第 5 学年分科会 第 5 学年の取り組み 全体会でも説明があったように, 本校では, 児童の実態をもとに4つの重点内容項目を決め, それぞれの全体計画を立てて道徳の学習に取り組んでいる 5 年生では, 次のような児童の実態をもとに重点内容項目を設定した よい面 と 課題とされる面 をまとめている 例えば, 学習や運動における課題に対して自分の目標を設定し, それに向かって進んで取り組もうとする姿は見られるが, より高い目標に向かって努力しようとすることには消極的な一面も見られる そこで, かがやくいのち の観点から, 重点内容項目として 1-(2) 希望, 勇気を設定した 同じように, 児童の実態から次のようなよい面や課題を見出し, ひびき合ういのち の観点から 2-(2) 思いやり 親切を, 大切ないのち の観点から 3-(1) 生命尊重を, つながるいのち の観点から4-(1) 公徳心 規則の尊重を, それぞれ重点内容項目として設定した それぞれの重点内容項目ごとに全体計画を立てた 例として 1-(2) 希望, 勇気について見てみる 重点内容項目に関する資料を3つ選び, 年間を通して指導できるよう計画した 同時に 1-(6) 個性伸長, 2-(5) 尊敬 感謝, 4-(3) 役割の自覚の内容との関連についても配慮した さらに, 各教科 領域との関連, 学校行事 日常生活の指導, 家庭 地域社会連携 との関わりについても計画し, 全教育活動で道徳教育を進めるようにした それでは 2-(2) 思いやり 親切についての具体 的な取り組みについて 5 年 1 組の実践を紹介する
7 月の 人の心にふれて では, 人に素直に親切にできた経験をふり返る ぼく の気持ちを考えることを通して, だれに対しても相手の立場に立って温かな心で接していこうとする心情を育てることをねらいとして取り組んだ 授業後には, 親切にしたいと心では思っていても行動に移すのは難しい でも思っているだけでは気持ちは伝わらない 人の心も自分の心も温かくしたい といった感想が出され, 相手の笑顔や気持ちを思えばきっと勇気を出して行動できると思う という気持ちの高まりが見られた 本日公開した2 時間目の 父の言葉 と 1 月に計画している 運動会の弁当 では, 相手への思いやりの心を行動に移そうとする態度を養うことをねらいとしている 本時では, どんな行動が本当に相手のためになるのかについて考え, 思うだけでなく行動に移すことの大切さについて考えた 次の学習では, 思いやりの心は相手にあわせていろいろな形で表現されるということについてさらに考えを深め, 日常生活につながる道徳的実践力を高めていきたいと考えている 道徳の学習の中ではもちろんのこと, 様々な場面で道徳的価値について考えたり, 自分を見つめたりするとき, そのベースとなるのは子ども達自身の体験である 醇風小学校では, 豊かな体験 とは子ども達の心に響く感動的な体験や道徳的な価値にふれる体験だと考えている そこで, 自分はどのような体験をしているのかを見つめ直す活動を, 日常生活の中に取り入れてきた 例えば よいこと見つけ である 自分から思いやりの心を伝えた体験や相手から思いやりの心を受け取った体験を思い出すとともに, その時自分や相手はどのように感じているのかについて見つめ直し, それを教室に掲示してみんなで共有した 子ども達は, 自分の何気ない行動が相手にとっては思いやりと受け止められていることに気づいたり, 自分にも同じような経験があると共感したりするようになり, 思いやりのある行動 について敏感に気づくようになっていった その他にも帰りの会や学活での話し合い活動などのように, 日常生活の中で子ども達が様々な体験を見つめられるよう取り組むことは, 子ども達が 思いやりの心 について考えを深める視点作りにつながった そして子ども達の様々な気づきを日記や心のノートなどに記録することで, 道徳の時間に自分を振り返る手がかりにもな
っている また, 思いやりの心は校訓 至誠 につながる そこで校訓を実践化するために示されている 醇風五心 がどのような行動に表れるのかを学級会で話し合い, 週ごとの学級目標に掲げて取り組んでいる 例えば 素直な心 は明るいあいさつに表れるという子ども達の意見から, 朝のあいさつ運動にも取り組んでいる 道徳の授業の工夫についても紹介する 例えば, 資料に登場する人物の心情により深く迫るための工夫として, 人の心にふれて の学習では登場人物の行為を動作化したり同じような体験をしたりした 今回の学習では, 朝読書の時間に学校図書館司書教諭による黒柳徹子さんの自伝 窓際のトットちゃん の読み聞かせをしたり, 総合的な学習の時間に現在のユニセフ親善大使としての活動について紹介したりして, 子ども達なりに 黒柳徹子さんはこんな人だ というイメージを持てるようにした また資料だけでなく, 実際に青年海外協力隊としてスリランカで活動された方においでいただき, 直接お話を伺う機会も設けた 交流を通して, なぜ国際協力に取り組もうと思ったのか, 現地でどのような経験をされたのかを伺った アクティビティに参加したりすることも, 子ども自身が視野を広げるための大切な学びの場となった
