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RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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免疫本試29本試験模範解答_YM

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研究成果の概要 今回発表した研究では 独自に開発した B 細胞初代培養法 ( 誘導性胚中心様 B (igb) 細胞培養法 ; 野嶋ら, Nat. Commun. 2011) を用いて 膜型 IgE と他のクラスの抗原受容体を培養した B 細胞に発現させ それらの機能を比較しました その結果 他のクラ

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

1. 免疫学概論 免疫とは何か 異物 ( 病原体 ) による侵略を防ぐ生体固有の防御機構 免疫系 = 防衛省 炎症 = 部隊の派遣から撤収まで 免疫系の特徴 ⅰ) 自己と非自己とを識別する ⅱ) 侵入因子間の差異を認識する ( 特異的反応 ) ⅲ) 侵入因子を記憶し 再侵入に対してより強い反応を起こ

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報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

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の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産


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図 Mincle シグナルのマクロファージでの働き

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

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医学部医学科 2 年免疫学講義 10/27/2016 第 9 章 -1: 体液性免疫応答 久留米大学医学部免疫学准教授 溝口恵美子

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM


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年219 番 生体防御のしくみとその破綻 (Immunity in Host Defense and Disease) 責任者: 黒田悦史主任教授 免疫学 黒田悦史主任教授 安田好文講師 2中平雅清講師 松下一史講師 目的 (1) 病原体や異物の侵入から宿主を守る 免疫系を中心とした生体防御機構を理

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

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共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

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研究の中間報告

平成24年7月x日

抵抗性遺伝子によりつくられた蛋白質が 細胞内に留まる例も知られています その場 合 細胞内の抵抗性遺伝子産物と細胞膜を貫通する植物因子が結合した状態で存在し 細胞膜貫通因子で病原菌のavr 蛋白質を認識します Avr 蛋白質が認識されると 抵抗性遺伝子産物と細胞膜貫通因子は解離し 遊離した抵抗性遺伝

70,71 図 2.32, 図 2.33, 図 2.34 C3b,Bb C3bBb 70,71 図 2.32, 図 2.33, 図 2.34 C3b2,Bb C3b2Bb 72 7 行目 C3 転換酵素 (C4b2b) C3 転換酵素 (C4b2a) 91 図 2.50 キャプション 12 行目 リ

2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

原提示細胞によって調査すること 2 イベントの異なる黄砂のアレルギー喘息への影響を評価すること 3 黄砂に付着している微生物成分 (LPS 真菌 ) や化学物質 ( タール成分 ) のアレルギー喘息や花粉症への影響を評価すること 4 アレルギー喘息等の増悪メカニズムを 病原体分子パターン認識受容体

2. Tハイブリドーマによる抗原認識二重特異性を有する (BALB/c X C57BL/6)F 1 T 細胞ハイブリドーマを作製した このT 細胞ハイブリドーマは I-A d に拘束された抗原 KLH と自己の I-A b 単独を二重に認識した 外来抗原に反応するT 細胞が自己のMHCによって絶えず

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

第14〜15回 T細胞を介する免疫系.pptx

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ごく少量のアレルゲンによるアレルギー性気道炎症の発症機序を解明

第一章自然免疫活性化物質による T 細胞機能の修飾に関する検討自然免疫は 感染の初期段階において重要な防御機構である 自然免疫を担当する細胞は パターン認識受容体 (Pattern Recognition Receptors:PRRs) を介して PAMPs の特異的な構造を検知する 機能性食品は

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

5. T 細胞 TCR( 抗原受容体 ) を発現 抗原断片と MHC の複合体を認識 機能的に以下の 3 つに分類できる ヘルパー T 細胞免疫の応答の調節 免疫機構の制御 (Th1 細胞,Th2 細胞,Th17 細胞など ) 細胞傷害性 ( キラー )T 細胞標的細胞を傷害制御性 T 細胞 T 細

