ン投与を組み合わせた膵島移植手術法を新たに樹立しました 移植後の膵島に十分な栄養血管が構築されるまでの間 移植膵島をしっかりと休めることで 生着率が改善することが明らかとなりました ( 図 1) この新規の膵島移植手術法は 極めてシンプルかつ現実的な治療法であり 臨床現場での今後の普及が期待されます

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3 スライディングスケール法とアルゴリズム法 ( 皮下注射 ) 3-1. はじめに 入院患者の血糖コントロール手順 ( 図 3 1) 入院患者の血糖コントロール手順 DST ラウンドへの依頼 : 各病棟にある AsamaDST ラウンドマニュアルを参照 入院時に高血糖を示す患者に対して 従来はスライ

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

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日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

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化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

News Release 報道関係各位 2015 年 6 月 22 日 アストラゼネカ株式会社 40 代 ~70 代の経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんと 2 型糖尿病治療に従事する医師の意識調査結果 経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんは目標血糖値が達成できていなくても 6 割が治療

犬の糖尿病は治療に一生涯のインスリン投与を必要とする ヒトでは 1 型に分類されている糖尿病である しかし ヒトでは肥満が原因となり 相対的にインスリン作用が不足する 2 型糖尿病が主体であり 犬とヒトとでは糖尿病発症メカニズムが大きく異なっていると考えられている そこで 本研究ではインスリン抵抗性

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既定の事実です 急性高血糖が感染防御機能に及ぼす影響を表 1 に総括しました 好中球の貧食能障害に関しては ほぼ一致した結果が得られています しかしながら その他の事項に関しては 未だ相反する研究結果が存在し 完全な統一見解が得られていない部分があります 好中球は生体内に侵入してきた細菌 真菌類を貧

<4D F736F F D208DC58F4994C581798D4C95F189DB8A6D A C91E A838A838A815B83588CB48D EA F48D4189C88

平成14年度研究報告

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

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2005年勉強会供覧用

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

ⅱ カフェイン カテキン混合溶液投与実験方法 1 マウスを茶抽出液 2g 3g 4g 相当分の3つの実験群と対照群にわける 各群のマウスは 6 匹ずつとし 合計 24 匹を使用 2 実験前 8 時間絶食させる 3 各マウスの血糖値の初期値を計測する 4 それぞれ茶抽出液 2g 3g 4g 分のカフェ

血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

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(Microsoft Word \203v\203\214\203X\203\212\203\212\201[\203X\216\221\227\2772.doc)

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

高齢者の筋肉内への脂肪蓄積はサルコペニアと運動機能低下に関係する ポイント 高齢者の筋肉内に霜降り状に蓄積する脂肪 ( 筋内脂肪 ) を超音波画像を使って計測し, 高齢者の運動機能や体組成などの因子と関係するのかについて検討しました 高齢男性の筋内脂肪は,1) 筋肉の量,2) 脚の筋力指標となる椅子

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

説明書

《印刷用》ためしてガッテン:糖尿病が完治する!? すい臓を復活させる薬

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血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

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( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

シトリン欠損症説明簡単患者用

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

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消化器病市民向け

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H26_大和証券_研究業績_C本文_p indd

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

糖尿病がどんな病気なのか 病気を予防するためにどんな生活が望ましいかについて解説します また 検診が受けられるお近くの医療機関を検索できます 健康診断の結果などをご用意ください 検査結果をご入力いただくことで 指摘された異常をチェックしたり 理解を深めたりすることができます 病気と診断され これから

病気のはなし48_3版2刷.indd

第三問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには を ( ) 内に記入してください 1( ) インスリン以外にも血糖値を下げるホルモンはいくつもある 2( ) ホルモンは ppm( 百万分の一 ) など微量で作用する 3( ) ホルモンによる作用を内分泌と呼ぶ

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

医療法人将優会 将優会 クリニックうしたに

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が


法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

学位論文審査結果報告書

別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 商品名 : イチョウ葉脳内 α( アルファ ) 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績による食経験の評価 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) 弊社では当該製品 イチョウ葉脳内 α( アルファ ) と同一処方の製品を 200

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婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

