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CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理について

参考 企業会計基準第 25 号 ( 平成 22 年 6 月 ) からの改正点 平成 24 年 6 月 29 日 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 の設例 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 平成 22 年 6 月 30 日 ) の設例を次のように改正

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税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合

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改正法人税法により平成 24 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度については法人税率が 30% から 25.5% に引き下げられ また 復興財源確保法により平成 24 年 4 月 1 日から平成 27 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度については基準法人税額の 10% が復興特別法人

平成28年度 第144回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

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課税売上割合 消費税の課税売上割合の計算は 次の算式により計算します 課税売上割合が 95% 以上と未満では 仕入税額 控除の計算方法が変わってくるため算定する必要があります 課税売上割合 = 課税売上 ( 税抜 )/( 非課税売上 + 課税売上 )( 税抜 ) 消費税の課税売上割合が 95% 以上

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3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

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「中小企業の会計に関する指針《新旧対照表

損金算入できる税金 1. 概要消費税の計算を税抜経理処理して決算時点で課税売上割合が 95% 未満になった場合 控除対象外消費税が出てきます この仮受消費税と仮払消費税の差額と 確定納付額のずれは 損金算入できます 課税売上割合が 80% 以上 95% 未満の場合は 全額を租税公課として損金計上でき

貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

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野村アセットマネジメント株式会社 2019年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

債務控除できるもの できないもの 1. 概要相続税の申告で 債務控除できるものや葬式費用には 被相続人名義の銀行借入金や未納の所得税等の公租公課 未払医療費等のいわゆる債務の金額 葬式費用が挙げられます ( 相法 13) 斎場へのタクシー代や式後の飲食代なども含みますが 通常必要とされる範囲内とされ

作成する申告書 還付請求書等の様式名と作成の順序 ( 単体申告分 ) 申告及び還付請求を行うに当たり作成することとなる順に その様式を示しています 災害損失の繰戻しによる法人税 額の還付 ( 法人税法 805) 仮決算の中間申告による所得税 額の還付 ( 法人税法 ) 1 災害損失特別勘

科目 期別 損益計算書 平成 29 年 3 月期自平成 28 年 4 月 1 日至平成 29 年 3 月 31 日 平成 30 年 3 月期自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 ( 単位 : 百万円 ) 営業収益 35,918 39,599 収入保証料 35,765 3

計算書類 貸 損 借益 対計 照算 表書 株主資本等変動計算書 個 別 注 記 表 自 : 年 4 月 1 日 至 : 年 3 月 3 1 日 株式会社ウイン インターナショナル

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計 算 書 類

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『学校法人会計の目的と企業会計との違い』

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 資産の部 負債の部 流動資産 (63,628,517) 流動負債 (72,772,267) 現金及び預金 33,016,731 買掛金 379,893 売掛金 426,495 未払金 38,59

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

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第 3 期決算公告 (2018 年 6 月 29 日開示 ) 東京都江東区木場一丁目 5 番 65 号 りそなアセットマネジメント株式会社 代表取締役西岡明彦 貸借対照表 (2018 年 3 月 31 日現在 ) 科目金額科目金額 ( 単位 : 円 ) 資産の部 流動資産 負債の部 流動負債 預金

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平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

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3. その他 (1) 期中における重要な子会社の異動 ( 連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動 ) 無 (2) 会計方針の変更 会計上の見積りの変更 修正再表示 1 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 無 2 1 以外の会計方針の変更 無 3 会計上の見積りの変更 無 4 修正再表示 無 (3)

. 減価償却の仕組みを理解する 60 定率法 定額法など減価償却の方法を理解しましょう. 有価証券の整理をする 68 有価証券一覧表に 購入売却のつど その取引内容を記載していくと 決算業務の際に便利です. 受取配当金を集計する 78 有価証券の整理後 受取配当金と源泉所得税を集計し 申告書作成の準

連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

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利益積立金額第 10 章税法上の資本の部 第 2 節利益積立金額 利益積立金額とは 法人の所得の金額のうち留保されているものをいう ( 法 21 十八 ) この利益積立金額は 法人の所得として課税済みの金額であり それが株主等に配当等された場合には二重課税の調整を要し また 特定同族会社の留保金課税

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財務諸表 金融商品取引法第 193 条の 2 第 1 項の規定に基づき 当社の貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書及び附属明細表については 有限責任あずさ監査法人の監査証明を受けております 貸借対照表 科目 ( 資産の部 ) 流動資産 平成 27 年度末平成 28 年 3 月 31 日現在

