研究成果報告書

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卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

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報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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石黒和博 1) なお酪酸はヒストンのアセチル化を誘導する一方 で tubulin alpha のアセチル化を誘導しなかった ( 図 1) マウスの脾臓から取り出した primary T cells でも酢酸 による tubulin alpha のアセチル化を観察できた これまで tubulin al

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論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 21 年 6 月 16 日現在研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :26~28 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) 好酸球性気道炎症における Th2 サイトカインと TLR3 受容体のクロストーク研究課題名 ( 英文 )

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法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 22 年 6 月 16 日現在 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :2008~2009 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) 心臓副交感神経の正常発生と分布に必須の因子に関する研究 研究課題名 ( 英文 )Researc

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2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

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ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

様式 C-19 科学研究費助成事業 ( 科学研究費補助金 ) 研究成果報告書 平成 25 年 6 月 8 日現在 機関番号 :32612 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :2009~2011 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) Reelin-Dab1 シグナルによる樹状

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著者 : 黒木喜美子 1, 三尾和弘 2, 高橋愛実 1, 松原永季 1, 笠井宣征 1, 間中幸絵 2, 吉川雅英 3, 浜田大三 4, 佐藤主税 5 1, 前仲勝実 ( 1 北海道大学大学院薬学研究院, 2 産総研 - 東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ, 3 東京大学大

センシンレンのエタノール抽出液による白血病細胞株での抗腫瘍効果の検討

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平成24年7月x日

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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

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共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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ブック2

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研究成果の概要 今回発表した研究では 独自に開発した B 細胞初代培養法 ( 誘導性胚中心様 B (igb) 細胞培養法 ; 野嶋ら, Nat. Commun. 2011) を用いて 膜型 IgE と他のクラスの抗原受容体を培養した B 細胞に発現させ それらの機能を比較しました その結果 他のクラ

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第一章自然免疫活性化物質による T 細胞機能の修飾に関する検討自然免疫は 感染の初期段階において重要な防御機構である 自然免疫を担当する細胞は パターン認識受容体 (Pattern Recognition Receptors:PRRs) を介して PAMPs の特異的な構造を検知する 機能性食品は

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様式F-19 記入例・作成上の注意

考えられている 一部の痒疹反応は, 長時間持続する蕁麻疹様の反応から始まり, 持続性の丘疹や結節を形成するに至る マウスでは IgE 存在下に抗原を投与すると, 即時型アレルギー反応, 遅発型アレルギー反応に引き続いて, 好塩基球依存性の第 3 相反応 (IgE-CAI: IgE-dependent

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様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 23 年 3 月 28 日現在 機関番号 :3714 研究種目 : 若手研究 研究期間 :28~21 課題番号 :279342 研究課題名 ( 和文 )Toll-like receptor 1 のリガンド探索および機能解析研究課題名 ( 英文 )Functional analysis of Toll-like receptor 1 研究代表者清水隆 (SHIMIZU TAKASHI) 久留米大学 医学部 助教研究者番号 :432155 研究成果の概要 ( 和文 ):TLR1 の機能を解析するために TLR1 を 293T 細胞に発現させた その結果 TLR1 はリポプロテインによる TLR2 を介した NF- B 誘導を阻害することが明らかとなった このことから TLR1 は TLR2 を競争的に阻害し 炎症を抑制することが示唆された Mycoplasma pneumoniae の接着が誘導する炎症誘導と TLR1 の関連を検討したが M. pneumoniae の接着による炎症誘導は TLR1 非依存的で ATP と P2X7receptor に依存的であった 研究成果の概要 ( 英文 ):TLR1 expression in 293T cells suppressed the activation of NF- B by lipoproteins through TLR2. This result indicates that TLR1 plays an important role to inhibit and control the inflammatory responses induced by TLR2. We examined the relationship between TLR1 and TLR2 independent inflammatory responses induced by cytoadherence of Mycoplasma pneumoniae. The induction of TLR2 independent inflammatory responses by cytoadherence of M. pneumonia was dependent of ATP and P2X7 receptor, but independent of TLR1. 交付決定額 ( 金額単位 : 円 ) 直接経費 間接経費 合計 28 年度 1,2, 36, 1,56, 29 年度 1,3, 39, 1,69, 21 年度 7, 21, 91, 年度年度総計 3,2, 96, 4,16, 研究分野 : 医歯薬学科研費の分科 細目 : 基礎医学 細菌学 ( 含真菌学 ) キーワード : 感染免疫 1. 研究開始当初の背景近年 Toll-like receptor (TLR) と呼ばれる一連の受容体ファミリーが 細菌の菌体成分を認識し 細胞を活性化することが報告され 注目を集めている これまでに TLR1 から TLR11 まで報告されており TLR のリガンドとしては LPS が TLR4 リポタンパク質が TLR1 2 6 ペプチドグリカンが TLR2 細 菌タンパク質が TLR5 11 DNA が TLR9 RNA が TLR3 7 8 を介して刺激を細胞に伝えることが知られている しかしながら TLR1 はマウスには存在しておらず ノックアウトマウスなどの作成が出来なかったことから ほとんど解析がなされず いまだにそのリガンドはわかっていない TLR1 は TLR2 の補受容体である TLR1 や TLR6 と相同

