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生命健康科学研究所紀要 Vol.13 (2016) 報告 実験動物教育研究センターにおけるマウス系統の凍結保存サービスの確立 上瀬茉美 1) 長原美樹 2) 酒井美加子 3) 仲臺瞳 3) 中島妙子 3) 藤田芳顕 2) 上田潤 2) 岩本隆司 1, 2, 3) 1) 中部大学 生命医科学研究科 生命医科学専攻 2) 中部大学 実験動物教育研究センター 3) 中部大学 生命健康科学部 生命医科学科 1. はじめに本学の実験動物教育研究センター ( 以下 動物センター ) は 2006 年から稼働しており 飼育動物種はマウス ラットである 外部機関からの動物搬入は 実験動物専門ブリーダーの動物および本学規定の微生物モニタリング検査項目がすべて陰性である SPF(Specific Pathogen 1, 2) Free) 動物のみを生体で搬入しており その多くが遺伝子組換え動物である 現在 世界中で作製された遺伝子改変マウス等は 凍結精子や凍結胚などの形で公的機関や大学 研究所等の液体窒素タンクに保管されている 系統を保存する利点として 継代交配によって起こる突然変異や人為的なミスによる他系統の混入という危険性の回避 微生物感染の防止 動物輸送の際のコスト削減 飼育維持数の縮小などが挙げられる 例えば 規定の微生物モニタリング検査項目が全て陰性である動物のみを搬入しているとは言え 全ての動物を検査しているわけではなく その動物が万一感染症に罹っていた場合には 感染が動物センター内の他の動物に拡がる危険性がある この点 凍結精子または凍結胚で動物を搬入した場合は 病原微生物を持ち込む可能性がなく汚染のリスクが限りなく低くなる 1) また 外部研究機関からの輸送費は 国内において生体では数万円であるのに対して 凍結精子の場合は数千円と大幅に経費が削減される このことから 現在では遺伝子改変マウスを凍結精子や凍結胚などの形で輸送することが一般的となりつつある 3) 次に ゲノム編集技術の登場により膨大な遺伝子改変マウス等が作製されつつあり 生物資源としてそれらを保管する必要性が出てきている 本学においてはまだそのような需要はないが 将来的にゲノム編集技術で作出したマウスを保存する必要性が出てくるかもしれない 最後に 我が国は地震多発国であり 近年 東日本大震災や熊本地震に代表されるような大規模な地震の発生によって 大学の動物施設も被災し 被害を受けている 4, 5) 将来 東海地方で災害が発生し 本学の動物センターが万一被災した場合 利用者が保有している貴重な遺伝子組換え動物を事前に凍結精子や凍結胚などの形で保存しておくことは 防災及び BCP( 事業継続計画 ) の観点からも重要であると考える このように マウスの系統を凍結することには様々な利点がある 本稿では 本学において 2016 年度に立ち上げた 凍結精子および凍結胚による系統保存サービスについて報告する 2. 材料および方法 1) 使用器具 解剖セット : ハサミ ( 大 小 ) ピンセット ( 中 尖鋭 ) マイクロ剪刀 動脈クレンメ オートクリップ 縫合針 縫合糸 ( 夏目製作所 ) 器具類 : 精子充填用ストロー ストロー用シリンジ 精子凍結用フロート 精子融解用フロート ガラスキャピラリー 胚凍結用チューブ オートピペッター (P-20, 200, 1000) チップ ディスポフィルター 89

