四肢のしびれ モーニングレクチャー 2017 年 6 月 29 日 総合診療科廣谷茜
しびれ とは 中枢神経あるいは末梢神経感覚系の障害によっておこる自発性異常感覚 ピリピリ感 ジンジン感 何かが付着しているなどの訴えが多い
しびれの鑑別診断 感染症 ( ヘルヘ スウイルスなど ) 自己免疫疾患 ( 血管炎など ) 代謝 内分泌疾患 ( 糖尿病, 甲状腺機能低下症など ) 腫瘍 ( 脳腫瘍, 脊髄腫瘍, 癌性ニューロハ チーなど ) 循環器および血管障害 ( 脳卒中 ASOなど ) 外傷 ( 切断や圧迫, 絞扼性障害など ) 薬物や化学物質による中毒性障害蓄積症 ( アミロイト の沈着, カ ングリオシト, ホ ルフィリンの沈着など ) 遺伝 変性疾患 (Charcot-Marie-Tooth 病, 遺伝性感覚性ニューロハ チーなど ) 過換気症候群 ハ ニック発作 うつ病
しびれ診療で common な症例 1 脊髄疾患 2 末梢神経障害 考えるべきcommon disease 手のしびれ頚髄 頚椎症手根管症候群 ( 正中神経障害 ) 肘部管症候群 ( 尺骨神経障害 ) 足のしびれ主に胸髄以下の脊髄多発神経障害
しびれへのアプローチ Onset 発症様式 palliative/provocative 増悪 寛解因子 quality/quantity 症状の性質 ひどさ region/radiation 場所 放散の有無 associated symptom 随伴症状 time course 時間経過
Onset 発症様式 palliative/provocative 増悪 寛解因子 quality/quantity 症状の性質 ひどさ region/radiation 場所 放散の有無 associated symptom 随伴症状 time course 時間経過
Onset: 発症様式 急性や突発性ではないか time course: 時間経過 進行性や再発性ではないか 突然 ~ 急性発症 : 血管障害性 急性 ~ 亜急性発症 : 感染症 中毒 代謝性 免疫疾患 緩徐進行性 : 変性疾患 腫瘍性 突発再発性 : 機能性 ( てんかん ) 代謝性 急性再発性 : 自己免疫性 (MS MG など )
Onset 発症様式 palliative/provocative 増悪 寛解因子 quality/quantity 症状の性質 ひどさ region/radiation 場所 放散の有無 associated symptom 随伴症状 time course 時間経過
palliative/provocative: 増悪 寛解因子 姿勢や歩行との関連はないか 立位 後屈位で症状が出現し前屈位で症状軽快 腰部脊柱管狭窄症疑い 立位 後屈位で症状が出現し前屈位で症状悪化 腰椎椎間板ヘルニア疑い 咳や怒責による放散痛 脊髄病変 歩行で悪化 安静で回復 下肢動脈狭窄 歩行で悪化 しゃがんで回復 脊髄圧迫
Onset 発症様式 palliative/provocative 増悪 寛解因子 quality/quantity 症状の性質 ひどさ region/radiation 場所 放散の有無 associated symptom 随伴症状 time course 時間経過
quality/quantity: 症状の性質 ひどさ 何をしびれと言っているか しびれ ( 南山堂医学大辞典より ) 感覚過敏 (hyperethesia) や異常感覚 感覚鈍麻 (hypesthesia) 時に運動障害 ( 力が入らない状態 ) をも意味する日本語で 感覚過敏や異常感覚の場合に用いることが多い
quality/quantity: 症状の性質 ひどさ 何をしびれと言っているか Dysesthesia 異常感覚外的刺激に因らない自発的に生じる異常な感覚 Paresthesia 錯感覚外界から与えられた刺激とは異なって感じる Hyperesthesia 知覚過敏少しの刺激でも強い痛みを感じる Hypesthesia 知覚鈍麻 Anesthesia 無感覚 運動麻痺をしびれと表現する人もある
Onset 発症様式 palliative/provocative 増悪 寛解因子 quality/quantity 症状の性質 ひどさ region/radiation 場所 放散の有無 associated symptom 随伴症状 time course 時間経過
