筆者はアレルギー体質のため 抗アレルギー薬 アレグラ錠 60 mg ( サノフィ ) を服用していたが 現在はアレグラのジェネリック医薬品 フェキソフェナジン塩酸塩錠 60mg ( 二プロ ) に切り替えて服用している 表 2 の写真のとおり 先発医薬品であるアレグラの錠剤は小さい楕円形であるのに対

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ミッションステートメント 第 6 次中期経営計画 我々は 我々のジェネリック医薬品が世界の患者 薬剤師 医師 卸売業者 製薬企業に必要とされ 提供し続ける為に自ら存続する努力を行い ジェネリックメーカーとして世界で卓越する 2

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

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光 試験区分保存条件保存期間保存形態結果 苛酷試験 光 白色蛍光灯 120 万 lux hr ハ ラフィルムで 覆ったカ ラ ス容器 照射された表面の黄色への着色 並びに水分及び溶液の色の増加 膜透過性 その他 試験項目 : 外観 類縁物質 水分 定量 溶液の色 * ph * 旋光度 * IR スペ

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富士フイルムファーマ から製造販売承認を承継する製品 2019 年 3 月 28 日承継 : 変更品の出荷予定時期 2019 年 4 月頃から包装ごとに順次出荷 販売名アゼルニジピン錠 16mg FFP アゼルニジピン錠 16mg FFP アゼルニジピン錠 16mg FFP アゼルニジピン錠 8mg

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査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

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ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

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コラム RIEB ニュースレター No.168 2016 年 11 月号 お墨付きジェネリック医薬品 神戸大学経済経営研究所学術研究員上池あつ子はじめに最近 テレビの CM などで ジェネリック医薬品という言葉を見聞きすることが増えてきた しかし ジェネリック医薬品について 正確な知識を持つ人は多くないように思う 近年 日本でもオーソライズド ジェネリック (Authorized Generic) なるものが登場している 筆者も先日 先発医薬品からオーソライズド ジェネリックに切り替えた 本稿では 日本のジェネリック医薬品市場の現状とオーソライズド ジェネリックについて解説したい 1. 先発医薬品と完全に同一ではないジェネリック医薬品ジェネリック医薬品とは 先発医薬品 ( 新薬 ) と治療学的に同等であるものとして製造販売が承認され 一般的に研究開発費用が低く抑えられることから 先発医薬品に比べて価格が安くなっている ジェネリック医薬品を普及させることは 患者負担の軽減および医療保険財政の改善につながり 日本でも 医療費抑制の目的からジェネリック医薬品の使用促進政策が推進されている 一般に ジェネリック医薬品は 先発医薬品の特許失効後に市場に導入される ここで医薬品関連特許について解説したい 表 1 は 医薬品関連特許の一覧である 医薬品関連特許は大別すると 基本特許と周辺特許に分類される 医薬品の基本特許とは 物質特許 であり ジェネリック医薬品は 物質特許の失効後 市場に導入される ただし 物質特許が失効したからといって 直ちにジェネリック医薬品を市場に導入できるわけではない 一般的に 先発医薬品メーカーは物質特許の失効間近になると 周辺特許 ( 多くのケースで用途特許 ) を取得し 特許保護期間の延長を図る 日本では ジェネリック医薬品を開発 販売するためには 物質特許と用途特許が失効している必要があるが これらの特許が失効していても 製法特許と製剤特許の特許有効期間が残存していることも少なくない したがって ジェネリック医薬品メーカーは 先発医薬品と同等の有効性と安全性を確保した上で 製法特許と製剤特許を侵害しない製品を開発しなければならない つまり 先発医薬品とジェネリック医薬品は 医薬品の有効成分は同じであるが 添加物や凝固剤などが異なり 製法や製剤技術も同じではないため 完全に同じではないのである 1