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スライド 1

糖尿病と治療の目的 糖尿病とは 糖尿病とは 体内でインスリンというホルモン p.3参照 が不足したり はたらきが悪くなったりすることによって 血液中に含まれる糖 血糖 の値が高い状態が続く病気です 糖尿病 患者さんの 場合 健康な 人の場合 インスリンによって糖が細胞に取り込まれ 血液中の糖が使われ

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

宅ベースでの 10 週間のトレーニング ウォーキングのみ 筋内脂肪指標 (a.u.) 80 * ウォーキング群 ウォーキング + レジスタンス運動 * ウォーキング + レジスタンス群 トレーニング前トレーニング後 トレーニング前後の筋内脂肪指標の低下率

32 小野啓, 他 は変化を認めなかった (LacZ: 5.1 ± 0.1% vs. LKB1: 5.1 ± 0.1)( 図 6). また, 糖新生の律速酵素である PEPCK, G6Pase, PGC1 α の mrna 量が LKB1 群で有意に減少しており ( それぞれ 0.5 倍,0.8 倍

No. 2 2 型糖尿病では 病態の一つであるインスリンが作用する臓器の慢性炎症が問題となっており これには腸内フローラの乱れや腸内から血液中に移行した腸内細菌がリスクとなります そのため 腸内フローラを適切に維持し 血液中への細菌の移行を抑えることが慢性炎症の予防には必要です プロバイオティクス飲

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

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標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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インプラント周囲炎を惹起してから 1 ヶ月毎に 4 ヶ月間 放射線学的周囲骨レベル probing depth clinical attachment level modified gingival index を測定した 実験 2: インプラント周囲炎の進行状況の評価結紮線によってインプラント周囲

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

4. 発表内容 : [ 研究の背景 ] 1 型糖尿病 ( 注 1) は 主に 免疫系の細胞 (T 細胞 ) が膵臓の β 細胞 ( インスリンを産生する細胞 ) に対して免疫応答を起こすことによって発症します 特定の HLA 遺伝子型を持つと 1 型糖尿病の発症率が高くなることが 日本人 欧米人 ア

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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糖尿病は 初めは無症状で経過しますが 血糖値の高い状態が長く続くと口渇 多飲 多尿 体重減少 倦怠感などの症状がみられます 糖尿病は自覚症状が乏しいので 血糖値がある程度改善すると 通院しなくなる人がいます 血液検査を行わなければ糖尿病の状態を知ることはできないので 自覚症状だけに頼ってはいけません

018_整形外科学系


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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

糖尿病の薬について 糖尿病とうまく付き合うために薬を知ろう

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

セッション 6 / ホールセッション されてきました しかしながら これらの薬物療法の治療費が比較的高くなっていることから この薬物療法の臨床的有用性の評価 ( 臨床的に有用と評価されています ) とともに医療経済学的評価を受けることが必要ではないかと思いまして この医療経済学的評価を行うことを本研

上原記念生命科学財団研究報告集, 28 (2014)

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

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ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

疫学研究の病院HPによる情報公開 様式の作成について

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報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

報道発表資料 2007 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 ヒト白血病の再発は ゆっくり分裂する白血病幹細胞が原因 - 抗がん剤に抵抗性を示す白血病の新しい治療戦略にむけた第一歩 - ポイント 患者の急性骨髄性白血病を再現する 白血病ヒト化マウス を開発 白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性が

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

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報道機関各位 平成 25 年 12 月 12 日 東北大学未来科学技術共同研究センター (NICHe) 東北大学大学院医学系研究科 短期間の絶食とインスリン投与が膵島移植の効果を増大する - 糖尿病治療のための細胞移植の成績向上へ向けて - 研究概要 東北大学未来科学技術共同研究センター ( 大学院医学系研究科兼務 ) の後藤昌史教授 大学院医学系研究科先進外科の大内憲明教授および神保琢也医注 1 師らのグループは 糖尿病を対象とする細胞移植治療である膵島移植において 移植後の短期間の絶食とインスリン投与が膵島移植の効果を劇的に増大することを明らかにしました これまでの研究により 移植された膵島細胞への栄養血管が完成するまでに約 2 週間かかることが分かっていました そこで この栄養や酸素が十分に行き渡らない時期の膵島細胞を疲弊させないことが移植成績向上へ向けて重要であると考え 短期間の絶食とインスリン投与を組み合わせる新しい膵島移植手術法を考案し その効果を初めて明らかにしました この結果は 今後の膵島移植治療の成績向上へ向けた戦略を構築する上で極めて有用な知見になると期待されます この研究成果は 米国の国際学術誌 Transplantation の電子版に11 月 2 5 日 ( 米国東部時間 ) に掲載されました 発表のポイント 膵島移植の様な細胞移植治療は 全身麻酔や開腹手術を一切必要とせず ごく少量の細胞を点滴の要領で注射することで済むため 次世代の画期的移植医療として大きな注目を集めています しかし 移植後の移植細胞の生着率の改善が重要な課題でした 今回の研究により 細胞移植治療の効果が臓器移植治療より弱い一因として 移植直後の栄養血管喪失に伴う疲弊が関与していることが初めて明らかになりました さらに 移植膵島疲弊への対策として 短期絶食とインスリ

