Microsoft Word - 第67号 来年からの贈与税改正と相続時精算課税を選択する際の注意点

Similar documents
Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

2011年税制改正のポイント

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

< F2D A91B C FC90B38E9197BF>

2015 年 1 月いよいよ施行! 相続税増税の影響と対策 Part 1 相続税はどう変わる? 影響は? Part 2 相続税の負担を軽減するには?

目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

住宅取得等資金贈与の非課税特例 教育資金一括贈与の非課税特例 結婚 子育て資金贈与の非課税特例 相続時精算課税制度 贈与者 贈与年の 1 月 1 日現在で 60 歳以上の父母または祖父母 受贈者 贈与者の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) で贈与の年の 1 月 1 日現在 20 歳以上 受贈年の合計所

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

5 適用手続 ⑴ 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は 贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に 相続時精算課税選択届出書 ( 贈与者ごとに作成が必要 ) を贈与税の申告書に添付して 納税地の所轄税務署長に提出する ( 相法 21の92) なお 提出された当該届出書は撤回することができない

税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

このうち 申告納税額がある方 ( 納税人員 ) は640 万 8 千人で は41 兆 4,298 億円 申告納税額は3 兆 2,037 億円となっており 平成 28 年分と比較すると 人数 (+0.6%) (+ 3.4%) 及び申告納税額 (+4.6%) はいずれも増加しました 所得者区分別の状況イ

税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相


相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

Microsoft Word - 第58号 二世帯住宅の敷地にかかる小規模宅地等の特例

Microsoft Word - 36号事業承継.doc

スライド 1

問題 1 1 問題 1 1 納税義務者 相続税の納税義務者及び課税財産の範囲 課税価格 1 納税義務者 ⑴ 次に掲げる者は 相続税を納める義務がある 1 居住無制限納税義務者 ( 法 1 の 3 1 一 ) 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

叔父から財産の贈与(1~3) を受けた場合 1/1 12/31 2/1 3/15 相選養続択与子贈時届贈精出縁与算書与 1組課提2 税出3 暦年課税相続時精算課税 養子縁組前の贈与 1については 暦年課税により贈与税額を計算し 養子縁組以後の贈与 2 及び 3は 相続時精算課税により贈与税額を計算し

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

2011年度税制改正大綱(相続・贈与税)

暦年課税の贈与を毎年する人のデータ 暦年課税の贈与は 現金を贈与するのか不動産を贈与するのかで違ってきます 土地は路線価方式または倍率方式で評価し建物は固定資産税評価額で評価しますので 現金での贈与の場合よりも税率は低くなります ただし不動産の贈与では 土地や建物の贈与または共有持分の贈与になります

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

1. 相続税 (1) 基礎控除額の引き下げ 1) 改正の趣旨現在 ( ) の相続税の仕組みは 下図の通りです すなわち 合計課税価格から 基礎控除額を除いた課税遺産総額が相続税の計算の対象となるため 合計課税価格が基礎控除額の範囲内である場合には 相続税が課税されません その結果として 現状の相続税

Microsoft Word - 平成15年税制改正(2).doc

第 5 章 N

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

相続税 贈与税の基本がよくわかる! 誰が相続人になるの? 税額はどのようにして求めるの? 土地 建物の評価はどうするの? 住宅取得資金の贈与は最大 3,000 万円が非課税に? 教育資金や結婚 子育て資金の贈与は非課税に? 新しくできる配偶者居住権ってどんなもの? etc.

