表 1 隻数ベースのコンテナ船隊構成 船型 ( 隻数 単位 : 隻 ) Total 1,000TEU 未満 1,000 以上 3,000 未満 パナマックス (3,000 以上 ) ポストパナマックス (3,000 以上 8,000TEU 未満 ) 8,000 以上 12,000 未満 12,000

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平成18年8月31日

世界各地域の港湾におけるコンテナ取扱個数の推移 TEU 年から 2014 年までの 10 年間で世界の港湾におけるコンテナ取扱個数は 2.2 倍に増加 日本は 1.3 倍

平成18年8月31日


と船種によって異なる通航料が適用されている 05 年にはコンテナ船に関する通航料が TEU ベースに変更された コンテナ船通航料を見ると 05 年から 11 年までの間に 95.2%( 年当たり 11.8%) にのぼる値上げが行われており TEU 当たりの通航料は 05 年に 42 米ドルであったが

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東南アジア航路 韓中航路 日韓航路等において スペース交換 航路の合理化 新航路の共同開設などについて加盟船社同士が協調することで 競争力の回復を図ることを目的としている KSP は 2017 年 11 月の第 1 弾では東南アジア航路で 3 隻 釜山 - 博多 門司航路で 4 隻の撤退 2018

韓進海運の経営破綻について 〇韓国の2 大海運企業であった韓進海運 ( 船腹量世界第 8 位 *) が 2016 年 8 月 30 日にソウル中央地方裁判所に法定管理申請 *2016 年 4 月時点し 経営破綻 〇近年 競争激化等による運賃低迷で昨年来業績が急激に悪化 今年上半期に巨額赤字を計上 韓

Ⅰ. 世界海運とわが国海運の輸送活動 1. 主要資源の対外依存度 わが国は エネルギー資源のほぼ全量を海外に依存し 衣食住の面で欠くことのでき ない多くの資源を輸入に頼っている わが国海運は こうした海外からの貿易物質の安定輸送に大きな役割を果たしている 石 炭 100% 原 油 99.6% 天然ガ

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平成 28 年 10 月 31 日 各位 会社名川崎汽船株式会社代表者代表取締役社長村上英三 ( コード番号 9107 東証 名証各 1 部 福証 ) 問合せ先 IR 広報グループ長床並喜代志 (TEL ) 会社名株式会社商船三井代表者代表取締役社長池田潤一郎 ( コード番号

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年 年 に設定した 世界合計 の輸出金額は 年 3 兆 2,310 億ドルから 年 6 兆 1,930 億ドル 年 14 兆 6,520 億ドルと 4.5 倍に拡大した後 年秋のリーマンショックを契機として 2009 年には前年の約 3/4 に急激に落ち込み その後 徐々に回復が進み 年 16 兆

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を, モデルの基本構造の策定に用い, さらに, 一部で, 年のデータにより, 最新のを反映させた. また, 船舶諸元は IHS-Fの諸元データを, 建造中のコンテナ船データは, データが比較的豊富な Clarksonデータを使用した. 2.2 航路の定義航路は, 寄港により表 1のとお

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本日の議題 1. 会社概要 2. 事業戦略 年度上期実績と通期見通し ~2019年市況概況 5. 収支改善への取り組み 2 Copyright 2017 Ocean Network Express Pte. Ltd. All Rights Reserved

にかかるコストをまかなえればよいという発想で安い運賃をオファーし 古紙 スクラップ 穀物 パルプなどの輸送を行っていたという話を聞かせていただいたことがある その際にはコンテナ回送の代わりに運賃を極端に低くして貨物を運んだり リーファーコンテナでも電源を入れずにドライコンテナと同じようにして運用する

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欧米系物流事業者との競合状況 (1) 8.0% 東アジア域内航路におけるシェア (%) 7.0% 6.0% 5.0% 4.0% 3.0% 2.0% 1.0% 0.0% 7.1% 6.5% 5.5% 4.4% 4.2% 4.0% 3.1% 2.7% 2.6% 2.5% 1.9% 1.2% 1.0% 日

