ベクティビックス を投与される患者さんへ 大腸がん患者さんのための医療制度ガイドブックー第 5 版ー 監修 : 宮田佳代子国立がん研究センター中央病院相談支援センター社会福祉士 この冊子は 2016 年 4 月現在の制度に基づいて作成しています 2016 年 9 月作成
治療費を軽減するための制度高額療養費制度高額医療 高額介護合算制度 医療費控除 傷病手当金制度 障害年金高額療養費制度の具体例このガイドブックは ベクティビックス による大腸がん治療を受ける患者さんが安心して治療を受けられるように 治療にかかる費用およびその費用に対する各種サポートなどについて 解説しています 患者さんごとの病状や治療内容 経過 年齢 所得 居住地などによって 受けることのできるサービスが異なりますので ご自身が給付の条件にあてはまるかどうかをチェックしながらお読みください はじめに 2
治療費を軽減するための制度高額療養費制度高額医療 高額介護合算制度 医療費控除 傷病手当金制度 障害年金高額療養費制度の具体例目次治療費を軽減するための制度高額療養費制度 70 歳未満の方 70 歳以上の方高額医療 高額介護合算制度医療費控除傷病手当金制度障害年金高額療養費制度の具体例 4 5 5 6 7 8 9 10 11 3
治療費を軽減するための制度医療費控除 傷病手当金制度 障害年金高額療養費制度の具体例治療費を軽減するための制度 大腸がん治療において 患者さんは医療機関に自己負担額分 (3 割 2 割または1 割 ) を支払うことになります 月々の費用を軽減できる制度として 高額療養費制度があります また 年間の費用を軽減する制度として 医療費控除や高額医療 高額介護合算制度があります 会社にお勤めの方には 傷病手当金制度もあります なお これらの制度の利用には多くの場合申請が必要です 高額療養費制度高額医療 高額介護合算制度 月々の費用負担を軽減する制度 高額療養費制度 1ヵ月の自己負担額 ( 保険対象分 ) が限度額を超えた場合 数ヵ月後に超えた分の医療費の払い戻しを受けられる制度です 保険者によっては 支給見込み額の 8 10 割を無利子で貸付する高額療養費貸付制度 委任払い制度や付加給付制度もあります 年間の費用負担を軽減する制度 高額医療 高額介護合算制度 医療費控除 ( 確定申告 ) 1 年間に支払った医療費の合計が 10 万円以上となる方が対象となります p5 p7 p8 その他 傷病手当金制度 保険加入者で 会社を 4 日以上連続で病気欠勤し さらに給与の支給がない場合 対象となります p9 4
治療費を軽減するための制度度高医療費控除 傷病手当金制度 障害年金額医療 高額介護合算制度 1ヵ月の自己負担額が限度額を超えた場合に 超えた分の医療費が数ヵ月後に払い具体例高額療養費制度 戻しが受けられる制度です 食事代や差額ベッド代 診断書料金など保険の効かない費用については高額療養費の支給対象には含まれません 70 歳未満の方 自己負担限度額 限度額適用認定証を利用しましょう 加入する医療保険から事前に限度額適用認定証を取得し 病院窓口に提出しておけば 窓口での支払いが自己負担限度額 ( 保険対象分 ) までとなる証明書です 院外薬局でも 限度額適用認定証の利用が可能です ただし 限度額適用認定証を利用する際には 健康保険組合や全国健康保険協会 ( 協会けんぽ ) 自治体( 市区町村 ) の国民健康保険窓口に事前に申請した上で 医療機関に提出することが必要です 申請窓口 窓口は加入している健康保険によって異なります 国民健康保険に加入されてい る方は自治体の国民健康保険の窓口へ 健康保険に加入されている方は各健康 保険組合や協会けんぽ 各共済組合などの窓口にお問い合わせください *1 同一世帯で 1 年間 ( 直近の 12 ヵ月 ) に 4 回以上高額療養費に該当した場合は 4 回目から自己負担限度 額が軽減されます *2 基礎控除後の総所得額 *1 所得区分 1ヵ月あたりの自己負担限度額 4 回目以降 年収約 1,160 万円以上 健保: 