バイオ医薬品は生物を用いて製造されます 通常 細菌や動物細胞などの生体の中で目的とするタンパク質を産生させます バイオ医薬品の特性は製造プロセスの状態に依存するところが大きく しばしば プロセスが製品 と喩えられます 事実 製造プロセスにおける小さな変更でも 最終製品の違いにつながる可能性があります

Similar documents
バイオ医薬品は, 重篤な病気の治療や予防を目指す現代医療に不可欠かつ価値ある薬です

ごあいさつ バイオシミラーの課題 バイオ医薬品は 20 世紀後半に開発されて以来 癌や血液疾患 自己免疫疾患等多くの難治性疾患に卓抜した治療効果を示し また一般にベネフィット リスク評価が高いと言われています しかしその一方で しばしば高額となる薬剤費用が 患者の経済的負担や社会保障費の増大に繋がる

オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

300927_課_薬生薬審発0927第3号_核酸医薬品の品質の担保と評価において考慮すべき事項について

臨床評価とは何か ( 独 ) 医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部方眞美

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

ICH Q8, Q9, Q10ガイドライン 運用実務研修会 討論会の概略及び結果

<4D F736F F F696E74202D2097D58FB08E8E8CB1838F815B834E F197D58FB E96D8816A66696E616C CF68A4A2E >

ISO9001:2015規格要求事項解説テキスト(サンプル) 株式会社ハピネックス提供資料

バリデーション基準 1. 医薬品 医薬部外品 GMP 省令に規定するバリデーションについては 品質リスクを考慮し 以下の バリデーション基準 に基づいて実施すること 2. バリデーション基準 (1) バリデーションの目的バリデーションは 製造所の構造設備並びに手順 工程その他の製造管理及び品質管理の

医薬品の基礎研究から承認審査 市販後までの主なプロセス 基礎研究 非臨床試験 動物試験等 品質の評価安全性の評価有効性の評価 候補物質の合成方法等を確立 最適な剤型の設計 一定の品質を確保するための規格及び試験方法などの確立 有効期間等の設定 ( 長期安定性試験など ) 医薬品候補物質のスクリーニン

別添 治験副作用等症例の定期報告に関する質疑応答集 (Q&A) について < 半年ごとの定期報告の受け付け> Q1 平成 26 年 6 月 30 日までの間は 治験依頼者 ( 自ら治験を実施する者を除く ) が提出する副作用等症例の定期報告は なお従前の例によることができる とあるが 平成 26 年

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

Microsoft Word - jpn PhRMAPrinciplesForResponsibleClinicalTrialDataSharing-R

<4D F736F F F696E74202D D95698EBF B C8B4B8A698E8E8CB181698D828BB4816A44325F D9770>

別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 本資料の作成日 :2016 年 10 月 12 日商品名 : ビフィズス菌 BB( ビービー ) 12 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) による食経験の評価ビフィズス菌 BB-12

Microsoft PowerPoint - 【参考資料4】安全性に関する論文Ver.6

SGEC 附属文書 理事会 統合 CoC 管理事業体の要件 目次序文 1 適用範囲 2 定義 3 統合 CoC 管理事業体組織の適格基準 4 統合 CoC 管理事業体で実施される SGEC 文書 4 CoC 認証ガイドライン の要求事項に関わる責任の適用範囲 序文

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

Microsoft Word - 第14回定例会_平田様_final .doc

ISO13485:2005 と本邦における QMS との違いについて ( いわゆる追加的要求事項と呼ばれる事項について よく質問があります 品質マニュアル ( 品質管 理監督基準書 ) 作成の際に参考になると幸いです 条項ごとに解説を記載しましたので 参考にしてください 追加的要求事項 1: 製造所

PowerPoint プレゼンテーション

RAD-AR News Vol.15, No.4 (Nov. 2004) 2

平成 23 年 7 月 5 日 米国医療機器 IVD 工業会 (AMDD) 会長デイビット W. パウエル 欧州ビジネス協会 (EBC) 医療機器委員会 委員長ダニー リスバーグ 医療機器 ( 体外診断用検査機器を含む ) の薬事法改正に係る提言 はじめに 医薬品は新しい有効成分を探しあるいは創り