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トンを超える状況が続いていることがわかる 通航船舶数の多さは平均通航時間の長期化にもつながっており 通航時間は通常 8 時間から 10 時間とされているが 実際には 20 時間を超える状況が続いている 2014 年会計年度では平均通航時間が 31.5 時間に達している 4 表 1: パナマ運河の通航

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平成18年8月31日

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

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2007年12月10日 初稿

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済州島特別船舶登録制度船舶投資会社

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

, 35, コ

第 1 四半期の売上収益は 1,677 億円となり 前年からプラス 6.5% 102 億円の増収となりました 売上収益における為替の影響は 前年 で約マイナス 9 億円でしたので ほぼ影響はありませんでした 事業セグメント利益は 175 億円となり 前年から 26 億円の減益となりました 在庫未実現

通期 連結の売上高 営業利益 経常利益としては 過去最高 のれん及び固定資産に係る減損損失を特別損失として 517 億円計上 当期純利益が 3 月 30 日付での予想数値より増加したのは 予想数値公表時の見込み額と比べ 最終決算数値により確定した減損損失額が 53 億円 減少したことによる 事業環境

英国においてコンテナ取扱量で世界トップ 100 に入るフェリックストゥ ロンドン サウサンプトンという主要コンテナ港湾はいずれもロンドン近郊の島南部に集中している 英国港湾のコンテナ取扱量は約 1,000 万 TEU であるが 上記 3 港で全体の約 75% を取り扱っており 重複した背後圏の需要を

2. 新聞報道情報 (1) 情報ソース韓国 ( 中央日報 ), 日本 ( 日本経済新聞, 日本海事新聞 ), 海外 (Reuters, Fortune, Bloomberg, Lloyd s List, World Maritime News) の関連記事より, コンテナ船及びコンテナ貨物にかかわる

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第1章

パナマ運河拡張が国際物 流に与える影響について 2015 年 5 月 20 日 ( 公財 ) 日本海事センター本図宏子

一方 M&Aに関しては 1996 年に2 件 1997 年に5 件 1998 年に7 件 1999 年に6 件 総数 20 件が発生し かつてない合併ブームが定期船海運にも起こった 主要な船社の M&A 事例は 1997 年 1 月のNedlloydとP&Oとのコンテナ部門の対等合併 同年 11 月

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

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経営計画 説明資料

コンテナ戦略港湾に寄港する欧州基幹航路を週3便に増やす し 阪神国際港湾株式会社が設立され 同年11月28日に国土 とともに 北米基幹航路のデイリー寄港を維持 拡大する こ 交通大臣が同社を港湾運営会社として指定した同年12月26 とを設定し 概ね10年以内に 国際コンテナ戦略港湾におい 日には同社

平成 27 年共同研究の成果について ポイント 以下 1~3 については 平成 27 年 7 月 ~11 月の動向です 1 北極海航路を横断した船舶の航行数 北極海航路( ロシア側 ) を横断した船舶は24 航行 ( 前年は31 航行 ) 前年の航行数はノルウェーの研究機関 CHNLの分析結果 2

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値の高い船舶の建造についての競争力を育成する必要がある この点について第一に注目されるのは いわゆるエコシップの建造についての我が国の技術である 国際海運からの CO 2 排出削減対策等の環境規制について IMO において国際的な基準の策定 規制強化が行われている中 この分野での我が国の技術にはグリ

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本日の説明内容 総括 2019 年 3 月期第 1 四半期実績 2019 年 3 月期通期見通し 主要施策の進捗 1

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

エコノミスト便り

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FRI フォーラム 99 物流業における規制緩和と その効果 1999 年 11 月 26 日 富士通総研経済研究所 木村達也

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,020 10,746 10,695 10,500 10,509 10,550 10,530 10, ,599 7,327 7,549 7,257 7,165 7,171 7,

12A NYK (VLS) 350S 7 368S S S S 5 233S S S 26 3 上記スケジュールは Pusan トランシップにて承ります 12B HYUNDAI (NW2) Hakata /

調査結果の概要 1. 自社チャンネルの加入者動向については消極的な見通しが大勢を占めた自社チャンネルの全体的な加入者動向としては 現状 では 減少 (50.6%) が最も多く 続いて 横ばい (33.7%) 増加 (13.5%) の順となっている 1 年後 についても 減少 (53.9%) 横ばい