課税遺産総額 = 各人の課税価格 ( ア ) の合計額 - 遺産に係る基礎控除額ウ相続税の総額の計算 1 課税遺産総額を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものと仮定し 各人ごとの取得金額を計算する 2 1に税率をかけ 各人の税額を合計する (= 相続税の総額 ) エ各人の相続税額の計算相続税の総

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

4.住宅取得等資金の非課税の適用を受ける場合編

<4D F736F F F696E74202D208DA1944E937882CC89FC90B E937882CC89FC90B382C697AF88D3935F81838E9197BF >

4.住宅取得等資金の非課税の適用を受ける場合編

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

Microsoft Word - 第65号 二世帯住宅と小規模宅地等の特例

配偶者の税額軽減特例の有利な受け方 配偶者がいる場合の 相続税の具体的な計算例は以下の通りです 1. 設例 自宅 預貯金等の相続財産の遺産額 =2 億円 法定相続人 = 配偶者 + 子 2 人の合計 3 人 実際の遺産分割は 法定相続分の通りとする 未成年者控除 外国税額控除 生命保険金の非課税枠金

Ⅰ ワンルームマンション経営と節税 税務署 確定申告 税金還付 20 万 ~30 万円 ワンルーム家賃収入ローン元利返済サラリーマンマンション A 氏 1 戸所有月 70,000 円月 60,000 円 銀行 年 30,000 円 月 8,000 円 固定資産税 管理会社 1 ワンルームマンション投

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

相続税に関するチェックリスト

である 12 遺留分とは 遺言の内容にかかわらず一定の相続人が確実に受け取ることができる一定の 割合のことである 直系尊属のみが相続人である場合は 被相続人の財産の 1/3 その 他の場合には 被相続人の財産の 1/2 である ただし 兄弟姉妹には遺留分はない 13 相続の放棄は 被相続人の生前に行

<4D F736F F D208C6F89638FEE95F182A082EA82B182EA E34816A>

基本資料1-平成25年税制改正ポイント(表紙).pdf

ラリーマン 相続税の申告は? 45 相続税の申告はどのようにすればよいのでしょうか 相続が開始したことを知った日 ( 通常は被相続人が死亡した日 ) の翌日から 10 か月以内に 被相続人の住所 地の所轄税務署に申告し 相続税を納付する必要があります 申告書を提出する人が 2 名以上いる場合は 共同

日興証券

参考. 改正前の制度概要 ( 改正対象は太字 ) (1) 税の納税猶予の全体像 ( 概要 ) の要件 会社の代表者であったこと 時には代表権を有していないこと と同族関係者で決議数の 50% 超の株式を保有かつを除いた同族内で筆頭株主であったこと 認定対象会社の要件 の要件 会社の代表者であること

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

Microsoft Word - uchida_report_24++.doc

配偶者がいる人の一次相続と二次相続のデータ 被相続人に配偶者がいる一次相続と 配偶者がいない二次相続の相続税シミュレーションを行います 配偶者の税額軽減は その節税効果が大きいために一次相続で相続税を大幅に減額することができますが 次の二次相続では想定外の相続税が発生することがあります 配偶者がいる

平成 22 年 12 月 7 日 資料 ( 資産課税 )

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

Microsoft Word 常発041号 改正相続税法等の周知について(・

コピー又は web からダウンロードしてご使用ください 答案用紙 Chapter1 問題 1 個人とみなされる納税義務者 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 遺贈財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額 2 生前贈与加算される贈与財産の額の計算 ( 単位 :

(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

< F31322D89FC90B390C C18F578D8692C7985E5B315D2E6A74>

3. 住宅税制 消費税率の引上げに伴う一時の税負担の増加による影響を平準化し 及び緩和する観 点から 住宅税利について以下のとおり所要の措置を講じます 住宅ローン減税を平成 26 年 1 月 1 日から平成 29 年末まで 4 年間延長し その期間のうち平成 26 年 4 月 1 日から平成 29

( 相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合 ) (6) 相続時精算課税適用者 ( 相続税法第 21 条の9 第 5 項に規定する 相続時精算課税適用者 をいう 以下 (6) において同じ ) の死亡後に当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者 ( 同条第 5 項に規定する 特定贈与者

★889133_相続税ハンドブック_本体.indb

<4D F736F F F696E74202D E93788E968BC68FB38C7090C590A789FC90B38A E >

2 税額控除等の計算 ( 単位 : 円 ) 項目対象者計算過程金額 答案用紙 Chapter2 問題 3 課税価格の計算 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 分割財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 2 みなし取得財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

