市内遺跡10

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○現説資料 2回目作成中 その3


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昼飯大塚現説資料 indd

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3. 市街化調整区域における土地利用の調整に関し必要な事項 区域毎の面積 ( 単位 : m2 ) 区域名 市街化区域 市街化調整区域 合計 ( 別紙 ) 用途区分別面積は 市町村の農業振興地域整備計画で定められている用途区分別の面積を記入すること 土地利用調整区域毎に市街化区域と市街化調整区域それぞ


はじめに むつのくにほねでらむら 一関市厳美町本寺地区は 中尊寺に残される 陸奥国骨寺村 え絵 ず 図 の現地として著名で きょうあり 日本の原風景 ともいえる農村景観を今に伝えています 平安時代以来 中尊寺経 ぞうしょう蔵の荘 えんあづまかがみ園であったことが 中尊寺の古文書群や鎌倉幕府が編纂した

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膳所城遺跡 記者発表資料(2012.7)

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写真 1 東上空より調査地を望む ([ 大阪文化財研究所 2013] に一部加筆 ) N : 図 2 周辺の遺跡の位置 ([ 大阪文化財研究所 2013] に一部加筆 ) 2

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建築基準法第 43 条第 2 項第 2 号の規定による許可の基準 ( 包括同意基準 ) 平成 30 年 9 月 28 日 加古川市都市計画部建築指導課

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73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

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稲毛海岸5丁目地区

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104 E 106 E ラオスタイ 14 N 14 N アンコール遺跡群 シェムリアップ サンボー プレイ クック遺跡群 12 N 12 N プノンペン ベトナム 10 N 10 N km 104 E 106 E

(1) 当該団体が法人格を有しているか 又は法人格のない任意の団体のうち次の1~2の要件を全て満たすもの 1 代表者の定めがあること 2 団体としての意思決定の方法 事務処理及び会計処理の方法 並びに責任者等を明確にした規約その他の規定が定められていること (2) 関係市町村との協議体制を構築してい

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防犯灯 防犯カメラと併せて設置し 次の1~3すべてに該当する防犯灯が補助対象となります 1 防犯カメラの視認性を向上させる照度 ( 防犯カメラから4メートル先の歩行者の行動などが認識できる明るさがあること 0.24ルクス以上 ) を確保できるもの 2 防犯カメラと同一の支柱に設置 3 光源を防犯カメ

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茅野市教育委員会市内遺跡10 市内遺跡 10 - 平成 27 年度埋蔵文化財発掘調査報告書 - 2017.3 茅野市教育委員会

市内遺跡 10 - 平成 27 年度埋蔵文化財発掘調査報告書 - 2017.3 茅野市教育委員会

序 文 茅野市は長野県南東部に位置する風光明媚な高原都市です 東に八ヶ岳連峰 西に赤石山脈から続く山脚 北に霧ヶ峰山塊を擁し 霧ヶ峰の南麓からは遠く富士山を望むことができます 当市には特別史跡尖石遺跡 史跡上之段遺跡や駒形遺跡をはじめとする多くの縄文時代の遺跡 更には国宝土偶 縄文のビーナス 仮面の女神 を保有するなど 縄文の里 として全国にその名を知られています それらの縄文遺跡にかくれがちであった弥生時代から江戸時代の遺跡も 市街地周辺における近年の発掘調査の蓄積によって各時代の生活の様相が明らかになりつつあります 当市では市内各所で行われる各種開発事業と遺跡の保護 調整を図るために 国庫補助事業による試掘調査ならびに本調査等を進めてきました その中で平成 27 年度に実施した 7 件の調査成果が本報告書にまとめられています 報告する発掘調査は いずれも遺跡の一部を対象に行われた小規模なものですが このような調査を地道に繰り返し行うことで 遺跡の広がりやその性格が解き明かされていくものと期待されます 最後になりましたが 発掘調査にご理解とご協力を賜りました地権者ならびに事業関係者の皆さま 調査に従事された作業員の皆さまに心からお礼を申し上げます 平成 29 年 3 月 茅野市教育委員会 教育長山田利幸

