 計測によるき裂端部エコーの計測 SPACEの概要を図 2.4.3(3)-192に示す 非線形超音波を利用した計測 特にサブハーモニック波を利用する場合 入射超音波振幅やき裂の性状によりサブハーモニック波は出現したりしなかったりする 従って き裂があれば常に反射エコーを生じる通常の線形計測に比べ 現場での計測が困難ことは明らかである 研究室の計測においても 単純に時間軸波形からサブハーモニック波の出現を観察することは容易ではないため 映像化装置としてフェーズドアレイと周波数フィルタを組み合わせたSPACE は 実用上極めて重要な技術となる SPACEを用いたサブハーモニック波の映像化は 以下の手順による はじめに大電圧パルサーから大電圧バースト波を送信探触子に印加し 大振幅超音波を発生させくさびを介して試料内部に斜角で入射する き裂に入射した大振幅超音波は き裂開口部で反射し き裂閉口部では一定の条件下で き裂面の叩き合いによりサブハーモニック波を発生する 受信位置に 市販のフェーズドアレイ探触子の最大 32chを利用して受信し 開口合成アルゴリズムで映像化する 開口合成の技術は フェーズドアレイ探触子により受信した各チャンネルの波形を用いて 受信波の各素子での受信を仮想し 計測仮想点から伝搬した伝搬時間を考慮して各素子で仮想点からの超音波受信位置を重ねるように受信波形をずらして合成する この手順により 仮想点に欠陥等があれば有意なエコーが出現するが 欠陥が無ければ開口合成によってエコーは得られない この仮想点を想定した任意のエリアで順に仮想して開口合成を繰り返し 得られた合成波形振幅を仮想点のマップ上に並べて画像化する 以上に示した通常の開口合成の手順に デジタルフィルタを付加

243 し 今回の測定ではバンドパスフィルタを使用して任意の周波数帯域から任意の周波数画像を得た このデジタルフィルタを用いることにより 入射波と同じ周波数範囲で得られた基本画像と その半分の周波数成分を持つサブハーモニック画像を分離して計測することが出来る SPACE では市販のフェーズドアレイシステムを受信探触子として また受信装置として用いている しかし市販のフェーズドアレイシステムは 同一のアレイで送受信を行うアルゴリズムによる画像化が組み込まれている 本研究で用いる SPACEでは 送信探触子は単一素子による探触子で 受信のみをフェーズドアレイ探触子による計測になるため 開口合成における遅延時間の計算式が異なる 従って SPACE に適した遅延時間の計算式を 計測する試験体や計測エリア毎に計算する必要がある 基本波像 ω サフ ハーモニック波像 ω/2 開口合成処理 大電圧パルサー デジタルフィルタ 受信探触子 ( フェー ズドアレイ ) ω ω/2 ω 送信探触子 サフ ハーモニック波像 ω/2 開口合成処理 基本波像 ω 図 2.4.3(3)-192 SPACE 概要

244 (ⅱ) 従来のSPACEシステムによるき裂評価の現状本研究では 大変位超音波計測の有効性検証のための比較として 現有のSPACE 計測の現状を把握することを目的に 実機模擬き裂を現有のSPACEで計測しその有効性と限界を示す実験を行った 計測に使う既存のSPACEは シグナルジェネレータで 2.5Vpp の正弦波を発生し この連続正弦波を 特殊なゲートアンプでまず任意の波数 ( 映像化では5 波程度を使用 ) に切り取ってバースト波とし さらに大きく増幅することで大電圧のバースト波を作る 現有の非線形超音波の標準機であるゲートアンプはピークtoピークで最大 2200Vのバースト波までを駆動できるが 従来研究では耐圧処理などを行っても一般のPZT 探触子を用いる場合 破損しない程度の励振電圧が適用されるため これまでの研究の多くは最大印加電圧が 500V 程度以下で行われてきた 従って我々の研究室で通常用いてきた 励振電圧 400 V 3 波バースト励振 送信探触子として 耐圧構造の PZT 素子 (10mm 10mm 中心周波数 3.9MHz) を用いた実験を標準計測として 送信部のみを大変位超音波送信システムに変えて比較した なお受信探触子にはクラウトクレーマー製の128ch フェーズドアレイを用い その中心周波数は 4 0MHzである また フェーズドアレイパルサーは クラウトクレーマー社製 PAL3 で セクタスキャンで同時に使用できる素子数は 32ch である 128ch フェーズドアレイは PAL3 に接続し LAN 接続で PCにより制御した また PAL3 の外部トリガーを用いてゲートアンプとの同期をとった 受信フォーカシング等の設定は PAL3 専用のソフトウエア上で行う 受信点は 550 点以下に収めなければならないため フォーカシング領域を広げようとするとステップ ( 角度や深さの刻み幅 ) を粗くとる必要があり 測定画像が粗くなる点に注意が必要である 欠陥が大きい場合の計測は ステップを小さくする必要はあまり無いが SCC 試験片測定時はき裂自体が小さいと想定されるため フォーカシング領域を狭くして 空間分解能を確保した計測を行う PAL3 標準の設定ファイルは 前述したようにそのままでは遅延時間が異なるためにSPACE の設定ファイルとして使用できない そこで 遅延時間書き換え用プログラムにより遅延時間を変更する 書き換えた設定ファイルを使えばSPACE を用いた映像化が可能となる まずインコネル合金溶接応力腐食割れ試験体を SPACE の適用を行った 試験体の形状 測定条件について説明する 図 2.4.3(3)-193に試験体断面図を示す 母材が SUS316 鋼で溶接部がインコネル600 合金であり 溶接部に導入されている 波数を 3 波 縦波入射角を 45 とした 受信フォーカシング領域は角度方向を 16~50 (0.5 刻み ) とし 深さ方向を 11~35mm(1mm 刻み ) とした フィルタにはバンドパスフィルタを用いて周波数帯域は ω 画像が 3.5~4.5MHz ω/2 画像が 1.0~2.0MHzとした 従来の SPACE の構成で測定した ω 画像 ω/2 画像の結果を図 2.4.3(3)-194に示す 図 2.4.3(3)-194のインコネル合金溶接 SCC の測定結果より基本周波数画像ではき裂端部エコーが 14.3mmと想定されるき裂深さよりも浅いき裂が観察されたが サブハーモニッ

245 ク画像では22.86mmと従来法よりも また想定されたき裂深さよりも深いという結果が得られた 本インコネル合金はまだ切断調査しておらず 実際のき裂深さは不明だが 本計測からSPACE の装置を用いた非線形計測により 閉口気味のき裂において 線形計測で判別しにくいき裂先端部が計測できたものと考えられる 次にステンレス鋳鋼疲労き裂体について測定を行った 図 2.4.3(3)-195 に試験体外観図を示す フィルタには周波数帯域はω 画像が3.7~4.2MHz ω/2 画像が 1.6~2.6MHzとした 従来の SPACEの構成で測定したω 画像 ω/2 画像の結果を図 2.4.3(3)-196に示す 一般にステンレス鋳鋼は超音波の散乱が大きくω 画像 ω/2 画像共に想定深さ近辺でき裂端部エコーは測定できなかった ただ ω/2 画像は基本波波形に比べて母材散乱の影響が少ない点で 端部波検出に有利であると考えられる ステンレス鋳鋼試験体では 組織散乱の影響で線形 非線形を問わず き裂端部エコーは検出できなかった これらのき裂についても サブハーモニック計測は 線形計測に比べて SN 比を確保できる可能性が期待できるが 適用材料やき裂種類により き裂端部の識別性向上に対し 従来の SPACE 計測は有効な場合と難しい場合がある 図 2.4.3(3)-193 インコネル合金試験体

246 図 2.4.3(3)-194 インコネル合金溶接 SCC 測定結果 図 2.4.3(3)-195 ステンレス鋳鋼疲労き裂試験体 図 2.4.3(3)-196 ステンレス鋳鋼疲労き裂測定結果

247 (ⅲ)SPACEシステムへの大振幅超音波送信システムの適用本研究ではこれまでに (b) 積層探触子とマルチチャンネルパルサーを組み合わせたシステム (c) 昇圧トランスと耐圧探触子によるシステム の 2 種類の大変位超音波送信技術の検討を行ってきた これらはいずれもSPACEシステムの送信部を置き換えて実用することを念頭に置いて開発しており 大変位超音波の送信能と共に SPACEと組み合わせた場合の空間分解能についても 実用にあたっては別途考慮する必要がある 今年度 両者はいずれもき裂部に 2.5MHzの超音波を 100nm オーダーの大変位で送信することに成功した 積層探触子は 送信変位はより大きかったが 前述したように送信波後方に尾を引く波形が観察されており 積層構造の探触子の内部構造の設計改善が計測のSN 比を確保する観点からは望まれる 一方 トランスによる昇圧技術については 探触子とパルサーの組み合わせに制限もあり 昇圧には限界もあるものの 出力された送信波形は積層波形のそれに比べて後方のノイズは比較的小さく 計測に適している 両技術は将来的に 併用することが可能であり 個々の技術を改善しながら 両者の併用による最適システムの検討を行う必要がある 次にこれら大変位超音波計測をSPACEと組み合わせた場合の有効性を これまでの SPACE 計測と比較することを考える 現在のSPACE 計測は 受信用の128 チャンネルが 4MHz 用であり 主に 3-5MHzの送信超音波周波数を用いていることから 大変位超音波計測技術の 5MHz 程度の高周波数化について試作を試みた 基本素子の素子厚が半分になるため まず構造が複雑な積層探触子については 励振はできたものの振幅は数十 nm 程度と低くかつ 送信超音波波形もノイズが多く 特に電極の薄膜化が必要であろうと考えられる 一方昇圧トランス技術は もともと単一素子で構造が単純であり また周波数が高いと電気インピーダンスが高くなるため 昇圧効果の観点からは有利である 従って本研究では 5MHz 用の昇圧トランス付耐圧探触子をSPACE 計測の送信部に組み込み 実機発電部材に発生するき裂を模擬した大型試験体中の各種き裂を計測して その有効性と限界を検証した 計測対象は 従来の標準的 SPACE 画像計測で き裂端部の識別性が悪かったき裂を中心とし 有効性を検証した (ⅳ) 昇圧トランスによる高周波大変位超音波送信システム従来の SPACEの構成から送信側のシステムに今回試作した昇圧トランスと耐圧探触子を組み合わせたシステムを導入し 最大励振電圧 600V p-p のバーストパルサーに 1:2 の昇圧トランスを接続することで 1100V の電圧で 3 波バースト波形で励振して超音波を送信し SPACEを使って映像化測定を行った 溶接部試験体の探傷については 通常図に示す斜角探傷を用いる 従って実用部材のき裂計測時に送信超音波は 斜角測定用の樹脂くさびと さらに試験体内の伝搬の後にき裂に入射する このため入力された超音波は 実際のき裂面では減衰する 前述した非線形計測では き裂面の叩き合いによってサブハ

248 ーモニック波が生じるためには き裂面で最低でも 10nm 以上の変位が必要であるとされ 実機構造物の広範な性状のき裂への適用を考え最低でも 50nm 以上の超音波入力を目標とした 今回試作した 5MHz 探触子の昇圧性能を実機計測模擬配置で検証するため 図 2.4.3(3)-197の配置で送信探触子からき裂までの超音波伝搬距離に相当する 40mm の伝搬後の超音波音圧波形を 図 2.4.3(3)-198 に示した検証用のステンレス試験体を用いて 検証した クサビを介して 40mm 伝搬した位置での透過波形を レーザー振動計で校正したハイドロホンでの計測で 測定昇圧トランスによる印加電圧波形の変化を図に示す 図 2.4.3(3)-199 より励振電圧は 矩形波 5 波で 2060V 400V 600V と変え また 1:2 トランスで昇圧した結果 それぞれ 407V 781V 1115Vに昇圧できている その時のき裂相当部における透過変位波形を図 2.4.3(3)-200に示す 図 2.4.3(3)-200 よりそれぞれの透過音圧は 41.4nm 81.4nm 123.6nm と印加電圧の増加に伴い上昇した 図 2.4.3(3)-201 に探触子への印加電圧と透過音圧の関係をまとめて示す 図 2.4.3(3)-201より5MHz の探触子においても 励振電圧の増加とトランスによる昇圧の両方で 印加電圧に比例して送信変位は直線的に増加しており 昇圧トランスの有効性が確認できた また1000V 以上の電圧の励振により 5MHzの送信超音波周波数においても ステンレス鋼き裂部において100nm 以上の変位振幅が確保できることが確認できた 一方 5MHz の圧電素子はこれまで主に検証を行ってきた 2.5MHz よりも素子厚さが薄くなるため 昇圧に伴う絶縁性能の信頼性が実用時には不可欠となる 従って実用の前に 実際の計測に用いる際など高電圧を印加し続けた時の耐電圧試験を 5MHz の素子でも行った 耐圧構造で製作した 5MHz の探触子での耐電圧試験結果を図 2.4.3(3)-202 に示す 図 2.4.3(3)-202 より 5MHz の圧電素子で試作した探触子においても 50 時間以上かけた 回の印加回数に達しても 素子や電極等の剥離や破壊に伴う超音波変位振幅の低下は見られず 実用上十分な耐圧性を持つことが確認できた 図 2.4.3(3)-197 材料内欠陥のサイジング

249 図 2.4.3(3)-198 測定装置略図 図 2.4.3(3)-199 昇圧トランスによる電圧変化

250 図 2.4.3(3)-200 き裂相当部における透過波形 Displacement [nm] no trans 1:2trans Applied Voltage [V] 図 2.4.3(3)-201 印加電圧と透過波形の関係

251 図 2.4.3(3)-202 耐圧試験結果 (ⅴ) 昇圧トランスによる高周波大変位超音波送信によるSPACE 計測従来のSPACEを用いた測定で 1ω 画像でき裂端部の検出が可能であり 励振電圧が 400Vではω/2 画像でき裂端部のエコーが明確に確認できなかった316ステンレス鋼配管中のSCCと 2ω 画像 ω/2 画像共に想定深さ近辺でき裂端部エコーは判別が困難だったステンレス鋳鋼に大変位超音波送信システムを適用した結果を図 2.4.3(3)-203 と図 2.4.3(3)-204に示す 図 2.4.3(3)-203 上図では従来の標準とした 400V 励振でのSPAC E 画像で 線形計測画像 (ω 画像 ) でき裂先端が明確に測定できているのに対し サブハーモニック画像 (ω/2 画像 ) では き裂端部の映像は測定できていない このき裂は開口しており従来の線形の探傷法で計測が可能と考えられる これに対し 昇圧回路を用いて 1000Vに励振電圧を上げて大変位超音波 ( 前述の確認実験からき裂部で 100nm 程度と考えられる ) をき裂部に入射した時の線形画像 サブハーモニック映像を 図 2.4.3(3)-203 下図に示す それぞれバンドパスフィルタの設定は上図と同一であり 送信電圧を増加した分受信アンプの増幅を落とした画像である 送信電圧を変えたことで 線形画像はき裂端部エコー振幅が強くなるものの 画像としての大きな変化は見られず 同様に良好なき裂端部計測結果を示している これに対し サブハーモニック画像では 入射超音波を大変位化することで端部エコーが出現した これより ここで対象としたき裂は 線形計測で十分端部が検出できる程度に開口しており また入射超音波を大変位化することでサブハーモニック画像が得られる程度のき裂開口であるものと推定された 他の幾つかのき裂についても 同様の実験を行ったが 昇圧の効果が確認できたのはこのき裂のみだった 他のき裂については 1000V 程度の大振幅ではサブハーモニック波が出現しない程度 き裂開口が大きかったものと推定される

252 図 2.4.3(3)-203 ステンレス配管 SCC への大振幅超音波計測の適用 次にき裂端部エコーは判別が困難だったステンレス鋳鋼疲労き裂への適用結果を 図 2.4.3(3)-204 に示す このき裂が閉口気味でサブハーモニック超音波が発生する場合 新システムの適用で入射超音波変位を増やすと ステンレス鋳鋼ではω 成分の組織散乱ノイズはき裂端部波と共に増加するのに対し ω/2 成分はき裂部からしか発生しないため端部エコーの識別性が向上することが期待できる 同様の計測を 400V 励振による従来の SPACE での計測結果と比較すると 予想した通りω 画像では組織散乱のノイズが増加しき裂端部の識別性は悪くなっているが ω/2 画像では 想定き裂深さの近辺でき裂先端が確認でき SN 比が改善し き裂端部位置のコントラストが向上した しかしこの部材は元々散乱ノイズが多く挙動は複雑なため 他の多くの実機相当試験体に本法を適用しデータを増やすと共に 今後さらに各周波数画像やそれぞれの受信波形の詳細挙動を検証していく必要がある 計測の信頼性を確認していくためには 特に この周波数範囲で より大変位の超音波送信技術の確立が求められる 以上 SPACE に大変位超音波送信ステムを適用することで さらに検討の余地はあるものの サブハーモニック波計測がき裂端部の識別性向上に有効である可能性を示した

253 図 2.4.3(3)-204 ステンレス鋳鋼疲労き裂への大振幅超音波計測の適用 e) 本年度のまとめ本年度の目的は 昨年度までに大変位超音波送信用に作製できた 1 6MHzの中心周波数を持つ積層探触子について 当初の計画通り実機発電機器で適用できる2MHz 程度に高周波し 発電機器模擬き裂に適用し有効性を検証することにある 本研究では 富山大学三原研究室で現有の計測システムをそのまま利用し MHz 域の8 チャンネル積層探触子を試作して現有の8チャンネルバーストパルサーと併用する方式と 特殊な昇圧トランスと単一素子による耐圧探触子を試作して現有の低圧バーストパルサーと併用する方式の2つにより 送信超音波の大変位化を試みた 両者によりいずれも MHz 域で き裂部に 100nmオーダーの大変位超音波を送信できることを確認した これら大変位送信技術の有効性を確認するため 現時点で両方式のうち送信波形が励振バースト波形に近く SN 比で優れるトランス昇圧方式を選択し これも現有のサブハーモニック映像化評価装置であるSPACEの送信部に利用して 複数の実機模擬き裂の計測を行った その結果 既存のSPACEで従来の標準的計測時に評価が困難だった一部き裂についても 大変位超音波送信により き裂端部エコーの識別性を向上できる可能性があることが確認できた このことより 大変位超音波送信技術は 特にき裂閉口により従来の超音波探傷法やこれまでの非線形超音波計測システムでも き裂端部識別が難しいき裂についても 端部識別性の向上に寄与するものと考えられる 今後の課題としては さらにこれらの計測の信頼性を向上して実用に供するためには 大変位超音波送信技術の開発を進め 広範な実機き裂に対応できるより大変位の超音波送信を利用できる技術を確立する必要がある これまでに明らかになった 各技術の課題は 1 積層探触子と多チャンネルパルサーを組み合わせる技術については 積層探触子内での反射エコーを制御し 探傷に適したSN 比の高い送信波形を実現するための ダンパー構造の設計 改良を行うと共に 高周波数化についても信頼性を高める MHz 域の積層探触子作製技術を完成する必要がある 2 昇圧トランスと耐圧構造の付加技術については 今年度明らかにした通り パルサー

254 の電気インピーダンスに比べ 探触子の電気インピーダンスが大きいことが昇圧の前提になるため 探触子の最適設計や改良の余地があるものの この原理での昇圧効果には限界もある 3 さらに1と2を組み合わせたシステムの構築は有望だが ベースとなるパルサーについては これまで現有の装置を流用してきたに過ぎず パルサーの電気インピーダンス設計 大電圧化を含めた新しい設計が求められる さらに SPACE の受信と映像化のベースとなるフェーズドアレイシステムについても 現在 32チャンネルでの映像化のため空間分解能に限界がある しかし これらの検討には これまで行ってきた既存の機器に試作積層探触子や昇圧トランスを組み合わせる対応では限界があり 今年計測した以上の大幅な性能の向上や 実機適用の実証には より根本的な超音波送受信に関わる基盤計測システムの開発が不可欠である これらは本プロジェクトの目的とは合致しないため 前述した通り 大振幅超音波の送信技術とサブハーモニック波計測技術が 実機き裂の識別性向上に実用できる可能性を示すに留め 本年度で検証を終了するものとする

255 3) まとめと今後の課題本研究の最終目標はシステム安全の観点から 疲労評価グランドデザインの策定と信頼性の高い非破壊評価スキームの構築に反映する知見を整理し 疲労割れを効果的に評価 管理する手法の妥当性を判断するための技術基盤を形成することである 本年度は 下記に示すように非破壊検査技術の検査精度に影響を与える因子を明確にし それら影響因子に対して検査精度を向上させるために必要な重要課題を抽出するとともに 現状使われている検査手法 ( 超音波探傷法や渦電流探傷法 ) 及び先端的な非破壊検査手法を用いて検査精度の限界を見極めるための試験を実施した これにより 非破壊検査の能力 ( 疲労割れの検出とサイジングの能力 ) の限界を把握するためのデータを取得することができた 1. 原子力プラント構造材に発生したきずに対する非破壊検査技術 ( 超音波探傷試験 ) の現状の実力と課題を確認するため 我が国及び国際的な実証試験や各国の探傷性能実証試験 (PD: Performance Demonstration) 報告と国内外の損傷事例を 本検討会並びに外部機関の協力のもと調査した その結果 欠陥の性状 欠陥検出性 長さサイジング性 深さサイジング性 内在欠陥に対する検出及びサイジング性などに関する課題を抽出することができた 2. 超音波探傷試験 (UT) 及び渦電流探傷試験 (ECT) の性能に影響を与える多くの因子から重要度の高い因子を客観性のある体系的な方法で抽出 整理するため 本研究では PIRT(Phenomena Identification and Ranking Table) 手法を適用した その結果 検出性, サイジング精度 の観点から UT 及びECTの検査精度向上に必要な課題の重要度及び現状の知識レベルを評価することにより 重要課題 ( 重要度が高く知識レベルの低いもの ) が抽出された 3. 現状使われている検査手法 ( 超音波探傷法や渦電流探傷法 ) 及び先端的な非破壊検査手法を用いて PIRT 手法により抽出された各重要課題に対して試験を実施し その影響度合いを評価した 非破壊検査手法に大きな影響を与える欠陥の特性として き裂輪郭形状 き裂先端部の閉口 き裂破面接触 き裂内酸化被膜 及び検査の特性として 被検体材質の超音波特性 ECT 磁場検出成分 ECT 複数周波数励磁 に関する知識レベルの向上と検査手法の有効性が示された 本年度の非破壊検査技術に関する調査をシステム安全につなげるため 今後は疲労健全性評価グランドデザインにおける疲労き裂の発生 進展予測を考慮に入れたシステム全体と対象機器 部位における疲労管理のための検査技術の適用範囲の検討と非破壊検査性能を見極めるための国内外動向調査に取り組む

256 具体的には 下記にあげる 3 項目を課題とする a. システム全体の疲労状態を効果的に把握するための疲労評価管理の在り方に関する調査疲労感受性を有すると考えられるシステム全体の疲労状態を概略把握し 比較的疲労感受性の高い個所をスクリーニングするとともに スクリーニングされた機器の疲労状態を詳細把握して全体管理するという2 段階方式を想定し それを実現できるモニタリング技術を含む非破壊検査方法とリスク評価を含む解析評価方法とについて調査する その調査結果を踏まえて本方法の有効性 システム安全への寄与度などを評価検討する b. 機器の疲労割れ状態を詳細把握するための非破壊検査技術の性能を見極めるための調査疲労評価グランドデザインに基づく高度な疲労評価管理において 不可欠な非破壊検査技術の性能 ( 欠陥サイジング精度や欠陥検出率など ) の現状を知るため 重要と考えられるその影響因子に関するデータを採取し 疲労評価グランドデザインの策定と信頼性の高い効果的な疲労評価スキームの構築に反映する知見を整理 提供する c. 非破壊検査性能を見極めるための国内外動向調査信頼性の高い効果的な疲労評価スキームを構築するために不可欠な非破壊検査技術の性能 ( 欠陥サイジング精度や欠陥検出率など ) に関する客観的な情報 ( 検査精度に関するデータおよびその評価など ) を得るため その国内外動向を調査し その結果を踏まえて必要に応じて疲労評価スキームの構築に反映する知見を整理する 調査対象は 米国 NRCによる国際ラウンドロビン試験 PARENT 及び他産業とする これらを実施することにより得られる結果から システム安全に基づく疲労評価グランドデザインの策定と信頼性の高い非破壊評価スキームの構築に反映する知見を整理し 疲労割れを効果的に評価 管理する手法の妥当性を判断するための技術基盤を形成することが可能であると考える

257 (4) 熱疲労評価手法の高度化 1) はじめに軽水炉で規制対象となる代表的な熱疲労現象として 以下の 2 点が挙げられる 高低温水合流部の温度揺らぎによる高サイクル熱疲労 閉塞分岐管滞留部の熱成層化による高サイクル熱疲労これらの現象を解明し熱疲労評価手法を高度化することが必要である 熱疲労評価手法の高度化においては 疲労に対する科学的 合理的な安全規制ならびに保全活動を行うために 以下に示す 3つの目的を設定した上で研究開発を実施した 荷重及び破損メカニズムの解明荷重発生から破壊までの疲労現象全体のメカニズムを解明する 性能規定評価に資するためのメカニズムおよび関連する評価技術を記載した知識ベース ( ガイダンス ) を作成する シミュレーション技術の知識ベース構築数値シミュレーションによる熱応力評価手法を開発する検証および妥当性評価手法を整備する システム安全評価のための劣化予測式の提示機能喪失確率評価式の入力となる熱疲労による劣化予測式を提案する知識ベース モニタリング シミュレーションの組み合わせによる劣化予測精度を向上する 本目的を効果的かつ効率的に達成するとともに各研究者の研究内容を共有し研究の成果の向上を目指すために 各研究者の成果を持ち寄り 議論を行うとともに成果の妥当性を確認する会合である熱疲労評価手法高度化検討会作業会幹事会を開催した また 国内の専門家や事業者から広く意見を集約し 研究に反映するために熱疲労評価手法高度化検討会作業会を開催した さらに研究成果に関して海外の関連する活動拠点との連携を行うために フランスとの会合を開催した 以下に それぞれの目的に対応して研究開発を実施した成果を示す 2) 熱疲労メカニズム解明に基づく安全評価手法の高度化 (a) 熱成層化による高サイクル熱疲労メカニズム解明 a) 緒言プラント配管において 流れがある主配管に端部が閉塞した分岐配管が接続されている場合 主配管から分岐配管に流れが侵入するキャビティフロー現象がみられる 主流と閉塞部の流体に温度差がある場合 分岐配管には熱成層界面が生じ 熱成層界面の温度揺らぎ現象が配管構造物へ伝わることにより高サイクル熱疲労が発生する可能性がある このような配管の高サイクル熱疲労を評価するため 日本機械学会では 配管の高サイ

