詳細リスク評価書 フタル酸ジ (2- エチルヘキシル ) 2005 年 3 月 産業技術総合研究所 化学物質リスク管理研究センター

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1 詳細リスク評価書 フタル酸ジ (2 エチルヘキシル ) 2005 年 3 月 産業技術総合研究所 化学物質リスク管理研究センター

2 詳細リスク評価書 フタル酸ジ (2 エチルヘキシル ) 詳細リスク評価担当者 本評価書の作成は以下の者が担当した リスク解析研究チーム吉田喜久雄蒲生吉弘神子尚子手口直美 生態リスク解析チーム内藤航小山田花子 2005 年 3 月

3 目 次 頁要約 1 1. はじめに 1 2.DEHP の環境への排出と排出量 事業所からの環境排出 使用中および廃棄後の塩ビ製品からの環境排出 DEHP の大気排出量 DEHP の水域への排出量 4 3. 環境動態の推定 大気中に排出された DEHP の動態 水域に排出された DEHP の動態 5 4. ヒト健康リスク DEHP 摂取量 京浜地区一般住民の主要暴露経路の推定 有害性評価と用量 反応評価 リスクの判定 排出削減対策の費用対効果 ヒト健康リスク評価のまとめ 生態リスク 暴露濃度と高濃度地点について 環境中の生物への有害性 生態リスク評価のまとめ 17 第 Ⅰ 章序論 はじめに 歴史的 国際的動向 化学物質の同定情報 物理化学的性状 水溶解度について 現在のわが国における法規制等 本評価書の構成 31 第 Ⅱ 章既存の有害性およびリスク評価結果 はじめに 評価の範囲 有害性評価のエンドポイント ( 影響指標 ) ヒト健康影響 生態影響 暴露の指標 ヒト 生態系 リスク判定の指標 ヒト健康リスク 生態リスク 評価結果 ヒト健康リスク 48 i

4 6.2 生態リスク 48 第 Ⅲ 章発生源の特定と環境排出量の推計 はじめに 生産量と用途 60 3.DEHP の製造 製品への加工段階における排出量 届出対象事業所からの排出量 地域別排出量 業種別排出量 届出対象外事業所からの推計排出量 地域別排出量 業種別排出量 事業所からの排出量のまとめ 使用中および廃棄後の DEHP 含有製品からの排出量推計 用途別 DEHP 含有製品使用量および廃棄量の推計 耐用年数と寿命関数 DEHP 含有製品の廃棄後の処理 再生処理 軟質塩ビ製品中 DEHP の環境排出量の推定 大気への排出量推定 面積基準の排出係数推定 軟質塩ビ製品の屋外使用比率 製品用途分類別 DEHP 排出量の推定 使用中の軟質塩ビ製品からの地域別 DEHP 大気排出量 水域への排出量推計 屋外用途 屋内用途 公共用水域への排出量推定 廃棄後の DEHP 含有製品からの環境排出量推計 再生処理工程における環境排出量推定 最終処分場からの環境排出量推計 大気 水域 下水汚泥の農地還元 DEHP の全ライフサイクルにおける環境中への排出量 105 第 Ⅳ 章モニタリング結果の概要 はじめに 分析方法 大気 水質 底質 生物 食品 GC/MS 条件 コンタミネーション防止 環境中濃度 データ収集 データ処理 112 ii

5 3.3 大気 水質 底質 土壌 下水処理場 処分場 事業場 生物 食物および水道水中濃度 食物 水道水 既存データに基づく DEHP 摂取量の推計 摂取量推計 日本食品分析センターの調査結果に基づく摂取量 乳幼児の摂取量 尿中代謝物濃度からの DEHP 摂取量推定 摂取量推計結果に対する考察 ヒト健康リスク評価に使用する摂取量 150 第 Ⅴ 章環境動態 はじめに 環境動態の推定に用いたパラメータ 物性値 分配平衡パラメータ 気 / 液分配係数 有機炭素吸着定数 分解パラメータ 大気中での分解 土壌中での分解 水中での分解 非生物的分解 微生物分解 底質中での分解 環境媒体中での動態 大気中での動態 浮遊粒子への吸着 沈着 移流 大気中濃度 土壌中での動態 土壌中での分配 揮発 溶脱と流出 浸食 巻上 土壌中濃度 水環境中での動態 水環境中での分配 揮発 169 iii

6 3.3.3 水相 / 底質相間の拡散交換 移流 沈降と巻上 水環境中濃度 摂食媒体への移行 植物 肉, 乳製品 魚介類 環境動態と暴露経路に関するまとめ 178 第 Ⅵ 章暴露解析 はじめに 大気への DEHP 排出量分布の推計 km 5 km メッシュ別 DEHP 排出量の推計方法 メッシュ別大気排出量の推計結果 ADMER による大気中 DEHP 濃度分布の推計 計算パラメータ 計算結果および分布図 大気中濃度推計の妥当性の検討 食品経由の DEHP 摂取量の推計 農作物経由の DEHP 摂取量の推計 農作物中 DEHP 濃度の推計 濃度推計の妥当性の検討 京浜地区一般住民の農作物経由の DEHP 摂取量推計 畜産物経由の DEHP 摂取量の推計 飼料作物中 DEHP 濃度の推計 畜産物中 DEHP 濃度の推計 畜産物濃度推計の妥当性の検討 畜産物経由の DEHP 摂取量の推計 水産物経由の DEHP 摂取量の推計 魚介類中 DEHP 濃度の推計 水産物経由の DEHP 摂取量の推計 DEHP 摂取量の推計のまとめ 多摩川における DEHP の負荷量と濃度分布推定 多摩川流域における DEHP 負荷発生源の特定 家庭排水 屋外用途製品 事業所排水 大気沈着 廃棄物最終処分場 各発生源からの寄与 AISTSHANEL による多摩川河川水中 DEHP 濃度分布の推定 AISTSHANEL の概要 DEHP 入力パラメータ DEHP 負荷量データ 負荷量入力データと計算年度 AISTSHANEL による多摩川河川水中 DEHP 濃度分布推定結果 河川水中 DEHP 濃度の季節変動と予測濃度の検証 236 iv

7 5.3 DEHP 負荷量と濃度分布推定のまとめ 236 第 Ⅶ 章有害性の確認と用量 反応関係 238 ヒト健康 はじめに 体内動態 経口暴露 吸入暴露 経皮暴露 生理学的薬物動力学モデルによる体内動態推定 尿中代謝物濃度からの DEHP 摂取量推定 有害性情報 ヒトへの健康影響 実験動物での毒性 反復投与毒性 発生 生殖毒性 遺伝毒性 発がん性 その他の影響 ( 内分泌系への影響 ) 毒性のメカニズム 精巣毒性 肝毒性 生殖 発生毒性 エンドポイントの選択 用量 反応関係 精巣毒性 生殖毒性 精巣毒性に対する感受性の個人差と種間差 感受性の種間差 感受性の個人差 生殖毒性に対する感受性の個人差と種間差 感受性の種間差 感受性の個人差 まとめ 270 生態 はじめに データの信頼性 生態影響 水生生物に対する毒性 魚類 水生無脊椎動物 藻類および水生植物 両生類 ( 底質経由暴露 ) 微生物 陸生生物に対する毒性 内分泌系への影響 水生生物への濃縮と蓄積 魚類 285 v

8 3.4.2 無脊椎動物 模擬生態系試験 環境中の生物への影響 ( まとめ ) 288 第 Ⅷ 章リスクの判定 302 ヒト健康 はじめに ヒトの健康に係るリスク 精巣毒性 生殖毒性 ヒト健康リスクに係る考察 307 生態 はじめに 評価のエンドポイントと方法 評価のエンドポイント 評価の方法 暴露濃度の特定 NOEC の特定 MOE 算出結果 水質における MOE の算出 底質における MOE の算出 考察 溶存態と粒子吸着態 実環境における DEHP の物理的な影響の可能性 平衡分配法を用いた底生生物に対する評価 DEHP 分解物の水生生物への毒性 高濃度水域について 生態リスクまとめ 322 第 Ⅸ 章排出削減対策の費用効果分析 はじめに 軟質塩ビ製品の他の樹脂への切り替えの状況 DEHP の他の可塑剤への切り替えの状況 排ガス処理の費用対効果の試算 330 第 Ⅹ 章まとめ はじめに 環境排出量推計 ヒト健康リスク評価 生態リスク評価 339 第 XI 章レビュアーの意見と筆者らの対応 341 参考文献 342 vi

9 要 約 1. はじめにフタル酸ジ (2エチルヘキシル)(DEHP) は, 主として塩化ビニル ( 塩ビ ) 樹脂の可塑剤として使用され, わが国における 2001 年の DEHP 出荷量は 20 万トン強である DEHP を含む軟質塩ビ製品は, シート フィルム, 電線被覆, 農業用フィルム ( 農ビ ), 壁紙, 建材, ホース ガスケット, 履物, 医療器具等, 我々の身の周りで広範囲に用いられている DEHP は, 蒸気圧が Pa, オクタノール / 水分配係数 (log Kow) が 7.60 の低揮発性で疎水性の物質であるが, 魚類への生物濃縮倍率は最大でも 600 倍強で高蓄積性物質ではない また, 化学物質審査規制法の既存点検では分解性良好と判断されているが, 推定される環境中での分解半減期は比較的長い ( 本評価書での推定値, 大気 :1 日, 水中 :15 日, 土壌中 :200 日, 底質中 :3,400 日 ) このように, 軟質塩ビ製品が我々の身の周りで広範囲に用いられている上に,DEHP は疎水性で環境中での分解半減期が比較的長いため, 様々な環境媒体や食品中で検出されている 経済産業省の化学物質審議会では, 有害性評価対象物質の 1 つとして,DEHP の内分泌かく乱を含む種々の有害性が評価され, 内分泌かく乱作用の有無に関わらず, 従来の知見で生殖 発生毒性による影響がみられることから, 有害性評価や暴露評価を踏まえてリスク評価を実施し, 適切なリスク管理のあり方について検討すべき と指摘されている DEHP の生態リスクについても, 環境省の環境リスク初期評価で, 淡水域については詳細リスク評価を行う候補, 海水域については情報収集に努める必要がある と判断されている さらに, 米国の National Toxicology Program(NTP),Agency for Toxic Substances and Disease Registry(ATSDR),EU, カナダ等でも有害性評価やリスク評価等が実施されている このように国内外で有害性やリスクが評価され, わが国でも一部用途への DEHP 含有軟質塩ビの使用が規制される中, 産業界においても既に様々な自主的取組が進められている しかしながら,DEHP のリスク評価に基づく適切なリスク管理のあり方については, より一層の情報収集や詳細な暴露解析を行うことにより評価, 検討する必要がある このような状況のため, ヒトと環境生物に対する DEHP の詳細なリスク評価を下記の内容で実施した (1) 既存の有害性およびリスク評価書に加え, 関連文献を網羅的に調査 解析し, ヒトの健康と環境中の生物への有害性を評価し, ヒト健康と生態へのリスクを評価する際のエンドポイントとそれらの無毒性量 (NOAEL) や無影響濃度 (NOEC) 等を決定した (2) 環境等でのモニタリングデータに基づいて DEHP の摂取量と環境暴露濃度の分布を推定し, これらの分布と上記の NOAEL や NOEC を比較することにより, ヒトの健康と環境中の生物に対する DEHP のリスクを判定した (3) 環境等のモニタリングデータから環境排出源からヒトや環境中の生物に至る DEHP の流れを定量的に把握できなかったため, 事業所および使用中の軟質塩ビ製品からの DEHP の 1

10 環境排出量を推計し, 環境排出源からヒトや環境中の生物に至る DEHP の流れを数理モデルにより定量的に推定するとともに, 排出量削減対策の費用対効果をあわせて評価した 2

11 2.DEHP の環境への排出と排出量 DEHP は軟質塩ビの可塑剤として大量に使用され, その用途は多岐に亘り, 耐用年数がかなり長い製品も多い このため,DEHP の製造, 軟質塩ビ製造と各種製品への加工, 製品の使用, 製品の廃棄という一連のライフサイクルの様々なステージで環境への排出が生じると考えられ, 各ライフステージの排出量推計が必要となる DEHP の製造, 軟質塩ビおよびその他 DEHP 含有製品の製造 加工時に事業所から環境に排出される DEHP 量は,2001 年度の PRTR 制度の調査データから得た 使用中の軟質塩ビ製品からの環境排出量は, 製品の用途が多岐に亘り, 各製品の耐用年数も異なるため, 用途別の DEHP 出荷量から, 製品使用時の環境排出量を推計した さらに, 製品廃棄後の再生処理, 焼却, 埋立て等の処分形態毎の DEHP 環境排出量も推計した 2.1 事業所からの環境排出届出対象事業所 ( 対象化学物質を取り扱う事業者や環境へ排出することが見込まれる事業者で従業員数 21 人以上であって, 製造業等政令で定める 23 の業種に属する事業を営み, かつ, 対象化学物質の取扱量が 5 トン以上の事業所を有している等の事業所 ) から,392,359 kg が環境に排出され, そのうち 99.8% が大気への排出である PRTR 調査で報告された届出外排出量 ( 推計値 ) は, 推計対象となっているのは対象業種を営む事業者からの裾きり以下の排出量と対象業種を営まない事業者からの排出量および家庭からの排出量の合計で, その量は,1,180,200 kg/ 年である このうちの 98.8% が対象業種を営む事業者からの裾きり以下の排出量で, 残りが対象業種を営まない事業者からの排出量および家庭からの排出量である 届出外排出量は, 対象業種を営む裾きり以下の排出量がほとんどを占めていることから, 排出形態は対象事業所と同様に大部分が大気への排出と考えられる 事業所からの DEHP の大気への排出は, 大別すると,DEHP 製造工程と軟質塩ビおよびその他 DEHP 含有製品の製造 加工工程との二工程からの排出が考えられる フタル酸エステル類リスク評価管理研究会の中間報告書によると,DEHP 製造工程からの大気への排出は極めて少ない 2.2 使用中および廃棄後の塩ビ製品からの環境排出 DEHP の用途 ( 一般フィルム シート, 農ビ, レザー, 工業原料, 電線被覆, ホース ガスケット, 建材, 壁紙, 履物, 塗料 顔料 接着剤 ) 別の平均耐用年数から, 各用途での DEHP の寿命関数を導出し, この関数を基に 1951 年から 2001 年までの DEHP のストック量と廃棄量の経年変化を推計した さらに各 DEHP の用途に用いられる塩ビ樹脂の厚みと屋内外の使用比率を基に使用中の塩ビ製品からの大気への DEHP 排出係数を推計し, ストック量に乗じることにより, 使用中の塩ビ製品からの DEHP の大気排出量の経年変化を得た 水域への排出量推定では, 使用中の塩ビ製品からの溶出や, 廃棄後の最終処分場からの浸出による環境排出量を推定した 屋外用途の塩ビ製品からの DEHP 排出量は,DEHP ストック 3

12 量と排出係数により推定し, その他, 屋内用途の塩ビ製品や最終処分場からの排出量推定では,DEHP のモニタリング濃度に各々水使用量や浸出水量を乗じて求めた 2.3 DEHP の大気排出量 DEHP 製造と軟質塩ビ製品等の製造時に大気に排出される DEHP 量と製品使用時の DEHP 排出量を地域別にまとめると, 表 1 に示すように関東地方での排出量が他の地方に比べて多い また, 関東地方では, 届出外事業所からの排出量が全排出量の半分以上を占めている 表 1 大気への地域別 DEHP 排出量 (2001 年 )[ トン / 年 ] 地域 届出対象 届出対象外 使用中製品由来 合計 北海道東北関東北陸中部東海近畿中国四国九州沖縄 合計 392 1, , DEHP の水域への排出量使用中の塩ビ製品から排出される DEHP 量と, 廃棄後の最終処分場からの DEHP 排出量を表 2 にまとめた 排出された DEHP は全てが公共用水域に達するわけではなく, 下水処理場を通過するものは 97% の除去率で処理が行われる 最終的に公共用水域へ達する DEHP 量では, 屋外で使用された塩ビ製品からの寄与が最も大きく, 全体の 90% 以上を占めている 表 2 水域への DEHP 排出量 [ トン / 年 ] 排出量公共用水域への到達量屋外用途 979~2, ~2,067 使用中製品由来屋内用途 廃棄物処分場

13 3. 環境動態の推定事業所および使用中の軟質塩ビ製品から大気と水域に排出される DEHP の環境中の動態については既存の環境モニタリング調査結果からは明確にできない そこで, 大気, 土壌, 表層水, 植物等のコンパートメントモデルを用いて一般環境における DEHP の動態を推定した 3.1 大気中に排出された DEHP の動態関東地方の一般的な環境条件等を用いて推定した結果, 以下のことが明らかとなった (1) 大気中に排出された DEHP の 60~70% は大気中浮遊粒子に吸着され, 市町村規模の大気環境では移流が消失に大きな寄与をする 大気中の一部の DEHP は沈着により土壌に移行し, 全沈着量の約 80% は浮遊粒子吸着態の湿性沈着によると推定された (2) 土壌に沈着した DEHP は土壌粒子にほぼ全量が吸着され, 主に分解により消失し, 一部は土壌浸食に伴い水環境に輸送される 溶脱, 流出, 巻上および揮発の寄与は低いと推定された (3) 植物の地上部 ( 葉, 茎および実 ) 中の DEHP のほとんどは大気中からの沈着と吸収によるもので, わずかが根からの吸上げの寄与である このため植物の地上部中の DEHP 濃度に土壌中 DEHP はほとんど寄与しないと推定された (4) 家畜への DEHP の移行は, ほぼ全量が飼料 ( 植物 ) 経由であり, 大気と土壌からの直接摂取の寄与は低いと推定された (5) 大気中に排出される DEHP は吸収および沈着により植物の地上部に移行し, さらに一部の DEHP は, 飼料作物を介して家畜にも移行し, 最終的には農作物と畜産物を経由してヒトが摂取すると考えられた 3.2 水域に排出された DEHP の動態仮想的な河川を想定して動態を推定した結果, 以下のことが明らかとなった (1) 河川に流入した DEHP は, 水相では 92% が溶存態として存在し, 底質相ではほぼ 100% が底質粒子に吸着される (2) 水相からは主に移流により系外に輸送され, 一部は分解と底質相への懸濁粒子の沈降に伴い水相から消失する 揮発と底質相への拡散の寄与は低いと推定された (3) 底質相からは主に分解および巻上により消失し, 水相への拡散の寄与は低いと推定された (4) 河川から移流により海域に輸送された DEHP は, 希釈 混合されるとともに魚介類に生物濃縮されるが, 生物濃縮倍率は 600 L/kg 程度と考えられる 5

14 4. ヒト健康リスク 4.1 DEHP 摂取量東京都が 2000 年に測定した屋内外空気中 DEHP 濃度と日本食品分析センターが 1998 年および 2001 年に測定した食事中 DEHP 濃度を用いて,DEHP の摂取量を 1 歳以上の年齢群別にモンテカルロ シミュレーションにより推計した 表 3 に 1998 年の食事中 DEHP 濃度を用いて推定した男性一般住民の摂取量を示す 表 3 年齢群別 DEHP 摂取量推計値 ( 男性 ) 年齢群 DEHP 摂取量 [μg/kg/ 日 ] 歳 平均 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 全体 ~15 16~19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~ 表 3 から明らかなように, 成人後よりも幼児および児童期に DEHP 摂取量がかなり高い また, 摂取量には食事経由の摂取が大きく寄与し, 屋内外空気の吸入はほとんど寄与しない これらの DEHP 摂取量は塩ビ製の手袋等から一部食品への移行の可能性も考えられ, 事業者による排出抑制対策が進行中であった時期の摂取量と考えられた 2001 年の食事中濃度を用いて推定した 1 歳児の DEHP 摂取量平均値は男児で 6.1μg/kg/ 日 (5~95 パーセンタイルの幅 :1.1~17.5μg/kg/ 日 ), 女児で 5.7μg/kg/ 日 (5~95 パーセンタイルの幅 :0.8~15.9μg/kg/ 日 ) で, 摂取量には食事経由の摂取が大きく寄与し, 屋内外空気の吸入はほとんど寄与しない また, 全年齢群の DEHP 摂取量平均値は男性で 1.9 μg/kg/ 日 (5~95 パーセンタイルの幅 :0.4~5.4μg/kg/ 日 ), 女性で 1.8μg/kg/ 日 (5~95 パーセンタイルの幅 :0.4~5.0μg/kg/ 日 ) であった さらに, モニタリングデータ等に基づいて,1 歳未満の乳幼児の母乳, 人工乳および離乳食経由の DEHP 摂取量も推計した 乳幼児は成長に伴い乳類 ( 母乳, 人工乳 ) と離乳食を併用するため, これらの合計摂取量を推計した その際, 人工乳の方が母乳よりも DEHP 濃度が高いと推定されたため, 乳類は人工乳を想定した 男児に対する結果を表 4 に示す 6

15 乳児の日齢 月齢 出生時 30 日 1~2 ヶ月未満 2~3 ヶ月未満 3~4 ヶ月未満 4~5 ヶ月未満 5~6 ヶ月未満 11~12 ヶ月未満 表 4 乳類および離乳食経由による DEHP 摂取量推計値 ( 男児 ) DEHP 摂取量 [μg/kg/ 日 ] 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 京浜地区一般住民の主要暴露経路の推定大気拡散モデル AISTADMER で計算した大気中 DEHP 濃度の空間分布と農作物 畜産物の生産 出荷量を考慮し, わが国最大の消費地である京浜地区を対象に, 農作物および畜産物経由の DEHP 摂取量を推計し, さらに水産物経由の摂取量を水中 DEHP 濃度モニタリングデータや生物濃縮倍率等を用いて推計した その際, 濃度や生産 出荷量の地域変動が推計結果に及ぼす影響もあわせて評価するため, モンテカルロ シミュレーションを行った その結果, 東京都の男性の場合, 国内産農作物経由の DEHP 摂取量の平均値は 0.49μg/kg/ 日 (5~95 パーセンタイルの幅 :0.064~1.5μg/kg/ 日 ), 国内産畜産物 ( 乳製品, 牛肉, 豚肉および鶏肉 ) 経由の摂取量の平均値は 1.0μg/kg/ 日 (5~95 パーセンタイルの幅 :0.05~3.5μg/kg/ 日 ) と推定された また, 海域, 河川および湖沼のモニタリングデータから生物濃縮倍率を用いて推計した水産物経由の DEHP 摂取量の平均値は 0.14μg/kg/ 日 (5~95 パーセンタイルの幅 : ~0.39μg/kg/ 日 ) であった これらの結果から, 大気中に排出された DEHP の一部は農作物と家畜に移行し, 京浜地区の一般住民は全国から集荷された国内産の畜産物経由で主に DEHP を摂取し, さらに, 京浜地区に出荷された国内産の農作物や輸入畜産物からも DEHP を摂取していると推定された ( 図 1) また, 排出源別では,PRTR 制度の届出対象外事業所から大気への排出の寄与が大きいと推定された 7

16 DEHP 摂取量 [μg/kg/ 日 ] PRTR 制度届出対象事業所 PRTR 制度届出対象外事業所 0.22 農ビ 発生源別推計 不明 0.14 他の塩ビ製品畜産物 ( 国内 ) 豚 鶏肉含む 0.55 畜産物 ( 輸入 ) 農 畜 水産物別推計 水産物 日本食品分析センター (2001 年測定 ) 東京都 (2000 年測定 ) 0.56 農作物 ( 国内 ) 2.1 日本食品分析センター (1998 年測定 ) 東京都 (2000 年測定 ) 8.3 各摂取量の数値は平均値である 図 1 京浜地区一般住民の DEHP 摂取量推計のまとめ 4.3 有害性評価と用量 反応評価 DEHP とその主要代謝物 ( フタル酸モノ (2エチルヘキシル) および 2エチルヘキサノール ) は, ほとんどの試験で遺伝毒性を示さず, さらに, ラットやマウスにみられる肝細胞がんは作用機序からげっ歯類に特有であり, ヒト発がん性物質の可能性は低いと考えられるため, ヒト健康リスクのエンドポイントとして発がんを採用しなかった 非発がん性の有害影響として精巣毒性と生殖毒性を採用した 霊長類のマーモセットでは, 精巣毒性はより高用量においてもみられないことから, ヒトでのエンドポイントに採用することには若干の疑問もあるが, 精巣毒性は厚生省が暫定耐容一日摂取量 (TDI) を決定する際に採用しており, 環境省の環境リスク初期リスク評価書,NTP 評価書,EU 評価書暫定版, ATSDR 評価書においてもエンドポイントして精巣毒性が採用されていることを鑑み, 本評価書においても現時点の暫定的なエンドポイントとして採用することとし, 精巣毒性に対する最も低い NOAEL が報告されている Poon らの試験での NOAEL(3.7 mg/kg/ 日 ) をリスク評価に用いた 発生 生殖毒性試験においても DEHP による有害影響がみられている EU 評価書暫定版では Arcadi らの発生毒性試験の結果を採用しているが, 投与量に不確かさがあるため, 本評価書では採用しないこととし,Lamb らの試験でみられた生殖影響に対する NOAEL(14 8

17 mg/kg/ 日 ) をリスク評価に用いた 精巣毒性に係るリスクを判定する際の基準マージン (Margin) としては, ラットとヒトの感受性の種間差を説明する 3 と個人差を説明する 10 の積 30 が妥当と判断した 感受性の種間差の 3 はトキシコキネティクスの種間差 ( 安全側の値として 1 を採用 ) とトキシコダイナミクスの種間差 ( デフォルト値 (2.5) を丸めて 3 を採用 ) の積である 感受性の個人差には一般にデフォルト値として用いられる 10 を採用した 生殖毒性に係るリスクを判定する際の Margin としては, マウスとヒトの種間差を説明する 10 と個人差を説明する 10 の積 100 が妥当と判断した 感受性の種間差には,DEHP とその代謝物の胎児への移行が不明であり, さらに, 生殖毒性がげっ歯類に特異的な状況にないことから, 一般にデフォルト値として用いられる 10( トキシコキネティクスを説明する 4 とトキシコダイナミクスを説明する 2.5 の積 ) を採用し, 感受性の個人差には一般にデフォルト値として用いられる 10 を採用した 4.4 リスクの判定精巣毒性および生殖毒性に係るリスク (Risk) は, 図 2 に示すように, ヒトの摂取量 (Intake) が実験動物での NOAEL を個人差と種間差を考慮したリスク判定時の基準マージン (Margin) で除した値を超える確率 (Prob(Intake NOAEL/Margin)) として算出した なお, この確率は, 有害影響の発生率の増加分を示す数値ではない この超過確率に比べて, 有害影響の発生率の増加分は非常に小さいと予想される NOAEL/Margin Intake NOAEL 確率密度 用量,mg/kg/ 日 Risk = Prob Intake NOAEL / Margin ( ) 図 2 ヒト健康リスクの指標の定義 精巣毒性東京都が 2000 年に測定した屋内外空気中 DEHP 濃度と日本食品分析センターが 1998 年に測定した食事中 DEHP 濃度に基づいて空気吸入および食事経由で摂取された DEHPによる精巣毒性のリスク (Risk testis ) を算出した結果を表 5 に示す 摂取量も高い 1 歳児においても, Risk testis は,1% 未満であり,NOAEL testis と摂取量の間に 30 のマージンはほぼ確保されている 9

18 と考えられる 表 5 精巣毒性のリスクの算出結果 年齢群 [ 歳 ] Risk testis [%] 年齢群 [ 歳 ] Risk testis [%] ~15 16~19 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 0.03 <0.01 <0.01 <0.01 < < 歳未満児の短期間の摂取量推定値を用いることが適切か否か議論のあるところではあるが,1 歳未満の男児への精巣毒性のリスクについても同様に, 乳類と離乳食を併用時の DEHP 摂取量が NOAEL testis を Margin testis で除した値を超える確率として算出した 結果を表 6 に示す 乳児に対する精巣毒性のリスクは懸念されるレベルにないと判断される 表 6 粉ミルクおよびベビーフード由来の男児への精巣毒性のリスクの算出結果 日齢 月齢 Risk testis [%] 日齢 月齢 Risk testis [%] 出生時 30 日 1~2 ヶ月未満 2~3 ヶ月未満 ~4 ヶ月未満 4~5 ヶ月未満 5~6 ヶ月未満 11~12 ヶ月未満 以上,1 歳以上のいずれの年齢群および 1 歳未満の乳児においても, 精巣毒性のリスクは懸念されるレベルにはないと判断される 2001 年の日本食品分析センターの調査に基づく摂取量は 1998 年の約 1/3 であり,1 歳以上のいずれの年齢群へのリスクはさらに懸念されるレベルにないと判断される 生殖毒性暴露対象者は,16 歳以上 60 歳未満の男女とした 東京都が 2000 年に測定した屋内外空気中 DEHP 濃度と日本食品分析センターが 1998 年に測定した食事中 DEHP 濃度に基づいて算出された結果を表 7 に示す いずれの年齢群の男女においても, 算出された生殖毒性に係るリスク (Risk repro ) は 0.01% 以下であり,NOAEL repro と摂取量の間に 100 のマージンは確保されていると考えられる 10

19 年齢群 [ 歳 ] 代 30 代 40 代 50 代 表 7 生殖毒性に係るリスクの算出結果 男性 0.01 <0.01 <0.01 < Risk repro [%] 女性 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 < 排出削減対策の費用対効果 DEHP の摂取量に大きな寄与をすると推定された PRTR 制度の届出対象事業所および対象外事業所について排ガス処理対策の費用と大気排出量削減に及ぼす効果を試算した DEHP を取り扱う事業所に対する排出抑制対策を行う場合,DEHP は主に事業所内の気中にヒュームやミストとして存在するため, 揮発性有機化学物質とは異なる捕集法の排ガス処理設備を用いる必要がある 2001 年度の PRTR 制度の調査で年間 1 トン以上の DEHP を大気中に排出していると報告した届出対象事業所を対象に, 年間 1 トン以上,10 トン未満の DEHP を大気中に排出している事業所に HEAF( ロール状硝子フェルト方式 ) を導入し, 年間 10 トン以上排出している事業所にパイプフィルター設備を導入する対策をとると仮定した場合,30 基の HEAF と 15 基のパイプフィルター設備が必要となり, 大気排出量を 1 トン削減するのに要する費用は 214 万円と推定された ( 通常運転時の捕集率を 90% と仮定 ) また, この排出削減に伴い, 京浜地区一般住民の DEHP 摂取量は若干 (0.2~0.4μg/kg/ 日 ) 低減すると推定された 届出対象外事業所の 3/4を占める 500ヶ所のプラスチック製品製造業の各事業所に処理設備として HEAF を導入した場合,1 事業所当りの排出量 1 トン削減費用は 298 万円で, 京浜地区一般住民の DEHP 摂取量は 0.7~0.9μg/kg/ 日減少すると推定された しかし, 届出対象外事業所の多くは事業規模が小さく, 自主的な削減対策としての設備導入は事業者に大きな負担となる可能性があると考えられる 4.6 ヒト健康リスク評価のまとめ本評価書では, 既報の利用可能なデータと科学的知見に基づいて, わが国での DEHP のヒト健康リスクを判定したが, 都度示したように, モニタリングデータによる摂取量の推定とモデリングによる排出源からヒトに至る DEHP 主要暴露経路の推定の際して不十分あるいは欠損データ等を補完するために仮定をおいた これらの仮定の妥当性は, 今後の調査 研究により検証されると考えられる 今後の調査 研究が待たれる項目を以下に列挙する (1) 摂取量推定と暴露経路推定のためのモニタリング調査 摂取量の年平均値を推定し得る測定頻度の食事中 DEHP 濃度調査 モデリングの妥当性を判断し得る測定頻度の屋内外空気中濃度と個別食品群中 DEHP 濃 11

20 度調査 (2) 生殖毒性に関する研究 げっ歯類と霊長類における生殖毒性の発現メカニズムの差異に関する研究 (3) 環境排出源と排出量に関する研究 軟質塩ビ製品別の寿命関数と放出係数の精緻化に関する研究 12

21 5. 生態リスク DEHP の生態リスク評価では, 評価のエンドポイントを各種水生生物の個体レベルの影響 ( 致死, 繁殖, 成長および発達 ) とし, モニタリングデータと環境中の生物への有害性データに基づき, 水経由および底質経由の暴露について暴露マージン (MOE) を求め, 不確実性を考慮し, リスク管理 対策の必要性を判定した なお, 本評価書における生態リスク評価は, スクリーニングレベルのリスク評価に相当する スクリーニングレベルの評価は, 特定の生物種や地域を限定した評価ではなく, 保守的な立場から, リスクが懸念レベルではない場所を排除すること, あるいは, さらなる調査が必要な場所を把握することを主要な目的とした評価である 本報告書の生態リスク評価における評価の流れと各章の関係を図 3 に示す 暴露評価 ( 第 Ⅳ 章および第 Ⅵ 章 ) 影響評価 ( 第 Ⅶ 章 ) 発生源の特定と環境放出量の推計 DEHP 水質 底質観測データ リスク判定 環境生物に対する有害性データ 河川暴露濃度予測モデル 暴露濃度の特定 暴露マージン (MOE) の算出 生態系に対する無影響濃度の特定 暴露濃度の変化存在形態 高濃度地点の特性 リスク判定 有害性データの問題点の抽出 リスク管理 対策の必要性 管理 対策シナリオ解析 図 3 DEHP の生態リスク評価の流れと各章の関係 5.1 暴露濃度と高濃度地点について環境省, 国土交通省, 地方自治体等から公表されている水質および底質の DEHP のモニタリングデータの統計解析を行い求めた水域別 ( 河川, 湖沼, 海域 ) および年度別の平均濃度と 95 パーセンタイルを表 8 および表 9 に示す モニタリングデータの統計解析では, 各データの信頼性評価は実施せず利用可能なデータはすべて同等に扱うという立場をとった リスクは, 一般環境における暴露による評価を基本として, 公共用水域の大部分がカバーされる 95 パーセンタイルの値を基準に判定した 高濃度地点については, 測定地点の特徴や発生源について考察を行った その結果, 高濃度で DEHP が検出される地点は, 人間活動に由来する未処理排水が流入すると思われる地点 13

22 が多く, 一般水質汚染指標である BOD 等も高い地点が多かった 水域河川湖沼海域 測定年度 表 8 各水域における水中 DEHP 濃度推計結果 検体数 1,742 2,025 1,472 1,594 1, 幾何平均 [μg/l] 幾何標準偏差 パーセンタイル [μg/l] 水域河川湖沼海域 測定年度 表 9 各水域における底質中 DEHP 濃度推計結果 検体数 幾何平均 [μg/kgdry] 幾何標準偏差 パーセンタイル [μg/kgdry] 6,660 8,730 7,660 9,720 5,060 12,000 3, ,650 1,510 2,860 2,250 1,400 1,130 暴露濃度解析では, 事例として多摩川を取り上げ, 河川への DEHP の主要な発生負荷源を特定し, 発生負荷源からの排出負荷量を推計した その結果, 雨水が屋外用途製品に接触して溶出される DEHP からの寄与が最も高く, 多摩川への排出負荷量全体の約 78% に及ぶことが示された その推計結果を入力データとして, 水系モデル AISTSHANEL を用いて多摩川における水中 DEHP 濃度を予測した その結果, 定量的なモデルの予測精度についての議論は難しいが, 多摩川において DEHP 濃度が相対的に高くなる地点や季節を視覚的に確認するこ 14

23 とができ, 水系モデル AISTSHANEL の暴露濃度解析やコミュニケーションツールとしての有用性を示すことができた 5.2 環境中の生物への有害性 DEHP の環境生物への有害性に対する網羅的な調査 検討を行い, リスク判定で用いる NOEC を決定した 表 10 に有害性評価のまとめを示す DEHP は, 難水溶性であり, コロイド状に分散する特性を有するため, 水生生物への生態影響試験を行う際, 試験水の調整, 暴露濃度の維持, 結果の解釈などに問題が生じやすい物質である このようなことから,DEHP の生態影響試験は数多く存在するものの, 明確な濃度 影響関係が求められた試験はほとんど存在しない 多くの試験における影響濃度あるいは NOEC は, 試験最高濃度以上 と表現されており, 影響濃度の確定値が提示されているものは非常に少ない 本評価書では, 水経由暴露については, 信頼性の高い方法で行われた生態影響試験の中で最も低い NOEC 値が報告されている Rhodes らの水生無脊椎動物のデータ (NOEC invert. =77 μg/l) を,NOEC water として MOE の算出に用いた この試験結果は, 本来の毒性ではなく, 試験水表面に形成された膜に捉えられた物理的な影響であるとの見方が強いが, 現段階では, 物理的な影響と本来の毒性をはっきり区別することは出来ないこと, また, 物理的な影響も, DEHP の特性に起因する水生生物に対する有害影響とみなせることを理由に, このデータをリスク評価で採用することにした 底質経由の暴露については, 現時点において, 質 量ともに十分なデータは存在しないが, DEHP は粒子に吸着して, 底質に堆積しやすいこと, 底生生物の中には, 底質を直接摂取する生物群もいるため, そのような種に対しては, 底質経由の暴露が重要になると思われることから, 既存のデータに基づき, 比較的信頼性が高いと思われる Call らの水生無脊椎生物および Solyom らの両生類への底質毒性試験から報告されている NOEC をリスク評価に用いるデータとした 両者のうち, 低い方の NOEC 値は, 両生類の 1,000 mg/kgdry 以上でも影響がみられていないというデータであり, 本評価書では, その値を便宜的に NOEC sed = 1,000mg/kgdry として MOE を算出した 15

24 生物群暴露経路 魚類 水 リスク評価で用いる NOEC 水環境中で存在しうるレベルにおいて有害性なし 餌評価対象としない 水 NOEC invert. : 77μg/L (Rhodes ら,1995) 無脊椎動物 底質 NOECsed_invert: 3,000 mg/kgdry (Call ら,2001) 藻類水 両生類底質 水環境中で存在し得るレベルにおいて有害性なし NOECsed_amphib: 1,000 mg/kgdry (Solyom ら,2001) 陸生生物 評価対象としない 表 10 DEHP の環境生物に対する有害性のまとめ 知見 備考 コロイド状態になると思われる濃度範囲で影響がみられた信頼性の高いデータは存在しない 溶解助剤を使用した多くの試験では, 水溶解度よりも二桁以上高い濃度でも影響がみられず, またそのレベルは実際の環境中では想定し難い濃度と考えられる 水溶解度付近あるいはそれ以下で影響がみられたという 1970 年代の試験データは信頼性が低く, 各国におけるレビューで棄却されている 溶解助剤を適切に用いたと思われる試験では, 水溶解度より二桁以上高い濃度でも影響がみられていない DEHP が安定したコロイド状態で存在すると思われる濃度域でみられた影響は, 本来の毒性でなく, 形成された試験水表面膜ないし非溶解分に捉えられた物理的な影響の可能性が高い 底質経由暴露の毒性試験は, いまだに発展途上であり確立された方法は存在しない 底質毒性試験の結果は変動しやすく, 解釈が非常に困難である 底質は水環境中における DEHP の最終到達点であり, 環境中で頻繁に検出されている 底生生物は, 底質に存在する DEHP に暴露されやすい 水溶解度以下で影響がみられた信頼性の高いデータは存在しない 溶解助剤を使用した多くの試験では, 水溶解度よりも二桁以上高い濃度でも影響がみられず, またそのレベルは実際の環境中では想定し難い濃度と考えられる 試験の方法や条件が確立しておらず, 結果の解釈が難しい 最近のカエルの卵孵化に対する毒性試験では,1,000 mg/kgdry 以上でも影響がみられていない 陸生生物 ( 鳥類含む ) への影響が調べられた信頼性の高いデータは存在しない 環境中で存在し得るレベルにおいて影響がみられたという報告はない 16

25 5.3 生態リスク評価のまとめ水生生物へのリスクは,NOEC 値を環境濃度で除した値, つまり暴露マージン (MOE) を求め, 不確実性を考慮し判定した 生態リスクを判定する際の MOE の基準は,DEHP の有害性についてのこれまでの知見や証拠の重みを勘案し, 水質および底質とも実験室から野外への外挿に伴う不確実性である 10 が妥当と判断した 表 11 に水質における MOE 算出結果を示す ここでは, モニタリングデータの統計解析により導出した幾何平均と 95 パーセンタイルの値 さらに参考値として実測データの最大値に対する MOE を示す その結果,MOE は, 一般水域のモニタリング地点における 99% 以上の地点において 10 以上となった DEHP は, 水中の粒子や底質に吸着しやすい特性を有するため, 毒性に寄与すると考えられる溶存態として存在する割合は, 実際の報告値よりも低い値になることが予想される よって, 毒性に寄与する溶存態 DEHP 濃度を暴露濃度として,MOE を求めると, その値はさらに大きくなる さらに, 実環境における溶存有機物や界面活性剤の存在は, 環境水中における DEHP の溶解性を促進させ, 溶存態で存在する割合を上昇させる可能性がある この現象は, 実験室でみられたコロイド粒子による水生生物に対する物理的な影響発現の可能性を低減させる 自然環境中に存在する溶解促進剤の役割を果たす共存物質が DEHP の毒性に対してどのような影響を及ぼすかについてはわかっていないが, 溶剤や分散剤を用いた既存の多くの毒性試験において最高試験設定濃度で影響がみられていないこと, そのレベルは一般水域で検出されている最高検出レベルよりも二桁近く高いこと, などを勘案すると, 実環境に存在する DEHP が溶存状態で存在したとしても, 現状の検出レベルでは,DEHP が水生生物に対して有害な影響を及ぼす可能性は極めて低いと考えられる したがって, わが国の一般水域の水質における DEHP 現状汚染レベルにおいて, 水生生物が有害な影響を被る可能性は極めて低いと判断し, リスクは懸念レベルではないと判定する 表 11 水質における MOE の算出結果 年度 河川 湖沼 海水 河川 湖沼 海水 河川 湖沼 海水 河川 湖沼 海水 河川 湖沼 海水 GM 1) , , ,026 2, ,667 2,655 95% 2) MAX 3) )geometric mean: 幾何平均 2)95 パーセンタイル 3) 最大値 ( 実測 ) 17

26 表 12 に底質における MOE 算出結果を示す 底質経由の底生生物における MOE は, 一般水域において,1 地点を除く全ての地点において 10 以上となった これより, わが国の一般水域の底質における DEHP 現状汚染レベルにおいて, 底生生物が有害な影響を被る可能性は極めて低いと判断し, リスクは懸念レベルではないと判定する GM 1) 95% 2) MAX 3) 表 12 底質における MOE の算出結果 年度 河川湖沼海水河川湖沼海水 河川 湖沼 海水 河川 湖沼 海水 河川 湖沼 海水 5, , , , )geometric mean: 幾何平均 2)95 パーセンタイル 3) 最大値 ( 実測 ) 3, , , ,179 1, , , , , , , 以上, リスク判定結果より, 現在のわが国における一般水域でみられている DEHP 汚染レベルから判断すると, 生態影響のリスク管理 対策のための早急な対応は必要ないと考えられる この判定は, 既存の利用可能なデータを十分検討し導かれた結論である しかし, 本評価には, 欠損データや不確実性のため, 安全側の立場から便宜的に仮定した条件も含まれている よって, このような仮定の検証やより信頼度の高い生態リスク評価のためには, 以下に示すような項目についてさらなる調査や研究が必要である 12, 屋外で使用される DEHP 含有製品から水域への排出量の推定方法の高度化 コロイド分散系における水生生物への影響発現機構の解明 信頼性の高い底生生物への生態影響試験の開発 DEHP の分解物による環境中の生物への有害性データの蓄積 DEHP の高濃度検出地点における定期的なモニタリングとその原因解明調査 18

27 第 Ⅰ 章序論 1. はじめにフタル酸ジ (2エチルヘキシル)( 以後,DEHP とする ) は, 主として塩化ビニル樹脂 ( 以後, 塩ビとする ) に可塑剤として添加され, 次いで成形加工等により製品化されており, DEHP を含む軟質塩ビ製品は, 電線被覆等の電気絶縁用製品, シート, フィルム, 農業用フィルム, 壁紙, 床材, 樹脂鋼板, ホース, 医療器具, 文房具 雑貨, 子供用玩具, 家電製品, 自動車等, 我々の身の周りで非常に広範囲に用いられている DEHP は種々の可塑剤の中でも最も多く使用されており, また, 上記のように広範囲に軟質塩ビ製品が使用されているため, 環境の様々な媒体や食品中に検出されている 経済産業省の化学物質審議会の内分泌かく乱作用検討小委員会においても,DEHP は有害性評価対象物質の一つとして, 内分泌系への影響やその他の有害性について評価され 内分泌かく乱作用の有無に関わらず, 従来の知見で生殖 発生毒性による影響がみられることから, 有害性評価や暴露評価を踏まえてリスク 1 評価を実施し, 適切なリスク管理のあり方について検討すべき と指摘されている ( 経済産業省化学物質審議会管理部会 審査部会,2002) また, 厚生省 ( 現, 厚生労働省 ) は, 軟質塩ビ製手袋から市販の弁当への DEHP の移行が問題となったことから,2000 年 6 月に DEHP を含有する塩ビ製手袋の食品への使用を避けるよう指導を行うとともに ( 厚生省,2000),DEHP の暫定耐容一日摂取量 2 を 40~140μg/kg/ 日と決定した さらに, 薬事 食品衛生審議会食品衛生分科会での 食品衛生法器具および容器包装並びにおもちゃの規格基準 の見直しにより, 油脂 脂肪性食品を含有する食品の器具および容器包装に DEHP を含有する塩ビを主成分とする合成樹脂を使用することが 2003 年 8 月 1 日以降, 禁止され, 規格基準改正の通知が出されている ( 厚生労働省,2002) 一方,DEHP の生態リスクについては, 環境省の環境リスク初期評価において予測環境中濃度 3 (PEC) と予測無影響濃度 4 (PNEC) の比が 1 を超え, 淡水域については詳細リスク評価を行う候補, 海水域については情報収集に努める必要がある と判断されている ( 環境省,2002) さらに, 米国の National Toxicology Program(NTP),EU, カナダ等においても有害性評価やリスク評価等が実施されている また, 塩ビ製の乳児用玩具に含まれるフタル酸エステル類の溶出による乳幼児での経口経由の摂取が懸念され, 欧州では特に 3 歳以下の乳幼 1 リスク : あるエンドポイントの発生する確率とそのエンドポイントの重要さの関数 2 耐容一日摂取量 : ヒトが生涯にわたり, 毎日摂取しても, 健康に有害な影響が現れないと考えられる 1 日当たり体重 1 kg 当たりの化学物質量 3 予測環境中濃度 :PEC(predicted environmental concentration) 安全側に立った評価の観点から実測データや数学的なモデルにより求めた化学物質の環境中濃度 4 予測無影響濃度 :PNEC(predicted no effect concentration) 試験生物種の毒性値を不確実係数で除することにより算出した, 生態系に対して有害影響を及ぼさないと予想される濃度 19

28 児を対象とした玩具に対するフタル酸エステル類の使用を規制している国もある 医療用器具への使用についても, 米国の Food and Drug Administration(FDA) はフタル酸エステル類を使用頻度の高い医療用器具等に使用することに対して規制している このように国内外で有害性やリスクが評価され, わが国においても一部の用途への DEHP 含有軟質塩ビの使用が規制される中, 産業界においても既に様々な自主的取り組みが進められている しかしながら,DEHP の環境への排出量と環境中濃度, ヒトの DEHP 摂取量および環境中の生物に対する暴露濃度の間の関係が既存の評価においては十分解明されておらず, リスク評価に基づく適切なリスク管理のあり方については, より一層の情報収集や暴露の解析を行うことにより評価, 検討する必要がある このような状況を踏まえ, ヒトの健康と環境中の生物に対する DEHP の詳細リスク評価を実施することとした 本詳細リスク評価書では, 既往の評価書および関連文献の網羅的な調査 検討を行いヒトおよび環境中の生物への有害性を再評価するとともに, わが国における環境への排出源からヒトや環境中の生物に至るまでの化学物質の定量的な流れを推定する詳細暴露評価を行い, その両者を勘案してリスクレベルを判定し, 排出削減対策の効果や経済性をあわせて評価することを目的とした なお, 本詳細リスク評価書では, ヒトの健康への DEHP のリスク評価は一般住民を対象とし, 適切な保護具着用により暴露を低減することが可能な職業暴露と生命の維持のための人工透析や輸血のような医療行為に伴う暴露によるヒト健康リスクについては評価の対象外とした 20

29 2. 歴史的 国際的動向塩ビの原料である塩化ビニルモノマーは 1835 年にフランスの化学者,Regnault により発見され, その 100 年後の 1935 年にドイツにおいて生産が開始された DEHP を始めとするフタル酸エステル類は主に塩ビの可塑剤として使用されており, その発展は塩ビの歴史と重なる部分が多い したがって, 塩ビの歴史を含め, フタル酸エステル類の歴史を以下に簡略に示す 塩ビの工業的生産は 1930 年代に欧米で始まり, 海軍艦船用の耐水不燃電線被覆, 次いでビニル引布用途に使用されていた 1943 年の米国における塩ビの生産量は約 3.7 万トンといわれている わが国では,1937 年にフランス駐在の海軍艦政本部の武官が入手した塩ビの電線被覆サンプルが, わが国に持ち込まれて工業化検討が始まり,1941 年からは小規模な工業生産が始まったが, 大部分は軍需用途に使用され一般市場にはほとんど出回らなかった 1944 年度の塩ビの生産は 116 トンとの記録がある ( 宮本眞樹ら,2001; 日本の塩化ビニール産業 編集委員会,1979) 可塑剤は, 英国の Perkes が 1865 年にニトロセルロースに樟脳を可塑剤として使用し, Xylonite という新しい樹脂を作るのに成功したのが最初だとされている 米国の Hyatt も 1868 年に Perkes とは独立してニトロセルロースに樟脳を可塑剤として使用し, セルロイドと命名し, 翌 1869 年に米国特許を取得している 塩ビ用可塑剤としては,B.F.Goodrich 社の Seman が 1933 年にリン酸トリクレジル (TCP) 等の高沸点エステルを使用したことが始まりとされている ( 日本の塩化ビニール産業 編集委員会,1979) わが国において塩ビの生産は第二次世界大戦後中断していたが,1948 年春に戦争中に軍に納めた塩ビ樹脂の残存品を使い, 軟質塩ビフィルムの生産が開始された 1949 年には 11 社が塩ビの工業生産 試験生産を開始し, 同時期に成形加工業での成形加工も本格的に始まったので, この 1949 年が日本の塩ビの発展期または離陸期の始まった年とされている 1950 年の塩ビの生産量は,1,493 トンであったが, その後わが国の塩ビ工業は順調に発展し,2000 年には生産量が 268 万トンに達するに到った 2000 年における全世界の塩ビの生産量は 2,596 万トンである なお塩ビは 2000 年におけるわが国での各種プラスチック生産量 1,472 万トンの約 16% を占めており, ポリエチレン, ポリプロピレンに次ぐ位置にあるが, 近年その比率は低下傾向にある わが国でのフタル酸エステル類の第二次大戦前の生産量は 1933 年に 5 トン, その後漸増し 1941 から 1944 年には 225 から 463 トン,1945 年には 130 トンというデータがある ( 可塑剤工業会,1974) 軟質塩ビ用可塑剤としては, 戦後, 当初セルロイド用可塑剤であったフタル酸ジメチルやフタル酸ジエチルが 1947 年から生産が開始されたが, 可塑剤の揮発性の問題があった フタル酸ジブチルの生産は 1948 年から,DEHP の生産は 1949 年から開始された ( 日本の塩化ビニール産業 編集委員会,1979) 各種塩ビ加工製品に可塑剤として使用されるフタル酸エステル類の出荷量も 1948 から 1951 年にかけて 190 から 1,784 トンと増加し, 可塑剤工業会が発足した 1957 年には 2.3 万 21

30 トン, 2000 年には 36 万トン ( ピークは 1997 年の 43 万トン ) であった 2000 年における全世界のフタル酸エステル類の生産量は約 470 万トンであった わが国で使用される各種可塑剤の中でフタル酸エステル類のシェアは, 最も高くて 80% 強を占めているが,DEHP はそのフタル酸エステル類の中でのシェアが 60% 強であるので, 可塑剤全体の中では約半分のシェアを占める最もよく使用されている可塑剤である DEHP の用途は, 国内外とも塩ビ用可塑剤が大部分で, その他にメタクリル酸樹脂, ニトロセルロース, 塩化ゴム等の樹脂用可塑剤として使用され, 数 % が, 印刷用インキ, 塗料, 顔料, 接着剤, セラミックス等の樹脂用途以外の分野で使用されている また,DEHP を含む軟質塩ビは, 前節の初めに記載したように, 非常に広範囲に用いられている 22

31 3. 化学物質の同定情報物質名 : フタル酸ジ (2エチルヘキシル) 別名 : フタル酸ビス (2エチルヘキシル),DEHP, フタル酸ジオクチル ( フタル酸ジ (nオクチル) を指す場合もある ), DOP (DEHP などの総称 ), disecoctyl phthalate,bis(2ethylhexyl)phthalate,dioctyl phthalate 化審法官報の公示整理番号 :31307 化学物質排出把握管理促進法政令号番号 :1272 CAS 登録番号 : 分子式および構造式 :C 24 H 38 O 4 O CH 2 CH 3 C O CH 2 CH (CH 2 ) 3 CH 3 C O CH 2 CH (CH 2 ) 3 CH 3 O CH 2 CH 3 分子量 :

32 4. 物理化学的性状外観 : 無色粘稠性液体融点 : 50 (IPCS, 2002),55 (HSDB, 2001) 沸点 : 385 (IPCS, 2002), 約 230 (7 hpa)(iuclid, 2000) 引火点 : 215 (o.c.)(ipcs, 2002) 発火点 : 350 (IPCS, 2002) 爆発限界 : 0.1%( 下限 )(IPCS, 2002) 20 比重 : d (HSDB, 2001) 20 蒸気密度 : 13.46( 空気 =1) 蒸気圧 : Pa ( mmhg)(20 )( 環境庁環境化学物質研究会, 1998) 0.16 kpa (1.2 mmhg) (200 )( 環境庁環境化学物質研究会,1998) 分配係数 : log K ow ; 7.60 ( 実測値 ), 8.39 (KOWWIN ver 推定値 )(U.S.EPA, 2004) 加水分解性 : 水中で加水分解を受けてフタル酸と 2エチルヘキサノールを生じる 加水分解半減期 5 ;5. 3 年 (ph 7,25,HYDROWIN ver 推定値 )(U.S.EPA, 2004),195 日 (ph 8,25,HYDROWIN ver 推定値 )(U.S.EPA,2004) 解離定数 : 解離基なしスペクトル : 主要マススペクトルフラグメント m/z 149( 基準ピーク :1.0),57(0.32),113(0.10),279(0.07)(NIST, 2002) 吸脱着性 : 文献なし粒度分布 : 該当せず溶解性 : 水 ;0.0006~1.3 mg/l, ただし, 本評価書では基本的に水溶解度を mg/l (Staples ら, 1997a) として評価に用いる 水溶解度の変動の原因などについては, 本章 4.1 節で詳細を述べる アルコール, エーテル, ベンゼン, アセトン等の溶媒と自由に混和 換算係数 : 1 ppm = mg/m 3 ( 気体,20 ),1 mg/m 3 = ppm( 気体,20 ) 4.1 水溶解度について DEHP は, 報告されている水溶解度の範囲が非常に広い その原因は,DEHP が水中においてコロイド 6 になりやすい特性を持つからである 水溶解度は, 環境中における化学物質の移動, 分配および分解を制御する重要な要素である さらに生物への蓄積性や毒性にも影 5 半減期 : 化学物質の消失過程において, 初期の濃度の 1/2 に減少するのに要する時間 6 コロイド : 分散媒とよばれる相の中に微粒子状の第 2 の相として均等に分布する分散質のうち, 分子より大きいが, 顕微鏡などでは見ることのできない大きさのもの 通常, コロイドは, ろ紙は通過できるが動植物の膜は通過できない 24

33 響を及ぼすことも知られている そのため DEHP の水溶解度に係る問題点について整理し, 本評価書において用いる水溶解度とその考え方について, 予め提示することは重要である そこで, 本項では,DEHP の水溶解度の報告値, その分析方法および問題点をまとめ, 本評価書における水溶解度の考え方と評価に用いる値を示す 表 Ⅰ1 に既報の DEHP の水溶解度を示した これによると,DEHP の水溶解度は, ~ 1.3 mg/l となっており, その範囲は非常に広い 比較的低い水溶解度は計算により得られた値であり, 実測された水溶解度の測定方法としては,OECD の化学品テストガイドラインに記載されたフラスコ法 (OECD 105 法 ), あるいはそれに準じた方法で測定された水溶解度が多い 水溶解度の測定方法に係る問題点や DEHP の特性の観点から, 表 Ⅰ1 のデータを概観する まず, 水溶解度の測定方法に係る問題点について述べる OECD テストガイドラインでは, フラスコ法の適用範囲を 10 mg/l 以上としているが, いずれの測定値も 10 mg/l 未満である DEHP の揮発による半減期が 16 時間程度であると, フラスコ法に準じる溶解度測定では, 平衡状態到達に揮発が影響を及ぼすと思われるが, 既報文献にはそのようなことに触れた記載は見当たらない たとえば,Wolfe ら (1980a) や Thomsen ら (2001) の測定では,24 時間後の濃度のみを測定しており, 平衡状態到達の確認は行われていない また,Thomsen ら (2001) は, ストック溶液として DEHP のメタノール溶液を調製し, これを Millipore 水 ( 純水または超純水 ) に添加している他,Hollifield(1979) は, エタノール, アセトンおよびトラガカントガムといった助剤を使用しているが, これら助剤の影響の検討も十分には行われていない これを避けるため,Letinski ら (2002) は低速攪拌による方法で測定しているが, 平衡到達期間が 16 日と非常に長く, その間の揮発等は考慮されていない 一方で,Hollifield(1979) や DeFoe ら (1990) は, 濁度測定による方法で測定している 海水における溶解度が淡水のそれよりも低下するのは, 塩析の影響によるものだと考えられている ( たとえば,Howard ら,1985) 次に,DEHP の特性の観点から, 水溶解度の変動の要因について述べる DEHP の水溶解度が上記のように広範囲で検出される理由は,DEHP の水溶解度測定の難しさにある その要因は, 1)DEHP の比重が水と同程度 (0.986) であること 2) 水中において容易にコロイドを形成する性質があること 3) 実験室のプラスチック製品からコンタミネーションを受ける可能性があること等があげられる ( たとえば,Staples ら,1997a;Thomsen ら,2001) 水溶解度は一般的に飽和重量濃度ともいわれ, 所定温度 ( 通常は 20 付近 ) における水に溶ける物質の最大量 ( 飽和量 ) を意味する 厳密にいえば, コロイド分散系 7 の状態にある溶液は真の溶液とはいえない しかし,DEHP のように比重が水とほとんど変わらない場 7 コロイド分散系 : 分散媒にコロイドが分散している系 25

