平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 137 今回の九州北部における豪雨は 線状降水帯 と呼ばれる積乱雲の集合体が長時間にわたって狭い範囲に停滞したことによるものである この線状降水帯による記録的な大雨によって 図 1 に示す筑後川の支流河川の山間部の各所で斜面崩壊や土石流が発生し 大

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国土技術政策総合研究所 研究資料

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(6) 災害原因荒廃渓流の源頭部にある0 次谷の崩壊は 尾根付近から発生している 尾根部は山腹斜面に比べ傾斜が緩やかであるが 記録的な集中豪雨 (24 時間雨量 312.5mm( 平成 30 年 7 月 6 日 6 時 ~ 平成 30 年 7 月 7 日 6 時まで ) 累積雨量 519.5mm(

2 6.29災害と8.20災害 空中写真による災害規模の比較 5 土石流流出位置 災害時の空中写真 3 3 平成26年8月豪雨による広島土砂災害 三入の雨量グラフ 災害時の空中写真 可部地区 山本地区 八木 緑井地区 三 入 では雨量 強度 8

2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

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表 を基本として 渓床勾配の区分に応じて 流木災害対策を中心とする配置計画の目安を示したものが図 である 治山事業においては 発生区域から堆積区域に至るまで 多様な渓流生態系の保全に留意しながら 森林整備と治山施設整備を可能な限り一体として実施していくよう留意する 図 6.1

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重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが

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第 7 章砂防 第 1 節 砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ヶ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県

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図 -3.1 試験湛水実績図 平成 28 年度に既設堤体と新設堤体が接合された抱土ゾーンにおいて調査ボーリングを実施し 接合面の調査を行った 図 -2.2に示すように 調査ボーリングのコア観察結果からは 新旧堤体接合面における 材料の分離 は認められなかった また 境界面を含む透水試験結果により得ら

避難開始基準の把握 1 水害時の避難開始基準 釧路川では 水位観測所を設けて リアルタイム水位を公表しています 水位観測所では 災害発生の危険度に応じた基準水位が設定されています ( 基準となる水位観測所 : 標茶水位観測所 ) レベル水位 水位の意味 5 4 ( 危険 ) 3 ( 警戒 ) 2 (

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136 トレンド レビュー 平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 山口大学大学院創成科学研究科准教授赤松良久 1. はじめに 2017 年 7 月 5 日から 6 日にかけて福岡県朝倉市 大分県日田市の狭い地域において 500mm / 日以上の記録的な大雨があり 各地で河川氾濫 斜面崩壊 土石流が発生し 福岡県 33 名 大分県 3 名の死者を出す大災害となった ( 福岡県 2017 大分県 2017) 今回の災害では大量の土砂と流木が住宅地に流入したことにより被害が拡大したと考えられ 福岡県では全壊 205 棟 半壊 755 棟 大分県では全壊 44 棟 半壊 65 棟という多大な家屋被害が発生した ( 福岡県 2017 大分県 2017) 気象庁ではこの豪雨を 平成 29 年 7 月九州北部豪雨 と命名した ( 気象庁 2017) 図 1 主な被災流域

平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 137 今回の九州北部における豪雨は 線状降水帯 と呼ばれる積乱雲の集合体が長時間にわたって狭い範囲に停滞したことによるものである この線状降水帯による記録的な大雨によって 図 1 に示す筑後川の支流河川の山間部の各所で斜面崩壊や土石流が発生し 大量の土砂と木々が流出した 小さい河川に大量の土砂や流木が流れ込むことによって甚大な被害をもたらした ここでは 本災害の大きな特徴である流木被害に関して 著者が土木学会水工学委員会の調査団の一員として調査した結果を 国土交通省による調査報告も交えて紹介する 2. 流木被害の概要 国土交通省では災害直後に撮影された斜め写真等を基に流木を判読し 流木発生量の調査を実施した ( 国土交通省 2017) 流木の発生域を山林( 山腹の崩壊によって発生 ) 渓畔林( 土石流等の流下範囲で 浸食によって発生 ) 河畔林 ( 河川区間内から発生 ) その他林に分類して 発生流木量を算出した結果を図 2 に示す この豪雨によって発生した流木量は約 21 万m3 ( 約 17 万 t) と推定され そのうちの 63% が 山林 由来であり 28% が 渓畔林 由来であり 河畔林 由来の流木は全体の 6% と比較的少なかった また 各河別の発生流木量と単位流域面積当たりの発生流木量を表 1 に示 表 1 各河川の発生流木量 ( 国土交通省資料を基に作成 ) 単位流域面積当たりの発生流木量 ( m3 ) 発生流木量m3 / km2 佐田川 19,010 261 花月川 6,753 72 大肥川 27,163 356 赤谷川 39,230 1,978 寒水川 22,660 6,124 白木谷川 12,520 3,039 北川 27,616 3,768 奈良谷川 19,601 5,255 桂川 28,815 3,241 小石原川 7,009 228 図 2 分類別の発生流木量 ( 国土交通省資料を改編 )

