た回路で表すことができる このときの合成した塗膜インピーダンスは式 () で表すことができる Z = + Rx j ( 2π f Cx) () ここで,Z: 塗膜インピーダンス,Rx: 抵抗成分, j: 虚数,f: 周波数,Cx: 容量成分である 塗膜インピーダンスの測定は, 塗膜劣化診断システム

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交流インピーダンス測定による鉄鋼面塗装材の劣化予測 久保田浩 * 髙橋愛枝 * 光木史朗 *2 木場将雄 *3 山本知弘 *3 *4 中尾正純 Keywords : steel painting materials, deterioration prediction, impedance, visual evaluation, accelerated corrosion test 鉄鋼面塗装材, 劣化予測, 交流インピーダンス, 目視評価, 促進腐食試験. はじめに鉄骨造建築物の構造部材の耐用年数については, 表面に防食処理が施されていない部材の耐用年数と, 塗膜の耐用年数の和により推定する方法 ) があるが, これは劣化に係る幾つかの係数の組合せによるものである また, 目視による劣化度の評価では, 定量的な診断が難しく, 診断結果に専門家の判断が必要でかつ個人差が出やすい より実態に即した推定を行うためには, 実測に基づく評価手法が望まれる 本報では, 屋内の鉄鋼面塗装材の劣化予測のための実測に基づく評価手法として, 交流インピーダンス測定を取り上げた そして, 各種塗装材による促進腐食試験を実施 2) し, 交流インピーダンス測定結果を用いて劣化予測を実施し, 目視評価と比較した さらに, 現地調査を行い, 交流インピーダンス測定の現場への 2) 適用性について検討した結果を報告する 記号 E F U S 表 塗装仕様 Table Paint system 塗料 膜厚 製造 下塗り 中塗り 上塗り (μm) 所 エポキシ樹脂エポキシ樹脂 塗料塗料 75 a エポキシ樹脂エポキシ樹脂 塗料塗料 75 b エポキシ樹脂フェノール変性エホ 塗料キシ樹脂塗料 75 c 弱溶剤系変性エ弱溶剤系ホ リウ弱溶剤系ホ リウホ キシ樹脂塗料レタン樹脂塗料レタン樹脂塗料 0 a 変性エホ キシ樹弱溶剤系ホ リウ弱溶剤系ホ リウ脂塗料レタン樹脂塗料レタン樹脂塗料 0 d 亜酸化鉛さび合成樹脂調合合成樹脂調合止めヘ イントヘ イントヘ イント 25 a 鉛丹さび止め合成樹脂調合合成樹脂調合ヘ イントヘ イントヘ イント 25 b シアナミト 鉛さび合成樹脂調合合成樹脂調合止めヘ イントヘ イントヘ イント 90 a 2. 促進腐食試験 2. 供試材料および試験体促進腐食試験を実施した塗装仕様を表 に示す 屋内の鉄鋼面の使用例として, エポキシ樹脂塗料 2 仕様, フェノール樹脂塗料 仕様, 弱溶剤系ポリウレタン樹脂塗料 2 仕様, 合成樹脂調合ペイント3 仕様の合計 8 仕様を選定した 試験体は,50 70 0.8mm の一般用冷間圧延鋼板 (JIS G 34 に規定されている SPCCSB) を用い, 溶剤拭きし, さびが発生している場合は研磨紙 P280 で除去した後, 製造所の標準塗装仕様でエアレススプレー * 技術センター建築技術研究所建築構工法研究室 *2 原子力本部原子力技術第一部 *3 関西電力 ( 株 ) *4 ( 株 ) 環境総合テクノス で塗装した 塗装後 7 日間養生し, 促進耐候性試験機 ( キセノンランプ式 ) で 60 時間照射した試験片を試験体とした 試験体数は 仕様につき3 体とした 2.2 試験方法複合サイクル試験機 (QPanel Lab Products 社製 Q Fog) を用いて, サイクル腐食試験方法 (JIS K 56007 9) の附属書 に規定されている, 塩水噴霧, 湿潤, 乾燥を繰り返すサイクル D で 445 サイクルまで腐食試験を実施した 途中,35,75,5,240,360,480, 720,840,,080,200,320 サイクルで試験体を取り出し, 水洗した後に劣化評価を実施した 2.3 劣化評価 2.3. 交流インピーダンス測定塗膜を電気的にみると, 塗膜の表面と下地金属の間が抵抗成分 (Rx) と容量成分 (Cx) で並列に接続され 7

