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茨城県農業総合センター園芸研究所研究報告第 20 号 27-34.2013 29 ネギ黒腐菌核病の総合防除法 小河原孝司 * 冨田恭範 小堀智史 ** 滝郁恵 *** 宮本拓也 *** 金田真人 **** 鹿島哲郎 Integrated Control of White Rot on Welsh Onion Takashi OGAWARA, Yasunori TOMITA, Satoshi KOBORI, Ikue TAKI, Masato KANEDA and Tetsuro KASHIMA Summary An effective control method was examined for white rot in Welsh onions. Although there is no resistant variety for this disease, soil fumigants such as dazomet, methyl isothiocyanate-dd, and metam-sodium and reductive soil disinfection showed good control effects. Moreover, crop rotation using crops such as white mustard also suppressed the disease. An integrated control method for white rot in Welsh onions was established on the basis of these results and existing knowledge. キーワード : ネギ, 黒腐菌核病, 土壌消毒, 輪作, 総合防除法 Ⅰ. 緒言茨城県のネギ栽培は作付面積 1,920ha, 生産量 50,100t で全国第 3 位 (2009 年 ), 産出額は 123 億円と本県の主要な園芸品目になっているネギの作型は, 主に4~6 月収穫の春ネギ,7~9 月収穫の夏ネギ,10 ~3 月収穫の秋冬ネギに分けられるが, 秋冬ネギの生産量が減少し, 春ネギの生産量が増加する傾向にある ( 平成 23 年度茨城の園芸 )現在, 県西地域ではネギの 長期連作により黒腐菌核病 ( 図 1), 白絹病, 軟腐病等の土壌病害による被害が増加している ( 江口ら,2008) とくに, 春および夏ネギ栽培で黒腐菌核病が多発生して問題となっているが, 本病に有効な防除法がなく対策に苦慮している本研究では, 黒腐菌核病の防除対策として耕種的, 物理的, 化学的防除の効果を明らかにするとともに, これら防除法を組み合わせた総合防除法の実用性について検討した 図 1 ネギ黒腐菌核病被害圃場 ( 左 ) と被害株に形成された菌核 ( 右 ) * 現茨城県農業総合センター ** 元茨城県農業総合センター園芸研究所 *** 現茨城県県南農林事務所経営 普及部門 **** 現鹿行農林事務所経営 普及部門

30 Ⅱ. 材料および方法 1. ネギ品種の黒腐菌核病に対する耐病性 6~7 月に収穫する品種の黒腐菌核病に対する耐病性について検討した供試品種は, 春扇, 夏扇 2 号, 龍ひかり1 号, 龍ひかり2 号, 龍まさり を用い, 所内の隔離枠汚染圃場で試験を実施した試験規模は1 品種 80 株の 4 連制とした 2009 年 3 月 17 日にフスマ培地 ( フスマ : 園芸培土 =1: 4) で培養した黒腐菌核病菌 12.5g/ m2を均一に散布し, 土壌混和したさらに, 畝間 1m で深さ約 10cm の植え溝を掘り, そこに同培養菌を 25g/m2 となるように追加散布した後, ネギの苗を定植した栽培管理は茨城県野菜栽培基準に準じ, 地上部の病害虫防除は適宜実施した 8 月 24 日に全株を掘り上げ, 各区 80 株の発病状況を調査して発病株率を算出したなお, ネギ茎盤部の褐変が軽度で, 調整して販売可能な株については健全株としたまた, 各区 15 株の最大葉長を測定した 2. 