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CONTENTS

Transcription:

株式会社サンテック統計解析室室長 第 36 回 : EBM 実践のための統計学 ( その 21) 統計学的側面から観て受理される医学論文を作成するために ~~~~~~ CONTENTS ~~~~~~ 4 各論 医学臨床論文がrejectされないためへのstep 4.10 解析法が難解で誤解される study design:cross-over design 4.10.1 最も単純な cross-over design 4.10.2 cross-over design の直交表を用いた表現 4.10.3 cross-over design では 交互作用とはどこか? それは何か? 4.10.4 交互作用 vs. 順序効果 足立堅一先生 4.10.5 順序効果とは交互作用 交互作用との視点から 順序効果とは 効果がどうなることか? 4.10.6 design 上の最大の問題とは? 順序効果 と 被験者差 ( 個体差 ) との 交絡 4.10.7 時期効果 順序効果 交互作用 carry-over effect 4.10.8 時期効果 は carry-over effect か? 印刷される場合には こちら (PDF 版 ) をご利用下さい PDFファイルをご覧になるには 推奨動作環境 をご覧ください 掲載内容のご使用は診断薬.NET 利用規約/ 著作権 に準じ私的使用の範囲外でのご使用は事前に承諾が必要です

4. 各論 医学臨床論文が reject されないためへの step 4.10 解析法が難解で誤解される study design:cross-over design [ 診断 test] 1. cross-over design において 薬剤 時期 = 交互作用 となることとその意味を知っている 2. 順序効果 とは どんなようになることかを知っている 3. carry-over effect という 非統計学用語と 交互作用 時期効果 との関連性を説明できる 少し この問題に関与した読者でも 上記診断 test への正解が出せるか 筆者は甚だ疑問である

4.10.1 最も単純な cross-over design 取り分け 治験の領域においては 後発医薬品における 同等性試験 で定番的に使用される手法である 当然 他の領域でも使用されており また もっと利用されて良いと筆者は信じる者である 最初に 第 34 回の表 10 で cross-over design について解説と予告をしておいたので 復習をしながら解説に着手しよう 最も単純で頻用される design として 薬剤 D1 D2 の 2 群としよう 後発医薬品の同等性試験では 先発品 : 標準薬 R と後発品 : 試験薬 S ということになる 時期もこれまた 最も単純で頻用される 2 時期 T1 T2 としよう 薬剤 D1 を最初に与えた被験者には その薬剤効果が消失に十分な時間 つまり wash-out period を置いた後 今度は D2 を投与する ( 表 1 の #1) 最初に D2 を投与した被験者では この逆になる ( 表 1 の #2) 先ず 注意すべきは この 2 つの組み合わせしか存在しないことである 表 1 最も単純な cross-over design

4.10.2 cross-over design の直交表を用いた表現 ここで 直交表を用いた 独自の観点からの解説を試みる それにより 目指すは 交互作用を標的とする明快な理解である ただし 発想の飛躍 転換が必要であるので 是非とも飛躍を実現して欲しい 1 直交表を用いて 表 1 の cross-over design を書き直してみること hint は 因子は 薬剤群 時期 投与順

4.10.2 cross-over design の直交表を用いた表現 例題 1: 直交表を用いて 表 1 の cross-over design を書き直してみること hint は 因子は 薬剤群 時期 投与順 表 2 参照 急所は 1 人の被験者が 2 つの割り付けを担っているので 通常の試験での 2 人分に該当すること 当該被験者では 投薬 順序 は 1 つに特定されることである 例えば #1 では 1:D1 D2 である これに対して それと紛らわしい概念としての 時期 は 2 つ存在する 紛らわしく しばしば混同するので 最大級に要注意! 表 2 cross-over design の直交表を用いた表現 実は これで cross-over design の基本と世間で非難の的となるその問題点の基本が表現可能となるのである