34 合, コロイド粒子は比較的安定した状態で水中に存在するため, コロイド溶液と真の溶液をはっきり区別することは難しい コロイドの形成は, 水に溶解している DEHP の量を見かけ上増加させる Howard ら (1985) や DeFoe ら (1990) によれば, 水と DEHP の密度は同程度であるため, 水溶液と分散液の分離が難しく, そのことが DEHP の水溶解度の変動に寄与する一つの要因であると報告されている 巨視的な相の分離も事実上不可能である 遠心分離法によって得られる水溶解度は, 遠心分離の効率に大きく依存する (Wolfe ら,1980;Howard ら,1985;DeFoe ら,1990) 試験液の表層に膜が形成されやすく, 分析サンプルを水溶液から抽出する際, その影響を受ける可能性も否めない (Howard ら,1985) また, 第 Ⅳ 章 2 節でも述べるが, フタル酸エステル類は実験室の雰囲気中にも存在し, 分析操作時の雰囲気からのコンタミネーションによる分析精度の面での信頼性の低下が, 特に古いデータに関しては懸念される Staples ら (1997a) は, フタル酸エステル類の環境中における挙動についてレビューを行い, その中で水溶解度についても考察しており, 実測値と理論推定値の比較, 生物濃縮倍率 8 (BCF) との関係, 毒性の発現濃度とバイオアベイラビリティ等の観点から,0.003 mg/l が評価に用いる DEHP の水溶解度として最適と述べている EU 評価書暫定版 (EU, 2001) でも, この値が採用されている DEHP の河口域における挙動を調査した Turner と Rawlings (2000) による最近の研究の中にもその水溶解度に関する考察がされており, それによると, Milli Q 水 ( 超純水 ) を用いた試験における水溶解度は数 μg/l であることを明らかにし, DEHP は数 μg/l までは水に溶けた状態で存在し, その後, コロイド分散系になると述べられている International Programme on Chemical Safety(IPCS)(1992) では,DEHP の溶解度を非コロイド状とコロイド状の 2 通りに分類しており, 非コロイド状の値として mg/l(20 ) (Leyder と Boulanger,1983) を, コロイド状に分散した時の溶解度として 0.3 mg/l 程度の値 (Hollifield,1979;Howard ら,1985;DeFoe ら,1990) を示している U.S. EPA (1995) では,0.334 mg/l を DEHP の水溶解度の Best Estimate として提示している この値は, 報告値 :0.27, 0.3, 0.34, 0.36 および 0.4 mg/l の平均値である このように DEHP の水溶解度については, DEHP の有する特性から実験的に正確に測定することは極めて難しいことがわかる 試験状況や条件によってその値は変動する したがって, これまで報告されている水溶解度の値から確定的な値を選択するのは困難である 本評価書では, 上記の検討を踏まえ,Staples ら (1997a) が推奨し,EU 評価書暫定版を始め最近の多くの文献で使用ないし引用されている mg/l を DEHP が完全溶解状態での飽和濃度と考え, これを DEHP の水溶解度とする これ以上の濃度では,DEHP は, 水中においてコロイドを形成して,U.S. EPA(1995) の Best Estimate として提示されている mg/l 程度までは, 便宜上コロイド溶液での水溶解度と考える 実際の環境水中における DEHP 8 生物濃縮倍率 :BCF(bioconcentration factor) 生物濃縮係数ともいう 化学物質が生物に濃縮される度合いを示す分配係数 水生生物の場合, 平衡状態にある生物中の化学物質濃度を水中化学物質濃度で除した値 26

35 の溶解度は, 界面活性剤や懸濁物質等との共存によりさらに変化すると予想される DEHP の環境挙動や水生生物に対する毒性影響を検討する際は, そのような諸条件を勘案し, 評価結果を議論する 27

36 水溶解度 [mg/l] 水温 [ ] 表 Ⅰ1 既報の DEHP の水溶解度 (1) 水溶解度測定方法溶液調製法前処理法分析法備考参考文献 Generator column 法 (May 1979, EPA 法の原型 ) generator column に通水 固相抽出 (C 18 カラム, 酢酸エチル ) GC/ECD 海水 Boese (1984) EPIWIN( 計算値 ) 構造活性相関アプローチ 低速撹拌法 蒸留水に DEHP を直接添加渦がほとんどできないくらい緩やかに攪拌 16 日 液 液抽出 (2,2,4 トリメチルペンタン ) GC/MS 通常のフラスコ法のようにエマルジョンを形成しないよう開発された方法 生分解阻害のため塩化水銀添加 平衡到達時間は他のフタル酸エステル 2 種で検討したもの QSPR 法 ( 計算値 ) 定量的構造物性相関アプローチ Meylan と Howard (1995) Letinski ら (2002) Cousins と Mackay (2000) SPARC( 計算値 ) 構造活性相関アプローチ Long (1995) Staples ら, 1997a: 推奨値, EU 評価書暫定版 : 採用値 Staples ら (1997a) UNIFAC( 計算値 ) 構造活性相関アプローチ Thomsen ら (1999) フラスコ法 フラスコ法 (OECD 105 法 ) フラスコ振とう法 (U.S.EPA) Millipore 水 ( 純水または超純水 ) に DEHP のメタノール溶液を添加,24 時間振とう 脱イオン蒸留水に DEHP 添加 海水に DEHP を直接添加 24 時間静置表面張力 塩化メチレンで抽出後, 溶媒留去, ヘキサンに転溶 遠心分離後, 等量のアセトニトリルを添加 張力学的アプローチ ( 濃度を直接測定するのではなく, 表面張力から計算 ) GC/FID HPLC 海水 ステンレス製キャップつき試験管使用,n=3 2 回以上, 平衡化確認 ( ただし時間記載無し, 経時変化データ無し ) Thomsen ら (2001) Leyder と Boulanger (1983) Howard ら (1985) 0.27 準フラスコ法 1) 攪拌器で 15~60 分混合遠心分離 ( 約 1 時間 ) GC/FID 19L の攪拌器 ( モーター付き ) を使用 DeFoe ら (1990) 1) 準フラスコ法 : 厳密な意味で OECD105 法に記載されているフラスコ法ではないが, それに準じたあるいは類似の手法によるもの : ハイフンは文献中に説明がない, あるいは確認できなかったもの 28

37 水溶解度 [mg/l] 水温 [ ] 準フラスコ法 1) 表 Ⅰ1 既報の DEHP の水溶解度 (2) 水溶解度測定方法溶液調製法前処理法分析法備考参考文献 フラスコ振とう法 (U.S.EPA) 蒸留水に, 濁度が出るまで DEHP のエタノールまたはアセトン溶液を添加 井戸水に DEHP を直接添加 15 分静置濁度測定 遠心分離後, 等量のアセトニトリルを添加 HPLC 50mL ビーカー スターラー使用, トラガカントガム ( 樹脂からなる糊剤 ) 添加 井戸水 ステンレス製キャップつき試験管使用,n=3 2 回以上, 平衡化確認 ( ただし時間記載なし, 経時変化データなし ) Hollifield (1979) Howard ら (1985) 推定値 ( 平均値 ) 既存データの平均を算出 U.S. EPA (1995) フラスコ振とう法 (U.S.EPA) 0.36 準フラスコ法 1) フラスコ法 ASTM type 2 の水 ( 純水 ) に DEHP を直接添加 脱イオン蒸留水を攪拌しながら 5 分毎に一定量の DEHP を直接添加, サンプリング 水に DEHP を直接添加,24 時間攪拌 遠心分離後, 等量のアセトニトリルを添加 超音波処理 (2 分 ) 遠心分離 + 液 液抽出 ( イソオクタン ) HPLC 濁度測定 + GC/FID ASTM type 2 の水, ステンレス製キャップつき試験管使用,n=3 2 回以上, 平衡化確認 ( ただし時間記載なし, 経時変化データなし ) チンダル効果に基づく測定法 19L の攪拌器 ( モーター付き ) を使用, サンプリング n=3, 過飽和となる直前の点, グラフの変曲点のすぐ手前を水溶解度とする Howard ら (1985) DeFoe ら (1990) GLC n=2 Wolfe ら (1980a) 1 25 環境省初期リスク評価書 : 記載値 IPCS (1992) 1.3 Hirzy ら (1979) 1) 準フラスコ法 : 厳密な意味で OECD 105 法に記載されているフラスコ法ではないが, それに準じたあるいは類似の手法によるもの : ハイフンは文献中に説明がない, あるいは確認できなかったもの 29

38 5. 現在のわが国における法規制等化学物質排出把握管理促進法 : 第一種指定化学物質消防法 : 危険物第 4 種第 4 石油類労働安全衛生法 : 名称等を通知すべき有害物食品衛生法 : 器具 容器包装およびおもちゃの規格基準通知等 : 塩化ビニル製手袋の使用の自粛を促す厚生労働省の通知, ポリ塩化ビニル製の医療用具から溶出する可塑剤について水質管理目標設定項目 :0.1 mg/l 以下 30

39 6. 本評価書の構成本評価書の構成を図 Ⅰ1 に示す 図 I1 本評価書の構成 第 Ⅰ 章 ( 本章 ) では, 評価書作成の目的を述べ,DEHP の歴史的 国際的動向, 物理化学的性状および法規制についてまとめ, 本評価書の構成を示した 物理化学的性状において, 水溶解度については, これまでに疑義の対象となってきた経緯があることから, 詳細な説明を加えた 第 Ⅱ 章では, 国内外の公的機関から公表されている DEHP に関する有害性評価書やリスク評価書をまとめ, 論点を確認した 第 Ⅲ 章では, わが国における DEHP の生産量と用途についてまとめ, 発生源を確認し,DEHP の全ライフサイクルからの環境中への排出量を推計した 第 Ⅳ 章では,DEHP の分析法とこれまでに報告されているモニタリングデータの集計 解析を行い, モニタリングデータに基づく DEHP のヒトの摂取量を推計した 第 Ⅴ 章では,DEHP に関する既報の分配平衡や分解データをまとめ, 簡易型の数理モデルを用いて DEHP の発生源からヒトや環境中の生物に至る暴露の道筋を確認した 第 Ⅵ 章では,DEHP の大気中濃度と農作物および畜産物の生産 出荷量の空間分布を考慮し, 現実的な農作物および畜産物経由の DEHP 摂取量を数理モデルにより推計し, 発生源か 31

40 らヒトに至る DEHP の定量的な流れを推定した さらに, 多摩川水系を対象とし,DEHP の発生負荷量と河川への排出負荷量の推定を行い, 水系モデルを用いて河川濃度分布の予測を行った 第 Ⅶ 章では, ヒトのリスク評価に用いる毒性試験データおよび環境中の生物に対する有害性データをまとめ, リスク評価で用いる試験データを決定した 第 Ⅷ 章では, 暴露評価と有害性評価の結果に基づいて,DEHP のヒトの健康および環境中の生物へのリスクを判定した 第 Ⅸ 章では,DEHP の大気への排出削減対策の費用対効果について検討を行った 第 Ⅹ 章では,DEHP の詳細リスク評価を総括した 第 XI 章に, 本評価書のバージョン 0.5( 外部レビュー用 ) に対する外部レビュアーの主なコメントと著者らの対応を紹介した 32

41 第 Ⅱ 章既存の有害性およびリスク評価結果 1. はじめに DEHP については, 第 Ⅰ 章で触れたように既にわが国および諸外国においてヒトの健康や生態系に対する有害性評価やリスク評価が行われ, それらの評価の過程や結果は, 評価書として公表されている これらの既存の有害性評価書およびリスク評価書を調査し, 本評価書においてヒト健康および生態系への DEHP のリスクを評価する際の参考とした 調査対象としたわが国および諸外国の評価書を以下に示す 1) 経済産業省, 化学物質審議会管理部会 審査部会 (2002): 内分泌かく乱作用を有すると疑われる と指摘された化学物質の個別有害性評価書 ( 以後, 経産省個別有害性評価書と略 ) 2) 化学物質評価研究機構 製品評価技術基盤機構 (2002): 化学物質の初期リスク評価 No.7( 以後, 化評研 製評機構初期リスク評価書と略 ) 3) 環境省 (2002): 化学物質の環境リスク初期評価 ( 以後, 環境省環境リスク初期評価書と略 ) 4)Agency for Toxic Substances and Disease Registry (ATSDR) (2002): Toxicological Profile for di(2ethylhexyl)phthalate. ( 以後,ATSDR 評価書と略 ) 5)EU (2001): Risk Assessment Bis(2ethylhexyl)Phthalate, Consolidated Final Report. ( 以後,EU 評価書暫定版と略 ) 6)National Toxicology Program (NTP) (2000): NTPCenter for the Evaluation of Risks to Human Reproduction(CERHR) Expert Panel Report on Di(2ethylhexyl) phthalate. ( 以後,NTP 評価書と略 ) 7)Environment Canada and Health Canada (1994): Priority Substances List, Assessment Report Bis(2ethylhexyl)Phthalate. ( 以後, カナダ評価書と略 ) 8)WHO (1992): Environmental Health Criteria 131: Diethylhexyl Phthalate. ( 以後, EHC と略 ) 各既存評価書について, 評価の範囲, 有害性評価のエンドポイント 9, 暴露の指標, リスク判定の指標および評価結果の各項目を調査し, 比較表の形式でまとめた 以下に, ヒト健康と生態系に分けて各項目の調査結果の概要を示す 9 エンドポイント : 影響判定点 リスクを評価する対象として設定する事象 ( 特定の病気の発病, あるいはそれによる死亡など ) 33

42 2. 評価の範囲表 Ⅱ1 に示すように,DEHP に関するわが国の評価書では, 経産省個別有害性評価書がヒト健康影響への有害性評価のみであったが, 他の評価書では暴露評価とヒト健康と生態へのリスク評価まで行われている 諸外国の評価書では,ATSDR 評価書がヒト健康への有害性評価と暴露評価のみ,NTP 評価書がヒト健康リスクのみであったが, 他の評価書では生態リスク評価も行われている 表 Ⅱ1 既存評価書における評価範囲の比較 評価書 評価対象リスクリスク評価に係る要素ヒト健康生態有害性暴露リスク 経産省個別有害性評価書 化評研 製評機構初期リスク評価書 環境省環境リスク初期評価書 ATSDR 評価書 EU 評価書暫定版 NTP 評価書 カナダ評価書 EHC : 評価対象,: 評価対象外 34

43 3. 有害性評価のエンドポイント ( 影響指標 ) 既存の評価書において,DEHP の有害性評価およびリスク評価の際に考慮された有害性評価のエンドポイント ( 影響指標 ) を, ヒト健康影響と生態影響に分けて紹介する 3.1 ヒト健康影響有害性評価のエンドポイント ( 影響指標 ) は, 評価書が作成された時点までの既知見に大きく依存するため, かなり以前に作成された EHC やカナダ評価書と最近作成された評価文書では大きく異なる ( 表 Ⅱ2 参照 ) 表 Ⅱ2 から明らかなように,2000 年以降に作成された経産省個別有害性評価書, 化評研 製評機構初期リスク評価書, 環境省環境リスク初期評価書,NTP 評価書,EU 評価書暫定版および ATSDR 評価書では, 1) エンドポイントとして,Poon ら (1997) の試験で認められた精巣毒性が経産省個別有害性評価書と ATSDR を除くいずれの評価文書においても採用されている また ATSDR 評価書では,David ら (2000a) の試験で認められた精巣毒性がエンドポイントに採用されている 2) エンドポイントして,Lamb ら (1987) の試験で認められた生殖毒性 10 が,NTP 評価書,EU 評価書暫定版および ATSDR 評価書で採用されている また経産省個別有害性評価書では,Tyl ら (1984;1988) の試験で認められた生殖毒性がエンドポイントに採用されている 3)EU 評価書暫定版では, 上記の精巣毒性, 生殖毒性に加えて,Moore(1996) の試験で認められた腎毒性と Arcadi ら (1998) の試験で認められた発生毒性 11 もエンドポイントに採用されている 4) 経産省個別有害性評価書では, 上記の生殖毒性に加えて,Poon らの試験で認められた肝臓と腎臓への影響をエンドポイントとしている 各評価書において, エンドポイントとして選択された毒性が認められた試験については, 本章の表 Ⅱ5 および表 Ⅱ6 に概要を示す 10 生殖毒性 : 生物の生殖機能に及ぼす有害影響 11 発生毒性 : 生物の次世代の発生過程に及ぼす有害影響 35

44 表 Ⅱ2 既存の有害性およびリスク評価書でレビューされたヒト健康影響に係る主要な毒性試験の比較 (1) 一般毒性試験 評価書 NTP,1982( マウス ) NTP,1982( ラット ) BIBRA,1984 Hazleton,1992a( マウス ) Hazleton,1992b( ラット ) Short ら,1987 Klimisch ら,1992 Poon ら,1997 Kurata ら,1998 Moore,1996 David ら,2000a 経産省個別有害性評価書 2002 年 化評研 製評機構初期リスク評価書 2002 年 環境省環境リスク初期評価書 2002 年 ATSDR 評価書 2002 年 EU 評価書暫定版 2001 年 NTP 評価書 2000 年 : エンドポイントとして採用された毒性試験,: 有害性評価でレビューされた毒性試験,: 考慮されなかった毒性試験 カナダ評価書 1994 年 36 EHC 1992 年

45 表 Ⅱ2 既存の有害性およびリスク評価書でレビューされたヒト健康影響に係る主要な毒性試験の比較 ( つづき ) 評価書 生殖 発生毒性試験 Yagi ら,1980;Nakamura ら, 1979;Tomita ら,1982 Shiota ら,1980;1982 Reel ら,1982 Tyl ら,1984;1988 Shiota と Mima,1985 Agarwal ら,1986 Price ら,1986 Lamb ら,1987 Ritter ら,1987 Price ら,1988 Merkle ら,1988 Srivastava ら,1989 Narotsky と Kavlock,1995 Narotsky ら,1995 Parmar ら,1995 Huntingdon,1996 Hellwig ら,1997 Peters ら,1997 Arcadi ら,1998 Schilling ら,1999 経産省個別有害性評価書 2002 年 化評研 製評機構初期リスク評価書 2002 年 環境省環境リスク初期評価書 2002 年 ATSDR 評価書 2002 年 EU 評価書暫定版 2001 年 NTP 評価書 2000 年 カナダ評価書 1994 年 : エンドポイントとして採用された毒性試験,: 有害性評価でレビューされた毒性試験,: 考慮されなかった毒性試験 EHC 1992 年 37

46 3.2 生態影響既存の評価書では, 通常, 生物種の致死, 成長, 発達, 繁殖が影響指標として採用されている 媒体別にみると, 水系に生息する生物への影響, 特に水経由直接暴露による影響が詳細に評価されている 水生生物への影響は, 通常, 生産者 ( 藻類 ), 一次消費者 ( ミジンコ等 ) および二次消費者 ( 魚類 ) の各栄養段階の代表種を用いた試験に基づいて評価される その際, 各生物群を通して慢性影響に係る無影響濃度 12 (NOEC) の最も低い値が採用され, アセス メント係数を用いて予測無影響濃度 (PNEC) や環境基準値が算出されている EU 評価書暫定版では, 水経由の直接暴露だけでなく底質や餌経由の暴露も評価の対象としており, 陸生生物に対しても評価している 表 Ⅱ3 および表 Ⅱ4 に既存の評価書においてレビューされた試験の一覧を示す ただし, 表中に記載されている文献のすべてが本評価書巻末の参考文献に記載されているわけではない 巻末に記載のない文献については, 引用元の既存評価書を参照されたい 各評価書において考慮された生態毒性試験および影響指標は以下の通りである 1) 化評研 製評機構初期リスク評価書では, 水生生物の水経由暴露のみを評価対象とし, 藻類については Adams ら (1995), 無脊椎動物については Knowles ら (1987), 魚類については DeFoe ら (1990) の試験結果を用いている 評価における影響指標として, 無脊椎動物の致死 繁殖に対する NOEC (0.158 mg/l) を報告している Knowles ら (1987) の試験を採用している 2) 環境省環境初期リスク評価書でも, 化評研 製評機構初期リスク評価書と同様, 水生生物の水経由暴露のみを評価対象としており, 藻類については Adams ら (1995) と環境庁 (1997), 無脊椎動物については Rhodes ら (1995),Passino と Smith(1987), 魚類については Birge ら (1979) の試験結果を用い,Rhodes ら (1995) における試験結果の NOEC (0.077 mg/l) をリスク評価に用いている PNEC は, アセスメント係数 100 を考慮し,0.77μg/L となっている 3)EU 評価書暫定版では, 水生生物の水経由暴露における影響指標は, データの信頼性の面から NOEC を決定することは適当でないという立場をとっている しかし, 他の暴露経路や陸生生物に対して PNEC 設定を試みている その検討に用いられた試験は, 底質経由暴露の底生生物については Thompson ら (1995),Brown ら (1996), および Solyom ら (2001), 両性類については Woin と Larsson (1987), 魚の餌経由暴露については Norrgren ら (1999), 活性汚泥の呼吸阻害に対して Hüls Infracor(1999), 土壌植物に対して Diefenbach(1998b), 餌経由の鳥類に対して Wood と Bitman (1980), 陸生哺乳類に対して Poon ら (1997) の試験である 12 無影響濃度 : NOEC(noobservedeffectconcentration) 毒性試験において暴露群と対照群との間で有意な有害影響がみられなかった被験物質の最高濃度 13 アセスメント係数 : 化学物質の環境中の生物に対する影響を, 毒性試験の結果から判定する際, 組み入れる係数 係数は利用できる毒性試験データの量と質よって決定される 14 予測無影響濃度 :PNEC(predicted no effect concentration) 試験生物種の毒性値を不確実係数で除することにより算出した, 生態系に対して有害影響を及ぼさないと予想される濃度 38

47 4) カナダ評価書では,Springborn Bionomics (1984) によるオオミジンコに対する致死影響試験結果を用いて推定影響閾値 (8μg/L) を導出している 5)EHC では, 多くの試験データがレビューされているが評価に用いる定量的な無影響濃度や閾値の設定はされていない なお, 各毒性試験の概要は第 Ⅶ 章に記載されている 39

48 表 Ⅱ3 既存の有害性およびリスク評価書でレビューされた水生生物への生態毒性試験の比較 微生物 ( 活性 汚泥含む ) 藻類 評価書 Mathur,1974 Mutz と Jones,1977 Bringmann と Kühn,1980;1981 Perez ら,1983 BASF AG,1983 Larsson ら,1986 Volskay と Leslie Grady,1988 O'Connor ら,1989 BASF AG,1991 Sauvant ら,1995a Sauvant ら,1995b Hüls AG,1996 Hüls Infracor,1999 Wilson ら,1978 Bringmann と Kühn,1980 Davis,1981 BASF AG,1990 CMA,1990 Adams ら,1995 Hüls AG,1995 環境庁,1997 環境省環境リスク初期評価書 (2002 年 ) 化評研 製評機構初期リスク評価書 (2002 年 ) カナダ評価書 (1994 年 ) : リスク評価で考慮された試験,: 有害性評価でレビューされた毒性試験,: 考慮されなかった毒性試験 40 EU 評価書暫定版 (2001 年 ) EHC (1992 年 )

49 表 Ⅱ3 既存の有害性およびリスク評価書でレビューされた水生生物への生態毒性試験の比較 ( つづき ) 無脊椎 動物 評価書 Sanders ら,1973;Johnson と Finley,1980 Mayer と Sanders, 1973 Hobson ら,1984 Streufert, 1977; Streufert ら, 1980 Laughlin ら, 1978 Linden ら, 1979 LeBlanc, 1980 Brown と Thompson, 1982a;1982b Adams と Renaudette, 1983 Adams と Calvert, 1983 Stephenson, 1982; 1983 Adams と Heidolph, 1985; Adams, 1978 Knowles ら,1987 Passino と Smith,1987 Woin と Larsson,1987 Yoshioka ら,1986 Yoshioka ら,1987 Adams ら,1995 Rhodes ら,1995;Springborn Bionomics, 1984;Cox と Moran,1984 Thuren と Woin, 1991 Scholz,1995 Buchen と Vogel,1995 Thompson ら,1995;Brown ら,1996 環境庁,1997 CMA,1997 Brown ら,1998 環境省環境リスク初期評価書 (2002 年 ) 化評研 製評機構初期リスク評価書 (2002 年 ) カナダ評価書 (1994 年 ) : リスク評価で考慮された試験,: 有害性評価でレビューされた毒性試験,: 考慮されなかった毒性試験 41 EU 評価書暫定版 (2001 年 ) EHC (1992 年 )

50 表 Ⅱ3 既存の有害性およびリスク評価書でレビューされた水生生物への生態毒性試験の比較 ( つづき ) 魚類 評価書 Zitko, 1972 Bionomics INC., 1972 Mayer と Sanders, 1973 Silvo, 1974 Waggy と Payne, 1974 Pfuderer と Francis, 1975 Mehrle と Mayer, 1976 Hrudey ら, 1976 Mayer ら, 1977 Birge ら, 1978 Birge ら,1979 Johnson と Finley,1980 Freeman ら, 1981 Adema ら, 1981 Buccafusco ら, 1981 Heitmuller ら,1981 EG & G Bionomics, 1983 Henderson と Sargent,1983 Canton ら, 1984 Yoshioka ら,1986 van den Dikkenberg, 1989 DeFoe ら,1990 Rhodes と McAllister, 1990 CMA, 1990 Cohle と Stratton, 1992 MITI, 1992 Adams ら,1995 Menzel, 1995 環境庁, 1997 Norrgren ら,1999 ( 餌経由 ) 環境省環境リスク初期評価書 (2002 年 ) 化評研 製評機構初期リスク評価書 (2002 年 ) カナダ評価書 (1994 年 ) : リスク評価で考慮された試験,: 有害性評価でレビューされた毒性試験,: 考慮されなかった毒性試験 EU 評価書暫定版 (2001 年 ) 42 EHC (1992 年 )

51 表 Ⅱ3 既存の有害性およびリスク評価書でレビューされた水生生物への生態毒性試験の比較 ( つづき ) その他の水生生物に対する毒性 評価書 Birge ら,1978 Wams,1987 Dumpert,1981;Dumpert と Zietz,1983 Larsson と Thuren,1987 Wennberg ら,1997 Solyom ら,2001 環境省環境リスク初期評価書 (2002 年 ) 化評研 製評機構初期リスク評価書 (2002 年 ) カナダ評価書 (1994 年 ) : リスク評価で考慮された試験,: 有害性評価でレビューされた毒性試験,: 考慮されなかった毒性試験 EU 評価書暫定版 (2001 年 ) 43 EHC (1992 年 )

52 微生物 植物 表 Ⅱ4 既存の有害性およびリスク評価書でレビューされた陸生生物への生態毒性試験の比較 評価書 Mathur,1974 Kirchmann ら,1991 Cartwright ら,2000 Schweiger ら,1983 Lökke と Rasmussen,1983 Langerbartels と Harms,1986 Herring と Bering,1988 環境省環境リスク初期評価書 (2002 年 ) 化評研 製評機構初期リスク評価書 (2002 年 ) カナダ評価書 (1994 年 ) Diefenbach, 1998a AlBadry と Knowles,1980 Neuhauser ら,1985 Neuhauser ら,1986 Diefenbach,1998b Peakall,1974 動物 Hill ら,1975 General Electric Co., 1976 O'Shea と Stafford,1980 Wood と Bitman,1980 Wood と Bitman,1984 Ishida ら,1982 Poon ら,1997 : リスク評価で考慮された試験,: 有害性評価でレビューされた毒性試験,: 考慮されなかった毒性試験 44 EU 評価書暫定版 (2001 年 ) EHC (1992 年 )

53 4. 暴露の指標既存の評価書において,DEHP の暴露評価の際に用いられた暴露の指標を, ヒトと生態に分けて紹介する 4.1 ヒト DEHP のヒト健康リスク評価を行っている化評研 製評機構初期リスク評価書, 環境省環境リスク初期評価書,NTP 評価書, カナダ評価書および EU 評価書暫定版では, 経口暴露が DEHP の主要な取り込み経路であるとしている ヒトの経口暴露の指標には, 平均一日摂取量 ( 潜在用量 ), 体内用量, 生物学的有効用量, 体内負荷量等があるが,DEHP は代謝を受け, 体内蓄積性物質ではないこととヒト体内での動態を適切に評価できる数理モデルがないこと等の理由から, 全ての評価文書においてヒトの体重 1 kg あたりの平均一日摂取量 15 を暴露指標としている 対象とする暴露集団は, 化評研 製評機構初期リスク評価書, 環境省環境リスク初期評価書, カナダ評価書では一般成人であるのに対し,NTP 評価書,EU 評価書暫定版および ATSDR 評価書では成人に加えて, 子供 ( 乳幼児 ) も考慮されている 既存評価書でリスク評価に用いられた摂取量を表 Ⅱ5 と表 Ⅱ6 に示す 4.2 生態生態リスク評価における暴露指標は, 通常, 評価対象生物が生息する環境媒体中の評価対象物質の濃度である 水生生物では, 水中濃度と底質中濃度が, 陸生生物では土壌中濃度が代表的な暴露指標である EU 評価書暫定版では, 餌経由暴露の影響も想定され, 魚類や魚食性大型生物に対しては餌経由の DEHP 量も暴露指標となっている 暴露指標は, モニタリングデータを用いるか, 数理モデルで予測するか, あるいはその組合せとなる 環境省環境リスク初期評価書や化評研 製評機構初期リスク評価書では, 水環境中のモニタリングデータの統計解析を行い,95 パーセンタイル 16 を算出し, その値を暴露指標としている 一方,EU 評価書暫定版では, 主要媒体については, 欧州連合の化学物質によるヒトの健康と環境影響の統合的な初期評価ツールである EUSES を用いて, 業種別の排出源近傍における PEC 17 local, 一般的な河川地域の PEC regional, より広範囲の PEC continental を算出している 餌中濃度については, 分配係数などを用いてその濃度を算出している 既存評価書の生態リスク評価に用いられた暴露指標についてその概要を表 Ⅱ7 と表 Ⅱ8 15 本評価書では, ヒトの体重 1 kg あたりの平均一日摂取量を単に摂取量 (μgdehp/kg 体重 / 日 ) として記載する これに該当しない場合は, 単位を付記する等, 区別して記載する 16 パーセンタイル : ある値 P α より小さな値をとる観測値の割合がα% となるとき, この値 P α をαパーセンタイルという n 個の観測値を小さい方から順に x 1,x 2,,x i,,x n としたとき,P α は以下の式で求められる i / n = α / 100, P ( )/ α = x i + xi PEC(predicted environmental concentration): 予測環境中濃度 安全側に立った評価の観点から実測データや数学的なモデルにより求めた化学物質の環境中濃度 45

54 に示す 46

55 5. リスク判定の指標既存の評価書において, リスク評価の際に考慮された判定の指標を, ヒト健康リスクと生態リスクに分けて紹介する 5.1 ヒト健康リスク DEHP のヒト健康リスク評価を行っている化評研 製評機構初期リスク評価書, 環境省環境リスク初期評価書,NTP 評価書および EU 評価書暫定版では, 上記の各評価エンドポイントの無毒性量 18 (NOAEL) と DEHP の摂取量の比でリスクを判定している この比を, 化評研 製評機構初期リスク評価書と環境省環境リスク初期評価書では暴露マージン 19 (MOE), EU 評価書暫定版では MOS(Margin of Safety) として記述している カナダ評価書では,NOAEL に不確実係数 20 を適用して導出した耐容一日摂取量 21 (TDI) と摂取量の比 ( いわゆるハザード比 ) でリスクを判定している 既存評価書でリスクの判定時に算出された MOE,MOS 等のリスク指標を表 Ⅱ5 と表 Ⅱ6 に示す 5.2 生態リスク化評研 製評機構初期リスク評価書では, 評価に用いる影響指標と環境水中濃度の比, すなわち MOE でリスクを判定している 環境省環境リスク初期評価書では, 評価に用いる影響指標にアセスメント係数を適用して予測無影響濃度 (PNEC) を算出し,PNEC と予測環境中濃度 (PEC) の比 (PEC/PNEC 比 ) でリスクを判定している EU 評価書暫定版も同様の方法で複数の暴露経路や生物群に対して,PEC/PNEC 比を算出している カナダ評価書や EHC では, 定量的なリスク指標は提示せず, 定性的な表現を用いて影響の可能性を述べている 既存評価書の生態リスク評価でリスク判定時に算出されたリスク指標を表 Ⅱ7 と表 Ⅱ8 に示した 18 無毒性量 :NOAEL(noobservedadverseeffectlevel) 毒性試験において, 暴露群での有害な影響の重症度や頻度が統計学的もしくは生物学的に対照群よりも有意に増加しない最も高い投与量 19 暴露マージン :MOE(margin of exposure) 非発がん性の健康影響や生態系へのリスクを判定する際に用いる指標の 1 つ 摂取量 ( 暴露濃度 ) がヒトの NOAEL や生態系の NOEC に対してどれだけ離れているかを示す係数で,NOAEL(NOEC)/ 摂取量 ( 暴露濃度 ) により算出する この値が大きいほど現時点の摂取量 ( 暴露濃度 ) はヒトや生態系に有害性を発現するまでの余裕が大きいということを示している 20 不確実係数 : 化学物質の非発がん性の有害影響を, 毒性試験や疫学調査の結果からヒトに外挿する際に, 必要に応じて組み入れる係数 考慮すべき要素としては, ヒトと動物の感受性の種間差, ヒトの感受性の個人差,LOAEL から NOAEL への外挿等がある 21 耐容一日摂取量 :TDI(tolerable daily intake) ヒトが生涯にわたり, 毎日摂取しても, 健康に有害な影響が現れないと考えられる 1 日当たり体重 1 kg 当たりの化学物質量 47

56 6. 評価結果既存の評価書におけるリスク評価結果を, ヒト健康リスクと生態リスクに分けて紹介する 6.1 ヒト健康リスク各評価書のリスク評価結果を以下に示す 1)NTP 評価書では, 一般成人への健康リスクへの懸念は低いと結論されている 2)EU 評価書暫定版では,DEHP の環境排出源近傍においては一般成人であってもいくつかのシナリオにおいて, 精巣毒性と発生毒性のエンドポイントに対するリスクが懸念されると結論されている 3)NTP 評価書と EU 評価書暫定版では, 子供 ( 乳幼児 ) に対する精巣毒性と生殖毒性のエンドポイントに対するリスクが懸念されると結論されている 4) カナダ評価書では, リスクが懸念される, 環境省環境リスク初期評価書と化評研 製評機構初期リスク評価では, 詳細リスク評価が必要と結論されている既存評価書におけるリスク評価結果を表 Ⅱ5 と表 Ⅱ6 に示す 6.2 生態リスク各評価書における生態リスク評価結果を以下に示す 1) 化評研 製評機構初期リスク評価書では, 環境中の水生生物に悪影響を及ぼすことはないと結論されている しかし,DEHP の水溶解度は低く, その有害性の強さが明確でない部分もあり, 対水溶解度や試験生物を十分考慮に入れた試験方法によって, さらに精度の高いデータの集積が必要であると結論されている 2) 環境省環境リスク初期評価書では, 淡水域については, 詳細リスク評価を行う候補, 海水域については情報収集に努める必要があると結論されている 3)EU 評価書暫定版では, 水環境における魚に対する餌経由のリスクについては, さらなる情報および / または試験の必要があると結論されている 他の媒体 経路については, 全て, さらなる情報および / または試験の必要性および既に適用されている措置以上のリスク低減措置の必要性はないと結論されている 4) カナダ評価書では, データが不十分なため判断はできないと結論されている 5)EHC では, 環境濃度と影響濃度を比較すると初期成長段階の魚類や両生類に対する有害影響は無視できないとし, 排出源近傍などの高濃度で汚染された場所に生息する生物は有害影響を被る可能性があると結論されている既存評価書におけるリスク評価結果を表 Ⅱ7~ 表 Ⅱ8 に示す 48

57 表 Ⅱ5 ヒト健康影響に係る DEHP の有害性およびリスク評価書の比較 ( 国内 ) 評価に用いられた有害性情報 22 遺伝毒性, 発がん性等 評価書 1) 一般毒性 2) 生殖発生毒性 1) 遺伝毒性 ( 変異原性 ) 経済産業省化学物質審議会管理部会 審査部会 : 内分泌かく乱作用を有すると疑われる と指摘された化学物質の個別有害性評価書 (2002 年 ) SD ラット雌雄各 10 匹 / 群雄 :0,0.4,3.7,38,375 mg/kg/ 日雌 :0,0.4,4.2,42,419 mg/kg/ 日 90 日間混餌投与 375 mg/kg/ 日 : 雌雄で肝と腎重量の増加肝細胞の肥大, ペルオキシゾームの増生 雄に貧血 NOAEL:37mg/kg/ 日 ( 精巣毒性に対する NOAEL ではなく上記影響に対する値 ) [ 出典 :Poon ら,1997] CD1 マウス 30 匹 / 群 0,44,91,191,293 mg/kg/ 日妊娠 0~17 日に混餌投与妊娠後期に母獣および仔を観察 91 mg/kg/ 日 : 骨格内臓外表に奇形 NOAEL:44 mg/kg/ 日 [ 出典 :Tyl ら,1988] in vitro での復帰突然変異試験ラット肝細胞を用いる染色体異常試験 UDS 試験等で陰性 マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験では陽性 in vivo では単回腹腔内投与による優性致死試験も陰性ショウジョウバエを用いた伴性劣性致死試験マウス末梢血小核試験でも陰性 化学物質評価研究機構, 製品評価技術基盤機構 : 化学物質の初期リスク評価 No.7(2002 年 ) SD ラット雌雄各 10 匹 / 群雄 :0,0.4,3.7,38,375 mg/kg/ 日雌 :0,0.4,4.2,42,419 mg/kg/ 日 90 日間混餌投与 38 mg/kg/ 日 : 軽微な精巣セルトリ細胞空胞化 ( 雄 ) NOAEL:3.7 mg/kg/ 日 ( 雄 ) [ 出典 :Poon ら,1997] 環境省 : 化学物質の環境リスク初期評価 (2002 年 ) SD ラット雌雄各 10 匹 / 群雄 :0,0.4,3.7,38,375 mg/kg/ 日雌 :0,0.4,4.2,42,419 mg/kg/ 日 90 日間混餌投与 38 mg/kg/ 日 : 軽微な精巣セルトリ細胞空胞化 ( 雄 ) NOAEL:3.7 mg/kg/ 日 ( 雄 ) [ 出典 :Poon ら,1997] 該当する情報なし該当する情報なし in vitro での復帰突然変異試験ラット肝細胞を用いる染色体異常試験 UDS 試験等で陰性 マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験では陽性 in vivo では単回経口投与による優性致死試験も陰性ショウジョウバエを用いた伴性劣性致死試験, マウス末梢血小核試験でも陰性 記載なし 22 遺伝毒性 : 化学物質が DNA や染色体に作用して,DNA 遺伝子に突然変異や染色体に異常を引き起こす能力 49

58 表 Ⅱ5 ヒト健康影響に係る DEHP の有害性およびリスク評価書の比較 ( 国内 )( つづき ) 遺伝毒性, 発がん性等 リスクの判定 評価書 2) 発がん性 3) その他の毒性 1) 暴露指標記載なし 2) 評価に用いられた NOAEL 等 経済産業省化学物質審議会管理部会 審査部会 : 内分泌かく乱作用を有すると疑われる と指摘された化学物質の個別有害性評価書 (2002 年 ) ラット マウスの反復投与毒性試験でペルオキシゾームの増生がみられるが, 霊長類では必ずしも生じない ヒトの肝臓から単離した培養肝細胞を用いた実験でペルオキシゾームに関連した反応がヒト細胞では生じないことから,IARC は 2000 年に 2B から 3 に分類を変更した 内分泌系への影響 : レセプター結合に関する in vitro 試験ではヒトエストロゲン受容体 (ER) に弱い結合性を示した以外はラット子宮ホモジネート等を用いた試験で ER 結合性は示さなかった レポーター遺伝子アッセイでも ER を介する転写活性は示されていない免疫系への影響 : 現時点で報告はない 化学物質評価研究機構, 製品評価技術基盤機構 : 化学物質の初期リスク評価 No.7(2002 年 ) ラットやマウスで肝ペルオキシソーム増生に伴い肝細胞の増殖が促進されて腫瘍性変化を引き起こし肝がんをプロモートするとの報告があるが霊長類では必ずしも生じないことヒトから単離した培養肝細胞を用いた多くの in vitro 試験で, ペルオキシソーム増生に関連した反応がヒトの細胞では生じないことから,IARC は 2000 年に 2B から 3 に変更した 内分泌系への影響 : レセプター結合に関する in vitro 試験ではヒトエストロゲン受容体 (ER) で弱い結合性を示した以外はラット子宮ホモジネート等を用いた試験で ER 結合性は示さなかった レポーター遺伝子アッセイでも ER を介する転写活性は示されていない免疫系への影響 : 現時点で報告はない 摂取量 ( 経口のみ ):6.9μg/kg/ 日 ( 吸入のみ ):0.64μg/kg/ 日 環境省 : 化学物質の環境リスク初期評価 (2002 年 ) ラット マウスで肝細胞がんの発生率の増加, マウスで肺への転移がみられたが作用機序の検討から DEHP によるがんは霊長類では発生しないと示唆されげっ歯類特有の発がんと考えられる IARC が 2B から 3 に分類を変更したので発がんリスクの評価は必要ない 記載なし 摂取量最大 :44μg/kg/ 日 ( 平均 :5.6μ g/kg/ 日 ) 記載なし精巣毒性 :3.7 mg/kg/ 日精巣毒性 :3.7 mg/kg/ 日 3) リスク指標記載なし MOE( 吸入と経口 )540 4) 判定結果 内分泌かく乱作用の有無に関わらず従来の知見で生殖 発生毒性の影響がみられるため有害性評価や暴露評価を踏まえてリスク評価を実施し適切なリスク管理のあり方について検討すべき 詳細な調査 解析および評価が必要 MOE 8.4: 平均一日摂取量の最大値を用いた場合 66.0, 平均一日摂取量の平均値を用いた場合 詳細な評価を行う候補 ( 平均値 : 情報収集に努める必要がある ) 50

59 表 Ⅱ6 ヒト健康影響に係る DEHP の有害性およびリスク評価書の比較 ( 国外 ) 評価に用いられた有害性情報 遺伝毒性発がん性 評価書 1) 一般毒性 2) 生殖発生毒性 1) 遺伝毒性 ( 変異原性 ) ATSDR, Toxicological Profile for di(2ethylhexyl)phthalate(2002 年 ) F344 ラット, 雌雄各 60,65 あるいは 70 匹 / 群雄 :0, 5.8, 29, 147, 789 mg/kg/ 日雌 :0, 7.3, 36, 182, 939 mg/kg/ 日 104 週間の混餌投与 29 mg/kg/ 日の雄 : 精子形成欠如 NOAEL:5.8 mg/kg/ 日 [ 出典 :David ら,2000a] CD1 マウス (11 週齢 ) 雌雄 20 組,0,14,141,425 mg/kg/ 日 105 日間 ( 交配前 7 日と 98 日の交配期間中 ), 混餌投与 141 mg/kg/ 日 : 妊娠率低下, 同腹中の生存仔数減少 NOAEL:14 mg/kg/ 日 [ 出典 :Lamb ら,1987] DEHP は DNA に損傷を与えず, 変異原性 / 遺伝毒性物質ではない また, 発がんイニシエータではない EU, Risk Assessment Bis(2ethylhexyl)Phthalate, Consolidated Final Report. September(2001 年 ) 1)F344 ラット, 雌雄各 70~85 匹 / 群雄 :0,5.8,28.9,146.6,789 mg/kg/ 日雌 :0,7.3,36.1,181.7,938.5 mg/kg/ 日 104 週間混餌投与 146.6( 雄 )/181.7( 雌 ) mg/kg/ 日 : 腎臓の絶対 相対重量増加 NOAEL:28.9( 雄 )/36.1( 雌 ) mg/kg/ 日 [ 出典 :Moore, 1996] 2)SD ラット雌雄各 10 匹 / 群雄 :0,0.4,3.7,38,375 mg/kg/ 日雌 :0,0.4,4.2,42,419 mg/kg/ 日 90 日間混餌投与 38 mg/kg/ 日 : 軽微な精巣セルトリ細胞空胞化 ( 雄 ) NOAEL:3.7 mg/kg/ 日 ( 雄 ) [ 出典 :Poon ら,1997] 1)Lamb ら,1987(ATSDR の項参照 ) 2)Long Evans ラット, 雌雄各 70~85 匹 / 群 3.0~3.5/30~35 mg/kg/ 日妊娠 1~21 日に摂水投与 3.0~3.5 mg/kg/ 日 : 仔において精巣相対重量の減少, 肝相対重量の増加, 精巣の組織病理学的変化がみられた NOAEL:<3.5 mg/kg/ 日,LOAEL 23 :3.5 mg/kg/ 日 [ 出典 :Arcadi ら,1998] DEHP,MEHP,2 エチルヘキザノールに関する in vitro と in vivo の変異原性遺伝子損傷性および染色体異常に関するほとんどの試験は陰性 DEHP とその主要代謝物は変異原性でないと考えられる 23 LOAEL(lowestobservedadverseeffectlevel): 最小毒性量, 最小有害影響量 暴露群での有害な影響の重症度や頻度が統計学的もしくは生物学的に対照群よりも有意に増加する最も低い投与量 51

60 表 Ⅱ6 ヒト健康影響に係る DEHP の有害性およびリスク評価書の比較 ( 国外 )( つづき ) 遺伝毒性発がん性 リスクの判定 評価書 2) 発がん性 1) 暴露指標 2) 評価に用いられた NOAEL 等 3) リスク指標記載なし 4) 判定結果記載なし ATSDR, Toxicological Profile for di(2ethylhexyl)phthalate (2002 年 ) DEHP はラットとマウスに肝がんを生じるが, この DEHP による発がんの機序はヒトでは機能しない 摂取量一般住民 ( 成人 ) に対して, 0.21~2.1mg(70 kg の体重の場合の摂取量 :3~30μg/kg/ 日 ) その他, 子供および高暴露集団 ( 輸血患者, 透析患者 ) についても考察されているが, 摂取量の記載はない 生殖毒性 :14 mg/kg/ 日 (Lamb ら,1987) 亜慢性経口 MRL(maximaum risk level):0.1 mg/kg/ 日精巣毒性 :5.8 mg/kg/ 日 (David ら,2000a) 慢性経口 MRL:0.06 mg/kg/ 日 EU, Risk Assessment Bis(2ethylhexyl)Phthalate, Consolidated Final Report. September (2001 年 ) ラットとマウスで明らかに発がん性を示すが, げっ歯類での肝がんの機序 ( レセプター (PPARα) の活性化 ) による肝毒性への感受性がヒトで低いことが証明されている げっ歯類でみられる弱いペルオキシゾーム増生が誘発する肝腫瘍のヒトとの関連性は極めて少ない 摂取量地域スケール ; 子供 :18μg/kg/ 日, 成人 :1.73μg/kg/ 日 腎毒性 :29 mg/kg/ 日 (Moore, 1996) 精巣毒性 :3.7 mg/kg/ 日 (Poon ら,1997) 生殖毒性 :14 mg/kg/ 日 (Lamb ら,1987) 発生毒性 :<3.5 mg/kg/ 日 (Arcadi ら,1998) MOS(margin of safety) 1) 成人 地域 :<2,130( 発生毒性 )~17,600( 腎毒性 ) 局所 :<52( 発生毒性 )~17,400( 腎毒性 ) 2) 子供 地域 :114( 精巣毒性 )~824( 腎毒性 ) 局所 :7( 精巣毒性 )~824( 腎毒性 ) 1) 成人 地域暴露 : 上記の毒性影響に対する懸念はない 局所暴露 : 一部の暴露シナリオにおいて精巣と発生影響が懸念される 2) 子供 地域暴露 : 精巣への影響が懸念される 局所暴露 : 一部の暴露シナリオにおいて精巣, 妊娠率および腎毒性が懸念される 52

61 表 Ⅱ6 ヒト健康影響に係る DEHP の有害性およびリスク評価書の比較 ( 国外 )( つづき ) 評価に用いられた有害性情報 遺伝毒性と発がん性 評価書 1) 一般毒性 2) 生殖発生毒性 1) 遺伝毒性 ( 変異原性 ) National Toxicology Program (NTP), NTPCERHR EXPERT PANEL REPORT on DEHP (2000 年 ) SD ラット (4~6 週齢 ) 雌雄各 10 匹 / 群雄 :0,0.4,3.7,38,375 mg/kg/ 日雌 :0,0.4,4.2,42,419 mg/kg/ 日 90 日間混餌投与 38( 雄 )/42( 雌 ) mg/kg/ 日 : 軽微な精巣病変 / 肝酵素レベルの低下 NOAEL:3.7( 雄 )/4.2( 雌 ) mg/kg/ 日 [ 出典 :Poon ら,1997] 1)Poon ら,1997(EC の項参照 ) 2)Lamb ら,1987 CD1 マウス (11 週齢 ) 雌雄 20 組,0, 14,141,425 mg/kg/ 日 105 日間 ( 交配前 7 日と 98 日の交配期間中 ), 混餌投与 141 mg/kg/ 日 : 妊娠率低下, 同腹中の生存仔数減少 NOAEL:14 mg/kg/ 日 [ 出典 :Lamb ら,1987] 記載なし 2) 発がん性記載なし Environ. Canada/Health Canada, Priority Substances List Assessment Report Bis(2ethylhexyl)Phthalate(1994 年 ) 該当する情報なし記載なし CD1 マウス,30 匹 / 群 0,44,91,191,293 mg/kg/ 日, 妊娠 0~17 日に混餌投与妊娠後期に母獣および仔を観察 91 mg/kg/ 日 : 骨格, 内臓, 外表に奇形 NOAEL:44 mg/kg/ 日 [ 出典 :Tyl ら,1988] 広範な in vitro と in vivo の動物試験から, DEHP は遺伝毒性でないと考えられる 動物試験は, 代謝物の MEHP と 2 エチルヘキサノールも遺伝毒性でないことを示す CEPA(Canadian Environmental Protection Act) に基づく発がん性分類案でグループ Ⅳ( ヒトへの発がん性の可能性は低い ) に分類される WHO, Environmental Health Criteria 131. Diethylhexyl Phthalate(1992 年 ) 記載なし 各種遺伝毒性試験で DEHP と主要代謝物は, バクテリアおよび哺乳動物細胞 (in vitro) に直接的な遺伝毒性を示さない in vivo 試験でも DEHP と代謝物は DNA と共有結合しない 菌とおよび哺乳動物細胞 (in vitro) に異数体を誘導する可能性を有する 肝臓でのペルオキシゾームの増生と細胞複製の誘導は,DEHP のような非遺伝毒性物質の肝臓がんと強く関連している ペルオキシゾームの増生には著しい種差がある 現時点では,DEHP がヒト発がん性の可能性がある物質とする十分な証拠はない 53

62 表 Ⅱ6 ヒト健康影響に係る DEHP の有害性およびリスク評価書の比較 ( 国外 )( つづき ) リスクの判定 評価書 1) 暴露指標 2) 評価に用いられた NOAEL 等 3) リスク指標ハザード比 4) 判定結果 National Toxicology Program (NTP), NTPCERHR EXPERT PANEL REPORT on DEHP (2000 年 ) 摂取量成人 :3~30μg/kg/ 日 ( 一般住民, 主に摂食 ) 乳幼児 :mouthing( 食べ物以外の物を口にすること ) により摂取量は数倍高くなるであろう 生殖毒性 :3.7~14 mg/kg/ 日 成人 : 暴露が一般集団の生殖に悪影響を及ぼす懸念は最小限である乳幼児 : 摂取量が数倍高ければ, 男性生殖器官の発達に有害な影響を及ぼす懸念がある Environ. Canada/Health Canada, Priority Substances List Assessment Report Bis(2ethylhexyl)Phthalate(1994 年 ) 摂取量,μg/kg/ 日カナダ一般住民 ; 0.0~0.5 歳 :8.9~ ~4 歳 :19 5~11 歳 :14 12~19 歳 :8.2 20~70 歳 :5.8 生殖毒性 :44 mg/kg/ 日 TDI:44μg/kg/ 日ハザード比 一般住民の摂取量は 5.8~19.0μg/kg/ 日 子供用製品からの追加の摂取を考慮すると, 乳児 (0~0.5 歳 ) と子供 (0.5~4 歳 ) の推定全摂取量は 8.9~23.1 μ g/kg/ 日となり,TDI の 1/6~1/2 に相当 DEHP が検出されない食物中濃度をゼロと仮定しており, 全年齢群で食物 ( 主要暴露媒体 ) 経由摂取量を過小推定しており, カナダ一般住民の一部の年齢群における DEHP は,TDI に近いあるいはわずかに超えている可能性がある WHO, Environmental Health Criteria 131. Diethylhexyl Phthalate(1992 年 ) 都市域大気中で最高 300 ng/m 3 の濃度が測定されているが, 通常は 100 ng/m 3 よりも低い 輸液, 透析等の医療処置により DEHP 暴露されるであろう 飲料水, 食物経由の暴露は低い 記載なし 記載なし カナダでは, ヒトの健康に有害と思われる量や濃度の DEHP が環境中に排出されている可能性もある記載なし 54

63 表 Ⅱ7 生態影響に係る DEHP の有害性およびリスク評価書の比較 ( 国内 ) 評価に用いられた有害性情報 リスクの判定 評価書 微生物 藻類 甲殻類 魚類 化学物質評価研究機構, 製品評価技術基盤機構 : 化学物質の初期リスク評価 No.7(2002 年 ) Tetrahymena pyriformis ( 原生動物, テトラヒメナ ) 24 増殖阻害 9 h IC 50 :60 mg/l 増殖阻害 36 h IC 50 :8 mg/l [ 出典 :Sauvant ら,1995a;1995b] Selenastrum capricornutum ( 緑藻, セレナストラム ) 生長阻害 96 h NOEC: 0.1 mg/l [ 出典 :Adams ら,1995] Daphnia magna ( 甲殻類, オオミジンコ ) 繁殖 21 d NOEC:0.158 mg/l [ 出典 :Knowles ら,1987] Oncorhynchus mykiss ( 魚類, ニジマス ) 孵化 生存 成長 :> mg/l [ 出典 :DeFoe ら,1990] 環境省 : 化学物質の環境リスク初期評価 (2002 年 ) Tetrahymena pyriformis ( 原生動物, テトラヒメナ ) 増殖阻害 9 h IC 50 :60 mg/l 増殖阻害 36 h IC 50 :8 mg/l [ 出典 :Sauvant ら,1995a;1995b] Selenastrum capricornutum ( 緑藻, セレナストラム ) 生長阻害 96 h NOEC: 0.1 mg/l [ 出典 :Adams ら, 1995] Selenastrum capricornutum ( 緑藻, セレナストラム ) 生長阻害 ( 生物量 ) 72 h NOEC:30 mg/l [ 出典 : 環境庁,1997] Daphnia magna ( 甲殻類, オオミジンコ ) 致死 21 d NOEC:0.077 mg/l[ 出典 :Rhodes ら, 1995] Daphnia pulex ( 甲殻類, ミジンコ ) 25 遊泳阻害 48 h EC 50 :0.133 mg/l [ 出典 :Passino と Smith, 1987] Micropterus salmoides ( 魚類, オオグチバス ) 26 致死 7.5 d LC 50 :55.7 mg/l [ 出典 :Birge ら,1979] 暴露指標 環境水中濃度 (EEC): 淡水域 : 1.6 μg/l 環境水中濃度 : 淡水域 : 1.6 μg/l, 海水域 : 0.4μg/L 評価に用いられた 無影響濃度 NOEC 等 リスク指標 判定結果 甲殻類 (NOEC):0.158 mg/l MOE (margin of exposure) = NOEC/EEC MOE = 158/0.92 = 170 環境中の水生生物に悪影響を及ぼすことはないなお,DEHP の水溶解度は低く, その有害性の強さが明確でない部分もあり, 対水溶解度や試験生物を十分考慮に入れた試験方法によってさらに精度の高いデータの集積が必要である 急性毒性甲殻類 :0.133 mg/l, 慢性毒性甲殻類 :0.077 mg/l アセスメント係数 :100 => PNEC = mg/l (0.77 μg/l) PEC/PNEC 比 : 淡水域 : 2.1, 海水域 : 0.52 淡水域 : 詳細な評価を行う候補海水域 : 情報収集に努める必要がある 24 IC 50 (50% inhibition concentration): 半数阻害濃度 半数阻害濃度 : 化学物質の急性毒性の程度を示す指標 試験生物の生長や増殖などを 50% 減少させる化学物質の濃度 25 EC 50 (50% effect concentration): 半数影響濃度 半数影響濃度 : 水中の溶存化学物質の急性毒性の程度を示す指標 水生生物に対する急性毒性試験の半数影響濃度は試験に用いられた生物の 50% に測定エンドポイントの影響を与える化学物質の溶液濃度 26 LC 50 (50% lethal concentration): 半数致死濃度 水中の溶存化学物質の急性毒性の程度を示す指標 魚類急性毒性試験の半数致死濃度は試験に用いられた魚類の 50% が死亡する化学物質の溶液濃度 55

64 表 Ⅱ8 生態影響に係る DEHP の有害性およびリスク評価書の比較 ( 国外 ) 評価に用いられた有害性情報 評価書 微生物 藻類 甲殻類 魚類 EU:Risk Assessment Bis(2ethylhexyl) Phthalate, Consolidated Final Report. September(2001 年 ) ( 水経由 ) 影響濃度は設定濃度しか報告されていないため微生物に対する水経由の NOEC は決定することは可能ではない ( 水経由 ) 入手可能なデータから藻類 水生植物に対する NOEC を決定することは可能ではない ( 水経由 ) 現在利用可能なデータから水生無脊椎生物に対する NOEC を決定するのは可能ではない ( 底質経由 ) Chironomus roparius ( 昆虫, ユスリカ幼虫 ) 孵化 生存 NOEC sedimen >11,000 mg/kgdry [ 出典 :Thompson ら, 1995;Brown ら, 1996] Dragon fly( トンボ ) 摂食効率 NOECsediment :780 mg/kgdry [ 出典 :Woin と Larsson, 1987] ( 水経由 ) DEHP の見かけ上の水溶解度以下において影響が観察された信頼できる試験結果がないため, 水経由の NOEC を特定するのは適当でない ( 餌経由 ) Salmo Salar( 魚類, タイヘイヨウサケ ) 性分化 :NOECfood:300 mg/kgdry 餌 [ 出典 :Norrgren ら, 1999] Environ. Canada/Health Canada:Priority Substances List Assessment Report Bis(2ethylhexyl)Phthalate(1994 年 ) 活性汚泥微生物呼吸阻害 30 minic 50 :> 0.4 mg/l [ 出典 :Volskay と Grady, 1988] Selenastrum capricornutum ( 緑藻, セレナストラム ) 細胞数 140 h EC 50 :> 0.1 mg/l [ 出典 :CMA, 1990] Daphnia pulexa ( 甲殻類, ミジンコ ) 48h LC 50 :0.133 mg/l [ 出典 :Passino と Smith, 1987] Daphnia magna ( 甲殻類, オオミジンコ ) 致死 21 d LOEC 27 :0.16 mg/l 致死 21 d NOEC:0.077 mg/l [ 出典 :Springborn Bionomics, 1984] Oncorhynchus mykiss ( 魚類, ニジマス ) 致死 96 h LC 50 :> 0.32 mg/l Pimephales promelas ( 魚類, ファットヘッドミノー ) 致死 96 h LC 50 :> 0.67 mg/l [ 出典 :CMA, 1990 Pimephales promelas ( 魚類, ファットヘッドミノー ) 孵化 成長 生存 90 dnoec:> mg/l [ 出典 :DeFoe ら, 1990] IPCS EHC 131(1992 年 ) 該当する情報なし 該当する情報なし Daphnia pulexa ( 甲殻類, ミジンコ ) 48h LC 50 :0.133 mg/l [ 出典 : Passino と Smith, 1987] Daphnia magna DNA content および RNA/DNA 比 7 d NOEC:0.072 mg/l [ 出典 :Knowles ら, 1987] Oncorhynchus mykiss ( 魚類, ニジマス ) 胚の致死 90 d LOEC:0.014 mg/l [ 出典 :Mehrle と Mayer, 1976] Salvelinus fontinalis ( 魚類, ブルックトラウト ) 脊椎コラーゲンレベルの低下 150 d LOEC: mg/l [ 出典 :Mayer ら, 1977] ( 餌経由 )Brachydanio rerio( 魚類ゼブラフィッシュ ) 胚の生存 90 d LOEC :50 mg/kgdry 餌 [ 出典 :Mayer と Sanders, 1973] 27 LOEC (lowestobservedeffectconcentration): 最低影響濃度 毒性試験において暴露群と対照群との間で有意な有害影響がみられた被験物質の最低濃度 56

65 表 Ⅱ8 生態影響に係る DEHP の有害性およびリスク評価書の比較 ( 国外 )( つづき ) 評価書 評価に用いられた有害性情報 その他 ( 両生類など ) EU,Risk Assessment Bis(2ethylhexyl) Phthalate, Consolidated Final Report. September(2001 年 ) ( 底質経由 ) Rana arvalis ( 両生類,Moor frog) 卵の孵化 オタマジャクシの生存 NOEC:1,000 mg/kgdry [ 出典 :Solyom ら,2001] 活性汚泥呼吸 NOEC STP :2,007 mg/l [ 出典 :Hüls Infracor,1999] ( 土壌 )Triticum aestivum( コムギ ), Lepidium sativum( コショウソウ ), Brassica alba( マスタード ) 発芽 生長 NOEC:130 mg/kgdry [ 出典 :Diefenbach,1998a] ( 野生生物 ) Gallus domesticus ( ニワトリ ) 繁殖 NOEC:1,700 mg/kg 餌 [ 出典 :Wood と Bitman, 1980] ( ラット ) 精巣セルトリ細胞空砲化 NOAEL:50 ppm [ 出典 :Poon ら,1997] Environ. Canada/Health Canada:Priority Substances List Assessment Report Bis(2ethylhexyl)Phthalate(1994 年 ) 該当する情報なし リスクの判定 暴露指標 評価に用いられた NOEC 等 EUSES モデルを用いて, 業種別の排出源近傍における PEC local, 一般的な地域の PEC regional, より広範囲の PEC continental を媒体ごとに算出 PNEC STP = > 200 mg/l PNEC WATER = 未設定 PNEC SEDIMENT = > 100 mg/kgdry PNEC SOIL = > 13 mg/kgdry PNEC ORAL, 哺乳類 = 5 mg/kg PNEC ORAL, 鳥類 = 17 mg/kg PNECORAL, 魚類 = 6 mg/kg データが不十分であるとし, 記載なし Daphnia magna 21 d LOEC:0.16 mg/l より推定影響閾値 (estimated effects threshold) = 0.16/20 = mg/l 57 IPCS EHC131(1992 年 ) Rana arvalis ( 両生類, Moor frog) オタマジャクシの孵化 LOEC:25 mg/kg wet [ 出典 :Larsson と Thuren, 1987] 河川 湖では mg/l まで観測されている河川の底質では 70 mg/kgdry の観測あり排出源近傍では, 1,480 mg/kgdry の観測あり 上記の有害性情報 評価に用いる明確な値の記載はない