土壌消毒による黒腐菌核病の防除効果 1) 土壌くん蒸剤の防除効果所内の黒腐菌核病汚染圃場において, メチルイソチオシアネート D-D 油剤, ダゾメット粉粒剤およびカーバムナトリウム塩液剤の防除効果について 3 回試験を実施した第 1 回目の試験は, バーミキュライト - フスマ培地で培養したネギ黒腐菌核病菌 ( 茨城県分離株 ) を, 2007 年 6 月 28 日に 30g/ m2となるよう土壌混和して作成した所内の人工汚染露地ほ場で実施したダゾメット粉粒剤は 30kg/10a 換算量を土壌表面に散布し, 小型管理機を用いて均一に土壌混和したメチルイソチオシアネート D-D 油剤は 40L/10a 換算量を, またカーバムナトリウム塩液剤は 60L/10a 換算量を, それぞれ手押式土壌注入器で深さ 15cm 付近に 30cm 間隔で注入したいずれの薬剤も 10 月 17 日に処理し, 直ちに土壌表面をビニルで被覆した 2008 年 2 月 18 日にビニルを除去し, 施肥 耕耘した後,2 月 19 日に品種 春扇 を定植した 7 月 1 日に無作為に 240 株抽出して発病の有無を調査し, 発病株率および防除価 =(1-( 試験区の平均発病株率 / 無処理区の平均発病株率 )) 100 を算出したなお, ネギ茎盤部の褐変が軽度で, 調製して販売可能な株については健全株とした試験は1 区 15 m2の4 連制で行った 第 2 回目の試験は前回と同じほ場で実施したダゾメット粉粒剤は 30kg/10a 換算量を, メチルイソチオシアネート D-D 油剤は 40L/10a 換算量を前回同様に処理したカーバムナトリウム塩液剤は散布混和および土壌注入の2 処理とした散布混和は 60L/10a 換算量を約 5L の水で希釈し, ジョウロで土壌表面に散布した後, 小型管理機を用いて均一に土壌を混和した注入処理はテーラー牽引の専用注入機 ( 注入間隔 20cm, 深さ 15cm) を用い,60L/10a 換算量を土壌中に線状に注入したいずれの薬剤も 2008 年 9 月 2 日に処理し, 直ちに土壌表面をビニルで被覆した 2009 年 2 月 12 日にビニルを除去し, 施肥 耕耘した 2 月 19 日に品種 春扇 を定植し, 防霜対策のため不織布を畝上に被覆し,3 月下旬にこれを除去した発病調査は7 月 3 日に無作為に 150 株を抽出して, 第 1 回目試験に準じて行った試験は1 区 15 m2の3 連制で行った第 3 回目の試験も第 1,2 回目と同じほ場で実施し, 第 2 回目の試験区に新たにダゾメット粉粒剤 60kg/10a 区を追加したいずれの薬剤も 2009 年 9 月 30 日に処理し, 直ちに土壌表面をビニルで被覆した 2010 年 2 月 22 日にビニルを除去し, 施肥 耕耘し,2 月 23 日に品種 春扇 を定植した 7 月 20 日に無作為に 120 株を抽出して, 第 1 回目試験に準じて発病調査を行った試験は1 区 15 m2の3 連制で行った 2) 土壌還元消毒の防除効果坂東市の黒腐菌核病発生圃場で土壌還元消毒の防除効果について検討したなお, 前作では圃場の外縁部に多発生し, その他は散見される程度であった試験区としては土壌還元消毒区と無処理区を設けた試験規模は1 区 5a の1 連制とした 2007 年 7 月 16 日にフスマ 1t/10a および石灰窒素 120kg/10a 換算量を土壌混和し, かん水チューブを 2.5m 間隔で設置後, ビニルで土壌表面を被覆して十分量かん水した 2008 年 1 月下旬に品種 坊主しらず を定植し,6 月下旬 ~7 月上旬に収穫を行った 6 月 27 日に各区 8 畝 ( 各畝の北と南の2 地点, 計 16 地点 ) について, 黒腐菌核病および軟腐病の発病状況を調査し, 発病株率を算出した