上瀬茉美 長原美樹 酒井美加子 仲臺瞳 中島妙子 藤田芳顕 上田潤 岩本隆司 トライアングルカセット キムタオル ティッシュ 氷 試薬培地類 : FERTIUP 精子凍結保存液 FERTIUP マウス精子前培養培地 CARD MEDIUM マウス体外受精用培地 mhtf 培地 ( 九動 ) KSOM 1M DMSO DAP213 0.25M スクロース ( アークリソース ) 流動パラフィン( ナカライテスク ) 麻酔薬(3 種混合 ドミトール ; 日本全薬工業 ミタゾラム サンド ; サンド ベトルファール ;Meiji Seika ファルマ ) 装置類 : 恒温水槽 ホットプレート 実体顕微鏡 シーラー 液体窒素図 1. ストロー操作用シリンジ ( 上 ) 精子充填用ストロー ( 下 ) 図 2.FERTIUP マウス精子凍結保存液 図 3. FERTIUP マウス精子前培養培地 CARD MEDIUM マウス体外受精用培地 2) 作業手順 ( 方法 ) 方法は マウス生殖工学技術マニュアル ( 熊本大学生命資源研究 支援センター資源開発分野 ) 等に沿って実施した 6, 7) (1) 精子凍結 1 保存容器等の準備ストローの綿栓側を切り離しマジック等で識別する トライアングルカセットに番号を付す 2 精子懸濁液の作製凍結保存用ディッシュ (FERTIUP 精子凍結保存液 ) を作製し予め 37 で保温する 雄マウスの左右の精巣上体尾部を採取し 精子凍結保存液で軽く洗った後に ドロップへ入れ 5~6 箇所に切り込みを入れる 37 のホットプレート上で 1 分間静置後 均一な精子懸濁液を得るために 1 分毎に攪拌 静置を繰り返す ( 合計 3 分間 ) 3 精子懸濁液をストロー内へ保存するストロー操作用シリンジを用いてストローに mhtf 培地 ( 重りの役目 ) 空気相 精子懸濁液 10μL 空気相の順に充填し ストローの両端をシーラーで封じる この操作を速やかに繰り返し 雄マウス 1 匹からストロー約 11 本分の精子懸濁液を作製する 最後の 1 本は体外受精確認用とし 印を付す 4 凍結保存ストローは精子凍結用フロートに入れ 液体窒素の気相で 10 分間静置後 液体窒素に浸漬する 液体窒素内で保存容器 ( トライアングルカセット ) へ移す 5 残った精子を mhtf 培地等に添加し 精子の動きを確認する (2) 凍結精子の融解 90

実験動物教育研究センターにおけるマウス系統の凍結保存サービスの確立 1 融解前の準備 37 の恒温水槽を準備する 精子前培養用ディッシュ (FERTIUP マウス精子前培養培地 ) 受精用ディッシュ(CARD MEDIUM マウス体外受精用培地 ) 卵子洗浄用ディッシュ (mhtf 培地 ) を作製し 37 の CO 2 インキュベーター内で静置する 2 精子の融解液体窒素から精子の入ったストローを取り出し 空気中で 5 秒間おいた後 37 の恒温水槽の精子融解用フロート内で 10 分間加温する 3 精子懸濁液の取り出しと前培養恒温水槽からストローを取り出し 水分を拭き取る ストローのシール部分をカットし 精子懸濁液を精子前培養用ディッシュのドロップに導入する 37 の CO 2 インキュベーターで 30 分間前培養を行う ストロー用シリンジ ( 三方活栓付き ) は ストロー内の精子懸濁液が内圧によって飛び出ないよう 圧を下げるため使用する (3) 体外受精 1 採卵過排卵処理をした雌マウス (8 週齢以上 ) の卵管膨大部から卵子塊を採取し 一旦 流動パラフィンのディッシュに入れる 全ての採卵が終わったら 卵子塊を受精用ディッシュに導入し 30~60 分培養する 2 精子の融解 (2) の操作を行う 3 媒精 前培養した精子懸濁液を吸引し 卵子を含む受精用ディッシュに 5μL ずつ 精子数に応じ 10μL 以上添加する 37 の CO 2 インキュベーター内にて培養する 媒精から 3 時間後 形態的に正常な卵子のみを卵子洗浄用のディッシュで洗浄し さらに翌日まで培養する 媒精から 6 時間後 卵子をよく観察し 未受精生卵と判定されたものは取り除く 翌日 2 細胞期へ発生した胚を数え 移植もしくは凍結保存に用いる (4) 卵管内胚移植 偽妊娠雌マウスの作出 : 外陰部が赤く腫脹 ( 発情前期 ) している ICR 雌マウスを選び 精管結紮処理をした雄マウスと交配させ 翌日膣栓を確認できたものを移植に用いる 卵管露出 : 麻酔の効いた偽妊娠雌マウスの背側の片側の皮膚および腹壁を切開する 切開部より腹腔内をのぞき 