66 表 Ⅱ8 生態影響に係る DEHP の有害性およびリスク評価書の比較 ( 国外 )( つづき ) リスクの判定 評価書 リスク指標 判定結果 EU:Risk Assessment Bis(2ethylhexyl) Phthalate, Consolidated Final Report. September(2001 年 ) ハザード比 (PEC/PNEC) ハザード比が 1 を超えたシナリオの数 処理場 :0/31 水 :PNEC が未設定のため算出せず 底質 :9/31 大気 :PNEC 算出のデータなし 農用地土壌 :4/20 経口, 魚食性哺乳類 :0/32 経口, 貝食性鳥類 :6/32 経口, プランクトン食性魚 :17/32 経口, 土壌生物食性哺乳類 :3/20 EU のリスク評価ではリスク判定結果を以下の項目に分け特徴付けしている ⅰ) さらなる情報および / または試験の必要性が存在する ⅱ) さらなる情報および / または試験の必要性および既に適用されている措置以上のリスク低減措置の必要性は現在存在しない ⅲ) リスクを制限する必要性が存在する 既に適用されているリスク低減措置を考慮に入れる媒体 経路ごとの判定結果は下記の通り 下水処理場 ii) 表層水 ii) 底質 ii) 大気 ii) 農用地土壌 ii) 経口, 水環境 i) 経口, 陸生生物 ii) Environ. Canada/Health Canada:Priority Substances List Assessment Report Bis(2ethylhexyl)Phthalate(1994 年 ) 暴露データが不十分なため評価なし定量的な記述なし 限られたデータから, カナダの表層水における DEHP 濃度は, 通常, 推定影響濃度 (0.008 mg/l) より低いことが予想される しかし, 生産施設近傍における測定データがない DEHP がカナダにおける水生生物に対して悪影響を及ぼしているかどうか判断できる十分なデータは存在しない利用可能なデータを踏まえると, 環境に対して有害と思われる量や濃度の DEHP が環境中に排出しているあるいは排出する可能性があるかどうか判断することはできない IPCS EHC131(1992 年 ) 魚類やミジンコ類に対して,DEHP の急性暴露により影響があったという文書化された情報は存在しない しかし, 環境中の底質で観測された濃度において, 微生物の活性が低減されるという報告が存在する DEHP の環境中濃度と長期暴露影響濃度の比較は, 初期成長段階の魚類や両生類に対する有害影響は無視できないことを示している 排出源近傍などの高濃度で汚染された場所に生息する生物は有害影響を被る可能性がある DEHP の藻類, 水生植物, ミミズ, 鳥類に対する急性毒性は低いという報告もある 58

67 第 Ⅲ 章発生源の特定と環境排出量の推定 1. はじめに特定の排出源に対する排出量削減対策の費用対効果を定量的に見積もるために, 化学物質の環境への排出源からヒトや環境中の生物に至るまでの輸送過程を定量的に解析することが要求される 第 Ⅰ 章に示したように,DEHP は軟質塩ビの可塑剤として大量に使われており, それを含む軟質塩ビの用途は多岐に亘り, 耐用年数もかなり長い製品も多い また塗料等にも DEHP が含まれている このため,DEHP の製造, 軟質塩ビやその他 DEHP 含有製品の製造 加工, 製品の使用, 製品の廃棄という一連のライフサイクルの様々なステージで環境への DEHP の排出が生じると考えられる ( 図 Ⅲ 1) そのため,DEHP の環境中への排出量を推定するためには, 各ステージでの排出形態の違いを考慮した排出量推計が必要となる DEHP の製造, 軟質塩ビおよびその他 DEHP 含有製品の製造 加工時に環境中に排出される DEHP 量については, 本評価書では 2001 年度の化学物質排出移動量届出制度 1 ( いわゆる PRTR 制度 ) の集計結果および国による推計結果 ( 経済産業省,2003; 環境省,2003) を用いた 一方, 使用中の軟質塩ビ製品や DEHP 含有製品からの排出量については,PRTR 制度の調査対象外であるため, 独自に推計した さらに, 製品廃棄後の処分形態毎の DEHP 環境排出量を推計した なお, 推計の対象は暦年としたが, 年度のみで入手した情報に基づく推計データに関して, 二つの期間における値に大きな差はないと判断し, 同等に扱った 図 Ⅲ1 DEHP のライフサイクル 1 化学物質排出移動量届出制度 (Pollutant Release and Transfer Register):PRTR 制度 化学物質が, どのような発生源から, どれくらい環境中に排出されたか, あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかのデータを把握し, 集計し, 公表する仕組み 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律 ( 化学物質排出把握管理促進法, 化管法 ) で制度化 59

68 2. 生産量と用途第 Ⅰ 章に記載したように,DEHP は主に軟質塩ビの可塑剤として使用され, 可塑剤の生産量の 50% 以上を占めているため, 軟質塩ビの生産量の推移と DEHP の生産量の推移は切り離せない関係にある 塩ビの可塑剤として特に DEHP を含むフタル酸ジオクチル (DOP) の生産量が飛び抜けて多い理由としては, その高い経済性や原料アルコールの供給体制が整っていること等による わが国においてもフタル酸エステルは 1930 年代に既に少量ながら製造されており, 量産化されたのは第二次大戦後で, 経済産業省の化学工業統計年報にも 1951 年から1 項目としてあげられており, 出荷量は 1951 年 4 月から報告されている 化学工業統計による, わが国における 1951 年 ~2001 年までの DOP の生産量, 販売量および在庫量の変遷を図 Ⅲ2 に示す DEHP のみの出荷量データは 1976 年以降について可塑剤工業会から公表されている ( フタル酸エステル類リスク評価管理研究会,2003) 可塑剤工業会の DEHP 出荷量データと化学工業統計年報の DOP の販売量データを比較すると, 表 Ⅲ 1 に示すように,1980 年代から 1990 年代の前半にかけて,DEHP の出荷量は全 DOP 販売量 ( 出荷量と同義 ) のほぼ 96% に相当し,90 年代後半以降, 全 DOP 販売量に占める DEHP の比率が低下している DOP[ 万トン ] 年 生産量販売数量在庫 図 Ⅲ2 DOP の生産量, 販売量および在庫量の変遷 [ 出典 : 化学工業統計年報 ( 通商産業大臣官房調査統計部,1951~1999; 経済産業省経済産業政策局調査統計部,2000,2001) より作成 ] 1975 年以前の DEHP 出荷量データが入手できないため, 化学工業統計年報による DOP の販売量の 94%(1976 年 ~1985 年の 10 年間の DOP 販売量に対する DEHP 出荷量の割合 ) を DEHP 出荷量と仮定し, 本章 4 節に示す DEHP 含有軟質塩ビ製品からの DEHP の環境排出量推計に使用した 推計は,DOP の年間出荷量が報告された年を起点とし,2001 年まで行った また,DEHP 出荷量の用途別構成比は, 表 Ⅲ2 に示す可塑剤工業会による 1976 年以降の情報しかないため ( フタル酸エステル類リスク評価管理研究会,2003),1975 年以前は 1976 年以降の各用途別出荷比率の平均値を用いて, 用途別 DEHP 出荷量の経年変化を図 Ⅲ3 のように推定した なお, 各用途分類に属する軟質塩ビおよびその他 DEHP 含有製品を表 Ⅲ3 に示す 60

69 表 Ⅲ1 化学工業統計年報と可塑剤工業会データの比較 年 化学工業統計年報 (DOP) 可塑剤工業会 DEHP 出荷量 / 生産量 [ トン ] 販売量 [ トン ] DEHP 出荷量 [ トン ] DOP 販売量 , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , [ 出典 : 化学工業統計年報 ( 通商産業大臣官房調査統計部,1951~1999; 経済産業省経済 産業政策局調査統計部,2000;2001); フタル酸エステル類リスク評価管理研究会,2003] 61

70 表 Ⅲ2 DEHP 用途別出荷量構成比 (1976~1995 年 )[%] 年用途 一般フィルム シート農業用ビニルレザー工業用原料電線被覆ホース ガスケット 1) 建材塗料, 顔料, 接着剤履物その他 年用途 一般フィルム シート農業用ビニルレザー工業用原料電線被覆ホース ガスケット 1) 建材塗料, 顔料, 接着剤履物その他 )1976 年 ~1995 年の建材には壁紙の用途分も含まれている [ 出典 : フタル酸エステル類リスク評価管理研究会,2003] 表 Ⅲ2 DEHP 用途別出荷量構成比 (1996~2001 年 )[%] 年用途 一般フィルム シート農業用ビニルレザー工業用原料電線被覆ホース ガスケット建材壁紙塗料, 顔料, 接着剤履物その他 [ 出典 : フタル酸エステル類リスク評価管理研究会,2003]

71 DEHP 出荷量 [ 万トン ] 年 図 Ⅲ3 DEHP 用途別出荷量経年変化 その他履物塗料, 顔料, 接着剤壁紙建材ホース ガスケット電線被覆工業用原料レザー農業用ビニール一般フィルム シート 表 Ⅲ3 各用途に分類される製品用途製品文具用, 袋物用, 家具 装飾用, 玩具用, 雨傘, 包装用, 車両用, 建材用, ステッカ一般フィルム シートー用, 各種カバー用, ラミネート用, 遮水シート他農業用ビニル園芸 野菜用, 水稲用, 煙草用他レザー家具用, 鞄 袋物用, 衣料用, 文具用他工業用原料最終製品 : 一般被覆線, ハーネスト, 電線用以外の用途 ( ホース等 ), 玩具用, アン ( コンパウンド ) ダーコート ( 車両用 ), 工業用部品電線被覆ホース ( ガーデン / 農業 / 工業用 ), チューブ ( 医療 / 車両用等 ), ガスケット ( 建築 / ホース ガスケット自動車用等 ) 壁紙建材塩ビタイル, 長尺シート, クッションフロアー, タイルカーペット塗料, 顔料, 接着剤酢ビエマルジョン, シーリング剤, マスターバッチ履物射出成形, サンダル, 靴底その他マット, テープ, 手袋, カラーフェンス, ハンガー, 消しゴム, ゴム用, 溶剤他 DEHP の用途分類に対応する主要な軟質塩ビ製品の概要を以下に記す 一般フィルム シート: 一般に, 厚さ 0.2 mm 以上の軟質塩ビをシト, それより薄いものをフィルムとよぶ 包装材料等に広範囲に使用され, 衣料品, 雑貨品, 文房具等の包装に使われる他, 書籍や雑誌の表装, 電気器具や機械類のカバー等にも使用される レインコト, 雨傘, ショッピングバッグ等の用途もある 農業用ビニル( 農ビ ): 野菜, 果物等のハウス栽培に使用される うなぎの養殖等にも利用されている 特にリサイクルが進んでいる分野の 1 つである レザー: 軟質塩ビに布地を裏打ちしたもの 家具用としてソファーや椅子, ファンシーケースに使われる他, テブルクロス, テーブルカバー, アコーディオンカーテン等にも使用される ベ 63

72 ルトやバッグ, カバン類等のファッション分野でも使われている 工業用原料: コンパウンドとは樹脂と可塑剤を配合した最終製品製造前の中間原料であり, 成型用の材料となる 塩ビ微細粉末を液体可塑剤中にコロイド 1 状に分散させたコンパウンドゾル ( プラスチゾル ) も成形が容易で, スプレッド塗装, 浸漬, スプレー 射出, 半溶融成型, 回転成型の工程で加熱され, 弾性を持つ軟質塩ビ製品を製造することができる 電線被覆: 軟質塩ビの代表的な用途であり, 老化により漏電事故を起こすゴム被覆に代わり, 第二次世界大戦後, 自己消火性を持つ難燃性の塩ビを用いた電線被覆が急速に普及した 軟質塩ビは一般的に外側のシース ( ジャケット ) 全般と低圧の絶縁に使用され, 屋内配線や家電製品のコードにも使用されている ホース ガスケット: 家庭用ガデンホス, 冷蔵庫のガスケット ( パッキング ) や洗濯機, 掃除機のフレキシブルホースに使用される 工業用の用途もある サッシ関係のシリング材 ( パッキング ), 自動車の窓のシーリング材としても用いられる 建材 壁紙: 床材, 天井材等, 建物の内装材に軟質塩ビが多く使われ, 特に壁紙の 9 割以上は軟質塩ビ製である 他の材質のものに比べて, 難燃性に加え, 厚手でソフトかつ軽量で, デザイン性, 施工性にも優れる等の特長がある 床材には軟質塩ビを発泡させたクッションフロアーも使われる 履物: ケミカルシュズ, サンダル, スリッパ, 草履, インジェクションブーツにも使用されている サンダルの芯素材としての需要もある 医療用器具: 軟質塩ビ製医療器具の主な用途は, 血液バッグ, 人工腎臓や人工心肺の血液回路, 輸液セットで, 製品の多くはディスポーザブルタイプの器具に使われている これらは滅菌されており 1 回の使用で使い捨てるため, 感染防止に寄与する 可塑剤以外の用途として, 塗料, 接着剤および顔料にも DEHP は使用され, 酢酸ビニル系エマルジョン塗料の塗膜の形成を助ける目的で使われる 接着剤では添加剤としてダンボル箱や家具等の合板用に, また顔料ではトナー等の添加剤にも使用される 1 コロイド : 分散媒とよばれる相の中に微粒子状の第 2 の相として均等に分布する分散質のうち, 分子より大きいが, 顕微鏡などでは見ることのできない大きさのもの 通常, コロイドは, ろ紙は通過できるが動植物の膜は通過できない 64

73 3.DEHP の製造 製品への加工段階における排出量本章 1 節に示したように,DEHP の製造, 軟質塩ビあるいはその他 DEHP 含有製品の製造および加工時に環境中に排出される DEHP 量については,DEHP が 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律 ( 化学物質排出把握管理促進法, 化管法 ) の第一種指定化学物質 1 であり, 事業者からの排出量や移動量に関する集計結果および国による推計結果が公表されていることから,PRTR 制度の 2001 年度の集計および推計データ ( 経済産業省,2003; 環境省,2003) を用いた 以下にその概要を示す また,DEHP の製造工程から大気への排出は極めて少ない ( フタル酸エステル類リスク評価管理研究会,2003) ことから,PRTR 制度の集計及び推計データは主に製造工程からの排出であると考えられる 3.1 届出対象事業所からの排出量届出対象事業所からの排出量 移動量は, 対象物質を製造したり, 原材料として使用したりしている等, 対象化学物質を取り扱う事業者や, 環境へ排出することが見込まれる事業者のうち, 従業員数 21 人以上であって, 製造業等, 政令で定める 23 の業種に属する事業を営み, かつ, 対象化学物質の取扱量が 5 トン以上 (2003 年度からは 1 トン以上 ) の事業所を有している等の一定の要件に該当し, 届出が義務付けられている対象事業所からの対象化学物質の環境への排出量, 廃棄物としての事業所外への移動量および下水道への移動量である DEHP は, 宮崎県を除く 46 都道府県の 651 事業所 ( 排出 :190 事業所および移動 :532 事業所 ) から届け出されている それらの排出量と移動量の合計は 5,402,035 kg/ 年であり, そのうち 92.7% (5,009,676 kg/ 年 ) が事業所外への廃棄物としての移動量および下水道への移動量の届出であり, 残りの 7.3%(392,359 kg/ 年 ) が排出量の届出である この排出量の届出のうち 99.8%(391,527 kg/ 年 ) が大気への排出であるため, 本節では, 届出対象事業所からの大気への排出量について地域別および業種別に整理した 地域別排出量届出対象事業所からの大気への地域別 DEHP 排出量を図 Ⅲ4 に示す 関東地方で 151,337 kg/ 年と高く, ついで中部地方 76,547 kg/ 年, 近畿地方 69,513 kg/ 年となっている なお, 北海道と沖縄県では大気への排出量 0 kg/ 年, 排出の届出対象報告事業所数は 0 件であった また, 届出対象事業所の地域別報告件数 ( 排出 ) は, 関東地方および近畿地方が 55 件で最も多く, ついで東海地方の 23 件となっている 1 第一種指定化学物質 : 化管法の対象となるヒトの健康を損なう恐れまたは動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれがあり, 環境中に広く継続的に存在すると認められる 354 種の化学物質 なお, 化管法では第二種指定化学物質 ( ヒトの健康を損なう恐れまたは動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれがあり, 環境中にそれほど多くは存在しないと見込まれる 81 種の化学物質 ) も対象である 事業者が環境への排出量や廃棄物に含まれての移動量の届出を行う PRTR 制度の対象化学物質は第一種指定化学物質である 65

74 3.1.2 業種別排出量届出対象事業所からの大気への業種別 DEHP 排出量を図 Ⅲ5 に示す プラスチック製品製造業が 253,408 kg/ 年と高く, ついで繊維工業 44,932 kg/ 年, 化学工業 17,683 kg/ 年となっている PRTR 届出データ内で公表されている他の業種についてはその他としてまとめた また, 届出対象事業所の業種別報告件数 ( 排出 ) は, プラスチック製品製造業が 70 件と多く, 化学工業およびゴム製品製造業が 36 件であった PRTR 届出データ内で公表されている他の業種が 48 件であった ,364 20,872 24,102 69,513 21,363 76, , ,337 北海道東北関東北陸中部東海 近畿中国四国九州沖縄 図 Ⅲ4 届出対象, 大気への地域別 DEHP 排出量 [kg/ 年 ] 22,551 10,507 13, ,408 44,932 16,265 12,910 17,683 繊維工業 パルプ 紙 紙加工品製造業出版 印刷 同関連産業化学工業 プラスチック製品製造業ゴム製品製造業 その他の製造業 その他 その他として, 衣類 その他の繊維製品製造業 8,803 kg/ 年, 木材 木製品製造業 635 kg/ 年, 窯業 土石製品製造業 9,100 kg/ 年, 非鉄金属製造業 91 kg/ 年, 金属製品製造業 800 kg/ 年, 一般機械器具製造業 5 kg/ 年, 電気機械器具製造業 1,043 kg/ 年, 輸送用機械器具製造業 210 kg/ 年, 倉庫業 1,864 kg/ 年を含む 図 Ⅲ5 届出対象, 大気への業種別 DEHP 排出量 [kg/ 年 ] 66

75 届出対象事業所の業種別地域別報告件数 ( 排出 ) を図 Ⅲ6 に示す 関東地方および近畿地方ではプラスチック製品製造業, 化学工業およびゴム製品製造業が多い 北海道東北関東北陸 中部東海近畿中国四国九州沖縄 繊維工業衣服 その他の繊維製品製造業木材 木製品製造業パルプ 紙 紙加工品製造業出版 印刷 同関連産業化学工業プラスチック製品製造業ゴム製品製造業窯業 土石製品製造業非鉄金属製造業金属製品製造業一般機械器具製造業電気機械器具製造業輸送用機械器具製造業その他の製造業倉庫業 数値は届出対象事業所の地域別報告件数を示す 図 Ⅲ6 届出対象, 業種別地域別報告件数 ( 排出 ) 22,400 24, ,500 32,000 3, ,400 1,400 1,800 8,900 5,100 90,200 合成樹脂工業協会 日本ビニル工業会 日本ゴム履物協会日本ビニルホース工業会ウレタン原料工業会日本電線工業会 印刷インキ工業会 日本塗料工業会ファインセラミック協会 インテリアフロアー工業会 日本カーペット工業組合 樹脂化粧鋼板会合成高分子ルーフィング工業会 日本医療器材工業会その他 図 Ⅲ7 工業会別の DEHP 使用量推計値 [ トン / 年 ] なお, 工業会へのアンケート調査によれば, 工業会毎の DEHP 使用量は図 Ⅲ7 に示すように推計されており, 日本ビニル工業会の会員会社での使用量 (90,200 トン ) が約半分を占め, 日本ビニル工業会の推計によれば,2001 年度の塩ビ樹脂加工工程からの大気への排出量は 180 トンである ( フタル酸エステル類リスク評価管理研究会,2003) また,2001 年度の PRTR 届出対象事業者からの報告があった 651 事業所中の 66 事業所が日本ビニル工業会の正会員 (51 社中 40 社 ) あるいは準会員 67

76 (27 社中 16 社 ) で, 合計排出量 391 トンの 50% に相当する 192 トンが日本ビニル工業会の会員企業から大気に排出されていた フタル酸エステル類リスク評価管理研究会で推定された日本ビニル工業会会員企業での DEHP 使用量が 90,200 トンであったことから, 日本ビニル工業会の会員企業の事業所からの DEHP 排出率は 0.20%( 日本ビニル工業会推計値 )~0.21%(PRTR 届出値 ) となる この排出率は PRTR の届出対象外事業所からの排出量推計時に用いられた 0.269%( 経済産業省, 環境省,2003) より若干低い 3.2 届出対象外事業所からの推計排出量公表された PRTR の届出外排出量の推計には, 対象業種を営む事業者からの裾きり以下の排出量, 対象業種を営まない事業者からの排出量 ( 非対象業種からの排出量 ), 家庭からの排出量, 移動体からの排出量およびその他からの排出量の推計が含まれている 以下に 2001 年度の対象業種を営む事業者からの裾きり以下の排出量の推計方法について概略を示す ( 経済産業省, 環境省,2003) 対象業種を営む事業者からの裾きり以下の排出量は, 政令に規定される業種 ( 対象業種 ) のいずれかを営む事業者であるが,(1) 常用雇用者数が 20 人以下である, または (2) 対象物質の年間取扱量が 5 トン (2003 年度からは 1 トン ) 未満である事業者からの対象物質の環境中への排出量をそれぞれ推計したものである 対象業種を営む事業者からの裾きり以下の排出量の推計区分について, 図 Ⅲ8 に示す 年間取扱量 [ トン ] 推計 A 第 Ⅳ 分類 ( 推計対象 ) 第 Ⅰ 分類 ( 届出対象 ) 届出 1 ( 当初 5) 第 Ⅲ 分類 ( 推計対象 ) 第 Ⅱ 分類 ( 推計対象 ) 推計 B 常用雇用者数 [ 人 ] 図 Ⅲ8 裾きり以下の排出量の推計の区分 環境への排出量を図 Ⅲ8 の 4 分類に分けた場合, 第 Ⅰ 分類が届出対象であり, 第 Ⅱ 分類から第 Ⅳ 分類が推計の対象となる 国による推計は, 第 Ⅲ 第 Ⅳ 分類に関する推計を 推計 A, 第 Ⅱ 分類に関する推計を 推計 B とし, それぞれについて以下のパラメータの積によって求められている 業種別 対象物質別の推計排出量 [kg]= 1 業種別 物質別の事業所当たり平均取扱量 [kg] 68

77 2 業種別 物質別の事業所当たり平均排出係数 3 業種別の事業所数 4 業種別 物質別の化学物質取扱比率ここで,1 は経済産業省と環境省が 2000 年度および 2001 年度に実施した PRTR 対象物質の取扱等に関するアンケート調査をもとに算出された PRTR 対象物質を取り扱う事業所における取扱量の平均値である 2は PRTR 対象物質を取扱事業所における取扱量当たりの排出量を算出するための係数である 3は事業所 企業統計調査報告に基づく推計の対象となる対象業種における事業所数である 2001 年度の推計では民間事業者の事業所数は 1999 年, 国および地方公共団体の事業所は 1996 年のデータが用いられている 4は前述の PRTR 対象物質の取扱等に関するアンケート調査を基に算出された推計対象となる事業所数における業種別 物質別の PRTR 対象物質を取り扱う可能性のある事業所数の比率である なお,3 で用いられている事業所 企業統計調査報告は,1 事業所当たりの従業員数 (20 人未満 / 以上 ) で区分されているが,PRTR 届出外排出量推計では, 従業員数 20 人未満の事業所数 = 従業員数 21 人未満の事業者の事業所数 とみなすこととしている ( 図 Ⅲ8 推計 A 部分) また, 従業員数 21 人以上の事業所 ( 図 Ⅲ8 推計 B 部分) は, 業種別の全事業所数から, 推計 A の対象となる事業所数 ( 第 Ⅲ Ⅳ 分類の事業所数 ) を差し引いて, 第 Ⅰ Ⅱ 分類の事業所数を算出し, それに 4の業種別 物質別の化学物質取扱比率 ( 第 Ⅰ Ⅱ 分類に係るもの ) を乗じた事業所数から, 法に基づく届出事業所数 ( 第 Ⅰ 分類に相当 ) を差し引いて推計 B における排出量を算出している DEHP の業種別の推計排出量パラメータを表 Ⅲ4 に示す これらのパラメータは 2001 年度 PRTR 届出外排出量の推計方法の詳細 ( 経済産業省, 環境省,2003) に基づく 69

78 業種 表 Ⅲ4 業種別事業所当たり取扱量 [kg] Ⅲ Ⅳ 分類 DEHP の業種別の推計排出量パラメータ Ⅱ 分類 業種別排出係数 業種別事業所数 Ⅲ Ⅳ 分類 Ⅰ Ⅱ 分類 業種別取扱比率 Ⅲ Ⅳ 分類 Ⅰ Ⅱ 分類 届出事業所数排出 移動 繊維工業 ,097 32, 衣服 その他の繊維製品製造業 ,546 44, 木材 木製品製造業 ( 家具を除く ) ,282 15, 家具 装備品製造業 ,673 26, パルプ 紙 紙加工品製造業 ,503 10, 出版 印刷 同関連産業 1, ,004 32, 化学工業 124, , ,557 5, 石油製品 石炭製品製造業 3, , プラスチック製品製造業 688, ,537 18, ゴム製品製造業 1, ,235 6, なめし革 同製品 毛皮製造業 ,378 8, 窯業 土石製品製造業 ,654 20, 鉄鋼業 ,084 3, 非鉄金属製造業 11, ,948 2, 金属製品製造業 ,489 53, 一般機械器具製造業 ,834 42, 電気機械器具製造業 ,177 18, 輸送用機械器具製造業 ,873 17, 精密機械器具製造業 ,055 3, その他の製造業 ,068 25, 鉄道業 1, , 倉庫業 2,739, ,581 7, 機械修理業 ,621 15, 商品検査業 , 計量証明業 高等教育機関 , 自然科学研究所 , [ 出典 :2001 年度 PRTR 届出外排出量の推計方法の詳細 ( 経済産業省, 環境省,2003)] 70

79 対象業種を営まない事業者からの排出量には, 小規模の事業者のものが多く, 個々の事業所の化学物質の取扱量が少ない業種や, 事業活動に伴って化学物質を使用または排出する場所が事業者の事業所外であって一定しないことから対象業種として指定されなかった業種等, 非対象業種のみを営む事業者からの第一種指定化学物質の排出量が該当する これらの排出量の推計では, 非対象物質の取り扱いの実態を踏まえて主要な排出源を想定し, かかる排出源からの排出が見込まれる第一種指定化学物質の量が推計されているが, ここでは特定の 業種 ではなく, 非対象業種の事業者が一般的に使用している 製品 に着目して推計が行われている DEHP は塗料 ( 原材料用途可塑剤 ) の推計対象物質となっている 家庭からの排出量には, 一般家庭における農薬, 接着剤, 塗料, 防虫剤, 消臭剤, 洗浄剤, 化粧品等の家庭用製品の使用に伴う排出が該当する 上記の対象業種を営まない事業者からの排出量と同様の手法により, 家庭で使用される製品の全国出荷量, 製品中の第一種指定化学物質の標準組成, 排出率等の各種データを使用して, 全国および都道府県別の排出量が推計されている DEHP は塗料 ( 原材料用途可塑剤 ) の推計対象物質となっている 移動体からの排出量には, 運行主体の業種, 営業用 / 自家用の区別に関係なく, 自動車, 二輪車, 船舶, 鉄道, 航空機等, 移動体の運航に伴う排出が該当する その他としては, 水道の使用, オゾン層破壊物質およびダイオキシン類の排出量, 製品の使用に伴う低含有率物質等の排出等がある 届出外排出量のうち,DEHP が, 推計対象となっているのは対象業種を営む事業者からの裾きり以下の排出量, 対象業種を営まない事業者からの排出量および家庭からの排出量である DEHP の届出外排出量 ( 推計値 ) の合計は,1,180,200 kg/ 年であり, そのうちの 98.8%(1,165,899 kg/ 年 ) が対象業種を営む事業者からの裾きり以下の排出量, 残り 1.2%(14,301 kg/ 年 ) が対象業種を営まない事業者および家庭からの塗料に係る排出量である このように,DEHP の届出外排出量は対象業種を営む裾きり以下の排出量がそのほとんどを占めていることから, 排出形態は対象事業所と同様に大部分が大気への排出と考えられる そこで, 対象業種を営む事業者からの裾きり以下の排出量について地域別および業種別に整理した 地域別排出量届出対象外事業所からの地域別 DEHP 排出量推計値を図 Ⅲ9 に示す 関東地方で 434,319 kg/ 年と最も高く, 次いで近畿地方 267,444 kg/ 年, 東海地方 187,958 kg/ 年となっている 業種別排出量届出対象外事業所からの業種別排出量推計値を図 Ⅲ10 に示す プラスチック製品製造業からの排出が 1,022,460 kg/ 年と最も高く, 次いで倉庫業からの排出 83,306 kg/ 年および化学工業からの排出 43,910 kg/ 年となっている PRTR 届出外事業所からの排出量推計データ内で公表されている他の業種はその他としてまとめた なお, 業種別事業所件数はプラスチック製品製造業 (1,340 件 ) で多い ( 第 Ⅱ 分類 ) 71

80 1,506 41,113 17,910 38, , ,958 14,227 35,741 45,148 82, ,319 北海道東北関東北陸中部東海近畿中国四国九州沖縄 図 Ⅲ9 届出対象外, 地域別排出量推計値 [kg/ 年 ] 83,306 16,221 43,910 化学工業プラスチック製品製造業倉庫業その他 1,022,460 その他として, 繊維工業 1,366 kg/ 年, 木材 木製品製造業 ( 家具を除く )779 kg/ 年, 家具 装備製造業 96 kg/ 年, パルプ 紙 紙加工品製造業 41 kg/ 年, 出版 印刷 同関連産業 825 kg/ 年, 石油製品 石炭製品製造業 117 kg/ 年, ゴム製品製造業 5,168 kg/ 年, なめし革 同製品 毛皮製造業 30 kg/ 年, 窯業 土石製品製造業 614 kg/ 年, 鉄鋼業 44 kg/ 年, 非鉄金属製造業 3,410 kg/ 年, 金属製品製造業 384 kg/ 年, 一般機械器具製造業 172 kg/ 年, 電気機械器具製造業 357 kg/ 年, 輸送用機械器具製造業 1,812 kg/ 年, 精密機械器具製造業 36 kg/ 年, その他の製造業 777 kg/ 年, 鉄道業 179 kg/ 年, 機械修理業 2 kg/ 年, 商品検査業 10 kg/ 年, 自然科学研究所 2 kg/ 年を含む 図 Ⅲ10 届出対象外, 業種別排出量推計値 [kg/ 年 ] 72

81 3.3 事業所からの排出量のまとめ本章 3.1 節および 3.2 節に示したように,DEHP では, 届出対象事業所からの排出量 (392,359 kg/ 年 ) の 99.8%(391,527 kg/ 年 ) が大気中へと排出されており, また届出外排出量 (1,180,200 kg/ 年 ) も対象業種を営む裾きり以下の事業者からの排出量 (1,165,899 kg/ 年 ) がそのほとんど (98.8%) を占め, 届出対象事業所と同様に大気へ排出されると考えられる 本評価書では, これらの合計量 1,557,426 kg/ 年を DEHP の製造と製品への加工段階からの大気排出量として, 以後の解析に使用する 73

82 4. 使用中および廃棄後の DEHP 含有製品からの排出量前節で解析した PRTR 制度では, 使用中や廃棄後の軟質塩ビ製品からの DEHP の環境排出は推計対象外である 使用中の軟質塩ビ製品からの DEHP 排出量推計では, 製品の用途が多岐にわたり, 各製品の耐用年数も異なっているため, 用途別の出荷量の経年変化と各用途の耐用年数についての情報が必要となる また, 廃棄後も焼却, 再生および埋立て等の処理が行われるため, 各々の処理方法を考慮して環境排出量を推計する必要がある DEHP 含有製品中の DEHP ストック量 1 と廃棄量の推定は, 表 Ⅲ3 に示した用途分類毎に行った ただし, その他 の分類に関しては, 全出荷量の 6% 前後と大きくないこと, 耐用年数が短い製品が多いと推定されることより, 本節では推計しなかった 4.1 製品用途別 DEHP 使用量および廃棄量の推計使用中の各種軟質塩ビ製品およびその他 DEHP 含有製品中に含まれる DEHP 量と耐用年数後に廃棄される製品中の DEHP 量を以下のように, 表 Ⅲ3 の用途分類毎に推計した 1 西暦 m 年に出荷された製品中 DEHP の x 年後における廃棄量 (Q m,x ) Qm, x = Pm f ( x) ここで,P m は西暦 m 年における DEHP 出荷量と m1 年の再生製品量の和から m 年の加工ロス ( 製品にならずに加工段階からの廃棄物として排出されるもの ) 分を減じた量 ( 最終製品として出荷される DEHP 含有製品量に相当 ) であり, f (x) は各軟質塩ビ製品の寿命関数である 2 西暦 n 年における各年に出荷された製品からの DEHP 廃棄量の合計 (W n ) W n = Q m n n m= 1952, m 3 西暦 m 年に出荷された製品中 DEHP の x 年後におけるストック量 (R m,x ) R m, x = P 4 西暦 n 年における各年に出荷された製品からの DEHP ストック量の合計 (S n ) m n m= 1952 x k= 0 S n = R m n Q, m m, k なお, 上記の推計に際し, 以下の仮定をおいた DEHP は出荷された年に全て軟質塩ビ製品等の最終製品へ加工され, 出荷される 加工ロス量は他のプラスチック製品と同じ比率であり, 年によりその比率は変化しない よって, 毎年 DEHP 国内出荷量の 5.4%( 表 Ⅲ5) が各種製品への加工時にロスとして廃棄される 1 ストック量 : 過去から任意の時点までに出荷され, 廃棄に至っていない使用段階にある製品中化学物質の総蓄積量 74

83 表 Ⅲ5 プラスチック製品製造時における加工ロス率 年 国内樹脂製品消費量加工ロス量 [ 万トン ] [ 万トン ] 1) 加工ロス率 , , , , , , 平均 ) 加工ロス率 =( 加工ロス量 ) ( 国内樹脂製品消費量 + 加工ロス量 ) [ 出典 : プラスチック処理促進協会,2004] DEHP の出荷量には国内のみの出荷量を使用しているが, 最終製品としての輸出や輸入による DEHP の増減は考慮しない DEHP 含有製品は品目が多岐にわたり, さらに, 軟質塩ビ製品は梱包材としても使用されているため, 現段階では定量的に組み込むことが困難であると判断し, 輸出入については考慮しない 各工業会へのヒアリング結果によると,2001 年の輸出入バランスは,DEHP 自体の輸出入も考慮に入れた場合, 全体で数万トンの輸出超過であった ( フタル酸エステル類リスク評価管理研究会,2003) マテリアルフロー推定に, 既に生産量から輸出量等を減じた国内出荷量を使用することを勘案すると, 推測される輸出入バランスの絶対値はマテリアルフローに大きく影響を及ぼすほどのものではないと思われる 最終製品の廃棄後, マテリアルリサイクルによる再生製品は翌年に出荷され, 全て国内で使用される 4.2 耐用年数と寿命関数以下のように, 軟質塩ビ製品の耐用年数についていくつかの報告がある European Commission DGXI.E.3 の報告書 (European Commission DGXI.E.3,2000) では, 耐用年数を表 Ⅲ6 のようにまとめている EU 評価書暫定版 (EU,2001) では, 耐用年数を表 Ⅲ7 のようにまとめている 中井ら(2000) は, 耐用年数を表 Ⅲ8 のように報告している ただし, 彼らが対象とした製品には硬質塩ビ製品も含まれる フタル酸エステル類リスク評価管理研究会(2003) では各種業界団体へ聞き取り調査を行い, 表 Ⅲ9 のような耐用年数を得ている 75

84 表 Ⅲ6 European Commission DGXI.E.3(2000) の報告書での耐用年数 製品寿命短期 (<2 年 ) 中期 (2~10 年 ) 長期 (10~20 年 ) 超長期 (>20 年 ) 製品例包装, 医療用, 事務用品壁紙, 床材, 履物床材, 電線 / ケーブル, 家具, 自動車パイプ窓枠, ケーブル, 屋根材 屋内用途被覆製品フィルム シートホース ガスケット床材シーラント 接着剤等ケーブルラッカー 塗料印刷インクセラミックス屋外用途屋根材屋根材 ( コイル被覆 ) ケーブル被覆織物ホース ガスケット自動車の下地塗装靴底シーラント 接着剤等ラッカー 塗料 表 Ⅲ7 EU 評価書暫定版 (EU,2001) での耐用年数耐用年数 [ 年 ] INDUSTRY Miljö ECPI 1) 2) その他社 styrelsen 3) ) ~ ~5 4) 1~10 30~50 30~ ) European Council for Plasticisers and Intermediates,1996 年調査 2) INDUSTRY 社,1999 年調査 3) Miljöstyrelsen,1996 年調査 4) 塩ビ製フォイル 5) 床材と同じと仮定 6) 推定平均値 ;Tarkketsommer,1999 年調査 7) 最終製品には残留しないと考えられる 20 6) EU 評価書暫定版採用 )

85 表 Ⅲ8 中井ら (2000) が報告している耐用年数 1. 建築 2. 土木 ( 塩化ビニル管 ) 3. 電線被覆 3.1 巻線 3.2 電気機器用電線 3.3 輸送機器用電線 3.4 電力 通信ケーブル 3.5 その他絶縁電線 4. 農業 4.1 ハウス用フィルム 4.2 トンネル用フィルム 4.3 マルチ用フィルム 4.4 その他農業用資材 5. 自動車 5.1 乗用車 5.2 トラック 5.3 バス 5.4 二輪自動車 6. 家電 6.1 カラーテレビ 6.2 電気冷蔵庫 6.3 電気洗濯機 6.4 電気掃除機 6.5 ルームエアコン 6.6 その他家電 7. 医療 8. 容器包装 9. 日用品 耐用年数 [ 年 ] 非耐久消費財非耐久消費財非耐久消費財 非耐久消費財非耐久消費財非耐久消費財 77

86 表 Ⅲ9 フタル酸エステル類リスク評価管理研究会の聞き取り調査による耐用年数 業界名称 DEHP 使用製品 製品耐用年数 [ 年 ] 合成樹脂工業協会 フィルム, シート, 可塑剤, 硬化剤, ウレタン樹脂, エマルジョン樹脂, フェノール樹脂 1~10 一般フィルム農業用フィルム 1~15 2 日本ビニル工業会 レザー 5~20 コンパウンド 5~20 壁紙その他 5~ 日本ゴム履物協会 塩ビインジェクションブーツ, 塩ビインジェクション布靴, サンダル, 靴底 0.5~5 日本ビニルホース工業会 ホース ( ガーデン用, 農業用, 工業用 ), パッキン用コンパウンド 3~10 日本ゴムビニル手袋 1~3( 医療用はビニル手袋 ( 医療用, 食品業務用, 一般用 ) 工業会使い捨て ) 発泡スチレン工業会 緩衝包装材料 0.5~3 ウレタン原料工業会 土木, 建築用ウレタン樹脂, 土木用シーリング材, バインダー, 家電用絶縁材, 塗料用ウレタン樹脂, ウレ 10~20 タンエラストマー 日本プラスチック工業共同組合 ( 関東 ) プラスチックカバー, 波板 5 日本玩具プラスチックビニルボール, ビーチ浮き輪, 小型プール, フロート, 2~6 工業協同組合人形 日本空気入ビニール小型プール, 浮き輪, ビーチボール, サーフ, フロー工業組合トボート, 人形 2~6 日本電線工業会 電線ケーブル絶縁シース材, 電線, シール材 10~30 印刷インキ工業会 グラビアインキ, 建材用陰気, 電線被覆材用, 粘着材用, インクジェットシート用, プリント配線板用 10~20 日本塗料工業会 建設現場塗装用 ( ビニル樹脂, 塩化ゴム系, エマルジ 10( ユーザーにョンペイント ( 水系 )) よっては3~5) インテリアフロア工業会 塩ビシート床材, 塩ビタイル, クッションフロアー 5~20( ファッション性のもの5 年 ) 日本カーペット工業組合 タイルカーペット 5~0 樹脂化粧鋼板会 建材 : 外装, 内装, 家電製品, 鋼製家具, 車両, 雑貨 10~20 合成高分子ルーフィング 15~20 リベットルーフ, 防水シート工業会 日本医療器材工業会 人工腎臓 心肺用血液回路, 輸液セット, チューブ, 3~5( 使い捨て採血器具, 血液バッグ, 手袋が大半 ) [ 出典 : フタル酸エステル類リスク評価管理研究会,2003] 本評価書では, 表 Ⅲ9 の耐用年数を基に, 表 Ⅲ3 に示した製品用途分類毎に耐用年数を決定し, 以下の二つの寿命関数を導出した 寿命関数 Ⅰ: 中井ら (2000) が報告している正規分布を参考としたが, 耐用年数には広い幅があるため, 以下の方法で寿命関数を与えた ( 図 Ⅲ11) 78

87 1 耐用年数の範囲が m 年 ~n 年という幅で報告されているため, ある年に製造された製品は, 製造後 m 年目から (nm+1) 年間にわたり毎年同じ割合, すなわち 1/(nm+1) ずつ寿命を迎えると仮定する たとえば, 耐用年数が 3~10 年 のホース ガスケットの場合, 製造後 3 年目から 8 年間に, 出荷量の 1/8 ずつがそれぞれ寿命を迎えると考える このような仮定を置いたのは, 各用途分類に様々な製品が含まれており, さらにそれらの比率を詳細に設定することが困難と判断されたからである 2 個々の製品用途分類の寿命関数 (g (x)) は, その耐用年数を平均 (μ), 耐用年数の 1/3 を標準偏差 (σ) とする正規分布で表されると仮定する ( 中井ら,2000) 2 1 ( x µ ) g ( x) = exp 2 2πσ 2σ たとえば, 耐用年数が 5 年の場合,μ=5,σ=5/3 の正規分布で寿命関数を表す 3 耐用年数の範囲 (m 年 ~n 年 ) の全ての年の寿命関数を重ね合わせ, 用途分類別の寿命関数 (f (x)) とする 各年の寿命関数を重ね合わせて f (x) を得るために, モンテカルロ シミュレーション 1 を行った結果,f (x) はベータ分布と最も適合性が良かった よって, 各用途分類に対する寿命関数 (f (x)) の形状はベータ分布とした u 1 ( v 1) x x 1 s s f ( x) = Β( u, v) ここで,u,v,sはベータ分布パラメータである 1 モンテカルロ シミュレーション : シミュレーションを行う現象に対して, その入力に大量の乱数を発生させて, 出力値を観測することで, その現象を確率論的に解く手法 79

88 80 図 Ⅲ11 寿命関数 Ⅰ の考え方 ( 例 : 耐用年数が 3~10 年である製品用途分類の寿命関数 ) 寿命関数 Ⅱ: 寿命関数としてよく用いられるワイブル分布とした = u u u v x x v u x f exp ) ( 1 ここで,u と v はワイブル分布パラメータである 表 Ⅲ9 に示す DEHP 使用製品と表 Ⅲ3 に示す用途別の製品を対応させ, 用途別軟質塩ビ製品等の耐用年数を表 Ⅲ10 のように仮定し, この耐用年数の間に製品の 90% が廃棄されるとしてワイブル分布のパラメータ u と v を求めた

89 表 Ⅲ10 耐用年数とベータ分布およびワイブル分布のパラメータ DEHP の用途 一般フィルム シート農ビレザー工業原料電線被覆ホース ガスケット建材壁紙履物塗料 顔料 接着剤 平均耐用年数ベータ分布ワイブル分布 [ 年 ] u v s u v 1~15 0.5~2 5~20 5~20 10~30 3~10 5~20 5~20 0.5~5 5~ 導出した寿命関数 ⅠおよびⅡと年毎の DEHP 出荷量を用いて算出した使用中の軟質塩ビ製品中の 2001 年における DEHP ストック量を図 Ⅲ12 に示す 寿命関数 Ⅰ 寿命関数 Ⅱ 一般フィルム シート農業用ビニールレザー工業用原料電線被覆ホース ガスケット建材壁紙塗料, 顔料, 接着剤履物 DEHPストック量 [ 万トン ] 図 Ⅲ 年における DEHP ストック量推計結果 二つの寿命関数により求められた 2001 年における DEHP のストック量を比較すると, 寿命関数 Ⅰ と寿命関数 Ⅱによる推計量はそれぞれ 285 万トンと 272 万トンであり, 両者の間には約 13 万トンの相違があったが, 用途分類毎の全ストック量に占める比率は両関数で同様であった 軟質塩ビ製品のフロー推定結果との比較からも寿命関数の妥当性を評価した 寿命関数 Ⅰで推算した製品用途分類別 DEHP ストック量の経年変化を図 Ⅲ13 に, 軟質塩ビ製品の生産 処理フロー調査 ( 廃棄物政策研究所,2003) で推定された軟質塩ビ製品のストック量の経年変化を図 Ⅲ14 に示す 81

90 DEHP ストック量 [ 万トン ] 年 履物 塗料, 顔料, 接着剤 壁紙 建材 ホース ガスケット電線被覆 工業用原料 レザー 農業用ビニール 一般フィルム シート 図 Ⅲ13 DEHP ストック量の経年変化 ( 寿命関数 Ⅰ) 軟質塩ビストック量 [ 万トン ] 1, 年 その他のプラスチック製品日用品 雑貨塗料等建材 ( 床材料含まず ) 床材料機械器具部品ホース電線被覆レザー農業用フィルムフィルム シート 図 Ⅲ14 軟質塩ビ製品のストック量の経年変化 [ 出典 : 廃棄物政策研究所,2003] DEHP の用途別分類と軟質塩ビの用途分類が完全に一致していないため,2001 年の全軟質塩ビ製品中の DEHP ストック量を比較した 2001 年の軟質塩ビ製品のストック量は,819 万トンと推計され, 軟質塩ビ中の DEHP 含有率が 20~40% であることから,2001 年に使用中軟質塩ビ製品に含まれる DEHP 量は 164 万 ~328 万トンとなる 二つの寿命関数を用いて推計した 2001 年の DEHP ストック量は 285 万トンと 272 万トンであることから, 推定値の整合性が確認され, 推計されたストック量は妥当であると判断した 二つの寿命関数を用いて推計したストック量と廃棄量に大きな差異はないため, 本評価書では, 以後 DEHP のストック量を多めに推定する寿命関数 Ⅰを用いて計算を行うこととした 82

91 4.3 DEHP 含有製品の廃棄後の処理 DEHP を含む軟質塩ビ製品やその他の製品が, 一般廃棄物または産業廃棄物として廃棄された場合に, これらの DEHP 含有製品が, どのような割合で焼却, 再生あるいは埋立て処理されるかを解析することにより, DEHP の廃棄フローを推定した 処理法 ( 焼却, 再生および埋立て ) の比率は 軟質塩ビ製品の生産 処理フロー調査 ( 廃棄物政策研究所,2003) 結果を参考にしたが,DEHP の用途分類 ( 表 Ⅲ3) と 軟質塩ビ製品の生産 処理フロー調査 ( 廃棄物政策研究所,2003) の用途分類が完全には一致しないため, 表 Ⅲ11 に示す対応を仮定した 表 Ⅲ11 本評価書と 軟質塩ビ製品の生産 処理フロー調査 の製品用途分類対応表 1) 本評価書軟質塩ビ製品の生産 処理フロー調査一般フィルム シートフィルム シート ( 農業用フィルム含まず ) 農業用ビニル農業用ビニルレザーレザー工業用原料電線被覆, ホース, 機械器具部品 ( 下に記述 ) 電線被覆電線被覆ホース ガスケットホース, 機械器具部品 ( 下に記述 ) 建材床材料壁紙建材 ( 床材料含まず ) 塗料, 顔料, 接着剤塗料履物日用品 雑貨 ( 下に記述 ) 1) 廃棄物政策研究所,2003 工業用原料やホース ガスケットのように製品用途がいくつかの用途分類に重複している場合, 以下のような対応を仮定した 工業用原料 : 工業用原料 であるコンパウンドの用途は主に電線被覆とホース ガスケットである 電線被覆 と ホース ガスケット の用途が各々 50% と仮定し, 一般廃棄物と産業廃棄物の比率は, 電線被覆 と ホース ガスケット の処理比率の平均を用いる ホース ガスケット : 処理フロー調査では, 軟質塩ビ製品用途分類 ホース は 75% が一般廃棄物として処理され, ガスケットを含むと考えられる用途分類 機械器具部品 はほぼ全量が産業廃棄物として廃棄されると設定されている ホースの出荷量は樹脂ベースでガスケットの 2 倍以上 ( 塩ビ工業 環境協会,2001) であるため, ホース の比率が大きな寄与をする よって, ホース ガスケット の用途分類内製品が一般廃棄物として処理される比率を 50% と仮定した 産業廃棄物として廃棄された場合の処理割合は ホース と 機械器具部品 の用途分類で同じ比率と想定されている 履物 : 履物 はほとんどが家庭で使用されるため, 日用品 雑貨 と対応する 一般廃棄物あるいは産業廃棄物として廃棄される DEHP 量およびそれらの処理方法 ( 焼却, 再生および埋立て ) 別の DEHP 量を把握するため, 前節で推算した製品用途分類別全廃棄量に, 廃棄物政策研究所 (2003) により推定された一般廃棄物 / 産業廃棄物処理比率と処理方法別の比率を乗じて DEHP 83

92 量を求めた 以上より推算した一般廃棄物および産業廃棄物の廃棄量の経年変化と, 処理方法別の廃棄量の経年変化を図 Ⅲ15 から図 Ⅲ18 に示す 製品用途分類別処理量は一般廃棄物と産業廃棄物量の合計値として示した 一般廃棄物 産業廃棄物中 DEHP 量 [ 万トン ] 産業廃棄物 一般廃棄物 年 図 Ⅲ15 一般廃棄物 産業廃棄物中 DEHP 量の経年変化 DEHP 焼却量 [ 万トン ] 年 加工ロス履物塗料 顔料 接着剤壁紙建材ホース ガスケット電線被覆工業用原料レザー農業用ビニル一般フィルム シート 図 Ⅲ16 用途分類別焼却 DEHP 量の経年変化 84

93 DEHP 再生量 [ 万トン ] 年 加工ロス履物塗料 顔料 接着剤壁紙建材ホース ガスケット電線被覆工業用原料レザー農業用ビニル一般フィルム シート 図 Ⅲ17 用途分類別再生 DEHP 量の経年変化 DEHP 埋立て量 [ 万トン ] 年 加工ロス履物塗料 顔料 接着剤壁紙建材ホース ガスケット電線被覆工業用原料レザー農業用ビニル一般フィルム シート 図 Ⅲ18 用途分類別埋立て DEHP 量の経年変化 再生処理 2000 年以降 PET ボトル以外のプラスチック容器包装に容器包装リサイクル法が適用されたが, プラスチック処理促進協会 (2004) によれば, 一般廃棄物として排出され, 有効利用されるプラスチック製品のうち再生処理のために回収される割合は 2001 年では約 8% である このため, 廃棄物政策研究所 (2003) では, 一般廃棄物については, 再生量も全て焼却されるとみなし, 焼却処理量に上乗せして処理比率を推定している 産業廃棄物では, 図 Ⅲ17 で示したように,DEHP 含有製品中で再生処理が主に行われる用途分類は農ビと電線被覆であり, 農ビは 1999 年には廃棄量の 51% が再生処理されている ( 農林水産省農産園芸局野菜振興課,2000) また, 電線被覆は廃棄量の約 35%( 塩ビ工業 環境協会,1998) が再生処理されている 85

94 軟質塩ビ製品が再生処理され, また軟質塩ビ製品として再利用される際, どのような製品に使用されるのか, 定性的な情報は存在するが, 定量的な情報はない よって, 本推計では, 再生処理された軟質塩ビ製品が使用される用途分類 ( 一般フィルム シート, 電線被覆, 建材および履物 ) へ, 軟質塩ビ再生量の総量を翌年の DEHP 出荷量と同じ比率で按分し, 翌年の製品製造量に上乗せした 4.4 軟質塩ビ製品中 DEHP の環境排出量の推定 大気への排出量推定 面積基準の排出係数推定塩ビ樹脂からの DEHP の排出係数については,CMA(Chemical Manufactures Association) の委託調査により三つの方法で推計されている (ENVIRON Co.,1988) これらの方法は, 実験結果に基づく推定法 (Quackenbos 法 ), 質量移動係数に基づく推定法 (ADL 法 ) および拡散に基づく推定法 (ENVIRON Co. 法 ) であり,DEHP の排出係数として, (Quackenbos 法 ), (ADL 法 ) および μg/m 2 / 秒 (ENVIRON Co. 法 ) が推定されている EU 評価書暫定版 (EU,2001) では,Quackenbos 法で得られた排出係数 (9.5 mg/m 2 / 年 ) を用い, 屋外で使用される軟質塩ビ製品については, 製品の厚さで補正された排出係数から環境排出量が推計されている この排出係数の妥当性を評価するために,1 コンパートメントの室内モデルを用いて, 室内濃度の推計を行った このモデルでは, 壁紙, 建材からの排出による DEHP の室内空気濃度は以下のように推計される dca V room = E W Vexchange Ca dt 上式において C a は室内空気中 DEHP 濃度,E は DEHP 排出係数を表し,W は排出表面積,V room は室内容積,V exchange は換気速度である 定常状態を仮定すると以下のようになる E W Ca = V exchange E を Quackenbos 法の 9.5 mg/m 2 / 年とし,6 畳 ( 約 3.15 m 四方 ) と 20 畳 ( 約 5.75 m 四方 ) の直方体の部屋を考える 天井高さは 2.5 m, 三方の壁からの排出 ( 排出面積各 23.6 m 2,43.1 m 2 ) と換気率 0.5 回 /h を仮定して定常状態濃度を推算すると, 推算濃度は 2,066 および 1,132 ng/m 3 となる 2001 年の屋内大気中 DEHP 濃度の報告値 ( 環境省総合環境政策局,2002) は 23~3,400 ng/m 3 であり, 推算結果と比較してそれほど乖離した値ではないため, ストック量からの環境排出量の推算に際しては, 三つの排出係数のうち, 最も値が大きい Quackenbos 法を採用した Quackenbos 法では塩ビシートを用いた実験結果と以下に示す式を用いて, 室内における排出係数を推定している 0.5 w d t f ( u1 / u2 ) E = T ここで, 表 Ⅲ12 に示すパラメータを用い,25 の室内における排出係数を計算すると,

95 μg/m 2 / 秒となる この結果を1シート両面からの放出であること,2100% の DEHP 液膜からの排出係数と比較し, 塩ビシートからの排出係数は約 65% であること,3 排出係数を求める上で, 軟質塩ビ製品は表面に DEHP の膜が形成されていることを仮定し, 軟質塩ビ製品片面からの排出係数を求めている 以上より求められる室内の製品からの DEHP 排出係数は, [μg/m 2 / 秒 ] 2 (100/65)= [μg/m 2 / 秒 ](9.3 mg/m 2 / 年 ) となる w d t T u 1 u 2 f 表 Ⅲ12 Quackenbos 法の式中パラメータパラメータ単位値 塩ビ中の DEHP 重量分量塩ビ密度塩ビ厚さ 10% の DEHP の減少に要する時間室内の風速実験中の風速時間 T 中に失われる DEHP 率 [ 出典 : ENVIRON Co.,1988] g/m 3 m 秒 cm/ 秒 cm/ 秒 (0.004 インチ ) (27 年 ) 屋外における DEHP の排出係数は,Quackenbos の推算式のパラメータである風速に屋外での風速を採用することで算出した 屋外の風速は地上高さが影響するが, 屋外で使用される製品の高さに関する統計を入手することは困難であるため, ここでは製品の高さを 1 m と仮定して計算を行った 2001 年の気象庁年報 ( 気象庁,2001c) で風速が計測されている全 150 地点の年間風速を平均すると, 全国の平均風速は 3.18 m/ 秒であり,1 m の高さで補正した風速 (3.18[m/ 秒 ] (1[m]/10[m]) 0.2 =2.0[m/ 秒 ]) を使用すると, 屋外使用における DEHP 排出係数は 383 mg/m 2 / 年となった 本評価書では屋外使用の用途における排出係数は 383 mg/m 2 / 年で一定として採用した 屋内と屋外で使用される製品の比率や排出が製品の片面からされるか両面からされるかを考慮することで製品用途分類毎の排出係数を設定した DEHP の大気への排出を蒸発と考えると, 排出係数は蒸気圧の関数で表される (OECD,2004) 蒸気圧は温度の影響を受けるため, 季節変動や地域による気温差が, 排出量を決める上では重要な因子となる 米田ら (2001) は実験結果から DEHP 排出速度の温度依存性を確認しており, たとえば 40 と 50 の環境下では, 排出速度が約 5 倍異なることを示した また米田らは, 軟質塩ビシートと床タイルで排出速度の測定実験を行い, 試料の種類により排出速度が異なることも示している しかし, 現段階では温度変動や製品用途分類毎の排出係数を考慮することは困難であるため, 年平均気温よりも多少高めの温度 (25 ) の条件下で算出された Quackenbos の屋内排出係数を風速で補正して屋外の排出係数とした 表 Ⅲ13 面積基準の排出係数 排出係数 ( 屋内 ) 排出係数 ( 屋外 ) 面積基準の排出係数推定法 [mg/m 2 / 年 ] [mg/m 2 / 年 ] Quackenbos 法

96 軟質塩ビ製品の屋外使用比率前項で推定した屋内外におけるDEHP の排出係数と4.2 項で推計した用途分類別のストック量から, 使用中の軟質塩ビ製品からの DEHP の大気への排出量を推定するため, 屋内外で使用される軟質塩ビ製品の比率を決定した 表 Ⅲ3 の各用途分類内の全製品が, ほぼ完全に屋内または屋外で使用される製品と判断可能な場合には, 屋外での使用比率を 0 および 100% とした 一方, このような判断ができない場合には, 各分類内の製品を細分化し, 各々に対して屋内外用途を選択し, それらを基に用途分類全体の屋外使用比率を決定した 決定した比率とその際に参考にした資料を表 Ⅲ14 に示す また, 製品の中で, 屋外用途ではあるが, 使用時以外は屋内に保管されているもの ( 履物やテント等 ) は, 排出係数が大きい屋外で常に使用されると仮定した 表 Ⅲ14 各製品用途分類の屋外使用比率 用途分類 屋外使用比率 [%] 比率決定用資料 一般フィルム シート農業用ビニルレザー工業用原料電線被覆ホース ガスケット建材壁紙履物 ) 2000 年度版塩化ビニル樹脂用途需要量 ( 電線被覆とホース ガスケットの平均 ) 2) 日本の塩化ビニール産業 1) 2000 年度版塩化ビニル樹脂用途需要量 1) 塩ビ工業 環境協会,2001 2) 日本の塩化ビニール産業 編集委員会,1979 使用した各資料の内容と屋外使用比率決定の根拠となったデータを以下に示す 電線被覆: 日本の塩化ビニール産業 ( 日本の塩化ビニール産業 編集委員会,1979) 中に, 表 Ⅲ15 に示すデータが存在する この表のデータは, ビニル線に使用される銅の量の用途別比率を表しているが, 使用される銅量と絶縁体 被覆材として使用される軟質塩ビ量は同じ比率であり, また, 軟質塩ビ中の DEHP 使用率が一定と仮定すると,1972 年から 3 年間における電線被覆用 DEHP の屋外使用比率は 0.16 となる 表 Ⅲ15 ビニル線品種別出荷推移 品種別 銅量, トン 1972 年 1973 年 1974 年 屋外ビニル線ビニル線計 40, ,217 40, ,645 27, ,139 屋外用途比率 年間平均比率 0.16 [ 出典 : 日本の塩化ビニール産業 ( 日本の塩化ビニール産業 編集委員会,1979) より作成 ] 一般フィルム シート :2000 年度に関係業界へのアンケートによる軟質塩ビの用途別需要量が細 88