標準報酬月額 83 万円以上 国保: 年間所得 *2 901 万円超年収約 770 万 約 1,160 万円 健保: 標準報酬月額 53 万円以上 83 万円未満 国保: 年間所得 *2 600 万円超 901 万円以下年収約 370 万 約 770 万円 健保: 標準報酬月額 28 万円以上 53 万円未満 国保: 年間所得 *2 210 万円超 600 万円以下年収約 370 万円未満 健保: 標準報酬月額 28 万円未満 国保: 年間所得 *2 210 万円以下 国民健康保険の場合 : 患者さんと同じ住民票の家族が代わりに限度額適用認定申請できます ( 国民健康 保険被保険者証と本人確認書類などが必要 ) 252,600 円 + ( 医療費 -842,000 円 ) 1% 140,100 円 167,400 円 + ( 医療費 -558,000 円 ) 1% 93,000 円 80,100 円 + ( 医療費 -267,000 円 ) 1% 44,400 円 57,600 円 44,400 円 住民税非課税 35,400 円 24,600 円 5 高額療養費制高額療養費制度の
治療費を軽減するための制度医療費控除 傷病手当金制度 障害年金高額療養費制度の具体例高額療養費制度 70 歳以上の方 高額療養費制度高額医療 高額介護合算制度 医療費の保険対象分については 1 ヵ月の自己負担限度額を上限に支払います ただし 世帯内で 1 ヵ月以内に複数の病院に入院する場合や 外来 入院の両方の 診察がある場合は それぞれに一旦病院の窓口にて支払い 自己負担限度額を超え た分は 後ほど健康保険組合や全国健康保険協会 ( 協会けんぽ ) 自治体の国民健 康保険窓口から払い戻されます 払い戻しが行われる際は 健康保険組合や協会 けんぽ 自治体の国民健康保険窓口から連絡が来ます 自己負担限度額 所得区分 現役並み所得者 ( 年収約 370 万円以上 ) *2 健保 : 標準報酬月額 28 万円以上 国保 : 課税所得 145 万円以上 一般 ( 年収約 370 万円未満 ) 健保 : 標準報酬月額 28 万円未満 国保 : 課税所得 145 万円未満 住民税非課税 住民税非課税 ( 所得が一定以下 ) 外来 44,400 円 1 ヵ月あたりの自己負担限度額 80,100 円 + ( 医療費 -267,000 円 ) 1% 12,000 円 44,400 円 8,000 円 24,600 円 15,000 円 *1 4 回目以降 44,400 円 *1 同一世帯で 1 年間 ( 直近の 12 ヵ月 ) に 4 回以上高額療養費に該当した場合は 4 回目から自己負担限度 額が軽減されます *2 健康保険の場合は 標準報酬月額 28 万円以上の方 国民健康保険および後期高齢者医療保険制度の場合 は 課税所得が 145 万円以上の方 ( ただし 70 歳以上の方が複数いる世帯では収入の合計額が 520 万円未 満 70 歳以上の方が 1 人の世帯では 383 万円未満の場合 申請により 一般 の区分となります ) 6
治療費を軽減するための制度度高医療費控除 傷病手当金制度 障害年金額医療 高額介護合算制度 具体例高額医療 高額介護合算制度とは 同一世帯で医療保険と介護保険の自己負担額が 高額医療 高額介護合算制度 高額となった場合 一定の上限額を超えた分が払い戻される制度です 例えば 患者さんご本人が大腸がん治療で医療保険 ご家族が介護保険のサービスを受けている場合 それらを合算できます 8 月から翌年 7 月までの1 年間の医療保険と介護保険の自己負担額が同一世帯で一定の上限額を超えた分が払い戻される制度です ただし [ 自己負担額の合算額 自己負担限度額 ] が500 円を超える場合に限ります 事後申請できる期間は 基準日 ( 限度額を認定した日 ) の翌日から2 年間です 支給基準額 高額医療 高額介護合算制度における自己負担限度額 年齢区分 所得区分 限度額 年収約 1,160 万円以上 2,120,000 円 年収約 770 万 約 1,160 