258 クル熱疲労に関する評価指針 JSME S 017 ( 以下 JSME 指針 ) 1 を策定している JSME 指針での評価方法にて熱成層界面位置を求め その結果熱成層界面位置が曲がり部に存在する可能性が確認された場合は 変更ルートの検討 侵入深さの個別評価 個別構造評価の検討などを実施することとなる 既に運転しているプラントの配管ルート変更 測定はさまざまな制約があり困難であることも多いため 侵入深さ個別評価手法 個別構造評価手法の高度化及び具体化が望まれている こうした課題を解決するための枠組みとして 原子力安全保安院の高経年化対策強化基盤整備事業において 熱疲労に関する技術情報基盤の開発が進められている 熱疲労と構造の連成現象として 高温水と低温水との混合に伴い発生する可能性のある熱疲労に対して 混合現象のメカニズムに基づく実機での発生可能性箇所の同定 発生回避のための保全対策に資する温度変動メカニズムの解明に必要なシミュレーション解析を行う b) 既往研究閉塞分岐管に形成される熱成層界面が熱疲労に及ぼす影響に関する研究が数多く行われてきた 実験的研究として 閉塞分岐管内の渦構造が セル状渦 と 竜巻状の旋回渦 から構成されていることを明らかにした白石ら 2 の研究や 熱成層界面の可視化 分岐管内の詳細な温度変動計測 主流流速の影響などを調査した大厩ら の研究がある 数値解析を用いた研究として 鉛直部を有する閉塞分岐管および曲がり部を有する閉塞分岐管の熱成層界面予測に対する CFD 解析の適用性を検討し 熱成層界面位置をCFD 解析で予測するための知見を見出した池田ら 6 の研究 ( 平成 21 年度高経年化対策強化基盤整備事業成果の一部 ) 曲がり管を用いた中村ら 7 の実験を再現した石川ら 8 の研究 ( 平成 22 年度高経年化対策強化基盤整備事業成果の一部 ) がある また 実験および数値解析の両方を用いて熱成層界面における温度変動の原因が旋回渦の長周期変動であることを明らかにした中村ら 7 の研究がある 1 日本機械学会 : JSME S 配管の高サイクル熱疲労に関する評価指針 丸善 (2003) 2 白石直 並河幸治 鈴木盛喜 : 閉塞分岐配管内旋回流の速度分布の研究 可視化情報 Vol.20 No.2 pp.93-96(2000) 3 大厩徹 中村晶 長谷正紹 細川茂雄 竹中信幸 : 下向き閉塞分岐配管に生じる流動と温度変動のメカニズム ( 第 1 報 鉛直分岐配管に生じる流動現象 ) 日本機械学会論文集 (B 編 ) 75 巻 749 号 (2009) 4 大厩徹 中村晶 斉藤敦 山本泰大 竹中信幸 : 下向き閉塞分岐配管に生じる流動と温度変動のメカニズム ( 第 3 報 水平部を有する曲がり管に生じる壁面の温度変動 ) 日本機械学会論文集 (B 編 ) 75 巻 755 号 pp.32-41(2009) 5 大厩徹 : プラント内の曲がり管における温度変動現象に関する研究 神戸大学博士論文 (2009) 6 Hiroshi Ikeda Kotaro Nakada Tadashi Murofushi: PREDICTION OF THERMAL STRATIFICATION PHENOMENA IN A BRANCH PIPE USING NUMERICAL SIMULATION ICONE (2007) 7 中村晶 大厩徹 濱谷大輔 竹中信幸 : 下向き閉塞分岐管に生じる流動と温度変動のメカニズム ( 第 2 報 鉛直分岐配管に生じる流動現象 ) 日本機械学会論文集 (B 編 ) 75 巻 749 号 (2009) 8 石川慶拓 池田浩 室伏正 笠原直人 : エルボ部を有した閉塞分岐管内に生じる熱成層界面に関する非定常数値解析 JCOSSAR2011 論文集 (2011)

259 閉塞分岐配管に生成される熱成層界面に関し 平成 21 年度から平成 23 年度に渡って 鉛直管および曲がり管の2 種類の閉塞分岐管を対象とした数値シミュレーションを実施し 試験結果と比較してその妥当性を検討してきた 平成 21 年度に実施した主流流速 5 m/s の鉛直の閉塞分岐管の CFD 解析においては 熱成層界面を試験より若干深め ( 保守側 ) ではあるが概ね再現できた 一方 平成 23 年度に実施した曲がり部を有する閉塞分岐管においては 主流流速 4 m/s の条件では試験結果を良好に再現できたが 7 m/s の条件では界面の形成が見られず 試験の再現に至らなかった 分岐管内の流動は 図 2.4.3(4)-1 に示すように 鉛直管の場合 分岐部直下で縦に回転するセル状渦が発生し その下に旋回渦が支配的となる領域が形成される 旋回渦の領域では管壁近傍では流れは旋回しながら下方に運ばれ 管中心では流体が上方へ吸い上げられ 旋回渦下部に熱成層界面が形成される 曲り管の場合 セル状渦の下方に旋回渦が形成される状況は鉛直管と同じであるが 旋回渦が水平管へ到達すると 旋回渦が強いときに水平部の冷水が削り取られるバースト現象が発生する バーストの発生していない時は水平部冷水が押し戻される また 温水がゆっくりとエルボから水平部へ運ばれる領域も存在する 従って 曲り管における熱成層界面形成メカニズムは鉛直管より複雑となる そのため 曲り管での熱成層界面の主流流速依存性を評価する前に 鉛直管での評価を行い 渦の挙動などについて調査を行う必要がある

260 主流 ( 高温流体 ) セル状渦 上昇流 旋回渦 熱成層界面位置 閉塞分岐配管 低温流体 (a) 垂直分岐管 主流 ( 高温流体 ) セル状渦 熱成層界面位置 旋回渦 温水がゆっくりとエルボから水平部へ運ばれる領域 旋回渦が強いときに削り取られてバーストの起こる領域 バーストの無いときは押し戻されて水平になる 低温流体 閉塞分岐配管 (b) 曲り分岐管 図 2.4.3(4)-1 鉛直分岐管内流動様相

261 c) 研究目的 本年度の研究目的を以下にまとめる (i) 主流流路と分岐管が垂直に接続され 曲がり部を有さない閉塞分岐管を対象とし数値 シミュレーションにより主流流速と熱成層界面位置の関係を調査する さらに 解析 結果から主流流速の及ぼす分岐管内渦構造への影響を検討する (ii) (i) において実施した数値解析において 熱成層界面位置あるいは温度分布などの界 面位置が示唆される既往文献のデータと比較し 数値シミュレーションの妥当性を評 価する d) 解析対象表 2.4.3(4)-1に鉛直分岐管を用いた試験に関する文献調査の結果を示す 本年度は 主流流速が熱成層界面位置へ及ぼす影響を調査することが目的であるため 最低 3 条件の主流流速について解析する必要がある この条件を満たしているのは 文献 3 文献 9 および文献 11である これらのうち 文献 3は他の文献よりも主流流路の形状や主流の上流の形状に関する情報が豊富であり 主流流速も1~12m/s まで 1m/s 間隔のデータを有している そこで本研究では 文献 3の試験に基づいてCFD 解析を実施する 文献 3 には 主流流路の形状が矩形の場合と扇型の場合のデータが記載されているが 本研究では形状が単純であるという理由から 主流と分岐管接続部に面取りがない 矩形流路のケースに基づいて解析を実施する 図 2.4.3(4)-2に文献 3の鉛直管試験体系を元にした本研究の解析モデルを示す

262 表図 2.4.3(4)-1 文献調査結果 文献 主流流速 [m/s] 1~ 非等温条件データの有無有り 有り 有り 有り 有り 等温条件データの有無有り 無し 無し 無し 無し 内径 [mm] 分岐管諸元長さ [mm] 不明 不明 不明 厚さ [mm] 3 不明 不明不明不明不明 主流流路形状 矩形 不明 不明 円管 円管 幅 [mm] 60 不明不明不明 - 主流流路高さ [mm] 10 不明不明不明 - 寸法内径 [mm] - 不明不明不明 100 入口 - 分岐間距離 [mm] 600 不明 不明 不明 谷本ら : 滞留部の熱成層化による高サイクル熱疲労に関する研究 ( 閉塞管部におけるキャビティーフロー侵入特性 ) 日本原子力学会 2002 年春の年会 (2002) 10 谷本ら : 熱疲労を誘起する熱ゆらぎ現象に関する研究の動向 ( 滞留部のキャビティーフローによる熱成層化特性 ) 2002 年機会学会年次大会 (2002) 11 谷本ら : 滞留部の熱成層化による高サイクル熱疲労に関する研究 (2)( 閉塞水平部におけるキャビティフロー侵入特性 ) 日本原子力学会 2002 年秋の大会 (2002) 12 若松ら : 滞留部の熱成層化による高サイクル熱疲労評価に関する研究 (1)( 鉛直管閉塞部におけるキャビティフローの侵入特性 : 配管形状の影響 ) 2003 年春の原子力学会 (2003)

263 y 60 mm 主流流路 600 mm 10 mm z 流れ D b 43 mm アクリル製分岐管 厚さ 3mm L mm y x 図 文献 3 の試験を元にした鉛直管試験体を模擬した解析モデル

264 e) 計算格子および境界条件 図 2.4.3(4)-3 に鉛直分岐管モデルの計算格子および境界条件を示す 本研究では分岐管 壁面で生じる流体摩擦を精度良く評価することを意図して 壁関数を用いずに乱流境界層 をモデル化できる 低レイノルズ数型の乱流モデルを用いる そのため 壁面から第 1 点 目の格子点が粘性低層内に入るように壁面での格子間隔に配慮し さらに境界層内にも格 子点が数点入るように壁面近傍の格子を作成した 主流流速 5 m/s の場合に 分岐管壁面 の y は主流のせん断層が衝突する部分で局所的に約 20 となっていたが 熱成層界面位置 に影響を及ぼすと考えられる旋回渦支配の領域では平均の y が y 1となっている こ こで y を壁面からの距離 w を壁面せん断応力 を密度 を動粘性係数とすると y y( w / 流出境界 ) 1/ 2 / である 総セル数は約 40 万セルである 分岐管断面セル数は 960 セル 主流壁面は全て 断熱すべりなし壁面条件 分岐管周方向格子間隔は約 2.1 mm 64 分割 流入境界 ( 一様流 ) 流れ 分岐管壁面格子間隔は 0.2 mm 分岐管壁面は全て 放熱条件 主流流路壁面格子間隔は 0.01 mm この区間は格子分布がなめらかとなるように分割 これより下は 10 mm で等間隔に分割 10 mm 10 mm 図 2.4.3(4)-3 鉛直分岐管モデルの計算格子および境界条件

265 f) 解析ケース表 2.4.3(4)-2に文献 3で行われた試験条件およびその測定結果を基に作成した解析条件を示す 文献 3では主流水温と分岐管滞留水温度が異なる非等温条件において 主流流速 4 m/s~12 m/sの条件で試験を行っている なお 分岐管滞留水温度および室温は 25 とした 13 表 2.4.3(4)-2 解析条件 主流流速 4 m/s 5 m/s 7 m/s 10 m/s 主流水温 65 分岐管滞留水温度 25 室温 25 分岐管内径 43 mm 分岐管長さ mm 分岐管熱抵抗 0.3 m 2 K/W ( 計算方法は j) で詳述 ) g) 数値解析手法の概要 CFD 解析コードとして 汎用熱流体解析コード STAR-CD ver.4.08 を用いた 支配方程式は Reynolds 平均された三次元非圧縮性 Navier-Stokes 方程式系である 温度差による浮力を考慮するため 浮力項を付加してある 物性値は後述するように温度依存性を考慮して与えた 空間の離散化は非構造格子を対象としたセル中心型有限体積法であり SIMPLE 法を使用して非定常計算を行った 移流項の差分スキームとして空間 2 次精度の MARS (Monotone Advection and Reconstruction Scheme) を用いた 乱流モデルには平成 20 年度の調査結果を基に 低レイノルズ数型の SSTモデルを用いた h) 初期条件 速度場の初期条件は速度の 3 成分を全て 0 m/s とし 温度場の初期条件は室温である 25 とした 13 著者への確認の結果

266 i) 水の物性値 CFD 解析では水の物性値の温度依存性を考慮するため 流体の熱物性値集 14 に記載の 物性値表を基に式 (2.4.3(4)-1) の温度に関する近似多項式 f (T ) を作成し これを適用し た f (2.4.3(4)-1) ( T ) C4T C3T C2T C1T C0 ここで f : 密度 粘性係数 熱伝導率 平均比熱を表す関数 T : 絶対温度 [K] C0~C 4 : 表 2.4.3(4)-3の定数 である 平均比熱は式 (2.4.3(4)-2) で定義される c p (T ) であり 右辺の (T ) c p はある温度 T における比熱であり 他の物性値と同様に 流体の熱物性値集 14 の数値を使用した 1 T c p ( T) c p ( T) dt (2.4.3(4)-2) T f (T ) 表 2.4.3(4)-3 水の物性値を与える温度関数の係数と適用温度範囲 密度 [kg/m 3 ] 粘性係数 [Pa s] 熱伝導率 [W/(m K)] 平均比熱 [J/(kg K)] C C C C C 適用温度範囲 0~ ~ 日本機械学会 : 流体の熱物性値集 丸善 (1991)

267 j) 分岐管外表面の自然対流熱伝達率 分岐管外表面の境界条件として 同表面からの自然対流熱伝達による放熱条件を課す そこで 伝熱工学資料 15 記載の鉛直円柱の自然対流熱伝達率 ( 層流 ) の式を用いて 分 岐管鉛直部の外表面における熱伝達率 h2を評価し h 2 の逆数である熱抵抗値を解析コード へ与えた 図 2.4.3(4)-4 に評価に用いたモデルを示す 25 の空気中に置かれた厚さ 3 mm のアクリル製配管に 主流を流れる温度 65 の高温水が侵入するモデルを考える このモ デルにおいて アクリル内の熱通過量 Q2 と配管外表面の温度境界層内の熱通過量 Q3が定 常状態では等しくなるという仮定を用いて繰り返し計算を行い 配管外表面温度 Ts 2を求める T s2 と空気の温度 TAirを用いて h 2 を計算し その逆数を取ると熱抵抗値は 0.3 m 2 K/W と計算できる 式 (2.4.3(4)-3)~ 式 (2.4.3(4)-12) に用いた計算式を示す T s1 水 65 T s2 空気 L mm アクリル Q 2 T 25 Air Q 3 r 1 r 2 3 mm 図 2.4.3(4)-2 分岐管表面熱伝達率評価モデル 15 日本機械学会 : 伝熱工学資料改訂第 5 版 日本機械学会 (2009)

268 熱通過量 Q 2 Q 2 2 L Ts1 r2 ln r 1 T s2 (2.4.3(4)-1) ここで : アクリルの熱伝導率 = 0.21 [W/(mK)]( 伝熱工学資料 15 より ) r 1: 配管内表面の半径 [m] r 2: 配管外表面の半径 [m] 熱通過量 Q 3 Q 2 3 h2 2 r2 L T s T Air (2.4.3(4)-2) 配管外表面の熱伝達率 h 2 藤井ら 16 による垂直円柱に対する自然対流熱伝達率の評価式を用いた h2 ( Nu L ) c (2.4.3(4)-3) L ( Nu ( Nu L L ) ) c p L / r ( Nu L 2 ) p 5 / 6 (2.4.3(4)-4) 4 ( Nu L ) p ( Nu x ) x L (2.4.3(4)-5) 3 1/ 4 Nu x C 1 Ra (2.4.3(4)-6) 3 Pr C1 (2.4.3(4)-7) Pr 5Pr Ra Gr Pr (2.4.3(4)-8) Gr g 3 2 ( Ts 2 TAir ) L / (2.4.3(4)-9) 1 /T Air (2.4.3(4)-10) 16 藤井哲 小山繁 : 鉛直細線からの自由対流 日本機械学會論文集 44(337) pp (1978)

269 ここで g : 重力加速度 Gr: グラスホフ数 h 2: 配管構造材と空気との間の平均熱伝達率 L: 代表長さ ( Nu ) : 垂直円柱の平均ヌッセルト数 L c ( Nu ) : 垂直平板の平均ヌッセルト数 L p Nu x: 局所ヌッセルト数 Pr : 空気のプラントル数 ( 0. 71) Ra : レイリー数 T Air である : 管外の空気温度 T s1: 分岐管内壁面の温度 ( 流体温度と等しいと仮定 ) T s2: 分岐管外壁面の温度 : 配管構造材の熱伝導率 : 空気の動粘性係数

270 k) 結果と考察 (i) 熱成層界面位置の定義方法図 2.4.3(4)-5 に示すように 分岐管断面平均温度が 45 となる分岐部からの距離 L を熱成層界面位置と定義した ここで 45 は主流水温 65 と滞留部初期温度 25 の平均温度である 同図の例では 主流流速 5 m/s 時刻 500 秒において 熱成層界面位置を分岐部から 592 mmと評価する 70 分岐管断面平均温度 [ ] mm 分岐部からの距離 L[mm] 図 2.4.3(4)-5 熱成層界面位置の定義方法 ( 主流流速 5 m/s 500 秒の場合の例 )

271 (ii) 評価時刻の選定図 2.4.3(4)-6に熱成層界面の侵入速度を示す 侵入速度は50 秒毎に保存したデータを使って (i)-3の方法で定義した方法に従って熱成層界面位置を評価し 界面が50 秒で移動した距離を元に侵入速度を評価した 同図から概ね500 秒以降で侵入速度の変動範囲が-0.2 mm/s~0.4 mm/sの範囲に収まることから 急速な熱成層界面の進行が落ち着く時刻が 500 秒前後であると考えられる そこで以下では500 秒以降のデータを用いて評価を行った m/s 熱成層界面侵入速度 [mm/s] m/s 7 m/s 10 m/s 0.4 mm/s mm/s 時刻 [ 秒 ] 図 2.4.3(4)-6 熱成層界面の侵入速度

272 (iii) 主流流速と熱成層界面位置図 2.4.3(4)-7 に主流流速の増加による熱成層界面位置の変化を示す 本研究で行った CFD 解析の結果は 文献 3 の試験に比べて 115 mm(4 m/s)~298 mm(10 m/s) 過大評価する結果となったものの 主流流速の増加に伴って侵入深さも増大する傾向は捉えることができた 本研究で行ったCFD 解析が文献 3 の試験に比べて侵入深さを過大評価していることに関する考察を行うため JSME 指針記載の主流流速 5 m/s 分岐管口径 43 mm の試験データを同時に示した 同試験は主配管と分岐管の温度差が約 40 であり 本研究と同等の浮力が働いているものと考えられ 同列に比較できるものである このデータと本研究で行った CFD 解析の差は 10 mm(500s)~63 mm(1000s) の範囲となっている 一方 JSME 指針記載の試験結果は文献 3の試験に比べて約 157 mm 深く侵入している 主流流速 5m/s の条件において JSME 指針記載の試験結果は文献 3の試験結果に比べて侵入深さが約 157mm 深く 本 CFD 解析の結果に近いものとなっている このような差異が生じている原因について 現状 文献 3の共著者らによって検討が行われている 検討結果が公開され次第 本プロジェクトの作業会でより詳細な議論に反映する予定である 1000 JSME 指針記載の試験 582 mm 分岐部からの距離 L [mm] 文献 3 JSME 指針記載の試験データ ( 文献 1) CFD 500s CFD 1000s 主流流速 U m [m/s] 図 2.4.3(4)-7 主流流速の増加による熱成層界面位置の変化 ( 平均温度で熱成層界面を定義 )

273 (iv) 主流流速と分岐管内渦構造主流流速が増加することによって 分岐管内のセル状渦支配の流れ場から旋回渦支配の流れ場へ移行する位置が変化するかどうかを確かめるため 図 2.4.3(4)-8~ 図 2.4.3(4)-11 に分岐管軸方向の最大旋回流速分布と最大下降流速分布を示す これらの図において 分岐部側からそれぞれの分布曲線を紙面右側へ向かって追って行き 最初に交差する位置を見ることによって セル状渦から旋回渦へ移行するおおよその位置を把握できる 交差する位置をそれぞれの主流流速条件において調べると 3.5~3.6D b の範囲となっており 流速 4 m/s~10 m/sの範囲において セル状渦の存在する範囲に大きな差がないことがわかる 文献 3の試験においては 主流流速 4 m/s~12 m/sの場合に目視で測定されたセル状渦の存在範囲は主流流速によらず 3D b 程度で大きな差がないことが確認されており 本研究で得られた CFD 解析結果は試験の傾向と概ね一致した また 最大旋回流速の増加に伴って渦の侵入深さも増加することがわかる 渦の侵入深さを 0 m/sとなる位置とし グラフから読み取ると 4 m/s のとき12Db(516mm) 5 m/s のとき 13.8Db(593mm) 7 m/s のとき 16.2Db(697mm) 10 m/s のとき 18Db(774mm) となった

274 最大旋回流速 4 m/s 500s 最大下降流速 4 m/s 500s 流速 [m/s] セル状渦支配から 旋回渦支配へ切り替わる地点 約 3.6D b 流速が 0 m/s となる地点 約 12D b=516mm L/D b [-] 図 2.4.3(4)-3 セル状渦支配から旋回渦支配への移行 (4 m/s) 3.5 流速 [m/s] 最大旋回流速 5 m/s 500s 最大下降流速 5 m/s 500s セル状渦支配から旋回渦支配へ切り替わる地点約 3.5D b 流速が 0 m/s となる地点 約 13.8D b=593mm L/D b [-] 図 2.4.3(4)-4 セル状渦支配から旋回渦支配への移行 (5 m/s)

275 3.5 流速 [m/s] 最大旋回流速 7 m/s 500s 最大下降流速 7 m/s 500s セル状渦支配から旋回渦支配へ切り替わる地点約 3.5D b 流速が 0 m/s となる地点 約 16.2D b=697mm L/D b [-] 図 2.4.3(4)-5 セル状渦支配から旋回渦支配への移行 (7 m/s) 3.5 流速 [m/s] 最大旋回流速 10 m/s 500s 最大下降流速 10 m/s 500s セル状渦支配から旋回渦支配へ切り替わる地点約 3.6D b 流速が 0 m/s となる地点 約 18D b=774mm L/D b [-] 図 2.4.3(4)-6 セル状渦支配から旋回渦支配への移行 (10 m/s)

276 l) まとめ 本研究では主流流速を変化させたときの熱成層界面位置および渦構造に与える影響を CFD 解析によって評価した 以下に要点をまとめる (i) 本解析では 文献 3 と同様に主流流速の増加に伴って 侵入深さが深くなる傾向を予 測できた (ii) 一方で 最大旋回流速についても主流流速の増加とともに流速が増す傾向にあった (iii) 文献 3 の試験に比べて本研究で行った CFD 解析はどの主流流速においても熱成層界 面の侵入深さを過大評価する傾向にあった m) 今後の課題本 CFD 解析の結果は 文献 3の試験に比べて侵入深さを 115mm~298mm 過大評価する結果となった 主流流速 5m/s の条件において JSME 指針記載の試験結果は文献 3 の試験結果に比べて侵入深さが約 157mm 深く 本 CFD 解析の結果に近いものとなっている このような差異が生じている原因について 文献 3の共著者らによって検討が行われている 検討結果が公開され次第 本プロジェクトの作業会でより詳細な議論に反映していく予定である

277 (b) 疲労強度に及ぼす 2 軸応力の影響 a) 背景熱疲労荷重下では熱膨張 収縮による等方的な繰返し負荷 ( 等二軸疲労荷重 ) を受けることから 熱疲労による配管損傷を適切に評価するためには 等二軸疲労荷重の影響を考 17 慮する必要がある そこで 等二軸疲労試験用の膜圧式疲労試験装置を用い 316ステンレス鋼の疲労強度を調べた 膜圧疲労試験装置では 円盤型の試験片の両側から交互に空気圧を負荷することにより 試験片中央部に等二軸の引張 - 圧縮の繰返しひずみを加え 疲労き裂を発生させる これまでにステンレス鋼の高ひずみ側のデータ取得を行い 等二軸疲労によるき裂は三つ又に発生 進展することを確認した また 等二軸疲労寿命は単軸疲労や平面曲げ疲労と比べて長寿命側である 2 ことが分かった 今年度は 熱疲労評価上重要となる疲労限近傍の疲労強度を調べた b) 試験方法 (ⅰ) 供試材供試材は市販のオーステナイト系ステンレス鋼 SUS316 を用いた 化学成分と機械的性質をそれぞれ表 2.4.3(4)-4 および表 2.4.3(4)-5 に示す 表中の L 材は圧延方向に切り出した試験片 T 材は圧延垂直方向に切り出した試験片を示す (ⅱ) 試験方法膜圧式疲労試験装置の概観写真を図 2.4.3(4)-12に示す 試験装置は円盤型試験片に圧力を負荷する試験部と 試験部に空気を送り込む空気供給部 そして空気の流れを制御したり データを記録したりする制御部から構成される 試験部の概要を図 2.4.3(4)- 13 に示す 試験部は 試験片を上蓋と下蓋で挟み込むことにより試験片両側に空気室を形成させた 空気供給部からの空気を空気室の両側へ交互に注入 / 排気することにより 円盤状試験片の中央部をたわませることで中央部において試験片表面方向に等二軸の繰返し負荷を与えた 試験片中央部には2 軸のひずみゲージを貼り 試験中の表面ひずみの変化を記録した 試験片表面に熱電対を貼り試験中の温度測定を行った 空気室の蓋の一部はアクリル製であり 試験中のき裂の進展の様子が確認できる 試験片は図 2.4.3(4)- 14 に示す直径約 230mm の円盤状のものを使用した 試験片中央部に最大ひずみ範囲が発生するよう 試験片中央部を相対的に薄くしている 試験片の最薄部での板厚は 2.0 mmで 試験片表面はエメリー紙にて 1200 番まで研磨した 17 辻峰史, 川久保政洋, 釜谷昌幸, 等二軸疲労試験のための膜圧式疲労試験装置の開発, 日本材料学会第 60 期通常総会 学術講演会 (2011), 講演番号 辻峰史, 川久保政洋, 釜谷昌幸, 膜圧式疲労試験装置によるオーステナイト系ステンレス鋼の等二軸疲労試験, 日本材料学会第 61 期通常総会 学術講演会 (2012), 講演番号

278 試験では室温において 0.2Hz~0.4Hz の速度で 同じ圧力の圧縮空気を上下の空気室に繰返し供給した ステンレス鋼は繰返し周波数を高くすると発熱しやすい傾向があるため 試験片温度が 45 を超えないよう試験周波数を調節した 試験中の空気室内の圧力を測定 記録した 試験片にき裂が発生して試験片を貫通すると空気室の最大圧力値が低下するため その時点を疲労寿命 N f と定義した 昨年度に高ひずみ側のデータを 3 点取得しており 今年度は疲労限近傍の2 点のデータ取得を行った 表 2.4.3(4)- 6に疲労試験の条件を示す 試験体 4については 試験中のき裂の発生と進展の観察を行うために 試験を定期的に中断して試験片表面の浸透探傷検査 (PT 検査 ) を行った 浸透液の浸透時間を約 10 分 現像時間を約 15 分とした 比較のため 単軸疲労試験と平面曲げ疲労試験を行っている ( 昨年度実施 ) 単軸疲労試験は完全両振りの荷重制御にて行い 平面曲げ疲労試験は完全両振りの繰返しの曲げ荷重を負荷した ( 試験方法の詳細は平成 23 年度成果報告書参照 ) 使用した試験片形状をそれぞれ図 2.4.3(4)- 15 図 2.4.3(4)- 16 に示す いずれも試験片表面をエメリー紙にて 1200 番まで研磨を行ったのちバフ研磨を行った c) 試験結果 (i) 膜圧式疲労試験結果膜圧式疲労試験の結果を図 2.4.3(4)- 17 に示す ひずみ範囲は試験繰返し数の半分の繰返し数でのミーゼス相当ひずみにて整理した 今年度実施した二つの膜圧式疲労試験のひずみは単軸疲労や平面曲げ疲労の疲労限よりも2 倍程度大きな値であったが 繰返し数が 10 6 回を超えてもき裂の発生は確認できなかった 10 6 回を限界繰返し数とすると 等二軸荷重下でのステンレス鋼の疲労限は単軸疲労や平面曲げ疲労と比較して大きくなっていると判断できる (ⅱ) 表面観察結果疲労試験終了後の表面観察結果を図 2.4.3(4)- 18に示す 繰返し数が 10 6 回を超えた時点においても未だき裂は観察されなかった き裂長さを縦軸に繰返し数を横軸にプロットしたグラフを図 2.4.3(4)- 19 に示す き裂の発生が確認され き裂サイズが測定できれば この図により破断繰返し数に対するき裂の発生と成長の比率などが考察できる PT 検査では1mm 長さのき裂を観察できると予想されたが 単軸疲労から予想される破断繰返し数の 30 倍を超えてもき裂の発生は確認できなかった d) まとめ 316 ステンレス鋼を対象として膜圧式疲労試験装置を用いた等二軸疲労試験を行った 疲労限付近の試験を行い 単軸疲労試験 平面曲げ疲労試験との比較を行った その結果