【資料1-2】脳神経外科手術用ナビゲーションユニット基準案あ

平成14年度研究報告

医師主導治験取扱要覧

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

Microsoft PowerPoint - US cGMP検討会用080226(資料3-1).ppt

JCROA自主ガイドライン第4版案 GCP監査WG改訂案及び意見

【報道関係各位】

医療機器開発マネジメントにおけるチェック項目

説明項目 1. 審査で注目すべき要求事項の変化点 2. 変化点に対応した審査はどうあるべきか 文書化した情報 外部 内部の課題の特定 リスク 機会 利害関係者の特定 QMS 適用範囲 3. ISO 9001:2015への移行 リーダーシップ パフォーマンス 組織の知識 その他 ( 考慮する 必要に応

ジェネリック医薬品とは 内容 ジェネリック医薬品は 新薬 ( 先発医薬品 ) の特許期間を満了した 同じ有効成分を使った 品質 効き目 安全性が同等で 低価格な おくすりです とっきょきかん 1. ジェネリック医薬品とは 2. どうして低価格なの? 医療用医薬品 新薬 3. 効き目も安全性も同等 4

表 3 厚生労働省新旧ガイドライン目次比較 は新ガイドラインで追加された項目 コンピュータ使用医薬品等製造所適正管理ガイドライン 第 1 目的 1. 総則 1.1 目的 第 2 適用の範囲 2. 適用の範囲 第 3 開発業務 1. 開発検討段階 (1) 開発段階の責任体制の確立 (2) 開発マニュア

Agenda Benefit/Risk Assessmentとは Life-Cycleを通したBenefit/Risk Assessment 開発段階 市販後 2

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

p

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果


抗精神病薬の併用数 単剤化率 主として統合失調症の治療薬である抗精神病薬について 1 処方中の併用数を見たものです 当院の定義 計算方法調査期間内の全ての入院患者さんが服用した抗精神病薬処方について 各処方中における抗精神病薬の併用数を調査しました 調査期間内にある患者さんの処方が複数あった場合 そ

過去の医薬品等の健康被害から学ぶもの

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

PSP 省令 と それぞれ略称する 記 1. 改正施行規則について希少疾病用医療機器その他の医療上特にその必要性が高いと認められる医療機器であり かつ 当該医療機器についての臨床試験の実施に特に長期間を要すると認められるものに係る承認申請をする場合においては 改正 GVP 省令第 9 条の3 第 1

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

ISO9001:2015内部監査チェックリスト

これまでの検討経緯 2014 年 6 月 E17 EWG 設立 2014 年 11 月第 1 回対面会合 ( リスボン ) 2015 年 6 月第 2 回対面会合 ( 福岡 ) 2015 年 12 月第 3 回対面会合 ( ジャクソンビル ) 2016 年 5 月 -6 月 エクスパートによるサイン

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

さらにのどや気管の粘膜に広く分布しているマスト細胞の表面に付着します IgE 抗体にスギ花粉が結合すると マスト細胞がヒスタミン ロイコトリエンという化学伝達物質を放出します このヒスタミン ロイコトリエンが鼻やのどの粘膜細胞や血管を刺激し 鼻水やくしゃみ 鼻づまりなどの花粉症の症状を引き起こします

Microsoft PowerPoint - ⑨140925,30日薬連講習会(後発RMP)930.ppt [互換モード]

後発医薬品への変更調剤について

説明項目 1. 審査で注目すべき要求事項の変化点 2. 変化点に対応した審査はどうあるべきか 文書化した情報 外部 内部の課題の特定 リスク 機会 関連する利害関係者の特定 プロセスの計画 実施 3. ISO 14001:2015への移行 EMS 適用範囲 リーダーシップ パフォーマンス その他 (

PSP 省令 と それぞれ略称する 記 1. 改正施行規則について希少疾病用医療機器その他の医療上特にその必要性が高いと認められる医療機器であり かつ 当該医療機器についての臨床試験の実施に特に長期間を要すると認められるものに係る承認申請をする場合においては 改正 GVP 省令第 9 条の3 第 1