2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

定期船の運航と採算 森隆行 * 1. はじめに 海運史上最大の技術革新はコンテナリゼーション である コンテナの登場によって 内陸輸送を含め た複合一環輸送を可能にしたことで 定期船の運航 は大きく変わった 更に 近年のグローバリゼーシ ョンにより 経営にサプライチェーンマネジメント の手法を導入す

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第 2 四半期累計として 連結の売上高 営業利益 経常利益 四半期純利益とも 過去最高 上期で初の売上高 1 兆円を達成 4 月 27 日に発表した連結業績予想数値との比較でも それぞれプラス 事業環境に関する認識と確認 ( 物流業界の状況 ) 国内外ともに 景気の回復基調は続き 荷動きは おおむね

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に はじめにはじめはじめに 鉄道 トラック バス タクシーなどの 陸上輸送 飛行機などの 航空輸送 は ふだん私たちが直接利用したり目にしたりする機会が多いのでよく知られていますが 船で物資や人を運ぶ 海上輸送( 海運 ) はあまり知られていません しかし 船もほかの輸送機関と同じように活躍していま

バルチック海運指数の動向

( 外航 ) 就航船舶運航便数船名航路寄港地積荷運航会社代理店船種 大連 - 青島 - 福山 - 高松 - 水島 ( 月 )- 広島 - 大連 - 青島 上海 - 福山 - 水島 ( 火 )- 高松 - 岩国 - 上海 上海 - 福山 - 水島 ( 金 )- 広島 - 徳山 - 上海 化学薬品石材

第2部

Transcription:

コンテナ船大型化の動向 掲載誌 掲載年月 : 日刊 CARGO 201606 日本海事センター企画研究部専門調査員上野絵里子 海運市況は 2013 年後半の中国経済の減速 14 年夏以降の原油の急落などを背景に 低調な推移となっている 2016 年 2 月にはバルク貨物の運賃指数である BDI が 3 月には上海航運交易所発表のコンテナ運賃が多くの航路で過去最低を記録した 足元では 原油価格もやや上昇基調に転じ BDI をはじめ欧州航路 南米航路などでは底を打ったようである しかし 北米航路の運賃は 2016 年に入り記録的な低水準で推移している また 復調の兆しが見られる欧州航路においても 採算ラインと言われる 1TEU 当たり 1,000 ドルには及んでいない 海運市況低迷の一要因として 船舶が大型化する中 荷動き量が期待ほど伸びず 需給バランスが悪化していることが挙げられる これまで多くの船種で船舶の大型化が見られる中で 特に近年は コンテナ船の大型化が進展している 2016 年 6 月末には 拡張された新パナマ運河が開通する予定であり 通航船舶の大型化が期待されている これに合わせ ニューヨークおよびニュージャージーでは 14,000TEU 型の船が 2017 年末には入港できるようインフラ整備が進められる予定である 船舶の大型化は グローバル化の進展や海上貿易量の増大を背景に 輸送効率を高めるために進展してきた 今回は コンテナ船の大型化の最近の動向について整理する 船舶大型化の傾向と解撤量 2016 年のコンテナ船隊はトータルで前年比 3.8% 増の 1,974 万 TEU( 隻数では前年比 2.3% 増の 5230 隻 ) となっている これを 5 年前の 2011 年との比較でみると 隻数ベースでは 5.3% の増加であるのに対して TEU ベースでは 38.8% 増加しており コンテナ船における 1 隻当たりの船舶の大型化の傾向が著しいことが伺える 船型別に大型化の傾向を見たのが表 1 および表 2 である コンテナ船の船腹供給量の動向を見るために参考までに 2015 年及び 2016 年の解撤量も TEU および隻数ベースで載せてある