97 かく調べられている ( 塩ビ工業 環境協会,2001) これから, 表 Ⅲ3 の分類の製品用途を抽出し, 各用途が屋外使用であるか否かを判断した 表 Ⅲ16 に 一般フィルム シート の製品用途分類に対応すると思われる製品を示す 塩ビ工業 環境協会の分類では, 表 Ⅲ3 分類の 一般フィルム シート に対応する製品用途分類は 一般フィルム シート と その他 の 帆布 ターポリン と考えられる 使用が 外 / 内 となっている製品用途分類は, 屋外用途か屋内用途かが判断できないものである 判断できない場合は, さらに細かい分類表 ( 表 Ⅲ17) を使用して屋内使用と屋外使用の比を決定した 2000 年の一般フィルム シート用 DEHP 出荷量は 31,500 トンであり, 対応する軟質塩ビの需要量は 139,890 レジントンである また, 化学工業統計年報 ( 経済産業省経済産業政策局調査統計部, 2001) によると,2000 年の全可塑剤販売量中の DOP が占める割合は 53% である したがって,1 DOP がほぼ全量 DEHP である,2 どの可塑剤も, 軟質塩ビ樹脂に投入される割合が DEHP と等しい, 3 加工ロスと再生処理量は無視する,42000 年と 2000 年度の DEHP 出荷量は等しいと仮定すれば, 製品中の DEHP 含有率は 31,500/(31, , )=0.30 となる 業界ヒアリングによる一般フィルム シート中の DEHP 含有率は 25% であり, 値に大きな剥離はなかった 89

98 一般フィルム シート工業用 ( 車両用 ) 8,010 屋外 表 Ⅲ16 塩ビ樹脂用途別需要量 ( 一般フィルム シート, その他 ) 雑貨用 包装用 用途分類 玩具用文房具用家具 装飾用袋物用その他ストレッチフィルムシュリンクフィルム 1 繊維用機械器具 弱電用肥料袋用その他 建材用木材被覆用金属被覆用紙 布被覆用その他用 需要量 [ レジントン ] 1) 使用場所 2000 年度 1,390 屋内 12,250 屋内 3,830 屋内 10,380 屋内 17,410 屋内 43,840 4,300 1,960 3,950 6,600 5,810 1,450 8,330 屋内屋内屋内屋内屋内屋内 屋内屋内屋内屋内 外比率 その他帆布 ターポリン 10,380 2) 外 / 内 計 139,890 屋外使用計 10,450 屋外使用比率 ) レジントンとは, 可塑剤添加前の樹脂ベースの重量 2) 表 Ⅲ17 に詳細区分を表記 [ 出典 :2000 年度塩化ビニル樹脂用途需要量 ( 塩ビ工業 環境協会,2001) より作成 ] 表 Ⅲ17 帆布 ターポリンの用途別需要量 用途 建材用包装用車両用テント用その他 2000 年度需要量使用場所レジントン 4,060 屋内 1,500 屋内 1,610 屋外 830 屋外 2,380 屋内 計 10,380 屋外使用計 2,440 屋外使用比率 [ 出典 :2000 年度塩化ビニル樹脂用途需要量 ( 塩ビ工業 環境協会,2001) より作成 ] ホース ガスケット : 一般フィルム シート と同様に, 塩ビ工業 環境協会 (2001) の分類と 1 シュリンクフィルム : フィルムを成型する際に縦方向や横方向に延ばされた ( 延伸された ) フィルムが延伸したフィルムが縮まろうとする性質を利用したのがシュリンク包装で, 包装後, フィルムに熱をかけて収縮させ, 中身製品に密着した包装に仕上げることができる このシュリンク包装に使用されるプラスチックフィルムをシュリンクフィルムという 90

99 比較し, 対応していると考えられる用途を抽出した 表 Ⅲ3 の ホース ガスケット の用途分類には, ホース, ガスケットおよびチューブが含まれている 対応する製品用途分類の需要量は表 Ⅲ18 のデータで求めたが, ホースとチューブについては, 表 Ⅲ19 に示す詳細データから屋内と屋外の使用比率を求めた 2000 年度のホース ガスケット用 DEHP 出荷量は 2000 年の出荷量と等しいとすると 12,500 トンであり, 軟質塩ビ量から算出できる DEHP 含有率は 12,500/(12, , )=0.28 であった 業界ヒアリングによるホース ガスケットの DEHP 含有率は 30% であり, 値に大きな剥離はなかった 表 Ⅲ18 塩ビ樹脂用途別需要量 ( ホース ガスケット ) 用途分類 押出品ガスケットホース チューブ 2000 年度需要量 [ レジントン ] 18,070 43,200 計 61,270 屋外使用計 13,000 屋外使用比率 使用場所 屋内 1) 外 / 内 外比率 ) 表 Ⅲ19 に詳細区分を表記 [ 出典 :2000 年度塩化ビニル樹脂用途需要量 ( 塩ビ工業 環境協会,2001) より作成 ] 表 Ⅲ19 産業部門別ホース チューブの用途別需要量 2000 年度 用途分類 需要量 [ レジントン ] 使用場所 住建 土木部門 ホース送水ホース耐圧 2,860 屋内 1,970 屋内 容器 包材部門 収縮チューブ 780 屋内 農林 水産部門 ホーススプレーホース送水 620 屋外 2,860 屋外 工場 設備部門 ホースサクションホース耐圧 3,270 屋内 3,940 屋内 車両部門 チューブ 970 屋内 電気 機械部門 ホースサクションホース耐圧チューブその他 4,900 屋内 3,930 屋内 190 屋内 雑貨 その他部門ホース単純ホースその他チューブ医療チューブその他ホース チューブその他 4,620 屋外 50 屋外 7,200 屋内 190 屋内 4,850 屋外 計 43,200 屋外使用計 13,000 屋外使用比率 0.30 [ 出典 :2000 年度塩化ビニル樹脂用途需要量 ( 塩ビ工業 環境協会,2001) より作成 ] 91

100 以上の結果から, 軟質塩ビ製品からの DEHP 排出係数を表 Ⅲ20 のように決定した 製品用途分類 一般フィルム シート農ビレザー工業用原料電線被覆ホース ガスケット建材壁紙履物 表 Ⅲ20 製品用途分類別 DEHP 排出係数 排出面 屋内 屋外 片面 両面 両面 片面 片面 片面 片面 片面 片面 片面 片面 片面 片面 総排出係数 mg/m 2 / 年 塗料用途分類については軟質塩ビ製品ではないために同様な推定法が使用できないが,PRTR 制度の届出外排出量推計による家庭と非対象業種からの排出量推計に塗料が含まれていること, 出荷量が少ないこと等から, 本評価書では推計しなかった 製品用途分類別 DEHP 排出量の推定排出係数は製品の表面積に基づいて決定しているので, 先に推定を行った DEHP ストック量をストック面積 ( 使用段階にある DEHP 製品の全表面積 ) に換算する必要がある 換算のパラメータとして, 塩化ビニル工業会所属の一般フィルム部会やコンパウンド部会等の各部会へヒアリングを行い, 報告された各用途分類別の平均厚さと軟質塩ビ製品中 DEHP 重量含有率を使用した 重量と面積の換算には, 出荷量が面積のデータとして存在する壁紙を基準とした ここで, ビニル壁紙に主に使用されている可塑剤は DEHP の他にフタル酸ジイソノニル (DINP) がある 全ビニル壁紙中,DEHP が使用されている壁紙の比率は,DEHP と DINP の国内出荷量の比に相当すると仮定すると,1999 年から 2001 年までの DEHP の割合平均は 0.68 である ( 表 Ⅲ21) 3 年間で大きな変動がなかったため, 全ての年においてビニル壁紙の出荷面積の 68% が,DEHP を可塑剤として使用したビニル壁紙の面積であるとした 表 Ⅲ21 フタル酸系可塑剤出荷比率 (DEHP,DINP) 年 DEHP 出荷量 1) DINP 出荷量 [ トン ] [ トン ] DEHP/(DEHP+DINP) , , , , ,800 98, 平均 ) 可塑剤工業会,2004 日本壁装協会 (2004) によるビニル壁紙の出荷量 ( 面積 ) と可塑剤工業会による DEHP 出荷量 ( 重量 )( 表 Ⅲ1),DEHP が使用されている壁紙の比率 (0.68)( 表 Ⅲ21) から, 換算係数 ( ストック量 92

101 からストック面積へ換算 ) を次式で算出した ( 表 Ⅲ22) 換算係数 ( 壁紙 )[m 2 / トン ]=ビニル壁紙の出荷面積[m 2 ] 0.68 DEHP 出荷量 ( 壁紙 )[ トン ] 表 Ⅲ22 換算係数 ( 壁紙 ) 年 1) ビニル壁紙出荷量 DEHP 出荷量 ( 壁紙 ) 換算係数 [m 2 ] [ トン ] [m 2 / トン ] ,990,124 27, ,169,037 19, ,674,083 17, ,695,468 18, ,110,729 18, 平均 ) 日本壁装協会, 2004 製品用途分類内の出荷面積が入手できる製品が壁紙のみであったため, 他の製品用途分類に関しては, 厚さと DEHP 含有率を壁紙の値と比較し, 換算係数を次式で計算した 換算係数 ( 用途別 )[m 2 / トン ] = 換算係数 ( 壁紙 )[m 2 / トン ] (DEHP 含有率 ( 壁紙 )/DEHP 含有率 ( 用途別 )) ( 厚さ ( 壁紙 )[mm]/ 厚さ ( 用途別 )[mm]) また, 工業用原料の製品用途分類に含まれる製品群は主に電線被覆とホース ガスケットの材料となるコンパウンドを示しているため, 厚さと含有量は二つの用途分類の平均値を使用した ヒアリングにより得られた各製品用途分類別軟質塩ビ製品厚さ,DEHP 含有量および算出された換算係数を表 Ⅲ23 に示す 用途 一般フィルム シート農ビレザー工業用原料電線被覆ホース ガスケット建材壁紙 ( 基準 ) 履物 表 Ⅲ23 換算係数 ( 軟質塩ビ製品 ) 厚さ [mm] DEHP 含有率 [%] 換算係数 [m 2 / トン ]

102 本章 4.2 項で求めた DEHP ストック量の経年変化に換算係数を乗じることで, 各製品用途のストック面積の経年変化を求め, さらに排出係数を乗じて, 使用中軟質塩ビ製品から大気へ排出される DEHP 量の経年変化を算出した ( 図 Ⅲ19) 屋外での使用とフィルム厚さが比較的薄いことから, 農ビからの排出が DEHP の出荷量の割合と比較して, 大きいと示唆された 他の製品と比較し, 面積当たりの DEHP 排出量が多いことが, 農ビの寿命が 0.5~2 年と短いことの一因であると考えられる DEHP 大気排出量 [ トン ] 1, 履物壁紙建材ホース ガスケット電線被覆工業用原料レザー農業用ビニール一般フィルム シート 年 図 Ⅲ19 使用中製品由来 DEHP 排出量経年変化 DEHP を重量から面積に換算することが困難な場合,EU 評価書暫定版 (EU,2001) やフタル酸エステル類リスク評価管理研究会 (2003) では, 重量ベースの排出係数を用いている この排出係数は毎年製品中の DEHP が 0.05 w% の割合で排出すると推定している この 0.05w% という値は, 西ヨーロッパ全体での DEHP 年間消費量と年間消失量から算出した値である (OECD,2004) EU におけるこの仮定は安全側の仮定であり, 現実に起こりうる最悪のシナリオが想定されている その重量ベースの排出係数 (0.05 w%/ 年 ) で推定した結果では,2001 年における使用中製品由来の DEHP 大気排出量は 1,430 トン / 年であり, 表面積ベースで算出した 762 トン / 年を上回っていた 重量ベースの DEHP 大気排出量は図 Ⅲ13 に示した DEHP のストック量総量に比例しているが, 表面積ベースの推定では, 図 Ⅲ19 のように農ビによる寄与が大きいため, 農ビのストック量と類似した経年変化の傾向を示した 製品用途分類によっては, 表面積ベースの推定法がより大きい排出量を推定する場合もあるが, 日本における使用中の製品からの DEHP 大気排出量全体としては, 重量ベースの排出量は過大に評価される可能性が示唆された ( 図 Ⅲ20) 94

103 DEHP 大気排出量 [ トン ] 1,600 1, 面積基準重量基準 年 図 Ⅲ20 二手法による DEHP 排出量推定値の比較 EU 評価書暫定版 (EU,2001) では, 壁紙, 床材等の DEHP 排出係数は面積基準でも計算をしている ただし, これは用途分類の中の製品が決定しやすく, 統計データが存在する製品群であるためである 一般フィルム シート等の製品群では製品が特定しづらいため, 現実に起こりうる最悪のシナリオとして 0.05w%/ 年を採用している 本評価書では面積基準の大気排出係数を妥当な推定法であると判断し, 各業界へのヒアリングにより得られた用途別の製品厚さを用いて, 面積基準の DEHP 大気排出量を推算した 使用中の軟質塩ビ製品からの地域別 DEHP 大気排出量第 Ⅵ 章の暴露評価では,5 km 5 km メッシュ別の大気中 DEHP 濃度を推算するため, その前段階として, 本節で推定された使用中の軟質塩ビ製品から大気に排出される DEHP 量を地域別に割り振りを行った その際, 製品用途分類毎に以下のデータを用いた 農ビ : 日本施設園芸協会 (2004) による, 農ビの都道府県別年間排出量 * と再生処理量 (1998 年 7 月 1 日 ~1999 年 6 月 30 日 ) 壁紙, 床材 : 国土交通省総合政策局情報管理部建設調査統計課 (2002) の新規住宅着工件数 ( 床面積 2001 年 ) その他の用途分類 : 総務省統計局 (2004a) による,2000 年国勢調査人口および世帯数の各定数表 Ⅲ24 に各指標データとそれらから推定される地域別排出割合を示す * この報告書で使用されている 排出量 とは, 本評価書で使用している 環境排出量 を意味する 排出量 とは異なり 廃棄量 を意味するため, 表 Ⅲ24 では 廃棄量 として記載した 95

104 北海道東北関東北陸中部東海近畿中国四国九州沖縄 農ビ 1998 年 7 月 ~1999 年 6 月 表 Ⅲ24 指標毎の地域別排出割合 新規住宅着工件数 ( 床面積 ) 2001 年 世帯数 2000 年 廃棄量 [ トン ] 割合着工面積 [m 2 ] 割合世帯数 [ 戸 ] 割合 9,506 7,301 20,062 1,704 2,514 6,837 5,009 4,382 9,386 32, ,728,913 7,866,010 39,267,787 3,707,066 5,314,854 11,982,554 17,853,340 5,443,917 3,029,593 9,491,706 1,150, ,306,419 3,270,371 15,768,850 1,564,783 2,006,817 4,465,885 7,861,231 2,833,478 1,541,066 4,997, , 地域別では, 農ビの排出割合は九州が最も高く ( 約 33%), 新規住宅着工件数 ( 床面積 ) 割合と世帯数割合では人口が密集する関東が最も高い (36% および 34%) 関東の各都県で比較すると全国同様, 農作物の生産高が多い茨城県の割合が全国の 8% と, 関東地方の約 40% を占め, 新規住宅着工床面積割合と世帯数割合では東京都が関東の約 30% を占めている これらの割合を使用中製品からの大気排出量へ乗じることで,2001 年における各地域毎の DEHP 大気排出量を推定した ( 表 Ⅲ25) 推定結果によると, 世帯数が多い関東地方が, 農ビからの排出量が多い九州の 161 トン / 年を上回り, 使用中の軟質塩ビ製品からの DEHP 排出量が多く,208 トン / 年であった DEHP の製造と軟質塩ビ製品の製造時に環境に排出される DEHP 量と製品使用時の DEHP 排出量を地域別にまとめると, 表 Ⅲ25 に示すように関東地方での排出量が他の地方に比べて, かなり多い 軟質塩ビの可塑剤である DEHP が人口密集地で多く排出されることが示された 96

105 表 Ⅲ25 大気への地域別 DEHP 排出量 (2001 年 )[ トン / 年 ] 地域 届出対象 届出対象外 使用中製品由来 合計 北海道東北関東北陸中部東海近畿中国四国九州沖縄 合計 392 1, , 水域への排出量推定 屋外用途大気への排出と同様に, 使用中の軟質塩ビ製品と雨水等との接触により DEHP が水域へ排出されると考えられる しかし, 使用中の製品から水域に排出される DEHP 量の推定に関する既報の研究は非常に少ない 軟質塩ビ製品から水に溶出する DEHP 量を測定した福井ら (1994) によると, 製品からの溶出は, 製品の厚さや DEHP 含有率とは比例せず, 製品の重合時の加工方法あるいは表面加工方法の差に基づいた溶出様相の違い によると報告されている 福井らの実験では, 同一の表面積の軟質塩ビシート片 10 サンプルによって溶出量の実験を行っているが,60,30 分間, 攪拌なしの条件下でのシートからの DEHP 溶出量は 0.20μg/g 以下から 3.6μg/g とかなり幅が広い上に, 厚みとの相関性も見られなかった このため, 大気への DEHP 排出係数の推定で用いたように表面積を基準として排出量を推計することは難しいと思われる 屋外用途の軟質塩ビ製品から水域への排出量に対する,Pastuska ら (1988) の文献に基づく OECD の排出係数推奨値は 0.16 w%/ 年, 砂で表面処理された場合は 0.35 w%/ 年 (OECD,2004) が提示されているが, これらはフタル酸エステルの混合物を含有する軟質塩ビ製品により求められた値であるため,EU 評価書暫定版 (EU,2001) では, 安全側の補正を加え, その排出係数として 0.3 w%/ 年 ~0.7 w%/ 年 ( 砂で表面処理された場合 ) を提示している 本評価書では, 軟質塩ビ製品から水域への排出は, 出荷からの経過年に関わらず一定と仮定して EU 評価書で採用されている排出係数 (0.3~0.7 w%/ 年 ) を用いて推算を行った DEHP ストック量と排出係数により推算された 2001 年における屋外用途の軟質塩ビ製品から水域への排出量は全国で 979~2,284 トン / 年である 排出係数が 0.3 w%/ 年と仮定した場合の水域への排出量経年変化を図 Ⅲ21 に示す 97

106 水域への排出量 ( 屋外 )[ トン ] 1,200 1, 履物ホース ガスケット電線被覆工業用原料農業用ビニール一般フィルム シート 年 図 Ⅲ21 屋外用途の軟質塩ビ製品からの水域への DEHP 排出量経年変化 屋内用途屋内で使用される DEHP 含有製品から水域への排出には, 塩ビ樹脂印刷した衣服の洗濯, 床材の洗浄 磨耗が考えられる (EU,2001) しかし実際に室内の DEHP 含有製品がどのように水と接触し DEHP が排出されるかは製品の屋内存在率からは把握できない 国土交通省 (2001) の報告書によると, 団地から排出される家庭系排水中の DEHP 濃度は中央値のみ与えられており,11μg/L であった 屋内用途の軟質塩ビはほとんどが生活に密着している製品であるため, 世帯数または人口に比例して水域に排出されると考えられる 日本人が一日に使用する水の量は 1999 年データで 323 L/ 人 / 日 ( 国土交通省,2004a), 全国の人口は 2001 年では 127,291 千人 ( 総務省統計局,2004b) であることから,1 年間に屋内から水域へと排出される DEHP 量を計算すると以下のように 165 トンとなる 屋内用途製品から水域への DEHP 排出量 [ トン / 年 ] = 濃度 [μg/l] 平均水使用量 [L/ 人 / 年 ] 人口 [ 人 ] [ トン /μg] =11 ( ) 127, =165[ トン / 年 ] 公共用水域への排出量推定屋内や屋外から水域へ排出された DEHP は全てが直接河川などの公共用水域へ排出されるわけではない 排水処理施設を通過した DEHP は除去処理を受けた後に排出される 屋外用途の製品から雨水等により排出された DEHP の一部は下水管に入り, 下水処理場で処理される 下水処理場で処理されるのは雨水と汚水が同一管渠で集水される合流式の下水道が採用されている地域のみであり, 雨水と汚水が別々の管渠で集水される分流式の下水道では, 雨水によって流出した DEHP は雨水管にまず流入するが, 処理されずに直接公共用水域へと流出する ただし, 合流式下水道では, 流入水量が処理能力を越えると簡易処理や未処理で, 汚水を公共用水域に直接排出してしまう越流水の問題もあり, 合流式下水道の処理区域においても, 公共用水域に直接放出され 98

107 てしまう場合もある 屋内用途の製品から排出された DEHP は, 雑排水として, 合流式, 分流式下水道の他にも合併処理浄化槽 1, コミュニティプラント 2 により処理される 使用段階の製品から水域へ排出された DEHP が公共用水域へ流入するまでの経路と排出率を図 Ⅲ 22 に示す また, 合流式下水道の越流に関する詳細な情報はまだ少なく, 雨天時の処理率や屋内用途からの雨天時, 晴天時負荷量の比率に関しては, 国土交通省が行った簡易モデルによる BOD 3 負荷量の推定結果を用いた ( 表 Ⅲ26) BOD は下水処理場の簡易処理で 30~50%, 高級処理で 90% 以上の除去率 ( 国土交通省,2004b) と,DEHP の除去率 ( 高級処理で 97%, 初沈工程で 60%)( 国土交通省,2001) と傾向が似ているため,BOD を指標として使用できると判断した 図 Ⅲ22 公共用水域への DEHP 排出量推定概念図 表 Ⅲ26 年間 BOD 総流入負荷量および流出負荷量 [ 千トン / 年 ] 項目 晴天時 雨天時 年間 流入 晴天時汚水起因雨天時汚水起因雨水起因小計負荷量合計 流出 晴天時高級処理雨天時高級処理簡易処理未処理小計負荷量合計 [ 出典 : 合流式下水道の改善対策に関する調査報告書 ( 国土交通省,2002)] 各処理施設における除去率は, 以下のようになる. 下水処理場 ( 分流式, 合流式 晴天時 ): 下水処理場で処理された汚水の DEHP 除去率の中央値は 97%(>47%~>99%) である ( 国土交通省,2001) 合併処理浄化槽, コミュニティプラント : 最近では合併処理浄化槽についても下水道の高級処 1 合併処理浄化槽 : トイレの排水と風呂や台所, 洗濯機などから排出される生活雑排水を併せて処理することが可能な浄化槽 2 コミュニティプラント : 複数の家庭から排出されるトイレ排水と生活雑排水を処理する施設 3 BOD(Biochemical Oxygen Demand): 生物化学的酸素要求量 水質指標の一つであり, 水中の微生物が有機物を分解する際に消費する酸素量 99

108 理並みの処理率 ( 全国合併処理浄化槽普及促進市町村協議会,2004) とあることから両処理施設の DEHP 除去率は, 下水処理場と等しい 97% とする 下水処理場 ( 合流式 雨天時 ): 表 Ⅲ26 の雨天時 BOD 除去率 ((14570)/145=0.52) を参考に,50% として計算する また, 各汚水処理施設に流入する DEHP 量の比を決定する,2001 年における処理施設普及率を表 Ⅲ27 に示す 屋外用途からの DEHP 排出に関連する合流式下水道普及率は, 世帯普及率が入手できなかったため人口普及率を使用した 表 Ⅲ27 汚水処理施設人口普及率 (2001 年 ) 汚水処理施設全国人口普及率 [%] 下水道 ( 合流式下水道のみ ) 63.4(19 1) ) 合併処理浄化槽 7.6 コミュニティプラント 0.3 1) 2002 年度の値 ( 国土交通省,2004b) [ 出典 : 農林水産省, 国土交通省, 環境省,2002; 国土交通省,2004b] 屋内用途の製品から水域に排出される DEHP の, 晴天時と雨天時の排出量比は, 簡易モデルによる汚水起因 BOD( 表 Ⅲ26) の比と等しいとした ( 晴天時 664: 雨天時 99) 以上のパラメータと水域へ排出される総 DEHP 量から, 公共用水域へ流出する DEHP 量を以下のように計算した 公共用水域への排出量 ( 屋外用途 )[ トン / 年 ] = 屋外から水域への排出量 [ トン / 年 ] {( 合流式下水道普及率 0.5)+(1 合流式下水道普及率 ) 1} =(979~2,284) {( )+(10.19) 1}=886~2,067[ トン / 年 ] 公共用水域への排出量 ( 屋内用途 )[ トン / 年 ] = 屋内から水域への排出量 [ トン / 年 ] {A 0.03+B 0.03+C 0.5+(1ABC) 1} ここで, A= 分流式下水道普及率 + 合併処理浄化槽普及率 +コミュニティプラント普及率 =( ) =0.52[] B= 合流式下水道普及率 晴天時流入比率 = /(664+99)=0.17[] C= 合流式下水道普及率 雨天時流入比率 = /(664+99)=0.025[] よって, 公共用水域への排出量 ( 屋内用途 )[ トン / 年 ] =165 { ( ) 1}=53[ トン / 年 ] 100

109 4.5 廃棄後の DEHP 含有製品からの環境排出量推定軟質塩ビ製品の処理法には, 焼却, 再生および埋立てがある ダイオキシン類特別措置法により, 国内の焼却処理施設の焼却温度は 800 近いと考えられ,DEHP をその温度で焼却処理した際には燃焼 消失すると考えられる したがって, 焼却処理場からの DEHP 排出はないものとする よって, 廃棄後に DEHP が残存すると考えられるのは, 再生処理 ( マテリアルリサイクル ) と埋立て処理である 再生処理工程における環境排出量推定再生処理される DEHP 含有製品の用途は主に農ビと電線被覆材であり, 農ビはシートや床材に, 電線被覆は電線被覆として再生されるか, 床材やサンダルの原料として使用される 再生処理を行う事業所は PRTR 制度の届出対象事業所でも, 推計対象の非対象業種でもないため, 環境中への DEHP 排出量について, 別途推計が必要である 再生処理の工程では, 最も再生量の多い農ビの処理工程を例にすると, 破砕 洗浄 脱水 乾燥の工程を経て, 押出しによってペレット化し, 出荷される ( 農ビリサイクル促進協会,2004) これらの工程で,DEHP の排出が考えられるのは洗浄と押出し工程である 第 Ⅸ 章の表 Ⅸ7 に示す日本ビニル工業会のデータによると, 塩ビ樹脂加工工程毎の DEHP 排出率は, 塩ビ押出し工程では 0.01~ 0.03% の排出率 ( 排ガス処理なし ) である また, 洗浄工程の DEHP 排出率は得られなかったが, 福井ら (1994) の塩ビシートを使用した溶出時間 30 分の実験によると, 溶出率は 0.005~0.04% であった 全ての軟質塩ビ再生処理段階でこれらの洗浄, 押出し工程が行われているとし, その排出率に安全側である排出率 0.04%( 洗浄 水 ) と 0.03%( 押出し 大気 ) を使用すると,2001 年に再生処理された軟質塩ビ ( 約 35,600 トン ) から環境中へ排出される DEHP は, 水域が 35,600[ トン / 年 ] =14.3[ トン / 年 ], 大気が 35,600[ トン / 年 ] =10.7[ トン / 年 ] である 最終処分場 1 からの環境排出量推計 大気最終処分場において, 焼却残渣や粉砕された廃棄物を運び込む際には灰の飛散防止のために放水を行っているところもあり, また, 重なり合って埋立てられるため埋立て全量が大気と常に接しているわけではないことから, 埋立て量から大気への排出量を推定することは困難である さらに, 最終処分場では全埋立て面積を一度に使用するわけではなく, 一日単位で廃棄物塊 ( セル ) を形成し, 一日の作業が終了する時に覆土をするため, 大気への排出はほとんどないと考えられる このセルの大きさは高さ約 2 m で, 幅と奥行きは 1 日当たりの埋立て量により決まる ( 田中,2000) 廃棄物処分場付近の大気中 DEHP 濃度を測定したデータは入手することができなかったが, 埋立て処分場の特徴を用いて最大に見積もるとすれば, 廃棄物処分場のセル表面を常に軟質塩ビが覆っていると仮定し, 屋外における排出係数 (383 mg/m 2 / 年 ) を採用することで推算することができる 2001 年度の一般廃棄物埋立て量は全国で 995 万トン / 年 ( 環境省,2004a), 産業廃棄物埋立て量 1 最終処分場 : 埋立て処分を行うために必要な場所および施設, 設備の総体 101

110 は 4,200 万トン / 年 ( 環境省,2004b) である トンと m 3 の換算比は一般廃棄物で 1.23 m 3 / トン ( 埋立てごみ比重 ( 環境省,2004a) より ), 産業廃棄物では 1 m 3 / トン ( 環境省,2004b) である よって, 表面積は以下の式で推定できる セル表面積 [m 2 ]= 年間埋立て量 [t] 換算比 [m 3 /t] 2[m] =( , ) 2= [m 2 ] ここで, 埋立て地では即日覆土を仮定すると, セルの最大表面積は, [m 2 ] 365[]= [m 2 ] である 以上より, 各最終処分場ではセルの側面積はセルの表面積と比較して十分に小さいと仮定すると, セル表面からの大気排出量は以下のように計算することができる 最終処分場からの排出量 ( 大気 )[ トン / 年 ]=セル表面積[m 2 ] 排出係数 [mg/m 2 / 年 ] 10 9 [ トン /mg] = [m 2 ] 383[mg/m 2 / 年 ] 10 9 [ トン /mg] =0.0285[ トン / 年 ] 水域埋立て地に存在する DEHP は毎年増加し, 埋立て地からの浸出水中では実際,DEHP が多くの地点で検出されている 埋立てられた DEHP 含有製品からの DEHP 排出は長期にわたって起こるが ( 山田ら,1999), 埋立てられた軟質塩ビ製品の経過年により, 水への排出率も変化することが考えられるため, 埋立て量と排出係数で推算するのは妥当ではない 浸出水は溶存有機物質 (DOC) が多く含まれているため,DEHP をより溶解しやすい環境である (Bauer ら,1998) との報告もあるが, 実際降雨等により埋立て処分場に水が浸透する間に溶解度まで DEHP が溶解するかは疑わしく, 実験で得られた溶解度をそのまま使用することも非現実的である したがって, 埋立て処分場からの排出量推定には, 実際に測定された浸出水中 DEHP 濃度と浸透水量を乗じて推算した Cadogan ら (1994) による手法を本評価書では使用した 一般廃棄物処分場と産業廃棄物の管理型処分場 1 では浸出水の処理施設を併設することが義務付けられており, 浸出してきた DEHP はある程度除去されて公共用水域や下水処理場へと放流される 産業廃棄物の安定型処分場 2 では処理施設の設置が義務付けられていないため, 排水の処理が行われていない処分場も存在する 近年の一般廃棄物処分場のモニタリング結果では処理後の浸出水中 DEHP は検出下限値未満の濃度であるものも多数存在するが, 最高濃度は 8.0μg/L( 参考資料 A 表 Ⅳ22) であった 管理型と安定型の産業廃棄物処分場については, 浸出水に関するモニタリングデータが存在しなかったので, 文献値や全最終処分場の平均浸出水濃度を用いたフタル酸エステル類リスク評価管理研究会 1 管理型処分場 : 生活環境の保全上支障をもたらす浸出水を出す可能性が高い廃棄物を処理する処分場であり, 安定型処分場と遮断型処分場で処分される以外の廃棄物を埋立てる処分場 2 安定型処分場 : 性質が安定しており生活環境上の支障を及ぼすおそれが少ないとして政令で定められた安定型産業廃棄物を埋立てる最終処分場 102

111 (2003) による中間報告書と同じ値 ( 安定型処分場 :2μg/L, 管理型処分場 :1μg/L) を使用し推算を行った 表 Ⅳ22( 参考資料 ) 廃棄物最終処分場では埋立て地の周囲に水路が造られており, 処分場周辺の雨水は埋立て地内へ流入させないのが一般的である よって埋立て面積への降水量が埋立て地への流入水となり, その一部が浸出水となる 2001 年の全国 46 地点の平均年降水量は1,560 mm であり ( 国土交通省,2004a), これらの値と下記の式を使用し, 公共用水域への DEHP の排出量を以下のように推定することができる ( フタル酸エステル類リスク評価管理研究会,2003) DEHP 浸出量 ( 処理後 )[ トン / 年 ]= 処理水濃度 [μg/l] 浸出水量 [m 3 / 年 ] 10 3 [L/m 3 ] [ トン /μg] 浸出水量は以下の式で推定される 浸出水量 [m 3 / 年 ]= 降雨量 [mm/ 年 ] 集水面積 [m 2 ] 浸出係数 [] 10 3 [m/mm] ここで, 集水面積は埋立て面積であるが, 一般廃棄物の最終処分場における埋立て面積のデータは毎年集計されているが, 産業廃棄物最終処分場の埋立て面積のデータは集計されていない. よって, 一般廃棄物の埋立て面積は 2001 年度の報告値である 49,096 千 m 2 ( 環境省,2004c) を 2001 年の実績値として使用し, 産業廃棄物の埋立て面積には, 少し古いデータであるが 1994 年度の値を用いる ( 武田,1997) これによると, 安定型が 24,733 千 m 2, 管理型で 49,836 千 m 2 であった 1994 年度と 2001 年度の産業廃棄物最終処分場の数を比較すると, 安定型と管理型の処分場計で, それぞれ 2,650 と 2,686( 環境省,2004e) でほとんど差がなく, 排出量の概算に際しては影響が小さいと判断した また, 浸出係数とは (1 蒸発量 [mm/ 年 ]/ 降雨量 [mm/ 年 ]) で表され, 日本では 0.5 程度であると言われている ( 田中,2000) ため, 浸出係数は 0.5 を採用した. よって, 降雨量と降水量が等しいとすると, 一般廃棄物埋立て処分場 : 浸出水量 =1,560 49, = [m 3 / 年 ] 産業廃棄物安定型処分場 : 浸出水量 =1,560 24, = [m 3 / 年 ] 産業廃棄物管理型処分場 : 浸出水量 =1,560 49, = [m 3 / 年 ] これより,DEHP の浸出量は以下のように推算される 一般廃棄物埋立て処分場 :DEHP 浸出量 = =0.306[ トン / 年 ] 産業廃棄物安定型処分場 :DEHP 浸出量 = =0.039[ トン / 年 ] 産業廃棄物管理型処分場 :DEHP 浸出量 = =0.039[ トン / 年 ] 103

112 4.6 下水汚泥の農地還元下水処理場では先に示したように, 流入水中の DEHP の 97% が除去される しかし, 除去された DEHP 全量が生分解を受けて消滅したわけではなく, 下水汚泥に吸着されるものもある 下水処理場に流入してくる DEHP 量の 33% が初沈汚泥,28% が余剰汚泥に含まれる ( 国土交通省,2001) これらの下水汚泥は焼却処理の他に有効利用として肥料, セメント原料, レンガ等として再利用される 国土交通省の調査 ( 国土交通省,2003) によると,2001 年では発生した下水汚泥の発生固形物ベースで,56% が有効利用されており, そのうち農地還元が 14%, 建設資材利用が 42% である 焼却や溶融処理後に有効利用する場合は,DEHP の残存は無視することができるが, 緑農地利用では DEHP がそのまま畑に残存する可能性がある 活性汚泥を肥料や土壌改良剤等として使用する際には乾燥, コンポスト化, 炭化等の処理を施すが, その処理工程で DEHP がどの程度除去されるかに関しては情報を得ることができなかった よって, 緑農地利用される下水汚泥中に残存する DEHP 量に関して, 国土交通省 (2001) による調査における脱水汚泥中 DEHP 濃度の中央値 (97 mg/kgdry) と 2001 年度における農地還元される汚泥量 (270,824 トン / 年 dry)( 国土交通省,2003) を使用し, 以下の式で推定した この農地還元される汚泥量は, 焼却灰, 溶融スラグ量は減じた値である 汚泥中の DEHP 濃度は, コンポスト, 濃縮汚泥, 消化汚泥等もすべて脱水汚泥と同じ濃度であると仮定した 農地還元される DEHP 量 [ トン / 年 ] = 脱水汚泥中 DEHP 濃度 [mg/kgdry] 農地還元される汚泥量 [ トンdry / 年 ] 10 6 [kg/mg] =97 270, =26.3[ トン / 年 ] 1 汚泥や合成堆肥中の DEHP は, 好気的条件下では良分解性 ( 汚泥 :1 日で 33~88% の分解, 合成堆肥 :70 日で 14~94% の分解 (Staples ら,1997a)) である よって, 微生物による有機性分解反応を利用したプロセスであるコンポスト化の工程と肥料の散布後に多くが分解されると考えられ, 実際はかなり少なくなると考えられる 1 好気的条件 : 有機物を酸化するのに必要な酸素が十分にある条件 104

113 5.DEHP の全ライフサイクルにおける環境中への排出量以上より求めた DEHP の排出量を図 Ⅲ23 にまとめた 対象は 2001 年である 1) 数字の単位はトン 2) 矢印の大きさと DEHP 量は比例していない 3) PRTR 制度の裾きり以下排出量推計値は, 公共用水域とその他の環境媒体へ分け, その他は全て大気への排出とした図 Ⅲ 年における DEHP フロー 排出図 105

114 第 Ⅳ 章モニタリング結果の概要 1. はじめに DEHP は, 環境ホルモン戦略計画 SPEED'98(2000 年 11 月版 ) ( 環境省,2000) に内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質として記載され, 優先してリスク 1 評価に取り組むべき物質とされている この 環境ホルモン戦略計画 SPEED'98 が当初,1998 年 5 月に公表されたのを受け, 国や地方自治体等による環境および食物中のモニタリングが全国的に実施され, それらの結果は国や自治体等の報告書やホームページで公開されている モニタリングデータは, 単にわが国における DEHP による環境汚染や食物汚染の現状を把握するだけでなく,DEHP による暴露 ( ヒトの摂取量や水生生物の暴露濃度等 ) の現状を推定する上でも有用である さらに,DEHP の環境排出源からヒトや環境中の生物に至る主要な暴露の道筋を推定する際に用いる環境動態モデル等の検証用データとしても重要である 様々な環境排出源から環境媒体や摂取媒体を経てヒトや環境中の生物に至る DEHP の輸送過程が再現できることが確認された数理モデルを用いることにより, 排出削減対策導入時の環境媒体中 DEHP 濃度や摂取量の変化を定量的に推計することが可能となる フタル酸エステル類による環境汚染については 1970 年頃から報告があり ( 例えば,Mayer ら,1972), わが国でも,1974 年に水中のフタル酸エステルについて報告されている (Morita ら,1974) しかし,DEHP 等のフタル酸エステルは実験室内にも存在し, 分析用の試薬や溶媒にも含まれているといわれており, 分析時のコンタミネーションによる分析値の信頼性の低下が懸念される 本章では,2 節に最近のモニタリングに用いられている DEHP の分析法の概要を示し,3 節および 4 節に, 主に 1998 年以降に国や自治体等により調査され, 公開されている環境および食物中の DEHP に関するモニタリングデータを収集および整理した結果を示す さらに, 5 節で, モニタリングデータを用いて, わが国における DEHP のヒトによる摂取量 2 を推定した結果を示す 1 リスク : あるエンドポイントの発生する確率とそのエンドポイントの重要さの関数 2 本評価書では, ヒトの体重当たりの平均一日摂取量を単に摂取量 [μgdehp/kg 体重 / 日 ] と記載する これに該当しない場合は, 単位を付記する等, 区別して記載する 106

115 2. 分析方法 DEHP のモニタリングは, 大気, 水質, 土壌, 底質および水生生物の各環境媒体に加え, 食事や水道水について実施されている 本節では, 最近のモニタリングに用いられている DEHP の分析法の概要として, 水質, 底質および水生生物については, 環境庁 (1998) より示された 外因性内分泌攪乱化学物質調査暫定マニュアル の前処理法等を, 食品については, 厚生労働省 (2001b) の 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書追補 の中で暫定的にまとめられた 食品中の内分泌かく乱化学物質分析ガイドライン の前処理法等を, いずれにもない大気については, 化学物質分析法開発調査報告書( 平成 7 年度 ) ( 環境庁,1996) に公表されている前処理方法を示す なお, 厚生労働省のガイドラインには, ( 本ガイドラインは ) 内分泌かく乱物質等の食品試料中の濃度を測定する際の一般的留意点をまとめた ものであり, ここ( ガイドライン ) で示した以外の方法であっても測定結果の信頼性を確保できることが認められるならばその方法を採用しても良い ( 厚生労働省,2001b) と明記されているように, ガイドラインは必ずしも絶対的なものではない 実際の調査等では, 上記マニュアルやガイドラインに準ずる方法で, かつ試料の状態にあわせた前処理と分析が行われているようである 2.1 大気大気中の DEHP 分析前処理法の例として, 環境庁 (1996) の方法を図 Ⅳ1 に示す サンプリングについては, ハイボリュームサンプラーを使用し,7~8 L/ 分で 24 時間 ( 約 10 m 3 ) 捕集する 捕集ろ紙は, サンプリング前に, ソックスレー抽出器で 24 時間アセトン洗浄したものを用いる ろ紙として, ガラス繊維フィルター (GF) および炭素繊維フィルター (CF) を重ねて 2 段捕集とし,GF と CF を別々に分析する GF には粒子状物質とガス状物質が,CF にはガス状物質が捕捉されていると考えられるが, 厳密には区別できない 試料捕集後は, できる限り迅速な前処理を行うことが望ましい 本分析法での検出下限値は 6 ng/m 3 である 2.2 水質水中の DEHP 分析前処理法として, 環境庁 (1998) のマニュアルに従った方法を図 Ⅳ2 に示す サンプリングについては, 試料水は泡立てないように静かに採取し, 容器に満水にして密栓をする 分析は試料採取後速やかに行うが, できない場合は冷暗所 (4 ) で保存する 2000 年度の環境庁実態調査 ( 環境省,2001) では, ステンレス製のバケツ ( 必要に応じて麻ロープ等を付ける ), またはひしゃく等を用いて, 水面より 10 cm 程度下の表層水を採水し, 運搬に際しては専用のダンボール箱を使用し, 保冷 運搬している 本マニュアルでは, 溶存態と懸濁粒子吸着態の分離方法については特に触れていない また, 図中には示していないが, 夾雑物の多い試料では, 本章 2.3 項の底質や 2.4 項の生物 107

116 試料の分析前処理に使用するゲルパーミエイションカラムクロマトグラフィー (GPC), またはフロリジルカラムクロマトグラフィーでクリーンアップを行う サロゲート法で測定する場合には, 分析開始時に水試料にサロゲート物質を所定量添加する また, 内部標準法で測定する場合には, ガスクロマトグラフ / 質量分析計 (GC/MS) に注入する前に測定用試料液に内部標準を所定量添加する 本分析法の検出下限値は,0.5μg/L を目標としている ろ紙試料 * *: ソックスレー抽出器で 裁 断 24 時間アセトン洗浄後, ハイホ リュームサンフ ラーで 24 時間サンフ リンク ジクロロメタン 超音波抽出 遠心分離 ( 上澄液 ) 内部標準 濃縮乾固後, アセトンに転溶 水試料塩化ナトリウム ( 塩析 ) ヘキサン攪拌抽出 ( 水相 ) ( ヘキサン相 ) 濃縮無水硫酸ナトリウム脱水 GC/MS で定量 図 Ⅳ1 大気試料の分析前処理法 GC/MS で定量 図 Ⅳ2 水試料の分析前処理法 2.3 底質底質中の DEHP 分析前処理法として, 環境庁 (1998) のマニュアルに従った方法を図 Ⅳ3 に示す サンプリングについては, 底質試料は静かに採取し, 容器に満たして密栓をする 分析は試料採取後速やかに行うが, できない場合は10 で保存する 2000 年度の環境庁実態調査 ( 環境省,2001) では, エクマンバージ型採泥器, またはこれに準ずる採泥器を使用し, 運搬に際しては専用のダンボール箱を使用し, 保冷 運搬している アセトニトリル抽出の後,2 通りの前処理方法 ( 図中の方法 A および方法 B) のうち, いずれかを選択するようになっているが, フロリジルカラムクロマトグラフィーの前に, 塩析, ヘキサン抽出を行う方法 B の方が, 夾雑物をクリーンアップできるためか, 方法 B を用いた分析例が多く見受けられるようである サロゲート法で測定する場合には, 分析開始時に底質試料にサロゲート物質を所定量添加する また, 内部標準法で測定する場合には, GC/MS に注入前に, 測定用試料液に内部標準を所定量添加する 本分析法の検出下限値は,25μg/kg を目標としている 2.4 生物水生生物中の DEHP 分析前処理法として, 環境庁 (1998) のマニュアルに従った方法を図 108

117 Ⅳ4 に示す 本マニュアルでは, 生物試料のサンプリングについては特に触れていない 分析は試料採取後速やかに行うが, できない場合は, 試料をミキサーで摩砕均一化し, 底質試料と同様,10 で保存する アセトニトリル抽出の後,2 通りの前処理方法 ( 図中の方法 A および方法 B) のうち, いずれかを選択するようになっているが, フロリジルカラムクロマトグラフィーの前に, 脂質除去, 塩析およびヘキサン抽出を行う方法 B の方が, 夾雑物をクリーンアップできるためか, 方法 B を用いた分析例が多く見受けられるようである サロゲート法で測定する場合には, 分析開始時に生物試料にサロゲート物質を所定量添加する また, 内部標準法で測定する場合には,GC/MS に注入前に, 測定用試料液に内部標準を所定量添加する 本分析法の検出下限値は,25μg/kg を目標としている 底質試料 アセトニトリル 振とう後, 超音波抽出 遠心分離 方法 A ( 上澄液 ) 方法 B 5% 塩化ナトリウム 水溶液 ( 塩析 ) ヘキサン 抽 出 ( 水相 ) ( ヘキサン相 ) 無水硫酸ナトリウム 脱 水 濃 縮 濃 縮 G P C 含水フロリシ ルカラムクロマトク ラフィー 濃 縮 無水硫酸ナトリウム 無水硫酸ナトリウム 脱 水 脱 水 濃 縮 方法 A 生物試料アセトニトリルホモジナイザー抽出遠心分離方法 B ( 上澄液 ) ヘキサン脂質除去 ( ヘキサン相 ) ( アセトニトリル相 ) 5% 塩化ナトリウム水溶液 ( 塩析 ) ヘキサン 抽 出 ( ヘキサン相 ) ( 水相 ) 無水硫酸ナトリウム 濃 縮 脱 水 濃 縮 G P C 含水フロリシ ルカラムクロマトク ラフィー 濃 縮 無水硫酸ナトリウム 無水硫酸ナトリウム 脱 水 脱 水 濃 縮 GC/MS で定量 図 Ⅳ3 底質試料の分析前処理法 GC/MS で定量 図 Ⅳ4 生物試料の分析前処理法 2.5 食品食品中の DEHP 分析前処理法の例として, 厚生労働省 (2001b) のガイドラインに従った方法を図 Ⅳ5 に示す 分析は試料採取後速やかに行うが, できない場合は密閉して,20 以下で保存する 本分析法の検出下限値は,50 ng/g を目標としている 109

118 *: 細切れに固体試料 * したもの内部標準 ( サロゲート ) アセトンホモジナイザー抽出 液体試料内部標準 ( サロゲート ) 遠心分離 ( 上澄液 ) 濃縮 10% 塩化ナトリウム水溶液 ( 塩析 ) 酢酸エチル : ヘキサン =1:2 抽出 ( 水相 ) ( 有機相 ) 無水硫酸ナトリウム脱水 ろ 過 濃縮乾固後, ヘキサンに再溶解ヘキサン飽和アセトニトリル抽出 ( アセトニトリル相 ) ( ヘキサン相 ) 濃縮乾固後, ヘキサンに再溶解含水フロリシ ルカラムクロマトク ラフィー 濃 縮 GC/MS で定量 図 Ⅳ5 食品試料の分析前処理法 2.6 GC/MS 条件これまでに報告されているフタル酸エステル類の分析法としては, 紫外部吸光光度検出器付き高速液体クロマトグラフ (HPLC)(Giust ら,1990), 水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ (GC)(Nakamura ら,1993;Page と Lacroix,1995), 電子捕獲型検出器付き GC(Peterson,1991) を用いるものがあるが, ガスクロマトグラフ質量分析計 (GC/MS) を用いて選択イオンモニタリング法 (SIM 法 ) により検出する方法 ( たとえば Castle ら,1990) が最も感度および選択性が高い ( 津村ら,2000) 2.1 項から 2.5 項に示した方法においても, 前処理した試料を GC/MS で分析している 以下, 環境庁 (1998) のマニュアルに示された条件を中心に,GC/MS 分析条件の概要を示す 厚生労働省 (2001b) のガイドラインでも, ほぼ同様の条件が示されているが, 分析機器の機種等によっても多少条件が異なることがある ( 中澤,2000) ガスクロマトグラフ (GC) カラム : 溶融シリカキャピラリーカラム液相 : メチルシリコンまたは 5% フェニルメチルシリコンカラム温度 :50 (2 分 ) 約 10 / 分 270 (10 分 ) ( 厚生労働省 :50 (1 分 ) 約 20 / 分 280, 中澤 :60 (3 分 ) 20 / 分 / 分 / 分 300 (0.1 分 )) 注入口温度 :210~

119 注入法 : スプリットレス法,1μL 注入 ( スプリット法 5:1,2μL 注入, 中澤,2000) キャリアーガス : ヘリウムインターフェース温度 :270 (210, 中澤,2000) 質量分析計 (MS) イオン化法 :EI イオン化電圧 :70 ev イオン源温度 :220~280 ( 機種により 200 以下でも可 ) 検出モード :SIM 法, または同等のもの定量イオン質量設定数 :m/z 149, コンタミネーション防止フタル酸エステルは, 我々の身の周りの様々な製品に使用されているため, 実験室内の雰囲気中にも存在し, また, 塩化ナトリウムや有機溶媒, 脱水剤や吸着剤にも含まれているといわれている このため, ブランクを完全になくすことは困難であり, 分析操作時の器具の洗浄, 乾燥, 保管場所での汚染状況が分析精度の面での信頼性を大きく左右する ブランクを低減するためには, (1) 試薬や精製水はフタル酸エステル分析用を使用する (2) ガラス器具や容器は加熱し, 清浄な場所で冷却する (3)GC/MS の注入口温度を可能な限り高温でエージングする 等の対策が必要である 最近のモニタリングデータは, こうしたコンタミネーションにも十分な注意が払われている 111

120 3. 環境中濃度環境中の DEHP 濃度データとして, 国土交通省 ( 旧建設省 ) と環境省 ( 旧環境庁 ) のモニタリングデータに加えて, 地方自治体および大学 研究機関による調査 公表データを収集し, 表 Ⅳ1 の環境媒体別にまとめた 環境媒体別にまとめたモニタリングデータから, 大気, 水質および底質のデータについて, 調査年度別に統計処理を行い, 幾何平均 1 (GM), 幾何標準偏差 2 (GSD),5 パーセンタイル 3,95 パーセンタイルを導出した 表 Ⅳ1 収集を行った環境媒体 大分類 分類 大気 屋外および室内 水質 河川, 湖沼, 海域および地下水 底質 河川, 湖沼および海域 土壌 下水処理場 流入水および放流水 処分場 事業場等大気, 土壌, 地下水, 浸出水および放流水等 生物 魚類 ( 河川, 湖沼および海域 ), 貝類, 鳥類およびその他野生動物 3.1 データ収集国, 地方自治体および大学 研究機関による公表データは, インターネットを用いた検索によって収集した 検索は 2002 年度の調査データまでを対象とし,2002 年 12 月から 2004 年 6 月まで断続的に行った ( 調査データの URL は 2004 年 10 月まで確認を行った ) 検索により把握できた調査について, 地点別データ, 単位および検出下限値等の不明な部分は, 各公表機関に電子メールまたは電話により問い合わせを行い補完した 以上により,40 都道府県の都道府県または市町村 ( 東京特別区, 処分組合等を含む ) および大学 研究機関による調査 公表データを収集した 収集したモニタリングデータの概要は参考資料 * A 表 Ⅳ2 にまとめた 表 Ⅳ2( 参考資料 ) 3.2 データ処理収集したモニタリングデータには, 再サンプリング等により報告値の信頼性を確認する 1 幾何平均 :GM(geometric mean) 全データの相乗積の同次乗根 データを対数変換した後に算術平均を求め, 逆対数をとって求める 2 幾何標準偏差 :GSD(geometric standard deviation) データを対数変換した後に標準偏差を求め, その逆対数をとって求める 3 パーセンタイル : ある値 P α より小さな値をとる観測値の割合がα% となるとき, この値 P α をαパーセンタイルという n 個の観測値を小さい方から順に x 1,x 2,,x i,,x n としたとき,P α は以下の式で求められる i / n = α / 100, ( x i + x +1) / 2 P α = i * 参考資料は, から閲覧することができる 112

121 ことが望ましい報告値も含まれていた しかし, 収集した過去の報告値に対しては, 現段階でこのような再測定による信頼性の確認を行うことは困難である そのため, 今回は全ての報告値を等しく取り扱うこととし, モニタリングデータのうち, 大気, 水質および底質について, 調査年度別に GM,GSD,5 パーセンタイルおよび 95 パーセンタイルを導出するに留めた 底質については乾燥重量当たりの濃度に対して計算を行い, 乾燥重量当たりの濃度に換算できないデータは計算対象から除外した 今回収集したモニタリングデータには 検出下限値未満 (ND) と報告されているものが多く含まれている このような場合,ND を検出下限値またはその 1/2 等とみなして各統計値を算出する手法は, 検出下限値の高い調査における ND を検出下限値の何分の一とみなすかにより統計値が大きく変動するため適切ではない また検出されている場合でも, 報告値の有効数字が一定ではなかった 以上二つの理由から, 報告値全てを区間データとして 1 取り扱うこととし, これらの区間データ全てを最も良く説明する対数正規分布を最尤法により選び出し, その対数正規分布のパラメータである GM と GSD を, モニタリングデータ全体の統計値とした 区間データを用いて最尤法によりパラメータを推定する方法は鍋谷 (1983) を参照した 統計値を導出した手順は以下の通りである ( 表 Ⅳ3 参照 ) (1) 報告値が ND の場合, 検出下限値を考慮して幅を決定する たとえば, 検出下限値が 0.5μg/L の場合, 下限値を 0μg/L, 上限値を検出下限値の 0.5μg/L とする (2) 報告値が ND ではない場合, 数字の有効桁数を考慮して, 報告値に対する幅を決定する ( ただし, 報告値の下限値は検出下限値を下回らない ) たとえば, 報告値が 1.1 μg/l と記載されている場合, 下限値を 1.05μg/L, 上限値を 1.15μg/L とする (3) 短期間内の連続測定または二重測定により, 同一地点において複数の値が報告されている場合は, その複数の値における最小値から最大値に対して, 同様の範囲を設定した (4) 対数正規分布の累積分布関数 2 を用いて, 各々の報告値が上限値と下限値の間で報告される確率を記述し, その積を全ての報告値が報告される確率とする (5) 全ての報告値が報告される確率が最大となるパラメータ ( 対数平均 : 対数変換した値の平均, 対数標準偏差 : 対数変換した値の標準偏差 ) を持つ対数正規分布を求める (6) 各環境媒体の年度毎に算出した対数正規分布を基に, モニタリングデータの GM,GSD, 5 パーセンタイルおよび 95 パーセンタイルを算出した 1 最尤法 : 尤度 ( 関数 ) を最大にするθを求める方法 尤度とは, 観測値 X が得られたとき, 観測値が x をもつ もっともらしさ を与える尺度である 尤度は, 一般にある変数 θ(θ={θ 1,θ 2,θ 3,,θ i }) の関数として定義されるため, 尤度関数 f(x;θ) とも呼ばれる 2 累積分布関数 : 確率変数 X に対して, 以下の式で定義される F(x) を確率変数 X の累積分布関数という F ( x) = Pr( X < x) < x < 113

122 No. 調査報告値 表 Ⅳ3 仮想データ (3 調査計 15 件 ) での計算例 区間下限値 区間上限値 Ln(P(1,1)) Ln(P(p1,p2)) 1 A < 対数平均, p A < 対数標準偏差, p A Max(Sum(Ln(P(p1,p2)))) A A 幾何平均, Exp(p1) B < 幾何標準偏差, Exp(p2) B < パーセンタイル B < パーセンタイル B B C < C < C < C < C Ln(P(1,1)) は対数正規分布のパラメータを ( 対数平均, 対数標準偏差 )=(1,1) と仮定した場合 の各報告値が報告される確率を対数変換したもの 全ての報告値が報告される確率の積を最大 にすることは, 対数変換した値の和を最大にすることと等しい パラメータを変化させ, 和が 最大となるパラメータの最尤推定量を得る そのパラメータにおいて各報告値が報告される確 率を対数変換した値を左から 7 列目に記した 3.3 大気大気中の DEHP モニタリング結果を参考資料 A 表 Ⅳ4 および参考資料 A 表 Ⅳ5 にまとめた 参考資料 A の表では, 各モニタリングデータを都道府県別に, 測定年度, 単位, 検出数, 測定数, 最小値, 中央値 ( 室内空気のみ ), 最大値, 検出値, 検出下限値, 定量下限値および出典の順に記載してある 表 Ⅳ4, 表 Ⅳ5( 参考資料 ) 屋外大気中 DEHP 濃度は検出下限値 (0.4~510 ng/m 3, 調査により大きく異なる 不明の調査もある ) 未満の測定地点も多い ( 参考資料 A 表 Ⅳ4) これらの屋外大気中 DEHP 濃度について, 測定年度別に GM,GSD,5 パーセンタイルおよび 95 パーセンタイルを推計した 表 Ⅳ6 および図 Ⅳ6 に示すように,1998~2002 年度の GM と 95 パーセンタイルはそれぞれ 17.8 および 139 ng/m 3 と推計された 室内空気および外気 ( 室内調査地点の近傍 ) については, ほぼ全ての検体から検出されている ( 参考資料 A 表 Ⅳ5) 各調査毎に室内空気と外気を比較すると, 中央値および最大値ともに室内空気の方が高濃度であった 114

123 1000 濃度,μg/L,ng/ [ng/m m3 3 ] 年度 95 パーセンタイル GM 幾何平均 5 パーセンタイル 図 Ⅳ6 屋外大気中 DEHP 濃度推計結果 ( 経年変化グラフ ) 測定年度 検体数 表 Ⅳ6 屋外大気中 DEHP 濃度推計結果 GM [ng/m 3 ] GSD 5 パーセンタイル [ng/m 3 ] 95 パーセンタイル [ng/m 3 ] 水質水質中の DEHP モニタリング結果を水域別 ( 河川, 湖沼, 海域および地下水 ) に参考資料 A 表 Ⅳ7~ 参考資料 A 表 Ⅳ10 にまとめた 参考資料 A の表では, 各モニタリングデータを都道府県別に, 測定年度, 単位, 検出数, 測定数, 最小値, 最大値, 検出下限値, 定量下限値および出典の順に記載してある GM,GSD,5 パーセンタイルおよび 95 パーセンタイルは, 水域別 年度別に推計を行い, 表 Ⅳ11 と図 Ⅳ7 に結果を示す 表 Ⅳ7~ 表 Ⅳ11( 参考資料 ) 河川水中 DEHP 濃度は, 最小値は検出下限値 (0.0047~2μg/L, 多くの地点で 0.2 ~0.5 μg/l, 不明の地点もある ) 未満であることが多いが, 最大値は多くの調査で検出下限値より高かった ( 参考資料 A 表 Ⅳ7) 1998~2002 年度の GM と 95 パーセンタイルは, 表 Ⅳ11 および図 Ⅳ7(a) に示すように, それぞれ 0.12 および 2.14μg/L と推計された 湖沼水中 DEHP 濃度は, 検出下限値 (0.0047~1μg/L, 多くの地点で 0.2~0.5μg/L 不明の地点もある ) 未満の測定地点も多い ( 参考資料 A 表 Ⅳ8) が,1998~2002 年度の GM と 95 パーセンタイルは, 表 Ⅳ11 および図 Ⅳ7(b) に示すように, それぞれ 0.07 および

