研究成果報告書

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

研究成果報告書

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

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平成 28 年 2 月 1 日 膠芽腫に対する新たな治療法の開発 ポドプラニンに対するキメラ遺伝子改変 T 細胞受容体 T 細胞療法 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 脳神経外科学の夏目敦至 ( なつめあつし ) 准教授 及び東北大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 下瀬川徹

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

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角田, 中村, 櫻田, 松田, 佐藤, 嘉山 Ⅰ. 緒言神経膠腫は全脳腫瘍の約 4 分の1を占める代表的な悪性脳腫瘍である 病理組織所見と臨床悪性度 ( 予後 ) の両者を併せた総合的な悪性度の分類としてWHO 分類が最も一般的に用いられており グレードⅠからⅣまでの4 段階に分けられている グレー

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

学位論文内容の要旨 Abstract Background This study was aimed to evaluate the expression of T-LAK cell originated protein kinase (TOPK) in the cultured glioma ce

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

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法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 22 年 6 月 16 日現在 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :2008~2009 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) 心臓副交感神経の正常発生と分布に必須の因子に関する研究 研究課題名 ( 英文 )Researc

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

博士学位申請論文内容の要旨

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名古屋教育記者会各社御中本リリースは文部科学記者会 科学記者会 宮城県政記者会 名古屋教育記者会各社に配布しております 膠芽腫に対する新たな治療法の開発 ポドプラニンに対するキメラ遺伝子改変 T 細胞受容体 T 細胞療法 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 脳神経外科学の夏目敦

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

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かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

革新的がん治療薬の実用化を目指した非臨床研究 ( 厚生労働科学研究 ) に採択 大学院医歯学総合研究科遺伝子治療 再生医学分野の小戝健一郎教授の 難治癌を標的治療できる完全オリジナルのウイルス遺伝子医薬の実用化のための前臨床研究 が 平成 24 年度の厚生労働科学研究費補助金 ( 難病 がん等の疾患

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

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大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 神谷綾子 論文審査担当者 主査北川昌伸副査田中真二 石川俊平 論文題目 Prognostic value of tropomyosin-related kinases A, B, and C in gastric cancer ( 論文内容の要旨 ) < 要旨

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析



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マウス脳内に形成された U87MG ヒトグリオーマや Neuro2a マウス神経芽細胞腫に対し それぞれ 1 x 10 6 pfu 単回および 2 x 10 5 pfu 2 回の腫瘍内投与を行うと G47 は G207 に比べ生存期間を延長した U87MG 対照群の生存期間中央値が 27 日であった

STAP現象の検証の実施について

STAP現象の検証結果

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現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

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2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

博士の学位論文審査結果の要旨

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ス化した さらに 正常から上皮性異形成 上皮性異形成から浸潤癌への変化に伴い有意に発現が変化する 15 遺伝子を同定し 報告した [Int J Cancer. 132(3) (2013)] 本研究では 上記データベースから 特に異形成から浸潤癌への移行で重要な役割を果たす可能性がある

<原著>IASLC/ATS/ERS分類に基づいた肺腺癌組織亜型の分子生物学的特徴--既知の予後予測マーカーとの関連

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

主論文 Role of zoledronic acid in oncolytic virotherapy : Promotion of antitumor effect and prevention of bone destruction ( 腫瘍融解アデノウイルス療法におけるゾレドロン酸の役割 :

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RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

研究成果報告書

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九州大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(慢性重症虚血肢(閉塞

学位論文の要約 免疫抑制機構の観点からの ペプチドワクチン療法の効果増強を目指した研究 Programmed death-1 blockade enhances the antitumor effects of peptide vaccine-induced peptide-specific cyt

平成14年度研究報告

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密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

動物用医薬品(医薬部外品)製造販売承認事項変更承認申請書

学報_台紙20まで

5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

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遺伝子治療用ベクターの定義と適用範囲

EBウイルス関連胃癌の分子生物学的・病理学的検討

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日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

大規模ゲノム解析から明らかとなった低悪性度神経膠腫における遺伝学的予後予測因子 ポイント 低悪性度神経膠腫では 遺伝子異常の数が多い方が 腫瘍の悪性度 (WHO grade) が高く 患者の生命予後が悪いことを示しました 多数検体に対して行った大規模ゲノム解析の結果から 低悪性度神経膠腫の各 sub

in vivo

上原記念生命科学財団研究報告集, 28 (2014)

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 21 年 6 月 2 日現在 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :26 ~ 28 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) 炭酸ガスおよび半導体レーザーによるオーラルアンチエイジング 研究課題名 ( 英文 ) Oral an