表 1 隻数ベースのコンテナ船隊構成 船型 ( 隻数 単位 : 隻 ) Total 1,000TEU 未満 1,000 以上 3,000 未満 パナマックス (3,000 以上 ) ポストパナマックス (3,000 以上 8,000TEU 未満 ) 8,000 以上 12,000 未満 12,000 以上 2011 4,967 1,223 1,978 961 485 281 39 2012 5,079 1,197 1,990 965 536 317 74 2013 5,082 1,149 1,936 954 574 352 117 2014 5,080 1,110 1,889 904 625 401 151 2015 5,111 1,065 1,870 869 655 459 193 2016 5,230 1,046 1,887 847 677 534 239 2016 年構成比 20.0 36.1 16.2 12.9 10.2 4.6 前年比伸び率および2011-2016 年年率 2012 2.3-2.1 0.6 0.4 10.5 12.8 89.7 2013 0.1-4.0-2.7-1.1 7.1 11.0 58.1 2014 0.0-3.4-2.4-5.2 8.9 13.9 29.1 2015 0.6-4.1-1.0-3.9 4.8 14.5 27.8 2016 2.3-1.8 0.9-2.5 3.4 16.3 23.8 2011-2016 伸び率 5.3-14.5-4.6-11.9 39.6 90.0 512.8 船型別解撤量 2015 年計 89 28 36 23 2 0 0 2016 年計 70 (1-5 月累計 ) 9 28 21 12 0 0 2015 年解撤率 1.7 2.6 1.9 2.6 0.3 0 0 2016 年解撤率 1.3 0.9 1.5 2.5 1.8 0 0 表 2 TEUベースのコンテナ船隊構成 船型 (TEU 単位: 千 TEU) ポストパナ マックス (3,000 以上 Total 1,000TEU 未満 1,000 以上 3,000 未満 パナマックス (3,000 以上 ) 8,000TEU 未満 ) 8,000 以上 12,000 未満 12,000 以上 2011 14,218 730 3,597 3,969 2,901 2,476 545 2012 15,337 723 3,614 3,986 3,197 2,810 1,008 2013 16,248 700 3,487 3,964 3,397 3,123 1,577 2014 17,138 680 3,403 3,793 3,650 3,555 2,058 2015 18,253 652 3,358 3,653 3,799 4,096 2,695 2016 19,736 637 3,378 3,564 3,903 4,797 3,457 2016 年構成比 3.2 17.1 18.1 19.8 24.3 17.5 前年比伸び率および2011-2016 年年率 2012 7.9-1.0 0.5 0.4 10.2 13.5 85.0 2013 5.9-3.1-3.5-0.6 6.3 11.2 56.5 2014 5.5-2.9-2.4-4.3 7.4 13.8 30.5 2015 6.5-4.1-1.3-3.7 4.1 15.2 30.9 2016 8.1-2.3 0.6-2.4 2.7 17.1 28.3 2011-2016 38.8 伸び率 (%) -12.8-6.1-10.2 34.5 93.7 534.6 船型別解撤量 2015 年計 193 17.3 73.7 92.2 9.4 0 0 2016 年計 217 (1-5 月累計 ) 5.8 53.5 89.9 68.0 0 0 2015 年解撤率 1.1 2.6 2.2 2.5 0.2 0 0 2016 年解撤率 1.1 0.9 1.6 2.5 1.7 0 0 出所 : 英クラークソン社より作成 2016 年のコンテナ船隊構成を船型別にみると 1,000 未満型は 1,046 隻 ( 全体の 20% TEU ベース 3%) 1,000 以上 3,000 未満型は 1,887 隻 ( 同 36% 同 17%) パナマックス型は 847

