2. 文献検討の方法 1 ) データの抽出 ( 表 2 ) 抽出された文献を, タイトルおよび発行年, 研究目的, 研究デザイン, 研究対象, 対象者の産後の時期, 夫立ち会い出産の経験の個所を抽出した. 2 ) 分析の視点夫立ち会い出産の経験に関する研究の傾向を分析することによって, 研究の現状と

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- 資料 - 夫の立ち会い出産の経験に関する文献検討 船越泉美 1) 2), 佐々木綾子 抄録夫の立ち会い出産の経験に関する研究の現状と課題について明らかにすることを目的に医学中央雑誌を用い, 検索した 14 文献を分析対象とした. その結果, 以下のことが明らかになった.1. 夫のみを研究対象としているものが少なかった.2. 分娩での入院中に行われた研究がほとんどであり,1 ヵ月以降の児との生活を経験してから出産を想起して語られた研究はなかった.3. 夫の満足度を上げるため助産師 看護師の援助を評価し, より良い援助の示唆を得る研究がされていた.4. 出産の立ち会いを決定しているのは, 主に夫自身であった.5. 夫の達成感や満足感のある出産の受け止めとなる要因として, 妻からの肯定的な反応や出産後の感想, 発言や, 妻とともに妊娠中に作成したバースプランの達成があった.6. 立ち会い出産後, 無力感などの否定的な感情を持つこともあるが, それに対する援助の方法や適切な時期は明らかになっていなかった. キーワード : 夫立ち会い出産立ち会い分娩 Ⅰ. 緒言少産化の今日において, 出産は母親となる女性にとってはもちろん, 父親となる男性にとっても貴重な経験となっている. イクメンという言葉は,2010 年 6 月より改正育児 介護休業法がスタートしたことにより, 大きく取り上げられ, 広く知られる模範的な父親像となった. また, 第 1 子出産時の母親の平均年齢は30.7 歳 2) と, 上昇傾向にあることや拡大家族の減少, 共働き世帯の増加などの社会情勢を背景に父親となる男性は, 妊娠 出産 育児を共有することが求められ, 父親に寄せる期待は大きくなっているといえる. そして, 共有することのひとつに夫立ち会い分娩があげられる. 夫は出産に立ち会った理由として自分から立ち会いたいと思った, そばにいて妻を励ましたいと思った, 命の誕生を共有したい 3) などを挙げており, 立ち会い出産に対する父親の思いや, 夫婦の意向はバースプランなどによって確認する機会が増加した. それに伴い, 出産という経験の共有を目的として分娩に立ち会うことを希望する夫または夫婦が増加してきたと考えられる. 夫立ち会いの意義は, 夫婦ともに互いに協力しつつ, 出産への不安, 苦悩, 恐怖などを乗り越えて, 感動的な 1)Izumi Funakoshi 大阪医科大学大学院看護学研究科博士前期課程 2 )Ayako Sasaki 大阪医科大学看護学部 出産体験をし, その後の子育ての基本的始発点となる 4) ことが示されている. また, 夫立ち会い出産は産婦の精神的な安定が得られ, 父性が向上し父親役割がスムースに獲得され, 育児参加が多くなる 5) ことも報告されており 今後ますます父親の出産への立ち会いや育児への参加が求められると考える. 本研究では夫立ち会い出産の経験に関する文献検討を行い, 先行研究を分析し, 研究の傾向を明らかにすることによって, 夫立ち会い出産の経験に関する研究の現状と課題について明らかにすることを目的とした. Ⅱ. 研究方法 1. 文献検索の方法 1 ) 医学中央雑誌 (Web 版 ) を用い, 立ち会い出産 立ち会い分娩 をキーワードとし, 期間は全年に 出版された看護文献 ( 会議録除く ) を検索した. その結果 70 文献が該当した. 2 ) 文献タイトルおよび抄録または文献を読み研究目的に合致し, 夫 ( または夫婦を含む ) を研究対象としている文献を14 件抽出し, 分析対象文献とした ( 表 1). 表 1 文献検索における選定の基準基準内容含める基準 言語は日本語に限る( 抄録のみ日本語を含む ) ( 包含基準 ) 出版された文献に限る 研究対象 研究参加者が夫または夫婦を含む文献に限る除く基準 会議録は除く ( 除外基準 ) 二次文献は除く ヒューマンケア研究学会誌第 9 巻第 2 号 2018 89