例 言 1 本書は長野県茅野市が平成 28 年度に国宝重要文化財等保存整備費補助金を受け作成した 平成 27 年度の各種開発事業に伴う市内遺跡発掘調査報告書である 2 本書に掲載した遺跡は 平成 27 年 4 月 1 日から平成 28 年 3 月 31 日までに調査した遺跡である 3 整理作業ならびに報告書作成は 平成 28 年 12 月 1 日から平成 29 年 2 月 28 日に実施した 4 各遺跡の所在地は本文中に記した 5 本調査に係わる出土品 諸記録は茅野市尖石縄文考古館で収蔵 保管している 6 発掘調査から報告書作成までに 長野県教育委員会事務局文化財 生涯学習課 長野県考古学会 諏訪考古学研究会の諸氏からご指導 ご助言を頂いた 記して感謝する次第である 凡 例 1 遺跡番号に枝番を付してあるものは 茅野市遺跡台帳の枝番であり 発掘届け受け付け順となっているが 本報告においては 実際の調査順としたため 順番が前後するものがある 2 本書における挿図の縮尺は 挿図中に記している 3 挿図における遺物の略号は以下のとおりである 1 縄 縄文土器 2 弥 弥生土器 3 土 土師器 4 須 須恵器 5 黒 黒色土器 6 灰 灰釉陶器 7 緑 緑釉陶器 8 青 青磁 4 土層断面図のレベルで未記入のものは 現地表面のレベルを基に任意で設定している 目 次 第 1 章市内遺跡発掘調査等事業の概要 1 第 1 節茅野市における埋蔵文化財保護の概要 1 第 2 節平成 27 年度事業の概要 1 第 3 節調査の体制 1 第 2 章試掘調査 3 第 3 章本調査 13 抄録 19

第 1 章市内遺跡発掘調査等事業の概要 第 1 節 茅野市における埋蔵文化財保護の概要 平成 29 年 3 月現在 茅野市における周知の埋蔵文化財包蔵地 ( 以下 遺跡とする ) は 348 箇所である 遺跡内およびその隣接地で開発行為が計画された場合 事業者と市教育委員会との間で埋蔵文化財保護に関わる取り扱いを協議し 試掘調査 ( 確認調査 ) の実施を基本に埋蔵文化財 ( 遺構 遺物 ) の有無を確認することにしている 埋蔵文化財が確認された場合 工事の計画変更による遺跡の現状保存を事業者に求めているが やむを得ず失われる場合には 事業者の協力を得て本調査による記録保存を実施している 近年の当市における発掘調査等は ほ場整備 土地区画整理 幹線道路新設事業などの公共性の高い大規模な開発に伴うものから 宅地造成 集合住宅建築 個人住宅建築工事などの民間 個人が事業者となる小規模な開発に伴うものへ移行している 今後も人口の増加と相まって このような小規模開発に伴う調査は増加の一途を辿ることが予想される これに対処するため 市教育委員会では埋蔵文化財の保護 保存に対する理解と協力を得るためのさまざまな事業を展開してきた 平成 18 年度は 遺跡位置図 を掲載した埋蔵文化財の取り扱いに関するリーフレットを市内全戸に配布し 保護 保存に関する啓蒙 普及活動を行った 平成 19 年度は周知の遺跡の範囲を全面的に見直し 遺跡位置図 を改訂した 平成 20 年度は遺跡の位置と内容の周知化をさらに進めるため 遺跡位置図 ならびに 遺跡台地 を電子化し 茅野市ホームページ上での公開を開始した また こうした取り組みにあわせて 平成 19 20 年度には市内の不動産取引業者 土木および建設業者 建築設計業者と埋蔵文化財の取り扱いに関する勉強会を合同で開催し 遺跡の位置や遺跡内で工事を行う際の法的手続きなどを相互で確認した この他 地域の歴史を直に感じていただく機会として 市民対象の発掘現場の現地説明会を開催している その他として平成 27 年度には頼岳寺内高島藩諏訪家廟所の地形 石造文化財測量を行った 第 2 節 平成 27 年度事業の概要 平成 27 年度に受理した 土木工事等のための埋蔵文化財発掘の届出書 (93 条第 1 項 ) ならびに 土木工事等のための埋蔵文化財発掘の通知書 (94 条第 1 項 ) は 62 件である この中で平成 27 年度国宝重要文化財等保存整備費事業補助金の 市内遺跡発掘調査等事業 の対象事業は 試掘調査が 4 件 本調査が 3 件 ) 補助対象事業費が 2,092,881 円であった 本報告では 予算の執行を伴わない立会調査 38 件 慎重工事 17 件は割愛した 第 3 節 調査の体制 発掘調査は茅野市教育委員会事務局尖石縄文考古館および文化財課が実施した 組織は下記のとおりである 1 調査主体者教育長牛山英彦 ( 平成 28 年 9 月 30 日まで ) 山田利幸 ( 平成 28 年 10 月 1 日から ) 2 事務局生涯学習部長木川亮一 3 尖石縄文考古館守矢昌文 ( 文化財課長 尖石縄文考古館長 ) 小池岳史 ( 考古館係長 ) 正木美香 ( 尖石史跡整備担当平成 27 年 4 月 1 日から ) 小林深志 ( 文化財係長 ) 山科哲大月三千代鵜飼幸雄塩澤恭輔 4 調査担当小林深志鵜飼幸雄塩澤恭輔 ( 発掘調査 整理作業 報告書担当 ) 5 発掘調査参加者補助員酒井みさを大勝弘子武居八千代立岩貴江子 -1-