138 トレンド レビュー 図 3 渓流の流域面積と発生流木量の関係 ( 国土交通省資料より ) す なお ここで用いた流域面積は渓流の流域面積ではなく各河川の流域全体の面積である 発生流木量は赤谷川が最も多く全体の約 2 割を占めるが 単位流域面積当たりの発生流木量でみると 寒水川が最も多いことがわかる また 各渓流の流域面積と発生流木量の関係について 赤谷川の渓流と過去に土石流が発生した渓流を比較した結果を図 3 に示す 過去の災害では単位面積当たりの発生流木量は約 1000m3 /km 2 以下であったが 今回の災害では 288 渓流中 約半数の 134 渓流で 1000m3 /km 2 を超える流木が発生し 最も発生量の多い赤谷川の渓流ではその約 20 倍近くに達しており 過去最大級の流木災害であったことが示唆されている さらに 既往の針葉樹 広葉樹の流域からの発生流木量を比較すると 大きな違いがみられないこともわかる 今回の九州北部豪雨の被災中心地の朝倉市や日田市では林業が盛んであり 針葉樹の植林を行っていたため流木被害が拡大したということも言われているが この結果をみると今回の災害に関しては樹種の問題ではないことが推察される 3. 各河川における被災状況 (1) 赤谷川と白木谷川の土砂 流木の状況赤谷川では山間部の各所で土石流や斜面崩壊が発生し 河川内に大量の土

平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 139 写真 1 赤谷川の久保垣橋付近の流木の堆積砂と流木が流入した 被災前の赤谷川の河道幅は 10m もない程度であったが 山間の氾濫原いっぱい ( 筑後川合流地点から約 2km 上流の地点では川幅が 200m 程度 ) に広がり 土砂と流木が流れたと考えられる 写真 1 に 2017 年 7 月 6 日に無人航空機 (UAV: Unmanned Aerial Vehicle) を用いて撮影した久保垣橋付近に流木が堆積する様子を示す 橋付近には大量の流木が集積しており 洪水時には橋周辺で迂回流が発生し周辺の家屋にも被害が出ている また 赤谷川の西隣に位置する白木谷川では写真 2 に示すように 道路橋に流木が集積し 流木ダムを形成していた これによって ダムの上流側では土砂が堆積し 家屋が土砂に埋もれており 写真 2 の道路橋のすぐ下流の道路橋でも同じように流木が詰まり 上流側に土砂が大量に堆積する様子が確認された 比較的川幅の広い河川においてはこのような流木による閉塞は起こらないものの 洪水時に河川水位が上昇し 橋桁に流木が捕捉されることによって 橋全体の流体抵抗が増加して橋が破壊されるということが起こ

140 トレンド レビュー 写真 2 白木谷川で見られた道路橋への流木の集積 写真 3 2013 年 7 月の山口 島根豪雨で倒壊した JR 山口線の鉄道橋りうる 写真 3 に 2013 年 7 月の山口 島根豪雨災害において JR 橋梁が倒壊した様子を示すが この際も流木の捕捉が倒壊の要因であったと考えられる 河川管理上は洪水時には速やかに水や土砂を下流に流下させることが重要となり そのための河道設計を行っているが 現状では今回の災害で見

平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 141 られたような流木による河道閉塞は想定されていない しかし 流木が橋梁に捕捉されることによって 橋梁の倒壊や流木ダムの形成などにより被害が拡大する可能性が高く 今後の河川管理 設計において洪水時の流木被害を念頭に置く必要がある (2) 寒水川の被災状況寒水川では上流域で多数の斜面崩壊及び土石流が発生していた 山林が河川に迫っている箇所で大量の土砂と木々が寒水川に流れこみ 扇状地部分で広域に水 土砂 流木が氾濫したため 寒水川沿いに甚大な被害を受けた 図 4 に 2017 年 7 月 13 日に国土地理院が撮影した空中写真から作成したオルソ画像 ( 航空写真のひずみを修正した画像 ) を示す この図からも氾濫原で広域に水と土砂が氾濫したことがわかる また 同日に高速道路の直下から筑後川との合流部までの区間を河道に沿って被災状況を踏査した際の写真 図 4 災害後の寒水川の被災状況

