[ 三多摩腎疾患治療医会 ] 第 59 回研究会 プログラム および 演題要旨 平成 22 年 6 月 27 日 ( 日 ) 於 : 杏林大学大学院講堂
三多摩腎疾患治療医会 [ 第 59 回研究会プログラム ] 2010 年 6 月 27 日 ( 日 ) 13:00~16:55 於 : 杏林大学大学院講堂 < 開会の辞 > 会長長澤俊彦 13:00-13:05 Ⅰ. 一般演題 ( 発表 7 分討論 5 分 ) 13:05-15:17 座長 : 川村哲也 13:05-13:41 1. 糸球体病変を伴わず急性腎障害を呈した ANCA 関連血管炎の一例 杏林大学第一内科 : 川嶋聡子 大森康宏 小西文晴 駒形嘉紀 要伸也 有村義宏 山田明同脳卒中科 : 朝倉誉子 岡野晴子 西山和利 2. 回腸輪状潰瘍により腸閉塞をきたした慢性透析患者の一例 多摩永山腎 内科クリニック : 松川重明慶應義塾大学消化器内科 : 細江直樹 日比紀文 3. 紫斑と好酸球増多を合併した管内増殖性糸球体腎炎の一例 立川相互病院腎臓内科 : 増山智之 大石学 鈴木創 形山憲誠 小泉博史同病理科 : 布村眞季 並木眞生立川病院病理科 : 緒方謙太郎 座長 : 吉田雅治 13:41-14:17 4. 導入時に尿毒症性心膜炎を認め 濃厚透析を開始後 腹膜透析に移行できた腹壁瘢痕ヘルニア合併糖尿病性腎症の一例 武蔵野赤十字病院腎臓内科 : 木村仁志 白石幸 佐藤英彦 小田敏子 安藤亮一 5. 低頻度外来透析維持透析を行った超低蛋白食遵守の慢性腎不全患者の一例 東京都立多摩総合医療センター : 土岐徳義 麻喜幹博 森大 宮腰夏輝 正田若菜 安藤史顕 河﨑智樹 赤澤政信 紀平裕美 羽田学 西尾康英 6. 造影剤投与前の血液濾過(HF) は造影剤腎症 (CIN) 発症予防及び腎機能長期予後に有効である 東京医科大学八王子医療センター腎臓内科 : 佐藤信彦 冨安朋宏 小島糾 杉崎健太郎 山野水紀 吉川憲子 明石真和 中林巌 吉田雅治同臨床工学部 : 畑谷重人
座長 : 檜垣昌夫 14:17-14:53 7. 杏林大学病院泌尿器科における透析腎癌の検討 杏林大学病院泌尿器科 : 板谷直 菅田明子 中村雄 榎本香織 藤田直之 林建二郎 原秀彦 宍戸俊英 桶川隆嗣 奴田原紀久雄 東原英二 8. 通院透析困難症例 2 例から学ぶ医療と福祉の問題点 八王子東町クリニック : 塚本美帆 石井智佳子 柴田さとみ 小俣百世府中腎クリニック : 外谷伸江 小杉繁 杉崎弘章南大沢パオレ腎クリニック : 岩本八千代 9. 当院に於けるエンドトキシン測定のバリデーション検討 昭島腎クリニック : 加藤尚孝 正木一郎 小川航 小泉慶香 渡邉徹 金川秀光 畠山秀樹 大野利男 加藤彰則 栗本義直 座長 : 西尾康英 14:53-15:17 10. 透析装置の血液流量に誤差を与える要因 脱血回路内陰圧と流量誤差の関係について 杏林大学保健学部 : 島峰逸朗 須田健二 副島昭典 鈴木祥史 11. 最新エコーによる vascular access の評価 東京慈恵会医科大学第三病院臨床工学部 : 池田潤平 宇野光晴 栗原肇 石井宣大同腎臓高血圧内科 : 吉田啓 川村哲也東京慈恵会医科大学附属病院臨床工学部 : 平塚明倫 Coffee Break 15:17-15:35 Ⅱ. 情報提供 15:35-15:50 座長 : 小泉博史 1. 感染対策委員会報告 武蔵野赤十字病院 : 安藤亮一 Ⅲ. 特別講演 15:50-16:50 座長 : 要伸也 1. 長期予後を改善する血液透析の技術 杏林大学保健学部臨床工学科副島昭典先生 < 閉会の辞 > 府中腎クリニック杉崎弘章 16:50-16:55