隻 ( 同 16% 同 18%) 8000 未満のポストパナマックス型は 677 隻 ( 同 13% 同 20%) 8,000 以上 12,000 未満型は 534 隻 ( 同 10% 同 24%) 12,000 以上型は 239 隻 ( 同 5% 同 18%) となっている 船型別に伸び率をみると この 5 年間で増えたのはポストパナマックス以上の船舶であり 隻数及び TEU ベースで船隊が拡大してきた 一方 パナマックス以下の船型は隻数ベースおよび TEU ベースで船隊の縮小が見られる また 隻数と TEU ベースの比較で見ると わずかに隻数ベースの縮小率の方が高く これらの船型の中でも船舶の大型化が進展しているといえる これに対して 2016 年のコンテナ船の解撤量は 1-5 月の累計で 70 隻 21.7 万 TEU で 昨年 1 年間の解撤量 89 隻 19.2 万 TEU を TEU ベースですでに上回っている また コンテナ船隊構成に対する解撤量を示す解撤率では 1-5 月の累計で昨年 1 年間の実績である 1.1% と既に並んでいる これまでに解撤された船型の内訳は 1,000 未満型が 5,800TEU( 昨年 1 年間の解撤量は 17,300TEU) 1000 以上 3000 未満型が 53,500TEU( 同 73,700TEU) パナマックス型が 89,900TEU( 同 92,200TEU) 8,000 未満のポストパナマックス型が 68,000TEU( 同 9,400TEU) となっており 2016 年は昨年に比べてパナマックスおよびポストパナマックスの解撤が進んでいる 船型別平均船腹量からみた 12000+TEU 型船舶の大型化の動向 12,000TEU 型以上の船舶についてみれば 2015 年に 18,000TEU 以上の超大型コンテナ船の竣工がピークを迎えたこともあり 2016 年の船型別 1 隻あたりの平均船腹量は 14,464TEU となった しかし ULCS が竣工を始めた 2007 年の平均船腹量の 15,550TEU から見れば 2010 年以降の 1 隻あたりの平均船腹量は 14,000TEU 前後に収斂している また 実際に 現在運航されている 12,000+TEU 型以上の船舶 50 隻のうち約 7 割を 13,000 ~14,000TEU 型の船が占めている 発注ベースでみると 現在 12,000TEU 型以上の発注残は 134 隻であるが 発注の約 5 割を同船型が占めている 一方 約 4 割は 19,000TEU 以上の船舶となっている 船舶の大型化については 単純に船を大型化すれば輸送効率が上がるというものではなく 受け入れる港湾施設の大水深化 荷役機器の大型化などのインフラ整備に加え 煩雑な港湾荷役 さらに 消席率を維持するための集荷努力が一層必要になることなどから 2016 年現在の汎用サイズは 1,3000~14,000TEU 型といったところであるといえる Mega Ships の動向 2016 年 6 月現在の運航最大船型を見ると 19,000TEU 型以上の船舶が合計 12 隻運航されている 運航船腹量全体に占める割合は隻数にして 0.2% 船腹量にして 1.2% となっている 運航オペレーターは 7 隻が MSC に 残り 5 隻は旧 CSCL( 現在は COSCON) によって運航されている また 18,000+TEU 型では合計 26 隻が運航されており このうち約 8 割にあた

