★臨床看護研究集録13号・扉

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看護部 : 教育理念 目標 目的 理念 看護部理念に基づき組織の中での自分の位置づけを明らかにし 主体的によりよい看護実践ができる看護職員を育成する 目標 看護職員の個々の学習ニーズを尊重し 専門職業人として成長 発達を支援するための教育環境を提供する 目的 1 看護専門職として 質の高いケアを提供

4 子育てしやすいようにするための制度の導入 仕事内容への配慮子育て中の社員のため以下のような配慮がありますか? 短時間勤務ができる フレックスタイムによる勤務ができる 勤務時間等 始業 終業時刻の繰上げ 繰下げによる勤務ができる 残業などの所定外労働を制限することができる 育児サービスを受けるため

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ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)  レベル診断チェックシート

青警本務第 号 青警本総推第 号 青警本生企第 号 青警本刑企第 号 青警本交企第 号 青警本備一第 号 平成 2 8 年 3 月 1 8 日 各所属長殿 青森県警察本部長 レピーサポート 職場復帰サポート実施要綱の制定について

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

)各 職場復帰前 受入方針の検討 () 主治医等による 職場復帰可能 との判断 主治医又はにより 職員の職場復帰が可能となる時期が近いとの判断がなされる ( 職員本人に職場復帰医師があることが前提 ) 職員は健康管理に対して 主治医からの診断書を提出する 健康管理は 職員の職場復帰の時期 勤務内容

2. 調査結果 1. 回答者属性について ( 全体 )(n=690) (1) 回答者の性別 (n=690) 回答数 713 のうち 調査に協力すると回答した回答者数は 690 名 これを性別にみると となった 回答者の性別比率 (2) 回答者の年齢層 (n=6

PowerPoint プレゼンテーション

スライド 1

2013 年度 統合実習 [ 表紙 2] 提出記録用紙 5 実習計画表 6 問題リスト 7 看護過程展開用紙 8 ( アセスメント用紙 1) 9 ( アセスメント用紙 2) 学生証番号 : KF 学生氏名 : 実習期間 : 月 日 ~ 月 日 実習施設名 : 担当教員名 : 指導者名 : 看護学科

Ⅱ.1 ワーク ライフ バランス施策の定義と類型 (1) ワーク ライフ バランス施策とは work-life balance 1 (2) ワーク ライフ バランス施策の類型

参考 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに 家

4-1 育児関連 育児休業の対象者 ( 第 5 条 第 6 条第 1 項 ) 育児休業は 男女労働者とも事業主に申し出ることにより取得することができます 対象となる労働者から育児休業の申し出があったときには 事業主は これを拒むことはできません ただし 日々雇用される労働者 は対象から除外されます

中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル

4 父親も育児参画しよう! 父親となる職員に, 配偶者出産休暇や男性の育児参加休暇を取得するよう働き掛けましたか 対象の職員全てに働き掛けは行われている 回答数 76 0 全人数割合 (%) 対象者なし 293 配偶者出産休暇 (3 日 ) 数値目標 31 年度までに配偶者出

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資料2 本調査の依頼書(対象者用)

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★臨床看護研究集録13号・扉

72 豊橋創造大学紀要第 21 号 Ⅱ. 研究目的 Ⅲ. 研究方法 1. 対象 A B

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Ⅲ. 研究方法 1. 文献検索の方法 Web CiNii Articles Google Scholar 分析と方法 1 表 1 2 表 2 3. 用語の定義 Ⅳ. 結果 1. 退院後の母乳育児支援に関する

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課題名

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必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲内で 3 回を上限として介護休業をすることができる ただし 有期契約従業員にあっては 申出時点において 次のいずれにも該当する者に限り 介護休業をすることができる 一入社 1 年以上であること二介護休業開始予定日から 93 日を経過する日から

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1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

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調査結果 転職決定者に聞く入社の決め手 ( 男 別 ) 入社の決め手 を男 別でみた際 性は男性に比べると 勤務時間 休日休暇 育児環境 服装 オフィス環境 職場の上司 同僚 の項目で 10 ポイント以上 かった ( 図 1) 特に 勤務時間 休日休暇 の項目は 20 ポイント以上 かった ( 図

