10 第 章 頭頸部の骨 chapter 10 Ⅰ 1 頭蓋冠 頭蓋底 頭蓋腔 図10-3 頭蓋 cranium 脳頭蓋の天蓋部は前頭骨 頭頂骨 後頭骨 側頭骨か 頭部の骨格は 15 種 23 個の多くの骨が複雑に連結し らなり 脳を保護する半球型の頭蓋冠を構成する 一方 ており これらの骨をまとめ

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側頭筋 外側翼突筋 咬筋 耳下腺管 耳下腺管 頰筋 図11-4 咀嚼筋の浅層と顔面筋の深層① 咀嚼筋の浅層には側頭筋と咬筋が存在する 顔面筋の深層では頰筋 が頰粘膜を裏打ちするように存在し 前方では口輪筋に合流する また 耳下腺管が頰筋の中央部を貫いて頰粘膜の耳下腺乳頭に開く 側頭筋 口輪筋 頰筋 口輪筋 図11-6 咀嚼筋の深層 側頭筋 頰骨弓 下顎枝の上半部を取り除いた模式図 外側翼突筋 が前後方向に が上下方向に走行するのが観察される 頭蓋腔 頭蓋冠 側頭筋 頰骨弓 翼状突起 内側板 翼状突起 外側板 外側翼突筋 筋突起 耳下腺管 頰筋 外側翼突筋 筋突起 翼突下顎隙 咬筋 下顎枝 口輪筋 図11-5 咀嚼筋の浅層と顔面筋の深層② 咬筋を取り除いた模式図 頰骨弓の内側に側頭筋の停止部である筋 突起がみえる 下顎枝の深層には外側翼突筋の一部がのぞく 図11-7 咀嚼筋の前頭断面 筋突起付近における前頭断面 側頭筋が上下方向に走って筋突起と 下顎枝前縁に広く付着し その内側を外側翼突筋が前後方向に走る 咬筋とが下顎枝を両側からV字形に挟むように付着する 2 咀嚼筋 masticatory muscles 図11-4 7 られ 浅部は頰骨側頭縫合より前方 すなわち頰骨弓の 咀嚼運動に直接関与し 歯科領域においては特に重要 前 2/3 部から起始して後下方に向かう 深部は頰骨弓 な筋群である 咀嚼時の下顎運動 顎関節の運動 す の後 2/3 部から起始して垂直に下行し 浅部の停止部 なわち下顎骨の挙上 閉口運動 前後運動 側方運動 の上方に停止する 下顎骨を前上方に引き上げる 咬み を行う これらの筋群はすべて第一鰓弓 顎骨弓 から しめたときに体表からも下顎枝の部位でよく触れられる 発生し 三叉神経の枝である下顎神経に含まれる運動神 筋である 経に支配される 2 側頭筋 temporalis 1 咬筋 masseter 側頭窩全体およびこの筋を覆う側頭筋膜の内面から起 頰骨弓の内側と下縁から起始し 下顎枝外面 咬筋粗 始し 下顎骨の筋突起 下顎枝前縁および内面にかけて 面 に広く停止する 明確な境界なく浅部と深部に分け 停止する扁平で扇形の大きな筋である 前部の垂直方向 第 11 章 頭頸部の筋 125

咽頭扁桃 耳管咽頭口 軟口蓋 上咽頭 口蓋垂 口蓋舌弓 中咽頭 口蓋扁桃 舌扁桃 オトガイ舌筋 オトガイ舌骨筋 舌骨 喉頭蓋 甲状舌骨靱帯 前庭ヒダ 声帯ヒダ 下咽頭 甲状軟骨 喉頭軟骨 輪状軟骨 図 15-20 甲状腺 鼻腔 口腔 咽頭の正中矢状断 上咽頭収縮筋 中鼻甲介 咽頭頭底板 S 状静脈洞 後鼻孔 茎突舌骨筋 鼻中隔 茎状突起 顎二腹筋 後腹 下鼻甲介 顎二腹筋 後腹 咬筋 深部 茎突舌骨筋 茎突咽頭筋 中咽頭収縮筋 舌骨 大角 下咽頭収縮筋 咬筋 浅部 耳管咽頭 ヒダ 咬筋 口峡峡部 口蓋帆 口蓋垂 披裂喉頭蓋 ヒダ 口蓋咽頭弓 舌根 喉頭口 喉頭蓋 咽頭縫線 甲状腺 楔状結節 梨状陥凹 小角結節 甲状腺 食道 図 15-21 咽頭を後方よりみた図 図 15-22 咽頭後壁を正中で切り開き 後方よりみた図 15-20 耳管隆起は耳管軟骨部の先が突出して形成され 咽頭鼻部を咽頭の一部とするべきかどうかの議論がある 耳 たものである 耳管隆起より下方に伸びるヒダは耳管咽 管咽頭口より前方においては 上皮は多列円柱上皮 下方は 頭ヒダという 図 15-22 このヒダの深層に耳管咽頭 重層扁平上皮 粘膜の神経支配は三叉神経 下方は舌咽神経 筋があり 嚥下の間に耳管咽頭口が開く さらに 耳管 壁は骨性で動きはないところより鼻腔の延長とみる考えもある 咽頭口の後部の粘膜下にはリンパ組織が発達しており 特に 咽頭鼻部は固有鼻腔にも消化管にも属さないため 上咽 耳管扁桃 tubal tonsil とよばれる 耳管と耳管咽頭ヒダ 頭といい 呼吸器系の一部として独立させる考えもある 実際 の後に咽頭陥凹とよばれる切れ込みがみられる 咽頭囊 ヒトを除く哺乳類では 喉頭口が直接 上咽頭に連結する形を が両側の咽頭陥凹の間にみられることがある 咽頭囊は とる 胎児や幼若な動物にみられる 第 15 章 頭頸部の内臓 185