ともに 申請者が承認審査のスケジュールに沿って法令上求められる製造体制を整備することや承認後円滑に医療現場に提供するための対応が十分になされることで 更なる迅速な実用化を促すものである この制度では 原則として新規原理 新規作用機序等により 生命に重大な影響がある重篤な疾患等に対して 極めて高い有効

1. 今回の変更に関する整理 効能 効果及び用法 用量 ( 添付文書より転載 ) 従来製剤 ( バイアル製剤 ) と製法変更製剤 ( シリンジ製剤 ) で変更はない 効能 効果 用法 容量 B 型肝炎の予防通常 0.5mL ずつ4 週間隔で2 回 更に 20~24 週を経過した後に1 回 0.5mL

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

スライド 1

Guideline on good pharmacovigilance practices (GVP) Module IX – Signal management

< F2D8E9197BF A836F815B2E6A7464>

ICHシンポジウム2013 E14

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

骨粗しょう症調査

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

【押印あり】日本医学会宛

Microsoft PowerPoint - 4_河邊先生_改.ppt

QbDを用いた新薬申請の審査とGMP適合性調査 -現状及び課題-

Microsoft Word - 2-① 補償ガイドライン平成27年版(本文)Ver3.1.1.do

医薬品たるコンビネーション製品の不具合報告等に関する Q&A [ 用いた略語 ] 法 : 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律 ( 昭和 35 年法律第 145 号 ) 施行規則 : 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則 ( 昭和 36 年

静岡県立静岡がんセンター臨床研究事務局の業務手順書

<4D F736F F F696E74202D A838C F838A B C982C282A282C42E B8CDD8AB B83685D>

AAプロセスアフローチについて_ テクノファーnews

胚乳細胞中のタンパク質顆粒 I(PB-I) に改変型 Cry j 1タンパク質 及びCry j 2タンパク質を蓄積させたものです 2 スギ花粉ペプチド含有米( キタアケ ) スギ花粉が有する主要アレルゲンタンパク質 2 種 (Cry j 1 Cry j 2) の7 種類の主要 T 細胞エピトープを連

<4D F736F F F696E74202D208DEC90AC C8E817A836F838A B AEE8F802E B8CDD8AB B83685D>

アレルギー疾患対策基本法 ( 平成二十六年六月二十七日法律第九十八号 ) 最終改正 : 平成二六年六月一三日法律第六七号 第一章総則 ( 第一条 第十条 ) 第二章アレルギー疾患対策基本指針等 ( 第十一条 第十三条 ) 第三章基本的施策第一節アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減 ( 第十四条

仮訳 原文 P2 補遺 E6 (R2) コード 履歴 日付 E6(R2) R1 文書に対する補遺以下の各項に対する追加 : 序文,1.63,1.64, 1.65,2.10,2.13,4.2.5,4.2.6,4.9.0,5.0, 5.0.1,5.0.2,5.0.3,5.0.4,5.0.5,5.0.6,

目次 ( 用語の定義 ) 背景 ガイドラインの対象 がん治療用ウイルスの選択 初期段階での確認事項 ウイルス選択の理由 腫瘍選択性 ウイルスの分子変異の確認 規格 製造

「いわゆる健康食品」の安全性評価ガイドライン(案)

がん免疫療法モデルの概要 1. TGN1412 第 Ⅰ 相試験事件 2. がん免疫療法での動物モデルの有用性がんワクチン抗 CTLA-4 抗体抗 PD-1 抗体 2

スライド 1

(別添様式1)

本 の内容 背景 阪会議からモントリオール会議までの活動 モントリオール会議での議論 / 作業 ステップ1 書の概要 今後の予定 2

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

IAF ID 2:2011 Issue 1 International Accreditation Forum Inc. 国際認定機関フォーラム (IAF) IAF Informative Document ISO/IEC 17021:2006 から ISO/IEC 17021:2011 への マネ

「GMP担当者研修・認定講座」の運用規定(案)