上原城下町 上原城下町 家下 構井 阿弥陀堂 中島 ツキノ木 第1図 中沢 調査遺跡位置図 1/100,000-2-

第 2 章試掘調査 1 家下遺跡 遺跡番号 110-57 所在地茅野市ちの字家下 2580-6 調査原因集合住宅調査期間平成 27 年 5 月 25 日 ~ 26 日調査面積 31.5m2遺構土坑 5 不明遺構 1 遺物弥生土器 209 古墳土師器 8 古墳須恵器 1 灰釉陶器 1 中世陶器 1 第 2 図調査地点図 (1/5,000) 3 2 2 3 4 第 3 図柱状図 (1/40) 遺跡の概要本遺跡は茅野駅の西約 500m に走る諏訪構造帯茅野断層崖下の沖積低地に立地する 平成 6 年から行われた土地区画整理事業に伴う発掘調査を筆頭に 集合住宅 個人住宅建築工事などに伴う大小の発掘調査からは 弥生時代から近世まで続く規模の大きい集落遺跡であることが明らかとなっている 中でも弥生時代後期の環濠集落や複数の周溝墓が確認されているなど市内でも弥生時代の中核を成していたと思われる重要な遺跡である 平成 25 第 4 図家下遺跡試掘調査全体図 (1/300) 年度の保育園建替えに伴う発掘調査では弥生中期から平安前期までの 14 軒の住居址が見つかっている 調査の概要遺跡のほぼ中央に集合住宅の建替えが行われることになった 当該工事に伴い地表下に掘削が及ぶ箇所は約 350m2の建物の基礎部分である しかし 地形から地盤が軟弱と想定されたため基礎工事に先立ち 地表下最大で約 200cmの地盤補強工事 ( 表層改良 ) が計画された 事業地周辺では西に隣接する場所でも平成 21-3-