124 μg/l と推計された 海域の水中 DEHP 濃度は, 検出下限値 (0.0047~2μg/L, 多くの地点で 0.2~0.5μg/L 不明の地点もある ) 未満の測定地点も多い ( 参考資料 A 表 Ⅳ9) が,1998~2002 年度の GM と 95 パーセンタイルは, 表 Ⅳ11 および図 Ⅳ7(d) に示すように, それぞれ 0.04 および 1.25μg/L と推計された 地下水中 DEHP 濃度は, 検出下限値 (0.3~1μg/L, 不明の地点もある ) 未満の測定地点も多い ( 参考資料 A 表 Ⅳ10) が,1998~2002 年度の GM と 95 パーセンタイルは, 表 Ⅳ11 および図 Ⅳ7(e) に示すように, それぞれ 0.18 および 2.92μg/L と推計された 水域測定年度検体数 河川 湖沼 河川 + 湖沼 海域 地下水 表 Ⅳ11 各水域における水質中 DEHP 濃度推計結果 GM [μg/l] GSD 5 パーセンタイル [μg/l] 95 パーセンタイル [μg/l] , , , , , , , , , , , , , ,

125 10 1 濃度,μg/L [μg/l] 年度 95 パーセンタイル GM 幾何平均 5 パーセンタイル 図 Ⅳ7(a) 河川における水質中 DEHP 濃度推計結果 ( 経年変化グラフ ) 10 1 濃度,μg/L [μg/l] 年度 95 パーセンタイル GM 幾何平均 5 パーセンタイル 図 Ⅳ7(b) 湖沼における水質中 DEHP 濃度推計結果 ( 経年変化グラフ ) 10 1 濃度,μg/L [μg/l] 年度 95 パーセンタイル GM 幾何平均 5 パーセンタイル 図 Ⅳ7(c) 内水面 ( 河川 湖沼 ) における水質中 DEHP 濃度推計結果 ( 経年変化グラフ ) 117

126 10 1 濃度,μg/L [μg/l] 年度 95 パーセンタイル GM 幾何平均 5 パーセンタイル 図 Ⅳ7(d) 海域における水質中 DEHP 濃度推計結果 ( 経年変化グラフ ) 10 1 濃度,μg/L [μg/l] 年度 95 パーセンタイル GM 幾何平均 5 パーセンタイル 図 Ⅳ7(e) 地下水における水質中 DEHP 濃度推計結果 ( 経年変化グラフ ) 3.5 底質底質中の DEHP モニタリング結果を水域別 ( 河川, 湖沼および海域 ) に参考資料 A 表 Ⅳ 12~ 表 Ⅳ14 にまとめた 参考資料 A の表では, 各モニタリングデータを都道府県別に, 測定年度, 単位, 検出数, 測定数, 最小値, 最大値, 検出下限値, 定量下限値および出典の順に記載してある GM,GSD,5 パーセンタイル,95 パーセンタイルは水域別 年度別に推計を行い, 表 Ⅳ15 と図 Ⅳ8 に結果を示す 表 Ⅳ12~ 表 Ⅳ14( 参考資料 ) 河川底質中 DEHP 濃度は, 検出下限値 ( 多くの地点で 25μg/kgdry, 不明の地点もある ) 未満の測定地点もあるが, 多くの測定地点で検出下限値を超える濃度が測定されている ( 参考資料 A 表 Ⅳ12) 1998~2002 年度の GM と 95 パーセンタイルは, 表 Ⅳ15 および図 Ⅳ8(a) 118

127 に示すように, それぞれ 181 および 8,190μg/kgdry と推計された 湖沼底質中 DEHP 濃度は, 検出下限値 (25~200μg/kgdry, 不明の地点もある ) 未満の測定地点もあるが, 多くの測定地点で検出下限値を超える濃度が測定されている ( 参考資料 A 表 Ⅳ13) 1998~2002 年度の GM と 95 パーセンタイルは, 表 Ⅳ15 および図 Ⅳ8(b) に示すように, それぞれ 163 および 1,780μg/kgdry と推計された 海域底質中 DEHP 濃度は, 検出下限値 (2~200μg/kgdry, 多くの地点で 25μg/kgdry, 不明の地点もある ) 未満の測定地点もあるが, 多くの地点で検出下限値を超える濃度が測定されている ( 参考資料 A 表 Ⅳ14) 1998~2002 年度の GM と 95 パーセンタイルは, 表 Ⅳ 15 および図 Ⅳ8(d) に示すように, それぞれ 120 および 1,800μg/kgdry と推計された 水域測定年度検体数 河川 湖沼 河川 + 湖沼 海域 表 Ⅳ15 各水域における底質中 DEHP 濃度推計結果 GM [μg/kgdry] GSD 5 パーセンタイル [μg/kgdry] 95パーセンタイル [μg/kgdry] 実測値 ,660 5, ,730 8, ,660 4, ,720 8, ,060 4, ,190 6, ,000 4, ,420 3, ,650 2, ,780 2, ,990 5, ,290 8, ,170 4, ,720 6, ,790 3, ,970 6, ,510 1, ,860 2, ,250 1, ,400 1, ,130 1, ,800 1,

128 濃度,μg/kgdry [μg/kgdry] 年度 95 パーセンタイル ( 実測値 ( ) ) 95 95パーセンタイル GM 幾何平均 5 パーセンタイル 図 Ⅳ8(a) 河川における底質中 DEHP 濃度推計結果 ( 経年変化グラフ ) 濃度,μg/kgdry [μg/kgdry] 年度 95 パーセンタイル ( 実測値 ( ) ) 95 95パーセンタイル GM 幾何平均 5 パーセンタイル 図 Ⅳ8(b) 湖沼における底質中 DEHP 濃度推計結果 ( 経年変化グラフ ) 濃度,μg/kgdry [μg/kgdry] 年度 95 パーセンタイル ( 実測値 ( ) ) 95 95パーセンタイル GM 幾何平均 5 パーセンタイル 図 Ⅳ8(c) 内水面 ( 河川 湖沼 ) における底質中 DEHP 濃度推計結果 ( 経年変化グラフ ) 120

129 濃度,μg/kgdry [μg/kgdry] 年度 95 パーセンタイル ( 実測値 ( ) ) 95 95パーセンタイル GM 幾何平均 5 パーセンタイル 図 Ⅳ8(d) 海域における底質中 DEHP 濃度推計結果 ( 経年変化グラフ ) 3.6 土壌土壌中の DEHP モニタリング結果を参考資料 A 表 Ⅳ16 にまとめた 参考資料 A の表では, 各モニタリングデータを都道府県別に, 測定年度, 単位, 検出数, 測定数, 最小値, 最大値, 検出下限値, 定量下限値, 出典の順に記載してある 表 Ⅳ16( 参考資料 ) 土壌中 DEHP 濃度は, 各調査における最小値は検出下限値 (5μg/kgwet~100μg/kg, 不明の調査もある ) 未満である調査も多いが, 最大値は全ての調査で検出下限値を超えている ( 参考資料 A 表 Ⅳ16) 3.7 下水処理場下水処理場の流入水および放流水中の DEHPモニタリング結果を参考資料 A 表 Ⅳ17および表 Ⅳ18 にまとめた 参考資料 A の表では, 各モニタリングデータを都道府県別に, 測定年度, 単位, 検出数, 測定数, 最小値, 最大値, 平均値, 検出下限値, 定量下限値, 出典および備考の順に記載してある 表 Ⅳ17, 表 Ⅳ18( 参考資料 ) 流入水中濃度は, ほとんどの調査で検出下限値 (0.128~0.5μg/L, 不明の調査もある ) を超えていた ( 参考資料 A 表 Ⅳ17) 放流水中濃度は, 最小値はほとんどの調査で検出下限値 (0.128~0.5μg/L, 不明の調査もある ) 未満であるが, 最大値は多くの調査で検出下限値を超えている ( 参考資料 A 表 Ⅳ 18) 各調査での流入水中濃度と比較すると, 中央値および最大値ともに低い値が報告さ 121

130 れている 3.8 処分場 事業場処分場 事業場の大気, 土壌 地下水, 浸出水および放流水の DEHP モニタリング結果を参考資料 A 表 Ⅳ19~ 参考資料 A 表 Ⅳ23 にまとめた 参考資料 A の表では, 各モニタリングデータを都道府県別に, 調査地点, 測定箇所, 測定年度, 単位, 検出数, 測定数, 最小値, 最大値, 平均値, 検出下限値, 定量下限値および出典の順に記載してある 表 Ⅳ19~ 表 Ⅳ23( 参考資料 ) 杉並中継所における測定では, 換気塔において定量下限値 (100 ng/m 3 N~0.1 ppb) 未満 ~800 ng/m 3 N, 排気塔において定量下限値未満 ~1,000 ng/m 3 N の濃度が報告されている ( 参考資料 A 表 Ⅳ19) 市原市廃棄物埋立跡地における測定 ( 千葉県, 参考資料 A 表 Ⅳ2 資料 No.12A03A01) では, 廃棄物層において 9.7~1,200 mg/kg の濃度が報告されている また, モニタリング井による廃棄物層内の帯水層の測定では,0.059~17 mg/l の濃度が報告されている ( 参考資料 A 表 Ⅳ20) 浸出水, 放流水, 排水, 防災調整池中 DEHP 濃度の調査毎の最小値はほとんどが検出下限値 (0.3~7.7μg/L, 不明の地点もある ) あるいは定量下限値未満 (0.02~0.5μg/L) であるが, 最大値は調査の半数近くが検出下限値あるいは定量下限値を超えている ( 参考資料 A 表 Ⅳ21~ 表 Ⅳ23) また, 家庭排水についての測定では,0.44~60μg/L の濃度が報告されている ( 西崎ら, 参考資料 A 表 Ⅳ2 資料 No.22C02B01) 3.9 生物河川, 湖沼, 海域の生物中 DEHP モニタリング結果を参考資料 A 表 Ⅳ24~ 表 Ⅳ29 にまとめた 参考資料 A の表では, 魚類, 貝類, 鳥類およびその他の野生生物について各モニタリングデータを都道府県別に, 測定年度, 単位, 検出数, 測定数, 最小値, 最大値, 平均値, 検出下限値, 備考 ( 種名, 部位 ) および出典を記載してある 表 Ⅳ24~ 表 Ⅳ29( 参考資料 ) 河川魚類中 DEHP 濃度は, 各調査における最小値はほとんどが検出下限値 (0.8~2,800 μg/kgwet, 多くは 25μg/kgwet 不明の調査もある) 未満であったが, 最大値は半数以上の調査で検出下限値を超えていた ( 参考資料 A 表 Ⅳ24) 湖沼魚類中 DEHP 濃度は, 各調査における最小値はほとんどが検出下限値 (2~100μg/kg, 不明の調査もある ) 未満であったが, 最大値はいくつかの調査で検出下限値を超えていた 122

131 ( 参考資料 A 表 Ⅳ25) 海域魚類中 DEHP 濃度は, 各調査における最小値は全て検出下限値 (25μg/kg~100μ g/kgwet, 不明の調査もある ) 未満であったが, 最大値はいくつかの調査で検出下限値を超えていた ( 参考資料 A 表 Ⅳ26) 貝類中 DEHP 濃度は, 各調査における最小値は全て検出下限値 (25μg/kgwet~500μg/kg, 不明の調査もある ) 未満であったが, 最大値はいくつかの調査で検出下限値を超えていた ( 参考資料 A 表 Ⅳ27) 鳥類中濃度は, 各調査における最小値は全て検出下限値 (0.3~400μg/kgwet) 未満であったが, 最大値はほとんどの調査で検出下限値を超えていた ( 参考資料 A 表 Ⅳ28) その他野生生物中 DEHP 濃度は, 各調査における最小値は全て検出下限値 (10~500μ g/kgwet) 未満であったが, 最大値はほとんどの調査で検出下限値を超えていた ( 参考資料 A 表 Ⅳ29) 123

132 4. 食物および水道水中濃度食物として, 家庭内食事, 外食, インスタント食品, 人工乳 離乳食, 市販弁当, 定食, 病院給食および各種食品中の濃度について, 日本食品分析センター (1999;2001) および外海 (1999;2000) の調査データを収集し, まとめた また, 水道水に関しては, 原水, 浄水, 給水栓水および飲用井戸水中の濃度について, 水道技術センター 厚生労働省のモニタリングデータに加え, 地方自治体 研究機関のデータを検索により収集し, まとめた 4.1 食物食物として, 家庭内食事, 外食, インスタント食品, 人工乳 離乳食, 市販弁当, 定食, 病院給食および各種食品中の DEHP モニタリングの結果を表 Ⅳ30~ 表 Ⅳ36 に示す 表 Ⅳ30 では, 日本食品分析センター (1999) による全国 9 地域 57 世帯の 3 日分平均の食事, 計 57 検体中 DEHP 濃度の結果をまとめた 検出下限値 (25μg/kg) 未満の測定地点は 3 世帯であり, 最高値は 1,100μg/kg であった 表 Ⅳ30 モニタリングデータ食物 ( 家庭内食事 1) )[μg/kg] 北海道 宮城県 長野県 東京都 石川県 名古屋市 兵庫県 香川県 北九州市 A ND 81 ND 280 2) 1,100 2) B ) ) 47 2) C ) 360 2) D 220 ND 120 2) 92 2) ) 82 2) E ) 160 2) ) 210 2) ) F 230 2) 560 2) 73 2) 130 2) 100 2) 260 2) G 270 2) 200 2) 94 2) 160 2) 86 H 860 2) 1 1) 1 検体は 1 世帯 3 日分の食事, 陰膳方式 2) 1998 年 3 月測定無印は 1998 年度測定 nd: 検出下限値未満 ( 検出下限値 =25μg/kg) [ 出典 : 日本食品分析センター,1999] 表 Ⅳ31 では, 日本食品分析センター (2001) による全国 9 地域各 3 世帯 ( 計 27 世帯 ) の連続 3 日間での家庭内食事を1 日分毎に分析した, 計 81 検体中の DEHP 濃度の結果をまとめた 検出下限値 (25μg/kg) 未満の測定地点は 8 世帯 (13 検体 ) であり, 最高値は 330 μg/kg であった 1 陰膳方式 : 化学物質の摂取量を推定するために, 一定期間に飲食したものを全てプールして採取し, その中の化学物質濃度を測定する方法 124

133 表 Ⅳ31 モニタリングデータ食物 ( 家庭内食事 1) )[μg/kg] 北海道東北中部関東関西四国中国北部九州沖縄 札幌市 1 仙台市 1 名古屋市 1 文京区伊丹市松山市 1 岡山市 1 福岡市 1 沖縄市 ND 札幌市 2 仙台市 2 名古屋市 2 練馬区箕面市松山市 2 広島市福岡市 2 島尻村 ND 江別市遠田郡小牧市八王子市高石市松山市 3 岡山市 2 福岡市 3 沖縄市 2 57 ND ND 160 ND 36 ND ND ND ND ND ND 59 ND 26 ND 1) 連続する 3 日について測定,1 検体は 1 世帯 1 日分の食事, 陰膳方式 ND: 検出下限値未満 ( 検出下限値 =25μg/kg) [ 出典 : 日本食品分析センター,2001] 表 Ⅳ32 では外海 (1999;2000) による市販弁当, 定食および病院給食中の DEHP 濃度をまとめた 表では, 各モニタリングデータを調査媒体別に測定年度, 検出数, 検体数, 最小値, 最大値, 平均値の順に記載した 全ての検体において DEHP が検出され, 各媒体での最大値は市販弁当, 定食, 病院給食においてそれぞれ 8,930(2000 年度は 517),304 および 4,400μg/kg であった 病院給食 表 Ⅳ32 モニタリングデータ食物 ( 市販弁当 定食 病院給食 ) 市販弁当 測定年度検出数検体数 最小値 [μg/kg] 最大値 [μg/kg] 平均値 [μg/kg] ,930 4, ) 定食 (V 病院 ) , (W 病院 ) (X 病院 ) , ) 1999 年度と同一メーカーの製品 [ 出典 : 外海,1999;2000] 表 Ⅳ33 では外海 (2000) による各種食品中の DEHP 濃度をまとめた 表では各モニタリングデータを分類別に検出数, 検体数, 最小値, 最大値の順に記載した 全 32 分類中 27 分類において検出され, 最高 4,250μg/kg の濃度が塩ビ製手袋の使用自粛通知前のレトルト離乳食において測定された 表 Ⅳ33 中の粉ミルクとべビーフードについては, 表 Ⅳ34 と表 Ⅳ35 に個別データを示した ただし, 粉ミルクについてはフォローアップミルク ( 離乳期に与える補助的なミルク )1 検体を, ベビーフードについては, 塩ビ製手袋の使用自 125

134 粛通知前のレトルト食品 4 検体を除外したものを記載した 表 Ⅳ33 モニタリングデータ食物 ( 食品各種 ) 大分類分類検出数検体数 最小値 [μg/kg] 最大値 [μg/kg] 飲料 日本酒 2 8 ND 41 ワイン 0 3 ND ND ビール 1 6 ND 27 非アルコール飲料 0 3 ND ND 油脂類 バター 3 3 1,020 2,830 マーガリン 0 3 ND ND ファットスプレッド 0 3 ND ND 植物油 7 8 ND 1,750 調味料 ケチャップ ドレッシング マヨネーズ 乳製品 チーズ 牛乳 アイスクリーム 菓子類 ビスケット チョコレート スナック菓子 3 3 TR 146 パン 麺類 麺類 3 6 ND 12 パン類 魚肉 畜肉加工品 ハム ソーセージ類 餃子, 焼売類 ファーストフード ハンバーガーセット 1 3 ND 39 牛丼 0 3 ND ND 宅配ピザ 惣菜類 惣菜類 ND 453 即席食品 レトルト食品 ND 1,050 フリーズドライ食品 ,070 カップ麺 2 3 ND 421 粉ミルク 粉ミルク ベビーフード レトルト離乳食 ND 4,250 1) フリーズドライ離乳食 ,840 乳児用おやつ ) 塩ビ製手袋の使用自粛通知 ( 厚生労働省,2000) 以前の製品の値, 通知後の同一製品の濃度 は TR~99μg/kg, 同分類において 2 番目に高い値は 1,570μg/kg ND: 検出下限値未満 TR: 検出下限値以上, 定量下限値未満 [ 出典 : 外海,2000] 126

135 表 Ⅳ34 モニタリングデータ食物 ( 粉ミルク ) 分類濃度 [μg/kg] 粉ミルク 表 Ⅳ33 粉ミルク よりフォローアップミルクを除外したもの [ 出典 : 外海,2000] 表 Ⅳ35 モニタリングデータ食物 ( ベビーフード ) 分類 商品内容 濃度検出下限値 [μg/kg] [μg/kg] レトルト離乳食 雑炊 2 種セットドリア シチューセットハンバーグ煮込みうどんチキンライス茶碗蒸し鮭のたきこみごはん豆腐ハンバーグかぼちゃグラタン炊き込み御飯 2 種セットいわしのつみれ煮白身魚の野菜あんかけミートドリアミートドリアミートドリアしらす雑炊白身魚と鳥がゆ五目雑炊ささみと豆腐のおかゆおじやしらすおじや五目雑炊 241 TR 1,570 ND 96 TR TR TR TR 105 TR ND 乳児用おやつ 小魚入りせんべいせんべい野菜入りウエハーせんべいせんべい 表 Ⅳ33 ベビーフード より塩ビ手袋の使用自粛通知前のレトルト食品 4 検体を除外したもの ND: 検出下限値未満 TR: 検出下限値以上, 定量下限値未満 [ 出典 : 外海,2000] 表 Ⅳ36 では, 日本食品分析センター (2001) による, 東京地区で入手した外食 45 検体, インスタント食品 16 検体, 人工乳 離乳食 20 検体中の DEHP 中濃度をまとめた 外食, インスタント食品および人工乳 離乳食からの検出率は, それぞれ 87,94 および 80%, 最高値はそれぞれ 170,140 および 140μg/kg であった 127

136 表 Ⅳ36 モニタリングデータ食物 ( 外食, インスタント食品, 人工乳 離乳食 )[μg/kg] 外食 インスタント食品 ( テイクアウト用 ) ( 表示に従い簡単に調理 ) ファーストフート 100 レトルトカレーライス 32 ( ハンハ ーカ ーセット等 ) ND 冷凍天丼 インスタントラーメン 36 和風ファーストフート ( 丼もの等 ) ND カッフ うどん nd ND 78 ND 26 ファミリーレストラン 63 カッフ ラーメン 65 ( 定食等 ) ND カッフ やきそば 人工乳 57 ( 哺乳瓶で調製 ) 170 粉ミルク 57 ステーキレストラン ( 定食等 ) ND 離乳食 すし店 ND ( 瓶詰 レトルトはそのまま ( すし ) 86 フリース ト ライは簡単に調理 ) 160 離乳食 ND 79 ( 離乳初期 ) ND その他食堂 ( 麺類等 ) 42 離乳食 ( 離乳中期 ) テ ハ ート食堂 50 離乳食 40 ( 定食等 ) 72 ( 離乳後期 ) ND 43 離乳食 ( 離乳完了期 ) ND: 検出下限値未満 ( 検出下限値 =25μg/kg) [ 出典 : 日本食品分析センター,2001] 128

137 4.2 水道水水道水に関するモニタリングデータは, 原水, 浄水, 給水栓水中および飲用井戸水中の濃度について, 水道技術センター 厚生労働省のモニタリングデータに加え, 地方自治体 研究機関のデータを検索により収集した 検索は 3 節の環境中濃度と並行して行い,2002 年度の調査データまでを対象とし,2002 年 12 月から 2004 年 6 月まで断続的に行った ( 調査データの URL は 2004 年 10 月まで確認を行った ) モニタリングデータの概要は, 参考資料 A 表 Ⅳ2 の環境中モニタリングデータの概要中に併せて記載してある 水道原水, 浄水, 給水栓水中, 飲用井戸水中の DEHP モニタリング結果は参考資料 A 表 Ⅳ37~ 参考資料 A 表 Ⅳ40 にまとめた 参考資料 A の表では, 各モニタリングデータを都道府県別に, 測定年度, 単位, 検出数, 測定数, 最小値, 最大値, 検出下限値, 定量限界値および出典の順に記載してある 表 Ⅳ37~ 表 Ⅳ40( 参考資料 ) 原水中 DEHP 濃度が検出下限値または定量下限値 (0.05~6μg/L, 不明のものもある ) を超えている地点は少ない ( 参考資料 A 表 Ⅳ37) 最高 130μg/L の濃度が千葉県山武町で報告されている ( 山武町, 参考資料 A 表 Ⅳ2 資料 No.12I01A14) が, この値に関しては山武町に問い合わせを行い,( 報告値にはそのまま掲載されているが )1 週間後の再検査では 6μg/L 未満となったことからサンプリング時のミスが強く考えられるとの回答を得ている 高濃度が報告されている他の検体 ( 原水 浄水等 ) でも同様の可能性もあるが, 本評価書では報告値としてそのまま表に記載した 浄水中 DEHP 濃度が検出下限値または定量下限値 (0.05~6μg/L, 不明のものもある ) を超えている地点は少ない ( 参考資料 A 表 Ⅳ38) 給水栓水中 DEHP 濃度が検出下限値または定量下限値 (0.05~6μg/L) を超えている地点も若干存在するが, ほとんどの地点の濃度は検出下限値未満であった ( 参考資料 A 表 Ⅳ 39) 飲用井戸中 DEHP 濃度は定量下限値 (0.1μg/L) を超えた検体はほとんどなかった また, 原水 / 浄水の記載のない報告もいくつがあったが, 全て検出下限値あるいは定量下限値未満 (5~6μg/L) であった ( 参考資料 A 表 Ⅳ40) 129

138 5. 既存データに基づく DEHP 摂取量の推計本章の 3 節および 4 節に示したように,DEHP の濃度については各種環境媒体に加え, 食事や飲料水で測定されており, さらに尿中の DEHP 代謝物濃度についても報告が行われている 本節では, これらの測定濃度データに基づいて, わが国一般住民の DEHP 摂取量をモンテカルロ シミュレーション 1 で推計し, 第 Ⅷ 章で DEHP のヒト健康リスクを判定する際に用いるヒトの体重 1 kg 当たりの平均一日摂取量とするとともに, 摂取量に大きな寄与をする暴露経路が屋内外空気の吸入なのか食事経由なのかを解析した 5.1 摂取量推計 2000 年度に東京都が実施した屋内とその近傍の屋外空気中 DEHP に関する調査では, 夏期 (2000 年 7~10 月 ) および冬期 (2000 年 12 月 ~2001 年 3 月 ) とも屋内空気中 DEHP 濃度は屋外濃度に比べ約 5 倍高くなっている ( 東京都,2002) しかし, 屋内空気中濃度測定例は多くなく, 東京都の 2000 および 2001 年度の調査のみが夏期と冬期に濃度を測定している 本節の DEHP 摂取量推計にはより高濃度の 2000 年度の測定データを使用する この調査では, 夏期と冬期に 34 ヶ所の屋内空気と 17 ヶ所の屋外空気中の DEHP 濃度が測定されている 一方, 食事中の DEHP 濃度については,1998 年の 3,9,10 および 11 月に実施された調査 ( 日本食品分析センター,1999) と 2001 年 8 月に実施された調査 ( 日本食品分析センター,2001) の結果が報告されている 1998 年の調査は, 全国 9 地区の 57 世帯について, 陰膳方式により 3 日間の食事をまとめて試料としており,2001 年の調査は全国 9 地区 27 世帯について, 陰膳方式により 3 日分の食事を個別に試料としている これら二つの調査は測定時期と測定地点が異なるため, 別々に摂取量推計に使用した これらの調査で報告された個々の空気あるいは食事中 DEHP 濃度の分布が, それぞれの年における全国各世帯の日平均屋内外空気および食事中 DEHP 濃度の分布を表すと仮定した 日本食品分析センターの調査結果に基づく摂取量 DEHP の摂取量を推計するために, 屋内外の空気中 DEHP 濃度に東京都が 2000 年度に測定した値を, 食事中濃度に日本食品分析センターの測定値を用い, 表 Ⅳ41 に示す確率密度関数 2 を設定した 屋内外空気中 DEHP 濃度については, 表 Ⅳ41 に示す最小, 最大および中央値のみが報告されており, さらに, 最小値と最大値の幅が広いため, 対数三角分布を仮定した 日本食品分析センターの測定値については,ND が含まれているため, 本章 3 節に示した方法で, 報告値全てを区間データとして取り扱い, 濃度が対数正規分布に従うと 1 モンテカルロ シミュレーション : シミュレーションを行う現象に対して, その入力に大量の乱数を発生させて, 出力値を観測することで, その現象を確率論的に解く手法 2 確率密度関数 : 累積分布関数 F(x) が微分可能な場合, 以下の導関数を確率変数 X の確率密度関数という d f ( x) = F( x) dx 130

139 仮定し, 幾何平均 (GM) と幾何標準偏差 (GSD) を導出した なお, 日本食品分析センターで測定された食事には飲料水も含まれていることから, 水道水経由の DEHP の摂取は推計に含めなかった 表 Ⅳ41 摂取量推計に用いた DEHP 濃度と仮定した確率密度関数媒体平均中央値最小最大検出数確率密度関数夏期室内空気対数三角分布 ( 最小 :1.88, ,370 68/68 [ng/m 3 ] 最大 :3.37, 最頻値 :2.64) 3) 冬期室内空気対数三角分布 ( 最小 :1.18, ,280 68/68 [ng/m 3 ] 最大 :3.10, 最頻値 :2.28) 3) 夏期室外空気対数三角分布 ( 最小 :1.50, /17 [ng/m 3 ] 最大 :2.74, 最頻値 :1.83) 3) 冬期室外空気対数三角分布 ( 最小 :1.18, /17 [ng/m 3 ] 最大 :2.05, 最頻値 :1.53) 3) 食事 (1998 年測定 ) 対数正規分布 ND 1) /57 [μg/g] (GM:0.14,GSD:2.45) 2) 食事 (2001 年測定 ) 対数正規分布 ND 1) /81 [μg/g] (GM:0.044,GSD:2.14) 2) 1) ND: 検出下限値 (0.025μg/g) 未満 2) GM と GSD の導出に際し, 報告値全てを区間データとした 3) パラメータはモニタリングデータの値 ( 最小, 最大, 中央値 ) を対数変換したもの DEHP の摂取量 (Intake [μg/kg/ 日 ]) は次式で計算した C food IT food + ( Cair, i, j /1000) IH air ACTi i, j Intake = BW ここで,C food : 食事中 DEHP 濃度 [μg/g],it food : 食事消費量 1 [g/ 日 ],C air,i,j : 空気中 DEHP 濃度 (i= 屋内, 屋外 ;j= 夏季, 冬季 )[ng/m 3 ],IH air :1 時間当たりの空気吸入量 [m 3 / 時 ], ACT i :1 日当たりの屋内外での活動時間 [ 時 / 日 ],BW: 体重 [kg] である モンテカルロ シミュレーションを行うため,IT food と BW にも表 Ⅳ42 に示す確率密度関数を設定した さらに, 体重 70 kg のヒトの 1 日当たりの空気吸入量を 20 m 3 として, IH air を次式のように体重により補正し,ACT i は塩津ら (1998) の報告に基づいて, 屋内 21.6 時 / 日, 屋外 2.4 時 / 日と仮定した IH air BW = モンテカルロ シミュレーションに際しては,Crystal Ball(Decisioneering Inc.) を用 2 い, 試行回数を 10,000 回とし, サンプリング手法としてラテン ハイパー キューブ法 2 / 3 1 本評価書では,DEHP の摂取量と食事の摂取量による混乱を避けるため摂取する食事量は食事消費量という語で記載する 2 ラテン ハイパー キューブ法 : 確率分布を一様な確率の区間に分割し, 各区間の確率分布に従って各区間から値をサンプリングする方法 131

140 を採用した さらに, 確率密度関数を設定した計算パラメータは互いに独立で, 相関性はないと仮定した 表 Ⅳ41 と表 Ⅳ42 に示す確率密度関数を基に, モンテカルロ シミュレーションで Intake の分布を計算するとともに各確率密度関数 ( 夏期および冬期の屋内外空気中 DEHP 濃度, 食事中 DEHP 濃度, 食事消費量および体重 ) による摂取量の変動の感度を分散寄与率として解析した 分散寄与率は, スピアマンの順位相関係数 1 を二乗して, それらを全体が 100% となるように正規化して算出した値である 表 Ⅳ42 摂取量推計に用いた食事消費量と体重の確率密度関数 IT food ( 男性 ): 対数正規分布 年齢群全体 1~6 7~12 13~15 16~19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 GM[g/ 日 ] 1, ,424 1,610 1,551 1,463 1,585 1,600 1,704 1,570 GSD IT food ( 女性 ): 対数正規分布 年齢群全体 1~6 7~12 13~15 16~19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 GM[g/ 日 ] 1, ,332 1,389 1,240 1,194 1,226 1,325 1,392 1,299 GSD BW( 男性 ): 対数正規分布 年齢群 全体 ~15 16~19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 GM[kg] GSD BW( 女性 ): 対数正規分布 年齢群 全体 ~15 16~19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 GM[kg] GSD [ 出典 : 健康栄養情報基盤データベース ( 国立健康 栄養研究所, 科学技術振興事業団,2004)] 1998 年の日本食品分析センターによる食事中濃度を用いて推定した年齢別の DEHP 摂取量を表 Ⅳ43 と表 Ⅳ44 に示す これらの表から明らかなように, 成人後よりも幼児および児童期において推測されるμg/kg/ 日単位の DEHP 摂取量はかなり高い これは食事消費量に比べて体重の違いが大きいことによる 1 スピアマンの順位相関係数 :2 変数 x,y の相関の強さを示す指標としてデータの値による順位を利用し て定める相関係数 次式で求められる R x, y 6 ( Rxi Ryi ) = 1 2 n( n 1) ここで,n: データ数,Rxi と Ryi はデータの順位数値である 2 132

141 表 Ⅳ43 年齢群別 DEHP 摂取量推計値 ( 男性 ) 年齢群 DEHP 摂取量 (Intake)[μg/kg/ 日 ] [ 歳 ] 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 全体 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 表 Ⅳ44 年齢群別 DEHP 摂取量推計値 ( 女性 ) 年齢群 DEHP 摂取量 (Intake)[μg/kg/ 日 ] [ 歳 ] 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 全体 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 各年齢群の DEHP 全摂取量には, 食事経由の摂取の寄与が 98~99% を占め, 残りが空気吸入の寄与であった この結果は, 図 Ⅵ9 に示すカナダ一般住民に対する推定 (Meek と Chan,1994) と一致する さらに, 図 Ⅳ10 に示す感度解析結果から明らかなように,DEHP 摂取量の変動には, 食事中濃度, 食事消費量および体重が大きく寄与し, 屋内外空気中濃度はほとんど寄与しないと考えられた 133

142 20 摂取量, [μg/kg/ g/kg/day 日 ] 大気 ( 五大湖域 ) 屋内空気飲料水食事土壌 年齢年齢 [ 歳 ] 図 Ⅳ9 カナダ一般住民の DEHP 摂取量 食事中濃度食事消費量 ( 男性 )1 歳体重 ( 男性 )1 歳 78.8% 14.5% 6.7% 夏期室内空気中濃度 0.0% 冬期室外空気中濃度 0.0% 冬期室内空気中濃度 0.0% 夏期室外空気中濃度 0.0% 100% 50% 0% 50% 100% 分散寄与率による測定 図 Ⅳ10 感度解析結果 (1 歳男児 ) 2001 年の日本食品分析センターによる食事中濃度を用いて推定した DEHP 摂取量は,1 歳男児で 6.1μg/kg/ 日 (5~95 パーセンタイル :1.1~17.5μg/kg/ 日 ), 女児で 5.7μg/kg/ 日 (5~95 パーセンタイル :0.8~15.9μg/kg/ 日 ) で, 男女とも摂取量の 95% が食事の寄与で, 室内 DEHP は摂取量にほとんど寄与しないと考えられた また, 全年齢群の DEHP 摂取量は男性で 1.9μg/kg/ 日 (5~95 パーセンタイル :0.4~5.4μg/kg/ 日 ), 女性で 1.8μ g/kg/ 日 (5~95 パーセンタイル :0.4~5.0μg/kg/ 日 ) であった この 2001 年に測定された食事中 DEHP 濃度を用いた場合でも,DEHP 全摂取量には, 食事経由の摂取の寄与が 90% 以上を占めた 134

143 5.1.2 乳幼児の摂取量 1 歳未満の乳幼児の母乳, 人工乳および離乳食経由の DEHP 摂取量を推計した (1) 母乳経由の摂取量わが国において, 母乳中の DEHP 濃度に関する測定例は報告されておらず, またその濃度を推計できる適切なヒトの体内動態モデルも存在しない このため, 母乳中 DEHP 濃度のおおよそのレベルを第 Ⅴ 章 4.2 項に示す家畜の乳製品中の化学物質濃度を推計する方法に準じて推定することとし, 母親の摂取量に生物移行係数 1 (BTF milk ) を乗じて母乳中 DEHP 濃度とした ヒトの母乳に対する BTF milk の値がないため, 乳牛に対する推計値 日 /kg を BTF milk として用い, 母親の DEHP 摂取量には,5.1.1 項に示した,1998 年の日本食品分析センターによる食事中濃度に基づく推計値を用いた 母乳中 DEHP 濃度の推計結果を表 Ⅳ 45 に示す 表 Ⅳ45 母乳中 DEHP 濃度の推計値 母親の年齢 [ 歳 ] 母乳中濃度 [μg/kg] 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 16~ ~ ~ ~ 表 Ⅳ46 に示すように, ドイツで測定された母乳中 DEHP 濃度 (Gruber ら,1998; BrunsWeller と Pfordt,2000) と比べると, 推計値は平均値レベルで約 1/5 から 1/10 以下の値であった しかし, ドイツとわが国における母親の DEHP 摂取量の違いが不明であるため, ここで用いた方法が日本人の母乳中 DEHP 濃度を過小に推定したのか否かは不明である 表 Ⅳ46 母乳中 DEHP 濃度の測定値 母乳中濃度 [μg/kg] No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 出典 Gruber ら, BrunsWeller と Pfordt,2000 乳児の母乳摂取量として, 表 Ⅳ47 に示す乳類 ( 母乳, 調製粉乳, 牛乳等 ) の摂取量 ( 西村と遠藤,1984) を用いた ただし, 出生から 2 ヶ月齢までのデータがないため,2 ヶ月齢までは 3~4 ヶ月齢と同じ乳類摂取量と仮定した 1 生物移行係数 :BTF(biotransfer factor) 化学物質が生物体内に移行する度合いを示す係数 生物中濃度を化学物質摂取量で除することにより得られる 135

144 表 Ⅳ47 乳児 ( 男児 ) の乳類摂取量 月齢 [ ヶ月 ] 乳類摂取量 [g/ 日 ] 3~ ~ ~ [ 出典 : 西村と遠藤,1984] また, 体重には, 表 Ⅳ48 に示す厚生労働省 (2001a) の調査データを用いた 各日齢 月齢の乳児の体重に対して対数正規分布を仮定し, 報告された 50 パーセンタイルと 90 パーセンタイルから, 各日齢 月齢に対する GM と GSD を求めた 表 Ⅳ48 乳児 ( 男児 ) の体重 体重 日齢 月齢 50 ハ ーセンタイル 1), 90 ハ ーセンタイル 1), [kg] [kg] GM[kg] GSD 出生時 日 ~2 ヶ月未満 ~3 ヶ月未満 ~4 ヶ月未満 ~5 ヶ月未満 ~6 ヶ月未満 ~12 ヶ月未満 ) 厚生労働省,2001a 母乳経由による乳児 ( 男児 ) の平均 DEHP 摂取量の推計結果を表 Ⅳ49 に示す 136

145 表 Ⅳ49 乳児 ( 男児 ) の母乳経由による平均 DEHP 摂取量の推計値 母親の年齢 DEHP 摂取量 [μg/kg/ 日 ] 乳児の日齢 月齢 [ 歳 ] 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 16~19 出生時 日 ~2 ヶ月未満 ~3 ヶ月未満 ~4 ヶ月未満 ~5 ヶ月未満 ~6 ヶ月未満 ~12 ヶ月未満 ~29 出生時 日 ~2 ヶ月未満 ~3 ヶ月未満 ~4 ヶ月未満 ~5 ヶ月未満 ~6 ヶ月未満 ~12 ヶ月未満 ~39 出生時 日 ~2 ヶ月未満 ~3 ヶ月未満 ~4 ヶ月未満 ~5 ヶ月未満 ~6 ヶ月未満 ~12 ヶ月未満 ~49 出生時 日 ~2 ヶ月未満 ~3 ヶ月未満 ~4 ヶ月未満 ~5 ヶ月未満 ~6 ヶ月未満 ~12 ヶ月未満 (2) 人工乳経由の摂取量粉ミルク中の DEHP 濃度は, 表 Ⅳ34 に示す外海 (2000) による粉ミルク ( 調製前 ) 中の測定値と, 表 Ⅳ36 に示す日本食品分析センター (2001) による調製ミルク中の測定値が報告されている ただし, 外海による粉ミルクの値を, 以下の方法で調製ミルク中濃度に換算した 国内では 5 社が 1999 年に厚生省の検査に合格し, 乳幼児用調製粉乳を製造しており, またいずれも全授乳期を通して約 13~14% の単一調乳方式をとっている ( 杉田,2004) 各社のホームページや聞き取りで代表的な乳幼児用調製粉乳の調乳 % を収集し ( 表 Ⅳ50), これらの調乳 % を参考に, 調製ミルク中濃度の計算には 13.5% をもちいることにした 137

146 表 Ⅳ50 代表的な乳幼児用調製粉乳の調乳 % 調整粉乳調乳 % A 13 B 14 C 13 D 13 E 12.7 調製ミルク中 ( 換算 )DEHP 濃度を表 Ⅳ51 に示す ND が含まれているため, 全てを区間データとして取り扱い, 濃度が対数正規分布に従うと仮定して,GM:20.6μg/kg および GSD:3.19 を導出した 表 Ⅳ51 調製ミルク中 DEHP 濃度粉ミルク中濃度調製ミルク中濃度測定年度出典 [μg/kg] [μg/kg] 外海 (2000) より換算 日本食品分析センター (2001) 82 ND 1) 1)ND: 検出下限値 (25μg/kg) 未満 乳児の母乳摂取量には, 表 Ⅳ47 に示す乳類の摂取量 ( 西村と遠藤,1984) を, また, 体重には, 表 Ⅳ48 に示す厚生労働省 (2001a) の調査データを同様に用いた 以上より得られた, 粉ミルク経由による乳児 ( 男児 ) の平均 DEHP 摂取量の推計結果を表 Ⅳ52 に示す 表 Ⅳ52 乳児 ( 男児 ) の粉ミルク経由による平均 DEHP 摂取量の推計値 乳児の日齢 月齢 DEHP 摂取量 [μg/kg/ 日 ] 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 出生時 日 ~2 ヶ月未満 ~3 ヶ月未満 ~4 ヶ月未満 ~5 ヶ月未満 ~6 ヶ月未満 ~12 ヶ月未満

147 (3) 離乳食経由の摂取量ベビーフード中の DEHP 濃度は, 表 Ⅳ35 に示す外海 (2000) による測定値と, 表 Ⅳ36 に示す日本食品分析センター (2001) による測定値が報告されている ND 等が含まれているため, 報告値全てを区間データとして取り扱い, 濃度が対数正規分布に従うと仮定して, GM:71.6μg/kg および GSD:2.66 を導出した 離乳食摂取量として, 西村と遠藤 (1984) が報告している乳類以外の食品群の摂取量合計 ( 表 Ⅳ53) を用いた 表 Ⅳ53 乳児 ( 男児 ) の離乳食摂取量 月齢 [ ヶ月 ] 離乳食摂取量 [g/ 日 ] 3~ ~ ~ [ 出典 : 西村と遠藤,1984] 厚生労働省 (2001a) の平成 12 年乳幼児身体発育調査報告書によると 1999 年に出生した乳児の離乳開始月齢の平均値が 5.1 ヶ月であり,3~4 ヶ月齢未満での開始率が 2.4% であるため, 摂取量データがない 3 ヶ月齢未満については計算を行わなかった 穀類については, 米 乾麺重量換算値が示されているため, 湿重量換算して用いた 西村と遠藤 (1984) によれば主食の穀類はごはん類が最も多く, 平均 1 歳頃から, 軟飯 ( 粥 ) から白飯への移行が見られる ごはん類に次いで麺類の煮込みうどんが多く, パン類はごはん類や麺類に比べて少ない 調理形態別の摂取回数 ( 西村と遠藤,1984) より,6 ヶ月齢までは全て粥, 11~12 ヶ月齢の乳児については, 粥 : 白飯 : うどん=1:5:2 の割合で摂取するものとして重量換算を行った なお, 粥, 白飯の水分含有率は, 健康栄養情報基盤データベース ( 国立健康 栄養研究所, 科学技術振興事業団,2004) より,37% および 16% を用い, うどんについては粥と同程度であると仮定し,37% を用いた ベビーフード経由による乳児 ( 男児 ) の平均 DEHP 摂取量の推計結果を表 Ⅳ54 に示す 表 Ⅳ54 乳児 ( 男児 ) のベビーフード経由による平均 DEHP 摂取量の推計値 乳児の日齢 月齢 DEHP 摂取量 [μg/kg/ 日 ] 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 3~4 ヶ月未満 ~5 ヶ月未満 ~6 ヶ月未満 ~12 ヶ月未満 (4) 乳類および離乳食経由の合計摂取量以上, 乳類および離乳食に対する個別推計結果を示したが, 実際には成長に伴い, 乳類と離乳食を併用する そこで, 乳類と離乳食経由の合計摂取量を表 Ⅳ55 に示した ただ 139

148 し, 乳類には安全側をとって, 母乳よりも DEHP 濃度の高いと推定された人工乳を用いた 表 Ⅳ55 乳類および離乳食経由による平均 DEHP 摂取量の推計値 乳児の日齢 月齢 DEHP 摂取量 [μg/kg/ 日 ] 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 出生時 日 ~2 ヶ月未満 ~3 ヶ月未満 ~4 ヶ月未満 ~5 ヶ月未満 ~6 ヶ月未満 ~12 ヶ月未満 尿中代謝物濃度からの DEHP 摂取量推定第 Ⅶ 章 2 節に示すように, 代謝物の尿中濃度から DEHPの摂取量を推定することができる わが国住民の尿中フタル酸モノエステル濃度について Kato ら (2003) が報告している ( 表 Ⅳ56) 報告された尿中のフタル酸モノ(2エチルヘキシル)(MEHP) 濃度はクレアチニン 1 で補正されていないため, 排尿量を 1.5 L/ 日 ( 清瀬,1990) として尿中 MEHP 量を計算し, 第 Ⅶ 章 項に示す Kohn ら (2000) および Koch(2003) らが報告している尿排泄速度定数と全消失速度定数の比 (f) を基に DEHP 摂取量を推計すると,Kohn らの値を用いた場合, 男女の平均はそれぞれ 1.1 および 0.8μg/kg/ 日, 最大はそれぞれ 9.7 および 4.9μg/kg/ 日となった 一方,Koch らの値を用いた場合, 男女の平均はそれぞれ 1.3 および 1.1μg/kg/ 日, 最大はそれぞれ 12 および 6.1μg/kg/ 日となった 1 クレアチニン : 筋肉中に含まれるクレアチンが分解されて生じる老廃物 クレアチニンは腎臓に輸送され, 腎糸球体でろ過されて, 再吸収されず直接尿中へ排泄される クレアチニン排泄量には個人差があり, 腎機能状態の把握に用いられる 140

149 男性 (n=50) 平均 ± 標準偏差最小最大検出頻度 [%] 女性 (n=20) 平均 ± 標準偏差最小最大検出頻度 [%] 中央値平均 ND: 定量下限値未満 [ 出典 :Kato ら,2003] 表 Ⅳ56 ヒト尿中のフタル酸モノエステル濃度 [μg/l] フタル酸モノブチルフタル酸モノベンジル MEHP 15.6± ± ± ±3.8 ND ±3.7 ND ND 2.6± ±4.9 ND ±3.5 ND ND 2.8±4.6 これらの値は前項の摂取量推計値と大きくは異なっていないが, 推計された DEHP 摂取量は排泄等の過程を一次速度定数で表す体内動態モデルによる計算であることに加え, 被験者毎にクレアチニンで補正された尿中 MEHP 濃度ではなく, 平均的な排尿量を用いている等, 計算結果に不確かな部分もある 5.3 摂取量推計結果に対する考察本章 項に示したように, 日本食品分析センターによる食事中 DEHP 濃度は,2001 年の調査では平均で 0.059μg/g と 1998 年の平均 0.21μg/g の 1/3 以下であり, 最大値も 0.33μg/g(2001 年 ) と 1.1μg/g(1998 年 ) の 1/3 である このため,2001 年の食事調査結果を用いて算出した摂取量も 1998 年の約 1/3 である 1998 年の全測定値と 2001 年の全測定値は等分散ではないものの, 両者の平均値が等しいという帰無仮説 1 は棄却された (p<0.01) さらに,1998 年の日本食品分析センターによる食事中 DEHP 調査は 3 月 (n=27),9 月 (n=9), 10 月 (n=5) および 11 月 (n=16) に行われ,2001 年の調査は 8 月 (n=81) に行われている 1998 年 3,9,10 および 11 月に測定された食事中 DEHP 濃度の平均値はそれぞれ,0.255, 0.175,0.093 および 0.162μg/g で,2001 年 8 月の平均値は 0.061μg/g である ( 図 Ⅳ18) 1998 年の 3 月,9 月,10 月および 11 月の各月の測定値については等分散ではなく, 平均値は等しいという帰無仮説は棄却されなかった (p=0.21) 本節では, これらの差異について考察する 統計的には有意ではないが,1998 年 3 月の食事中調査で DEHP 濃度が高い傾向にある要 1 帰無仮説 : ある仮説 が正しいかどうかの判断のために立てられる仮説 141

150 因として, 冬期の施設栽培 ( ハウス / トンネル栽培 2 ) が考えられる 秋田県産のある種の山菜中の DEHP 濃度は, 自然採集品で 65.8~108.5μg/mL(n=6), ハウス栽培品で 483.5~ 870.2μg/mL(n=6) と, 後者で 6~13 倍高かったと報告されている ( 堀,2003) なお, この報告の濃度単位はμg/mL であり, 詳細は不明であるが, 山菜中濃度ではないと思われる 1.20 濃度,μg/g [μg/g] : 測定値 : 平均値 /3 1998/9 1998/ / /8 測定年月 図 Ⅳ18 月別食事中 DEHP 濃度 農林水産省統計情報データベースでは, なす, トマト, きゅうり, かぼちゃ, ピーマンおよびレタス等の全国の露地 施設種類別作付面積 収穫量データがあり, 図 Ⅳ19 に示すように冬春野菜はハウスやトンネル栽培が多い ( 農林水産省,2004g) 収穫量, トン 収穫量 [ 万トン ] なす ( 冬春 ) なす ( 夏秋 ) トマト ( 冬春 ) トマト ( 夏秋 ) きゅうり ( 冬春 ) きゅうり ( 夏秋 ) かぼちゃ ピーマン ( 冬春 ) ピーマン ( 夏秋 ) レタス ( 冬春 ) レタス ( 夏秋 ) トンネルハウスガラス室露地 なす, トマト, きゅうり : 冬春 (12~6 月 ), 夏秋 (7~11 月 ) ピーマン, レタス : 冬春 (11~5 月 ), 夏秋 (6~10 月 ) 図 Ⅳ19 全国の露地 施設種類別作付面積 収穫量,( 農林水産省,2004g) 2 トンネル栽培 : 塩ビやポリエチレンフィルムを小型のトンネル状に被覆することにより, 果菜類を通常の露地栽培に比べて促成栽培する方法 142

151 また, ほうれんそうは, 夏場は 30 日, 冬場は 90 日で収穫できるため,1 年中生産 出荷されるが, 高温に弱く 25 以上では病気が発生するため, ハウス内で雨よけ 日よけをして温度を下げて栽培し, 生育時期に低温となる春蒔や秋冬蒔では保温等のため施設で栽培される ハウス内の湿度を下げるためハウスをこまめに開閉し, 晴天時には十分換気を行ったり, 甘味を増すため冬の収穫期にハウスの横を開放し冷気を入れたりする はくさいも冷涼な気候を好み, 高温に弱いが, 寒くなると球中の葉の成長が止まるため, 適温を選ぶ このため, 秋冬に収穫されるはくさいの出荷の約 3 割を茨城県が, 夏に収穫されるものは冷涼な長野県が約 8 割を占める 茨城県では秋冬はくさい ( 主な出荷時期 : 10~3 月 ) は露地栽培であるが, 春はくさい ( 主な出荷時期 :4~6 月 ) はハウス, トンネルおよび露地栽培である ( 関東農政局茨城統計情報事務所,2003) 春はくさいのトンネル栽培では, 換気用穴あき塩ビフィルムに, 保温用の塩ビフィルムを重ね, 日中の気温上昇時は換気孔を表に出し気温上昇を防ぎ, 夜間は塩ビフィルムをかけて保温する開閉トンネルが使用されたりしている 秋田県の屋外大気中 DEHP 濃度は報告されていないが, 第 Ⅵ 章に詳細を示す大気濃度予測モデル (AISTADMER) を用いた推計では, 秋田県下の全市町村別年平均大気中 DEHP 濃度の平均値は約 1 ng/m 3 である これから, 施設内空気中 DEHP 濃度は 6~13 ng/m 3 程度と推定される 施設内温度は外気温ほど地域差はないと考えられるが, 外気温と同じ地域差があり, 軟質塩ビフィルムからの DEHP の揮散が蒸気圧に比例するとすれば, 秋田県に比べ関東地方以南の栽培施設内の温度は 5 高く, この温度差のため蒸気圧は 2 倍となるため, これらの地方の施設内空気中 DEHP 濃度は 20 ng/m 3 程度と推定される この濃度は関東の各都県で測定された大気中濃度と同程度あるいはそれらより低い さらに, ハウスやトンネルには, 農ビ以外に, ポリオレフィン系フィルム ( 農 PO: ポリエチレンとエチレン 酢酸ビニル共重合体のラミネートフィルム ) も使用される したがって, 秋田県のように大気中 DEHP 濃度が低い地域では, 塩ビフィルムを用いた施設で栽培する場合は農作物中の DEHP 濃度は高くなるが, 関東地方のように大気中 DEHP 濃度が高い地域では露地および施設で栽培される農作物中の DEHP 濃度は同程度と考えられる 以上のことから,1998 年の日本食品分析センターの食事調査で冬期の 3 月に食事中 DEHP 濃度が高かった要因が施設栽培である可能性は低いと考えられた 5.1 項に示したように, 日本食品分析センターにより 1998 年と 2001 年に調査された食事中 DEHP 濃度の平均値には有意な差があり,1998 年と 2001 年に調査された食事中濃度に基づいて推定された摂取量には,3 倍の開きがある 食事あるいは個別食品中の DEHP は, 以下の 2 つに由来すると考えられる (1) 様々な環境媒体中の DEHP の食品への移行 ( 間接暴露 ) (2) 塩ビ製の食品包装用フィルム 容器からの DEHP の食品への移行 英国の MAFF(Ministry of Agriculture, Fisheries and Food) の最近の調査によれば, 143

152 英国でのフタル酸エステルのプラスチック包装 容器への使用は限定されており, ラップ 食品包装用フィルムやその他の食品と接触する可能性があるほとんどのプラスチック材料には使用されていない (MAFF,1996) また, この MAFF の調査によれば,DEHP は, 紙や段ボール製の食品包装材で検出され, それらで包装された食品中にも低濃度 (10μg/g 未満 ) で検出されている DEHP の食品汚染が包装 容器からの移行によるとすれば, 調査に供した脂肪試料中の DEHP 濃度は中心部より表面に近い部分で高くなると考えられたが, 実際は半数を超える試料で, 中心部の濃度は表面と等しいかまたは高かった このため,MAFF は, 食品中の DEHP はある程度, 環境経由であるとしている さらに, 牛乳と乳製品, ラードおよび魚介類に対する調査結果でも, 食品中のフタル酸エステルは食品包装 容器よりも環境経由であると報告している 表 Ⅳ57 に示すように, わが国においても塩ビが食品容器包装用に使用されているが, これらの用途の塩ビは可塑剤を含まないとされる硬質塩ビであるため, 食品中の DEHP には関係しないと考えられる 表 Ⅳ57 硬質塩ビフィルム シートの食品向け需要量 食品容器包装用 推定実績値 [ レジントン ] フィルム シート 1998 年度 1999 年度 2000 年度 カップ キャップ 2,750 2,090 1,430 フードパック フルーツパック 2,910 2, 豆腐パック 卵パック 10,100 8,600 6,350 仕切りトレー 1,640 1, ブリスターバック 5,630 5,510 5,210 その他 1,440 1,260 1,130 計 25,330 21,750 15,980 [ 出典 : 塩ビ工業 環境協会,2001] 食品包装用フィルムの場合, フィルムにバリア性, 強度, 遮光性等の多機能性が要求され, 最近では表 Ⅳ58 に示すように食品包装用として様々なパターンの複合フィルムが使用されている ( 政策科学研究所, クリロン化成,2001) が, 塩ビも安価でバリア性に優れているため, 食品用フィルム シートとしてかなり使用されている 軟質塩ビの食品用フィルム シート向けの最も代表的な用途はストレッチフィルム ( ラップ ) であり, この用途向けの塩ビ出荷量は 1998 年度から 2000 年度にかけてレジントンベースで 49,700 トンから 43,840 トンに減少している ( 塩ビ工業 環境協会,2001) 大部分のストレッチフィルムは,1973 年に可塑剤として用いられたフタル酸エステルの有害性がマスコミに取り上げられたことから,1974 年以降フタル酸エステル以外の可塑剤を用いて製造されている ( 日本の塩化ビニール産業 編集委員会,1979) 日本ビニル工業会ストレッチフィルム部会 (2004) によれば, ストレッチフィルムに現在使用される可塑剤は以下の物質であり, ストレッチフィルムから食品への DEHP の移行はないと考えられる 144

153 アジピン酸ジイソノニル, アジピン酸ジnアルキル, アジピン酸ジアルキル, アジピン酸ポリエステル, グリセリン酢酸脂肪酸エステル, エポキシ化大豆油, エポキシ化亜麻仁油, エポキシ化亜麻仁油脂肪酸ブチル, エポキシステアリン酸オクチル 表 Ⅳ58 複合フィルムの応用例 構成 重要特性 用途 セロハン /PE 包装機械適性 ラーメン, 医薬品 K セロハン /PE 防湿, ガスバリア性 佃煮, 漬け物 OPP/PE 透明性 煮物 PET/PE 保香性 コーヒー豆 ONY/PE 強度, 耐低温性 冷凍食品 KOP/PE 防湿, ガスバリア性 チーズ, 水産練り製品, 漬け物 アルミ /PE 遮光, ガスバリア性 医薬品 セロハン / アルミ /PE 美粧, ガスバリア性 菓子, スープ OPP/ ビニロン /PE ガスバリア性, 強度 味噌, 削り節 ONY/HDPE(CPP) 耐ボルト性 ( レトルト ), 強度 レトルト食品 ( カレー, 米飯 ) PET/ アルミ /CPP 耐ボルト性, 遮光 レトルト食品 ( カレー, 米飯 ) PET/ アルミ /ONY/CPP 強度 レトルト食品 PVA/ONY/PE 強度 味噌用ガゼット袋 OPP/PE/CPP 透明性 菓子, 冷凍, 水産 畜産練り製品 PE/ 紙 /PE 自立性, ヒートシール性, 防水 スタンディング容器 ( 牛乳 ) PE/ 紙 /PE/ アルミ /PE ガスバリア性, 自立性 ( アセポティク ) 牛乳, ジュース OPP/EVOH/PE ガスバリア性, 非帯電性 かつお節小袋, ふりかけ KCN/EVOH/ アイオノマー 深絞り性, ガスバリア性 加工肉, 魚肉練り製品 PE: ポリエチレン,K セロハン : フッ素樹脂コートセロハン,OPP: 延伸ポリプロピレン PET: ポリエチレンテレフタレート,ONY: ニ軸延伸ナイロン,KOP; フッ素樹脂コート, HDPE: 高密度ポリエチレン,CPP: 無延伸ポリプロピレン,PVA: ポリビニルアルコール, EVOH: エチレン ビニルアルコール共重合樹脂,KCN; ポリビニリデンコート無延伸ナイロン 軟質塩ビのもう一つの主要な食品用用途であるシュリンクフィルム 1 の生産量は 1997 年に 13,000 トン,98 年に 9,400 トンと報告されている ( 政策科学研究所, クリロン化成, 2001) また, 食品用シュリンクフィルムの出荷量は 5,680 トン (1998 年 ) でラベル用が中心であり, 塩ビ製シュリンクフィルムは急速に OPS および PET に代替されると予想されているとの報告もある ( シーエムシー,1999) 表 Ⅳ59 に示す東京都消費生活総合センター (1999) のプラスチック容器包装廃棄物に関する調査 ( 食品関係 :243 品 ) によれば, 一部の食品の包装と容器に塩ビが使われているが, これらは上記のように DEHP を含まない硬質あるいは軟質塩ビと考えられる 1 シュリンクフィルム : フィルムを成型する際に縦方向や横方向に延ばされた ( 延伸された ) フィルムが延伸したフィルムが縮まろうとする性質を利用したのがシュリンク包装で, 包装後, フィルムに熱をかけて収縮させ, 中身製品に密着した包装に仕上げることができる このシュリンク包装に使用されるプラスチックフィルムをシュリンクフィルムという 145