演題要旨 1. 糸球体病変を伴わず急性腎障害を呈した ANCA 関連血管炎の一例 杏林大学第一内科 : 川嶋聡子 症例 82 歳男性 主訴 発熱 現病歴 2009 年 7 月 20 日頃より みぎ下肢脱力 歩行困難 全身倦怠感が出現した 8 月 4 日 脳梗塞を認め当院脳卒中科に入院した 入院後 37 度台の微熱 炎症反応持続陽性 (CRP10~15mg/dl) 糸球体性血尿 腎機能障害増悪(Cr1.0 2.9mg/dl) MPO-ANCA130EU と陽性であることから ANCA 関連血管炎が疑われた また 全身性の中毒疹が出現し 皮膚生検で真皮深層に小型血管炎を認め 顕微鏡的多発血管炎と診断した PSL30mg/ 日で治療を開始したが 治療 6 日目に急変した 病理解剖の結果 後腹膜大量出血を認めた また 皮膚 脳組織では小型血管炎所見を認めたが 腎組織では糸球体病変を認めなかった 考察 ANCA 関連血管炎の腎障害は急速進行性糸球体腎炎を呈し 病理組織学的には細胞性あるいは繊維細胞性半月体形成性糸球体腎炎を伴う壊死性半月体形成性糸球体腎炎が典型的である 臨床経過では急速進行性糸球体腎炎が考えられたが 病理組織では糸球体病変を伴わない ANCA 関連血管炎を経験したので報告する 2. 回腸輪状潰瘍により腸閉塞をきたした慢性透析患者の一例 多摩永山腎 内科クリニック : 松川重明当院では透析患者の小腸病変を検討するため 慢性維持透析患者を対象に小腸カプセル内視鏡での検討を行っている 今回 下肢閉塞性動脈硬化症と変形性腰椎症があり NSAID を長期内服していた男性患者にカプセル内視鏡検査を行ったところ 回腸輪状潰瘍による狭窄を認めた カプセル内視鏡は排出し 治療を検討していたところ 腸閉塞を来たし緊急入院となった 保存的治療ののち 同部のバル ン拡張術を施行した 腸閉塞の原因としては 臨床経過と検査所見から 虚血性小腸炎もしくは NSAID による線状潰瘍に起因する小腸狭窄が疑われた 透析患者での小腸病変による腸閉塞の報告はまれであり 考察を交えて発表する 3. 紫斑と好酸球増多を合併した管内増殖性糸球体腎炎の一例 立川相互病院腎臓内科 : 増山智之 症例 67 歳, 男性.2009 年 3 月初め, 腰痛で NSAIDs 内服開始.4 月に全身掻痒感と躯幹と四肢に紅斑出現し皮膚科受診. 経過中に下腿の紫斑を認め皮膚生検 (hypersensitivity vasculitis) の所見でアナフィラク u ニイド紫斑病と考えられた. 5 月に入り高血圧, 下腿浮腫, 紅斑, BUN 82.3mg/dL,Cr 2.31mg/dL, 尿潜血 (3+), 尿蛋白 (1+), 好酸球 7575/μL を認め当科入院. 紫斑病性腎炎, 薬剤性過敏症症候群などを考え, ステロイドパルス療法施行. 低補体血症を認めたが,ASO, 抗核抗体, クリオグロブリン,ANCA, 血液培養は陰性で HHV-6 抗体価上昇は認めず, パルボウイルス B19 は既感染であった. 腎生検施行し尿細管障害を伴う管内増殖性糸球体腎炎の像で IF にて IgG と C3 が係蹄壁に沿った陽性像を示し,IgA の沈着は認めず. 退院後, 尿潜血, 蛋白尿が持続し外来治療中.