region: 場所 どんなしびれの分布なのか しびれの鑑別をすすめる上でしびれの範囲を特定することがとても大切です
region: 場所 どんなしびれの分布なのか 大脳病変 下位脳幹病変 今日の臨床サホ ート HP より
region: 場所 どんなしびれの分布なのか 渥美哲至 : しびれの基礎知識, JIM, 16(9), 700-704, 2006
region: 場所 どんなしびれの分布なのか 渥美哲至 : しびれの基礎知識, JIM, 16(9), 700-704, 2006
Onset 発症様式 palliative/provocative 増悪 寛解因子 quality/quantity 症状の性質 ひどさ region/radiation 場所 放散の有無 associated symptom 随伴症状 time course 時間経過
associated symptom: 随伴症状 随伴症状はないか 他の神経所見はないか 患者がしびれのみを訴えていても しびれ以外に異常な神経所見がないか ex> 痛みや運動障害 神経の機械的圧迫発熱や体重減少 貧血などの全身徴候 感染症 悪性疾患など 膀胱直腸障害 巧緻性障害 間欠跛行などは ( 無関係だと思っているために ) 聞かれなければ言わないかもしれない
既往歴 DM HT HL 喫煙歴:ASO 脳卒中先行感染 : ギラン バレー症候群過去に同様の症状がないか : 多発性硬化症甲状腺機能低下症 透析 : 手根管症候群 DM 過量飲酒 栄養不良 癌: 多発神経炎
中瀬浩史 : 医学のあゆみ Vol.251 : 781-787,2014 内服薬 分類 薬品名 頻度 (%) 抗悪性腫瘍薬白金製剤オキサリプラチン 100 シスプラチン 8 カルボプラチン タキサン類ハ クリタキセル 60 ト セタキセル 8 ビンカアルカロイト 製剤ビンクリスチン 63 4~6 ビンデシン 28 ビンブラスチン 10 ビノレルビン 10 プロテアソーム阻害薬ボルテゾミブ 38 核酸代謝阻害薬ネララビン 21 VEGF 阻害薬ベバシズマブ 10< HIV 治療薬 HIV 逆転写酵素阻害薬サニルブジン 17.30 HIV プロテアーゼ阻害薬アタザナビル硫酸塩 8
内服薬 分類抗てんかん剤血圧降下剤高脂血症用剤消化性潰瘍用剤ビタミン剤痛風治療剤抗菌剤抗真菌性抗生物質抗ウイルス剤抗原虫剤 一般名 フェニトイン ヒト ララジン塩酸塩ベシル酸アムロジピン アトロバスタチンシンバスタチンプラバスタチン シメチジン ピリト キシン塩酸塩 アロプリノールコルヒチン シプロフロキサシンリネゾリト ファンギゾン ホスカルネットラミブジン メトロニダゾール 厚生労働省重篤副作用疾患別対応マニュアルより抜粋
レジデントノート Vol.19 No.2( 増刊 ),2017,P265 図 11 しびれの診断フローチャート 1( 病態を探る ) より改変 主訴 : しびれ しびれの診断フローチャート 1 ~ 病態を探る ~ 症状の時間的変化と性状で病態を見分ける 突然 ~1 日以内の急性発症数時間 ~ 数日の緩徐発症緩解しない緩徐進行性再発緩解を繰り返す 血管性病変 or 発作 外傷 感染症 中毒 代謝 免疫疾患 変性疾患 腫瘍性疾患 慢性感染 慢性中毒 多発性硬化症 重症筋無力症
レジデントノート Vol.19 No.2( 増刊 ),2017,P265 図 11 しびれの診断フローチャート 1( 病態を探る ) より改変 しびれの診断フローチャート 1 ~ 病態を探る ~ 随伴症状 患者背景から病態を見分けるヒントを得ておく 痛み 運動障害 全身徴候神経徴候以外の症状 原則機械的圧迫例外 : 脊髄癆 多発性硬化症 帯状疱疹 発熱 貧血 体重減少 悪性疾患 感染症 生活習慣 ( 飲酒 ) 薬物職業 ( 化学薬品 )
レジデントノート Vol.19 No.2( 増刊 ),2017,P266 図 12 しびれの診断フローチャート 2( 病変部位を探る ) より改変 主訴 : しびれ しびれの診断フローチャート 2 ~ 病変部位を探る ~ 左右対称性? NO 脳 脳幹 脊髄性末梢神経 YES 障害領域と正常領域の境界 2 つ 末梢性 多発神経障害あるいは脊髄性 1 つ 中枢性
大脳 脳幹病変 大脳病変 下位脳幹病変 今日の臨床サホ ート HP より