年の集合住宅を建設した際に 試掘調査と本調査の結果 弥生時代の住居址 11 軒や方形周溝墓などが検出されている また 平成 25 年には道路を挟んで向かいに保育園建設に伴い多くの弥生から平安時代までの住居址が確認されている こうした事業地周辺における調査の状況から 事業地下には遺構が残されているとみて 事業主と協議するためにも 地盤補強工事の前に試掘調査を行い 建替え前の建物下の遺構の残存の確認と 遺構面までの深さを把握することとした 施工業者による地盤調査の結果 想定よりも地盤がしっかりしているとわかり 地盤補強工事の計画深度が約 100cmに変更された そのため 計画深度まで 0.11m3級のバックホーで慎重に掘り下げを進めたところ 砕石層 耕作土層 ( 水田 ) の下に弥生土器や炭化物を含む砂質黒色土を確認した 重機による掘削はこの層の上面までとし 作業員を投入して 人力で掘り下げることとした 計画深度まで掘り下げた所で 遺構が確認され 遺構プランを記録した 工事が遺構上面以下まで及ばないため本調査の必要はないと判断し 調査を終了した 検出された遺構は土坑 5 不明遺構 1 である 1 土は形の整った楕円形を呈している 2 4 5 土は形が歪んでおり 配置に規則性は見られない 時期は不明である 出土遺物には弥生時代後期 ( 第 5 図 1 2) を中心とした弥生土器が主体となるほか 古代須恵器 土師器 ( 第 5 図 3 ~ 7) 緑釉陶器皿( 第 5 図 8) と時代幅のある遺物が出土している 1: 弥 2 区 2: 弥 1 区 4: 土 2 区 5: 土 2 区 6: 土 2 区 7: 須 2 区 8: 緑 2 区 3: 弥 2 区 第 5 図家下遺跡出土遺物 (1/3) 図版 1 調査前現況 ( 北から ) 図版 2 1 区完堀状況 ( 南東から ) -4-

図版 3 2 区完掘現況 ( 南東から ) 図版 4 3 区完掘状況 ( 南東から ) 2 構井 阿弥陀堂遺跡遺跡番号 223 222-38 所在地茅野市ちの字町屋敷 2549-12 -13 2551-3 -26-27 調査原因集合住宅調査期間平成 27 年 6 月 18 日 ~23 日調査面積 34.5m2遺構なし遺物縄文土器 15 黒曜石 7 第 6 図調査地点図 (1/5,000) 遺跡の概要本遺跡は永明寺山の南裾 上川が形成した沖積段丘面に位置し JR 中央東線の東西に広がる縄文時代から中世まで継続する集落遺跡である 市街地に位置することから 調査が進んでこなかったが 近年は集合住宅や店舗の建築工事 県道新設工事といった広い範囲の開発に伴う調査が進み 成果が集積されてきている 昭和 57 年の茅野有料道路建設工事に伴う発掘調査以降 大小の発掘調査が行われている これまでの 9 次に亘る調査からは縄文中期後半 15 軒 縄文後期前 6 軒 弥生後期 22 軒 平安 52 軒が検出されており 長期に亘っての人の営みが確認されている 調査の概要遺跡範囲の東端の空地で集合住宅建設工事が計画された 計画地は県道に接しており その県道を工事した際に事前に発掘調査をして縄文から平安に渡る住居を含む多くの遺構 遺物が検出しました また 周辺の調査でも同様に住居址が見つかっていることから 当該計画地にも遺構が残されている可能性が高いと考え 工事前に試掘調査を行った 工事に伴う掘削は建物基礎下で現況より約 90cm下までが基礎となり さらにその下 50cmの表層改良が行われる予定であった 表層改良が加えられる建物部分に 2 本のトレンチを設定し 計画深度まで掘り下げを進めていった所 現況下約 100cmの所で多量の礫を含む黄褐色土地山が確認された そのため 掘削は地山までとし 遺構検出に努めたが 遺構は確認されず 遺物も極わずかであった 礫を含む地山の上に 川の氾濫等で流れてきたものが堆積したものと思われる また 東側からは礫を含まない地山も確認できたことから土砂の流れた境をとらえることができた また 周辺住民の話では 以前この場所にはアパートや工場事務所が建っていたとのことで 2 トレンチでは地山まで撹乱が及んでいる箇所があり遺構面が削られている可能性が高い場所であることが分かった 遺構も検出されなかったため 遺物を回収して調査を終了とした 出土したのは縄文土器片と黒曜石である 出土土器の中には中越式期のもの ( 第 8 図 1 2) を含んでいる -5-

