ビジネスプラン (4) 学習目標 やる気のメカニズムを理解する 従業員にとってやり甲斐のある職場にしたい どうすればよいか考えなさい やる気のメカニズムを理解する 人間の欲求について理解する 従業員の欲求 と 組織の目標 を合致させる方法を学ぶ リーダーシップと管理スタイルの特徴を理解する 企業は人なり 企業経営にとって人材が最も重要 人が モノ ( 新しい方法や製品 サービスなど ) を創り 金 ( 高い生産性 新たな価値 ) を生み出す 多くの人材に 能力を最大限に発揮してもらうことが大切 そのためには 従業員のやる気 どうすれば 人はやる気になるのか 2 3 やる気のメカニズム やる気のメカニズム モチベーション ( 動機づけ ) 4 欲求 : 人間の行動は その行動に駆り立てる欲求 ( 理由 ) が原因 誘因 : 欲求を充足させるものを 誘因 動因 : 行動を駆り立てる要因を 動因 欲求を満たすものを手に入れることが人間行動の目標 誘因は目標 欲 求 誘 因 動 因 行 動 5 動因 : 空腹という状態は 充足させるべき欲求 誘因 : 食物は 空腹を満たす為の目標 動因 ( 空腹 ) が強い場合 誘因 ( 食物 ) が示されると 人間は目標志向の活動 ( 食物をとろうという行動 ) を開始 目標志向の活動をしている間 欲求は強まる 目標活動 ( 食物をとる ) を始めると欲求は弱まる 欲求 ( 空腹 ) 誘因 ( 食物 ) 動因 ( 意思 ) 目標志向活動 食物の追跡 欲求増大 目標活動 食物の摂取 欲求減少 6 ある人に行動を起こさせるには まず その人に欲求を持たせる そして その欲求にふさわしい誘因を用意する 管理理論では モチベーション ( 動機づけ ) という言葉は やる気を起こさせること という意味で使われる 1
人間の欲求 マズローの欲求段階説 (A. H. Maslow) マズローの欲求段階説 人間の欲求は様々 人それぞれ 管理者は それぞれの部下の希望を把握し それぞれの部下にふさわしい管理の仕方を考えなければならない そもそも 人間は どのような欲求を持っているのか 職場の欲求傾向を探り 類型化するための一つの手かがりが マズローの欲求段階説 人間は 生理的欲求が満たされると安全の欲求 それが満たされるとさらに欲求が高度化し 最後には精神的な欲求である自己実現を求める 充足された欲求は 動機づけ要因にはならない 個人的欲求 生理的欲求 安全の欲求 他人に対する欲求 社会的欲求 自我の欲求 自己実現の欲求 7 8 9 マズローの欲求段階説 個人的欲求 マズローの欲求段階説 他人に対する欲求 マズローの欲求段階説 他人に対する欲求 10 生理的欲求 食物 暖かさ 排泄 水 睡眠 性の充実 その他の肉体的欲求 安全の欲求 生理的な欲求を安全に充足させたいという欲求 病気からの解放を含む 11 社会的欲求 集団の一部でありたい 誰か他人に所属したいという欲求 愛したい 愛されたいという欲求を含む 自我の欲求 人間は自尊心を持っており 他人から認められたい 尊敬されたいという欲求を持っている 第 1 に 個人的な価値 適切性 能力に対する欲求 第 2 に 尊敬 賛美 承認 他人の目に映る地位 ( ステータス ) 12 自己実現の欲求 人間は 自分自身を成長させたいという欲求を持っている 自分自身の能力を発揮したいという欲求も含む 人間は 自らが認める好ましい状態へと成長することによって自己表現 ( 真の自己と仕事を獲得 ) しようとし この実現過程 ( 目標に向かって努力する過程 ) において充実感を得ようとする 2
仕事とやる気 従業員の欲求構造 マクレガーの X 理論と Y 理論 (D. McGregor) やる気にさせるメカニズム 経済的欲求 : 賃金 自己の生活を維持 安全の欲求 : 安全な労働環境 雇用の安定や地位保全 帰属意識 : 職場集団の中の人間関係 インフォーマル組織を含めた仲間集団への愛情を持った帰属 自我意識 : 自己の業績や熟練が職場に貢献しているという自我意識 職場の中で自己の存在を認められ昇進したいと望む 自己実現 : 仕事への生き甲斐 充実した仕事 もっと責任ある意思決定に参加したい 創造性や企画力を発揮して革新的業務を実現してみたい 職場を通して人格を磨き人間的にも成長したい 職場を眺めると 自発的に一生懸命仕事をしているものもいれば 目を離すとすぐに手を抜く怠け者もいる マズローのいう人間の欲求と管理の仕組みとの間には どのような関係があるのか 13 14 15 マクレガーの 欲求でみる人間観 マクレガーの 人間分類 X 理論による管理 16 動機付けの観点からの分類 X 理論 : 伝統的経営理念 マズローの生理的欲求と安全安定の欲求は 物質的欲求 人間の低次元あるいは基本的な欲求 Y 理論 : 新しい経営理念 マズローの自我の欲求と自己実現の欲求は 精神的 高次元の欲求 17 X 理論 : 怠け者人間 人間は 生まれつき仕事をしたがらないから アメとムチで働かせるしかない Y 理論 : 自発性人間 人間は 生まれつき仕事を好むものであり 大いに自主性を発揮させるべきである 18 賃金の支払方法だけを頼りにして生産性向上を図ろうとする伝統的な 監督による管理 この管理方式で 充足できる人間の欲求は低レベル 従業員は やる気を喪失 現在も 多くの組織では この理論に基づいた管理を実施 マクレガーは 管理の仕組みがこの理論に基づいていること自体が 従業員のやる気を阻害する原因と批判 3