図16-12 上顎骨の内部構造変化 は上顎洞 図16-13 下顎骨の内部構造変化 有歯顎 上 矢状断 下 前頭断 無歯顎 上 矢状断 下 前頭断 有歯顎では多孔で樋状であったのが 歯の喪失に伴って 全周にわたり化骨化し 真に管状を呈する 図 16-13 一方 下顎頭では皮質骨は菲薄化し 内部骨梁は骨梁 の幅が細く連続性が失われる 図 16-14 特に下顎頭 後方部の皮質骨の吸収が著しい場合 海綿骨が露出する ことがある 図16-14 歯の喪失に伴う顎関節の変化 有歯顎 無歯顎 参考文献 1 Proffit WR Contenporary orthodontics. CV Mosby, St Louis, 1986. 2 Enlow DH Handbook of facial growth. W Saunders Co., Philadelphia, 1975. 3 上條雍彦 口腔解剖学 1骨学 臨床編 第1版 アナトーム 社 東京 1965 207 215 4 浦郷篤史 口腔諸組織の加齢変化 第1版 クインテッセンス 出版 東京 1991 28 47 5 須田立雄 小澤英浩ほか 新骨の科学 第2版 医歯薬出版 東京 2016 318 320 第 16 章 加齢と歯の喪失に伴う顎骨の変化 207

C E F G 右側関節突起部骨折 患側偏位 D H 両側関節突起部骨折 図18-5 下顎骨骨折における骨片の変位 筋の付着部と骨折線の位置と方向により骨片の変位は多様である 図18-6 下顎角部骨折の三次元CT画像 矢印 骨折線 くは直達骨折で その発生頻度は下顎骨骨折に比べて少 ない 図18-7 両側関節突起と下顎骨正中部の同時骨折の三次元CT画 像 矢印 骨折線 1 骨折部位による分類 図18-9 上顎骨骨折は Le Fort Ⅰ Ⅱ Ⅲ型骨折と矢状骨折に として周囲骨より分離した骨折で 骨折線は前頭鼻骨縫 大別されるが 実際は外力の作用部位 方向 強度など 合ならびに前頭上顎縫合から涙骨 lacrimal bone 篩骨 により頰骨をはじめとする隣接骨との合併骨折が少なく ethmoid bone を横断して後下方へ至り 下眼窩裂から ない 頰骨上顎縫合に沿って翼口蓋窩 pterygopalatine fossa Le Fort Ⅰ型骨折 水平骨折 は上顎骨中央部を横走 翼状突起 pterygoid process 基部に及ぶ Le Fort Ⅲ型 する骨折で 骨折線は梨状口 pyriform aperture 外側縁 骨折は中顔面を構成する骨が一塊として頭蓋底から分離 から翼口蓋窩 pterygopalatine fossa に及ぶ Le Fort Ⅱ された骨折で 骨折線は前頭鼻骨縫合ならびに前頭上顎 型骨折 錐体骨折 は上顎骨と鼻骨 nasal bone が一塊 縫合から涙骨 篩骨を横断して後下方へ至り 下眼窩裂 第 18 章 骨折と筋 215

Ⅱ パノラマエックス線画像の正常像 図22-8 本撮影法は 上下顎骨および周囲隣接組織の総覧像を 得られる点に特徴があり 前歯部付近では正面像に近い 像 臼歯部から後方では側面像に近い画像となる パノ ラマ無名線 IL は本撮影法で認められる特徴的な正常 解剖構造の 1 つであり エックス線入射に対する上顎 骨頰骨突起と頰骨後面の接線効果により描出される 無 名線と上顎洞後壁 PW 上顎洞底線 FL は悪性腫 ME 瘍などの重大な疾患の発見に特に重要である 下顎部で は 下顎頭 CO は顎関節疾患で 下顎管 MC は 図22-6 口内法エックス線画像 下顎小臼 歯部 ME オトガイ孔 EO 下顎骨内に生じるさまざまな病変で異常を呈することが 多く 下顎骨下縁皮質骨 C や歯槽頂の骨辺縁の状 態は 炎症の広がりや程度 腫瘍の良性と悪性の鑑別や 加齢変化の評価にきわめて重要である Ⅲ ME MC 図22-7 口内法エックス線画像 下顎大臼 歯部 EO 外斜線 MC 下顎管 ME オトガイ孔 頭部およびセファロエックス線画像の 正常像 1 頭部後前方向 posterior-anterior P 撮影法 図22-9 本撮影法は 頭蓋の後方から前方に向かってエックス 線を入射した頭部正面像である 顎骨の正中部付近は頸 図22-8 パノラマエックス線画像 NS 前鼻棘 T 関節結節 W 上顎洞前壁 C 下顎骨下縁皮質骨 CO 下顎頭 CP 筋突起 E 外耳孔 FL 上顎洞底線 H 舌骨 HP 硬口蓋 IL パノラマ無名線 IM 下顎切痕 INC 下鼻甲介 IOC 眼窩下管 M 下顎角 MC 下顎管 ME オトガイ 孔 MF 下顎窩 MS 上顎洞 MT 上顎結節 NC 鼻腔 NF 鼻腔底 NS 鼻中隔 OM 眼窩下縁 OP 中咽頭気道 PP 翼状突起 PPF 翼口蓋窩 PW 上顎洞後壁 S 頭蓋底 SP 軟口蓋 ST 茎状突起 T 舌根 Z 頰骨弓 238 第Ⅲ編 歯科応用解剖学