福島県立大野病院事件
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- やすはる いまいだ
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1 関係当事者の略称 本報告書では 関係当事者 ( 専門家証人と本件事故調査委員会委員を除く ) を 次の表のとおり略称する 資格 専門 役割 所属など本報告書の略称 (*) 産婦人科医 担当医 執刀医麻酔科医 手術麻酔担当外科医 手術助手看護師 ( オペ責 ) 看護師 ( 機械出し ) 看護師 ( 外回り ) 看護師 ( 外回り ) 助産師助産師看護師 ( 外来 ) 助産師院長 整形外科医外科部長産婦人科医 W 医科大学病院産婦人科助手 担当医の医局の先輩 担当医麻酔医 B 助手 C 医師 N 看護師 O 看護師 P 看護師 Q 看護師 M 助産師 L 助産師 R 助産師 E 院長 D 医師 K 医師 (W 医大 ) 産婦人科医 Z 病院所属 担当医の医局の先輩 A 医師 (Z 病院 ) 患者 ( 本件手術時に死亡 ) 患者の夫患者の父患者の夫の父 本件患者本件患者夫本件患者父本件患者義父 患者の夫の母本件患者義母 * 略称のアルファベットは 原則として 資料 5 医事判例解説 16 巻 (2008 年 10 月号 ) 掲載の判例と統一した ただし R 助産師については 上記掲載判例にアルファベット表記がなかったことから 独自につけた 10
2 第 1 事案の概要 0B1 診療経過の概要 第 1 事案の概要 1 診療経過の概要 診療経過の概要は おおむね 別表 1 及び2 記載のとおりである ただし 事実関係について 関係当事者の供述に相違がある点や 医学的評価を検討する上で特に問題となる点については 本報告書第 3および第 4において後述する (1) 本件病院の診療体制本件病院の診療体制は 次のとおりである 1 病床数 146 床 医師数 12 名 ( 産婦人科 1 人 ) 看護師 90 名前後 2 診療科目 : 内科 外科 整形外科 産婦人科 麻酔科 3 第 2 次救急病院に指定された中核病院 地域医療支援病院 4 輸血用血液の常備なし 50km離れた赤十字血液センターから都度 1 時間かけて搬送 (2) 担当医の経歴担当医は 本件事故当時 臨床経験 8 年 7ヶ月の産婦人科医である ( 判決 21 頁 ) 担当医が本件手術以前に癒着胎盤の帝王切開を経験したことがあるか否かについては 記録からは明らかでない 担当医は 1 平成 16 年 4 月に大野病院に赴任したが 赴任直後の時期に 経腟分娩の例で 児の娩出後 子宮の収縮はいいのに 胎盤剥離後にかなりの出血があるという例を幾つか経験したことから 胎盤を剥離することができても 強出血がある場合は 癒着胎盤と考えられるのではないかと思うようになった旨 ( 検乙 6-4 5) 2 本件患者の前には 前置胎盤の手術を本件手術と同じ年に経験したが その際は輸血はしなかった旨 ( 担当医 11 尋問調書 ) を供述しているのみである (3) 麻酔医 Bの経歴麻酔医 Bの臨床経験年数は 記録からは不明である 2000 年 4 月に麻酔科専門医の認定を受けているので ( 麻酔科専門医は 麻酔に専従して満 5 年以上経過していることが認定のための条件になっている ) 本件事故の 2004 年 12 月までに 少なくとも9 年以上は麻酔に専従しているものと推測される ( 麻酔科 B 尋問調書 1~2 45~48) 本件事故までに 大野病院において帝王切開の麻酔を経験した症例数は 30 例弱である 大野病院に勤務する以前は 国立某病院に勤務していたときに 帝王切開の麻酔に 幾つか 関わった経験はあるが 具体的な症例数は不明である 国立某病院と大野病院のほかに 複数の病院に勤務した経験はあるが それらの病院では 出産や帝王切開の麻酔を経験したことはない ( 同尋問調書 1~2 45~48 項 ) 前置胎盤の帝王切開の経験数は 多くとも5 例程度であり 大野病院ではほとんど初めての経験であった 癒着胎盤の帝王切開の経験はない ( 同尋問調書 45~48 項 ) 11
3 第 1 事案の概要 0B1 診療経過の概要 (4) 助手 C 医師の経歴助手 C 医師は 外科医であり 医師資格を取得してから5 年目の医師である ( 助手 C 医師尋問調書 1~2 項 ) 帝王切開の執刀助手としての経験は 大体 10 例弱である ( 同尋問調書 30 項 ) 前置胎盤について勉強したのは 学生の国家試験対策のときだけである ( 同尋問調書 189~190 項 ) 2 専門家証人の経歴本件専門家証人は 癒着胎盤の病理診断については2 名 ( 杉野隆医師 中山雅弘医師 ) 産婦人科の臨床については3 名 ( 田中憲一医師 岡村州博医師 池ノ上克医師 ) である 以下 各証人の経歴や専門等について述べる (1) 杉野隆医師杉野医師は 福島県立医科大学病理学第二講座研究室に所属し 病理医として当時 23 年の経験を有するが 専門は腫瘍であり 胎盤病理について専門的に研究したことはない ( 杉野尋問調書 58 頁 336 項 ) 癒着胎盤症例の病理診断の経験は3 件あるが 本件は2 件目である 本件前に 癒着胎盤につき鑑定したことはない ( 同尋問調書 61 頁 390 項 ) なお 本件事故の捜査中に 再度の検査にあたり 福島県立医科大学病理部に保存してある過去の癒着胎盤の症例の標本約 10 例を観察した ( 同尋問調書 23 頁 141~142 項 ) こうした経歴から 本判決では 胎盤病理についての専門的な研究の経験はない 癒着胎盤を鑑別する技量が完成されたものであるか否かについては疑問を差し挟む余地がある 子宮筋層と絨毛の客観的な位置関係というレベルでは一応信用性が高いと評価できるが その位置関係のみから癒着胎盤の範囲 程度を導き出せるかは疑問 などと評価されている ( 判決 33~34 頁 ) (2) 中山雅弘医師中山医師は 大阪府立母子保健総合医療センター検査科部長であり 専門科目は周産期病理学 ( 胎盤病理を含む ) 小児病理学 SIDSである 胎盤の診断については約 5 万例の経験がある ( 年間平均 2000 例程度 ) これらのおよそ3 分の1について顕微鏡による病理診断を行った 子宮については子宮体部について280 例 子宮頚部について370 例程度 全摘出した子宮については60 例程度の診断経験がある 癒着胎盤に関する診断経験としては 大阪府立母子保健総合医療センター在職中の2 6 年間で 楔入胎盤 15 例 嵌入胎盤 8 例 穿通胎盤 1 例の経験がある そのうち 胎盤のみで癒着胎盤と診断した例は5 例程度である これらの経験から 本判決では いわば胎盤病理の経験豊富な専門家 鑑定手法の相当性や能力の高さは是認できる と評価している ( 判決 34 頁 ) 12
4 第 1 事案の概要 1B2 専門家証人の経歴 (3) 田中憲一医師田中医師は 現新潟大学教育研究院医歯学系教授 同大学医歯学病院産婦人科長 周産母子センター部長である 所属学会は 日本癌学会正会員 日本産科婦人科学会正会員 日本母性保護産婦人科医会正会員 日本生殖免疫学会正会員 日本妊娠中毒学会正会員 先進医療専門家会議構成員などである 専門分野は 腫瘍学 ( 産科婦人科の専門分野を 周産期 腫瘍学 生殖内分泌 その他の4 分野とした場合 ) である 産科の臨床経験はあるが 現在の臨床の中心は婦人科である 分娩経験数は 約 3000 件強であり 用手剥離は何回も経験しているが 癒着胎盤の経験は助手として1 件だけである ( 昭和 年前後 ) 所属する新潟大学医学部の医局検討会にて 34 例の前置胎盤症例を検討したことがあり 内 3 例は癒着胎盤症例で この3 例については いずれも胎盤剥離を完了している (4) 岡村州博医師岡村医師は 現東北大学大学院医学系研究科発達発生学講座周産期医学分野教授 東北大学病院産科科長 周産母子センター部長である 日本産科婦人科学会常務理事 同学会周産期委員会委員長 ( 専門 : 産科 周産期医学 ) であり 産婦人科医療経験は33 年間である ( ただし一時 細菌学教室に在籍していたことがある ) 分娩経験数は 1 万件以上であり 内 1000~2000 件ほどが帝王切開例である 帝王切開例中 100~200 件が前置胎盤例 前置胎盤例中の半分は用手剥離実施 前置胎盤例中 8~10 件くらいが癒着胎盤例 ( 内 1 例のみが帝王切開時に癒着胎盤例であることが確認できた その余は 臨床的には癒着胎盤と評価された例である ) である (5) 池ノ上克医師池ノ上医師は 平成 3 年 1 月から宮崎大学医学部生殖発達医学講座産婦人科学分野教授であり 平成 8 年 5 月から宮崎大学医学部付属病院周産母子センター部長 平成 19 年 10 月から 宮崎大学医学部長を務めている 日本産科婦人科学会宮崎地方部会会長 日本産科婦人科学会代議員 日本周産期 新生児医学会副理事長 日本母性衛生学会理事である 専門は 産婦人科学全般で 中でも周産期医学 ( とくに 胎児 新生児の管理 ハイリスク妊娠の管理 ) を専門としている 産婦人科医としての経験年数は 36 年である 鹿児島市立病院に勤務していたときには 年間 1000~1800 例の分娩を扱っており 宮崎大学に勤務している16 年間には 約 4720 例の分娩を取り扱っている ( 直接 間接の関与を含む ) そのうち帝王切開は30~40% である 宮崎大学に勤務している間の 前置胎盤の経験数は46 例 癒着胎盤の経験数は12 13
5 第 1 事案の概要 1B2 専門家証人の経歴 例である ( 池ノ上尋問調書 19 25~26 35~37 項 ) 3 死因について本件患者の死因について 刑事事件では 検察官は 出血性ショックによる失血死と主張し 弁護人は 羊水塞栓 産科 DICの可能性を指摘していた 記録にみられる死因に関する記載は 以下のとおりである (1) 死亡診断書死亡診断書記載の死亡原因は 以下のとおりである ( 検甲 3) ( ア ) 直接死因 : 心室細動 (2 時間 30 分 ) ( イ ) ( ア ) の原因 : 出血性ショック (1 時間 30 分 ) ( ウ ) ( イ ) の原因 : 妊娠 36 週癒着胎盤 帝王切開 ( 不明 ) ( エ ) ( ウ ) の原因 : 不明 ( 不明 ) (2) 専門家証人意見について本件では 遺体の解剖は行われていない 各専門家証人は 本件患者の死因について 以下のとおり述べている ア田中意見 大量の出血に起因する心室細動であり 大量出血した原因は子宮全摘術中の出血原因等 一部判断できない点もあるが胎盤剥離面と癒着胎盤の癒着部分をクーパー剪刀で剥離した部分よりの出血による失血死 としている ( 検甲 37 鑑定書 7 頁 ) イ池ノ上意見 資料からは死亡の原因が単なる循環血液量の不足のみなのか あるいはその他の何であるのかを推定することはできないが 循環血液量の不足以外の何らかの致死的な要素が関与していたことも否定はできないと考える としている ( 弁 132 鑑定意見書 4 頁 ) 何らかの致死的な要素 とは具体的に何かについては 鑑定意見書に記載はない 池ノ上医師は 公判廷では 15 時 7,8 分頃には産科 DICを発症していたのではないかと述べている ( 池ノ上尋問調書 263~ ~744 項 ) しかし 他方 循環血液量が大量に失われたことは患者の状態に非常に影響するとも述べており ( 同調書 752~754 項 ) 循環血液量の不足が死因であることを否定する趣旨ではないと思われる 大量出血の原因については 術中に行われた胎盤剥離の途中に癒着胎盤が発見され その癒着部位からの出血と考えるのが順当だと思われる としている ( 同鑑定意見書 3 頁 ) ウ岡村意見 14
6 第 1 事案の概要 2B3 死因について 鑑定書では 死亡原因は述べていないが 大量出血の原因については 前置胎盤の癒着胎盤により 剥離面からの制御不可能な出血があったためである としている ( 弁 131 鑑定意見書 8 頁 ) なお 公判廷では 一般論とは思われるが 癒着胎盤のときに 大量出血によるショック死はあり得ると述べている ( 岡村尋問調書 236 項 ) (3) 小括死亡診断書および田中意見と池ノ上意見は 本件死因を おおむね 癒着胎盤の剥離部からの出血による失血死 ( 循環血液量の不足による死亡 ) であるとしている ただし 池ノ上医師は 何らかの致死的な要素が関与していたことも否定はできない と付言している 専門家意見の中には 死因として 大量出血や出血性ショックによる失血死を否定して 弁護人の主張する羊水塞栓や産科 DICとするものはなかった この点 判決も 死因は 出血性ショックによる失血死 であり 総出血量のうちの大半が胎盤剥離面からの出血であることが認められる と認定しており 死亡診断書や上記専門家意見に沿うものである 判決は 弁護人の主張していた羊水塞栓については 1 気分不快は血圧低下によると解される 2カルテに羊水塞栓の可能性の記載はない 3 他に羊水塞栓をうかがわせる徴候はない 4 田中意見も羊水塞栓の可能性は低いと結論づけている との理由により否定した また 産科 DICについても 仮に本件患者が産科 DICの状態に陥っていたとしても その原因として 癒着胎盤剥離面からの大量出血以外のことは考えられないとしている ( 判決 31~32 頁 ) 15
7 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 第 2 癒着胎盤の詳細について 本件が全前置胎盤 ( 前置胎盤のうち 胎盤が内子宮口を完全に覆うもの ) かつ 癒着胎盤であることついては 異論はない しかし 1 前回帝王切開創と胎盤付着部位との位置関係 2 胎盤が癒着していた部位 面積 深さ等 癒着胎盤の詳細については 争いがあった 1 病理組織学的診断 (1) 事実関係ア概略本件で病理の対象となりえたのは子宮と胎盤であったが 胎盤については (3) で後述するように病理検査等されていない 子宮については 以下のとおり 4 回に渡って病理診断されている 平成 16 年 12 月 29 日 : 組織診診断書 ( 証拠としては出ず ): 杉野医師 平成 17 年 6 月 27 日 : 鑑定書 : 杉野医師 平成 18 年 11 月 18 日 : 鑑定書 : 中山医師 平成 19 年 1 月 22 日 : 捜査関係事項照会回答書 : 杉野医師それぞれにつき 検査対象資料がどのように作成され 何が検査されたのか 検査対象資料はどのように保管されていたのか等を検討する イ子宮について ( ア ) 組織診診断書 ( 平成 16 年 12 月 29 日 ) a 病理検査に至るまで子宮は 12 月 17 日 ( 事故日 ) に外科的に摘出された後 大野病院でホルマリン固定 10 日後に 福島県保健衛生協会組織診課に送られたようである ( 検甲 6) 大野病院から 保健衛生協会の組織診課を介して 福島県立医科大学病理学第二講座研究室に依頼があり 同研究室の杉野医師によって本件子宮の病理診断がなされた なお 福島医科大学と保健衛生協会は標本の診断で提携している ( 杉野尋問調書 ( 以下 単に 尋問調書 という )53 頁 333~ 64 頁 429) b 標本等の作成同課で 杉野医師による組織の切り出しがなされ 子宮は縦に 6 分割され その1 部 ( ;4 個 ) は顕微鏡観察用の 4 枚のプレパラートにされた ( 検甲 6 尋問調書 80 頁 585) なお プレパラートに載せる組織片は長さ 2.5~3 センチ 幅 2~2.5 センチほどである ( 尋問調書 81 頁 594) 子宮を肉眼的に見て 後壁から 2 ヶ所 (3 番のブロックからと推定 : 尋問調書 138 頁 1051) 前壁から 1 ヶ所 頸部から 1 ヶ所の合計 4 枚の標本が作成されたことになる ( 尋問調書 56 頁 344) なお 鑑定書に添付された写真 6 はその際に作成された標本である ( 尋問調書 17 頁 106) 16
8 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 各資料の作成者は以下のとおり 子宮の組織片の切り出しをしたのは 杉野医師 パラフィンブロックを作ったのは 保健衛生協会組織診課 プレパラートを作ったのも 保健衛生協会組織診課( 尋問調書 82 頁 597) c 問題となりうる点こうした分業により 1ブロックからプレパラートが適正に作成されたのか 2プレパラートの中に異物が混入したのでは 3 複雑な作成過程で子宮の組織片が挫滅するのではとの質問が弁護側からなされているが 杉野医師は1 照合は確認した オートメーション化されている 2ゴミが入っていれば顕微鏡で確認できる 3 組織が挫滅しないよう精度管理をしているので確率はかなり低い ( アーチファクトの可能性はかなり低い ) とそれぞれ回答している ( 尋問調書 82 頁 601 ~) d 診断この組織診診断書は証拠として提出されていない もっとも 杉野医師によって 子宮後壁に胎盤の付着を認めます 筋層の浅層まで胎盤が癒着しています との診断がなされたと証言がなされた ( 尋問調書 131 頁 1001~) e その後の子宮組織の取扱病理検査の後 鑑定の依頼があるまでの5ヶ月間 本件の子宮は 保健衛生協会組織診課において ホルマリンに漬かった状態で 他の 20 名くらいの検体と一緒に バケツで 保管されていた ( 尋問調書 79 頁 574) なお 子宮をバケツに入れたのは杉野医師ではない ( 尋問調書 118 頁 894) そして 杉野医師は 病理検査後 鑑定書の依頼がくる 1 から 2 か月前にバケツから子宮を取りだしている ( 尋問調書 119 頁 900) その間 杉野医師の他にバケツから臓器を取り出した人はいない ブロック 34 の下部については復元できなかった ( 尋問調書 140 頁 1064) ( イ ) 鑑定書 ( 平成 17 年 6 月 27 日 ): 杉野医師 a 鑑定に至るまで平成 17 年 5 月 11 日 杉野医師は 富岡警察署の警視渡部から 子宮 ( ホルマリン固定された臓器 ) 及び子宮片 ( パラフィンブロック 4 個 プレパラート標本 4 枚 ) を鑑定するよう渡された b 標本等の作成杉野医師は 6 分割されていた子宮にさらに 2 分割を加えて 8 分割にし それらを更に分割して子宮のブロックを 39 個作成し ( 尋問調書 12 頁 68~) ひとつのブロックからひとつのパラフィンブロックを作って その断面を観察できるようにプレパラートを作った ( 尋問調書 80 頁 584) パラフィンブロックはブロックを水平に 5 ミリの厚さで削いで作る ( 尋問調書 93 頁 697) 検甲 6 写真 7 下の子宮片の左側断面 3~5 ミクロンのところだけがプ 17
9 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 レパラートになる ( 尋問調書 94 頁 702) そして 癒着が確認されたプレパラートにつき 5,6 枚の写真が撮影された ( 尋問調書 81 頁 592) なお 鑑定書では癒着の程度 ( 楔入 嵌入 ) の分類はなされていない c 問題となりうる点鑑定にあたって 杉野医師に胎盤の写真が示されたかどうかもあいまいであり 胎盤の状態も勘案したうえでの 子宮組織の診断がなされることはなかった 絨毛など胎盤の組織は他の組織よりばらけやすいことから プレパラート作成時にアーチファクトが生じた可能性についても考慮すべきか また 平成 19 年 2 月 19 日に 鑑定書に関する追加説明書が作成されているが 証拠請求されてはいないため ( 尋問調書 96 頁 720) 内容は不明である e その後の子宮組織の取扱子宮は ヒストパックという袋の中にホルマリンをいれて そこの中に子宮の残臓器を漬けて 固定しながら保管された ( 尋問調書 151 頁 1133) ( ウ ) 鑑定書 ( 平成 18 年 11 月 18 日 ): 中山医師中山医師は 弁護人からの依頼を受け 胎盤の写真 ( 胎児面 母体面 ) 子宮の組織片 プレパラート標本を検討し 胎盤癒着を診断した ( エ ) 捜査関係事項照会回答書 ( 平成 19 年 1 月 22 日 ): 杉野医師 a 鑑定に至るまで弁護側中山医師の鑑定書が提出されたことを受け 杉野医師は 検察からの依頼を受け 再度 プレパラート標本を顕微鏡で観察し 検査 診断を行う b 標本等の作成当該診断にあたり 新たに標本が作成されたわけではなく 写真の顕微鏡標本については鑑定書作成時に作成されたものである ( 尋問調書 92 頁 682) c その後の標本の取扱 1 月 22 日付で杉野医師から検察官に返却された ウ胎盤について ( ア ) 病理検査まで胎盤は 事故日翌日である 12 月 18 日の時点では存在し 担当医により写真撮影されている ( 弁 36~40) しかし 胎盤については病理検査にも出されず 胎盤が保健衛生協会組織診課に送られたとの記載 記録はない すると 18 日以降に大野病院で廃棄されたことになりそうである なお 杉野医師の検面調書 ( 検甲 8 平成 18 年 3 月 6 日付 ) において 杉野医師が胎盤を切った旨の供述をしているかのような尋問がなされているが ( 尋問調書 78 頁 562) 同検面調書は 弁護人から不同意にされ撤回されているので その内容は不明である 18
10 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 ( イ ) 杉野鑑定にあたって杉野医師の鑑定にあたって 胎盤は示されなかったのみならず 胎盤の写真を示されたかの記憶もあいまいであり ( 尋問調書 71 頁 490) 胎盤は廃棄されて もうないと警察から言われたと述べている ( 尋問調書 141 頁 1070) 警察から依頼された鑑定事項の4には 胎盤の付着位置 面積 深度 形状 との記載があるが 胎盤が 付着 している部分のみについての鑑定依頼と杉野医師は認識していたし ( 尋問調書 152 頁 1142) 実際にも 胎盤についての鑑定はなされなかった (2) 医学文献ア癒着胎盤の分類癒着胎盤は 床脱落膜の形成不全および全欠損により 胎盤絨毛が子宮筋層に直接癒着する胎盤異常 のことである 癒着胎盤は 絨毛の嵌入の程度により 以下の3 つに分類されている ( 文献 75: 高木ら 65 頁 1991 年 文献 76: 中山 38 頁 2002 年 ) 1 真正癒着胎盤 絨毛の癒着が筋層に留まる 2 嵌入胎盤 絨毛が筋層内に浸潤を示す 3 穿孔胎盤 絨毛が筋層を越え 子宮漿膜あるいは外膜に達する イ癒着胎盤の組織所見 ( ア ) 文献記載癒着胎盤の組織所見について 文献には 以下 1~4のとおり記載されている 子宮組織の所見 (3) について記載したものもあれば 胎盤組織の所見 (4) について記載したものもある (12は 胎盤組織について述べたものか子宮組織について述べたものか 文献の記述からは不明確である ) 1 絨毛は子宮筋層とはニタブッフ線維素層 Nitabuch's fibrin layered で分離されているか あるいは筋層内に穿通している ( 文献 77: 齋藤訳 53 頁 ) 2 組織学的に真正癒着胎盤では 絨毛は薄いガラス化したフィブリン膜を介して子宮筋層に接している このフィブリン膜内にはわずかに脱落膜細胞が観察されるが 床脱落膜の形態は示していない ( 文献 75: 高木ら 65 頁 ) 3 切除子宮の胎盤付着部の H-E 染色標本において 組織学的に ( 報告者注 : 切除子宮の頚管部に近い内腔面の ) 血腫部に胎盤絨毛が少数残存しており 絨毛が子宮平滑筋層と直接接している 存在すべき脱落膜 が見られない 癒着胎盤の所見である 絨毛と筋層の間に脱落膜を認めない ( 文献 78: 堤 19 頁 ) 4 癒着胎盤が肉眼的に診断されることは極めて稀である 診断には 胎盤の母体面から多数切出し 組織的に子宮筋層が含まれているのを確認する とされている ( 文献 76: 中山 38 頁 ) ただし 穿孔胎盤の症例では 子宮について 肉眼的に筋層および外膜に伸展する妊娠産物と それによる子宮頚管層の離断が認められる という写真も紹介 19
11 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 されている文献もあるので 肉眼的に診断できる症例がない訳ではないと思われる ( 文献 75: 高木ら 65 頁 ) ( イ ) 文献で発見し得なかったこと刑事事件では 杉野意見と中山意見において 癒着があることについては見解が一致していたが 癒着の範囲と嵌入の深さについて 見解の相違があった しかし 癒着の有無に関する病理診断だけでなく 癒着の範囲 嵌入の深さに関する病理診断の手法について研究 論述した文献は 発見し得なかった また 刑事事件では 癒着の範囲や嵌入の深さが病理診断結果で明確になれば 胎盤剥離の難易度や大量出血に至った医学的機序が明らかになる という前提のもとに 癒着の範囲や嵌入の深さについて 争いになっていたと思われる しかし 癒着胎盤の病理診断結果と臨床所見 予後との相関関係 ( どの程度の癒着の範囲 嵌入の深さがあったときに どのような臨床所見があり どのような予後をたどるとされているのか さらには 癒着の範囲 嵌入の深さに関する病理診断結果から 臨床所見や予後についてどの程度推測できるのか ) について研究 論述した文献も 発見し得なかった ウ文献記載に関するまとめ癒着胎盤の組織では (ⅰ) 存在すべき脱落膜が認められず (ⅱ) 絨毛は ( 薄いフィブリン膜を接して ) 子宮筋層と接している この点に関する医学文献の記載は 一致している 癒着の詳細 ( 癒着の範囲 嵌入の深さ等 ) の病理診断に関して研究 紹介した文献は 発見し得なかった したがって 癒着の範囲や嵌入の深さの診断手法について 広く認められた医学的知見があるのかどうかについては 明らかではなかった また 子宮や胎盤の病理診断の精度 難易度 限界 病理診断結果と臨床所見 予後との相関関係についても 文献からは 明らかではなかった (3) 専門家証人意見ア杉野意見本項では 杉野隆医師の証言内容 ( 第 5 回公判 ) について検討する ( ア ) 検討対象 a 杉野医師は鑑定にあたり 子宮を 8 分割にし それを更に分割して子宮のブロックを 39 個作成し ( 尋問調書 12 頁 68~) ひとつのブロックからひとつのパラフィンブロックを作り その断面をすべて観察できるようにプレパラートを作成し ( 尋問調書 80 頁 584) 顕微鏡で観察している なお 胎盤( 異常胎盤 ) は鑑定の対象とされておらず 杉野医師は 胎盤の写真を見せられたかの記憶もあいまいと証言している b さらに 鑑定がなされた後 ( 鑑定書作成 : 平成 17 年 6 月 27 日 ) 捜査関係事項照会回答書 ( 平成 19 年 1 月 22 日 ) において 再度 癒着胎盤を診断しているが 20
12 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 その際の検討対象は 鑑定時に作成された子宮片の顕微鏡標本である c また 鑑定に先立つ平成 16 年 12 月 29 日 大野病院から保健衛生協会の組織診課を介する依頼を受け 子宮の病理検査を行っている ホルマリン固定された子宮につき 杉野医師によって組織の切り出しが行われた 子宮は縦に 6 分割され その一部 ( ;4 個 ) は顕微鏡観察用の 4 枚のプレパラートにされた ( 検甲 6 尋問調書 80 頁 585) それらを検討対象として 組織診診断書が作成されたが 証拠としては提出されていない ( 尋問調書 53 頁 333~ 64 頁 429) なお 胎盤については 病理検査の対象とされておらず 胎盤が保健衛生協会組織診課に送られたとの記載 記録もない ( イ ) 癒着胎盤の評価杉野医師は 基本的には 絨毛組織と子宮筋層の間に脱落膜組織が介在しないものを癒着胎盤 と判断している つまり 顕微鏡標本を観察して 絨毛組織と筋層の間に脱落膜組織がないものを癒着胎盤と評価している ( 尋問調書 14 頁 79) この基準をもとに 本件における癒着胎盤の範囲及び程度については 以下のように述べている a 癒着胎盤の範囲杉野医師は 癒着胎盤の範囲につき 子宮後壁では摘出子宮下半分にかけて 子宮前壁では中央から右寄りの子宮下部と中央から右寄りにかけての子宮体部に認められる 癒着の範囲は広範囲に及ぶうえ 前回帝王切開創にあたる部分 ( 標本 27) にも癒着があった (a) 癒着が広範囲に及ぶと推定した理由一般論として 癒着胎盤は局所的にピンポイントで起こるものではなく ある程度面として 筋層に接着するか入り込んで起こるので その点を線で結んで範囲を決定するのは出来る ( 尋問調書 44 頁 274) 本件では 子宮前壁では 標本 が楔入胎盤 標本 が嵌入胎盤 子宮後壁では 標本 が楔入胎盤 標本 が嵌入胎盤であり これらをもとに推定すると 子宮後壁では摘出子宮下半分にかけて 子宮前壁では中央から右寄りの子宮下部と中央から右寄りにかけての子宮体部の広範囲に癒着が及んでいたといえる この点 本判決では 本件胎盤の形や大きさ 本件帝王切開創部分と胎盤との位置関係 臍帯を引いた時の胎盤と子宮の形 本件胎盤の剥離時の状況 妊娠末期の子宮の形や大きさなどをもとに 杉野医師指摘の標本部分全てに癒着胎盤があったかは相当に疑問としている (b) 前回帝王切開創にも胎盤癒着があったと診断した理由標本 27 には 縫合糸と その周囲に膠原繊維が多く見られる瘢跡組織が確認される 組織の損傷があってから時間が経過した古い傷と考えられるので その部分が前回の帝王切開創と判断 そして 標本 27 には前記のように嵌入胎盤 21
13 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 であるため 前回帝王切開創にも癒着胎盤があった この点 本判決では 標本 27 の部分は用手剥離等によらず剥離できるとする剥離時の状況 及び中山医師は標本 27 には癒着なしと判断していることから 癒着胎盤といえるか疑問としている (c) 鑑定書と捜査関係事項照会回答書での診断が異なった理由杉野医師は 鑑定書では癒着胎盤ではないと判断した複数の部位について 捜査関係事項照会回答書では癒着胎盤であると診断しており その理由につき 以下のように説明している ( 尋問調書 21 頁 134) Ⅰ 鑑定書では 紛らわしいところは絨毛組織と判断しなかったが 捜査関係事項照会回答書では よく見ると 絨毛組織の構造が残り 絨毛を構成する細胞が認められたところがあり 絨毛組織と診断した Ⅱ 栄養膜細胞と脱落膜細胞の区別は困難であり 鑑定書では 判断が難しいところは脱落膜としておいたが その後学習し 捜査関係事項照会回答書では 栄養膜細胞であると判定しえたため 癒着胎盤であると診断を変更した なお 栄養膜細胞と脱落膜細胞の区別の基準については 脱落膜細胞は細胞質が明るく 核が小さく 細胞が密集している一方で 栄養膜細胞は細胞質の色が濃く 核が大型で 細胞が密集していないと述べる ( 尋問調書 22 頁 139) (d) アーチファクトについて杉野医師は アーチファクトについて明示的に判断しているとはいえない 標本作成時の挫滅の可能性については プレパラートを作成するにあたっては組織が挫滅しないよう精度管理をしていることを理由に 挫滅の確率はかなり低いとしている ( 尋問調書 82 頁 601~) また 手術手技による挫滅の可能性については 標本 34 につき挫滅部分があることを認めたうえ 胎盤を剥離した際に挫滅が生じたのだろうとしており 否定しているとはいえない なお 標本 34 の挫滅が標本作成時に挫滅が生じた可能性については 固定した後に標本をつくる間に 細胞の核が引き延ばされたような形になることはあり得ないだろうことを理由に否定している ( 尋問調書 128 頁 984) b 癒着胎盤の程度 (a) 程度楔入胎盤 = 標本 嵌入胎盤 = 標本 筋層の 2 分の 1 程度まで侵入と推定 ( 尋問調書 52 頁 324~ 83 頁 606~) (b) 癒着の程度の判断方法 楔入胎盤: 絨毛組織が筋層に脱落膜を介さずに直接接する状態 嵌入胎盤: 絨毛組織が子宮筋層の中に入りこむ状態 穿通胎盤: 絨毛組織が子宮の外膜にまで達し 穿通する状態 ( 尋問調書 14 22
14 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 頁 81) 上記のように分類し 絨毛の子宮筋層への侵入の有無 深度によって判断 そして 癒着胎盤で嵌入している場合には子宮の面として筋層が侵食されて薄くなる 胎盤絨毛が子宮筋層の中に入り込むと子宮の筋は消失することを理由として 本件では 癒着胎盤がある部分の子宮壁が それに相応する他の部分 ( 癒着がない同じ高さの部分 ) の 2 分の 1 程度に薄くなっていたため 筋層の 2 分の 1 程度まで侵入と推定している この点 本判決では 癒着がない同じ高さの部分と比較する方法につき 胎盤残存部分は子宮収縮が悪くなることや収縮は区々であること等から誤差が大きいとされ 胎盤絨毛が子宮筋層の中に入り込むと子宮の筋は消失するとの考え方につき 消失の原因が不明であるし広く認知された考えとはいえないとされ 疑問が呈されている イ中山意見本項では 中山雅弘医師の証言内容 ( 第 8 回公判 ) につき検討する ( ア ) 検討対象中山医師が証言にあたり検討した資料は 胎盤の写真 ( 胎児面 母体面 ) 子宮の組織片 プレパラート標本である 杉野医師と異なり 胎盤の現物を直接観察はしていない 胎盤の写真は平成 16 年 12 月 27 日 ( 胎盤が摘出された日 ) の午後 10 時から 11 時頃に撮影されたものである この点 中山医師は このような写真であれば 病理診断による鑑定に十分問題なく使えると述べている ( 尋問調書 20 頁 108) 子宮の組織片は ホルマリンに残っていた組織で 肉眼による観察を行い プレパラート標本は パラフィン包埋された標本で 顕微鏡写真撮影を行ったものである 判決も指摘するところであるが 中山医師が検討した胎盤に関する資料は写真のみであり 現物を見るのと比べ 果たして適切な鑑定を行うことができるのか疑問がある ( 判決では 撮影時の光線の加減等により 胎盤の現物を観察することに比べて鑑定の正確性には自ずと限界がある との指摘がある ( 判決 34 頁 ) ) ( イ ) 胎盤病理鑑定の一般論中山医師は 弁 151 号証 鑑定書 ( 追加 ) において 胎盤病理鑑定の手法や及び留意点について述べている a 病理鑑定の手法癒着胎盤の鑑定手法は 子宮の組織標本を観察し 絨毛が子宮筋層と接し あるいは侵入しているかどうかを観察することにより行う その際 胎盤の大きさ 形状 重さ 母体面の状態なども考慮する 子宮及び胎盤の肉眼的観察も重要であり これらを総合考慮して判断することになる 臨床上の所見も重要であり 可能であれば臨床医が立ち会い 胎盤の付着部位や 23
15 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 出血部位を確認しながら標本を作製することが適切である b 病理鑑定の留意点 1 顕微鏡観察用の組織標本の作製方法 摘出した臓器をホルマリン水溶液によって固定する ホルマリン固定された子宮の切り出しを行い 切片を作成する 切片をパラフィンで包埋する( パラフィンブロック ) ミクロトームと呼ばれる機械で数ミクロンから十数ミクロンの薄さにスライスする プレパラートにのせる パラフィンブロックのスライスからパラフィンを除去し 染色を加えて完成させる 2アーチファクトについて本件では 用手剥離の後 クーパーによる剥離を行い 子宮が摘出されている したがって 1 手術手技によって観察対象となる絨毛などの組織が破壊されていること 2 絨毛などの組織が本来の場所から移動して摘出時にすでに別の部位の表面に付着している可能性があることを考慮すべきである 胎盤の組織は他の組織よりもばらけやすいことにも留意すべきである 3 問題点判決では 上記 鑑定書 ( 追加 ) 作成の際に改めて子宮片 顕微鏡標本の観察をしていない上 アーチファクトについて当初の鑑定で述べておらず杉野鑑定弾劾目的が過度に強調されている旨指摘されているが ( 判決 35 頁 ) 胎盤の変性等も考慮すれば アーチファクトも無視できない要素と考えられ いかなる基準でアーチファクトか否かを判断するのか検討を要すると思われる ( ウ ) 癒着胎盤の判断中山医師は 基本的には 胎盤側であれ子宮壁面側であれ脱落膜組織の残存が認められるときは癒着胎盤ではない と述べ ( 尋問調書 30 頁 179) 本件における癒着胎盤の範囲及び程度については以下のとおり述べる a 癒着胎盤の範囲 1 子宮前壁について子宮前壁については 肉眼では癒着胎盤は認められないとする ( 弁 151 鑑定書 ( 追加 ) 尋問調書 32 頁 192) その理由としては 標本 23~39の組織の観察 胎盤母体面右側部分に光沢のある脱落膜が観察されること 子宮切片の前壁内側部分はなめらかであることが挙げられている ( 弁 151) また 今回帝王切開創より上の部分( 標本 24-1~3) 標本 28,29,33には陳旧性の壊死絨毛が観察されるため絨毛膜無毛部であり 胎盤が付着していたとは考えられないとする ( 弁 151 尋問調書 30 頁 181) 2 子宮後壁について 24
16 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 子宮後壁については 癒着胎盤が肉眼的に確認できるとする ( 弁 130) その根拠として 癒着胎盤と考えられる部位は 胎盤母体面全体像において 中央左側部分にあり ( 別紙 2) その他の部分は白く光沢性があり脱落膜が存在していること ( 弁 130,151) 残存子宮片の後壁に対応する部分はざらざらした感じがあって滑らかでないこと ( 前壁の方は滑らかである )( 尋問調書 3 2 頁 190) 胎盤写真と見比べると脱落膜がない部分とほぼ一致し( 尋問調書 33 頁 195) その部分が癒着部分であると指摘する また 癒着部分には 鋭利な器具を使った剥離の痕跡はないと述べる ( 尋問調書 33 頁 197) この点 判決は 胎盤の写真のみによる鑑定の限界に関し 現に 同医師 ( 注 : 中山医師 ) が 脱落膜が欠落している部分として図示した範囲が 鑑定書 ( 弁 130) と公判廷とで一部が異なり 異なっている部分の光沢と一致している部分の光沢に違いを感知できないことからすれば 本件胎盤の写真を根拠として癒着の有無を正確に判断することには困難が伴うと考えざるを得ない ( 判決 34 頁 ) と指摘するが 直接胎盤を観察していないことによる限界をどのように捉えるか また 脱落膜の存在の判断基準は何か 検討を要すると思われる 3 絨毛の残存について組織切片で絨毛が観察される部分は幅広く 後壁の子宮底部周辺や前壁にも認められると指摘する ( 弁 130) 具体的には標本 6,9-1および2, 標本 14-1~3, 標本 24-1~3, 標本 26, 標本 27-1~4, 標本 29, 標本 30,31のプレパラート標本 ( 弁 130,151) そして その観察結果につき以下のとおり指摘する この部分は子宮壁との間に脱落膜が介在し癒着胎盤ではない( 弁 130) 絨毛は脱落膜に接し フィブリンと共に存在し しばしば変性 梗塞を起こしていた 胎盤外膜の組織が子宮底や前壁に広く存在し 膜内に変性絨毛が存在したと推測される ( 弁 130) 標本内のごく一部に絨毛が観察され その量は極めて少ないこと 表面に浮遊する膜状の部分にごく一部が見られることから 他の部位からの移動を含むアーチファクトの可能性を否定できない ( 弁 151) 絨毛があるからその上に胎盤がのっかっていたという推論は無理( 尋問調書 34 頁 203) b 癒着の程度 1 程度楔入胎盤 = 標本 3,4-1~2,7,8-1~2,11,12,13,19-1~2 嵌入胎盤 = 標本 17-1~2,20,21,22-1~3 2 癒着の程度の判断方法 25
17 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 顕微鏡標本を観察し 絨毛が子宮筋層のどの程度の深さまで侵入しているか ( 浸潤度 ) で判断するのが通常の方法である ( 弁 130,151) 標本 17-1~2,20,21,22-1~3は 筋層全体の5 分の1 程度であり 浅層の嵌入胎盤と判断できる また 嵌入胎盤である後壁の顕微鏡的観察で筋融解の所見は認められない ( 弁 151 尋問調書 40 頁 247) 判決では 杉野鑑定同様 中山鑑定の方法も誤差を含むとされたが 両者とも本件の癒着 胎盤が嵌入胎盤であることは一致しているため 争点の判断に質的な影響を与えないとして 5 分の 1 と認定している ( 判決 38 頁 ) (4) 文献 両専門家証人意見の相違点ア両専門家証人意見の比較 ( ア ) 脱落膜組織の有無杉野医師 中山医師共に 脱落膜組織の有無によって癒着胎盤か否か判断するという点では一致している ( 絨毛組織と筋層との間に脱落膜組織がないものを癒着胎盤と診断する ) が 脱落膜組織の有無の具体的な判断手法が異なっている 杉野医師は 脱落膜細胞の特徴を 細胞質が明るく 核が小さく 細胞が密集している と述べるのに対し 中山医師は 白く光沢性がある と述べる その結果 杉野医師と中山医師が各々診断した癒着胎盤の範囲は 杉野医師の方が癒着を広範囲に認める結果となっている しかしながら 両者の判断基準は抽象的であるため 結論に差異が生じる理由は不明確である ( イ ) アーチファクトの有無絨毛の見られる標本について 中山医師は 標本内のごく一部に絨毛が観察される場合や表面に浮遊する膜状の部分にごく一部が見られる場合などはアーチファクトの可能性も否定できないと指摘し したがって 子宮筋層と絨毛が接している標本であっても癒着胎盤ではないと診断している標本もあるが 杉野医師は 標本作成時の挫滅の可能性はかなり低いとして 明言はしないものの アーチファクトの可能性を極めて低いものと評価していると考えられ その結果 広汎に癒着胎盤と診断するに至っていると考えられる しかし この点についても その判断基準は必ずしも明確ではない イ文献との相違点癒着胎盤の組織では (ⅰ) 存在すべき脱落膜が認められず (ⅱ) 絨毛は ( 薄いフィブリン膜を接して ) 子宮筋層と接しているという点については 両専門家証人意見と文献は一致していると思われる しかし それ以外の点については 癒着の詳細 ( 癒着の範囲 嵌入の深さ等 ) の病理診断手法に関する文献を発見し得なかったので 両専門家証人意見の鑑定手法と文 26