ン投与を組み合わせた膵島移植手術法を新たに樹立しました 移植後の膵島に十分な栄養血管が構築されるまでの間 移植膵島をしっかりと休めることで 生着率が改善することが明らかとなりました ( 図 1) この新規の膵島移植手術法は 極めてシンプルかつ現実的な治療法であり 臨床現場での今後の普及が期待されます 研究内容 膵島移植は 重症 1 型糖尿病に対する治療法として既に臨床応用が開始されている この新しい治療法は 全身麻酔や開腹手術を一切必要とせず 点滴の要領で短時間に終えることが可能である ( 図 2) そのため 従来行われてきた膵臓移植などの臓器移植療法と比べ 安全 簡便 低侵襲などの利点が着目され 次世代の中心的移植医療になると大きく期待されているが まだまだ克服すべき課題も多い その課題の一つが移植膵島細胞の生着不良である 膵臓から膵島を回収する操作により 移植直後の膵島は細胞周囲マトリックス注 2 や 栄養と酸素を供給するための血管を失っている 移植膵島周囲への血管構築には約 2 週間を要することや 高血糖状態が膵島の細胞量減少や機能減弱をもたらすことが報告されており 栄養血管を持たず酸素もエネルギーも供給されない環境下で 血糖変動による仕事負荷や高血糖自体に起因 3 する糖毒性注に曝されることで 移植膵島が疲弊することは十分想定される そこで本研究では 膵島移植後の短期絶食とインスリン投与の組み合わせが移植膵島の生着へ及ぼす影響に関して検証を行った まず 薬剤により糖尿病を発症させたラットを作成し つぎに 臨床移植治療で行われている方 4 法と同様に カテーテルを挿入した門脈注から肝臓に膵島を移植した ( 経門脈的同系膵島移植 ) その後 以下の3つの異なる療法を施行し それらの効果を比較した (1) 血糖値を適正値まで下げることで膵島への糖毒性を軽減するための移植後インスリン強化療法 食事摂取時の血糖値上昇による仕事負荷を軽減するための短期絶食 および 高カロリー輸液による中心静脈栄養注 5 を組み合わせた方法 (Resting 群 ) (2) インスリン強化療法のみで食事制限を行わない自由摂食 (Insulin 群 ) (3) 移植のみで自由摂食 (Control 群 ) の 3 群間で 移植膵島の生着に関し比較検証を行った Resting 群 Insulin 群の糖尿病治癒率は Control 群に比べ有意に高値を示

した 移植後の血糖推移 糖尿病治癒率においてはResting 群 Insulin 群ともにほぼ同等の改善率を示したが 耐糖能はResting 群 Control 群間にのみ有意差を認めた また移植後の肝内グラフト残存量注 6 の指標である肝内インスリン量においても耐糖能と同様 Resting 群 Control 群間にのみ有意差を認め Resting 群はInsulin 群よりも移植膵島の残存率が高いことが判明した注 ( 図 3) さらに膵島機能の指標であるSUIT index 7 においても Resting 群 Control 群間にのみ有意な差を認め Resting 群はInsulin 群よりもグラフト機能を改善することが明らかとなった ( 図 4) Resting 群においては 酸化ストレスのマーカーが他群より低値を示し Restingプロトコールの奏功機序の一つとして移植後酸化ストレスの制御が示唆された 本研究により インスリン療法と短期絶食によるグラフト負荷の軽減を組み合わせる Resting 法は インスリン療法単独よりも強いグラフト保護効果を有することが初めて明らかとなった 一回の移植において十分なグラフト量の確保が困難である膵島移植において 新規膵島移植手術法である Resting 法は移植成績向上をもたらす有用な手法と考えられる 本研究は文部科学省科学研究費基盤研究 B 科学技術振興機構地域産学官共同研究拠点整備事業 (TAMRIC) および東北大学大学院医学系研究科共通機器室によってサポートされました