礫混じり地山 1 区 撹乱 地山 ( 黄褐色土層 ) 撹乱 2 区 第 7 図構井 阿弥陀堂遺跡調査位置 (1/300) 1: 縄 1 区 第 8 図構井 阿弥陀堂遺跡出土土器 (1/3) 2: 縄 1 区 図版 5 調査前全景 ( 北東から ) 図版 6 1 区完掘状況 ( 南東から ) -6-

図版 7 2 区完掘状況 ( 南東から ) 図版 8 調査区全景 ( 北東から ) 3 ツキノ木遺跡遺跡番号 299-1 2 所在地茅野市玉川 2819 番地 玉川 2827 番地調査原因県営ほ場整備調査期間平成 27 年 7 月 22 日 ~ 24 日調査面積 101m2遺構なし遺物中世陶磁器 1 遺跡の概要本遺跡が認識されたのはごく最近のことである 市教委による遺跡地図作成のための調査第 9 図調査地点図 (1/5,000) を行った際に平安から中世にかけての遺物が採取され 埋蔵文化財包蔵地として認められた その後は遺跡一帯は水田や畑地といった耕作地として使用されており これまで開発が行われることもなかった そのため 遺跡の構造や性格は不明である 調査の概要遺跡範囲全体にかかる範囲で県営ほ場整備事業が計画された ツキノ木遺跡は遺跡としての指定をされているものの これまで調査歴等はなく実態が掴めていない遺跡であったことから 遺跡範囲内の休耕地を 地権者の承諾を得たうえで 試掘調査を行うこととした 現地は細い尾根筋の谷間に位置し 遺跡があるとすれば尾根筋の高台の方であるとみられた 遺跡範囲として括られていることや 高台部分が耕作地として利用されていることから 谷地での試掘調査を行い 地下の様子の把握に努めた 試掘箇所は休耕地 2 筆で行った 東側試掘箇所では礫層の上に灰色の粘土層があり その上は礫混じり黒色土と表土が堆積しており 2 区の北端から黄褐色土の地山と思われる部分がみられた 礫層の上は泥層であったことから沼地のような湿地であったと考えられる 西側試掘箇所については 3 本のトレンチを設定した こちらも礫層が確認され この一帯の地山を構成するものと思われる その上には黒色土の水田層と思われる層が部分的に残っており その上はローム混じりの造成土と表土であった 遺構はみられず 遺物は西側試掘箇所の水田層付近から出土した中世龍泉窯系鎬蓮弁文青磁碗 ( 第 11 図 )1 点のみで 時期は 13 世紀から 14 世紀前半とみられる 周囲の土手などを見て回ったが 遺物らしきものはなく 谷部分が遺跡である可能性は低く本調査には至らないと判断し 調査を終了した 遺跡分布図の位置が誤っている可能性が高く 北の一段高い台地状が遺跡とみられ 遺物はそこからの流出と思われる この調査成果と平成 28 年度試掘調査成果を元に北側高台への遺跡地図の変更修正を行っている なお 平成 28 年度調査からは土坑 2 基 不明遺構 4 個所が検出されている -7-

西調査区 東調査区 4 区 5 区 6 区 1 区 2 区 3 区 第 10 図ツキノ木遺跡遺跡調査位置図 (1/500) 1: 青 4 区 第 11 図ツキノ木遺跡遺跡出土遺物 (1/300) 図版 9 東区調査前全景 ( 南西から ) 図版 10 西区調査前全景 ( 北東から ) -8-