279 ミーゼス相当ひずみで整理した場合 316 ステンレス鋼の等二軸疲労の疲労限は単軸疲労 と比較して高ひずみ側になることが分かった 表 2.4.3(4)- 4 供試材の化学成分 (wt %) Fe C Si Mn P S Ni Cr Mo Bal < % 耐力 (MPa) 表 2.4.3(4)- 5 供試材の機械的性質 引張強さ (MPa) 伸び (%) 絞り (%) ヤング率 (GPa) T 材 T 材 L 材 L 材 表 2.4.3(4)- 6 膜圧式疲労試験の試験条件および結果一覧 0.5N f における空気圧 (MPa) 最小板厚 (mm) 0.5N f におけるミーゼス相当ひずみ範囲 (%) 破断寿命 N f ( 回 ) 試験体 ,696 備考 *1 H23 年度実施 試験体 ,153 *1 H23 年度実施 試験体 ,640 空気圧調整なし H23 年度実施 試験体 ,395,183 空気圧調整なし ( 未破断 ) H24 年度実施 試験体 ,010,231 空気圧調整なし ( 未破断 ) H24 年度実施 *1 0.5N f 以降一定ひずみとなるよう空気圧を調整

280 試験部 圧力制御器 データ記録装置 図 2.4.3(4)- 12 膜圧式疲労試験装置概観 空気チューブ 熱伝対 空気室 ひずみゲージ 試験片 空気チューブ 図 2.4.3(4)- 13 膜圧式疲労試験装置概要

281 φ10.5 φ 図 2.4.3(4)- 14 膜圧疲労試験片 30 M φ18 φ10±0.01 φ18 R52 30 (10) (10) 30 図 2.4.3(4)- 15 単軸疲労試験片

282 R40 φ 図 2.4.3(4)- 16 平面曲げ疲労試験片 ミーゼス相当ひずみ範囲 (%) 繰返し数 N (cycle) 膜圧疲労試験単軸疲労試験平面曲げ疲労試験平成 24 年度実施 図 2.4.3(4)- 17 破断繰返し数とひずみ範囲の比較

283 (a) 試験体 4( 繰返し数 1,010,231 回 ) (b) 試験体 5( 繰返し数 1,395,183 回 ) 図 2.4.3(4)- 18 膜圧式疲労試験片の表面 PT 検査結果 3 単軸疲労から予想される破断繰り返し数 表面き裂長さ (mm) 繰返し数 N (cycle) 図 2.4.3(4)- 19 き裂長さと繰返し数の関係 (PT 検査ではき裂は確認されなかった )

284 (c) 多軸応力負荷経路の疲労強度に及ぼす影響 a) 概要本研究では 熱疲労メカニズム解明に基づく安全評価手法の構築を目指す研究の一環として 熱疲労強度に及ぼす多軸負荷の影響を考慮した検討を行った すなわち 多軸負荷における疲労試験を実施して 多軸応力下における材料の疲労強度特性を明らかにし 得られた結果を基に日本機械学会指針の拡充に資する知識ベース化および安全評価手法への反映を図ることを目的とした 原子力発電所をはじめとする各種プラントの配管系では 別々の管路を流れてきた温水と冷水がT 字状のジャンクションで合流するT 字形合流配管が多く使用される このような合流配管では 温度の異なる流体が混合することにより発生する温度揺らぎが管壁表面に到達して熱疲労を与え 条件によっては管の破断に至る危険性が指摘されている i しかし それに対する疲労損傷評価法の妥当性が明確でなく またこの領域での疲労強度データが不十分である 一方 応力 ひずみの主軸方向が時間的に変化する非比例多軸負荷では 破損寿命は著しく低下することが知られており よってT 字形合流配管の揺らぎによる負荷の多軸度や非比例度を把握するとともに 熱疲労を受ける配管で発生が十分に予想される多軸負荷における疲労損傷データの補足およびその評価法のための材料の変形 破壊および微視組織の変化について調査し 原子力プラントの設計および維持 管理の健全性向上につながる損傷モデルや評価手法を構築する また 原子力発電プラントで使用される曲がり部を有した閉塞分岐管では 主配管を流れる高温流体が分岐管内に侵入し 熱成層界面を形成することで高サイクル熱疲労による配管損傷が起こる可能性がある この熱成層界面が閉塞分岐管の曲がり部に接して形成される場合には その界面が揺動することにより温度変動が生じ それが配管構造材へ伝わることで配管熱疲労を引き起こすと考えられている 熱流動現象とそれに対する構造の熱応力応答によって発生する熱荷重を繰返し多軸負荷に着目して 多軸応力下における材料の熱疲労破損メカニズムについて内外の知見を幅広く調査するとともに 損傷メカニズムの解明に向けて実験および解析を行った 具体的には 前年度に引続きT 字形合流配管の揺らぎを模擬した負荷履歴の非比例多軸疲労試験を実施するとともに 新たに非比例多軸の過大予負荷を与えた回転曲げによる疲労試験を開始し 構造材料の寿命および変形 破壊特性を取得するとともに 得られた結果を総合的に評価し 熱疲労損傷評価の高度化に反映するための多軸負荷を考慮した損傷評価手法を検討した b) 非比例多軸負荷における応力ひずみの定義応力やひずみの主軸方向が時間的に変化する非比例多軸の疲労では 破損寿命が負荷経路に依存する ii,iii,iv,v,vi,vii,viii,ix したがって 非比例多軸疲労での破損寿命評価では負荷経路を考慮する必要がある しかし 主軸方向が時間的に変化する場合の適切な応力およ

285 びひずみの定義法についてはまだ明確にされていない また このことが非比例負荷を受ける構造材料や構造物の疲労強度設計基準を開発する上での一つの障害となっている そこで Itohらが既に提案している非比例多軸負荷での応力 ひずみおよび同範囲の記述方法について示す x (ⅰ) 主応力および主ひずみの定義非比例多軸負荷では 主軸方向が時間的に変化するため 主応力 主ひずみおよびその主軸方向を時間の関数で表す必要がある 時刻 t における主応力 主ひずみベクトルを S i(t) とする ここで 添え字 i は 1 2 および 3 であり それぞれ 最大 中間および最小主応力 主ひずみベクトルを表す また S は応力基準ではに ひずみ基準ではに置き換える ( 以下 同様 ) 主応力 主ひずみベクトルを xyz 座標系上で模式的に表したのが図 2.4.3(4)-20である S 1 (t) S 3 (t) S 2 (t) x S 2 (t) S 3 (t) y z S 1 (t) 図 2.4.3(4)-20 xyz 座標系における主応力または主ひずみ 時刻 t における応力 ひずみ (SI(t): I(t) I(t)) を次式の最大主応力 主ひずみベクトル (S 1(t)) または最小主応力 主ひずみベクトル (S 3(t)) の絶対値の最大で定義する SI( t) Max S 1( t), S3( t) (2.4.3(4)-13) また 負荷経路を一巡する間 (1 サイクル中 ) での SI(t) の最大値を SI max とし 次式で表す SImax SI( t 0) Max SI( t) (2.4.3(4)-14) すなわち t 0 は S 1(t) または S 3(t) のいずれかが1 サイクル中での最大となる時刻である (ⅱ) 主軸方向の変化角 主応力 主ひずみの主軸方向の変化を表すために 基準となる新たな直交座標系 XYZ を

286 定義する XYZ 座標系は 図 2.4.3(4)-21 に示すように t=t 0 の主応力 主ひずみの 3 つの主軸方向をそれぞれ XYZ 座標系の各軸方向となるように置くが SI max の方向がX 軸と一致するようにする 応力 ひずみの主軸方向の変化角は 任意な時刻の主応力 主ひずみベクトル (S j(t)) と e X X S j (t 0 ) SI max =SI(t 0 ) S j (t 0 ) /2(t) S j (t) S j (t) /2(t) SI Z -plane max e e Y Z e Y Y (t) 図 2.4.3(4)-21 XYZ 座標系における主応力および主ひずみ方向 X 軸方向との間の角度 (t)/2 および S j(t) を YZ 面に投影した方向と Y 軸方向の間の角度 (t) で定義され 次式で与えられる ξ ( t) cos 2 S j ( t0) S j ( t) S ( t ) j 0 S ( t) j (0 ξ(t) ) (2.4.3(4)-15) tan ( t) S ( t) j S ( t) j e e Z Y (0 ( t) 2 ) (2.4.3(4)-16) ここで e Y および e Z はそれぞれ Y および Z 軸方向の単位ベクトルである また 添え字 j は SI max が与えられる主応力 主ひずみによって決まり 1 または 3 である たとえば SI max = S 3(t 0) のとき j=3 である (ⅲ) 応力 ひずみ範囲および平均ひずみ 応力の定義 SI( t) Max S1( t), S3 ( t) (2.4.3(4)-13) の応力 ひずみ SI(t) ξ( t) cos 2 と式 S j ( t0) S j ( t) S ( t ) j 0 S ( t) j (0 ξ(t) ) (2.4.3(4)-15) および式 tan ( t) S ( t) j S ( t) j e e Z Y (0 ( t) 2 ) (2.4.3(4)-16) の角度 (t)/2 および (t) を同時に表す方法として 図 2.4.3(4)-22 に示すような SI(t) と (t) および

287 (t) を用いた極座標系表示法を用いる 極座標系表示では 直交する 3 つの方向 SI 1 SI 2 および SI 3 をそれぞれ =0 = /2 で =0 および = /2 の方向にとる なお 図 2.4.3(4)-22 の極座標系上では 表示する角度 (t) は図 2.4.3(4)-21 の材料上での角度 (t)/2の 2 倍となっていることに注意を要する ここで定義した応力 ひずみおよび主軸方向の変化角を極座標系表示することによって 3 軸負荷状態での応力 ひずみ大きさと主軸方向変化の軌跡を 3 次元的に表すことができる また 応力 ひずみ範囲および平均応力 ひずみを容易に定義できる SI1 SI max SI max SI max e 1 e R (t) SI(t) SI 3 SI mean ΔSI e e 2 3 SI2 (t) 0.5ΔSI SI min 図 2.4.3(4)-22 極座標系表示による応力範囲またはひずみ範囲 平均応力または平均ひ ずみ 応力 ひずみ範囲 ( SI) は 極座標系表示した応力 ひずみの経路の SI 1 方向の最大値 と最小値の差で与えられる また その応力範囲の中央値が平均応力 (SI mean) であり 次 式で与えられる ΔSI Max SI max cos ( t ) SI( t) SI SI (2.4.3(4)-17) max min 1 SI mean SImax SImin (2.4.3(4)-18) 2 ここで SI min は (SI max cos (t)si(t)) が式 (2.4.3(4)-17) において最小となる時の ( cos (t) SI(t)) である SI は図 2.4.3(4)-21で示した SI max 面に作用する主応力 主ひずみの垂直成分の振幅であり SI mean はその中間値である なお ここでは SI を主応力 主ひずみとしたが ミーゼスやトレスカの相当応力 ひずみに置き換えても良い (ⅳ) 非比例度の定義法 v,vi,xi,xii Itoh らは平面負荷下での非比例多軸低サイクル疲労寿命を評価するために ひずみ経路 および材料依存性を考慮した次式の非比例多軸低サイクル疲労寿命評価式 いる NP を提案して

288 NP 1 f NP SI (2.4.3(4)-19) ここで 係数は非比例負荷の影響の材料依存性を示す係数である 一方 f NP は非比例負荷係数で ひずみ経路の非比例負荷の強さを表すパラメータであり 次式で定義される f NP e ersi t ds (2.4.3(4)-20) 2SI L max 1 path C f NP は比例負荷では 0 であり 非比例負荷では 0<f NP 1 となる ここで e R は SI(t) 方向の単位ベクトルであり ds は応力 ひずみ経路での経路の増加分を示している C は応力 ひずみ経路の積分路であり は外積を示している また L path は全負荷経路の長さの和である 式 (2.4.3(4)-20) で SI(t) は 応力の場合は ひずみの場合はと置換すれば良いが SI- - 極座標系での経路で積分するので応力およびひずみ基準の違いによる f NP 値の差はない また f NP は極座標において円形の場合 1をとる (ⅴ) レインフロー法を用いた非比例多軸負荷損傷評価繰返し変動負荷における負荷波形の分離および繰返し係数法は 一般にレインフロー法 xiii がよく用いられる 応力 ひずみの主軸方向が複雑に変化する非比例多軸負荷においても IS 法を用いて図 2.4.3(4)-22 のように非比例多軸負荷波形を単軸負荷波形相当に落とし込んでしまえば 破損寿命に及ぼす非比例多軸負荷の影響を適切に評価することにより 従来の単軸負荷と同様の寿命評価が可能になると考えられる 図 2.4.3(4)-23に示すように ある非比例多軸の繰返し負荷を IS 法により I 1-L path 上に示した負荷波形を レインフロー法を用いて4つの波形に分割した場合を考える 分割したそれぞれの波形に対して式 (2.4.3(4)-20) より f NP を計算し 式 (2.4.3(4)-19) の NP が求められる この NP から単軸負荷で得られた寿命線図よりそれぞれの波形での破損寿命を計算し 従来の単軸負荷の設計と同様のプロセスで適切な累積損傷則を用いて非比例多軸負荷での破損寿命が予測できると考えられる なお ここで示す手法はまだ提案初期段階であり モデルの構築のためのさらなる検討が必要である

289 I 1 I max I 1, I 3 非比例負荷係数 (t) I(t) I 3 f NP 2 I max L path C e e 1 R I (t) ds e 1 e R e 3 Projection on I 1 Projection on I 3 L path I 1, I 3 I 1, I 3 I1, I 3 I 1, I 3 I max I max I max I max + L + + path L path L path L path Lpath Lpath Lpath Lpath Lpath Lpath f NP1 f NP2 f NP3 f NP4 NP1 NP2 NP3 NP4 N 1 N 2 N 3 図 2.4.3(4)-23 非比例多軸負荷の分割 N 4 c) 熱疲労を受ける配管の応力負荷履歴および非比例度の解析 (ⅰ) T 字形合流配管 1 概要前節で示した非比例多軸負荷の評価法 (IS 法 ) に示す解析方法に従い 熱疲労を受ける配管のある特定部位 A 点およびB 点で得られた解析結果を基に 応力成分の時刻歴の応力範囲 平均応力および非比例度について解析を行った 2 解析内容入力データ内容は 代表的な 2 点の応力時系列データを入力データとする 以下この 2 点をデータ点 A およびデータ点 Bと表記する 1ステップは 0.2 秒で トータルで 10 秒間のデータ S tt は厚さ方向 S rr は周方向 S ZZ は軸方向 ( 図 2.4.3(4)-24) である 図 2.4.3(4)-25および図 2.4.3(4)-26にデータ点 A 図 2.4.3(4)-27および図 2.4.3(4)-28 にデータ点 B の応力成分の時刻歴を示す ここで 各応力成分は 図 2.4.3(4)-の座標系に準じている また S1,S2および S3 は それぞれ最大, 中間および最小主応力である

290 Szz Stt Srr 図 2.4.3(4)-24 応力の座標軸 ( 配管の軸方向を z 軸方向 ) 図 2.4.3(4)-25 データ点 A の応力 6 成分の時系列 図 2.4.3(4)-26 データ点 A の主応力 ( 最大 中間 最小応力 ) の時系列

291 図 2.4.3(4)-27 データ点 B の応力 6 成分の時系列 図 2.4.3(4)-28 データ点 B の主応力 ( 最大 中間 最小応力 ) の時系列 3 解析結果 表 2.4.3(4)-7 解析結果一覧 データ点 応力範囲 ΔSI 平均応力 SI mean 非比例度 f NP A B 図 2.4.3(4)-29 (a) および (b) はそれぞれデータ点 A および B における応力履歴の 3 次元極座標系表示であり 応力振幅と主軸方向の変化と大きさを視覚的に表したものである 解析結果は 表 2.4.3(4)-7 に示すようにデータ点 A では 応力範囲 ( SI) および平均応力 (SI mean) の値は比較的大きいが 主軸方向の変化の度合いが小さいために非比例度 f NP は比較的小さい値となった 一方 データ点 Bでは 時系列における主軸方向の変化角が比較的大きいことから f NP の値が大きくなり 非比例度が高い負荷履歴を受けていると言える 図 2.4.3(4)-30は極座標系表示を平面で表したもので SI 1 軸に対して垂直方向に膨らん

292 でいる部分が非比例負荷を表す なお 主軸方向が変化しない比例負荷の場合では SI 1 軸上において 1 本の直線状となる これらの図の結果から データ点 AとBの両方から非比例負荷が確認でき 点 Bの非比例度は大きいといえる 図 2.4.3(4)-31 (a) および (b) は それぞれデータ点 A および B での SI cos (t) と SI sin (t) の時刻歴を示した結果である 縦軸のSI cos (t) と SI sin (t) はそれぞれ時刻 tにおける応力振幅が最大な面に作用する垂直応力との時刻 t における非比例度の度合いを 横軸の L path は経路累積長さを表している 結果から データ点 Bにおいては応力負荷の非比例度が大きいことが確認できる SI 1 SI SI 2 SI SI 2 SI (a) データ点 A の応力 (b) データ点 B の応力 図 2.4.3(4)-29 データ点 A および B の応力の極座標系表示 (3 次元 ) SI 1 0 SI SI SI 3 (a) データ点 A の応力 (b) データ点 B の応力 図 2.4.3(4)-30 データ点 A および点 B の応力極座標系表示 (2 次元 )

293 15 データ点 A 10 SI sinξ[t] SIcosξ[t] Lpath (t) (a) データ点 Aの応力 10 データ点 B SI sinξ[t] SIcosξ[t] Lpath (t) (b) データ点 B の応力 図 2.4.3(4)-31 経路長さ L path と SI sin (t) SI(t)cos (t) (ii) 鉛直管内に熱成層界面 1 概要前節で示した非比例多軸負荷の評価法 (IS 法 ) に示す解析方法に従い 主流流路から鉛直下方に延びた分岐配管の先に曲がり部を有する閉塞分岐管を解析対象とし 曲がり部に熱成層界面が形成されるような流動条件にて配管熱伝導を含めた数値シミュレーション結果 ( 数値シミュレーションは東芝にて実施 ) について 応力成分の時刻歴の応力範囲 平均応力および非比例度について解析を行った 2 解析内容 入力データ内容は

294 図 2.4.3(4)-33は鉛直管内に熱成層界面が存在した場合の変形と応力発生のイメージを示している 高温側温度を320 低温側温度を260 である 図 2.4.3(4)-34 は入力データの配管内表面における温度及び応力時刻歴である S11は厚さ方向 S22は軸方向 S33 は周方向 ここで 各応力成分は 図 2.4.3(4)-32 の座標系に準じている S 22 S 33 S 11 図 2.4.3(4)-32 応力の座標軸 ( 配管の軸方向を S 22 軸方向 )( 図 2.4.3(4)-16 の再掲 ) 図 2.4.3(4)-33 鉛直管内に熱成層界面が存在した場合の変形と応力発生のイメージ

295 Part1 Part2 Part3 Part4 図 2.4.3(4)-34 内表面における温度及び応力時刻歴

296 3 解析結果 (a) 二次元応力状態 (b) 三次元応力状態 図 2.4.3(4)-35 応力極座標系表示 (Part4) Part Part Part Part4 51 図 2.4.3(4)-36 分の応力変化状態 ( 単位 :MPa)

297 表 2.4.3(4)-8 解析結果一覧 Part I(MPa) f NP 図 2.4.3(4)-35 (a) および (b) はそれぞれ熱成層界面の中央位置 (Part4) の 2 次元および 3 次元応力履歴の極座標系表示である 負荷履歴が縦軸に沿ってほぼ 1 本の線上で表されることから 繰返し負荷は比例負荷であることがわかる また 図示は省略するが Part1 Part2 Part3 でも Part4 と同様の結果を示した すなわち 解析結果では熱成層界面近傍の繰返し負荷は比例負荷であることを示している 図 2.4.3(4)-36 は各 Part の応力状態を主応力で示しているが この結果から応力多軸状態は等二軸状態に近いことがわかる 解析結果の最大応力範囲 ( I) および非比例度 (f NP) を各 Part でまとめたものを表 2.4.3(4)-8に示す Part4 の I が最も大きく 熱成層界面の中心位置近傍で最大応力が発生し その近傍を含めて比例負荷であることが分かった しかし 数値解析が2 次元で実施されたことから 実際の負荷状態とは異なり非比例負荷の結果が得られにくいことは十分に予想できる したがって 非比例多軸繰返し負荷の状態を評価するためには数値解析を 3 次元で行う必要があると考えられる 4 解析まとめ本章では伊藤らが提案している非比例多軸負荷の評価手法 (IS 法 ) に基づき 非比例 多軸繰返しを受ける配管を例にとって解析を行った 原子力機器 構造物では部位によっては比較的非比例度の高い負荷を受けて 材料の疲労破損寿命の低下が予想される このような非比例 多軸を受ける構造部材は その他にも多数存在するものと考えられるが その検証はほとんど実施されていない したがって 実機構造物での非比例 多軸状態の把握およびその負荷状態での適切な損傷評価を行うことは 原子力機器 構造物の安全性 健全性の保証の点からも必要且つ重要であるといえる d) 非比例多軸疲労試験 (ⅰ) 負荷経路のT 字配管における応力履歴の解析 T 字配管の 2 箇所 ( レインフロー マイナー則で疲労損傷の大きな部位 ) が受けた応力時系列データを用いて IS 法 x で解析した 3 次元および 2 次元の極座標系表示する結果を図 2.4.3(4)-37 に示す 2 次元の解析結果より 配管が受けた応力の主軸方向は複雑に

298 変化していることがわかる この 2 次元解析結果に基づき 負荷経路を極座標系表示上で T 字負荷として模擬した さらに 引張負荷と引張保持中に繰返しねじりを負荷する方法 を T 字負荷として多軸疲労試験に採用した 10 0? SI 1 0 SI 1?10 SI 2?10 SI データ点応力の極座標表示 (3 次元 ) SI 3 データ点の応力の極座標表示 (2 次元 ) / 3 1 SI 1 0 T 字負荷 SI 3 データ点応力の極座標表示 (2 次元 ) 図 2.4.3(4)-37 解析に基づいて試験負荷をモデル化した T 字負荷 (ⅱ) 試験条件本試験に使用した装置は 試験片に軸荷重とねじり荷重を組み合わせて加えることのできるコンピュータ制御による横型電気油圧サーボ式引張 圧縮 / 繰返しねじりの多軸低サイクル疲労試験装置で 試験機の仕様は最大 ±50kN 最大トルク ±500N m 最大周波数 1Hz である 疲労試験は常温大気中において 全ひずみ制御で実施した また 試験片は図 2.4.3(4)-38 に示す薄肉円筒試験片を使用し 評点間距離は 7mm である なお すべての試験において ひずみ速度はミーゼス型の全ひずみ基準で 0.1%/s 一定とした R 図 2.4.3(4)-38 薄肉円筒試験片形状および寸法 (mm)

299 試験に用いたひずみ経路は 図 2.4.3(4)-39 に示す 9 種類とした ここで PP RT はそれぞれ単軸の引張 圧縮負荷 繰返しねじり負荷である CIは軸ひずみとねじりひずみが 90 度位相差で負荷される円形負荷の試験である ここで PP RT の試験は応力やひずみの主軸方向が変化しない比例負荷 CIは応力やひずみ主軸方向が時間的に変化する非比例負荷である T は 非比例度解析の結果に基づき熱疲労履歴の模擬した負荷経路のT 字負荷の試験である すなわち T 字負荷試験では 負荷経路を一巡する間に引張 圧縮負荷を一回と軸ひずみ一定で繰返しねじりを負荷する試験であり 一定軸ひずみの値やねじりの繰返し数を種々変化 ( 回 ) させた試験 (T1~T6) を実施した 本研究の破損寿命 N f は1サイクル中の応力範囲がその最大値の3/4となる繰返し数または破断した繰返し数とした 表 2.4.3(4)-9は試験条件および試験結果の一覧表である T 字負荷試験の数字も振り分けは図 2.4.3(4)-39の負荷経路とねじり負荷の回数に対応し a b はそれぞれひずみ範囲が軸 -ねじりで % % である 表 2.4.3(4)-9 試験条件および試験結果 Strain type ( ) (%) No.of cycle in rev. torsion Cycle counting along path I (%) Number of cycles (cycles) T T1-a T2-a T3-a T1-b T2-b T3-b T4-a T5-a T6-a T4-b T5-b T6-b CI PP RT

300 Strain path Proportional Non-proportional PP RT CI / 3 / 3 / 3 Path, Waveform t t t Strain path Non-proportional T / 3 Path,,, Waveform t... t... t 10cycles 100cycles T1 T2 T3 / 3,,, t... t... t 10cycles 100cycles T4 T5 T6 図 2.4.3(4)-39 負荷経路 (ⅲ) 試験結果および考察 1 非比例負荷の効果図 2.4.3(4)-40に示す基礎データである PP RT CIの破損寿命の比較より PP に比べて RT の破損寿命は約 2.5 倍と長い また非比例負荷である CIの破損寿命は PP のそれの 1/5 倍程度で 非比例負荷による破損寿命の低下が確認できる 非比例負荷では 非比例負荷に比べてより多くのすべり系が活動することによりすべり系間の相互作用が増加した結果応力振幅が増加 ( 追硬化 ) し 結果的に破損寿命が低下することが分かっている xii

301 Nf PushPull Rev.torsion Circle T:tension side( ) T:tension side( ) T:complession side( ) T:complession side( ) 0 PP RT CI T1 T4 T2 T5 T3 T6 図 2.4.3(4)-40 各負荷経路での実験結果の寿命比較 2 T 字負荷での繰返しねじり回数の影響図 2.4.3(4)-40の結果からT 字負荷はねじり回数が増加すると破損寿命が増加することがわかった PP と RT の結果から線形累積損傷則を用いた結果と比べると 実験結果のねじり1 回の T1 T4では破損寿命が著しく低くなった すなわち 繰返しねじり 1 回の負荷では いわゆる非比例負荷の影響により破損寿命が低下したことを示している しかしねじり回数を増加さると徐々に線形累積損傷則の結果に近づく このことは 繰返しねじり回数が増えることにより非比例負荷の影響が小さくなっていると考えられる 図 2.4.3(4)-は 1/2N f の繰返し数を含む負荷経路を一巡するブロック内の軸応力振幅およびせん断応力振幅と破損寿命との関係を示した図を示す データのばらつきは若干見られるものの 平均応力振幅で破損寿命を比較的うまく評価できている このことは 繰返しねじり負荷の回数が多くなると 軸応力振幅は徐々に低下し 比例負荷に近い応力振幅に近づくことを示している このことからも 繰返しねじり回数の増加に伴って非比例負荷の効果が減少していることがわかる Stress range, 3,MPa Number of cycles to failure, N f Axial Shear SMC5C6 T1 S SMC5CE T2 S SMC5D2 T3 S SMC5D8 T4 S SMC5DA T5 S SMC5DC T6 S SMC5E2 CI S SMC5EC PP RT S 図 2.4.3(4) N f のブロックでの応力振幅の平均と破損寿命

