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医療被ばくについて

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放射線検査を受けられる方へ.pptx

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放射線の人体への影響

第 5 回医療放射線の適正管理に関する検討会平成 30 年 4 月 27 日 資料 1 医療被ばくの適正管理のあり方について 1

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はじめに 一般社団法人長野県診療放射線技師会では 放射線についての啓発活動をおこなっています その一環として 放射線と被ばくについて理解を深めていただくためにこの冊子を作成しました 放射線についてより理解を深めていただければ幸いです 放射線の種類と性質 放射線にはさまざまな種類があります 代表的な

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Microsoft PowerPoint - 食品安全委員会(2011年4月28日講演) (NXPowerLite).ppt [互換モード]

被ばくの経路 外部被ばくと内部被ばく 宇宙や太陽からの放射線 外部被ばく 内部被ばく 呼吸による吸入 建物から 飲食物からの摂取 医療から 医療 ( 核医学 * ) による 傷からの吸収 地面から 放射性物質 ( 線源 ) が体外にある場合 放射性物質 ( 線源 ) が体内にある場合 * 核医学とは

共済だより.indd

アウトライン 1.日本診療放射線技師会とは 2.医療被ばく低減に関する主な事業 ①医療被ばく低減施設認定事業について ②レントゲン手帳の運用について ③断参考レベル DRLs2015 の普及について ④放射線管理士認定制度について 3.水晶体投下線量限度の引き下げについて 会員の意見 ①医療被ばく低

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診療のガイドライン産科編2014(A4)/fujgs2014‐114(大扉)

報告内容 放射線防護における線量評価の目的 線量の測定 評価の体系 実効線量の概念と線量換算係数の役割 実効線量の評価と放射線モニタリングとの関係 ICRP 2007 年勧告における線量評価に関わる変更点 原子力機構における線量評価研究に関する取り組み まとめ 今後の展望 2

桜町病院対応病名小分類別 診療科別 手術数 (2017/04/ /03/31) D12 D39 Ⅳ G64 女性生殖器の性状不詳又は不明の新生物 D48 その他及び部位不明の性状不詳又は不明の新生物 Ⅲ 総数 構成比 (%) 該当無し Ⅰ 感染症及び寄生虫症 Ⅱ 新生物 C54 子宮体部

Microsoft Word - RI検査 HP.docx

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

がん登録実務について

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付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

NEW版下_健診べんり2016_01-12

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房

線量測定の方法

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

胎児計測と胎児発育曲線について : 妊娠中の超音波検査には大きく分けて 5 種類の検査があります 1. 妊娠初期の超音波検査 : 妊娠初期に ( 異所性妊娠や流産ではない ) 正常な妊娠であることを診断し 分娩予定日を決定するための検査です 2. 胎児計測 : 妊娠中期から後期に胎児の発育が正常であ

がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

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付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房 全体

「医療被ばく低減施設認定」に関するアンケート結果

甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

はじめに 近年 がんに対する治療の進歩によって 多くの患者さんが がん を克服することができるようになっています しかし がん治療の内容によっては 造精機能 ( 精子をつくる機能のことです ) が低下し 妊娠しにくくなったり 妊娠できなくなることがあります また 手術の内容によっては術後に性交障害を

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5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

北海道医療大学歯学部シラバス

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モーニングレクチャー 医療被ばくの基礎知識 平成 30 年 3 月 22 日 中央放射線部 坂本博昭

医療現場における被ばく 医療被ばく 放射線診療 ( 検査 治療 ) に伴い患者及び介助者の被ばく 職業被ばく 放射線診療 ( 検査 治療 ) に伴う医療従事者の被ばく

本日の内容 放射線の人体への影響 放射線防護体系と医療被ばく 医療被ばくにおける QA

本日の内容 放射線の人体への影響 放射線防護体系と医療被ばく 医療被ばくにおける QA

放射線の人体への影響 確定的影響 確率的影響 放射線の人体への影響は二つに分類される

確定的影響 しきい値を超えると現れる影響 線量がしきい値を超えると症状が発生し始め 線量の増加に伴い発生する症状の重篤度が高くなる 主な影響としては 脱毛 白内障 皮膚の障害 造血能低下 不妊 etc