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

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第 76 期 計算書類 自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 大泉物流株式会社

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

企業会計の利益 法人税法上の所得金額 売上原価販売費一般管理費営業外費用特別損失 売上 営業外収益特別利益 損金の額原価費用損失の額 益金の額 ( 収益の額 ) 当期純利益所得の金額 2 益金の額に算入すべき金額とは何か益金の額に算入すべき金額とは 法人税法の規定や他の法令で 益金の額に算入する 又

連結会計入門 ( 第 6 版 ) 練習問題解答 解説 練習問題 1 解答 解説 (129 頁 ) ( 解説 ) S 社株式の取得に係るP 社の個別上の処理は次のとおりである 第 1 回取得 ( 平成 1 年 3 月 31 日 ) ( 借 )S 社株式 48,000 ( 貸 ) 現預金 48,000

つまり 平成 19 年の医療法改正に伴い 医療法人の会計基準は 一般に公正妥当と認 められる会計の慣行 に従えばよいことになったのです 一般に公正妥当と認められる会計の慣行 は何かと言うと 一般的には企業会計原則に基づいて作られている企業会計基準を指しますが 企業会計基準に限定されていません したが

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投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

(1) (2) (3) (1) (2) (3) (4) 決算整理後残高試算表 勘定科目 金 額 勘定科目 金 額 現 金 預 金 ( ) 未払法人税等 ( ) 土 地 ( ) 租 税 公 課 ( ) 法 人 税 等 ( ) 2

[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

税されるときは 給与等課税事由が生じた日 ( 権利行使日 ) に 法人において 当該役務提供に係る費用の額が損金に算入されますので ( 法人税法第 54 条第 1 項 ) ストック オプションの付与時において将来減算一時差異に該当し 税効果会計の対象となります Q3: 削除 Ⅱ 中間財務諸表等におけ

リコーグループサステナビリティレポート p

(1) 連結貸借対照表 ( 添付資料 16 ページ ) (3) 連結株主資本等変動計算書 ( 添付資料 28 ページ ) 6. 個別財務諸表 (1) 貸借対照表 ( 添付資料 31 ページ ) (3) 株主資本等変動計算書 以上 2

第1章 簿記の一巡

税効果会計シリーズ(3)_法定実効税率

第10期

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

第6期決算公告

設定方法 注意 事前にすべての決算書マスタ登録 決算書印刷マスタが済んでおり 決算書が正常に印刷できる状態であることを前提とします まだ 決算書マスタ登録 及び決算書印刷マスタの設定が済んでいない場合は 予め設定を行ったうえで 法人税の達人の設定を行うようにしてください また 決算書項目を設定する際

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平成 23 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 粉飾決算と過年度損益修正 http://www.up-firm.com 1

粉飾決算と過年度損益修正 1. 概要 経営上の諸般の事情により やむを得ず粉飾して架空売上や架空在庫を計上する場合があります 前期以前の 過年度の決算が間違っていた場合は 会計上は当期の期首で修正できます ただし 過年度の損失を当期に損金算入すれば その事業年度に損金計上すべきであり 過年度の損失は当期の損金ではない という理由で更正処分をされます ( 法法 223 三 ) つまり 会計上の修正は当期で出来ても過去の損失を当期の税務上の損金に計上することは出来ません ( 国税不服審判所平成 18 年 11 月 21 日裁決事例 東京地裁平成 22 年 9 月 10 日判決係属中 ) 2. 設例 1 架空売上の計上 :264 百万円 ( 平成 12 年 3 月期 ) 2 減価償却の停止 :318 百万円 ( 平成 16 年 3 月期 ) 3 架空在庫の計上 :124 百万円 ( 平成 20 年 3 月期 ) これらについて 平成 24 年 3 月期決算で会計上は期首 貸借対照表と株主資本等変動計算書で処理した 平成 24 年 3 月期の貸借対照表と損益計算書は 以下の通り ( 金額単位 : 百万円 ) 諸資産 22,000 諸負債 18,000 資本金 1,000 利益剰余金 3,000 原価 242,500 売上高 245,000 当期利益 2,500 http://www.up-firm.com 2