18 第 2 癒着胎盤の詳細について 3B1 病理組織学的診断 献が一致しているかどうかは不明である 2 診療経過を踏まえた検討 (1) カルテ記載ア胎盤付着部位について手術当日付のカルテには 胎盤付着部位をみると 後壁ほとんどが胎盤でおおわれ 一部前置胎盤であった 胎盤付着部位 : 実際は メインは 後壁 ママ と記載されている * 本件事故後に病院が作成し 遺族に交付した 平成 16 年 12 月 26 日 (* 担当医 ) 説明 の文書には 第一回帝切 前置胎盤のリスクはあったが 子宮下部横切開創付近 ( 子宮前壁 ) への胎盤付着は 横半分のみであったこと 胎盤付着のメインは後壁だった と記載されている イ癒着胎盤の部位について胎盤が癒着していた部位については 記載がなく 手術当日付のカルテに 癒着胎盤 (++) とあるだけである 平成 16 年 12 月 22 日付組織診検査依頼票 ( 子宮 ) の 現症経過及び所見 には 子宮後壁 ~ 下部にかけての癒着胎盤認め 依頼趣旨 には 前壁 後壁 子宮下部の癒着胎盤の程度 と記載されている (2) 担当医の供述ア胎盤付着部位について前回帝王切開創と胎盤付着部位の関係について 供述調書では 胎盤の付着位置と帝王切開創の関係は気にしていなかったし 見ても分からなかった と述べている ( 検乙 10-7) 他方 公判廷では 前回の帝王切開の傷あとと思われる部分には胎盤はなかった と述べており ( 担当医 7-315~317,320) 供述にくい違いがみられる イ癒着胎盤の部位について供述調書では 胎盤を手で剥離することができなくなったとき 剥離している場所が後壁だったので 後壁だし まさか癒着胎盤ではないよなと思った ( 検乙 17-3) 胎盤娩出後 子宮の後壁下部から湧き出るように出血していることが分かった時 出血したのは癒着胎盤が原因に違いないだろうと思っていた ( 検乙 16-3,5) と述べており 癒着部位は後壁であるとしている 公判廷でも 後壁に癒着胎盤があったとの供述をしている ( 担当医 9-81) (3) 専門家証人意見田中意見 池ノ上意見 岡村意見は 診療経過を踏まえて後方視的に見た癒着胎盤の 27
19 第 2 癒着胎盤の詳細について 4B2 診療経過を踏まえた検討 詳細 ( 癒着の部位 面積 深さなど ) について検討していない 癒着胎盤の詳細と大量出血の関連についても 検討していない 3 小括以上のとおり 病理組織学的診断と診療経過を総合考慮して 後方視的にみたときに 本件癒着胎盤の詳細はいかなるものだったのかは 判然としなかった 28
20 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) 第 3 術前の診療経過について 1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) (1) 医学文献ア前置胎盤についての診断前置胎盤の確定診断のためには 経腟超音波断層法が最も有用であるとされている ( 文献 頁 2007 年 ) イ癒着胎盤についての診断 ( ア ) 癒着胎盤のリスク因子 発生頻度および診断方法癒着胎盤の病因は 子宮内の炎症や外科手術による子宮壁の瘢痕組織の存在により 脱落膜の発育不全 発育障害が起こり 床脱落膜の欠如が起こった結果 胎盤絨毛が直接子宮筋層に付着ないし侵入するために起こると考えられている ( 文献 頁 ) そのリスク因子としては 子宮内膜炎 過度の子宮内掻爬 前回胎盤用手剥離 前回帝王切開術 筋腫核出術 子宮奇形手術など子宮内膜の炎症や損傷によるものに加え 先天性子宮内膜形成不全 子宮奇形 子宮筋腫 多産などがあるが 特に前置胎盤での癒着胎盤合併頻度が高いとされている ( 文献 頁 ) 癒着胎盤の発生頻度については 前置胎盤の約 5~10% に癒着胎盤が合併し 帝王切開既往回数 1 回の前置胎盤癒着胎盤頻度は 14% であると述べる文献がある ( 文献 32 ガイドライン 2008) 他方では Clark らの報告によれば前置胎盤に癒着胎盤が合併する頻度は5% であるのに対し 1 回帝切既往の前置胎盤では 24% となり 2 回以上では 47% 4 回以上では 67% にもなるとの文献 ( 文献 頁 ) や 全前置胎盤における嵌入 穿通胎盤発症率は 帝王切開既往 0 回の場合 1.12% であるが 1 回では 37.8% 2 回では 46.6% であると報告する文献 ( 文献 頁 ) もある また 特に前回帝切既往の子宮前壁 ( 子宮創部 ) 付着前置胎盤は高頻度で癒着胎盤となるとする文献 ( 文献 頁 ) や 既往帝王切開術 1 回で 35 歳未満の場合 子宮切開創瘢痕部上に胎盤がない場合の癒着胎盤発生頻度は 3.7% 子宮切開創瘢痕部上に胎盤がある場合は 15.9% であるとする文献 ( 弁 9 10) もある この意味で 帝王切開既往の場合 胎盤の位置確認は重要であると考えられる なお 既往帝王切開前置癒着胎盤 26 例の平均出血量は 3,915mlであるとの文献 ( 文献 頁 ) や 子宮摘出を要する癒着胎盤の平均出血量は 3,500ml(900 ~21,000ml) とする文献 ( 文献 頁 ) があるように 癒着胎盤の場合には大量出血により母体の生命に危険が及ぶ可能性があるとされている 穿通胎盤における母体死亡率が7% であるとする文献もある ( 文献 頁 ) 癒着胎盤の診断は 多くの医学文献において 超音波断層法 カラードプラ法 MRI 検査 母体血中 α-プロテインの測定 尿中潜血の測定 術中所見などを組み合わせて行うものとされている 以下 診断方法を個別に述べる 29
21 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) ( イ ) 画像検査 ~ A 超音波断層法エコー検査により癒着胎盤を示唆する所見は 文献によれば次のとおりである 文献 80 日本産科婦人科学会雑誌 60 巻 1 号 206 頁 2008 年 1irregularly shaped placental lacunae( 胎盤実質内の不規則形をした無エコー領域 ) 2loss of the retroplacental clear space ( 胎盤後方の低エコー域の消失 ) 3thinning of the myometrium overlying the placenta( 胎壁付着部の子宮筋層の菲薄化 ) 4protrusion of the placenta into the bladder( 胎盤の膀胱への突出 ) 5increased vascularity of the uterine serosa-bladder interface( 子宮漿膜と膀胱壁の境界の血管増生 ) 6sponge like echo in low uterine segment and/or cervix( 子宮下節から頸部にかけてのスポンジ様エコー ) 7turbulent blood flow through the lacunae on Doppler ultrasonography ( カラードプラ像での lacunae における乱流の増加 ) 癒着胎盤の病態からこれらの超音波所見の意味を考えてみると 2が最も直接的な所見といえる 文献 21 産婦人科の実際 57 巻 6 号 900 頁 2008 年 1Clear zone の消失子宮筋層と胎盤組織との境界には低超音波域があり clear zone (echoluce nt space) といわれる clear zone は基底脱落膜を示す所見と考えられている 癒着胎盤では基底脱落膜が欠損し 胎盤絨毛と子宮筋層とが直接接触する 従って 基底脱落膜を示す clear zone の消失は 癒着胎盤を直接的に示す所見であり 特に重要と考えられる 2Placental lacuna の出現胎盤内から子宮筋層内に 辺縁不正の 虫食い像のような低輝度の液体貯留像が見られ lacuna と呼ばれる その病態の詳細は不明であるが 癒着胎盤との関連性は高い 診断感度は約 80~90% であり また lacuna が多いほど癒着胎盤の可能性も高いことが知られている Lacuna 内は液体で 乱流を伴う血流を認めることが多い ( なお 同文献には この血流をカラードプラ像により確認した図版が掲載されている ) 3 膀胱境界線の不正子宮頸部と膀胱との間の漿膜は 通常 超音波輝度の高いスムーズな線として描出される 癒着胎盤ではこの線が途切れ途切れとなり また胎盤組織が膀胱側に突出するように見えることがある 30
22 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) この 2 所見は癒着胎盤に特徴的であるが診断感度は低く すべての癒着胎盤に 認められるわけではない 他方において 文献上は妊娠中の超音波による癒着胎盤の診断は困難とされ ( 検甲 頁 2003 年 ) 特に癒着部位が子宮後壁の場合( 文献 頁 2007 年 ) は胎児の影になって所見がとりにくいとの見解もある ( 弁 137) また 嵌入胎盤や穿通胎盤など侵入程度が高度な場合や広範なものは確診できるが 癒着胎盤 (placenta accrete) や癒着が部分的な場合 疑うことはできても確診は困難であるとする文献もある ( 文献 81 産婦人科の実際 57 巻 12 号 1974 頁 年 ) ( ウ ) 画像検査 ~ Bカラードプラ法カラードプラ法は 超音波を用いて血流の存在や量 速度等を測定する検査方法である この方法の有用性については 文献上 次のような説明がなされている 癒着胎盤では胎盤から子宮筋層内へ さらに筋層外にまで入り込むような血管像の増強を認める場合がある 胎盤と周囲組織との間に あるいは膀胱境界線に豊富な血流乱流を認める場合もある このようなカラードプラ所見が癒着胎盤に特徴的か否か あるいは通常の超音波画像所見以上に癒着胎盤の正診率を上げるか否か 結論には至っていない また 前述のごとく placental lacuna 内にも血流を認めることが多く lacuna か否かの鑑別診断に有用である ( 文献 頁 2008 年 ) 文献によっては 超音波断層検査に比し異常血管像や血流の観察にはより有用で 正診率をあげる ( 検甲 頁 2001 年 ) とか 超音波断層法と併用することで診断の精度が向上すると思われる ( 検甲 頁 2004? 年 ) とするものもある一方で 現在のところ グレースケール断層像での成績を超えるエビデンスは示されていないとの報告もある ( 文献 80 日本産科婦人科学会雑誌 60 巻 1 号 206 頁 年 ) ( エ ) 画像検査 ~ CMRI 検査 MRI 検査については 超音波検査では得られない所見 特に癒着部分の範囲の描出に優れているので 超音波検査に加え MRI 検査を併用することも有用と思われるとする文献 ( 文献 81 産婦人科の実際 57 巻 12 号 1974 頁 2008 年 ) がある その一方で 特に子宮後壁付着の癒着胎盤の診断に有用であるとの報告があるが 超音波断層法やカラードプラ法以上の所見は得られることが少ないとの文献 ( 検甲 頁 2004? 年 ) や 現時点では MRI 画像が超音波画像よりも優れているという明らかな事実は示されておらず 妊娠後半期に入ると子宮筋層が伸展し菲薄化するために 癒着胎盤の診断精度も下がると推測されているとの文献 ( 文献 頁 2008 年 ) もある また MRIを用いた分娩後の癒着胎盤の診断は報告されているが 妊娠中の癒着胎盤の診断は胎児の動きによるアーチファクトの問題や 超音波断層法やカラードプラ検査以上の所見が得られないことから 現在のところすぐれた診断法とはい 31
23 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) えないが 子宮後壁付着の癒着胎盤では超音波診断は困難で MRI 検査のほうがすぐれているという文献 ( 文献 頁 2000 年 ) もある ( オ ) 母体血中 α-フェトプロテイン胎児に異常の見つからない 妊娠中期の母体血中 α-フェトプロテインの上昇は癒着胎盤の可能性があり 画像診断と組み合わせることにより 正診率を上げられるとされている ( 検甲 頁 2001 年 ) ( カ ) 血尿血尿は膀胱への穿通胎盤の症状であることがあり 前置胎盤前壁付着の血尿例では膀胱鏡が決め手となるとされている ( 検甲 頁 2001 年 ) ( キ ) 子宮切開前の術中所見 ~ 子宮前壁から膀胱周辺の血管怒張など子宮瘢痕創部周囲の血管が無数に怒張しているような場合や ( 弁 143 引用資料 頁 竹田省ほか 1996 年 ) 子宮壁の紫色への変色あるいは胎盤が透けて見える場合には癒着胎盤の可能性が高い ( 検甲 頁 2000 年 ) とされている また 分娩前あるいは帝王切開前に癒着胎盤の診断を確実に付けておくことは困難であり リスク因子や画像診断を用いても 全例を分娩前に診断することは難しく 最終的には開腹所見や胎盤剥離時の臨床所見から診断しなくてはならない 開腹時の子宮前壁 ~ 膀胱周辺部の漿膜に 怒張した血管がないかどうかは非常に重要所見である われわれは 帝王切開の既往がない前置癒着胎盤症例においても同所見を認めたことがあり 本所見を認めた場合は十分に人員を揃えてから児娩出を開始するべきと考える ( 文献 82 臨床婦人科産科 63 巻 1 号 55 頁 2009 年 ) とする文献もある なお 子宮壁の血管怒張については 後記 頁の第 4 2(1) ア ( イ ) 同 (2) も参照されたい ( ク ) 小括以上のとおり 前置胎盤や帝王切開既往は癒着胎盤発症の可能性を高めるリスク因子であり 癒着胎盤の場合には大量出血により母体の生命に重大な危険が及ぶ可能性があるとされている そして 癒着胎盤の術前診断において中心的な方法は画像検査である したがって 帝王切開既往歴のある前置胎盤例であるとの情報を得た場合には 癒着胎盤の可能性を考慮し 術前の画像検査において 胎盤の位置 すなわち前回帝王切開創上に胎盤がかかっているか否かを十分に観察すると共に clear space (clear zone) の消失 placental lacunae の存在 その他の癒着胎盤を示唆する所見についても細心の検査 診断を行うことが求められていると思われる また 補助的な検査方法として母体血中 α-フェトプロテインや尿潜血の検査が参考となりうるほか 開腹時の子宮の所見 ( 特に血管の怒張状況 ) がこれらを補うものとしてあるとされている しかし 他方で 癒着胎盤術前正診率向上に超音波 / カラードプラ検査 MRI 検査等が寄与したとの報告もあるが 前置癒着胎盤を確実に術前診断あるいは否定 32
24 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) する方法は現在のところまだない ( 文献 32 ガイドライン 2008) とされているように 癒着胎盤 ( 特に子宮後壁 ) の術前診断は困難であると指摘されている なお 本件判決は 癒着胎盤のリスク因子 発生頻度および診断方法について次のように述べている 癒着胎盤は床脱落膜の欠損により起こり 2000 から 4000 例に1 例発症するとの報告がある 癒着胎盤を発症しやすいリスク因子としては 前回帝王切開既往 前置胎盤 ( 子宮下部は脱落膜がないか あるいは薄いため ) が挙げられる これらのリスク因子の中でも帝王切開既往が最も多く 20 から 30% が次回妊娠時癒着胎盤となる可能性を持つとの文献もある 特に 前回帝王切開既往の子宮前壁 ( 子宮創部 ) 付着前置胎盤は 高頻度で癒着胎盤となる 前置胎盤で癒着胎盤となる頻度は5% であるが 前回帝王切開の前置胎盤では 2 4% となるとの報告もされている 癒着胎盤であるか否か 及び癒着の程度は 摘出子宮の病理検査により確定的に診断され 顕微鏡的な観察以前に癒着胎盤の3 分類を確定的に診断することは不可能である 妊娠中は 超音波断層法 カラードップラ法 MRI 検査などを用いて診断を行う その他 子宮下部前壁に付着した穿通胎盤で膀胱へ穿通した場合 膀胱鏡により絨毛組織の膀胱壁への侵入が確認されることがある 少なくとも 胎盤組織が子宮筋層に入り込んでいて 子宮の外側から見えるような明らかな穿通胎盤があれば 子宮切開前に子宮を見て 肉眼的にある程度診断可能である ( 判決 37 頁 ) 以上を前提として 術前診断に関する事実関係について検討する (2) 事実関係以下 本項においては 原則として 証拠から分かる事実 と 判決の認定 を対比しつつ述べる ア前置胎盤についての術前診断 証拠から分かる事実 県立大野病院医療事故調査委員会作成の 平成 17 年 3 月 22 日付け報告書 によれば 担当医は 本件患者の妊娠初期より超音波検査で胎盤付着部が後壁であり低置胎盤であると診断し 平成 16 年 8 月 3 日の妊娠第 17 週からは前置胎盤であることも認識していたとされている この点 担当医は 第 7 回公判において 平成 16 年 10 月 22 日の超音波検査で前置胎盤であるという確定診断をしたこと また 前回帝王切開で全前置胎盤であり胎盤が前壁にかかっていると認識していたことを認めている ( 担当医
25 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) ~567) 判決の認定 担当医は 平成 16 年 6 月 1 日及びそれ以降の複数回の超音波検査において 本件患者の胎盤を子宮の低い位置に確認し 同月 15 日には 胎盤が後壁にあることを確認した 8 月ころからは 本件患者が前置胎盤である可能性について医師記録に記載していたが 10 月 22 日 全前置胎盤であると診断した ( 判決 22 頁 ) イ癒着胎盤についての術前診断 ( ア ) 総論前述のとおり 帝王切開既往歴のある前置胎盤例については 癒着胎盤の可能性を疑い 画像検査により 前回帝王切開創上に胎盤がかかっているか否か 及び癒着胎盤を示唆する所見を十分に観察することのほか 補助的に母体血中 α-フェトプロテインや尿潜血の検査がある そこで 第一に 担当医が前回帝王切開創と胎盤との位置関係 及び癒着胎盤の発生頻度につき どのように認識していたかを検討する ( 後記 ( イ )( ウ )) 第二に 担当医が癒着胎盤を示唆する各所見につきどのような認識を持っていたかを 個別の検査項目ごとに検討する ( 後記 ( エ ) ないし ( ク )) 第三に 本件患者における癒着胎盤の可能性についての担当医の認識を推測する手がかりのために 担当医が本件手術スタッフ 本件患者等及びA 医師に対して説明した内容を検討する ( 後記 ( ケ ) ないし ( サ )) 最後に 小括を述べる ( 後記 ( シ )) ( イ ) 前回帝王切開創と胎盤との位置関係についての認識 証拠から分かる事実 前回帝王切開創と胎盤との位置関係について担当医がどのように認識していたかについては 担当医の供述にくい違いがある a 捜査段階捜査段階において 担当医は 手術前にエコーなどで胎盤の付着位置を確認した結果 胎盤が前回帝王切開創に少しかかっているのではないかと考えていた旨を述べている ( 検乙 10-6) とはいえ 妊娠後期には 前回帝王切開創の位置は分からなくなっており 正確な位置関係が把握できていたわけではなかった 一般的な切開位置から推測した結果 まず子宮を正面から見た場合には 胎盤が前回帝王切開創の左側の部分に一部かかっているのではないか また 子宮を横から見た場合には ちょうど胎盤の端が前回の帝王切開創にかかっている感じではないかと考えていた ( 検乙 11-4~6) b 公判段階公判段階において 担当医は 胎盤が前回帝王切開創に掛かっているという認識があったことを否定した 34
26 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) すなわち 第 7 回公判においては 胎盤が前回帝王切開創に掛かっているのではないかという疑いは持っていなかった 掛かっていないとは思っていたが ただ医学的には絶対ということはないので 掛かっている可能性を完全には否定できないというレベルでの疑いはちょっとあった旨を述べている ( 担当医 ) さらに 第 11 回公判においては 12 月 6 日の経腹超音波検査で 前回帝王切開創と今回の胎盤の位置関係が重なり合っていないということを確認し 手術をする時点では 前回帝王切開創付近には今回の胎盤が掛かっていないという認識であった旨の供述をしている ( 担当医 ~162) 判決の認定 担当医は 平成 16 年 5 月 6 日の初診時 本件患者に対し 超音波検査を実施した この際 胎児の姿を確認できず 前回帝王切開創を確認した 前回帝王切開創の位置は おおむね通常産科医が切開する場所であったが 胎児の成長に伴い子宮壁が薄く伸びるにつれ 以後の超音波検査では確認することができなくなった ( 判決 22 頁 ) ( ウ ) 癒着胎盤の発生頻度についての認識 証拠から分かる事実 担当医は 福島県立医大で藤森敬也医師から癒着胎盤の発症率について教わったことを基に 前回帝王切開 前置胎盤で胎盤が前回の帝王切開創にかかっている場合の癒着胎盤の確率は 24% 前回帝王切開 前置胎盤で胎盤が前回の帝王切開創にかかっていない場合の癒着胎盤の確率は3~4% であると認識していた ( 検乙 10-4) ただし 癒着胎盤の確率が 24% と高くなるのは 前回の帝王切開創を胎盤がべったりと覆っている場合だと考えていたので 胎盤の端が前回の帝王切開創にかかっている本件患者の場合は そこまで癒着の確率は高くないだろうと考えていた ( 検乙 11-6) また 癒着胎盤が起こるメカニズムについては 胎盤が 前壁にあるか後壁にあるかのほうが 重要であり 前壁にあって 帝切創に載ってるというようであれば その帝王切開創のところに癒着が起こりやすいが 一部とかいう感じの場合はちょっと違うかなというふうには思って いた ( 担当医 ) 判決の認定 担当医は 福島県立医大において 前回帝王切開で前置胎盤のとき 前回帝王切開創に胎盤がかかっている場合の癒着胎盤の発症確率は 24% であり 患者が 35 歳未満で 後壁付着である場合の癒着胎盤の発症確率は3 4% であると学んでおり 本件手術の際にもそのような認識であった ( 判決 23 頁 ) ( エ ) 画像検査 ~ A 超音波断層法 証拠から分かる事実 公判において初めて 担当医は 12 月 3 日の経腟超音波検査をした際には 前 35
27 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) 壁部分に低輝度子宮筋層部分を確認しており もし同部分が見えなかったら写真で残して所見を書いている旨を述べている ( 担当医 ) なお 前述のとおり 胎盤と子宮筋層間の低輝度領域 すなわち clear space (clear zone) が消失していることは癒着胎盤の最も直接的な または特に重要な所見であるとされる 判決の認定 判決は上記のように 担当医が複数回の超音波検査を実施して胎盤の位置を確認し 全前置胎盤であることを診断したが 前回帝王切開創の位置は次第に確認できなくなったことを認定している しかし 担当医が術前の超音波検査において clear space(clear zone) の消失 その他の癒着胎盤の所見を確認していたか否かについて 判決は 本件手術前の諸検査結果の中に 癒着胎盤を明確に裏付ける結果は残されておらず ( 判決 38 頁 ) とするのみである ( オ ) 画像検査 ~ Bカラードプラ法 ( 超音波所見 ) 証拠から分かる事実 担当医は 12 月 3 日 カラードプラ法により 胎盤の内部でとどまっているような血流を見たが その血流は 量的にはかなり少なく 子宮筋層のほうに向かっていくような血流はなかった ( 担当医 ) この点につき 担当医は 前置胎盤の血流と癒着胎盤の血流とは 血流の豊富さが全く違うので区別が付く旨を述べている ( 担当医 7-650) また 12 月 6 日の経腹超音波検査では 膀胱と子宮が接する辺りに血流を認めた この血流は 尿に接していることから膀胱組織内のものであると考えられ 胎盤と離れて存在していたという ( 検乙 9-6 担当医 ) なお 前述のとおり カラードプラ法により 胎盤から子宮筋層内へ さらに筋層外にまで入り込むような血管像の増強を認める場合や 胎盤と周囲組織との間に あるいは膀胱境界線に豊富な血流乱流を認める場合があるが かかる所見が癒着胎盤の正診率を上げるか否かについては 結論が出ていない 他方 血流が lacuna 内のものであると認められれば 癒着胎盤の可能性が高まるとの報告がある 判決の認定 担当医は 平成 16 年 12 月 3 日 本件患者に対し 経腟超音波検査を行ったところ 血流が豊富であり 尿中潜血がみられた そこで 血流 (+) 尿中潜血 (±) につき 癒着胎盤 又は前置胎盤による出血に注意が必要である旨医師記録に記載した また 12 月 6 日 カラードップラー検査を行ったが 芋虫状の血流が見られたので 医師記録に 膀胱下血流 (+) と記載した ( 判決 22 頁 ) ( カ ) 画像検査 ~ CMRI 検査 証拠から分かる事実 36
28 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) 担当医は MRI 検査をやらなかった旨を述べている ( 担当医 7-710) その理由としては 超音波検査でしっかり見ていたこと MRI 検査による癒着胎盤の診断の信用性が低かったこと 普通の後壁付着の前置胎盤でMRIを実施すべきだという考えはなかったことなどを挙げている ( 担当医 ) また 術前においてA 医師に応援を依頼したとき 胎盤の位置は子宮後壁がメーンである旨を伝えた後 同医師からMRIをやったのかと聞かれたが なんでだろうと 逆に考えただけであった ( 担当医 ) なお 前述のとおり MRI 検査の有用性については 争いがある 判決の認定 本件手術当日 担当医は A 医師に架電して応援を依頼した際 MRI 検査は実施していない旨を述べた ( 判決 23 頁 ) ( キ ) 母体血中 α-フェトプロテイン 証拠から分かる事実 カルテに記載はなく 担当医も血中 α-フェトプロテインについて言及していないので これを検査していないと思われる 判決の認定 判決は 血中 α-フェトプロテイン検査については特に言及していない ( ク ) 血尿 証拠から分かる事実 担当医は 12 月 3 日の尿検査において 本件患者の尿中に血液成分をごく少量認めた ( 担当医 7-181) そして 医師記録に 尿中潜血(±) につき 穿通胎盤 前置胎盤による出血 注意 という意味の記載をした ( 検乙 9-3 5) この点につき 担当医は 尿潜血の原因は膀胱炎であると考え 穿通胎盤等については念のために記載したにすぎないと述べている ( 検乙 9-5 担当医 ) また 尿潜血が認められたのはこのときだけで 12 月 6 日の尿検査においては潜血が見られなかったことから 担当医は 12 月 3 日の尿潜血を穿通胎盤ではなく膀胱炎によるものと診断した ( 検乙 9-6 担当医 ) 担当医は 公判において 尿中潜血が 12 月 3 日の検査のとき1 回だけだったことを強調している ( 担当医 7-589) しかし 医師記録( 検甲 16) の 12 月 7 日の欄には 尿 ( カテーテルにて ) 潜血 (±)~(+) 毛のう炎(+) ここから出血 previa からの bleedy ではない ( 前置胎盤による出血ではない ) という記載がなされている なお 前述のとおり 前置胎盤前壁付着の血尿例では膀胱鏡が決め手となるとする文献があるが 担当医が膀胱鏡による検査をしたという形跡はない 判決の認定 担当医は 平成 16 年 12 月 3 日 経腟超音波検査で血流が豊富であることを認 37
29 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) 識するとともに 尿中潜血を発見した そこで 担当医は 絨毛が膀胱の中に入り込むほどの穿通胎盤になったために尿に血液が混じった可能性 あるいは 前置胎盤による出血のため血液の混じったおりものが尿に混じった可能性を考え 血流(+) 尿中潜血(±) につき 癒着胎盤 又は前置胎盤による出血に注意が必要である旨医師記録に記載した しかし 12 月 6 日には 尿潜血は見られなかった さらに 12 月 7 日にも尿潜血がみられたが 担当医は 前置胎盤からの出血ではなく 毛のう炎による出血であると診断した ( 判決 22 頁 ) ( ケ ) 本件手術スタッフに対する説明 証拠から分かる事実 麻酔医 Bは 担当医から 手術前に 手術中の出血が多くなる可能性があります 前回の帝王切開の子宮の創の部分に胎盤がかかっているので 胎盤が深く食い込んでいるようなら 子宮を全摘します と言われていたこと ( 検甲 22 2) また およその内容として 前回の帝王切開の傷の部分に胎盤の一部が掛かってるかもしれないというようなこと および 手術中に出血が多くなるかもしれないので その場合は子宮を摘出します という趣旨を説明されたこと (B 証人 -3 3) を述べている また 助手 C 医師は 担当医から 手術の1 週間くらい前に 前置胎盤を合併してる女性の方で 帝王切開の予定があるというようなこと や 癒着があるかもしれないということ を説明された旨 (C 証人 -6 8) を述べている 判決の認定 担当医は 12 月 9 日ころ 本件手術の麻酔医である麻酔医 Bに対し 本件患者の前回帝王切開創に胎盤が掛かり 手術中に出血が多くなる可能性があること 子宮を摘出する可能性があること もしもの時はZ 病院のA 医師を呼ぶことになっていること等を伝えた また 担当医は 同日ころ 外科医である助手 C 医師に対し 本件手術の執刀補助を依頼した その際 本件患者が前回帝王切開であったこと 前置胎盤で 癒着があるかもしれないが 手術には差し支えないと思われること Z 病院のA 医師にも応援を依頼していることなどを伝えた ( 判決 22 頁 ) ( コ ) 本件患者等に対する説明 証拠から分かる事実 看護処置記録 ( 検甲 16) の 12 月 14 日午後 7 時の欄には 担当医から本件患者及びその夫に対し 輸血の可能性 子宮摘出の可能性等について説明したほか 子宮は 胎盤の付着していない場所を切るつもり などと説明した旨の記載がある これらの説明の趣旨につき 担当医の供述には次のとおりくい違いがある a 捜査段階 12 月 14 日に担当医が本件患者とその夫に対し手術内容の説明をする際に書 38
30 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) いた子宮の図には 左下の胎盤が掛かっている位置に > という図形が記入されているところ 担当医は捜査官に対し 同図形は前回帝王切開創を表すものであると供述した上 青ボールペンによる手書きで 前回帝王切開創 と書き入れている ( 検乙 同末尾添付の書面 担当医 ) もっとも 同図に書いてある前置胎盤の図は 一般的な前置胎盤の図として書いたものであり 本件患者の胎盤が前回帝王切開創にかかっていると認識していたわけではないとも述べている ( 検乙 12-4) b 公判段階担当医は公判においては 12 月 14 日に書いた子宮の図は 一般的な子宮の図であり 本件患者の子宮を模写したものではなく 図の左下の方にある 平仮名の く の字を逆にしたようなマークについては 切開して赤ちゃんを取り出す場所として書いたのであり 前回の帝王切開創を示すマークではないと供述している また 同日の説明において 胎盤の付着していない場所を切るつもりだ と言ったかどうかは覚えていないし 言ったとしてもその意味としては 典型例と違っているという意味で話していると思うという ( 担当医 ) 判決の認定 担当医は 12 月 14 日夜 大野病院において 本件患者及びその夫に対し 本件患者が前置胎盤であること 前回帝王切開創に胎盤がかかっている可能性があることの他 輸血の可能性 子宮摘出の可能性 血栓症 抗体等について説明した この際 担当医は 子宮の切開場所について 胎盤の付着していない場所を切るつもりであり U 字型にする考えであることを子宮の図や患者から見て子宮の右よりにU 字型の図形を書き込んだ図を書くなどして説明した さらに 担当医は 何かあったらA 医師に手伝ってもらうつもりであり 既に同医師には話してある旨述べた ( 判決 23 頁 ) ( サ ) A 医師に対する説明 証拠から分かる事実 担当医は 医局の先輩であるW 医大のK 医師から 本件手術の際には応援の産婦人科医を派遣しようかと言われた際 急変時の応援が確保できれば大丈夫だろうと思っていたので Z 病院のA 医師にお願いするから W 医大からの応援はいらないという意味のことを答えた ( 検乙 13-6) そして 実際にA 医師に対して応援依頼の電話をしたときには 前回帝王切開創に胎盤が一部かかっているかもしれないが 大丈夫ですという話をした このような依頼の仕方をした理由について 担当医は A 医師に応援を依頼したのは今回が初めてで 出血が多くなって子宮摘出の判断に迷うようなときに助言を頂こうかというような意味で連絡したものであり 実際は前回帝王切開創に胎盤はかかっていないという認識だったが 初めて依頼するに当たって 何もな 39
31 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) い症例で呼ぶのはちょっと気が引けたことから あえて事実と違うことを言った旨を供述している ( 担当医 ~ ) また A 医師にすぐには応じてもらえなかったことから 患者さんやスタッフに 応援を頼むという話をしていたので なんとか応援の承諾だけは得ておかなければと思い 少し大げさな表現をするしかないなと思って 胎盤が傷口にかかっているかもしれないと話したとも述べている ( 担当医 ~12) 判決の認定 12 月 17 日 ( 本件手術当日 ) 担当医は A 医師に架電し 1 回目の帝王切開を同医師が担当した患者について 担当医が2 回目の帝王切開をすることになったが 胎盤が後壁に付着している全前置胎盤であり 何かあった際には応援を頼むかもしれないと述べた これに対し A 医師は 担当医に対し MRI 検査を実施したのか否か 前回帝王切開創に胎盤がかかっているのか否かを尋ね 担当医は MRI 検査は実施しておらず 前回帝王切開創に胎盤がかかっている可能性があるが おそらく大丈夫である旨の回答をした ( 判決 23 頁 ) ( シ ) 小括以上から 担当医が本件患者の胎盤の状態について術前に認識していたと思われる内容をまとめると 次のとおりである まず 捜査段階における担当医の供述によれば 担当医は 1 超音波検査で本件患者の胎盤の付着位置を確認した結果 本件患者の胎盤が前回帝王切開創に少しかかっている可能性があると推測していた また 212 月 3 日にみられた微量の尿潜血は3 日後には認められなかったことから 穿通胎盤の可能性は無いだろうと思った そして 3 前回帝王切開で前置胎盤というリスクがあるので本件患者の胎盤が子宮に癒着している可能性は否定できないものの 前回の帝王切開創を胎盤がべったりと覆いつくしている状態ではなかったことから 前壁で癒着している可能性は少なく 胎盤が子宮に癒着している可能性は3~4% だろうと判断していた 他方 公判段階における担当医の供述はやや混乱している感があるが これによると担当医は 1 超音波検査 ( カラードプラ法を含む ) の結果として 12 月 3 日に前壁部分の低輝度子宮筋層部分を確認したこと 2 同日 胎盤の内部でとどまっているような血流が確認できたものの 量的にかなり少なく 子宮筋層の方に向かっていくような血流はなかったことと併せ 312 月 3 日の尿潜血が微量で一過性のものであったことから癒着胎盤の疑いを完全に否定した さらに 4 同月 6 日に見えた血流は胎盤と離れて存在していたし 5 同日の経腹超音波検査の結果 前回帝王切開創付近には今回の胎盤がかかっていないと確認できた なお 本件判決は 本件患者の胎盤の位置および癒着胎盤の具体的可能性についての担当医の認識につき 次のように述べている 被告人は 検察官調書で述べるとおり 本件手術直前には 本件患者から見た場合に 胎盤は左側部分にあり 前回帝王切開創の左側部分に胎盤の端がかかってい 40
32 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) るか否か微妙な位置にあると想定し 本件患者が帝王切開手術既往の全前置胎盤患者であることを踏まえて 前壁にある前回帝王切開創への癒着胎盤の可能性を排除せずに手術に臨んでいたが 癒着の可能性は低く5% に近い数値であるとの認識を持っていたことが認められる ( 判決 38 頁 ) ウ癒着胎盤についての子宮切開前の術中診断 ( ア ) 総論開腹後であっても子宮を切開する前の段階で 超音波により胎盤の位置や癒着胎盤の所見を確認する検査を行うことは可能であり 実際に担当医は 本件患者の子宮に直接プローベを当てている また 開腹後においては これに加えて 子宮の状況を直接肉眼で確認することもできるのであり 前述のように 癒着胎盤の術前診断は困難であるから 開腹時の子宮の所見 ( 特に血管の怒張状況 ) がこれを補うものとして重要であるとの見解もある そこで 癒着胎盤を見落とさないための最終的な検査として 担当医が直接に子宮の超音波検査を行い胎盤の位置や癒着胎盤の所見を確認したか否かを検討し 次いで 担当医が子宮の肉眼所見としてどのような認識を有していたかを検討する ( イ ) 前回帝王切開創と胎盤との位置関係についての認識 証拠から分かる事実 担当医が直接子宮にプローベを当てて前回帝王切開創と胎盤との位置関係について再確認した際 その認識がどのようなものであったかについては 担当医の供述にくい違いがある a 捜査段階担当医は 本件患者を開腹した後 直接子宮にプローベを当てて胎盤の位置を確認したところ 胎盤が前回の帝王切開創にかかっているような かかっていないような微妙な感じだな と思った旨を供述している ( 検乙 10-7) b 公判段階術中子宮切開前の超音波検査の結果 胎盤は前壁のかなり下のほうに見え 前回帝王切開創と思われる場所には掛かっていなかったと述べている ( 担当医 ) 判決の認定 担当医は 本件患者の腹壁を切開した後 子宮に直接プローベを当てて超音波により胎盤の位置を確認し 胎盤の付着した部分を避けて 本件患者から見て子宮右よりの部分をU 字型に切開した ( 判決 24 頁 ) ( ウ ) 画像検査 ~ A 超音波断層法 証拠から分かる事実 担当医は 捜査段階においては 術中検査の超音波検査の際に癒着胎盤の所見の有無を確認したかどうかについては全く言及していない 41
33 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) しかし 第 11 回公判において 弁護人や検察官から 術中超音波検査の際に癒着胎盤の所見についても確認したかどうかを質問されたとき 所見については確認しており それは全く見えなかった旨を答えている ( 担当医 ) 判決の認定 担当医が術中超音波検査で胎盤の癒着の有無まで確認したことを認めるに足りる的確な証拠はない 担当医が公判廷で癒着の有無を確認したと述べる部分もあるが 具体性がなく 他では胎盤の辺縁部分を確認するためと述べていることからすると 担当医が胎盤の癒着の有無まで確認したとは認めがたい ( 判決 38 頁 ) ( エ ) 術中所見 ~ 子宮前壁から膀胱周辺の血管怒張など 証拠から分かる事実 開腹後 本件手術のスタッフが認識した子宮の状態は 次のとおりである 麻酔医 Bの供述 麻酔医 Bは 腹部を切開したとき 担当医が 血管 浮いてるよね などというのが聞こえ 通常は タコの頭のようにつるんとしている子宮の表面に怒張した血管が浮いているの が見えた ( 検甲 22-8) 見えた血管の本数は覚えていないが 2 本よりは多かったか と思うし そのような浮いた血管を見たのは初めてだった 赤系統の色だったとは思う が はっきり覚えてない 具体的には みみずのような 男性の手の甲の部分に静脈が浮いてる様子 と似た感じであった旨 (B 証人 -89~92) を述べている 助手 C 医師の供述 助手 C 医師は 子宮表面の一部分 ( どちらかというと本件患者の右側 ) に静脈が走行してるのが見えた 男の人の手の甲の静脈くらいの太さ で数本という感じだった 色は 青紫という感じ で 走行は肉眼ではっきり確認できた 帝王切開の執刀の助手としての経験は大体 10 例弱くらいだったが そのような血管の怒張を見たというのは 記憶では余りなかった (C 証人 -24~32) 盛り上がってるわけではなくて 虚脱してるわけでも なく 普通の状態で走行してるのが見えた ( 同 213) 5ミリよりは細かった ( 同 222) 旨を述べている M 助産師の供述 M 助産師は 子宮に 血管がぼこぼこと隆起して網目状になっているように見え た (M 証人 -48) 男性の ぼこっと浮き出ているような腕の血管くらいの太さだった ( 同 52) それまで5 回から 10 回くらいの帝王切開の手術に立ち会った中で 隆起した血管というのは 初めて見 たし その後も見たことは ない ( 同 56) プローベで子宮の表面をなでた後 その血管はぼこぼこと隆起した網目状のままだったと思う ( 同 ) そこを避けて 血管がない ぼこぼこ隆起していないところに切開を入れていた と思う ( 同 249) 旨を述べている P 看護師の供述 P 看護師は 平成 8 年から十数回 帝王切開を経験していたところ (P 証人 -2 08) 子宮はいつもの帝王切開で見る子宮とは違い 少し表面的にぼこぼこした 42