142 トレンド レビュー も示す 図 4 の上流部 ( 地点 1) では一面に流木が堆積しており 調査時はまだ行方不明者を捜索する段階であったが 大量の流木の間に人が閉じ込められている可能性もあり 流木溜まりを中心に捜索が進められていた また 扇状地の入り口 ( 地点 2) には大量の土砂とともに巨礫の堆積も見られ 家屋は屋根まで土砂で埋まっている様子がわかる さらに 筑後川との合流部付近 ( 地点 3) までにも細かい木々が到達している 今回の寒水川の災害では土砂災害警戒区域外まで土砂 流木が押し寄せており 中下流域の住民にとっては想定外の災害であったと考えられる このように土砂や流木が流域の下流域までに広く氾濫堆積することは極めて珍しく 本災害の被害の大きさを表している (3) 寺内ダム ( 佐田川 ) における流木の流入寺内ダムは佐田川の筑後川合流部から約 11km 上流の中流域に位置している 今回の豪雨災害において寺内ダム上流では人家は少ないものの 斜面崩壊や道路の分断などの被害が発生していたが ダム下流においてはほとんど被害が見られなかった 今回の豪雨における寺内ダムへのピーク時の流入量は 849m3 / 秒であるのに対して 下流への最大放流量は 120m3 / 秒であり 寺内ダムの洪水調節効果が発揮されたことがわかる また 寺内ダムでは水だけでなく多くの流木を捕捉しており この流木の捕捉量を把握するために UAV を用いた上空からの撮影およびダム湖周辺からの写真撮影を実施した これらの結果から得られたダム湖内の流木の分布を図 5 に示す また 写真 4 にはダム湖内の流木の流入状況を示す 流木は堤体部分までは到達せず ダム湖の蛇行部に留まっていた 通常はダム湖内に流入した流木は堤体付近まで輸送されることが多いが 今回の災害ではあまりにも多くの流木がダム湖上流から供給され 川幅いっぱいに流れ込むことによって蛇行部で流木が詰まったものと推察される さらに 図 5 の結果から寺内ダムに流入した流木面積は約 5 万m2に及ぶことが明らかとなった ダムの管理上はこのような流木はダムのゲート操作や巡視船の航行に支障をきたすため 早急に撤去する必要がある ダムを管理する水資源機構では 7 月 28 日から流木の撤去を開始し 10 月 10 日までに撤去をほぼ完了させている 撤去された流木は福岡県大牟田市 嘉麻市などでチップ化され 熊本

平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 143 写真 4 寺内ダムのダム湖内に流入した流木 図 5 寺内ダムのダム湖内の流木分布

144 トレンド レビュー 県荒尾市などのバイオマス発電の燃料として 再利用されている また 近年では流木を利用したアートコンテストを開催して 流木を再利用する試みもなされており 寺内ダムから撤去された流木 根株も希望者に無料配布されている 4. 流木被害の軽減に向けて 今回の九州北部豪雨では山間部から大量の流木が流出することによって 氾濫原の家屋や田畑に甚大な被害をもたらした このような流木被害の軽減には山間部から流出する土砂を居住地区に到達する前に捕捉することが重要であり 渓流の砂防施設の拡充が必要である 既存の砂防堰堤は土砂をためるだけでなく 流木についてもある程度の捕捉効果を発揮した 一例として 写真 5 に妙見川の須川第 1 砂防堰堤 ( 不透過型 ) に多くの流木が捕捉されている様子を示す 砂防ダムには透過型と不透過型があり 不透過型は上流側に少しずつ土砂をためるため洪水時の土砂 流木の捕捉容量は少なくなるが 河床の勾配を緩くし 土砂や流木の流下距離を短くするという効果がある 一方で透過型の砂防堰堤は普段は水や土砂を下流に流し 洪水時に巨礫 写真 5 妙見川の須川第 1 砂防堰堤に捕捉された多くの流木

平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 145 や流木を捕捉する仕組みであり 流木の捕捉効果は不透過型より高いと考えられる 国土交通省では 2016 年 4 月に砂防基本計画策定指針における流木対策について 土砂とともに流出する流木等を全て捕捉するために 透過構造を有する透過型砂防堰堤や流木捕捉工等の施設を原則設置するという改訂を行っている ( 国土交通省 2016) また 林野庁では九州北部豪雨等による流木災害の発生を受けて 流木捕捉式治山ダムの設置に加えて 間伐等による根系等の発達促進や流木化する可能性の高い流路部の立木の伐採などの緊急対策も検討している 今後 透過型砂防堰堤の増設や流木捕捉工の配備および適切な森林管理を行うことによって 豪雨時の流木災害を低減していくことが望まれている 参考文献 福岡県 (2017) 平成 29 年 7 月九州北部豪雨に関する情報 ( 第 143 報 ). 大分県 (2017) 平成 29 年 7 月九州北部豪雨に関する災害情報について ( 最終報 ). 気象庁 (2017) 平成 29 年 7 月 5 日から 6 日に九州北部地方で発生した豪雨の命名について 報道発表資料. 国土交通省 (2017) 平成 29 年 7 月九州北部豪雨による土砂災害の概要 速報版 Vol.6. 国土交通省 (2016) 砂防基本計画策定指針 ( 土石流 流木対策編 ) 解説 平成 28 年 4 月改訂版. 赤松良久 ( あかまつ よしひさ ) 山口大学大学院創成科学研究科准教授 琉球大学 東京理科大学を経て現職 専門は河川工学 環境水理学 応用生態工学 河川 流域の防災および環境に関わる研究を実施している 1974 年生まれ