レジデントノート Vol.19 No.2( 増刊 ),2017,P266 図 12 しびれの診断フローチャート 2( 病変部位を探る ) より改変 主訴 : しびれ しびれの診断フローチャート 2 ~ 病変部位を探る ~ 左右対称性? NO 脳 脳幹 脊髄性末梢神経 YES 障害領域と正常領域の境界 2 つ 末梢性 多発神経障害あるいは脊髄性 1 つ 中枢性
中枢性と末梢性の感覚障害 レジデントノート Vol.19 No.2( 増刊 ),2017,P267 図 3 中枢性 ( 長経路性 ) と末梢性 ( 髄節性 ) の感覚障害
デルマトームの分布 病気がみえる Vol.7 脳 神経より
レジデントノート Vol.19 No.2( 増刊 ),2017,P266 図 12 しびれの診断フローチャート 2( 病変部位を探る ) より改変 しびれの診断フローチャート 2 左右対称性? YES ~ 病変部位を探る ~ 多発神経障害あるいは脊髄性 深部腱反射 低下 亢進 主に脊髄性 下垂足下肢 > 上肢末梢から体幹に上行 YES 靴下 手袋型知覚障害 NO YES NO 確定ではないが多発神経障害として扱う 多発神経障害
障害部位による分類 http://www.slideshare.net/masatoshimizu37/4-52041147
多発神経障害 末梢神経が障害されたときに出現する臨床症状を総称する疾患概念であり その原因としてはさまざまな疾患が含まれる 両側ほぼ対称に出現し 末梢ほど障害が強く いわゆる glove and stoking 状分布を示す 原因として多いのは DM アルコール 尿毒症 ビタミン B1,6,12 の欠乏 薬剤性など 慢性の経過が多いが 急性の場合 GBS に注意
多発神経障害 足部の感覚障害が最初の徴候となることが多い 感覚障害は 感覚鈍麻 感覚消失 錯感覚 異常感覚 知覚過敏のいずれであってもよい その後足部での全感覚消失が起こり中枢側へ広がっていく 膝にまで障害が起こると 手指の障害も起こる その結果 glove and stoking 状 となる 腱反射減弱
多発神経炎の原因 ; DANG THERAPIST( ムカつく療法士 ) Diabetes: 糖尿病 Alcohol abuse: アルコール多量摂取 Nutrition deficiensy: 栄養障害 (Vit.B1,6,12) Guillain-Barre syndrome: ギラン バレー Tumor-related: 腫瘍随伴症候群 Hereditary disorders: 遺伝性 (Charcot-Marie-Tooth 等 ) Endocrine: 内分泌 ( 甲状腺 末端肥大症 ) Renal: 尿毒症 Amyloidosis: アミロイト ーシス Porphyria: ホ ルフィリア Infection and Immune-mediated:AIDS 梅毒 血管炎 Sarcoidosis: サルコイト ーシス Toxin: 毒物と薬物
ギラン バレー症候群 自己免疫機序による急性炎症性ニューロハ チー 進行性四肢筋力低下( 左右対称 ) が主訴になるが しびれが先行することも多い 約 70% で発症前 4 週間以内に先行感染を有する 感覚障害は運動障害に比べて軽度 腱反射は低下することが多い 様々な脳神経麻痺を呈する 神経伝導検査と 疾患の除外目的に髄液検査 日本神経学会 ギラン バレー症候群 フィッシャー症候群診療カ イト ライン 2013
脳卒中によるしびれ 突然発症の代表的疾患 片麻痺 脳神経所見の異常などを伴う場合 診断は容易 問題になるのは ( そして一番気になるのは ) しびれのみ の脳卒中
脳卒中によるしびれ PSS の特徴について検討した論文 clinical study of 99patients with pure sensory stroke. J neurol. 2005 252(2):156-62 脳卒中の 4.7% 脳梗塞の 5.4% ラクナ梗塞の 17.4% 単肢のみの PSS はほとんどない! ほとんどの場合 口周囲のしびれを伴う 実際には単肢の PSS の症例報告はある 大切なのは 血管リスクの既往歴と 突然発症 という病歴!
渥美哲至 : しびれの基礎知識, JIM, 16(9), 700-704, 2006
まとめ 問診はOPQRSTを意識すると漏れが少ない 病態と病変部位から原因へアプローチ 既往歴と内服歴も大切な情報 急性の多発神経炎ではGBSに注意 突然発症のしびれはPSSも考慮する