34 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) ような感じに見え た 表面が隆起していた感じで 色は 全体的に 暗紫色な感じがした 旨 ( 同 54~57) を述べている 以上に対し 担当医は 開腹後の子宮の状態について 次のとおりであった旨を述べている 担当医の供述 子宮表面の色は 通常の妊娠子宮と同様のピンク色であった ( 担当医 7-258) 前壁下部には 大体 4 5センチ四方の範囲 大体 2 3ミリぐらいの太さで数本の血管隆起が見られた この血管隆起は 術中超音波のときのプローベで触るとすぐに消えた ( 担当医 7-265~ ) かかる所見に基づき 担当医は 癒着胎盤の兆候はみられなかったとしている 特に 血管隆起については 公判において 異常所見を示すものではないと思います 前回帝王切開の症例や前置胎盤の症例では このような細い血管は認めることがあるからです ( 癒着胎盤の場合の兆候として見られる血管隆起とは違いますか との質問に対し ) ええ 明らかに違います と答えている ( 担当医 7-268~270) 判決の認定 担当医が本件患者の腹壁を切開したところ 子宮表面の一部分 本件患者の足下に近い側に男性の手の甲の静脈くらいの幅の静脈が数本 網目状に走行し 怒張していた ( 判決 頁 ) 担当医は これにつき前置胎盤患者によく見られる血管であり 癒着胎盤の兆候としての血管の隆起とは異なると診断している 癒着胎盤の兆候としての血管怒張については 池ノ上医師の証言によれば 胎盤が子宮の壁を突き抜けて子宮の表面に胎盤の裏側が見える現象であり こつごつ ママ した感じの強い構造物で一般に見るような血管とは異なった血管であると認められるから 被告人の診断に不自然なところはない また そもそも 子宮前壁に癒着胎盤の存在は確認されていない ( 判決 38 頁 ) 本件においては 子宮前壁に癒着胎盤があったことを認めるに足りる証拠はなく 癒着胎盤が確実に存在したと認められるのは子宮後壁のみである したがって 子宮前壁について 被告人の癒着胎盤の有無に関する予見や認識を問題とする実益は乏しい ( 判決 37 頁 ) ( オ ) 小括以上のとおり 胎盤の位置についての担当医の認識や 開腹後において超音波所見を確認したか否かの点については 捜査段階と公判段階とで担当医の供述に差異がみられる上に 子宮表面の肉眼所見についても 担当医の供述と他の手術スタッフの供述とで内容にくい違いがある すなわち 捜査段階の供述によれば 担当医は 1 胎盤が前回帝王切開創にかか 43
35 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) っているような かかっていないような微妙な感じだと認識し 2 超音波所見を確認したかどうかについては特にふれていない これに対し 公判段階の供述によれば 担当医は 1 胎盤は前回帝王切開創と思われる場所にはかかっていないと認識し 2 胎盤の位置確認の際 癒着胎盤の所見についても確認したが見えなかった旨を述べている また 子宮表面の肉眼所見については 担当医以外の手術スタッフはそれが経験上あまり見たことのない状態だったことを述べているのに対し 担当医は 異常所見ではなく 癒着胎盤の兆候とは明らかに違う旨を述べている なお 本件判決は 癒着胎盤の具体的可能性についての 開腹後における担当医の認識につき 次のように認定している 医師記録の記載等からは 被告人は 術前からU 字切開する予定であったことが認められ 現実に U 字切開をしているのであるから 前述のとおりの術前の癒着の可能性に対する認識がここで変化したと見ることもできず 本件手術前の被告人の予見 認識がこの段階まで維持されていたという意味しかないと言うべきである ( 判決 頁 ) (3) 専門家証人意見ア田中意見 * 検甲 37 ( ア ) 本件術前検査の結果と診断について 12 月 3 日の経腟超音波検査結果によれば 子宮前壁は後壁よりやや薄く 子宮後壁と胎盤の間に認められる低輝度子宮筋層部分が認められない また 子宮に接する胎盤内部に虫食い状に黒く記録される部分が認められ これをカラードプラー法で解析すると血流の存在が示されたことより この部分は胎盤内の静脈叢 (sponge like echo) と判断される 子宮壁内の間隙 (lacunae) の存在あるいは上記血流は胎盤内から子宮壁へ向かう血流であることが疑われるが 2 枚の超音波記録写真だけで判断はできない 12 月 6 日の経腹超音波検査結果によれば カラードプラー法により 芋虫状の血流が写っているが この血流は胎盤 子宮筋層接合部近辺の静脈叢あるいは胎盤内の血流の可能性が考えられる一方で 児頭横にある臍帯と考えることも可能と思われる 担当医は診察時この血流を膀胱下部に存在する血流と診断していたことが伺われる 担当医が手術当日の 12 月 17 日午前中にA 医師にかけた電話の中で 前回の帝王切開の傷跡に胎盤がかかっています と述べていることより 本件患者においては癒着胎盤の可能性は高いと判断される 杉野鑑定結果より 癒着胎盤が子宮前壁にあったことは明らかである 前回帝王切開既往の全前置胎盤症例であること 12 月 3 日および6 日の検査で胎盤子宮筋層付近の静脈叢あるいは膀胱下方の血流のような診断結果が得られたこと 44
36 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) 12 月 6 日の検査で子宮前壁へ胎盤がかかっていることと子宮胎盤付着部位に豊富な血流が認められることが観察されたこと 担当医が手術当日にA 医師に対して述べたように前回の帝王切開創に胎盤がかかっている所見があることからすれば 癒着胎盤を疑い MRIなどの更なる検査を行うことが必要だった また 12 月 17 日の直前に再度 経腟超音波検査を行い前置胎盤の位置の確認 胎盤の性状等につき確認を行った方が良かった ( イ ) 手術中の検査および子宮表面の血管怒張について帝王切開時 担当医は清潔なエコーのプローブを子宮前壁に当て 胎盤の位置を確認しているが 同時に肉眼による視診あるいは触診にて胎盤付着部位の精査を行うと同時にエコーで胎盤および筋層間の血流の状態 筋層の菲薄化 消失等の検査を行う必要があった 担当医が子宮外壁の血管怒張をどのように判断していたか あるいはこの怒張した血管が静脈であるか動脈であるかについても 記載が少ないため判断できない 基本的に妊娠末期においては 胎盤付着部位の子宮は胎盤とのガス交換を行うために血流が豊富なことより 前置胎盤の症例で胎盤付着部位の子宮前壁の怒張した血管を認めることはそれほどまれではない 通常の鬱滞による血管怒張であれば 胎児娩出に伴う子宮収縮で血管の怒張は消失すると考えられる イ岡村意見 * 弁 岡村証人-112~ ~ ~320 等 ( ア ) 術前検査による診断可能性について現在の診断技術にて分娩前に癒着胎盤を正確に診断することはできない Lam らの報告によると超音波断層法により癒着胎盤を診断できる感度 ( 癒着胎盤であったものを正しく診断できる制度 ) は 33% である Oyelese らの review によると 超音波断層法による癒着胎盤を疑う超音波所見のうち 胎盤がスイスチーズ様 (lacuna) になっている所見に対して診断感度 79% 診断陽性率は 92% であるが 最も一般的に癒着胎盤を疑う所見とされている胎盤後壁の clear space の消失についてはその診断感度は高々 57% であり 疑陽性率は 48.4% である 特にこれらの多くは胎盤が前壁にある事例に関しての結果である 超音波ドプラ所見が癒着胎盤の診断を改善することに関しては肯定するものと懐疑的な論文がある MRIについては 超音波断層法にて診断が難しい後壁付着の前置胎盤についての適応になるが 超音波断層法を上回る診断精度を生じることはないであろうとされている ( イ ) 本件術前検査の結果と診断について 平成 16 年 11 月 19 日 ( 妊娠 32 週 6 日 ) の超音波検査 45
37 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) 同年 10 月 22 日の検査と同じく 子宮後壁と胎盤の間には clear space が明確 に観察されるため 子宮後壁に癒着胎盤を示唆する所見はない 同年 12 月 3 日 ( 妊娠 34 週 6 日 ) の経腟超音波断層検査 経腟カラードプラー検査 および尿検査 写真によれば 胎盤は後壁にあり 胎盤が前回帝王切開の瘢痕部にかかっていると懸念を持ったとしても強いものではなかったと考えられる 担当医は 頻回に超音波検査を行い 胎盤の位置を慎重に観察していた 胎盤と筋層の間に見られる空隙が若干薄くなっているが プローブを強めに押し当てたためと考えられる 血流(+) との記載があるが 子宮前壁のエコーフリースペースは 前置胎盤にしばしば認められる血流を示す所見である その周辺に血流を示す所見が認められるが 癒着胎盤を疑うほど豊富な血流ではなく これをもって 癒着胎盤と診断することはできない 血流 (+) は胎盤の辺縁 内子宮口に近い部分ではないかと見られるが レトロスペクティブにみても この部分は病理的に癒着がないのだから この血流を癒着胎盤に由来する血流と考えることはできない 子宮後壁の写真によれば 子宮後壁と胎盤の間には clear space が明確に観察され また 胎盤の画像も均一でスイスチーズ様の所見がないため 癒着胎盤の疑いを持つことはできない 尿中潜血がわずかにあることをもって 癒着胎盤を疑うことは過剰診断である なお 上記血流に関連して 鑑定意見書 ( 弁 131) には 次のような趣旨の記載がある 穿通胎盤の場合には子宮表面からも血管が多く 血流が胎盤近くで豊富になっている しかし 単に前置胎盤においても 胎盤とその周辺の子宮の血管は怒張し 多くの血流が胎盤へ行っていることを観察することがある すなわち 胎盤付着周辺では多くの血流を認めるのは当然である 本事例では胎盤の一部が内子宮口から前壁にかかっているような超音波断層法の所見である 同年 12 月 6 日 ( 妊娠 35 週 2 日 ) の経腹カラードプラー検査および尿検査 胎盤周辺である膀胱近くに血流が検出されても それが癒着胎盤を診断する根拠とはならない 胎盤と子宮筋層の接合部分に芋虫状の豊富な血流が観察されることは臨床上よくあることである 担当医は 膀胱への浸潤を危惧して尿検査をしており 連続した潜血がみられなかった 以上からすれば 前壁部分についての癒着胎盤の懸念は過剰診断と言わざるをえず これまでの超音波検査の画像写真を検討しても 癒着胎盤であることを示す所見は見られない また 子宮後壁についても 再三にわたる超音波検査の結果から癒着胎盤を予 46
38 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) 見できなかったと考えられる ( ウ ) MRIを実施しなかったことについて担当医が使用した超音波検査装置は 持田シーメンスメディカルシステム株式会社製のソノビスタ ColorFD モデルであり 癒着胎盤の有無を判断するには MRI を上回る診断能力を有していたと考えられる 担当医は 頻回に超音波検査を実施しており 癒着胎盤でないと判断していたのであるから 重ねてMRIによる検査をする必要はない MRI 検査の癒着胎盤の診断精度は 必ずしも高いとはいえず 穿通胎盤や嵌入胎盤でなければ診断できないのであり 本件のように部分的で程度の弱い嵌入胎盤について MRI 検査を実施しても癒着胎盤であることが判明したとは考えにくい ( エ ) 癒着胎盤の具体的可能性に対する判断について超音波検査から 胎盤は後壁下部に付着していることが分かる 後壁に付着している場合 前壁側の前回帝王切開創に胎盤がかかっている可能性は低くなる その場合の癒着胎盤の発生の危険性は 帝王切開創に胎盤がかかっている場合に比べて低い したがって 胎盤が前回帝王切開創にかかり癒着を生ずるリスクは低いと判断したのは合理的判断である ウ池ノ上意見 * 弁 池ノ上証人-53~55 頁 81 頁 ( ア ) 術前検査による診断可能性について癒着胎盤を疑うのは 1 帝王切開の既往歴があり 2 今回の妊娠で前置胎盤であることが診断され その胎盤が前回の子宮頸部の切開創を覆う場合である このようなときに詳細な検査が行われることになる 前置胎盤の診断には超音波検査を用いるのが一般的である MRI 検査が超音波検査を凌駕する診断精度を有するかどうかについては 一定の見解はない 超音波検査所見として 1clear zone の消失 2placental lacunae の存在 3b ladder line の途絶の3つがすべてそろった場合のみ 術前に癒着胎盤の診断が可能であり その他は診断を確定することはできない このように本疾患の術前診断は偽陽性率が高く 非常に困難である 12 月 3 日の超音波写真から 癒着胎盤の診断をすることは難しい ( イ ) 手術開始時点と術中の超音波検査について 12 月 17 日の医師記録によれば 担当医は 14 時 26 分の手術開始時点で 超音波にて 胎盤の位置 を確認しており 術中超音波検査を実施していることが分かる この検査によって癒着胎盤の所見が確認されなければ 胎盤剥離開始前に 癒着胎盤の診断をすることはできない 47
39 第 2 癒着胎盤の詳細について 6B1 術前診断 ( 子宮切開前の術中診断を含む ) 担当医は 開腹後に子宮に直接プローベを当てて超音波検査をしているが カル テに目的の記載はなく 胎盤の場所 胎盤と前回帝王切開創の位置関係を調べるためと想像される ( ウ ) 子宮表面の血管怒張について一般に 前置胎盤では子宮下部に血流が豊富になるため 腹壁を切開し子宮を露出すると 子宮表面に血管の怒張が見られることは少なくない (4) 文献 三専門家証人意見の相違点多くの文献は 術前における癒着胎盤の診断の困難性を示唆し 岡村意見 池ノ上意見もこれに同調する さらに 岡村意見は 超音波検査により分かる胎盤の位置からみて 胎盤が前回帝王切開創に掛かっている可能性は低いと判断したのは妥当であり その他の所見からも癒着胎盤であることは分からないとする 他方 田中意見は 前回帝王切開既往の全前置胎盤症例であり 前回の帝王切開の創跡に胎盤が掛かっている所見があったとした上で 術前の超音波検査 カラードプラ法検査の結果から見て 癒着胎盤の可能性を前提として MRIほかの検査を継続 追加すべきであったし 術中のエコー検査においても 胎盤の位置確認のみならず 癒着胎盤の所見の有無を確認するとともに 視診 触診により精査を行うべきであったとする また 術中所見における子宮外壁の血管怒張については 田中意見 池ノ上意見とも 妊娠末期に時折見受けられるとか 前置胎盤の場合には少なくないものとして さほど重視していない 岡村意見も これについては同旨であると思われる この点 最近の文献において 血管怒張の所見を重視しているものがあることと対照的である 文献および三専門家証人意見は いずれも恐らく 術前に癒着胎盤を診断することは困難とする点では共通している しかし だから本件において検査は十分に行われており癒着胎盤であることが分からなくてもやむを得なかったとするのか それでもなお周到な検査を継続 追加すべきであったとするのかという点で 岡村意見 池ノ上意見と田中意見とは立場を異にする このような違いが生じているのは 第 1に 術前の検査で胎盤が前回帝王切開創にかかっている所見があったとみるか否か 第 2に 事後的な診断として胎盤が子宮前壁で癒着していたとみるか否か 第 3に 帝王切開既往の前置胎盤例では癒着胎盤の発症率が比較的高くなるという事実を 癒着胎盤による大量出血のもたらす結果の重篤性に照らし 術前においてどのくらい重視すべきだと考えるかによるものと思われる 2 術前の準備 (1) 事実関係術前の準備に関しては 裁判では 担当医がいかなる認識で準備をしたり 準備にあたっての発言をしたか 本件患者の状態をどのように捉えていたのか等という点について 他の問題と関わることから 争われた 48
40 第 3 術前の診療経過について 7B2 術前の準備 しかし 客観的に何を行ったかという点については ほぼ争いがない ア当該病院の医療提供体制 ( 判決 21 頁第 1 2) 輸血用の血液を常時置くことはせず 必要なときに準備する 不足した場合は 約 50km 離れた福島県いわき赤十字血液センターから 約 1 時間かけて自動車による搬送を受けていた ( 判決 21 頁第 1 1) 産科は一人医長 ( 担当医のみ ) イ患者の状態把握 ( 胎盤の状態など ) ( 月日のみの記載は, 平成 16 年を指す ) 平成 13 年 7 月 ( 判決 21 頁第 1 3) 帝王切開手術にて第 1 子を出産 10 月 22 日 ( 判決 22 頁第 1 4 本件手術に至るまでの経過 (2)) 全前置胎盤の診断 12 月 3 日 ( 判決 22 頁第 1 4 本件手術に至るまでの経過 (5)) 経腟超音波検査 血流豊富 尿潜血(±) 癒着胎盤 又は前置胎盤による出血に注意が必要である旨 医師記録に記載 12 月 6 日 ( 判決 22 頁第 1 4 本件手術に至るまでの経過 (6)) カラードップラー検査 芋虫状の血流 膀胱下血流(+) と医師記録に記載 尿潜血 (-) 12 月 7 日 ( 判決 22 頁第 1 4 本件手術に至るまでの経過 (7)) 尿潜血 (±)~(+) 毛のう炎(+)-ここからの出血 と医師記録に記載 12 月 13 日 ( 判決 23 頁第 1 4 本件手術に至るまでの経過 (10)) 医師記録に 胎盤が左寄りである旨 右寄り部分にU 字型切開案を記載 ウ手術体制 12 月 9 日ころ ( 判決 22 頁第 1 4 本件手術に至るまでの経過 (8)) C 医師 ( 外科医 ) に 執刀補助を依頼 ( 判決 23 頁第 1 4 本件手術 (1)) 手術は次の体制で行われた 執刀医担当医 49
41 第 3 術前の診療経過について 7B2 術前の準備 麻酔医 麻酔医 B 助手 C 医師 助産師 L 助産師 M 助産師 看護師 オペ責 N 看護師 器械出し O 看護師 外回り P 看護師 Q 看護師 エ本件における具体的な術前準備 12 月 6 日 ( 判決 22 頁第 1 4 本件手術に至るまでの経過 (6)) 術中エコー検査のためプローベの準備 MAP( 濃厚赤血球 1 単位 200ml) を5 単位用意することを決めた 場合によっては単純子宮全摘出術を行うことを前提に その準備を指示 オ不測の事態が生じた場合に備えた事前の応援依頼 12 月 9 日ころ ( 判決 22 頁第 1 4 本件手術に至るまでの経過 (8)) 麻酔医 Bに 次のことを伝えた 前回帝王切開創に胎盤が掛かり 手術中に出血が多くなる可能性があること 子宮を摘出する可能性があること もしもの時はZ 病院のA 医師を呼ぶことになっていること等 助手 C 医師に Z 病院のA 医師にも応援を依頼していることを伝えた 12 月 11 日 ( 判決 22 頁第 1 4 本件手術に至るまでの経過 (9)) 担当医の医局の先輩であるK 医師が 大野病院に派遣された際 人手が欲しい場合は 医局に相談して良いのではないかなどと勧めた これに対し 担当医は A 医師を呼ぶ旨答えた 12 月 17 日 ( 手術当日 )( 判決 23 頁第 1 4 本件手術に至るまでの経過 (12)) 担当医よりA 医師に電話 次のやりとりがあった < 担当医からA 医師への説明 > A 医師が1 回目の帝王切開を担当した患者について 担当医が2 回目の帝王切開をすることになった 胎盤が後壁に付着している全前置胎盤であり 何かあった際には応援を頼むかもしれない <A 医師の質問 > MRI 検査を実施したのか否か 前回帝王切開創に胎盤がかかっているのか否か 50
42 第 3 術前の診療経過について 7B2 術前の準備 <A 医師の質問に対する担当医の回答 > MRI 検査は実施していない 前回帝王切開創に胎盤がかかっている可能性があるが おそらく大丈夫である ( ) 担当医がA 医師に応援を依頼するのは このときが初めてであった 手術前 担当医はA 医師に対し の発言をしていたが 公判廷では 実際は前回帝王切開創に胎盤が掛かっていないと考えていた ( 担当医 ~880) と供述している では なぜ との説明をしたのか その理由につき 担当医は 公判廷で次のとおり供述している ( 公判廷供述担当医 ~ ~12) 初めて依頼するに当たって 何もない症例で呼ぶのはちょっと気が引けた 出血が多くなって子宮摘出の判断に迷うようなときに助言を頂こうかという意味で連絡した 電話の最中 A 医師が渋っているような様子もあったので 少し大げさにあえて事実と違うことを言った カ転医の判断 ( 判決 23 頁第 1 4 本件手術に至るまでの経過 (13)) 本件患者の入院後 大野病院勤務の助産師 看護師達の間で W 医大で前回帝王切開の前置胎盤患者の帝王切開で大量出血となった症例が話題になった その中で W 医大には産婦人科医が何人かいて 輸血も届きやすい場所にあるのに対し 産婦人科医が担当医 1 名しかおらず 輸血を追加注文しても届くまでに時間がかかる大野病院で対応できるのだろうかという話が出た この点に関し R 助産師が 担当医に対し 本件患者の転院を進言したが 担当医は 大丈夫である旨答えた R 助産師の進言に対して担当医が大丈夫と判断した理由について 担当医の検面調書 公判廷供述は次のとおりである ( 検面調書乙 13-4) この時点では 子宮前壁に胎盤が癒着している危険性は低いと考えていた ( 公判廷供述担当医 7-898~901) 何でも大げさに言ってくる助産師で いつものことだというような感じで聞いていた 51
43 第 3 術前の診療経過について 7B2 術前の準備 (2) 医学文献ア出血の可能性について文献によると 癒着胎盤症例において 子宮摘出が必要となる癒着胎盤症例の出血量は 平均 3,500ml(900~21,000ml) との報告や 母体死亡率は 25% であるとの報告もあるため 輸血は早めに準備する などとされ 癒着胎盤か否かにかかわらず 前置胎盤の場合で 前置胎盤 145 例のうち 出血量 2,000ml 以上 12 例 などの記載がある 通常の胎盤剥離 通常の帝王切開術 前置嵌入胎盤 既往帝王切開前置癒着胎盤 前置胎盤 前置癒着胎盤の各場合における術中出血量等の文献の記載は 次のとおりである 通常の胎盤剥離 : 約 250ml 約 250ml の剥離出血を伴う ( 武谷雄二編, 新女性医学大系 25 正常分娩,p221,19 98 年, 弁 6) 通常の帝王切開術の術中出血 :632±357ml 通常の帝王切開術の術中出血 632±357ml 輸血施行率 2.3% に対し前置胎盤で 1,1 54±924ml 15% である ( 大屋敦子, 実際産科出血をとめる-その予知, 予防と対処法 - 前置胎盤, 産婦人科の実際 vol56no2,p166,2007 年, 文献 17) 帝王切開分娩 349 例における分娩時大量出血 (3,000g 以上 ) は 23 例 うち前置胎盤 3 例 1 例は帝切後に出血が止まらず 子宮全摘となり 12,000g もの出血となった ( 鈴木佳克ら, 分娩時大量出血の原因と対策. 東海産科婦人科学会雑誌 37 巻.p 年, 文献 85) 前置胎盤 145 例のうち 出血量 2,000ml 以上 12 例 4,000ml 以上 6 例 6,000ml 以上 2 例 13000ml が 1 例 前置胎盤の出血量に関する記載をまとめると 概要次のとおり 前置胎盤 145 例のうち 出血量が 2,000ml 以上と記録されている症例 出血量が 2000ml 未満であっても輸血を施行した症例は 14 例 この 14 例の出血量はそれぞれ ml 半数の 7 例は全前置胎盤であった 14 例のうち 子宮摘出を行ったものは 6 例 ( 上記 ml の症例 )( 別宮史朗ら, 大阪府立母子保健総合医療センターにおける産科出血の検討, 産婦人科の進歩 48 巻 3 号,p ,1996 年, 文献 86) 前置嵌入胎盤の術中出血 : g( 平均 ±SD=3888±2209g) 術中出血量は前置穿通胎盤では g( 平均 ±SD=12140±8343g) であり 前置嵌入胎盤での g( 平均 ±SD=3888±2209g) と比較して優位に多かった ( 日本周産期 新生児医学会雑誌 vol41-no2,p324,2005 年, 検甲 56) 既往帝王切開前置癒着胎盤の平均出血量 :3,915ml 既往帝王切開前置癒着胎盤 26 例の平均出血量 3,915ml ( 福島明宗ら, 既往帝切前置癒着胎盤および既往帝切前置胎盤症例の検討. 日本産婦人科学会誌 Vol59 No2,p5 52
44 第 3 術前の診療経過について 7B2 術前の準備 03,2006 年, 文献 87) 子宮摘出が必要となる癒着胎盤症例の出血量 : 平均 3,500ml(900~21,000ml) 子宮摘出が必要となる癒着胎盤症例の出血量は 平均 3,500ml(900~21,000ml) との報告や 母体死亡率は 25% であるとの報告もあるため 輸血は早めに準備する ( 望月眞人監, 標準産科婦人科学第 2 版,p430,2001 年, 検甲 12) 子宮摘出を要する癒着胎盤の平均出血量は 3,500ml(900~21,000ml) ( 大屋敦子, 実際産科出血をとめる-その予知, 予防と対処法 - 前置胎盤, 産婦人科の実際 vol56no 2,p166,2007 年, 文献 17) 前置癒着胎盤について 出血が 2,000ml を超えたのは 41 例 (66%) であり 5,000m l を超えたのは9 例 (15%) 10,000ml を超えたのは4 例 (6.5%) そして 20,000ml を超えたのは2 例 (21%) 前置癒着胎盤について 出血が 2,000ml を超えたのは 41 例 (66%) であり 5,00 0ml を超えたのは9 例 (15%) 10,000ml を超えたのは4 例 (6.5%) そして 20,000ml を超えたのは2 例 (21%) であった そして 32 例 (55%) の女性が輸血を必要とした (David A. Miller ら,American Journal of OBSTETRICS AND GYNECOLOGY,1997 年, 弁 9) イ準備の内容について文献によれば 癒着胎盤の可能性がある前置胎盤では 4000ml 以上の輸血準備と人手を集めることが必要であるなどとされ 無理な剥離を行わないといったことを指摘するものもある 既往帝王切開で胎盤が子宮前壁付着の場合は 10 単位の準備では十分量ではないとされている 超音波断層法等の方法を用いて 癒着胎盤が疑われれば 大量出血に備えて輸液路の確保 輸血の確保 人員の召集 及び術前準備をしたうえで 試験的胎盤用手剥離術を行う 無理に剥離しようとすると大量出血 外傷性子宮破裂 子宮内反症などを引き起こすことがあるため 大量出血を認めた場合は直ちに中止し開腹術に切り替えるべきである ( 岡井崇編, 産科臨床ベストプラクティス,p260, 検甲 9)( ただし 編者から 主に経腟分娩の場合を前提としたものであるとの回答がある ( 弁 137)) 前回帝王切開既往で癒着胎盤の可能性のある前置胎盤は 上級病院で管理するか さらに 4,000ml 以上の輸血を確保して人手を集め 十分に対策をたてて管理することが重要である ( 須野敏章ら, 分娩 産褥時期に母体究明のため子宮摘出を行った症例の検討, 臨婦産 Vol50 No6,p845,1996 年, 文献 31) 諸家の報告では 前置癒着嵌入胎盤の帝王切開の際には 十分な術前準備をして手術に望んだ場合でも 術中出血量は 4,000ml あるいはそれ以上の症例が多数あるため この量を目安として輸血準備をしておく ( 岡村州博編, 帝王切開術既往妊婦の前置胎盤を診たら前置癒着嵌入胎盤を疑え周産期救急のコツと落とし穴,p28,2004 年, 文献 53
45 第 3 術前の診療経過について 7B2 術前の準備 13) 既往帝王切開で胎盤が子宮前壁付着の場合は 自己血貯血を含め十分な保存血を確保する 10 単位の準備では十分量ではないと著者は考えている ( 佐久本薫ら, 癒着胎盤, 産婦人科治療 vol84 増刊,p815,2002 年, 文献 88) 前置胎盤は帝王切開術のなかでも出血量が多く明らかに自己血貯血が有効とされる代表的な疾患である 約 1000ml は確保しておきたい 前回帝王切開で前壁付着の前置胎盤の場合は 自己血の他にさらに保存血 1000ml を準備しておいても少ないくらいである ( 酒井正利ら, 全前置胎盤の帝王切開, 産婦人科の実際 vol53no3,p316,200 4 年, 文献 89) 癒着のない前置胎盤の帝王切開術で濃厚赤血球を最低 800ml 産褥子宮摘出術予定の場合 2,000ml 以上準備する ( 大屋敦子, 産科出血をとめる-その予知 予防と対処法 - 前置胎盤, 産婦人科の実際 Vol56 No2.p 年, 文献 17) (3) 専門家証人意見ア田中意見 輸血製剤 (5 単位 ) の準備内容について癒着胎盤の存在が疑われる場合には 大出血あるいは子宮摘出術に対応できるように大量の血液の準備が必要であり 5 単位では少ない 手術体制 ( 産婦人科医 1 名 外科医 1 名 麻酔医 1 名 看護師 4 名 助産技師 2 名 ) について緊急事態が発生した場合 他施設の産婦人科医あるいは大野病院の他科の医師が直ちに応援可能な体制であれば 癒着胎盤合併前置胎盤症例の帝王切開術の体制として 最初はこの体制でスタートしても問題ない 大野病院において手術を実施したことについて大野病院において緊急事態発生時 対応可能な準備態勢がとられていたと推察されることから 手術を行ったことについては問題ない イ岡村意見 輸血製剤 (5 単位 ) の準備内容について 東北大で前置胎盤の帝王切開例に際して準備する輸血等の量は5 単位 癒着胎盤例のみだと出血平均 4320ml 分娩時出血量平均 1630ml との報告もあり ( 日本産科婦人科学会東北連合地方部会 ) 帝王切開前には癒着胎盤を強く示唆する所見がないことから 当該準備量は妥当 癒着胎盤ということが分かっていれば 当然 輸血( 準備 ) 量は多いにこしたことはない なお 岡村証人の 前置胎盤 癒着胎盤 ( 産婦人科の実際 Vol.56No.11,2007 年, 文献 90) によると 特に既往帝王切開前置胎盤症例に関しては癒着胎盤の合併率が 1 54
46 第 3 術前の診療経過について 7B2 術前の準備 2~46% と高いため, 緊急時に十分な人員確保と輸血の準備が可能な高次施設での妊娠管 理が望ましい とある ウ池ノ上意見 輸血製剤 (5 単位 ) の準備内容について 本件では 術前には癒着胎盤の確定診断はなされていなかった 標準的準備の現状と著しくかけ離れたものではない 宮崎大学では 2000cc 用意する 手術体制 ( 産婦人科医 1 名 外科医 1 名 麻酔医 1 名 看護師 4 名 助産技師 2 名 ) について 癒着胎盤と疑われる患者の分娩をする際は 手術をする人がある程度のことができる力がある人であること 患者のいろんな管理が必要になってくるので 産婦人科の医師だけでなく ある程度総合的な力を必要とする ( 尋問調書 p93) 本件症例を大野病院で施術したことの是非については 周辺の医療体制の実情が分からないので判断できない (4) 文献 三専門家証人意見の相違点前記のとおり 文献上 前回帝王切開既往で癒着胎盤の可能性のある前置胎盤は 上級病院で管理するか さらに 4,000ml 以上の輸血を確保して人手を集め 十分に対策をたてて管理することが重要である 既往帝王切開で胎盤が子宮前壁付着の場合は 自己血貯血を含め十分な保存血を確保する 10 単位の準備では十分量ではない などとされており 癒着胎盤を疑うべき場合において MAP5 単位で足りるとする文献は 発見し得なかった 田中意見は MAP5 単位では足りないとするのに対し 岡村意見及び池ノ上意見は それぞれMAP5 単位の準備でよい旨の意見であるが この相違は 本件において癒着胎盤が疑われるか否かの前提が異なっているためである すなわち 田中意見は 上記 (3) ア ( 本報告書 54 頁 ) のとおり 前回帝王切開既往の全前置胎盤症例であること 12 月 6 日の検査で子宮前壁へ胎盤がかかっていることと子宮胎盤付着部位に豊富な血流が認められることが観察されたことなどから 癒着胎盤の疑いがあり 担当医が用意したMAP5 単位では足りない と導く 他方 岡村意見は 上記 (3) イ ( 本報告書 54 頁 ) のとおり 前壁部分についての癒着胎盤の懸念は過剰診断であるとして 前置胎盤に対する輸血準備をすればよく 担当医が用意した MAP5 単位は妥当 とする 池ノ上意見も 同様に 事前に癒着胎盤の診断はできず MA P5 単位の準備は医療水準から著しくかけはなれていないと導いている 3 術前のインフォームド コンセント (1) あるべきインフォームド コンセントア厚生労働省医政局の指針 55
47 第 3 術前の診療経過について 8B3 術前のインフォームド コンセント 厚生労働省医政局平成 15 年 9 月 12 日 診療情報の提供等に関する指針 ( 医政発第 号 文献 91) は 術前のインフォームド コンセントについて以下のことを要求している 3 診療情報の提供に関する一般原則 医療従事者等は 患者等にとって理解を得やすいように 懇切丁寧に診療情報を提供するよう努めなければならない 診療情報の提供は 1 口頭による説明 2 説明文書の交付 3 診療記録の開示等具体的な状況に即した適切な方法により行われなければならない 6 診療中の診療情報の提供 医療従事者は 原則として 診療中の患者に対して 次に掲げる事項等について丁寧に説明しなければならない 1 現在の症状及び診断病名 2 予後 3 処置及び治療の方針 4 処方する薬剤について 薬剤名 服用方法 効能及び特に注意を要する副作用 5 代替的治療法がある場合には その内容及び利害得失 ( 患者が負担すべき費用が大きく変わる場合には それぞれの場合の費用も含む ) 6 手術や侵襲的な検査を行う場合には その概要 ( 執刀者及び助手の氏名を含む ) 危険性 実施しない場合の危険性及び合併症の有無 7 治療目的以外に 臨床試験や研究などの他の目的も有する場合には その旨及び目的の内容 イ医学文献帝王切開術に関するインフォームド コンセントについて 以下の文献が存在する 石綿勇 石綿千恵子 岡根夏美 帝王切開術のインフォームド コンセント ( 文献 92 周産期医学第 33 巻 8 号 2003 年 ) 具体的なステップとして ステップ1では医師が患者の病状や診断結果を説明し 治療法について推薦順位を含めて選択肢を示す (informed choice) ステップ2では それらの選択肢を参考に患者の自由な環境下における自己決定権を駆使した受けたい医療を決定する段階 (informed decision) さらにステップ3では 同意を得て 同意書を作成署名捺印する段階 (informed consent) 順になされ これらの過程を踏まない場合はICを得たことにはならない 大量出血が予想される場合 特に既往切開部位の前置胎盤( 癒着胎盤 ) あるいは全前置胎盤など術中に大量な出血が予想される場合は高次医療機関へ紹介することも必要である 自院で対応する場合はリスクとその対応 ( 自 56
48 第 3 術前の診療経過について 8B3 術前のインフォームド コンセント 己血の準備 輸血用血液の準備など ) についても十分にICしなければならない ウ最高裁判決最高裁判所平成 13 年 11 月 27 日判決 ( 最高裁判所民事判例集 55 巻 6 号 1154 頁 判例時報 1769 号 87 頁 乳がん事件 ) は 医療機関の説明義務に関する判例であるが 説明すべき内容について 以下のように述べている 医師は 患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては 診療契約に基づき 特別の事情のない限り 患者に対し 当該疾患の診断 ( 病名と病状 ) 実施予定の手術の内容 手術に付随する危険性 他に選択可能な治療方法があれば その内容と利害得失 予後などについて説明すべき義務があると解される (2) 本件インフォームド コンセントの内容ア本件証拠に表れた事実記録によると 本件の術前の説明は 以下 ( ア ) ないし ( エ ) 記載のとおりである 本件手術の危険性に関する説明としては 癒着胎盤の可能性があること 大量出血の危険性があること 子宮摘出および輸血実施の可能性があることなどについては 説明している しかし 癒着胎盤である可能性はどの程度なのか 準備していた輸血量 5 単位では不足する可能性はどの程度なのか 子宮摘出に移行する可能性はどの程度か 死亡率などについては 説明がなされていないようである ( ア ) 本件患者夫供述調書 ( 検甲 19 号証 ) より抜粋 a 輸血についての説明 ( 同意書を見せ 書き込みながら説明 ) 本件帝王切開手術では輸血をする可能性がある 輸血には感染のリスクがある一方で 輸血をしないと植物人間になる可能性がある 教科書などを見ると1リットルとあるので 1リットル用意すれば大丈夫である 血液の成分が入った薬も用意する 本件患者の場合は貧血気味なので自己血の輸血は使えない b 手術についての説明 ( カルテに書き込みをしながら説明 ) 本件患者が前置胎盤である 前置胎盤で前回も帝王切開の場合は 前回切った時の傷に胎盤が癒着しやすい 胎盤が癒着している場合には 出血することがある 出血がある時には出血の源になる子宮をとることになる 子宮をとる時には 2 本の動脈を止める 57
49 第 3 術前の診療経過について 8B3 術前のインフォームド コンセント 何かあったらZ 病院の先生を呼ぶ 時間も空けてもらっている 手術は1 時間半から2 時間で終わる ( イ ) L 助産師供述調書 ( 弁 124 号証 ) より抜粋 前置胎盤なので 手術の際出血が伴うこと 出血の際の輸血の措置等 何かあったら私のほかにZ 病院のA 先生という産婦人科医師に応援を頼む ( ウ ) 担当医供述調書 ( 検乙 12 号証 ) より抜粋 < 説明内容について> 本件患者が前置胎盤である 胎盤と子宮はたくさんの血管で結ばれている 前回帝王切開創に胎盤がかかっている可能性があり その場合大量出血するおそれがある 大量出血した場合には 場合によっては子宮を摘出する 出血が酷い場合には 子宮動脈を挟むことで止血を試みる 出血が多い時には輸血をする 手術の時に長時間同じ姿勢をとっていると血栓ができる可能性がある <カルテ記載の図についての説明 > > という図形は 前回の帝王切開創を表している 前回帝王切開創に胎盤が架かっているという説明をしたように見えるかも知れませんが この図に書いてある図は 本件患者の実際の胎盤の状態を表すために書いたものではなく 一般的な前置胎盤の図として書いたものである ( エ ) 担当医第 7 回公判廷質問より抜粋 < 説明内容 > 輸血の可能性や子宮摘出の可能性について話した (223 項 ) 前置胎盤だから 出血が多くなった場合には準備していた輸血をすることもあること (230 項 ) 出血が多くなった場合には 場合によっては子宮摘出もあり得ること (2 31 項 ) 3 人目のお子さんのご希望について聞いたら 希望しているということは言っていた (233 項 ) <カルテ記載の図についての説明 > 前置胎盤で 前壁に胎盤が存在する場合には出血が多くなるが 本件患者 58
50 第 3 術前の診療経過について 8B3 術前のインフォームド コンセント の場合には後壁に付着しているので 大量出血の心配はないということで書いた図 (225 項 ) カルテに書いた前置胎盤の図は 本件患者の子宮の状況ではなく 危険なケースについて敢えて記載したもの (227 項 ) 出血の危険性というのを分かっていただきたかったために書いた (228 項 ) 本件患者の子宮を書いたわけではない (823 項 ) > のマークは 切開して赤ちゃんを取り出す場所として書いたもので 前回帝王切開創を示すマークとして書いた訳ではない (839~840 項 ) 胎盤と子宮壁の間の赤い線は 胎盤は子宮と血管でつながっているという意味で書いたもので 癒着胎盤のおそれがあることを説明するために書いたものではない (846 項 ) イ判決の認定 被告人は 12 月 14 日夜 大野病院において 本件患者及びその夫に対し 本件患者が前置胎盤であること 前回帝王切開創に胎盤がかかっている可能性があることの他 輸血の可能性 子宮摘出の可能性 血栓症 抗体等について説明した この際 被告人は 子宮の切開場所について 胎盤の付着していない場所を切るつもりであり U 字型にする考えであることを子宮の図や患者から見て子宮の右よりにU 字型の図形を書き込んだ図を書くなどして説明した さらに 被告人は 何かあったらA 医師に手伝ってもらうつもりであり 既に同医師には話してある旨述べた 被告人の説明を受け 本件患者は 手術承諾書 輸血に関する説明と同意書に署名した この際 本件患者らから 子宮を残して欲しいという積極的要望はなかったが 被告人が 3 人目の子供が欲しいかと尋ねると 本件患者らは肯定した ( 判決 23 頁 ) 59