302 3 T 字負荷での一定軸ひずみの引張側と圧縮側の違いによる影響図 2.4.3(4)-42は 1/2N f の繰返し数を含む負荷経路を一巡するブロックのせん断応力 - 軸応力線図を示す この応力経路は いずれの結果でも図 2.4.3(4)-39 に示したひずみ経路と類似するものの 塑性ひずみの発生に伴いヒステリシスを描いているが この結果では繰返しねじり回数の増加によって応力経路にはあまり影響を及ぼさないことを示している しかし 図 2.4.3(4)-43 には T1 と T4 における 0.5N f でのヒステリシスループの例を示すが 引張保持 T1 T2 T3 と比べて 圧縮保持 T4 T5 T6 の方が軸の最大応力振幅の値が大きかった すなわち 図 2.4.3(4)-40 で示したようにT 字負荷では圧縮保持の破損寿命が引張保持の破損寿命に比べて短くなったことは この最大応力振幅の違いが原因していると考えられる Stress range % Stress range % Shear stress 3τ,MPa Shear stress 3τ,MPa T1,2,3 Tensile side Axial stress σ,mpa Axial stress σ,mpa SMC575.TMP T1 SMC577.TMP T2 SMC581.TMP T3 Shear stress 3τ,MPa Shear stress 3τ,MPa T4,5,6 Compressive side Axial stress σ,mpa Axial stress σ,mpa SMC58F.TMP T4 SMC599.TMP T5 SMC59E.TMP T6 図 2.4.3(4) N f での応力変化の関係

303 Axial stress σ,mpa SMC74 T1 SMC74 T Axial strain ε,% 図 2.4.3(4)-43 T1 と T4 のヒステリシスループの比較 4 T 字負荷での軸ひずみの大きさの影響 T 字負荷の試験では 軸のひずみ範囲を 0.7% および 1.0% と変えて試験をした結果 ねじり回数 100 回のT3およびT6では軸ひずみ範囲の大きい1.0% の方が長寿命となった この原因について T3 と T6 のねじり塑性ひずみ範囲で破損寿命整理した図 2.4.3(4)-44 から考える 同図では寿命データがほぼ直線的に整理され 破損寿命が短いほどねじりの塑性ひずみ範囲が大きかった すなわち T 字負荷試験では ねじりひずみ範囲が同じ場合に軸ひずみ範囲が大きい試験の破損寿命が長寿命となったことは 軸ひずみにより追硬化がより大きく生じた結果 ねじりの塑性ひずみみが小さくなったことに起因していると考えらえる しかし これについての考察は さらなるデータの蓄積とその結果に基づく解析 評価を必要であると言える Plastic strain range Δγp/ 3,% 0.35 T3-a SMC259D T6-a SMC25A1 T3-b SMC25A8 0.3 T6-b SMC25AE Nf,cycle 図 2.4.3(4) N f 時の塑性ひずみ範囲と N f の関係

304 e) 非比例多軸の過大予負荷による高サイクル疲労強度への影響 (ⅰ) 概要原子力発電所をはじめとする各種プラントの配管系では 別々の管路を流れてきた温水と冷水が T 字状のジャンクションで合流するT 字型合流配管が多く使用される このような合流配管では温度の異なる流体が混合することにより発生する温度揺らぎが管壁表面に到達して熱疲労を与え i 流体によるせん断応力との重積や地震などによる想定外の外荷重により 主応力 主ひずみ軸方向が時間的に変化する非比例多軸負荷状態になることが予測される この非比例多軸負荷により比例負荷に比べると疲労破損寿命が著しく低下する ii, iii, iv, v, vi, vii, viii, ix しかし 一方で同負荷による追硬化現象により極数サイクル内の非比例多軸負荷は材料を強化させる可能性もある とくにステンレス鋼や純銅のような結晶構造が FCCで SFE が小さい材料では Planer すべりによってすべり系間の相互作用が大きくなり 大きな追硬化が生じる 本研究ではSUS316を対象として 比例および非比例多軸の非弾性の過大予負荷を与えることにより高サイクル疲労寿命への予負荷の影響を実験的に調べ 非比例多軸の予負荷による損傷増加に起因する弱化と追硬化に起因する強化のメカニズムについて考察する (ⅱ) 試験片および試験方法本研究で用いた供試材は SUS316の市販材である 表 2.4.3(4)-10に供試材の化学成分を示す また 試験片は図 2.4.3(4)-45およびに示す直径 10mmの中実丸棒試験片を使用した まず 図 2.4.3(4)-45 のボタンヘッド付 (φ30) の中実丸棒試験片を用いて多軸予負荷試験を実施し 試験片に予負荷を与える その後 図 2.4.3(4)-46の形状に追加工し 高サイクル疲労試験を実施した なお 追加工の際には 標点部の直径 φ10の部分は一切加工せず その他の部分をφ12 に加工した 試験片表面は アルミナ粒子によるバフ研磨により鏡面仕上げを施した 表 2.4.3(4)-10 化学成分 Chemical composition (mass%) C Si Mn P S Cr Ni Mo

305 図 2.4.3(4)-45 中実丸棒試験片 ( 非比例多軸予負荷試験 )(mm) 図 2.4.3(4)-46 中実丸棒試験片 ( 高サイクル疲労試験 )(mm) 試験の手順を図 2.4.3(4)-47に示す 試験は比例 非比例負荷の予負荷試験後に高サイクル域での回転曲げ試験を行う また それと並行して基本データ取得のために無予負荷の試験片を用いて高サイクル域での回転曲げ試験も行う その後 無予負荷と予負荷後の高サイクル疲労寿命について考察するとともに予負荷経路の依存性についても考察を行う 多軸予負荷試験で使用した試験装置を図 2.4.3(4)-48 に示す 試験装置は 試験片に軸荷重とねじり荷重を組み合わせて加えることのできるコンピュータ制御による電気油圧サーボ式の引張 圧縮 / 繰返しねじりの多軸低サイクル疲労試験装置である ( 試験機の仕様 : 最大軸荷重 50 KN 最大トルク500N m 最大試験周波数 1Hz) ひずみの計測は 渦電流式変位センサを備えたレバー式の伸び計を用いた 試験は 室温大気中において全ひずみ制御で実施する また ひずみ速度はミーゼス全ひずみ基準で 0.2%/s で一定とした 試験に用いたひずみ経路および負荷波形は図 2.4.3(4)-49 に示すように単軸の引張 圧縮負荷 (PP) および軸ひずみとせん断ひずみが90 度の位相差で負荷される円形負荷 (CI) である ここで 円形負荷の試験はひずみ主軸方向が時間的に変化する非比例多軸負荷である また 本試験での破損寿命 (Nf) は 1サイクル中の応力範囲がその最大値の 3/4となる繰返し数または破断した繰返し数とした

306 高サイクル寿命 σ 弱化 基本データ 無予負荷 予負荷後 Nf 考察 負荷経路依存性 σ 基本データ取得実験 非比例負荷 高サイクル疲労試験 多軸予負荷試験 比例負荷 強化 比例負荷 非比例負荷 Nf 図 2.4.3(4)-47 試験の流れ Axial load Specimen Extensometer (Control) Shear load 図 2.4.3(4)-48 多軸低サイクル疲労試験装置

307 CI PP e e = 0.2%/s e, g / 3 e 2 +1/3g 2 =0.2%/s PP CI 図 2.4.3(4)-49 負荷経路および負荷波形 予定している試験条件の一覧を表 2.4.3(4)-11 に示す すなわち 試験のひずみ範囲は eq=0.5% のみとし 予負荷を与える繰返し数は同ひずみ範囲での破損寿命 (N f) の 10% 30% および 100% とした (100% は破断試験を示す ) 表 2.4.3(4)-11 試験条件 ( 多軸予負荷試験 ) Strain range Δε eq (%) Strain path Number of cycles 0.5 PP CI 0.1N f (10%) 0.3N f (30%) N f (100%) 高サイクル疲労試験は小野式回転曲げ試験装置を使用し 室温大気中で実施した しかし オーステナイト系ステンレス鋼の高周波数での疲労試験において 高応力振幅域での試験片の発熱が問題となる そこで 試験は回転速度 1500rpm で実施し 発熱防止のため冷却水の試験片への滴下による水冷却下で実施した (ⅲ) 試験結果室温大気中および水冷却下における基本データ取得試験の S-N 曲線を図 2.4.3(4)-50 図 2.4.3(4)-51に示す 室温大気中の疲労試験においては 試験片の発熱によりデータのばらつきが大きくなった そこで 冷却装置を作成し 冷却水を試験片に直接滴下するこ

308 とで発熱破断を防止した 冷却効果により発熱によるデータのばらつきはなく 寿命は直線的に整理することができた また 冷却により高応力振幅での試験が可能となった 水冷による腐食の影響が懸念されたが 破面観察の結果 腐食損傷の痕跡は確認できなかった Stress amplitude σ a, MPa 発熱によるばらつき Number of cycles to failure N f, cycles 図 2.4.3(4)-50 基本データ S-N 曲線 Room temperature Room air Cooling water Water cooling (ⅳ) 参考 (Mod.9Cr-1Mo 鋼 ) SUS316 鋼の過大予負荷試験は 進行中でありまだ十分な結果が得られていない したがって 図示は省略するが 参考資料として先行して実施している Mod.9Cr-1Mo 鋼での同試験の高サイクル疲労データを図 2.4.3(4)-51に示す BCC 材料であるMod.9Cr-1Mo 鋼は繰返し初期に大きな追軟化が生じる よって 極数サイクル内での予負荷は材料を軟化させ 高サイクル疲労寿命を低下させている また 軟化の程度は比例負荷に比べて非比例負荷の方が大きいため 寿命低下の度合いは PPよりCI の方が大きい 考察の手法として 予負荷後の試験片のき裂観察 硬さ試験および TEM 観察によりメカニズムの解明を行っている

309 Stress amplitude σ a, MPa PP 0.3N f CI 0.3N f CI 0.1N f PP 0.1N f Basis data PP 0.1N f CI 0.1N f PP 0.3N f CI 0.3N f Number of cycles to failure N f, cycles 図 2.4.3(4)-51 高サイクル疲労試験 S-N 曲線 (ⅴ) 次年度計画今後 SUS316 鋼の予負荷試験を実施し その後回転曲げ試験により高サイクル疲労データを取得する 得られた試験データをもとに 非比例多軸の予負荷による損傷増加に起因する弱化と追硬化に起因する強化機構について考察し 疲労メカニズムの解明を多軸負荷の視点から考察する

310 i Kasahara N, Asayama T. High Cycle Thermal Fatigue Induced by Fluid Temperature Fluctuation., Journal of the Society of Materials, Vol. 56, No. 4, pp (2007) ii Fatemi A, Socie DF. A Critical Plane Approach to Multiaxial Fatigue Damage Including Out-of-Phase Loading., Fatigue Fract Eng Mater Struct, Vol. 11, pp (1988) iii Nitta A, Ogata T, Kuwabara KJ. Fracture Modes and Fatigue Life Evaluation of SUS 304 Stainless Steel under Non-proportional Biaxial Loading Conditions., J Society Material Science, Japan, Vol. 38, pp (1989) iv Doong SH, Socie DF. Dislocation Substructure and Non-proportional Hardening., J Engng Mater Technol, Vol. 112, pp (1990) v Itoh T, Sakane M, Ohnami M, Socie DF. Nonproportional Low Cycle Fatigue Criterion for Type 304 Stainless Steel., Trans ASME J Eng Mater Technol, Vol. 117, pp (1995) vi Itoh T, Nakata T, Sakane M, Ohnami M. Non-proportional Low Cycle Fatigue of 6061 Aluminum Alloy under 14 Strain Path., Multiaxial Fatigue and Fracture (Macha et al., eds.), Vol. 25, pp (1999) vii Carpinter A, Brighenti R, Macha E, Spagnoli A. Expected Principal Direction under Multiaxial Random Loading., Part II: numerical simulation and experimental assessment through the weight function method, International Journal of Fatigue, Vol. 21, pp (1999) viii Socie DF, Marquis G, eds, Multiaxial Fatigue, SAE International (2000) ix Reis L, Li B, Freitas M. Crack Initiation and Growth Path under Multiaxial Fatigue Loading in Structural Steels., International Journal of Fatigue, Vol. 31, pp (2009) x Itoh T, Sakane M, Shimizu Y. Definition of Stress and Strain Ranges for Multiaxial Fatigue Life Evaluation under Non-Proportional Loading, 材料 ( 高温特集号 ), Vol.62, No.2, pp (2013) xi Itoh T, Miyazaki T. A Damage Model for Estimating Low Cycle Fatigue Lives under Non-proportional Multiaxial Loading., Biaxial/Multiaxial Fatigue & Fracture (Carpinter et al., eds.), Vol. 31, pp (2003) xii Itoh T, Yang T. Material Dependence of Multiaxial Low Cycle Fatigue Lives under Non-proportional Loading., International Journal of Fatigue, Vol. 33, pp (2011) xiii Endo T, Mitsunaga K, Nakagawa H. Fatigue of Metals Subjected to Varying Stress-prediction of Fatigue Lives., The Japan Society of Mechanical Engineers, pp (1967)

311 (d) 熱疲労寿命評価法高度化 a) 実験方法 (i) 供試材および疲労試験片 本研究の供試材はフェライト系耐熱鋼 SCM440 であり その化学組成を表.1 に示す 供 試材 ( 以下 : 処女材 ) の組織は 炭化物が分散した針状フェライト母相からなるベイナイト 組織である この素材の機械的特性を表.2 に示す これらの特性は文献 [13] の特性とほぼ 同等であった 表 2.4.3(4)-12 SCM440 試験材の化学成分 (wt%) C Si Mn P S Cu Ni Cr Mo % proof stress [MPa] 表 2.4.3(4)-13 試験材の初期機械的性質 Tensile Strength [MPa] Elongation [%] Reduction area [%] この素材より図 2.4.3(4)-532に示すような評点部中央に両側切欠を有する平滑平板試験片を機械加工した 疲労試験の前には切欠より 0.3mmの予き裂を室温にて導入し 下限界近傍のき裂進展試験に供した なお 試験片表面の微細な加工痕は SiC 研磨紙で #2400 まで試験片軸方向に手研磨することにより除去した 50μm 図 2.4.3(4)-52 供試材の初期微細組織験 A scale 2 : Φ Φ1 // 2.5 B 2 A (52) 20 B 135 図 2.4.3(4)-53 用いた試験片形状

312 (ii) 高温高サイクル下限界近傍き裂進展試験下限界近傍のき裂進展試験は すべて電気油圧サーボ式疲労試験機 (MTS systems corporation 製 ) を用い 荷重制御下 試験周波数 10Hz で行った 試験温度は 300 と500 の 2 種類であり それぞれ幾つかの応力比 ( 最小応力 / 最大応力 : 以下 R 比 ) でΔ K-decreasing 法 [14] により下限界近傍のき裂進展挙動を調査した ΔKは試験片形状を考慮し 以下の評価式を用いた [15] ΔK Δσ ξ a / W π a F ξ 2 4 πξ F ξ ( ξ 0.06ξ ) sec 2 ここで a, W, Δσ, F(a/W) は それぞれき裂半長さ 試験片半幅 繰り返し応力振幅および形状修正係数である また 試験法の詳細は以下の通りである [1,10,11] ΔK-decreasing 法では R 比を一定に保ち き裂が約 0.1mm 進展するごとに荷重振幅を段階的に減少させた 減少の際にはき裂遅延現象に留意し 荷重減少率を7% 以内 特にき裂進展速度 da/dnが 10-9 m/cycle 以下の領域では 5% 以内とした 本研究では き裂進展速度が m/cycle となるΔKを下限界応力拡大係数範囲 ΔK th と定義した [14] 試験片の加熱には高周波誘導加熱装置を用い さらに鋼管の内側に銅板を巻きつけたサセプターを高周波コイル内に挿入して間接的に試験片を加熱することにより良好な温度分布を得た 試験中の温度は R-type 熱電対 ( 白金 - 白金ロジウム ) を用いて評点部内が ± 10 以内となるように制御した (iii) 履歴材の下限界近傍き裂進展試験 1 熱履歴材の準備 1 章で取り上げた工学的負荷履歴材の一例として 何らかの形で疲労き裂が発生し それに対して溶接補修を施したのちにその一部が残存した場合 補修時変形矯正処理を施した場合などが考えられる 本研究ではこのような状態を模擬し 一度き裂進展試験を行った試験片に対して変態温度直上での熱処理を施し 再度下限界近傍き裂進展試験を行った ( 熱機械的履歴材 ) これにより下限界近傍のき裂進展特性に及ぼす熱機械的負荷履歴の影響を調査する 疲労試験の手法は後述する (2.3.2 節参照 ) 比較のため 処女材および熱履歴のみを与えた材料 ( 熱履歴材 ) の特性も調査した これら履歴材の準備にあたっては 種々の熱処理温度条件下での SCM440 の組織および硬 さ特性の変化を調査した このため 最大温度を 700,720,740,760 および 800 の 5 条件とした熱処理を与えた後 厚さ 10mm づつに切断し組織観察した すべての熱処理 の温度制御は試料表面にて R-type 熱電対にて制御し 保持時間はすべて 10min とした こ れらの熱処理は 全て真空焼鈍炉において最大温度保持時間 10min の条件 ( 加熱 :9 /min, 冷却 : 炉冷約 10 /min) で行った JIS Z 2244 に準拠し これら履歴材に対する硬さ測定も行った その際 ビッカース硬 さ試験機 ( アカシ製 ) を用い 試験荷重 5kgf 負荷時間 10s の条件下で行った

313 2 熱機械的負荷履歴材のき裂進展試験き裂材に熱機械的負荷履歴があることによる下限界近傍き裂進展特性への影響を調査するため 節の手法にて熱処理を施した試験片に対してき裂進展試験を行った 用いた試験装置 試験片の加熱方法 試験周波数などは 2.2 節と同様である 本研究の実験の流れを図 2.4.3(4)-54 に示す 以後本稿では2.2 節のき裂進展試験における下限界値をΔ K th,1, 本節での試験で得られる下限界値をΔK th.2 と表わすことにする 無履歴材 供試材を機械加工 試験 熱履歴材 供試材に熱履歴 * 機械加工 ( 切欠導入 ) 試験 熱機械的負荷履歴材無履歴材の試験後切欠き疲労き裂熱履歴 * 試験 図 2.4.3(4)-54 疲労き裂下限界値と負荷履歴の関係の調査を行う際の試料準備と実験の手順 b) 実験結果 (i) 下限界近傍き裂進展挙動 300 ならびに500 における SCM440 鋼の下限界近傍き裂進展速度 da/dnと応力拡大係数幅 ΔK の関係をそれぞれ図 2.4.3(4)-55 および図 2.4.3(4)-56 に示す R 比は -1,0.2, 0.5 および0.8とした まず 300 および 500 ともに R 比の増加に伴い下限界領域のき裂速度は加速され かつ下限界値 ΔK th,1 が低下する傾向がみられる 特に図 2.4.3(4)-5の 500 の下限界近傍のき裂進展特性はせり立った関係になっており R 比の0.2から0.5への上昇に伴い き裂進展速度が急激に加速されている 1.E-07 da/dn[m/cycle] 1.E-08 1.E-09 1.E-10 R=0.2@300 R=0.5@300 R=0.8@300 1.E Stress intensity factor rangeδk[mpa m] 20 図 2.4.3(4) におけるき裂伝ぱ特性 ( 処女材 )

314 1.E-07 da/dn[m/cycle] 1.E-08 1.E-09 1.E E Stress intensity factor rangeδk[mpa m] 20 図 2.4.3(4) におけるき裂伝ぱ特性 ( 処女材 ) 図 2.4.3(4)-57に下限界近傍のき裂進展特性に対する温度依存性を示す 300 と 500 でのき裂進展曲線は交差しており 同じ R 比で比較すると温度上昇に伴い da/dnは大きくなり 下限界値 ΔK th,1 も高くなる傾向がみられる 1.E-07 da/dn[m/cycle] 1.E-08 1.E-09 1.E-10 R=0.5@300 R=0.2@300 R=0.5@500 R=0.2@500 1.E Stress intensity factor rangeδk[mpa m] 20 図 2.4.3(4)-57 下限界特性と試験温度の関係 以上の各温度でのき裂進展特性をもとに下限界値 ΔK th,1 と各応力比の関係に整理した結果を図 2.4.3(4)-58に示す 図 2.4.3(4)-58には本研究の SCM440と非常によく似た材料における他の研究者らの結果も併せて示している [1, 16, 17] 図 2.4.3(4)-58 より低いR 比において下限界値 ΔK th,1 は約 250 で極小値をとり その後は温度上昇に伴い増加していく傾向が認められる 本研究の結果もこれらの傾向に概ね一致している 従来の研究からこれらの傾向は種々のき裂閉口メカニズムによって合理的に説明できることが知られている [1-2] 一方 図 2.4.3(4)-58より高いR 比においてはΔK th,1 が約 4MPaの一定値に収束していることもわかる 鋼において 0.5 もしくは 0.8 以上の高い R 比でき裂閉口現象は顕著でないことが報告されていることから [1,10] 高い R 比での下限界値はき裂閉口現象に左右されない本質的な材料のき裂進展抵抗 ΔK th,eff に近い値になっていると思われる

315 Threshold stress intensity factor, ΔKth,1 [MPa m] A470 Class8 RT [1] 2 1/4Cr - 1Mo Steel RT [17] A470 Class8 149 [1] A470 Class8 260 [1] 1Cr-Mo-V steel 490 [16] Present Results 500 Present Results R ratio 図 2.4.3(4)-58 処女材における下限界特性と応力比の関係 (ii) 下限界近傍き裂進展特性に及ぼす熱機械的負荷履歴の影響 1 熱処理による組織および硬さの変化図 2.4.3(4)-59に各熱処理条件での微視組織の変化を示す min 保持の熱処理により組織は白地のフェライトと黒地のパーライトからなる組織に変化しており この種のフェライト系耐熱鋼は一度変態点以上の熱処理が与えられると劇的に組織が変化することがわかる 図 2.4.3(4)-60 には各熱処理条件に対するビッカース硬さ試験の結果を示す これより 熱処理最高温度の上昇に伴いビッカース硬さは大きく低下した min 保持の条件での硬さは供試材より約 100Hv 程度低下した 0.1mm 図 2.4.3(4) x10min. の熱処理を与えた際の組織 Vickers Hardness[Hv] bare 142 Bare 図 2.4.3(4)-60 熱履歴条件に依存した硬さの変化

316 2 熱履歴材 および 熱機械的負荷履歴材の下限界近傍き裂進展特性本節で示すき裂進展試験結果は熱履歴材 および 熱機械的負荷履歴材に対するものである 図 2.4.3(4)-61 に 変態履歴材の下限界近傍き裂進展特性を示す これより R=-1 においては 熱機械的負荷履歴の影響によりき裂進展下限界値は低下している 注目すべきは 単なる熱履歴材ではその低下が見られないことである 一方 R=0.5 においてはわずかながら下限界値 ΔK th,2 は低下する傾向が認められものの R=0.8 では熱処理前後でほぼ同等のき裂進展特性を示している 1.E E 無履歴材熱履歴材熱機械的負荷履歴材 da/dn[m/cycle] 1.E E E Stress intensity factor range, ΔK[MPa m] (a) 応力比 R=-1 30 da/dn[m/cycle] 1.E-07 1.E-08 1.E-09 1.E-10 1.E-11 solid mark: Transformation history open mark: bare R ratio Transformation history: in vacuum 1 10 Stress intensity factor rangeδk[mpa m] 20 (b)r=0.5, 0.8 図 2.4.3(4)-61 熱履歴材と処女時時の疲労き裂進展速度の比較 c) 負荷履歴に依存したき裂ウエイクとき裂進展下限界特性 (i) き裂進展下限界特性と機械的性質の関係前項で記述したとおり 本研究の供試材 SCM440 鋼は熱履歴により引張降伏応力は大幅に低下した そのため下限界近傍のき裂進展挙動は熱履歴による降伏応力に関連していると考えられる 本節では まず 無履歴材と熱履歴材における降伏応力の影響について検証した後 熱履歴材と熱機械的負荷履歴における降伏応力の影響について検討する 図 2.4.3(4)-62には無履歴材および熱履歴材の下限界値を降伏応力の関数としてプロットした結果を示す 図中には参考のために高炭素フェライト-パーライト鋼 マルテンサイ

317 [4-3] ト鋼およびベイナイト鋼などいくつかの鋼に対する他の研究者らの結果も併せて示している 図 2.4.3(4)-62(a) におけるマルテンサイト鋼や高炭素フェライト-パーライト鋼の結果より 低い応力比では一般的に降伏応力の上昇に伴い下限界値 ΔK th は減少する傾向にある これに対して 本研究と同じベイナイト鋼に対しては 同様の一般的傾向は明確でないようにみえる 一方で 文献による同一の 2.25Cr-1Mo 低合金鋼での結果 ( 図中の曲線 ) に注目すると 同一のクロムモリブデン鋼では降伏応力の上昇に伴い下限界値は緩やかに減少しており 本研究の R=-1の熱履歴材の結果はこの傾向と一致する 一方で 図 2.4.3(4)-62 (b) より 高い応力比の下での下限界値 ΔK th は どの鋼においても降伏応力に依らず 2~4MPa m の値に収束し かつ下限界有効応力拡大係数範囲 ΔK th,eff とも一致する つまり R=0.75 以上の高い応力比においては ΔK th(high R)=ΔK th,eff であるとみなしてよい 十分高い応力比の下では 下限界値に対する降伏応力などの材料の影響は消失し同様のことがいえる Threshold stress intensity factor range K max,th, ΔK th, ΔK th,eff [MPa m] 熱履歴材 無履歴材 present study: K max,th at R=-1(Bainite) :Ferritic-pearlitic steels :Martensitic steels :Bainitic steel :2.25Cr-1Mo (Bainite+40%ferrite) :2.25Cr-1Mo(Bainite) :2.25Cr-1Mo(Martensite) Yield strength σys [MPa] (a) 低い応力比 (R=-1,0 および 0.05) Threshold stress intensity factor range K max,th, ΔK th, ΔK th,eff [MPa m] 熱履歴材 無履歴材 Solid marks: ΔK th,eff at R 0 half marks: ΔK th at R=0.8 present study: K max,th at R=-1(Bainite) ΔKth at R=0.8(Bainite) :Ferritic-pearlitic steels :Martensitic steels :Bainitic steel Yield strength σys [MPa] (b) 高い応力比 (R=0.75 および 0.8) 図 2.4.3(4)-62 下限界値に及ぼす引張降伏応力の影響

