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情報通信 コヒーレント光通信用 +18dBm 高出力波長可変レーザモジュール +18 dbm High-Power Tunable Laser Modules for Digital Coherent Optical Communication Systems 宮田 * 充宜 田中宏和 柴田雅央 Mitsuyoshi Miyata Hirokazu Tanaka Masao Shibata 岡良喜金子俊光河村浩充 Yoshiki Oka Toshimitsu Kaneko Hiromitsu Kawamura 情報通信量の急速な増大に伴い 長距離の幹線系ネットワークを中心に大容量伝送に有利なデジタルコヒーレント光通信技術が普及している 今後のメトロネットワークやデータセンター相互接続への展開に向けて 通信機器に高密度実装可能な小型で高出力の光源が要求されている 当社では独自のTDA-CSG-DRレーザを用いて業界標準仕様の小型波長可変レーザモジュールであるMicro-ITLAを開発し 業界トップの +18dBm 光出力を達成した With the rapid increase in communication traffic, digital coherent communication technology has spread, particularly for trunk networks. For the application of the technology to metropolitan area networks and data center interconnection, compact and high-power light sources that enable high-density mounting in communication units are required. We have developed a micro-integrable tunable laser assembly (Micro-ITLA) using a tunable distributed amplification chirped sampled grating distributed reflector (TDA-CSG-DR) laser that achieves the industry's highest output power of +18 dbm. キーワード : コヒーレント 波長可変 高出力 狭線幅 Micro-ITLA 1. 緒言スマートフォンやタブレット端末の普及 クラウドコンピューティングサービスの拡大など 様々な要因により情報通信量は増加の一途をたどっている 当社が開発した波長可変レーザモジュールは主にこれらの通信需要を支える基幹系光ネットワークに用いられる連続発振波長可変光源である 基幹系光ネットワークでは高密度波長分割多重方式 (DWDM) により10Gbit/s n λ (n λ ~90) の高速大容量通信が行われている 近年では更にデジタルコヒーレント方式により一波当たり200Gbit/sといった超高速通信が実用化されるようになった コヒーレント光通信は信号を光の伝播位相に重畳して行う方式の通信システムである 偏波および位相を同時に検出する方式のため伝送路分散に対する耐性が高く長距離伝送に適しているが 信号再生には信号光と同じ周波数を持つ局部光との光学干渉が必要であり 装置は複雑かつ大規模なものになる したがってコヒーレント光通信は従来 長距離での利用に限られていた 近年この通信方式がメトロネットワーク ( 伝送距離 :~ 600km) やデータセンター相互接続にも用いられようとしている このようなシステムでは通信装置の大きさや消費電力に対する要求が厳しく 光源モジュールにおいても小型化 低消電力化が求められている 2016 年 1 月には CFP2サイズのトランシーバであるCFP2-ACO 1 が業界 団体のOptical Internetworking Forum(OIF) 2 で標準化された (1) 筐体サイズは41.5 107.5 12.4mmであり 配置できる波長可変光源モジュールは実質的に1 台に限られる 光源からの光出力は送信および受信機能の両方に分岐して使用され 従来にも増して高い光出力が求められている このような背景の下 当社は +18dBm 光出力が可能で小型なMicro-ITLA (2) 規格の波長可変モジュールを開発し量産化に成功した 本稿ではその概要と特性について従来製品であるITLA (3) との比較を交えて紹介する 2. 製品仕様および開発目標表 1はOIFで標準化されている波長可変レーザモジュールの外形寸法および電源規格である Micro-ITLA 規格は従来のITLAと比較し面積で40% 未満 体積で30% 未満の外形寸法であり ( 図 1) 使用できる電源電圧もより低いものが設定されている レーザモジュール全体の小型化においては レーザデバイスのパッケージだけでなく回路基板の小型化も必要である 当社ではより小型で低背な部品を選定し 2 枚の基板に効率よく配置することで 従来と同等の機能を実現しつつ小型モジュールへの搭載を可能にした また駆動する素子の低電圧化によりOIF 準拠の低電圧駆動を実現している 表 2にMicro-ITLAとしての目標仕様を示す 光出力は 2016 年 7 月 S E I テクニカルレビュー 第 189 号 41