51 第 4 術中の診療経過について 9B1 術中の事実関係 第 4 術中の診療経過について 1 術中の事実関係 判決が認定した術中の事実経過は 別表 3 術中事実経過一覧表 を参照されたい 以下では 上記事実経過のうち 本件の術中の診療行為の評価をする上で重要と考えられる事項 担当医の捜査段階の供述と公判廷での供述にくい違いがある事項につき 両供述の内容と判決の認定を記述する 1-1 癒着胎盤に対する処置に関する事実関係 (1) 開腹時の子宮の状態開腹時の子宮の状態については 見た者により表現の違いはあるが 概ね次のような状態であった ( 関係者の各供述は 別表 3 術中事実経過一覧表参照 ) ( 判決 23 頁第 1 4 本件手術 (3)) 子宮表面の一部分 本件患者の足下に近い側に男性の手の甲の静脈くらいの幅の静脈が数本 網目状に走行し 怒張していた (M 助産師証言別紙 1) 開腹時の子宮の状態を M 助産師が 図示した図が存在する (2) 子宮の切開箇所本件の専門家証人らの意見が 本件手術での帝王切開創に癒着部分はないとの意見で一致したため 判決は 担当医が 超音波により胎盤の位置を確認し 胎盤の付着した部分を避けて 子宮を切開したと認定した ( 判決 24 頁第 1 4 本件手術 (3)) 担当医は 本件患者の頭部方向に向かって切開を広げ 子宮がより広く見えるようにした上 子宮に直接プローべを当てて超音波により胎盤の位置を確認し 胎盤の付着した部分を避けて 本件患者から見て子宮右よりの部分をU 字型に切開した (3) 児娩出直後の出血量 14 時 37 分 ( 判決 24 頁第 1 4 本件手術 (5) ア 麻酔記録 ) 児娩出 14 時 40 分報告 ( 以下 報告の時刻も単に時刻のみを記載 )( 判決 24 頁第 1 4 本件手術 (5) ア 麻酔記録 ) 出血量 ( 羊水を含む )2000cc 同出血量につき 当時関係者は少し多いという印象をもった 60
52 第 4 術中の診療経過について 9B1 術中の事実関係 (4) クーパーを使用するまでの胎盤の剥離の仕方 ( 判決 24 頁第 1 4 本件手術 (5) ア ) 子宮収縮剤を直接子宮体部に筋肉注射してから 胎盤を剥離するために臍帯を牽引した しかし 子宮の内壁が 胎盤とともに 臍帯が付いている部分を頂点にした三角形のような形に反り返って胎盤に付着したまま持ち上がる状態となってしまい 胎盤を剥離することができなかった そこで 担当医は 子宮をマッサージした後 再度臍帯の牽引を試みた すると 子宮内壁が持ち上がってくることはなかったものの 胎盤は剥離できなかった そこで 担当医は用手剥離を行った クーパーを使用するまでの胎盤の剥離の仕方 クーパーを使用することとした理由につき 担当医の検面調書 担当医の公判廷供述 判決の認定は次のとおりである ( 検面調書乙 3-4 5) 徐々に右手の指を入れづらくなり 力を込めなくてはいけなくなって 剥離がしにくくなった 1 本の指も入らなくなったので 指よりも細いクーパーなら入るだろうと思い クーパーを使うことにした ( 公判廷供述担当医 ) 指が入りにくくなってきたからクーパーを使ったというようなことは無かった 用手剥離自体 かなり胎盤がはがれて あともう少しで剥がし終えるという時期だったし クーパーを使うときに ちょうど目で見ることができていて 出血するかどうかというのも目で見ることができていたということと 見えている状態でクーパーでやれば ちゃんと剥離する面にクーパーが当たって胎盤の取り残しもないし 子宮も傷つけないということで クーパーの使用を開始した ( 公判廷供述担当医 ) ( クーパーを使用する方が ) 安全に剥離できる ( 公判廷供述担当医 ) 用手剥離をそのまま行うこともできるが 気持ち 剥離しづらくなったというところからそう ( クーパーの併用を ) 考えた ( 判決 24 頁第 1 4 本件手術 (5) ア ) 担当医は 左手で胎盤を牽引しながら 右手手指を胎盤と子宮壁の間に差し入れ 指先で胎盤を押すようにして 子宮後壁上部から下部の方向に用手剥離を試みた しかし 徐々に指で剥離することが困難となったため 途中からクーパーも使用 ( した ) ( 判決 39 頁第 6 3(2) ウ ( エ )) 担当医は 用手剥離中に胎盤と子宮の間に指が入らず用手剥離が困難な状態に直面した時点で 本件患者の胎盤が子宮に癒着している認識をもったと認めることができる 61
53 第 4 術中の診療経過について 9B1 術中の事実関係 ( 判決 39 頁第 6 4) 癒着胎盤と認識した時点において 胎盤剥離を継続すれば 現実化する可能性の大小は別としても 剥離面から大量出血し ひいては 本件患者の生命に危機が及ぶおそれがあったことを予見する可能性はあったと解するのが相当である (5) クーパー使用後の胎盤の剥離の仕方クーパー使用後の具体的な剥離の仕方について 担当医の検面調書 担当医の公判廷供述 判決の認定は 次のとおりである ( 検面調書乙 5-5) クーパーの先端部分を用手剥離のときの右手の指の代わりに胎盤と子宮の間に入れ 削いでいくような感じで胎盤を剥離した 胎盤をクーパーで切ったこともあったと思う 多分 胎盤を剥離する途中 急がなくてはいけないと思ったときに 削ぐのを止めて切ったのだと思う ( 検面調書乙 15-11) ( 出血が現れた後 ) とにかく胎盤を全て剥離してしまおうと考え 急いで作業を進めた 剥離しにくい部分はクーパーのハサミの部分で切ってから 削ぐように剥離するという方法も使い始めた ( 公判廷供述担当医 7-395~400) なでたり そいだり ちょっと切開を入れたりというようなことで 交互にやっている 索状物があった場合は クーパーの先端を閉じたままだが 押し進めるような感じで そぐようにして剥離していた 索状物が若干硬いような場合は クーパーで少し索状物に切れ込みを入れ またクーパーを閉じて先端で押し進めるように そぐようにしていた ( 判決 24 頁第 1 4 本件手術 (5) ア ) 主にクーパーの閉じた先端部を子宮と胎盤の間に差し入れて削ぐようにしたり クーパーのはさみの部分で切開を入れるなどして かろうじて胎盤を剥離したが 最後には 突然 残りの胎盤が するっと取れて胎盤の剥離が終了した * なお 本件事故後に病院が遺族に交付した平成 16 年 12 月 26 日の担当医説明の文書には クーパー ( はさみ ) にて剥離面を切開 剥離する状態 と記載 62
54 第 4 術中の診療経過について 9B1 術中の事実関係 されている (6) 胎盤の娩出 14 時 50 分 ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (6) 麻酔記録) 胎盤娩出 (M 助産師証言別紙 3) 剥離した胎盤の形状を M 助産師が 図示した図が存在する 1-2 循環管理と補充療法に関する事実関係 (1) 術中の出血量 患者の状態の推移術中の出血量及び患者の状態の推移に関しては 麻酔記録に概ね記録がなされており (2) 大量の出血が現れた時点を除いては裁判上争点とされていない よって (2) を除いて 判決の認定に基づき経過を記述し 術中の出血量 患者の状態の推移についての詳細は 別表 3 術中事実経過一覧表 を参照されたい (2) 大量の出血が現れた時点助手 C 医師の証言に基づけば クーパーを使用する前には 胎盤剥離部分から大量に出血があるという状況はなかったと考えられる この点 麻酔医 Bは 検察官面前調書 ( 検甲第 23 号 20 項 ) では クーパー使用前の用手剥離の段階でも大量出血が起こっていたかのような供述をしていたが 公判廷の証言では 用手剥離時にどの程度の出血があったか具体的なところまでは記憶があいまいという証言となっている ( 麻酔医 B 証言 137) ( 助手 C 医師証言 ) クーパーを使い始めてから出血は多少増えたというお話だったんですが これは まだにじみ出るという状態は変わりないですか そうですね ものすごく大量に吹き出してくる状態ではありませんでした では 大量の出血が現れたのはいつか この点について 担当医の検面調書 担当医の公判廷供述 他の医師の証言 これらを踏まえた判決の認定は 次のとおりである ( 検面調書乙 15-12) 胎盤剥離作業を急ぐ内に 段々と胎盤剥離面からの出血量が多くなってきているように感じ始めた 出血量が多くなってきていると感じ始めるまでの胎盤剥離面からの出血の状態は しみ出るようにジワジワと出血している感じだったが 臍の緒の付け根の裏に差し掛かる手前くらいから 徐々に湧き出るような感じでの出血が始まった 63
55 第 4 術中の診療経過について 9B1 術中の事実関係 ( 公判廷供述担当医 7-418~422) 子宮壁からじわじわと出ているような状態で 剥離中に出血量が急に増加したことは無く クーパーを使用しているときに クーパーの先端部分が血液で見えなくなることも無かった ( 麻酔医 B 証言 ) その胎盤剥離の作業をしている最中に 証人のほうから 本件患者の出血の様子が見えたことはありましたか はい あります どんな出血の様子が見えましたか 時間的なところははっきり分単位では覚えてないんですけれども おふろに水を張るような感じでわいてくるような感じの出血が見えた覚えがあります ( 助手 C 医師証言 75~89) その剥離作業と出血の増加について どのように思われましたか つまり相関関係といいますか 双方が連動関係にあったとか そういう点なんですけど やはり剥離作業が進むにつれて 少しずつ出血が多くなってきた印象はあります 剥離作業が進んでいきますね 進行していく時間経過があるわけですが その際の出血量というのは 作業が進むにつれて絶えず一定の状態だったというふうにお感じになったか それとも減少していったと感じていたか それとも増加していったと感じていたか 量は剥離が進むにつれて 少しずつ増えていったような印象はあります ( 判決 24 頁第 1 4 本件手術 (5) イ ) 胎盤剥離中に出血が増加し 本件患者の血圧が低下した ( 判決 29 頁第 3 2(2)) 担当医が 医師記録に 剥離終了まで時間を要し 出血も多かった 約 15 分 約 5 000ml 14:50 胎盤娩出出血量 up 血圧 down このあたりでbl eeding 5000mlぐらいか などと記載し 本件手術後 E 院長に対し 胎盤娩出中の出血量増大を報告していることからすれば 担当医自身 本件手術終了直後には 胎盤剥離中に出血量が増大したとの認識を有していたと認められる ( 判決 30 頁第 3 2(2)) 麻酔医 Bが 胎盤剥離中に 本件患者の子宮内の広い範囲からわき出るように出血している様子を目撃し 助手 C 医師も 担当医がクーパーを使用しだしてから出血量が増えたように感じた旨証言していることからも 胎盤剥離中に次第に出血量が増えたように感じた旨証言していることからも 胎盤剥離中に次第に出血量が増加してきたことが認められる 64
56 第 4 術中の診療経過について 9B1 術中の事実関係 本件患者の血圧が午後 2 時 55 分ころ急速に下降し 午後 2 時 45 分には輸液ヴィーンFからヘスパンダー (( 注 ) ヴィーンFより血管内に留まる ) に切り替え 午後 2 時 54 分ころから午後 3 時ころまでノルアドレナリンが使用されていることなどから 午後 2 時 55 分ころには 本件患者の全身状態が急速に悪化する状態にあったと認められ 原因として 胎盤剥離中の出血量の増加を考えることができる (3) 医師らは何をしていたのか胎盤剥離時以降 医師 看護師らが どのような処置 対応を行ったかについては 判決の認定はア以下のとおりである ア担当医担当医及び医師らは 以下の判決の認定のとおり 次の止血措置を行った 子宮収縮剤の投与 子宮腔内ガーゼ充填法 圧迫止血 出血部位の縫合結紮 子宮動脈挟鉗しかし 出血は止まらず 追加オーダー分の輸血後 子宮摘出が行われた ( 判決 24 頁第 1 4 本件手術 (5) ア ) 担当医は 胎盤剥離中に 止血操作をしなかった ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (7) ア ) 胎盤娩出 ( 注 : 午後 2 時 50 分 ) 後 担当医は アトニンO( 子宮収縮剤 ) を使用したが 子宮からにじみ出るような出血が続いた ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (7) イ ) 担当医は 出血と血圧低下があったことから 胎盤娩出後 助手 C 医師と共に止血操作を行った 担当医が出血点付近を中心に子宮後壁側子宮頸部にガーゼを詰め 助手 C 医師と交互に子宮を手で覆うように圧迫したり 出血点と思われる場所にZ 型に糸をかけて絞ったり 子宮動脈付近をペアンで挟んだり 再び子宮収縮剤を子宮に注射するなどした 担当医らが子宮を圧迫している間は多少止血の効果があったが 少し手を離すと出血が続く状態で なお出血は止まらなかった 午後 3 時 5 分ころ 担当医は 麻酔医 Bと相談の上 MAPが到着し 本件患者の循環動態が落ち着くのを待って子宮摘出を行うこととした ( 判決 26 頁第 1 4 本件手術 (10) ア ) 午後 4 時 20 分 MAP 到着 輸血 午後 4 時 35 分ころ子宮摘出に移行 午後 5 時 30 分ころ子宮摘出完了 65
57 第 4 術中の診療経過について 9B1 術中の事実関係 イ麻酔医 B ( 判決 24 頁第 1 4 本件手術 (5) エ ) ( 総出血量 2000という報告を聞いた午後 2 時 40 分の後から ) 通常の点滴では急激な出血に追いつくことができないと判断し 左の点滴ラインを使ってパンピング ( 輸液ラインの途中に付いている三方活栓という道具と注射器を使って 輸液を強制的に吸引して押し込むことを繰り返す操作 ) を開始した 以後 本件患者の蘇生を開始するまでの間 パンピングを継続 午後 2 時 45 分ころ 本件患者の出血が増加し 血圧が下がり始めていることを確認 そこで 輸液をヴィーンFから より血管内に留まるヘスパンダーへ切り替え ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (7) ウ ) 午後 2 時 45 分ヘスパンダー 500mlを両腕から投与 午後 2 時 55 分から午後 3 時 5 分ころ 準備してあったMAP5 単位の輸血を開始 ( ) 本件患者の血圧が低下 さらに 同人から気持ちがわるいとの訴えあり そのため 酸素量を毎分 2リットルから6リットルに増量 ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (7) イ ) 午後 3 時 5 分ころ 担当医は 麻酔医 Bと相談の上 MAPが到着し 本件患者の循環動態が落ち着くのを待って子宮摘出を行うこととした ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (7) ウ ) 午後 3 時 10 分 MAP10 単位を血液センターに発注 (1 回目 ) 午後 3 時 15 分以降 ノルアドレナリンの持続投与を開始 あわせてノルアドレナリン60マイクログラムをワンショットで投与 ( 麻酔医 B 証言 ~544) 師長から職員から血液を募りましょうかという提案があったので 職員から採血して新鮮血を用意することを指示した ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (8) イ ) 午後 3 時 30 分頃までに 病院職員から採血するなどして 血液を集め始めた ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (8) イ ) 午後 3 時 30 分 MAP10 単位追加発注 (2 回目 ) ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (8) イ ) 午後 3 時 35 分ころ 66
58 第 4 術中の診療経過について 9B1 術中の事実関係 全身麻酔 気管挿管 ( 判決 26 頁第 1 4 本件手術 (9) イ ) 午後 3 時 45 分 血液センターに照射濃厚血小板 20 単位発注 午後 3 時 50 分 新鮮凍結血漿 80mlを10パック発注 午後 3 時 55 分ころ ショック対策にミラクリット50 万単位投与 午後 4 時 職員から3000ml 採血 (Rh+ A 型 ) したものが手術室へ運ばれた ( 結局使用されなかった ) ( 麻酔医 B 証言 545~549) 結局 新鮮血は使用しなかった 新鮮血を使用しなかった理由 1 新鮮血を直接検査もしないで輸血するというのは通常あり得ない行為 2 GVHD 発生のおそれ ( 判決 26 頁第 1 4 本件手術 (10) ア イ ) 午後 4 時 20 分 MAP20 単位が到着 午後 4 時 30 分以降 輸血実施 本件患者の血圧が急上昇した の午後 2 時 55 分にMAP5 単位の輸血を開始してから 午後 4 時 30 分にMAP2 0 単位の輸血を開始するまでの間 どのような輸液 輸血療法が行われていたのか 不明である 麻酔記録には 午後 2 時 55 分ころの部分に 印が記載され 記録用紙の上部に これ以降 出血 となり ヘスパンダー 500ml 7 FFP15U MAP25U プラズマネートカッター 250ml 2 ヴィーンF500ml 3 使用す と記載されている しかし いつ何を投与したのかについて 麻酔記録をはじめとする医療記録には全く記載はない 刑事事件の記録でも 麻酔医 Bは供述していない この点について 事故後に病院が遺族に交付した文書 ( 平成 16 年 12 月 26 日 * 麻酔医 B ( 麻酔科 ) 説明 には 農厚赤血球 ママ をオーダーするも 到着まで1 時間以上かかるとのことから 近隣病院に問い合わせをするも在庫なし 代用血漿 アルブミン製剤 院内在庫の新鮮凍結血漿 (FFP) を急速投与 との記載もある したがって 輸液 輸血療法の事実関係については 精査が必要であろう ウ助手 C 医師 ( 外科 助手 ) 担当医の項参照 67
59 第 4 術中の診療経過について 9B1 術中の事実関係 エ E 院長 ( 整形外科 ) ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (9) ア ) 午後 3 時 45 分ころ 本件手術室に到着 子宮を圧迫している最中の担当医に 大野病院外科部長のD 医師を応援に呼ぶかどうか尋ねたが 担当医は大丈夫であると答えた (E 院長証言 ) 午後 4 時 40 分 輸血により血圧が上昇したのを見て 手術室を離れた オ助産師 看護師 (L 助産師検面調書 11) ( 出血量について5000と聞いた後 ) 私は再びナースステーションに戻ったが 手術室から 薬が足りないから用意するよう指示があったり 血液が足りないから 職員からA 型の血液のものを確認し 採血するよう指示があったので 私を含め ナースステーションにいる看護師達は急いでその対応に追われた 手術室からひっきりなしに電話がかかってくるし 本当にあわただしく 大変だった (P 看護師証言 107~111) 看護師の応援要請 (4) 子宮摘出を遅らせる判断から輸血の準備 施行状況 子宮摘出まで ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (7) イ ) 担当医らが子宮を圧迫している間は多少止血の効果があったが 少し手を離すと出血が続く状態で なお出血は止まらなかった 午後 3 時 5 分ころ 担当医は 麻酔医 Bと相談の上 MAPが到着し 本件患者の循環動態が落ち着くのを待って子宮摘出を行うこととした ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (7) ウ ) 午後 3 時 10 分 麻酔医 B MAP10 単位 (2000cc) を血液センターに発注 (1 回目 ) ( 麻酔医 B 証言 ~544) 師長から職員から血液を募りましょうかという提案があったので 職員から採血して新鮮血を用意することを指示した ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (8) イ ) 午後 3 時 30 分頃までに 病院職員から採血するなどして 血液を集め始めた 午後 3 時 30 分 麻酔医 Bが MAP10 単位を追加発注 (2 回目 ) 68
60 第 4 術中の診療経過について 9B1 術中の事実関係 ( 判決 26 頁第 1 4 本件手術 (9) イ ) 午後 4 時 職員から3000ml 採血 (Rh+ A 型 ) したものが手術室へ運ばれた ( 結局使用されなかった ) ( 麻酔医 B 証言 545~549) 結局 新鮮血は使用しなかった 新鮮血を使用しなかった理由 1 新鮮血を直接検査もしないで輸血するというのは通常あり得ない行為 2 GVHD 発生のおそれ ( 判決 26 頁第 1 4 本件手術 (10) ア イ ) 午後 4 時 20 分 MAP20 単位到着 午後 4 時 30 分以降 輸血が行われ 本件患者の血圧が急上昇した ( 判決 26 頁第 1 4 本件手術 (10) ア ) 午後 4 時 35 分 子宮摘出開始 午後 5 時 30 分ころ 子宮摘出完了 (5) 応援依頼担当医は 大丈夫 といい 全く応援依頼をしなかった ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (7) イ ) 胎盤娩出後 午後 3 時 30 分ころまでの間に 担当医に 助手 C 医師は 大野病院外科部長 D 医師に応援を依頼するかどうかを尋ね 麻酔医 Bは Z 病院のA 医師をいつ要請するのかの判断を求めた しかし 担当医は いずれも大丈夫であると必要性を否定 ( 判決 25 頁第 1 4 本件手術 (9) ア ) 午後 3 時 45 分ころ E 院長 手術室に到着子宮を圧迫している最中の担当医に対し 外科部長 D 医師を応援に呼ぶかどうか尋ねたが 担当医は大丈夫である旨答えた 2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) (1) 医学文献ア開腹後の臨床的癒着胎盤の診断臨床的に癒着胎盤の診断をするにあたり 術中に注目すべき重要所見は 1 術前の診断情報等 2 子宮前壁から膀胱周辺の血管怒張 3 胎盤剥離兆候の有無 娩出の困難性 4 大量出血 止血困難状況である これらの所見が認められる場合 臨床的に癒着胎盤との診断を行い あるいはその可能性を疑って 癒着胎盤事例への対処方法を念頭に置きつつ治療に当たる必要がある 69
61 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) ( ア ) 術前の診断情報等術前の診断情報等については前記 29 頁第 3 1のとおりであるが 術前の経過に加え 特に癒着胎盤発症のリスク因子 ( 特に帝王切開既往であることや前置胎盤症例であること ) の有無が重要な情報となる < 文献 > 本件事故(2004 年 12 月 ) より前の文献 1 前置胎盤の中で癒着胎盤となる予測リスクについて 既往帝王切開術 1 回で 35 歳未満の場合 子宮切開創瘢痕部上に胎盤がない場合は 3.7% 子宮切開創瘢痕部上に胎盤がある場合は 15.9% としている ( 米論文 弁 年 ) 2 癒着胎盤の危険性は帝王切開術の既往のある妊婦に生じた前置胎盤でより高く また むしろ 妊娠末期まで無症状に経過するような前置胎盤の例で癒着胎盤の可能性が高いという報告もある ( 弁 5p 年 ) 3 我が国では 帝王切開既往の前置胎盤例において 癒着胎盤となる可能性は 24% と報告されている ( 甲 12 標準産婦人科学 p 年 ) 4 既往帝王切開術 子宮内掻爬術 子宮筋腫核出術が挙げられ る ( 甲 9p260,2004 年?) 本件事故(2004 年 12 月 ) 以降の文献 5 帝王切開 子宮内膜掻爬 妊娠中絶 子宮形成術などの手術の既往や子宮内膜炎 子宮内膜欠損 前置胎盤の場合に多い ( 甲 11p303,2005 年 ) 帝王切開既往が最も多く 20~30% が次回妊娠時 癒着胎盤となる可能性を持つ ( 甲 11p429,2005 年 ) 6 帝王切開術がある例における癒着胎盤合併率は 46% と有意に高率であった ( 弁 11p44,2006 年 ) 7 とくに前回帝王切開既往の子宮前壁( 子宮創部 ) 付着前置胎盤は 高頻度で癒着胎盤となる 前置胎盤で癒着胎盤となる頻度は5% であるが 前回帝王切開の前置胎盤では 24% となり ( 中略 ) と報告されている 帝王切開瘢痕部付近は脱落膜が乏しく その部に着床した場合 筋層内への絨毛侵入につながりやすいと考えられている ( 甲 12p 年 ) 8 前置胎盤の約 5~10% に癒着胎盤が合併する ( 文献 32 ガイドライン 2008) 9 無傷子宮での前置癒着胎盤頻度は1~5% であるのに比し 帝王切開既往回数が1 回 2 回 3 回 4 回以上である前置胎盤癒着胎盤頻度はそれぞれ 14% 23% 35% 50% と報告されている 現時点では帝王切開既往患者が前置胎盤を合併した場合 癒着胎盤の存在を想定して管理 分娩にあたることが重要であろう ( 文献 32 ガイドライン 2008) ( イ ) 子宮前壁から膀胱周辺の血管怒張開腹時に子宮壁に血管怒張や 紫色への変色などがある場合 癒着胎盤の可能性が高い 70
62 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) なお 子宮壁の血管怒張については 前記 32 頁第 3 1(1) イ ( キ ) 42 頁 (2) ウ ( エ ) および44 頁 (3) も参照されたい < 文献 > 本件事故(2004 年 12 月 ) より前の文献 1 子宮瘢痕創部周囲の血管が無数に怒張していたり 子宮筋が紫色に着色して胎盤が直下にあるような場合 癒着胎盤の可能性が高い ( 弁 143 引用資料 p1643 竹田省ほか,1996 年 ) 2 開腹時に子宮壁の紫色への変色あるいは胎盤が透けて見える場合には癒着胎盤の可能性がきわめて高い ( 甲 58p114,2000 年 ) 3 placenta increta( 嵌入胎盤 ) やplacenta percreta( 穿通胎盤 ) は絶対に胎盤剥離を試みるべきではない とした上で 帝王切開既往前置胎盤の場合について 胎盤付着部の下節筋層表面や筋層内に怒張した豊富な血管がみえたり 紫色に透視できるなら placenta accretaもしくは嵌入胎盤である 同様の所見と膀胱周囲の豊富な血管の存在は嵌入胎盤 穿通胎盤が疑われる 肉眼所見で胎盤剥離を試みるか決定できないときは 児娩出後胎盤剥離が自然に起こらなかったり 胎盤母体面からと子宮下節漿膜面からと両手で挟んでみて子宮筋層が数 mm 以下の薄さなら剥離面の出血が困難と考えたほうがよい いずれにしろ出血が始まってからの子宮摘出は出血が多量になるため 胎盤剥離をしないでそのまま子宮摘出したほうがよい としている 周産期救急のコツと落とし穴 竹田省 帝王切開時の大量出血の処置 ( 文献 13p 年 ) 4 開腹時に子宮壁が暗紫色ならびに蒼白色へと変色していて 静脈血管の怒張が顕著であったり 子宮壁から胎盤が透過される場合は 癒着胎盤でも嵌入胎盤が強く疑われるため 子宮全摘術の適応となる 産科臨床ベストプラクティス 竹内正人ほか ( 文献 61p 年 ) 5 既往帝王切開 前置胎盤症例で 子宮下部は胎盤付着部位が腫大膨隆し 暗紫色に胎盤が透視できる場合がある 子宮下部 膀胱上腹膜には怒張した血管が多く見られる このような場合 胎盤の剥離は決して試みず 子宮創部を仮縫合止血して子宮摘出術に移る ( 高橋恒男ほか文献 40p 年 ) 本件事故(2004 年 12 月 ) 以降の文献 6 開腹時に子宮前壁 ~ 膀胱周辺に拡張した血管がないか確認する 癒着胎盤においては怒張血管が高率にみられる ( 文献 22p 年 ) 7 分娩前あるいは帝王切開前に癒着胎盤の診断を確実に付けておくことは困難であり リスク因子や画像診断を用いても 全例を分娩前に診断することは難しく 最終的には開腹所見や胎盤剥離時の臨床所見から診断しなくてはならない 開腹時の子宮前壁 ~ 膀胱周辺部の漿膜に 怒張した血管がないかどうかは非常に重要所見である われわれは 帝王切開の既往がない前置癒着胎盤症例においても同所見を認めたことがあり 本所見を認めた場合は十分に人員を揃えてから児娩出を開始するべきと考える ( 文献 82 臨床 71
63 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) 婦人科産科 63 巻 1 号 55 頁,2009 年 ) ( ウ ) 胎盤剥離徴候の有無 胎盤娩出の困難性自然分娩例において胎児娩出後 30 分経過しても胎盤が娩出されない場合や 胎盤娩出困難な場合には 癒着胎盤例である可能性が高い < 文献 > a 胎盤剥離徴候の有無 本件事故(2004 年 12 月 ) より前の文献 1 通常 児娩出後数分すると胎盤が剥離する 分娩第 3 期の平均時間は 初産で 分 経産で 分であるため 30 分以上経過しても胎盤が娩出されない場合は 胎盤嵌頓や癒着胎盤を考慮し 適切な処置を講じる必要がある 通常 胎盤娩出の際は 胎盤の剥離を確認後に臍帯を軽く牽引して娩出させる ( 弁 6p 年 ) 2 胎児娩出後 30 分待っても胎盤の子宮口への嵌頓を認めない状態で剥離徴候が認められない場合に癒着胎盤を疑う ( 甲 9p260,2004 年?) 本件事故(2004 年 12 月 ) 以降の文献 3 分娩第 3 期に胎盤が児娩出術後約 30 分経過しても娩出をみない胎盤遺残の場合には 付着胎盤または癒着胎盤を疑う ( 文献 1p 年 ) b 胎盤娩出の困難性 本件事故(2004 年 12 月 ) より前の文献 1 胎盤用手剥離術について 本手術により 胎盤が娩出されるのは前述のごとく付着胎盤であり 胎盤娩出が困難で 胎盤と子宮筋層との間に絹糸状の索状物をふれる場合には癒着胎盤と診断し ただちに用手剥離術を中止する 剥離が困難にもかかわらず 操作を続行すると 胎盤の不完全な剥離による大量出血や子宮壁穿孔などの重篤な合併症を引き起こすことになる 癒着胎盤の臨床的診断がつけば ただちに子宮全摘術を行うことが原則である ( 文献 42p 年 ) 2 術中に初めて癒着胎盤と診断し 子宮全摘術を施行した症例報告 : 術中 胎児娩出後に子宮を観察したところ子宮体部全壁右側の子宮筋が菲薄しており 胎盤が透見している様に思われた 慎重に胎盤用手剥離しようとしたが剥離不可能であった 癒着胎盤の術中診断のもと 中略 本人 夫とも子宮全摘術を選択され同手術を施行した 病理診断では嵌入胎盤と診断された ( 文献 34p 年 ) 3 帝王切開既往の患者で 選択的帝王切開施行 胎盤は子宮前壁に付着しており 児娩出後剥離困難で癒着胎盤と診断し そのまま子宮摘出となった症例について報告あり ( 文献 36p 年 ) 4 胎児娩出後 30 分以上経過しても胎盤剥離徴候がみられず 子宮弛緩と一部剥離した部分からの多量の出血がみられることにより本疾患を疑う 胎盤用手剥離の困難性から診断されるが 確診は摘出子宮または胎盤の病理学的所見による ( 文献 年 ) 本件事故(2004 年 12 月 ) 以降の文献 72
64 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) 5 ほとんどは分娩第 3 期における胎盤娩出困難で癒着胎盤を疑う 娩出された胎盤から肉眼的に診断することはできず 病理所見で胎盤の母体面に子宮筋層が含まれている場合癒着胎盤の診断となる ( 甲 11p 年 ) 6 帝切術中 術後に癒着胎盤と診断した症例報告 : 全前置胎盤で予定帝切が行われた症例 子宮下部から右側にかけて胎盤の癒着があり 剥離困難にて続けて単純子宮全摘術を施行 術中出血は 3056ml 病理にて癒着胎盤 ( 文献 20p 年 ) 7 児の娩出後 30 分経過しても胎盤剥離徴候を認めない場合 癒着胎盤を疑う 胎盤用手剥離術を施行しても剥離困難な場合 臨床的癒着胎盤と診断する したがって 臨床的には ( 肉眼的に穿通胎盤であることが明らかである場合 画像所見が明瞭である場合を除き ) 胎盤の剥離操作を行わないと癒着胎盤の診断はできない ( 文献 58p229 海野信也 2006 年 ) 8 低置胎盤で術前癒着胎盤の疑いが強いと診断された症例で 児娩出の間 胎盤の一部は自然剥離し約 3,000g の出血があった さらに胎盤剥離操作に伴い約 3,000g の出血があり 自己血と同種血の輸血を開始し 胎盤剥離困難と判断し 子宮摘出を行った ( 文献 4p 年 ) 9 術前検査で癒着胎盤が疑われた1 回経産婦 児娩出と同時に子宮収縮剤を投与し輪状マッサージを続けたが 胎盤は一部剥離するのみでその他の部は強固に付着していたので 胎盤用手剥離はそれ以上試みず 子宮全摘した 全出血量は 1,400ml 術後の組織検査では嵌入胎盤 ( 文献 28p 年 ) ( エ ) 大量出血 止血困難状況癒着胎盤の場合 胎盤剥離等を行ったことによる大量出血の発生 および 止血困難状況の発生の可能性が高い < 文献 > a 胎盤剥離等を行ったことによる大量出血の発生 本件事故(2004 年 12 月 ) より前の文献 1 胎盤用手剥離術について 本手術により 胎盤が娩出されるのは前述のごとく付着胎盤であり 胎盤娩出が困難で 胎盤と子宮筋層との間に絹糸状の索状物をふれる場合には癒着胎盤と診断し ただちに用手剥離術を中止する 剥離が困難にもかかわらず 操作を続行すると 胎盤の不完全な剥離による大量出血や子宮壁穿孔などの重篤な合併症を引き起こすことになる ( 文献 42p 年 ) 2 無理に剥離しようとすると大量出血 外傷性子宮破裂 子宮内反症などを引き起こすことがあるため 大量出血を認めた場合は直ちに中止し開腹術に切り替えるべきである ( 甲 9p260,2004 年? 編者から主に経腟分娩の場合を前提としたものであるとの回答あり 弁 137) 3 前置癒着嵌入胎盤を術前に確実に診断する( あるいは否定する ) 検査法は確立されておらず 術中においても胎盤剥離を行ってみなければ 診断の確定はできない しかし 73
65 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) 母体死亡に至るような大量出血をきたす例は ほとんどが胎盤剥離操作を行った場合であり このため前置癒着嵌入胎盤では剥離操作は行ってはならないとされている ( 文献 13p 年 7 月 ) 本件事故(2004 年 12 月 ) 以降の文献 4 低置胎盤で術前癒着胎盤の疑いが強いと診断された症例で 児娩出の間 胎盤の一部は自然剥離し約 3,000gの出血があった さらに胎盤剥離操作に伴い約 3,000gの出血があり 自己血と同種血の輸血を開始し 胎盤剥離困難と判断し 子宮摘出を行った ( 文献 4p 年 ) b. 止血困難状況の発生 本件事故(2004 年 12 月 ) より前の文献 1 胎盤剥離を試みるも剥がれなかったり 止血不能例でも直ちに子宮全摘を行う ( 文献 45p 年 ) 本件事故(2004 年 12 月 ) 以降の文献 2 前回帝王切開既往の全前置胎盤でMRI 画像所見から嵌入胎盤が疑われた症例について 児娩出後 胎盤剥離せず子宮全摘出を行った症例について報告 前置癒着胎盤 ( 特に嵌入あるいは穿通胎盤 ) では 胎盤を娩出後の胎盤剥離面からの止血は原則的に不可能であり 児の娩出後に胎盤を子宮内に残したまま すみやかに子宮全摘するのが望ましいとされている ( 文献 年 ) イ臨床的癒着胎盤例に対する胎盤剥離行為 ( ア ) 胎盤剥離 ( 用手剥離 ) の実施の適否臨床的に癒着胎盤の診断がつけば 無理な胎盤剥離を行わずに 子宮摘出術を実施するのが原則である 臨床的に癒着胎盤の疑いがあるが診断がつかない場合の対応については 定まっていないものの そのような場合も含めて 文献上は胎盤剥離の実施自体について否定的な傾向が窺われる しかしながら 他方で用手剥離の実施までを必ずしも否定しない意見もある ただし このような意見は 大量出血に備え輸血等の準備を整える必要性を併せて指摘する 従って 十分な輸血等の準備を前提として用手剥離の開始が許容されるとの意見と考えられる < 文献 > a. 用手剥離の実施について否定的なもの 本件事故(2004 年 12 月 ) より前の文献 1 胎盤用手剥離 : ただし placenta increta,placenta percreta では子宮筋の欠損程度により止血不能の大出血となったり 子宮穿孔を起こす可能性がある したがって開腹手術の準備をしてから施行するのが安全である 子宮摘除術: 胎盤が強固に癒着している場合は 用手剥離を行わず そのまま子宮 74
66 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) 腟上部切断術 または子宮全摘術を行う 無理な用手剥離強行は 高い母胎死亡率をもたらす ( 文献 114 エッセンシャル産科学 婦人科学第 2 版 529 頁 )(1996 年 6 月 ) 2 胎盤用手剥離術について 本手術により 胎盤が娩出されるのは前述のごとく付着胎盤であり 胎盤娩出が困難で 胎盤と子宮筋層との間に絹糸状の索状物をふれる場合には癒着胎盤と診断し ただちに用手剥離術を中止する 剥離が困難にもかかわらず 操作を続行すると 胎盤の不完全な剥離による大量出血や子宮壁穿孔などの重篤な合併症を引き起こすことになる 癒着胎盤の臨床的診断がつけば ただちに子宮全摘術を行うことが原則である ( 文献 42p1712 森岡信之ほか 1996 年 ) 3 開腹時 胎盤付着部位が紫色になり 胎盤が透見できるものは大量出血を避けるため その部位をはずして体部切開にする このような胎盤の剥離は決して試みてはならない 大量の出血を見ることになる 児娩出後子宮筋層を仮縫合止血し 迷わず子宮摘出を行う あらかじめ嵌入胎盤や穿通胎盤と診断されている場合や開腹時 胎盤が透見できるものは迷わず子宮摘出する ( 文献 45p779 竹田省ほか 1998 年 なお 文献 47p1701 竹田省ほか 1996 年にも同様の記載あり ) 4 既往帝王切開 前置胎盤症例で 子宮下部は胎盤付着部位が腫大膨隆し 暗紫色に胎盤が透視できる場合がある 子宮下部 膀胱上腹膜には怒張した血管が多く見られる このような場合 胎盤の剥離は決して試みず 子宮創部を仮縫合止血して子宮摘出術に移る ( 文献 40p 年 ) b. 用手剥離の実施について必ずしも否定的でないもの 本件事故(2004 年 12 月 ) より前の文献 1 標準産科婦人科学 該当部分執筆者竹田省 2001 年 ( 甲 12p430) あらかじめ嵌入胎盤や穿通胎盤と診断されている場合や 開腹時 子宮壁を通して胎盤が見えるものは迷わず子宮摘出する 胎盤剥離を試みるも剥がれなかったり 止血不能例でも直ちに子宮全摘を行う ( 参考 : 執筆者コメント ( 弁 143) 狭義の癒着胎盤や嵌入胎盤では一部胎盤が剥がれることが多いが この場合 そのまましておくと出血が多くなるため 癒着胎盤や嵌入胎盤となっている部分を用手的もしくはクーパーで可及的に剥がし 剥離面の止血をはかることは極当然のことで 我々も同様に行っている その後の止血操作 ( 剥離面の吸収糸による縫合やinterrupted circular suture など ) によって止血でき 子宮が温存できることもある ( 文献を引用 ) これらの止血処置を施しても止血しなければ 子宮全摘を施行するのが一般的である また胎盤剥離を試みるも剥がれなかったり とは嵌入胎盤や穿通胎盤などでは胎盤全面が癒着しているため胎盤は全く剥がれないことが多く この際は躊躇なく子宮摘出を行う ということである ) 2 胎盤の剥離兆候が認められない場合 癒着胎盤を念頭に入れる 用手剥離に伴い大量出血 ショックとなり予後が不良となることが多い 通常の胎盤娩出方法で胎盤剥離兆 75
67 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) 候がない場合 単純子宮全摘術がもっとも安全である 癒着胎盤や産科出血性ショックに熟練した産科医がいれば 注意深く用手剥離を試みる その際には 輸血 麻酔 手術の準備を整え 緊急手術に対応できなければならない ( 文献 115 NEWエッセンシャル産科学 婦人科学 ( 第 3 版 460 頁 )(2004 年 6 月 20 日 ) 本件事故(2004 年 12 月 ) 以降の文献 3 胎盤剥離操作を行って初めて癒着胎盤の診断が得られるといった状況が 臨床的にはさけられないのが後壁付着タイプのPPPCの特徴である 従って 後壁付着のPPPC への対処法としては 常に癒着胎盤による大出血とそれに続く妊娠子宮摘出術 ( ポロー手術 ) があり得るということを帝王切開時に想定し 事象発症時には躊躇なくできるだけ速やかに子宮摘出術を施行することが必須である ( 文献 25p 年 ) ( イ ) 胎盤剥離行為の中止前述のとおり 臨床的癒着胎盤の診断 あるいは疑いがある症例に対する用手剥離の開始自体につき必ずしも否定しない見解もある しかしながら これらの立場においても胎盤の無理な剥離行為が大出血を引き起こす危険性を指摘し 剥離困難事例 止血不能例の場合には剥離行為を中止し直ちに子宮全摘術に移行すべきとする また 大量出血となり止血不能となった状況下においてなお 胎盤娩出の完遂を第一とする立場は文献上認められない < 文献 > 本件事故(2004 年 12 月 ) より前の文献 1 胎盤用手剥離術について 本手術により 胎盤が娩出されるのは前述のごとく付着胎盤であり 胎盤娩出が困難で 胎盤と子宮筋層との間に絹糸状の索状物をふれる場合には癒着胎盤と診断し ただちに用手剥離術を中止する 剥離が困難にもかかわらず 操作を続行すると 胎盤の不完全な剥離による大量出血や子宮壁穿孔などの重篤な合併症を引き起こすことになる 癒着胎盤の臨床的診断がつけば ただちに子宮全摘術を行うことが原則である ( 文献 42p 年 ) 2 胎盤剥離を試みるも剥がれなかったり 止血不能例でも直ちに子宮全摘を行う ( 文献 45p 年 ) 3 臍帯を牽引し容易に胎盤剥離すればよいが 剥離しがたいときには剥離しやすい部分から丁寧に指を進め 用手剥離する 剥離困難なとき ( 癒着の抵抗を感じる ) には癒着胎盤であるので無理をして剥離はしない ( 甲 58p 年 ) 4 胎盤剥離を試みるも剥がれなかったり 止血不能例でも直ちに子宮全摘を行う ( 甲 12p 年 執筆協力者から狭義の癒着胎盤や嵌入胎盤では一部胎盤が剥がれることが多いが この場合 そのまましておくと出血が多くなるため 癒着胎盤や嵌入胎盤となっている部分を用手的もしくはクーパーで可及的に剥がし 剥離面の止血をはかることは極当然のことで 我々も同様に行っている その後の止血操作 ( 剥離面の吸収糸によ 76