図版 11 東区完掘全景 ( 南西から ) 図版 12 西区 4 区完掘状況 ( 南から ) 図版 13 西区 5 区完掘状況 ( 南から ) 図版 14 西区 6 区完掘状況 ( 南から ) 4 上原城下町遺跡遺跡番号 224-193 所在地茅野市ちの 769-1 調査原因宅地造成調査期間平成 27 年 3 月 17 日 ~ 22 日調査面積 19m2遺構古墳 ~ 平安住居址 4 土坑 7 遺物縄文土器 弥生土器 古墳土師器 平安土師器 須恵器 黒色土器 灰釉陶器 近世陶器 黒曜石整理箱 1 箱遺跡の概要霧ケ峰山塊の南縁を形成する永明寺山第 12 図調査地点図 (1/5,000) (1,156m) の南西一帯がかつては城下町が形成されていたことから広く遺跡として認識されている 永明寺山裾より南にある上川沖積地に向かって広がる平坦な段丘面上に存在し JR 中央線と国道 20 号線に沿って長く伸びる 永明寺山山腹には多くの古墳が確認されており それに応じるように本遺跡からも多くの住居址がみつかっている 近年では広範囲にわたる大小様々な発掘調査の継続により その成果が集積されつつある 中世に築城された上原城とその城下町が遺跡名の由来であるが 現在ではそれ以上に弥生 ~ 古代 そして中世と長期にわたる人の生活の痕が次々と見つかっている また そうした調査の中には数は少ないが縄文土器や石器 黒曜石といった遺物も出土している 調査の概要遺跡範囲西端に宅地造成のための上水道管 下水道管埋設工事が計画された 計画では幅約 1m で -9-

長さ 19m 深さ 1.2 ~ 1.4m に渡って掘削が生じる予定であった 北西に隣接する個人住宅建築の際に 古墳時代以降の住居址 8 軒が検出されていることから 工事前に試掘調査を行った 重機を用いて慎重に掘り下げていった結果 地表から約 80cm下から土器が多数出土し 焼土址が検出されたことから 遺構検出に努めた 掘削幅が狭く 試掘トレンチのほぼ全面から遺構が重複して検出したため 遺構やプランの特定は困難を極めた 部分的に断面に硬くたたき締められて床が確認できた箇所は住居と判断できたが その他については住居と特定できる要素が少なく 不確定な部分も多い しかし 考えられるだけでも 古墳時代を中心とした古墳から平安時代の住居址 6 軒が検出し 土坑 7 基を確認した 試掘調査の結果 遺構が認められたが 施工業者に工事で壊される幅を試掘調査の幅と同じにしてもらうことで 本調査への切り替えは行わないこととし 調査を終了した 5 ~ 7 土の上層からは土師器坏 黒色土器高台付埦 灰釉陶器高台付埦といった平安時代の土器類がまとまって出土している 中央焼土址内からは底部の丸い土師器甕や土師器有段坏が出土しており 5 住については古墳時代後期の住居址と考えられる その他の遺構については共伴する遺物が僅かであり 調査箇所が限定的であったため時期の特定は困難である 出土遺物としては縄文土器 弥生土器 古墳土師器 須恵器 ( 第 13 図 1 ~ 6) 平安土師器 ( 第 13 図 8) 須恵器 黒色土器( 第 13 図 7) 灰釉陶器( 第 13 図 9) 近世陶器 黒曜石と時期幅広い遺物が検出されている 1: 土焼土内 2: 土焼土内 3: 須 4: 土 5: 須 6: 須 7: 黒 8: 土 8: 灰 第 13 図上原城下町遺跡出土遺物 (1/3) -10-