小河原孝司ほか ネギ黒腐菌核病の総合防除法 31 3 輪作作物の導入による発病抑制効果 日に各試験区 5 か所の調査地点について畝長 1.5m 1 隔離枠汚染圃場試験 における黒腐菌核病の発病状況を調査し発病株率を 所内の黒腐菌核病汚染圃場において輪作による発 算出したなお調査地点は圃場東端から 5m 地点 病抑制効果について検討した試験規模は1区 5 Ⅰ 12m Ⅱ 19m Ⅲ 26m Ⅳ および 33m Ⅴ の 1 連制とした供試作物はカラシナ シロカラシ 付近とした ソルゴートウモロコシレタスカリフラワー対 照としてネギおよび輪作作物を作付けしない区 無処 4 多発生圃場における黒腐菌核病菌の土壌中の分布 理区 を設置したカラシナおよびソルゴーは 2008 黒腐菌核病多発生圃場における土壌中での菌の分 年9月4日に播種量4g/ をばら撒き直播とした 布を調査した試験は坂東市の黒腐菌核病が多発生 またトウモロコシレタスカリフラワーネギは で1年間裸地休耕した圃場で実施した2007 年8 9月9日に定植したトウモロコシ 品種 ピータ 月 29 日に圃場を深さ 20cm 程度までロータリーで ー 610 は6 6連結ポットに播種して育成した苗 耕起した後表層から深さ 40cm までの土壌を 10cm を株間 25cm 畝間 45cm で定植したレタス 品種 パ 間隔で採取した土壌の採取は2地点 地点1 圃 トリオット は 128 穴セルトレイに播種して育成 場入口より 15m 付近地点2 圃場入口より 25m 付 した苗を株間 30cm畝間 30cm で定植したカリフ 近 で行った採取した土壌は4 の冷蔵庫内で保存 ラワー 品種 スノークラウン は6 6連結ポ し2008 年2月 17 日に小型プランターに詰めネギ ットに播種して育成した苗を株間 45cm畝間 50cm 苗 品種 春扇 を 24 株ずつ定植したその後 で定植したネギ 品種 春扇 は 264 穴チェー 各プランターを屋外のベンチ上に置き適宜かん水 ンポットに播種して育成した苗を株間 2.5cm畝間 および地上部の病害虫防除を実施しながら約3ヶ月 30cm で定植した地上部の病害虫防除は適宜実施 間管理したなお対照として非汚染土壌区を設 したいずれも収穫は行わず12 月中旬に抜き取り けた5月2日に全株を掘り上げ発病の有無を調査 処分した2009 年3月 12 日にネギ苗 品種 春扇 し発病株率および発病度を算出した発病度は発 を全区に約 240 株を株間 2.5cm畝間 50cm で定植し 病程度で0: 発病なし1: 茎盤部がやや褐変しわず た7月 24 日に各区 180 株を掘り上げ発病状況を かに菌糸 菌核が形成が見られる2 茎盤部から上 調査し発病株率を算出したなおネギ茎盤部の褐 部2cm 程度まで菌糸 菌核の形成が見られる3 変が軽度で調整して販売可能な株については健全株 茎盤部から地際まで菌糸 菌核の形成が見られると とした さらに 本試験と同様の試験を翌年も実施した し 発病度 = Σ 指数別発病株数 指数 100 3 調査株数 で算出した 2 現地圃場試験 坂東市の黒腐菌核病汚染圃場においてカラシナの Ⅲ 結 果 輪作による発病抑制効果について検討した試験圃場 は前作において全面に発病が認められ圃場東側の 1 各種ネギ品種の黒腐菌核病に対する耐病性 発病株率はやや低く西側に向かって高まる圃場であ 黒腐菌核病汚染圃場に定植した現地主要品種の った試験区は輪作作物としてカラシナを栽培する 春扇 の発病株率は 41.9% と高く多発生条件で カラシナ区と輪作作物を栽培しない無処理区を設けた の試験となった ( 表1)その他の供試品種も発病株 試験規模はカラシナ区 126 無処理区 63 の 1 連 率が高く 春扇 と同等の発病程度を示した反 制としたカラシナ区は2009 年9月4日に緑肥用 復間で発病程度にやや差が認められたがいずれの反 カラシナ シロカラシ 種子 3kg/10a を圃場にばら 撒き播種した10 月 16 日にロータリーで植物体をそ のまま圃場にすき込み数回耕起して植物体を腐熟さ せた2010 年 1 月 22 日に施肥 マルチングを行い 1 月 29 日に品種 羽緑一本太 を株間 3.3cm条 間 90cm で定植したとしたなおカラシナ区には ネギを3条無処理区には2条作付けした7月 14