68 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) る縫合やinterrupted circular sutureなど ) によって止血でき 子宮が温存できることもある ( 文献を引用 ) これらの止血処置を施しても止血しなければ 子宮全摘を施行するのが一般的である また胎盤剥離を試みるも剥がれなかったり とは嵌入胎盤や穿通胎盤などでは胎盤全面が癒着しているため胎盤は全く剥がれないことが多く この際は躊躇なく子宮摘出を行う ということである との回答あり 弁 143) 5 癒着胎盤が予想される前置胎盤合併妊娠では 分娩前に十分な量の血液を準備し 術中で癒着胎盤の診断を行ったら無理な胎盤剥離は行わず 子宮摘出をためらわないことも大切である ( 文献 38p713 松田義雄ほか 2001 年 ) 本件事故(2004 年 12 月 ) 以降の文献 6 癒着胎盤の診断については 児の娩出後 30 分経過しても胎盤剥離徴候を認めない場合 癒着胎盤を疑う 胎盤用手剥離術を施行しても剥離困難な場合 臨床的癒着胎盤と診断する したがって 臨床的には ( 肉眼的に穿通胎盤であることが明らかである場合 画像所見が明瞭である場合を除き ) 胎盤の剥離操作を行わないと癒着胎盤の診断はできない とした上で 癒着胎盤と開腹時に診断された場合 帝王切開により児娩出後 胎盤の剥離操作は行わず 子宮温存を試みない場合は単純子宮全摘術 温存を試みる場合は子宮動脈塞栓術等を行うが子宮摘出に方針変更する可能性があることを十分に説明するとしている ( 文献 58p229 海野信也 2006 年 ) 7 帝切術中 術後に癒着胎盤と診断した症例報告 : 全前置胎盤で予定帝切が行われた症例 子宮下部から右側にかけて胎盤の癒着があり 剥離困難にて続けて単純子宮全摘術を施行 術中出血は 3056ml 病理にて癒着胎盤 ( 文献 20p281 五十嵐豪ほか 2006 年 ) 8 癒着胎盤は 分娩以前には その診断は不可能である とした上で 胎盤遺残が認められ 癒着胎盤が疑われる場合には ( 中略 ) はじめに胎盤娩出促進法を試みる それによって胎盤剥離徴候などが認められない場合には 超音波断層法を行 う 超音波所見によっても癒着胎盤が疑われる場合には 輸血準備を行った上で 全身麻酔下に胎盤用手剥離を試みる 用手剥離が困難な場合には 開腹のうえ 単純子宮全摘出術または腟上部切断術を行う 弛緩出血やDICを認めず 妊孕性の温存を強く希望し 十分なインフォームドコンセントが得られた場合に限り 保存的治療の適応となる (2004 年版から内容に変更なし ) 産婦人科研修の必須知識 2007 日本産科婦人科学会( 文献 51p280) ( ウ ) クーパーによる胎盤剥離の適否 a クーパーの一般的な使用方法クーパーは 一般的には 比較的大きな組織を剥離したり 糸や固い組織を切るときに使用する器具として位置づけられている < 文献 > 1 クーパーの用途につき 比較的大きな組織を剥離したり 糸や固い組織を切るときに使用します 外科剪刀とか糸切り剪刀とも呼ばれます とする 他方 クーパーよりも小型のメッツェンバウムの用途につき 77
69 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) 比較的繊細な組織を剥離したり切るときに使用します 糸切りに使用してはなりません 切開剪刀とか剥離剪刀とも呼ばれます とする ( 文献 83p , 中島伸 2006) b 癒着胎盤におけるクーパー使用の適否癒着胎盤の場合に 剥離のためにクーパーを使用するとした文献は 本件事故前には見あたらず 本件事故後については1 点検索できたのみであった 以上より 癒着胎盤における胎盤の剥離 摘出に関し クーパーを使用することの適否については 否定的に解されているものと考えられる < 文献 > 本件事故(2004 年 12 月 ) より前の文献 ( 該当する文献は検索されず ) 本件事故(2004 年 12 月 ) 以降の文献 1 前置胎盤で癒着胎盤になるタイプは2つに分類可能であるとし 前回帝王切開の切開瘢痕部に癒着する第一のタイプと 胎盤が内子宮口を覆っているが そこに脱落膜が認められない第二のタイプに分類している そして 第一のタイプについては その 多くが広範に癒着し 筋層が非常に菲薄化しており しかも子宮の半周以上にわたる場合も多く 子宮の温存が困難な場合も多い とし 第二のタイプについては 子宮頸管長が短縮し胎盤と子宮頸管腺部が出会い癒着しているので 脱落膜と頸管腺の境目の部分に直線上の癒着部分が形成される 前置胎盤の多くは通常は胎盤が簡単に剥離できるので このような症例に当たることで慌てて大出血を起こすと考えられる とする そして 第二のタイプの見分け方として 通常内子宮口は脱落膜で覆われている これは解剖学的内子宮口が組織学的内子宮口より頭側に位置するからである このことから子宮頸管長が短縮した場合に癒着胎盤の可能性が高い事が示唆される 子宮頸管長が3cm以上の場合 癒着胎盤は認められない とする また 第二のタイプの対処方法は 癒着胎盤の予測を立てた場合 胎児娩出後に癒着胎盤であれば胎盤が簡単には子宮から剥がれないことが重要である ( 絨毛が筋層内に入っている ) 無理に剥がす前に8 号ネラトンカテーテルで子宮頸部を縛る ( 以前子宮筋腫核出で行われていたと同様 ) 胎盤を鋭的( クーパーで ) または鈍的に剥離する 直線上に癒着部位が観察されるので 胎盤部分を筋層内に埋め込みながらロック縫合する ネラトンを緩め止血を確認する 後は通常の帝王切開と同様である とする ( 文献 84p.165, 吉岡信隆ほか 2008 年 ) c クーパー以外の器具の癒着胎盤での使用の適否癒着胎盤における胎盤の剥離 摘出に関し クーパー以外の何らかの器具使用を指摘する文献も極めて少なく 大多数の文献は用手剥離までの言及に止まる クーパー以外の器具使用に関し言及があった文献は 本件事故前に2 点 本件事故後に1 点検索された 本件事故前の文献には 胎盤鉗子 キュレット が具体的な器具として指摘 78
70 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) されているが 内 1 点は これらの器具使用によって大出血を引き起こす危険性を示して使用を否定する内容であり 使用につき必ずしも否定的ではない文献においても 胎盤鉗子で とれる分だけ除去する とされている また 本件事故以後の文献には 癒着胎盤について 癒着部を鈍性あるいは 鋭性 に剥離する として 何らかの器具を用いて剥離することを示唆する文献が 1 点検索されたが 具体的な使用器具の指摘もなく 器具を使用しての剥離を積極的に勧めたものと評価される文献は見あたらなかった 以上より 癒着胎盤における胎盤の剥離 摘出に関し クーパー以外の何らかの器具使用に関しても 否定的に解されているものと思われる < 文献 > 本件事故(2004 年 12 月 ) より前の文献 1 癒着胎盤について用手剥離を行い子宮を保存できた場合に遺残している胎盤の処置について 胎盤鉗子 キュレットなどを用いて外科的に排除すると再度大出血の可能性がある したがって 遺残胎盤に関してはあくまでも保存的に あるいはMTXなどの薬物を使用して処置すべきである とする ( 文献 65p288, 可世木久幸 1999 年 ) 2 分娩後にみられる子宮出血の原因のひとつとして 胎盤遺残 を挙げ その処置につき 用手剥離を挙げた上で 癒着が強ければ強行せず 子宮収縮が良くなってから 経腹超音波で家訓しながら大きい胎盤鉗子で とれる分だけ除去する とする ( 文献 5p , 武谷雄二 2000 年 ) 本件事故(2004 年 12 月 ) 以降の文献 3 帝王切開術での胎盤剥離につき 子宮温存する場合は ( 略 ) 胎盤の自然剥離を促す 同時に子宮底の輪状マッサージを行い胎盤を揉み出すように娩出させる 20~30 分間胎盤娩出を試みても胎盤が剥離しない場合には用手剥離を行う このときは胎盤全周を触診し抵抗の少ない部から徐々に用手剥離する 癒着胎盤が疑われる場合には 子宮頚部をネラトンカテーテルで縛り出血が減少するようにし 癒着部を鈍性あるいは鋭性に剥離する ( 文献 28p , 平松祐司ほか 2008 年 ) (2) 各専門家証人意見ア田中意見 ( ア ) 臨床的癒着胎盤の診断の可否および診断時期 a 概要胎盤剥離が困難あるいは不可能だと術者が判断した時点で臨床的癒着胎盤と診断し得るとし 本件では 用手剥離が困難となった午後 2 時 40 分の時点で臨床的癒着胎盤と初めて判断できるとする意見 b 一般論 臨床的にある程度癒着胎盤であることは判断できるのは 1 帝王切開などで子宮を見たときに 胎盤組織が子宮筋層に入り込んでいて子宮の外からも見えるような明らかな穿通胎盤のとき あるいは 79
71 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) 2 胎盤を剥離していって 途中で胎盤剥離が困難 あるいは 不可能だと術者が判断したとき ( 田中証人調書 125,126,618~625,748 項 ) 用手剥離している最中に 癒着が強くて手で剥離するということが出来ないという場合に癒着胎盤と判断できる (131 項 ) なぜならば 胎盤は通常は剥離するものなのに 剥離できないということ 特に強固に癒着しているということは 癒着胎盤と理解しているから (142 項 ) 用手剥離の経験はあるが 実際に癒着胎盤を剥離した経験はないが 過去の経験の用手剥離では普通はすっと剥がれる 時間にして通常は十数秒 長くても1 2 分で剥がれる (140,141 項 ) c 本件 本件においては 用手剥離が困難であった時点で癒着胎盤の診断を行い 子宮摘出を行う必要があり クーパーでの胎盤剥離は行うべきではなかったと思われる ( 検甲 37p16) 胎児娩出後 臍帯を牽引しても胎盤娩出が不可能であったとき あるいは遅くとも用手剥離による胎盤娩出が困難 不可能であった時点で 胎盤癒着の診断を行うべきであった ( 検甲 37p17) 田中医師は 胎盤剥離を中断して子宮摘出に移行すべきタイミングとして 術者が用手剥離が困難 不可能と判断した時点 としており 本件での具体的な時刻については検察官が 被告人の供述調書を前提とすると午後 2 時 40 分頃との記載がある (385 項 ) としたことから その前後であれば子宮摘出は可能 とした (382~385 項 ) 本件のような前置胎盤の症例で胎盤付着部位の子宮前壁の怒張した血管を認めることはそれほど稀ではないとする一方 基本的に妊娠末期の子宮は非妊娠時に比較し 血流が豊富であるため血管の怒張は時折見受けられる事項であるとし 子宮外壁の血管怒張の要因については 担当医がこの血管怒張をどのように判断していたのか あるいはこの怒張した血管が静脈であるのか動脈であるのかについても それ以上の記載がないため判断できないとする ( 検甲 37p18) ( イ ) 胎盤剥離操作の適否 a 概要用手剥離を行うことは一般的な対応であるが できるだけ出血させない より安全な医療ということから 用手剥離が困難あるいは不可能と術者が判断した時点で臨床的癒着胎盤と判断し 剥離を中止し 子宮摘出に移行すべきであって 本件は用手剥離が困難な事例であるから その時点 ( 午後 2 時 40 分頃 ) で胎盤剥離を中止し 子宮摘出に移行すべきであった 胎盤娩出のための手段としてクーパーを使用することについては 鑑定書ではクーパー使用を認める文献がなかったことを理由に否定しているが 尋問では周 80
72 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) 産期専門医が使用する方法もあるというのであれば問題ないのではないかとしており 明確な意見はない b 一般論 現在の我が国における癒着胎盤に対する治療法は無理な胎盤剥離を行わず 子宮を摘出することが第一選択であり 条件が許した場合のみ温存的治療が許されると判断される ( 検甲 37p16) 児娩出から約 20~30 分待って胎盤が剥離しない場合は 用手剥離術を行う (128 項 ) 用手剥離をする前に臍帯を引っ張ることは教科書的には行うなということだが 普通は軽く牽引する 引っ張るということは行われていると思う (129 項 ) 用手剥離によっても胎盤を剥離することができない場合には 癒着している範囲及び深さにもよると思うが 通常は用手剥離を中断して子宮を取ると成書には書いてあり このように書いてある理由は 強固に癒着している胎盤を無理に剥離させればそこから大出血をするからだと理解している (146,148,149 項 ) 強固な癒着があった癒着胎盤の場合は 剥離しないほうが安全 (179 項 ) 安全な医療 できるだけ出血しない医療という観点から 癒着胎盤を無理に剥離させれば大出血して生命の危機に及ぶ場合もあるので できるだけ出血しないような方法を考えながらやるように若手に指導している (758~761 項 ) 用手剥離を途中まで行った場合でも そのときの出血量 及び癒着していると思われる部分によって異なるが 基本的には その最中 剥離が困難 不可能な場合には用手剥離を続けない方がよく これは経腟分娩でも帝王切開でもかわらない ( ,196~198 項 ) 他方 癒着している範囲が狭い場合 ( 狭い かどうかは 出血量や範囲で術者が判断できると思う ) には そのまま剥離を続けるということもあると思うが 無理に筋層を傷つけることを行わないように気をつける 出血量が 多い というのがどの程度なのかについては 癒着胎盤や前置胎盤の場合には答えられない (188~192,195 項 ) また 患者やその家族が子宮温存を強く希望している場合で 出血量がない場合や 出血していても命の危険を冒してもいいから子宮温存したいという場合には剥離を継続する場合もあり得る (201~209 項 ) 通常の用手剥離のやり方で剥がれないとき ( すっと剥がれなくなったとき ) 結合組織があってなかなか剥がれないときには無理に剥離すべきではない その場所がうんと狭い場合には剥離を継続することもあるかと思うが 広い場合には無理に剥離すべきではない (753,754 項 ) c 本件 用手剥離が困難であった時点で癒着胎盤の診断を行い 子宮摘出を行う必要があり クーパーでの胎盤剥離は行うべきではなかったと思われる ( 検甲 81
73 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) 37p16,22) 杉野博士の鑑定書 担当医師の供述調書 手術記録からすると癒着胎盤の範囲はかなり広かったと推測される (343~352,381 項 ) さらに本件では 手術記録ではペアン 供述調書ではクーパーを用いなければ剥離できなかったこと 剥離に十数分かかっていることから 用手剥離は困難であったと推測され 用手剥離の最中に胎盤の剥離について困難又は不可能と判断できる状態になった時点 ( 午後 2 時 40 分頃 ) には 途中で剥離をやめて子宮摘出を行った方が良かった (379,381,382,384,385,663 項 ) 杉野博士の公判廷での癒着胎盤の範囲についての証言を前提としても鑑定結果は変わらない (363 項 ) d クーパーの使用に関して クーパーでの胎盤剥離は行うべきでなかった ( 検甲 37p16) 用手剥離できないのであれば クーパーを使わない方がよかった (669 項 ) クーパーの使用の適否については 判断しかねる (666,685 項 ) 鑑定書でクーパーの使用を否定したのは その時点でクーパーを使って剥離するという文献が何もなかったから周産期の専門家がクーパーを使用する方法があるというのであれば クーパーを使用しても問題ないのではないか (667,686 項 ) イ岡村意見 ( ア ) 臨床的癒着胎盤の診断の可否および診断時期 a 概要胎盤の剥離困難 胎盤剥離時の出血多量 止血困難例をもって臨床的癒着胎盤と診断し得る 本件は 胎盤剥離困難にはあたらず 出血多量 止血困難となった時点 ( 報告者注記 : おそらく 15 時頃を指すものと推測される ) で臨床的に癒着胎盤と初めて判断できるという意見と推測される b 一般論 胎盤をはがしにくい症例 あるいは 胎盤を剥がしてみて出血が非常に多くて止まらない 症例をもって 臨床的な癒着胎盤 と判断する ( 岡村証人調書 34~36,248,273 項 ) 前置胎盤の分娩時に大量出血があれば癒着胎盤を疑ってもいいと思う (276 項 ) 開腹時に子宮表面に血管の怒張が見られることは前置胎盤例でしばしばあること (51~52,671 項 ) 軽く臍帯を牽引することで癒着胎盤の確診を得ることは子宮収縮が悪く剥離しないケースもあるので 大変難しい ( 弁 131-5~6p) 開腹時に 前置胎盤の場合は胎盤が下のほうにあるので 血管が怒張している場合はしばしば ある (51 項 ) 82
74 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) c 本件 本例のように剥離の途中で出血が多くなったとしても前置胎盤による出血であるという認識であり 癒着胎盤の認識がなかったとしてもやむを得ない ( 弁 131-6p) 剥離困難という表現で示される状態は 用手剥離をしている時点では考えられない 胎盤を用手剥離する際には 指先で剥がれる部分から剥がしていくので 途中で行き止まりになるという剥離困難となることは よほど全面的に癒着している場合を除き ないであろう 従って 剥離困難でない本事例においては 剥離を継続した場合にはコントロールが不可能な程の大量出血を予見できたかを問題にする余地はない ( 弁 131-6p) 本件は用手剥離でできたケースであり 剥離困難事例ではない (493,494 項 ) ( イ ) 胎盤剥離操作の適否 a 概要用手剥離を行うことは 一般的な対応である 本件は用手剥離困難ケースではなく 大量出血が起きて初めて臨床的に癒着胎盤と診断することができる状態となると思われるが その時点では 止血が肝要であり そのために早く胎盤を娩出することを第一として対応した処置に 誤りはない 胎盤の娩出のための手段としてクーパーを使用したことも許容しうる b 一般論 一般的に帝王切開後に胎盤の剥離を促すために子宮収縮剤を投与する しかし それでも剥離が起きないときには 速やかに用手剥離を行うのが一般的である ( 弁 131-5p) 子宮筋の収縮は止血の意味で大変重要である 胎盤が剥離しなければ子宮筋の収縮も不十分であるので 用手剥離を行う ( 弁 131-5p) c 本件 ( 本事例では ) 後壁胎盤には癒着胎盤を強く示唆する所見はなかった 従って 胎盤を用手剥離しようとしたことは納得できる ( 弁 131-6p) 本例のように 剥離の途中で出血が多くなったとしても 前置胎盤による出血であるという認識であり 癒着胎盤の認識がなかったとしてもやむを得ない 一度 用手剥離を始めれば 前置胎盤であるために胎盤剥離部からの出血は当然多くなり 途中でやめることは出血部位をそのまま放置することにつながる ( 弁 131-6p) これまで用手剥離で剥がれないケースは経験が無く (223~226,249 項 ) 剥離を開始したらその作業をやりきった上で 出血創の状況等を確認の上 止血対応 ( 圧迫 縫合 ) をした方がよい (23~28,285 項 ) から 自分も同じことを 83
75 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) していたと思う (225,226,229 項 ) d クーパー使用に関して 子宮がんの手術の際の剥離操作やリンパ節廓清に好んでクーパーを使用している したがって クーパーは切開する器具であると決めてかかることは適当ではなく いろいろな使い方がある ( 弁 131-6p) クーパーの使用については 自身の胎盤剥離への使用例はないとしながらも 胎盤剥離を開始した時点で大出血が起きたが 何とか胎盤を剥離させ 創部分からの出血を止血 ( 圧迫か縫合 ) しようとした判断は誤りではない そのために 用手的剥離が困難であったため クーパーを用いて剥離を行った行為は妥当であるとし ケースバイケースで胎盤をはがすのに必要なら使わざるを得ないかな と認容する意見を述べている (219~226,229,682~693 項 ) ウ池ノ上意見 ( ア ) 臨床的癒着胎盤の診断の可否及び診断時期 a 概要子宮剥離面が癒着胎盤であることが分かってきたのは 14 時 53 分ごろとする その根拠は 出血量の急激な増大であるとする ( 池ノ上証人調書 391 項 ) b 一般論 癒着胎盤の臨床的な診断は 子宮にかぶさっている周辺の腹膜の色 異常血管の存在 胎盤剥離後の止血困難 血液が固まりにくいなどの症状を総合して 最終的に ( 終わった後に ) 判断する 癒着が強いことや剥離が困難であることは 癒着胎盤の臨床診断との間に1 対 1の関係にはないので 剥離が困難であるかどうかは癒着胎盤の診断に直接的には関係していない (52~57,67 項 ) 血管怒張 については 一般に 前置胎盤では子宮下部に血流が豊富になるため 腹壁を切開し子宮を露出すると 子宮表面に血管の怒張が見られることは少なくない として 特に これからは癒着胎盤と診断することはできないとしていると推測される ( 弁 155: 意見書 2) c 本件癒着胎盤の診断可能時期については 上記 aのとおり述べるだけであり ほかには述べていない ( イ ) 胎盤剥離操作の適否 a 概要胎盤剥離作業を開始した後に臨床的癒着胎盤が発見された場合には 剥離を中止することなく速やかに剥離を完遂して 子宮摘出に移るべきであるとする また 本件でのクーパーの使用は 通常の外科的な操作の範囲であれば問題ないとする b 一般論 用手剥離が困難と思われた時点で 迅速に胎盤剥離を終了して癒着部位を切 84
76 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) 除して縫合止血操作に入るか 途中で用手剥離を中止して子宮摘出を考慮するかは術者の術中判断に委ねられるべきものである ( 弁 132-3p) 剥離途中で癒着胎盤が発見された場合 速やかに剥離を終了して 子宮摘出に移るほうが 総出血量が少なくてすむ場合が多いと思われる ( 弁 132-3p) 開腹後 子宮を見て 癒着胎盤が明らかな場合には 胎盤剥離をせずに子宮摘出をするが それ以外は剥がしてから子宮摘出をするかどうかを決める (333 項 ) 胎盤剥離操作を途中でやめることはない (328 項 ) 胎盤は剥離を始めるとその部分から出血が始まる 剥離が終わってしまうと子宮収縮が期待できて 出血の本が止まるということが期待されるので 早く剥離した方が出血は止まりやすい (731 項 ) 途中で胎盤剥離を止めても出血がすべて止まるということはなかなか期待しにくい (65 項 ) c 本件 麻酔チャートからも 用手剥離を中断して子宮摘出に移らなければならなかったということは読み取れない (375 項 ) d クーパーの使用に関して 本件症例で局所的にクーパーを使用したことは 通常の外科的な操作の範囲であれば 全く問題はない クーパーを使用した経験はないが キュレットを使うことはある ( 項 ) (3) 三専門家証人意見の相違点ア臨床的癒着胎盤の診断の可否及び診断時期 ( ア ) 比較開腹後における臨床的癒着胎盤の一般的な診断方法について 田中意見は 出血させないという観点から胎盤の用手剥離の困難性としているのに対し 岡村意見は 胎盤の剥離困難のみならず 胎盤剥離時の出血多量 止血困難をもって臨床的癒着胎盤と診断しうるとしている また 池ノ上意見は 子宮に被さっている周辺の腹膜の色 異常血管の存在 胎盤剥離後の止血困難 血液が固まりにくいなどの症状を総合して最終的に判断するとし 胎盤の剥離が困難であるかどうかは癒着胎盤の診断に直接的には関係しないとしている 以上を前提とした本件についての判断としては 開腹直後に 子宮を見て臨床的に癒着胎盤であることを判断することは 困難であったとする見解に相違はない しかしながら 田中意見は 用手剥離の困難があった時点で臨床的に癒着胎盤と診断すべきであったとしているのに対し 池ノ上意見では 14 時 53 分頃 岡村意見は ( 不明確ではあるが ) 大量出血となり止血困難となった時点 ( 報告者注記 : おそらく 15 時頃を指すものと推測される ) に癒着胎盤と診断することができたとする 85
77 第 4 術中の診療経過について 12B2 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 ) ( イ ) 分析このように意見に相違が生ずる原因としては 臨床的癒着胎盤と判断される時点の差異 が影響しているものと考えられる 岡村意見は 本件を 用手剥離困難ケースには当たらない との前提で評価しており その結果として 大量出血 止血困難 ( 不能 ) との所見が本件における臨床的癒着胎盤例の判断根拠とされる結果につながっているものと考えられる 池ノ上意見は 剥離の困難性は癒着胎盤の診断に直接関係しないとして 用手剥離の困難性を臨床的癒着胎盤の判断基準のひとつとはせず 他方 全体的な話の流れなどからは 出血量の急激な増大 という点を重要視していることが窺われ 出血多量 止血不能の状況となった時点で臨床的癒着胎盤との診断を行うとの考えによって立つものと考えられる イ胎盤剥離操作の適否 ( ア ) 比較 1 診断後の胎盤剥離操作の続行の適否田中意見では 用手剥離が困難であった時点 ( 午後 2 時 40 分 ) で剥離操作を止め 子宮摘出に移るべきであったとする 他方 岡村意見及び池ノ上意見は 胎盤剥離作業を開始後に癒着胎盤であることが判明した本件のような事例では 胎盤剥離操作を続行し胎盤を全て剥離すべきであるとする 2 クーパーの使用の適否田中意見では 鑑定書ではクーパーの使用を許容する文献がなかったとしてクーパーの使用を不適切とするが 尋問では周産期専門医がクーパー使用を許容しているのであればクーパーの使用は問題ないと思われるとの供述をしている 岡村意見 池ノ上意見ではクーパーの使用に対し許容しうるとの意見が示されている なお 岡村医師 池ノ上医師のいずれも自身の経験例において本件同様の事案でのクーパー使用例はないようである ( イ ) 分析このような意見の相違は 1 臨床的癒着胎盤と判断される時点の差異 の影響 及び 2 大量出血が生じている状況下で胎盤剥離を完遂することをどれだけ重視するか ( 胎盤剥離を中止し子宮摘出術に速やかに移行することと比較して いずれが妥当な対処であるのか ) という点に関する意見の違いが 影響しているものと考えられる ただ 本件ではクーパー使用以前の出血は通常程度であったと考えられることからして 上記 2の点における見解の相違が大きな意味を持つと考えられる 3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) (1) 医学的文献ア臨床的癒着胎盤例に対する処置 86
78 第 4 術中の診療経過について 13B3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) 癒着胎盤例における止血法としては 後述のとおり 圧迫止血 動脈結紮 塞栓等いくつかの方法があるが このうち子宮摘出が最も有効であることは 多くの文献で述べられており 争いがないようである ( 後記 97 頁第 4 4 参照 ) しかし 摘出の要否を判断する基準や移行するタイミングについては 論者によって異なり 大きく分けて 大量出血が生じて止血困難となった場合に子宮摘出へ移行すべきとする立場 ( 止血措置としての子宮摘出 ) と 大量出血がおこる前に予防的に子宮摘出へ移行すべきとする立場 ( 大出血予防としての子宮摘出 ) があるように思われた ただし 予防的に子宮摘出すべきとする論者は 止血困難な場合について触れていなかったり その場合にも摘出すべきと併記するものもある おそらく これらは 胎盤部分から出血が始まると止血は難しいため できるだけ早く子宮摘出すべきという趣旨であって 止血困難な場合に摘出することを否定するものではないと考えられる また 止血措置としての子宮摘出のみ論じて 大出血予防としての子宮摘出について記載を欠くものは 後者についてどのような立場をとるか明らかでないが 否定的ともとれる文献もあった ( イ ( ア ) 2004 年 12 月以前の文献 ⅰ)2) なお 子宮摘出 ( 全摘 ) の術式としては 一期的手術 ( 分娩時に子宮摘出も行う ) と二期的手術 ( 分娩後に子宮切開創を一旦縫合し 後日再度開腹して 胎盤除去 子宮摘出の要否を検討する ) があるが 本件では一期的手術に絞って検討する イ止血措置としての子宮摘出 ( ア ) 大量出血が生じて止血困難となった場合に子宮摘出へ移行すべきとする立場 ( 止血措置としての子宮摘出 ) < 文献 > 本件事故(2004 年 12 月 ) 以前の文献 ⅰ) 成書 1 産科出血の臨床 石原楷輔 前置胎盤 1998 年 ( 文献 59p81) 術前に癒着胎盤かどうかの診断は難しく したがって 手術時には不測の事態に備え十分な血液の準備をする必要がある 術中 出血状況から止血困難と判断した場合は 子宮摘出を躊躇してはならない 2 新女性医学大系異常妊娠 武谷雄二編 1998 年 ( 弁 5p132) 前置胎盤例についての記述であるが 通常の止血操作や収縮薬の投与では止血が図れない場合は 1 両側子宮動脈結紮法 2 両側内腸骨動脈結紮法 3 子宮腔内ガーゼ充填法 ( この場合は 12 時間後に経腟的にガーゼを除去する ) などがあるが どうしても止血困難であり 母体の生命に危険が及ぶ可能性があると診断された場合には子宮摘出も考慮する としている 3 今日の産婦人科治療指針 可世木久幸 癒着胎盤 ( 文献 65p 年 ) 87
79 第 4 術中の診療経過について 13B3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) 用手剥離開始後 止血操作を行っても出血量が多いときは 単純子宮全摘術を施行する 4 新女性医学大系産科手術と処置 武谷雄二 2000 年 ( 検甲 58p114) 癒着胎盤に伴う出血への対応について 子宮マッサージ 薬物療法 ( プロスタグランジン F2α バソプレシンの内膜下投与) 剥離部位の縫合でも止血しないときは 速やかに子宮摘出に移行するとしている 5 産科臨床ベストプラクティス 竹内正人ほか 2004 年 ( 文献 61p285) 癒着胎盤の場合 まずは 部分的にでも胎盤組織と思われる部分を 剥がれやすい部位からできるだけていねいに剥離していく その上で 胎盤剥離後に癒着胎盤がわかった場合 そして先に示した様々な方法で止血を試みても剥離面からの出血が持続し母体血圧の維持が困難な場合 または 2000ml 以上の出血をみてなお出血が強く続いているときには 子宮摘出術を選択する なお 開腹時に嵌入胎盤が強く疑われる場合には 胎盤を残してそのまま子宮摘出を施行するとしている 2005 年以降の文献 ⅰ) 成書 1 産科診療トラブルシューティング 遠藤尚江 前置胎盤 2005 年 ( 文献 60p118) 癒着胎盤が疑われた場合には時期を失せず子宮摘出を考慮しなければならない まず ( 止血法について略 ) などが行われれるが 止血操作を行っても止血困難 癒着胎盤が強度な場合は子宮摘出の時期を失してはいけない 2 産科臨床ベストプラクティス上級編 亀井良政 2006 年 ( 文献 73p243) 子宮筋を胎盤付着部と離れて切開することができた場合には 胎盤の自然剥離を待つ 胎盤が自然剥離しなかった場合には 用手剥離を試みるが 剥離が困難で剥離した面からの出血が非常に多いと判断されたならば 出血点をまず確認する 出血点が数個に限定されているならば 縫合止血が有効な場合も多い 出血点が広範囲であれば圧迫止血を試みる これらの方法を用いてもなお出血のコントロールができない場合には 躊躇せず子宮摘出に踏み切る 3 ここが聞きたい産婦人科手術 処置とトラブル対処法 該当部分執筆者室雅巳ほか 年 ( 文献 74p286) 妊孕性温存が必須である症例を除くと 母体の救命のためには子宮摘出が癒着胎盤の最も標準的な治療であり 特に止血困難例では躊躇すべきではない 癒着胎盤の存在が強く疑われ なおかつ多量の出血が持続して止血が困難な場合は 早急に子宮摘出術に踏み切ることが肝要である ⅱ) 論文 1 長橋ことみほか 2007 年 ( 文献 70p404) ( 癒着胎盤 前置胎盤 子宮破裂 弛緩出血 常位胎盤早期剥離などにより子宮摘出となった症例検討をふまえて ) 輸血は血型ごと常時 2~3 単位は確保しているが 不測時には浜松市内の血液センターからの到着を待つことになり 搬送と同じ時間を要する 以 88
80 第 4 術中の診療経過について 13B3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) 上を踏まえた上で 我々が実際に産後出血をみた場合 可能な限りの止血を試みると同時に輸血の準備を行っていく 出血量 2,000ml を目安にその時点での出血状態から子宮摘出を選択するか否かを判断している ( イ ) 止血困難 の判断基準 止血困難 であるとして子宮摘出に移行する際の判断基準について 具体的に論じた文献はそれほど多くないが 今回の調査では 癒着胎盤例において出血量 2, 000ml を目安として その時点の出血状態から子宮摘出の要否を判断するというものがあった ( 本件事故以前の文献 年以降の文献 1) また 弛緩出血に関する文献でも 2,000ml 以上の出血は極めて危険である とされており ( 本件事故以前の文献 1) 出血性ショックの重症度においても 出血量 1,500~2,500ml の場合には中等症と診断されるとのことである ( 同 2) 以上からすれば 出血量が 2,000ml にまで至ることは 母体の生命の危険性を判断するひとつの目安になると思われる 本件事故(2004 年 12 月 ) 以前の文献 ⅰ) 成書 1 最新産科学異常編 ( 改訂第 19 版 ) 荒木勤 1993 年 ( 文献 117p297) 弛緩出血について 個人差はあるが 2,000ml 以上の出血は極めて危険である 出血速度 出血量による 2 周産期全身管理マニュアル 竹村喬ほか 1994 年 ( 文献 94p155) 出血性ショックの重症度として 出血量 30~45%(1,500~2,500ml) 脈拍 120 以上 収縮期血圧 60~80mmHg のとき 中等症 出血量 45%(2,500ml) 脈拍は触れない 収縮期血圧 60mlHg 以下のとき 重症 とされている 3 産科臨床ベストプラクティス 竹内正人ほか 2004 年 ( 文献 61p285 検甲 9と同じ文献の別頁 ) 胎盤剥離後に癒着胎盤がわかった場合 そして先に示した様々な方法で止血を試みても剥離面からの出血が持続し母体血圧の維持が困難な場合 または 2000ml 以上の出血をみてなお出血が強く続いているときには 子宮摘出術を選択する 2005 年以降の文献 ⅰ) 論文 1 長橋ことみほか 2007 年 ( 文献 70p404) 前出 ( 癒着胎盤 前置胎盤 子宮破裂 弛緩出血 常位胎盤早期剥離などにより子宮摘出となった症例検討をふまえて ) 我々が実際に産後出血をみた場合 可能な限りの止血を試みると同時に輸血の準備を行っていく 出血量 2,000ml を目安にその時点での出血状態から子宮摘出を選択するか否かを判断している 89
81 第 4 術中の診療経過について 13B3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) ウ大出血予防のための子宮摘出大量出血がおこる前に 予防的に子宮摘出へ移行すべきとする立場の中においても 具体的な子宮摘出の要否判断基準や移行のタイミングについては 以下のとおり論者によって異なる 1 癒着胎盤の可能性が高い場合 あるいはその疑いがある場合に 子宮摘出すべきとするもの 2 臨床的に癒着胎盤の診断がついた場合に 子宮摘出すべきとするもの 3 胎盤の剥離が困難な場合に 子宮摘出すべきとするものこれらは 子宮温存 ( 妊孕性の保持 ) に配慮しながらも 大量出血の危険性がどの程度高まった段階で子宮摘出に移行すべきかについての見解の違いによるものであると考えられる ただし 臨床的癒着胎盤の診断基準が一義的に明確でないこともあり ( 詳細は 前記 69 頁第 4 2 参照 ) 3に分類したものの中には 2に近いものもある なお 産婦人科診療ガイドライン- 産科編 2008 ( 文献 32) では 癒着胎盤が予想される場合 胎盤を避けて子宮切開し児娩出後 胎盤用手剥離を試みずに切開創を閉じ 一期的または二期的に子宮摘出を行う試みがなされている しかし癒着胎盤の術前確定診断法が確立していない現在 術式の事前選択には困難を伴う とされており 上記 1については消極的ともとれる内容となっている ( ア ) 癒着胎盤の可能性が高い場合 疑いがある場合に 子宮摘出すべきとするもの ( 上記 1) < 文献 > 本件事故 (2004 年 12 月 ) 以前の文献 ⅰ) 成書 1 新女性医学大系産科手術と処置 武谷雄二編 2000 年 ( 検甲 58 p113 p114) 開腹時に子宮壁の紫色への変色あるいは胎盤が透けて見える場合には癒着胎盤の可能性がきわめて高く 児娩出には胎盤付着部を避けた切開で子宮摘出を優先することが出血を最小限に抑えられるため推奨される 2 産科臨床ベストプラクティス 竹内正人ほか( 文献 61p 年 検甲 9と同じ文献の別頁 ) 開腹時に子宮壁が暗紫色ならびに蒼白色へと変色していて 静脈血管の怒張が顕著であったり 子宮壁から胎盤が透過される場合は 癒着胎盤でも嵌入胎盤が強く疑われるため 子宮全摘術の適応となる 出血が少ない場合は 胎盤を残し切開創部を縫合し そのまま子宮摘出を施行する なお 胎盤剥離後に癒着胎盤がわかった場合で 止血困難なときも 子宮摘出術を選択するとしている 3 周産期救急のコツと落とし穴 竹田省 帝王切開時の大量出血の処置 2004 年 ( 文献 13p185) 90
82 第 4 術中の診療経過について 13B3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) placenta increta( 嵌入胎盤 ) や placenta percreta( 穿通胎盤 ) は絶対に胎盤剥離を試みるべきではない とした上で 帝王切開既往前置胎盤の場合について 胎盤付着部の下節筋層表面や筋層内に怒張した豊富な血管がみえたり 紫色に透視できるなら pla centa accreta もしくは嵌入胎盤である 同様の所見と膀胱周囲の豊富な血管の存在は嵌入胎盤 穿通胎盤が疑われる 肉眼所見で胎盤剥離を試みるか決定できないときは 児娩出後胎盤剥離が自然に起こらなかったり 胎盤母体面からと子宮下節漿膜面からと両手で挟んでみて子宮筋層が数 mm 以下の薄さなら剥離面の止血が困難と考えたほうがよい いずれにしろ出血が始まってからの子宮摘出は出血が多量になるため 胎盤剥離をしないでそのまま子宮摘出したほうがよい 4 周産期の出血と血栓症-その基礎と臨床- 谷口博子ほか 前置胎盤 ( 文献 66p 年 ) 子宮下部がだるま様に膨隆し 子宮表面に胎盤血管が露出するような症例に対して子宮下部横切開を強行すれば 大量出血は避けられない このような症例では子宮体部切開を行い 躊躇なく子宮摘出を行うべきである 癒着胎盤が強く疑われる場合は 無理に胎盤を剥離せず 子宮切開部を仮縫合した後 躊躇せず子宮摘出に移行する 方法としては単純子宮摘出術あるいは腟上部切断術を行う ⅱ) 論文 1 術前癒着胎盤が疑われた症例の対策は (1) 自己血を含めた血液を 2000ml 準備する (2) あらかじめ子宮摘出のインフォームドコンセントを得ておく (3) 開腹時 胎盤付着部が紫色になり 胎盤が透見できるものは止血困難な出血を避けるため 胎盤を剥離せずに 体部切開で児を娩出する (4) その後出血を減らすために内腸骨動脈をクランプし子宮への血流を遮断した後に子宮摘出術を施行する ( 文献 33p195 山本智子ほか 2000 年 ) 2 開腹時 胎盤付着部位が紫色になり 胎盤が透見できるものは大量出血を避けるため その部位をはずし体部切開にする このような胎盤の剥離はけっして試みてはならない 児娩出後子宮筋層を仮縫合止血し 迷わず子宮摘出を行う ( 文献 47p1701 竹田省ほか 1996 年 ) ( イ ) 臨床的に癒着胎盤の診断がついた場合に 子宮摘出すべきとするもの ( 上記 2) 本件事故(2004 年 12 月 ) 以前の文献 ⅰ) 論文 1( 米論文 ) 最近のあるレビューによると 臨床的に癒着胎盤の症例の 45% は 子宮摘出術以外の方法で 母胎死亡を起こすことなく治療されている 癒着が部分的である場合 絨毛が侵入している部位の単純な切除を行いその場所に数針の8の字縫合をすること または鋭的に掻爬を行うことは 時として効果的である それでもやはり将来子供を持ちたいと考えられる若い患者で局所的に癒着している症例以外では 子宮摘出術が選択すべき手技であり 癒着胎盤と診断がつけばすぐに子宮摘出術に移行するべきである 91