従来 +16dBm 程度で高出力とされてきたが 高機能化に従って増大する変調器での損失に対応し 送信光と局部発信光の光源を1 台で兼用するため 更に高い光出力が要求されている 当社では +18dBmを目標として開発を進めた 周波数安定度の指標である線幅は 100Gbit/s 以上のデジタルコヒーレント光通信に使用されるDP-16QAM 3 に要求される300kHzを目標とした 消費電力についても従来からの削減を目指し ケース温度 75 駆動 光出力 +18dBmにおいて4.5Wを目標とした 表 1 波長可変レーザモジュール要求仕様 項目 ITLA Micro-ITLA 単位 最大外形 74.0 30.5 10.5 45.0 20.0 7.5 mm 電源電圧 +3.3-5.2 +3.3-5.2( 当社不使用 ) +1.8 V (CSG-DBR) 領域とを光結合させた単共振器 ( シングルストライプ ) 型の構成となっている TDA-SG-DFBには利得を持つアクティブ導波路とパッシブ導波路が交互に配置されており 各導波路の下には部分回折格子を周期的に配置したサンプルドグレーティング (SG) が形成されている アクティブ導波路上部のLD 電極への電流注入により 利得スペクトル中には周期的な利得ピークが発生する CSG- DBRは周期的に間隔を変えたSGを持つDBRである ここで得られる周期的な反射ピークは緩やかな包絡線形状になり 帯域反射フィルタの機能を果たす 波長チューニングは利得部 反射器に設けたヒータによって それぞれの直下に設けた導波路の屈折率を制御することで行われる 光取り出し側にはさらに光増幅 / シャッター機能のため半導体光増幅器 (SOA) を集積し また反射部の後段にはパッケージ内での光散乱を防止するため後方光吸収領域 (BA) を設けている ITLA 図 1 Micro-ITLA 波長可変レーザモジュールのサイズ比較 図 2 TDA-CSG-DR レーザの構造 表 2 Micro-ITLAの開発目標仕様 項目 ITLA( 参考 ) Micro-ITLA 単位 光出力 +16 +18 dbm 有効線幅 500 300 khz 消費電力 5.3 4.5 W 温度範囲 -5~75 3. 波長可変レーザチップ今回用いたレーザチップはTunable Distributed Amplification - Chirped Sampled Grating - Distributed Reflector(TDA-CSG-DR) レーザと称する当社独自の波長可変レーザダイオードチップである (4) 図 2 にその断面模式図を示す レーザ共振器は利得部である Tunable Distributed Amplification - Sampled Grating - Distributed Feedback(TDA-SG-DFB) 領域と 反射部であるChirped Sampled-Grating - Distributed Bragg Reflector このチップの最大の特徴は高い光出力を容易に得ることができるという点である 通信用波長可変レーザには 当社のようにSOA 機能を集積するものがあるが 増幅器といえども利得は飽和するため 効率良く高光出力を得るにはSOAへの入射光強度自体を高める必要がある 当社チップが採用するTDA 構造は CSG-DBRで反射された光を増幅して理想的にSOA 入射端まで導入することができ 優れた光取り出し能力を実現している また 利得部と反射部とを合わせたレーザ共振器長は約 2mmと長く コヒーレント通信光源として重要な低位相雑音特性 ( 狭線幅特性 ) にも有利な構造となっている 消費電力面では ヒータの熱広がりを抑制する工夫を与え チップ全体で最大 0.5W 以下のヒータ消費電力に抑えている 3-1 基本的な波長選択原理図 3は 本チップの利得部で発生する利得モード 反射部分で発生する反射モードおよび結果的に得られる発振波長を示している 利得部と反射部は 互いのモード波長間 42 コヒーレント光通信用 +18dBm 高出力波長可変レーザモジュール

隔が僅かに異なるよう部分回折格子の間隔長 L(=セグメント長 ) が設計されており レーザ発振はこれらのモードが一致する波長で生じる ( 図 3(a)) Intensity (db) (a) CSG-DBR reflection TDA-SG-DFB gain Oscillation (b) (c) この問題を解決するため 我々は通常一定のセグメント長で構成されるSG-DBRに修正を加えた 具体的には 反射部を3つの異なる長さ (L, L+ΔL, L-ΔL) のセグメントで構成し それぞれ独立したヒータ制御を行うものとした セグメント長が一定の間隔で変調されたこのSG-DBRを我々はChirped SG-DBR(CSG-DBR) と呼んでいる 図 4にCSG-DBRを構成する3ヒータの投入電力を変化させて得られるCSG-DBRの反射スペクトルと発振波長を示す 適切な駆動条件を与えることでCSG-DBRの選択波長を広範囲に振ることができ バーニア効果の生ずる波長域を大きく動かすことができる この結果 Cバンド全域をカバーすることが可能となった Oscillation CSG-DBR reflection 図 3 1540 1545 1550 1555 1560 Wavelength (nm) 反射部ヒータの投入電力を変化させた場合の各機能の振る舞い Intensity (db) 図 3(b),(c) はこの状態から反射部の位相調整ヒータに僅かな電力を加えた場合の振る舞いである 反射部側の波長モードを僅かにシフトさせることで 合致する波長を利得部の隣のモードにジャンプさせることができる このように僅かな位相制御で発振波長を大きく変える手段は一般に バーニア効果 と呼ばれ 市販される殆どの単共振器型波長可変レーザが採用する機構である 得られる波長は利得部のモード波長に限られるが 同時に利得部のヒータを制御し利得モードもシフトさせれば任意の波長にチューニングが可能である 3-2 CSG-DBRによるフルバンド化 DWDMで主に使われるCバンド ( 波長 :1530-1565 nm) は40nm 弱の波長幅を持つ波長帯であるが 前述のバーニア効果のみでは20nm 程度の可変幅しか得られず 40nmの必要可変幅を得ることができない これは反射型のバーニア効果で得られる可変幅は一般にモード波長間隔の9 倍程度であることに由来する 要求仕様を満たすには 5nm 程度の広いモード間隔が必要であるが これを得るには計算上 70µm 以下の短いセグメント長が必要である ( モード波長間隔はセグメント長に反比例する ) 仮に 30µmの位相調整長を用いた場合 ヒータを配置する領域も短くなるためヒータ温度は最大 300 にも達し 現実的でない 1520 1540 1560 1580 Wavelength (nm) 図 4 CSG-DBR 反射特性と発振波長 4. 