318 次に 熱履歴材と熱機械的負荷履歴材における降伏応力の影響について検討する 熱履歴材と熱機械的負荷履歴材は 熱履歴は同じであるからき裂が進展する材料中の降伏応力は同じである しかし 現実的には 前節の結果が示すように 低い応力比における熱機械的負荷履歴材のき裂進展挙動は熱履歴材とは異なった これより 熱機械的負荷履歴材のき裂進展挙動は き裂先端の材料の状態だけでは説明できないことがわかる (ii) き裂のウェイクにおける負荷履歴依存性前項までに得られたき裂進展挙動における熱機械的負荷履歴の影響を検討するため 負荷履歴と熱履歴を受けた材料組成について調査する 本節では 特に負荷履歴のある塑性ウェイク近傍の組織に焦点を当てる 塑性ウェイク近傍における高倍率の光学顕微鏡写真を独自の画像処理プログラムによって顕微鏡写真を 2 値化処理し 各領域での組織形態を定量的に比較する また ウェイク近傍の組織とき裂進展挙動との関連性について検討する まずき裂ウェイク近傍の組織を調査する上で 負荷履歴および熱履歴の順序が重要となる 各試験片における塑性ウェイクおよび履歴の順序を整理した概略図を図 2.4.3(4)-63 に示す 図中の熱機械的負荷履歴材については 疲労き裂が存在する状態で熱履歴を与え 再度試験している そのため (i) 負荷履歴を受けてから熱履歴を受けた領域および (ii) 熱履歴を受けた材料をき裂が進展した領域との 2つに分類される 以後 それぞれの領域を (i) 負荷 熱履歴領域および (ii) 熱履歴領域と記述する 同様に 熱履歴材は熱履歴領域のみからなる試験片である 以上のことを踏まえた上で ウェイク近傍の組織観察方法について記述する 組織観察を行った位置を図 2.4.3(4)-63に で示している すなわち (i) き裂から十分離れた位置の任意の 10 点および (ii) き裂面近傍 25μmの範囲を それぞれの領域で 10 点以上組織観察を行った 顕微鏡写真は全て 1000 倍であり 観察した範囲は 25μm 四方である 熱機械的負荷履歴材 き裂から十分離れた位置で 10 点 熱履歴材 き裂から十分離れた位置で 10 点 25μm 25μm ΔK th( 無履歴材 ) ΔK th( 熱機械的負荷履歴材 ) 25μm 25μm ( 試験前に熱履歴 ) ΔK th( 熱履歴材 ) 塑性ウェイク 負荷 熱熱 負荷履歴順序 ( 熱履歴時のき裂先端 ) 熱 負荷履歴順序 負荷 熱履歴熱履歴領域名熱履歴領域名 図 2.4.3(4)-63 各試験片の履歴および組織観察の概略図

319 き裂から十分離れた位置19 光学顕微鏡による各試験片の各領域での組織を図 2.4.3(4)-13 (a)~(e) に 2 値化画像を図 2.4.3(4)-65 (a)~(e) に総括して示す 2 値化画像においては フェライト層が白く表現されており その面積比率をプログラムによって算出した まず 供試材の図 2.4.3(4)-64 (a) 初期組織は 一様なベイナイト組織である これに対して き裂から十分離れた位置での同図 (b) 熱履歴材と同図 (c) 熱機械的負荷履歴材では 初期組織の一様ラス形状に乱れがみられる 次に き裂塑性ウェイク近傍での同図 (d) 熱履歴領域の組織をみると き裂から十分離れた位置での両履歴材とほぼ同等の組織であるように思われる 一方 負荷 熱履歴領域の組織では ( 同図 (e)) 比較的大きなフェライト層がいくつか生じているのが観察される 図 2.4.3(4)-65に各試験片での各領域でのフェライト分率の平均値を示す 熱機械的負荷履歴材については 左右両方のき裂の各領域について測定した 図より き裂から十分離れた位置での熱履歴材および熱機械的負荷履歴材のフェライト分率は 初期組織と比較して 7% 程度高くなった 一方で き裂ウェイク近傍の熱履歴領域は き裂から十分離れた位置での両履歴材とほぼ同等のフェライト分率である これより 熱履歴を受けた材料をき裂が進展してもその組織形態は変化していないと言える これに対して 負荷 熱履歴領域のフェライト分率は熱履歴領域よりも最大で 4% 程度高くなっている これは 繰返し変形を受けてき裂が進展した領域が熱履歴 (Ac1 点近傍 ) を受けると その再結晶温度が無履歴材と比べて低下し 再結晶温度が促進された結果だと考えられる 熱履歴材 (a) (b) (c) 熱履歴領域 10μm (d) (e) 倍率 :1000 光学顕微鏡写真 塑性ウェ熱機械的負荷履歴材 負荷 熱履歴領域 図 2.4.3(4)-64 光学顕微鏡による各試験片の各領域における組織形態の総括

320 き裂から十分離れた位置20 (Vf=53.15) 熱履歴材 (Vf=61.91) 熱機械的負荷履歴材 (V f =61.07) (a) (b) (c) 熱履歴領域 (V f =60.99) 負荷 熱履歴領域 (V f =67.42) 10μm (d) (e) 塑性ウェイク初期組織 倍率 : 値化処理画像 図 2.4.3(4)-65 2 値化処理を施した各試験片の各領域における組織形態画像 68 Ferritic volume fraction, Vf[%] 初期組織熱履歴材組織熱機械的負荷履歴材組織熱履歴熱履歴 ( 左 ) 熱履歴 ( 右 ) 負荷 熱履歴 ( 左 ) 負荷 熱履歴 ( 右 ) 50 1 図 2.4.3(4)-66 履歴の順序による本供試材の組織形態への影響 以上の結果より 負荷 熱履歴領域における塑性ウェイク近傍でのフェライト分率に変化があることが定量的に明らかとなった 一方 従来の研究によれば 炭素鋼における応力除去焼なましでは 600 以上に加熱すれば残留応力の 80% 程度が除去できることが報告されている これらよりき裂面近傍の残留応力場が消失した可能性が示唆される これを図 2.4.3(4)-67に模式的に示した つまり 応力比 R=-1 における熱機械的負荷履歴材の試験前における疲労き裂は 図 2.4.3(4)-67 (b) のようなき裂先端後方の塑性ウェイクをもたない理想き裂に近いと思われる そのため下限界近傍のき裂進展は加速される 塑性残留ウェイクがき裂進展特性に影響が与えることは多くの研究者が認識していることでもあ

321 る その一方で ある程度き裂が進展すると 図 2.4.3(4)-16 (c) のようにき裂先端後方に再び塑性ウェイクが形成されるため 通常の疲労き裂と類似の下限界特性を示すようになったものと思われる ただし その際には 下限界値そのものは無履歴材と異なった特性となっていることも留意すべきであろう (a) 無履歴材試験後 残留塑性域 ( 塑性ウェイク ) (b) 無履歴材試験 熱履歴 (c) 無履歴材試験 熱履歴 ΔK th( 無履歴材 ) 熱機械的負荷履歴材試験 ΔK th( 熱機械的負荷履歴材 ) ( 熱履歴時のき裂先端 ) 図 2.4.3(4)-67 本研究における履歴よる塑性ウェイクの影響の模式図 以上の考察から き裂ベースの耐疲労設計 言い換えるならき裂進展の観点から余寿命予測を行う際には どの破壊力学的パラメータを用いれば良いのかが問題となってくる 図 2.4.3(4)-58では下限界値に及ぼす応力比の観点から総括したが 下限界近傍ではさまざまな履歴によってき裂閉口の寄与が変化し ひいては下限界値の熱機械的負荷履歴依存性として現れると考えるのが妥当であろう したがって き裂閉口が顕著となる下限界値については有効応力拡大係数範囲をベースにき裂診断をすれば良いとする側面もあろうが 実用上の構造物ではき裂閉口の効果を定量的に見積もることが困難であるという工業的側面もある また 常時 高い応力比での ΔK th をベースにき裂評価を行うとする考えもあろうが あまりにも保守的な評価になる可能性が高い これらの観点を総合的にふまえた上でから 今後 さらに検討が必要であろう d) まとめ本研究ではフェライト系低合金鋼 300 および 500 における下限界近傍のき裂進展挙動について調査した さらに 下限界近傍き裂進展特性に及ぼす熱機械的負荷履歴の影響も調査した 以下に得られた結果を要約する (1) 300 と500 の下限界近傍におけるき裂進展速度を同じ R 比の下で比較すると 温度上昇に伴いき裂進展速度は大きくなり 下限界値 ΔK th,1 も高くなる傾向がみられた (2) (i) 熱履歴のみを与えた試験片 ( 熱履歴材 ) および (ii) 負荷履歴を受けた後に熱履歴

322 を受けた試験片 ( 熱機械的負荷履歴材 ) に対して 応力比を変数として疲労き裂進展の下限界特性を実験的に調査した その結果 熱機械的負荷履歴の影響があること その影響の程度は応力比により異なることが確認された すなわち R=-1 の低い応力比の下ではき裂進展速度が加速しき裂の下限界値が低下する一方で R=0.5 と R=0.8 の下では熱機械的負荷履歴材の下限界値は処女材のそれとほぼ同じであった (3) き裂後方 ( ウェイク ) には有意な熱機械的負荷履歴性がみられること ひいてはそれが疲労き裂下限界値における熱機械的負荷履歴の効果として現れることが強く示唆された (4) 以上の知見をふまえた上で き裂をベースとした寿命予測の高度化手法については 今後さらに検討が必要である 参考文献 [1] P.K.LIAW, Acta metall. Vol.33, No.8, pp (1985) [2] Ritchie.RO, Suresh.S, Metal Trans A, Vol.13(5), pp (1982) [3] P.K.LIAW, T.RLEAX and W.A.LOGDON, Acta metal. Vol.31, No.10, pp ( 1983) [4] K.S.Ravichandran et al., Metallurgical Transaction A Vol.18, pp ( 1987) [5] K.S.Ravichandran et al., Engineering Fracture Mechanics Vol.28, No.4, pp (1987) [6] G.Clark, Fatigue Fract. Engng Mater. Struct. Vol.9, No.2, pp ( 1986) [7] M.D.Chapetti, H.Miyata et al., International Journal of Fatigue Vol.27, pp , (2005) [8] Ming-Liang Zhu, Fu-Zhen Xuan, International Journal of Fatigue, Vol159, pp (2009) [9] 中井善一, 田中啓介ら, 材料 第 33 巻 371 号, pp (1983) [10] 小倉敬二, 三好良夫, 西川出, 日本機械学会論文集 A 第 52 巻 473 号, pp89-98(1986) [11] 小倉敬二, 三好良夫, 西川出ら, 日本機械学会論文集 A, 第 53 巻 490 号, pp (1987) [12] Neil S. Bailey,Surface & Coatings Technology 203, pp (2009) [13] 住友金属工業 ( 株 ) 総合技術研究所データシート (2011) [14] Annual Book of ASTM Standards, E647-00, Vol , ASTM International, p (2003) [15] 改訂材料強度学, 社団法人日本材料学会,p27(2009) [16] J.H.Bulloch,Theoretical and Applied Fracture Mechanics 23, pp89-101(1995) [17] S.SURESH et al on fatigue crack propagation behavior pp57 [18] 金谷貴志, 日本建築学会学術講演梗概集, pp (2006)

323 3) シミュレーション技術の知識ベース構築原子力発電所等のプラントでは 配管系として配管合流部の設置が不可避である しかし 配管合流部において温度の異なる二流体が混合する場合 高サイクル熱疲労が生じる場合があり プラント設計や保守の際に十分に注意する必要がある 日本機械学会 (JSME) は配管合流部の熱疲労を評価するため 2003 年に 配管の高サイクル熱疲労評価指針 1 を策定している JSME 指針では 配管合流部の実験データベースと 合流前の温度差の低減効果を考慮した温度ゆらぎ幅と平板での熱応力評価式を用いて 配管合流部の熱疲労を評価している JSME 指針で策定された熱疲労評価フローは 4つのステップで構成されており いずれかのステップを満足すれば評価終了となる もし いずれのステップも満足しなかった場合は 詳細評価を行えることが記載されている しかし JSME 指針では詳細評価の内容は規定されていない 詳細評価として有効と考えられる方法に数値シミュレーションの利用がある 配管内の熱流動場 流体から配管材への熱伝達 配管内での温度揺らぎと発生応力 材料の疲労など 熱疲労の発生原因から最終的な結果に渡って数値シミュレーションで評価する方法である そのため 本事業ではこれまで 詳細評価として利用できる手法の確立を目指し 数値シミュレーションを用いた温度ゆらぎ評価 ( 流体温度変動評価 ~ 熱応力評価 ) の適用性を調べてきた このシミュレーションによる温度ゆらぎ評価の精度評価を行うことで JSME 指針を代替できる詳細評価手法の確立を目指す ここで述べる シミュレーション技術の知識ベース構築 では 主に熱流動場における数値解析方法について検討する 本事業では 熱流動場の数値解析を実施するに当たり課題となる事項を整理し それぞれについて検討を行っている 本年度は以下の点に焦点を当て検討を行った 配管合流部の流体温度評価に対する解析格子および上流境界条件の影響 (a) 節 配管合流部の流体- 構造熱連成解析に対する影響因子の検討 (b) 節 (a) 節では 主に主流の流体温度変動を妥当に評価するに当たり 考慮すべきパラメータ設定を検討している パラメータとして 解析格子解像度と上流境界条件を取り上げ数値解析を実施し影響評価を行った (b) 節では (a) 節では考慮していない配管金属もモデル化し 流体 構造熱連成解析を行っている これにより 壁面近傍のモデル化や格子解像度が壁面への熱伝達に与える影響を検討した (a) 配管合流部の流体温度評価に対する解析格子及び上流境界条件の影響の解明 a) 目的本節では主に 主流の流体温度変動を数値解析で妥当に評価するに当たり 考慮すべきパラメータ設定を検討する 合流部下流の流体温度変動を数値解析で精度よく再現するに 1 日本機械学会 : 配管の高サイクル熱疲労評価指針 JSME S

324 は 熱流動場のモデル化や数値解法を適切に設定する必要がある それぞれについて影響パラメータは以下のように列挙される モデル化: 乱流モデル 境界条件 ( 特に上流境界条件 ) 数値解法: 数値解析コード 解析格子 差分スキーム乱流モデルについては 本事業の H21 年度に行ったベンチマーク解析にて影響評価を行っている 解析格子の影響については H23 年度に取り組んでいるが 次節 b) で述べる評価手順ガイドラインに沿った解析格子解像度の影響評価はまだ行っていない また 上流境界条件についても 主流の流体温度変動に大きな影響を及ぼすものと想定されるが 評価を行っておらず影響が不明である よって 本年度はパラメータとして 解析格子解像度と上流境界条件を取り上げ検討を行った b) 既往の研究と課題 合流配管の熱流動場を対象とした数値解析はこれまで多くの実施例があり 主に熱疲労 評価を目的として行われている 中村ら 2 3 は 乱流モデルを用いない疑似 Direct Numerical Simulation (DNS) による場合と 乱流モデルとして標準 k-ε モデル Shear Stress Transport k-ω (SST) モデル Detached Eddy Simulation (DES) を用いた数値解析 を行い 日本原子力研究開発機構 (JAEA) が実施した WATLON 試験 4 5 結果と比較して いる その結果 乱流モデルを用いない場合の方が実験による温度変動分布に近いことを 示した 中村らの結果 2 では 標準 k-ε モデル SST モデル等の RANS 乱流モデルを用 いた数値解析結果では温度変動がほぼ全く現れないが RANS 乱流モデルの特性上 非定 常な温度揺らぎが減衰し時間平均的な解が算出されたためと考えられる Howard ら 6 は T 字合流配管の熱流動場の模擬のため計画された FATHERINO 試験を 対象に Large Eddy Simulation (LES) を行い温度変動の再現を試みた サブグリッドスケ ールの渦粘性モデルとして標準 Smagorinsky モデル Dynamic Smagorinsky モデル WALE モデルを使用し 計算結果の違いを比較している 再現された温度変動は渦粘性モ デルにより違いが現れているが FATHERINO 試験に先立って数値解析を実施したため どのモデルが最適かについては言及されていない 2 中村晶 : T 字合流配管の温度ゆらぎ現象の数値解析 乱流モデルと解析格子の影響, INSS JOURNAL, Vol.14, pp (2007) 3 A. Nakamura, T. Oumaya and N. Takenaka. Numerical Investigation of Thermal Striping at a Mixing Tee Using Detached Eddy Simulation., Proseeding of the 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13), N13P1074 (2009) 4 五十嵐実他,: 配管合流部の混合現象に関する研究 -DNS による実験解析と現象の解明 - 核燃料サイクル開発機構研究報告書, TN (2003) 5 H. Kamide, M. Igarashi, S. Kawashima, N. Kimura and K. Hayashi, Study on mixing behavior in a tee piping and numerical analyses for evaluation of thermal striping, Nuclear Engineering and Design, Vol. 239, pp (2009) 6 R. Howard and T. Pasutto: The effect of Adiabatic and Conducting Wall Boundary Conditions on LES of a Thermal Mixing Tee., Proseeding of the 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13), N13P1110 (2009)

325 JAEA では 有限差分法に基づく内製コードを用いた疑似 DNS により配管合流部の温度変動を調べている 7 また 境界適合座標系コード(MUGTHES) を開発し 比較的粗いメッシュでの LESと壁関数を用いたアプローチ (VLES) による配管合流部の数値解析を行った 8 その結果 VLES は流体の温度変動の再現に適用できる可能性があることを示している 以上のように 多くの数値解析例では乱流モデルとしてどのモデルが相応しいかを議論している そもそも 熱疲労で問題となる配管内の熱応力は 壁面近傍の流体と壁面の間で熱が伝達することによって生じる よって 数値解析において壁面の熱伝達を精度よく評価することが求められる 壁面の熱伝達は壁面近傍の乱流状態により大きく影響を受けるため 壁面近傍の熱流動場の評価に適した乱流モデルを選定する必要がある よって 本事業において H21 年度に乱流モデルや計算コードの依存性を比較するためのベンチマーク解析を行った 9 10 INSS 東芝 JAEA 等の各研究機関が参加し WATLON 試験をベンチマーク問題として取り上げ LES および DES 等の乱流モデルの違いや 数値解析コードの依存性などを比較した 9,10 その結果 FLUENT の LES Dynamic が流体温度変動実験値に最も近い計算結果を算出した 数値解析結果は乱流モデルだけでなく 使用する解析格子や差分スキーム 境界条件などによっても影響を受ける これらの影響因子を適切に設定しなければ 数値解析結果の信頼性が損なわれる よって 数値解析結果の妥当性をガイドラインに沿って検証することが昨今求められている 評価手順のガイドラインは様々な団体により策定されているが その一つとしてアメリカ機械学会 (ASME) が策定した ASME V&V がある V&V は Verification と Validation の略である Verification は計画通りに計算モデルが正しく作られたことの確認作業であり 数値解析コードの検証 差分スキームや解析格子の検証がこれに当たる Validation は 計算モデルの物理的実体の表現能力の確認作業であり 実験データとの比較を通して乱流モデルや境界条件等の妥当性を確認することに相当する 本事業においても H23 年度に Verification を目的として数値解析結果の格子依存性評価を行い 解像度の異なる解析格子による計算結果を比較した その結果 上述のベンチマー 7 村松壽晴, 笠原直人, 菊池政之, 西村元彦, 上出英樹 : サーマルストライピングに関する研究の現状と今後の研究計画, 核燃料サイクル開発機構研究報告書, TN (2000) 8 M. Tanaka, H. Ohshima and H. Monji: Thermal Mixing in T-Junction Piping System Related to High-Cycle Thermal Fatigue in Structure, Journal of Nuclear Science and Technology, Vol. 47, No. 9, pp (2010) 9 中村晶, 銭紹祥, 田中正暁, 笠原直人 : 配管の熱疲労評価法の高度化に関する研究 (2) 熱荷重の評価のための流体温度変動の熱流動ベンチマーク解析, M&M2010 材料力学カンファレンス 1010 (2010) 10 A. Nakamura, H. Ikeda, S. Qian, M. Tanaka and N. Kasahara: Benchmark Simulation of Temperature Fluctuation Using CFD for the Evaluation of the Thermal load in a T-Junction pipe., Proseeding of the Seventh Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS7), No. N7P-0011 (2010) 11 The American Society of Mechanical Engineers, Standard for Verification and Validation in Computational Fluid Dynamics and Heat Transfer, ASME V&V (2009)

326 クで使用した解析格子は実用に十分足る解像度を有していることを確認した また 全体として同程度の解析格子数であっても 部分的な解析格子の粗密によって結果に違いが見られ 流れ場に応じて適切な解析格子が必要なことを確認した H24 年度も数値解析の妥当性検証を行う 主に以下の 2 点について取り組んだ 解析結果の格子依存性評価 H23 年度の解析結果の格子依存性評価はある特定のガイドラインに沿ったものではなかったため 本年度は ASME V&V 20に沿って解析格子の収束性評価を行う H23 年度よりもさらに粗い解析格子を作成し どの程度まで粗い格子で温度変動強度が再現できるかを調べ 解析結果の格子依存性を明確化する その結果は ASME V&V 等を参考に整理する 上流境界条件 ( 流速分布 乱れ ) による影響確認温度変動強度が再現できる範囲で粗い格子を用い 上流の流入境界条件 ( 流速分布 乱れ ) を変えることにより 温度変動強度の分布等に影響が出るかを検討する c) 数値解析条件 (i) 数値解析対象 H23 年度と同様 JAEA が実施した WATLON 試験のうち 合流部後流に大きな温度変動が観察された壁面噴流条件 ( 主流管断面平均流速 Uave, m=1.46m/s) を対象とする WATLON 試験から選択した実験条件を表 2.4.3(4)-12 に示す (ii) 数値解析範囲図 2.4.3(4)-68および図 2.4.3(4)-69に数値解析範囲を示す 合流から上流に管直径の 2 倍 下流には 5 倍の配管長さである 対象は流体のみとし 配管金属は模擬しない 管内壁面は断熱境界とした 座標系は 図に示すように 水平方向に x 鉛直方向に y 主配管流れ方向に zとする 座標原点は 主配管と枝配管のそれぞれの管中心軸が交差する点とする (iii) 乱流モデルと境界条件主な数値解析条件を表 2.4.3(4)-13 に示す 乱流モデルは H21 年度実施のベンチマーク解析において最も実験データを再現していた LES Dynamic とした 流入 壁面 流出境界条件は図 2.4.3(4)-68 に示すように設定した 流入境界における流速分布は管内の乱流速度分布である指数法則 12で与える u u max y R 1 n (2.4.3(4)-21) 12 日本機械学会 : JSME テキストシリーズ 流体力学 pg.98 (2005)

327 n 3.45Re 0.07 (2.4.3(4)-22) ここで umaxは最大流速 u は配管壁から yの位置における時間平均流速 R は管の半径である 主配管に対しては Reynolds 数は Re = (48 Uave, m = 1.46 m/s) 枝配管に対しては Re = (33 Uave, b = 1.0 m/s) であるので 主 枝配管のそれぞれの Re 数を式 (2.4.3(4)-21) に入れると nm=8.5, nb=7.5 となり これを四捨五入してそれぞれ 1/9 乗 1/8 乗で入り口の流速分布を与えた なお 最大流速 umaxは次式により与えられる 13 U ave n (2.4.3(4)-23) u n 1 2n 1 max 2 2 ここで Uaveは管断面平均流速である よって 主管の入り口最大流速は umax,m = 1.71 m/s (nm = 9 Uave, m = 1.46 m/s) 枝配管の入り口最大流速は u0,b = 1.19 m/s(nb = 8 Uave, b = 1.0 m/s) となった (iv) 数値解析格子図 2.4.3(4)-70 図 2.4.3(4)-71 に数値解析で使用した解析格子を示す H23 年度に作成 使用した粗メッシュ ( 約 66 万セル ) を基準に さらに粗くした解析格子を 2 通り作成した ( 図 2.4.3(4)-70 (c) および (d) 2.4.3(4)-71 (c) および (d)) 以下ではそれぞれ 24 万メッシュおよび 9 万メッシュと呼ぶ セルサイズは x, y, z 方向で均一に 1.4 倍に近い拡大率となるようにした メッシュ数は約 2.8 分の 1の縮小率となった また 解析結果の格子依存性を評価するために H23 年度の詳細メッシュ ( 約 135 万セル ) による解析結果も使用した 詳細メッシュは粗メッシュに比べ x, y, z 各方向で解像度を 1.3 倍程度に上げ メッシュ数を 2 倍程度にしている 各解析格子の壁面から第 1 層の厚さは 0.5 mmと一定とし y + が変化しないようにした 一般に LESでの壁面境界条件は粘着条件 ( 壁面で流速 0) を用いるが より簡便な評価手法の確立という観点から どの解析格子でも壁面境界条件は壁関数を使用し壁面近傍の格子数を低減した 壁面における y + は数十程度であることを確認している (v) 初期条件および統計処理 H23 年度に行なった粗メッシュの計算結果 ( 計算開始 10 秒後の結果 ) を使用した FLUENT の Interpolate 機能で粗メッシュの計算結果を出力し 24 万メッシュ および 9 万メッシュ上で読み込んで使用した ただし 解析格子を利用しての計算であるため 使用している解析格子での準定常状態に至るまで 流れ場は過渡変化すると考えられる よって 過渡変化を除いて準定常的な 13 日野幹雄 : 流体力学 朝倉書店 pg.316 (1992)

328 状態で統計量 ( 時間平均値 変動強度 ) を得るために 計算開始から 3 秒間は空走期間と し 3 秒からは準定常状態に達したと考えて 3~8 秒の 5 秒間で統計処理を行った (vi) 上流境界条件 表 2.4.3(4)-14に流入境界条件を示す 流入境界での指数法則流速分布 変動流入の有無をパラメータに 4 通りの条件を設定した ちなみに H23 年度の計算では case 1( 主管 枝管ともに指数法則流速分布 主管流入境界にのみ変動流入 ) を設定していた 本年度の解析結果の格子依存性評価でも case 1 の条件を設定した (vii) 計算時間 表 2.4.3(4)-15 に計算時間を示す 本年度使用した計算機は H23 年度ものと比べ高性能となっている 最適な動作設定 ( 負荷の分散 infiniband の利用 ) で計算時間が短縮化された ただし 1 ノード内で共有メモリを利用しての計算では 3~4 倍程度計算時間が増加した 表 2.4.3(4) (4)-12 WATLON 試験から選択した実験条件 条件値備考 主管流速 U ave, m [m/s] 1.46 枝管流速 U ave, b [m/s] 1.0 主管レイノルズ数 Re m [-] 枝管レイノルズ数 Re b [-] 主流温度 T m [ C] 48 枝管温度 T b [ C] 33 主配管口径 D m [mm] 150 枝配管口径 D b [mm] 50 T 字合流部形状 角有り 壁面噴流条件 口径比

329 流体境界条件解法時間メッシュ 流入境界 計算機 (CPU) 表 2.4.3(4)-13 計算条件設定詳細 Xeon E5-2690, 8 並列計算 OS Red Hat Enterprise Linux WS release 6.3 ソフトウェア FLUENT 乱流モデル 対流項差分 メッシュ数 水 (40.5 ) 密度 kg/m 3 粘性係数 Pa s 比熱 J/(kg K) 熱伝導率 W/(m K) LES Dynamic (Smagorinsky-Lilly) Dynamic stress (Dynamic Energy Flux は off) 主管 1.46 m/s (1/9 乗則分布 ) 48 枝管 1.0 m/s (1/8 乗則分布 ) 33 変動流入 ( 主管のみ ) 流出境界 壁面境界 圧力 速度カップリング Gradient Pressure 時間進行 時間刻み 運動量 エネルギ Vortex method Number of Vortices = 190 Turbulent Intensity = 5% Turbulent Length Scale = Reynolds-Stress Specification Method : K or Turbulent Intensity 自由流出 (outflow) 壁関数 断熱 SIMPLE Green-Gauss Cell Based Standard Bounded central differencing Bounded central differencing 2 次精度陰解法 s 1time step 当たりの反復回数 毎回必ず 20 回 初期条件 H23 年度粗メッシュ計算結果 統計処理時間 3 秒計算後の 3~8 秒 (5 秒間 ) 形状 6 面体 ( ヘキサメッシュ ) H23 年度詳細メッシュ (135 万 ) H23 年度粗メッシュ (66 万 ) 1,346,944 セル 664,384 セル 24 万メッシュ 241,396 セル 9 万メッシュ 85,984 セル 壁面 y+ 50 程度