筆者はアレルギー体質のため 抗アレルギー薬 アレグラ錠 60 mg ( サノフィ ) を服用していたが 現在はアレグラのジェネリック医薬品 フェキソフェナジン塩酸塩錠 60mg ( 二プロ ) に切り替えて服用している 表 2 の写真のとおり 先発医薬品であるアレグラの錠剤は小さい楕円形であるのに対し ジェネリック医薬品の錠剤は大きい 表 1 医薬品関連特許 基本特許 物質特許 新規化合物に付与され 物質そのものを保護する 1 医薬品につき 1 物質特許で保護される 物質特許は 製造から販売までを独占できる強大な権利 周辺特許 用途特許 既存の物質の新しい用途に付与される 製剤特許 医薬品の安定化など製剤上の新しい工夫に付与される 製法特許 物質の新しい製造方法に付与される 出所 : 筆者作成 表 2: 先発医薬品とジェネリック医薬品の違い 先発医薬品 価格 アレグラ錠 60mg( サノフィ ) 1 錠あたり 64.9 円 ジェネリック医薬品 フェキソフェナジン塩酸塩錠 60mg( ニプロ ) 価格 1 錠あたり 29.4 円 出所 : サノフィ株式会社 http://e-mr.sanofi.co.jp/products/allegra/index.html?filter=form-60mg,region-region_allergic,gr oup-home&page=1 二プロ株式会社 http://med.nipro.co.jp/product_detail?id=a0a1000000pegm2eai 円形であり 錠剤の形状は異なっている これは 添加剤や凝固剤 そして製剤技術が異なっていることを示している 1 こうした先発医薬品とジェネリック医薬品の 違い のため ジェネリック医薬品への切り替えの際のリスクになりうる 患者によっては 薬の効き目や副作用に違いが出てしまうこともある 逆に ジェネリック医薬品のほうが先発医薬品より相性が良い患者もいることも事実である 表 2 のとおり 先発医薬品の価格に比べると ジェネリック医薬品の価格はおよそ半額であり ジェネリック医薬 1 アレグラのジェネリック医薬品は 20 数社が発売しており アレグラと似た形状の錠剤を出しているメーカーもある 2

品への切り替えによる経済的負担の軽減は大きい ジェネリック医薬品の使用は 国の医療費も患者の財布にも優しいが 経済的負担の軽減だけを目的として ジェネリック医薬品に切り替える際に 健康上リスクを伴うことも事実である 幸い 筆者はジェネリック医薬品への切り替えによって 特に深刻な健康上の不都合はなかった ( ジェネリック医薬品のほうが 若干ではあるが 効き目が劣るような感触はあるが 経済的負担の軽減を優先しても問題ない程度であった ) 2. 先発医薬品と同一のジェネリック医薬品 : オーソライズド ジェネリックしかし 例外も存在する 先発医薬品とほぼ全く同じであるジェネリック医薬品が存在する それがオーソライズド ジェネリック (Authorized Generic:AG) である AG は 先発医薬品メーカーがジェネリック医薬品メーカーに特許の使用権を付与し 先発医薬品と完全に同じ成分 ( 有効成分 添加物 ) 同じ製法 製剤技術で製造される 多くの場合 製造工場 ( 製造ライン ) も同一である場合が多い ( 表 3) つまり AG は先発医薬品メーカーが公認する お墨付きジェネリック医薬品 なのである 表 3 オーソライズド ジェネリックと一般的なジェネリック医薬品の違い 先発医薬品との比較 AG 一般的なジェネリック医薬品 有効成分 同一 同一 原薬 同一 異なる場合がある 添加物 同一 異なる場合がある 製法 同一 異なる場合がある 製造工場 同一 * 異なる 効能 効果 同一 同一 ( 再審査対象の適応症除く ) ( 再審査 用途特許対象の適応症除く ) 薬価 4 割 ~5 割 4 割 ~5 割 * 同一でない場合もある 出所 : 第一三共エスファ オーソライズド ジェネリック http://www.daiichisankyo-ep.co.jp/generic/authorized/ 先発医薬品メーカーにとって AG は特許失効対策の1つである AG は 先発医薬品の特許が失効する 6 か月前から独占販売が認められており 他のジェネリック医薬品メーカーに先駆けて発売することが可能である また 先発医薬品と同一であるため ジェネリック医薬品の販売承認を取得するために義務付けられている生物学的同等試験を省略することができる AG は 他のジェネリック医薬品に先駆けて発売できるため 先発医薬品メーカーは 他のジェネリック医薬品メーカーにマーケットシェアを奪われることを防ぐことができる 米国では ジェネリック医薬品の市場に導入されると 一気に先発医薬品からジェネリック医薬品への切り替えが進むため 先発医薬品メーカーは 特許切れ対策として 戦略的に AG を活用してきた ブロックバスターと呼ばれる 1 医薬品で年商 10 億ドル ( 約 1000 億円 ) を超える大型医薬品の特許失効が 2010 年前後に集中したが これらブ 3