( 自評 ) 難しいと考えていた父の思いに迫る場面や自分自身を見つめる場でも, 子ども達なりに考えを深めることができた 学習や様々な体験を通して子ども達にはいろいろな人の立場から物事を考えようとする姿勢が身につき始めた では, 次に,3-(1) 生命尊重についての具体的な取り組みについて,5 年 2 組の実践を紹介する 3-(1) 生命尊重については, 次の3つの資料を選んだ まず,6 月には せいいっぱい生きる という主題のもとに 命 という資料を使った学習を実践した ここでは, 自分自身がどう生きるか, ということに視点を当て, 短い命を精一杯生きた宮越由貴奈さんの生き方から, 自分にとって 精一杯生きる ということはどういうことなのかを考えた 9 月の 稲村の火で命を救え では, 尊い命 を主題として, 自分と周りとの関わりに視点を当て, 命を守る ということは, 集団の中でどのような行動を取ることなのか, ということについて話し合った そして, 今日見ていただいた 命のアサガオ では, さらにより広い意味での人と人との 命 の関わりについて, 命を大切にする思いは, 人から人へと受け継がれる という視点から, 命をうけつぐ という主題を設定した実践に取り組んだ このように, 生命尊重 についての3つの資料それぞれに異なる視点によるねらい 主題を設定し, 個人から集団, さらにより広い人たちとの関わりについて学ぶことができるように年間を通した全体計画を作成し, 内容項目の重点化を図った 次に, 児童の実態をもとにした発問の工夫について, 命 という資料をもとにした学習の実践について紹介する
この学習では, まず, 子ども達に一度資料を読ませ, いちばん心に残ったところ と その理由 について自由に記述させた そして, 全員の感想を観点ごとに1 つの表にまとめた 観点としては 由貴奈ちゃんの生き方に対する感動, 由貴奈ちゃんの詩に対する感動, 命についての認識の深まり, 由貴奈ちゃんの生き方が人に与えた影響に対する感 動 を考えた まとめてみると, 多くの子ども達が様々な観点から いちばん心に残ったところ として選んだのは, 由貴奈ちゃんが 私は, 命がつかれたと言うまでせいいっぱい生きよう と言った場面であった この実態をもとに, 主題を せいいっぱい生きる とし, 由貴奈ちゃんにとって せいいっぱい生きる ということは, どういうことだったと思いますか という中心発問を考えた この発問は子ども達の心に深く響き, 活発な話し合いを行うことができた
次に, 豊かな体験を生かした授業づくりの工夫として, 各教科や日々の活動との関連を図った取り組みについて紹介する 5 年生では, 特に前期の理科の学習では生命の誕生を中心に指導してきた 教室でメダカを飼い, 卵から稚魚が孵化した時の喜びを分かち合うこと, あるいは, 人が誕生するまでの様子を調べる活動や映像資料をもとに学んでいくことを通して, 生命の不思議さ, 尊さを体感することができた そうした体験が授業に生きるよう, 様々な工夫をしてきた また, 絵本 いのちのアサガオ の読み聞かせをしたところ, 子ども達は心を打たれ, 自分たちも 命のアサガオ を育てたいという思いを持った そこで, 骨髄バンクいのちのアサガオにいがた の協力により, 種を譲り受け, 実際に教室で 命のアサガオ を育てる活動を行うことにした 7 月の初めに種を撒き,1 週間後にはかわいい芽を出した 夏休みの間すくすくと育った命のアサガオは, 子ども達が教室に帰ってくるのを待つように,8 月の終わりに美しい大きな花を咲かせた それから約 1ヵ月間, 毎朝, たくさんの紫色の花を咲かせて子ども達を迎えてくれた そして今, 新しい種を取ることができた 命のアサガオを育てながら, 子ども達はアサガオに光祐くんの姿を重ね, 時にお母さんの気持ちに寄り添うことができた それは, 担任も同じ思いだった 命のアサガオを育てることを通して, 子ども達, そして担任の生命観が少しずつ変わっていったことは間違いない それは, 今日の授業にもつながっていると思う (5-2 自評 )
それでは,5 年生の実践を通した成果と課題についてまとめてみる 成果としては, まず, 児童の実態をもとにして重点内容目標を設定し,3 時間の学習計画を立てたことにより, 指導の重点化が図れたことが挙げられる 次に, 重点内容項目ごとの全体計画を立てたことで, 教科領域や日常生活等と関連させながら, 年間の見通しを持って指導に当たることができた そして, 体験を生かした道徳の授業を工夫してきたことにより, 自分の生き方をふり返りつつあることも, 大きな成果の一つである 課題としては, 児童が自分の生活をふり返り, よりよく生きていこうとするためには, 素直に語り合える学級づくりをしていく必要がある そして, 家庭 地域との連携を深めていくためには, 親子で取り組む道徳学習や地域の人の参加や協力を得た学習への取り組みも課題となってくる こうした課題に向け, これからも実践を続けていきたい ( まとめ ) これまでの道徳教育の取り組みを振り返ると, 子ども達, そして教師自身が, 日々, いかに生きるか という意識を深め, よりよく生きたい という気持ちを強くしてきたことを感じる 道徳は全教育活動の要である ということを実感することができた 何より, 道徳が大好き! という多くの子ども達が育ったことが, 一番の成果だと思う