目次 1. 抗体治療とは? 2. 免疫とは? 3. 免疫の働きとは? 4. 抗体が主役の免疫とは? 5. 抗体とは? 6. 抗体の構造とは? 7. 抗体の種類とは? 8. 抗体の働きとは? 9. 抗体医薬品とは? 10. 抗体医薬品の特徴とは? 10. モノクローナル抗体とは? 11. モノクローナ

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平成24年7月x日

ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

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研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

リンパ組織における抗原特異的なナイーブ T 細胞の捕捉と活性化 捕捉 活性化 ナイーブT 細胞末梢循環中移動所属リンパ節でAgを提示した樹状細胞に出会う TCR を介して活性化される 5 日以内 エフェクター T 細胞 Ag 認識後 5 日以内に増加 リンパ節を出て局所へ移動

妊娠認識および胎盤形成時のウシ子宮におけるI型IFNシグナル調節機構に関する研究 [全文の要約]

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研究の背景 1 細菌 ウイルス 寄生虫などの病原体が人体に侵入し感染すると 血液中を流れている炎症性単球注と呼ばれる免疫細胞が血管壁を通過し 感染局所に集積します ( 図 1) 炎症性単球は そこで病原体を貪食するマクロファ 1 ージ注と呼ばれる細胞に分化して感染から体を守る重要な働きをしています

H26分子遺伝-22(免疫不全症).ppt

略歴 鈴 平成元年 東京大学農学系博士課程修了平成 3 年 東京大学農学部助手平成 4 年 アメリカ NIH ポスドク平成 8 年 慶応大学医学部助手 講師平成 13 年 山口大学医学部助教授 ホームページ 木春巳 微生物学教室助教授本館 3F 内線 2227

ウシの免疫機能と乳腺免疫 球は.8 ~ 24.3% T 細胞は 33.5 ~ 42.7% B 細胞は 28.5 ~ 36.2% 単球は 6.9 ~ 8.9% で推移し 有意な変動は認められなかった T 細胞サブセットの割合は γδ T 細胞が最も高く 43.4 ~ 48.3% で CD4 + T 細

事務連絡

研究成果報告書

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 山田淳 論文審査担当者 主査副査 大川淳野田政樹 上阪等 論文題目 Follistatin Alleviates Synovitis and Articular Cartilage Degeneration Induced by Carrageenan ( 論文

平成24年7月x日

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

相模女子大学 2017( 平成 29) 年度第 3 年次編入学試験 学力試験問題 ( 食品学分野 栄養学分野 ) 栄養科学部健康栄養学科 2016 年 7 月 2 日 ( 土 )11 時 30 分 ~13 時 00 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題用紙を開いてはいけません 2. 開始の

第6号-2/8)最前線(大矢)

生物時計の安定性の秘密を解明

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

研究の詳細な説明 1. 背景病原微生物は 様々なタンパク質を作ることにより宿主の生体防御システムに対抗しています その分子メカニズムの一つとして病原微生物のタンパク質分解酵素が宿主の抗体を切断 分解することが知られております 抗体が切断 分解されると宿主は病原微生物を排除することが出来なくなります

スギ花粉の捕捉Ys ver7.00

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

生物 第39講~第47講 テキスト

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

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ヒト胎盤における

Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

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平成 2 3 年 2 月 9 日 科学技術振興機構 (JST) Tel: ( 広報ポータル部 ) 慶應義塾大学 Tel: ( 医学部庶務課 ) 腸における炎症を抑える新しいメカニズムを発見 - 炎症性腸疾患の新たな治療法開発に期待 - JST 課題解決型基

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

細胞外情報を集積 統合し 適切な転写応答へと変換する 細胞内 ロジックボード 分子の発見 1. 発表者 : 畠山昌則 ( 東京大学大学院医学系研究科病因 病理学専攻微生物学分野教授 ) 2. 発表のポイント : 多細胞生物の個体発生および維持に必須の役割を担う多彩な形態形成シグナルを細胞内で集積 統

神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

Transcription:

* 穴埋め問題を除き 解答には図を用いてよい 問題 1 免疫は非自己を認識し これを排除するが 自己の細胞に対しては原則反応しない T 細胞の 中枢性寛容 の仕組みを簡単に説明せよ (10 点 ) 中枢性寛容は 胸腺において自己反応性の T 細胞を除去する仕組み ( 現象 ) です 遺伝子の再構成により T 細胞受容体を形成したとき, その T 細胞受容体が自己の MHC を認識できないときは将来役に立たないので除去され 自己の MHC+ 自己のペプチドを 強く 認識する物は ネガティブセレクションにより除去されます このとき AIRE と呼ばれる遺伝子が ( 胸腺外のタンパクの ) 遺伝子の発現をコントロールして ネガティブセレクションに関わります ネガティブセレクション 胸腺内でのネガティブセレクションが起こる場所 T 細胞受容体と MHC 自己のペプチド AIRE の役割等について記載してあれば OK 問題 2 補体の持つ三つの主な役割 ( エフェクター相における作用 ) を簡単に説明せよ ( 1 0 点 ) 補体は 活性化の 3 つの経路とエフェクター相 ( 実際に効果を示すとき ) の 3 つの役割を説明しました オプソニン化抗体依存 または抗体非依存性に病原体などに結合し貪食を促進する 炎症の誘導補体の活性化により生じる成分のうち C5a 等は 炎症を誘導する作用を示す 細菌 ( 標的 ) 細胞膜の破壊 C6-9 が筒状の構造を形成し 標的細胞の膜に穴を空けてこれを殺傷するこの 3 つを記載 1

平成 25 年免疫学本試験平成 25 年 11 月 25 日実施 問題 3 次の文中のカッコ内を適当な語句で埋めなさい ( 10 点 ) CD4 陽性細胞のうち Th ア; 数字 と呼ばれる細胞集団は イ ( 最も重要なサイトカイン名 ) を産生することにより ウ を活性化し ウ 内の病原体の排除を促進する 一方 Th エ; 数字 と呼ばれる細胞集団は オ ( 最も重要なサイトカイン名 ) を産生することにより カ 産生やそのクラススイッチを制御する Th エ により産生誘導される キ; カのタイプ は 一部の寄生虫排除に関わるが このタイプの カ が ク 細胞の表面に結合すると 花粉などの抗原刺激によりアレルギー症状を起こすことがある カ が ク 表面の受容体に結合するときは その構造のうち ケ 部分を介して結合する コ は 上皮を横断し粘液中に分泌されるタイプの カ である ア イ ウ エ オ 1 IFN-γ マクロファージ 2 IL-4 カ キ ク ケ コ 抗体 ( イムノク ロフ リン ) IgE 肥満細胞 ( マストセル ) Fc IgA( 分泌型 IgA) 問題 4 B 細胞は その受容体の多様性の獲得に関して T 細胞とは異なる仕組みを併せ持っている B 細胞のみが 持つ (*) 多様性獲得の仕組みを簡単に記せ (10 点 ) T 細胞受容体も B 細胞受容体も 多数のセグメントを使うことによって受容体遺伝子を再構成し ( かけ算!) さらにそのつなぎ目にランダムなヌクレオチドが入ることで多様性を獲得します ここまでは共通 B 細胞では いったんできた受容体 ( 遺伝子 ) に対して ハイパーミューテーションと言う現象が起こり さらに結合力の強い抗体ができた場合 それが選ばれてくることにつながります ここには AID と UNG と言う遺伝子が主として関わっています ハイパーミューテーション 起こる場所 AID と UNG その結果起こること クラススイッチ ( これは受容体の多様性には影響しませんが 多様な抗体を作ると言うことで説明しています ) 等について記載してあれば OK (*T 細胞にもあるという発表もあるが 一般には B 細胞のみが持つとされる ) 2