154 表 Ⅳ59 食品用プラスチックの材質鑑定結果 (1) 商品分類 商品名等 製造 販売者等 廃棄物分類 材質 24 魚介類 かつおぶしフレッシュパック にんべん 包装フィルム PE,PP 1) 25 魚介類 かに風味かまぼこ 紀文食品 包装フィルム PE,PP 1) 26 魚介類 風味かまぼこ 八社会 包装フィルム PE,PA 1) 27 魚介類 江戸前うなぎや 紀文食品 包装フィルム PP,PE 他 28 魚介類 COOP からし明太子 協同水産流通 包装フィルム PE 1) 29 魚介類 清活派おつまみいかくん なとり 包装フィルム PP 1) 30 魚介類 本まぐろみそ漬厳選仕込 山菱水産 包装フィルム PE,PA 1) 31 魚介類 うなぎ 焼津養鰻漁業協同組合 包装フィルム PE,PA 2) 32 魚介類 ちくわ 日本水産 包装フィルム PP 2) 33 魚介類 味ちくわ 日本水産 包装フィルム PP 2) 34 魚介類 ちくわ マルハ 包装フィルム PP 2) 35 魚介類 マリーン 紀文食品 包装フィルム PP 2) 36 魚介類 びんちょう鮪 山菱水産 包装フィルム PE,PA 2) 37 魚介類 真いわし丸干 千倉町南部漁協販売 包装フィルム PE 2) 38 魚介類 ブラックタイガーえび 千倉町南部漁協販売 包装フィルム PE 2) 39 魚介類 魚介類 ( ラップ ) 包装フィルム PP,EVA 2) 40 魚介類 魚介類 ( ラップ ) 包装フィルム PVC 3) 41 魚介類 魚介類 ( ラップ ) 包装フィルム PVC 3) 42 魚介類 魚介類 ( ラップ ) 包装フィルム PVC 3) 43 魚介類 魚介類 ( ラップ ) 包装フィルム PVC 3) 44 魚介類 魚介類 ( ラップ ) 包装フィルム PVC 3) 45 魚介類 魚介類 ( ラップ ) 包装フィルム PVC 3) 46 魚介類 魚介類 トレー PE,PP 2) 47 魚介類 魚介類 トレー PS 3) 48 魚介類 魚介類 トレー PS 3) 49 魚介類 魚介類 トレー PS 3) 50 魚介類 魚介類 トレー PS 3) 51 魚介類 魚介類 トレー PS 3) 52 魚介類 魚介類 トレー PS 3) 53 魚介類 魚介類 パック カップ類 PS 3) 54 魚介類 魚介類 パック カップ類 PET 3) 55 肉類 ポークウインナソーセージ 生活クラブ事業連合 包装フィルム PE,PP 1) 56 肉類 ベーコンスライス 日本生活協同組合連合会 包装フィルム PP,PE 他 57 肉類 おいしさ倍増ももハム 伊藤ハム 包装フィルム PA,PE 他 58 肉類 セフティチキン ( ササミ ) とり一番 包装フィルム PE,PA 1) 59 肉類 無塩せきハム ( スライス ) 信州ハム 包装フィルム PE,PP,EVOH 1) 60 肉類 バラ冷結牛挽き肉 境食肉センター 包装フィルム PE,PET 1) 61 肉類 チキンナゲット 日本ハム 包装フィルム PE,PP 1) 62 肉類 ポークソーセージ御殿場高原 米久 包装フィルム PP,PE 他 63 肉類 チャーシュー豚バラ肉 プリマハム 包装フィルム PE,PA,PVDC 1) 64 肉類 肉類 ( ラップ ) 包装フィルム PVC 3) 65 肉類 肉類 ( ラップ ) 包装フィルム PVC 3) 66 肉類 肉類 ( ラップ ) 包装フィルム PVC 3) 67 肉類 肉類 ( ラップ ) 包装フィルム PE,EVA 2) 68 肉類 肉類 トレー PS 3) 69 肉類 肉類 トレー PS 3) 70 肉類 肉類 トレー PS 3) 71 肉類 肉類 トレー PS 3) 72 乳卵類 ナチュレ 雪印乳業 パック カップ類 PS 1) 73 乳卵類 りんごとはちみつヨーグルト 協同乳業 パック カップ類 PS 1) 74 乳卵類 ブルガリア New アロエヨーグルト 明治乳業 パック カップ類 PS 1) 146

155 表 Ⅳ59 食品用プラスチックの材質鑑定結果 (2) 商品分類 商品名等 製造 販売者等 廃棄物分類 材質 75 乳卵類 アロエのむヨーグルト 森永乳業 パック カップ類 PE,PS 1) 76 乳卵類 ヨープレイト 全国農協直販 包装フィルム PE,PP 2) 77 乳卵類 コーヒーフレッシュ 名古屋製酪 包装フィルム PE 2) 78 乳卵類 チチヤスヨーグルト チチヤスクル乳業 包装フィルム PP 2) 79 乳卵類 とろけるスライスチーズ 日本生活協同組合連合会 包装フィルム 2) PE,PA, 塩素系 80 乳卵類 ゴーダスライスチーズ ( 内側 ) 雪印乳業 包装フィルム ポリエステル 2) 81 乳卵類 プレーンヨーグルト ( 砂糖 ) 雪印乳業 包装フィルム PP, ポリエステル 2) 82 乳卵類 牛乳びん ( 蓋 ) 包装フィルム PE 2) 83 乳卵類 毎日骨太ベビーチーズ 雪印乳業 包装フィルム PP 2) 84 乳卵類 タマゴパック パック カップ類 PVC 3) 85 乳卵類 タマゴパック パック カップ類 PET 3) 86 乳卵類 タマゴパック パック カップ類 PS 3) 87 乳卵類 まきばの恵み北海道生乳 100% ミルクの郷 パック カップ類 PS 3) 88 乳卵類 牧場の朝生乳仕立て 雪印乳業 パック カップ類 PS 3) 89 野菜 海草 もめん豆腐有機栽培大豆 100% 高塚丸五総合食品 包装フィルム PS,PET 1) 90 野菜 海草 もめん豆腐有機栽培大豆 100% 高塚丸五総合食品 パック カップ類 PP,PSP 1) 91 野菜 海草 甘らっきょう 丸イ食品 包装フィルム PA,EVA 1) 92 野菜 海草 きざみかつお入りたくあん 山博 包装フィルム PE,PP 1) 93 野菜 海草 FESTIVAL さといも 富士通商 包装フィルム PE,PA 1) 94 野菜 海草 ペチュキムチ イケガミ 包装フィルム PE,PA 1) 95 野菜 海草 きむらのワイン入り浅漬なす 木村食品 包装フィルム PE,PA 1) 96 野菜 海草 コーンカーネル ニチレイ 包装フィルム PE,PET 1) 97 野菜 海草 いわて純情野菜枝豆 JA いわて 包装フィルム PE 1) 98 野菜 海草 ふじっ子おまめさんきんとき フジッコ 包装フィルム PE,PP 他 99 野菜 海草 おかめ納豆極小粒 タカノフーズ 包装フィルム PP 1) 100 野菜 海草 たけのこ 廣澤 包装フィルム PE,PA,PVDC 1) 101 野菜 海草 コ ールテ ンクリンクルフレンチフライホ テト ハインツ日本 包装フィルム EVA 1) 102 野菜 海草 雪ん子えのき JA 十日町 包装フィルム PP 2) 103 野菜 海草 洋人参 JA ひがしかわ 包装フィルム PP 2) 104 野菜 海草 新鮮ごぼう 包装フィルム PP 2) 105 野菜 海草 京がんも 生協コープとうきょう 包装フィルム PP 2) 106 野菜 海草 じゃがいも 包装フィルム PP 2) 107 野菜 海草 とまと 包装フィルム PP 2) 108 野菜 海草 長ねぎ鮮 旭川青果連 包装フィルム PP 2) 109 野菜 海草 いわて純情野菜ピーマン JA いわい東 包装フィルム PP 2) 群馬ほうれん草生産グ 110 野菜 海草高原ほうれん草ループ 包装フィルム PP 2) 111 野菜 海草 緑豆もやし無漂白 練馬もやし 包装フィルム PP 2) 112 野菜 海草 焼肉にはこれサンチュ 白河農協 包装フィルム PP 2) 113 野菜 海草 つまみな 包装フィルム PP 2) 114 野菜 海草 産直根しょうが 浦和丸実商店 包装フィルム PP 2) 115 野菜 海草 焼のり自家焼 山根園 包装フィルム PP 2) 116 野菜 海草 やきのり ナガイのり 包装フィルム PP 2) 117 野菜 海草 おかずのり 白子 包装フィルム PP 2) 118 野菜 海草 日光あげ ( 油揚げ ) こいしや食品 包装フィルム PP 2) 119 野菜 海草 手揚げ風油あげ北海道大豆 100 生協コープとうきょう 包装フィルム PP 2) 120 野菜 海草 しらたき こんにゃく村 包装フィルム PE,PA 2) 121 野菜 海草 極小粒水戸納豆 朝日食品 包装フィルム PP 2) 122 野菜 海草 日本の味水戸納豆 オーサト 包装フィルム PP 2) 123 野菜 海草 極小粒国産大豆納豆 あづま食品 包装フィルム PP 2) 124 野菜 海草 有機栽培無農薬大豆極小粒納豆 あづま食品 包装フィルム PP 2) 125 野菜 海草 野菜 海草 ( ラップ ) 包装フィルム PVC 3) 147

156 表 Ⅳ59 食品用プラスチックの材質鑑定結果 (3) 商品分類 商品名等 製造 販売者等 廃棄物分類 材質 126 野菜 海草 野菜 海草 ( ラップ ) 包装フィルム PE 2) 127 野菜 海草 野菜 海草 ( トレー ) トレー PS 3) 128 野菜 海草 焼のり トレー PS 3) 129 野菜 海草 甘熟チェリートマト JA みちのく安達 パック カップ類 PS 3) 130 野菜 海草 秋田みょうが パック カップ類 PS 3) 131 野菜 海草 ししとう 高知県園芸連 パック カップ類 PS 3) 132 野菜 海草 大葉 豊橋温室園芸農協 パック カップ類 PS 3) 133 野菜 海草 湯通しめかぶ ヤマウチ パック カップ類 PS 3) 134 野菜 海草 納豆 パック カップ類 PS 3) 135 野菜 海草 納豆 パック カップ類 PS 3) 136 野菜 海草 納豆 パック カップ類 PS 3) 137 野菜 海草 納豆 パック カップ類 PS 3) 138 野菜 海草 納豆 パック カップ類 PS 3) 139 野菜 海草 豆腐大清水 JR 高崎商事 パック カップ類 PE,PP 2) 140 野菜 海草 豆腐もめん 相模屋食品 パック カップ類 PP,PS 2) 141 野菜 海草 豆腐ジャンボ絹ごしとううふ 東京とうふセンター パック カップ類 PE,PP 2) 153 果物 果物 包装フィルム PP 2) 154 果物 果物 包装フィルム PS 3) 155 果物 果物 包装フィルム PS 3) 156 果物 果物 包装フィルム PS 3) 157 果物 果物 パック カップ類 PET 3) 158 果物 果物 パック カップ類 PVC 3) 159 果物 果物 パック カップ類 PS 3) 203 菓子類 しらゆき ( あずき ) 雪印乳業 パック カップ類 PS 3) 204 菓子類 杏仁フルーツ牛乳仕立て 山崎製パン パック カップ類 PS 3) 205 菓子類 雪印クリーム & 抹茶プリン 雪印乳業 パック カップ類 PP 2) 206 菓子類 おお白桃 たらみ パック カップ類 PP 2) 207 菓子類 クッキー & バニラ フタバ食品 パック カップ類 PS 3) 208 菓子類 氷金時 マーメイド パック カップ類 PS 3) 209 菓子類 抹茶羊天 本家菊屋 パック カップ類 PP 2) 210 菓子類 練乳入りあずき 赤城乳業 パック カップ類 PE,PP 2) 211 菓子類 ふんわりかき氷 フタバ食品 パック カップ類 PS 3) 212 菓子類 ( ソフトクリーム ) たっぷりソフト ロッテ パック カップ類 PS 3) 232 調理食品 ごまどうふ 紀文食品 包装フィルム PA,EVA 233 調理食品 ごまどうふ 紀文食品 パック カップ類 PP 1) 234 調理食品 えびしゅうまい ヨコミゾ 包装フィルム PE 1) 235 調理食品 弁当 トレー PE,PP 1) 236 調理食品 ククレカレー ハウス食品 包装フィルム PE,PP 他 237 調理食品 焼おにぎり ニチレイ 包装フィルム PP 1) 238 調理食品 スジャータビーフカレー 名古屋製酪 包装フィルム PE,PP 他 239 調理食品 しょうがあさりピラフ 雪印乳業 包装フィルム PP,EVA 1) 240 調理食品 ひとくちパリパリぎょうざ ニチロ 包装フィルム PE,PP 2) 241 調理食品 お好み焼き 日清食品 包装フィルム PE 242 調理食品 弁当 蓋 PS 3) 243 調理食品 調理食品 トレー PP 2) 1)IR と熱分解 GC による分析,2) IR と熱分析計による分析,3) IR による分析 PE: ポリエチレン,PP: ポリプロピレン,PET: ポリエチレンテレフタレート,PS: ポリスチレン, EVA: エチレン 酢酸ビニル共重合体,PA: ポリアミド,PVDC: ポリ塩化ビニリデン,PVC: ポリ塩化ビニル わが国では, 日本食品分析センターによる食事調査が行われた 1998 年と 2001 年の間に, 148

157 軟質塩ビ製手袋から市販の弁当への DEHP の移行が問題となり, 厚生省は2000 年 6 月にDEHP を含有する塩ビ製手袋の食品への使用を避けるよう指導を行った ( 厚生労働省,2000) この結果, 市販弁当中 DEHP 濃度は, 通知前の 4,420μg/kg(803~8,930μg/kg) から 198μ g/kg(45~517μg/kg) と約 1/20 に減少し, 外海 (2000) は 2000 年に国内販売中の各種食品中のフタル酸エステルを調査し, 幅広い食品種を調べた結果, 塩ビ製手袋以外に極端に大きな混入源はないと考えられる と結論している また,2002 年 6 月の薬事 食品衛生審議会食品衛生分科会における食品衛生法の 食品衛生法器具および容器包装並びにおもちゃの規格基準 の改正に関する審議結果を受けて, 油脂 脂肪性食品 1 を含有する食品の器具および容器包装に DEHP を含有する塩ビを主成分とする合成樹脂を使用することが禁止されることになり, 同年 8 月 2 日に規格基準改正の通知 ( 施行日 :2003 年 8 月 1 日 )( 厚生労働省,2002) が出されている 以上のことから, 次のことが考えられた (1) 塩ビ製の食品包装用フィルム 容器から食品への DEHP の移行の可能性は少ない (2) 塩ビ手袋については,1996 年に学校給食で腸管出血性大腸菌 (O157) が原因で死者が出たのを機に, 外食産業や弁当業の盛りつけ用として急速に普及したという経緯がある ( 朝日新聞,2000) 家庭用塩ビ手袋は, 主に炊事用に用いられるため, 一般家庭において調理時に使用される可能性は低いと考えられ, 塩ビ手袋による食品汚染は短期間, 一部の食品のみであった 一方, フタル酸エステル類リスク評価管理研究会 (2003) によれば,1997 年頃からの内分泌かく乱物質問題や環境庁の SPEED'98 への DEHP のリストアップに対応して事業者も自主的に, 代替物質への切り替え, 廃材リサイクル, 集塵機等による排出抑制対策等を実施している ( 表 Ⅳ60) これらの中で最も件数が多かったのは, 代替物質への切り替え ( 塩ビから他の素材,DEHP から他の可塑剤 ) であった このため, わが国における DEHP 摂取量が 1998 年から 2001 年にかけて減少した要因として, 企業の自主的な対策の可能性も考えられる 1 油脂 脂肪性食品 : 食品, 添加物等の規格基準の一部改正について ( 昭和 48 年環食化第 541 号 ) の記の第 2 の 2 に定義された 食品中又は食品表面の油脂含量がおおむね 20% 以上で, 乾燥した固形食品以外の食品 であり, 例えば, 牛脂, 植物油, ハム, ベーコン, 牛肉, 豚肉, チョコレート, ポテトチップス, てんぷら, 油揚げ, さつま揚げ, コロッケ, トンカツ, マヨネーズ, ドレッシング, チーズ, バター等が含まれる また, 上記の食品だけでなく, それらを用いた食品, 例えば油脂で炒めたり, 焼いたり, 揚げたり, 炒めてから煮た食品, および脂肪性食品を材料としている食品が全て含まれる ( 例えば, ハンバーグ, ぎょうざ, からあげ, 肉団子, カレー, ビーフシチュー, 肉じゃが, 野菜炒め, きんぴらごぼう, 油や油揚げを含む煮物, ポテトサラダ, ドーナツ, ケーキ, クッキー, かりんとう, あげ煎餅等 ) 149

158 表 Ⅳ60 事業者による DEHP 排出抑制対策 実施内容 件数 割合 [%] 非塩ビ製品への切替え,DEHP から他の可塑剤への切り替え 廃材リサイクル ( リサイクル業者への販売を含む ) 揮発分 ミスト 1 ヒューム 2 の回収 処理 ( 集塵機 パイプフィルター等設置 ) 製造工程 装置変更 ( 工程の密閉化, 収率向上 ) 焼却処理 ( 産廃処理業者委託処理を含む ) 排水処理 ( 油水分離を含む ) [ 出典 : フタル酸エステル類リスク評価管理研究会,2003] 5.4 ヒト健康リスク評価に使用する摂取量 5.1 項に示したように, モニタリングデータを用いて DEHP 摂取量を推定した結果,1998 年と 2001 年の摂取量には,3 倍の違いがある 2001 年の調査に基づく摂取量は 8 月に実施されており, 季節変動は含まれないが, 現状に近い値と思われる 一方,1998 年の調査結果に基づく摂取量は塩ビ製の手袋から一部食品への移行の可能性も考えられ, 事業者による排出抑制対策が進行中であった時期の値であり, 季節変動を含む摂取量である 本評価書における DEHP によるヒトの健康へのリスクの判定には, 推定したこれら両方の摂取量を用いる さらに, 化学物質のリスク削減対策の費用対効果を見積もるためには, 削減シナリオに基づく摂取量とリスクの削減量を定量的に評価することが必要である このためには, 環境への排出源からヒトに至る化学物質の輸送過程を明確にする必要がある 本章で示したように食事や市販弁当あるいは加工済みの食品中の DEHP 濃度測定結果は報告されているが, 個別の農産物, 畜産物, 水産物中の濃度に関する報告はほとんどない このため, 本章でまとめたモニタリングデータだけでは, 環境中に排出された DEHP がどのような経路を経てヒトに到達するかについて明確にすることができない この経路については, 第 Ⅴ 章および第 Ⅵ 章で数理モデルを用いて解析する 1 ミスト : 液体の微細な粒子で空気中に浮遊しているもの 粒径は 5~10μm 2 ヒューム : 金属の蒸気等の気体が空気中で凝固や化学変化を起こし, 固体の微粒子として空気中に浮遊しているもの 粒径は 0.1~1μm 150

159 第 Ⅴ 章環境動態 1. はじめに環境中に排出された DEHP は, 様々な環境中の媒体を経て, ヒトや環境中の生物に到達する 化学物質のリスク 1 を適正に管理するためには, リスクを評価し, 費用対効果に優れた環境排出量削減対策を講じる必要があり, 適切な削減対策を考える上で,DEHP の発生源からヒトや環境中の生物に至る主要な暴露の道筋を明確にすることが重要となる 第 Ⅳ 章に示したように, 既存のモニタリング結果から, ヒトは主に食事経由で DEHP を摂取すると考えられるが,DEHP がヒトや環境中の生物に到達するまでの動態は,DEHP の媒体内での輸送と分解に加えて媒体間の移動にも依存し, それらによって環境媒体中および食物中濃度が決定されるため, 既存のモニタリング結果からは, 環境中に排出された DEHP がどのような環境媒体を経て農作物, 畜産物および水産物に移行し, さらにヒトに至るのかを明確にできない そこで, 本章では,DEHP のヒトに至る主要な暴露の道筋を推定することを目的とし, 簡易型のコンパートメントモデルを用いて,DEHP の環境中での動態の概要を推定した コンパートメントモデルは, 環境中の媒体を均質とみなせるボックス ( コンパートメント ) に分割し, コンパートメント内での化学物質の消失とコンパートメント間の化学物質の移行を考慮して環境中の化学物質の動態を記述するモデルである 本章では, 大気, 土壌, 水環境および植物に関するコンパートメントモデルを用いて, それぞれの媒体中での DEHP の動態を推定するとともに, 家畜の肉および乳製品への生物移行および魚介類への生物濃縮についても考察した 以下,2 節でコンパートメントモデル等に使用したパラメータ値について説明し,3 節以降で各モデルの概略と各コンパートメントの緒元と特性を示すとともに, 環境中における DEHP の動態について推定した結果を示す 1 リスク : あるエンドポイントの発生する確率とそのエンドポイントの重要さの関数 151

160 2. 環境動態の推定に用いたパラメータコンパートメントモデルにより環境動態等を推定する際には, 環境媒体を構成する空気, 水および粒子 ( 空気中浮遊粒子, 土壌粒子, 水中懸濁粒子および底質粒子 ) 間の分配平衡定数 1 と媒体中での分解速度に関する情報が必要となる 本節では, モデルによる環境動態の推定に用いたパラメータの概要を示す 2.1 物性値物性値として, 第 Ⅰ 章 4 節に示した蒸気圧,log K OW および水溶解度を用いた 蒸気圧は 20 における値, Pa を,log K OW は実測値である 7.60 を採用した なお, 水溶解度については, 本章 項に詳細を示す 2.2 分配平衡パラメータ 気 / 液分配係数気 / 液分配係数 (K AW ) は次式で求めた H K AW = R TEMP ここで,H はヘンリー則定数 [Pa m 3 /mol],r は気体定数 (8.314 J/K/mol),TEMP は気温 [K] である H は次式に示すように, 蒸気圧 (VP[Pa]) と水溶解度 (WS[mol/m 3 ]) の比として求めることができる H = VP / WS 第 Ⅰ 章 4.1 項に示したように,DEHP の水溶解度として mg/l( mol/m 3 ) ~1.3 mg/l( mol/m 3 ) の間の様々な値が報告されている このため,DEHP の蒸気圧として Pa を用いると, 水溶解度の違いによりヘンリー則定数は ~19.8 Pa m 3 /mol の間で変動する さらに, ヘンリー則定数あるいは気 / 液分配係数は後述の大気中ガス態捕集率, 土壌中分配比の算出にも用いられる重要なパラメータである そこで, 本章 3 節以降に示す環境動態の推定においては, 水溶解度の不確実性が DEHP の環境媒体中濃度等の推定値に及ぼす影響をモンテカルロ シミュレーション 3 により解析した 1 分配平衡定数 : 化学物質が 2 相に分配され, 平衡に達した時点での両相中の化学物質濃度の比 2 気 / 液分配係数 : 気相と液相が接する系において, 化学物質が両相に分配される割合を表す数値 気相中濃度を液相中濃度で除した値 3 モンテカルロ シミュレーション : シミュレーションを行う現象に対して, その入力に大量の乱数を発生させて, 出力値を観測することで, その現象を確率論的に解く手法 152

161 有機炭素吸着定数 EU 評価書暫定版 (EU,2001) では,DEHP の有機炭素吸着定数 (K OC [L/kg]) の実測値として 63,100~888,000 L/kg が引用されており, その上で, 化学物質の構造式から K OC を推算する PCKOC(Syracuse 版 )(Meylan ら,1992) による推定値 165,000 L/kg が大多数の実測値に一致するとして, 欧州連合の化学物質によるヒトの健康と環境影響の統合的な初期評価ツールである European Union System for the Evaluation of Substances(EUSES)(EC, 1996) の計算に用いられている 本評価書においても, この K OC =165,000 L/kg を環境動態の推定に使用した 2.3 分解パラメータ 大気中での分解大気中における有機化学物質の分解には, 大気中での光化学反応で生じるヒドロキシル (OH) ラジカルが一般に大きな寄与をする U.S. EPA の Estimation Program Interface(EPI)Suite の OH ラジカルとの反応速度定数推算プログラム (AOPWIN) によれば,DEHP の OH ラジカルとの反応速度定数は cm 3 /molecule/ 秒と推算された 大気中の OH ラジカル濃度を molecule/cm 3 とすれば, 大気中での DEHP の OH ラジカルとの反応による半減期 2 は 3.6 日となる しかし, ガス態としての存在率は 0.18( 冬季 )~0.77( 夏季 ) と報告されており ( 中澤,2000), 実際の半減期は 4.6~15.6 日程度となる 一方,EU 評価書暫定版 (EU,2001) では, 以下の文献が引用されており, 評価書内での EUSES の計算には,DEHP の大気中での分解半減期として 1 日が用いられている Singh ら (1983) は 25 での OH ラジカルとの反応によるガス態の DEHP の半減期を 1.2 日と推定 Klöpffer と Kohl(1990) は OH ラジカルとの反応によるガス態の DEHP の半減期を 0.32 日と報告 Zetzsch(1991) は OH ラジカルとの反応によるエアロゾルの DEHP の半減期を 1.07 日と推定 以上のように報告例は少ないが,Klöpffer と Kohl(1990) および Zetzsch(1991) の結果から判断して,EUSES の計算に用いられた分解半減期 1 日は妥当と考えられるため, 本評価書においてはガス態と浮遊粒子への吸着態の DEHP の大気中における分解半減期を 1 日とした この半減期から, 大気中における DEHP の分解に対する一次反応速度定数 (k dega ) は 日となる 1 有機炭素吸着定数 : 土壌, 底質等の粒子と水が接する系において, 化学物質が両相に分配される度合いを表す数値 粒子中濃度 / 水中濃度として求めた値を粒子中の有機炭素量で補正した値 2 半減期 : 化学物質の消失過程において, 初期の濃度の 1/2 に減少するのに要する期間 153

162 2.3.2 土壌中での分解 EU 評価書暫定版 (EU,2001) では, 14 C で標識した DEHP( 14 CDEHP) を用いた以下の試験結果が引用されており, 評価書内の EUSES の計算には,DEHP の土壌中での分解半減期として 300 日 (10 ) が用いられている Schmitzer ら (1988) は, 土壌 / 水懸濁系で分解を測定した (DEHP 濃度 :58 mg/kgdry) 33 日間で 22% が 14 CO 2 に無機化 1 された 屋外ライシメータ 2 試験では, 散布 111 日後に添加 14 C の 6.9% が土壌で,0.51% が 60 cm の深さからの溶出水中で検出された Dörfler ら (1996) は,3 種類の森林土壌 ( 有機炭素含有率 :2.6,5.4 および 5.4%) を用いて無機化を測定した (DEHP 濃度 :0.5 および 10 mg/kgwet) 室温で 28 日から 63 日間インキュベーションした結果, 高濃度区ではそれぞれの土壌で,32,30 および 22% が無機化した 低濃度区での無機化率は 63 日間で 43~58% であった 無機化は 10 以下ではわずかで,3 以下では無視できる程度であった Rüdel ら (1993) は,2 種類の土壌を用い実験室内と屋外ライシメータで分解を測定した (DEHP 濃度 :1 mg/kgwet, 試験期間 :100 日 ) 揮発 14 C, 抽出可能な残留物, 抽出不可能な残留物,DEHP および分解生成物 ( フタル酸モノ (2エチルヘキシル)(MEHP) とフタル酸 ) を計測した 20 の室内試験では, 抽出不可能な残留物が初期放射能の 9.7 および 40% を占め,2.6 および 47% が無機化した 分解生成物は検出されなかった DEHP の半減期は 31 および 170 日であった 一方, 屋外ライシメータ試験では, 半減期は 14~200 日であった 5 cm より深部土壌中の残留物はわずかであった Fairbanks ら (1985) は,3 種類の土壌で分解を測定した (DEHP 濃度 :2 および 20 mg/kgdry, 温度 :21~25, 試験期間 :146 日 ) 揮発 14 C と試験終了時の土壌中 14 C を分析した DEHP の半減期は 8~72 日で,DEHP は低濃度区よりも高濃度区で残留した Kirchmann ら (1991) は,DEHP の構造変化を測定した (DEHP 濃度 :5 および 250 mg/kgdry, 温度 :25, 試験期間 :80 日 ) 80 日後の DEHP 残存率は, 高濃度区では 50%, 低濃度区では 20% であった 半減期はそれぞれ,80 および 30 日と計算された Madsen ら (1999) は, 砂質ローム土中で無機化を測定した (1.6,3.2,9.9 および 35.1 mg/kgdry, 暗所, 温度 :5,10 および 20 ) DEHP の無機化は明確に二つの相に分離された 土壌中での無機化の半減期は 5,10 および 20 でそれぞれ,224,187 および 73 日であった Gejlsbjerg ら (2001) は, 無機化に及ぼす土性の影響を調べた ( 暗所, 試験期間 :2 ヶ月間, 温度 :20 ) 粗土中での無機化は 2 ヶ月間で 8.5 および 9.4% であった 以上のように, 土壌中の DEHP の分解速度に関する研究例は多くみられるが, 結果は変化に富んでおり, また, 14 C での測定では,DEHP と分解生成物 (MEHP とフタル酸 ) を分離, 同定できないため,DEHP の正確な分解速度を測定することは非常に困難である EU 評価書暫 1 無機化 : 有機物が微生物分解により, 二酸化炭素, 水, 元素等に完全に分解されること 2 ライシメータ : 金属やコンクリート製の大きな容器に土壌を充填し, 実験棟や圃場に設置し, 降雨の浸透量や水の蒸発散量, 化学物質の土壌中での動態を測定する実験装置 154

163 定版 (EU,2001) においても, 解釈が難しいとしながらも, 入手可能な範囲のデータとして, 上記のような土壌中 DEHP の分解試験結果に基づき, 環境条件下での無機化速度は全体として遅いと結論しており, 土壌中の DEHP 半減期のおおよその推定値として,Q 10 =2( 温度が 10 上昇すると速度は 2 倍になる ) を用い, 室温で 150 日,10 で約 300 日としている 本評価書では, 年平均温度を 15 と仮定して,Q 10 =2 を用いて DEHP の土壌中での分解半減期を 200 日とした この半減期から,DEHP の土壌中分解に対する一次速度定数 (k degs ) は 日 1 となる 水中での分解 非生物的分解 DEHP から MEHP と 2エチルヘキサノールへの非生物的分解 ( 加水分解および光分解 ) は非常に遅いと予測され, 約 2,000 年という半減期の推定値が報告されている (Giam ら,1984) また,DEHP の水中光分解は非常に遅いと報告されている (TSD,1991) Wolfe ら (1980a;1980b) は, 化学物質の水環境中での動態評価モデルである Exposure Analysis Modeling System(EXAMS) を用いて, 光分解による DEHP の消失は, 河川では 1 時間に 0%, 池では 30 日間に 1.8% と計算し, さらに, 富栄養湖 1 と貧栄養湖 2 では 200 日間にそれぞれ 1.4 および 13.7% と計算している 微生物分解 EU 評価書暫定版 (EU,2001) では, 以下の試験結果が引用されており, 評価書内での EUSES の計算には,DEHP の水中での分解半減期として 50 日が用いられている Saeger と Tucker(1976) は, ミシシッピ川の河川水中での DEHP の構造変化を測定した ( 濃度 :1 mg/l) 試験開始後 7,14,28 および 35 日目に分析した結果,35% の DEHP が構造変化を受けずに 35 日目に残存していた Ritsema ら (1989) は, ライン川の河川水中での DEHP の構造変化を測定した ( 濃度 :3.3 μg/l, 温度 :4 および 20 ) 0,1,3,7 および 10 日後に分析した結果,10 日間の試験では 4 で全く分解は生じなかったが,20 で約 33% が構造変化を受けた SubbaRao ら (1982) は, 米国の富栄養湖と貧栄養湖のろ過水を用いて無機化を測定した ( 濃度 :0.02,0.2,2.0 および 200μg/L, 温度 :29, 振とうなし ) 富栄養湖水中では 40 日後に DEHP の 35~71% が無機化した 無機化の濃度依存性はなさそうであった 貧栄養湖水中では 60 日間では無機化されなかった Furtmann(1993) は, ライン川の河川水中での分解を測定した ( 試験濃度 :2および5 μg/l, 水中バックグラウンド濃度 : 約 0.4μg/L) 初期は分解が速く,20 では 8 日後に 90% が構造変化を受けたが, バックグラウンド濃度以下では分解は進行しなかった 1 富栄養湖 : 窒素やリンなどの栄養塩類に富み, プランクトン等が多く, 生物生産量の多い湖 2 貧栄養湖 : 窒素やリンなどの栄養塩類が少なく, プランクトン等が少ない湖 155

164 4 では試験中に分解は生じなかった 以上のように, 表層水中での分解に関する研究は, ほとんどが DEHP の構造変化に関してであるが,EU 評価書暫定版 (EU,2001) では, 無機化を測定した SubbaRao ら (1982) の結果より,EUSES の計算に 50 日という半減期を採用している 本評価書では, 無機化ではなく構造変化を対象とするが,Saeger と Tucker(1976) の報告は古く, 第 Ⅳ 章でも述べたように分析精度の面での信頼性に疑問があるため,Ritsema ら (1989) と Furtmann(1993) の結果のうち, 安全側をとって分解の遅い Ritsema ら (1989) の結果 (20,10 日間で 33% が構造変化 ) を採用し, 水中での分解半減期を 15 日 ( 一次速度定数 k degw = 日 1 ) とした 底質中での分解 EU 評価書暫定版 (EU,2001) では, 以下の試験の結果が引用されており, 評価書内での EUSES の計算には,DEHP の底質相全体での半減期として 3,000 日が用いられている Johnson と Lulves(1975) は, 淡水池底質での好気的および嫌気的分解を測定した ( 濃度 :1 mg/l, 温度 :22, 分析 :1,5,7 および 30 日後 ) 好気的条件 1 では,14 および 30 日後にそれぞれ,53 および 41% の 14 C が回収された DEHP 以外で同定されたのは MEHP のみで, 回収 14 2 C の 2% を占めた 約 60% が試験中に無機化した 嫌気的条件下では,DEHP は変化しなかった Johnson ら (1984) は, 淡水底質中での生分解に及ぼす試験濃度, 温度, 予備順化 3 および嫌気的条件の影響を調べた ( 濃度 :0.0182,0.182,1.82 および 10 mg/kgwet, 温度 : 5,12,22 および 28 ) 予備順化と嫌気的条件の影響は 22 で調べられた ( 濃度 : および mg/kgwet) 表 Ⅴ1 に示すように,DEHP の分解は温度にかなり影響を受ける 予備順化の影響に関する解釈は難しい 嫌気的分解は好気的分解とほとんど差がないが, 酸素の除去方法が記載されていない 1 好気的条件 : 有機物を酸化するのに必要な酸素が十分にある条件 2 嫌気的条件 : 有機物を酸化するのに必要な酸素がほとんどない条件 3 順化 ( 馴化 ): 種または個体群が数世代を費やし, 変化した環境に適応すること 採取した環境試料を実験室に運び, 対象化学物質を添加する前に, 試験条件 ( 温度等 ) で培養して実験室環境に適応させる 156

165 影響因子 試験濃度 mg/kgwet 温度 予備順化 (28 日間 ) 表 Ⅴ1 淡水底質中での DEHP の分解試験の結果 温度 [ ] 酸素条件 22 出典 :Johnson ら, 記載なし 試験条件 アセトン添加, 順化ありアセトン添加, 順化なしアセトンなし, 順化なし好気的嫌気的 分解度 [%] 7 日 14 日 21 日 28 日 Larsson ら (1986) は, 水 / 底質系で微生物の呼吸速度に及ぼす DEHP の影響を研究した ( 温度 :5, 試験期間 :28 日 ) 試験後の DEHP 回収率は 76~134% で, ほとんど分解していない Horowitz ら (1982) は, 富栄養湖の底質中での嫌気的分解を研究した ( 予備順化 :24 時間, 濃度 :40 および 240 mg/l, 暗所 振とう, 温度 :20, 試験期間 :8 週間 ) 8 週間後,DEHP は分解せず, メタンおよび CO 2 生成量は対照群と同じであった 底質中での DEHP の 50% 以上の分解は,Johnson と Lulves(1975) の研究でしか得られていないため,EU 評価書暫定版 (EU,2001) においても, 底質中での半減期は, 得られているデータからでは推算が困難としているが, 以上のような底質中 DEHP の分解試験結果に基づき, 通常の環境条件下での無機化速度は非常に遅いと結論しており, おおよその値として 300 日が好気的条件下の底質 ( 表面から 3 cm の層の 10%, EU の Technical Guidance Document(TGD) のデフォルト ) での半減期と仮定して, 底質相全体での半減期を 3,000 日としている 本評価書では,Johnson ら (1984) の試験結果 (22,28 日間で 5.5% 分解 ) から, 好気的条件下の底質中での半減期を 343 日とし, 底質相全体での半減期を 3,400 日 ( 一次速度定数 k degse = 日 ) とした 157

166 3. 環境媒体中での動態第 Ⅲ 章で推計された DEHP の大気排出量と, 本章 2 節に示した分配平衡定数および分解速度定数を用いて, 大気, 土壌および水環境における DEHP の動態をそれぞれのコンパートメントモデルで推定した 3.1 大気中での動態図 Ⅴ1 に DEHP の大気中での動態に関与すると考えられる各プロセスを示す 化学物質 He 大気 空気 吸着平衡 浮遊粒子 ( ガス態 ) ( 吸着態 ) 分解 分解 移流 乾性沈着湿性沈着乾性沈着湿性沈着図 Ⅴ1 DEHP の大気中での動態プロセス 以下, 各プロセスの概要について述べる 浮遊粒子への吸着中澤 (2000) によれば, ガラス繊維フィルター (GF) または石英繊維フィルター (QF) と炭素繊維フィルター (CF) を用いて捕集した屋外大気中 DEHP 濃度は表 Ⅴ2 のようになっている 表 Ⅴ2 屋外大気中の DEHP 濃度 [ng/m 3 ] 夏季, 気温 25.6~32.7 冬季, 気温 7.5~13.7 GF CF GF+CF QF CF QF+CF DEHP 濃度 22 1) ) <12 2) 44 1) 1) 検出下限値以上, 定量下限値未満 2) 検出下限値未満 出典 : 中澤,2000 GF(QF) には粒子状およびガス状物質が捕集され,CF にはガス状物質が捕集されると考えられることから, 仮にガス状物質が全て CF に捕集されたとすれば,DEHP の大気中浮遊粒子への吸着態存在率 (f aer ) は夏季で 0.18, 冬季で 0.77 となり, ガス態としての存在率 (f gas ) は1 f aer で求められる 一般に平衡定数 K p の温度依存性については, 以下に示す van't Hoff の式で与えられる 158

167 K ln K p p ( T2 ) rh 1 1 = ( T1 ) R T2 T1 ここで,T は温度 [K], r H は標準反応エンタルピー [J/mol],R は気体定数 [J/K/mol] である 上式より,ln K p と1/T は, 勾配 A(= r H /R), 切片 B の線形関係で表すことができる 1 ln K p = A + B T T 1 と T 2 に表 Ⅴ2 の夏季と冬季の気温 TEMP[K] を, 夏季と冬季に対応する K p に f aer /f gas を代入することで定数 A と B を求めると,A=12,567,B= となり次式が得られる ただし,TEMP についてはそれぞれの季節の測定期間中の最低値と最高値の平均とした ln f f aer gas 1 = 12, TEMP ここで,f gas =1 f aer より, exp(12,567/ TEMP43.065) f aer = 1+ exp(12,567/ TEMP43.065) この式を用いて関東地方の各都県の年平均気温の平年値 (1971 年から 2000 年 30 年間の平均値 )( 気象庁,2001b) における f aer および f gas を算出した結果を, 表 Ⅴ3 に示す 表 Ⅴ3 DEHP の関東地方の年平均気温 ( 平年値 ) における f aer および f gas 都県名東京都神奈川県千葉県埼玉県群馬県栃木県茨城県 1) 気象庁,2001b 年平均気温 1) [ ] f aer f gas 沈着沈着は大気から地表面への移行過程であり, 乾性沈着 1 は降雨を伴わないガス態の吸収や粒子吸着態の重力沈降, 湿性沈着 2 は雨水へのガス態の溶解や粒子吸着態の捕捉によるものである 大気中でガス態, 粒子吸着態として存在する化学物質は, 沈着により地表に輸送されるが, 各々の降下速度は異なる ガス態および粒子吸着態の土壌への降下速度 (DRG および 1 乾性沈着 : 大気中に存在するガス状の化学物質や浮遊粒子に吸着された化学物質が, ガスの吸収や粒子の重力沈降等により地表面へ移行する過程 2 湿性沈着 : 大気中に存在するガス状の化学物質や浮遊粒子に吸着された化学物質が, 雨水へのガスの溶解や粒子の捕捉により, 降雨に伴って地表面へ移行する過程 159

168 DRP[m/ 日 ]) は, ダイオキシン類について測定されており, 地表近傍で測定されたそれぞれの値は,2.08 m/ 時 (DRG=49.9 m/ 日 ) および 1.03 m/ 時 (DRP=24.7 m/ 日 ) である (Schröder ら,1997) 一部の浮遊粒子は, 落下中の雨滴との慣性衝突により捕集されるが, 水滴が重力作用により落下し, ある時間が経過して落下速度が一定となったとき, この速度を終端速度 (RFS[m/ 日 ]) という 表 Ⅴ4 に雨滴の終端速度 (Goody と Walker,1972) を示す 表 Ⅴ4 より, 本評価書では典型的な雨滴である 650 cm/ 秒 (RFS= m/ 日 ) を用いて計算した 表 Ⅴ4 雨滴の終端速度 雲粒と雨滴の半径 [μm] 個数 [1/cm 3 ] 終端速度 [cm/ 秒 ] 10( 典型的な雲粒 ) 50( 大きな雲粒 ) 100( 雲粒と雨滴の境目 ) 1,000( 典型的な雨滴 ) 1, 出典 :Goody と Walker,1972 大気中のガス態および粒子吸着態の雨滴への捕集率 (f rs ) は, 次式で計算される f = ( W f + W f ) Rain rs C v gas C p aer a ここで,W Cv はガス態の捕集率であり, 気 / 液分配係数 (K AW ) の逆数に等しい W Cp は粒子吸着態の捕集率で 200,000 が用いられる (Mackay,2001) Rain a は大気中の雨滴の容積比であり, 降雨量 (RAINFALL[m/ 日 ]) を RFS で除した値である RAINFALL は表 Ⅴ5 に示す各都県の年間降水量の平年値 ( 気象庁,2001b) より求めた 表 Ⅴ5 関東地方の各都県における年間降水量の平年値都県名降水量 [m/ 年 ] 東京都 1.47 神奈川県 1.62 千葉県 1.29 埼玉県 1.34 群馬県 1.16 栃木県 1.44 茨城県 1.33 出典 : 気象庁,2001b 1 ガス態および粒子吸着態の乾性沈着速度定数 (DDR g および DDR p [ 日 ]) は, それぞれ次式で求められる DDRg = DRG f gas ( 1 f rs )/ He 160

169 DDR p = DRP f aer ( 1 f rs )/ He ガス態および粒子吸着態の湿性沈着速度定数,(DWR g および DWR p [ 日 1 ]) は, それぞれ次式で求められる DWRg = W f gas RAINFALL / He C v DWRp = WC f aer RAINFALL/ He p ここで,He は大気相の混合層高度 (500 m) である 表 Ⅴ3 に示すように, 関東地方の各都県について算出した f aer は 0.60~0.69 であり, このとき表 Ⅴ5 に示す降水量を基に算出された沈着量は, 湿性沈着, 特に粒子吸着態沈着の寄与が大きく, 全沈着量に対する寄与率は 78~84% である DEHP の乾性沈着量および全沈着量 ( 湿性沈着量 + 乾性沈着量 ) として, 愛知県における実測値が報告されている ( 佐野と高梨,2002) 測定は 2001 年度に豊田市内 5 ヶ所および名古屋市内 1 ヶ所でそれぞれ年 2 回ずつ行われた 愛知県における DEHP 排出量 (165 トン / 年 ) を基に, 図 Ⅴ1 の大気モデルを用いて推定した値と, 測定値の比較を表 Ⅴ6 に示す なお, 愛知県における年平均気温および年間降水量の平年値はそれぞれ 14.5 および 1.46 m/ 年 ( 気象庁,2001b), 風速の出現頻度分布は, アメダスデータ ( 気象庁,2001a) に基づき, 位置 :0.41, 尺度 :0.47, 形状 :3.15 のガンマ分布とした ( 風速の分布については, 本章 項で述べる ) 表 Ⅴ6 大気中 DEHP の沈着量の測定値と推定値の比較 [μg/m 2 / 日 ] 1) 実測値 推定値 ( 平均値 ) 乾性沈着量湿性沈着量全沈着量 2.74 (0.58~9.30) 2) ) 9.62 (1.40~28.6) 2) ) 佐野と高梨,2002 2) 平均値 ( 最小値 ~ 最大値 ) 3) 全沈着量平均値から乾性沈着量平均値を引いた値 全沈着量では, 実測値と推定値がほぼ等しい結果となった 乾性沈着量については, 推定値が実測値に比べ低い結果となったが, 上記のように全沈着速度に対する乾性沈着の寄与は大きくないこと, また, 実測値は季節や地点により差があること ( 佐野と高梨,2002) を考慮すると, 妥当な範囲内であると考えられた したがって, ダイオキシン類の DRG および DRP は DEHP にも適用可能と判断し, 本評価書では Schröder ら (1997) の測定値を採用することとした また,DEHP の湿性沈着に関して, 群馬県前橋市内 1 ヶ所において 1998 年 7 月に 3 回の測定が行われ, 雨水中の DEHP 溶存態 ( 上清 ) および粒子吸着態 ( 沈さ ) の存在比の実測値が報告されている ( 大谷と斎藤,1999) 報告された溶存態と粒子吸着態の 3 回の測定の平均 161

170 存在比は 18:82 であり, モデルで推定された比 (15:85) とほぼ一致した このことはガス態と浮遊粒子吸着態の雨水への捕集率が妥当であることを示していると判断した 移流移流は, 大気中のガス態と粒子吸着態物質の輸送に関与する 化学物質の移流速度 (N adva [ng/ 日 ]) は次式で表わされる N = G C adva a a ここで,G a は風速から求められる空気流量 [m 3 / 日 ],C a は大気中化学物質濃度 [ng/m 3 ] である 10 km 四方の底面 (L a = m) を持つ大気相のある一辺から, 風速 v[m/ 日 ] の風が吹き込むとすれば, 移流の一次速度定数 (k adva [ 日 1 ]) は次式で表される k adva = v / La 大気中濃度大気中における DEHP の動態プロセスとして, 上記のプロセスを考慮することにより, 大気中における DEHP の物質収支は次式で表される dm dt a = I a ( k adva + ( DDR g + DWR ) f g gas + ( DDR p + DWR ) f p aer + k dega ) M ここで,M a は大気中の DEHP 量 [kg],i a は大気への DEHP の排出速度と流入速度の和 [kg/ 日 ] である また,f gas と f aer はそれぞれガス態と粒子態の DEHP 存在割合であり,DDR g および DDR p はそれぞれガス態および粒子吸着態の乾性沈着,DWR g および DWR p はそれぞれガス態および粒子吸着態の湿性沈着,k adva は移流,k dega は分解に対する一次速度定数 [ 日 1 ] である 定常状態を仮定して, 第 Ⅲ 章で求めた 2001 年における DEHP の大気への排出量 ( 表 Ⅴ7) を基に, 大気中での DEHP 動態を推定した a 表 Ⅴ7 DEHP の大気中への排出量 (2001 年 ) 都県名排出量 [ トン / 年 ] 東京都神奈川県千葉県栃木県 大気中の化学物質の動態に一般に大きな寄与をする移流は, 本章 項に示したよう 1 移流 : 環境媒体である空気や水の流れに伴う化学物質の輸送 162

171 に風速によりその速度が決定されるが, 風速は変動性が大きい また, 本章 項に示したように水溶解度には大きな不確実性がある そこで, 動態推定に際しては, 風速の変動性と水溶解度の不確実性が大気中の DEHP の動態に及ぼす影響も評価するため, モンテカルロ シミュレーションを行った 風速の確率密度関数 1 はアメダスデータ ( 気象庁,2001a) に基づく出現頻度分布が最も良く適合したガンマ分布とし ( 表 Ⅴ8), 水溶解度の確率密度関数は最小値 mg/l, 最大値 1.3 mg/l の一様分布として, 各パラメータによる大気中 DEHP 濃度の変動の感度を分散寄与率として解析した 分散寄与率は, スピアマンの順位相関係数 2 を二乗して, それらを全体が 100% となるように正規化して算出した値である モンテカルロ シミュレーションには,Crystal Ball 2000(Decisioneering Inc.) を用い, 試行回数は 10,000 回, サンプリング手法としてラテン ハイパー キューブ法 3 を採用した 都県名 東京都神奈川県千葉県栃木県 表 Ⅴ8 風速の頻度分布 ガンマ分布パラメータ 位置 尺度 形状 東京都を対象に推定した結果, 定常状態時の大気中からの DEHP 消失量 ( モンテカルロ シミュレーションの平均値 ) の 92.5% は移流の寄与であり,5.1% と 2.4% がそれぞれ沈着と分解の寄与と推定された 東京都, 神奈川県, 千葉県および栃木県での定常状態時の大気中濃度推定値と測定値の比較結果を表 Ⅴ9 に示す 1 確率密度関数 : 累積分布関数 F(x) が微分可能な場合, 以下の導関数を確率変数 X の確率密度関数という d f ( x) = F( x) dx 2 スピアマンの順位相関係数 :2 変数 X,Y の相関の強さを示す指標としてデータの値による順位を利用して定める相関係数 次式で求められる 2 6 ( R xi R yi ) R x, y = 1 2 n ( n 1) ここで,n はデータ数,R xi と R yi はデータの順位数値である 3 ラテン ハイパー キューブ法 : 確率分布を一様な確率の区間に分割し, 各区間の確率分布に従って各区間から値をサンプリングする方法 163

172 推定値 表 Ⅴ9 大気中 DEHP 濃度の推定値と測定値の比較 [ng/m 3 ] 都県名 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 東京都 神奈川県 千葉県 栃木県 測定値 1) 東京都 2) 神奈川県 3) 千葉県 ) 東京都環境局,2002 2) 神奈川県,2002; 横須賀市,2004; 川崎市,2004; 藤沢市,2004 3) 千葉県,2002; 千葉市, 測定は,2001 年度に, 東京都では都内の 15 ヶ所でそれぞれ年 4 回 ( 計 60 点 ), 神奈川県では県内の 10 ヶ所でそれぞれ年 2~4 回 ( 計 23 点 ), 千葉県では県内の 15 ヶ所でそれぞれ年 1 回 ( 計 15 点 ) 行われている これらのモニタリングデータには検出下限値未満の値が含まれるため, 第 Ⅳ 章 3 節に示したように, 報告値全てを区間データとして取り扱い, 濃度が対数正規分布に従うと仮定して, 幾何平均 1 (GM) と幾何標準偏差 2 (GSD) を導出し, 平均値,5,50 および 95 パーセンタイル 3 を求めた 測定値と比較の結果, 平均値ベースでの推定値は少し低めであった 測定数の少ない神奈川県と千葉県では, 測定値の平均が一部の高濃度測定値の影響を受けて高めになっている可能性も考えられたため,50 パーセンタイルで比較したところほぼ一致した しかし, まだ推定値は若干低く, 他の都県からの移流による DEHP の流入を考慮していないためと推測された また, 風速の変動性と水溶解度の不確実性による大気中 DEHP 濃度の変動の感度を解析した結果, 風速の分散寄与率が 99.9% で,0.1% の寄与率の水溶解度の不確実性は大気中濃度推定値には影響を与えないと判断された 3.2 土壌中での動態図 Ⅴ2 に DEHP の土壌中での動態に関与すると考えられる各プロセスを示す 1 幾何平均 :GM (geometric mean) 全データの相乗積の同次乗根 データを対数変換した後に算術平均を求め, 逆対数をとって求める 2 幾何標準偏差 :GSD (geometric standard deviation) データを対数変換した後に標準偏差を求め, その逆対数をとって求める 3 パーセンタイル : ある値 P α より小さな値をとる観測値の割合がα% となるとき, この値 P α をαパーセンタイルという n 個の観測値を小さい方から順に x 1,x 2,,x i,,x n としたとき,P α は次式で求められる i / n = α / 100, ( x i + x +1) / 2 P α = i 164

173 揮発 化学物質 巻上 DEP so 空気 気液平衡 水 吸着平衡 土壌バルクコンパートメント流出 溶脱 土壌粒子 ( ガス態 ) ( 溶存態 ) ( 吸着態 ) 分解 分解 分解 浸食 : 拡散移動 : 物理的移動 図 Ⅴ2 DEHP の土壌中での動態プロセス 以下, 各プロセスの概要について述べる 土壌中での分配土壌は空気, 水および土壌粒子で構成されている 化学物質の各土壌構成要素への分配は下記の式で計算できる f sa = K AW θ + φ + K OC K AW OC θ so ( 1 θ φ) DEN so f sw = K AW θ + φ + K OC φ OC so ( 1 θ φ) DEN so f ss = K AW K OC OC θ + φ + K so OC (1 θ φ) DEN OC so so (1 θ φ) DEN so ここで,f sa,f sw,f ss はそれぞれ, 空気, 水および粒子への化学物質の分配比である θ とφ はそれぞれ, 土壌の空隙率と水分含有率であり,K AW は気 / 液分配係数,K OC は有機炭素吸着定数である OC so は土壌粒子中有機炭素含有率,DEN so は土壌粒子密度 [g/cm 3 ] である 表 Ⅴ10 の土壌パラメータを用い, 各構成要素への DEHP の分配比を計算した結果,f sa =2 10 9,f sw =1 10 4,f ss =1.00 となり, ほぼ全量が土壌粒子に分配されることが明らかとなった 表 Ⅴ10 土壌パラメータ 記号 パラメータ 単位 値 θ φ OC so DEN so 土壌空隙率土壌水分含有率粒子中有機炭素含有率粒子密度 g/cm

174 3.2.2 揮発土壌中の化学物質の揮発に対する一次速度定数 (k vols [ 日 1 ]) は次式で計算できる k vols = a sa so 1/(1/ k + 1/ k ) /( DEP θ ) ここで,k a は大気側の質量移動係数 (120 m/ 日 ) で,k sa は土壌空気側の質量移動係数 (0.024 m/ 日 ) であり,DEP so は土壌の深さ (0.1 m) である k vols は 0.73 日 1 と算出されるが,f sa = であり,DEHP の実質的な土壌からの揮発による半減期は 日と非常に長く, 土壌中の DEHP の動態には重要でないと判断される 溶脱 1 2 と流出降水が土壌中の間隙を流れることに伴う溶脱および流出に対する一次速度定数 (k le および k r [ 日 1 ]) は次式で計算できる k le F /( DEP φ) = so k r = so R /( DEP φ) ここで,F は降水浸透量 [m/ 日 ],R は降水流出量 [m/ 日 ] であり, 降水量 (P)= 蒸発量 (E) + 浸透量 (F)+ 流出量 (R) の関係がある 年間降水量が 1,500 mm/ 年のとき, その各 1/4 量 (375 mm/ 年 ) ずつが浸透量と流出量 (F=R= m/ 日 ) とすれば,k le と k r はともに 日 1 となる しかし,f sw = であり,DEHP の実質的な土壌からの溶脱と流出による半減期は 日と非常に長く, 土壌中の DEHP の動態には重要でないと判断される 浸食浸食による化学物質の消失に対する一次速度定数 (k er [ 日 1 ]) は次式で計算できる k er ENRICH ERS /( DEP (1 θ φ)) = so ここで,ENRICH はエンリッチメント比 4,ERS は降水による土壌浸食速度で m/ 年 (ERS= m/ 日 ) である ENRICH を 3 とした場合,k er は 日 1 となる f ss =1.00 であるため, 浸食による DEHP の半減期は, 日となる 巻上 5 巻上による化学物質の消失に対する一次速度定数 (k rs [ 日 1 ]) は次式で計算できる 1 溶脱 : 降水が土壌中の空隙を鉛直方向に浸透するのに伴う土壌中の溶存態物質の輸送過程 2 流出 : 降水が地表傾斜面に沿って流れることに伴う土壌中の溶存態物質の水環境への移行 3 浸食 : 降水の水環境への流出に伴う土壌粒子の輸送過程 これにより土壌粒子に吸着された化学物質の水環境への移行を生じる 4 エンリッチメント比 : 浸食は, 比表面積が大きく有機炭素含有率も高い軽い粒子から先に起き, 物質濃度は残存粒子中より浸食される粒子中の方が高いため, この補正に使用される値, 通常 1~5 5 巻上 : 風による土壌粒子の大気への移行過程 また, 水環境中では水流や生物かく乱等による底質粒子の水相への移行過程 166

175 k rs RS /( DEP (1 θ φ)) = so ここで,RS は土壌巻上速度で mm/ 年 (RS= m/ 日 ) とすれば,k rs は 日 1 となる f ss =1.00 であるため, 巻上による DEHP の半減期は, 日となる 土壌中濃度土壌中における DEHP の動態プロセスとして, 上記のプロセスを考慮することにより, 土壌中における DEHP の物質収支は次式で表される dm s = I s ( kvols f sa + ( kle + kr ) f sw + ( ker + krs ) f ss + kdegs ) M s dt ここで,M s は土壌中の DEHP 量 [kg],i s は土壌への DEHP 流入速度 [kg/ 日 ] である また,f sa, f sw および f ss はそれぞれガス態, 溶存態および粒子吸着態の存在割合であり,k vols は揮発,k le と k r は溶脱と流出,k er は浸食,k rs は巻上,k degs は分解に対する一次速度定数 [ 日 1 ] である 土壌中の DEHP が全て大気からの沈着に起因するとして, 定常状態を仮定して, 土壌中での DEHP 動態を推定した 動態推定に際しては,DEHP の大気沈着量と土壌中での動態に及ぼす風速の変動性と水溶解度の不確実性の影響も評価するため, モンテカルロ シミュレーションを行った 風速と水溶解度には, 本章 項に示した確率密度関数を設定し, 各パラメータによる土壌中 DEHP 濃度の変動の感度を分散寄与率として解析した 東京都を対象に推定した結果, 定常状態時の土壌中からの DEHP 消失量 ( 平均値 ) の 94% は分解,5.6% が浸食の寄与と推定され, 溶脱, 流出, 巻上および揮発の寄与は小さいと推定された 東京都, 神奈川県, 千葉県および栃木県での定常状態時の土壌中 DEHP 濃度推定値と測定値の比較結果を表 Ⅴ11 に示す 表 Ⅴ11 土壌中 DEHP 濃度の推定値と測定値の比較 [μg/kgdry] 都県名 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 東京都 推定値 神奈川県 千葉県 栃木県 測定値 1) 千葉県 ) 千葉県,2002 測定は 2001 年に千葉県内の 10 ヶ所でそれぞれ年 1 回行われている モニタリングデータには検出下限値未満の値が含まれるため, 第 Ⅳ 章 3 節に示した方法により, 報告値全てを区間データとして取り扱い, 濃度が対数正規分布に従うと仮定して,GM と GSD を導出し, モンテカルロ シミュレーションにより平均値,5,50 および 95 パーセンタイルを求めた 測定値の平均は 2 地点の高い濃度の影響を受けているため, 測定値と推定値の平均の比較では 18 倍の違いがあったが,50 パーセンタイルの値の比較では 8 倍程度の違いであり, ほぼ土壌中濃度のオーダーは推定できたと思われるが, 推定値は測定値に比べて過小推定 167

176 であった 過小推定の原因は, 他の都県からの移流による DEHP の流入を考慮していないため, 大気中濃度が低めに推定され, 結果として沈着量が過小推定されたためと思われた また, 風速の変動性と水溶解度の不確実性による土壌中 DEHP 濃度の変動の感度を解析した結果, 風速の分散寄与率が 72.4% で, 水溶解度の寄与率が 27.6% であった このことから, 水溶解度の不確実性は風速の変動性に比べて土壌中濃度推定値の変動には大きな影響を与えないが, ガス態の湿性沈着速度や土壌中の空気, 水および粒子間の分配比に伝播され, 結果的に濃度推定値も若干の不確実さを伴うと判断された 3.3 水環境中での動態図 Ⅴ3 に DEHP の水環境中での動態に関与すると考えられる各プロセスを示す 揮発 化学物質 DEP w 水 水 吸着平衡 懸濁粒子 ( 溶存態 ) ( 吸着態 ) 分解 分解 拡散沈降拡散巻上 移流 DEP se 底質 間隙水 吸着平衡 底質粒子 ( 溶存態 ) ( 吸着態 ) 分解 分解 浸透堆積 図 Ⅴ3 DEHP の水環境中での動態プロセス 以下, 各プロセスの概要について述べる 水環境中での分配水環境は水相と底質相で構成され, さらに水相は水と懸濁粒子, 底質相は間隙水と底質粒子からなる 水相での化学物質の水と懸濁粒子への分配比 (f ww および f wss ) は下記の式で計算できる f = 1 ww 1 + K OC ss f wss K = 1 + K OC OC OC OC ss ss OC ss ss ss ここで,OC ss は懸濁粒子の有機炭素含有率,ss は水中の懸濁粒子濃度 [kg/l] である 底質相での化学物質の間隙水と底質粒子への分配比 (f sew および f ses ) は下記の式で計算で 168