ロックバスター製品の AG は 利益の減少を食い止めるために活用された 子会社にジェネリック医薬品メーカーを持っている先発医薬品メーカーは その子会社に AG を販売させ 子会社にジェネリック医薬品メーカーを持たない企業は 他のジェネリック医薬品メーカーに特許権を付与して AG を市場に投入する 筆者が研究しているインドのジェネリック医薬品メーカーも 米国の AG ビジネスに参入し 収益を上げている 日本では ジェネリック医薬品の普及が緩やかで 先発医薬品メーカーは医薬品の特許が失効しても 長期収載品 として販売を継続してきた 長期収載品とは 既に特許が切れているあるいは再審査期間 2 が終了しており 同じ効能 効果を持つジェネリック医薬品が発売されている薬である 薬価基準収載品目リストに長期間収載されているため 長期収載品と呼ばれている 長期収載品の価格は 2 年に 1 度に実施される薬価改定の際に 市場実勢価格を反映して引き下げられているが 近年 日本政府によるジェネリック医薬品使用促進政策の実施の一環として 長期収載品の価格引き下げが積極的に実施されるようになった 2014 年には ジェネリック医薬品のマーケットシェアを奪っている長期収載品に対して追加引き下げ率を定めた Z2 制度が導入され 該当先発医薬品のシェアのうち 60% がジェネリック医薬品で占められる状況になるまで 継続的に値下げが続行されることになった 3 これにより 長期収載品から収益を上げることは困難になった こうした環境変化に対応するために 自社製品の市場を守りつつ ジェネリック医薬品への切り替えを進め 長期収載品の薬価引き下げによる収益の減少の影響を減ずる戦略として 注目されたのが AG である 先発医薬品メーカーにとって AG を販売することは先発医薬品の売上を自ら減らすことにつながる しかしながら 長期収載品の薬価引き下げによりビジネス環境が厳しくなる中 みすみすジェネリック医薬品に市場を明け渡すのではなく AG を販売することで 収益を上げ 特許権を付与したジェネリック医薬品メーカーからロイヤルティの収入を得ることで 長期収載品の売上の減少をカバーしようとしているのである 2 新医薬品においては (1) 治験の症例数には限りがあり 市販後多くの患者に使用された場合に未知の副作用が発現する (2) 治験では 患者の症状 年齢 併発している疾病 使用量 併用薬などがコントロールされているのに対し 治験での使用法と実際の医療の場での医薬品の使われ方が同じでないということから 日本では 新薬について 承認後一定期間が経過した後に 企業が実際に医療機関で使用されたデータを集め 承認された効能効果 安全性について 再度確認する 再審査制度が設けられている ( 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 再審査 https://www.pmda.go.jp/review-services/reexamine-reevaluate/re-examinations/0005.ht ml) 製造販売承認後 原則 6 年間 ( 最大 10 年間 ) の再審査期間が設けられており この期間内は仮に先発医薬品の特許が失効したとしても ジェネリック医薬品の申請をすることはできない 3 厚生労働省 平成 26 年度薬価制度改革の骨子 http://www.mhlw.go.jp/file/05-shingikai-12404000-hokenkyoku-iryouka/0000088404_1. pdf 4

日本政府によるジェネリック医薬品促進政策を背景に 先発医薬品メーカーにとって AG は戦略的に重要になってきており 近年相次いで AG が市場に導入されてきている ( 表 4) 日本においても 親会社である先発医薬品メーカーの先発医薬品を 子会社のジェネリック医薬品メーカーに AG を販売させている ( ノバルティスとサンド 第一三共と第一三共エスファ 杏林製薬とキョーリンリメディオ ) 子会社にジェネリック医薬品メーカーを持つ先発医薬品メーカーは子会社を通じて自社品の AG を販売するだけでなく 他社の先発医薬品の AG も取り込んでジェネリック医薬品事業から収益を得ることができる この場合は 先発医薬品と AG は完全に同じである 筆者の場合は キプレスを服用していたわけではないので 製造工場は異なっていると考えられる 他社と AG 契約をするケースも見られる サノフィは日医工 武田薬品はあすか製薬と グラクソスミスクライン (GSK) はアスペンと契約して AG を市場に導入している 一方 ジェネリック医薬品メーカーにとっても AG には 一般のジェネリック医薬品にはない 先行発売 と 同一性 という強みは大きな魅力であり AG 契約による特許権の付与による技術移転も期待できる 筆者も先日 AG に切り替えたところである 喘息の治療のために シングレア (MSD) を服用していたが 9 月に AG のモンテルカスト ( キョーリンリメディオ ) に切り替えた シングレアの価格が 1 錠 203.5 円だったのに対し AG のモンテルカストの価格は 1 錠 101.8 円であり 筆者の薬剤費負担は大幅に減少した 健康上の不都合は全くない 表 4 日本で販売されているオーソライズド ジェネリック 有効成分 治療分野 AG 販売メーカー 先発医薬品名 ( 先発医薬品メーカー ) 発売日 フェキソフェナジン アレルギー性疾患治療剤 日医工 アレグラ ( サノフィ ) 2013 年 6 月 バルサルタン 降圧剤 サンド ディオバン ( ノバルティス ) 2014 年 6 月 ゾレドロン酸 骨吸収抑制剤 サンド ゾメタ ( ノバルティス ) 2014 年 6 月 カンデサルタン 降圧剤 あすか製薬 ブロプレス ( 武田薬品 ) 2014 年 9 月 レボフロキサシン 合成抗菌剤 第一三共エスファ クラビット ( 第一三共 ) 2014 年 12 月 クロピクトグレル 抗血栓剤 / 抗血小板剤 日医工 プラビックス ( サノフィ ) 2015 年 6 月 バルサルタン+アムロジピン合剤 ( アムバロ ) 降圧剤 サンド エックスフォージ ( ノバルティス ) 2015 年 12 月 カンデサルタン+アムロジピン合剤 ( カムシア ) 降圧剤 あすか製薬 ユニシア ( 武田薬品 ) 2016 年 3 月 バルサルタン+ヒドロクロロチアド合剤 ( バルヒディオ ) 降圧剤 サンド コディオ ( ノバルティス ) 2016 年 6 月 バラシクロビル 抗ウィルス剤 アスペン バルトレックス (GSK) 2016 年 7 月 カンデサルタン+ヒドロクロロチアジド ( カデチア ) 降圧剤 あすか製薬 エカード ( 武田薬品 ) 2016 年 9 月 モンテカルスト アレルギー用薬 / 抗ぜんそく薬 キョーリンリメディオ シングレア (MSD) キプレス ( 杏林製薬 ) 2016 年 9 月 パロキセチン 抗うつ剤 アスペン パキシル (GSK) 2016 年 9 月 出所 : 各社ニュースリリースなどにより作成 5

