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宮城教育大学環境教育研究紀要第 18 巻 (2016) 希少種タナゴの生息地域における 外来種の分布状況と淡水魚相の変化 黒澤巧 * 平谷萌子 * 斉藤千映美 ** Distribution of Invasive Fish Species in the Habitat of Endangered Fresh Water Fish, Acheilognathus melanogaster Takumi KUROSAWA, Moeko HIRAYA and Chiemi SAITO 要旨 : 希少種タナゴの生息する地域において,2009 年度より行ってきた 7 年間の調査により 調査地点毎の淡水魚の多様性が比較的安定していること 調査地点毎の種構成の差が明確であること タナゴが調査地点では繁殖していないと考えられること 外来種の分布が変化してきたことなどが明らかになった Seven years survey at a local water basin in Miyagi has shown a characteristic difference in fresh water fish species diversity. In contrast to the fact that the reproduction of an endangered species Acheilognathus melanogaster was not proved, invasive species of Acheilognathinae was wide spread in the area. キーワード : タナゴ, タイリクバラタナゴ, 外来種 1. はじめにコイ科タナゴ亜科のタナゴ (Acheilognathus melanogaster) は, 関東地方以北の本州太平洋側の河川で主に止水域を好んで分布することが知られている淡水魚である. 宮城県においては, 新たな調査や研究によって生息 生育状況に関する情報量が増加するなど, 知見の蓄積が進み,2013 年にレッドリストの絶滅危惧 Ⅱ 類から絶滅危惧 Ⅰ 類へと変更された ( 宮城県 2013). したがって, 県内でタナゴが高密度で生息している地域は, 生物多様性保全の観点から見て, 非常に高い価値を有しているといえる. 2008 年には県内でタナゴが高密度に生息している地域が確認され, 自然フィールドワーク研究会 YAMOI では 2009 年よりこの地域において淡水魚調査を継続して実施してきた. 本稿では 2015 年度における当該地域の調査結果を報告する. なお, 希少種であるタナゴを題材として扱 うため, 地域名は伏せることとする. 2. 調査方法 2015 年の 4 月から 11 月まで毎月 1 回タナゴの生息している河川の 3 地点 ( 上流より A 地点,B 地点,C 地点とする.) において実施した. 各地点でモンドリを 5 ヶ所ずつ仕掛け, 魚類採捕を行った. 採捕した魚類はその場で同定を行った. また, 隔月でタナゴの全長, 体重の計測を行った. また, タナゴへの影響が大きいと考えられる外来種であるタイリクバラタナゴ (Rhodeus ocellatus ocellatus) とカネヒラ (Acheilognathus rhombeus) については捕殺することとした. 3. 結果 (1) 各地点の魚類相 ( 図 1) A 地点では, タナゴ (Acheilognathus melanogaster), モツゴ (Pseudorasbora parva), タイリクバラタナゴ * 宮城教育大学自然フィールド研究会 YAMOI,** 宮城教育大学環境教育実践研究センター -65-

希少種タナゴの生息地域における外来種の分布状況と淡水魚相の変化 (Rhodeus ocellatus ocellatus) の 3 種が捕獲された. 各 月ともモツゴの割合が高く,6 月からは高かったタナ ゴの割合が急激に低くなり, タイリクバラタナゴの割 合が高かった. B 地点では, タナゴ, タイリクバラタナゴ, モツゴの他にも, カネヒラ (Acheilognathus rhombeus), タモロコ (Gnathopogon elongatus), オイカワ (Zacco platypus), ヨシノボリ (Rhinogobius kurodai), ビワヒガイ (Sarcocheilichthys variegatus microoculus), フナ (Carassius auratus langsdorfii) が捕獲された. すべての月でタイリクバラタナゴが最も多く捕獲された. カネヒラは夏季頃から多く捕獲されはじめ, オイカワは夏に多く捕獲されている. タモロコは年間を通してほぼ一定の割合で捕獲された. C 地点では, タナゴ, タイリクバラタナゴ, モツゴの他にも, カネヒラ, タモロコ, オイカワ, ヨシノボリ, フナが捕獲された.9 月,10 月を除く月で, タイリクバラタナゴとカネヒラで半数以上の割合を占めている.9 月においては, タナゴとタイリクバラタナゴの割合が小さく, タモロコの割合が大きかった. オイカワは夏季から秋季にかけて多く捕獲された. また, 各地点の月ごとの生物の多様度指数 (Simpson の多様度指数 ) のグラフ ( 図 2) を示した.C 地点が最も高く, 月による大きな変動は見られなかった.A, B 地点は月による変動が大きいことが見られた.A 地点と C 地点の多様度指数の間には有意な差が見られた (Wilcoxon の符号付順位和検定, Z =0,p<0.05). 