177 きる f sew = φ se + K OC OC se φ se ( 1 φ ) DEN se se f ses = se K OC φ + K OC OC se OC (1 φ ) DEN se se se se (1 φ ) DEN se ここで, φ se は底質相の間隙率 1 であり,OC se は底質粒子の有機炭素含有率,DEN se は底質粒子密度 [g/cm 3 ] である 表 Ⅴ12 に示す水環境パラメータを用い,DEHP の分配比を計算した結果, 水相では f ww =0.92,f wss =0.08 で多くは溶存態として存在し, 底質相では f sew =8 10 5,f ses =1.00 でほぼ全量が底質粒子に分配されることが明らかとなった 表 Ⅴ12 水環境パラメータ 記号 パラメータ 単位 値 ss OC ss φ se OC se DEN se 水中懸濁粒子濃度懸濁粒子有機炭素含有率間隙率底質粒子有機炭素含有率底質粒子密度 kg/l g/cm 揮発水中からの揮発に対する一次速度定数 (k volw [ 日 1 ]) は次式で計算できる k = 1 /{1/ k + 1/( k K )}/ DEP volw l g AW w ここで,k l は液相質量移動係数 (0.72 m/ 日 ),k g は気相質量移動係数 (72 m/ 日 ) であり, DEP w は水深 [m] である DEP w を 1 m とした場合,k volw は 日 1 となるが,f ww =0.92 であるため,DEHP の実質的な揮発による半減期は 700 日となる 水相 / 底質相間の拡散交換水相から底質相およびその逆の溶存態物質の拡散交換に対する一次速度定数 (k wse および k sew [ 日 1 ]) は次式で計算できる k = 1 /(1/ k + 1/ k ) / DEP wse lw lse w k sew = 1/(1/ klw + 1/ klse ) /( DEPse φse ) 1 底質間隙率 : 底質相全体において間隙水の占める容積割合 169

178 ここで,k lw は水相側の質量移動係数 (0.72 m/ 日 ) で,k lse は底質相側の質量移動係数 ( m/ 日 ) であり,DEP se は底質相の深さ [m] である k wse は 日 1 と算出され,DEP se を 0.05 m とした場合,k sew は 0.29 日 1 となる f ww =0.92,f sew = であるため, 実質的には,DEHP の水相から底質相への k wse は 日 1, 底質相から水相への k sew は 日 1 となり, 水相から底質相への拡散による半減期は 110 日, 底質相から水相への拡散による半減期は 日となる 移流移流は水中の溶存態と粒子吸着態物質の輸送に関与し, その速度 (N advw [μg/ 日 ]) は次式で表わされる N = G C advw w w ここで,G w は水の流量 [L/ 日 ],C w は水中化学物質濃度 [μg/l] である 長さ 10 km, 幅 20 m, 水深 1 m の水相を想定すると, 流量 2 m 3 / 秒の場合の移流の一次速度定数は 0.86 日 1 となり, 半減期は 0.81 日と算出され, このような河川では DEHP の消失への移流の寄与が大きいと予想される 沈降と巻上水中懸濁粒子の底質相への沈降による化学物質の移動に対する一次速度定数 (k stl [ 日 1 ]) は次式で計算できる k = R / DEP stl stl w ここで,R stl は懸濁粒子の沈降速度で 0.5 m/ 日と仮定すると,k stl は0.5 日 1 となる f wss =0.08 であるため, 沈降による水中 DEHP の半減期は 18 日となる 底質粒子の水相への巻上による化学物質の移動に対する一次速度定数 (k rsw [ 日 1 ]) は次式で計算できる k rsw = R rs /( DEPse (1 φse )) ここで,R rs は底質粒子の巻上速度で m/ 日とすれば,k rsw は 日 1 となる f ses =1.00 であるため, 巻上による底質中 DEHP の半減期は,3,500 日となる 水環境中濃度水環境中における DEHP の動態プロセスとして, 上記のプロセスを考慮することにより, 水環境中における DEHP の水相と底質相での物質収支は次式で表される dm w = I w (( kvolw + kwse) fww + kstl fwss + kadvw + kdegw) M w + ksew M se dt 170

179 dm se = k wse M w ( k sew f sew + krsw f ses + kdegse ) M se dt ここで,M w,m se は水相および底質相中の DEHP 量 [kg],i w は水環境への DEHP 流入速度 [kg/ 日 ] である また f ww,f ws および f sew,f ses はそれぞれ水相および底質相での溶存態と粒子吸着態の存在割合であり,k volw は揮発,k wse,k sew はそれぞれ底質相から水相, 水相から底質相への拡散,k stl は懸濁粒子の沈降,k rsw は底質粒子の巻上,k advw は移流,k degw,k degse はそれぞれ溶存態と粒子吸着態の分解に対する一次速度定数 [ 日 1 ] である 河川中での DEHP の動態は, 流量や水深等に大きく依存し, これらの特性は河川毎に大きく異なることから, ここでは仮想の水環境としての河川における挙動を示すに留め, 第 Ⅵ 章で実環境の例として, 多摩川への DEHP 排出量と水環境中濃度分布を示すこととする 動態推定に際しては, 水環境中での動態に及ぼす水溶解度の不確実性の影響も評価するため, モンテカルロ シミュレーションを行った 水溶解度には, 本章 項に示した確率密度関数を設定し, 水溶解度による水環境中 DEHP 濃度の変動の感度を分散寄与率として解析した 前述の長さ 10 km, 幅 20 m, 水深 1 m, 底質相の深さ 0.05 m の仮想的な水環境を対象に推定した結果, 定常状態時には水相中 DEHP 量の 105 倍が底質相に存在する また, 水相からの消失量 ( 平均値 ) の 90% は移流,4.8% と 4.0% がそれぞれ分解と沈降の寄与であり, 揮発の寄与は小さく, 底質相からの消失量の 48% が分解,47% が巻上の寄与と推定された この仮想的な水環境の水相に 1 g/ 日で DEHP が流入した場合, 表 Ⅴ13 に示すように, 定常状態濃度 ( 平均値 ) は水相中で μg/l, 底質相中で 14μg/kgdry と計算される また水溶解度の不確実性は濃度推定にほとんど影響を与えないと判断された 表 Ⅴ13 仮想的な水環境における DEHP 濃度推定値 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 水相中濃度 [μg/l] 底質相中濃度 [μg/kgdry]

180 4. 摂食媒体への移行環境媒体中からヒトが摂食する農産物, 畜産物および水産物への DEHP の移行の程度を推定することにより, 環境媒体から摂食媒体への主要な DEHP の輸送経路が明確化できる 4.1 植物植物の地上部 ( 葉, 茎および実 ) での DEHP 濃度は, 大気中に存在するガス態と粒子吸着態物質の乾性および湿性沈着と, 根から吸収された土壌水中溶存態物質の蒸散流による地上部への輸送を考慮した植物モデルで推定できる (Trapp と McFarlane,1995; Trapp と Matthies,1998) このモデルは EUSES 等に粒子吸着態物質の取り込みと消失の部分を除いた形で採用されている DEHP は蒸気圧が非常に低く, 大気中では粒子吸着態としての存在率も高く無視できないため, 粒子吸着態物質の沈着を考慮する必要がある このモデルでは, 植物地上部での化学物質濃度 (C leaf [g/m 3 ]) を, 大気中のガス態と土壌中の溶存態に由来する濃度に, 大気中の粒子吸着態に由来する濃度を加えて, 次式で推計される Cleaf = α / β + α / β g g p p ここで,αはソース項( 植物への DEHP の全取り込み項 [g/m 3 / 秒 ]),β はシンク項 ( 植物からの DEHP の全消失項 [ 秒 1 ]) である α g は大気中ガス態と土壌中溶存態のソース項,α p は大気中粒子吸着態のソース項である β g とβ p はそれぞれ, ガス態と溶存態のシンク項と粒子吸着態のシンク項である 右辺第 1 項はガス態および溶存態由来の植物地上部中濃度を, 第 2 項は粒子吸着態由来の植物地上部中濃度を示している ソース項は次式で計算される Ca A ( g Vgw ) (1 f aer ) Csw TSCF Q α g = + Vl Vl Ca A (0.5 V pl V pw ) f aer α p = Vl ここで,C a と C sw はそれぞれ, 化学物質の大気中濃度 [g/m 3 ] と土壌水中濃度 [g/m 3 ] であり, A は葉の表面積 [m 2 ],Vl は植物地上部の容積 [m 3 ] である また,g はコンダクタンス [m/ 秒 ], V gw はガス態の湿性沈着速度 [m/ 秒 ],f aer は粒子吸着態の存在比,TSCF は化学物質の蒸散流濃縮倍率,Q は蒸散水量 [m 3 / 秒 ] である さらに,V pl と V pw はそれぞれ, 粒子吸着態の乾性と湿性の沈着速度 [m/ 秒 ] である α g を求める式の右辺第 1 項と第 2 項は, 大気からの吸収量と根から取り込まれ地上部に移行する量を示している 一方, シンク項 β g とβ p は次式で計算される A g β g = + λe + λg K Vl p LA β = λ + λ W G 172

181 ここで,K LA は化学物質の葉 / 大気分配係数 1 で,β g を求める式の右辺第 1 項は植物から大気への揮発に対する一次速度定数 [ 秒 1 ] である また,λ E,λ G およびλ W は代謝, 植物成長に伴う希釈および風化に伴う消失に対する一次速度定数 [ 秒 1 ] である 植物モデルによる推計に際しては, 表 Ⅴ14 に示す各パラメータ値を用い,DEHP の植物からの揮発と植物成長に伴う希釈および風化を消失過程として考慮した 本章 3.1 項と 3.2 項で算出した大気中および土壌中の DEHP 濃度を用い, 植物の地上部での DEHP 濃度を推計した 推計に際しては,DEHP の植物への吸収および沈着に及ぼす風速の変動性と, 水溶解度の不確実性の影響も評価するため, モンテカルロ シミュレーションを行った 風速と水溶解度には, 本章 項に示した確率密度関数を設定し, 各パラメータによる植物地上部中 DEHP 濃度の変動の感度を分散寄与率として解析した 表 Ⅴ14 に示す温度, 植物地上部密度および粒子乾性沈着速度を除く各パラメータ値は,Trapp と Matthies(1998) が牧草への 2,3,7,8 四塩素化ジベンゾpジオキシン (TCDD) の蓄積を推計するのに用いた値である 彼らの報告によれば, 牧草中の TCDD 濃度をモデルは再現できたとしている (Trapp と Matthies,1998) 表 Ⅴ14 植物中の動態推定に用いたパラメータ パラメータ 単位 数値 m 3 / 日 m 2 m 3 1 日 温度相対湿度蒸散水量植物地上部表面積植物地上部体積指数増殖期の成長速度水分含有率脂質含有率植物の地上部密度水の密度オクタノールの密度粒子雨洗比粒子乾性沈着速度粒子風化速度 kg/m 3 kg/m 3 kg/m 3 m/ 秒 1 日 , 東京都を対象に推定した結果, 定常状態時の植物中への DEHP の移行量 ( 平均値 ) の 49% は粒子吸着態の沈着,48% はガス態の吸収,3% が土壌からの吸収の寄与であると推定された また, 植物中からの DEHP 消失量の 54% は希釈,46% が風化の寄与と推定され, 揮発の寄与は小さいと推定された 東京都および栃木県について推計された濃度をⅤ15 に示す 1 葉 / 大気分配係数 : 植物の葉と大気中において化学物質が両相へ分配される度合いを表す数値 葉中濃度を大気中濃度で除した値 173

182 表 Ⅴ15 植物地上部での DEHP 濃度推計値 [μg/g] 都県名 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 東京都 栃木県 風速の変動性と水溶解度の不確実性による植物地上部中 DEHP 濃度の変動の感度を解析した結果, 風速の分散寄与率が 65.2% で, 水溶解度の寄与率が 34.8% であった このことから水溶解度の不確実性は, 風速の変動性に比べて植物地上部中濃度推定値の変動には大きな影響を与えないが, 濃度推定値は若干の不確実さを伴うと判断された 土壌水中の溶存態物質の取り込みによる植物根中濃度 (C root [g/m 3 ]) は次式で推計される C = RCF C root w sw ここで,C sw は土壌水中濃度 [g/m 3 ] である RCF w は溶存態物質の根への濃縮係数で, オクタノール / 水分配係数 (log K OW ) を用い次式で算出される (Briggs ら,1982) log( RCF w 0.82) = 0.77 log K OW 1.52 DEHP の log K OW (7.6) は上記の式の適用範囲外であるため, 適用範囲の最大値 log K OW =4.3 を用い,RCF w を算出した 土壌中濃度を 10μg/kg とした場合, 土壌水中濃度 (C sw ) は g/ m 3 であり, 植物根中濃度 (C root ) は g/ m 3 と推定され, 植物根密度を 1,000 kg/m 3 とすると,0.069μg/kg となる 4.2 肉, 乳製品家畜が消費する飼料中の濃度から牛肉と乳製品中の化学物質濃度を推計する方法として, コンパートメントモデルによる推計法と生物移行係数 1 (BTF) を用いる推計法がある コンパートメントモデルの場合は, 最も簡単な 1 コンパートメントモデルであっても, 家畜の体内での化学物質の消失に関する一次速度定数が必要となる DEHP に対するこの速度定数を導出することができる体内半減期については, 実験動物であるラット, マウス, サルに加え, ヒトのデータも報告されているが, 家畜である牛に関する報告はない しかし, ブタについては DEHP を混餌経口投与時の分布と残留についての報告がある Jarosová ら (1999) は, 子ブタ (33~50 kg) に 5 g/ 頭 / 日 ( 約 125 mg/kg/ 日 ) で,14 日間 DEHP を投与した 投与終了時に, 体重と組織 / 器官重量は投与による影響を受けなかった 各組織 / 器官での最高 DEHP レベルは皮下 ( 投与群 / 対照群 :19/0.42 mg/kg 脂肪 ), 腎脂肪 (25/0.37 mg/kg 脂肪 ), 筋肉 (25/2.4 mg/kg 脂肪 ), 心臓 (12/<0.2 mg/kg 脂肪 ) および肺 (13/0.25 mg/ kg 脂肪 ) であった 腎臓中の DEHP 濃度 (2/<0.2 mg/kg 脂肪 ) は低い MEHP は肝臓, 全血および尿中で増加した 投与終了後 14 日目に DEHP レベルは皮下と腎臓の脂肪, 筋肉, 心臓および肺で約 50% に減少した 肝臓, 全血および尿中の MEHP は対照レ 1 生物移行係数 :BTF(biotransfer factor) 化学物質が生物体内に移行する度合いを示す係数 生物中濃度を化学物質摂取量で除することにより得られる 174

183 ベルに戻った 28 日目には DEHP は腎臓の脂肪と肺を除く全ての器官で対照レベルに減少した これらのデータはブタの体内で DEHP は投与終了後もかなりの時間残留することを示している Jarosová らはさらに, 対照群の組織に DEHP が存在した理由についても検討し, ブタの飼料 1 kg 当たり約 0.4 mg の DEHP が存在することを確認した 40 kg のブタが毎日 2 kg の飼料を消費すると,DEHP の一日摂取量は約 0.02 mg/kg となる 彼らは対照群の一日摂取量 (0.8 mg) と全筋肉中の DEHP 残留量 (0.10 mg/kg) の比較から, 生物移行係数 (BTF: 肉中濃度 [mg/kg]/ 摂取量 [mg/ 日 ]) を 日 /kg と導出した 牛について, コンパートメントモデルを適用するだけのデータがないことから, 本評価書では, 生物移行係数による推算法を用いる 牛肉と乳製品への生物移行係数の推算方法については,Travis と Arms(1988) が提案した以下の推算式が適用できる log BTF = log meat K OW log BTF = log milk K OW ここで,BTF meat と BTF milk はそれぞれ, 牛肉と乳製品との化学物質の生物移行係数 [ 日 /kg] であり,log K OW は化学物質のオクタノール / 水分配係数 ( 対数値 ) である DEHP の log K OW が 7.6 であるので,BTF meat と BTF milk はそれぞれ 日 /kg と 日 /kg と推計された 牛について推計された BTF meat (0.079 日 /kg) は, ブタで測定された BTF(0.125 日 /kg) に比べて若干低いため, 以後の計算には, 実測値であるブタの 日 /kg を牛肉中濃度の計算にも使用し, 乳製品に対する BTF には上記の式で推計された 日 /kg を用いた 家畜から生産される肉および乳製品中の化学物質濃度 (C meat および C milk [g/kg]) は下記の式で推計できる C meat = BTF C IC ) meat ( i i C milk = BTF C IC ) milk ( i i ここで,C i は家畜の暴露媒体中濃度 [ 大気 :g/m 3, 土壌 :g/kg, 牧草 :g/kg] で,IC i は家畜の暴露媒体摂取速度 [ 大気 :122 m 3 / 日, 土壌 :0.41 kg/ 日, 牧草 :8 kg/ 日 ( 肉用牛 ),16 kg/ 日 ( 乳用牛 )( 牧草は乾燥重量での値, 湿重量への換算係数 :4)] である 関東地方において肉用牛, 乳用牛の飼育頭数の最も多い栃木県での,2001 年における大気, 土壌および植物中 DEHP 濃度を用い, 肉および乳製品中 DEHP 濃度を推定した なお, 牧草と飼料については, 輸入を考慮しなければならないが, ここでは全て栃木県で生産した牧草で飼育しているものとして, 牧草中濃度を本章 4.1 項に示した方法で計算した 推定に際しては, 風速の変動性と水溶解度の不確実性の影響も評価するため, モンテカルロ シミュレーションを行った 風速と水溶解度には, 本章 項に示した確率密度関数を設定し, 各パラメータによる肉および乳製品中 DEHP 濃度の変動の感度を分散寄与率として解析した 175

184 家畜中での動態を推定した結果, 畜産物中への DEHP の移行量 ( 平均値 ) の 99.9% 以上が飼料からの寄与であり, 大気および土壌からの摂取の寄与は小さいと推定された 肉および乳製品中 DEHP 濃度の推計結果を表 Ⅴ16 に示す 表 Ⅴ16 肉および乳製品中 DEHP 濃度推計値 [μg/g] 平均値 5 ハ ーセンタイル 50 ハ ーセンタイル 95 ハ ーセンタイル 肉中濃度乳製品中濃度 風速の変動性と水溶解度の不確実性による肉および乳製品中 DEHP 濃度の変動の感度を解析した結果, 風速の分散寄与率が 65.6% で, 水溶解度の寄与率が 34.4% であった このことから水溶解度の不確実性は, 風速の変動性に比べて肉および乳製品中濃度推定値の変動には大きな影響を与えないが, 濃度推定値は若干の不確実さを伴うと判断された 4.3 魚介類魚中の化学物質濃度 (C fish [μg/kg]) は次式で推計できる C = BCF C f fish fish ここで,C aqua [μg/l] は魚が生息する水環境の水中 DEHP 濃度で,BCF fish [L/kg] は生物濃縮倍率 1,f ww は水相での溶存態存在比である BCF fish については多くの報告がある BCF fish は, 図 Ⅴ4 に示すように試験飼育水中濃度に依存し,5μg/L 程度を超えるあたりから, 濃度の上昇に伴い BCF fish 値が減少する傾向があり, その理由として,EU 評価書暫定版 (EU,2001) では, 飼育水中濃度が高くなるにつれ, 代謝がより効率的に行われること,5μg/L 以上になると DEHP のコロイド化が進み, バイオアベイラビリティが低下し, 魚体内に取り込まれにくくなることをあげている したがって, 低濃度域で測定された濃縮倍率を暴露評価に使用する必要があり, 低飼育水中濃度域 (1.9~4.6μg/L) での DEHP の BCF fish (582,616 および 615 L/kg) の平均値 604 L/kg を使用することとした aqua ww 1 生物濃縮倍率 :BCF(bioconcentration factor) 生物濃縮係数ともいう 化学物質が生物に濃縮される度合いを示す分配係数 水生生物の場合, 平衡状態にある生物中の化学物質濃度を水中化学物質濃度で除した値 176

185 1000 生物濃縮倍率 [L/Kg] 年度モニタリンク テ ータ ( 海域 ) 飼育水中濃度 [µg/l] Mayer Schulz ら化審法 Mayer(1976) 累乗 (Mayer) Scholz ら (1998) 通商産業省 (1992) 図 Ⅴ4 魚への生物濃縮倍率と飼育水中濃度との関係 また, 生物濃縮倍率は魚のエラからの溶存態物質の取り込みを主に対象としているため, 水相での溶存態存在比 (f ww ) による補正も必要である 海域における懸濁粒子濃度を 10 mg/l と仮定した場合,f ww は 0.92 と推計される 第 Ⅳ 章 3 節に示したように,2001 年のモニタリング調査において, 海域の水中 DEHP 濃度の 50 および 95 パーセンタイルはそれぞれ,0.03 および 0.80μg/L である したがって, 海域に生息する魚類中 DEHP 濃度の 50 および 95 パーセンタイルは 17 および 440μg/kg 程度と考えられる 海域の魚類中 DEHP のモニタリング調査は数多く行われてはいないが, 多くが検出下限値 (25μg/kg) 未満で,2001 年における最大値は 180μg/kg( 参考資料 * A 表 Ⅳ26) であり, 妥当な推計結果と判断される * 参考資料は, から閲覧することができる 177

186 5. 環境動態と暴露経路に関するまとめ簡易型のコンパートメントモデルを用い, 東京都を想定した大気と, ある仮想の水環境に DEHP が一定量流入した場合の動態予測を行った結果を図 Ⅴ5 にまとめた コンパートメントモデルにより,DEHP の環境中での主要な動態と暴露媒体への主要な移行経路を推定した結果, 次のことが明らかとなった 大気中に排出される DEHP は, 一般環境の大気と土壌中の DEHP 濃度を決定する 大気中の DEHP は植物に移行し, さらに植物を経由して家畜にも移行すると考えられ, この一連の経路はヒトへの重要な暴露経路と考えられ, 暴露評価に際して詳細に解析する必要がある 一方, 土壌中の DEHP は植物の地上部 ( 葉, 茎および実 ) への取り込みには寄与せず, 根部への移行も大きくないと考えられる また, 土壌中での分解が遅いため, 降雨時に浸食により土壌中 DEHP の一部が河川に流入すると考えられる 河川に流入した DEHP は主に移流により海域に輸送されると考えられ, 河川域における水生生物への暴露濃度を推定する際には, 流量の変動を考慮できる数理モデルの適用が望ましい また, ヒトの魚介類経由の DEHP 摂取を推定する際には, 海域における魚介類中 DEHP 濃度を推定することが必要と考えられる 178

187 環境負荷 9,720 kg/ 年 植物地上部 (0.61μg/g) 沈着 11 mg/ 年 /kg 希釈 7.8 mg/ 年 /kg 風化 6.7 mg/ 年 /kg 揮発 mg/ 年 /kg 大気吸入 kg/ 年 / 頭 分解 240 kg/ 年大気 0.94 kg (19 ng/m 3 ) 肉 (2.5μg/g) 乳製品 (0.99μg/g) 沈着 500 kg/ 年 移流 9,000 kg/ 年 牧草摂食乳牛 :39 kg/ 年 / 頭肉牛 :20 kg/ 年 / 頭取り込み 0.32 mg/ 年 /kg 分解 470 kg/ 年 土壌摂食 kg/ 年 / 頭 土壌 370 kg (49μg/kgdry) 揮発 kg/ 年 巻上げ 0.32 kg/ 年 浸食 28 kg/ 年 流出 0.58 kg/ 年 溶脱 0.58 kg/ 年 10 km 10 km 179 環境負荷 365 g/ 年 (1 g/ 日 ) 揮発 0.69 g/ 年 分解 18 g/ 年 粒子沈降 14.9 g/ 年 移流水 340 g/ 年 1.1 g (0.0054g/L) 拡散 2.58 g/ 年 巻上 8.2 g/ 年 拡散 0.89 g/ 年 分解底質 8.4 g/ 年 110 g (14μg/kgdry) 10 km 1 m 0.05 m 20 m 図 Ⅴ5 DEHP の動態予測 0.10 m 500 m

188 第 Ⅵ 章暴露解析 1. はじめに第 Ⅳ 章に示したように, 既存のモニタリング調査結果から, わが国の一般住民は主に食事経由で DEHP を摂取していると考えられる しかし, これらの既存調査結果に基づく暴露解析からは, 環境に排出された後,DEHP がどのような道筋を経て, ヒトに到達するのかは不明であり, さらに, どのような食品群からの摂取が全摂取量に寄与しているかも不明である 化学物質のリスクを適切に管理し, 必要に応じてリスクを低減するための排出源対策を実施するためには, 主要な発生源からヒトや環境中の生物に至るまでの化学物質の流れを定量化し, 排出削減対策がリスクの低減に及ぼす効果を定量的に評価することが求められる 第 Ⅲ 章に示したように,DEHP は塩ビ製品を製造する事業所から大気中に排出されるだけでなく, 使用中の軟質塩ビ製品からも大気中に排出される 第 Ⅴ 章に示したように, 大気中に排出された DEHP は大気中を輸送されながら, 乾性および湿性の沈着により一部は農作物に移行し, さらに家畜にも移行すると考えられ, 最終的にヒトが農作物や畜産物を消費することにより DEHP を摂取していると考えられる そこで, 本章では, 大気中濃度と農作物, 畜産物の生産 出荷量の空間分布を考慮し, 現実的な農作物および畜産物経由の DEHP 摂取量 1 を数理モデルにより推計した また, 第 Ⅳ 章に示した水質モニタリングデータ ( 河川, 湖沼および海域 ) から水産物経由の摂取量も推計した なお, 摂取量推計の対象とした地域は, わが国最大の消費地である京浜地区としたが, 全国で生産された農作物や畜産物がこの地域に出荷されていることから, 大気中 DEHP 濃度の推計は全国域で行い, 各生産地の農作物や畜産物中の濃度を推計した 一方, 河川に生息する水生生物に対するリスクを低減するためには, 河川における化学物質濃度を低減しなければならない そのためには, 当該化学物質の発生源, 発生源から河川への流入経路および流入量を把握することが重要である そして, 費用対効果に優れた対策を施すためには, 対象河川における高濃度区域, 濃度の季節変動, 対策による河川中濃度とリスクの低減の程度等を定量的に検討することも重要である そこで, 河川における DEHP の濃度分布推定の事例として, わが国の代表的な河川の一つである多摩川を対象とし, いくつかの DEHP の負荷源から河川に至る流れとそれらの寄与率を求めた 多摩川を DEHP の濃度分布推計対象とした理由は, モニタリングデータが豊富にあること, 河川環境に関する研究成果が多く存在すること, 集水域の人口データと工業データがきちんと整備されていること等に基づく 1 本評価書では, ヒトの体重当たりの平均一日摂取量を単に摂取量 [μgdehp/kg 体重 / 日 ] として記載する これに該当しない場合は, 単位を付記する等, 区別して記載する 180

189 2. 大気への DEHP 排出量分布の推計 km 5 km メッシュ別 DEHP 排出量の推計方法第 Ⅲ 章 3 節に示した 2001 年度の PRTR 制度 1 の集計および推計データである届出対象事業者からの届出排出量 ( 図 Ⅲ4) と届出事業を営む事業者からの届出外排出量推計値 ( 図 Ⅲ 9) に加え, 第 Ⅲ 章 4 節で推計した農ビ, 壁紙 建材およびその他の使用中の塩ビ製品からの大気中への排出量推計値を基に, 北海道, 東北, 関東, 北陸, 中部, 東海, 近畿, 中国, 四国, 九州および沖縄の 11 地方別に AISTADMER 2 Version1.0( 以下,ADMER とする ) ( 産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター,2003) を用いて,5 km 5 km メッシュ毎の日平均大気排出量を推計した なお,ADMER の 5 km 5 km メッシュとは三次メッシュ 3 の 5 倍に近似的に対応したものである 5 km 5 km メッシュ別排出量の推計方法について図 Ⅵ1 に示す 届出対象事業者からの届出排出量は事業所の位置情報に基づいて, 該当するメッシュに当てはめた 対象事業を営む事業者からの届出外排出量推計値は, 業種別の全国排出量推計値を製造業種については工業統計メッシュデータの業種別出荷額データ等によりメッシュに割り振り, 非製造業種については事業所 企業統計調査の業種別従業者総数データによりメッシュに割り振った 農ビはほとんどが園芸 蔬菜用に使用される ( 塩ビ工業 環境協会,2001) ため, 都道府県別の農ビからの DEHP 大気排出量は,ADMER に内蔵された国土数値情報土地利用メッシュデータの各都道府県の土地利用区分面積 ( 水田以外の農用地 ) で 5 km 5 km メッシュに割り振った また, 都道府県別の壁紙 建材からの DEHP 大気排出量およびその他の塩ビ製品からの DEHP 大気排出量は, 国勢調査に関する地域メッシュ統計の世帯数データ ( 総務省統計局,2002) で 5 km 5 km メッシュに割り振った 最後に 5 km 5 km メッシュ別の届出対象事業者からの届出排出量, 製造業種および非製造業種の届出外排出量推計値および農ビ, 壁紙 建材およびその他の塩ビ製品からの排出量を合計し, 大気へのメッシュ別の DEHP 排出量とした なお,PRTR 推計データで塗料に係る推計排出量 (14 トン ) については, 対象業種を営む事業者からの排出量推計値 (1,166 トン ) と比べるとわずかであったので, 上記のメッシュ別への排出量の割り振りの際には考慮しなかった 図 Ⅵ1 に示したスキームに従って,ADMER においてデフォルトで設定されている 11 地方別 ( 北海道, 東北, 関東, 北陸, 中部, 東海, 近畿, 中国, 四国, 九州および沖縄 ) に 5 km 1 PRTR(Pollutant Release and Transfer Register) 制度 : 化学物質排出移動量届出制度 化学物質が, どのような発生源から, どれくらい環境中に排出されたか, あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかのデータを把握 集計 公表する仕組み 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律 ( 化学物質排出把握管理促進法, 化管法 ) で制度化 2 AISTADMER(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology Atmospheric Dispersion Model for Exposure and Risk assessment): 産総研 曝露 リスク評価大気拡散モデル 化学物質の大気環境濃度推定と暴露評価を行うコンピュータシステムで, 気象データの作成 確認, 化学物質排出量データの作成 確認等の機能を装備 3 三次メッシュ : 国土数値情報として, 全国を客観的に一定幅の緯度 経度で疑似長方形の区域に区切って統計データが整理される 最も大きな区切りが一次メッシュであり, それを順次, 細分して二次, 三次メッシュが作られ, 三次メッシュが約 1 km 四方となる 181

190 5 km メッシュに割り振った DEHP の大気排出量を表 Ⅵ1 に示す 表 Ⅵ1 に示すように, ADMER で推計された地方別の大気中への DEHP 排出量の割合は, 関東 (24.4%), 東海 (16.1%), 近畿 (13.7%) で高い値となっている なお, これらの数値は,ADMER でデフォルトとして設定されている地方別の計算範囲で集計した値であるため, 第 Ⅲ 章 ( 表 Ⅲ25) で示した大気中への排出量の値とは若干異なる 届出排出量 業種別の全国排出量推計値農ビ由来都道府県別排出量 業種別の全国排出量推計値 ( 製造業 ) 業種別の全国排出量推計値 ( 非製造業 ) 工業統計メッシュデータ業種別出荷額データで割り振り事業所 企業統計調査業種別従業者総数データで割り振り土地利用区分面積 ( 水田以外の農用地 ) で割り振り 5 km 5 km メッシュ別排出量 壁紙 建材由来都道府県別排出量その他の製品由来都道府県別排出量 国勢調査に関する地域メッシュ統計世帯数データで割り振り 図 Ⅵ1 5 km 5 km メッシュ別 DEHP 排出量の推計方法 表 Ⅵ1 ADMER で用いた地方別の大気中への DEHP 排出量 [ トン / 年 ] 地方 届出対象 届出壁紙 建材他の製品割合農ビ由来合計対象外由来由来 [%] 北海道 東北 関東 北陸 中部 東海 近畿 中国 四国 九州 沖縄 合計 684 1, ,

191 2.2 メッシュ別大気排出量の推計結果本章 2.1 項で示した推計方法に従って,ADMER で設定されている地方別に 5 km 5 km メッシュに割り振った結果, 大気中への DEHP 日平均排出量の多かった地方 ( 表 Ⅵ1 参照 ) の大気排出量の分布図を, 図 Ⅵ2( 関東 ), 図 Ⅵ3( 東海 ) および図 Ⅵ4( 近畿 ) に示す グリッド排出量 ( フタル酸 ) 時間帯 : 日平均 "DEHPdata_kanto" 計算範囲情報北緯 北緯 東経 東経 メッシュ数 凡例 g/sec E E E E E E E E E E E E+00 図 Ⅵ2 関東地方における 5 km 5 km メッシュ別 DEHP 大気排出量の分布 183

192 グリッド排出量 ( フタル酸 ) 時間帯 : 日平均 "DEHPdata_tokai" 計算範囲情報北緯 北緯 東経 東経 メッシュ数 凡例 g/sec E E E E E E E E E E E E+00 図 Ⅵ3 東海地方における 5 km 5 km メッシュ別 DEHP 大気排出量の分布 グリッド排出量 ( フタル酸 ) 時間帯 : 日平均 "DEHPdatakinki" 計算範囲情報北緯 北緯 東経 東経 メッシュ数 凡例 g/sec E E E E E E E E E E E E+00 図 Ⅵ4 近畿地方における 5 km 5 km メッシュ別 DEHP 大気排出量の分布 184

193 3.ADMER による大気中 DEHP 濃度分布の推計大気中濃度分布推計モデルの ADMER を使用し, 本章 2 節で推計した 5 km 5 km メッシュ別の DEHP 大気排出量から,ADMER で設定されている地方別に DEHP の大気中濃度分布を推計した なお,ADMER は, 関東地方等の地域スケールでわが国全体の大気中化学物質濃度の時空間分布を,5 km 5 km の空間分解能と日平均および六つの時間帯 (0~4 時,4~8 時,8 ~12 時,12~16 時,16~20 時および 20~24 時 ) での月平均値や年平均値を推定するモデルである 3.1 計算パラメータ ADMER による計算に用いた DEHP に特異的なパラメータ値を表 Ⅵ2 に示す 分解速度定数については第 Ⅴ 章の 2.3 節に示した値を用いた また, 洗浄比および乾性沈着速度については以下の数式を用いて計算した 洗浄比 =W Cv (1f aer )+W Cp f aer 乾性沈着速度 [m/ 秒 ]=DRG (1f aer )+DRP f aer ここで,W Cv はガス態の捕集率であり,W Cp は粒子吸着態の捕集率である f aer は大気中の浮遊粒子への吸着態存在率である DRG および DRP[m/ 秒 ] はガス態および粒子吸着態の地表面への降下速度である 表 Ⅵ2 ADMER モデルの計算パラメータの値 パラメータ 値 分解速度定数 [ 秒 1 ] 洗浄比 乾性沈着速度 [m/ 秒 ] 年を対象に当該年度の気象データを用いてシミュレーションを行った 3.2 計算結果および分布図 11 地方別の 5 km 5 km メッシュ毎の大気中濃度 ( 日平均濃度の年平均値 ) の推計結果を表 Ⅵ3 に示す 関東地方, 東海地方および近畿地方で平均大気中濃度が高い 185

194 表 Ⅵ3 地方別の 5 km 5 km メッシュ大気中濃度の推計結果 [ng/m 3 ] 地方 最小 最大 平均 幾何平均 50パーセン 95パーセンタイルタイル 北海道 東北 関東 北陸 中部 東海 近畿 中国 四国 九州 沖縄 < 推計された 5 km 5 km メッシュ毎の大気中 DEHP 濃度 ( 日平均濃度の年平均値 ) の分布図のうち, 本章 2.2 項で分布図を示した関東 ( 図 Ⅵ5), 東海 ( 図 Ⅵ6) および近畿 ( 図 Ⅵ 7) を示す 大気中濃度 ( フタル酸 ) 2000 年 1 月 ~2000 年 12 月の平均時間帯 : "DEHPdata_kanto" 日平均 計算範囲情報北緯 北緯 東経 東経 メッシュ数 凡例 g/m^ E E E E E E E E E E E E+00 図 Ⅵ5 関東地方における大気中 DEHP 濃度分布 (2000 年 1 月 ~12 月の平均 ) 186

195 大気中濃度 ( フタル酸 ) 2000 年 1 月 ~2000 年 12 月の平均時間帯 : "DEHPdata_tokai" 日平均 計算範囲情報北緯 北緯 東経 東経 メッシュ数 凡例 g/m^ E E E E E E E E E E E E+00 図 Ⅵ6 東海地方における大気中 DEHP 濃度分布 (2000 年 1 月 ~12 月の平均 ) 大気中濃度 ( フタル酸 ) 2000 年 1 月 ~2000 年 12 月の平均時間帯 : "DEHPdata_kinki" 日平均 計算範囲情報北緯 北緯 東経 東経 メッシュ数 凡例 g/m^ E E E E E E E E E E E E+00 図 Ⅵ7 近畿地方における大気中 DEHP 濃度分布 (2000 年 1 月 ~12 月の平均 ) 187

196 3.3 大気中濃度推計の妥当性の検討 DEHP は大気汚染防止法 1 の有害大気汚染物質 2 の大気環境モニタリング対象物質ではないため, 報告されている大気中濃度はほとんどが年 1 回程度の測定である このため,ADMER で推計された日平均濃度の年平均値と比較可能なデータではない 唯一, 東京都において年 4 回の測定が行われているので ( 東京都環境局,2002), この測定値の平均値を年平均値とみなして,ADMER による推計濃度と比較し,DEHP の大気中濃度推計の妥当性について検討した なお,ADMER については, 他の化学物質において妥当な濃度推計を行うことが可能であると確認されている ( 東野ら,2003) 東京都における測定結果を表 Ⅵ4 に示す 表 Ⅵ4 東京都内における 2001 年度測定値と ADMER 推計値の比較 DEHP 濃度 [ng/m 3 ] 測定局 緯度 経度 測定日 5/29 8/28 11/20 2/20 平均 ADMER ~30 ~29 ~21 ~21 港区白金局 ND 1) 国設東京 ( 新宿 ) 局 ND 1) 大田区東糀谷局 ND 1) 世田谷区世田谷局 ND 1) 板橋区氷川局 ND 1) 練馬区石神井台局 ND 1) 足立区西新井局 ND 1) 江戸川区春江町局 小金井市本町局 ND 1) 東大和市奈良橋局 ND 1) 西多摩郡檜原局 ND 1) ND 2) 亀戸局 八幡山局 ND 1) 片倉局 ND 3) 元八王子局 ND 3) ND: 定量下限値未満 1) 定量下限 29 ng/m 3 の 1/2 の 14.5 ng/m 3 とした 2) 定量下限 20 ng/m 3 の 1/2 の 10 ng/m 3 とした 3) 定量下限 11 ng/m 3 の 1/2 の 5.5 ng/m 3 とした 出典 : 東京都環境局,2002 図 Ⅵ8 に各測定局での年 4 回の測定値の平均と測定局を含むメッシュに対して ADMER で推計された大気中濃度の比較を示す 2001 年度モニタリング濃度平均値 (Y) と ADMER 推計 1 大気汚染防止法 : 工場などから発生する煤煙や自動車排出ガスの許容濃度を規制し, 国民の健康保護と生活環境の保全を図り, また被害が生じた場合の事業者の損害賠償責任を定めた法律 1968 年に制定 2 有害大気汚染物質 :1996 年の大気汚染防止法改正で, 継続的に摂取される場合にヒトの健康を損なうおそれがある物質で大気の汚染の原因となる化学物質等が該当する 大気中濃度の低減を急ぐべき物質 ( 指定物質 ) として, ベンゼン, トリクロロエチレン, テトラクロエチレン, ダイオキシン類が取り上げられ, 工場 事業場からの排出抑制対策が進められている 188

197 値 (X) に Y=a X の関係が成立すると仮定して, 傾き a を求めたところ,a=0.29(95% 信頼区間 :0.24~0.33)( 相関係数 :0.79) であり, 推計濃度とモニタリング濃度平均値には正の相関が確認されたが, 全体的に ADMER 推計値の方がモニタリング濃度に比べて, 高めの値を示す傾向であった また, 都内の大気中 DEHP 濃度は事業所 ( 届出および届出対象外 ) と使用中の塩ビ製品からの排出がほぼ同程度の寄与をしていた 事業所からの DEHP の排出に関しては, 本評価書で採用したように, 届出外排出量推計値を工業統計や事業所統計に基づいて割り振った場合, 出荷額や従業者数という統計データの性質上, 届出外排出量は東京都に集中してしまう場合があり, 実際の排出量に比べて東京都での排出量が若干過大となる可能性があることが報告されている ( 東野ら,2000) 東京都では全排出量の 76.1% を事業所からの排出量が占め, その 99.8%( すなわち, 全排出量の 76.0%) を届出外排出量推計値が占める また, 東京都に隣接する埼玉県, 千葉県および神奈川県では, 届出外排出量が各都県の全排出量のそれぞれ 53.8,46.3 および 64.9% を占める このため, 上記のような統計に基づく割り振りに伴う過大推計の排出量の影響の可能性は否定できない 一方, 使用中の塩ビ製品からの排出量も第 Ⅲ 章に示したように, 夏期や冬期の温度の違いによる排出係数を考慮せず,25 での排出係数を使用しており, 過大に塩ビ製品からの排出量を推計している可能性もある 屋外で使用され気温により排出速度が影響を受けると考えられた農ビや電線被覆等からの寄与は, 東京都では使用中の塩ビ製品からの DEHP の排出量の 71.2% であり, 東京都と隣接する埼玉県, 千葉県および神奈川県での農ビや電線被覆等からの寄与もほぼ同様の値であった このように, 使用中の塩ビ製品からの排出量に占める屋外用途製品からの排出量の割合が比較的大きかった しかし, 事業所と使用中の塩ビ製品からの排出量を合計した各都県の全排出量での屋外用途製品からの寄与でみると, 東京都で 17.0%, 埼玉県で 11.4%, 千葉県で 36.4% および神奈川県で 23.4% と低く, 25 での排出係数を用いることは ADMER による濃度推計値に大きな影響を及ぼさないと考えられる また, 東京都の測定は 4 回 / 年であり, 各測定値のばらつきもみられ,ADMER 推計値と比較し得る年平均値といい難い面もある しかしながら, 報告されている他の大気中濃度のモニタリングデータは年 1 回の測定結果であり, 全国的に ADMER の推計値と比較し得るモニタリングデータは東京都のデータ以外になく,ADMER が全国的に若干高めに推計する傾向にあるのか否かについて判断できる状況ではない このため, 本詳細リスク評価書では, 本章 2.1 項に示した排出量推計値をそのまま用いて推計した大気中 DEHP 濃度から, 次節以降で摂取量の計算を行った 189

198 2001 年度モニタリング濃度 [ng/m 3 ] 最大平均最小 ADMER 推計値 [ng/m 3 ] 図 Ⅵ8 ADMER, モニタリング比較 190

199 4. 食品経由の DEHP 摂取量の推計前節に示したように, 事業所および使用中の塩ビ製品からの大気中への排出量が多いため, 関東地方, 東海地方および近畿地方の大気中 DEHP 濃度が高い また,DEHP の植物の葉, 茎および実への取り込みには, 大気中に存在する DEHP が大きな寄与をすることから, 大気から農作物への DEHP の移行はヒトの摂取量を推計する上で重要である 特に, 関東地方の茨城, 栃木, 群馬, 埼玉および千葉の各県はわが国最大の消費地である京浜地区に近く, しかもこの地区に出荷される多くの農作物の主要な生産地でもある さらに, 農作物と同様に大気から飼料作物に移行した DEHP の家畜への移行もヒトの摂取量を推計する上で重要であると考えられる そこで,ADMER で推計された全国の大気中 DEHP 濃度分布を基に, 関東地方やその他の地方から大量に農作物, 畜産物および水産物が入荷し, それらを消費している京浜地区を対象に, 一般住民の食品群別の DEHP 摂取量を推計し, 発生源からヒトに至るまでの DEHP 暴露の道筋を明確にした 4.1 農作物経由の DEHP 摂取量の推計国内で生産され京浜地区に入荷する農作物経由の DEHP 摂取量を図 Ⅵ9 に示すフローに従って推計した DEHP 摂取量推計の対象農作物として, 健康栄養情報基盤データベース ( 国立健康 栄養研究所, 科学技術振興事業団,2004) で消費量 1 が報告されている葉 茎菜類 ( はくさい, キャベツ, ほうれんそう, たまねぎ ), 果菜類 ( きゅうり, トマト, ピーマン ), 根菜類 ( だいこん, にんじん ) および果樹 ( りんご ) を選択した 関東地方から京浜地区への出荷量が多いはくさいおよびほうれんそうの市町村別出荷量と県別の京浜地区への出荷量を図 Ⅵ10 および図 Ⅵ11 に示す また, 図 Ⅵ12 にりんごの京浜地区への県別出荷量を示す これらの出荷量は農林水産省の農林水産関係市町村別データ ( 年産 )( 農林水産省,2004e), 野菜生産出荷統計 ( 農林水産省,2004g) および果樹生産出荷統計調査 ( 農林水産省,2004a) に基づいた 1 本評価書では,DEHP の摂取量と食事の摂取量による混乱を避けるため摂取する食事量は食事消費量という語で記載する 191

200 AISTADMER 植物モデル 5 km 5 km メッシュ別の大気中濃度分布市町村別の平均大気中濃度市町村別の平均植物中濃度 農林水産関係市町村別データ葉茎菜類, 果菜類, 根菜類, 果樹市町村別の農作物出荷量 農作物中濃度補正 市町村別の出荷農作物中濃度県別農作物京浜地区出荷量京浜地区一般住民が消費する農作物中濃度農作物消費量体重 水洗浄除去率 国内自給率 京浜地区一般住民の農作物経由の DEHP 摂取量 図 Ⅵ9 京浜地区一般住民の農産物経由の DEHP 摂取量推計 192

201 1 2 群馬県 栃木県 茨城県 京浜地区への県別出荷量 千葉県 埼玉県 神奈川県 出荷量 [ 千トン ] 東京都 茨城県栃木県群馬県埼玉県千葉県東京都神奈川県その他 市町村別出荷量 [ トン ] ~ ~ ~ 1,000 1,000~ 5,000 5,000~10,000 10,000~ 図 Ⅵ10 関東地方における市町村別はくさい出荷量と京浜地区への県別出荷量 ( 農林水産省,2004e;2004g) 193

202 1 2 群馬県 栃木県 茨城県 埼玉県 京浜地区への県別出荷量 茨城県栃木県群馬県埼玉県千葉県東京都神奈川県その他 千葉県 神奈川県 出荷量 [ 千トン ] 東京都 市町村別出荷量 [ トン ] ~ 10 10~ 50 50~ ~ ~1,000 1,000~ 図 Ⅵ11 関東地方における市町村別ほうれんそう出荷量と京浜地区への県別出荷量 ( 農林水産省,2004e;2004g) 194

203 10, ,800 9,700 33,000 39,600 34,900 4, ,500 北海道宮城県青森県岩手県秋田県山形県福島県群馬県長野県 52,500 図 Ⅵ12 りんごの京浜地区への県別出荷量 [ トン / 年 ]( 農林水産省,2004a) 農作物中 DEHP 濃度の推計 ADMER により推計された 5 km 5 km メッシュ別の大気中 DEHP 濃度と各市町村の面積比を基に, 市町村別の平均大気中濃度 ( 日平均濃度の年平均値 ) を計算した この市町村別の大気中濃度を用いて, 第 Ⅴ 章 4.1 項に示した Trapp と Matthies の植物モデル (Trapp と Matthies,1998) で市町村別の植物の地上部 ( 葉, 茎および実 ) における DEHP 濃度を推計した この Trapp と Matthies の植物モデルは比較的簡単な植物モデルであるが, 蒸散流量, 葉表面積, 容積等の個別の植物種に依存するパラメータも含まれる しかし, 種に依存するパラメータ値を全ての対象作物について決定することはできないため, 個別の農産物に特異的な濃度の推定には適さない そこで,Trapp らが牧草中の 2,3,7,8 四塩素化ジベンゾ pジオキシン(tcdd) 濃度推計に用いたパラメータ値を用い, 対象農作物については, 推定された植物中濃度に, 表 Ⅵ5 に示す作物毎の補正係数を乗じて, 各市町村で栽培 収穫されるたまねぎを除く葉 茎菜類, 果菜類および果樹中の DEHP 濃度とした 補正係数は環境省の農用地土壌及び農作物に係るダイオキシン類実態調査 ( 環境省環境管理局水環境部,2003) におけるコプラナー PCB(coPCB) の毒性等価量 (TEQ) 1 ベースの測定値から決定した 土壌中の copcb の主な供給源は大気からの沈着と考えられるため, 土壌中濃度レベルが同程度であるような条件下での各農作物中 copcb 濃度を比較することにより,coPCB と同様に疎水性の DEHP の各作物への取り込みの補正係数が決定できるとした 補正係数を決定する際には,coPCB の土壌中濃度が全国平均値に近い 0.1 pgteq/g 付近のデータセットを採用し, 大気沈着以外の要因で土壌が汚染されているおそれがあるデ 1 毒性等価量 (TEQ): ダイオキシン類の毒性の強さを, ダイオキシン類の中で最も毒性の強い 2,3,7,8 四塩化ジベンゾ p ジオキシン (TCDD) に換算した値 ダイオキシン類には多くの異性体が存在し, 毒性の強さが異なるため,TEQ により毒性を表示 195

204 ータは除いた また, 補正係数を決定する際には, 牧草と同様に葉への沈着が予想されるほうれんそうを基準とし, それに対する濃度比から補正係数を決定した 表 Ⅵ5 農産物中 DEHP 濃度推計に用いた補正係数 農作物 補正係数 農作物 補正係数 ほうれんそうはくさいキャベツきゅうり ピーマントマトりんご 一方, 根菜とたまねぎ中の DEHP 濃度 (C root ) は,5 km 5 km メッシュ毎に推計された土壌水中の DEHP 溶存態濃度 (C sw ) と第 Ⅴ 章 4.1 項に示した Briggs ら (1982) の式で推計した根への濃縮倍率 (RCF w ) から求めた 土壌水中の溶存態濃度の推計には, 第 Ⅴ 章で用いた土壌モデルを各メッシュに適用した 根菜およびたまねぎについては, 濃度補正は行わなかった 推計された各都道府県内の市町村別の農作物中 DEHP 濃度と出荷量から, 都道府県別に京浜地区に出荷され, 消費される農産物中の DEHP 濃度の出現頻度分布を求め, これらの頻度分布と都道府県別の京浜地区への各農作物の出荷量比を基に, モンテカルロ シミュレーション 1 により, 京浜地区に出荷され, 消費される各農産物中の DEHP 濃度を推計した なお, モンテカルロ シミュレーションに際しては,Crystal Ball 2000(Decisioneering Inc.) を用い, 試行回数を 10,000 回とし, サンプリング手法としてラテン ハイパー キューブ法 2 を採用した さらに, 確率密度関数 3 を設定したパラメータは互いに独立で, 相関性はないと仮定した 推計結果を表 Ⅵ6 に示す 1 モンテカルロ シミュレーション : シミュレーションを行う現象に対して, その入力に大量の乱数を発生させて, 出力値を観測することで, その現象を確率論的に解く手法 2 ラテン ハイパー キューブ法 : 確率分布を一様な確率の区間に分割し, 各区間の確率分布に従って各区間から値をサンプリングする方法 3 確率密度関数 : 累積分布関数 F(x) が微分可能な場合, 以下の導関数を確率変数 X の確率密度関数という d f ( x) = F( x) dx 196

205 農作物 はくさいキャベツほうれんそうきゅうりトマトピーマンたまねぎだいこんにんじんりんご 表 Ⅵ6 京浜地区に出荷され, 消費される農作物中の DEHP 濃度推計値 濃度 [μg/g] 平均値 5パーセンタイル 50パーセンタイル 95パーセンタイル 濃度推計の妥当性の検討 DEHP については環境モニタリング結果がかなり報告されており, 食事調査 ( トータルダイエットスタディー ) も実施されているが, 個別の農産物に関する報告はほぼ皆無で, 唯一, 北海道衛生研究所の高橋らにより市販りんごの測定結果が報告されている ( 高橋ら, 1999) しかし, 産地に関する記述がなかったため, 図 Ⅵ12 に示すように最大の産地で北海道に近い青森県産のりんご中の濃度と全国の主要産地から出荷されるりんご中の濃度を推計し, 測定値 (n=3,0.061~0.237μg/g) と比較した 推計値は, 青森県産りんごに対し, 平均 0.061μg/g(5~95 パーセンタイル 1 の幅 :0.027~0.099μg/g), 全主要出荷県産りんごに対し, 平均 0.092μg/g(5~95 パーセンタイルの幅 :0.056~0.14μg/g) とほぼ測定値と一致した りんごのみの比較であるが, 他に報告がないため, 農産物中濃度推計法は妥当と判断し, 京浜地区一般住民の農作物経由の DEHP 摂取量を推計した 京浜地区一般住民の農作物経由の DEHP 摂取量推計 項で求めた京浜地区に出荷される個別農作物中の DEHP 濃度の確率密度関数と表 Ⅵ 7 に示す健康栄養情報基盤データベースの各農作物の消費量および住民の体重の確率密度関数, さらには表 Ⅵ8 に示す農林水産省の統計データ ( 農林水産省,2004a;2004c;2004g) から求めた各農作物の国内自給率から, 京浜地区一般住民の男女別 DEHP 摂取量をモンテカルロ シミュレーションにより推計した なお, 摂取量推計に際しては, ダイオキシン類での測定結果 (Tsutsumi ら,2000) を基に, 調理時に農作物を水洗いすることにより, 農作物中の DEHP の 50% は除去されると仮定した また, モンテカルロ シミュレーションに際して, 確率密度関数を設定した計算パラメータが互いに独立で, 相関性はないと仮定す 1 パーセンタイル : ある値 P α より小さな値をとる観測値の割合がα% となるとき, この値 P α をαパーセンタイルという n 個の観測値を小さい方から順に x 1,x 2,,x i,,x n としたとき,P α は次式で求められる i / n = α /100, ( x i + x +1) / 2 P α = i 197

206 るとともに, 各確率密度関数による摂取量の変動の感度を分散寄与率として解析した 分散寄与率は, スピアマンの順位相関係数 1 を二乗して, それらを全体が 100% となるように正規化して算出した値である モンテカルロ シミュレーションの結果を表 Ⅵ9 に示す 京浜地区一般住民の農作物経由の DEHP 摂取量 ( 平均値 ) は約 0.49~0.60μg/kg/ 日と推計された 男女の摂取量は, 東京都民でそれぞれ,GM 2 :0.29μg/kg/ 日,GSD 3 :2.6 および GM:0.37μg/kg/ 日,GSD:2.6, 神奈川県民でそれぞれ,GM:0.33μg/kg/ 日,GSD:2.6 および GM:0.38μg/kg/ 日,GSD: 2.5 の対数正規分布に最も適合した また, 感度解析の結果を図 Ⅵ13 および図 Ⅵ14 に示す この結果から, ほうれんそうの分散寄与率が約 70% 以上であり, 東京都および神奈川県の男女とも DEHP 摂取量の変動には, ほうれんそうとはくさいの消費量が大きな寄与をすることが予想される 1 スピアマンの順位相関係数 :2 変数 X,Y の相関の強さを示す指標としてデータの値による順位を利用して定める相関係数 次式で求められる 2 6 ( R xi R yi ) R x, y = 1 2 n ( n 1) ここで,n はデータ数,R xi と R yi はデータの順位数値である 2 GM(geometric mean): 幾何平均 全データの相乗積の同次乗根 データを対数変換した後に算術平均を求め, 逆対数をとって求める 3 GSD(geometric standard deviation): 幾何標準偏差 データを対数変換した後に標準偏差を求め, その逆対数をとって求める 198

207 表 Ⅵ7 農作物経由の DEHP 摂取量推計に用いた変数の確率密度関数 ( 対数正規 ) 確率密度関数 変数 東京都 神奈川県 男性 女性 男性 女性 はくさい消費量 [g/ 日 ] GM : 7.77 GM : 6.82 GM : 8.08 GM : 7.30 GSD: 3.81 GSD: 3.96 GSD: 3.71 GSD: 3.78 キャベツ消費量 [g/ 日 ] GM :16.29 GM :11.21 GM :12.24 GM : 9.09 GSD: 3.19 GSD: 3.42 GSD: 3.13 GSD: 3.43 ほうれんそう消費量 [g/ 日 ] GM : 8.57 GM : 9.92 GM :10.41 GM : 9.66 GSD: 3.36 GSD: 3.27 GSD: 3.13 GSD: 3.22 きゅうり消費量 [g/ 日 ] GM : 4.99 GM : 7.34 GM : 5.23 GM : 6.31 GSD: 3.57 GSD: 3.21 GSD: 3.31 GSD: 3.33 トマト消費量 [g/ 日 ] GM : 8.95 GM :11.89 GM :10.28 GM :11.01 GSD: 3.75 GSD: 3.36 GSD: 3.52 GSD: 3.49 ピーマン消費量 [g/ 日 ] GM : 2.31 GM : 1.42 GM : 2.04 GM : 1.44 GSD: 3.74 GSD: 4.56 GSD: 3.87 GSD: 4.32 たまねぎ消費量 [g/ 日 ] GM :14.58 GM :14.19 GM :20.18 GM :16.85 GSD: 2.90 GSD: 2.78 GSD: 2.62 GSD: 2.70 だいこん消費量 [g/ 日 ] GM :17.54 GM :15.43 GM :15.94 GM :18.53 GSD: 3.00 GSD: 3.19 GSD: 3.05 GSD: 2.90 にんじん消費量 [g/ 日 ] GM :15.81 GM :13.51 GM :14.83 GM :13.88 GSD: 2.75 GSD: 2.88 GSD: 2.56 GSD: 2.71 りんご消費量 [g/ 日 ] GM :13.51 GM :18.04 GM :16.93 GM :21.22 GSD: 3.52 GSD: 3.29 GSD: 3.24 GSD: 3.14 体重 1) [kg] GM :54.69 GM :47.81 GM :55.40 GM :46.56 GSD: 1.36 GSD: 1.25 GSD: 1.35 GSD: ) 東京都と神奈川県の全ての年齢の男女に対する値である 出典 : 健康栄養情報基盤データベース ( 国立健康 栄養研究所, 科学技術振興事業団,2004) 表 Ⅵ8 農作物の国内自給率 農作物 1) 国内収穫量 1) 国内出荷量 2) 輸入量 3) 自給率 [ トン ] [ トン ] [ トン ] [%] はくさいキャベツほうれんそうきゅうりトマトピーマンたまねぎだいこんにんじんりんご 1,038, , , , , ,400 1,259,000 1,868, , , ,100 1,219, , , , ,300 1,085,000 1,413, , ,500 51, , ,184 19, ,896 47,140 2, ) 野菜生産出荷統計 ( 農林水産省,2004g) および果樹生産出荷統計調査 ( 農林水産省,2004a) による 2) 財務省貿易統計 ( 輸入 )( 農林水産省,2004c) による ただし, はくさいおよびだいこん についてはデータなし 3) 自給率 = 国内出荷量 /( 国内出荷量 + 輸入量 ) として求めた 199

208 はくさい キャベツ ほうれんそう きゅうり トマト ピーマン たまねぎ だいこん にんじん りんご 表 Ⅵ9 京浜地区一般住民の農作物経由の DEHP 摂取量推計結果 農作物 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性 摂取量 [μg/kg/ 日 ] 平均値 5パーセン 50パーセン 95パーセンタイルタイルタイル

209 農作物合計 表 Ⅵ9 京浜地区一般住民の農作物経由の DEHP 摂取量推計結果 ( つづき ) 農作物 東京都 神奈川県 男性女性男性女性 平均値 摂取量 [μg/kg/ 日 ] 5パーセン 50パーセン タイル タイル パーセンタイル ほうれんそう消費量 72.4% はくさい消費量 11.8% 体重 10.0% りんご消費量 1.3% ほうれんそう中濃度 ( 埼玉県産 ) 1.1% はくさい中濃度 ( 茨城県産 ) 1.0% ほうれんそう中濃度 ( 千葉県産 ) 0.6% ほうれんそう中濃度 ( 茨城県産 ) 0.2% たまねぎ中濃度 ( 愛知県産 ) 0.1% トマト中濃度 ( 千葉県産 ) 0.1% 分散寄与率による測定 [%] 図 Ⅵ13 感度解析結果 ( 対象予測 : 農作物経由の合計 DEHP 摂取量, 東京都男性 ) ほうれんそう消費量 76.6% はくさい消費量 10.3% 体重 6.4% りんご消費量 1.8% ほうれんそう中濃度 ( 千葉県産 ) 1.2% ほうれんそう中濃度 ( 埼玉県産 ) 1.2% はくさい中濃度 ( 茨城県産 ) 0.9% ほうれんそう中濃度 ( 茨城県産 ) 0.2% ほうれんそう中濃度 ( 群馬県 ) 0.1% キャベツ消費量 0.1% 分散寄与率による測定 [%] 図 Ⅵ14 感度解析結果 ( 対象予測 : 農作物経由の合計 DEHP 摂取量, 東京都女性 ) 4.2 畜産物経由の DEHP 摂取量の推計京浜地区に入荷する国内産の畜産物経由の DEHP 摂取量を図 Ⅵ15 に示すフローに従って推計した DEHP 摂取量推計の対象畜産物として, 健康栄養情報基盤データベースで消費量が報告されている乳製品 ( 牛乳, バター, チーズおよびその他の乳製品 ) および牛肉を選択した 201

