掲示板 第 4 回 SASJ 若手研究会議事録 20 代,30 代を中心とした SASJ 若手研究会 日時 :2017 年 1 月 13 日 ( 金 ) 11:00 ~ 17:30 ( ランチョンセミナー ) 場所 : 古河電気工業株式会社横浜事業所参加者 : 水谷天勇 ( 東芝ナノアナリシス ), 若森昭彦 ( 神鋼溶接サービス ), 笠井一輝 ( 神鋼溶接サービス ), 金子雅英 ( 日本特殊陶業 ), 小泉健二 ( スリーエムジャパン ), 松尾美那 ( 日産化学工業 ), 亀田博之 ( デンカ ), 田中勇作 ( コニカミノルタ ), 石川丈晴 ( トヤマ ), 松村純宏 (HGST), 西田真輔 ( 古河電気工業 ), 石川遼太郎 ( 浜松ホトニクス ), 水澤岳 ( 富士通クオリティラボ ), 郎雨生 ( 旭硝子 ), 田中彰博 ( 東京都市大学 ), 勝見百合 (YKK), 奥村洋史 ( 三菱マテリアル ) (17 名, 順不同, 敬称略 ) 記録 : 田中 ( 勇 ), 松村 1. 自己紹介 各自自己紹介 ( 名前, 所属, 利用する分析装置 ) を行った. 2. 話題提供 XPS 測定ピークの選択 ( 石川 ( 遼 )) ( 要旨 ) シリカガラス表面の Si と O の比を XPS 測定したが, 異なる測定者のデータを比較する際, 測定対象のピークが Si 2p と Si 2s に分かれてしまった. 両ピークをそれぞれ用いた定量結果を比較すると,Si と O の定量値が 3% 変動した. 測定データを活かす目的で, 第 3 回若手会で両ピークの強度比を補正係数とする, 定量値の補正方法を提案した. 補正の有効性を議論するため,Si( シリカガラス,Si ウェハ ), 及び Al( サファイア, Al 板 ),Mg,Ni,Mo,Ag,Pt について XPS 測定を行い, 定量に主として用いるピーク (Si と Mg:2p,Ni: 2p3,Mo と Ag:3d,Pt:4f) と他の光電子ピークの強度比から補正係数を算出した. また,Si については, take off angle (TOA) 毎に整理した. 補正係数は TOA 変化に伴い変化した. 同一 TOA において, シリカガラスと Si ウェハの補正係数が一致する一方で, アルミナとサファイアでは不一致となり,TOA 及び構成元素が同一でも材種が異なると補正係数は不一致となる場合があることが分かった. 結論 : 材種,TOA により必要な補正係数が異なるが, これらの条件を統一し再現性や汎用性を確認すれば本手法は有効な補正法となる可能性がある. 本事例について最終的に表面分析研究会で発表 議論することを見据え, 下記の (1)~(3) について議論した. なお, 本文中に出てくる プライマリピーク は厳密な定義されたものではなく, 出席者が優先的に定量に用いている XPS ピークという認識のもとで議論した. セカンダリピーク も同様. (1) 課題内容の確認 プライマリピークとセカンダリピーク以下の XPS ピークの測定比較結果をもとに, 信頼できる定量方法を確立したい.( 石川 ( 遼 )) 定量結果の差 3% は装置起因の繰り返し誤差に吸収されてしまうのではないか. 状態の良い装置を使っていれば, 繰り返し測定の誤差はもっと小さい. 装置起因の誤差は例えば Ag を複数個所測れば分かる.( 田中 ( 彰 )) Copyright (c) 2017 by The Surface Analysis Society of Japan - 72 -
定量する上でプライマリピークを優先すべきなのはなぜか. プライマリピークの方が相対感度係数の値が大きく ( 高感度 ), 相対感度係数の精度も良い. また Si 2s は Si 2p に比べて半値幅が大きく, ローレンツ型のピークであることから裾を引くため, バックグラウンド (BG) の引き方に個人差が出やすい.( 田中 ( 彰 )) 課題内容 : セカンダリピーク以下の XPS ピークから, プライマリピークと同程度の定量値を得る方法を確立 (2) 課題解決の方向性 Ni 2p3 に他の光電子 オージェピークが重畳する系に対しては,Ni 2p1 と Ni 2p3 から算出した補正係数が使えそう. Ni 2p1 は構成される化学状態によっては Ni 2p3 のサテライトが重なる場合があるので良くない.