中医協総 医薬品及び医療機器の費用対効果評価に関する取扱いについて 1 既収載品に係る費用対効果評価の手続き (1) 対象品目の指定中央社会保険医療協議会の定める以下の選定基準に基づき 費用対効果評価専門部会において指定 公表されたものとする 次の全ての要件を満たす品

別紙様式 (Ⅴ)-1-3で補足説明している 掲載雑誌は 著者等との間に利益相反による問題が否定できる 最終製品に関する研究レビュー 機能性関与成分に関する研究レビュー ( サプリメント形状の加工食品の場合 ) 摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的な結果が得られている ( その他加工食品及び生鮮食品の場合

301226更新 (薬局)平成29 年度に実施した個別指導指摘事項(溶け込み)

近年患者数が多く公衆衛生上の重要性が増しているノロウイルスについて ヒトへの 感染経路における食品 ( カキを中心とした二枚貝とその他の食品別 ) の寄与率やヒトの 症状の有無による食品への汚染の程度を明らかにする研を実施する 2 調査事業 (1) 食品用器具 容器包装に用いられる化学物質のリスク評

5、ロット付番

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

こうすればうまくいく! 薬剤師による処方提案

<4D F736F F F696E74202D D58FB08E8E8CB15F88F38DFC FC92F994C532816A>

Transcription:

バイオ医薬品とバイオシミラー ( バイオ後続品 ) に関する Q&A 1. バイオテクノロジーとは そしてバイオ医薬品の役割とはどのようなものでしょうか? バイオテクノロジーとは 製品やサービスを生み出するために生物やその一部による修飾を用いた一連の方法やプロセスです 1970 年代のいわゆる 組換えDNA 技術 の発展 展開により 分子レベル でのバイオテクノロジーという新たな時代が幕を開け 様々な分野で知識革命を引き起こしました 組換えDNA 技術により 実験室で治療用タンパク質を作製する際に 生物学的システム中のDNA 操作を短時間でできるようになりました 今日のバイオ医薬品は 主にこのような組換えDNA 技術を用いて製造されています この事は 生物の遺伝子を再プログラム化することにより 目的のタンパク質を生産することを意味しています 組換えDNA 技術の事例として インスリンがあげられます インスリンが必要な糖尿病患者は 長年に渡り動物の膵臓から抽出したインスリンを使用していました 1982 年 組換えDNA 技術を用いて大腸菌でのヒトインスリンが初めて製造されました 組み換え型ヒトインスリンは動物から抽出したインスリンと比べて高品質で かつ糖尿病患者の需要を満たす充分な量を製造することができます 2. バイオ医薬品 1 とはどのようなもので 化学合成された低分子医薬品とどうのように違うのでしょうか? バイオ医薬品とは 有効成分が成長ホルモン, インスリン, 抗体などのタンパク質由来の医薬品で 細胞 酵母 細菌などの生物から産生されます それらは 化学合成の低分子医薬品に比べて大きくて複雑であり その特性や性質は産生する生物の種類や製造工程自体に大きく依存しています この複雑性がバイオ医薬品の完全な特性解析を難しくしています 一方 化学合成の低分子医薬品は 段階的な化学合成の工程を経て生産されます また バイオ医薬品と比べて低分子であり 構造的に単純な化学物質です 3. バイオ医薬品はどのように製造されるのでしょうか? 1 バイオ医薬品は biologics biological medicine biopharmaceuticals などとも呼ばれる 1