万円 1,410,000 円 70 歳未満 年収約 370 万 約 770 万円 670,000 円 年収約 370 万円未満 600,000 円 住民税非課税 340,000 円 年収約 370 万円以上 670,000 円 70 歳以上 年収約 370 万円未満 560,000 円住民税非課税 310,000 円 住民税非課税 ( 所得が一定以下 ) 190,000 円 平成 27 年 8 月から 手続き 介護保険 ( 自治体 ) の窓口へ申請して 介護保険の自己負担額証明書の交付を受け ます これを添付して医療保険の保険者に申請します 申請窓口は介護保険を受けている方が 7 月 31 日現在に加入している医療保険によって異なります 必要書類 1 医療保険と介護保険の自己負担額証明書 2 印鑑 3 振込口座のわかる書類 高額療養費制高額療養費制度の7
治療費を軽減するための制度医療費控除 傷病手当金制度 障害年金高額療養費制度の具体例医療費控除 1 年間に支払った医療費の合計が 10 万円を超えた場合に 確定申告により所得税から最大 200 万円の医療費控除を受けることができます 高額療養費制度高額医療 高額介護合算制度 ケースにより福祉系介護保険サービスの負担金も含まれることもあります 高額療養費制度などと併せて使用できます この場合は実際に支払った額が控除の対象となります 控除の対象となるもの 医師 歯科医師による診療費 治療費 治療 療養のために必要な医薬品購入費 おむつ代 (6ヵ月以上寝たきり状態で 医師が必要と認めた場合 ) ストーマ用装具費用 ( 医師による使用証明書が必要 ) など かつらは対象となりません 手続き ( 窓口 ) お住まいの税務署で確定申告をします 必要書類 1 確定申告書 2 医療費の明細書 ( 所定の用紙がありますが 自分で一覧表を作って も構いません ) 医療費の領収書 レシート 源泉徴収票 ( 給与取得者のみ ) 3 印鑑 が必要です 8
治療費を軽減するための制度度高医療費控除 傷病手当金制度 障害年金額医療 高額介護合算制度 4 日以上連続 会社を欠勤し 給与が具体例会社にお勤めの方が大腸がん治療などの理由で 傷病手当金制度 減額されたり 支払われない場合に その差額や標準報酬日額の 3 分の2 程度の給付を最長 1 年 6ヵ月 受けられます 保険種別により手当金制度がない場合や 支給額が異なる場合があります 詳細はご加入の健康保険組合 もしくは会社の担当窓口へお尋ねください 支給の対象 1 社会保険に加入されている会社勤めの方 2 療養中 労務不能 4 日以上連続休務 欠勤扱い 3 給与 ( 報酬 ) が減額または支払われていない方なお 給料が支払われていても 傷病手当金の金額よりも少ないときはその差額が支給されます 手続き ( 窓口 ) 窓口は加入している被用者保険によって異なります 各健康保険組合や協会けんぽ 各共済組合などの窓口にお問い合わせください 受けられる期間は 支給が開始された日から1 年 6ヵ月です 高額療養費制高額療養費制度の9
治療費を軽減するための制度医療費控除 傷病手当金制度 障害年金高額療養費制度の具体例障害年金 障害年金は 病気やけがで生活や仕事が制限されるようになった場合に年金加入者に対して支給されます 障害年金には 障害基礎年金 障害厚生年金 があり 国民年金の被保険者には 障害基礎年金 が 厚生年金の被保険者には 障害厚生年金 が支給されます 障害基礎年金 高額療養費制度高額医療 高額介護合算制度 障害基礎年金は国民年金の加入者に対し支給されるものです 国民年金の被保険者となる前 (20 歳未満 ) や被保険者資格を失った後 (60 歳以上 65 歳未満 ) である場合でも支給対象となります 受給には一定の条件が必要です 受給条件 初診日 ( 障害の原因となった病気やけがについて 初めて医師の診察を受けた日 ) に国民年金に加入していた 保険料納付済期間が加入期間の3 分の2 以上ある 障害認定日 ( 初診日から1 年 6ヵ月経過した日 ) 時点で 