83 第 4 術中の診療経過について 13B3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) ( 弁 年 ) 2 胎盤用手剥離術について 本手術により 胎盤が娩出されるのは前述のごとく付着胎盤であり 胎盤娩出が困難で 胎盤と子宮筋層との間に絹糸状の索状物をふれる場合には癒着胎盤と診断し ただちに用手剥離術を中止する 剥離が困難にもかかわらず 操作を続行すると 胎盤の不完全な剥離による大量出血や子宮壁穿孔などの重篤な合併症を引き起こすことになる 癒着胎盤の臨床的診断がつけば ただちに子宮全摘術を行うことが原則である ( 文献 42p1712 森岡信之ほか 1996 年 ) 3 癒着胎盤が予想される前置胎盤合併妊娠では 分娩前に十分な量の血液を準備し 術中で癒着胎盤の診断を行ったら無理な胎盤剥離は行わず 子宮摘出をためらわないことも大切である ( 文献 38p713 松田義雄ほか 2001 年 ) 4 前置胎盤合併帝切の工夫として ( 中略 ) 2 癒着胎盤と判断した場合は無理に胎盤を剥離せず 子宮筋層を仮縫合し 直ちに子宮全摘の方針とする ( 文献 35p12 加藤有紀ほか 2002 年 ) ( ウ ) 剥離困難な場合に 子宮摘出すべきとするもの ( 上記 3) < 文献 > 本件事故(2004 年 12 月 ) 以前の文献 ⅰ) 成書 1 標準産科婦人科学 該当部分執筆者竹田省 2001 年 ( 検甲 12p430) あらかじめ嵌入胎盤や穿通胎盤と診断されている場合や 開腹時 子宮壁を通して胎盤が見えるものは迷わず子宮摘出する 胎盤剥離を試みるも剥がれなかったり 止血不能例でも直ちに子宮全摘を行う 2 産婦人科研修の必須知識 日本産科婦人科学会 2004 年 ( 文献 50p270) ( 経腟分娩を前提として ) 癒着胎盤は 分娩以前には その診断は不可能である とした上で 胎盤遺残が認められ 癒着胎盤が疑われる場合には ( 中略 ) はじめに胎盤娩出促進法を試みる それによって胎盤剥離徴候などが認められない場合には 超音波断層法を行 う 超音波所見によっても癒着胎盤が疑われる場合には 輸血準備を行った上で 全身麻酔下に胎盤用手剥離を試みる 用手剥離が困難な場合には 開腹のうえ 単純子宮全摘出術または腟上部切断術を行う 弛緩出血や DIC を認めず 妊孕性の温存を強く希望し 十分なインフォームドコンセントが得られた場合に限り 保存的治療の適応となる 3 NEW 産婦人科学改訂第 2 版 矢嶋聡ほか編 癒着胎盤 ( 文献 64p 年 ) 胎児娩出後 30 分以上経過しても胎盤剥離徴候がみられず 子宮弛緩と一部剥離した部分からの多量の出血がみられることにより本疾患を疑う 胎盤用手剥離の困難性から診断されるが 確診は摘出子宮または胎盤の病理学的所見による 軽度なものは用手剥離によって治療するが 穿入胎盤など癒着が高度なものは単純子宮全摘術を余儀なくされる 挙児を希望する場合には子宮の温存に努め 胎盤を子宮壁につけたまま感染に注意し 92
84 第 4 術中の診療経過について 13B3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) ながら数日間経過を観察し自然の剥離を待つこともある ⅱ) 論文 1 胎盤剥離を試みるも剥がれなかったり 止血不能例でも直ちに子宮全摘を行う ( 文献 45p779 竹田省ほか 1998 年 ) 2005 年以降の文献 1 産婦人科研修の必須知識 2007 日本産科婦人科学会( 文献 51p280) 本件事故以前の文献 ⅰ)2(2004 年 ) と同旨 ( 2) 専門家証人意見ア田中意見 ( ア ) 子宮摘出の要否 a 鑑定書 公判供述 ⅰ) 検討一般論として 癒着胎盤の治療法としては 子宮摘出が第一選択であるとしている 本件においても 子宮摘出が必要であったことを前提に証言している ⅱ) 鑑定書 公判供述内容現在の我が国における癒着胎盤に対する治療法は 無理な胎盤剥離を行わず 子宮を摘出することが第一選択であり 条件が許した場合のみ温存的治療が許されると判断される なぜなら 強固に癒着している胎盤を無理に剥離させれば そこから大出血するからである ( イ ) 子宮摘出のタイミング a 鑑定書 公判供述 ⅰ) 検討止血困難な場合に止血操作後 子宮摘出に移行するとする また 本件では 剥離困難であった時点 ( 午後 2 時 40 分 ) で子宮摘出に移行すべきであったと証言している ( 前記 3 剥離困難な場合に子宮摘出すべきとするもの のようである ) ⅱ) 鑑定書 公判供述内容癒着胎盤に気づかず胎盤剥離を行い 大量出血をきたした場合は 双手圧迫 子宮内ガーゼ充填 内腸骨動脈の結紮等の止血操作を行い その後 直ちに子宮摘出を行うべきとされている このような場合に 止血操作 その後の子宮摘出を行うタイミングが 胎盤剥離を中断してなのか 胎盤剥離を終了してなのかについては 術者の判断により ケースバイケースである 本件においては 胎児娩出後 臍帯を牽引しても胎盤娩出が不可能であったとき あるいは遅くとも用手剥離による胎盤娩出が不可能であった時点 ( 午後 2 時 40 分ころ ) で 癒着胎盤の診断をなし 胎盤剥離を中断して 輸血及び血液製剤の追加と止血操作を実施した後 速やかに子宮摘出に移行する必要が 93
85 第 4 術中の診療経過について 13B3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) あった 遅くとも 胎盤剥離後 大量に出血して 出血のコントロールがつかないと思われた時点 ( 特に時刻についての言及なし ) で 子宮摘出すべきであった なお 出血量 2000mlの時点 ( 午後 2 時 40 分 ) で その後の出血量の予測がついたとはいえない b 文献 ⅰ) 検討大量出血の場合や止血困難な場合に子宮摘出すべきとしている ⅱ) 文献内容 産科疾患の診断 治療 管理前置胎盤 ( 産科と婦人科 63 巻増刊号 p24 1) 該当部分執筆者田中憲一 1996 年 胎盤剥離部より出血が多いとき また癒着胎盤を伴う場合で止血困難な症例においては 子宮動脈結紮や子宮摘除等なども考慮しなければならない場合もある ( ウ ) 子宮摘出の可否 a 鑑定書 公判供述午後 2 時 40 分に 剥離を中断して子宮摘出に移行すべきであったが この場合 子宮摘出は可能であったとの意見である イ岡村意見 ( ア ) 子宮摘出の要否 a 鑑定書 公判供述一般論としては 子宮摘出術は認めている ( イ ) 子宮摘出のタイミング a 鑑定書 公判供述 ⅰ) 検討子宮摘出に移行するタイミングについて 具体的には述べていない 癒着胎盤がわかった時点では 用手剥離を開始していて出血もあるため 早く胎盤を娩出して出血を止めることが肝要であり そのための手段としてクーパーを使用したことも許容しうるという意見である ⅱ) 鑑定書内容子宮摘出術は最終的な止血手段であり 適切な時期の判断は重要 全身状態は子宮摘出を始めるかどうかの大きなポイントである ( 本件について 具体的には述べていない ) b 文献 ⅰ) 検討事前診断がついた場合についての記述はあるが 術中に診断がついた場合については記述がない 94
86 第 4 術中の診療経過について 13B3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) ⅱ) 文献内容 これならわかる産科学 検甲 11p303 岡村州博編 2003 年 超音波検査で筋層への浸潤が浅い placenta accreta が疑われる場合 大量出血に備え血管確保のうえ まず胎盤用手剥離術を行う placenta increta や placenta percreta の場合や広範な部位での placenta accreta の場合 大量出血の可能性が高いため X 線透視下での子宮動脈の塞栓術や輸血を準備したうえで子宮全摘術を行う ( 編者より ここでは前置胎盤の癒着胎盤で帝王切開の際は想定せず 自然分娩での分娩第 3 期のことが記載されています あくまでも ここでは自然分娩後のことで 帝王切開中の事ではありません とのコメントあり 弁 141) ( ウ ) 子宮摘出の可否 a 鑑定書 公判供述 ⅰ) 検討 14 時 40 分 ~14 時 45 分の時点で止血操作もなく子宮摘出に移ることはさらに危険を増すとの意見である ⅱ) 鑑定書内容 子宮摘出術は最終的な止血手段であり 適切な時期の判断は重要 とするも 全身状態は子宮摘出を始めるかどうかの大きなポイントである とし 14 時 40 分 ~14 時 45 分にかけての血圧低下 (80/40) その後の出血の持続から この時点で止血操作もなく子宮摘出に移ることはさらに危険を増すものであり 応急止血をして 十分な血液確保のうえ 子宮全摘術を行うのは妥当としている ウ池ノ上意見 ( ア ) 子宮摘出の要否 a 鑑定書 公判供述 ⅰ) 検討癒着胎盤の場合に 子宮を摘出することの必要性は認めている ただ 子宮温存を重視し 予防的な子宮摘出には否定的な立場のようである ⅱ) 鑑定書 公判供述内容子宮摘出は 基準どおりにやるのは非常に難しい 子宮は温存するのが基本的な考え方である ( 尋問調書 p45~46) ( イ ) 子宮摘出のタイミング a 鑑定書 公判供述 ⅰ) 検討出血コントロールができれば 子宮摘出は行うべきではないという意見である すなわち 大出血予防のための子宮摘出には否定的である 胎盤剥離を始めてから 癒着胎盤が判明した場合には 出血を止めるために 95
87 第 4 術中の診療経過について 13B3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) も急いで剥離を終了してから子宮摘出すべきであると述べている ⅱ) 鑑定書 公判供述内容開腹後 子宮を見て 癒着胎盤が明らかな場合には 胎盤剥離をせずに子宮摘出をするが それ以外ははがしてから子宮摘出をするかどうか決める ( 尋問調書 p59) 14 時 40 分ごろ用手剥離を中止して子宮摘出は可能であったが その時点では 出血がコントロールできるかも分からない状況なので 子宮摘出という決断はできない 子宮摘出という決断をするには早すぎる ( 尋問調書 p65~ 66) 胎盤は剥離を始めるとその部分から出血が始まる 剥離を終わってしまうと子宮収縮が期待できて 出血の元が止まるということが期待されるので 早く剥離した方が出血は止まりやすい ( 鑑定書 尋問調書 p129) b 文献 ⅰ) 検討下記文献 1は 術中診断がついた場合には直ちに子宮摘出に移行するとする立場 ( 前記 (1) ウの2) に近いようにも思われる ただ この文献ではどのような場合に癒着胎盤と診断するのかについて述べられていない 下記文献 2は 止血措置としての子宮摘出について述べるにとどまる ⅱ) 文献内容 1 前置胎盤 癒着胎盤 ( 産婦人科の実際 56 巻 11 号 ) 文献 112 土井宏太郎 池ノ上克 2007 年 術中所見で癒着胎盤の有無を判断し 癒着胎盤と判断した場合には子宮摘出術に移行することが考えられる 2 ハイリスク妊産婦の分娩管理 ( 日産婦誌 60 巻 4 号 ) 文献 113 池ノ上克 年 4 月 前置胎盤 癒着胎盤の分娩管理 として 児娩出後は止血が重要な管理であり子宮摘出もその中の必要な手段の一つとなるため 術前には患者及び家族への十分なインフォームドコンセントが行われなければならない としている ( ウ ) 子宮摘出の可否 a 鑑定書 公判供述 ⅰ) 検討 14 時 40 分ころの子宮摘出は可能であったとの意見である ⅱ) 鑑定書 公判供述内容 14 時 40 分ごろ用手剥離を中止して子宮摘出は可能であったが その時点では 出血がコントロールできるかも分からない状況なので 子宮摘出という決断はできない 子宮摘出という決断をするには早すぎる ( 尋問調書 p65~ 66) 96
88 第 4 術中の診療経過について 13B3 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 ) ( 3) 文献 三専門家証人意見の相違点ア子宮摘出の要否本件で子宮摘出が必要であったという点では 三専門家証人意見は一致している イ子宮摘出のタイミング田中証人は 午後 2 時 40 分に剥離が困難であるとわかった時点で 子宮摘出に移行すべきとの意見であり 大出血予防としての子宮摘出のうち 3 剥離困難な場合に 子宮摘出すべきとするもの に近い立場であると考えられる これに対し 岡村証人と池ノ上証人は 剥離を継続すべきとの意見である ただし 両者はその理由付けが異なっているように思われる 岡村証人は 既に出血が始まっているので 早く胎盤を娩出させて 子宮収縮によって出血を止めるために 剥離を継続すべきという意見であるが 池ノ上意見は その時点ではまだ出血のコントロールが可能かもしれず 摘出判断のタイミングとしては早すぎるので 剥離を継続すべきという意見である なお 子宮摘出のタイミングについて 池ノ上証人は大出血予防としての子宮摘出には否定的であり 岡村証人の意見は明らかでない ウ子宮摘出の可否午後 2 時 40 分の時点で 田中意見と池ノ上意見は 子宮摘出が可能であったとする これに対し 岡村意見は この時点で止血操作もなく子宮摘出に移ることはさらに危険を増すものであり 応急止血をして 十分な血液確保のうえ 子宮全摘術を行うのは妥当としており 子宮摘出は不可能であったという意見のようである 4 癒着胎盤の対する処理 3( その他の止血処置 ) (1) 医学文献ア検討前置胎盤 癒着胎盤症例における子宮摘出以外の止血法として 文献であげられている主なものは 以下のとおりである このうち 下線を付したものは 判決において 本件での実施が認定されている ( 詳細は後記 101 頁第 4,4(3) ア参照 ) A 子宮収縮剤の投与 B 子宮腔内ガーゼ充填法 C 圧迫止血 ( 出血部位をガーゼで圧迫 Douglas 窩に手を挿入し双手圧迫 ) D 出血部位の縫合結紮 E 子宮動脈挟鉗 結紮 塞栓 バルーン閉塞 F 子宮マッサージ G 内腸骨動脈挟鉗 結紮 塞栓 バルーン閉塞ただし これらの処置による止血効果には限界があるため 止血しえない場合は 速やかに子宮摘出に移行すべきとされている ( 文献イ ウ-15 子宮摘出の要否 タイミングについては 前記 86 頁第 4 3 参照 ) 97
89 第 4 術中の診療経過について 14B4 癒着胎盤の対する処理 3( その他の止血処置 ) 近時は 動脈塞栓の手技について研究が進められているが 子宮摘出が最も有効で確実な止血法であるという評価に変わりはないようである ( 動脈塞栓の手技は 本件の主たる争点ではないため 文献の引用は省略する ) イ本件事故 (2004 年 12 月 ) 以前の文献 1 狭い範囲の placenta accreta では胎盤剥離後 内膜面の出血部を吸収糸で縫合することで子宮温存できることもあるが placenta increta( 嵌入胎盤 ) や placen ta percreta( 穿通胎盤 ) では迷わず子宮全摘を施行すべきである ( 竹田省ほか 既往帝王切開症例に対する反復帝王切開の注意点 産婦人科の実際 45 巻 12 号 p 年 弁 143 引用資料 ) 2 [ 米論文 ] 前置癒着胎盤症例について 報告されている症例の大部分においてこれは ( 出血のコントロールは ) 子宮摘出によってなされている Fox は直ちに子宮摘出を施行した女性の中でも母体死亡率が 5.8~6.6% あったと報告している これに比較して保存的管理を試みた場合の母体死亡率は 12.5~28.3% であった 保存的治療という選択肢は 注意深く選ばれた患者にとって 子宮摘出に代わりうる手段となるかもしれない しかし 大部分の症例において子宮摘出が癒着胎盤の管理において選択すべき手技であり続けている ( Clinical risk factors for placenta previa-placenta accreta American Journal of Obstetrics and Gynec ology July 1997 年 弁 9 10) 3 前置胎盤例についての記述であるが 通常の止血操作や収縮薬の投与では止血が図れない場合は 1 両側子宮動脈結紮法 2 両側内腸骨動脈結紮法 3 子宮腔内ガーゼ充填法 ( この場合は 12 時間後に経腟的にガーゼを除去する ) などがあるが どうしても止血困難であり 母体の生命に危険が及ぶ可能性があると診断された場合には子宮摘出も考慮する としている ( 武谷雄二編 新女性医学大系異常妊娠 p 年 弁 5) 4 前置胎盤に伴う出血への対応について 胎盤剥離部分からの出血が少量であれば ガーゼで圧迫 あるいは Douglas 窩に手を挿入し双手圧迫で止血する 通常の薬剤 ( 収縮薬 ) 子宮マッサージ 圧迫止血 結紮縫合でも止血しない場合には以下の方法を試みる として ヨードホルムガーゼ充填法 interrupted circular sutu re 法 子宮部分切除 子宮全摘出術 内腸骨動脈の結紮を挙げている また 癒着胎盤に伴う出血への対応について 子宮マッサージ 薬物療法 ( プロスタグランジン F2α バソプレシンの内膜下投与) 剥離部位の縫合でも止血しないときは 速やかに子宮摘出に移行するとしている ( 武谷雄二編 産科手術と処置 p111~p 年 検甲 58) 5 前置胎盤例について 胎盤剥離面からの出血は結紮 縫合止血でコントロールするのは非常に困難であると認識すべきである いたずらに子宮を開いたまま観察するよりは速やかに子宮を閉じたほうが子宮の収縮も得られ 剥離面からの出血を抑えるには有利である としている ( 岡村州博編 これならわかる産科学 p
90 第 4 術中の診療経過について 14B4 癒着胎盤の対する処理 3( その他の止血処置 ) 003 年 検甲 11) 6 癒着胎盤例について 胎盤用手剥離を行っても胎盤娩出が困難な場合は 出血の有無 妊孕性保存希望の有無によって対処法は変わってくる 1 出血を認め 妊孕性保存希望がない場合 (1) 子宮摘出 2 出血を認め 妊孕性保存希望がある場合 (1) 内腸骨動脈結紮術 (2) 血管造影透視下内腸骨動脈塞栓術 3 出血を認めず 妊孕性保存希望がある場合 ( 以下略 ) ( 岡井崇編 産科臨床ベストプラクティス p 年? 検甲 9) ウ本件事故 (2004 年 12 月 ) より後の文献 産婦人科診療ガイドライン- 産科編 2008 文献 32 p74 ( 前置胎盤の診断 管理は? との問いに対する回答部分ではなく解説での記載) 前置胎盤の管理について 止血困難な場合には ガーゼによる圧迫止血が有用との報告もある 子宮下部をガーゼできつく圧迫し そのまま子宮筋層を閉じ ガーゼ一端は腟内に誘導しておき そのガーゼを 12 時間程後に腟から抜去する 癒着胎盤の対応について 術中大出血の際には 出血を減らすために内腸骨動脈の結紮 挟鉗が有用だとする報告も散見されるが 術野の状況を考慮したうえでの術式の選択は 主治医の判断にゆだねられる カテーテルによる子宮動脈バルーン閉塞術や塞栓術なども提案されているが 現在のところ有用性に関して一致した見解は得られていない 1 癒着胎盤が疑われた場合には時期を失せず子宮摘出を考慮しなければならない まず プロスタグランディンの局所注射と圧迫止血を行う それでも止血しない場合の対応として 吸収糸による出血部位の縫合 ガーゼタンポン 子宮動脈 内腸骨動脈の結紮 子宮下部の輪状縫合などを行うこととしている 止血操作を行っても止血困難 癒着胎盤が強度な場合は子宮摘出の時期を失してはいけない ( 遠藤尚江 前置胎盤 産科診療トラブルシューティング p 年 文献 60) 2 癒着胎盤と術前に診断された場合 帝王切開により児娩出後 胎盤の剥離操作はせずに 子宮温存を試みない場合は単純子宮全摘術を行う 温存を試みる場合は子宮動脈塞栓術等を行うが 子宮摘出に方針変更する可能性があることを十分に説明する ( 海野信也 前置胎盤 癒着胎盤 前置血管 周産期医学 36 巻増刊号 p 年 文献 58) 3 前置胎盤例における胎盤剥離後の止血法 a 子宮収縮剤 b 局所血管収縮 ( バソプレッシンを胎盤剥離部に局注 ) c 子宮腔内パッキング 99
91 第 4 術中の診療経過について 14B4 癒着胎盤の対する処理 3( その他の止血処置 ) d 縫合法 e 子宮動脈結紮 内腸骨動脈結紮 : 出血減少に有効だが 止血には至らない f 透視下経カテーテル内腸骨動脈塞栓術 ( 大屋敦子 前置胎盤 産婦人科の実際 56 巻 2 号 p 年 文献 17) 4 前置癒着胎盤における剥離面からの出血に対する対処として 100 倍希釈ピトレッシンの局注などで止血を図りながら 合成吸収糸で出血点を縫合結紮する この結紮だけで出血がコントロールできない場合は 漿膜面まで貫通するU 字あるいは Z 縫合を行い 分離していた内腸骨動脈を結紮する それでも止血できない場合は B-Lynch 縫合 あるいは直針で子宮前後壁を貫通させ結紮し子宮前後壁を密着させ圧迫止血を試みる ( 平松祐司 帝王切開手術法前置癒着胎盤の帝王切開と子宮全摘術 産婦人科の実際 57 巻 6 号 p 年 文献 28) 5 癒着胎盤について 最も有効な治療法は迅速な輸血と そしてほとんどすべての場合 ( 中略 ) 子宮を速やかに摘出することである 子宮動脈および内腸骨動脈結紮術や塞栓術も有効である としている ( ウィリアムス臨床産科マニュアル 22 版 日本語訳 p 年 文献 49) ( 2) 専門家証人意見ア田中意見本件で 胎盤剥離後出血持続に対して取り得た手段について 長いヨードホルムガーゼをパッキングして圧迫止血をする あるいは双手圧迫 両方の手で子宮を握る それで圧迫して止血をする そういうことが肝要だと思 うと述べている ( 尋問調書 393 項 ) 他に取り得る止血方法としては 内腸骨動脈あるいは総腸骨動脈の結紮という方法が成書には書かれていると述べるとともに ( 尋問 394 項 ) 子宮動脈の結紮では不十分かとの質問に対し ある程度効果あると思いますが 成書にはその上流の内腸骨動脈のほうを縛るというふうに書いてあります と回答している ( 尋問調書 396 項 ) いずれにしても 癒着胎盤の可能性が高い場合は 子宮摘出が原則であり 子宮摘出の同意が得られない場合でも 止血不可能な場合は 再度家族に必要性を説明して子宮摘出を行うとしている ( 参考 ) 田中証人の著書として次のものがあるが 上記意見と矛盾するものではない 田中憲一 前置胎盤 産科と婦人科 63 巻増刊号 p 年 胎盤剥離部よりの出血が多いとき また癒着胎盤を伴う場合で止血困難な症例においては子宮動脈結紮や子宮摘除等も考慮しなければならない場合もある イ岡村意見本件において 胎盤剥離を開始した時点で大出血が起きた際に 何とか胎盤を剥離させ 創部分からの出血を止血 ( ガーゼによる圧迫止血 あるいは可能であれば縫合 100
92 第 4 術中の診療経過について 14B4 癒着胎盤の対する処理 3( その他の止血処置 ) 止血 ) させようとした判断は誤りではないとの意見である ( 尋問調書 225~ 項 ) また 出血がおきたときの一般的な対応としては 第一に子宮収縮を促 して その上で 押さえて出血を止める それでも止まらない場合は縫合 すると述べている ( 尋問調書 ) なお 動脈結紮については言及していない ウ池ノ上意見止血のためには 子宮マッサージ 両手で圧迫 大きなガーゼで圧迫止血 面全体を拾う形で筋肉と筋肉を寄せるというようなZ 縫合ないし8の字縫合 子宮の出血面に血液を供給している動脈を一時的に止めるなどを行うとしている ( 尋問調書 p33~3 5) 担当医が行った止血操作 ( 子宮マッサージ ガーゼ充填 Z 縫合 子宮を外から圧迫する双手圧迫 ペアンで子宮動脈を挟鉗 ) については 一般的に産科医がやる手技はすべて行われているとの意見である ( 尋問調書 p70) なお 内腸骨動脈結紮については これを行うことは有効である状況ではなかったとの意見である その理由は 既にかなりの出血があり DICが進みつつあったからとのことである ( 尋問調書 p118 どの時点をさしているかについては明確には述べられていない ) ( 3) 文献 三専門家証人意見の相違点ア判決で認定された胎盤娩出後の止血処置と各専門家証人の意見 認定された処置 ( 実施順 ) 田中岡村池ノ上 A-1 子宮収縮剤投与 言及なし 言及なし 言及なし B 子宮腔内ガーゼ充填法 適切 適切 適切 C 圧迫止血適切適切適切 D 出血点の Z 縫合言及なし適切適切 E 子宮動脈付近の挟鉗 不十分 言及なし 適切 A-2 子宮収縮剤注射言及なし言及なし言及なし 判決で認定された処置のうち 注意を要するものは次のとおり B 子宮腔内ガーゼ充填法子宮腔内にガーゼを充填した上で 一旦子宮筋層を閉じ 12 時間程度後に止血を確認してガーゼを除去するという方法である 本件では 子宮腔内へのガーゼ充填は行われているが 出血量が多かったために 子宮筋層を閉じるところまで至らなかったものと思われる 101
93 第 4 術中の診療経過について 14B4 癒着胎盤の対する処理 3( その他の止血処置 ) A-2 子宮収縮剤注射判決では 子宮動脈付近の挟鉗を行った後に再び子宮収縮剤を子宮に注射したと認定されているが そのような事実を裏付ける証拠はない ( 手術中の経過一覧参照 ) イ三専門家証人意見の相違点子宮摘出以外の止血法については 主要な争点となっていないためか 尋問ではそれほど詳細には質問されておらず 証人によっては言及されていないものもあり 各止血法の適否に関する意見の相違はあまり明らかとなっていない 唯一 意見に違いがあるのは 田中証人が 子宮動脈付近の挟鉗について不十分であったとした上で 内腸骨動脈を結紮すべきであったと述べている点である これに対し 池ノ上証人は 既にかなりの出血がありDICが進みつつあったから これを行うことは有効ではなかったと述べている なお 岡村証人は 動脈の挟鉗 結紮については言及していない このように動脈の閉塞について意見の相違が生じた理由は 田中証人の意見が文献の記載を指摘して一般的な対応について述べるにとどまり 本件患者の状況をふまえたものとなっていないためではないかと思われる なお 田中証人は 本件において内腸骨動脈を結紮すれば止血しえたかどうかについては 明確に述べていない ウ医学文献をふまえた検討文献調査の結果 子宮摘出以外の止血法の中で摘出術より有効とされているものは見当たらず むしろ 止血困難な場合 最終的には子宮摘出を行うべきとするものが多い 田中証人も同様の立場であるが 本件については 胎盤娩出に至る前の剥離が困難であることが判明した時点で すみやかに子宮摘出に移行すべきとの意見であるため 子宮摘出以外の止血法についてはあまり詳細には述べていない これに対し 岡村証人と池ノ上証人は 子宮摘出以外の止血法の有効性について言及することなく 一般的な止血法としてなすべきことは行われているとの意見である 患者の具体的状況を前提として 行われた止血法が有効 適切であったか否かについては述べられていない 子宮摘出以外の止血法を議論するにあたっては 止血効果に限界があることをふまえた上で 摘出へ移行するタイミングを考慮しながら その時点の出血状況や出血量 全身状態のもとで当該処置を行うことが妥当かどうか 検討する必要があるのではないかと思われる 5 循環管理と補充療法 (1) 医学文献大量出血や出血性ショックのときの循環管理や補充療法については 文献では次のように述べられている 102
94 第 4 術中の診療経過について 15B5 循環管理と補充療法 1 坂元正一ほか監修 改訂版プリンシプル産科婦人科学 頁 (1998 年 文献 11 8) 出血性ショックの治療として 止血操作 ( 各種圧迫法 外科的止血法 ) のほかに 次のとおり記載されている 1) 輸液次に輸液の開始である このとき CVP などで過剰輸液にならないようにモニターしなければならない 1 輸液製剤 ⅰ) 乳酸リンゲル液 ( ラクテック ハルトマン液 )500~4,000ml( 細胞外液の補給 ) ⅱ) 代用血漿剤 ( デキストラン ヘスパンダー )500~1,000ml( 低分子デキストランの場合は乳酸リンゲル液を混ぜる ) ⅲ) 新鮮凍結血漿 500~1, 000ml 前記製剤を使用するが 最低 2 本の静脈路を確保し 乳酸リンゲル液から開始する 2) 輸血出血量が 1,000ml 以上 Hb10g/dl 以下 Ht30% 以下では輸血の必要がある 失血量と同量の血液を補うのが原則である 保存血を使用する場合は 2,000ml までとし それ以後は新鮮血 または濃厚赤血球と新鮮凍結人血漿の組み合わせたものにすることが望ましい 3) 副腎皮質ホルモン末梢循環改善のため速効性副腎皮質ホルモンである ( ソル コーテフ ヒドロコルチゾン )200mg~4mg を使用する ( 中略 ) 4) その他組織低酸素症にはO 2 (5~6リットル) 吸入をする 2 雨宮章ほか 出血性ショック 産科出血の臨床 166 頁 (1998 年 文献 119) 出血性ショック の治療として 1 出血部位の確認および止血 2 輸液療法 3 輸血療法 4 酸素投与 5 各種薬剤 ( 塩酸ドパミン 塩酸ドブタミン 利尿剤 抗ショック剤 DIC に対する治療薬 抗生剤 ) があげられている このうち 2と3については 次のとおり記載されている 2 輸液療法 出血性ショックが疑われたら 直ちに輸液を開始する その際なるべく複数のルートを確保するようにする ショック患者では末梢静脈が虚脱していて血管確保が難しいことが多い その場合は下肢を挙上したり骨盤高位にすると血管が触れやすくなることがある 片側の下肢を挙上することにより約 500ml 輸血と同程度の効果があるといわれている どうしても末梢血管が確保できない場合は 鎖骨下静脈や内頸静脈を穿刺したり静脈切開を行う 輸液はまず乳酸加リンゲル ( ラクテック ) などの細胞外液系の輸液から開始するが これらは血管外に滲出する量が多いので 出血量の最低 1.5~2 倍量輸液することが必要である 103
95 第 4 術中の診療経過について 15B5 循環管理と補充療法 また重症例では輸血到着までの間 低分子デキストランやヘスパンダーなどの代用血漿やプラスマネートカッターなどの加熱ヒト血漿を使用し 循環血液量を維持する 代用血漿は大量投与により出血傾向をきたすことがあるので 総投与量は 1,000ml 以下にとどめる 3 輸血療法 出血量が 1,000ml を超えた場合には 輸液だけでは有効循環血液量が維持できないことが多く その場合には輸血が唯一最良の治療法となる 輸血を行う意義は循環血液量の維持のほかに 赤血球補充による酸素供給能の改善 血漿補充による凝固因子や血漿蛋白濃度の改善にある 出血量が 2,000ml を超える場合には 新鮮凍結血漿も用いる ( 後略 ) 3 丸尾猛ほか編 標準産科婦人科学第 3 版 501~502 頁 (2006 年 文献 120) 出血性ショック の治療として 以下のとおり記載されている (1) 輸液 輸血 : 止血操作と同時にやるべきことは 輸液または輸血である 血液 生化学検査や必要に応じて中心静脈圧 A-line をモニターし 輸液量または輸血量や電解質 アルブミンの必要量を算出し 補充を開始する 通常ショック時の輸液は乳酸リンゲル液 代用血漿剤 回復期には等張液で維持する 輸血は新鮮血や 濃厚赤血球と新鮮凍結血漿の組合せを用いる ( 中略 ) (2) 副腎皮質ホルモン : 末梢循環改善のため 速効性副腎皮質ホルモンであるヒドロコルチゾン (500mg~4g) を使用する (3) その他 : 尿量の減少がある場合は利尿薬 組織低酸素症には酸素 (5~6リットル) を吸入させる 急性循環不全 とくに無尿 乏尿 利尿薬で利尿が得られない場合は 塩酸ドパミン や塩酸ドブタミン の点滴静注を行う さらに 出血性ショックの場合 しばしば DIC を合併することがある とされており 治療の基本は 原疾患の除去のほか 凝固因子の補充および 抗凝固 抗線溶療法 とされている 4 杉本充弘 産婦人科における輸血のあり方 産婦人科の実際 47 巻 7 号 1021 頁 (19 98 年 文献 121) 産婦人科における輸血について 以下の記載がある 産科で妊娠中および分娩時に多量出血の可能性が高いのは 前置胎盤 帝王切開既往妊娠などであり 分娩時に輸血の準備が必要な症例である 一般には 赤血球濃厚液 4~6 単位を準備することが多い 時間的余裕のある場合は 自己血貯血を行い 分娩に備えることが進められる 1. 循環血液量の20% 以下の出血循環血液量 4,000~5,000mlの成人が1,000mlの出血をした場合は 電解質液だけで十分に対応できる 血圧を維持するためには出血量の2~3 倍の投与が必要である 2. 循環血液量の20~40% の出血 104
96 第 4 術中の診療経過について 15B5 循環管理と補充療法 成人で1,000ml~2,000mlの出血の場合は 赤血球濃厚液の投与を開始する 3. 循環血液量の40~90% の出血成人で2,000~3,000mlの出血の場合は 等張アルブミン製剤の投与を加える 4. 循環血液量の90% 以上の出血成人で3,500ml 以上の出血の場合は 凝固因子補充として採血後 24 時間以内の新鮮血あるいは新鮮凍結血漿 (FFP) と赤血球濃厚液の組合せ投与が必要となる 出血量が 5,000ml を超えると 血小板濃厚液を投与して血小板数を50,000μl 以上に維持する 5 松崎道男 学際領域の診療 血液製剤の使用法 輸血 ( 臨床薬理 ) 日産婦誌 56 巻 12 号 N-436 頁 (2004 年 12 月 文献 122) 周術期の輸血について 平成 11 年の厚生省通知 血液製剤の使用指針 に基づいて 述べられている 6 野田洋一 産科ショックおよび産科ショックの対応 日産婦誌 61 巻 1 号研修 N- 3 頁 (2009 年 文献 123) ショックに対する対応として 1 気道の確保 酸素投与 2 血管の確保 輸液 3 輸血 4 血圧の監視 5 尿量の監視 6 薬物療法 ( 副腎皮質ホルモンの大量投与 ウリナスタチン等 ) があげられている 上記 3の輸血については 血液製剤調査機構編 血液製剤の使用にあたって ( 平成 11 年 9 月発行 ) が引用されており これに準ずる とされているが 次のことも記載されている 妊娠中は血液量が35% 増加するため非妊娠時の循環血液量とは相違がある また 分娩時の出血量測定の際には羊水が混入し不正確となる可能性がある したがって 産科の出血性ショックに対する輸血療法は 単に出血量だけで判定するのではなく 臨床上の症状や血圧 脈拍数 尿量 血算 血液ガスなどの所見を含めて総合的に勘案し 必要な血液成分を補充する 7 厚生労働省 血液製剤の使用指針 (1999 年 6 月 文献 124) 上記指針では 赤血球濃厚液 血小板濃厚液 新鮮凍結血漿 アルブミン製剤の各血液製剤の適正使用の原則が定められている 赤血球濃厚液の適正使用 の中で 術中投与 の原則として 以下のとおり記載されている 循環血液量 20~50% の出血量に対しては 赤血球不足による組織への酸素供給不足を防ぐために 細胞外液系輸液薬と共に赤血球濃厚液を投与する この程度までの出血では 等張アルブミン製剤 の併用が必要となることは少ない 膠質浸透圧を維持する必要があれば 人工膠質液 (HES デキストランなど) を投与する 105
97 第 4 術中の診療経過について 15B5 循環管理と補充療法 循環血液量 50~100% の出血では 適宜等張アルブミン製剤を投与する 循環血液量以上の大量出血 (24 時間以内に100% 以上 ) があった場合には 凝固系や血小板数の検査値及び臨床的な出血傾向を参考にして 新鮮凍結血漿や血小板濃厚液の投与も考慮する この間 血圧 脈拍数などのバイタルサインや尿量 心電図 血算 さらに血液ガスなど所見を参考にして必要な血液成分を追加する 収縮期血圧を90mmHg 以上 平均血圧を60~70mmHg 以上に維持し 一定の尿量 (0.5~1ml/kg/ 時 ) を確保できるように輸液 輸血の管理を行う 8 厚生労働省 血液製剤の使用指針 ( 改訂版 ) (2005 年 9 月 文献 125) 上記 5の指針の改訂版である 赤血球濃厚液の適正使用 の中で 術中投与 の原則として 以下のとおり記載されている 下線部分が改訂版の変更箇所である < 要約版から引用 > 循環血液量 20~50% の出血量に対しては 人口膠質液 ( ヒドロキシエチルデンプン (H ES) デキストランなど) を投与する 赤血球不足による組織への酸素供給不足が懸念される場合には 赤血球濃厚液を投与する この程度までの出血では 等張アルブミン製剤 の併用が必要となることは少ない 循環血液量 50~100% の出血では 適宜等張アルブミン製剤を投与する なお 人工膠質液を1,000ml 以上必要とする場合にも等張アルブミン製剤の使用を考慮する 循環血液量以上の大量出血 (24 時間以内に100% 以上 ) 時又は 100ml/ 分以上の急速輸血をするような事態には 新鮮凍結血漿や血小板濃厚液の投与も考慮する 9 日本麻酔科学会 日本輸血 細胞治療学会 危機的出血へのガイドライン (2007 年 文献 126) 上記ガイドラインでは 以下のとおり述べられている (1) 院内輸血体制の整備危機的出血にすみやかに対応するには 麻酔科医と術者の連携のみならず 手術室と輸血管理部門 ( 輸血部 検査部など ) および血液センターとの連携が重要である (2) 指揮命令系統の確立危機的出血が発生した場合には 統括指揮者 ( コマンダー ) を決定し 非常事態発生の宣言 ( マンパワー招集 輸血管理部門へ 非常事態発生 の連絡 ) を行う コマンダーは 止血状況 血行動態 検査データ 血液製剤の供給体制などを総合的に評価し 手術継続の可否 術式変更等を術者と協議する 血液製剤使用の実際については 2005 年 9 月に厚生労働省が策定した 血液製剤の使用指針 および 輸血療法の実施に関する指針 の改訂版に則って行う ただし 危機的出血における輸液 輸血療法においては救命を最優先して行う 10 麻酔科 森田教授の指摘 106
98 第 4 術中の診療経過について 15B5 循環管理と補充療法 医学文献ではないが 森田茂穂 帝京大学医学部教授 ( 麻酔科学 ) は 術中の大量出血への対処法について 以下のとおり指摘している ( 文献 127 出河雅彦 ルポ 医療事故 285~287 頁 朝日新聞出版 2009 年 ) 手術は 操作に伴う出血に対し止血をしながら行うものです しかし 術中に予想外または予想以上の出血が起こり 止血操作が間に合わない あるいは出血が多量なため視野がさえぎられて止血が困難になってしまう場合があります そのときは さらなる出血を防ぎ 患者さんの救命をはかるために次のような手順で対応することが推奨されます 1 統括指揮官 ( コマンダー ) を決定する 通常 麻酔科医が担当することが多い 2 非常事態発生を宣言し 医師 看護師 臨床工学技士などのマンパワーを呼び集め 手術現場に相当数の人数を確保する 3 輸血管理部門に連絡し 血液 ( 赤血球濃厚液 新鮮凍結血漿 血小板濃厚液など ) をオーダーする 4 コマンダーは止血状況 検査データ 血液製剤の供給体制などを総合的に評価し 手術継続の可否 術式変更を術者に指示する 圧迫止血 ガーゼパッキング 大動脈遮断を考慮する 5 太い静脈路を確保する 下腹部手術の場合にはヘッドダウンし 下半身の血液を心臓に集まりやすくし 脳循環や心臓への血液の維持をはかると同時に頸静脈に血液が満たされるようにし その頸静脈に太い静脈路を確保する 手や足の静脈はすでに収縮しているため そこでの静脈路確保は極めて困難であり実際的でない 6 施設によって PCPS( 経皮的心肺補助 ) の使用を考慮する 7 血液が到着するまでは 輸液 代用血漿製剤などで血管内容積を維持し 必要に応じて 末梢血管収縮薬を用いて 大動脈圧を維持し心臓への血流を保ち 心停止に至らないよう留意する 8 血液が到着したら ただちに輸血を開始する 急速に輸血をする場合には 血管内容量が過量にならないように利尿薬を投与し 余分な血管内水分を排出させ 血管内での有効な血液成分の増大をはかる その際 できれば中心静脈圧 動脈圧 心拍数などの連続的モニタリングを行い 輸血量の適正さを確認し 輸血過剰にならないように留意する これらの処置は コマンダーの指示のもとに各自役割分担に従い 迅速に行うことが大切です ただし こうした対応は大学病院や救命センターなどの人材 設備のそろっている施設で可能なことであり たとえ そうした施設であっても救命できない場合も少なくないことが現実です 危機的な状況にすぐに対応できるように トレーニングないしシミュレーションしておくべきであると考えます ( 以下省略 ) 以上のとおり 術中の大量出血における手順全体については 上記に記載されているとおりである そのうち 輸液 輸血療法については おおむね次のとおりとされている 輸液については 出血量の1.5~3 倍量を投与する ( 上記 24) 107
