相続で絶対もめたくない人もめたくない人の 贈与の使い方 日本中央税理士法人 代表社員公認会計士 税理士青木寿幸電話 03-3539-3047 Mail: aoki@j-central.jp 贈与税で得をする方法 http://www.gifttax.jp
目次 第一章贈与税は誰に いつかかるのか? 第二章贈与の法律を知っておこう第三章不動産を贈与した方が得? 第四章相続対策には優先順位がある最後に贈与は家族への最高のプレゼント 2
第一章 贈与税は誰に いつかかるのか? 3
贈与の時効はないと考える ~ 税務署をごまかすことは無理 ~ 贈与税の時効は 7 年なので それを過ぎてしまえば 贈与税はかからないという勘違い 親との贈与契約書を作成したあと 通帳から 1000 万円を引き出して 自分の通帳に入れる 親の不動産を贈与してもらう売買契約を公証人役場で作成するが 名義変更の登記をせずに そのままにしておく 親子での貸し借りはよくあることなので いちいち 税務署からの問い合わせはない 不動産の登記簿謄本が変更されると それが税務署に回るのだが それを変更しなければ 気づかれることすらない 1 贈与してから 7 年以内に 税務署の調査があった場合 ( 贈与税の調査ではなく 相続税 所得税などの調査で発覚することがほとんど ) 贈与契約書を破棄して 贈与がなかったことにしてしまう お金は親から借りた 不動産の贈与はない 2 贈与してから 7 年超たってから 税務署の調査があった場合贈与契約書を税務署に見せて 時効が成立している と主張する こんな簡単な方法で贈与税を支払わなくても 税務署は認めてくれるのか? 4
相続税は累進課税になっている ~ 財産と税金は比例しない ~ 相続税 贈与税 所得税は 累進課税制度になっている 例えば あなたの相続財産が 1 億円あるとき 相続税が 600 万円と計算されたとする それならば 相続財産が 2 億円あるときには 相続税はいくらになるか? なんと 相続税は 3900 万円にもなる! つまり 累進課税とは 財産に比例して 相続税が増えるのではなく 財産が増えると 一気に税率が上がり 相続税が急激に増えてしまう だからこそ 生前に子供や孫に贈与を行い 全体の相続財産を減らしておくことが 相続税の節税対策になる 5
生前に贈与する理由 ~ 節税よりも 円滑な遺産分割が大事 ~ 生前に財産を贈与しておけば 相続税の節税対策にはなることは 分かったが それでは 相続税がかからない家族は 贈与などせずに 貸しておけばよいのか? 貸付金 にしていると相続財産になるので 他の相続人から取り分を主張されてしまう 父親 ( 被相続人 ) 母親 ( 相続人 ) 母親は 貸付金のうち 500 万円の取り分 妹は 貸付金のうち 250 万円の取り分 あなた 貸付金 1000 万円 妹 ( 相続人 ) あなたは 遺産分割のあと 母親と妹に 父親から借りていたお金を返済していく 実際に うちの会計事務所に相談に来た人たちの半分以上は 相続税よりも 遺産分割のときに親族間でもめることの方が心配だと口にする 6
遺産分割でもめる ~ 父親と生前に話し合っておけば ~ 過去に父親からお金を借りていたが 遺産分割でもめそうなので 贈与してもらったことにしたい 贈与ではなかったので 贈与契約書はないし 贈与税も支払っていない その主張はムリ 同じように 妻や子供の預金が 父親の名義預金とみなされることがある それは相続財産 遺産分割のときにもめると どうなるか? 1 相続財産である銀行口座 証券口座が凍結されて 引き出せなくなる 銀行に言わなければ分からないという訳にはいかない 2 相続税の特例が使えない 配偶者の特例 小規模宅地の特例が使えないので 相続税は高くなる 3 裁判になれば 時間がかかる 裁判費用や弁護士費用がかかるだけではなく 家族関係がバラバになる もめないためには 父親が生前のうちに曖昧にせず 贈与か 貸付か 決めておく 7
贈与税の基本的な知識 ~ 誰が 贈与税を支払い 申告をするのか ~ 贈与する人 財産をあげる 贈与される人 贈与された人は 1 年間でもらった財産 が 110 万円の基礎控除を超えている場合には 翌年の 2 月 1 日 ~3 月 15 日までの期間で 1 贈与税の申告書を作成して 税務署に提出する ( 申告期限に遅れると 無申告加算税がかかる ) 2 贈与税を金融機関で支払う ( 支払いが遅れると 延滞税がかかる ) という義務が発生する そして 贈与税は延納 ( 一括ではなく延払い ) はできるが 物納はできない 贈与した人は 贈与税の申告書に押印することもなく 贈与税を支払う義務もない ( 第二次納税義務者となった場合は 別 ) 8