3. オーソライズド ジェネリック VS アドバンスト ジェネリック AG は 特許失効前に市場に導入する 先行発売 と先発医薬品との 同一性 を武器に圧倒的なマーケットシェアを掌握することが可能である 例えば あすか製薬のカンデサルタン AG は カンデサルタン市場は先発医薬品のブロプレス ( 武田薬品 ) の特許が切れ ジェネリック医薬品が登場したことで ブロプレスの売上の約 40% がジェネリック医薬品に移行したと言われているが その移行したジェネリック医薬品市場の約 60% をあすか製薬のカンデサルタンが掌握している 4 しかし このような AG の強さは 一般的なジェネリック医薬品には脅威である 上述のとおり 先発医薬品からの切り替えに際し AG は製法や添加剤の違いによる薬の効き目や副作用への懸念が少なく 一般的なジェネリック医薬品よりも AG が選択されることが予想される こうした厳しい状況に ジェネリック医薬品メーカーは 付加価値を高めたアドバンスト ジェネリックで対抗する姿勢を打ち出している 沢井製薬は AG は脅威であるが 諸手を挙げて全面降伏せず 製剤に工夫をして AG に対抗する姿勢だ 5 水なしで飲めるように口の中で溶ける錠剤( 口腔内崩壊錠 ) や少量の水で飲める錠剤 ( 速崩錠 ) など新しい製剤技術を使用した付加価値製剤 ( アドバンスト ジェネリック ) を武器に AG との競争に挑むということだ インドのジェネリック医薬品メーカーは アドバンスト ジェネリック戦略を実施している 特に 製剤技術の 1 つである新しい薬物輸送システム (Novel Drug Delivery System: NDDS) を使用し 付加価値を高めたジェネリック医薬品を米国市場に導入している NDDS を使用した製品は 有効成分の特許が失効していても 新薬と同等とみなされ 付加価値製剤として ジェネリック医薬品よりも高い価格で販売できる 一方 先発医薬品メーカーも 基本特許である物質特許の失効直前に 口腔内崩壊錠や速崩錠など新しい製剤技術や NDDS を使用して 製品に付加価値をつけて ジェネリック医薬品と差別化を図るのが一般的である 今後 日本のジェネリック医薬品メーカーは 製剤技術の研究開発を積極的に行うことが戦略的に重要となるだろうし長期収載品や AG との差別化を図れるかどうかが生き残りと成長のカギとなる おわりに日本のジェネリック医薬品使用促進政策は ジェネリック医薬品市場の競争を激化させ 日本の製薬産業全体の活性化につながっていくと考える 医薬品の最終ユーザーであるわれわれにとっては 医薬品の選択肢が増えることになる ジェネリック医薬品に切り替える場合は このコラムを思い出していただければ幸いである 4 あすか製薬株式会社 ASKA REPORT 2015 9 ページ https://www.aska-pharma.co.jp/csr/img/aska_report15_all.pdf 5 沢井製薬 付加価値製剤でオーソライズド ジェネリックに対抗 脅威だが 戦えない相手ではない 薬事日報 2015 年 12 月 15 日 http://www.yakuji.co.jp/entry40532.html 神戸大学経済経営研究所 6