問題 5 アレルギーの分類と発症機序に関して Goombs と Gell の分類を簡単に記載せよ (10 点 ) コア免疫学の表 19-3 を参照アレルギーや一部の自己免疫疾患が起こる機序を 4 つ (II をさらに二つに分ける場合もある ) に分けています そのメカニズム 関与する分子 ( 抗体 抗原抗体複合体 ケミカルメディエーターなど ) 関連する病態などを記載 問題 6 下図にあるように <MHC クラス I 分子 +β2ミクログロブリン>に特定のペプチドを結合させ さらにビオチンと streptavidin を利用して4つ結合させ蛍光標識をつけた分子がある 蛍光標識された分子は 特定の波長の光を当てることにより細胞表面に結合したかどうかを検出することができる この分子の実験利用法を考えて記載しなさい (10 点 ) これは 実習の時に説明しましたが MHC 分子 + ペプチドを認識する物が何かを考えれば 利用例を考えることができるはずです 例として ウイルスのペプチドを結合させた物を作れば そのウイルス ( の遺伝子産物 ) 特異的な T 細胞受容体を持つ T 細胞が感染後にどのような推移を取るか ( 何日目にどのくらい増える 何日目にどのくらいまで減る いつ頃までメモリー細胞としてどの場所に存在 等 ) を解析することができます 3

平成 25 年免疫学本試験平成 25 年 11 月 25 日実施 問題 7 マクロファージや樹状細胞が微生物の成分を認識して活性化する仕組みを説明せよ (10 点 ) 自然免疫のセンサーに関する設問です マクロファージや樹状細胞は 微生物が持つ特有の分子構造 (pathogen associated molecular patterns: PAMPs) を認識して 活性化する PAMPs を認識する受容体をパターン認識受容体 (pattern recognition receptors: PRRs) と呼ぶ 以下に代表的 な PRR の例とその局在 認識する PAMPs を示す PRRs 細胞内局在 PAMPs Toll 様受容体 (Toll-like receptors: TLRs) TLR2 細胞表面 リポタンパク質 TLR4 細胞表面 リポ多糖 (LPS) TLR3 エンドソーム dsrna TLR5 細胞表面 フラジェリン TLR7 エンドソーム ssrna TLR9 エンドソーム CpG DNA NOD 様受容体 (NOD-like receptors:nlrs) NOD1 細胞質内 ie-dap ( 細菌ペプチドグリカンの成分 ) NOD2 細胞質内 MDP ( 細菌ペプチドグリカンの成分 ) NLRP1 細胞質内 MDP, 炭疽菌毒素 NLRC4 細胞質内 フラジェリン 細菌 III 型分泌機構 NLRP3 細胞質内 細菌膜孔形成毒素 (nigericin など ) AIM2 細胞質内 細菌 DNA RIG-I 様受容体 (RIG-I like helicases: RLHs) RIG-I 細胞質内 5 -triphospate ssrna MDA5 細胞質内 長鎖 dsrna C 型レクチン受容体 Dectin-1 細胞表面 β-グルカン ( 真菌細胞壁成分 ) (C-type lectin receptors: CLRs) Dectin-2 細胞表面 α-マンナン ( 真菌細胞壁成分 ) Mincle 細胞表面 β-マンノース ( 真菌細胞壁成分 ) TDM ( 結核菌細胞壁成分 ) これらの PRR による認識により マクロファージや樹状細胞は炎症性サイトカイン ケモカイン I 型インターフェロンなど を産生して初期防御免疫応答を引き起こすとともに 侵入してきた微生物の排除に適切な獲得免疫応答を誘導する 貪食して抗原提示して獲得免疫を活性化する 