何でも贈与税がかかるワケではない ~ 孫の教育費に贈与税がかかることも ~ 贈与税がかからない財産とは? 1 生活費 ( 同居している必要はない ) 2 教育費で その都度 費用に充てたお金 3 離婚のときの財産分与 4 慶弔費 障害者が受け取る給付金必要と認めれられる常識の範囲内の金額 扶養義務者 1 配偶者 2 直系血族 ( 父母 祖父母 ) 3 兄弟姉妹 4 裁判の判断で扶養義務者となった者 5 3 親等内の親族で生計を一にするもの扶養する順位を表しているわけではない 2 つを組合わせると 下記のような事例が考えられる 1 親が子供のために負担した結婚資金には 常識の範囲内の金額であれば 贈与税はかからない ( 結婚式の招待状は 親の名義で出したり 連名にすることが多く 結婚式のお金に贈与税はかからない ) 2 祖父が 父親の代わりに孫の大学の入学金や学費を支払った 贈与税はかからない 3 兄から生活費として毎月 20 万円をもらう 社会通念上相当と認められる範囲なら 贈与税はかからない 祖父 父親 孫の大学の入学金と学費 という流れでも 父親が祖父の代理で 子供に贈与したことが明らかであれば 祖父 父親 の間で贈与にはならない 証拠は残しておくこと 9
こんなものにも 贈与税がかかる ~ 借金をチャラにしたら 大変なことに ~ 起業するときに 個人で 1000 万円を借りる 親戚のおじさん あなた 事業に失敗して サラリーマンに戻る 親戚のおじさんは 会社を経営していたので 起業する あなた を応援してくれていた あなたは事業に失敗したけれど 1000 万円は返さなくてもいいよ と言われた おじさんにも子供がいるので 遺産分割でもめないように 債務を免除する契約を結んだ 債務を免除してあげた金額 あなたに贈与されたとみなされて 多額の贈与税がかかる あなたの住宅ローンを 父親が肩代わりして返済 贈与されたとみなされ 贈与税がかかる 10
第二章 贈与の法律を知っておこう 11
贈与の基本的な知識 ~ いつ 贈与が成立するのか ~ 財産をもらった日 ( 取得日 ) は 次のように決まっている 1 口頭によって贈与した場合贈与が実行された日 ( 例えば お金を振り込んだ日など ) 2 贈与契約書を作った場合 (1) 条件がなければ 契約書を交わした日 (2) 条件があれば ( 例えば 20 歳になったら贈与 ) その条件が満たされた日 3 農地などの許可が必要な場合農地法の許可 または農業委員会への届出の効力があった日 4 贈与の日が不明な場合名義変更した日 ( 例えば 株主名簿が変更されていれば その日 ) 贈与が成立した日に 贈与税を支払う義務が発生する 5 年前に親から1000 万円をもらったが契約書もないし 贈与税も支払っていない どうするか? もらった人の意思だけでは 贈与は成立しない あげた人の意思も確認してから決める 12
贈与契約書は作成すべき ~ 未成年者にも贈与できるか ~ 1 誰が 2 誰に 3 何を 4 いくら 5 いつまでに これが 決まったら 贈与する人と 贈与される人で贈与契約書を作成する 贈与は 契約書がなくても 口頭でも成立する ( 民法 ) が 贈与契約書は必ず作成すること 1 相続人間で争うもとになる 親からお金をもらったが 贈与契約書を作成していないと 遺産分割のときに 他の兄弟から それは借りただけだと主張されてしまうリスクがある 親は亡くなっているため 贈与した人の意思は確かめられない 2 税務調査で指摘される 相続税の税務調査のときに 過去に贈与税の申告書を提出していたとしても 贈与された人の押印しかないので 贈与した人の意思は証明できない しかも兄弟と争い 父親が貸した と主張されていると 税務署からも 贈与は仮装であり 過去の贈与税は誤納付ではないか と疑われる 未成年者である孫との贈与契約書は成立するのか 親権者の同意は必要なのか? 贈与する人が認知症などで正確な判断ができない場合 成年後見人の同意で OK なのか? 13