特集 相続税の課税方式の改正が検討されています 今までの相続税の常識が 通用しなくなる??? 相続税の課税方式の変更を検討 * 平成 20 年 1 月 11 日 財務省発表の 平成 20 年度税制改正要綱 より ( 前略 ) この新しい事業承継税制の制度化にあわせて 相続税の課税方式をいわゆる 遺産

平成16年版 真島のわかる社労士

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

税調第18回総会 資料2-2

3.相続時精算課税の適用を受ける場合編

原稿4.xls

(3) 年金所得者公的年金等の収入金額が400 万円以下であり かつ その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20 万円以下である場合には 確定申告の必要はありません また 上記 (2) 又は (3) に該当する方であっても 医療費控除や住宅借入金

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

1.修正申告書を作成する場合の共通の手順編

例えば毎年 子供 2 人に対し110 万円づつ贈与し続けるのであれば 10 年間で2,200 万円の財産を無税で子供に移すことができます 贈与税の基礎控除額を上手く活用する方法だけでも 計画的に行うことがどれだけ大切なのかご理解いただけると思います とにかく財産を所有している人が高齢になればなるほど

特別障害者一人につき 75 万円を所得から控除することができます 障害者控除は 扶養控除の適用がない16 歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます ⑶ 心身障害者扶養共済掛金の控除 P128 条例の規定により地方公共団体が実施するいわゆる心身障害者扶養共済制度による契約で一定の要件を備えて

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

相続税対応策と土地活用 ~ これだけは押さえておきたい ~ ラジオ NIKKEI 公開録音土地活用セミナー 2014 年 7 月 26 日 税理士奥村眞吾

事業承継税制の全体像は ( 図表 1) の通りである ( 図表 1) 事業承継税制の全体像 経営者 1 代目 経営者 2 代目 一括贈与 大臣認定 贈与税の課税 贈与税の納税猶予の適用 相続税の納税猶予制度と同様 雇用確保を含む 5 年間の事業継続を行い その後も株式を継続保有 生前贈与により株式の

一戸建ての自宅を所有している人のデータ 東京都内やその近郊など路線価の高い宅地に一戸建ての自宅を所有し その他に預貯金や有価証券を保有している人の相続税シミュレーションになります 路線価が高いと自宅の敷地の面積が広くなくても その宅地の評価額は高額になりますので この宅地に対して小規模宅地等の特例が

新・NPO法人申請マニュアル.pwd

金庫株を活用した事業承継対策 1. 概要 非上場株式を相続して相続税が発生する場合は 相続で取得した自社株を相続税の申告期限後 3 年以内に金 庫株すればみなし配当課税しない (= 譲渡所得とする ) 特例があります ( 措置法 9 条の 7) 所得税の特例の内容 ( 自己株式をみなし配当課税しない

平成19年度分から

時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税され かつ その所得税は相続税の課税価格の計算上被相続人の債務として控除されていることにより 所得税と相続税の負担の調整は済んでいますので この特例の適用は受けられません 2 取得費に加算される金額平成 26 年度の改正前は 相続財産である土地等の一部を譲渡し

平成19年12月○日

おき 太郎様 Inheritance Report 相続診断書 税理士法人おき会計 平成 28 年 7 月 20 日作成

システムインフォメーション

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

3.相続時精算課税の適用を受ける場合編

1.一般の贈与の場合(暦年課税)編

<918A91B190C F0939A91AC95F BD90AC E A>

受贈者ごとの非課税限度額 ( 注 1) 1 下記 2 以外の場合住宅用の家屋の種類 住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日 ( 注 3) 省エネ等住宅 ( 注 4) 左記以外の住宅 平成 27 年 12 月 31 日まで 1,500 万円 1,000 万円 平成 28 年 1 月 1 日から平成 2

Japan Tax Newsletter

Transcription:

川崎市中原区小杉御殿町 1-868 電話 044-271-6690 Fax044-271-6686 E-mail:hara@haratax.jp URL:http://www.haratax.jp 2014 年 6 月 15 日第 67 号 haratax 通信 来年からの贈与税改正と相続時精算課税を選択する際の注意点 最近 国税庁から公表された 平成 25 年分の贈与税の確定申告状況等について によると 贈与税の申告書を提出した人員が 基礎控除が 110 万円になった平成 13 年度以降最多になったということです 来年からの相続税の増税に備えて 贈与をする人が増えたということでしょうか 来年から相続税が増税となることは多くの方がご存じのとおりですが 同時に贈与税の負担が軽くなることについては知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか 今月のharatax 通信では 来年の贈与から適用される贈与税の改正内容と相続時精算課税を選択する際の注意点についてご紹介いたします 1. 贈与税のしくみ ~ 贈与税のしくみ ~ 適用関係 改正 1 及び 改正 2 の改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されます 改正 1 ( 適用要件を満たす場合 ) 選択する場合 課税価格 (1 年間に贈与により取得した財産の価額の合計 ) 相続時精算課税を 選択しない場合 相続時精算課税 暦年課税 1 贈与財産の価額から控除する金額 特別控除額 2,500 万円 前年までに特別控除額を使用した場合には 2,500 万円から既に使用した額を控除した残額が特別控除額となります 2 税率 ( 特別控除額を超えた部分に対して ) 一律 20% の税率 贈与者の相続時に精算 1 贈与財産の価額から控除する金額 基礎控除額毎年 110 万円 課税価額が 110 万円を超える場合は 申告が必要となります 2 税率 ( 基礎控除後の課税価格に対して ) 超過累進税率 改正 2 相続税との関係 贈与者が亡くなった時の相続税の計算上 相続財産の価額に相続時精算課税を適用した贈与財産の価額 ( 贈与時の時価 ) を加算して相続税額を計算します その際 既に支払った贈与税相当額を相続税額から控除します ( 控除しきれない金額は還付されます ) 相続税との関係 贈与者が亡くなった時の相続税の計算上 原則として 相続財産の価額に贈与財産の価額を加算する必要はありません ただし 相続開始前 3 年以内に贈与を受けた財産の価額 ( 贈与時の時価 ) は加算しなければなりません

受贈者 ( 財産の贈与を受けた人 ) は 贈与者 ( 財産の贈与をした人 ) ごとに 相続時精算課税 を選択することができます 相続時精算課税 を選択するためには 贈与税の申告書の提出期限までに贈与税の申告書と相続時精算課税選択届出書を税務署に提出しなければなりません ( 注 ) 相続時精算課税 を選択した場合は その選択に係る贈与者から贈与により取得する財産については その選択をした年分以降 全て相続時精算課税が適用され 暦年課税 へ変更することはできません 国税庁資料 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし( 平成 27 年 1 月 1 日施行 ) よ 2. 贈与税の改正の内容今回の贈与税の見直しは2つあり 1つは 相続時精算課税制度 における対象範囲の拡大 もう一つは 暦年課税制度 における税率構造増の緩和です いずれの改正も 平成 27 年 1 月 1 日以後に贈与により取得する財産にかかる贈与税について適用されます (1) 相続時精算課税制度における対象範囲の拡大相続時精算課税制度は 被相続人が行った生前贈与について 最終的に相続時に相続税として精算するものであり これにより 1 資産移転の時期をより柔軟に選択できることになること 2 相続税の課税対象とならない層にとっては 実質的に税負担なく生前贈与が行えるといった意義があり もともと世代間の資産移転の促進を図る制度として創設されているものです 今般 本制度についても 若年世代への早期の資産移転のより一層の促進を図る観点から 1 受贈者に孫を追加し 2 贈与者の対象年齢を65 歳から60 歳に引き下げるといった制度の拡大が行われました ( 平成 25 年度改正税法のすべて より ) 贈与税改正 1 相続時精算課税 適用対象者の範囲拡大など相続時精算課税の適用要件が変わります 贈与者 贈与をした年の 1 月 1 日において 65 歳以上の者 改正後 贈与をした年の 1 月 1 日において 60 歳以上の者 受贈者 贈与を受けた年の 1 月 1 日において 20 歳以上の者 贈与を受けた時において贈与者の推定相続人 改正後 贈与を受けた年の 1 月 1 日において 20 歳以上の者 贈与を受けた時において贈与者の推定相続人及び孫 国税庁資料 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし ( 平成 27 年 1 月 1 日施行 ) より