2 2

意匠公知資料データベースの公開促進のための方策の在り方について(案)

従業員に占める女性の割合 7 割弱の企業が 40% 未満 と回答 一方 60% 以上 と回答した企業も 1 割以上 ある 66.8% 19.1% 14.1% 40% 未満 40~60% 未満 60% 以上 女性管理職比率 7 割の企業が 5% 未満 と回答 一方 30% 以上 と回答した企業も 1

しい支障が生じることとなったこととする 3 前条の規定は 育児休業の期間の延長の請求について準用する ( 育児休業の期間中の休暇等の取扱い ) 第 5 条育児休業をしている職員に対しては 職員就業規程第 37 条の規定による年次有給休暇並びに就業規程第 39 条の規定による公民権行使等休暇 事故休暇

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する 研究実施施設の環境 ( プライバシーの保護状態 ) について記載する < 実施方法 > どのような手順で研究を実施するのかを具体的に記載する アンケート等を用いる場合は 事前にそれらに要する時間を測定し 調査による患者への負担の度合いがわかるように記載する 調査手順で担当が複数名いる場合には

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平成18年度標準調査票

書類が整理できない ~ 書類 書類棚の 5S~ 書類が整理できない 岐阜赤十字病院看護部係長会小柳葉子村瀬彩はじめに当院は 平成 25 年度より 業務 KAIZEN 活動 (QC サークル活動 ) を開始し 毎年 20 前後のチームが活動に取り組んでいる 看護部係長会も 当初から 5S 班 を結成し

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

平成18年度標準調査票

4-1 育児関連 休業期間を有給にするか 無給にするかは 就業規則等の定めに従います また 雇用保険に加入している労働者には 国から給付金が支給されます (P106 参照 ) 産前産後休業期間中及び育児休業期間中は 労働者 使用者とも申請により社会保険料が免除になります 育児休業の対象者 ( 第 5


( イ ) 従業員の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり 1 歳 6か月以降育児に当たる予定であった者が死亡 負傷 疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合 6 育児休業をすることを希望する従業員は 原則として 育児休業を開始しようとする日の1か月前 (4 及び5に基づく1 歳

論文題目 大学生のお金に対する信念が家計管理と社会参加に果たす役割 氏名 渡辺伸子 論文概要本論文では, お金に対する態度の中でも認知的な面での個人差を お金に対する信念 と呼び, お金に対する信念が家計管理および社会参加の領域でどのような役割を果たしているか明らかにすることを目指した つまり, お

ける臨床実習指導者と病棟看護師の役割分担を明確にして協力体制を整えることで 病棟 全体で学生指導に携わるという実習環境を整えることができると考え 実践計画を立案す ることとした II. 計画内容 1. 目的臨床実習指導における臨床実習指導者と病棟看護師の役割分担を明確にし 臨床実習指導体制を整える

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深夜勤務の制限 5 妊産婦の時間外 休日 妊娠中の女性が 母体または胎児の健康保持のため 深夜勤務や時間外勤務等の制限を所属長に請求できます 病院助手専攻医臨床研修医 6 妊娠中の休息 妊娠中の女性は 勤務時間規程に規定する 職務に専念する義務の免除 を利用して 母体または胎児の健康保持のため 勤務

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Ⅰ. クリニカルラダー ( 看護師の実践能力段階的システム ) について クリニカルラダーは 看護の質の向上 を目的に 臨床ナース一人ひとりが臨床における看護実践能力を高められるよう支援していくシステムであり 看護実践能力は 基礎教育で学習して知識 技術をもとに 実際に臨床で経験する中で知識を積み重

6. 研究が終わった後 血液を他の研究に使わせてください 詳しくは ページへ 病には未解決の部分がまだ多く残っています 今後のさらなる研究のため ご協力をお願いいたします ( 必要に応じて ) バンク事業へのご協力をお願いします 遺伝子を扱う研究を推進するため 多くの人の遺伝子の情報を集めて研究に使