しきい値と医療被ばくの線量 組織 臓器 影響 しきい値 (mgy) 水晶体白内障 500 撮影部位 入射皮膚線量 (mgy) 頭部 ( 正面 ) 3.0 生殖腺 ( 男 ) 生殖腺 ( 女 ) 皮膚 不妊 ( 永久 ) 3,500 不妊 ( 永久 ) 2,500 一過的脱毛 3,000 永久脱毛 7,000 胸部 0.3 腹部 3.0 腰椎 ( 側面 ) 5.0 腰椎 ( 正面 ) 11.0 骨髄造血能力低下 500

確率的影響 線量の増加に伴い発生確率が高くなる影響 広島 長崎の原爆被爆者等の集団のデータから推定 がん 遺伝的影響の発生 遺伝的影響は個体レベルでは観察されていない

確率的影響 ( 発がん ) 100 msv 以下の被ばくでは 線量とリスクの関係が科学的に証明されていない がんの発生率 医療被ばく 職業被ばく 線量とリスクが不明 広島 長崎の原爆の被爆者の追跡調査 100mSv 被ばく線量

100mSv 以上のデータの根拠 広島 長崎の被爆者全員を調査 被爆時の爆心地からの距離 状況 姿勢等を聞き取りして各個人の被ばく線量を実測と計算で推定 以後 今日まで健康調査を継続中

100mSv 以下の被ばくの取扱 100mSv 以下の被ばく線量と健康影響を適切に説明できる科学的データはない 医療被ばくは小線量 間欠被ばく原爆被爆者のデータ 医療被ばく 放射線防護では わずかな線量でも相応のリスクが増加すると 用心深く仮定

本日の内容 放射線の人体への影響 放射線防護体系と医療被ばく 医療被ばくにおける QA

放射線防護体系の 3 原則 行為の正当化 行為の最適化 線量限度

行為の正当化 放射線検査には被ばくというリスクが伴うも 医師又は歯科医師は患者が検査を受けることで病気の診断 治療の方針決定などのメリットが被ばくに伴うリスクを上回ると判断したときのみに検査を行う

行為の最適化 同じ検査を受けても医療機関により装置等の環境が異なり被ばく線量に差があるが 診断に影響のない範囲で合理的に達成できる限り低く保つ 線量を可能な限り低く設定透視時間を出来るだけ短縮照射範囲を診断に影響のない程度絞る

線量限度 一般公衆 作業者 1 ミリシーベルト / 年 20 ミリシーベルト / 年 ICRP( 国際放射線防護委員会 1990 年勧告 ) 線量限度という表現が1ミリシーベルトが安全と危険との境界をイメージさせるが 安全側に十分な余裕をもって設定された値 作業者の線量限度は放射線業務を生業とするメリットと被ばくのリスクを勘案して設定

医療被ばくの特殊性 医療被ばくは正当化 最適化が適切に図られており 放射線検査には被ばくによる健康懸念をはるかに上回る健康上のメリットがあるため 医療被ばくには線量限度はない

医療被ばく適正化に向けた動向 DRL(Diagnostic Reference Level) 診断参照レベル 適正な線量で検査が行われているかの目安として 一定の国 地域における検査毎の線量を集計し代表的な値が示されている法的な拘束力はない 本邦の DRL の一例 撮影部位 入射表面線量 (mgy) 頭部正面 3.0 頭部側面 2.0 頸椎 0.9 胸椎正面 3.0 胸椎側面 6.0 胸部正面 0.3 腹部 3.0 腰椎正面 4.0 腰椎側面 11.0

本日の内容 放射線の人体への影響 放射線防護体系と医療被ばく 医療被ばくにおける QA

Q1 放射線 と聞くと怖い印象があるので すが検査を受けても大丈夫ですか?

Q1 放射線 と聞くと怖い印象があるので すが検査を受けても大丈夫ですか? A 放射線 という言葉から怖い印象を受 けますが放射線検査よるデメリット ( リスク ) より検査を受けて得られるメリットがはるかに大きいので安心して検査を受けて頂けます

被ばくに関する説明の注意点 被ばくに対する不安や心配 白血病 脱毛 皮膚障害 不妊 など 特定の影響が心配 何がどう心配とはっきり言えないが 漫然とした不安

被ばくに関する説明の注意点 放射線の影響は 被ばくした 部位のみに発生 線量に応じて発生

被ばくに関する説明の注意点 X 線検査の際 被ばくする部位は検査部位のみなので 頭部 CT 検査を受けて不妊を心配 歯科撮影を受けて胎児の影響を心配 検査室に入室しただけで被ばくすると心配 全く無用な心配