バイオ医薬品は生物を用いて製造されます 通常 細菌や動物細胞などの生体の中で目的とするタンパク質を産生させます バイオ医薬品の特性は製造プロセスの状態に依存するところが大きく しばしば プロセスが製品 と喩えられます 事実 製造プロセスにおける小さな変更でも 最終製品の違いにつながる可能性があります 従って バイオ医薬品の製造プロセスは 充分にデザインされ 頑強で 信頼性があり 充分に制御されたプロセスが必要となります GMP( 医薬品適正製造基準 ) バリデーション 明確な仕様書は 長期間に渡って安全性と有効性を保証するために極めて重要となります : バイオ医薬品の製造過程にはおよそ250の工程内試験が実施されています 2 つまり製造プロセス自体が 製品固有の特徴を規定するといえます 4. バイオ医薬品はどういう疾病のとき治療に使われるのでしょうか? バイオ医薬品は 癌や糖尿病など一般的な疾患のみならず 稀な病気に対しても使用され 世界中で3 億 5 千万人の患者さんに恩恵を与えています 3 化学合成された低分子医薬品では治療が困難であったいくつかの症状に対して バイオ医薬品の有効性が明らかになってきています 過去 30 年以上にわたって バイオ医薬品による医療上の進展は 癌 糖尿病 C 型肝炎 慢性腎不全などの複雑な慢性疾患の治療や 血友病 ファブリー病 発育不全 多発性硬化症 クローン病などの希少疾患の治療に見ることができます 5. バイオ医薬品は実際にどのように作用するのでしょうか? バイオ医薬品は 患者の体内で タンパク質 -タンパク質 細胞- 細胞の複雑な相互作用を妨げたり 促進したり または置き換わって作用するように設計された大きな分子です 糖尿病の場合 組換えDNA 技術によって生産されたヒトインスリンは 世界で初めてバイオテクノロジーで製造された医薬品であり 患者に不足しているタンパク質 ( インスリン ) を補充します バイオ医薬品はヒトの体内で起こっている疾病に関する生物学の非常に深い理解に基づいて開発されており 疾病の特異的要因を標的としたり 疾患の症状を和らげることができます 一方 化学合成された低分子医薬品は 一般的に疾病要因への標的性は低く 作用メカニズムもそれほど複雑ではありません 6. バイオ医薬品の品質 安全性 有効性はどのように評価されるのでしょうか? 2 バイオ医薬品に関する欧州バイオ産業協会手引書 : バイオシミラー特集 http://www.europabio.org/sites/default/files/report/guide_to_biological_medicines_a_focus_on_biosimilar_medicines.pdf 3 バイオ医薬品に関する欧州バイオ産業協会手引書 : バイオシミラー特集 http://www.europabio.org/sites/default/files/report/guide_to_biological_medicines_a_focus_on_biosimilar_medicines.pdf 2

全ての医薬品は製品ライフサイクルにおいて 品質 安全性 有効性を証明 評価 モニタリングすることは重要です 規制当局からは 承認前および承認後も これら事項についての評価を要求されます 企業もまた 品質 安全性 有効性が保証された医薬品だけが市場で使用されるよう SOP( 標準作業手順書 ) とGMP( 医薬品適正製造基準 ) の環境を整備しています バイオ医薬品については 申請前段階で品質 安全性 有効性を証明するために 低分子医薬品ではないような 極めて最先端の機器や技術が必要となります これはバイオ医薬品の複雑性 生産に必要なプロセス 好ましくない免疫反応の潜在リスクによるものです 臨床試験に参加する患者数は限られているため 市販後安全性調査 ( ファーマコビジランス体制の一環として ) は 当局によって許可された医薬品のライフサイクルを通してリスク / ベネフィット評価を継続する基本的な手段であり 製造承認前には確認できなかった稀で重篤な有害事象を検出できる可能性があります ファーマコビジランス ( 医薬品安全性監視 ) 体制は 製品の品質や使用方法やと処方の様式の変化に関連する新たな安全性シグナルを検出することができます 世界保健機関 (WHO) は各国のファーマコビジランス体制を 将来の公衆衛生領域において義務としてなすべき投資 と位置づけています 4 しっかりしたファーマコビジランス体制の継続は 有害事象情報データの首尾一貫した正確な取得 統合 分析に依存します 5 そのような強力な基盤がないと 重要な安全性シグナルは隠され 混乱し 希釈されるでしょう この強力なシステムの必要性は全ての薬に共通して当てはまりますが バイオ医薬品においては特に重要です 6 7. バイオシミラーとはどのようなものでしょうか? そして化学合成された低分子ジェネリックとはどう違うのでしょうか? バイオシミラー ( バイオ後続品 ) は 既に認可された先発バイオ医薬品と 直接 ( あるいは1 対 1) 比較により品質特性 有効性 安全性の観点から類似性を示すことにより 先発品と類似した製品と定義されています 7 従って バイオシミラーは先発バイオ医薬品 ( 対照医薬品 ) と似ているが同一ではありません バイオ医薬品の複雑な分子構造と特有な製造プロセスのため バイオシミラ 4 世界保健機関 (2006) 公衆衛生プログラムにおける薬剤の安全性 : 必須の手段であるファーマコビジランス http://www.who.int/medicines/areas/quality_safety/safety_efficacy/pharmacovigilance_b.pdf 5 世界保健機関が作成したファーマコビジランス体制のガイドラインについては下記リンク先を参照 http://www.who.int/medicines/areas/quality_safety/safety_efficacy/pharmacovigilance_b.pdf 6 Giezen et al. (2008) Safety-Related Regulatory Actions for Biologicals Approved in the United States and the European Union. JAMA; 300(16): 1887 7 類似バイオ医薬品 (SBPs) の評価のための世界保健機関ガイドライン バイオシミラーは 品質 安全性 有効性の観点から 認可を受けた対照バイオ医薬品に類似している 3