た回路で表すことができる このときの合成した塗膜インピーダンスは式 () で表すことができる Z = + Rx j ( 2π f Cx) () ここで,Z: 塗膜インピーダンス,Rx: 抵抗成分, j: 虚数,f: 周波数,Cx: 容量成分である 塗膜インピーダンスの測定は, 塗膜劣化診断システム ( 東芝 IT コントロールシステム社製 TOMAC, 写真 ) を用い,0.Hz における膜厚補正インピーダンスを求めた 劣化の評価は, 表 2に示すとおり, 同システムの基準に従って行った 手順としては, 電磁誘電式膜厚計 ( ケット科学研究所社製 LE300) で塗膜厚を測定した後, 電解液 (3% 食塩水に増粘剤を加えた溶液 ) に浸したスポンジをダミープローブにセットし, 塗膜表面にダミープローブを設置して 時間後に, 塗膜劣化診断システムで交流インピーダンス測定を実施した 測定は各試験体で上下 2 点ずつ測定し,6 点の平均値を求めた 2.3.2 目視評価さび, 膨れ, 割れ, はがれについて目視観察による評価を実施した この時, 試験体の周辺 0mm 以内の塗膜は評価の対象外とし, さび汁による汚れも評価の対象外とした 評価は,( 財 ) 日本塗料検査協会 塗膜の評価基準 2003 に従って6 段階で評価した 2.4 試験結果および考察 2.4. 交流インピーダンス測定インピーダンス測定結果を図 に示す S は全体に膨れが発生し, はさびの面積が多くなったため, サイクルの途中で交流インピーダンスは測定不可となった インピーダンス測定結果を表 2に従い評価すると, S と が測定可能であったサイクルまででであり, その他の試験体はいずれも健全レベルであった 健全レベルの試験体もインピーダンス値は徐々に低下する傾向にある 2.4.2 目視評価目視評価結果を表 3に, 最終サイクル後の状況を写真 2に示す さびは全ての仕様で発生が認められており,445 サイクルで のさびは評価 4 と発生が著しく, 他の試験体は評価 ~2であった 膨れは U,,S,, で発生が認められた U,, の膨れは評価 であり,~2 箇所で認められた S, の膨れは評価 4かつ大きさ5であり, 発生が著しかった 割れは S,, で発生が認められたが, い インピーダンス測定補正値 ( Ωcm) 図 塗膜の等価回路 Fig. Equivalent circuit of paint film 写真 塗膜劣化診断システム (TOMAC) Picture Paint film degradation analysis system(tomac) 表 2 劣化の評価基準 Table 2 Standard evaluation of degradation 劣化度 インピーダンス測定値 (Ωcm) 健全レベル.0 0 0 超.0 0 9 ~.0 0 0.0 0 9 未満.E+3.E+2.E+.E+0.E+09.E+08 0 500 000 500 図 インピーダンス測定結果 Fig. Test result of impedance E F U S 72

ずれも評価 である はがれは,S,, で発生が認められた のはがれは評価 4と著しく, 他は一部の試験体 () で評価 3はあるが, ほとんどが評価 ~2であった さび, 膨れ, 割れ, はがれの評価結果から, 劣化が著しく進行しているのは,S と であった 写真 2 最終サイクル後の状況 ( 左 :S, 右 :) Picture 2 Last condition of test piece 2.5 まとめ促進腐食試験結果のまとめを以下に示す 交流インピーダンス測定結果から健全レベルとが認められ, 健全レベルでも値は徐々に低下する傾向にあり,S と はに達していることが確認された 2 目視評価結果から全ての仕様でさびが認められ, いくつかの仕様で膨れ, 割れ, はがれが認められた 特に劣化が著しいのは S と であった 3. 塗膜の劣化予測 3. 