4. 導入時に尿毒症性心膜炎を認め 濃厚透析を開始後 腹膜透析に移行できた腹壁瘢痕ヘルニア合併糖尿病性腎症の一例 武蔵野赤十字病院腎臓内科 : 木村仁志症例は 45 歳男性 糖尿病性腎症による慢性腎不全にて尿毒症症状を認めるようになり 腹壁瘢痕ヘルニアを合併していたが 腹膜透析を希望したため 2010 年 3 月 CAPD 導入目的に入院となった 第 3 病日 腹壁瘢痕ヘルニア根治術と CAPD カテーテル挿入術施行 第 7 病日より 38 度台の発熱を認めた 自覚症状は湿性咳嗽と前胸部の痛みであった 第 10 病日 心エコーにて心嚢液の貯留を認めたことから 尿毒症性心膜炎と診断 第 13 病日より 連日血液透析濾過を行ったところ 速やかに前胸部痛の改善と解熱を認めた 第 20 病日の心エコーでは 心嚢液は消失していた 血液透析開始して 1 週間連日施行後 翌週は週 4 回に減量 腹膜透析の貯留量が 2000ml となったところで血液透析を離脱 その後心膜炎は再燃することなく経過し 退院となった 本症例は導入時の尿毒症性心膜炎の治療に関して示唆に富む症例と考えられたため報告する 5. 低頻度外来透析維持透析を行った超低蛋白食遵守の慢性腎不全患者の一例 東京都立多摩総合医療センター : 土岐徳義腎臓学会食事療法ガイドラインでは 血液透析患者の蛋白質摂取量推奨量は 1.0-1.2 g/kg/day とされている 一方 0.6 g/kg/day の低蛋白食により 栄養状態良好に週一回維持透析が可能の報告もある 症例は 37 歳女性 慢性腎炎による腎不全が進行し 2007 年 2 月 BUN 65 mg/dl,cr 5.7 mg/dl で低蛋白食指導を行った 蛋白 23g(0.5 g/kg)/day 塩分 5g の超低蛋白減塩食を遵守したが Cr 上昇が阻止できず 2010 年 2 月 BUN 73.1 mg/dl,cr 22.4 mg/dl で外来通院透析導入とした 自覚症状なく 尿量も保たれ 超低蛋白食の継続を希望したため 導入後週 1 回の維持透析を継続し問題なく経過した 導入後 3 ヶ月後 中 6 日の検査値は BUN 53.6 mg/dl,cr 20.1 mg/dl,p 2.5 mg/dl,k 4.4 meq/l で体重増加を認めない 低蛋白食継続下の週一回の維持透析は 患者の QOL 医療経済への負担も少なく 通常の HD PD とともに 末期腎不全治療選択肢の一つとなると考えられるため報告する 6. 造影剤投与前の血液濾過(HF) は造影剤腎症 (CIN) 発症予防及び腎機能長期予後に有効である 東京医科大学八王子医療センター腎臓内科 : 佐藤信彦 目的 Marenzi らが CKD 患者の造影剤投与前後の HF が CIN 発症予防に有効であると報告している 我々は 昨年の本会での検討を踏まえ投与前の HF が CIN 発症予防に特に重要と考え 今回投与前に HF を施行した 6 例で検討を行った 対象 造影剤投与前に HF 施行した 6 例 男 : 女 =6:0 原疾患 DMN3 人 CGN3 人 平均年齢 75.2 歳 Cre 3.12mg/dl 造影剤使用目的 CAG3 名 PCI3 名 造影剤使用量 115.8ml 方法 投与前に HF を 4 時間施行し 前後 12 時間で 0.9% 生理食塩水 1~2ml/kg/hr の点滴負荷を行った 造影剤使用 1 週間以内の CIN 発症予防の有効性と造影剤前後の最低 3 か月の1/Cre の推移をみた 結果 投与前の Cre 値は平均 3.12mg/dl