99 第 4 術中の診療経過について 15B5 循環管理と補充療法 輸血については 出血量 1,000mlを超えた場合 ( 上記 12) または循環血液量の20~50% の出血量があった場合 ( 上記 456) に赤血球濃厚液から開始する 出血量 2,000mlを超えた場合 ( 上記 12) 循環血液量以上の大量出血(24 時間以内に100% 以上 ) または 100ml/ 分以上の急速輸血をするような事態の場合 ( 上記 456) には 新鮮凍結血漿や血小板濃厚液の投与も考慮する ( 2) 専門家証人意見刑事事件では 術中の大量出血に対する循環管理や補充療法は 争点になっていなかった そのせいであると思うが 刑事事件において 専門家証人らが十分に意見を述べているとは言い難い ある程度まとまった意見を述べているのは 田中鑑定書 ( 検甲 37) だけであり 岡村医師と池ノ上医師は 断片的にしか意見を述べていない 専門家証人の各意見の概要は 次のとおりである ア田中意見田中鑑定書 ( 検甲 37) には 以下のことが記載されている なお 公判廷では 循環管理や補充療法に関する意見については 特に述べていない 1 マンパワーの確保について 今回の様な止血困難な大出血の遭遇した場合 執刀医は助手の進言を受け入れて応援医師の依頼を行ったほうがよかったと思われる (20 頁 ) 供述調書によると 麻酔科医は 出血が多いため手術の一時進行停止を求めていること及び応援医師の参加を求めていることが伺えるが 強く主張したほうがよかったと思われる (21 頁 ) 2 止血状況の把握 手術継続の可否の判断について 大量の出血によるショック状態に遭遇した場合 麻酔医としては止血しているのか あるいは今後も出血が持続する状態にあるのかを判断 輸血の必要性 実施する場合の輸血量等を決める (21 頁 ) 3 血液の確保について この発注状況もタイミングが遅く 発注した量も少ないと思われる せめて5 000mlの出血が認められた午後 2 時 50 分頃に大量のMAP 凍結血漿 および血小板を発注したほうがよかったと思われる (20 頁 ) 生命を脅かす自体が突然発生した場合 呼吸管理の義務を有する麻酔科医は 執刀医と出血の状況について協議し 正確な病態の把握を行い 必要な血液 血小板 新鮮凍結血漿の補充等の対応を行うべきと思われる (21 頁 ) 4 輸血について 午後 4 時 00分頃 12000ml 前後の出血 ショック状態にあり しかも止血が成功していない被害者 * に対して 院内採血輸血の種々の問題点は別にして 麻酔医は院内採血の新鮮血 3000mlを輸血の判断を行ったほうがよかったと思われる (21 頁 ) 108
100 第 4 術中の診療経過について 15B5 循環管理と補充療法 イ岡村意見岡村意見は 応援依頼 ( マンパワーの確保 ) の点についてだけ 公判廷で次のとおり供述している 手術に入る人数というのは決まっておりますので もちろんスペースのこともありますので 人がたくさんいればいいというものでもないと思いますけれども ( 岡村尋問調書 288~292 項 ) この供述だけを読むと マンパワーの確保を否定しているようにも読めるが 人がたくさんいても統括指揮官 ( コマンダー ) による適切な指示がなければ意味がないと言っているとも思われ 趣旨不明である ウ池ノ上意見池ノ上意見は 次のとおりである 1 マンパワーの確保について分娩を扱うときの態勢として ある程度総合的な力を必要とすると思います と述べ 緊急時の人的な応援態勢を整える必要があるという趣旨の発言はしている ( 池ノ上調書 532~536 項 ) 他方 本件については 全体の手術記録あるいは麻酔記録などを見ますと 応援を求めても求めなくても 出血をコントロールするという意味では余り差がなかったと思います ( 同調書 417~419 項 ) と述べている ( 同 672~679 項も同旨 ) もっとも 池ノ上医師は 本件で意見を述べるにあたり 診療記録しか読んでいないようであり 担当医 麻酔医 助手等の供述調書を読んでいない上に 麻酔記録を見ても時間的な経過が分からないと述べている ( 同調書 573~ ~ ~710 項 なお 394~398 項参照 ) したがって 池ノ上医師は 前提となる事実経過について どの程度正確に把握しているのか疑問である 2 輸血について出血量と輸血開始との関係について 出血量 2000ml( 羊水込み ) この程度の出血量では 濃厚赤血球 (MAP) を輸血することは少ない ( 弁 頁 同調書 195 項も同旨 ) 輸血ではありませんけれども 電解質液であるとか そういう補液で対応するということをします ( 同調書 196 項 ) と述べている その理由として 妊娠期間中に 当然分娩後の出血が起こるであろうという生物学的特徴がありますので その分娩期間中に母体を流れる血液の量は1.5 倍に増えています その分 妊娠が終わりますと 不要な増加量ですから 当然その分は考えなくてよろしいということで 通常の非妊時の循環血液量と妊娠しているときの循環血液量が大きく違うからです ( 同調書 200 項 ) と説明している ただし 出血量が2,000mlを超えて どのくらいまで増加したときに 輸血を開始すべきなのかについては 意見を述べていない 109
101 第 4 術中の診療経過について 15B5 循環管理と補充療法 (3) 文献 専門家意見等の相違点本論点については 刑事事件で争点とされていなかったこともあり ほとんど証拠調べは行われておらず 十分な専門家意見が得られていない 産婦人科医 3 名が意見を述べているものの そのうち2 名の意見は断片的なものに過ぎない 加えて 循環管理 補充療法については 麻酔科の専門的意見も重要だと思われるが 刑事事件では 麻酔医の専門的意見はなかった このような限られた前提において 文献と専門家意見の相違について 検討する 文献と田中意見は いずれも 大量出血時の循環管理 補充療法において マンパワーの確保 輸血用血液の確保 輸液 輸血療法の実施 連続的モニタリング 手術継続の可否の判断を重視している点で おおむね一致していると思われる これに対し 岡村意見と池ノ上意見は 次の12のとおり 文献や田中意見とは一致していない 1 文献と田中意見では マンパワーの確保を重視しているのに対し 岡村意見と池ノ上意見は 本件では応援依頼は不要であったかのような趣旨のことを述べており マンパワーの確保をさほど重視していないように思われる もっとも 岡村意見は 前述のとおり 趣旨不明なところがある また 池ノ上意見は 手術態勢の総合的な力や応援態勢は必要と証言する一方で 本件ではマンパワーの確保を不要としているようであり マンパワーの確保に関する見解は判然としない 池ノ上医師は 麻酔医の供述調書を読んでおらず 麻酔記録からも時間的な経過が分らないと述べていることから 前提となる事実関係について精査分析せずに証言していることもありうる 2 文献では 1,000mlを超えた場合 あるいは 循環血液量の20~50% の出血が見られた場合には 輸血 ( 赤血球濃厚液 ) を考慮するとされているのに対し 池ノ上意見は 出血量 2,000mlで輸血をすることは少ないとしている もっとも 池ノ上意見は 前述のとおり 出血量が2,000mlを超えてどの程度まで増加したときに輸血開始を考慮すべきなのかについては 意見を述べていない また 本件事実経過を前提として どのような対応をすべきだったのかについても 意見を述べていない したがって 池ノ上意見は 本件の循環管理 補充療法について 十分に精査 分析した上での意見とは言いがたい このように 池ノ上意見が文献及び田中意見と一致しておらず その理由は必ずしも明らかではないが 本件事実経過に基づく精査 分析をしていないことによる可能性は否定できない 110
102 第 5 事故後の対応 16B1 遺族に対する対応 第 5 事故後の対応 1 遺族に対する対応 (1) 厚生労働省医政局の指針厚生労働省医政局が平成 15 年 9 月 12 日に作成した 診療情報の提供等に関する指針 ( 医政発第 号 文献 91) は 遺族に対する診療情報の提供について 以下のことを要求している 医療従事者等は 患者が死亡した際には遅滞なく 遺族に対して 死亡に至るまでの診療経過 死亡原因等についての診療情報を提供しなければならない 遺族に対する診療情報の提供に当たっては 3 の定めを準用する ( 注 ) ( 注 )3の定め < 診療情報の提供に関する一般原則 > 医療従事者等は 患者等にとって理解を得やすいように 懇切丁寧に診療情報を提供するよう努めなければならない 診療情報の提供は 1 口頭による説明 2 説明文書の交付 3 診療記録の開示等具体的な状況に即した適切な方法により行われなければならない (2) 国立大学医学部附属病院長会議の提言国立大学医学部附属病院長会議常置委員会の下におかれた医療安全管理体制問題小委員会医療事故防止方策の策定に関する作業部会が2001 年 3 月に発表した 医療事故防止のための安全管理体制の確立に向けて ( 提言 ) ( 文献 128) は 事故発生時の患者 家族への対応について 以下のことを要求する 患者 家族に対して行う説明は 医療側の考えを 理解させる ために行うのではなく 患者 家族が自ら 判断 できるようにするために行うものであり そのために十分な情報を提供するということである ( 中略 ) 患者 家族に説明するにあたり踏まえるべきと考えられる一応のポイントを以下に掲げるが あくまで参考であって これに機械的に準拠すれば 即 適切な説明が行われるというものでは決してない 大事なことは 患者 家族が自ら適切に理解し判断を下せるために 提供する情報に過不足がないかどうか 伝え方に偏りがないかどうかということであり こうした観点から検討して見れば 自ずと説明すべき内容も 見えてくる はずである 重要な事実を省かない 因果関係を省かない 明快に説明できないことがあれば率直にそのことを伝える 多少とも不明な点があることについては断定的な言い方はしない 当初の説明と異なる処置 当初の説明を越える処置をした場合はきちんと伝える ミスの事実があれば 結果には影響を与えていないと考えられるものでも 包み隠 111
103 第 5 事故後の対応 16B1 遺族に対する対応 さずに伝える (3) 事実関係ア事故当日の家族への説明 ( ア ) 証拠に表れた事実 1 担当医は 18 時か19 時頃 ナースセンターの脇にある小さな部屋にて 本件患者夫 本件患者義父 本件患者義母 本件患者父の4 名に対し 申し訳ありません 亡くなりました 今蘇生しています などと説明した ( 本件患者夫供述調書 検甲 28 号証 7~8 項 ) 2 担当医は 19 時 30 分頃 遺体を手術室から 通常の病室よりも少し広めの部屋に移し 手術の経過を説明しようと考えたが 家族以外の方らしき人がいたこと 口々に罵声を浴びせられるようなこともあったことから その場での説明を諦めた ( 第 11 回公判担当医質問調書 42~56 項 ) 3 担当医は 21 時頃 改めて家族への説明を行っている 最初は口頭で説明を始めたが 本件被害者父より 説明を文章で書いて欲しい と要求されたことから 途中からカルテの空きスペースに内容を書き込みながら説明をしている ( 本件患者夫供述調書 検甲 28 号証 12 項 ) 4カルテに記載された説明内容 ( 検甲 16 号証 ) 前置胎盤管理目的に入院 管理 著変 (-) 予定帝王切開へ 途中経過のムンテラ不足について謝罪当方としては 手術室ではスタッフ皆が動き回っている状態 病棟では血液採取に追われている状態 きちんと主治医がムンテラすべきだったと謝罪 予想を遙かに超える出血であった 輸血準備はしていたが 足りず 注文 到着まで待機 全血輸血 ( 採血をそのまま輸血すること ) とGVHD( 移植片対宿主病 ) の関連使用するかと ママ 準備中にMAP 到着したので 全血は使用しなかった 何かあったらZ 病院の先生を呼ぶ予定だったが 呼ぶタイミングを逸した 手術記録 ムンテラ内容が記載されたカルテの頁をそれぞれ1 部コピーして渡す 5 第 11 回公判担当医公判廷質問に表れた説明内容 ( 調書 60 項 ) 順調に3000グラムの元気な女の子が生まれた 胎盤は子宮後壁に存在していた 112
104 第 5 事故後の対応 16B1 遺族に対する対応 上の方から剥離し 下のほうになったら癒着してきた 出血が多くなって血圧が低下し 準備していた輸血や輸液を投与しても足りなかったので 他に輸血を注文して その注文した輸血が届いて血圧が上昇して それから子宮の摘出をおこなった 子宮摘出を行っているときに 膀胱が少し傷ついてしまったので その修復を行って 膀胱の中に輸液を入れて 膀胱がきちんと治っているかどうか確認するための検査をしようとしたところ 突然不整脈がでて 心肺蘇生をするような状態になってしまった 6 本件患者夫供述調書に表れた説明内容 ( 検甲 28 号証 12 項 ) 胎盤をハサミで切ったりはがしていくときに出血が多くなった 7 本件患者義母供述調書に表れた説明内容 ( 検甲 32 号証 3 項 ) 胎盤の下の方はもっと剥がれにくかったので はさみを使って切ったら沢山出血したので 輸血したけど亡くなってしまった ( イ ) 判決の認定 担当医は 午後 9 時ころ 麻酔医 B 看護師とともに 本件患者の遺族に手術経過を説明した ( 判決 26 頁 ) イ 12 月 26 日の説明 12 月 26 日 E 院長 担当医 麻酔医 B 病院事務長の4 名は 被害者夫実家を訪れて 本件事故の説明をした 担当医の説明内容については 本件患者義父によると 以下のとおりである ( 本件患者義父供述調書 ( 検甲 31 号証 6 項 ) より抜粋 ) お腹から子供を取り出した後胎盤が剥がれにくい感じだったので ハサミを使って胎盤を剥がした 通常は はさみとか使わなくても 胎盤というのは 引っ張るだけでとれる 胎盤の下の方を剥がすに従って 出血量が増えてきて その出血が止まらなかった そのため 輸血をしたものの 血圧が下がって死んでしまった 助手の先生の出血の吸引が下手で出血が湧いてきている状態であれば 出血が確かに多いと思った ウ翌年 1 月中旬の説明翌年平成 17 年 1 月中旬 E 院長及び事務長は 本件患者実家を訪れ 改めて説明を行っている 113
105 第 5 事故後の対応 16B1 遺族に対する対応 もっとも 本件患者義父供述調書 ( 検甲 31 号証 7 項 ) には 具体的な内容については はっきりとした説明がなかった と記載されている エ病院が作成した説明文書遺族は 病院から説明を受けたときに 口頭では分からないので 文書で書いたものをほしいと要望したところ 病院は 平成 16 年 12 月 26 日の担当医と麻酔医 B の説明内容と 平成 17 年 1 月 12 日のE 院長と事務長の説明内容 ( 同文書によると 説明相手は本件患者夫 説明場所は大野病院応接室となっており 上記ウの説明とは別の機会と考えられる ) について文書にしたものを 後日 遺族に提出した そのうち 前者の説明文書 (12 月 26 日分 ) で 本件事故にとくに関係する部分の記載内容は 以下のとおりである なお 後者 (1 月 12 日分 ) については 事故調査委員会の開催に関する説明がなされているだけであり 事故の内容に関する説明はないので ここでは引用しない 平成 16 年 12 月 26 日担当医 ( 産婦人科 ) の説明 第一回帝切 前置胎盤のリスクはあったが 子宮下部横切開創付近( 子宮前壁 ) への胎盤付着は 横半分のみであったこと 胎盤付着のメインは後壁だったことにより 輸血血液準備は5 単位とし 何かある際は Z 病院のA 医師に手伝いに来ていただくことにした 胎盤付着部を観察すると 後壁全面が胎盤で覆われた前置胎盤胎盤用手剥離開始途中より 後壁下部になるにつれて癒着傾向あり クーパー ( はさみ ) にて剥離面を切開 剥離する状態終了まで 約 15 分経過 ( 通常 1 分くらい ) ここまでで出血量は約 5000ml 徐々に血圧低下認め 子宮内の所々よりじわじわ出血あったため 糸で止血操作繰り返すも 止血せず 子宮後壁側 子宮頸部にタオルガーゼつめて 子宮を手で覆うように圧迫して 全身状態が落ち着くまで待機へ 平成 16 年 12 月 26 日麻酔医 B( 麻酔科 ) の説明 胎盤剥離開始後により出血が増え 血圧が低下する 代用血漿 準備してあった濃厚赤血球を急速投与 昇圧剤投与 準備してあった農厚赤血球 ママ を使い切った後も 出血及びそれに伴う血圧低下が続く 農厚赤血球 ママ を追加オーダーするも 到着まで1 時間以上かかるとのことから 近隣の病院に問い合わせをするも在庫なし 代用血漿 アルブミン製剤 院内在庫の新鮮凍結血漿 (FFP) を急速投与 昇圧剤を持続投与 病院職員より血液を採取 (8 人から計 3000ml) ( ただし 新鮮血の使用は移植片対宿主病 (GVHD) という極めて救命困難な合併症の危険性が高いため 日赤からの農厚赤血球 ママ が到着する前にどうしようもなくなって 114
106 第 5 事故後の対応 16B1 遺族に対する対応 しまった場合の最終手段として手術室に保管 ) 気分不快 不安 創部痛等の出現あり ( 中略 ) この間も出血が続き 濃厚赤血球 FFPをさらに追加オーダー 濃厚赤血球の到着後 直ちに 投与開始 その直後より血圧上昇が見られた その後も 農厚赤血球 ママ FFP アルブミン製剤 代用血漿の急速投与を続けたが 出血が続き 再び血圧低下 18:00すぎに血圧測定不能 心室頻拍となり 心臓マッサージ 電気ショック 各種蘇生用薬剤を使用するも効果なく 心室細動 心静止となり 19:01 永眠す * 上記 の下線部については 判決では認定されていない 麻酔医 Bの供述調書および尋問調書でもそのような供述はない 麻酔記録では 14 時 55 分以降 ( 麻酔記録の 印以降) は 輸液 輸血療法について経時的な記録がなされていないので のような事実があったことは判断できない なお 前記 66 頁第 4 1-2(3) イ参照 2 事故調査委員会 (1) 院内事故調査委員会のあり方院内事故調査委員会のあり方については 様々な議論がなされているが 日本弁護士連合会が 2008 年 10 月に行われた第 51 回人権擁護大会シンポジウムの第 2 分科会基調報告書 安全で質の高い医療を実現するために 医療事故の防止と被害の救済の在り方を考える 第 2 編において 院内事故調査ガイドライン ( 文献 129) を作成しているので 本報告書では これを参考とする * なお 院内事故調査委員会のあり方についての参考文献としては 日弁連の上記報告書のほか 名古屋大学附属病院および愛知県医科大学附属病院における事故調査をもとにした 医療事故から学ぶ 事故調査の意義と実践 ( 文献 130) や 財団法人生存科学研究所の 院内事故調査の手引き ( 文献 131) などもある 日弁連のガイドラインの要旨は 以下のとおりである ( 文献 ~289 頁 ) ア院内事故調査の目的医療事故調査の第 1の目的は 医療事故の原因を究明し その原因を踏まえて再発防止策を策定 提言し もって 医療事故の再発を防止することである また 事故原因を究明して 患者 家族に対し充実した説明を尽くすとともに 社会的な説明責任を果たすことも医療事故調査の重要な目的と認識すべきである イ院内事故調査の質 信頼性を担保するために必要なもの院内事故調査の質 信頼性を担保するためには 以下の4つの性質が確保されていなければならない 1 専門性の確保 115
107 第 5 事故後の対応 17B2 事故調査委員会 医療の専門性ゆえに 原因究明にあたる者にも高い専門性が要求される 2 科学性 客観性の確保スタンダードな医学的知見と 適切に記載された診療記録の記載等に基づいて原因究明がなされなければならない 3 公正性 透明性の確保社会も患者 家族も 医療機関が医療事故に対し適切な対応をとったことを直ちに信用して受け入れることができるよう 公正性 透明性が保たれる必要である 4 論理性 分析力の確保原因を究明し 再発防止策を導くためには そのプロセスは論理的でなければならず これにあたる者には 分析力が必要である ウ院内事故調査委員会の組織及び委員の選任 ( ア ) 院内事故調査委員会の組織現場に根付く再発防止策を策定し実践するために 内部委員が関与する必要があるが 他方 公正性 透明性及び論理性を確保するためには外部委員を入れる必要がある よって 外部委員を入れた内部調査委員会を設置するのが最も適当である ( イ ) 外部委員医療問題に関わっている弁護士等や事故調査の手法について知見を有する有識者は 論理性 客観性確保のために 外部委員として選任すべきである 患者 家族が委員として推薦した人物や 患者代表者たるいわゆる医療の素人は公正性 透明性確保の観点から 選任を検討するのが適当である エ事故原因の分析と再発防止策の提言事故調査の対象は 1 物 2 記録 3 人に分類される 3 人については 医療従事者だけでなく 患者 家族などからも聴き取りをすべきである オ事故調査報告書の記載内容事故調査報告書は 論理的 科学的 具体的な記載がなされなければならない また 患者 家族及び社会に説明して理解してもらえるよう できる限り平易な文章で記載し 適宜 説明に必要な資料等を付けたり議論の内容が分かるように少数意見を紹介すること等も行う 記載すべき事項としては 以下のものが挙げられる 1 調査活動の経過 2 院内事故調査委員会が事実と判断した診療経過その他の事実 3 事故に至った機序 原因ないし背景 根本原因 4 診療経過に対する医学的評価 5 患者 家族から疑問が投げかけられていた事項に対する回答 6 再発防止策の提言 7 委員の所属 氏名 (2) 本件の事故調査委員会についてインターネット上で入手可能であった本件事故調査報告書をもとに 以下 検討する 116
108 第 5 事故後の対応 17B2 事故調査委員会 なお この本件事故調査報告書が報告書全文であるのか 概要版であるかも明らかでないが 全文であることを前提とした検討である ア設置目的事故後 E 院長の要請により福島県を設置主体とする事故調査委員会が設置された この事故調査委員会の設置目的について 報告書は この事例を検証し 今後の前置胎盤 癒着胎盤症例の帝王切開手術における事故防止対策を検討することを目的として設置した と記載している... なお 弁護側は 再発防止の観点と過失を前提とする損害賠償保険の適用を考慮して作成したもの ( 傍点は報告者 ) と主張していた ( 弁護側の冒頭陳述 3 頁 ) イ事故調査委員会の組織形態本件事故調査委員会の構成員は 福島県内の病院における3 名の産婦人科専門医であった (E 院長尋問調書 125 項 271 項 ) 委員長の宗像正寛医師は 福島県立三春病院の診療部長であり 委員 2 名のうち1 名は 福島県立医科大学附属病院所属の医師である ( 検甲 37-2 頁参照 2005 年 3 月 31 日付毎日新聞報道等参照 ) 本件の事故調査委員会は 1 院長が設置要請をしている点 2 大野病院の開設者である福島県が設置主体である点 3 委員会の構成員 3 名のうち2 名 ( 委員長及び委員 1 名 ) は福島県立の医療機関に所属する医師で構成されている点から 院外事故調査委員会というよりも 院内事故調査委員会としての性格が強いものと考えられる 構成員については 上記 3 名の産婦人科医師のみであり 病院内部者 麻酔科医師 医療従事者以外の者は選出されていない ウ調査経過 1 第 1 回委員会 ( 平成 17 年 1 月 13 日開催 ) 1 関係資料の確認 2 関係者への聴き取り調査 大野病院の医師 2 第 2 回委員会 ( 平成 17 年 1 月 31 日開催 ) 1 関係資料の確認 2 関係者への聴き取り調査 大野病院の医師及び看護スタッフ 3 現地等の調査 3 第 3 回委員会 ( 平成 17 年 2 月 23 日開催 ) 1 関係資料の確認以上のように 本件事故調査委員会の調査方法には 関係資料の確認と大野病院関係者からの聴き取りしか挙げられていない 遺族の話も総合すると 本事故調査委員会では 遺族からの聴き取りがなされていない 117
109 第 5 事故後の対応 17B2 事故調査委員会 エ調査結果報告書の記載内容本件事故調査委員会の調査結果報告書の記載内容は 概ね以下のように列挙できる なお 本報告書の本文部分は A4 用紙 4 枚で比較的短いものであり 参考医学文献の引用はなされていない 1 設置目的 2 構成員 3 患者及び疾患名 4 スタッフ 5 診療経過 6 術前診断についての検討内容 7 手術中についての検討内容 9 事故原因 10 事故要因 11 総合判断 12 今後の対策 オ事故調査委員会調査結果の家族への報告平成 17 年 3 月 大野病院において 事故調査委員会の委員から家族へ 調査結果について 説明が行われた 説明は 口頭説明のみであり 事故調査報告書の交付は行われていない 被害者遺族は 事故調査委員会の委員から 胎盤を摘出する際にはさみを使ったのは妥当ではなかった ( 本件患者義父供述調書検甲 31 号証 8 項 ) 胎盤をはさみで切り取ったことで大量の出血をし そのため命を落としてしまった ( 本件患者義母供述調書検甲 32 号証 6 項 ) などと説明を受けたと供述している 118
110 第 6 総括 第 6 総括 本報告書は 私ども医療問題弁護団による検討班が ご遺族の協力を得て 刑事事件の訴訟記録を精査し 併せて医学文献の検討と専門医からの参考意見の聴取を行った結果 本件にはなお多くの未解決の疑問点ないし問題点が残されていることを明らかにしたものである 私どもの認識する疑問点等については 調査 検討すべき論点 として 本総括の末尾に掲げる なぜこのような疑問点が残されるに至ったのか いくつかの要因が考えられる 第 1には 刑事事件においては審判の対象が限定的であることによる 当事者主義を原則とする我が国の刑事訴訟手続は 審判の対象を 訴因 に限定し 検察官が構成した 訴因 こそが訴訟上の主要な立証命題となるものと解されている 本件においては 起訴事実にあるように ( 担当医には ) 直ちに胎盤の剥離を中止して子宮摘出術等に移行し 胎盤を子宮から剥離することに伴う大量出血による同女の生命の危機を未然に回避すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り 直ちに胎盤の剥離を中止して子宮摘出術等に移行せず 同日午後 2 時 50 分ころまでの間 クーパーを用いて漫然と胎盤の癒着部分を剥離した過失 が訴因ということになり ( 医師法違反の点を除く ) したがって 例えば 術前診断の問題 術前準備の問題 インフォームド コンセント違反の有無 輸血の手配の問題 麻酔医による術中管理の適否 さらには医療体制や医療制度上の問題点等は 刑事事件では主要な論点とはならなかった このため 再発防止のためには本来議論されてよいはずの幾つもの論点が 刑事訴訟手続のなかでは十分に ( あるいは論点によってはほとんど ) 解明されないままとなった 第 2には 刑事訴訟法上の厳格な証拠制限が挙げられる 刑事訴訟手続においては厳格な証拠制限が存し たとえば文献等も無条件に証拠として認められる訳ではなく 厳格な例外要件を満たさない限り法廷に顕出することができない ( 伝聞法則 ) 本件の刑事訴訟でも おそらくはそのような証拠制限の結果として ( と思われるが ) たとえば医学文献は16 点しか証拠採用されていない そのため たとえばある医学的論点について一般にどのような議論がされてきたかを文献の裏付けをもって正確にトレースするような立証は 必ずしも十分なされているとは思われない この点 民事の医療過誤訴訟手続においては 医療水準の立証を医学文献で行うことが通常であり 原被告双方から相当量の医学文献が証拠として提出されるのが通例であるが このことに比して 本件の医学文献証拠の極端なまでの少なさは 私どもにとって ある種の驚きを禁じ得ないものであった ( なお 今回私どもが検討した医学文献は130 点を超える ) 119
111 第 6 総括 第 3に 刑事事件における判断の目的性が挙げられる いうまでもなく 刑事訴訟手続は刑罰権の発動を直接の目的とするものであって 事故の再発防止は - 無関係ではないにしても- 主たる目的とされるものではない したがって たとえばある論点について相対立する見解があっても 刑事訴訟手続は 判決を支えるに足る限りでその認定を行えばよく そこでは 見解の対立の中から再発防止のための教訓を酌みとろうとするような指向性は極めて不充分である もとより これらは刑事訴訟手続がもつ制度的な限界といってよい したがって またそうであればこそ これら制度的限界のために刑事判決からこぼれ落ちた疑問点については 刑事訴訟手続以外の場において本来解明がなされなければならない それは 亡くなられた患者さんに対して 医療界が果たすべき責務かと思われる 本報告書において 私どもは 極力客観的であろうと努めた 法廷に顕出された証拠から伺われる事実関係と 医学文献によって示される医学的知見を具体的に摘示し そこから導かれる未解決の問題点ないし疑問点を できる限り客観的に指摘するよう努めたつもりである 本報告書を契機に 我が国の医学界 とりわけ産科や麻酔科等の本件に関連する医療分野の専門家職能集団が 自律的かつ自発的に改めてこの事件を検討し 透明性のある事故調査 を遂げられんことを そして その結果得られるであろう貴重な教訓が再発防止のために広く国民に開示され将来に活かされんことを 強く望む次第である 最後に 以下 本文の順序に従い 各項目毎に具体的になお残る疑問点等を 調査 検討すべき論点 として まとめて摘示しておきたい なお 本報告書は 刑事記録と医学文献を中心に検討していることから 地域医療体制や医療行政等の医療制度に関する問題については 疑問点 問題点の抽出に限界があったことを付言する 調査 検討すべき論点 1 死亡原因ないし死亡に至る機序に関して ( 本報告書 16 頁 ) 本文において詳述したとおり 本件では 胎盤についての病理検査はなされないまま廃棄されており 写真のみしか残っていない ( 写真が鑑定資料とされている ) という事実経緯が存するうえ 癒着の範囲 嵌入の深さ等については 専門家証人間で見解の相違があり かつ 癒着の範囲 嵌入の深さ等に関する病理学的診断手法がどのようなものであるか あるいは そもそも 癒着の範囲 嵌入の深さ等と臨床所見 予後との相関関係についても明確に論じられているか否かすら不明である という状況にあることが示された そこで 120
112 第 6 総括 1 本件の癒着胎盤の詳細 ( 部位 範囲 程度等 ) について 病理組織学的診断としては果たしてどこまで明らかにできるのか その限界がまず明らかにされるべきではないか 2 病理組織学的診断の限界をも踏まえた上で 病理組織学的診断と診療経過を総合考慮しつつ後方視的に見たときに 本件の癒着胎盤の詳細 ( 部位 範囲 程度等 ) はいかなるものだったと評価できるか 3 本件癒着胎盤の詳細 ( 部位 範囲 程度等 ) と大量出血とはいかなる関連があるのか その機序を明らかにすべきではないか 4 医療行為に関連して患者が死亡したときに できる限り死亡原因および死亡に至る機序を調査する仕組みがあれば 本件においても死亡原因および死亡に至る機序がより明らかになったのではないか 2 術前診断 ( 本報告書 29 頁 ) 本文において詳述したとおり 本件の癒着胎盤に関する担当医の術前認識については 担当医の捜査段階での供述と公判段階での供述が変遷しており 事実関係の認定に困難を伴うものである しかし 再発防止の観点からは このような変遷する供述を前提に多角的に検討することにより 一般的に有益な教訓を引き出すことが可能なように思われる また 術前診断の可能性については 専門家証人の意見相互間にも相違点があり その意味でも検証が必要と思われる そこで 1 本件で 前回帝王切開創に胎盤が掛かっている所見は存在したか また 前回帝王切開創に胎盤が掛かっていることを 術前診断においてどの程度の確実性をもって否定できたのか 2 前回帝王切開創に胎盤が掛かっている可能性を否定できない場合に どのような検査を行うのか 3 直接子宮にプローベを当てる超音波検査は 術前の経腟または経腹の超音波検査と比べて 癒着胎盤の診断にどの程度有効か 4 子宮の色や子宮前壁の血管怒張の所見は 癒着胎盤の診断にどの程度有効なのか また 血管怒張に基づく診断をするには 癒着胎盤について相当数の経験を要するのか 5 子宮前壁に癒着胎盤があったことは 否定できたか 6 地域や行政において経験のある医師から助言やサポートが得られる仕組みがあれば より精度の高い術前診断ができたのではないか 3 術前準備 ( 本報告書 48 頁 ) 本文において詳述したとおり 術前準備に関しては 本件患者の状態を如何に把握すべきであったかとの前提についての見解の相違や 出血の可能性 ( ないしはその程度 ) についての一般的な認識の相違等とも関連して 異なる見解が提示されているので 再発防止の観点からは この点についての具体的検証が必要であると思われる そこで 121
113 第 6 総括 1 術前の輸血用血液の準備量は足りていたか 2 担当医は 手術当日 A 医師に 不測の事態が生じた場合に備えた応援の依頼をしたが このような態勢で問題はなかったか 3 本件病院の医療提供体制 手術を担当する医師たちの経験 患者の所見 術前準備状況 助産師からの進言等を考慮すると 術前に 転医の必要はない とした判断は 適切だったか 4 より適切な術前準備を行うことができるよう 輸血供給体制や地域における緊急時の応援態勢等の体制上の問題について 検討する必要があるのではないか 5 産婦人科 1 人医長の医療機関が 周産期医療においてどのような役割分担をするのかについて 検討する必要があるのではないか 4 術前のインフォームド コンセント ( 本報告書 55 頁 ) 本文において詳述したとおり 本件の術前のインフォームド コンセントについては 厚生労働省指針 医学文献 最高裁判例等で提示されている規範に照らし 十分なものであったかどうかの疑問があり得るところである そこで 1 担当医は 本件手術に伴う大量出血の危険性について説明を行っているようであるが 術前に準備した輸血量血液では不足するような大量出血となる確率 全前置胎盤および癒着胎盤における死亡率については 説明はなされたか 危険性に関する情報については 具体的に説明するほうがより適切ではないか 2 本件病院は 輸血用血液を常備しておらず 約 50km離れた赤十字血液センターから 1 時間かけて都度搬送するという体制であった そうすると 輸血用血液の常備された高次医療機関にて手術を行う選択肢もあったと思われるが この点に関する説明はなされたのか 3 以上の点も含め 本件のようなハイリスク妊娠において 患者 ( 妊婦 ) に対してどのような内容の説明をするのが望ましいのかについて 検討する必要があるのではないか 5 術中の事実関係 ( 本報告書 60 頁 ) 本文において詳述したとおり 術中の事実関係についても 担当医の捜査段階の供述と公判廷での供述には 胎盤の位置についての認識や 開腹後の超音波所見等について供述にくい違いのある部分が存し また担当医と他の手術スタッフの間でも相違が存するので 具体的に検証されなければならない そこで (1) 癒着胎盤に対する処理に関する事実関係 1 本件では 胎盤剥離にあたりいかなる事実が存在したのか 2 クーパーによる胎盤剥離の安全性については どのように考えられているのか 3 本件において 術中ビデオによる撮影記録があれば より的確な原因究明ができたのではないか 122
114 第 6 総括 (2) 循環管理と補充療法に関する事実関係 1 本件で 大量の出血はいつから始まったのか 2 循環管理と補充療法の観点で本件事故の原因究明 再発防止を検討するにあたり 刑事判決が認定した事実だけで足りるか 6 癒着胎盤に対する処置 1( 胎盤剥離 )( 本報告書 69 頁 ) 本文において詳述したとおり 癒着胎盤の剥離に関しての医学的知見には 専門家間においてもその内容に相違が認められ したがって 再発防止のためには どのような場合にどのような剥離操作が適切であるのか等 将来に向けた議論をさらに深める必要がある そこで A 一般論について 1 開腹時に子宮表面の静脈怒張が確認 された場合 その所見は 臨床的癒着胎盤の診断において どのような意味をもつのか 2 胎盤剥離困難であれば 臨床的に癒着胎盤と診断する ( あるいは その疑いを持つ ) のか さらに加えて 大量出血 止血困難があったときに初めて 臨床的に癒着胎盤と診断する ( あるいは その疑いを持つ ) のか 3 岡村証人および池ノ上証人は 癒着胎盤において大量出血 止血困難な状況となったときでも ( 子宮全摘術ではなく ) 胎盤娩出の完遂による止血を目指すことに重きをおいている このような胎盤娩出の完遂を重視する対処方法のほかに 子宮全摘術による対処方法があるが これらは どのような基準により選択されているのか 4 クーパーを使用して胎盤剥離を行うことは適切か 胎盤剥離においてクーパーを使用するときには どのような点に注意すべきなのか また クーパー以外の器具を使用することはどうか B 本件担当医の医療行為の適切性について 1 本件では 以下のどの時点で臨床的に癒着胎盤と診断する ( あるいは その疑いを持つ ) ことができたか ⅰ 開腹後に子宮表面の静脈怒張が確認された時点 ⅱ 子宮収縮剤注射後に臍帯を牽引しても胎盤が剥離しなかった時点 ⅲ 子宮マッサージ後 再度臍帯牽引をしても剥離しなかった時点 ⅳ 用手剥離を試みたが剥離困難であった時点 ⅴ クーパーの使用によっても容易には剥離できなかった時点 ⅵ 出血量が増加した時点 2 本件において 胎盤の用手剥離を行ったことは適切だったか 3 胎盤の用手剥離が困難であった時点で 臨床的に癒着胎盤との診断を行い 剥離行為を中止すべきだったか また どのような状態をもって 用手剥離が困難 と評価するのか 4 大量出血 止血困難な状況となっている時点で 胎盤娩出の完遂 による止血よりも子宮全摘術に切り替えるとの判断を行うべきだったか 123
115 第 6 総括 5 本件で 胎盤剥離にクーパーを使用したことは 適切だったか 6 胎盤娩出の完遂を行うとしても クーパーを使用しなければ剥離できなくなった時点で胎盤剥離困難と評価し 輸血の追加発注等を行い十分な準備をした上で行うという対応はどうか 7 癒着胎盤に対する処置 2( 子宮摘出 )( 本報告書 86 頁 ) 本文において詳述したとおり 子宮摘出に関しての医学的知見にも専門家間においてもその内容に相違が認められ したがって 再発防止のためには どのような場合に子宮摘出を行うことが適切であるのか等 将来に向けた議論をさらに深める必要がある そこで A 止血対策としての子宮摘出について 1 癒着胎盤症例において 止血困難な場合の止血対策としての子宮摘出に移行する基準は どのように判断すればよいか 2 本件において 止血困難と判断される時点はいつか 3 輸血を待って子宮摘出を行うという判断は適切だったのか B 大出血防止のための子宮摘出について 1 大出血防止のための子宮摘出のタイミングについては 文献 専門家証人の意見が一致しないが 子宮摘出への移行は どのような基準で判断するのが妥当であるのか 2 本件においては 大出血防止のために子宮摘出に移行すべきであったか もしそうだとすればいつか C 子宮摘出のための体制について本件において 速やかに子宮摘出に移行できなかった要因として 輸血供給体制や地域における緊急時の応援態勢等の体制上の問題があったのであれば これらについても検討する必要があるのではないか 8 癒着胎盤に対する処置 3( その他の止血措置 )( 本報告書 97 頁 ) 本文において詳述したとおり 子宮摘出以外の止血措置に関しての医学的知見にも専門家間においてもその内容に相違が認められ したがって 再発防止のためには どのような場合に子宮摘出を行うことが適切であるのか等につき 将来に向けた議論をさらに深める必要がある そこで 1 本件において 実施されなかった以下の止血法が行われた場合 子宮摘出を要することなく止血することができたか 子宮マッサージ 内腸骨動脈挟鉗 結紮 塞栓 バルーン閉塞 2 一般的に 前置癒着胎盤症例において 子宮摘出以外の止血法によって止血することができるのは どのような状態の場合か 3 本件のような事態を防止するためには 子宮摘出以外の止血法を行うにあたって ど 124
116 第 6 総括 のような対応 配慮が必要か 9 循環管理と補充療法 ( 本報告書 102 頁 ) 本文において詳述したとおり 循環管理と補充療法に関しては 刑事事件においては十分な検討がなされていない したがって 再発防止のためには この点について麻酔科等の関連諸科と共同で改めて検討する必要があるものと思われる そこで 1 本件において 輸液 輸血療法の対応 ( 準備を含む ) は適切だったか 例えば 職員から採血した血液があったが これを使用して少しでも早く輸血を始めるという選択肢はなかったのか 2 院内輸血体制の整備 マンパワーの確保 指揮命令系統の確立と役割分担 手術継続の可否 術式変更の指示 太い静脈路 ( 頸静脈 ) の確保 バイタルサインの連続的モニタリング等の各観点から 本件は適切だったか 3 本件病院に経皮的心肺補助の設備と人材が備わっていたかどうかは不明であるが 備わっているときには その適応についても検討する必要があるのではないか 4 より適切な循環管理および補充療法を行うためには 輸血供給体制や地域における緊急時の応援態勢等の体制上の問題についても 検討する必要があるのではないか 10 事故後の対応 ( 本報告書 111 頁 ) 本文において詳述したとおり 本件の事故後の患者に対する対応ないしは本件事故調査委員会のあり方等についても 刑事事件においては十分な検討がなされていない したがって この点についても改めて検討する必要があるものと思われる そこで (1) 遺族に対する対応 1 説明方法が妥当だったか担当医は 当初口頭のみで説明を開始した後 遺族に説明を文章で書いて欲しいと求められた後に カルテの空きスペースへの説明を記載している このような説明の方法が 患者の理解を得るのに適した説明方法だったといえるか 2 重要な事実を説明しているか資料によれば 担当医は 胎盤をはさみで剥がした時に大量出血が起きたという事実経過については説明を行っている しかし 本件において重要な事実は その大量出血が起きたのは何故なのか はさみ ( クーパー ) を使ったことが影響しているのかという点であると思われる また 本件は出血性ショックが直接の原因である以上 実際の出血量が予想を上回ったのはどのような理由によるものか 準備していた輸血用血液が十分だったのかという点も 重要な事実であると考えられる 資料からは このような重要な点について担当医が遺族に対して説明をしたかどうか必ずしも明らかでないので 改めて検証する必要があるのではないか 125