図 1. 新しい膵島移植治療法の概念図 図 2. 経門脈的同系膵島移植の説明図

図 3. 膵島移植後 35 日間の観察期間終了後の肝内インスリン量 移植後の肝内グラフト残存量の指標である肝内インスリン量は Resting 群 Control 群間にのみ有意差を認め また Resting 群では Insulin 群よりもグラフト残存量が改善する傾向を認めた (13.2 ± 3.8 vs. 7.0 ± 1.5 vs. 3.5 ± 1.1 ng/ieqs)( P =0.03) Resting 群 : インスリン強化療法および短期絶食を組み合わせた群 Insulin 群 : インスリン療法のみで自由摂食とする群 Control 群 : 移植時に絶食もインスリン療法も行わず自由摂食とする群 (Transplantation, Jimbo T, Goto M et al. より抜粋 )

図 4. 膵島移植後 35 日目における the secretory unit of islet transplant objects (SUITO) index 移植後 35 日目における血液サンプル解析により グラフト機能の指標である SUITO index において Resting 群 Control 群間にのみ有意差を認め また Resting 群では Insulin 群よりもグラフト機能が改善する傾向を認めた (13.2 ± 2.3 vs. 8.1 ± 1.6 vs. 3.6 ± 1.1)( P = 0.002) Resting 群 : インスリン強化療法および短期絶食を組み合わせた群 Insulin 群 : インスリン療法のみで自由摂食とする群 Control 群 : 移植時に絶食もインスリン療法も行わず自由摂食とする群 (Transplantation, Jimbo T, Goto M et al. より抜粋 )

用語説明 注 1. 膵島 : 膵臓の中にあるホルモンを分泌する細胞の集団 インスリンを産生するベータ細胞が含まれる 健常人の場合 一つの膵臓内に約 100 万個の膵島が存在する 注 2. 細胞外マトリックス : 生体を構成する体細胞の外側にある線維状や網目状の構造体 細胞と細胞の間を満たし 生体組織を支持するだけでなく 細胞の増殖 分化 形質発現の制御にも重要な役割を果たしている 注 3. 糖毒性 : 特に糖尿病のコントロールが悪いときに起こりうる病態で 高血糖自体が膵臓 β 細胞のインスリン分泌能力を低下させ インスリン抵抗性を高めてしまうことにより さらなる高血糖を招いてしまうこと 注 4. 門脈 : 一般に 消化管を経由した血液が集まって肝臓へ流れこむ部分の血管 ( 肝門脈 ) を指す 消化管で吸収された栄養を肝臓へ運ぶ 注 5. 中心静脈栄養 : 食事の経口摂取が困難あるいは不十分な患者に対して 生命維持に必要な糖質 脂肪 アミノ酸 ビタミンおよび微量元素を含んだ栄養液を中心静脈内に直接投与する療法 胃や大腸を切除する際などにごく一般医療として広く普及しており 安全性も確立している 注 6. 肝内グラフト残存量 : 門脈経由で移植した移植細胞 ( グラフト ) がどのくらい残っているかを示す指標 注 7.SUIT index(secretory Unit of Islet Transplant Objects index):2 型糖尿病患者の膵島機能や 臨床膵島移植における膵島機能の指標として用いられている指数であり 健常人の膵島機能が 100 となるように設定されている

論文題目 A novel resting strategy for improving islet engraftment in the liver ( 肝内へ移植された膵島の生着を促進する画期的手法の開発 ) 掲載雑誌 :Transplantation ( お問い合わせ先 ) 東北大学未来科学技術共同研究センター ( 東北大学大学院医学系研究科先進細胞移植学兼務 ) 教授後藤昌史 ( ごとうまさふみ ) 電話番号 :022-717-7895 E-mail: goto@niche.tohoku.ac.jp gotokichi@aol.com ( 報道担当 ) 東北大学大学院医学系研究科 医学部広報室講師稲田仁 ( いなだひとし ) 電話番号 :022-717-7891 E-mail: pr-office@med.tohoku.ac.jp