平成18年度標準調査票

仕事と家庭の両立支援宣言 子育て応援宣言 仕事と家庭の両立支援宣言 職場風土改革促進事業実施事業主 として 21 世紀職業財団より 指定を受けました * 職場風土改革促進事業 の 2 年目取り組みについて * 財団法人小倉地区医療協会三萩野病院 理事長安部 隆二 当院は 平成 22 年 6 月から財

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看護師のクリニカルラダー ニ ズをとらえる力 ケアする力 協働する力 意思決定を支える力 レベル Ⅰ 定義 : 基本的な看護手順に従い必要に応じ助言を得て看護を実践する 到達目標 ; 助言を得てケアの受け手や状況 ( 場 ) のニーズをとらえる 行動目標 情報収集 1 助言を受けながら情報収集の基本

001

平成18年度標準調査票

Slide 1

1. 交際や結婚について 4 人に3 人は 恋人がいる または 恋人はいないが 欲しいと思っている と回答している 図表 1 恋人が欲しいと思わない理由は 自分の趣味に力を入れたい 恋愛が面倒 勉強や就職活動に力を入れたい の順に多い 図表 2 結婚について肯定的な考え方 ( 結婚はするべきだ 結婚

スライド 1

国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院医療に係る安全管理のための指針 第 1 趣旨本指針は 医療法第 6 条の10の規定に基づく医療法施行規則第 1 条の11 の規定を踏まえ 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 ( 以下 センター病院 という ) における医療事故防止について組織的に

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慢性心不全患者が再入院に至った生活行動における問題点 高齢者世帯の患者の自己管理に関する語りを通して 古市麻由子, 子安藍, 八木美穂, 池澤緒利恵 2), 飯田智恵 3) 長岡赤十字病院 6B 棟 2) 元長岡赤十字病院 3) 新潟県立看護大学 Keyword: 慢性心不全, 再入院, 高齢者世帯

改正要綱 第 1 国家公務員の育児休業等に関する法律に関する事項 育児休業等に係る職員が養育する子の範囲の拡大 1 職員が民法の規定による特別養子縁組の成立に係る監護を現に行う者 児童福祉法の規定により里親である職員に委託されている児童であって当該職員が養子縁組によって養親となることを希望しているも

事業者名称 ( 事業者番号 ): 地域密着型特別養護老人ホームきいと ( ) 提供サービス名 : 地域密着型介護老人福祉施設 TEL 評価年月日 :H30 年 3 月 7 日 評価結果整理表 共通項目 Ⅰ 福祉サービスの基本方針と組織 1 理念 基本方針


北里大学病院モニタリング 監査 調査の受け入れ標準業務手順 ( 製造販売後臨床試験 ) 第 1 条 ( 目的 ) 本手順書は 北里大学病院において製造販売後臨床試験 ( 以下 試験とする ) 依頼者 ( 試験依頼者が業務を委託した者を含む 以下同じ ) が実施する直接閲覧を伴うモニタリング ( 以下

社内様式 2 育児 介護 休業取扱通知書 平成年月日 会社名 あなたから平成年月日に 育児 介護 休業の 申出 期間変更の申出 申出の撤回 がありました 育児 介護休業等に関する規則 ( 第 3 条 第 4 条 第 5 条 第 7 条 第 8 条及び第 9 条 ) に基づき その取扱いを下のとおり通

2015年 「働き方や仕事と育児の両立」に関する意識(働き方と企業福祉に関する

54 高知赤十字病院医学雑誌第 2 1 巻第 1 号 年 Ⅱ. 研究目的看護師が結核病棟で転倒予防に対しどのようなことを意識して看護介入を行っていたのかを明らかにしチームで共有することで, 今後の結核病棟での看護の質の向上につなげる. Ⅲ. 研究方法 1. 研究デザイン : 質的帰納

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ダイバーシティ 年に向けた政策展開のポイント テレワークが当たり前になる社会 の実現に向け 多様な主体と連携した普及啓発や導入支援への取組を強化 地域での就労支援やマッチング強化により 女性や高齢者の就業を推進 働き方改革と併せて時差 Biz の定着に向けた取組を推進 強化した政策