で投与後 1 週間以内の最大値は平均 3.21mg/dl であった 前値より 25% 以上の上昇を認めた症例はなく 1/Cre の傾きが悪化した症例を認めなかった 結論 高度の腎不全患者に対する造影剤投与前の HF は十分な補液とアシドーシスの是正により CIN 発症予防効果を示す可能性がある 7. 杏林大学病院泌尿器科における透析腎癌の検討 杏林大学病院泌尿器科 : 板谷直維持透析中に発見された腎腫瘍に対し 腎摘除術 ( 開創術 腹腔鏡 ) を行い 病理学的に腎細胞癌と診断されたもの 25 例について検討を行った ( 鏡視下手術中開創手術へ移行したものは, 開創手術に含めた.) 男性 18 例 女性 7 例で年齢は 55.1±12.7 歳 術式は腹腔鏡 12 例で開腹手術が 13 例でした Grade1:2:3=6 例 14 例 3 例で不明が 2 例でした T 分類では T1a:T1b:T2:T3a=14 例 :4 例 :2 例 :3 例で不明が1 例でした 脈管浸潤の有無は有 : 無 =6 例 :18 例で不明が 1 例でした 手術時間は腹腔鏡 : 開腹手術 =293 分 :244 分で出血量は 229ml:301ml でした 術中の輸血は腹腔鏡 : 開腹手術 =2 例 :3 例でした 8. 通院透析困難症例 2 例から学ぶ医療と福祉の問題点 八王子東町クリニック : 塚本美帆高齢透析患者が要介護状態にいたった場合 通院透析を継続するためには様々な介護支援を利用するが 透析を継続することが困難になることが臨床の現場では指摘されていた. しかし 現実にどのように対応が行われているのか 行おうとしているかについてはほとんど報告されていない. 今回 多重合併症を伴った2 症例 ( 女性 76 歳 女性 85 歳 ) を経験し 医療と福祉の連携が難しいことが確認した. この2 症例から学んだ医療と福祉の連携 協働作業を阻害 推進する要因について報告したい. 9. 当院に於けるエンドトキシン測定のバリデーション検討 昭島腎クリニック : 加藤尚孝 目的 オンライン HDF や全自動コンソールの普及で 透析液水質管理は重要課題となった 今回当院でも ET 値測定のバリデーション検討をおこなった 方法 生化学バイオビジネス株式会社ウェルリーダー SK603 和光純薬工業株式会社トキシノメーターミニを使用し米国薬局方 ET 標準品 USP-RSE 生化学バイオビジネス株式会社 ET 標準品 CSE 和光純薬工業株式会社 CSE で希釈測定した 結果 USP-RSE CSE の値は両者共に相関が得られた ( ウェルリーダー SK603:r=0.9996) 透析液 RO 水の ET 値はトキシノメーターミニの値がウェルリーダー SK603 と比較して低めになる傾向がみられた
10. 透析装置の血液流量に誤差を与える要因 脱血回路内陰圧と流量誤差の関係について 杏林大学保健学部 : 島峰逸朗透析装置の監視項目に実血流量を監視する項目はなく ポンプの回転数から積算した値が血流量として表示されているだけである 本研究では脱血側回路を閉塞し陰圧をかけていく いわゆる脱血不良時に流量誤差が生じるかを実際に測定した また 脱血圧とピローの膨らみ具合を比較し 脱血不良を推測できるかを検討した 実験の結果 脱血不良によって流量誤差が生じ 陰圧が強くなっていくにつれて また設定流量が多いほど流量の誤差が多くなっていくことが示された 透析装置の監視項目においても 静脈圧警報は脱血回路の陰圧が-400~-500mmHg かかった時でもアラームが鳴らず ピローにおいても脱血不良がおこった時でもピローの厚さは数 mm しか変化せず 目視での監視には限界があることが示唆された これらのことから実血流量の誤差が生じたことを透析装置の監視項目から推測することは困難であり 透析における実血流量のモニタリングの必要性が示唆された 11. 最新エコーによる vascular access の評価 東京慈恵会医科大学第三病院臨床工学部 : 池田潤平当院は地域中核病院として 腎不全保存期から透析導入 及び透析導入後のケアに至る一貫した治療と診察を病態に応じて実践していることから 保存期から早期にシャントを作成する患者や 緊急導入を余儀なくされる患者など多岐に渡る その際 問題となるのは バスキュラーアクセス (VA:vascular access) であり 熟練した医師でも穿刺に難渋するケースや バスキュラーカテーテル挿入時の問題 穿刺後の血液の血管外漏出など リスクを伴うことが少なくない 今回 最新型の血管エコー装置を使用する機会を得て シャント作成後の血流評価や 穿刺部位の確定 針先の位置など VA 管理が容易で安全に実施できたので 従来型の装置との比較を交え報告する