330 表 2.4.3(4)-14 上流境界条件 Case 主管枝管備考 mil 主管のみ変動有り 1/n 乗速度分布 1/n 乗速度分布現行の条件 変動 変動 ( 表 2.4.3(4) (4)- の条件 ) 2 Prof Noperturb 流速分布有り 変動無し 1/n 乗速度分布 1/n 乗速度分布 変動 変動 変動成分の影響評価 3 Noprof Noperturb 流速分布 変動全て無し 一様流速分布 一様流速分布 変動 変動 最も不適切な場合 4 Prof Perturb 流速分布 変動全て考慮 1/n 乗速度分布 1/n 乗速度分布 変動 変動 実用上 最も適切な場合 Vortex method Number of Vortices = 190 枝管変動流入条件 Turbulent Intensity = 5% Turbulent Length Scale = Reynolds-Stress Specification Method: K or Turbulent Intensity 表 2.4.3(4)-15 計算時間 メッシュ 66 万メッシュ (H23 年度 ) 24 万メッシュ 9 万メッシュ 24 万メッシュ 計算機 (CPU) Xeon X5270, 12 並列 Xeon E5-2690, 8 並列 インターコネクト等 Infiniband 1node 内で共有メモリ利用 Infiniband OS Red Hat Enterprise Linux WS release 4 Red Hat Enterprise Linux WS release 6.3 ソフトウェア FLUENT FLUENT メッシュ数 664,384 セル 241,396 セル 85,984 セル 241,396 セル 計算時間 (1 秒 ) 2d 12h 30m 20h 16h 20m 6h 計算時間 (5 秒 ) 12d 14h 30m 4d 4h 3d 9h 40m 1d 6h

331 Adiabatic Outlet x y z Um = 1.46 m/s Tm = 48 C Ub = 1.0 m/s Tb = 33 C 図 2.4.3(4)-68 全体形状と境界条件 2Dm A 5Dm Dm = 150 y z 2Db Db = 50 mm A-A view A θ 図 2.4.3(4)-69 全体長さと主 枝配管流入部長さ

332 間隔 2.5 mm 程度 壁面第 1 層厚さ 0.5 mm 間隔 3.0~3.5 mm 程度 2.7 mm 3.7 mm (a) 詳細メッシュ ( 断面 5280 セル ) H23 年度作成 (b) 66 万メッシュ ( 断面 3328 セル ) H23 年度作成 間隔 4.7 mm 程度 壁面第 1 層厚さ 0.5 mm 間隔 7 mm 程度 4.9 mm 7.4 mm (c) 24 万メッシュ ( 断面 1676 セル ) (d) 9 万メッシュ ( 断面 832 セル ) 図 2.4.3(4)-70 計算メッシュ主配管断面

333 1.9 mm 3.5 mm (a) 135 万メッシュ (b) 66 万メッシュ 4.2 mm 7.0 mm (c) 24 万メッシュ (d) 9 万メッシュ 図 2.4.3(4)-71 計算メッシュ配管合流部の拡大 d) 数値解析結果 (i) 数値解析結果の解析格子依存性以下では 数値解析結果の格子依存性評価について述べる 主に 温度変動強度が解析格子の解像度によってどの程度影響を受けるかについて検討する 1 瞬時の温度分布と時間平均温度分布各メッシュを用いた計算終了時の瞬時の配管断面温度分布を図 2.4.3(4)-72 に示す コンターの上限 下限は流入境界温度 (48 および 33 ) で打ち切らず 秒画面での計算結果の最大 最小値を示している 上限の逸脱は 0.1 程度 (( 図 2.4.3(4)-72c)) 下限の逸脱は 0.4 程度 ( 図 2.4.3(4)-72 (b) および (c)) と小さく 温度のムラなども認められず 妥当に計算が実行されたと考えられる 図 2.4.3(4)-に時間平均温度分布を示す 従来の計算結果と同様であり 壁面からの冷水が壁に付着した壁面噴流を形成していることが分かる

334 (a) 66 万メッシュ (H23 年度粗メッシュ ) (b) 24 万メッシュ (c) 9 万メッシュ 図 2.4.3(4)-72 配管断面の瞬時温度分布

335 (a) 66 万メッシュ (H23 年度粗メッシュ ) (b) 24 万メッシュ (c) 9 万メッシュ 図 2.4.3(4)-73 配管断面の時間平均温度分布 (5 秒間の時間平均 流れ方向断面 )

336 図 2.4.3(4)-74 温度の時間平均値分布 (5 秒間の時間平均 流れ方向位置 z = 0.5D m 垂 直方向 ) 図 2.4.3(4)-74 は合流部から 0.5Dm 下流における時間平均温度分布 ( 垂直方向 ) である 主流部分において実験データとよい一致を示しているが 壁面近傍で高温側に評価するのは H23 年度の 66 万メッシュの数値解析結果と同様である 各メッシュで計算結果に差はあまり見られない 2 温度変動強度分布 温度変動強度 T * std 分布を図 (4)- に示す T * std の定義は次式の通りである T std T * std (2.4.3(4)-24) Tm Tb T std T rms i N 1 T i N T ave 2 (2.4.3(4)-25) 変動強度の大きい部分は主 枝管合流部の前縁から 1Dm 程度までの高低温水界面である 目視では 24 万メッシュと H23 年度粗メッシュ結果にあまり違いはない しかし 9 万メッシュは他より温度変動強度が全体に小さく 特に高低温水界面での変動が小さくなった 図 2.4.3(4)-76 は温度変動強度を実験値と比較したものである メッシュ数の減少に応じて 温度変動強度のピーク値が小さくなる傾向となった 0.5Dm では 24 万メッシュと H23 年度粗メッシュともに 実験データよりも変動幅を大きく評価するが 9 万メッシュ

337 は実験データよりも小さい また 1.0Dm ではどのメッシュも実験データよりピーク値を 大きく評価した (a) 66 万メッシュ (H23 年度粗メッシュ ) (b) 24 万メッシュ (c) 9 万メッシュ 図 (4)-75 温度変動強度分布 (5 秒間の標準偏差 流れ方向断面 )

338 (a) z = 0.5 Dm (b) z = 1.0 Dm 図 温度の変動強度分布 (5 秒間の標準偏差 垂直方向 ) 3 周方向温度変動強度の比較壁から 1 mm の位置での周方向における温度変動強度分布を図 2.4.3(4)-77 に示す 図 2.4.3(4)-77 には 後述する GCI 評価のために H23 年度に実施した約 135 万セルのメッシュ数の計算結果も合わせて示している 周方向角度の定義は図 2.4.3(4)-69 に示す通りであり 流れ方向から見て反時計回りを正とし 枝管位置を 0 とする z = 0.5Dm( 図 2.4.3(4)-77 (a)) では メッシュ数の減少とともに 30 付近の温度変動強度のピークが小

339 さくなった 66 万メッシュ 24 万メッシュでは実験データよりも過大評価側であるが 9 万メッシュでは実験データよりも過小評価側となった z = 1.0Dmでは メッシュ数が減少してもピーク値はほぼ同じだが 変動の幅がより狭くなった 66 万メッシュは実験データをほぼ包含するが 24 万メッシュ 9 万メッシュは実験データよりも変動の幅が狭い 以上より メッシュ数が減少し解像度が粗くなるとともに 温度変動強度が小さくなる傾向が確認された 一般に LESではメッシュ解像度が粗くなることにより サブグリッドスケールの渦粘性が過大に評価される これにより 流れ場の物理量が鈍るため 粗いメッシュほど温度変動強度を小さく評価したと考えられる (a) z = 0.5 Dm (b) z = 1.0 Dm 図 温度の変動強度分布 ( 標準偏差 t = 3~8 s 流れ方向位置 z = 0.5, 1.0D m 周方向 )

340 4 Grid Convergence Index の評価 ASME V&V 20 の GCI (Grid Convergence Index) 評価方法 11に基づき 解析格子の解像度に由来する解析結果の不確かさ および解像度を無限に上げた場合の収束解 (Richardson 補外値 ) を推定した GCI が小さければ格子収束性が良いことになり 十分な格子解像度を有していると判断することができる 表 2.4.3(4)-16 および図 2.4.3(4)-78 に z = 0.5, 1.0Dm θ = + 30 の地点における温度変動強度の Richardson 補外値および格子 GCI 評価結果を示す 図の誤差バーは GCI 評価値で与えている 評価には解像度が高い上位 3メッシュの計算結果を使用した H23 年度に使用した約 135 万メッシュでは 1.0Dm で GCIが 6.2% と大きいが 0.5 Dm では 0.71% と十分低い Richardson 補外値との差を考慮すると 66 万メッシュ程度でもある程度収束解に近い値を算出していると考えられる 表 2.4.3(4)-16 GCI 評価結果 ( 流れ方向位置 z = 0.5, 1.0D m θ = + 30 ) メッシュ数 Richardson 補外値 格子幅 h [mm] 温度変動強度 T std* z = 0.5D m 誤差 e ext GCI 温度変動強度 T std* ,346, , e ext % 32 e ext 1.76% GCI fine % 32 GCI coarse 2.24% , , z = 1.0D m 誤差 e ext e ext % 32 e ext 1.67% GCI GCI fine % 32 GCI coarse -2.06%

341 T rms / (T m - T b) Richardso n r ' = 1 mm z = 0.5 D m θ = 格子幅 h [mm] (a) z = 0.5 D m T rms / (T m - T b) Richardso n r ' = 1 mm z = 1.0 D m θ = 格子幅 h [mm] (b) z = 1.0 D m 図 2.4.3(4)-78 GCI 評価 ( 流れ方向位置 z = 0.5, 1.0D m θ = + 30 誤差バーは GCI 評価値 )

342 (ⅱ) 温度変動の上流境界条件 ( 流速分布 乱れ ) による影響前節の数値解析結果の解析格子依存性評価では 66 万メッシュ程度以上の格子解像度であれば 解析結果は大よそ格子収束解に近い値を算出していた また 24 万メッシュでは 多少格子収束解と誤差はあるものの 温度変動強度が保守側に大きめに評価されており ある程度実用に耐えると考えられる 計算時間はメッシュ数が少ないほど短時間で済むため 複数の計算条件で数値解析を実行する場合はメッシュ数が少ない方が望ましい よって 本節で述べる上流境界条件の影響評価では 24 万メッシュを用いて表 2.4.3(4)-14 に示した 3ケース (Prof Noperturb Noprof Noperturb Prof Perturb) の数値解析を実施し 上流境界条件の影響を比較した 1 時間平均流速分布 流速の変動強度分布の比較図 2.4.3(4)-79~ 図 2.4.3(4)-81に時間平均流速分布および変動強度分布に対する上流境界条件の影響を示す 図中の凡例は表 2.4.3(4)-14 の表記に従う 図 2.4.3(4)-79 の合流部より上流の z = Dmの場合 時間平均分布 変動強度分布ともに主管に速度分布と変動流入を考慮した場合 (0.24 mil Prof Perturb) が他よりも実験データを再現している 速度分布と変動流入を考慮しない Noprof Noperturb の場合 流速分布は比較的平坦になり 変動強度も主流中でほぼ 0 に近い値のままとなり 最も実験データと合っていない 変動流入のみを考慮した条件で計算を行っていないが この条件でも恐らく実験データには合わないと考えられる 数値解析結果を実験データに近づけるには 速度分布と変動流入の両者を境界条件に指定することが重要である ちなみに 0.24 mil と Prof Perturb の差は枝管の変動流入有無なので 合流部より上流の主管では両者の速度分布 変動強度分布は当然一致する 図 2.4.3(4)-80 の下流 z = 0.5 Dmでも 境界条件に速度分布と変動流入を考慮した 0.24 milと Prof Perturb が実験データに近くなった 0.24 mil と Prof Perturb の差は 枝管流入境界における変動の有無であるが 両者の差はあまりない 速度分布も変動流入も考慮しない Noprof Noperturb の場合 時間平均速度分布は主流側 (y / Dm > 0) で平坦であるが 合流部近傍 (y / Dm < -0.1) では他のケースとそれほど違いはない 速度分布のみを考慮する Prof Noperturb でも同様である 合流部近傍の速度場は合流による混合の影響が強く 上流の影響を受けにくいと考えられる z = 0.5 Dmの傾向は図 2.4.3(4)-81 の z = 1.0 Dmでも同様に当てはまる

343 (a) 時間平均分布 ( 時間平均 t = 3~8 s) (b) 変動強度分布 ( 標準偏差 t = 3~8 s) 図 (4)-79 上流境界条件の影響 速度の時間平均値と変動強度分布 ( 流れ方向位置 z = D m 垂直方向 )

344 (a) 時間平均分布 ( 時間平均 t = 3~8 s) (b) 変動強度分布 ( 標準偏差 t = 3~8 s) 図 2.4.3(4)-80 上流境界条件の影響 速度の時間平均値と変動強度分布 ( 流れ方向位置 z = 0.5 D m 垂直方向 )

345 (a) 時間平均分布 ( 時間平均 t = 3~8 s) (b) 変動強度分布 ( 標準偏差 t = 3~8 s) 図 2.4.3(4)-81 上流境界条件の影響 速度の時間平均値と変動強度分布 ( 流れ方向位置 z = 1.0 D m 垂直方向 )

346 2 時間平均温度分布 温度変動強度分布の比較図 2.4.3(4)-82 は合流部から 0.5Dm 下流における時間平均温度分布と温度変動強度分布 ( 垂直方向 ) である 時間平均値に関しては有意な差はあまりない 温度変動強度は ピーク位置 (y / Dm = -0.2) において 速度分布と変動流入を考慮した場合 (0.24 mil Prof Perturb) が一番大きくなり 速度分布のみを考慮した場合 (Prof Noperturb) 速度分布も変動流入も考慮しない場合 (Noprof Noperturb) の順に小さくなった 図 2.4.3(4)-83 の 1.0 Dm 下流における時間平均温度分布では多少差が現れた 最も実験データに近いのは速度分布と変動流入を考慮した場合 Prof Perturb の場合であった 温度変動強度は ピーク位置において差があまり無くなっているが 壁面近傍においては 0.24 mil Prof Perturb Prof Noperturb Noprof Noperturb の順に変動が小さくなり 0.5 Dm 下流のピーク位置と似た傾向となった (a) 時間平均分布 ( 時間平均 t = 3~8 s) (b) 温度変動強度分布 ( 標準偏差 t = 3~8 s) 図 2.4.3(4) -82 上流境界条件の影響 温度の時間平均値と変動強度分布 ( 流れ方向位置 z = 0.5 D m 垂直方向 )

347 (a) 時間平均分布 ( 時間平均 t = 3~8 s) (b) 温度変動強度分布 ( 標準偏差 t = 3~8 s) 図 2.4.3(4) -83 上流境界条件の影響 温度の時間平均値と変動強度分布 ( 流れ方向位置 z = 0.5 Dm 垂直方向 )

348 3 周方向温度変動強度の比較壁から 1mm の位置での周方向における温度変動強度分布を図 2.4.3(4)-84 に示す 上流境界条件の影響が明確に表れており Prof Perturb 0.24 mil Prof Noperturb Noprof Noperturb の順に温度変動が小さくなり また変動の幅も狭くなっている Prof Perturb と 0.24 mil の違いは枝管の変動流入の有無であるが ピーク値の大きさ および変動幅の広さが両者で異なっており 枝管の変動流入も温度変動に影響を及ぼしていることがわかる (a) z = 0.5 D m (b) z = 0.5 D m 図 2.4.3(4) -84 上流境界条件の影響 温度の変動強度分布 ( 標準偏差 t = 3~8 s 流れ方向位置 z = 0.5, 1.0D m 周方向 )

349 4 適切と考えられる上流境界条件以上の比較より 主管 枝管の流入境界における速度分布 変動流入は合流部下流の温度変動強度に影響を与えることが分かった 最も温度変動を保守側に大きめに評価するのは 主管 枝管で速度分布 変動流入をともに考慮した場合である 実際の流れ場を考えた場合 主管レイノルズ数は Rem = 枝管レイノルズ数は Reb= であり どちらも円管内流れの臨界 Re 数 Rec = を超え 乱流状態であると考えられる よって 主管 枝管両方において発達乱流での流速分布 乱流による変動流入を設定することが 実際の流れ場の状態に最も近く相応しいと考えられる 以上から 上流境界条件として速度分布 変動流入をどちらも考慮する設定が最も合理的と考えられる 14 日本機械学会 : JSME テキストシリーズ 流体力学 pg. 93 (2005)

350 まとめ 本年度の結果日本機械学会 (JSME) 配管の高サイクル熱疲労評価指針 における 詳細評価手法 として 数値解析の適用を目指している そのため 配管合流部の温度揺らぎを対象とした数値流体解析を行い 解析格子および上流境界条件が数値解析結果に及ぼす影響を調べた その結果 以下の知見が得られた (1) 合流部下流の流体の時間平均温度は 解析格子解像度によらずほぼ一定の分布となった (2) 合流部下流の流体の温度変動強度には解析格子依存性が現れた 格子解像度が粗くなると共に温度変動強度が小さくなる傾向が確認された 格子解像度が粗くなるとともに LES Dynamic におけるサブグリッドスケールの渦粘性が過大に評価され 温度変動が鈍ったことが原因と考えられる (3) 実験データ (WATLON 試験 ) と比較すると 24 万要素数程度の解析格子でも温度変動強度を保守側に大きめに予測したが 9 万要素数の解析格子では過小評価となった (4) 上流境界条件として 主管 枝管で速度分布 変動流入を全く考慮しない場合が最も温度変動を過小評価した 逆に 主管 枝管で速度分布 変動流入を共に考慮した場合が最も温度変動を保守側に大きめに評価した 実際の流れ場から考えて 速度分布 変動流入を考慮する場合が最も合理的な設定と考えられる 今後の課題 (1) 長周期温度変動のメカニズム 熱疲労では 応力変動が長周期であるほど疲労寿命を低下させると言われている そのため より長時間の数値解析を行い 温度揺らぎの周波数解析を行い メカニズム解明を行う必要がある (2) 最適な解析格子形成方法 解析格子全体のメッシュ数だけでなく 流れ場の構造とメッシュの作成方法 ( 部分的なメッシュの粗密 ) も数値解析結果に影響を与える可能性がある 特に格子解像度を粗くした場合に影響があると考えられる 粗い解析格子で部分的なメッシュ粗密の影響を検討し 最適な解析格子の作成方法の標準化を目指す (3) 熱応力の V&V 本年度は流体温度変動を V&V の対象とした しかし 熱疲労の直接的な影響因子は熱応力もしくは配管内温度変動である よって 配管金属も含めた流体 構造熱連成解析および構造解析により熱応力を算出し 熱応力もしくは配管内温度変動の実験データとの比較を通して V&V を行う必要がある また 上記以外にも以下の検討課題が依然残されている

351 (4) 非定常熱伝達率のモデル化 ( 乱流モデル 壁面の扱い ) 流体 構造熱連成解析を行う際に 壁面境界条件として壁関数を使用し壁面近傍の熱流動場をモデル化して取り扱った場合 流体 構造間の熱伝達率は壁関数に依存することになる 厳密には 壁関数を用いず 壁面近傍 ( 粘性底層 ) まで解析格子を作成し 壁面近傍の数値解析の対象とする方が望ましいが 計算負荷の増加に繋がる よって 壁関数の妥当性の検討や 実験的に得られた非定常熱伝達率を境界条件として適用する手法を検討する必要がある (5) 非定常熱伝達率の機構解明 数値解析手法開発や実験データの整理の基本的考え方を整理するため 非定常熱伝達率について境界層や変動メカニズムとの関係を調べる (6) 他の噴流形態での検証 本年度の壁面噴流条件の結果では ある程度実験データの再現ができた しかし 壁面噴流以外の条件での適用性についてはさらに検討を要する このような課題が今後解決され 指針の高度化 評価手法の検証が期待される

352 (b) 配管合流部の流体 - 構造熱連成解析に対する影響因子の検討 a) 概要日本原子力研究開発機構 (JAEA) で実施された異径 T 字合流配管におけるサーマルストライピング現象に関して昨年度までのシミュレーション結果を踏まえ 長周期の温度変動の再現可能性を評価するとともに ASME V&V20 に規定されている数値解析の不確かさの評価技術 (GCI) による不確かさの評価を行う b) 解析条件 解析対象は日本原子力研究開発機構 (JAEA) で実施された異径 T 字合流配管とする 解析条件を以下に記す i) 基本条件 1 解析方法汎用熱流体解析コード FINAS/CFD を用いる非定常熱流動解析を実施し 配管に作用する熱履歴を計算する 2モデル化方法 流体は非圧縮性粘性流体とする 長周期の温度変動に浮力の有無が及ぼす影響を評価するために 浮力の影響を考慮する 3モデル及び浮力の影響を考慮しない 1モデルを実施する ブジネスク近似で浮力の影響を考慮する 配管はすべて SUSとする JAEAの実験では主管の一部が SUSであり 他の部分はアクリルである 3 計算環境 以下の計算環境で計算する 東京大学情報基盤センターのスーパコンピュータシステム (FX10) 4LES モデル 非定常解析の乱流モデルは Dynamic Smagorinsky Model を用いる ii) 計算条件図 2.4.3(4)- 85 に表わされる異径 T 字合流配管を対象とし 主管は合流部から上流側に 2 Dm( ここで Dmは主管の直径 ) 下流側に 5 Dmを解析領域とし 枝管部は枝管直径の 2 倍の長さを解析領域とする 主管及び枝管の諸元は表 2.4.3(4)- 17 及び表 2.4.3(4)- 17 のとおりとする

353 図 2.4.3(4)- 85 解析対象概要図 表 2.4.3(4)- 17 主管諸元 管内径 (Dm) 0.15m 平均流速 1.46m/s ( 流入条件としては平均流速が 1.46m/s となるよう 1/7 乗則速度分布を与える 乱流条件はなし ) 入口乱流条件 なし 入口温度 48 Re 数 配管板厚 t 配管外側温度境界条件 5.0mm 断熱 表 2.4.3(4)- 18 枝管諸元 管内径 (Db) 0.05m 平均流速 1.0m/s ( 流入条件としては平均流速が 1.0m/s となるよう 1/7 乗則速度分布を与える 乱流条件はなし ) 入口乱流条件 なし 入口温度 33 Re 数 配管板厚 t 配管外側温度境界条件 5.0mm 断熱

354 流体は水とし 表 2.4.3(4)-19 の値を用いる 表 2.4.3(4)- 19 水の物性 密度 [kg/m3] 粘性係数 [Pa s] 比熱 [J/kg/K] 熱伝導率 [W/m/K] 熱膨張係数 [ /K] 2.1 配管は SUS304 を仮定し以下の表 2.4.3(4)- 20 の値を用いる (48 ) 表 2.4.3(4)- 20 SUS304 の物性 密度 [kg/m3] 比熱 [J/kg/K] 熱伝導率 [W/m/K] FINAS/CFD による熱流動解析の条件は以下を用いる 長周期の温度変動を評価する ため 解析時間を 5 秒とする 時間刻み アスペクト比 30 のケースは 0.1ms そのほかは 0.2ms 移流項離散化スキーム 1 次精度風上差分 2 次精度中心差分混合法 ( 運動量 2 次精度 0.9 温度 2 次精度 0.8) 壁面 non-slip 入口乱流条件 なし 重力加速度 9.8m/s -2 時間積分 一次精度陰解法 (SIMPLE アルゴリズム ) 乱流モデル LES( ダイナミックスマゴリンスキー SGS) 解析時間 5 秒 計算格子去年度と同様に温度境界層に2,3 点配置されるよう 配管合流部近傍の流体と構造物が接する部分ではセルの厚みを流体側 構造側ともに10μm とし 配管中心に向かって徐々に格子の幅を広げる また 配管合流部より下流 0~1D m の範囲で計算格子を細かくし アスペクト比の異なる 3 種類 (70 50 及び 30) のモデルを用いて格子依存性試験を行う 計算格子を細かくする領域を図 2.4.3(4)- 88 に示す 主管の周方向のメッシュ拡大は図 2.4.3(4)- 89に示す 配管合流部より

355 0~1D m 下流の拡大は図 2.4.3(4)- 89 に示す 配管合流部より下流 1D m 以降の範囲 では混合に与える影響が比較的小さいと考えられ 下流方向に向かって計算格子 を徐々に拡大する 計算格子数を表 2.4.3(4)- 21 に示す 表 2.4.3(4)- 21 計算格子数 アスペクト比 ( 代表メッシュサ 流体 配管 合計 イズ ) 70(0.7mm) 3,766,828 1,338,880 5,105,708 50(0.5mm) 5,800,368 2,013,216 7,813,584 30(0.3mm) 9,603,024 3,228,380 12,831,

356 Adiabatic Wall Outlet 図 2.4.3(4)- 86 全体形状と境界条件 Dm 及び Db は内径 格子モデルは配管 (t=5mm) を含む 図 2.4.3(4)- 87 全体長さと主 枝配管流入部長さ

357 主管の周方向 配管合流部より 0~1D 下流 図 2.4.3(4)-88 計算格子依存性考慮領域 アスペクト比 70 メッシュサイズ 0.7[mm] アスペクト比 50 メッシュサイズ 0.5[mm] アスペクト比 30 メッシュサイズ 0.3[mm] 図 2.4.3(4)- 89 主管の周方向のメッシュ拡大

358 アスペクト比 70 メッシュサイズ 0.7[mm] アスペクト比 50 メッシュサイズ 0.5[mm] アスペクト比 30 メッシュサイズ 0.3[mm] 図 2.4.3(4)- 90 配管合流部より 0~1Dm 下流の拡大

359 c) 解析ケース長周期の温度変動に浮力の有無が及ぼす影響を評価するために 浮力の影響を考慮する 3モデル及び浮力の影響を考慮する 1モデルを実施する 具体的な解析ケースは表 2.4.3(4)- 22 に示す 表 2.4.3(4)- 22 解析ケース アスペクト比 時間刻み [ms] 浮力の考慮 あり なし あり あり d) 解析結果 図 2.4.3(4)-91~ 図 2.4.3(4)-94 に 1~5 秒の配管断面全体の温度分布を示し 図 2.4.3(4)-95~ 図 2.4.3(4)-98 にはその拡大図を示す

360 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)-91 中心断面温度 ( アスペクト比 70)

361 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)- 92 中心断面温度 ( アスペクト比 70 浮力なし )

362 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)-93 中心断面温度 ( アスペクト比 50)

363 0.5 秒 1 秒 1.5 秒 2 秒 2.5 秒 図 2.4.3(4)- 94 中心断面温度 ( アスペクト比 30)

364 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)-95 中心断面温度拡大図 ( アスペクト比 70)

365 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)- 96 中心断面温度拡大図 ( アスペクト比 70 浮力なし )

366 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)-97 中心断面温度拡大図 ( アスペクト比 50)

367 0.5 秒 1 秒 1.5 秒 2 秒 2.5 秒 図 2.4.3(4)- 98 中心断面温度拡大図 ( アスペクト比 30)

368 図 2.4.3(4)-99~ 図 2.4.3(4)-102 には 1~5 秒の配管断面の瞬間の速度ベクトルを示し 図 2.4.3(4)-103~ 図 2.4.3(4)-106 にはその拡大図を示す 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)- 99 中心断面速度ベクトル ( アスペクト比 70)

369 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)- 100 中心断面速度ベクトル ( アスペクト比 70 浮力なし )

370 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)-101 中心断面速度ベクトル ( アスペクト比 50)

371 0.5 秒 1 秒 1.5 秒 2 秒 2.5 秒 図 2.4.3(4)-102 中心断面速度ベクトル ( アスペクト比 30)

372 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)- 103 中心断面速度ベクトル拡大図 ( アスペクト比 70)

373 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)- 104 中心断面速度ベクトル拡大図 ( アスペクト比 70 浮力なし )

374 1 秒 2 秒 3 秒 4 秒 5 秒 図 2.4.3(4)-105 中心断面速度ベクトル拡大図 ( アスペクト比 50)