第三者評価結果表 施設名救護施設下関梅花園 評価対象 Ⅰ 福祉サービスの基本方針と組織 評価項目 a b c Na 判断の理由 1 理念 基本方針 (1) 理念 基本方針が確立されている 1 理念が明文化されている 理念は明文化され 法人の中長期計画や事業団ホームページ上にも記 載されており その内

育児休業申出書式例

目次 はじめに 1 1 計画期間 2 2 計画の推進体制 2 (1) 計画の策定 変更 点検 (2) 用語の定義 3 女性消防職員の活躍を推進する意義 2 (1) 住民サービスの向上 (2) 消防組織の強化 4 女性職員の活躍の推進に向けた数値目標 取組み 実施時期 ( 女性の活躍推進のための改革

(3) 時差出勤 (1) 及び (2) の勤務時間のほか 次のとおり時差出勤を実施しています ( 警察本部については 平成 26 年度における実施内容を記載しています ) 知事部局等 教育庁 (H 現在 ) 区分勤務時間休憩時間 A 勤務午前 8 時 30 分から午後 5 時 15 分ま

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産前産後 育児休業中看護師の職場復帰に向けた取り組み 2 階西病棟 藤田佳香豊田游風子川村美保 キーワード : 産前産後 育児休業 職場復帰 自己学習 Ⅰ. はじめに近年 医療や看護を取り巻く環境は 少子高齢化の進行 医療技術の進歩 医療提供の場の多様化等により変化してきている また 患者からは質の高いサービスの提供が期待され 看護師の資質 能力の一層の向上が求められている このような医療現場において 女性が多い専門職である看護職の就業継続は ライフイベントである妊娠 出産 育児などによって 離職や一時中断を余議なくされる しかし 日本看護協会でも平成 19 年度よりワーク ライフ バランスに対する取り組みが行われており 育児休業制度の充実や 院内保育所の整備など育児と仕事の両立に向けた子育て支援によって 出産 育児で離職することなく産前産後 育児休業を取得し 仕事を継続し働きやすい環境が整備されてきている めまぐるしく変化している医療や看護の現場において 看護師が産前産後 育児休業を取得すると その間に施設内では様々な変化が起こっている 先行研究では産前産後 育児休業を取得していた看護師が職場復帰前には配置部署の変換や業務内容の変更などで知らないことがあり戸惑ったり 仕事と家庭との両立環境に慣れることや復帰後の職場の変化がイメージできないなどの不安があることが明らかにされている 1)2) そのような状況に適応しながら産前産後 育児休業を取得していた看護師が職場復帰を行うには 看護師自身も休業中に 不安や戸惑いを軽減させるために自己学習を行ったり勉強会に参加したり 自分なりに取り組んでいることがあるのではないかと考えた 職場復帰を行なうにあたり職場からの支援の在り方については明らかにされているが 戸惑いや不安を感じている看護師自身が行なっている職場復帰に向けた取り組みについて言及した研究はされていない そこで今回 産前産後 育児休業を取得した看護師自身の職場復帰に向けた取り組みについて明らかにし それを基盤とした職場復帰支援について考えることが必要だと考えた Ⅱ. 研究目的産前産後 育児休業を取得後に職場復帰を行った看護師が 職場復帰を行うにあたり不安や戸惑いを軽減させるために行った取り組みについて明らかにすることにより 今後の産前産後 育児休業取得者の休業中の支援を考えていく示唆とする Ⅲ. 概念枠組み本研究の概念枠組みを図 1に示す 産前産後 育児休業を取得していた看護師が職場復帰を行う際には 配置部署の変換や業務内容の変更などで戸惑ったり 技術的な感覚を取り戻すことに対して不安がある 産前産後 育児休業を取得している看護師は職場復帰をするにあたりその戸惑いや不安を軽減させるために看護師自身も取り組んでいることがあるのではないかと考えた 看護師自身による軽減取り組み産前産後 育児休業中 ( 図 1 概念枠組み ) 戸惑い 不安 職場復帰 91