2. 文献検討の方法 1 ) データの抽出 ( 表 2 ) 抽出された文献を, タイトルおよび発行年, 研究目的, 研究デザイン, 研究対象, 対象者の産後の時期, 夫立ち会い出産の経験の個所を抽出した. 2 ) 分析の視点夫立ち会い出産の経験に関する研究の傾向を分析することによって, 研究の現状と課題について明らかにすることを目的に検討した. 3. 用語の定義夫立ち会い出産および立ち会い分娩 : 夫が妻の分娩の第 1 期および第 2 期, または第 2 期のみに立ち会うことをいう. 4. 倫理的配慮本研究は先行研究に基づく研究であり, 著作権の範囲内で複写を行い, 出所を明示し, その引用の方法に留意した. また, データベース会社と正当に契約した範囲内でアクセスを実施した. 表 2 対象文献の一覧 ( 発行年順 ) N O 著者 ( 発行年 ) 文献名 研究デザイン 1 研究対象 2 産後の時期 夫の経験 1 松田 (2015) 立ち会い出産における夫の満足感と立ち会い体験および妻への親密性との関連 1 出産に立ち会った夫 186 名 2 出産から 1 か月以内 夫の満足感には, 夫が立ち会い出産時に妻への支援を行うこと, 出産中に妻から肯定的反応を受ける事, 出産時に児との接触が影響を及ぼす 2 松田, 他 (2014) 妻の出産に立ち会った夫の背景と夫婦の親密性の関連 1 出産に立ち会った夫,174 名 2 出産から 1 か月以内 1. 妻への支援出産時に妻への励ましや腰部のマッサージ 呼吸法のリードといった複数の支援を提供する夫は, 支援をしない夫に比べて親密性が高い 2. 新生児との関わり児の 写真を撮る 家族で過ごす 夫は親密性が高い 3 Kojima (2014) The Experience of Man Who Had Attended the Birth of Their Child at a Maternity Center 1 出産に立ち会った男性 8 名 2 妊娠期から産後 1 か月 男性は妊娠期の 妻の妊娠 という捉えを出産, 育児を通して 父親としての自己を再構築 する 4 松永 (2014) 夫立ち会い出産の現状と夫婦の意識調査 分娩に必要な助産師による支援 1 経腟分娩をした褥婦および立ち会った夫 40 名 2 産褥 3 日 ~ 退院まで お産の苦しみや大変さを理解し, 一緒に取り組むことで喜びを共有する 妻への精神的支えとなり, 出産時に夫の役割を果たした自覚が湧く 5 三浦, 他 (2011) 初めての立ち会い出産を経験した夫のニーズと援助のあり方 1 初めて立ち会い出産を経験した夫 23 名 2 出産後 2 時間 ~ 退院まで 95% の夫は立ち会いをしてよかったと答えている 立ち会ってよかった理由として 85% の夫が 生命の誕生の瞬間に立ち会えたから と答えている 夫は具体的な妻のサポートの方法がわからず不安な気持ちを抱えている 6 德能, 他 (2010) 夫立ち会い分娩時における支援の検討 1 立ち会い分娩をした夫 30 名 2 分娩直後から産褥 6 日目まで 立ち会い分娩中の夫の気持ちとして最も多かったのは 心配 次いで 落ち着いていた 不安 前向きだった 無力感 であった スタッフの声掛けにより気持ちを落ち着けることができた 7 寺内, 他 (2010) 初産婦の夫が立ち会い出産に対して抱いていたイメージと実際の相違 1 正常分娩に立ち会いをした両親教室に参加していない初産婦の夫 30 名 2 産後 2 日または 4 日 夫は自分のできるサポートを探し, 妻を支えていた サポートを行いながらも, サポートの意味を 何もできていない と感じていた 医療処置や出血に対する恐怖感を抱いていた 8 三上, 他 (2009) 立ち会い出産を通して変化する夫の気持ち 1 妻の妊娠や分娩状況および出産した児に時に異常がなく初めて出産に立ち会った夫 6 名 2 産後 2 日 ~5 日 立ち会った時間は 1 時間 ~ 8 時間程度 妻の痛みや気持ちを理解できないもどかしさを感じる 思うような出産にならなかったために感じる無力感 心身の疲労 90 ヒューマンケア研究学会誌第 9 巻第 2 号 2018