Relative luciferase activity Relative luciferase activity 性高く リポプロテインの認識に関与している可能性が考えられるが これまでにそのような報告はない 2. 研究の目的 TLR1 のリガンド及び機能解析することを目的とする 12 1 buffer FAM2 3. 研究の方法 TLR1 の機能は TLR1 及び TIR ドメインを欠損させた DN TLR1 を 293T 細胞に発現させることで検討した 炎症の誘導は NF- B の結合ドメインの下流にルシフェラーゼを結合させたレポーターベクターをトランスフェクトし ルシフェラーゼの活性を計測することにより検討した 炎症性サイトカインは ELISA 法により検討した 4. 研究成果 8 6 4 2 vector.1.5.1 TLR1-dTIR (mg/ml) TLR1 とリポプロテイン TLR1 はリポプロテインを認識する TLR1, 2, 6 に配列が近いことから TLR1 とリポプロテインの関連性をまず検討した TLR1 の全長を 293T 細胞に発現させ マイコプラズマ由来のリポプロテインの N 末端部分を含むリポペプチド (FAM2) で刺激したところ 炎症反応の誘導は見られなかった このことから TLR1 はリポプロテインの直接のレセプターではないことが示唆された TLR1 の TIR ドメインを欠損させたドミナントネガティブ (DN)TLR1 をリポプロテインのレセプターである TLR2 と共に 293T 細胞に発現させたところ TLR2 を介したリポプロテインによる炎症反応の誘導が抑えられた ( 図 1) このことから TLR1 は TLR2 の補受容体として機能していると考えられた TLR1 の発現が TLR2 を介したポプロテインの炎症誘導を促進するかを検討するために全長の TLR1 を TLR2 と共に 293T 細胞に発現させた 予想に反して全長の TLR1 の発現はリポプロテインによる炎症誘導を阻害した ( 図 2) このことから TLR1 は TLR2 のリポプロテイン認識を阻害することが示唆された 図 1. TLR2 を介した NF- B 誘導における DN TLR1 の影響 3 25 2 15 1 5 buffer FAM2.2.5.1 TLR1 (ug/ml) 図 2. TLR2 を介した NF- B 誘導における TLR1 の影響

IL-1 (pg/ml) TLR1 が TLR2 を介したリポプロテインによる炎症誘導を抑制するかどうかを確かめるために sirna や sirna 発現プラスミド導入によるノックダウンを試みた しかしながら THP-1 細胞において TLR1 をノックダウンするに至らなかった また またリポプロテインと TLR1 の結合を表面プラズモン共鳴センサーで測定するために FLAG タグをつけた TLR1 を発現させたが 解析に必要な十分な収量を得ることが出来なかった Mycoplasma pneumoniae の TLR2 非依存的な炎症誘導 Mycoplasma pneumoniae はヒトに肺炎を起こす細菌である 我々はこれまでに M. pneumoniae のリポプロテインが TLR2 を介して炎症を誘導することを報告してきた さらに我々は THP-1 細胞において熱処理で不活化した M. pneumoniae や接着機能を欠損させた変異株 (M5 M6) では野生株 (M129) の生菌に比べ TNF- や IL-1 などの炎症性サイトカインの産生が著しく減弱されることを見出した ( 図 3 4) 25 2 15 1 5 living heated 図 4. THP-1 細胞における生菌と接着変異体の TNF- 及び IL-1 の誘導 また 抗 TLR2 抗体存在下においても野生株の生菌は強い炎症を誘導するが 接着変異株はサイトカインの産生が抗体により完全に抑制されることが明らかとなった ( 図 5) このことから M. pneumoniae の接着などの生体反応が TLR2 非依存的に炎症を誘導することが示唆された 3 25 2 15 1 5 35 3 25 2 15 1 5 25 2.2.1.5 ODD 595.2.1.5 IgG ODD 595 anti-tlr2 mab PBS 15 living heated 1 5 35 3 25 PBS 2 15 1 4 35 IgG anti-tlr2 mab 5 3 25 PBS 2 図 3. THP-1 細胞における生菌と熱処理菌の TNF- 及び IL-1 の誘導 15 1 5 PBS 図 5. 抗 TLR2 抗体存在下における TNF- 及び IL-1 の誘導