Ⅳ. 研究方法 1. 研究デザイン : 質的帰納的究 2. 研究対象 : 平成 22 年 5 月 ~ 平成 23 年 5 月の間に産前産後 育児休業を 1 年以上取得し職場復帰した A 病院の看護師で本研究の主旨を説明し同意の得られた者 3. 調査期間 : 平成 23 年 7 月 1 日 ~ 8 月 31 日 4. データ収集方法 : 臨床看護研究計画書検討 臨床審査委員会の承認を得て A 病院の各病棟の看護師長に研究の趣旨を口頭で説明し研究対象の条件を満たす看護師を選出して頂いた 研究対象者に研究概要と協力依頼を口頭で行い 研究協力に同意を得た看護師の希望する面接日時に 研究概要を文書で説明し 同意書に署名を得た 個室でインタビューによる半構成的面接を実施した IC レコーダーで面接内容を録音し 対象者ごとに逐語録を作成した 5. データ分析方法 : 逐語録より 意味内容の同質性 異質性に従って分類し カテゴリーを抽出した 6. 用語の定義 : 職場復帰とは 産前産後 育児休業取得後に職場に復帰すること と定義する また 取り組みとは 産前産後 育児休業を取得した看護師自身が職場復帰時の戸惑いや不安を軽減するために行っている自己学習のこと と定義する Ⅴ. 倫理的配慮研究対象者に文書と口頭で 1 研究の目的や方法 2 参加は自由意志であること 3 得られた情報は 研究以外の目的で使用しないこと 4 参加の有無により不利益を生じないこと 5 面接の中止や中断が可能であること 6 研究や面接に関する質問や相談などはいつでも受付けること 7データは本研究以外では使用しないこと 8 知り得た情報は 研究目的以外では使用しないこと 9 研究結果は学会等で発表すること 10データの保管は厳重に取扱い研究終了後速やかに適切に破棄すること 11プライバシーを厳守すること 12 発表内容に個人が特定されるような情報は記載しないことを 文書と口頭で説明し 同意の得られた者のみを対象者とした Ⅵ. 結果 1. 対象者の概要対象者は 産前産後 育児休業を 1 ~ 2 年取得した 平均年齢 30 歳の A 病院女性看護師 9 名であった 経験年数は A 病院勤務平均 9 年であった 8 名が一人目の産前産後 育児休業取得後であった 職場復帰時に部署移動があったのは 1 名であった 2. 職場復帰を行うにあたり不安や戸惑いを軽減させるために行った取り組み産前産後 育児休業を取得していた看護師が職場復帰を行うにあたり不安や戸惑いを軽減させるために行った取り組みとして 表 1に示すように 休業前までに身につけた専門知識の復習 新たな専門知識 技術の獲得 部署の最新情報を収集 組織の取り組みへの参加 の 4 つの大カテゴリーが抽出された 以下 は大カテゴリーを は中カテゴリーを ( ) は小カテゴリーを表す 休業前までに身につけた専門知識の復習 は 自宅にある専門書で復習 ノートを活用し業務の振り返り 業務内容のイメージトレーニング の3つの中カテゴリーから構成された 新たな専門知識 技術の獲得 は 新たな知識 技術について専門書で学習 インターネットで学習 雑誌の定期購読を継続し学習 他者からの学習機会の提供 の4つの中カテゴリーから構成された 部署の最新情報を収集 は インターネットから職場の最新情報を収集 他者からの部署の業務について情報収集 他者から復帰時の部署における特徴的な疾患や治療について情報収集 の 3 つの中カテゴリーから構成された 組織の取り組みへの参加 は 復帰前研修への参加 の中カテゴリーから構成された 92