N O 著者 ( 発行年 ) 文献名 研究デザイン 1 研究対象 2 産後の時期 夫の経験 9 小林, 他 (2009) 夫立ち会い分娩に対する夫婦の意識調査 - 両親学級と満足度との関連 - 1 経腟分娩し, 夫が分娩に立ち会った夫婦 110 組 2 産後 ~ 退院日 両親学級を受講した人は両親学級を受講していない人より, 有意に必要と答えているが, 立ち会い出産の満足度と両親学級の受講の必要性には関連がなかった 10 松井, 他 (2009) 夫婦で取り組むお産と満足感の関連性 - バースプラン作成からバースレビューを通して - 1 切迫早産などで産前の入院中に夫立ち会いを希望し, 立ち会った産婦とその夫 4 組 2 産後 4~7 日 お産の満足度を左右する因子は 希望の達成 夫婦の連帯感 自己肯定感 マイナスイメージ 自己概念 児への愛着 の 6 つのカテゴリーに分類される 11 中島, 他 (2007) 立ち会い分娩後の夫の意識に関する研究 1 立ち会い分娩経験後の夫 142 名 2 妻の入院中 自分 夫婦で立ち会い出産をすると決めた夫で 無力感 があると答えたのは 11.3%. 他者の勧めで立ち会い出産を決めた夫は 31.0% であった 12 森崎, 他 (2003) 夫立ち会い分娩に臨む夫婦への援助の方向性 - 夫立ち会い分娩でより満足が得られるために - 1 助産師学生の関わった 3 事例の夫婦 3 組 2 ( バースレビューの産後日数不明 ) 夫立ち会い分娩の満足度を上げた要因は 1 産婦の身体的精神的ニードの充足 2 バースプランの実現 3 夫への援助であった 満足度を下げた要因は 1 バースプランの阻害 2 夫への援助であった 13 小林, 他 (2003) 栃尾郷病院における家族立ち会い分娩の実際と評価 1 立ち会い分娩をした夫婦 10 組 2 ( 産後どの時期の調査であるかは不明 ) 立ち会い出産後の夫の心境として, 妻へのいたわり思いやり 子どもへの愛情 家事育児への協力 について 80~90% に上向きの変化が見られた 性生活 については 10% の夫に下向きの変化が見られた 14 関, 他 (2001) 当院における夫立ち会い分娩手順の検討 - 立ち会い経験者と助産師にアンケート調査を実施して - 1 夫立ち会い分娩を行った夫婦 28 組助産師 16 名 2 ( 産後どの時期の調査であるかは不明 ) 陣痛室からの立ち会いが必要だとした理由として夫は 妻のサポートができた 8 名, 感動した 6 名, 父親として自覚が持てた 5 名と答えた Ⅲ. 研究結果 1 ) 研究の動向 ⑴ 文献数の動向 ( 図 1 ) 夫または夫婦を研究対象とした研究は,2001 年から2015 年に発表された文献 14 件であった. 2009,2010,2014 年にそれぞれ 3 件と多い傾向が見られた. ⑵ 研究対象の動向夫のみを研究対象としている文献は 8 件であり, すべて2009 年以降に発表されたものであった. 2 ) 研究の内容 ( 表 2 ) ⑴ 研究デザイン 図 1 対象文献数の年次推移 研究が 9 件, 研究が 5 件であった. ⑵ 研究の時期産後 1 か月までに回答を求めたものが 2 件, 産褥 2 日から退院日までが 9 件, いつ行ったのか明記されていない文献が 3 件であった 産後 1 か月を超える対象を研究した文献はなかった. ⑶ 研究の結果 考察夫の立ち会い分娩の満足に関わるもの, 妻との関係や妻への思いに関するもの, 夫の気持ちや意識の変化に関するもの, 助産師 看護師の援助に対する評価に関するものに分類した. 1 夫の立ち会い分娩の満足に関わるものは 5 件 (No.1.8.9.10.12.) であった. 夫の満足感について, 産後に妻から肯定的な感想を聞けることによって夫の気持ちは肯定化され, 夫の立ち会い出産に対する満足度の向上に関連していた 6). 同様に, 夫が立ち会いの際に妻への支援を行うこと, 出産中に妻から肯定的反応を受けることを要因として挙げているほか, 妻との親密性が高い夫は立ち会い満足感が ヒューマンケア研究学会誌第 9 巻第 2 号 2018 91