210 また, 国内産の豚肉, 鶏肉および輸入畜産物経由の DEHP 摂取量については別途推計した AISTADMER 5 km 5 km メッシュ別の大気中濃度分布 農林水産関係市町村別データ飼料作物畜産 市町村別の平均大気中濃度 収穫量 飼養頭数 植物モデル 市町村別の平均植物中濃度 飼料作物中濃度補正平均飼料作物中濃度生物移行係数 1 頭 1 日当たりの給与粗飼料量飼料不足分補正 畜産物中濃度 ( 乳中濃度, 肉中濃度 ) 乳脂肪含有率補正 飲用牛乳生産量および移出入量肉畜種別県間移動量 京浜地区一般住民が消費する畜産物中濃度畜産物消費量体重国内自給率京浜地区一般住民の畜産物経由の DEHP 摂取量図 Ⅵ15 畜産物中濃度と摂取量の推計 飼料作物中 DEHP 濃度の推計乳製品および牛肉中の DEHP 濃度を推計するためには, まず乳用牛および肉用牛に与えられる飼料中の DEHP 濃度を推計する必要がある 家畜に与える飼料は種類が多く, それらの特性も多様であるため, 栄養価を基準に, 以下の 3 種類に分類されることが多い (1) 粗飼料 : 相対的に粗繊維含量が多く, 容積が多い割には可消化養分の少ない飼料 草食家畜の飼料として重要であり, 生草, 青刈飼料作物類, 根菜類および乾草等がある (2) 濃厚飼料 : 比較的養分含量が高く, 水分や粗繊維含量の低い飼料 数種類の濃厚飼料を混ぜ合わせて, 給与する必要があり, 穀類, 穀物副産物 ( 糠類 ) および油粕類等がある 202

211 (3) 特殊飼料 : 家畜に必要なミネラルやビタミン類などを補給するなどの補助的な役割を果たすものとして特別に製造したもの, または生産物 一般に飼料添加物として用いるものが多く, 炭酸カルシウムなどのミネラルの混合物 ( 鉱塩 ), ビタミン類およびアミノ酸製剤等がある 表 Ⅵ10 に示す農林水産省の飼料需給表 ( 農林水産省総合食料局,2003) によれば, 飼料としての供給量に占める純国内産の割合は 2001 年で全体の 25% であるが, 純国内産の粗飼料の自給率は 78% である 年度 ) ) 表 Ⅵ10 飼料需給表 供給量 [TDN 1) 千トン ] 自給率 [%] 粗飼料 濃厚飼料 純国内産 純国内産 うち うち純国 飼料 粗飼料 国内供給 2) 内産原料 自給率 自給率 A B C D E (C+E)/A C/B E/D 4,519 4,519 8,840 2, ,793 4,793 15,074 2, ,708 5,278 21,888 2, ,242 5,310 22,275 2, ,912 4,733 21,186 2, ,811 4,529 20,789 2, ,761 4,518 20,735 2, ,709 4,453 20,464 2, ,595 4,290 20,408 2, ,756 4,491 19,725 2, ,573 4,350 19,800 1, 需要量 [TDN 1) 千トン ] 13,359 19,867 27,596 28,517 27,098 26,600 26,496 26,173 26,003 25,481 25,373 純国内産濃厚飼料自給率 1) エネルギー含量を示す単位であり, 飼料の実量とは異なる 2) 濃厚飼料の うち純国内産原料 とは, 国内産に由来する濃厚飼料 ( 国内産飼料用小麦 大麦等 ) であり, 輸入食料原料から発生した副産物 ( 輸入大豆から搾油した後発生する大豆油かす等 ) を除いたものである 3) 1984 年度までの輸入は全て濃厚飼料とみなしている出典 : 農林水産省総合食料局,2003 乳用牛および肉用牛に粗飼料として与えられる国内産の飼料作物として, 牧草, 青刈りとうもろこし, ソルゴー ( 一年生のイネ科飼料作物 ) および青刈りえん麦を考慮した これらの飼料作物の市町村別収穫量については農林水産省農林水産関係市町村別データ ( 年産 )( 農林水産省,2004e) が利用できる 図 Ⅵ16, 図 Ⅵ17 および図 Ⅵ18 にそれぞれ, 関東地方での上記飼料作物の合計収穫量と乳用牛および肉用牛の飼養頭数を示す 推計対象飼料作物中の DEHP 濃度は, 本章の 4.1 項に示した農作物の場合と同様に, 市町村別の DEHP 平均大気中濃度から Trapp と Matthies(1998) の植物モデルで推計された市町村別の植物中濃度に濃度補正係数を乗じることにより求めた なお, 濃度補正係数は全ての飼料作物に対して牧草と同じ 1 を設定した 203

212 なお, 畜産国内編 2003 年度資料編 ( 農畜産業振興機構,2004) によれば 2001 年度に輸入された飼料および飼料原料の量と主な輸入先は表 Ⅵ11 のようになっている 乾牧草ヘイキューブ 1) とうもろこし 2) こうりゃん 2) 大麦小麦大豆油かす魚粉 表 Ⅵ11 飼料および飼料原料の主な輸入先と輸入量 [ トン ] 1 位 2 位 3 位 その他 合計 カナダ 221,897 オーストラリア 199,990 11,078 カナダ 85,507 チリ 4,202 5,138 アルゼンチン 257,289 中国 143, ,331 アルゼンチン 257,230 オーストラリア 505,092 0 カナダ 89,821 オーストラリア 567,906 0 オーストラリア 269,242 カナダ 19,355 0 中国 456,760 インド 102,046 97,044 ペルー 257,703 ロシア 2, ,298 アメリカ 1,411,983 アメリカ 350,030 アメリカ 11,484,174 アメリカ 920,425 アメリカ 464,592 アメリカ 139,744 アメリカ 312,446 チリ 116,156 1) マメ科のアルファルファ等を乾燥させた後, 約 4 cm 角に圧縮成型したものである 2) とうもろこし, こうりゃんは飼料用である出典 : 農畜産業振興機構,2004 1,844, ,877 12,181,448 1,682,747 1,122, , , ,

213 神奈川県 群馬県 栃木県 茨城県 千葉県 埼玉県 東京都 市町村別収穫量 [ トン ] ~ 1,000 1,000~ 5,000 5,000~ 10,000 10,000~ 50,000 50,000~100, ,000~ 図 Ⅵ16 関東地方における市町村別の対象飼料作物の合計収穫量 ( 農林水産省,2004e) 205

214 神奈川県 群馬県 栃木県 茨城県 千葉県 埼玉県 東京都 市町村別飼養頭数 [ 頭 ] ~ ~ ~ 1,000 1,000~ 5,000 5,000~10,000 10,000~ 図 Ⅵ17 関東地方における市町村別乳用牛飼養頭数 ( 農林水産省,2004e) 206

215 神奈川県 群馬県 栃木県 茨城県 千葉県 埼玉県 東京都 市町村別飼養頭数 [ 頭 ] ~ ~ ~ 1,000 1,000~ 5,000 5,000~10,000 10,000~ 図 Ⅵ18 関東地方における市町村別肉用牛飼養頭数 ( 農林水産省,2004e) 207

216 1987 年の日本飼料標準 1 による乳用牛 ( 体重 :600 kg, 乳量 :20 kg, 乳脂率 :3.5%) の飼料計算例での粗飼料は 28.3 kg/ 頭 / 日である ( 板橋,1997) 表 Ⅵ12 に示す乳用経産牛への給与飼料と飼養頭数 ( 日平均 )21.8 頭 ( 日本大学生物資源科学部付属農場畜産部,1997) から算出すると, 経産牛に与えられた購入飼料中粗飼料 ( 根菜および乾草 ) が 9.96 kg/ 頭 / 日, 自給飼料中粗飼料 ( サイレージ 2, 青刈り作物および乾草 ) が 15.7 kg/ 頭 / 日で, 合計粗飼料量は 25.7 kg / 頭 / 日であった 表 Ⅵ12 乳用経産牛への給与飼料 1 頭 1 日当たり飼料重量 DM 1) DCP 2) TDN 3) 4) 粗飼料量 [kg] [ 養分 kg] [ 養分 kg] [ 養分 kg] [kg/ 頭 / 日 ] 購入飼料ビートパルプヘイキューブ乾 ( スーダン ) 乾 ( フェイク ) 乾 ( チモシー ) 乾 ( ライグラス ) 18,275 14,856 18,102 2,942 23,078 1,993 15,826 13,252 1,622 2,530 18,762 1,758 1,005 1, ,805 7,339 8,888 1,176 9, 小計 79,246 53,750 3,668 39, 自給飼料レージ (D.C.) レージ ( イタリアン ) 青刈 (D.C.) 乾 ( イタリアン ) 106,650 8,270 10, ,129 1,522 1, , , , 小計 125,242 29,528 1,928 19, 合計 粗飼料分 204,488 83,278 5,596 58, ) 乾物量 2) 可消化粗蛋白質 3) 可消化養分総量 4) 1 頭 1 日当たり粗飼料量 = 飼料重量 /21.8/365 として求めた 出典 : 日本大学生物資源科学部付属農場畜産部 1996 年度年報 ( 日本大学生物資源科学部付属農 場畜産部,1997) 全国における乳用牛および肉用牛の飼養頭数はそれぞれ 1,676,308 頭および 2,757,255 頭で, 合計飼養頭数は 4,433,563 頭である ( 農林水産省,2004e) これと対象飼料作物の全国における合計収穫量 37,468,692 トン ( 農林水産省,2004e) から, 全国における牛 1 頭当たりの対象飼料作物消費量は 23.2 kg/ 日と算出された この値は, 上記の 28.3 kg/ 頭 / 日あるいは 25.7 kg/ 頭 / 日のそれぞれ 82% と 90% に相当する 表 Ⅵ10 に示す飼料需給表 ( 農林水産省総合食料局,2003) によると, 純国内産粗飼料自給率は 2001 年度において 78% であり, 上記の 23.2 kg/ 頭 / 日が合計粗飼料分に占める割合とほぼ一致している 以上のこ 1 日本飼料標準 : わが国独自の各種家畜のさまざまな生産機能に対する栄養素要求量を表示した飼養標準 (feeding standard) 実際に家畜を飼う場合の目安として利用される わが国では 1974 年から 1975 年にかけて農林水産省を中心に家畜ごとの日本飼養標準が作成され, その後も研究の進展により改訂が行われている 2 サイレージ : 牧草および飼料作物等をサイロ等に詰めて乳酸発酵させることで, 保存性と嗜好性を高めた飼料 通年給与飼料または冬期の飼料として利用され, 材料は青刈りとうもろこしが最も多く使われる 208

217 とから, 全国の牛は国内で収穫された対象飼料作物を粗飼料として,23.2 kg/ 頭 / 日で給餌されていると仮定した 各都道府県の乳用牛および肉用牛の合計飼養頭数に 23.2 kg/ 頭 / 日と 365 日 / 年を乗じることで, 都道府県別の牛への年間給餌量を算出し, この給餌量と都道府県別の対象飼料作物の合計収穫量との差を求めた ( 表 Ⅵ13) 各道県の対象飼料作物の合計収穫量余剰分は不足分がある各都府県 ( 表 Ⅵ13 の * のある都府県 ) に移入し飼料作物 ( 粗飼料 ) に当てられると仮定した 対象飼料作物の合計収穫量に余剰分がある北海道, 青森県, 岩手県および山口県について, 対象飼料作物中の DEHP 濃度を算出し, これから, 不足分がある各都府県に移入される飼料作物中の平均 DEHP 濃度 ( μg/g) を求めた 市町村別の飼料作物中 DEHP 濃度と対象飼料作物合計収穫量を基に, 表 Ⅵ14 に示す各都 1 道県の表章地域別に飼料作物中 DEHP 濃度を算出した これらの各都道県は, 飲用牛乳あるいは肉畜種を東京都や神奈川県に出荷している都道県である 表 Ⅵ13 都道府県別の対象飼料作物の合計収穫量, 乳用牛および肉用牛の飼養頭数,1 年間の牛への給餌量および 1 年間の牛への給餌量と対象飼料作物の合計収穫量との差分 都道府県名 北海道青森県岩手県宮城県 * 秋田県山形県 * 福島県 * 茨城県 * 栃木県 * 群馬県 * 埼玉県 * 千葉県 * 東京都 * 神奈川県 * 新潟県 * 富山県石川県 * 福井県山梨県 * 対象飼料作物の合計収穫量 [ トン ] A 21,418, ,568 1,958, , , , , , , ,405 77, ,624 8,548 44,208 80,357 37,898 40,970 16,344 64,637 乳用牛飼養頭数 [ 頭 ] B 859,250 17,420 60,170 31,380 6,730 15,920 22,680 36,470 59,980 52,060 20,380 55,163 3,340 16,600 13, , ,418 肉用牛飼養頭数 [ 頭 ] C 431,240 55, , ,260 24,600 39,550 89,780 64, ,230 68,440 23,200 42, ,300 17, , ,592 合計飼養頭数 [ 頭 ] D 1) 1,290,490 73, , ,640 31,330 55, , , , ,500 43,580 97,840 3,880 21,900 31, , ,010 1 年間の牛への給餌量 [ トン ] E 2) 10,906, ,230 1,483,345 1,146, , , , ,552 1,370,861 1,018, , ,860 32, , , , ,949 1 年間の牛への給餌量と飼料作物合計収穫量との差分 [ トン ] AE 10,512, , , ,105 81, , , , , , , ,236 24, , ,234 37,898 33,941 16,344 45,312 1 表章地域 : 地域の農業実態や, 利用者の利便性, ニーズ等を考慮し, 統計数値を表す都道府県内地域を区分したもの 209

218 表 Ⅵ13 都道府県別の対象飼料作物の合計収穫量, 乳用牛および肉用牛の飼養頭数,1 年間の牛への給餌量および 1 年間の牛への給餌量と対象飼料作物の合計収穫量との差分 ( つづき ) 都道府県名 対象飼料作物の合計収穫量 [ トン ] 乳用牛飼養頭数 [ 頭 ] 肉用牛飼養頭数 [ 頭 ] 合計飼養頭数 [ 頭 ] 1 年間の牛への給餌量 [ トン ] A B C D 1) 長野県 * 449,041 26,400 37,190 63, ,408 岐阜県 * 159,735 10,790 35,620 46, ,218 静岡県 * 134,439 20,940 30,570 51, ,319 愛知県 * 146,348 40,480 61, , ,538 三重県 * 37,314 7,920 23,870 31, ,662 滋賀県 * 28,420 5,300 15,080 20, ,234 京都府 * 20,403 5,186 6,732 11, ,721 大阪府 兵庫県 * 164,760 27,595 63,374 90, ,792 奈良県 * 6,967 4,409 2,574 6,983 59,014 和歌山県 * 4, ,287 3,547 29,976 鳥取県 * 151,199 10,228 23,288 33, ,249 島根県 * 120,959 9,850 35,710 45, ,034 岡山県 * 214,767 24,909 30,416 55, ,560 広島県 * 138,056 11,339 30,175 41, ,841 山口県 102, 徳島県 * 58,107 9,377 34,771 44, ,101 香川県 * 27,560 7,732 20,353 28, ,350 愛媛県 * 105,140 9,444 21,048 30, ,692 高知県 * 64,919 4,947 6,618 11,565 97,738 福岡県 * 161,432 23,101 25,308 48, ,112 佐賀県 * 113,970 6,265 65,778 72, ,846 長崎県 * 518,436 12,256 92, , ,478 熊本県 * 1,044,197 50, , ,178 1,657,929 大分県 * 482,692 16,550 64,650 81, ,233 宮崎県 * 2,038,322 21, , ,505 2,345,236 鹿児島県 * 2,132,587 19, , ,390 3,121,769 沖縄県 * 660,488 7,862 78,209 86, ,399 合計 37,468,692 1,676,308 2,757,255 4,433,563 37,468,692 1) D=B+C 2) E=D 8,468(1 年間の牛 1 頭当たりの給餌量 )/1000 E 2) 1 年間の牛への給餌量と飼料作物合計収穫量との差分 [ トン ] AE 88, , , , , ,814 80, ,032 52,047 25, , , , , , , , ,552 32, , , , , , , ,182 66,

219 都道府県名 北海道 岩手県宮城県福島県茨城県栃木県群馬県埼玉県千葉県東京都神奈川県静岡県愛知県鳥取県宮崎県 表 Ⅵ14 飼料中 DEHP 濃度算出時に対象とした表章地域 1) 表章地域石狩, 空知, 上川, 留萌, 渡島, 檜山, 後志, 胆振, 日高, 十勝, 釧路, 宗谷, 網走, 根室北上川上流, 北上川下流, 東南部, 下閉伊, 北部南部, 中部, 北部, 東部中通り, 浜通り, 会津北部, 西部, 南部, 鹿行北部, 中部, 南部中部, 西部, 吾妻, 利根, 東部東部, 西部京葉, 東下総, 九十九里, 外房北多摩, 西多摩, 南多摩 ( 特別区, 島部を除く ) 横浜, 横須賀, 海老名, 平塚東部, 中部, 西部尾張, 西三河, 東三河東部, 西部広域沿岸, 広域霧島, 西北山間 1) 都道府県の各表章地域の情報については, 関東農政局管内の各統計情報事務所の 2001~2002 年の農林水産統計年報等を参照した 畜産物中 DEHP 濃度の推計各都道府県の各表章地域で飼養されている乳用牛および肉用牛の合計飼養頭数と表章地域別の対象飼料作物の合計収穫量から, 各表章地域における 1 頭当たりの対象飼料作物消費量を算出した 算出した各表章地域の 1 頭当たりの対象飼料作物消費量に各表章地域で乳用牛と肉用牛に給与される粗飼料中 DEHP 濃度を乗じ, それに第 Ⅴ 章 4.2 項に示した生物移行係数 1 ( 乳製品 日 /kg, 肉類 日 /kg) を乗じて, 表章地域別の畜産物中の DEHP 濃度を推計した なお, 第 Ⅴ 章 4.2 項に示したように, 畜産物中の DEHP 濃度は牧草からの取り込みの寄与が大きく, 大気吸入の寄与は少ないことから, 本章では飼料作物からの取り込みのみ考慮した さらに, 北海道, 青森県, 岩手県および山口県から対象飼料作物の不足分が移入される都府県に対しては, 前述の移入飼料作物中平均 DEHP 濃度 ( μg/g) に飼料作物消費量不足分と生物移行係数を乗じて求めた畜産物中 DEHP 濃度を追加した また, 北海道, 青森県, 岩手県および山口県については,1 頭当たりの対象飼料作物消費量を 23.2 kg/ 日として, 同様に畜産物中の DEHP 濃度を推計した なお, 本章 項に示したように,2001 年度の粗飼料の国内自給率は 78% であるが, 濃厚飼料の自給率はわずか 10% である 表 Ⅵ11 で濃厚飼料に用いられる主要な飼料原料はとうもろこし, こうりゃんおよび大麦等の穀物類である 環境省の農用地土壌及び農作物に係るダイオキシン類実態調査 ( 環境省環境管理局水環境部,2003) によれば, 水稲や 1 生物移行係数 : 化学物質が生物体内に移行する度合いを示す係数 生物中濃度を化学物質摂取量で除することにより得られる 211

220 スイートコーン中の copcb 濃度は非常に低く, 本章 項に示した濃度補正係数をこれらの穀物類に対しても同様に導出すれば 0.01 あるいはそれ以下の値となる このため, 濃厚飼料に用いられる穀物類中の DEHP は国内産の畜産物中 DEHP 濃度に寄与しないと判断し, 計算時に考慮しなかった 各都道府県内の表章地域別の畜産物中 DEHP 濃度と飲用牛乳生産量および移出入量 ( 図 Ⅵ 19) および肉畜種別県間移動量 ( 図 Ⅵ20) から東京都と神奈川県に出荷され, そこで消費される畜産物中の DEHP 濃度の出現頻度分布を求め, これらの頻度分布と都道府県別の東京都および神奈川県への畜産物の出荷量比を基に, モンテカルロ シミュレーションにより, 東京都および神奈川県に出荷され, 消費される畜産物中の DEHP 濃度を推計した 飲用牛乳生産量および移出入量は農林水産省牛乳乳製品統計データ ( 農林水産省,2004b), 肉畜種別県間移動量は畜産物流通統計データ ( 農林水産省,2004d) に基づいた なお牛乳および乳製品については, 表 Ⅵ15 に示すように乳脂肪含有率が大きく異なっているため, 上記の生物移行係数から求められる DEHP 濃度は牛乳中濃度とし, この濃度に各乳製品と牛乳中の乳脂肪含有率の比を乗じて, 各乳製品中濃度とした その際, 脂肪含有率は牛乳で 3.8%, バターで 80%, チーズで 26%, そしてアイスクリームで 8% とした 畜産物中の DEHP 濃度の推計結果を表 Ⅵ16 に示す 2.5% 1.2% 東京都神奈川県 25.2% 1.6% 2.2% 2.1% 0.3% 11.8% 12.4% 20.0% 69.7% 6.6% 30.4% 9.9% 茨城県栃木県群馬県埼玉県千葉県東京都神奈川県その他 1.4% 2.6% [%] 図 Ⅵ19 飲用牛乳生産量および移出入量割合 ( 農林水産省,2004b) 212

221 1.2% 3.1% 1.4% 東京都神奈川県 12.2% 13.8% 1.1% 0.6% 4.1% 0.5% 1.7% 7.2% 20.7% 66.6% 65.8% 茨城県栃木県群馬県埼玉県千葉県東京都神奈川県その他 0.0% 0.1% [%] 図 Ⅵ20 肉畜種別県間移動量割合 ( 農林水産省,2004d) 牛乳および乳製品 表 Ⅵ15 牛乳および乳製品中の脂肪含有率 脂肪含有率 [g/100g 可食部 ] 牛乳および乳製品 脂肪含有率 [g/100g 可食部 ] 生乳ジャージー種ホルスタイン種 ナチュラルチーズエダムエメンタール 普通牛乳 3.8 カテージ 4.5 加工乳濃厚低脂肪粉乳類全粉乳調製粉乳 カマンベールクリームゴーダチェダーパルメザンブルー 練乳類 プロセスチーズ 26.0 無糖練乳 7.9 チーズスプレッド 25.7 クリーム アイスクリーム 乳脂肪 45.0 高脂肪 12 1) ホイップクリーム 普通脂肪 8 1) 乳脂肪 38.3 ソフトクリーム 5.6 2) コーヒーホワイトナー液状, 乳脂肪粉末状, 乳脂肪ヨーグルト全脂無糖脱脂加糖 ) 乳脂肪 2) 主な脂質 : 乳脂肪出典 : 五訂食品成分表 ( 香川,2003) バター有塩バター 81.0 無塩バター 83.0 発酵バター

222 牛乳 バター チーズ 表 Ⅵ16 東京都および神奈川県で消費される畜産物中の DEHP 濃度推計値 畜産物 その他乳製品 ( アイスクリーム ) 牛肉 東京都神奈川県東京都神奈川県東京都神奈川県東京都神奈川県東京都神奈川県 平均値 濃度 [μg/g] 5パーセン 50パーセン タイル タイル パーセンタイル 畜産物濃度推計の妥当性の検討個別の畜産物中の DEHP 濃度に関する報告は少ないが, 北海道衛生研究所の高橋ら (1999) によるバター, 豚肉および鶏肉等の測定結果や国立医薬品食品衛生研究所の外海 (2000) による牛乳やバター等の畜産物の測定結果が報告されている ( 表 Ⅵ17) これらの測定濃度と前節で推計された東京都および神奈川県で消費される牛乳および乳製品中の DEHP 濃度を比較した結果, ほぼ同じレベルであった また, 牛肉については, 直接比較できる測定結果は報告されていないが, 豚肉中濃度とほぼ同じレベルであった 以上の結果から, 畜産物中の DEHP 濃度推計法は妥当と判断した 表 Ⅵ17 個別の畜産物中の DEHP 濃度測定結果 試料数 測定値 [μg/g] 高橋ら (1999) バター豚肉鶏肉 ~ ~ ~0.384 外海 (2000) バターチーズ牛乳アイスクリームハム ソーセージ粉ミルク ~ ~ ~ ~ ~ ~ 畜産物経由の DEHP 摂取量の推計東京都および神奈川県に移入される畜産物中の DEHP 濃度の出現頻度分布, 健康栄養情報基盤データベースから推定した各畜産物の消費量 ( 表 Ⅵ18) および住民の体重 ( 表 Ⅵ7) の確率密度関数, 表 Ⅵ19 に示す畜産物の国内自給率から, 東京都および神奈川県の一般住民の男女別 DEHP 摂取量をモンテカルロ シミュレーションにより推計した モンテカルロ 214

223 シミュレーションに際して, 確率密度関数を設定した計算パラメータが互いに独立で, 相関性はないと仮定するとともに, 各確率密度関数による摂取量の変動の感度を分散寄与率として解析した 分散寄与率は, スピアマンの順位相関係数を二乗して, それらを全体が 100% となるように正規化して算出した値である モンテカルロ シミュレーションの結果を表 Ⅵ20 に示す 東京都および神奈川県の一般住民の畜産物経由 DEHP 摂取量 ( 平均値 ) は, 牛乳で 0.41~0.54μg/kg/ 日, バターで ~0.10μg/kg/ 日, チーズで ~0.013μg/kg/ 日, その他乳製品 ( アイスクリーム ) で 0.076~0.15μg/kg/ 日で, 乳製品全体の合計摂取量は 0.57~0.80μg/kg/ 日と推計された また, 牛肉で 0.10~0.14μg/kg/ 日と推計され, 推計の対象とした乳製品と牛肉からの合計 DEHP 摂取量は 0.71~0.91μg/kg/ 日と推計された 表 Ⅵ18 畜産物経由の DEHP 摂取量推計に用いた変数の確率密度関数 ( 対数正規 ) 確率密度関数 変数 東京都 神奈川県 男性 女性 男性 女性 牛乳消費量 [g/ 日 ] GM :76.85 GM :80.78 GM :91.11 GM :89.15 GSD: 2.84 GSD: 2.57 GSD: 2.66 GSD: 2.56 バター消費量 [g/ 日 ] GM : 0.42 GM : 0.39 GM : 0.54 GM : 0.44 GSD: 4.69 GSD: 4.70 GSD: 4.39 GSD: 4.35 チーズ消費量 [g/ 日 ] GM : 0.58 GM : 0.72 GM : 1.16 GM : 1.15 GSD: 5.14 GSD: 4.71 GSD: 4.25 GSD: 4.37 その他の乳製品消費量 [g/ 日 ] GM : 6.98 GM :13.24 GM : 6.73 GM :12.03 GSD: 4.07 GSD: 3.56 GSD: 4.16 GSD: 3.79 牛肉消費量 [g/ 日 ] GM :17.46 GM :10.94 GM :17.21 GM :23.30 GSD: 3.24 GSD: 3.36 GSD: 3.11 GSD:40.20 出典 : 健康栄養情報基盤データベース ( 国立健康 栄養研究所, 科学技術振興事業団,2004) 牛乳 [ 千トン ] バター [ 千トン ] チーズ [ 千トン ] アイスクリーム [kl] 牛肉 [ 千トン ] 表 Ⅵ19 畜産物の自給率 国内生産量 国内消費仕向量 自給率 3) [%] 4,995 4, ,710 1) 167,900 2) , ) 牛乳乳製品統計 ( 農林水産省,2004b) 2) アイスクリーム類及び氷菓の販売物量 金額 ( 日本アイスクリーム協会,2004) 3) 自給率 = 国内生産量 / 国内消費仕向量 100 として求めた出典 : 平成 13 年度食料需給表 ( 確定値 )( 農林水産省総合食料局,2003) 215

224 牛乳 バター チーズ 表 Ⅵ20 東京都および神奈川県一般住民の畜産物経由の DEHP 摂取量推計結果 畜産物 その他乳製品 ( アイスクリーム ) 乳製品合計 牛肉 畜産物合計 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 東京都 神奈川県 男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性 平均値 摂取量 [μg/kg/ 日 ] 5パーセン 50パーセン タイル タイル パーセンタイル 推計の対象とした畜産物経由の合計 DEHP 摂取量の変動に対する感度解析の結果 ( 東京都男性および東京都女性 ) を図 Ⅵ21 および図 Ⅵ22 に示す この結果から, 牛乳中濃度と牛乳消費量がともに東京都および神奈川県の男女とも各畜産物からの DEHP 摂取量の変動に大きな寄与をすることが明らかになった 216

225 牛乳中濃度 ( 東京都 ) 53.8% 牛乳消費量 22.6% 牛肉消費量 7.8% 体重 7.3% 牛肉中濃度 ( 東京都 ) 5.0% その他乳製品消費量 1.8% バター消費量 1.6% チーズ消費量 0.1% 分散寄与率による測定 [%] 図 Ⅵ21 感度解析結果 ( 対象予測 : 畜産物経由の合計 DEHP 摂取量, 東京都男性 ) 牛乳中濃度 ( 東京都 ) 63.4% 牛乳消費量 20.0% その他乳製品消費量 4.5% 牛肉消費量 3.9% 体重 3.7% 牛肉中濃度 ( 東京都 ) 2.6% バター消費量 1.7% チーズ消費量 0.1% 分散寄与率による測定 [%] 図 Ⅵ22 感度解析結果 ( 対象予測 : 畜産物経由の合計 DEHP 摂取量, 東京都女性 ) 上記の摂取量推計の対象とした牛肉以外の肉類については, 健康栄養情報基盤データベースによると, 表 Ⅵ21 に示すように牛肉の消費量に比べて, 豚肉および鶏肉の消費量が大きく, また, 表 Ⅵ17 に示すように DEHP を含むことから, これらを経由する DEHP 摂取量は無視できない 表 Ⅵ21 東京都および神奈川県における豚肉と鶏肉の消費量 ( 対数正規 ) 確率密度関数 変数 東京都 神奈川県 男性 女性 男性 女性 牛肉消費量 [g/ 日 ] GM :17.46 GM :10.94 GM :17.21 GM :23.30 GSD: 3.24 GSD: 3.36 GSD: 3.11 GSD:40.20 豚肉消費量 [g/ 日 ] GM :19.21 GM :14.31 GM :23.05 GM :16.88 GSD: 2.90 GSD: 2.91 GSD: 2.77 GSD: 2.74 鶏肉消費量 [g/ 日 ] GM : 9.20 GM : 7.56 GM :12.31 GM : 6.47 GSD: 3.75 GSD: 3.62 GSD: 3.42 GSD: 3.69 出典 : 健康栄養情報基盤データベース ( 国立健康 栄養研究所, 科学技術振興事業団,2004) 217

226 しかしながら, 豚肉と鶏肉については, これらの家畜の飼料に関する情報が少なく, 上記の牛肉のような推計は不可能であった そこで, 本評価書で推計された牛肉中 DEHP 濃度は表 Ⅵ17 に示すように, わが国で測定された豚肉中濃度と比べると若干高めであるがほぼ一致しており, 鶏肉は豚肉に比べて約 1/2 であることから, 豚肉については牛肉と同じ濃度, 鶏肉については牛肉の 1/2 と仮定し, さらに国内自給率を豚肉 :55% および鶏肉 :64% ( 農林水産省総合食料局,2003) として, 消費量の確率密度関数には表 Ⅵ21, 体重の確率密度関数には表 Ⅵ7 に示す GM と GSD の対数正規分布を仮定し, モンテカルロ シミュレーションにより, これらの肉類からの平均的な DEHP 摂取量の分布を推計すると, 表 Ⅵ22 のようになった 豚肉 鶏肉 表 Ⅵ22 東京都および神奈川県における豚肉と鶏肉経由の DEHP 平均摂取量摂取量 [μg/kg/ 日 ] 畜産物 5パーセン 50パーセン 95パーセン平均値タイルタイルタイル男性 東京都女性 男性 神奈川県女性 男性 東京都女性 男性 神奈川県女性 表 Ⅵ20 に示す濃度推計の対象とした畜産物経由の DEHP 摂取量平均値と表 Ⅵ22 の豚肉と鶏肉経由の DEHP 摂取量の合計から, 京浜地区一般住民の国内産畜産物経由の DEHP 摂取量 ( 平均値 ) は約 0.99~1.2μg/kg/ 日程度と考えられる この平均値ベースの摂取量の 57 ~68% は乳製品中の DEHP の寄与であり, 残りは牛, 豚および鶏肉中の DEHP の寄与である 4.3 水産物経由の DEHP 摂取量の推計本章 5.1 項に示すように, 多摩川での DEHP の主要な負荷源は, 下水道未整備区域からの雨水の流入である 未処理雨水には大気中で捕集した DEHP に加えて, 屋外用途製品から排出された DEHP 等も含まれると考えられる しかしながら, わが国の主要河川への負荷量の推計,DEHP の海域への輸送および海域での濃度推計を, 前節のように地域差を考慮した数理モデルを用いて定量的に行うことは, 数理モデルの開発状況から現時点では不可能である そこで, 水産物経由の DEHP 摂取量を海域, 河川および湖沼の水中 DEHP 濃度モニタリングデータから図 Ⅵ23 に示すフローに従って推計した 218

227 水中濃度 モニタリングデータ ( 海域, 河川および湖沼 ) 魚への生物濃縮倍率水産物中濃度 ( 魚中濃度 ) 魚介類消費量体重漁業 養殖業生産量京浜地区一般住民の水産物経由の DEHP 摂取量 図 Ⅵ23 水産物中濃度と摂取量の推計 魚介類中 DEHP 濃度の推計第 Ⅳ 章 3 節に記載した方法に基づいて海域, 河川および湖沼の水中 DEHP 濃度のモニタリングデータから導出した確率密度関数 ( 表 Ⅵ23) に魚への生物濃縮倍率 1 (BCF) を乗じて海面および内水面における魚中の DEHP 濃度を推計した 各水中 DEHP 濃度のモニタリングデータは 2001 年のデータを用いた 推計結果を表 Ⅵ24 に示す 表 Ⅵ23 海面および内水面の DEHP 水中濃度推計に用いた変数の確率密度関数 ( 対数正規 ) 変数 海面水中濃度 [μg/l] 内水面水中濃度 [μg/l] 確率密度関数 GM :0.025 GSD:8.2 GM :0.076 GSD:9.0 表 Ⅵ24 海面および内水面における水産物中 ( 魚中 ) の DEHP 濃度推計値 濃度 [μg/g] 平均値 5パーセンタイル 50パーセンタイル 95パーセンタイル 海面 内水面 BCF としては, 第 Ⅴ 章 4.3 節に示したように,Mayer(1976) が報告した低濃度域の値 (582, 616 および 615 L/kg) の平均値 (604 L/kg) を推計に使用した 1 生物濃縮倍率 :BCF(bioconcentration factor) 生物濃縮係数ともいう 化学物質が生物に濃縮される度合いを示す分配係数 水生生物の場合, 平衡状態にある生物中の化学物質濃度を水中化学物質濃度で除した値 219

228 表 Ⅵ24 に示すように, わが国の内水面および沿岸海域で漁獲あるいは養殖される魚中の DEHP 濃度 ( 平均値 ) は, 海域で 0.14μg/g, 内水面で 0.40μg/g と推計された 第 Ⅳ 章に示したように,1998 年度の環境庁の調査によれば,DEHP は淡水魚中から最大 0.26 μg/g の濃度で検出されている 一方, 海水魚では調査地点中 1 地点でのみ 0.059μg/g で検出されているが, 山口県の調査では,2000 年度調査で最大 0.12μg/g,2001 年度調査で最大 0.18μg/g の海水魚中 DEHP 濃度も報告されている ( 山口県環境生活部,2001;2002) 海水魚中濃度推計値は, 検出下限値未満との報告が多いモニタリング結果から導出されたため, 推計値の不確実性も大きいと思われるが, 既報のモニタリング結果とほぼ同じオーダーと考えられることから, ここで推計した濃度を水産物経由の DEHP 摂取量推計に採用した また, 地域別に解析できるだけの十分な海水中 DEHP モニタリングデータではないため, 推計した濃度の DEHP を含む水産物が東京都および神奈川県にも入荷すると仮定した 水産物経由の DEHP 摂取量の推計海面および内水面における魚中 DEHP 濃度の出現頻度分布 ( 表 Ⅵ24), 健康栄養情報基盤データベースの東京と神奈川の住民の水産物の消費量 ( 表 Ⅵ25) および体重 ( 表 Ⅵ7), 表 Ⅵ26 に示す沿岸 養殖 ( 海面 ) と漁業 養殖 ( 内水面 ) の生産量全体に占める割合から, 東京都および神奈川県の一般住民の男女別 DEHP 摂取量をモンテカルロ シミュレーションにより推計した 表 Ⅵ26 に示す沿岸 養殖 ( 海面 ) と漁業 養殖 ( 内水面 ) の生産量は, 農林水産省平成 13 年漁業 養殖業生産量 ( 確定値 )( 農林水産省,2004f) に基づいた モンテカルロ シミュレーションに際して, 確率密度関数を設定した計算パラメータが互いに独立で, 相関性はないと仮定するとともに, 各確率密度関数による摂取量の変動の感度を分散寄与率として解析した 分散寄与率は, スピアマンの順位相関係数を二乗して, それらを全体が 100% となるように正規化して算出した値である モンテカルロ シミュレーションの結果を表 Ⅵ27 に示す 表 Ⅵ25 水産物経由の DEHP 摂取量推計に用いた変数の確率密度関数確率密度関数変数東京都神奈川県男性女性男性女性 GM :72.92 GM :65.69 GM :72.28 GM :63.23 水産物消費量,g/ 日 GSD: 2.19 GSD: 2.10 GSD: 2.08 GSD: 2.08 出典 : 健康栄養情報基盤データベース ( 国立健康 栄養研究所, 科学技術振興事業団,2004) 220

229 表 Ⅵ26 漁業 養殖業生産量 トン % 総生産量 6,127 海面 遠洋, 沖合 3, 沿岸, 養殖 2, 内水面 漁業, 養殖 出典 : 農林水産省,2004f 表 Ⅵ27 東京都および神奈川県一般住民の水産物経由の DEHP 摂取量推計結果摂取量 [μg/kg/ 日 ] 水産物 5パーセン 50パーセン 95パーセン平均値タイルタイルタイル男性 東京都女性 水産物 ( 海面 ) 男性 神奈川県女性 男性 東京都女性 水産物 ( 内水面 ) 男性 神奈川県女性 男性 東京都女性 水産物合計男性 神奈川県女性 表 Ⅵ27 に示すように, 東京都および神奈川県の一般住民の水産物経由の DEHP 摂取量 ( 平均値 ) は,0.13~0.14μg/kg/ 日と推計された また, 水産物経由の DEHP 摂取量の変動に対する感度解析の結果 ( 東京都男性および東京都女性 ) を図 Ⅵ24 および図 Ⅵ25 に示す この結果から, 海水中 DEHP 濃度が摂取量の変動に大きな寄与をすることが明らかになった 海面 水中濃度 70.0% 魚介類消費量 18.6% 内水面 水中濃度 8.7% 体重 2.7% 分散寄与率による測定 [%] 図 Ⅵ24 感度解析結果 ( 対象予測 : 水産物経由の合計 DEHP 摂取量, 東京都男性 ) 221

230 海面 水中濃度 72.4% 魚介類消費量 17.0% 内水面 水中濃度 9.4% 体重 1.2% 分散寄与率による測定 [%] 図 Ⅵ25 感度解析結果 ( 対象予測 : 水産物経由の合計 DEHP 摂取量, 東京都女性 ) 4.4 DEHP 摂取量の推計のまとめ本章では, わが国最大の食品消費地である京浜地区の一般住民が食する国内産の農作物, 畜産物および水産物中の DEHP 濃度を推計し, さらにこれらの食品経由の DEHP 摂取量を推計した その結果, 京浜地区一般住民が主要な国内産の農作物, 畜産物および水産物経由で摂取する DEHP 量は平均値ベースで 1.6~1.9μg/kg/ 日程度 (95 パーセンタイルベースで 5.4~5.9μg/kg/ 日程度 ) と推定された 本章で摂取量推定の対象とした農作物は自給率がかなり高いため ( 表 Ⅵ8), 輸入農作物の寄与は考慮しなかったが, 畜産物ではチーズ等の乳製品や牛肉で輸入の割合が高い ( 表 Ⅵ19) 英国の MAFF(1996) の調査によれば,2 試料の平均値として DEHP の生肉と鶏肉中濃度はともに 0.7μg/g, 牛乳中濃度は 0.3μg/g と報告されており, 表 Ⅵ17 で示すわが国での測定値と比べると鶏肉, 牛乳で少し高いものの, ほぼわが国と同じ濃度レベルである そこで, 輸入される乳製品と肉製品中の DEHP 濃度データがないため, これらの製品中 DEHP 濃度もわが国と同じレベルと仮定した この仮定により, 輸入乳製品および肉製品経由の DEHP 摂取量は平均値ベースで大よそ 0.5~0.6μg/kg/ 日となる 施設栽培については, 他の作物に比べて高い濃度が予想されるほうれんそうおよびはくさいの京浜地区への出荷元が関東地方に多く存在する しかし, 第 Ⅳ 章 5 節で考察したように, 消費するほうれんそうおよびはくさい中 DEHP 濃度に大きな影響を与えないと判断し, 京浜地区一般住民の DEHP 摂取量推計では, 特に施設栽培について考慮しなかった 以上のことから, 京浜地区一般住民が国内産農作物, 国内産畜産物, 輸入畜産物および水産物経由で摂取する DEHP 量は平均値ベースで約 2.1~2.5μg/kg/ 日と推定された 図 Ⅵ26 に示すように,2001 年 8 月の日本食品分析センターの食事調査における東京都での食事中濃度に基づく DEHP 摂取量は 2.1μg/kg/ 日であり,1998 年の日本食品分析センターの食事調査における東京都での食事中濃度に基づく DEHP 摂取量は 8.3μg/kg/ 日である 第 Ⅳ 章 5 節にも述べたように,1998 年の調査は塩ビ製手袋から一部食品への移行の可能性があり, また事業者による排出抑制対策が進行中であったと思われる時期の摂取量である これらのことから, 本章での推計はほぼ妥当な推定と判断される また, この推計摂取量への発生源別の寄与を見ると, 届出対象外事業所から排出される DEHP が京浜地区一般住民の DEHP 摂取量の 39% を占める 次いで, 届出対象事業所および 222

231 農ビから排出される DEHP が摂取量のそれぞれ 16 および 9% を占めると推定された DEHP 摂取量 [μg/kg/ 日 ] PRTR 制度届出対象事業所 PRTR 制度届出対象外事業所 0.22 農ビ 発生源別推計 不明 0.14 他の塩ビ製品畜産物 ( 国内 ) 豚 鶏肉含む 0.55 畜産物 ( 輸入 ) 農 畜 水産物別推計 水産物 日本食品分析センター (2001 年測定 ) 東京都 (2000 年測定 ) 0.56 農作物 ( 国内 ) 2.1 日本食品分析センター (1998 年測定 ) 8.3 東京都 (2000 年測定 ) 各摂取量の数値は平均値である図 Ⅵ26 京浜地区一般住民の DEHP 摂取量推計のまとめ 223

232 5. 多摩川における DEHP の負荷量と濃度分布推定 DEHP の多摩川への排出負荷量推計では, 入手可能なデータを最大限に利用し, 多摩川への主要な負荷発生源からの DEHP の排出負荷量を求める この排出負荷量が水系モデルの入力データとなる そして, 水系モデルによる濃度予測では, モデル予測の妥当性を検証し, さらに散発的なモニタリングのみでは把握できない多摩川における DEHP 濃度の季節変動や上流から下流にかけての場所による変動の傾向を把握することを目的とした 水系モデルは, 産総研 水系暴露解析モデル 1 (AISTSHANEL)ver.0.8βを用いた( 産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター,2004a) 5.1 多摩川流域における DEHP の発生負荷量の推定ここでは, 多摩川流域における DEHP の主要な負荷発生源を取り上げ, 第 Ⅲ 章で行った DEHP の環境排出量推定に基づき, 経路別に多摩川流域での発生負荷量を推定する この発生負荷量は, 次節で取り扱う水系モデルの入力データの基礎となる DEHP 発生負荷量推定の対象区域は, 東京都の多摩川流域 24 市町村 ( 八王子市, 立川市, 武蔵野市, 三鷹市, 青梅市, 昭島市, 府中市, 調布市, 小金井市, 小平市, 日野市, 国分寺市, 国立市, 福生市, 狛江市, 武蔵村山市, 多摩市, 稲城市, 羽村市, あきる野市, 瑞穂町, 日の出町, 檜原村および奥多摩町 ) とし, その他の地域から多摩川への DEHP 負荷はないと仮定した DEHP の多摩川への負荷発生源として, 以下の五つを考慮した 1 家庭排水 2 屋外用途製品 3 事業所排水 4 大気から地表面への沈着とその後の地表面での流出 2 ( 以下, 大気沈着とする ) 3 5 廃棄物最終処分場以下に, 発生源毎に DEHP の発生負荷量を推定した結果を示す 家庭排水多摩川流域 24 市町村の 2001 年の行政人口は 2,885 千人 ( 日本下水道協会,2003) である 第 Ⅲ 章 項と同様の手法で, 家庭排水中濃度および水の使用量から DEHP の発生負荷量を求めると以下のようになる 1 産総研 水系暴露解析モデル (National Institute of Advanced Industrial Science and Technology Standardized Hydrologybased AssessmeNt tool for chemical Exposure Load):AISTSHANEL 水系における化学物質のリスク評価を目的とした水系暴露解析モデル SHANEL( 流域における化学物質の暴露濃度の詳細な解析モデル ) と TurboSHANEL( 任意の流域全体における大まかな暴露濃度を計算できる簡易解析モデル ) の 2 つの解析ツールを装備 2 流出 : 降水が地表傾斜面に沿って流れることに伴う土壌中の溶存態物質の水環境への移行 3 最終処分場 : 埋立て処分を行うために必要な場所および施設, 設備の総体 224

233 家庭排水からの発生負荷量 [kg/ 年 ] = 家庭排水中 DEHP 濃度 [μg/l] 平均水使用量 [L/ 人 / 年 ] 人口 [ 人 ] 10 9 [kg/μg] =11 ( ) 2, =3,741 [kg/ 年 ] 屋外用途製品屋外で使用される DEHP 含有製品からの水域への環境排出量は, 雨天時に製品から排出され, そのまま公共用水域, または下水管へ流入すると仮定し, 全国で 979~2,284 トン / 年と推定した ( 第 Ⅲ 章 項 ) 本章 2.1 項に示した手法と同様の手法で, 全国の水域への DEHP 排出量を多摩川流域 24 市町村における排出量へ振り分けた 排出量の全推計値の上限である 2,284 トン / 年は砂で表面処理された状態を想定した値であるため, 一般的な状態を想定して求めた 979 トンを使用して振り分けを行ったところ, 多摩川流域 24 市町村における, 屋外用途の DEHP 含有製品から水域への DEHP 発生負荷量は 22.9 トン / 年となった 事業所排水 PRTR 制度による裾きり以下事業所の DEHP 排出量推定 ( 経済産業省,2003; 環境省,2003) では, 各都道府県別の公共水域へ排出される DEHP 量を推定している これによると, 東京都全域の公共水域への DEHP 排出量は,2001 年で 46.3kg/ 年, 届出排出量は 0 kg/ 年である 東京都の区部における下水道普及率がほぼ 100%( 東京都下水道局,2003) であることから, 46.3 kg/ 年の事業所から公共水域への DEHP 排出は, 下水道普及率が東京都内では比較的低い多摩川流域 24 市町村が大きく占めていると考えることができる 大気沈着大気中に存在する DEHP は, 沈着により地表面に落下し, 雨水によって流出すると考えられる 第 Ⅴ 章では, 沈着した DEHP の水域への移動は, 土壌の浸食 1 の寄与が大きいと示した しかし, 多摩川流域のような市街地が多く存在する都市域では, 路面や屋根材など, 流出係数が大きい地点の表面流出等を考慮する必要がある AISTSHANEL では, メッシュ毎に流出率が設定されており, また, 分解や土壌への吸着なども考慮することが可能であるため, 本項では発生負荷量として大気から乾性および湿性沈着により地表面へ落下する DEHP 量を以下の式から求めた DEHP 沈着量 [kg/ 年 ]= 大気中 DEHP 濃度 [ng/m 3 ] 多摩川流域 24 市町村面積 [m 2 ] 1 大気相混合層高度 [m] 沈着速度定数 [ 日 ] 365[ 日 / 年 ] [kg/ng] ここで, 多摩川流域の気象観測地点の年平均気温 (4 地点 ) と降水量 (5 地点 ) の平年値 1 浸食 : 降水の水環境への流出に伴う土壌粒子の輸送過程 これにより土壌粒子に吸着された化学物質の水環境への移行を生じる 225

234 ( 気象庁,2001b) の平均はそれぞれ 13.6,1,534 mm/ 年であり, 第 Ⅴ 章 項より, 湿性沈着と乾性沈着による沈着速度定数を求めると 1.21 日 1 となる ( 水溶解度は第 Ⅰ 章 4.1 項より mg/l を採用 ) また, 大気中 DEHP 濃度は対象地域内で一様でないため, ADMER 推計結果で求めた各市町村の大気中濃度の平均値 ( 本章 項 ) に, 市町村面積で重み付けをし, さらに東京都内における 2001 年度モニタリング濃度平均値と ADMER 推計値との比 (0.29)( 本章 3.3 項 ) を用いて補正して求めた その結果, 多摩川流域の大気中 DEHP 濃度の平均値は 12.4 ng/m 3 となった 多摩川流域 24 市町村面積は 1,019 km 2 ( 東京都総務局統計部,2004) より,DEHP の沈着量は以下のように推算される DEHP 沈着量 =12.4 1, =2,790[kg/ 年 ] 廃棄物最終処分場廃棄物最終処分場からの浸出水による DEHP の発生負荷量の推計は第 Ⅲ 章 項における手法と同様, 最終処分場の埋立て面積と浸出係数等から求める DEHP 排出量 [kg/ 年 ]= 処理水濃度 [μg/l] 浸出水量 [m 3 / 年 ] 10 3 [L/m 3 ] 10 9 [kg/μg] 浸出水量 [m 3 / 年 ]= 降雨量 [mm/ 年 ] 集水面積 [m 2 ] 浸出係数 10 3 [m/mm] 多摩川集水域に存在する最終処分場は, 一般廃棄物および産業廃棄物最終処分場を合せて 6 ヶ所であり, 全ての処分場において浸出水の処理施設が併設されている 処理後の放流水濃度は日の出町の二つの処分場 ( 谷戸沢廃棄物広域処分場および二ツ塚廃棄物広域処分場 ) で測定されている ( 東京都三多摩地域廃棄物広域処分組合,1999;2000~2003; 環境保全調査委員会,1999;2000~2002) それによると, 処理後の放流水濃度は検出下限値未満 ( 検出下限値 :0.05μg/L) から最高濃度 8μg/L であった 他の処分場に関しては濃度データがないことから, 一般廃棄物最終処分場からの放流水の濃度は 8μg/L を使用し, 安定型処分場 1 からの浸出水に関しては第 Ⅲ 章と同様,2μg/L を採用する 各最終処分場の集水面積 ( 埋立て面積 ) と DEHP 排出量を表 Ⅵ28 とⅥ29 に示す 降水量は, 気象庁 (2001b) の気象データから, 各廃棄物処分場に最も近いと考えられる降水量観測地点の平年値を使用した 浸出係数は 0.5 とした その結果, 六つの廃棄物最終処分場から排出される DEHP の量は 2.52 kg/ 年となった 1 安定型処分場 : 性質が安定しており生活環境上の支障を及ぼすおそれが少ないとして政令で定められた安定型産業廃棄物を埋立てる最終処分場 226

235 施設名 表 Ⅵ28 多摩川水系一般廃棄物最終処分場 降水量平年値 1) [mm] ( 地点名 ) 2) 埋立て面積 [ m2 ] DEHP 排出量 [kg/ 年 ] 奥多摩町クリーンセンター最終処分場 1,586( 小河内 ) 1, 西秋川衛生組合御前石排水処理センター ( 第 1 御前石最終処分場 ) 1,537( 八王子 ) 9, 西秋川衛生組合御前石排水処理センター ( 第 2 御前石最終処分場 ) 1,537( 八王子 ) 10, 東京都三多摩地域廃棄物広域処分組合日の出町谷戸沢廃棄物広域処分場 1,475( 青梅 ) 220, 東京都三多摩地域廃棄物広域処分組合日の出町二ツ塚廃棄物広域処分場 1,475( 青梅 ) 184, ) 気象庁,2001b 2) 環境省,2004c 施設所在地 表 Ⅵ29 多摩川水系産業廃棄物安定型処分場 処理業者名 1) 降水量平年値 [mm]( 地点名 ) 2) 埋立て面積 [ m2 ] DEHP 排出量 [kg/ 年 ] 八王子市株式会社三宝環境管理事務所 1,537( 八王子 ) 6, ) 気象庁,2001b 2) 廃棄物政策研究所, 各発生源からの寄与以上より推計した多摩川流域 24 市町村の水域への DEHP 発生負荷量と各発生源の寄与率を表 Ⅵ30 にまとめる 表 Ⅵ30 多摩川流域 24 市町村の DEHP 発生源別推計値 発生源 家庭排水屋外用途製品事業所排水大気沈着廃棄物最終処分場 DEHPの発生負荷量 [ トン / 年 ] 寄与率 [%] 計 多摩川への発生負荷量は, 屋外用途の製品からの排出のみで全体の 78% を占めており, 次に寄与が大きい家庭排水, 大気沈着による寄与を合わせるとほぼ 100% になる 5.2 AISTSHANEL による多摩川河川水中 DEHP 濃度分布の推定 AISTSHANEL の概要 DEHP の水系暴露濃度の解析にあたっては,AISTSHANEL ver.0.8βを用いた ただし, メッシュ毎の入力データに関しては, 別途推計を行った このモデルは, 多摩川への適用結 227

236 果から, 本川田園調布堰地点において, 計算流量は観測流量と, 変動傾向, ピーク流量等において比較的よく一致していることを確認しており, ノニルフェノールの暴露濃度の推定においては,5 倍程度の誤差で計算値と実測値が合致していることが確かめられている ( 産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター,2004b) 日本国内の河川は流下時間が短いため, 水系の化学物質濃度は移流 1 と希釈により支配される割合が大きく, 流量に関する検証の程度がモデルの濃度推定の信頼性を規定すると考えてよい モデルの基本式は下記の通りであり, 系内蓄積量 = 系内投入量 移流 分解 相間移動 このうち, 移流項には, 降水量から蒸発散量を引いた有効雨量分のうち流出成分を分離して, 地表面と土壌内の水平方向への水の流れである表面流出と中間流出が河川流量に反映されるとして解析した 地理的な解像度は 1km 1km メッシュでデータを収集整理し, 時間的解像度としては, 日平均濃度を推定した 流量の推定においては, 連続式と表面流出に関する運動方程式, 中間流出から地下水にかけては線形貯留モデル 2 を組み合わせて解析した 分解項は一次反応を仮定し, 分解に関する知見を既存文献からまとめて範囲を考慮し値を決定した 相間移動としては, 水相での溶存態から粒子への吸着, 水相から底泥相への沈降による除去および巻上 3 による供給を取り入れた 系内投入量は, 推計された発生負荷量を面的に割り振り, 下水道整備区域で排出される分は, 下水処理による分解除去後, 放流口から水系に排出されるとした 下水道未整備区域で排出される分は排出点における排水処理, 土壌への吸着, 分解等を経て水域に排出されるとした AISTSHANEL ver0.8βでは水相へ排出された化学物質の吸着, 分解および土地利用項目別の雨水の流出率も考慮しているため, 河川到達率は 100% より低くなっている DEHP 入力パラメータ AISTSHANEL で使用した DEHP の物性パラメータを表 Ⅵ31 に示す 底質 / 水分配係数 (K d ) 以外の各パラメータの選定理由や出典は, 既に前章に示した 1 移流 : 環境媒体である空気や水の流れに伴う化学物質の輸送 2 線形貯留モデル : 土壌からの流出機構を鉛直方向に直列に並べられた貯留型タンクに見立ててモデル化 各タンク内の水収支は, 底面孔からの浸透および復帰流と, 各タンク内のある高さに設けられた側面孔からの流出で表現 側面からの流出が, 中間流出と地下水流出に相当 3 巻上 : 水環境中での水流や生物かく乱等による底質粒子の水相への移行過程 228

237 表 Ⅵ31 DEHP の濃度推定に用いた入力パラメータの一覧 パラメータ分子量 [g/mol] 蒸気圧 [Pa] ヘンリー則定数 [Pa m 3 /mol] 底質 / 水分配係数 [L/kg] 分解半減期 ( 土壌 )[ 日 ] 分解半減期 ( 河川水 )[ 日 ] 分解半減期 ( 底質 )[ 日 ] 値 ,400 ここで,K d は, 水相での化学物質の水と懸濁粒子への分配比 (f ww および f wss ) を表す式 ( 第 Ⅴ 章 項 ) 中の K OC OC ss を意味する 本解析では, 多摩川河川水中の溶存態と懸濁粒子吸着態別の DEHP 濃度と懸濁粒子濃度 (ss)( 日本化学工業境界,2002;2003) のデータから, 下記の分配式を用いて K d を算出し, 使用した ( 表 Ⅵ32) f f ww wss 1 = 1 + K ss d K d ss = 1 + K ss d 表 Ⅵ32 多摩川河川水中 DEHP 濃度データによる K d の推定 採取日 場所 河川水中濃度 ss K d 溶存態比率吸着態比率 [μg/l] [mg/l] [L/kg] 羽村堰 田園調布堰 多摩大橋 田園調布堰 田園調布堰 田園調布堰 平均 出典 : 日本化学工業協会,2002; DEHP 負荷量データ本章 項で求めた各発生負荷源の寄与率より, 水系暴露濃度解析で用いる負荷源は, 屋外用途製品, 家庭排水および大気沈着の三つとした ( 図 Ⅵ27) ここで, 各処理施設による DEHP 除去率は第 Ⅲ 章 項の図 Ⅲ22 と等しい 229

238 図 Ⅵ27 多摩川への DEHP 負荷源と排出率 負荷量データを作成するに当たり, 家庭排水, 屋外用途製品から水域への発生負荷量を 1 人当たりの発生負荷量として割り振り, 家庭排水由来も屋外用途製品由来もそれぞれ一意に決定できると仮定した この仮定を置くことの利点は, 下水道の人口普及率, 下水処理場の処理人数等データの使用が容易になり, 発生負荷量の面的割り振りが, 簡略化できることである 多摩川流域は農地が少ないため, 本章 項で推定した 22.9 トン / 年の屋外用途製品から水域へ排出される DEHP のうち, 農ビ由来排出量推計値は 0.1 トン / 年であり, 残り 22.8 トン / 年の排出量は人口密度が高いところから排出されると考えられ, 排出量をメッシュ別の排出量への分配の際にも世帯数で割り振った 世帯分布と人口分布はそれほど大きな差がないと考えられるため,1 人当たりの発生負荷量を使用することは妥当であると判断した 家庭排水由来と屋外用途製品由来の DEHP を 1 人当たりの発生負荷量 (DEHP 排出係数 ) として割り振りを行うと以下のようになる DEHP 排出係数 ( 家庭排水 ) [mg/ 人 / 日 ] = 家庭排水中 DEHP 濃度 [μg/l] 平均水使用量 [L/ 人 / 日 ] 10 3 [mg/μg] = =3.55[mg/ 人 / 日 ] DEHP 排出係数 ( 屋外用途製品 ) [mg/ 人 / 日 ] =( 屋外用途製品由来 DEHP 排出量 [ トン / 年 ] 多摩川流域 24 市町村人口 [ 人 ]) 10 9 [mg/ トン ] 365[ 日 / 年 ] =22.9 (2, ) =21.7[mg/ 人 / 日 ] 230

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