表 1 職場復帰を行うにあたり不安や戸惑いを軽減させるために行った取り組み 大カテゴリー中カテゴリー小カテゴリー 休業前までに身につけた専門知識の復習 新たな専門知識 技術の獲得 部署の最新情報を収集 組織の取り組みへの参加 自宅にある専門書で復習 ノートを活用し業務の振り返り 業務内容のイメージトレーニング 新たな知識 技術について専門書で学習 インターネットで学習 雑誌の定期購読を継続し学習 他者からの学習機会の提供 インターネットから職場の最新情報を収集 他者から部署の業務について情報収集 他者から復帰時の部署における特徴的な疾患や治療について情報収集 復帰前研修への参加 自宅にある本を読む 自宅にある参考書や資料を読む 自宅にある教科書や専門書をみる 自宅にある疾患別看護の本を読む 自分の持っている資料に目を通す 昔取ったメモノートを読み返す 業務内容をイメージトレーニングする 業務内容を思い出すようにする 移動部署の専門書を読む 新しい看護技術の本で勉強する インターネットで最新の医学情報を検索する 雑誌の定期購読を継続する 同僚から勉強会の資料をもらい学習する 同僚から勉強会の内容を聞く インターネットで病院や看護部のホームページを見る 同僚にメールや電話で部署の業務内容について聞く 同僚に業務内容で変更のあったことを聞く 復帰前に病棟の同僚から新しい情報を集める 同僚に復帰する時の部署において多く取り扱っている疾患について聞く 同僚に復帰する時の部署においてよく行われている治療について聞く 部署へ行き看護師長に現在の部署の状況を聞く 復帰前研修を受けた Ⅶ. 考察産前産後 育児休業を取得していた看護師が 職場復帰時の不安や戸惑いを軽減させるために取り組んだことは 休業前までに身につけた専門知識の復習 新たな専門知識 技術の獲得 部署の最新情報を収集 組織の取り組みへの参加 であった 産前産後 育児休業を取得していた看護師は 1 年以上のブランクがあるにもかかわらず職場復帰直後から臨床現場における様々な変化に適応し キャリアをもつ看護師として働くことを要求されている 3) 職場復帰する看護師は休業前と同じように仕事ができスムーズに職場復帰ができるように 自宅にある専門書で復習 や 休業前にまとめていた ノートを活用し業務の振り返り をしたり 業務内容のイメージトレーニング をすることで 休業前までに身につけた専門知識の復習 を行っていた 9 名中 8 名の看護師が元の部署に職場復帰しており部署移動がないため より休業前と同様の仕事内容を求められることもあり以前の学習内容や業務内容の復習に取り組んだものと考える また 医療の現場は日々進歩し新しい治療法や技術などが取り入れられており 以前の知識だけではなく 新たな知識 技術について専門書で学習 したり 看護の動向や最新の医学知識を得るために インターネットで学習 したり 雑 93

誌の定期購読を継続し学習 し 同僚から勉強会の内容を聞き 他者からの学習機会の提供 を受ける ことで 新たな専門知識 技術の獲得 をし 看護の現場から離れることによる知識不足の解消に努めて いた 今後は育児休業取得期間の長期化が予測されるため 変化していく医療環境に対応するには 最新 の看護情報や動向を得るための IT の活用や研修への参加など 看護師自身の職場復帰に向けた自己学習 が必要となると考える 休業中の看護師が職場復帰のために取り組んだ学習は 子供が寝ている時間や家 事の合間の短時間を利用して 簡便な方法で自宅で学習できるものに限られていた 育児休業中は育児休 業を取得している看護師自身が児の育児を主に担当することが多く 職場復帰のための取り組みの時間や 場所の確保 育児と学習の両立の困難さがうかがえた 育児中はまとまった時間がなかなか取れない状況 であり 学習場所も限られることを考慮し 簡便で短時間から在宅学習できる内容や方法などの学習支援 プログラムについて今後検討することが必要であると考える 次に 職場復帰する看護師は 休業中の病院内や看護部の動向について インターネットから職場の最 新情報を収集 し 病院内のシステムの変化や部署内での取り決め 手順の変更についての戸惑いを軽減 させるために 他者から部署の業務について情報収集 し 他者から復帰時の部署における特徴的な疾 患や治療について情報収集 することで復帰時の病棟の状況をイメージし 業務に対応できるように 部 署の最新情報を収集 していた 職場復帰する看護師は 職場に復帰した時から仕事と家庭の両立が始ま る 多くの看護師が職場復帰後の仕事と家庭の両立に不安を感じており 復帰してからの職場環境をイメー ジし 早期よりスムーズに職場復帰できるように準備を行うことで 仕事と家庭を両立するための具体的 方策を見出しているのではないかと考える また 前西 4) は 休職中に 病院の広報誌 院内研修 協会 広報誌等を育休中の看護師宅に郵送し情報提供を行うことで 看護の動向を知ることができると共に病院 とのつながりを意識づけることができる と述べている 休業中の看護師は家庭の中の閉鎖的な環境で過 ごすことが多く 社会からの孤立感を感じており自ら積極的に情報収集を行うことで職場復帰に対して準 備を行っていた 休業中も双向性の情報交換を行い 職場の一員として役割を認識させることで 自己啓 発意欲を高める必要があると考える 組織への取り組みへの参加 は 実際に復帰する職場での 復帰前研修への参加 であり 復帰後の 具体的な職場環境をイメージすることができる取り組みである しかし研修への参加希望があっても 自 宅外での取り組みであり 自分以外の育児者がおらず保育先の確保ができないために参加できなかった看 護師もいた 復帰前研修への参加はスムーズな職場復帰のために効果的な取り組みであるため 5) 保育先 の確保等の支援について今後検討することが必要であると考える 江口 6) が 職場復帰支援は休職の申し出や判断がなされた時点から開始する と述べていることからも 産前産後休業に入る前から復職後まで継続的な関わりを行い 事務的な内容だけではなく いつでも相談 できる体制があることを明確にしておくことが必要である また 休業中の看護師個々が 必要な支援方 法を選択することができるように多彩な支援方法が提示されることも必要と考えられる 組織内の制度の 統一や現場への定着のためにも専門の相談窓口を設置する等 統合した職場復帰支援システムの構築も望 まれる Ⅷ. 結論 1. 産前産後 育児休業を取得していた看護師が職場復帰を行うにあたり不安や戸惑いを軽減させるために行った取り組みは 休業前までに身につけた専門知識の復習 新たな専門知識 技術の獲得 部署の最新情報を収集 組織の取り組みへの参加 であった 2. 産前産後 育児休業を取得していた看護師の個々のニーズにあった支援が行える統合した職場復帰支援システムの構築の必要性が示唆された 94