特性 4-1 周波数可変特性および光出力今回開発したMicro-ITLAの周波数可変特性を図 5に示す レーザパッケージ内に構成した周波数ロッカー機構により自動周波数制御 (AFC) をおこなうことでケース温度 -5~75 の範囲において +/-0.5GHz 以下の良好な周波数安定性を実現している 図 6に光出力特性を示す 光出力モニタによる自動出力制御 (APC) をおこなうことで +/-0.5dB 以下の良好な光出力安定性を実現している 図 7に消費電力特性を示す 従来よりも低い4.5Wを実現していることを確認した TDA-CSG-DR レーザでは 従来はレーザ温度変化で実現していた発振波長の微調整を 2016 年 7 月 S E I テクニカルレビュー 第 189 号 43

TDA-SG-DFB 部の位相調整で実現しているため レーザ温 度をほぼ一定に保つことができ低消費電力を実現している 2.0 Tc= -5degC 1.0 0.0-1.0-2.0 Frequency accuracy (GHz) レンス光源として使用し Micro-ITLAの出力とICR 内で干渉させている ICRからの電気出力を直接リアルタイムオシロスコープで観測し 瞬時的な周波数揺らぎを有効線幅の算出に利用している 図 9に示すような300kHz 以下の良好な有効線幅特性を確認できた Micro -ITLA Ref. ATT -20dB 図 8 Signal Local ICR In-phase Quadrature ICR を用いた有効線幅測定系の構成 Real-time Oscilloscope Optical power (dbm) 図 5 周波数可変特性 20.0 19.5 Tc= -5degC 19.0 18.5 18.0 17.5 17.0 16.5 16.0 Spectral linewidth (khz) 500 400 300 200 100 Tc=+25degC 0 図 9 有効線幅特性 図 6 光出力特性 Power dissipation (W) 8.0 7.0 Tc=-5degC 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 5. 結言デジタルコヒーレント光通信用の通信機器に高密度実装可能な小型の波長可変光源としてMicro-ITLAを開発した 新開発のレーザチップを用いることで低消費電力を実現しつつ業界トップの +18dBm 光出力を達成した 合わせて100Gbit/s 以上の大容量通信に必要とされる300kHz 以下の有効線幅も実現した 今後更に加速する情報通信量の増加に応えられるキーデバイスとなることを期待する 図 7 消費電力特性 4-2 有効線幅 Micro-ITLAの線幅はコヒーレントレシーバ (ICR) でのコヒーレント検波方式を用いて評価した 測定系の構成を図 8に示す 線幅 20kHz 以下の外部共振器レーザをリファ 44 コヒーレント光通信用 +18dBm 高出力波長可変レーザモジュール

用語集ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 1 CFP2-ACO CFP2 Analog Coherent Optics: コヒーレント通信機能を有するCFP2サイズのトランシーバで 電気信号のデジタル処理を受け持つデジタルシグナルプロセッサ (DSP) を搭載しないもの 2 Optical Internetworking Forum(OIF) 光ネットワーク技術の業界団体で 標準化を行う機関 執筆者ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー * 宮田充宜 : 住友電工デバイス イノベーション 光部品事業部 田中 宏和 : 住友電工デバイス イノベーション 光部品事業部 3 DP-16QAM Dual-Polarization - 16 Quadrature Amplitude Modulation: QAMは直交振幅変調 16-QAMは90 間隔でずれた4 位相に加え 2つの振幅を組み合わせることで 一度に16 値すなわち4bitの情報を伝送する通信方式 DP-16QAM は更に直交する二偏波を用いる (DP) ことで同時に2つの 16-QAM 信号 計 8bitの情報を伝送する通信方式 柴田 岡 雅央 : 住友電工デバイス イノベーション 光部品事業部マネージャー 良喜 : 住友電工デバイス イノベーション 光部品事業部 金子俊光 : 伝送デバイス研究所主席 参考文献 (1) OIF-CFP2-ACO-01.0, Implementation Agreement for CFP2- Analogue Coherent Optics Module (2) OIF-Micro-ITLA-01.1, Micro Integrable Tunable Laser Assembly Implementation Agreement (3) OIF-ITLA-MSA-01.3, Integrable Tunable Laser Assembly Multi Source Agreement (4) T. Kaneko, Y. Yamauchi, K. Uesaka, and H. Shoji, A Single-Stripe Tunable Laser Operated at Constant Temperature Using Thermo- Optic Effect, Microoptics Conference (MOC), G-2 (2011) 河村 浩充 : 住友電工デバイス イノベーション 光部品事業部課長 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------- * 主執筆者 2016 年 7 月 S E I テクニカルレビュー 第 189 号 45