54 埼玉医科大学雑誌第 35 巻第 1 号平成 20 年 12 月 学内グラント終了時報告書 平成 18 年度学内グラント報告書 脳腫瘍摘出における術中蛍光診断の応用 研究代表者三島一彦 ( 埼玉医科大学脳神経外科 ) * 分担研究者西川亮 緒言 神経膠芽腫を代表とする悪性脳腫瘍の治療成績は, 近

周期的に活性化する 色素幹細胞は毛包幹細胞と同様にバルジ サブバルジ領域に局在し 周期的に活性化して分化した色素細胞を毛母に供給し それにより毛が着色する しかし ゲノムストレスが加わるとこのシステムは破たんする 我々の研究室では 加齢に伴い色素幹細胞が枯渇すると白髪を発症すること また 5Gy の

コラーゲンを用いる細胞培養マニュアル

がん登録実務について

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

Transcription:

様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 21 年 4 月 3 日現在 研究種目 : 基盤研究 (C) 研究期間 :2007~2008 課題番号 :19591676 研究課題名 ( 和文 ) 悪性脳腫瘍幹細胞を用いた脳腫瘍動物モデルの確立と治療研究課題名 ( 英文 ) Establishment and treatment of malignant glioma animal model using brain tumor stem cell 研究代表者神原啓和 (KANBARA HIROKAZU) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 助教研究者番号 :40420484 研究成果の概要 : 今回 我々は CD133 Nestin 陽性である悪性脳腫瘍幹細胞の分離 培養を行い その性状を分析した さらに Nestin 陽性腫瘍細胞特異的に増殖するヘルペスウイルスの調整をおこなった 現在 新たな動物腫瘍モデルの作成 ヘルペスウイルスの治療効果については検討中であるが 腫瘍幹細胞に対する治療研究は 脳腫瘍治療の新たな展開に必要な研究であると考える 交付額 ( 金額単位 : 円 ) 直接経費 間接経費 合計 2007 年度 2,200,000 660,000 2,860,000 2008 年度 1,300,000 390,000 1,690,000 年度年度年度総計 3,500,000 1,050,000 4,550,000 研究分野 : 医歯薬学 科研費の分科 細目 : 外科系臨床医学 脳神経外科学 キーワード : 幹細胞 増殖型ヘルペスウイルス 悪性脳腫瘍 遺伝子治療 1. 研究開始当初の背景悪性グリオーマは 診断技術 治療方法の進歩にも関わらず 依然として予後不良な疾患であり 有効な新規治療法の開発は急務である 我々はこれまで 悪性脳腫瘍に対するウイルスベクターを用いた遺伝子治療について基礎的研究を行い その有効性を示してきたが いずれの実験も cell line 化された細胞の移植脳腫瘍モデルを 使用したものであり 実際の悪性脳腫瘍の発育様式を再現 治療したものとは言いがたい状況であった そこで 今回我々は 治療標的として手術摘出腫瘍から腫瘍幹細胞を分離 培養し その細胞自身の性状や 動物に移植した際の腫瘍の発育形式を詳しく分析する また 樹立した細胞や動物モデルに対する治療方法として 新規開発

した制限増殖型ヘルペスウイルスを用い 治療効果を検討する これらの研究を通して より実際の脳腫瘍に近い腫瘍細胞を用いたモデルを作成 それに対するウイルス治療の効果の証明を目指す 制限増殖型ヘルペスウイルスは 腫瘍細胞内でのみ増殖し 殺細胞効果を持ったウイルスであり 今回新規に開発したものは 脳腫瘍特異的により強い抗腫瘍効果を持ったウイルスである 癌幹細胞の概念が提唱され 癌組織中には自己複製能 多分化能 無制限の分裂能 浸潤能を持った細胞が存在することが明らかにされ この細胞を標的とする癌の基礎研究が盛んになり 治療の標的としても関心が高まっている 脳神経外科領域においても 悪性神経膠腫について同様な研究の報告がある つまり 悪性神経膠腫組織から膜抗原 CD133 陽性細胞を分離したところ その細胞はわずかな数でも動物に腫瘍を形成する能力や浸潤能を持つことを証明し 悪性神経膠腫の幹細胞である可能性を指摘しており CD133 の他に nestin も免疫染色で陽性であることも併せて報告している 今後は 悪性神経膠腫に対する治療法の研究には腫瘍組織中の腫瘍幹細胞 (CD133 nestin 陽性細胞 ) を標的としたものが注目されてくると考えられ この細胞に対して制限増殖型ヘルペスウイルスを用いた治療法を開発していくことは今までは報告がなく独創的である 悪性神経膠腫に対する新しい治療法として 従来の非増殖型ウイルスベクターを用いた遺伝子導入による遺 伝子治療ではなく 腫瘍特異的にウイルスが増殖することで 抗腫瘍効果を狙う制限増殖型ヘルペスウイルスを用いた治療法が開発され 多くの基礎的研究が行われ 動物実験で抗腫瘍効果 正常細胞に対する安全性が証明されている また ある種のウイルスでは臨床応用に向けた試みもなされている 一方で 従来の制限増殖型ヘルペスウイルスでは ウイルスが正常細胞内で増殖しないという安全性を得るために ウイルスの細胞内増殖に重要である遺伝子を欠損させているため 抗腫瘍効果自体を減弱してしまっているというジレンマがあった そのような状況下で 抗腫瘍効果を高めるため wild type ヘルペスウイルスに存在し 多くの制限増殖型ヘルペスウイルスには欠損している ウイルス増殖に重要な役割を担う遺伝子であるγ 1 34. 5 遺伝子を腫瘍特異的に発現する新規ウイルスを開発した このウイルスは腫瘍特異的に遺伝子発現を得るため 腫瘍特異的プロモーターである nestin promoter( 悪性神経膠腫幹細胞では nestin の発現が認められる ) を用い γ 1 34.5 遺伝子を発現する新しい制限増殖型ヘルペスウイルス (rqnestin34.5) である この rqnestin34.5 が nestin 陽性悪性神経膠腫に対して特異的により強い抗腫瘍効果を示すことを in vitro in vivo で証明した 同時に in vitro の結果ではあるが ヒト培養 primary glioma cell に対しても抗腫瘍効果を示すことも証明した このウイルスは 先に述べた nestin 陽性と報告されて