おわりに今回の研究では インタビュー技術の未熟さや対象者が少ないこと 施設が限定されていることから一般化をするには限界がある 今後 この研究で得られた結果をもとに 産前産後 育児休業取得看護師の職場復帰支援に対する希望について明らかにし 個人 職場双方にとってスムーズな職場復帰が行える方策を検討していきたい 謝辞本研究を進めるにあたり ご助言賜りました師長様方 ご協力いただいた看護師の方々に心より感謝申し上げます 引用 参考文献 1) 畑瀬智恵美他 : 看護職の産前産後休暇 育児休業後の配置部署に関する看護管理の現状と課題, 第 37 回日本看護学会論文集看護管理,37,332,2006. 2) 松浦正子 : 育児休業を取得する看護師の職場復帰に向けたインターネットプログラム開発, 看護管理, 20(3),239,2010. 3) 近藤裕子他 : 産休 育休からの復帰時における研修システムの構築に関する研究 - 長期休業取得看護師の調査から -, 第 37 回日本看護学会論文集看護管理,37,336,2006. 4) 前西有里子他 : 育児休業復帰を支援する継続教育のあり方を考える - 育児休業中の教育支援に関する調査から -, 日本看護学会抄録集,37,24,2006. 5) 埴岡康恵子 : 育児休業者職場復帰プログラムの効果, 日本職業 災害医学会会誌,58(1),31, 2010. 6) 江口毅 : 産休 育休 介護 心身不調など休職者の そのまま退職 を予防する職場復帰プログラムと師長の役割, ナースマネージャー,8( 4),15,2006. 7) 板崎恵 : 育児をしながら仕事を継続している看護師の職務満足度, 第 39 回看護総合,30-32,2008. 8) 埴岡康恵子 : 育児休業者職場復帰プログラムの効果, 日本職業 災害医学会会誌,58(1),29-33, 2010. 9) 大森ゆみ子 : 看護師が仕事と家庭生活や育児を両立するための工夫と利用した支援, 第 39 回看護管理, 123-125,2008. 10) 藤岡英雄著 : 学習関心と行動 成人の学習に関する実証的研究, 学文社,2008. 11) 清水春子他 : 育児休業復帰支援についての検討, 第 37 回日本看護学会論文集看護管理,37, 469-471,2006. 95