117 第 6 総括 (2) 事故調査委員会本件事故調査委員会が (ⅰ) 設置目的 (ⅱ) 委員の構成 (ⅲ) 調査方法 (ⅳ) 調査結果内容 (ⅴ) 遺族への報告のあり方等 様々な観点から十分なものであったと評価できるか 以上 126
118 127
沖縄医報 Vol.44 No.1 2008 生涯教育 超音波所見 c 胎盤と子宮壁の間に見られる低輝度境界線 a 胎盤が虫食いまたはスイスチーズ様を示す placental lacuna の存在 脱落膜エコー の欠落 d 子宮漿膜面と膀胱壁の間に血管増生 拡張 b 胎盤付着部の子宮筋層の菲薄化 以上の所見が認められる 写真 1 2 経膣超音波による診 断の精度は高く 特に 妊娠 20 週以降にこれら
福島県立大野病院事件
福島県立大野病院事件検討報告書 - 刑事記録等から見えてきたもの - 2009 年 11 月 医療問題弁護団福島県立大野病院事件検討班 2 序 文 2008 年 8 月 20 日 福島地裁は 福島県立大野病院の母体死亡事例について業務上過失致死罪等に問われた産科担当医に対し 無罪の判決を言い渡した 大野病院事件は 現職の産科医の逮捕という特異な経過を辿ったことから全国の注目を浴び 医療に対する刑事司法の介入の是非について大きな議論を巻き起こした
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報告書 県立大野病院医療事故について 県立大野病院医療事故調査委員会平成 17 年 3 月 22 日 目 次 第 1 県立大野病院医療事故調査委員会 P1 1 目的 2 構成員 第 2 事故の概要 P1 1 患者及び疾患名 2 スタッフ 3 診療経過 第 3 調査項目と検討内容 P2 1 術前診断 2 手術中 第 4 調査結果 P3 1 事故原因 2 事故の要因 3 総合判断 第 5 今後の対策 P4
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そこに そこがあるのか? 自明性 (Obviousness) における固有性 (Inherency) と 機能的クレーム (Functional Claiming) 最近の判決において 連邦巡回裁判所は 当事者系レビューにおける電気ケーブルの製造を対象とする特許について その無効を支持した この支持は 特許審判部 (Patent and Trial and Appeal Board (PTAB))
系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学
母性看護学 母性看護学 目標 Ⅰ. 母性看護の対象となる人々 関連する保健医療の仕組み 倫理的問題 人間の性と生殖のしくみについての理解を問う 1 母性看護の概念 母性看護の主な概念 a 母性の概念 母性の発達 母性看護学 [1]( 母性看護学概論 ): 第 1 章 母性とは (p.2 12) 公衆衛生 : 第 5 章 C リプロダクティヴ ヘルス / ライツ (p.115 130) 家族論 家族関係論
日産婦誌58巻9号研修コーナー
Department of Obstetrics and Gynecology, Tokyo Medical University, Tokyo ( 表 1) Biophysicalprofilescoring(BPS) 項目 呼吸様運動 Fetalbreathingmovements (FBM) 大きい胎動 Grossbodymovements 胎児筋緊張 Fetaltone ノン ストレステスト
豊川市民病院 バースセンターのご案内 バースセンターとは 豊川市民病院にあるバースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という 両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 部屋は バストイレ付きの畳敷きの部屋で 産後はご家族で過ごすことができます 正常経過の妊婦さんを対
バースセンターはじめます! バースセンターって? バースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 正常経過の妊婦さんを対象に お母さん 赤ちゃん ご家族の意向に沿ったお産ができるよう助産師がサポートしていきます お産に医師の立ち会いや必要以上の医療行為はありませんが 途中で異常となった場合は すぐに産科医師が立ち会います 当院では
別表 4 刑事記録 ( 医学文献 医師法 21 条関連の文献を除く ) タイトル 作成者または供述者 備考 * 担当医の経歴 ( 医歴 ) が記載されている検乙 1 検乙 3 供述調書 ( 検面 ) 担当医 及び2は 刑事記録謄写 手続において非開示とさ れた 検乙 4 供述調書 ( 検面 ) 担当
タイトル作成者または供述者備考 判決書 福島地方裁判所刑事部裁判官 検甲 2 捜査関係事項照会書 検甲 3 捜査関係事項回答書 患者の死亡届 検甲 4 身上調査回答書 患者の戸籍謄本 検甲 5 鑑定嘱託書 検甲 6 鑑定書 杉野隆医師 検甲 14 捜索差押調書 検甲 16 捜査報告書 患者の入院記録 検甲 17 供述調書 ( 検面 ) 検甲 19 供述調書 ( 検面 ) 患者の夫 R 助産師 ( 外来の看護師
Microsoft PowerPoint - komatsu 2
Surgical Alternatives to Hysterectomy in the Management of Leiomyomas 子宮摘出術に代わる子宮筋腫の外科的選択肢 ACOG PRACTICE BULLETIN 2000 M6 31 番小松未生 子宮筋腫 女性の骨盤内腫瘍で最も頻度が高い 大部分は無症状 治療は子宮摘出術が一般的 挙児希望 子宮温存希望の女性も多い 治療法の選択肢は増えているが
補足 : 妊娠 21 週までの分娩は 流産 と呼び 救命は不可能です 妊娠 22 週 36 週までの分娩は 早産 となりますが 特に妊娠 26 週まで の早産では 赤ちゃんの未熟性が強く 注意を要します 2. 診断 どうなったら TTTS か? (1) 一絨毛膜性双胎であること (2) 羊水過多と羊
双胎間輸血症候群に対する治療 についての説明 1. はじめに双胎間輸血症候群 (Twin-twin transfusion syndrome:ttts) は双胎妊娠の中でも一絨毛膜双胎にのみ起こる病態です 胎盤を共有している一絨毛膜双胎ではそれぞれの胎児の血管が胎盤の中で複数つながっています ( 吻合血管 ) 複数の吻合血管を介して お互いの血液が両方の胎児の間を行ったり来たり流れています このバランスが崩れ血液の移動が一方向に偏ったときに
2009年8月17日
医師 2,000 人超の調査結果を多数掲載中です https://www.facebook.com/medpeer 2013 年 8 月 1 日 メドピア株式会社 マイコプラズマ感染症診断における迅速診断キットの使用状況 について 半数以上はキットを使用していない 医師約 6 万人が参加する医師専用サイト MedPeer ( メドピア https://medpeer.jp/) を運営するメドピア 株式会社
Microsoft PowerPoint - ★総合判定基準JABTS 25ver2ppt.ppt
2010/5/26 FAD C1 2 C3 C3 C4 C4 C4 C5 C3 C1 C3 C3 C3 C5 C4 C3 FAD C2 C2 FAD C3~C5 C2 C3 C C3 C2 C3 C1 C3 C1 C3 C1 C3 C2 C3 C2 C3 C2 乳癌検診におけるマンモグラフィと超音波検査の総合判定基準 ( 案 ) JABTS 検診班 背景 MMG と US 検診の要精査基準はすでに作成されている
資料1-1 HTLV-1母子感染対策事業における妊婦健康診査とフォローアップ等の状況について
HTLV-1 母子感染対策事業における妊婦健康診査とフォローアップ等の状況について 現在 HTLV-1 総合対策に基づいて 都道府県に HTLV-1 母子感染 対策協議会を設置し HTLV-1 母子感染予防対策について検討 いただいくよう通知しているところ HTLV-1 総合対策の取組から 3 年経過し 都道府県の取組の好 事例も出てきており 今後の体制整備 特に連携体制整備の 参考となると思われる項目や事例について調査した
針刺し切創発生時の対応
1. 初期対応 1) 発生直後の対応 (1) 曝露部位 ( 針刺し 切創等の経皮的創傷 粘膜 皮膚など ) を確認する (2) 曝露部位を直ちに洗浄する 1 創傷 粘膜 正常な皮膚 創傷のある皮膚 : 流水 石鹸で十分に洗浄する 2 口腔 : 大量の水でうがいする 3 眼 : 生理食塩水で十分に洗浄する (3) 曝露の程度 ( 深さ 体液注入量 直接接触量 皮膚の状態 ) を確認する (4) 原因鋭利器材の種類
モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の特性と
Epidermal growth factor receptor(egfr) p53 免疫染色を用いた尿細胞診の良悪性鑑別 総合病院土浦協同病院病理部 池田聡 背景膀胱や腎盂に出来る尿路上皮癌の頻度は近年増加している この尿路上皮癌の診断や経過観察において尿細胞診は最も重要な手段の 1 つである この検査は 患者への負担が小さく繰り返しの検査が容易であることから尿細胞診の診断価値は非常に高く 検査の頻度は年々増加している
<4D F736F F D204E AB38ED2976C90E096BE A8C9F8DB88A B7982D1928D88D38E968D >
Cooper Genomics 社 Serenity 検査について 検査概要 検査名称 :Serenity Basic / Serenty24 検査機関 :Cooper Genomics 社 ( イギリス ) 検査実施国 : イギリス検体 : 血液 10ml 検査対象 妊娠 10 週目以降 ( 採血時 ) で単胎または双胎妊娠の妊婦 Serenity Basic 検査項目 21 トリソミー ( ダウン症候群
ども これを用いて 患者さんが来たとき 例えば頭が痛いと言ったときに ではその頭痛の程度はどうかとか あるいは呼吸困難はどの程度かということから 5 段階で緊急度を判定するシステムになっています ポスター 3 ポスター -4 研究方法ですけれども 研究デザインは至ってシンプルです 導入した前後で比較
助成研究演題 - 平成 22 年度国内共同研究 ( 年齢制限なし ) JTAS 導入前後の看護師によるトリアージの変化 山勢博彰 ( やませひろあき ) 山口大学大学院医学系研究科教授 ポスター -1 テーマは JTAS 導入前後の看護師によるトリアージの変化 ということで 研究の背景は 救急医療ではコンビニ化ということが問題になっていて 真に緊急性が高い患者さんがなかなか効率よく受診できない あるいは診療まで流れないという問題があります
実地医家のための 甲状腺エコー検査マスター講座
このコンテンツは 頸動脈エコーを実施する際に描出される甲状腺エコー像について 甲状腺の疾患を見逃さないためのコツと観察ポイントを解説しています 1 甲状腺エコー検査の進め方の目次です 2 超音波画像の表示方法は 日本超音波学会によって決められたルールがあります 縦断像では画面の左側が被検者の頭側に 右が尾側になるように表示します 横断像は 被検者の尾側から見上げた形で 画面の左側が被検者の右側になるように表示します
7 1 2 7 1 15 1 2 (12 7 1 )15 6 42 21 17 15 21 26 16 22 20 20 16 27 14 23 8 19 4 12 6 23 86 / 230) 63 / 356 / 91 / 11.7 22 / 18.4 16 / 17 48 12 PTSD 57 9 97 23 13 20 2 25 2 12 5
平成6年2月1日 597 87 とか 看護婦や医療ソシアルワーカーによる面接で概 どの措置をとることなどが義務付けられている なお 要をチェックし それを基にして主治医が最も重要な これらの措置は法ないし規則の定めるところであり 問題点を確かめるのがよい その通知は文書の形で行われるのが望ましい 精神衛生問題や教育問題などの援助機関として利用 前記の学校の法的義務に対する責任は 当然学校に 可能なものを準備しておき
診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認
血液内科 ( 専門医取得コース ) 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認骨髄穿刺 腰椎穿刺など外来 講義 研究会発表 症例検討 教授回診骨髄採取手術 外来 17:00~ 17:30~ 移植カンファレンス カンファレンス 抄読会 骨髄スメア検鏡会
イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ
2012 年 12 月 13 日放送 第 111 回日本皮膚科学会総会 6 教育講演 26-3 皮膚病変におけるウイルス感染検査と読み方 川崎医科大学皮膚科 講師山本剛伸 はじめにウイルス性皮膚疾患は 臨床症状から視診のみで診断がつく例もありますが ウイルス感染検査が必要となる症例も日常多く遭遇します ウイルス感染検査法は多種類存在し それぞれに利点 欠点があります 今回は それぞれのウイルス感染検査について
体外受精についての同意書 ( 保管用 ) 卵管性 男性 免疫性 原因不明不妊のため 体外受精を施行します 体外受精の具体的な治療法については マニュアルをご参照ください 当施設での体外受精の妊娠率については別刷りの表をご参照ください 1) 現時点では体外受精により出生した児とそれ以外の児との先天異常
生殖補助医療に関する同意書 体外受精 顕微授精 受精卵の凍結保存 融解移植に際しては 下記の同意書 が必要です ご夫婦で署名捺印した上で提出してください 体外受精に関する同意書 ( 初回採卵に必要 ) 顕微授精に関する同意書 ( 初回採卵に必要 ) 受精卵凍結保存に関する同意書 ( 初回採卵に必要 ) 凍結受精卵融解胚移植に関する同意書 ( その都度必要 ) 同意書は 保管用 と 提出用 の 2 部からなります
ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ
2012 年 12 月 5 日放送 尿路感染症 産業医科大学泌尿器科学教授松本哲朗はじめに感染症の分野では 抗菌薬に対する耐性菌の話題が大きな問題点であり 耐性菌を増やさないための感染制御と適正な抗菌薬の使用が必要です 抗菌薬は 使用すれば必ず耐性菌が出現し 増加していきます 新規抗菌薬の開発と耐性菌の増加は 永遠に続く いたちごっこ でしょう しかし 近年 抗菌薬の開発は世界的に鈍化していますので
診療のガイドライン産科編2014(A4)/fujgs2014‐114(大扉)
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BMP7MS08_693.pdf
106 第IX章 写真 1 胆囊捻転症症例 1 重症胆囊炎) ab cd a. 術中写真 1 b. 術中写真 2 c. 腹部超音波検査 d. 浮遊胆囊 Gross の分類 写真 2 胆囊捻転症症例 2 重症胆囊炎) ab c a. CT 胆囊壁の肥厚と造影不良(A) 胆囊周囲液体貯留(B) b. MRI T 2強 調 像 に お け る pericholecystic high signal 矢 印
2. 診断 どうなったら TTTS か? 以下の基準を満たすと TTTS と診断します (1) 一絨毛膜性双胎であること (2) 羊水過多と羊水過少が同時に存在すること a) 羊水過多 :( 尿が多すぎる ) b) 羊水過少 :( 尿が作られない ) 参考 ; 重症度分類 (Quintero 分類
双胎間輸血症候群に対する治療 についての説明 1. はじめに双胎間輸血症候群 (Twin-twin transfusion syndrome:ttts) は双胎妊娠の中でも一絨毛膜双胎にのみ起こる病態です 一つの胎盤を共有している双胎 ( 一絨毛膜双胎 ) ではそれぞれの胎児の血管が胎盤の中で複数つながっています ( 吻合血管 ) この吻合血管を介して お互いの血液が両方の胎児の間を行ったり来たり流れています
介護福祉施設サービス
主治医意見書作成料等請求書記載方法等 主治医意見書作成料等請求書記載方法 主治医意見書の費用区分の例 主治医意見書記載に係る対価 区分における施設の定義 主治医意見書作成料等請求書記載方法 主治医意見書作成料等請求書 ( 以下 請求書 という ) の記載方法等については以下のとおりとする 基本的事項 請求書は 被保険者ごとに作成するものとし 意見書を作成した日の属する月分を 意見書を作成 した日の属する月の翌月
( 7 5) 虫垂粘液嚢胞腺癌の 1切除例 F g 5 H s t l g lf d g sshwdm s y s t d r m ( H E s t ) 考 型度粘液腫蕩で再発リスクが低い ) C I低異型度を示 察 す粘液産生腫蕩で 腫蕩成分を含む粘液が虫垂以外に 原発性虫垂癌は全大腸癌手術件数の 8 3 %で 大 存在する群(低異型度粘液腫蕩で再発リスクが高い ) 腸癌取扱い規約 却によると
控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し
平成 25 年 7 月 4 日判決言渡平成 25 年 ( 行コ ) 第 71 号不作為の違法確認請求控 訴事件 主 文 1 本件控訴を棄却する 2 控訴費用は控訴人の負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 厚生労働大臣が平成 22 年 4 月 15 日付けで控訴人に対してした被保険者期間を411 月, 年金額を179 万 4500 円とする老齢厚生年金支給処分を取り消す
習う ということで 教育を受ける側の 意味合いになると思います また 教育者とした場合 その構造は 義 ( 案 ) では この考え方に基づき 教える ことと学ぶことはダイナミックな相互作用 と捉えています 教育する 者 となると思います 看護学教育の定義を これに当てはめると 教授学習過程する者 と
2015 年 11 月 24 日 看護学教育の定義 ( 案 ) に対するパブリックコメントの提出意見と回答 看護学教育制度委員会 2011 年から検討を重ねてきました 看護学教育の定義 について 今年 3 月から 5 月にかけて パブリックコメントを実施し 5 件のご意見を頂きました ご協力いただき ありがとうござい ました 看護学教育制度委員会からの回答と修正した 看護学教育の定義 をお知らせ致します
α α α α α α α α αα α 滴同士が融合し 大きな脂肪滴を形成していた HFC16w では HFC12w と同程度の脂肪が沈着した 細胞だけでなく 線維に置換されていて脂肪沈着の みられない部位が出現していた 図 2H 3 肝臓のアミノ酸分析 1g あたりの肝臓中の総アミノ酸量は いずれの 飼育期間においても HFC 群が有意に低い結果と なった 表
Slide 1
資料 2 医療従事者不足に対応するため 病院としての魅力を高めるためには 医療従事者が新病院にとって誇りとやりがいをもって働ける環境を整備することが必要となります そのポイントは以下の 3 点です 医療従事者の勤務状況の改善 質の高い医療を一人ひとりの患者に提供できる体制整備 自らの医療技術水準を向上させる環境づくり 検討事項 ( 作業部会検討済み 今回の準備会議で法人としての意見をまとめます )
11総法不審第120号
答 申 審査請求人 ( 以下 請求人 という ) が提起した精神障害者保健 福祉手帳の障害等級認定に係る審査請求について 審査庁から諮問が あったので 次のとおり答申する 第 1 審査会の結論 本件審査請求は 棄却すべきである 第 2 審査請求の趣旨本件審査請求の趣旨は 東京都知事 ( 以下 処分庁 という ) が請求人に対し 発行年月日を平成 2 8 年 8 月 5 日として行った精神障害者保健福祉手帳
一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検
Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 6459 8. その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May. 2017 EGFR 遺伝子変異検査 ( 院内測定 ) c-erbb/egfr [tissues] 基本情報 8C051 c-erbb/egfr JLAC10 診療報酬 分析物 識別材料測定法
第 5 章管理職における男女部下育成の違い - 管理職へのアンケート調査及び若手男女社員へのアンケート調査より - 管理職へのインタビュー調査 ( 第 4 章 ) では 管理職は 仕事 目標の与え方について基本は男女同じだとしながらも 仕事に関わる外的環境 ( 深夜残業 業界特性 結婚 出産 ) 若
第 5 章管理職における男女部下育成の違い - 管理職へのアンケート調査及び若手男女社員へのアンケート調査より - 管理職へのインタビュー調査 ( 第 4 章 ) では 管理職は 仕事 目標の与え方について基本は男女同じだとしながらも 仕事に関わる外的環境 ( 深夜残業 業界特性 結婚 出産 ) 若手社員の仕事のやり方や仕事に対する取り組み方 管理職の部下への接し方において男女の違いがあると考える管理職は多く
Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx
薬物療法専門薬剤師の申請 及び症例サマリーに関する Q&A 注意 : 本 Q&A の番号は独立したものであり 医療薬学会 HP にある 薬物療法専門薬剤師制度の Q&A の番号と関連性はありません 薬物療法専門薬剤師認定制度の目的 幅広い領域の薬物療法 高い水準の知識 技術及び臨床能力を駆使 他の医療従事者と協働して薬物療法を実践 患者に最大限の利益をもたらす 国民の保健 医療 福祉に貢献することを目的
小児外科学 (-Pediatric Surgery-) Ⅰ 教育の基本方針小児外科は 子供 (16 歳未満 ) の一般外科と消化器外科を扱う科です 消化器 一般外科学並びに小児外科学に対する基礎医学から臨床にわたる幅広い知識をあらゆる診断 治療技術を習得し 高い技術力と探究心及び倫理観を兼ね備えた小
小児外科学 (-Pediatric Surgery-) Ⅰ 小児外科は 子供 (16 歳未満 ) の一般外科と消化器外科を扱う科です 消化器 一般外科学並びに小児外科学に対する基礎医学から臨床にわたる幅広い知識をあらゆる診断 治療技術を習得し 高い技術力と探究心及び倫理観を兼ねえた小児外科医の養成 Ⅱ 年次毎の 小児の外科的疾患の診断に必要な問診および身体診察を行うことができる 小児の外科的疾患の診断計画をたてることができる
2017年度患者さん満足度調査結果(入院)
2017 年度患者さん満足度調査結果 ( 入院 ) 質問項目 問 1. 入院されている方の性別とご年齢を教えてください問 2. 今回入院された診療科はどちらですか?( 主な診療科を1つチェックしてください ) 問 3. 入院中に受けた診療内容はどちらですか?( 当てはまる項目すべてにチェックしてください ) 問 4. 当院ヘのご入院は何回目ですか? 問 5. 職員の対応 ( 接遇 マナー ) についてはいかがでしたか?
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第 65 回 日本産科婦人科学会学術総会 専攻教育プログラム 産科手術 頸管縫縮術 帝王切開術 昭和大学 産婦人科学教室 総合周産期母子医療センター 下平和久 産科手術の特徴 母体と胎児に対して同時に麻酔を含む侵襲的処置を行う行為である 麻酔法の選択に注意 術中血圧の維持に注意 母体は 凝固系を含めて特殊な環境にある 術前の評価が重要 頸管縫縮術の術前管理と麻酔法の選択 頸管縫縮術の実際 頸管縫縮術の術後管理術後管理
本文/開催および演題募集のお知らせ
80 QOL QOL VAS Score MRI MRI MRI Ra Rb MRI 81 お 名 前 VAS VAS Score 82 奥ほか 症例 手術時間 出血量 食事開始日 術後入院期間 分 ml 日 日 平均 SD 9 備考 排尿障害 創部感染 図 直腸子宮内膜症症例の MRI ゼリー法によ る画像所見 図 当院で直腸子宮内膜症に対して直腸低位前方切 除術を施行した症例の内訳 子宮内膜症では
本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形
学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 坂本和陽 論文審査担当者 主査副査 宗田大星治 森田定雄 論文題目 An anatomic study of the structure and innervation of the pronator quadratus muscle ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 方形回内筋は浅頭と深頭に区別され, 各頭がそれぞれ固有の機能をもつと考えられている しかし,
年管管発 0928 第 6 号平成 27 年 9 月 28 日 日本年金機構年金給付業務部門担当理事殿 厚生労働省年金局事業管理課長 ( 公印省略 ) 障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて 厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令 ( 平成 2
年管管発 0928 第 6 号平成 27 年 9 月 28 日 日本年金機構年金給付業務部門担当理事殿 厚生労働省年金局事業管理課長 ( 公印省略 ) 障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて 厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令 ( 平成 27 年厚生労働省令第 144 号 ) が 平成 27 年 9 月 24 日に公布され 平成 27 年
33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or
33 NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 2015 年第 2 版 NCCN.org NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) の Lugano
桜町病院対応病名小分類別 診療科別 手術数 (2017/04/ /03/31) D12 D39 Ⅳ G64 女性生殖器の性状不詳又は不明の新生物 D48 その他及び部位不明の性状不詳又は不明の新生物 Ⅲ 総数 構成比 (%) 該当無し Ⅰ 感染症及び寄生虫症 Ⅱ 新生物 C54 子宮体部
D12 D39 Ⅳ G64 女性生殖器の性状不詳又は不明の新生物 D48 その他及び部位不明の性状不詳又は不明の新生物 Ⅲ 総数 構成比 (%) 該当無し Ⅰ 感染症及び寄生虫症 Ⅱ 新生物 C54 子宮体部の悪性新生物 結腸 直腸 肛門及び肛門管の良性新生物 D25 子宮平滑筋腫 D27 卵巣の良性新生物 血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害 内分泌 栄養及び代謝疾患 Ⅴ 精神及び行動の障害
がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な
各種がん 101 がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください なるべく早く受診しましょう 受診 受診のきっかけや 気になっていること 症状など 何でも担当医に伝えてください
セッション 6 / ホールセッション されてきました しかしながら これらの薬物療法の治療費が比較的高くなっていることから この薬物療法の臨床的有用性の評価 ( 臨床的に有用と評価されています ) とともに医療経済学的評価を受けることが必要ではないかと思いまして この医療経済学的評価を行うことを本研
助成研究演題 - 平成 22 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 加齢黄斑変性の治療の対費用効果の研究 柳靖雄 ( やなぎやすお ) 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科 視覚矯正科講師 ( 助成時 : 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科 視覚矯正科特任講師 ) スライド-1 まず始めに このような機会を与えていただきましたファイザーヘルスリサーチ振興財団の皆様と選考委員の先生方に感謝申し上げます
M波H波解説
M 波 H 波の解説第 3 版 平成 28 年 10 月 20 日 目白大学保健医療学部理学療法学科照井直人 無断引用 転載を禁ず 図 1. は 平成 24 年度の生理学実習のある班の結果である 様々な刺激強度の結果を重ね書き ( オーバー レイ ) してある 図 1. 記録例 図 2. にサンプルデータを示す 図 2. 刺激強度を変化させた時の誘発筋電図 刺激強度は上から 5.5 ma 6.5 ma
国土技術政策総合研究所研究資料
(Ⅰ) 一般的性状 損傷の特徴 1 / 11 コンクリート床版 ( 間詰めコンクリートを含む ) からコンクリート塊が抜け落ちることをいう 床版の場合には, 亀甲状のひびわれを伴うことが多い 間詰めコンクリートや張り出し部のコンクリートでは, 周囲に顕著なひびわれを伴うことなく鋼材間でコンクリート塊が抜け落ちることもある 写真番号 9.1.1 説明コンクリート床版が抜け落ちた例 写真番号 9.1.2
蘇生をしない指示(DNR)に関する指針
蘇生術を行わない (DNR) 指示に関する指針 008 年 月 0 日坂総合病院管理部 DNR(Do Not Resuscitate) とは 終末期状態の患者 ( 癌の末期 老衰 救命の可能性がない患者など ) で 心肺停止時に蘇生術を行わないことをいう DNR を医師が指示することを DNR 指示 という 本指針でいう心肺停止時の蘇生術とは 心臓マッサージ 電気的除細動 気管内挿管 人工呼吸器の装着
H 刑事施設が受刑者の弁護士との信書について検査したことにつき勧告
福弁平成 20 年 ( 人権 ) 第 2 号の 1 平成 22 年 5 月 31 日 福島刑務所 所長佐藤洋殿 福島県弁護士会 会長高橋金一 勧告書 当会は, 申立人 氏からの人権救済申立事件について, 当会人権擁護委員会の調査の結果, 貴所に対し, 下記のとおり勧告致します 記第 1 勧告の趣旨申立人が, 当会所属 弁護士に対して, 貴所の申立人に対する措置 処遇に関する相談の信書 ( 平成 20
3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴
専門研修プログラム整備基準項目 5 別紙 1 専門技能 ( 診療 検査 診断 処置 手術など ) 1 年目 1 患者及び家族との面接 : 面接によって情報を抽出し診断に結びつけるとともに 良好な治療関係を維持する 2. 診断と治療計画 : 精神 身体症状を的確に把握して診断し 適切な治療を選択するとともに 経過に応じて診断と治療を見直す 3. 疾患の概念と病態の理解 : 疾患の概念および病態を理解し
第4章妊娠期から育児期の父親の子育て 45
第 4 章 妊娠期から育児期の父親の子育て 酒井彩子 女性が妊娠 出産 子育てを体験する中で 母親として また妻として変化していく過程の一方で 男性は これらの体験を通じて 父親として また 夫として どのように変わっていくのだろうか 本章では 第 1 子を持つことによる父親の発達的変化を 父親の年齢 妊娠期の準備性 さらに就業時間との関わりなどから検討していきたいと思う 年齢グループ別による父親の比較父親となる年齢の違いは
1-A-01-胸部X線写真の読影.indd
A B normal variant Keats Atlas of normal Roentgen variants that may simulate disease 1973 1207 normal variant borderlands Borderlands of normal and early pathological findings in skeletal radiography 1910
2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります
2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にありますが 本邦の結核では高齢者結核が多いのが特徴です 結核診療における主な検査法を示します ( 図 1) 従来の細菌学的な抗酸菌の塗抹
配偶子凍結終了時 妊孕能温存施設より直接 妊孕能温存支援施設 ( がん治療施設 ) へ連絡がん治療担当医の先生へ妊孕能温存施設より妊孕能温存治療の終了報告 治療内容をご連絡します 次回がん治療の為の患者受診日が未定の場合は受診日を御指示下さい 原疾患治療期間中 妊孕能温存施設より患者の方々へ連絡 定
- がん治療を担当される妊孕性温存支援施設の医療者の方々へ - 患者が妊孕能温存を希望する時 適応の確認担当されている患者の妊孕能温存の適応を確認して下さい ( ホームページ内 男性の皆様へ 女性の皆様へ にあります男性 女性各々の化学療法および放射線療法の性腺毒性によるリスク分類を参照 ) 妊孕能温存施設への紹介 1. 妊孕能温存施設 ( 生殖医療施設 ) へ直接紹介することを希望する場合ホームページ内
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北勤医誌第 35巻 2013年 12月 1Y 2Y8M 図 1 ストーマの経時変化 直後から 2Y8M まで) こで低侵襲で 余剰腸管の切除とメッシュによ 術後経過 数日して腹痛を訴え CT をとった る補強とストーマ孔の拡大防止をストーマ孔か ところイレウスはないがストーマ孔に小腸が陥 らのアプローチで行なう術式を計画した 入していると診断し再手術を行った 前回腹腔 術式 2層メッシュComposix
人間ドック受診者アンケート報告書 ( 平成 29 年 06 月 27 日 ~ 平成 29 年 07 月 18 日実施 ) 共立蒲原総合病院健康診断センター
人間ドック受診者アンケート報告書 ( 平成 29 年 6 月 27 日 ~ 平成 29 年 7 月 18 日実施 ) 共立蒲原総合病院健康診断センター Ⅰ アンケート 1 アンケート概要 1-1 実施期間 対象受診者数 平成 29 年 6 月 27 日 ( 火 )~ 平成 29 年 7 月 18 日 ( 火 ) に共立蒲原総合病院健康診断センターにおいて人間ドックを受診した 34 名に対し アンケートを実施しました
がん登録実務について
平成 28 年度東京都がん登録説明会資料 2-1 がん登録届出実務について (1) 1. 届出対象 2. 届出候補見つけ出し 3. 診断日 4. 届出票の作成例示 東京都地域がん登録室 1 1. 届出対象 1 原発部位で届出 2 入院 外来を問わず 当該腫瘍に対して 自施設を初診し 診断あるいは治療の対象 ( 経過観察を含む ) となった腫瘍を届出 3 届出対象となった腫瘍を 1 腫瘍 1 届出の形で届出
子宮頸がん死亡数 国立がん研究センターがん対策情報センターHPより
子宮頸がん死亡数 国立がん研究センターがん対策情報センター HP より 2016 年 2,710 人 ( 全部位 153,201 人女性 ) 子宮頸がん罹患数 国立がん研究センターがん対策情報センター HP より 2013 年 10,520 人 ( 全部位 363,732 人女性 ) がん年齢階級別罹患率 (2013 年女性 ) 大腸 乳房 胃 40-44 歳 10 万人あたり 30.195 人 肺
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メ モ 目次 地域連携クリテイカルパスについて手帳の使い方定期検診の検査と必要性術後の注意患者さん基本情報診療計画表 役割分担表診療経過 ( 連携医情報 ) 診療経過 ( 専門病院情報 ) 2 3 4 5 6 8 12 32 ー 1 ー 地域連携クリテイカルパスについて 地域連携クリテイカルパスは がんの診断 治療 定期的な検査などの診療を 複数の医療機関 ( 専門病院と地域のかかりつけ連携診療所
Vol.52 2013夏号 最先端の腹腔鏡下手術を本格導入 東海中央病院では 平成25年1月から 胃癌 大腸癌に対する腹腔鏡下手術を本格導入しており 術後の合併症もなく 早期の退院が可能となっています 4月からは 内視鏡外科技術認定資格を有する 日比健志消化器外科部長が赴任し 通常の腹腔 鏡下手術に
とうかい Vol.52 公 立 学 校 共 済 組 合 東 海 中 央 病 院 各 務 原 市 須 衛 会 本 新 池 ( 稲 田 園 前 )です INDEX 表 紙 写 真 募 集 のお 知 らせ 過 去 のとうかいはこちらからご 覧 になれます http://www.tokaihp.jp/tokai/ Vol.52 2013夏号 最先端の腹腔鏡下手術を本格導入 東海中央病院では 平成25年1月から
化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典
報道機関各位 2013 年 6 月 19 日 日本神経科学学会 東北大学大学院医学系研究科 マウスの超音波発声に対する遺伝および環境要因の相互作用 : 父親の加齢や体外受精が自閉症のリスクとなるメカニズム解明への手がかり 概要 近年 先進国では自閉症の発症率の増加が社会的問題となっています これまでの疫学研究により 父親の高齢化や体外受精 (IVF) はその子供における自閉症の発症率を増大させることが報告されています
日産婦誌61巻4号研修コーナー
( 表 E-8-3)-(4)-1) 子宮頸癌取扱い規約組織分類 ( 日本産科婦人科学会, ほか編 : 子宮頸癌取扱い規約, 改訂第 2 版 1) より一部改変 ) ( 図 E-8-3)-(4)-1) 微小浸潤扁平上皮癌の計測 ( 日本産科婦人科学会, ほか編 : 子宮頸癌取扱い規約. 改訂第 2 版 1) ) 浸潤の深さと縦軸方向の広がりはいずれも組織標本上での計測により mm 単位で記載する.
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34 ビタミン主薬製剤 1 ビタミン A 主薬製剤 使用上の注意と記載条件 1. 次の人は服用前に医師又は薬剤師に相談することあ医師の治療を受けている人 い妊娠 3 ヵ月以内の妊婦, 妊娠していると思われる人又は妊娠を希望する人 ( 妊娠 3 ヵ月前から妊娠 3 ヵ月までの間にビタミン A を 1 日 10,000 国際単位以上摂取した妊婦から生まれた児に先天異常の割合が上昇したとの報告がある )
系統看護学講座 クイックリファレンス 2013年7月作成
母性看護学 母性看護学 目標 Ⅰ. 母性看護の概念および人間の性と生殖について基本的な理解を問う 大項目中項目小項目系統看護学講座の該当箇所 1 母性看護の概念 A 母性看護の主な概念 a 母性 父性 母性看護の概念 母性看護学 [1]( 母性看護学概論 ): 第 1 章 A 母性とは (p.2 12) 公衆衛生 : 第 5 章 C リプロダクティヴ ヘルス / ライツ (p.115 130) 家族論
博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文
博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文 目次 はじめに第一章診断横断的なメタ認知モデルに関する研究動向 1. 診断横断的な観点から心理的症状のメカニズムを検討する重要性 2 2. 反復思考 (RNT) 研究の歴史的経緯 4 3. RNT の高まりを予測することが期待されるメタ認知モデル
査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品
薬食機参発 0918 第 4 号薬食安発 0918 第 1 号 ( 別記 ) 殿 テムセル HS 注については 本日 造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病 を効能 効果又は性能として承認したところですが 本品については 治験症例が限られていること 重篤な不具合が発現するリスクがあることから その 使用に当たっての留意事項について 御了知いただくとともに 貴会会員への周知方よろしくお願いします なお