32 復においても品種間の発病程度に差は認められなか った データー省略 2 土壌くん蒸剤の防除効果 1 各種土壌くん蒸剤の防除効果 2 土壌還元消毒の防除効果 現地の発病圃場において土壌還元消毒を実施したと ころ少発生ではあるが無処理区に比べ発病株率 第1回目試験における黒腐菌核病に対する防除価 は低かった 表3 また前作多発した地点では土 はダゾメット粉粒剤 30kg/10a の全面土壌混和が 73 壌還元消毒後に発病は認められなかった データー省 で最も高くメチルイソチオシアネート D-D 油剤 略 なお土壌還元消毒区は無処理区に比べ軟腐 40L/10a の土壌注入が 63カーバムナトリウム塩液 病の発生株率がやや高かった 表3 剤 60L/10a の土壌注入が 56 であった 表2 第2 回目試験における防除価はカーバムナトリウム塩液 3 輪作作物の導入による発病抑制効果 剤 60L/10a の土壌注入が 93メチルイソチオシアネ 1 隔離枠汚染圃場試験 ート D-D 油剤 40L/10a の土壌注入が 91ダゾメッ 菌接種後に輪作作物を導入すると次作のネギの発 ト粉粒剤 30kg/10a の全面土壌混和が 90 となりこ 病株率は低下する傾向が認められた供試した作物の れらは同等の高い防除効果が認められたしかしカ 種類にかかわらずネギの発病株率は低下したがカラ ーバムナトリウム塩液剤 60L/10a の散布混和の防除 シナ区での発病株率が 19.7% と最も低かった一方 価は 55 で劣った 表2 第3回目試験における防除 ネギの連作区や秋季無作付けでネギを栽培した場合 価はダゾメット粉粒剤 60kg/10a の全面土壌混和が 67.5%73.7% と極めて高い発病株率となった 表4 89 と最も高くカーバムナトリウム塩液剤 60L/10a 同汚染圃場に再度輪作作物を導入した後ネギを栽 の土壌注入が 82ダゾメット粉粒剤 30kg/10a の全面 培したところ前回同様に輪作の効果が認められとく 土壌混和が 71メチルイソチオシアネート D-D 油 にカラシナの発病抑制率が高いと考えられた 表5 剤 40L/10a の土壌注入が 61カーバムナトリウム塩 液剤 60L/10a の散布混和は 58 であった 表2 なお いずれの薬剤また処理方法においても薬害は認めら れなかった 表2

小河原孝司ほか ネギ黒腐菌核病の総合防除法 2 現地圃場試験 カラシナ区における発病株率は無処理区より低く 33 4 多発生圃場における黒腐菌核病菌の土壌中の分布 地点1および2とも深さ 0-10cm および 20-30cm カラシナ導入による発病抑制効果が認められた 表 における発病度が高く 菌密度が高いと考えられた 表 6 また前作の発病程度が低い地点ほど発病抑制 7 また地点2では深さ 30-40cm でも発病度が高 効果が高く発病程度が高い地点ほど効果が低くなる く土壌の深層部まで菌が存在していた 傾向であった 表6

34 Ⅳ 考 察 一方近年新たな防除法として土壌還元消毒が 黒腐菌核病の菌核の発芽を抑制する 冨田ら2007 黒腐菌核病の被害は全国的に拡大しておりネギだ ことが明らかにされていることから本試験では発病 けでなくタマネギやニンニク等の産地でも深刻な問題 圃場を用いて土壌消毒の効果を確認したその結果 となっているネギ黒腐菌核病による被害について 少発生条件ではあるが効果が認められたまた冨田 は古くから報告 渡辺 若井田,1958 渡辺 若井田 ら 2008 は現地の発病圃場で畑かん用水を利用し,1959 がある当時は苗生産圃場で発生して問題と て夏季に土壌還元消毒を行ったところ土壌くん蒸剤 なることが多かったが近年は本圃で大きな被害をも