同様に,B 地点と C 地点間にも差が認められた (Wilcoxon の符号付順位和検定, Z =1,p<0.05). 図 1. 各地点の魚類相 図 2. 各地点の多様度指数 (2015 年度 ) -66-

宮城教育大学環境教育研究紀要第 18 巻 (2016) (2) タナゴの全長 ( 図 3) 各地点でのタナゴの全長は図 3 に示す通りであった.C 地点において 5 月,9 月,11 月の捕獲された個体数が少ないため,7 月の値を用いて,3 地点を比較することとした. 体長 48 mm ~ 64 mm の間に A 地点では, 全体の 21%,B 地点では 32%,C 地点では 79% の個体が分布していた.64 mm より大きい個体の割合は,A 地点で 79%,B 地点で 39%,C 地点では 14% であった.A,B 地点にはより C 地点でよりやや大きなタナゴが多く見られるようである. 図 3. 各月のタナゴの全長とその内訳 4. 考察 ~ 過年度との比較から (1) 魚類相について たなご ( ここではコイ科タナゴ亜科のグループの魚を指すこととする ) はいずれも, 自然界での生息数は激減している. その理由は共通しており, 護岸工事などによる二枚貝の死滅や, 水田排水路の分離掘り下げを主体とした農業設備の近代化が原因の大半を占める. また一部では水質悪化や外来種生物の影響も見られる ( 赤井ほか 2009). 各調査地点で主に捕獲された淡水魚の中には, 在来種 ( タナゴ ) と外来種 ( 国外外来種はタイリクバラタナゴ, 国内外来種はカネヒラ, オイカワ, タモロコ, モツゴ ) が混在しており, 外来種の占める割合は相当大きい. A 地点では,2014 年度の調査においてタイリクバラタナゴが初めて捕獲された. タイリクバラタナゴは, 在来種であるタナゴに対して, 競合する可能性のある外来種である. A 地点はため池であり河川からの流入はない. これまでは, 閉鎖的な環境であり, タナゴにとっては外来種の生息していない, 好ましい生息環境ではないかと考えられてきた ( 寺下ほか 2012). しかし, タイリクバラタナゴの侵入により, その生息環境に影響が出ることも懸念される.2014 年度の調査結果 ( 図 4) と比較すると,2015 年度はタイリクバラタナゴの捕獲 -67-

希少種タナゴの生息地域における外来種の分布状況と淡水魚相の変化 された期間 (2014 年度は 7 月から 9 月,2015 年度は 5 月から 9 月 ), 全捕獲数に対するタイリクバラタナゴの捕獲数の割合 (2014 年度は 4.5%,2015 年度は 16.5%) はともに増加している. 逆に, タナゴ捕獲率の割合の月変化に注目すると,2014 年度,4 月は捕獲されず, その後ほぼ一定の割合 (23.9 ± 5.7%) で捕獲されたが,2015 年度は 4 月,5 月が高く 6 月から 10 月にかけて落ち込んだ. A 地点は閉鎖的な環境であるため, 自然にタイリクバラタナゴが流入したとは考えにくく, 人的な要因で侵入した可能性が高い. なお A 地点では 2014 年度の調査でヨシノボリ (Rhinogobius kurodai) が捕獲されたが,2015 年度の調査では捕獲されなかった. 図 4. 2014 年度 A 地点の魚類相 B 地点では, タイリクバラタナゴがすべての月で大きな割合を占めている. たなご は二枚貝に産卵し, 孵化後仔魚から稚魚に発達するまで二枚貝の中で過ごす習性がある. 春産卵の たなご が繁殖する時期は,4 月から 7 月ころまでであるが, 産卵の期間が最も長いバラタナゴ ( コイ科タナゴ亜科バラタナゴ属の たなご ) は 5 月の終わりに最初の産卵ピークをむかえ, いったん中休みのようにペースを落として, その後もう一度産卵ピークをむかえる ( 長田 福原,2000). したがって, タナゴと比較してタイリクバラタナゴの繁殖期間は長い. また, たなご は産卵母貝について選択性を有している. タナゴは, 大型のドブガイ (Sinanodonta woodiana) やカ ラスガイ (Cristaria plicata plicata) を好んで産卵する. 