補体や抗体で貪食が促進される と書いている人が多くいたのですが 微 生物の成分 (=PAMPs) を認識して活性化 と限定していますので PRR とその局在 リガンドをどれだけ書けたかで採 点しました TLR7-9 は細胞内で働くと書いている人も多くいましたが 正確には細胞膜に局在したままエンドソームにと りこまれるだけであって細胞質に存在している訳ではないので NLR などの細胞質に存在して働く PRR と混同しないよう に気をつけましょう 問題 8 MHC クラス I および MHC クラス II に抗原が提示される仕組みを説明せよ (10 点 ) MHC に抗原ペプチドが提示される機序に関する設問です MHC クラス I は殆どの組織に発現しており β2 マイクログロブリン (β2m) と会合して 2 量体を形成する MHC クラス I は内因性の抗原 すなわち ( 自己のタンパク質と同じく ) 細胞質内で合成されたタンパク質や 細胞質内に侵入した微生物由来の抗原を提示する これらの内因性タンパク質は細胞質においてプロテアソームによってペプチドに分解され TAP トランスポーターを介して小胞体内に運ばれる 小胞体内で新しく合成された MHC クラス I 分子は β2m と結合する前段階やペプチドと最終的に結合するまでシャペロンタンパク質と会合して安定化している TAP によって運ばれたペプチドがクラス I 分子のペプチド結合溝にしっかりはまるとシャペロン分子が離れ MHC クラス I- ペプチド複合体はゴルジ輸送装置を介して細胞表面まで運ばれる MHC クラス I- ペプチド複合体は CD8 陽性 T 細胞によって認識される MHC クラス II 分子は α 鎖および β 鎖遺伝子によってそれぞれコードされる 2 つの鎖からなるヘテロ 2 量体である MHC クラス II 分子は 外因性の抗原 すなわち抗原提示細胞 ( 樹状細胞 マクロファージ B 細胞 ) がエンドサイトーシスで取り込んだ抗原を提示する MHC クラス I 分子と同じく 新しく合成された MHC クラス II 分子も小胞体内に存在するが ここではインバリアント鎖 (Ii) との結合によってペプチド結合溝がマスクされ TAP で運ばれた内因性のペプチドが結合することはできない MHC クラス II 分子は Ii と結合した状態でゴルジ装置を介してエンドソームに運ばれる エンドソーム内の酸性条件下で Ii は分解されるが ペプチド結合溝に結合した CLIP という部分のみが残る エンドソーム内に存在するクラス I 様分子 HLA-DM は クラス II 分子と結合して CLIP を外し エンドソーム内のペプチドをクラス II に結合させることを助ける このクラス II への抗原提示は MIIC(MHC classii compartment) よばれる特殊なエンドソームで起こる ペプチドが乗った MHC クラス II 分子は細胞表面に運ばれ CD4 陽性 T 細胞によって認識される 外因性の抗原が MHC classi に提示される経路もあり これはクロスプレゼンテーションと呼ばれる この経路では エンドソーム内の抗原が細胞質内へと一旦運ばれる必要があるが 詳細な機構はまだ不明である クロスプレゼンテーションは 樹状細胞によってナイーブ CD8T 細胞がプライミングされる過程で特に重要と考えられる 問題 7 の解答と同じく MHC に抗原が提示された後の T 細胞活性化に関して記述している人が見られました また TLR などの PRR で PAMPs を認識して抗原を取り込むと書いている人もいましたが これは必ずしも正しくありません クロスプレゼンテーションに関して書けてる人もいましたが そのシステムの意味に関して書ければもっと良かったと思います 4