375 0.5 秒 1 秒 1.5 秒 2 秒 2.5 秒 図 2.4.3(4)- 106 中心断面速度ベクトル拡大図 ( アスペクト比 30)

376 図 2.4.3(4)- 107 にアスペクト比 50 の 1 秒から 5 秒の水平断面 (40 ) の温度分布を示す 1 秒 1.4 秒 1.8 秒 2.2 秒 2.6 秒 3 秒

377 3.4 秒 3.8 秒 4.2 秒 4.6 秒 5 秒 図 2.4.3(4)-107 水平断面 (40 ) の温度分布 ( アスペクト比 50) 図 2.4.3(4)-108 にアスペクト比 50 の 1 秒から 5 秒の水平断面 (30 ) の温度分布を示す

378 1 秒 2.2 秒 3 秒 4.2 秒 5 秒 図 2.4.3(4)-108 水平断面 (30 ) の温度分布 ( アスペクト比 50)

379 図 2.4.3(4)- 109 にアスペクト比 50 の 1 秒から 5 秒の配管内面の温度分布を示す 1 秒 2.2 秒 3 秒 4.2 秒 5 秒 図 2.4.3(4)-109 配管内面の温度分布 ( アスペクト比 50)

380 図 2.4.3(4)-110~ 図 2.4.3(4)-117 には配管合流部から 1.0Dm における配管より 3mm 内 側の流体温度と配管内部 0.125mm の温度の時刻歴を示す 付録に実験結果を示す 図 2.4.3(4)- 110 非定常解析によるモニタ点の温度時刻歴 ( 流体 アスペクト比 70)

381 図 2.4.3(4)- 111 非定常解析によるモニタ点の温度時刻歴 ( 流体 アスペクト比 70 浮力 なし )

382 図 2.4.3(4)- 112 非定常解析によるモニタ点の温度時刻歴 ( 流体 アスペクト比 50)

383 図 2.4.3(4)- 113 非定常解析によるモニタ点の温度時刻歴 ( 流体 アスペクト比 30)

384 図 2.4.3(4)- 114 非定常解析によるモニタ点の温度時刻歴 ( 配管 アスペクト比 70)

385 図 2.4.3(4)- 115 非定常解析によるモニタ点の温度時刻歴 ( 配管 アスペクト比 70 浮力 なし )

386 図 2.4.3(4)- 116 非定常解析によるモニタ点の温度時刻歴 ( 配管 アスペクト比 50)

387 図 2.4.3(4)- 117 非定常解析によるモニタ点の温度時刻歴 ( 配管 アスペクト比 30)

388 図 2.4.3(4)- 110 図 2.4.3(4)-111 の流体温度履歴 (1 秒 ~5 秒 ) の統計データを表 2.4.3(4) 表 2.4.3(4)- 23に示す 統計量の算出に使用された時系列データは アスペクト比 30のケースは 0 秒 ~2.75 秒 他の 3 ケースは 1 秒 ~5 秒である 以降のグラフについても同様である 温度変動強度の定義は以下となる 表 2.4.3(4)- 23 流体温度履歴の統計データ 時間平均無次元化温度温度変動強度 1 Dm 25 1 Dm 30 1 Dm 35 浮力あり浮力なし浮力あり浮力なし浮力あり浮力なし 最大値 最小値 最大温度変動 図 2.4.3(4)- 118 には合流部から 0.5 Dm と 1 Dm の垂直方向の時間平均無次元温度を示す

389 (a) (b) 図 2.4.3(4)-118 時間平均無次元温度分布 ( 垂直方向 ) 図 2.4.3(4)- 119 には合流部から 0.5 Dm と 1 Dm の垂直方向の温度の変動強度分布を示す

390 (a) (b) 図 2.4.3(4)- 119 温度の変動強度分布 ( 垂直方向 ) 図 2.4.3(4)-120 には合流部から 0.5 Dm と 1 Dm の周方向の流体の時間平均無次元温度を 示す

391 (a) (b) 図 2.4.3(4)- 1 時間平均無次元温度分布 ( 周方向 流体内側 1mm) 図 2.4.3(4)- 121 には合流部から 0.5 Dm と 1 Dm の周方向の流体の温度の変動強度分布を 示す

392 (a) (b) 図 2.4.3(4)- 121 温度の変動強度分布 ( 周方向 流体内側 1mm) 図 2.4.3(4)- 122には合流部から 0.5 Dmと 1 Dmの周方向の配管内面の時間平均無次元温度を示す

393 (a) (b) 図 2.4.3(4)- 122 時間平均無次元温度分布 ( 周方向 配管内面 ) 図 2.4.3(4)-123には合流部から 0.5 Dmと 1 Dmの周方向の配管内面の温度の変動強度分布を示す

394 (a) (b) 図 2.4.3(4)-123 温度の変動強度分布 ( 周方向 配管内面 ) 温度変動のスペクトル分布 (1 Dm 30 ) を図 2.4.3(4)- 124~ 図 2.4.3(4)- 127 に示す

395 図 2.4.3(4)-124 温度変動のスペクトル分布 ( アスペクト比 70) 図 2.4.3(4)-125 温度変動のスペクトル分布 ( アスペクト比 70 浮力なし )

396 図 2.4.3(4)- 126 温度変動のスペクトル分布 ( アスペクト比 50) 図 2.4.3(4)-127 温度変動のスペクトル分布 ( アスペクト比 30)

397 e) GCI による不確かさ推定値の評価 ASME V&V で定義されている不確かさの一つである離散化誤差による不確 かさ ( u num ) を評価するために 5 段解法 (Five-step Procedure for Uncertainty Estimation) により格子収束指標 (Grid Convergence Index GCI) を求めた GCI とは 95% 信頼度での不確かさの推定値を示している すなわち ある計算結果 f に対して 真値 fiが区間 f 1 GCI に存在する確率が 95% となることを示している ( 図 2.4.3(4)-128) 計算結果 f GCI f 計算結果 外挿値 格子幅 [m] 図 2.4.3(4)-128 Grid Convergence Index(GCI) 以下 5 段解法による GCI の算定方法を示す (ASME V&V より抜粋 ) Step 1: 格子サイズ h を定義する h x max N i 1 y max V i z / N 1 / 3 max 1/ 3 構造格子の場合 非構造格子の場合 ここで N: 計算セルの総数 ΔVi:i 番目のセル体積を示す

398 Step 2: 格子サイズが異なる 3 種類の格子を用いて解析を実行する 得られた結果より 不確かさを評価する変数を選択し 計算結果から抽出する 今回の検討においては 温度変動の RSM 値とした Step 3: Richardson の補外法で用いる次数 p を 以下の手順で計算する p 1 ln r 21 ln q p q p r ln r p 21 p 32 s s s 1 sign ここで k :k 番目の格子サイズのメッシュモデルによる計算結果 r 32 h3 / h2 2 1 r 21 h / h ( ただし h 3 h2 h1 ) 上述の pの式は非線形方程式となるため 実際に p を求めるときには qの初期値を 0 として数回反復して p の収束解を求める Step 4: Richardson の補外法により の外挿値を求める r p ext p r Step 5: 以下の手順で誤差推定値及び GCI を求める e a 近似的な相対誤差

399 21 21 ext 1 e ext 21 相対誤差の推定値 ext Fsea GCI fine 格子収束指標 p r 1 21 以上の手順で求めた GCI より 離散化誤差による不確かさu num を 次式により求める u num GCI / 2 表 2.4.3(4)- 24~ 表 2.4.3(4)-26には主管と枝管の合流部から1 Dm 下流の図 2.4.3(4)- 129 の位置の配管表面から 0.125mm 配管内側の無次元温度変動幅と Richardson の補外法による予測値 ( アスペクト比 1) を示す 図 2.4.3(4)-130~ 図 2.4.3(4)- 132 には誤差幅と合わせて示す 表 2.4.3(4)-27 と図 2.4.3(4)- 133 には 25 ~35 の間で平均を施した結果を示す 実験による配管の無次元温度変動は約 0.1 程度であることから 計算による温度変動幅は類似した結果となった 図 2.4.3(4)-2 GCI 評価 表 2.4.3(4)- 24 GCI(25 度 2.75 秒間 ) アスペクト比温度差誤差

400 図 2.4.3(4)- 130 GCI(25 度 2.75 秒間 ) 表 2.4.3(4)- 25 GCI(30 度 2.75 秒間 ) アスペクト比温度差誤差

401 図 2.4.3(4)- 131 GCI(30 度 2.75 秒間 ) 表 2.4.3(4)- 26 GCI(35 度 2.75 秒間 ) アスペクト比 温度差 誤差

402 図 2.4.3(4)-132 GCI(35 度 2.75 秒間 ) 表 2.4.3(4)- 27 GCI(25 度 30 度及び 35 度の平均 2.75 秒間 ) アスペクト比 温度差 誤差

403 図 2.4.3(4)-133 GCI(25 度 30 度及び 35 度の平均 2.75 秒間 ) 参考文献 : [1] Kamide, H., et al., Study on mixing behavior in a tee piping and numerical analysis for evaluation of thermal striping, Nuclear Engineering and Design, 239, pp.58-67(2009)

404 4) システム安全評価のための劣化予測式の提示 (a) 機能損失確率評価を可能とするための破損確率評価法の提案 a) 緒言原子力プラントの冷却系において高温流体と低温流体が混合する T 字配管では 不完全な混合が不規則な流体温度揺らぎを生み これによって構造に不規則な熱応力変動を生じさせる ( 図 2.4.3(4)- 134( 左 )) 熱応力が長期間繰り返されると 疲労破損に至る場合がある 疲労破損は き裂の発生 進展および貫通漏洩と進行する可能性がある き裂が貫通し冷却材漏洩まで至った例に 1998 年に仏の Civaux 炉で わずか 1500 時間の運転で起こった事故がある ( 図 2.4.3(4)-134( 右 )) このような熱疲労破損を防止するため 疲労損傷量を評価し 疲労寿命を予測する必要がある しかし T 字配管の熱疲労現象は 流体と構造の相互作用による複雑な現象であり また不規則な温度揺らぎによる荷重は特徴を把握しにくく 正確な評価は容易ではない 図 2.4.3(4)- 334 ( 左 )T 字配管での熱疲労現象 Civuax 炉でのき裂発生例 [1] 日本機械学会の 配管の高サイクル熱疲労に関する評価指針 ( 以下 JSME 指針 ) [2] やフランスの評価法等 現行の熱疲労評価の規格は疲労損傷係数 D を算出し その値が D_f=1 に至ると破損するという考えに基づいて決定論的に評価している しかし決定論的評価では評価値がもつ安全裕度が未知であり 昨今の安全設計における安全裕度の定量化のニーズを満たすことができない また原子力プラントのシステム安全を考える上で 様々な機器における複数の破損モードの評価値を合わせた評価を行うため 機器の破損モードごとの破損確率が求められていることも踏まえると 配管熱疲労に対しても確率論的評価

405 が必要である この必要性を受け 配管熱疲労について荷重と強度の不確実性を考慮した信頼性評価手法 ( 以下 従来の信頼性評価法 ) が提案された [3] この手法は破損確率や部分安全係数の評価を可能にして安全裕度の定量化を実現したものの 荷重の取扱いが煩雑であることから多くの計算量を必要とするため実用的ではない そこで本研究では 熱疲労における荷重の取扱いを容易にすることで 従来法の課題を解決した簡明で実用的な信頼性評価法を提案することを目的とする b) 等価応力振幅の提案とそれを用いた決定論的熱疲労評価 本章では 荷重を扱いやすくするための新しい概念である等価応力振幅を提案し それ を用いた決定論的熱疲労評価を行って評価値を検証する 評価の手順は下図である JAEA experimental data JSME guideline data PSD of fluid temperature Frequency response function of the structure Moment calculation PSD of thermal stress Equivalent stress amplitude, number of cycles Fatigue analysis Fatigue damage 図 2.4.3(4)- 135 等価応力振幅による決定論的評価の手順 i) 決定論的評価の手順木村らは T 字配管における温度揺らぎを実験的に測定し 高低温流体混合時の運動量比によって 3 種の噴流形態 ( 壁面噴流 偏向噴流 衝突噴流 ) に分類できることを示した [4] それぞれの噴流形態に対して 無次元化した流体温度のパワースペクトル密度 (PSD) により 流速に依存しない 1 本の包絡線が定義される 例として壁面噴流の PSDを図 2.4.3(4)- 136に示す 本研究では 3 種の噴流形態の流体温度 PSDを評価の入力とする

406 図 2.4.3(4)- 136 壁面噴流とその流体温度 PSD[4] 流体温度 PSDに笠原ら [5] が開発した周波数伝達関数を用いることで熱応力 PSDを求める (2.4.3(4)-26) : 周波数伝達関数 ビオ数と周波数に依存 (h : 熱伝達係数, L : 配管板厚 ) 熱応力 PSDのモーメントより 後述する等価応力振幅とそのサイクル数を計算する これらを用いて 疲労損傷係数を材料の疲労曲線から求める (2.4.3(4)-27) : 応力振幅を受け続けて破損するまでの繰返し回数 この評価過程は 全て理論計算のみで導くことができる簡明なものである ii) 等価応力振幅の提案 熱応力 PSD の次モーメントは

407 (2.4.3(4)-28) として求められるが 0 次モーメントは応力波を二乗した値の平均値に等しい そこで が元の応力波の片振幅の平均値に近いと考え これを等価応力振幅 として定義す る (2.4.3(4)-29) これを用いて 図 2.4.3(4)- のような不規則な応力波形を図 2.4.3(4)- のように置き換える 図 2.4.3(4)-137 不規則な応力波の模式図 Stress ESA Time 図 2.4.3(4)- 138 等価応力振幅で代表した応力波の模式図 図 2.4.3(4)- 138 の赤丸部分のように応力波が平均値を正勾配で通過する平均的頻度 ( 零点通過頻度 ) を求めると 等価応力振幅の波が単位時間に回生じるとみなせるため 運転時間における等価応力振幅のサイクル数は次式で計算できる

408 (2.4.3(4)-30) iii) 決定論的熱疲労評価結果の比較 等価応力振幅を用いた決定論的評価の妥当性を示すため FEM 時刻歴解析によって得 られた疲労損傷係数をリファレンスとして JSME 指針 Step4 の結果との比較を行った 比較には 評価結果の疲労損傷係数をリファレンスの で割った値 ( 裕度 ) を用いる 流体条件として 3 種の噴流形態と様々な合流前温度差を設定する 各流体条件において 配管板厚と熱伝達係数を基準値, の 0.5 倍から 4 倍まで変化させながら評価することで様々な条件を想定した まず噴流形態に対する傾向を調べるため 合流前温度差を 150 に固定して 3 種の噴流形態についての評価結果を比較した 次に流体合流前温度差に対する傾向を調べるため 噴流形態を壁面噴流に固定して合流前温度差 73, 111.5, 150についての評価結果を比較した ここでは温度差 150 での衝突噴流と壁面噴流の結果と 温度差 73 での壁面噴流の結果を代表として示す ( 図 2.4.3(4)-139~141) 図 2.4.3(4) 手法の裕度 ( 衝突噴流, )

409 図 2.4.3(4) 手法の裕度 ( 壁面噴流, ) 図 2.4.3(4) 手法の裕度 ( 壁面噴流 ) c) 等価応力振幅を用いた信頼性評価法の提案本章では 等価応力振幅を信頼性評価に応用することで荷重の取扱いを簡明化した信頼性評価法を提案し 提案評価法の妥当性を検証する i) 限界状態関数と信頼性評価のレベル信頼性評価は 限界状態関数を定義し の値が負の場合に破損が生じ 正の場合は安全側であるという考えに基づく 信頼性評価法は正確なものから実用的なものまで

410 様々なため 代表的なものを 3 つのレベルで分類する レベル III ( モンテカルロ (MCS) 法 ): 多数のサンプルで で破損確率を求める 精度を重視した手法である の正負を判定し 負の値の数 (2.4.3(4)-31) レベル II (Advanced First-Order Second -Moment (AFOSM) 法 ): 信頼性指標から破損確率を近似的に計算する手法で MCS 法より計算コストが低くより実用的である レベル I (LRFD 法 ): 最も簡略化された信頼性評価で 確率論的情報をもたない荷重と強度の部分安全係数 (PSF) が評価値なので 信頼性評価を設計規格等で実用化するのに適している ii) 荷重と強度の不確実性のモデル化提案する信頼性評価法では 従来の信頼性評価法に倣い 荷重と強度の不確実性をそれぞれ熱伝達係数と疲労線図に与えた上で図 2.4.3(4)- 142の手順を辿ることで破損確率評価を行う まず熱伝達係数の不確実性を定義する T 字配管での合流のような非定常の流れでは 定常に比べて熱伝達係数が数倍になる これを JSME 指針では以下のように増倍係数によって表している (2.4.3(4)-32) : 非定常熱伝達係数, : 定常熱伝達係数よって 熱伝達係数の不確実性は増倍係数に正規分布を与えることで定義する 最小値は 1 最大値は JSME 指針で示される値 ( 壁面噴流は 4.3) である この不確実性は 周波数伝達関数に影響を与える 図 2.4.3(4)- 142 増倍係数に与える不確実性の定義

411 次に疲労線図の不確実性を定義する 疲労試験データのばらつきから 疲労線図の応力 寿命 ( サイクル数 ) ともに対数正規分布のばらつきをもつことが分かっている そのため JSME 指針では応力係数 または寿命係数 を与えた設計疲労曲線を定義して いる (2.4.3(4)-33) SUS304 の場合 これを基にして 疲労線図の不確実性は 係数 2-20 を最小値 元の疲労線図の値を平均値 として応力 寿命係数に対数正規分布を与えることで定義する ( 図 2.4.3(4)- 143) 図 2.4.3(4)- 143 応力係数と寿命係数に不確実性を与えた疲労線図 (10000 サンプル ) iii) 等価応力振幅を用いた限界状態関数の提案疲労損傷係数を用いた限界状態関数は (2.4.3(4)-34) と定義できるが ではレベル I を適用した際に PSF がに対してのみになり 荷重と強度それぞれの PSFを得られない そのため 荷重と強度の変数からなる限界状態関数を新たに次式のように定義する (2.4.3(4)-35) : 疲労線図の応力係数と寿命係数の領域の境界となる応力値

412 は荷重の変数 ( 等価応力振幅, サイクル数 ) と強度の変数 ( 応力係数, 寿命係数 ) を含むため レベル Iまで適用したい場合にも適している iv) を用いた信頼性評価法の提案本研究では 図 2.4.3(4)-144 のように を用いてレベル II AFOSM 法で破損確率を算出する信頼性評価法を提案する AFOSM 法を用いるのは MCS 法よりも計算が簡便なため 何度も確率評価を行いながら設計を見直すといった場合に適するためである また AFOSM 法は計算過程で信頼性指標を算出するため レベル I LRFD 法による PSF 評価にもスムーズに繋げることができるという点でも有利である 提案評価法の破損確率算出にかかる計算時間は 従来法の 1/100 程度である これは等価応力振幅によって荷重の取扱いを簡明化したためであり 実用性が向上したといえる Fatigue analysis with uncertainties Loading Equivalent stress amplitude σ ESA Cycle number N Strength Stress factor F S Life factor F N Reliability analysis Level II AFOSM G NEW (σ ESA, N, F S, F N ) Probability of failure 図 2.4.3(4)- 144 提案評価法の手順 v) 破損確率評価結果の比較 まず 限界状態関数の妥当性を示すため との比較をレベル III MCS 法 での破損確率評価結果で行う ( 図 2.4.3(4)- 145)

413 10 0 Probability of failure Pf P f (G NEW,III, Proposed) P f (G 1, III, Proposed) Operating period (in years) 図 2.4.3(4)-145 レベル III MCS 法での限界状態関数と による破損確率評価結果の 比較 2 本のグラフはほぼ一致するため の妥当性が示された 次に 従来の信頼性評価法との比較を行う 従来法は 提案評価法と同様に流体温度 PSD を基に評価を行うが 応力の PSDを時刻歴に変換し それを RFC 法で波形分解することで応力振幅とサイクル数を算出するという点が提案評価法と異なる この過程が荷重の取扱いを煩雑にし 計算コストを高くしている レベル III MCS 法で従来法と提案評価法の評価の結果を比較し 同時にレベル II AFOSM 法での提案評価法の結果も比較した ( 図 2.4.3(4)-146)

414 10 0 Probability of failure Pf P f (G 2, III, Chihara) P f (G NEW, III, Proposed) P f (G NEW,II, Proposed) Operating period (in years) 図 2.4.3(4)- 146 従来法 ( レベル III) と提案評価法 ( レベル III, II) の破損確率評価結果の 比較 提案評価法のレベル III ( 緑線 ) と II ( 赤線 ) の結果の間には レベル II が近似的に破損確率を求めていることによる若干の差異がある レベル III 同士で提案評価法 ( 緑線 ) と従来法 ( 青線 ) の結果を比べると 大部分で提案評価法の方が保守的になっている これは 2.3 節で述べたのと同様に 従来法と提案評価法の波形分解法の違いによる差異であると考えられる この保守性の支配因子を明らかにし 差異を補正することが今後の課題である d) 結論等価応力振幅を提案することで配管熱疲労における荷重の取扱いを簡明にし それを用いた新しい限界状態関数を定義して配管熱疲労に対する信頼性評価法を提案した 提案評価法は荷重と強度の不確実性を考慮していながらも実用的な計算コストでの破損確率計算を可能にし 従来の信頼性評価法の課題を解決した したがって 提案評価法は配管熱疲労評価における信頼性評価の導入に寄与することが期待できる 参考文献 [1] Faidy, C., 2nd Int. conference on fatigue reactor components, 2002 [2] 日本機械学会, 配管の高サイクル熱疲労に関する評価指針, JSME S017, 2003 [3] Chihara, L., 東京大学工学系研究科修士論文, 2012 [4] Kimura, N., et al., NURETH-13, 2009 [5] Kasahara, N., et al., PVP -Vol , 2002 [6] Sakai, S., et al., PVP ,

415 (b) 熱疲労に関する破損確率評価法の高度化 熱疲労によるき裂進展及び破壊評価においては 荷重サイクル数が非常に大きくなる 一方で サイクル数の大きい ( 周期の短い ) 小さな温度揺らぎが生じても 応力変動は小 さく 結果として下限界応力拡大係数範囲 ( 以降 K th と呼ぶ ) 上回らない可能性がある 平成 23 年度に検討した破損確率評価法では K th を考慮できないため これを考慮できる ように評価法を高度化する a) 破損確率評価法の概要高サイクル熱疲労による配管破損は 主に高低温水合流部で温度が異なる二流体の混合や キャビティフローによる熱成層界面の変動によって発生する熱応力の交番によって発生する 配管破損に至るまでのシナリオは 以下のように想定される 熱応力が繰返し作用することにより 当該部位における疲労損傷( 疲れ累積係数 ) が蓄積される 疲労損傷が許容値を超えると 当該部位にき裂が発生する 熱応力の繰返しにより 発生したき裂が疲労により進展し き裂の貫通による内部流体の漏えい または配管破断が生じる 上記のシナリオに沿った破損確率は 図 2.4.3(4)-147 に示す評価フローに基づいて評価される 評価フローの各ステップの概要を以下に示す (ⅰ) 評価対象の選定 (STEP1) STEP1 では 評価対象配管の選定を行う 配管形状 ( 配管口径 肉厚 要素の種類等 ) 材料 流動 ( 流速 温度 低温等 ) の条件について明確にする (ⅱ) 熱応力と発生頻度の算出 (STEP2) 流体温度ゆらぎに対する応力の応答特性は ゆらぎの周波数特性に強く依存する ゆらぎの周波数が高いと流体温度の構造材への伝達割合は構造の応答遅れにより低下する 逆に周波数が低いと構造内の均熱化により温度が応力に変換されにくいため 結果として中間の周波数で熱応力が最大となる このような熱応力の周波数応答は 周波数伝達関数により表現できる 15 ここでは STEP1 で設定された条件に基づき 周波数伝達関数による熱応力を求め 対象とする評価部位で発生する熱応力とその発生頻度を算出する (ⅲ) き裂発生確率評価 (STEP3-1) き裂発生確率評価は モンテカルロ法で確率変数のばらつきを考慮したサンプルに対し 15 Kasahara,N., Takasho,H., and Yacumpai,A., Structural response function approach for evaluation of thermal striping phenomena, Nuc. Eng, Des., 212, (2002)

416 て疲労損傷評価を行い 疲労損傷係数がクライテリアを超えるサンプル数と全サンプル数 の割合からき裂発生確率を評価する ここでは 疲労損傷係数 D f (Uf) でき裂が発生す ると仮定する 評価の詳細については 後述の b) き裂発生確率評価 に示す (ⅳ) 初期き裂を仮定するときの条件付き破損確率評価 (STEP3-2) 初期き裂を仮定した場合の条件付き破損確率評価は モンテカルロ法で確率変数のばらつきを考慮しながら疲労き裂進展評価を行い 全サンプル数に対する破損サンプル数の比率から破損確率を評価する 評価の詳細については 後述の c) 初期き裂を仮定するときの条件付き破損確率評価 に示すが 今年度の検討では き裂進展評価において小さな温度変動に対する下限界応力拡大係数を考慮することで 微小な温度変動に対するき裂伝播の停止を考慮する (ⅴ) 高サイクル熱疲労による破損確率の算出 (STEP4) 高サイクル熱疲労による運転開始 i 年目の累積漏えい確率 P ( i) および累積破断確率 Pbreak ( i) は 以下の式を用いて評価する i P ( i) P ( i) P ( i j 1) (2.4.3(4)-36) leak init leak init j 1 i P ( i) P ( i) P ( i j 1) (2.4.3(4)-37) break init break init j 1 ここで Pinit ( i ): 運転開始 i 年目のき裂発生確率 ( 式 (2.4.3(4)-44) より計算 ) Pleak init ( i ): 運転開始 i 年目の累積漏えい確率 ( 式 (2.4.3(4)-47) より計算 ) Pbreak init ( i ): 運転開始 i 年目の累積破損確率 ( 式 (2.4.3(4)-48) より計算 ) leak b) き裂発生確率評価き裂発生確率評価は 歪ベースの疲労損傷評価法が整備されている 高速増殖炉高温構造設計方針 ( 案 ) 16 に基づき設定する 温度揺らぎによって生じる疲労損傷評価では 回数は少ないが大きな温度変動幅を持つ場合が想定され 結果として塑性領域を考慮した疲労評価が求められる そこで 本評価手法は 弾塑性場における機器の破損確率評価に適用可能とするため 高速増殖炉高温構造設計方針 ( 案 ) を用いることとした き裂発生確率評価のフローチャートを図 2.4.3(4)-148 に示す 評価フローの各ステップの詳細は以下のとおりである (ⅰ) 確率変数のサンプリング ばらつきを考慮する確率変数に対して乱数を発生させ その確率変数に対して仮定する 16 日本原子力発電株式会社, 高速増殖炉高温構造設計方針 ( 案 )

417 確率分布や平均値 標準偏差等のパラメータに基づき 値のサンプリングを行う (ⅱ) ピーク熱ひずみ範囲 F の算出 ピーク熱ひずみ範囲 F の評価式を以下に示す F ここで z Q p R E Q p: 二次ピーク応力 [MPa] R : 応力に関する負荷サイクル中の応力強さ範囲 [MPa] E : 使用温度に対する縦弾性係数 [MPa] (2.4.3(4)-38) (ⅲ) 公称ひずみ範囲 n の算出 公称ひずみ範囲 n の評価式を以下に示す ここで S n n (2.4.3(4)-39) E S n: 時点 1 及び時点 2を2つの極値とするとき 次式の値 [N/mm 2 ] Sn Qm Q b R Q : 二次膜応力 [MPa] m Q : 二次曲げ応力 [MPa] b (ⅳ) 公称ひずみ範囲に関するひずみ集中係数 K の算出 公称ひずみ範囲に関するひずみ集中係数 K の評価式を以下に示す ここで * S 2 K K e K (2.4.3(4)-40) S * S : 次式の値 S * EK e n ( K e n 3S m E のとき ) * S 3S m ( K e n 3S m E S のとき ) S : 次式の値 S KK E e n ( 3S KK m e n E のとき ) S S ( KK 3 m e n 3S m E S のとき )