劣化予測手法促進腐食試験で交流インピーダンス測定結果の単回帰分析より得た回帰式から, に達するを求めた また, 目視評価結果より, 塗り替え時期のを求めた ここでは, 施工が安価である3 種 C ケレンの素地調整で施工可能な程度の劣化を塗り替え時期と仮定した 3 種 C ケレンのさび面積は, 日本道路協会 鋼道路橋塗装 防食便覧 では5% 以下と記述されている 5% を 塗膜の評価基準 2003 のさび面積に当てはめると評価 4(3~20%) である しかし, 評価 4だと 20% までが許容されてしまうこと, 評価後にすぐに塗り替えを実施しなければならなくなるため, 表 3 目視評価結果 Table 3 Evaluation result of watching さび 膨れ 割れ はがれ 記号 発生サイ最終サイ発生サイ最終サイ発生サイ最終サイ発生サイ最終サイ クル数 クル評価 クル数 クル評価クル数クル評価 クル数 クル評価 75 2 0 0 0 E 2 35 2 0 0 0 3 75 2 0 0 0 75 2 0 0 0 2 35 2 0 0 0 3 75 2 0 0 0 35 0 0 0 F 2 75 2 0 0 0 3 75 2 0 0 0 75 2 200 (5) 0 0 U 2 75 2 080 (5) 0 0 3 35 2 (5) 0 0 35 2 445 (5) 0 0 2 35 2 445 (3) 0 080 3 35 2 0 0 080 35 2 720 4(5) 720 A 200 2 S 2 35 720 4(5) 720 A 720 2 3 35 840 4(5) 720 A 200 75 0 0 0 2 35 2 080 (5) 200 A 080 3 35 (5) 080 A 200 3 35 4 360 3(5) 320 A 720 4 2 35 4 360 3(5) 840 A 480 4 3 35 4 360 4(5) 840 A 480 4 () 内は大きさ は発生なし評価 5 が最も状態が悪い 表 4 単回帰分析の結果および劣化予測結果 Table 4 Result of single regression analysis and predict the degradation 記 号 回帰式 y=ax+b 相関 係数 r 劣化レヘ ルに達した ( 塗り替え時期 ) 交流インヒ ータ ンス 目視 * 評価 E y=.08 0 +8 x+.79 0 + 0.70 654 y=.7 0 +8 x+.78 0 + 0.788 507 F y=6.6 0 +7 x+.8 0 + 0.738 774 U y=.66 0 +8 x+2.5 0 + 0.747 508 y=.53 0 +8 x+2.66 0 + 0.858 734 S y=2.22 0 +8 x+.95 0 + 0.93 874 y=9.86 0 +7 x+.88 0 + 0.650 898 y=2.3 0 +8 x+.82 0 + 0.77 854 3 840 *:は 445 サイクルでさびの発生がほとんどないことを示している 2 3 2 840 080 73

ここでは評価 3(0.6~3%) を基準とすることとした これより, さびは評価 3を塗り替え時期と仮定した 膨れ, 割れ, はがれも同様に評価 3を塗り替え時期と仮定した 以上のことから, 目視評価結果のを求め, 交流インピーダンス測定結果より求めた回帰式からに達したを計算した結果と比較検討した 3.2 劣化予測結果交流インピーダンス測定結果を単回帰分析した結果を表 4および図2~3に, に達したを表 4に示す 以外は相関係数が絶対値で 0.7 以上であり, 負の相関性が高いことが分かった 交流インピーダンス測定でに達したと目視評価による塗り替え時期を比較すると, まで達していたのは S と しかないが, 概ね整合していることが分かった したがって, 経年での交流インピーダンス測定を実施することにより, 塗膜の劣化時期を定量的に予測することは可能であると考える 3.3 まとめ交流インピーダンス測定結果から単回帰分析した結果の塗膜がに達したと設定した目視評価による塗り替え時期は概ね整合していた 劣化予測結果から, 交流インピーダンス測定を経時的に実施することにより定量的な塗膜寿命の予測が可能であることが分かった 4. 