Ⅰ. 地域づくりをベースにした観光振興への取り組み 長期的な地域づくりを行い 内発的な地域資源の活用を促進 状況 1: 多様な観光資源が 観光客を惹きつける阿蘇地域平成 14 年当初 年間約 1,700 万人から 1,900 万人ものお客様が阿蘇地域へ訪れるにもかかわらず 商店街は寂れつつあり 農村集落も少子高齢化の波が押し寄せていた 課題 1: 観光が地域振興に繋がっていない このことは いかに観光客が多くても 地域振興には繋がっていかないことを露呈していた 課題 2: 時代の変化 阿蘇地域においても旅行の個人化 マイカーでの来訪の増加等 旅行形態の変化により 来訪者の特性やニーズが多様化し 地域資源の再認識や農村や商店街の魅力の創造が必要になっていた 25
1. 地域側の視点に立った観光振興 ( 地域振興 ) について 長期的な地域づくりを行い 内発的な地域資源の活用を促進 滞在交流は 地域ツーリズム型観光 観光による地域づくり 観光関係者が 観光側からの視点で地域を開発し そこに数多くの人々を送り込み 経済的な波及効果をもたらすこと ( 主は観光関係者 ) 地域づくりによる観光商店街や農村などの地域住民が 自分たちの暮らしの中で 楽しみながら地域づくりや自然資源の活用を行うこと 商店街であれば 特産品を活かした商品開発や食べ歩きなどのまちめぐり 農村は地産地消の田舎料理の提供や歴史や文化を案内するむらめぐり その結果として 魅力的な地域が生まれ そこに人が集まり 経済的な波及効果をもたらし 観光にも結びついていく ( 主は地域住民 ) 26
2. 地域側の視点に立った観光振興 ( 地域振興 ) について 長期的な地域づくりを行い 内発的な地域資源の活用を促進 阿蘇地域は 滞在型観光をめざしている ポイント 1. 滞在型は 観光スポットめぐりだけではなく 地域 ( 自然 農村 商店街等 ) を活用する 阿蘇の自然空間の活用や地域づくりを進め 農村であれば 民泊 農村レストラン 農業体験などを組み合わせて 地域に滞在しながら エコツーリズムやグリーンツーリズム タウンツーリズムがネットワークしていく ポイント 2. 実践する地域住民を育てる 地域づくりを実践するのは あくまでも地域住民 地域に人が育てば その人達が動き出し 地域に活動が波及していく効果が期待できる これらの地域をつなぐのが 循環バスなどの公共交通等 27
Ⅱ. 阿蘇広域連携プロジェクト : スローな阿蘇づくり なぜ今 スローな阿蘇 なのか 観光ポイントを飛び回る旅からゆっくりと時間を過ごすスローな旅へ これまでの阿蘇の観光は マイカーや観光バスを使い旅行雑誌に掲載されている有名観光地を飛び回る旅が主流 阿蘇くじゅう国立公園の再認識や世界的なカルデラに住む誇りを取り戻し 阿蘇の自然や歴史 文化 そして食 暮らしなどツーリズムの資源となる地域の良さを味わったり 地元の人たちとの交流は ゆっくり歩く 自転車で走る程度のスローな旅にギヤチェンジ 阿蘇は ゆっくり過ごすところ 滞在交流の促進 28
1. 事業の背景 1 阿蘇の現状と課題 その 1 ( 平成 15 年構想策定時 ) 阿蘇の潜在能力 阿蘇地域は 1 市 6 町村で阿蘇くじゅう国立公園を擁し 約 1,200 平方 km の面積に 7 万 5 千人が住む自然 歴史 文化に恵まれた地域 阿蘇の二大資源は自然と温泉 自然は 阿蘇五岳を中心とした 周囲約 128km にも及ぶ世界最大級のカルデラとカルデラを囲む外輪山 広大な草原や森林などの豊かな自然に抱かれた美しい地域であり 各地の湧水も豊富 温泉は 全国的にも有名になった黒川温泉をはじめ 内牧温泉や杖立温泉 垂玉 地獄温泉など 夏目漱石や与謝野鉄幹 晶子などの文豪たちにも愛されました 平成 14 年の熊本県観光統計では年間約 1,889 万人 ( 平成 1 9 年は 1,864 万人 ) もの観光客が訪れる県内はもとより 九州でも最大の観光地となっています また 旅行スタイルの変化に伴い 阿蘇地域へのマイカー旅行が急増している状況です 29