対してタイリクバラタナゴは, ドブガイやイシガイ (Unionoida douglasiae nipponensis) を好んで産卵する. さらにタナゴと比較してタイリクバラタナゴは繁殖期間が早く始まり, 期間も長い. 産卵に適したドブガイをめぐり,2 種のタナゴ間で競合が生じる可能性がある. また, 餌や隠れる場所なども両者は比較的似通っていることから, タイリクバラタナゴはタナゴとよく似たニッチで, より現地の環境に適応し定着していると考えられる. なお B 地点では,2013 年度,2014 年度の調査でコイ (Cyprinus carpio),2014 年度の調査でウグイ (Tribolodon hakonensis) が捕獲されたが, 2015 年度の調査では捕獲されなかった. C 地点では, タイリクバラタナゴの他にカネヒラが多く捕獲された. カネヒラは日本で最大の たなご であり, 本来の生息地は朝鮮半島西岸, 日本 ( 琵琶湖淀川水系以西の本州と, 九州北西部 )( 国立環境研究所侵入生物データベース ) で, 宮城県においては近畿地方から移入したと考えられている. 産卵の場所として主に小型のイシガイを好むが, イシガイが無い場合には他の貝で代用するような例もあり, タナゴとドブガイをめぐり競合する可能性がある.C 地点において, カネヒラやタイリクバラタナゴは多く生息しており, また二枚貝類はほとんど見られない. タナゴが繁殖, 成長するのに好適な環境であるとは考え難い. なお C 地点では, モンドリにはかからなかったが, タモ網で大型のコイ (Cyprinus carpio) を捕獲すること図 5. 各地点の多様度指数の年変動 -68-

宮城教育大学環境教育研究紀要第 18 巻 (2016) ができた. 次に,3つの地点で種の多様度指数(Shimpson の多様度指数 ) を比較した.2012 年度から 2015 年度の春季 ~ 秋季にかけてデータが揃っている月の多様度指数の平均値をとり, これを年間の多様度指数とし, 各地点の多様度指数の年変動 ( 図 5) を示した. 多様度指数の値は期間を通じて C 地点,B 地点,A 地点の順に高いことがわかった. (2) タナゴの全長について 2015 年の調査では, 生後 1~ 数年以上は経過していると考えられるのタナゴの個体数が多く,1 年魚のタナゴと見られる魚はほとんど観察されていない.1 年魚の個体数が見られないということは, 少なくとも調査地点の近辺ではタナゴの繁殖が行われていない可能性が高い. A 地点において,2014 年度に侵入したタイリクバラタナゴが増加傾向にあると考えられることから, 過去 4 年分の 5 月と 9 月におけるタナゴの平均体長意の推移を図 6 に示した.2012 年,2013 年と大きな体長の変化は見られないが,2015 年はタナゴの大きな個体が増加したようにみえる. タナゴの稚魚を明確に識別する能力が不足しているということも,1 年魚がほとんど見られなかった要因として考えられるので, 今後の調査で改善していきたい. (3) 全体を通して 2015 年の 9 月に発生した台風 18 号の影響で, 吉田川と関連の河川は広域にわたり氾濫し, 調査地域一帯 ( 特に B 地点,C 地点 ) も水路が溢水, 周辺の田んぼが水没した. 直後の 9 月の調査で川の内外を確認したが, 川底や岸が大きく浸食された様子であった.C 地点ではこの時, タイリクバラタナゴとタナゴの割合が大きく減少し, タモロコの割合が大きく増加した. 増水の影響でこれらの魚が移動していたことが考えられる. 川の中の環境が変化したことがどのような影響を及ぼすのか来年度以降も注意深く見ていきたい. A 地点においても, タイリクバラタナゴがタナゴに及ぼす影響を継続して注意深く見ていく必要がある. また 2015 年には, 調査活動の際, 釣りをしに来るタナゴ愛好家に出会うということが少なくなかった. 地域の方に話を伺うと, 県内外から頻繁に釣り人が来ているそうである. 調査活動時に出会った場合声掛けを行っているが, 今後は調査結果を地域に還元し, 地域との連携を図り, 地域ぐるみでタナゴの保全を行っていくことが効果的であり望ましいと考えられる. 謝辞調査を行うにあたり, 宮城教育大学自然フィールドワーク研究会のメンバーには多大なご指導ご協力をいただいた. また, 調査地域の方々には, 活動に対してご理解いただき, 温かい目で見守っていただいた. この場を借りて感謝申し上げたい. 引用文献赤井裕 秋山信彦 上野輝 葛島一美 鈴木伸洋 増田修 薮本美孝 2009. タナゴ大全. エムピージェー, 神奈川. 稲葉修 2003. 福島県の在来タナゴ類. 野馬追の里原町市立博物館研究紀要,5, 41-54. 福原修一 2000. 貝に卵を産む魚. トンボ出版, 大阪市宮城県自然保護課 2013. 宮城県レッドリスト. 国立研究開発法人国立環境研究所 : 侵入生物データベース URL: https://www.nies.go.jp/biodiversity/ invasive/ 図 6. タナゴの平均体長の推移 (A 地点 ) -69-