生前の贈与は 3 種類に分けられる ~ 財産をあげるときに 自動的に選択される ~ 1 負担付贈与贈与される人が 一定の義務を負う契約を結んだ場合のことを言う 例えば あなたに 1 億円のアパートを贈与するが 6000 万円の借金も一緒に引き取ってくれ という契約で あなたが負担を実行しなければ 契約は解除され 贈与は成立しない 2 定期贈与定期贈与は 時期を定めて一定の財産を贈与すること 例えば あなたに 毎年 100 万円を 20 年間に渡って贈与する というもの ただ契約したときに贈与は成立するので その年に 2000 万円が贈与されたとみなされる とすれば 翌年の確定申告のときに 多額の贈与税がかかることになる 3 通常の贈与 ( 暦年贈与とも言う ) 上記の 1 負担付贈与 2 定期贈与の 2 つ以外の贈与を指す 毎年 子供に一定額を贈与していく暦年贈与は 税務署から否認される という まことしやかな噂があるが それは 定期贈与 と混同しているだけ 14
相続の 3 年以内に行った贈与は無効? ~ 相続人でなければ 問題なし ~ あなたの妻 父親 ( 被相続人 ) あなた ( 相続人 ) 母親 ( 相続人 ) 亡くなった人 被相続人と呼ぶ 相続人は 配偶者 ( 母親 ) とあなたの 2 人 被相続人が亡くなる 3 年前に行った贈与 贈与自体は 成立している だが 相続税はかかる 亡くなると 通帳が凍結されることがあるため 直前に 通帳からお金を引き出すことが多い あなたの子供 別に悪いことをした訳ではないが そのお金が 貸付なのか 贈与なのかで争うと面倒 3 年以内は一律 相続税をかけることにした あなたは相続人ですが あなたの妻や子供は相続人ではないので 生前に贈与した財産に相続税はかからない ただ 相続人でなければ かつ遺言書などで財産をもらわない人は 3 年以内に贈与された財産があっても それには 相続税がかからない だからこそ いつ 誰に贈与したのか が ポイントになる 贈与契約書を作成して確定する バックデイトで作成したと言われないためには 公証人役場で 確定日付 をもらっておくとよい 15
孫を養子にした方がよい それとも贈与? ~ 養子は 1 人までは 相続人の数となる ~ 父親 ( 被相続人 ) 母親 ( 相続人 ) あなたの父親の相続人になり かつ あなたの相続人でもある あなたの妻 あなた ( 相続人 ) あなたの子供 ( 相続人 ) 1 相続人が 1 人増える ( 実子がいれば 養子は 1 人まで ) と相続税の基礎控除が増える 2 相続人が 1 人増えると 累進課税である相続税はかなり安くなる 3 一代飛ばして 孫に相続させることができるので 将来の相続税を減らせる 実は 孫が養子になった場合には その相続税が二割加算される 安易な節税対策を防ぐため 時間的な余裕があるならば やはり贈与で財産を少しずつ移転した方が 節税になる 16
最後に 贈与は家族への最高のプレゼント 32
贈与する前に 遺言書を書く前にやること ~ 家族であっても 文章では伝わらない ~ 家族間で 交換日記をやったことがあるか? 毎日 日記でやり取りしていても お互いの意思を理解しあうのは難しい あなたが家族にお金をあげるだけで その意図が伝わるか? あなたの遺言書を読むだけで 相続人は あなたの遺志を理解できるか? 贈与する前に 遺言書を作成する前に 家族でよく話し合う必要がある 両親と相続について話し合うきっかけを作るのが難しいという人でも 贈与は 相続税の対策として家族全員のメリットにつながるので 話しやすいはず 33
生前の贈与は 家族へのプレゼント ~ 人間は相手を幸せにできる ~ あなたが 先祖代々から守ってきた土地 自分で一生かけて稼いだ貯金 たまたま上場株に投資して儲かったお金 祖父の代からの同族会社の株 財産と言っても それに対する想いや価値観は 人によってまったく違う あなたの相続が発生すれば その財産を相続人 つまり残された家族が話し合い 遺産分割協議で勝手に分けてしまう あなたは それが嫌ならば 財産の分け方を指定する遺言書を作ればよい でもあなたの遺言書は 亡くなってから相続人が初めて 遺志を知ることになる 一方 生前贈与は あなたの意思で しかも贈与した相手の喜ぶ顔を見ることができる あなたの財産は 生前にこそ 家族に贈与すべき 贈与とは 家族に愛情を表現する方法でもある 両親から 財産をもらって喜ばない子供はいない 上手に贈与を使うことで 今まで以上に 両親に対する感謝の気持ちが芽生えるはず 34