1. 事業の背景 2 阿蘇の現状と課題 その 2 ( 平成 15 年構想策定時 ) 地域の抱える課題 課題 1: 広域回遊 観光施設や見どころが単体として存在している現在の観光のあり方では 農村や商店街など地元地域への大きな波及効果を生み出すことが難しい状況です 観光地を含め阿蘇地域全体を回遊できるシステムを構築できれば 地元への経済効果を拡大することができると考えられます 課題 2: 観光客のニーズ変化 これまで 阿蘇山火口 草千里 レジャー施設 温泉 物産館 食事処等の有名な立ち寄り所に観光客が訪れていました これからもこの傾向は続くと考えられますが 阿蘇へ訪れる人々は多様化し 都会の普段の生活ではできない農村の暮らしそのものを体験し 地元の人と交流するニーズも高まっています 阿蘇地域でも このニーズにこたえられる地域資源の再認識や農村 商店街の魅力の創造が必要になりました 課題 3: 幹線道路の渋滞 土 日休日は幹線道路である国道 5 7 号線は大渋滞になり 渋滞を回避するための 抜け道マップ が作成されるほどです 平成 15 年 10 月には南阿蘇の西原村 ~ 久木野村間に俵山トンネルが開通しましたが ピーク時は地域内の交通渋滞も見られるほどです 課題 1~3 の複合した結果として 課題 4: ひとつの地域としての 阿蘇 のイメージ不足 阿蘇地域は平成 17 年 2 月に町村合併が終わり 阿蘇 12 町村から 1 市 6 町村になりましたが 阿蘇地域は広く 観光資源も豊かであるがゆえに 阿蘇地域が一体になった魅力の構築と情報発信 が不足していました しかし 阿蘇地域が 1 市 6 町村の個性を連携させれば 大きな魅力ある地域として 強い求心力を持つはずです 30
2. 課題解決のため ( 平成 15 年構想策定時 ) 課題を解決するための 3 つの 旅のスタイル これらの課題を解決するためには 阿蘇が持つ多様な地域資源 ( 素顔の阿蘇 ) をアピール ( 阿蘇遺産 ASO 大陸等 ) しながら 阿蘇のありのままを活かす環境共生型の新しい観光 交流の仕組み スローな阿蘇づくり が必要となってきました 課題 1: 広域回遊 ツーリズムと回遊のコースづくり ゆっくり町を歩き 自転車で農村集落や田園地帯 史跡などの観光地も回る 大自然に触れる そのような阿蘇ツーリズムや回遊のコースをつくります 課題 2: 観光客のニーズの変化 もてなしの人づくり 地元の人とおしゃべりしながら お茶やお菓子をほおばる 農家や牧場に立ち寄ったり いろいろな体験をする もてなしをしてくれる人材を発掘したり 人材を育成し 交流と体験のできる体制を整えます 課題 3: 幹線道路の渋滞 回避交通体系づくり JR 豊肥本線沿線にパークアンドレイルライドの採用 サイクルトレインや町村を結ぶ循環バスの運行など公共の交通機関で阿蘇地域を訪れることのできる仕組みをつくります
3. 事業概要 スローな阿蘇づくり とは ( 平成 15 年構想策定時 ) 3 つの新しい 旅のスタイル を実現させるために さまざまな取り組みを行ないます 回遊のコースづくり ( 阿蘇カルデラツーリズム ) もてなしの人づくり 交通体系づくり タウンツーリズム 商店街の魅力づくりや町なか散策の開発 グリーンツーリズム 滞在や交流型の農村体験の開発 エコツーリズム 自然案内人が案内する自然体験の開発 サイクリングや歩き 農村の集落や田園空間 町の中をのんびりと走る自転車コースや歩きの開発 待ち受け機能 ( ふるまい 交流 ) 地元農家では手作りのお漬物やお菓子で訪れた人をもてなしてくれます 商店街では食べ歩き散策ツアーなど 地元で評判のおいしい商品を試食して歩きます 案内人 阿蘇の自然を案内する自然案内人や農村集落の案内人 町なか散策の案内人が素顔の阿蘇を紹介します パークアンドライド 渋滞緩和のために JR 豊肥本線の駅で自動車を駐車し 列車に乗り換えたり 阿蘇地域内の駐車場で循環バスに乗り換えるなどの公共交通機関の利用開発 サイクルトレインの運行 自転車も一緒に乗ることのできる JR 列車と 南阿蘇鉄道列車の運行 循環バスの運行 阿蘇カルデラの阿蘇谷 南郷谷や北外輪の小国郷 東部高原や南外輪を走る循環バスの運行