Y 理論による管理 目標管理 Y 理論による目標管理 人間は 自己の成長を望む その成長を助けるような仕事の仕組みにすれば 生産性が高くなり 働く人も満足する 組織と個人の目標統合 上司と部下の十分な話し合い 職場での意見交換や討論を通して 自己の考えを表に出させ 相互に人間としての理解を深め 職務目標を十分に納得の上で設定し この目標に向かって挑戦させるという管理 19 21 Y 理論による目標管理 組織と個人の目標統合 組織と個人の目標統合 個人の目標 組織の目標 仕事を通して自己を高めたいと望む従業員に より高度な仕事をしてもらいたい しかし その仕事が本人の嫌いな仕事であれば やる気になるはずがない 企業と個人 利害の異なる両者の欲求をどのように調整すればいいのか 高次の欲求充足 マクレガーの Y 理論 企業の個人に対する要求 企業における個人の欲求充足 合理的な方法で調整 企業にとって最も効率的な目標達成 統合された状態 22 23 24 4
アージリス (C. Argiris) モチベーション管理 リーダーシップと管理スタイル 人間らしく生き甲斐のある職場とは やる気の源となる心理的エネルギー 人が集まり 自己評価を高くさせ 心理的成功を味わうチャンス によって増大 やる気を起こさせるモチベーション管理 の条件 1. 自己評価を高めさせ 心理的成功を味わわせる 2. 自分自身の評価が他の組織メンバーに認められること 3. 組織において自分自身が必要不可欠な存在であると認められていること リーダーシップ スタイル代表的な管理方式 職務充実化政策 人間らしさと仕事との調和 その集団が目的を持つと その集団は組織となり 目的達成の推進者としてのリーダーが生まれ 組織行動が始まる その組織とともにある生活は 人間らしく生き甲斐のあるものであって欲しい そのためには どのようなリーダーがふさわしい のか また組織目標達成に向けて 25 27 どのような管理スタイルが望ましいのか リーダーシップ スタイル 代表的な管理方式 理論と管理の仕組みの関係 28 専制型 経営者が 絶対的な権限 従業員は命令への絶対服従 非常に有能なリーダーのもとでは 有効 温情型 目標ではなく 人間関係的情感に訴えて従業員の意欲を引き出す 目標達成のため 非情になる必要がある場合 温情が弱点となる可能性 官僚型 定められたルールや手順を確実に履行 環境変化が小さい場合 仕事の効率は極めて高い しかし 決められた方法以上のことはできず 企業の成長発展が期待できない 参画型 経営に対する参画 自分たちで 目標や その実現方法を決め チーム メンバー全員で分担して目標達成に努力する チーム メンバーやチーム全体の成長 企業全体の能力向上が期待できる 29 刺激賃金管理 賃金の増減で生産性を向上させようとする管理方式 ノルマの達成を標準とし 未達成の場合にはペナルティとして減給し ノルマを越えた場合には加給することによって動機付けしようとする仕組みである 人間関係管理 職場やチームの人間関係をよくすることによって生産性を向上させようとする管理方式 良好な人間関係を維持し 良好な人間関係の組み合わせで仕事のチームを作っていくことで 生産性向上を実現することを意図している 目標管理 人間は本来的に自己成長の欲求を持っており 自分が決めた目標を達成するための努力は惜しまないし そうすることに充実感を得ようとする傾向がある 仮に 組織目標と個人目標が一致すれば 人は個人目標に向かって努力し その目標を達成することで組織目標を達成することができるはず 業務上の個人目標は 個人が上司との合意に立って決定することで個人の動機付けを促す 30 マズローマクレガーリーダーシップ 管理の性格 管理の仕組み 自己実現の欲求 Y 理論参画型自主的目標管理 自我の欲求 社会的欲求 安全の欲求 温情型 官僚型 生理的欲求 X 理論専制型被支配的 人間関係管理 刺激賃金管理 5
マクレガーの理論と目標管理 マクレガーの理論と目標管理 X 理論 ( 人間観 ) ( 管理の仕方 ) 怠け者人間 監督による管理 目標による管理システム [ 上司 ] 方針 権限委譲 上長評定 リーダーシップ ( 統率力 ) Y 理論 自発性人間 目標による管理 個人欲求と組織欲求の統合化 職務目標 自由裁量 成果 コミュニケーション ( 意志疎通 ) 31 目標による管理システム 32 [ 部下 ] 参加 自主統制 自己判定 モラール ( 意欲 ) 6