( 西田 ) 補正手法の汎用性が問題. 異なるメーカーや機種の XPS 装置でも補正が通用するのか知りたい. ラウンドロビンテスト (RRT) も考慮すべき.( 勝見 ) XPS 装置のメーカーによってはスペクトルに透過関数が含まれている場合とない場合があるため, 注意が必要.( 西田 ) 最終的に, 各々が必要とする材料 元素のセカンダリピーク以下の XPS ピークを取り扱う際の注意点が明らかになると良い.( 亀田 ) まず, 手法評価の軸となる元素 材料を決めて評価を進め, その後元素を変更して評価を進めてはどうか. 単元素と化合物の検討も必要.( 奥村 ) 課題解決の方向性 : 強度比を補正係数とする定量方法について, 種々の材料や装置毎に補正の有効性を確認. (3) RRT について まずは参加者の知りたい材料でやってみてはどうか. 所有者の多い Si 熱酸化膜が適当.( 西田 ) 用意については運営 ( 奥村 ) が確認. Si 熱酸化膜の測定の場合, 酸化膜の厚みに注意. 膜厚 100 nm 程度あれば充分.( 田中 ( 彰 )) 取得ピークは指定し, 他の測定条件は各自の日常の測定条件だとスムーズ. ( 西田 ) 基本,Al モノクロ線源で行うが Mg 線源の情報もあると良い.( 石川 ( 遼 )) ピーク評価は面積強度. 提出形式は ISO フォーマット. 何らかの理由で不可能な場合は CSV で受け取り COMPRO を用いて変換.( 西田 ) RRT 参加候補者の使用装置は ULVAC-PHI 製が多い. それ以外の XPS 所有者が参加者にいないので, 他に参加者を募ることも検討必要. サンプル :Si ウェハの SiO 2 熱酸化膜 (100 nm 程度 ). 測定条件 :Si 2p,Si 2s,C 1s,O 1s,O 2s のスペクトルを各自日常の測定条件で取得. 解析方法 :ISO フォーマット形式でデータを受け取り, 面積強度比を算出. 主担当 : 西田氏 ( 石川 ( 遼 ) 氏から引き継ぎ ). 参加候補 : 奥村, 石川 ( 遼 ), 田中 ( 彰 ), 郎, 亀田, 小泉, 勝見, 西田, 笠井, 松尾宿題事項 : 各自所属元に RRT 参加の可否を確認し, 若手会後に奥村に連絡. 3. 協働作業 第 3 回若手会で提出された失敗事例について, 提出者各自が課題抽出結果を報告した. 事例 1-1. 標準物質 (CuO) の測定時の不均一帯電 ( 勝見 ) ( 内容 ) 帯電中和無しで CuO の XPS 分析を実施した際, 半値幅が大きく, エネルギー位置が大きくずれた スペクトルが得られた. 還元への懸念から中和銃は未使用だった. - 73 -
( 対策 ) 中和銃を使用し測定することで, 比較的シャープな半値幅のスペクトルが得られた. 中和銃使用時間と還元程度の関係について検証を行い,1 h 以内ならば還元の影響が低いと判断. ( 課題抽出 ) どういう酸化物だと還元が起こりやすいのか. また, 現象としてどのようなことが起こっているか. CuO の場合は電子の励起と脱励起を繰り返しているうちに還元されてしまう.SiO 2 は熱が主要因.( 田中 ( 彰 )) 光イオン化断面積が還元のしやすさに影響しているのかもしれない. 価電子帯のスペクトルの強度が得られやすいものは影響を受けやすい. 酸化状態と還元状態の自由エネルギーの差が大きいものの方が還元されやすい.( 田中 ( 彰 )) 自由エネルギー値から還元しやすさを類推して, いくつかの酸化物に関して測定して影響の違いを調べてみてはどうか.( 松村 ) 宿題事項 : 種々の金属材料について酸化状態と還元状態の自由エネルギーを調べ,XPS 測定時の還元し易さと比較. 事例 7-1. イオンビームの絞りすぎ ( 石川 ( 丈 )) ( 内容 ) 平面試料についてイオンビームを十分に絞った状態で 200 μm 領域で FIB-SIMS の面分析を実施. その後, より小さな領域で面分析を行ったところ, 格子状の分布図が得られた. しかしその格子の穴ひとつひとつがイオンビーム照射で空いた穴であることが判明. ( 対策 ) 照射する領域に対するピクセルの大きさを考慮し, ビーム径を調整. ( 追加検討事項 ) ダメージを抑えつつ分解能を確保できる条件を見つけるなどの方向性が考えられる. 