卵巣周囲の脂肪とともに卵巣 ~ 子宮の一部を体外に露出させ 卵巣に付着した脂肪をクレンメで固定する 卵管の位置決め : 露出させた卵管を実体顕微鏡でよく観察し 卵管采と卵管膨大部の位置を確認する クレンメの位置やマウスの向きを変えて 卵管の切開とキャピラリー挿入がしやすい位置にする 胚移植 : 卵管膨大部から 1~2 カーブ離れた卵管采側の卵管をマイクロ剪刃で切開する 切開部から卵管膨大部に向かって 胚を含むキャピラリーを挿入し 卵管膨大部に気泡が入るまでマウスピースから静かに息を吹き込む ( 図 4) クレンメを外し 卵巣 ~ 子宮を静かに体内に戻す 切開した皮膚は縫合またはオートクリップで止める 反対側の卵管へも同様の手順で胚を移植後 ヒーターでマウスを保温し麻酔から覚醒するまで保温する 91

上瀬茉美 長原美樹 酒井美加子 仲臺瞳 中島妙子 藤田芳顕 上田潤 岩本隆司 図 4. 卵管内胚移植 ; ガラスキャピラリーで卵管へ移植 (5) 胚の凍結簡易ガラス化保存法を用いた 凍結精子 生体雌あるいは生体雄 生体雌の組合せで 体外受精をし 翌日 2 細胞期になった受精卵を凍結する 室温にて 1M DMSO をフィルターで濾過しディッシュを作製する DAP213 を氷で冷やしておき 凍結用チューブを準備する キャピラリーにて 凍結する胚を 1M DMSO ドロップに静かに移す 胚がドロップの底に沈んだら 新しい 1M DMSO ドロップに移す オートピペッターにて 1M DMSO とともに胚を凍結用チューブの底に入れ氷上に置く 5 分後 オートピペッターを用いて 冷却した DAP213 を管壁に伝わらせてチューブ内に静かに添加しチューブの蓋を緩めて閉める さらに 5 分後 液体窒素内で冷却しておいたケーンにチューブを装着し 直ちに液体窒素中に浸漬する (6) 胚の融解 0.25M スクロース溶液 胚洗浄用ディッシュ (KSOM) を予め 37 に保温する 胚の入った凍結チューブを液体窒素から取り出し 直ちにフタを開け チューブ内の液体窒素を捨て 室温に 30 秒間静置する オートピペッターで 0.25M スクロース溶液を チューブ内へ添加し 完全に保存液が溶けるまで素早く静かにピペッティングする チューブの内容液をディッシュに移し さらに 0.25M スクロース溶液でチューブ内を共洗いする 融解後直ちに内容液より胚を回収し 胚洗浄用ディッシュのドロップに静かに導入し 37 CO2 インキュベーター内で 10 分間静置する 新しい胚洗浄用ドロップで 2 回洗浄する 3. 結果現在までに行った凍結精子からの体外受精の結果について 採卵数 2 細胞期胚数 受精率 移植胚数 出産数および出産率を示す ( 表 1) また 凍結胚からの受精率 出産率についても以下に示す ( 表 2) 系統 表 1. 凍結精子による体外受精の結果 採卵数 2 細胞期胚数 受精率 (%) 移植胚数 出産数 出産率 (%) A 195 177 90.8% 167 34 20.4% B 75 40 53.3% 36 3 8.3% C 121 101 83.5% 85 3 3.5% D 64 29 45.3% 35 5 14.3% E 73 58 79.5% 42 6 14.3% F 61 56 91.8% 37 15 40.5% G 88 65 73.9% 80 13 16.3% H 501 211 42.1% 155 33 21.3% I 112 68 60.7% 64 16 25.0% J 71 64 90.1% 60 9 15.0% 系統 融解数 表 2. 凍結胚融解の結果 2 細胞期胚数 受精率 (%) 移植胚数 出産数 出産率 (%) H 131 107 81.7% 96 25 26.0% K 31 17 54.8% 17 8 47.1% L 80 68 85.0% 53 10 18.9% 受精率 (%)=(2 細胞期胚数 / 採卵数 ) 100 出産率 (%)=( 出産数 / 移植胚数 ) 100 92