現地調査 インピーダンス測定補正値 (Ωcm) インピーダンス測定補正値 (Ωcm).E+2.E+.E+0.E+09.E+08 0 500 000 500 2000.E+2.E+.E+0.E+09 図 2 単回帰分析の結果 ( 代表例 ) Fig.2 Result of single regression analysis S S 図 3 単回帰分析の結果 ( 回帰式のみ ) Fig.3 Result of single regression analysis 測定結果予測結果.E+08 0 500 000 500 2000 E F U S 4. 調査箇所築 35 年の発電所で現地調査を実施した 現地調査箇所を表 5に示す 調査は, 平成 20 年 6 月に, 発電所施設のうち A 建屋 5 箇所および B 建屋 5 箇所の計 0 箇所について実施した 部位は柱, 梁, ブレースとし, 塗り替えありとなしの部分で実施した 4.2 調査方法 4.2. 交流インピーダンス測定促進腐食試験と同様に, 塗膜劣化診断システムで, 交流インピーダンス測定を実施した 測定は, 箇所に付き 3 点の測定を実施した 4.2.2 目視評価さび, 膨れ, 割れ, はがれについて目視評価した 表 5 現地調査箇所 Table 5 Place of field investigation 記号構造物部位塗り替え A 建屋柱あり 2 柱 3 柱 4 梁 5 ブレースなし 6 B 建屋ブレース 7 ブレースあり 8 ブレースなし 9 柱あり 0 ブレースなし 74

評価は, 前報と同じく,( 財 ) 日本塗料検査協会 塗膜の評価基準 2003 によるものとした 4.3 調査結果 4.3. 交流インピーダンス測定交流インピーダンス測定結果を表 6に示す 交流インピーダンス測定結果から, 塗り替えありの部分は A 建屋 4を除いて全て健全レベルで, 塗り替えなし部分は全てと診断された 4.3.2 目視評価目視評価の結果を表 7に示す 目視評価結果から, 塗膜は全般的には健全であった 微小なはがれが認められるが, ほとんどが物をぶつけたと考えられるはがれであった 微小なさびが認められる箇所はいずれも塗り替えが実施されていなかった 4.4 まとめ調査結果から, 実環境においても交流インピーダンス測定による劣化評価ができることから, 現場適用が可能であることが分かった ただし, この劣化の評価は, 塗膜劣化診断システムの基準に従ったものであるため, 実態に即したものに改める必要がある 5. おわりに実環境における鉄鋼面塗装材の交流インピーダンス測定を経時的に実施することにより, 塗膜の劣化時期について, より合理的な評価を行うことができると考える 謝辞本研究は, 関西電力 ( 株 ) からの委託研究である発電所の塗装材料の劣化評価に関する研究の内, 鉄骨構造物の塗装材の劣化評価手法の検討の一部をまとめたものである 関西電力 ( 株 ) と環境総合テクノス ( 株 ) の関係各位に謝意を表します A建屋表 6 交流インピーダンスの結果 Table 6 Test result of impedanc 調査箇所 インヒ ータ ンス測定補正平均値 (Ωcm) 劣化度.0E+ 健全レベル 4 7.20E+09 2.52E+ 健全レベル 3.7E+ 健全レベル B建屋9 7.93E+0 健全レベル 5.00E+0 6 4.4E+09 7.62E+ 健全レベル 8 2.52E+09 0 2.43E+09 調査箇所 表 7 目視評価結果 Table 7 Estimation result of watching 目視さび膨れ割れはがれ 触診 0 0 0 白亜化なし 4 0 0 0 2 0 0 0 3 0 0 0 2 B建屋9 0 0 0 2 5 0 0 2 6 0 0 触診不可 7 0 0 0 8 0 0 0 0 0 0 0 参考文献 ) 建築物の耐久計画に関する考え方 : 日本建築学会 2) 山本知弘, 木場将雄, 中尾正純, 久保田浩, 髙橋愛枝, 光木史朗 : 交流インピーダンス測定による鉄鋼面塗装材の劣化予測その 促進腐食試験におけるインピーダンス測定結果, 日本建築学会大会学術講演梗概集 200.9 3) 久保田浩, 髙橋愛枝, 光木史朗, 中尾正純, 木場将雄, 山本知弘 : 交流インピーダンス測定による鉄鋼面塗装材の劣化予測その 2 塗膜の劣化予測と現地調査結果, 日本建築学会大会学術講演梗概集 200.9 75