(2) 暦年課税制度の税率構造増の緩和現在 相続税 贈与税ともに最高税率は50% ですが 50% の税率を適用する金額が相続税は 3 億円超であるのに対し 贈与税は1,000 万円超と贈与税はかなり急な累進構造となっています 若年世代への早期の資産移転のより一層の促進を図る観点から 子や孫などの若年世代を受贈者とする贈与税の税率構造を緩和することとされました ( 平成 25 年度改正税法のすべて より ) 贈与税改正 2 贈与税 ( 暦年課税 ) の税率構造 最高税率の引き上げや孫等が直系尊属から贈与を受けた場合の税率構造が変わります 基礎控除後の課税価格 税率 改正後 一般税率特別税率 ( 一般贈与財産 ) ( 特別贈与財産 ) ~ 200 万円以下 10% 10% 10% 200 万円超 ~ 300 万円以下 15% 15% 300 万円超 ~ 400 万円以下 20% 20% 15% 400 万円超 ~ 600 万円以下 30% 30% 20% 600 万円超 ~ 1,000 万円以下 40% 40% 30% 1,000 万円超 ~ 1,500 万円以下 45% 40% 1,500 万円超 ~ 3,000 万円以下 50% 45% 50% 3,000 万円超 ~ 4,500 万円以下 50% 55% 4,500 万円超 ~ 55% 暦年課税の場合において 直系尊属 ( 父母や祖父母など ) からの贈与により財産を取得した受贈者 ( 財産の贈与を受けた年の 1 月 1 日において 20 歳以上の者に限ります ) については 特例税率 を適用して税額を計算します この特例税率の適用がある財産のことを 特例贈与財産 といいます また 特例税率の適用がない財産 ( 一般税率 を適用する財産 ) のことを 一般贈与財産 といいます 国税庁資料 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし ( 平成 27 年 1 月 1 日施行 ) より 3. 改正による影響いずれの改正も 若い世代への資産移転がより活発に行われるための緩和措置ですが 狙い通り贈与の件数は増えるのでしょうか 暦年課税制度の税率構造増の緩和により 子や孫に毎年 300 万円以上贈与しているような富裕層は毎年の贈与金額を増額するのではないかと思います 多くの不動産オーナーにありがちな毎年 100 万円くらいの現金を贈与している方にとっては 税率緩和のメリットがありませんので 全体としては 今回の改正による暦年贈与が増える効果は限定的になるのではないかと考えます 一方で 相続時精算課税制度の対象範囲の拡大により 相続時精算課税による贈与をする人は増えると思います 昨年から始まった 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度 の口座開設者の数をみても分かる通り 高齢者にとって孫に多額の贈与ができるということは財産を動かす大きなきっかけになります 今回の改正により 孫に対しても大きな贈与税の負担がなく贈与ができるようになるということで安易に相続時精算課税を選択する人が増えるのではないかと考えます