ーが先発品の完全なコピーとなることは不可能です このことは 化学合成された低分子のジェネリック医薬品では当てはまらず これらは 先発低分子医薬品と同一であると証明できる単一の構造を有する安定した分子であり 先発薬の有効成分 (API) と全く同一な成分が含まれています バイオシミラーは 類似バイオ医薬品 (similar biotherapeutic products) バイオ後続品(follow-on biologics subsequent entry biologics) とも呼ばれています 8. バイオシミラー候補品が 先発バイオ医薬品と類似しているかどうかの評価はどのように可能でしょうか? バイオ医薬品の複雑な性質のために バイオシミラーには低分子ジェネリックとは異なる規制審査プロセスが必要です 低分子ジェネリックの規制審査プロセスはかなり単純で複雑ではありません 先発品の有効成分 (API) と同一であることと 先発品との生物学的同等性が証明されることだけが要求されます このアプローチはバイオシミラーの類似性を証明する場合には不適切です バイオシミラーが承認されるためには 品質 効果 安全性に関して対照バイオ医薬品 (Reference Biotherapeutic Product, RBP) との高い類似性が すなわち それらの試験パラメーターに意味ある相違がないことを証明することが必須となります この評価は段階的な試験で進められ 試験の主な目的はバイオシミラーの類似性を証明することです これら試験は バイオシミラー候補と RBPとの品質特性の比較試験から始められます 品質レベルで高い類似性が証明されれば 安全性 ( 免疫原性を含む ) と有効性のプロファイルに意味のある違いがないことを確認するため 非臨床及び臨床においてバイオシミラーとRBPの比較試験を継続します これらの評価によって 二つの薬剤は同等 / 同質な臨床プロファイルを患者にもたらすことができます 9. バイオシミラーと先発バイオ医薬品の製造プロセスに違いはあるのでしょうか? バイオ医薬品の生産は複雑でわずかな変化でも影響を受けやすい特徴があります バイオシミラー候補の製造業者は 先発品メーカーの開発と製造のデータにアクセスできないため 先発バイオ医薬品を製造するために使用される製造プロセスとは異なるプロセス ( 異なる細胞株 原材料 装置 プロセス プロセス管理 ) を利用することになります バイオシミラーの製造業者は 適切な管理の下で 独自のプロセスおよびその製造方法を確立する必要があります 同じ科学的原理に基づいているにもかかわらず RBPと開発されるバイオシミラー候補間の類似性を証明するためには すでに承認された製品の製造プロセスの変更前 / 変更後の同等性試験よりも より広範かつ包括的なデータが必要になります 4