る 20 隻についてマースクが 残りの 6 隻は UASC による運航となっている 2017 年の 20,000TEU クラスの竣工予定は 15 隻あり うち 6 隻 ( 長期用船契約の 2 隻含む ) が MOL 5 隻が OOCL 3 隻が CMA-CGM などとなっている 表 3 2016 年 6 月現在の運航オペレーター別 12000 以上 TEU 型コンテナ船運航船腹量 ( カッコ内の数字は2016 年以降竣工予定船舶数 ) 船型 (TEU) オペレーター 12000+ TEU 運航船舶数計 2016 2017 2018 MSC 10 21 18 6 7 62 460 13.5 Maersk Line 13 8 20 41 434 9.4 CMA CGM 2 5 3 6 (3) 16 291 5.5 COSCON 計 16 8 5 (11) 29 226 25.6 うちCOSCO 16 16 122 13.1 うちCSCL 8 5 13 104 12.5 Evergreen 10 1 11 166 6.6 OOCL 9 (1) (5) 9 91 9.9 APL 6 6 86 7.0 陽明海運 12 12 106 11.3 Hapag-Lloyd AG 10 10 179 5.6 日本郵船 1 2 3 100 3.0 韓進 9 9 98 9.2 商船三井 4 (4) (1) 4 86 4.7 川崎汽船 5 5 71 7.0 現代 10 10 65 15.4 UASC 9 8 6 23 54 42.6 不明 (1) (3) 船型別計 12 128 41 16 9 6 26 12 (2) (15) (12) 250 2,513 全運航隻数 (5,117 隻 ) に占める割合 0.2 2.5 0.8 0.3 0.2 0.1 0.5 0.2 4.9 出所 :IHS MARITIME Sea Web より作成 2016 年半ば統合予定 12,000 13,000 14,000 15,000 16,000 17,000 18,000 19,000 20,000 オペレーター別全運航船舶数 オペレーター別全運航船舶 ( 隻数 ) に占めるシェア 基幹航路別配船船腹量の推移 2016 年第一四半期における基幹航路の配船船腹量と平均船腹量と荷動き量および運賃の関係をみる 英コンテナトレードスタティスティック社によると 欧州航路の荷動き量は前年比 1.2% 増の 361 万 TEU 英ドルゥリーによる船腹供給量は前年比 0.6% 増の 1,071 万 TEU( 年率換算 ) 航路 1 隻当たりの平均船腹量は他航路の中で最も高い前年比 18.6% 増の 12,700TEU となっている 上海航運交易所発表の欧州航路 ( ここでは地中海を除く ) の運賃については 1TEU あたり 422 ドルで前年比 54.1% 減であった 2017 年に 20,000TEU 型以上の船舶のデリバリーが加速すれば 欧州航路での供給圧力が再び高まる可能性がある また 欧州航路への大型新造船の投入は 欧州航路で従来投入されていた 12,000TEU 型以上の船舶が他航路 ( 特に北米 ) に転配され 他航路の需給悪化の要因になる可能性も考えられる また 北米航路について見れば 荷動き量は前年比 1.7% 増の 382 万 TEU と緩やかな増加を示したが 船腹供給量は 6.4% 減 平均船腹量は 4.9% 減となった 運賃では 1FEU あたり 1,139 ドルと前年から 42.5% 落ち込んでいる マースクは 大洋州航路における配船船腹量を下げるなど 主要航路以外での配船船型の小型化が見られる一方で 北米航路においては 同社が提供するサービス AE6 において 2016 年の平均船腹量は前年比 25.6% 増の 11,417TEU となっている まとめ多くの船種が大型化する傾向の中で 2011 年以降 特にコンテナ船の大型化が加速している コンテナ船の大型化はより柔軟なサービスのためにアライアンスの深化を促すという こ

のため 中国海運 2 社の統合や CMA-CGM による NOL/APL の買収など海運会社間の合併を通じた規模の経済の追求や アライアンスを通じた船腹量の調整が進められてきた 現在運航中の 12,000TEU 以上のコンテナ船隊の約 7 割が 13,000-14,000TEU 型のコンテナ船で占められており 15,000TEU 型以上の船を運航する船社は限られている しかし 2017 年以降は Mega Ships の欧州航路でのデリバリーが加速し 12,000TEU 型以上の大型船が北米航路など他航路に転配されることが見込まれる また 2017 年 4 月には現在の 2M に加え CMA-CGM COSCO Evergreen OOCL によるオーシャンアライアンス (OA) 日本郵船 商船三井 川崎汽船 陽明海運 Hapbag-Lloyd 韓進海運によるザ アライアンスの 3 大体制になる予定である このアライアンスの再編と相俟って船社間のコスト競争が高まることが予想される 一方で 船舶の大型化により ハブ & スポークと言われるフィーダーサービスの発展を促すことも考えられる 16 年 7 月からマースクが欧州航路における日本への寄港を中止すると発表したばかりであるが 抜港される港では代替サービスが必要となる これを受け 既にマースクとアライアンスを組む MSC は 6 月下旬から 4,000TEU クラスの船舶を 3 隻投入して 日本発着貨物を主要航路に接続させる日本専用フィーダー ORIGAMI サービスを提供している 2015 年の海運市況は低調な推移となったが 足元では欧州市況や BDI などが回復の兆しを見せている しかしながら 不透明な中国経済や米国経済に加え 欧州では英国の EU 残留を巡る国民投票が来週にも行われるなど 世界経済の先行きは不透明となっている 6 月末には拡張されたパナマ運河が開通する予定であり パナマ運河の通航船舶の大型化に向けてアメリカの主要港湾もインフラ整備が進む 全体的には船舶の大型化の流れは今後も続くと考えられ 好調な荷動き量の増加または需給に応じた船腹調整が進展しない限り しばらく海運市況は低調な推移が続くものと予想される