いる悪性神経膠腫幹細胞に対しても抗腫瘍効果をしめすものであると考えられる 2. 研究の目的 CD133 Nestin 陽性である悪性脳腫瘍幹細胞の分離 培養を行い その性状を分析し 新たな動物腫瘍モデルを作成する 次に Nestin 陽性腫瘍細胞特異的に増殖するヘルペスウイルスの治療効果をこの動物モデルを用いて明らかにする 腫瘍幹細胞に対する治療研究は 脳腫瘍治療の新たな展開に必要な研究であると考える 3. 研究の方法 1 悪性脳腫瘍幹細胞の分離手術で摘出された悪性脳腫瘍細胞を初代培養し 増殖してきた細胞を Athymic mouse の皮下に注入し腫瘍を形成してくるものを培養する これによって 増殖能力と腫瘍形成能力を持った細胞を分離し 更にその中で CD133 陽性細胞をソーティングする こうすることで より効率的に現在脳腫瘍幹細胞と考えられている細胞が樹立できる Nestin GFAP 等のマーカーについても分析を行う 上記が順調に進まない場合は 別の方法として 初代培養細胞を特殊な培地で培養し sphere を形成する細胞を回収し その sphere を脳へ移植することで 細胞を分離し さらに同様の処理を施すという方法も合わせて行う こちらの方法も現在進行中である 以上のような主に 2 つのアプローチで腫瘍幹細胞を分離する 2 制限増殖型ヘルペスウイルス (rqnestin34.5) の調整 既に開発済みであるが 今後はよりウイルスタイターを挙げるために ウイルス産生細胞の培養条件 ウイルス精製の際のウイルス分離条件等を改良する 3In vitro でのウイルスの悪性脳腫瘍幹細胞に対する抗腫瘍効果の検討 1の実験で得られた培養腫瘍細胞を用いて抗腫瘍効果を検討する 古典的な WST1 assay を行い 腫瘍細胞生存率を分析するとともに 増殖型ウイルスの細胞内での増殖状況を virus replication assay を行い分析する FACS を用いたアポトーシス分析も行い 更にはタイムラプス顕微鏡で細胞にウイルスが感染し 細胞が死んでいく状況 ( 実際に増殖型ウイルスの抗腫瘍効果はアポトーシスによるものか それ以外のものかに着目する ) を分析する予定である 4 悪性脳腫瘍幹細胞を用いた動物モデルの作成マウスの脳に定位的に1の実験で得られた腫瘍を注入する しかるべき後に脳標本を作製し 腫瘍の生着 増殖様式を分析する この際 腫瘍の浸潤状況については免疫組織学的に特に詳しく分析する予定である 5In vivo 動物モデルを用いたウイルスの抗腫瘍効果の検討ウイルスの腫瘍内投与での効果判定並びに 浸潤性モデルについてはウイルスの腫瘍内投与における効果の検討を行う予定である 皮下腫瘍モデルを用いた増殖抑制分析を行うことと脳腫瘍モデルでの生存曲線分析を行うことはもちろんのこと MRI を用いて生存動物内で