10. 類似バイオ医薬品 (SBP) の規制の流れはどのようなものでしょうか? 患者の安全性を担保するためには科学に基づく医薬品の規制基準が必須です バイオ医薬品の複雑な性質のため 類似バイオ医薬品には低分子ジェネリックとは異なる規制基準が要求されます この規制基準には 対照となる先発バイオ医薬品との品質 安全性 有効性の観点での高い類似性を示すたに 完全な分析的特性づけと品質試験に加え 非臨床試験と臨床試験が必要とされます 科学的に厳密なバイオシミラーの規制審査プロセスは バイオシミラーと先発バイオ医薬品との間で品質 安全性 有効性に関して意味のある臨床的差異がないことを保証しなければなりません こうすることにより バイオシミラーが先発バイオ医薬品と同等の臨床結果を生み出すことが期待されるのです 2005 年に欧州医薬品庁 (EMA) は類似バイオ医薬品の承認のための最初の規制の枠組みを施行しました 8 加えて2009 年に WHOは類似バイオ医薬品の開発と評価のための青写真として各国へ提供するためのガイドラインを策定しました 9 WHOガイドラインに概説されている類似バイオ医薬品の最小限の基準は 品質 安全性 有効性の基準を保ちながら 専門の審査プロセスを促進するために開発されました 11. 堅牢な科学に基づいたバイオシミラーの審査プロセスにおいて鍵となる考慮すべき事柄がどのようなものでしょうか? 化学的に合成された低分子ジェネリック医薬品とは区別される規制の枠組みを確立すること バイオシミラーの開発者は 充分な申請書類に基づいて承認された適切なRBPを選択し 比較試験で使用することが必要 開発されるバイオシミラーとRBPについて 作用機序 ( わかる範囲で ) 剤形 力価 および投与経路が同じであること 8 類似バイオ医薬品に関するEMAガイドライン (2005) http://www.ema.europa.eu/docs/en_gb/document_library/scientific_guideline/2009/09/wc500003517.pdf 9 類似バイオ医薬品 (SBP) の評価に関するWHOガイドライン (2009) http://www.who.int/biologicals/areas/biological_therapeutics/biotherapeutics_for_web_22april2010.pdf 5

バイオシミラーの開発者は 徹底した比較分析試験を通じてバイオシミラーと RBP の物理化学的および生物学的特性の包括的な解釈を示すことが必要 バイオシミラーの開発者は 適切に計画された非臨床及び臨床試験を通じて安全性 と有効性の観点から バイオシミラー候補と RBP に高い類似性を確認することが必 要 バイオシミラー候補の免疫原性については RBPとの比較において 市販前での適切な評価 ( 例えば 免疫原性イベントの種類や発生率の違いの検出を可能にするために適切な患者数を用いた試験 ) を行うとともに 市販後も適切な評価をすることが必要 上市にあたっては バイオシミラーの明確な処方 調剤 使用 およびファーマコビジランスを確実に実施するための体制を用意しなければならない ( 例えば 明確なラベリング 独自の識別名 患者と医師の教育 適切なファーマコビジランス計画 ) 12. ひとつの適応症から他の適応症へ臨床データを外挿することの科学的妥当性について評価するときどのようなことを考慮すべきでしょうか? バイオシミラーが すでに先発品が承認を受けた一つの適応症の承認要件を満たしている場合 それにより自動的に異なる疾患へ臨床データを外挿することが適切であるとは考えられません 先発品における他の適応症への臨床データの外挿には 健全な科学的根拠が必要です この根拠には以下についての適切な検討を必要とします 作用機序は同一で 充分に理解されているという事実 比較臨床試験は 安全性 有効性および免疫原性の潜在的差異に最も感度の高い条件で行われているという事実 試験された適応症と未試験の適応症の間でリスク ベネフィット バランスの違い 同一適応疾患および適応疾患間での患者集団での違い バイオシミラーの適応症の外挿を取り巻く複雑な問題は バイオシミラーの類似性の 試験とバイオシミラーの承認審査が 技術的 分析的な試験にまで簡略化できないこと 6

を意味しています 上記の原則に関する深い理解と検討 そして それらの結果を特定 の製品へどのように適用するかが外挿性を担保するためには必要です 外挿の正当性を 評価する際に患者の安全性に対する潜在的なリスクを考慮しなくてはなりません 7