制度で定められている障害等級 1~2 級に該当していること 障害厚生年金 平成 27 年 10 月 1 日から 共済年金は厚生年金に統一されました 障害厚生年金は一定の要件を満たした厚生年金加入者に支給されるものです 受給条件 障害の等級が1~3 級に該当する 初診日に厚生年金に加入していた 1~2 級の場合は 障害基礎年金に障害厚生年金を加えた金額が支給され 3 級の場合は 障害厚生年金だけが支給されます 年金の額は 平均標準報酬額と年金加入月数により異なります 手続き ( 窓口 ) 障害年金の手続きは複雑ですので 手続きを行う前に 日本年金機構の ねんきんダイヤル ( ナビダイヤル 0570-05-1165) に電話または 年金事務所や街角の年金相談センターなどに事前に相談することをお勧めします ご相談後 障害基礎年金はお住まいの自治体または年金事務所 障害厚生年金はお近くの年金事務所に 年金請求書 と添付書類を提出して 請求の手続きを行います 10
治療費を軽減するための制度度高医療費控除 傷病手当金制度 障害年金額医療 高額介護合算制度 による治療は 他の薬剤との併用で行います 具体例ベクティビックス 高額医療費制度の具体例 ベクティビックス は 患者さんの体重に応じて投与量が決められます 患者さんの体 重によって必要なベクティビックス の本数が異なるため 必要な薬剤費も異なります ベクティビックス 投与スケジュールの例 週 1 2 3 4 5 6 7 ベクティビックス 投与投与投与投与 1 サイクル 2 週間 ベクティビックス を外来で月に 2 回投与した場合 ( 年収約 370 万円 ~770 万円の場合 ) ベクティビックス 以外の薬剤費 検査費 診察費などの医療費が別途かかります 実際に会計窓口で支払う一部負担金額 高額療養費適用後の自己負担額は下記の 表とは異なります 体重 (1kg 単位で計算 ) 1 回の治療に必要なベクティビックス の薬剤費 ( 本数 ) 1 ヵ月に必要なベクティビックス の薬剤費 3 割負担 70 歳未満 70 歳以上 高額療養費高額療養費 1 割負担制度適用後の (2 割負担 *1 制度適用後の ) 自己負担額自己負担額 33kg 以下 155,452 円 (2 本 ) 310,904 円 93,270 円 80,540 円 31,090 円 (62,180 円 ) 44,000 円 34~50kg 233,178 円 (3 本 ) 466,356 円 139,910 円 82,090 円 46,640 円 (93,270 円 ) 44,000 円 51~66kg 310,904 円 (4 本 ) 621,808 円 186,540 円 83,650 円 62,180 円 (124,360 円 ) 44,000 円 67~83kg 388,630 円 (5 本 ) 777,260 円 233,180 円 85,200 円 77,730 円 (155,450 円 ) 44,000 円 84~100kg 466,356 円 (6 本 ) 932,712 円 279,810 円 86,760 円 93,270 円 (186,540 円 ) 44,000 円 所得区分が標準報酬月額 28 万円以上 53 万円未満 ( 年収約 370 万円 ~770 万円 ) の場合を示しています 窓口で支払う一部負担金の 5 円未満の端数は切り捨て 5 円以上 10 円未満の端数は 10 円に切り上げとなります 70 歳以上の場合 高額医療費の計算方法と自己負担限度額は外来と入院で異なります 薬剤費はすべて 100mg バイアルを使用した場合で計算しています *1 平成 26 年 4 月 2 日以降に 70 歳に達した方 ( 誕生日が昭和 19 年 4 月 2 日以降の方 ) は 70 歳となる誕生月の翌月 ( 各月 1 日が誕生日の方はその月 ) の診療から 窓口負担は 69 歳までの 3 割から 2 割になります 高額療養費制高額療養費制度の11
医療機関名 (1-5-5707) 2016 年 9 月作成