4. 相続時精算課税を選択する場合の注意点 今回の対象範囲の拡大により 安易に相続時精算課税を選択する人が増えるのではないかと述 べましたが 相続時精算課税制度を選択する場合にはいくつかの注意点があります (1) 暦年課税に戻ることができない相続時精算課税は 贈与時に贈与税は課税されませんが 相続時には相続財産と過去の贈与財産を合計した金額に対して相続税が課されます つまり 相続税がかかる人にとっては無税で贈与できるということではなく 税金の支払の先延ばしにすぎません 暦年課税では被相続人の相続開始の前 3 年を超えた贈与について 相続税の計算上 相続財産に加算する必要がありませんが 相続時精算課税では被相続人の相続開始の何年前の贈与であっても相続財産に加算する必要があります 暦年課税は110 万円の基礎控除があるため 長期にわたって 広範囲の親族に贈与を続けることで 相当な金額の財産を相続財産から外すことが可能です つまり 最終的に相続税がかからない方にとっては 相続時精算課税制度により税負担なく財産を生前に移転できますが 将来の相続税の発生が見込まれる方にとっては 相続時精算課税制度を選択するよりも 暦年課税により節税対策を行った方が税務上のメリットがあります 相続時精算課税は一度選択すると暦年課税に戻ることができないため 将来の相続税の発生を見極め 慎重に選択しなければなりません (2) 受贈者が先に死亡した場合の課税関係相続時精算課税における贈与者 ( 特定贈与者 ) の死亡より前に受贈者が死亡した場合には その受贈者の相続人は その者が有していた相続時精算課税に伴う納税に係る権利または義務を承継します つまり 親子間で相続時精算課税贈与をしていた場合において 子が先に死亡したときは 子の相続において贈与済の財産に相続税が課され その後親が死亡した際にも 本来 子が負担すべきであった相続時精算課税に係る相続税の納税義務を子の相続人 ( この妻や孫 ) が承継することになるため 一つの財産につき二重に課税される可能性があります ( 仮に相続時精算課税による贈与をしていなければ 親の相続時に子の代襲相続人である孫がその財産を相続することで 孫に相続税が課税されるだけで済みます ) (3) 贈与時の時価で固定される相続時精算課税で贈与された財産は 相続税の計算上 贈与時の価額で相続財産に加算されます 相続時の財産の価額が贈与時の価額よりも高くなっている場合 贈与時の低い価額で相続財産に加算されるため税務上有利になりますが 逆に価値が低くなっても贈与時の高い価額で加算されるため 税務上は不利になります たとえば 同族会社の株式を将来の値上がりを見越して相続時精算課税で贈与した場合において その会社が倒産し 株式が無価値になっても 贈与時の価額で相続財産に加算されることになります

(4) 相続争いのきっかけとなりうる相続時精算課税による贈与があった場合 その事実や金額を相続税の申告書に記載し 税額を精算しなければなりませんので 基本的には 相続税申告の際 他の相続人がその贈与の内容を知ることになります 他の相続人がその贈与を承知していればよいですが 相続時に初めて聞いたということになると相続争いに発展する可能性があります 相続時精算課税による贈与を隠そうとしても 他の相続人が開示請求をすると 税務署は贈与財産価額の合計額を開示することになっています (5) 小規模宅地等の特例の対象とならない小規模宅地等の特例の対象は相続または遺贈により取得した財産に限られています つまり 相続時精算課税による贈与は 相続または遺贈に該当しませんので 特例の対象になりません 実際 被相続人の自宅敷地を相続により取得すれば 特定居住用宅地等の8 割減の対象だったものが 相続時精算課税による贈与をしたことで特例を適用できなくなり 相続税が大きく増えてしまったという失敗事例を聞くことがあります 5. さいごに 2,500 万円まで贈与しても贈与時の贈与税がかからないということで 相続時精算課税を選択したいという相談を受けることがよくあります 話を聞くと 贈与税がかからないというところはご存じなのですが 選択した後の注意点まで正しく理解している人はあまりいないようです 今回の改正により 孫に対しても相続時精算課税による贈与が可能となります この話を聞いて 孫に多額の贈与をしたいと考える人が増えると思いますが 実行する前に少し考えてください 孫に対して相続時精算課税の贈与をするということは 実質的に孫が遺産分割の場に加わるということです 安易に相続時精算課税を選択し 特定の孫にだけ多額の贈与をすると 相続争いの原因となり 結果として孫を争いの渦中に放り込む結果となります また 自ら住んでいる土地 建物だけはどうしても親から贈与を受け いまのうちに子が自分の名義に変えておきたい場合など デメリットは承知のうえで相続時精算課税による贈与を実行せざるをえないケースもあります 大切なことは 目先の贈与税の負担だけでなく 制度のメリット デメリットをよく検討したうえで 相続時精算課税の選択を決定するべきということです