問題 9 TCR と BCR を介したシグナル伝達経路の共通性を説明せよ (10 点 ) 抗原受容体分子 (TCR, BCR) 自体には細胞内にシグナルを伝える領域はなく immunoreceptor tyrosine-based activation motif (ITAM) と呼ばれるチロシンを含むモチーフを持つ分子と会合することによりシグナルを伝達する TCR は CD3 鎖 ( CD3γ, CD3δ, CD3ε, CD3ζ) BCR は Igα, Igβ という ITAM モチーフを有する分子と会合している TCR や BCR が抗原に結合して刺激が入ると ITAM に存在するチロシンが src キナーゼ (TCR は lck や Fyn BCR は Lyn, Fyn, Blk) によってリン酸化され このリン酸化チロシンに SH2 ドメインを持つ Syk ファミリーキナーゼ (TCR は ZAP70 BCR は Syk) がリクルートされて活性化する Syk ファミリーはアダプター分子 (TCR は LAT や SLP76 BCR は BLNK や SLP65) をリン酸化することで下流の様々なシグナル伝達分子 (Itk ファミリーキナーゼ, PLCγ, Vav など ) を集積させてシグナル伝達の足場を形成する Itk ファミリーキナーゼ (TCR は Itk BCR は Btk) は PLCγ をリン酸化して活性化し PLCγ は細胞膜のイノシトールリン脂質である PIP2 を加水分解して DAG と IP3 を生成する IP3 は小胞体の IP3 受容体に働いて小胞体からの Ca 2+ 放出を誘導し これがさらに細胞膜の Ca 2+ チャンネルを開いて Ca 2+ を流入させ 細胞内 Ca 2+ 濃度が上昇する Ca 2+ 濃度の上昇はカルシニューニン (CN) を活性化し CN は NFAT を脱リン酸化することで NFAT の核移行を誘導する DAG は RasGRP の活性化により Ras-ERK 経路を活性化して c-fos の発現を上げるとともに PKC を活性化して CARD11-BCL10-MALT1 複合体を介した NF-κB の活性化を促す Vav は Rac を介して JNK を活性化し JNK は c-jun をリン酸化して活性化する c-jun は c-fos と会合して AP-1 を形成する こうして NFAT NF-κB AP-1 などの転写因子が活性化し これらが協調して働くことによりリンパ球の増殖やサイトカイン遺伝子の発現が誘導される また TCR や BCR の補助刺激分子である CD28 や CD19 の下流では PI3K が活性化され PI3K は PIP2 から PIP3 を生成し これにより PH ドメインを有する Akt が膜にリクルートされて活性化され 細胞の増殖や生存が促される また リンパ球は抗原受容体シグナルを負に制御する受容体も有している TCR シグナルは CTLA4 や PD-1 によって BCR は FcRγIIB によって抑制される これらの抑制型受容体は チロシンフォスファターゼ (SHP-1) やイノシトール脂質フォスファターゼ (SHIP) をシグナル伝達の足場にリクルートする事によりシグナルを抑制する 上の模範解答ほど沢山の分子を書く必要はありませんが ITAM チロシンリン酸化 アダプター分子 PLCγ が生成するセカンドメッセンジャー (IP3 と DAG) とそれによって活性化される下流シグナルと転写因子などが書ければ良いでしょう こうしていろいろな経路が活性化することによって クローナル増殖 サイトカイン産生 抗体産生などがリンパ球に誘導されることを把握しておきましょう 問題 10 抗体による病原体の排除の機構を説明せよ (5 点 ) 図 18-5 参照 中和 オプソニン化 古典経路による補体活性化の 3 つをあげて説明してもらう設問です 中和 : 病原体に結合し 病原体の感染受容体への結合を阻止する オプソニン化 : 病原体に結合し 貪食細胞 ( 好中球やマクロファージなど ) 上の Fc 受容体を介して 貪食細胞 ( 好中球やマクロファージなど ) による貪食と殺病原体が増強する 古典経路による補体の活性化 :( それにより起こる 2 つの排除機構を記述 )1) 細胞膜上に膜攻撃複合体を形成して病原体を傷害する 2) オプソニン化により貪食細胞 ( 好中球やマクロファージなど ) 上の補体受容体を介して 貪食細胞による貪食と殺病原体が増強する * オプソニン化された病原体を貪食する細胞を 好中球とだけ書いている人が多かったですが マクロファージや樹状細胞も貪食能を持ちます それに対する 病原体側の回避機構を説明せよ (5 点 ) 各病原体がユニークな戦略を発達させていることがポイントです 表 18-1 に挙げられているように 病原体によって様々です 抗原変異 抗原多様性 細胞内への感染 寄生虫の場合の脱皮 複雑な生活環など 抗原変異は 授業では動的な抗原変異機構を有する場合 ( 抗原シフトと抗原ドリフト ) プログラムされた遺伝子再編成をそれぞれ インフルエンザウイルス HIV ウイルスとトリパノソーマ原虫を例にあげ説明しました 細胞内への感染は 結核菌やリステリア リーシュマニア原虫を 脱皮は線虫 複雑な生活環はマラリア原虫を例に挙げました 病原体の例をあげられるともっと良かったです そして 単語だけでなく それがどういった機構で それによって病原体がどのような利点を得ているか 理解しておきましょう 5