現在, 格子の再現ができていないので, 発生条件を明らかにして根本対策を考えたい. ビームを絞ると電流密度が上がるので穴が空きやすい. オージェでも穴ではないが低倍測定後の高倍観察で電子ビームダメージが確認できることがある.( 奥村 ) ダメージの蓄積の特徴は装置によって異なる.D-SIMS では, 例えばプローブビームのセシウムがある程度表面にたまらないと二次イオンが出てこない ( 田中 ( 彰 )) スパッタリングしても壁から物質が再付着する懸念もある. 宿題事項 : 格子の再現をまずは第一とし, その後ダメージ低減策等を検討. 事例 9-2. TOF-SIMS 測定における帯電 ( 松尾 ) ( 内容 ) 液晶パネルの複数の電極パターンを TOF-SIMS で評価する際, 二次イオン像のコントラストが画面内で不均一になった ( 暗部と明部が発生 ). ( 対策 ) 明るさが同じ部分を測定. ( コメント ) 基板内の電極の位置による不均一帯電が原因と思われる. パターンが微細だと上記対策も困難になると予想され, 根本対策が必要. ( 課題抽出 ) (1) SIM 像でコントラストが発生要因は何か. 組成が原因の場合 暗部, 明部, それぞれのスペクトルを比較し, 組成差を確認. 形状が原因の場合 断面観察により, 凹凸形状に差がないか確認. - 74 -
帯電量が原因の場合 断面観察により明部と暗部の基板内部の構造を確認. (2) 帯電量の不均一が問題ならば, 均一にする方策は何か. ガラス上にサンプルをセットし, 完全に絶縁状態とする. (3) 帯電量を均一にできない場合の方策は何か. 明部のみ, 暗部のみ, 明暗混在部, それぞれのスペクトルを比較し, 同等の評価結果となるかを確認. ( 追加検討結果 ) コントラストの明部と暗部でマススペクトルに差は見られなかった. どのくらいのスペクトルに差があると, 組成差があると言えるのか. 添加剤成分の量が違うとスペクトルに差が出るので, それを基準にしている.( 松尾 ) 配線の導通の影響が大きいのではないか. 配線が切れていることはあるか. 現状の SEM 像,SIM 像のみでは導通の有無は分からない.( 松尾 ) チャージの影響でスペクトルに強度差が出ているが, スペクトルの形状に差はあるか. 相似変化のみで, それ以外に差は見られない.( 松尾 ) チャージアップした電子が検出器に一気に行くこともある. その影響ではないか. 弾性散乱によりバイパス経由で検出器に行くのではないか.( 田中 ( 彰 )) ガラス上にサンプルをセットすることで, は完全に絶縁状態になるのか. 完全に浮かせれば絶縁状態になるのではないかと思う.( 松尾 ) 配線の接地の差ではないか. メッシュなどで配線同士の導通を取ってしまえば測定できると思う.( 石川 ( 丈 )) 幅は 100 μm 程度だがメッシュを置くと影が出来ないか.( 松尾 ) 充分にグリッドが大きい為問題無い.500 μm や 1 mm 角のグリッドもある. メッシュは浮かせて付ける方がいい.( 石川 ( 丈 )) メッシュは試料表面全体の電荷の偏りを無くすために有効.( 田中 ( 彰 )) 宿題事項 : グリッドの大きなメッシュによる導通確保の確認. 4. 失敗事例の共有第 4 回若手会で新たに提出された失敗事例を紹介し, 簡単な対策を共有した. [ ] 内は [ 分析装置, 関係作業 ] を表す. 事例 16-1. PVC の測定時のダメージ [XPS/TOF-SIMS, 測定 ] ( 小泉 ) 事例 17-1. 依頼者との連絡不足による表面汚れ [XPS, 試料準備 ] ( 笠井 ) 事例 18-1. 自動測定におけるステージ位置ズレ [XPS, 測定 ] ( 水谷 ) 事例 18-2. 測定範囲の指定ミス [XPS, 測定 ] ( 水谷 ) 4. 今後の若手会活動について 次回開催は 2017 年 4 月以降を予定. - 75 -
以上. - 76 -