高かった 7). また, 妊娠期からの医療者の関わりとして, 夫婦のお産の満足感を左右する因子は, 希望の達成感, 夫婦の連帯感, 自己肯定感, マイナスイメージ, 自己概念などをあげ, 妊娠期のバースプラン作成から産褥期のバースレビューを夫がともに関わっていくことにより, 夫婦のお産の満足感は高くなった 8). さらに産婦の身体的ニードの充足と, その時々の状況での看護と夫婦のバースプランの実現との調和が重要な要因である 9) ことがわかった. 一方, 満足度と両親学級の受講の必要性との関連はなかった 10). 2 妻との関係や妻への思いに関するものは 1 件 (No.2) であった. 夫の背景と夫婦の親密性の関連について, 核家族 夫婦の意思での立ち会い 立ち会い開始が入院時から 分娩室内で妻への支援を多くする の項目に当てはまる背景をもつ夫の妻への親密性が高いことがわかった 11). 3 夫の気持ちや意識の変化に関するものは 4 件 (No.3.7.11.13.) であった. 男性の体験について, 妊娠期には 妻の妊娠という認識 という客観的な視点に立つ夫が立ち会い出産を通して 父親としての自己の再構築 へと変化する過程における助産師のケアは重要であった 12). また, 出産前の女性と子どもに対する考え方として, 出産は 長くて痛くて辛い, 怖い というイメージを持ち, 出産後は陣痛に苦しむ妻の姿は想像以上であったと述べる一方で, 児の誕生を目の当たりにしたことは想像以上の感動と喜びを体感する機会となっていた 13). 夫の立ち会い出産後の心境の変化として 妻へのいたわり思いやり 子供への愛情 育児への協力 は増したものの, 性生活へのマイナスの影響の可能性があった 14). さらに, 妻, 助産師, 友人からの勧めで立ち会い出産を決定した夫は分娩後 無力感 を強く感じていた 15). 4 助産師 看護師の援助に対する評価に関するものは 4 件 (No.4.5.6.14) であった. 夫婦での両親学級の受講は, 夫が分娩経過を理解し心の準備ができたこと, 知識が持てたこと, 父親としての自覚がもてたことなどの効果が判明し必要であった 16). 陣痛室 分娩室にお ける助産師のかかわりについてよかったか悪かったかの評価を求めた研究において, 立ち会い群では分娩経過の説明をよかったとする人が最も多かった. 非立ち会い群では呼吸法の指導とした人が最も多く, 次いで分娩経過の説明となっていた. また, 夫の事前学習は雑誌 本 インターネットによるものが多かった 3). 立ち会い出産をした夫の希望するスタッフからの働きかけとして, マッサージの方法や呼吸法について知りたいと考えていることが分かり, 具体的な方法を説明することで夫が主体的に妻をサポートできるよう援助として取り入れていく必要があった 17). 同様にスタッフの声かけの評価として役に立ったと答えた割合が最も大きかったのは マッサージ 次いで 呼吸法 であった 18). Ⅳ. 考察 1. 夫立ち会い出産の経験に関する研究動向 2001 年以前の夫立ち会い出産の経験に関する研究として, 夫または夫婦を研究対象としているものがなかった. これは2001 年に開始した 健やか親子 21 によって, 母子保健を取り巻く, 晩産化, 核家族化や育児の孤立化などの深刻な状況がクローズアップされ, 父親の家庭における役割の重要性が言われ始めたことによると推察される. 