3. 会計処理上記の1~3の粉飾決算について 従来は損益計算書の特別損失に 過年度損益修正損 として計上していました しかし 平成 23 年 4 月 1 日以降開始する事業年度からは 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 が適用されます このため 期首の資産 負債 純資産に修正内容を反映させます 区分 A) 会計方針の変更遡及処理する ( 遡及適用 ) 会計処理 1 会計上の変更 B) 表示方法の変更遡及処理する ( 財務諸表の組み替え ) C) 会計上の見積もりの変更遡及処理しない 2 過去の誤謬の訂正遡及処理する ( 修正再表示 ) 平成 24 年 3 月期の期首時点の具体的な会計処理は 以下の通りです ( 金額単位 : 百万円 ) 売上高 264 売掛金 264 減価償却費 318 減価償却累計額 318 売上原価 124 棚卸資産 124 利益剰余金 706 売上高 264 減価償却費 318 売上原価 124 上記の 1~3 の粉飾決算については 会計上は 2 過去の誤謬の訂正に該当するので当期首の資産 負債 純資 産を修正再表示して誤謬の内容を注記表に注記します ( 会計規 102 条の 5) 上記事例のケースでは 以下の注記 例が考えられます 当社は 会計上の誤謬により平成 12 年 3 月期に売上高を 平成 16 年 3 月期に固定資産を 平成 20 年 3 月期に棚卸資産を過大に計上していた この会計上の誤謬は修正再表示により訂正されるため 当期首の貸借対照表は売掛金が 264 百万円 固定資産が 318 百万円 棚卸資産が 124 百万円減少することにより 利益剰余金が 706 百万円減少する この結果 当期の株主資本等変動計算書の期首利益剰余金を 706 百万円減少させている なお 仮装経理に該当するものは 売上高と棚卸資産に関するものである http://www.up-firm.com 3

平成 24 年 3 月期で上記設例の誤謬を訂正した場合の株主資本等変動計算書の記載例は 以下の通りです ( 金額単位 : 百万円 ) 株主資本 1,000 利益剰余金当期首残高 1,206 過去の誤謬の訂正による累積的影響額 706 遡及処理後当期首残高 (X) 500 当期変動額 当期純利益 2,500 当期変動額計 (Y) 2,500 当期末残高 (X+Y) 3,000 4. 税務処理会社が過大申告していた場合は その事実を修正経理した確定申告書を提出するまで税務署長は更正をしないことが出来ます ( 法法 1291) 具体的な修正経理とは 損益計算書の特別損失に 過年度損益修正損 として明示する事です この取扱いは 過年度の仮装経理を修正した事実を明確に表示することを義務付けることで粉飾決算を防止し 真実の経理の公開を確保しようという趣旨によるものです ( 大阪地裁平成元年 6 月 29 日判決 ) 税務上は 上記設例 1~3の損失は別表四で加算 留保つまり自己否認して提出し 税務署長に職権による減額更正の嘆願書や上申書を提出することになります 納税者が過大申告をした場合は 法定申告期限から 1 年以内ならば更正の請求が出来ます ( 通則法 231) 1 年超 5 年以下の場合は 実務上は 嘆願の請求 をして税務署長に任意で減額更正をお願いすることになります 5 年を超えると 納めすぎた税金は還付されません ( 通則法 702) 1 については法定申告期限から 5 年経過しているため 減額更正の対象となりません 2 は会計上の判断や選択 の結果であり仮装経理ではないので 減額更正の対象となりません 3 は平成 25 年 5 月までに更正されると 更正の 日の属する事業年度から 5 年間で納付すべき法人税額から順次控除されます 仮装経理によって過年度に過大納付された法人税額は 減額更正が行われても通常の更正の請求のように還付加算金がついたり直後に還付される訳ではありません 更正年度以後 5 年間の通常の法人税額から 順に税額控除することとされています ( 法法 701 1353) 但し その更正年度の前年度に納付法人税額がある場合には その分だけはすぐに還付されます ( 法法 1352) 5 年経過後でも控除しきれなかった残額は 切り捨てられずに還付してもらえます 税額控除は 別表一 ( 一 ) の (11) 仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う控除法人税額 の欄に記入します 仮装経理とは税法上の用語ですが いわゆる世間一般で言う粉飾決算のことです 事実に基づかない会計処理を 意図的にした結果 税金を過大納付することです 具体的には 架空売上の計上や期末棚卸資産の過大計上 仕 入れや費用の過少計上が該当します ただし減価償却費や各引当金の過小計上 評価損の計上見送りは会計上の 粉飾決算ですが 税務上は任意に損金経理するものだから仮装経理には該当しません 同様に 所得税額控除の http://www.up-firm.com 4