418 K : 一次 + 二次応力に関する応力集中係数 E : 使用温度に対する縦弾性係数 [MPa] K e : 弾性追従によるひずみ集中係数で次式により求める K e 1 ( q 1) 1 q n : 弾性追従係数 n 3S E m n ( K e 1) (ⅴ) 相当ひずみ範囲 t の算出 相当ひずみ範囲 t の評価式を以下に示す ここで t K f K n K T F (2.4.3(4)-41) K f : 相当ひずみ範囲に乗じる係数 ( 溶接部の評価で考慮する ) K : 公称ひずみ範囲に関するひずみ集中係数 n : 公称ひずみ範囲 [mm/mm] K : ピーク熱ひずみに関する弾性応力集中係数 T ( 局部構造不連続に対して設計者が適切に定める ) F : ピーク熱ひずみ範囲 [mm/mm] (ⅵ) 破損繰返し数 N f の算出 SUS304 の破損繰返し数 N f の評価式を以下に示す log 1 10 N f log10 t 2 log10 t 3 log10 t A A A A (2.4.3(4)-42) ここで T : 温度 [ ] : ひずみ速度 [mm/mm/sec] t : 全ひずみ範囲 [mm/mm] N : 破損繰返し数 [ 回 ] 0 f A = A = T A = A = R 3 log T R 5 R (ⅶ) 疲労損傷係数 D f の算出

419 疲労損傷係数 D f の評価式を以下に示す F Df dt N ここで i f F : ひずみサイクルの繰返し数 [ 回 / 年 ] N f : 破損繰返し数 [ 回 ] dt : 運転年数 [ 年 ] (2.4.3(4)-43) (ⅷ) き裂発生判定 疲労損傷係数 D f が 1.0 以上となるときに き裂が発生したと判定する (ⅸ) き裂発生確率評価 き裂発生確率 Pinit は以下の式から算出する ninit Pinit N ここで total n init: き裂が発生したサンプル数 N : 全サンプル数 total (2.4.3(4)-44) c) 初期き裂を仮定するときの条件付き破損確率評価初期き裂を仮定するときの条件付き破損確率評価のフローチャートを図 2.4.3(4)-149 に 17 示す 疲労によるき裂進展評価法は JSME 維持規格に基づき設定した 評価フローの各ステップの詳細を以下に示す (ⅰ) 確率変数のサンプリング ばらつきを考慮する確率変数に対して仮定する確率分布や平均値 標準偏差等のパラメ ータに基づき 乱数を発生させて値のサンプリングを行う (ⅱ) 供用期間中検査の実施供用期間中検査を考慮する場合には き裂の検出確率や測定誤差等を考慮した検査が実施され 検査結果に基づき補修 取替の要否が判断される ただし 今回の試計算では保守的に ISIは実施されないものとして評価を行う (ⅲ) き裂進展評価 き裂進展評価は維持規格のき裂進展速度評価式に基づいて行う この検討では 以下に 17 社団法人日本機械学会, 発電用原子力設備規格維持規格 (2008 年版 ),2008 年 10 月

420 示すオーステナイト系ステンレス鋼の BWR 環境中の疲労き裂進展式を用いる da dn ここで tr K R ( ) /(1 ) da / dn :1 サイクルあたりのき裂進展量 [m/cycle] t r: 負荷上昇時間 [sec] t 1( t 1の場合 ) t r r 1000 r max ( r t が定義できない場合 ) K K K ( R 0の場合 ) max min K K ( R 0の場合 ) K max: 最大応力拡大係数 [MPa m] K : 最小応力拡大係数 [MPa m] min R : 応力比 ( K min / K max ) (2.4.3(4)-45) (ⅳ) 漏えい 破断判定 不安定破壊判定は 次式のように 一次曲げ応力 Pb が許容曲げ応力 Scを超えた場合に破 断とする Pb ' は塑性崩壊時の曲げ応力 P e は熱膨張応力 P m は一次一般膜応力 Z はZ 係数 ( 割増係数 ) である Pb ' 1 S P P 1 P Z Z c e m b (2.4.3(4)-46) ここで 1 P 2 m f a t のとき 1 2 a t P m f ' 2 b P f 2sin a sin t 1 P 2 m ' 2 b P f 1 a / t P m f 2 a / t f a 2 sin t a t のとき : き裂角度 ( 半角 )[rad] : 中立軸の角度 ( 半角 )[rad] a: き裂深さ [mm] t: 板厚 [mm]

421 f : 流動応力 [MPa] き裂深さ aが配管肉厚 tよりも大きいサンプル ( すなわち a / t 1.0) については 漏えい と判定する (ⅴ) 初期き裂を仮定するときの条件付き破損確率 初期き裂を仮定するときの条件付き漏えい確率 Pleak init および条件付き破断確率 P break init は以下の式から算出する nleak Pleak init N P ここで break init n leak n N break total n N total break total : 漏えいが発生したサンプル数 : 破断が発生したサンプル数 : 全サンプル数 (2.4.3(4)-47) (2.4.3(4)-48) (c) 熱疲労によるき裂の発生と進展に対する影響因子の整理温度揺らぎが生じる配管破損がプラント安全に及ぼす影響を考慮して 主要パラメータに対する影響を評価する a) パラメータの整理主要パラメータを整理するために温度揺らぎが配管の健全性に及ぼす影響を整理する 温度揺らぎの代表的要因に キャビティフローによる熱成層化界面の変動やミキシングティの下流部における温度揺らぎがある これらの温度揺らぎが構造物の温度応答に及ぼす影響を図 2.4.3(4)-150 に示す キャビティフローによる熱成層化のように温度変動がゆっくりで温度差が大きい場合 構造物の温度応答振幅も大きくゆっくりとしたものとなり 深さ方向全体が応答する 一方 ミキシングティの下流部における温度揺らぎのように速い温度揺らぎの場合 構造物の温度応答も表面に限られ その変動幅も大きい 温度揺らぎの要因と発生き裂の特徴を図 2.4.3(4)-151 に示す キャビティフローによる熱成層化のように周方向全体が温度変動の影響を受ける場合 疲労き裂は配管内面の全周に発生した後合体し 深く進展した場合は配管破断が生じる可能性が高い 一方 ミキシングティの下流部における温度揺らぎの周方向の幅が限定される場合 き裂は周方向に局所的に発生するため 仮に大きな進展が生じても配管は部分貫通するだけで破断に至らない可能性が高い プラント安全に及ぼす影響としてこれらの事象を比較すると 前者のほ

422 うの影響が大きいことは自明である 温度揺らぎ成分と発生応力の特徴を図 2.4.3(4)-152 に示す 大きくゆっくりとした温度変動で発生する応力は 板厚内全体に及ぶため曲げ応力成分が大きくなり 表面近傍に発生するピーク応力は比較的小さくなる このような応力分布ではき裂が深く進展する可能性が高い 一方 周期の短い小さな温度変動による応力は 温度伝播が表面近傍に限られるため応力成分としてはピーク応力が主体で曲げ応力は小さい このような応力によるき裂進展はピーク応力が大きい配管表面近傍に限られ 深さ方向に進展する可能性は上述の曲げ応力が大きい場合に比べて小さい また 応力変動による応力拡大係数とき裂進展の関係を図 2.4.3(4)-に示す 曲げ応力が大きい場合のようにき裂が深い領域まで応力拡大係数が大きくなる場合は 応力拡大係数範囲が下限界応力拡大係数範囲を下回ることはなく き裂は荷重サイクルとともに進展する 一方 ピーク応力が主体の場合 応力変動が表面近傍に限定されるためき裂が進展すると応力が開放されてしまうため 応力拡大係数範囲がき裂進展とともに低下し 条件によっては応力拡大係数範囲が下限界応力拡大係数範囲を下回りき裂の伝播が停止する可能性もある これらのことから き裂の貫通により内部流体の喪失に至るというプラント安全影響を及ぼす可能性は 曲げ応力成分が大きい前者のような応力分布のほうが高いと言える 疲労き裂進展機構は き裂先端の塑性すべりの繰返しで生じる したがってき裂を進展させるには き裂先端に塑性すべりを生じさせるエネルギーの供給が必要である き裂が進展し貫通するのに必要なエネルギーは 管が厚いほど大きなエネルギーを供給しなければならない 一方 管を貫通するような大きな温度変動が管に与えられる場合 温度揺らぎによって発生する応力は管が厚いほど大きく 結果としてき裂によるき裂貫通 または破壊の確率と管厚さの関係は図 2.4.3(4)-154 に示すように明確でない b) き裂発生確率評価上述の (a) 熱疲労に関する破損確率評価法の高度化 b) き裂発生確率評価 の評価手法に基づき 高サイクル熱疲労によるき裂発生確率評価を行った 評価条件を表 2.4.3(4)-147 に示す 配管の材料は SUS304 とし 主配管の外径は 150mm 枝管の外径は 50mm とした 高低温水の温度差は 150 と 75 および配管の高サイクル熱疲労に関する評価指針 18 において構造物の疲労限相当の温度差に対応する 35 の 3ケースについて主配管におけるき裂発生確率評価を行った 評価時間は 40 年とし ここでは運転効率 ( 定期検査等による運転停止期間 ) は考慮しない 発生応力と発生頻度は図 2.4.3(4)-155 に示すように 150 のケースでは最大で 395MPa の曲げ応力 ( レンジ ) が 1.1 回 / 年程度 最小で 5MPa の曲げ応力が 回 / 年程度の頻度で発生すると仮定し 発生応力や発生頻度のばらつきは考慮しないものとした これに対し 高低温水の温度差が 75 や 35 のケースでは 同じ発生頻度に対して応力の大きさのみを温度差の比で補正した 破損繰返し数 Nf 18 社団法人日本機械学会, 配管の高サイクル熱疲労に関する評価指針, 2003 年 11 月

423 については 最適疲労曲線から得られる破損繰返し数に対してばらつきを考慮した 破損繰返し数の確率分布の分布型を対数正規分布とし 中央値を 1.0 対数標準偏差を 0.47と仮定した 評価結果を図 2.4.3(4)-156 に示す 温度差が疲労限相当の 35 の Case3 では 40 年目の累積き裂発生確率は となり 工学的にはき裂が発生し得ないことが分かる 温度差が 75 の Case2 では 40 年目の累積き裂発生確率は であるのに対し 温度差が 150 の Case1 では とき裂発生確率が大きく上昇する 高サイクル熱疲労では 熱過渡による応力の変動回数が非常に大きいため通常は疲労限に近い領域で破損が生じる しかし 温度差 すなわち発生応力が大きくなると破壊挙動は低サイクル疲労側にシフトし 結果として疲労損傷係数が急激に増大し 破損確率が急激に大きくなる これは疲労線図の特徴がそのまま現れる現象と考えられ き裂発生確率を抑えるには温度差 ( 発生応力 ) を抑制することが肝要であることを示唆する c) 破損確率評価上述の (a) 熱疲労に関する破損確率評価法の高度化 c) 初期き裂を仮定するときの条件付き破損確率評価 の評価手法に基づき 高サイクル熱疲労による破損確率評価を行った 評価条件および評価ケースを表 2.4.3(4)-148 に示す 配管形状や荷重条件は 上述のき裂発生確率評価と同一である き裂進展では 応力拡大係数は負となる場合は0と扱うため 荷重条件としては完全両振りの場合と完全片振りの場合を想定する 疲労き裂進展式は式 (2.4.3(4)-10) に示す オーステナイト系ステンレス鋼の BWR 環境中の疲労き裂進展式 を用い 疲労き裂進展式の係数については 維持規格の疲労き裂進展式データから推定されるき裂進展速度のばらつきを考慮した 疲労き裂進展式の係数の確率分布の分布型は対数正規分布 中央値は 対数標準偏差は 0.54 とした 高 - 低温水の温度差と条件付き破損確率の関係を図 2.4.3(4)-157 に示す このケースは 初期き裂深さを 0.01mm 初期き裂長さを 0.02mm とし 完全両振り ( 応力比 :R=-1) の場合である このように非常に小さなき裂を想定した場合であっても 温度差が 150 と 75 の場合は 40 年後の破損確率は 1.0 となり 欠陥が存在した場合にはすべて貫通し 破損確率が急激に大きくなることから 検査を実施したとしても有効ではないことがわかる 一方 温度差が 35 の場合は となって 仮に温度揺らぎが発生する部位に製造欠陥のような初期欠陥が存在したと仮定しても 供用期間中検査で破損を防止することも可能である これらの結果から バウンダリ破損を防止するためには温度揺らぎ幅を小さく抑えることと 供用期間中検査の実施が重要であることがわかる 図 2.4.3(4)-156 に示したき裂発生確率と図 2.4.3(4)-157 に示した条件付き破損確率を重ねることで 高サイクル熱疲労による破損確率を算出することができる その結果を図 2.4.3(4)-158に示す 図 2.4.3(4)-157に示した条件付き破損確率が 1に近い値となるため 高サイクル熱疲労による破損確率は 殆ど図 2.4.3(4)-に示したき裂発生確率に律速され

424 温度差が 75 と 35 のケースでは 破損確率は工学的には 0 と見做すことができるレベルである ただし 温度差が 75 の場合は 図 2.4.3(4)-157 に示したようにき裂が存在すれば進展し破損に至る確率が非常に高いため 溶接不良のような欠陥を起点とした破損リスクは高く 管理対象とすべきである 一方 温度差が 150 の場合は き裂進展に余裕はなくき裂が発生すれば直ぐに破損してしまうため破損リスクが高く 運転中管理で破損を防止することは困難であり 要因を排除 ( 温度差を小さく ) する必要がある d) パラメータの影響評価高サイクル熱疲労がプラント安全に及ぼす影響や有効な検査や予防保全対策を把握するため 主要なパラメータが破損確率や破損モードに及ぼす影響を評価した (ⅰ) 応力比の影響高サイクル熱疲労が作用する部位では 熱膨張や内圧により平均応力が作用する 平均応力の影響は応力拡大係数範囲に対して応力比として考慮される ここでは 図 2.4.3(4)-157 に示した初期き裂深さを 0.01mm 初期き裂長さを 0.02mm 温度差を 35 とする場合について 完全両振り ( 応力比 :R=-1) と完全片振り (R=0) を仮定して破損確率の差を求めた 両ケースの破損確率を図 2.4.3(4)-に示す 図に示すように 応力比が大きいほど破損確率は大きくなる傾向が見られる これは 応力比が大きいほど応力拡大係数範囲も大きくなることと 応力比が大きくなるほどき裂進展速度 ( 式 (2.4.3(4)-45) 参照 ) も大きくなるためである このように 応力比が破損確率に及ぼす影響が大きいことから 評価上は平均応力を適切に評価することが重要であり 予防保全としては見かけ上の応力比が小さくなるような応力改善 ( 内容面に圧縮応力を残留させる熱処理やピーニング処理など ) が有効である (ⅱ) 温度変動成分の影響温度揺らぎによって発生する応力は図 2.4.3(4)-155 のように応力振幅が小さく頻度の高いものから応力振幅が大きく頻度の低いものまで幅広く分布する 応力成分のうち破損に有効な成分を把握するため 図 2.4.3(4)-155 をヒストグラム化して個々に作用させた場合の破損確率を求めた その結果を図 2.4.3(4)-160 に示す 図の横軸は曲げ応力レンジで示しているが 図 2.4.3(4)-155 に示したようにこの曲げ応力の発生頻度に対応したピーク応力も同時に考慮している 図に示すように 破損確率は応力成分に対して上に凸の傾向を示し 応力振幅が小さく頻度の高い成分や応力振幅が大きく頻度の低い成分は破損確率に影響が小さく 中程度の応力振幅と頻度の成分の影響が高いことがわかる この要因としては 応力振幅が小さい場合は応力拡大係数範囲が小さく 1 サイクルあたりのき裂進展量が小さいこと 応力振幅が大きい場合は応力拡大係数範囲が大きくてもサイクル数が少なくき裂進展量が小さいことと推定される 破壊評価の観点では 熱解析において小さな温度変動成分や極端に長い周期の温度変動成分を詳細に評価する必要がないことが示唆され

425 る (ⅲ) 下限界応力拡大係数の影響 疲労に疲労限が存在するように 疲労き裂進展では応力拡大係数範囲がある値以下では 進展が停止する下限界応力拡大係数範囲が存在する 高サイクル熱疲労のように流体と接 する配管内表面だけが温度応答するような場合は 下限界応力拡大係数範囲が設定できれ ば き裂が停留して破損しない場合も想定される そこで 下限界応力拡大係数範囲を 2 から 10 MPa m の範囲で振り 初期欠陥 ( アスペクト比 a / c 1.0) の深さを mm とした場合の破損確率を求めた その結果を図 2.4.3(4)-161 から図 2.4.3(4)-164 に示 す なお 初期き裂深さが 0.1mm の場合はすべてのケースで破壊確率が 0 であるため 結果の表示を割愛する これまでの実験に基づくと 下限界応力拡大係数範囲は 5 MPa 以下と予想される 熱膨張や内圧などによる平均応力が大きい場合 ( 例えば R=0 の場合 ) 疲労による発生き裂の深さが 1 mm 程度となると 現実的な下限界応力拡大係数範囲では き裂の進展は止まらず 条件付き破損確率は 1 となる つまり き裂が発生すれば貫通す ることとなる 一方 平均応力が小さい場合 ( 例えば R=-1 の場合 ) 疲労による発生き 裂の深さが 1 mm であっても下限界応力拡大係数が 6 MPa m m の場合はき裂が停止し 破 損確率は 0 となる 疲労による発生き裂の深さが 0.5 mm の場合は 下限界応力拡大係数 が 4 MPa m の場合はき裂が停止し 破損確率は 0 となる これらの結果は き裂の伝播 を停止させることを目的とした配管内表面の残留応力を負とする ( 応力比を小さくする ) 予防保全が有効であることを示唆する また 初期き裂深さが 0.5 mm と 1 mm では破損 確率が 0 となる下限界応力拡大係数に大きな差がある このように き裂の貫通を 発生 と 進展 に分けた場合 どの程度の深さまで温度揺らぎの影響を受け 疲労によるき裂が 発生するかも重要なファクターであることがわかる (ⅳ) ピーク応力の分布の影響図 2.4.3(4)-152 に示したように 温度揺らぎ成分によって曲げ応力成分が大きい場合やピーク応力が大きい場合が想定される 一方 図 2.4.3(4)-155 に示したピーク応力成分は 線形化処理された曲げ応力成分から表面近傍のみで乖離するのか 表面から深く入ったとこで乖離するのか不明である そこで 図 2.4.3(4)-155 に示したピーク応力成分の侵入深さ ( 線形化処理された曲げ応力成分から乖離する位置 ) を配管内表面から 1/4t 1/2t 3/4t (t は管厚さ ) と仮定した場合の破壊確率を求め ピーク応力が破損確率に及ぼす影響を評価する 結果を図 2.4.3(4)-165 に示す 図に示すように ピーク応力成分の侵入深さを変えても破損確率に及ぼす影響は極めて小さい これは ピーク応力と同時に作用している曲げ応力が破損確率を支配するためであると考えられる 図 2.4.3(4)-165 は曲げ応力とピーク応力が同時に作用した場合の解析結果であるが 応力成分の影響を直接的に把握するため 膜応力 ( m ) 曲げ応力( b ) ピーク応力( p ) のみが作用した場合の破損確率を求め図 2.4.3(4)-166 に示す ここでもピーク応力の侵入深さは 1/4t から 3/4t

426 までパラメータとした それぞれの応力レンジは 100 MPa 荷重負荷サイクルは 100 回 / 年とした 図に示すように膜応力と曲げ応力が作用した場合の破損確率は同程度である これに対して ピーク応力が作用した場合の破損確率は 侵入深さが板厚の 3/4 の場合でも膜応力が作用した場合の 2 桁程度低く 侵入深さが板厚の 1/4 の場合は 4 桁程度低くなる このように ピーク応力は他の応力成分に比べて破損に及ぼす影響が小さく 大きなピーク応力が発生する場合は 大きな曲げ応力も伴うのが一般的であることを考えると 破損に及ぼす影響は小さく は破損の観点からみれば 大きな曲げ応力を抑制することが重要であると言える (ⅴ) 周方向の温度揺らぎ範囲が破損モードに及ぼす影響図 2.4.3(4)-151 に示したように温度揺らぎを受ける領域の広がりによって 破損モードが破断する場合と漏えいで済む場合が想定される 原子力発電プラントは冷却材喪失を防止するため漏えい検知システムが設けられている また 微小漏えいに対しては補給水システムや日常点検などによる検出が可能となっている したがって 急速な破断が生じなければ 安全に炉停止状態に移行することができる このため 破損モードとしては破断に比べて漏えいで済むほうが安全上有利であることは自明である そこで 熱影響範囲 ( 初期き裂長さ ) と破損モードの関係を求めた その結果を図 2.4.3(4)-167 に示す ここで 熱影響範囲 ( 初期き裂長さ ) を a/c=1 から 2 = まで振った 図に示すように 初期き裂長さが 180 までは破損形態は漏えいである したがって ミキシングティのように配管の周方向の一部が温度揺らぎの影響を受ける場合であれば 配管は破断することなく漏えいで済む確率が極めて高い 一方 キャビティフローのように管の周方向全体が疲労損傷を受ける場合の破損モードは破断になる確率が高く 安全上注意を要する (ⅵ) 管口径の影響一般に 管厚さは配管口径に比例して増加する 管厚さが大きい場合 き裂進展に要する時間も長くなるので 管口径を一定として半径板厚比 (R/t) を変化させた場合と管口径が破損確率に及ぼす影響を求めた その結果を図 2.4.3(4)-168 及び図 2.4.3(4)-169に示す 図 2.4.3(4)-168 は R/t の影響評価結果 図 2.4.3(4)-169 は管口径の影響評価結果である これらから R/t や管口径は破損確率にほとんど影響しないことがわかる この原因は 今回の評価では 荷重条件として図 2.4.3(4)-155 に示す応力を直接用いていることが挙げられる 実際の配管に発生する応力は 温度揺らぎを原因として発生するため 入力されるエネルギーが一定であれば 管厚さが厚いほど 管口径が大きいほど小さくなる しかし 応力を一定とするならば 温度揺らぎとして管に入力されるエネルギーは管厚さや管口径が大きいほど大きくなっていることとなる 応力を一定とすると き裂深さ a/t やアスペクト比 a/c に対する応力拡大係数やき裂進展挙動に差が現れなくなり 結果として破

427 損確率も同等の値となる この結果から 温度揺らぎに伴う高サイクル疲労や破損を適切 に取り扱うには 温度揺らぎによって生じる応力を管形状に応じて求めることが重要であ ることがわかる まとめ上記の検討により 破損に対して以下のパラメータが有意であると分かった 温度揺らぎ幅と温度変動深さ 平均応力( 応力比 R) 下限界応力拡大係数 Kth 応力成分のうち 板厚内の大きな温度変動に起因する曲げ応力また 以下のパラメータについては影響が小さきことがわかった 小さな温度揺らぎに起因するピーク応力 配管口径 板厚( ただし 作用応力が同じである場合 ) 今後は プラント安全評価の入力としての表現方法を含めた 破損モードと発生確率の関係の定式化が課題となる

428 表 2.4.3(4)-147 き裂発生確率評価の評価条件 項目 値 備考 配管材料 SUS304 主配管の外径 150 mm 主配管の肉厚 18.2 mm 枝管の外径 50 mm 温度 330 高 - 低温水の温度差 150 or 75 or 35 3 ケースについて感度解析 応力レンジと発生頻度 150 ( 図 2.4.3(4)-155) の場合は 150 の応力を 1/2 7/30した 破損繰返し 数 Nf 分布型 対数正規分布 中央値 1.0 対数標準偏差 0.47 高速増殖炉高温構造設計 方針 ( 案 ) 参照

429 表 2.4.3(4)-148 初期き裂を仮定するときの条件付き破損確率評価の評価条件 項目 値 備考 配管材料 SUS304 主配管の外径 150 mm 主配管の肉厚 18.2 mm 枝管の外径 50 mm 温度 330 高 - 低温水の温度差 150 or 75 or 35 3 ケースについて感度解析 初期き裂形状 深さ 0.01mm/ 長さ 0.02mm 深さ 0.50mm/ 長さ 1.00mm 深さ 1.00mm/ 長さ 2.00mm 3 ケースについて感度解析 の場合は 150 応力レンジと発生頻度 150 ( 図 2.4.3(4)-155) の応力を 1/2 7/30した 応力レンジは 完全両振りと完全片振りの場合を想定する 疲労き裂進展式 オーステナイト系ステンレス鋼のBWR 環境中の疲労き裂進展式 式 (2.4.3(4)-45) 参照 疲労き裂 分布型 対数正規分布 維持規格の疲労き裂進展式 進展式の 中央値 データから対数標準偏差を 係数 対数標準偏差 0.54 推定 最高使用圧力を 7.0 MPaとし不安定破一次膜応力 MPa て薄肉円筒の式より算出壊評価一次管曲げ応力 5.0 MPa 自重を想定荷重条件二次管曲げ応力 10.0 MPa 熱膨張応力を想定

430 STEP1. 評価対象の選定 ex.高低温水合流部や閉塞分岐停留部 STEP2. 熱応力と発生頻度の算出 STEP3-2. 初期き裂を仮定するときの STEP3-1. き裂発生確率評価 条件付き破損確率評価 STEP4. 高サイクル熱疲労による 破損確率の算出 図 2.4.3(4)-147 高サイクル熱疲労による破損確率評価フロー

431 図 2.4.3(4)-148 き裂発生確率評価フロー

432 START STEP1. 確率変数のサンプリング STEP2. ISI の実施 No STEP3. き裂進展評価 STEP4. 漏えい 破断判定 次の時間ステップへ 評価年数終了? No 最終サンプル? Yes STEP5. 破損確率評価 END 図 2.4.3(4)-149 初期き裂を仮定するときの条件付き破損確率評価フロー

433 低周期 大きな温度変動 高温 温度 熱成層化 低温 キャビティフロー 時間 温度揺らぎ 高温 温度 高周期 小さな温度変動 低温 ミキシングティ 時間 図 2.4.3(4)-150 温度揺らぎの要因と構造物の温度応答の特徴 全周き裂が発生 熱成層化 高温 低温 配管破断の可能性大 キャビティフロー 高温 局所的なき裂が発生 温度揺らぎ 低温 ミキシングティ 漏えいしても破断はしない 図 2.4.3(4)-151 温度揺らぎの要因と発生き裂の特徴

434 温度 低周期 大きな温度変動 曲げ応力 : 大ピーク応力 : 小 温度 時間 高周期 小さな温度変動 板厚内応力分布 曲げ応力 : 小ピーク応力 : 大 時間 図 2.4.3(4)-152 温度揺らぎ成分と発生応力の特徴 曲げ応力 : 大ピーク応力 : 小 K 熱荷重サイクルに応じて進展 Kth 板厚内応力分布 き裂深さ 曲げ応力 : 小ピーク応力 : 大 K K K < Kth: き裂進展 Kth: き裂停留 Kth き裂深さ 図 2.4.3(4)-153 温度揺らぎによる発生応力とき裂進展中の応力拡大係数範囲の関係

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