同時に健康水準の指標として, 妊娠 出産に満足している者の割合が取り上げられており, 周産期の現場として出産満足感を得られるといわれる夫立ち会い出産の場における夫を含む援助について検討される研究が増加したのではないかと考えられる. 研究時期は主に分娩当日から退院日までであった. これは夫の立ち会い出産を振り返る時期として, 産後数日内の経験の記憶や感情の鮮明な時期を選択していることが考えられる. 立ち会い出産のその場面の感情や実態を調査する目的には合致した時期である. しかし, 夫立ち会い出産のメリットとして示唆される育児への影響や, その後の夫婦関係 感情などについては, 実際育児を経験している時期の研究はなく, 出産後の育児の各時期における研究の蓄積が必要である. 研究方法は主に施設内での取り組みを評価する独自の質問紙の使用による研究がされていた. 夫の経験の個別性や共通性を明らかにするため, 研究など多様な手法による研究が必要と考える. 2. 夫の経験した立ち会い出産 92 ヒューマンケア研究学会誌第 9 巻第 2 号 2018

出産に立ち会うことを決めた理由は自分の意思, 夫婦の意思または妻の意向が多く, 他人の勧めは少数であった. 妊娠中にバースプランの機会などを利用し, 夫婦で出産について会話を持つことによって, それぞれの意思を確認することができる機会となっており, 夫婦のコミュニケーションの上で, 意思決定されていると考えられる. 立ち会い中に夫が妻への支援をすることは, 妻の出産の満足度を向上させる. 同時に, 夫の満足度にも影響していた. 夫婦が出産という大きなイベントを共有し, 自分がいることが出産の場で役に立ったと感じられ, 夫婦でともに乗り越えたという実感に影響していることが推察される. また, 夫の達成感や満足感のある出産の受け止めとなる要因として, 妻からの肯定的な反応や出産後の感想, 発言や, 妻とともに作成したバースプランの達成も関連していることがわかった. 出生した児との接触や写真を撮ることも達成感や満足感の要因であるとする文献がある一方で, 新生児との関連はなかったとしているものもあり, 見解のわかれる点であった. 立ち会い出産をした夫の否定的な反応として, 自分の意思ではなく, 人の勧めによって立ち会った場合には無力感を感じることもある. 夫は立ち会い出産の際, どのような役割を果たせばよいのか, 自分が立ち会うことが必要だったのかわからないなどの悩みに起因しているのではないかと考えられる. 立ち会い出産における夫の経験を具体的に明らかにする研究が不足している. 分娩は緊張感の高い非日常の空間であり, 胎児の心拍低下や産婦の大量出血など, 予測不可能な緊急の事態も発生する. このような現場に立ち会う夫には, 無力感以外にも恐怖や嫌悪のような否定的な感情を持つ夫が一定数存在することが推測される. 夫においても立ち会い出産の経験を肯定化し父親役割の獲得のために, 児誕生直後に立ち会い出産についての気持ちの表出を行い, またその気持ちを汲み取り, 担当の助産師や妻からねぎらいの言葉かけてもらい, 評価を受けるバースレビューを行うことは重要である 6) と述べている. しかし, 立ち会った夫の体験を振り返り, 肯定的な経験として育児のスタートにつなげる援助はされておらず, 否定的な感情を持った夫に対する経験の実態や看護援助に関する研究が必要と考える. Ⅴ. 結論夫の立ち会い出産の経験に関する研究の現状と課題について明らかにすることを目的に文献検討を行い 14 文献を分析対象とした. それにより, 以下のことが明らか になった. 1. 夫婦を研究対象としているものも含め, 夫を研究対象としているものが少なかった. 2. 分娩での入院中に行われた研究がほとんどであり, 1 ヵ月以降の児との生活を経験してから出産を想起して語られた研究はなかった. 3. 夫の満足度を上げるため助産師 看護師の援助として行われた事前学習の内容や立ち会い中の声掛け, 態度などを評価し, より良い援助の示唆を得る研究がされていた. 4. 