と同等の効果が認められており本試験の結果もこれ たらしている梅本ら 1987 は本病の薬剤防除に と一致した土壌還元消毒は大量の水が必要となるた ついて検討し臭化メチル剤メチルイソチオシアネ めかん水設備がない圃場での実施は困難であるが ート D-D 油剤ダゾメット粉粒剤の効果が高いと 試験を実施した坂東市は農業農村整備事業により畑地 報告しているただしメチルイソチオシアネート にかんがい施設が整備されており有用な防除法とし D-D 油剤以外は農薬登録に至らなかった本試験では て今後期待される 処理が容易なダゾメット粉粒剤と土壌消毒用の専用機 しかしこれらの土壌消毒は薬剤処理後のビニル被 械が開発されているカーバムナトリウム塩液剤の防除 覆等の作業が重労働で大面積を処理するには難しい 効果について検討し実用的な防除効果が得られるこ 面がある簡易な防除法として抵抗性品種の検討を行 とを確認するとともに両薬剤の農薬登録を取得する ったが供試した品種の中に抵抗性品種は認められな ことができた かったまた輪作による効果を確認したところカ 現地の発病圃場で土壌くん蒸剤による防除効果試験 ラシナ等の輪作は黒腐菌核病の発病を抑制する効果が を実施したところ少発生条件では効果が高かったが 高いことが明らかとなった冨田ら 2008 はネ 多発生圃場では効果の劣る事例が確認されている今 ギの定植時期を遅らせることで発病を大幅に抑制でき 回多発生圃場における土壌を表層から深さ 40cm ま ることを明らかにしており発病圃場では有効な防除 で 10cm ごとに採取し生物検定法により菌の存在を 法と考えられる 確認したところ深さ 40cm まで菌が存在し薬剤の これまで実施した試験結果や他の知見をもとに黒 到達しない土壌深層部の防除効果が劣ると考えられた 腐菌核病の総合防除法を組み立てた 図2 圃場で ネギ栽培では土寄せ作業により表層から深層部までの の発病程度に応じて必要な防除をメニュー化したもの 土壌が混和され病原菌が拡散されてしまうことから であるが現在その実用性について現地で実証試験 薬剤防除は発生が少ないうちに実施することが重要と を重ねているその中で圃場での発病程度は前作の 考えられた 発病株率により少 多の3段階に分類したが気象条

小河原孝司ほか : ネギ黒腐菌核病の総合防除法 35 件等により発病株率が変動する可能性があり, 圃場の発病リスクを評価する方法について今後検討していく必要がある Ⅴ. 摘要ネギ黒腐菌核病に対して有効な防除法の検討を行った 1. 本病に対して有効な抵抗性品種は認められなかったが, 土壌くん蒸剤のダゾメット粉粒剤, メチルイソチオシアネート D-D 油剤, カーバムナトリウム塩液剤や夏季の土壌還元消毒は本病に対して実用的な防除効果が認められた 2. カラシナ等による輪作も発病抑制効果が高く, 有効な防除法と考えられた 3. これらの試験結果および既存の知見をもとにネギ黒腐菌核病の総合防除法を組み立てた謝辞当研究を実施するに当たり, つくば地域および坂東地域農業改良普及センターの関係者各位, 試験圃場を提供していただいた生産者の皆様に厚く御礼申し上げます 引用文献江口郁恵 冨田恭範.2008. 坂東市におけるネギ土壌病害の発生実態とネギ白絹病の防除. 茨城病虫研報.47:41-44 冨田恭範 江口郁恵 宮本拓也 小河原孝司 長塚久. 2007. ネギ白絹病に対する各種薬剤の防除効果とネギ黒腐菌核病に対する土壌還元消毒による防除の可能性. 日植病報 73:258 冨田恭範 小河原孝司 江口郁恵 鈴木秀文 石井佳美 野口敬命.2008. ネギ黒腐菌核病の定植時期の違いによる発病差異と土壌還元消毒による防除の可能性. 日植病報 74:280-281 梅本清作 村田明夫 長井雄治.1987. ネギ黒腐菌核病の防除. 千葉農試研報 28:66-77 渡辺竜雄 若井田正義.1958. 葱小菌核病に関する研究. 日植病報.23:36 渡辺竜雄 若井田正義.1959. ネギの新病害黒腐菌核病について. 日植病報.24:40