失念で損金計上した場合や租税特別措置法の特例の適用失念のケースも適法なので更正の請求は出来ません 税務上も粉飾決算を未然に防止するために 違法な仮装経理を行うことに厳しい取扱いがなされています 上記事 例のケースで 平成 24 年 3 月期の法人税申告書の記載例は以下の通りです < 別表四 > 区分 総額 留保 社外流出 1 2 3 当期利益又は当期欠損の額 3,000 3,000 加算 減算 仮計 3,000 3,000 < 別表五 ( 一 )> Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書 区分期首利益積立金期中増減期末 減少 増加 売掛金 264 264 固定資産 318 318 棚卸資産 124 124 繰越損益金 500 500 3,000 3,000 Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書 区分 期首資本金等の額 期中増減 期末 減少 増加 資本金 1,000 1,000 上記のうち 売掛金と固定資産に関する会計と税務の差異は法律上更正することができません このため 売掛金 は永久に 固定資産は税務上の減価償却が終了するまで別表五に残存することになります 棚卸資産は任意での 更正の嘆願が受け入れられた場合に 会計との差異が解消します http://www.up-firm.com 5

5. 平成 21 年度税制改正粉飾していた会社が民事再生法や会社更生法の適用を申請しても 上記取扱いの例外となりませんでした つまり 原則通り更正に伴い減額された法人税額も 5 年の繰越控除後の還付となっていました このため 事業再生スキームでは過大納付法人税の還付を早期化するために破産を選択したり 連結納税制度を適用したり 解散するスキームが良くあります ( 旧 法法 134 条の 23 二 国税不服審判所昭和 46 年 9 月 27 日裁決事例 ) 平成 21 年度税制改正により 株主責任と経営者責任が追及された以下のようなケースでは 繰越控除制度の適用を終了し仮装経理法人税額の早期還付が認められるように手当てされました ( 法法 13534) 1 会社更生法等の更正手続開始の決定があった場合 2 民事再生法の規定による再生手続開始の決定があった場合 3 1 2 に準ずる一定の会社整理の場合 ( 法令 174 の 22) この改正は 平成 21 年 4 月 1 日以後に生じる企業再生事由について適用されます 6. 平成 23 年度税制改正平成 22 年 12 月 16 日に公表された政府の平成 23 年度税制改正大綱では 当初の申告要件の廃止や納税者の更正の請求期限の 1 年から 5 年への延長が予定されています 更正の請求期限の延長により 上記の粉飾決算または税務上の仮装経理に関する取り扱いに変更が生じるかどうかについて 今後の動向が注目されます http://www.up-firm.com 6

7. その他の留意事項 (1) 消費税の取り扱い消費税では 上記の法人税のような仮装経理の取扱いがありません つまり 架空売上を計上した場合でも 過大納付した消費税等は 1 年以内の更正の請求でしかリカバリーできません (2) 上場企業の会計上の取り扱い上場企業では巨額の過年度損益修正を当期の損益計算書に計上するか 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 に従い当期の有価証券報告書等を修正再表示して管轄の財務局に提出するか を金額的重要性に応じて検討する必要があります ( 企業会計基準委員会会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準平成 21 年 12 月 4 日第 21 65 項 ) この会計基準は 平成 23 年 4 月 1 日以降に開始する事業年度から適用されます 従来は 過年度の損益計算を修正する場合は 過年度損益修正損益 を当期の損益計算書の特別損益に計上していました 今後はこの会計基準が適用されて 修正額を損益計算書ではなく貸借対照表の期首の繰越利益剰余金等に反映することになります 会計上の粉飾決算 税務上の仮装経理があった場合は この期首の訂正が修正経理に該当します ( 法法 1291 法人が 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 を適用した場合の税務処理について ( 情報 )Q5 Q8) Reference Purpose Only 本レターに掲載している情報は 一般的なガイダンスに限定されています この文書は 個別具体的ケースに対する会計 税務のアドバイスをするものではありません 会計上の判断や税法の適用結果は 事実認定や個別事情によって大幅に異なることがありえます また 解説の前提となる会計規則や税制が変更されている可能性もあります 実際に企画 実行される場合は 当事務所の担当者にご確認ください http://www.up-firm.com 7