出産の立ち会いを決定しているのは, 主に夫自身である. 5. 夫の達成感や満足感のある出産の受け止めとなる要因として, 妻からの肯定的な反応や出産後の感想, 発言や, 妻とともに妊娠中に作成したバースプランの達成がある. 6. 立ち会い出産後, 無力感などの否定的な感情を持つこともあるが, 具体的な経験やそれに対する援助の方法や適切な時期は明らかになっていないため研究する必要がある. 利益相反本研究における利益相反は存在しない. 文献 1 ) 2 ) 厚生労働省 (2017), 平成 27 年人口動態統計月報年計 ( 概数 ) の概況,2017 年 10 月 30 日, http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/ geppo/nengai15/dl/gaikyou27.pdf 3 ) 松永由香 : 夫立ち会い出産の現状と夫婦の意識調査分娩に必要な助産師による支援, 日本農村医学会雑誌,62(5),779 784,2014. 4 ) 関根憲治 : 夫立ち会い分娩の問題点と対策, 周産期医学,23(1),1037 1041,2001. 5 ) 田島朝信, 和田京子 : 夫立ち会いがもたらす精神的影響, 母性衛生,36(1),131 140,1995. 6 ) 三上里枝子, 村山より子, 久米美代子 : 立ち会い出産を通して変化する夫の気持ち. 日本ウーマンズヘルス学会誌, 8 (1),65-73,2009. 7 ) 松田佳子 : 立ち会い出産における夫の満足感と立ち会い体験および妻への親密性との関連. 日本看護研究学会雑誌,38(1),93 100,2015. 8 ) 松井智子, 丸山美佳, 小原小夜子, 他 : 夫婦で取り組むお産と満足感の関連性バースプラン作成から ヒューマンケア研究学会誌第 9 巻第 2 号 2018 93

バースレビューを通して, 大津市民病院雑誌,10, 46-49,2009. 9 ) 森崎聡美, 小川久貴子 : 夫立ち会い分娩に臨む夫婦への援助の方向性夫立ち会い分娩でより満足が得られるために, 日本ウーマンズヘルス学会誌, 2, 104 111,2003. 10) 小林春香, 沼尾貴子 : 夫立ち会い分娩に対する夫婦の意識調査両親学級と満足度との関連, 市立三沢病院医誌,17(1),21-24,2009. 11) 松田佳子 : 妻の出産に立ち会った夫の背景と夫婦の親密性の関連, 母性衛生,55(2)416 425,2014. 12)Kojima Keiko: 助産院にて子供の出産に立ち会った男性の経験 (The Experience of Man Who Had Attended the Birth of Their Child at a Maternity Center), 関西看護医療大学紀要, 6 (1)12-29, 2014. 13) 寺内友香, 野口真貴子, 久米美代子 : 初産婦の夫が立ち会い出産に対して抱いていたイメージと実際の 相違, 日本ウーマンズヘルス学会誌, 9 (1),67-78,2010. 14) 小林清美, 田村美幸, 坂井祐子, 他 : 栃尾郷病院における家族立ち会い分娩の実際と評価, 新潟県厚生連医誌,12(1),63-66,2003. 15) 中島通子, 牛之濱久代 : 立ち会い分娩後の夫の意識に関する研究, 母性衛生,48(1)82 89,2007. 16) 関恵子, 志田薫, 北野智子, 他 : 当院における夫立ち会い分娩手順の検討立ち会い経験者と助産師にアンケート調査を実施して, 茨城県母性衛生学会誌,21,46-48,2001. 17) 三浦小織, 川村みか, 遠藤香織, 他 : 初めての立ち会い出産を経験した夫のニーズと援助のあり方, 茨城県母性衛生学会誌,29, 1-5,2011. 18) 德能真由美, 庄司聡美, 高橋聡子, 他 : 夫立ち会い分娩時における支援の検討, 仙台市病院医学雑誌, 30,87-93,2010. 94 ヒューマンケア研究学会誌第 9 巻第 2 号 2018