頭部 CT 検査での各臓器の線量 検査部位から離れるほど被ばく線量は急激に減少 眼 甲状腺 乳房 50 mgy 1.9 mgy 0.03 mgy 子宮 卵巣 0.005 mgy 以下 ICRP Publication 87

Q2 子供が転倒して繰り返し CT 検査を受け ましたが大丈夫ですか

Q2 子供が転倒して繰り返し CT 検査を受け ましたが大丈夫ですか A 短期間に複数回の CT 検査を数回受けて も影響が蓄積するわけではありません複数回の検査に伴うリスクより 病状の経過が把握でき 適切な診療が行われるという大きなメリットが得られます

被ばくに関する説明の注意点 異常が見つからなかった場合 症状が軽快した場合 検査のベネフィットはなくなり 不必要な検査をしたのでは という リスクだけが残ったように錯覚する患者 ( 家族 ) がいる 検査をしないリスク 異常がないと分かったベネフィットも伝える必要がある

Q3 妊娠中に放射線検査を受けてしまいまし たが お腹の赤ちゃんは大丈夫ですか?

Q3 妊娠中に放射線検査を受けてしまいまし たが お腹の赤ちゃんは大丈夫ですか? A 胎児被ばくで問題となるのは しきい値 のある確定的影響です 通常の放射線検査で胎児の被ばく線量がしきい値 (100 mgy) を超えることはないので安心して検査を受けて頂けます

しきい値 vs 放射線検査の胎児線量 頭部 X 線 検査項目 胎児線量 (mgy) 0.01 以下 胎生期 しきい値 (mgy) 影響 着床前期 100 胚死 ( 流産 ) 器官形成器 100 奇形の発生 胎児期 120 精神遅延 胸部 X 線 0.01 以下 腹部 X 線 1.4 腰椎 X 線 1.7 骨盤部 X 線 1.1 胃バリウム検査 1.1 注腸バリウム検査 6.8 頭部 CT 0.005 以下 胸部 CT 0.06 腹部 CT 8.0 骨盤部 CT 25.0 ICRP Publication 84 Pregnancy And Medical Radiation

不妊 流産 奇形の自然発生率 不妊妊娠を希望する夫婦の約 10% が不妊に悩む流産妊娠初期の自然流産率は約 15% 奇形奇形の自然発生率は約 3%

Q4 放射線検査で身体に悪い影響はないので しょうか? A 通常の放射線検査に伴う低線量被ばくで は日常生活の行動に伴うリスクの方が大きく 被ばくによる影響は確認できないほど小さなもので 健康を守るために必要な検査を受けることの方が大切です

確率的影響 ( 発がん ) のリスク 放射線検査による被ばくより 日常生活の中で健康に悪影響を及ぼす行為 喫煙 受動喫煙 高塩分の食品摂取 野菜不足 交通事故日常生活の中に 医療被ばくの健康影響よりもリスクの高いものが結構ある

放射線検査によるがんのリスク上昇 30% がん発生率 僅かでも 危険と仮定 0.5% 放射線によるがん 個人の生活習慣などによるがん 1.5% 100mSv 被ばく線量 300mSv

被ばくに関する説明の注意点 被ばくを心配する患者 家族の特徴 リスクを主観的に捉えてしまう リスクの表現で 10 万人に1 人 は科学的に極めて低リスクの事象だが 自分が その1 人 になってしまうのではと悩んでしまう

被ばくに関する説明の注意点 患者の不安 関心や理解力の程度に応じた説明を行い 放射線検査の線量 それに伴うベネフィットと健康リスクについて双方向のコミュニケーションを図りながら行う

ここがポイント! 通常の放射線検査に伴う放射線被ばくでは 確定的影響 明らかにしきい値を超えないので考えなくてよい 確率的影響 遺伝的影響の発生はなく がんの発生も線量とリスクが証明出来ないくらい小さい 安心して必要な検査を受けることが大切

ただし 国内外で IVR の一部で 皮膚障害の報告あり 第 2 度の皮膚反応乾性皮膚炎 第 3 度の皮膚反応湿性皮膚炎 第 4 度の皮膚反応潰瘍 循環器診療における放射線被ばくに関するガイドライン

まとめ 医療被ばくには診療行為を不当に制限しないように線量限度がないが 正当化 最適化が適切に図られている 医療被ばくに対する患者の不安除去のために 正確な知見のもと 患者に応じた言葉で双方向のコミュニケーションが必要

ご清聴ありがとうございました