の脳腫瘍モデルでも増殖抑制について分析を行う また 適当な時期に脳腫瘍標本を作製し 更に詳細な分析を行う 4 悪性脳腫瘍幹細胞を用いた動物モデルの作成マウスの脳に定位的に1の実験で得られ た腫瘍を注入した しかるべき後に脳標本を 6In vivo でのウイルス毒性の検討マウス正常脳にウイルスを注入し 脳標本を作製しウイルスの毒性について検討する nestin 陽性であるneural stem cellの存在が報告されている脳室周囲について 特に詳しく検討する 作製し 腫瘍の生着 増殖様式を分析したが 現在十分な結果が得られていない 今後 細胞数 注入する前の条件 などを変えることにより 生着についての実験を行っていきたい また In vivo 動物モデルを用いたウイルスの抗腫瘍効果の検討については 脳腫瘍 幹細胞モデルの作成後に行う予定である 治 4. 研究成果 1 悪性脳腫瘍幹細胞の分離手術で摘出された悪性脳腫瘍細胞を初代 療実験は準備段階ではあるが 腫瘍幹細胞に対する治療研究は 脳腫瘍治療の新たな展開に必要な研究であると考えている 培養し sphere を形成する細胞を回収し 増殖してきた細胞をAthymic mouseの皮下に注入し腫瘍を形成してくるものを培養した 増殖能力と腫瘍形成能力を持った細胞を分離した 再現性があり 現在脳腫瘍幹細胞と考えられている細胞が樹立できたと考えられた 2 制限増殖型ヘルペスウイルス (rqnestin34.5) の調整既に開発済みであるが ウイルスタイターを挙げるために ウイルス産生細胞の培養条件 ウイルス精製の際のウイルス分離条件等を改良した 3In vitroでのウイルスの悪性脳腫瘍幹細胞に対する抗腫瘍効果の検討 1の実験で得られた培養腫瘍細胞を用いて抗腫瘍効果を検討した WST1 assay を行い 腫瘍細胞生存率を分析し 抗腫瘍効果を認めた また 増殖型ウイルスの細胞内での増殖状況を virus replication assay を行い より有意な増殖の差を得た 5. 主な発表論文等 ( 研究代表者 研究分担者及び連携研究者には下線 ) 雑誌論文 ( 計 2 件 ) 1 市川智継 神原啓和 黒住和彦 伊達勲 中枢神経原発リンパ腫 脳神経外科速報 18(9): 1128-1137, 2008 査読有 2 神原啓和 市川智継 伊達勲 脳腫瘍幹細胞 (brain tumor stem cell) 脳神経外科速報 17 832-838 2007 査読有 学会発表 ( 計 8 件 ) 1 市川智継 神原啓和 伊達勲 ナビゲーション下に定位的穿刺を可能にする Sure Trak 専用外筒の作製 第 17 回脳神経外科手術と機器学会 : 長崎, 2008.4 月 2 小坂洋志 市川智継 神原啓和 遺伝子導入間葉系幹細胞によるラットグリオーマ治療効果の検討 第 25 回日本脳腫瘍学会 2007 年 12 月 東京 3 井上智 市川智継 大西学 悪性グリオーマの浸潤と血管新生に関する免疫組織学的検討 1 臨床サンプルでの解析 第 25 回日本脳腫瘍学会 2007 年 12 月 東京 4 大倉浩子 市川智継 井上智 悪性グリオーマの浸潤と血管新生に関する免疫組織学的検討 2 浸潤性脳腫瘍動物モデル 第 25 回日本脳腫瘍学会 2007 年 12 月 東京 5 丸尾智子 市川智継 神崎浩孝 プロテオミクス解析を用いた悪性グリオーマの浸潤に関わるタンパクの同定 第 25 回日本脳腫瘍学会 2007 年 12 月 東京 6 井上智 市川智継 丸尾智子 悪性グリ

オーマの浸潤と血管新生に関する免疫組織学的検討 第 66 回社団法人日本脳神経外科学会総会 2007 年 10 月 東京 7 小坂洋志 市川智継 神原啓和 遺伝子導入間葉系幹細胞によるラットグリオーマ治療効果の検討 第 66 回社団法人日本脳神経外科学会総会 2007 年 10 月 東京 8 丸尾智子 市川智継 神崎浩孝 悪性グリオーマの浸潤に関わるタンパクのプロテオミクス解析による同定 第 66 回社団法人日本脳神経外科学会総会 2007 年 10 月 東京 6. 研究組織 (1) 研究代表者神原啓和 (KANBARA HIROKAZU) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 助教研究者番号 :40420484 (2) 研究分担者小野田惠介 (ONODA KEISUKE) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 助教研究者番号 :20379837 (3) 連携研究者市川智継 (ICHIKAWA TOMOTSUGU) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 助教研究者番号 :10362964 小野成紀 (ONO SHIGEKI) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 助教研究者番号 :40335625 新郷哲郎 (SHINGO TETSURO) 独協医科大学 医学部 助教研究者番号 :50379749 伊達勲 (DATE ISAO) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授研究者番号 :70236785