実験動物教育研究センターにおけるマウス系統の凍結保存サービスの確立 4. 今後について今回 凍結精子および凍結胚を用いた系統保存サービスを立ち上げることができたが 受精率 出産率が他施設に比べあまり高くなかった そのため 受精率 出産率のさらなる向上を目指していきたいと考える 外部から搬入した凍結精子に関しても 融解および体外受精 - 移植により産仔を得ることに成功した 2016 年度は理化学研究所バイオリソースセンターより受け入れた凍結精子と凍結胚からマウス系統を起こした まだ件数は少ないが 今後は外部からマウスを搬入する際に 凍結精子や凍結胚の形で受け入れることも可能であると考えている 現在 本学の動物センターには 60 系統以上の遺伝子組換えマウスが飼育されている 2016 年度は 27 系統の凍結精子の作製に成功したことから (2016 年 2 月 ~2017 年 1 月 ) 現在のペースで行えば 2~3 年以内にはすべての系統についてバックアップが作製できるものと考えている 冒頭でも述べたように 我が国は地震多発国で いつ東海地方が被災するか分からない 万が一 本学が被災した場合にも迅速に対応 ( 例えばコロニーの回復など ) できるように 利用者の大事な系統を凍結精子や凍結胚の形で保存しておくことは今後益々重要になってくるものと考えている 動物センターの利用者の方々には 万が一に備える ための準備をしていただけると幸いである 土社,154-156. 4) 東日本大震災東北大学動物実験施設報告書 (2012), 東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設. 5) - 熊本地震 - 熊本大学生命資源研究 支援センター動物資源開発研究施設 (CARD) 報告書 (2016), 中潟直己. 6) マウス生殖工学技術マニュアル (2013), 中潟直己, 熊本大学生命資源研究 支援センター資源開発分野. 7) マウス ラット実験ノート (2010), 中釜斉, 他, 羊土社, 57-66. Title: The establishment of cryopreservation service of mouse sperm and embryos in animal facility at Chubu University. Authors: Mami Jose 1), Miki Nagahara 2), Mikako Sakai 3), Hitomi Nakadai 3), Taeko Nakashima 3), Yoshiaki Fujita 2), Jun Ueda 2) 1, 2, 3) and Takashi Iwamoto Addresses: 1) Graduate School of Life and Health Sciences, 2) The Center for Education in Laboratory Animal Research and 3) Department of Biomedical Sciences, College of Life and Health Sciences, Chubu University, 1200 Matsumoto-cho, Kasugai, Aichi 487-8501, Japan. Keywords: Specific Pathogen-Free status (SPF), cryopreservation, in vitro fertilization, frozen embryo transfer 謝辞本研究は中部大学 2016 年度特別研究費助成により実施した 引用文献 1) 日本実験動物技術者協会編, 実験動物技術大系 (1998), アドスリー, 264-273, 352-354. 2) 日本実験動物協会編, 実験動物の技術と応用実践編 (2005), アドスリー,109, 207-210. 3) マウス ラットなるほど Q&A(2009), 中釜斉, 他, 羊 93