ATP (nm) そこで我々はこの TLR2 非依存的な炎症誘導が TLR1 を介して起こっているかどうかを検討した 293T に全長の TLR1 を発現させ M. pneumoniae の生菌を換算させたが 炎症誘導は見られなかった このことからこの M. pneumoniae の炎症誘導は TLR1 非依存的に起こっていることが明らかとなった 我々はこの TLR2 非依存的な炎症誘導が ATP のレセプターである P2X7 レセプターの阻害剤である oxidized ATP によって阻害されることや 接着能を有した M. pneumoniae が ATP を強く誘導することを見出した ( 図 6 7) 8 7 6 5 4 3 2 1 PBS oatp PBS M129 M6 heat M129 heat M6 図 6. THP-1 細胞における IL-1 産生に対する oatp の影響 8 7 6 5 これらのことから M. pneumoniae の接着が宿主細胞から ATP を誘導し その ATP が P2X7 レセプターに結合することにより細胞内のタンパク質複合体である inflammasome が活性化され 炎症が誘導されることが示唆された 我々はこれらの結果をまとめて 211 年に immunology に投稿した 5. 主な発表論文等 ( 研究代表者 研究分担者及び連携研究者には下線 ) 雑誌論文 ( 計 1 件 ) 1. Shimizu T, Kida Y, Kuwano K Cytoadherence-dependent induction of inflammatory responses by Mycoplasma pneumoniae. Immunology. 211, in press 学会発表 ( 計 13 件 ) 1. 清水隆 木田豊 桑野剛一 Mycoplasma pneumoniae の接着に依存的な炎症誘導第 63 回細菌学会九州支部総会 21 年 9 月 3 日 2. 清水隆 三室仁美 Helicobacter pyliri の炎症誘導リポプロテインの同定第 5 回細菌学 若手コロッセウム 21 年 8 月 27 日 3. Shimizu T, Kida Y, Kuwano K Cytoadherence-dependent Induction of Inflammatory Responses by Mycoplasma pneumoniae 第 18 回国際マイコプラズマ学会 21 年 7 月 13 日 4 3 2 1 PBS M129 M6 M5 heated heated heated heated heated heated 4. 清水隆 木田豊 桑野剛一 Mycoplasma pneumoniae の接着に依存的な炎症誘導第 37 回日本マイコプラズマ学会 21 年 6 月 1 日 5. 清水隆 木田豊 桑野剛一 Mycoplasma pneumoniae の接着に依存的な炎症誘導第 83 回日本細菌学会総会 21 年 3 月 28 日 図 7. THP-1 細胞における ATP の産生 6. Shimizu T, Kida Y, Kuwano K

pathogenic mycoplasmas 第 4 回アジアマイコプラズマ学会 29 年 11 月 3 日 7. 清水隆 木田豊 桑野剛一 Mycoplasma pneumoniae の接着に依存的な炎症誘導第 4 回細菌学 若手コロッセウム 29 年 1 月 27 日 8. 清水隆 木田豊 桑野剛一炎症を誘導する病原性マイコプラズマのリポプロテイン第 62 回細菌学会九州支部総会 29 年 9 月 4 日 清水隆 (SHIMIZU TAKASHI) 久留米大学 医学部 助教研究者番号 :432155 (2) 研究分担者なし研究者番号 : (3) 連携研究者なし研究者番号 : 9. 清水隆 木田豊 桑野剛一接着に依存的な Mycoplasma pneumoniae の炎症誘導第 36 回日本マイコプラズマ学会 29 年 6 月 4 日 1. 清水隆 木田豊 桑野剛一 Mycoplasma genitalium 由来リポタンパク質による Toll-like receptor シグナルの活性化第 82 回日本細菌学会総会 29 年 3 月 12-13 日 11. Shimizu T, Kida Y, Kuwano K Mycoplasma pneumoniae 第 9 回日韓微生物シンポジウム 28 年 1 月 17 日 12. Shimizu T, Kida Y, Kuwano K Mycoplasma pneumoniae 第 17 回国際マイコプラズマ学会 28 年 7 月 8 日 13. 清水隆 木田豊 桑野剛一 Ureaplasma parvum 由来リポタンパク質による Toll-like receptor シグナルの活性化第 35 回日本マイコプラズマ学会 28 年 5 月 31 日 図書 ( 計 件 ) 産業財産権 出願状況 ( 計 件 ) 取得状況 ( 計 件 ) その他 なし 6. 研究組織 (1) 研究代表