4.10.3 cross-over design では 交互作用とはどこか? それは何か? 理解を容易にするために 第 34 回 4.8.9.4 で解説した表記法に一致させるべき 表 2 を 情報内容を変えずに 並べ変えよう 先ず 順序と薬剤の 欄 を交換して 以下の表とする 保持する情報の内容は不変であることに注意すること 今度は 行 を交換する つまり 2 番目と 4 番目の交換である 以下のようになる 最後に これを第 34 回 4.8.9.4 で解説した表記法と対比してみよう 以下の式 (3) の C 欄である C 欄に情報を割り付けなければ そこには 普通には 信号は存在せず 雑音 つまり偶然誤差になるはずであり そこに大きな変動が見られれば ( 個体誤差が大きいか ) 非線形性 つまり交互作用が存在する可能性があること 交互作用の検証には 繰り返し が必要であることなどと解説した

4.10.4 交互作用 vs. 順序効果 今回の件については これらはどのようになるだろうか? 先ず C 欄と 順序 欄とが対応していることが判明する 順序 効果 情報を意図的に割り付けた訳ではないが 結果的に割り付けたことになるのである その意味するところは何かである

4.10.5 順序効果とは交互作用 交互作用との視点から 順序効果とは 効果がどうなることか? 最も誤解や混同がなされるいわゆる急所である 是非 難問としての最高峰を踏破して欲しい 2 順序 効果 の意味することは何か? 要因計画上は 交互作用 であることを念頭に置いて考察すること

4.10.5 順序効果とは交互作用 例題 2: 順序 効果 の意味することは何か? 要因計画上は 交互作用 であることを念頭に置いて考察すること 薬剤効果 が 時期 により異なるということである 典型的には D1 は T1 D2 は T2 で大 逆に D1 は T2 D2 は T1 で小となる X 型反応となることである

4.10.6 design 上の最大の問題とは? 順序効果 と 被験者差 ( 個体差 ) との 交絡 最後の表を再度点検すると 順序効果欄の情報と個体欄のそれとが完全交絡していることが判明する これまた 余りにも良く知られた 最大級に問題視される点である

4.10.7 時期効果 順序効果 交互作用 carry-over effect 先ず 筆者流解説になるが carry-over effect とは 要因計画上の統計解析術語ではないことを銘記すべきだと考える 逆に 主効果 と 交互作用 とは 間違いなく統計学的術語である 言いたいことは 統計学術語は明確に定義できること しかし そうでない術語では 定義は統計学術語ほどは 明確に定義されていない恐れがあるということである 今回の場合には 順序効果 や 時期効果 における 順序 や 時期 という用語には 教科書により多少 variation はあるものの 上述したように 統計学的に定義しておけば 筆者と読者との間に誤解が発生することはない これに対して carry-over effect となる用語は 統計解析に素人の読者でも 持ち越し効果 として image が沸かせられる類のものである 3 carry-over effect( 持ち越し効果 / 残存効果 ) について image をすること

4.10.7 時期効果 順序効果 交互作用 carry-over effect 例題 3: carry-over effect( 持ち越し効果 / 残存効果 ) について image をすること その前のものをその次に持ち込むこと というような image である そうした立場では D1>D2 は不変 厳密には D1-D2=k であるにも関わらず 時期 1 よりも時期 2 が絶対値が小となることも 持ち越し効果となるであろう つまり 時期 1 の薬剤 ( の影響 ) が残存していて それが時期 2 の反応 に関与したという考察は 薬理学的に極めて自然である しかし これは 統計学的視点からすれば 時期効果という立派な 主効果 なのである 一般的に D1>D2 がきちんと成立しているからである

4.10.8 時期効果 は carry-over effect か? carry-over effect についての世間での混乱の根源は 統計学的視点から出発して定義するか それとも その語句 carry-over effect( 持ち越し効果 / 残存効果 ) の薬理学的響きから出発するかに起因すると筆者には思える この辺りの事情を表にまとめてみた 読者が読まれた書物ではどうなっているかも是非点検されたい 表 3 時期効果 順序効果 交互作用 carry-over effect - carry-over effect の定義 実態 1. 統計解析的視点からの接近法 薬剤 時期 = 交互作用 = carry-over effect 当然 時期効果 は 主効果 であり 交互作用 ではない 2. 薬理学的視点からの接近法 前の効果が残存する histerisys 的現象である 時期効果 も 前と比較して変化するならば carry-over effect である 逆に 順序効果 を 交互作用 として考える道への連結は極めて困難!? 設問 1 carry-over effect( 持ち越し効果 / 残存効果 ) について読んだ書物ではどのような用語や定義になっているかを調査して考察すること