図版 15 調査前全景 ( 北西から ) 図版 16 調査風景 ( 南西から ) 図版 17 遺構検出状況 ( 西から ) 図版 18 遺物出土状況 ( 北から ) 第 14 図上原城下町遺跡調査位置図 (1/300) -11-

土坑 6 土坑 7 土坑 5 住居址 6 焼土址住居址 5 土坑 4 住居址 4 土坑 3 住居址 3 土坑 2 土坑 1 住居址 2 第 15 図上原城下町遺跡遺構平面図 断面図 (1/100) -12-

第 3 章本調査 1 中島遺跡 遺跡番号 246-7 所在地茅野市玉川字中島 1475-1 調査原因個人住宅調査期間平成 27 年 5 月 28 日 ~ 29 日調査面積 27.25m2遺構縄文住居址 1 溝址 1 土坑 16 遺物縄文土器 91 黒曜石 12 石匙 1 第 16 図調査地点図 (1/5,000) 遺跡の概要中島遺跡の調査履歴は乏しく 6 件の個人住宅建設工事に伴う発掘調査 工事立会が実施されているのみである 確認されている遺構として縄文掘立柱建物址 1 棟 土坑 3 基が検出されているほか 多数の縄文土器と黒曜石 石器が出土している その中でも掘立柱建物址は 8 本柱で構成された亀甲形をしており 縄文時代後 晩期と考えられている 調査の概要遺跡の中央付近にあたる位置に個人住宅が建築されることとなった 現地周辺では平成 25 年に 当該計画地の南側の道向いの個人住宅建築の際の試掘調査を行っており 多数の縄文時代後期の土器や黒曜石 石器などが出土している 今回の場所はそこから約 40m しか離れておらず 当該計画地の下にも遺構がある可能性が高いと考え 事業者の許可を得て 事前に試掘調査をすることとした 掘削が及ぶのは基礎工事で建物外周の布掘り部分である 布掘りは幅約 60cm 掘削深度が現況から 65cmである 計画面まで重機により掘り下げを開始し たところ 建物南東角から北西角に向かって地山が傾斜していることが捉えられた 南東角では現況下約 20cmに対して北西角では約 60cmであった 地山まで掘り下げたが建物北 東部分の溝では遺構は検出されず 土器の出土も少なかった それに対して 南側では表土が浅いものの土坑が検出され 西側では土坑の他に住居の角と思われる遺構面を確認した 掘削計画面まで掘り下げ精査した結果 土坑 16 箇所 縄文住居址 0 5 第 17 図中島遺跡調査位置図 (1/300) 1: 縄 0 10 第 18 図出土土器 (1/3) -13-

1 軒 溝 1 条が確認できた 検出された遺構は写真と図面によって記録し 調査を終了した 南側では計画深度まで堀り下げ ほぼ完掘したが 西側では計画深度までの調査とし 建物基礎下に残される 遺構の時期については出土した土器片が小さく困難である しかし 曽利 Ⅳ~Ⅴ 式期の土器片 ( 第 18 図 ) が出土している 土坑 13 住居址 1 区 土坑 14 土坑 9 4 区 2 区 土坑 12 土坑 8 土坑 7 15 3 区 土坑 16 土坑 1 土坑 6 土坑 5 10 土坑 11 溝址 土坑 4 土坑 3 土坑 2 第 19 図中島遺跡遺構平面図 (1/100) 図版 19 完掘全景 ( 南西から ) 図版 20 調査風景 ( 南東から ) -14-

図版 21 3 区検出状況 ( 西から ) 図版 22 4 区検出状況 ( 東から ) 2 中沢遺跡遺跡番号 165-3 所在地茅野市玉川字上ノ原 9692-2 調査原因個人住宅調査期間平成 27 年 8 月 24 日調査面積 60m2遺構土坑 1 遺物なし 第 20 図調査地点図 (1/5,000) 遺跡の概要中沢遺跡は八ヶ岳山麓に位置し 柳川渓谷に沿う広原状台地に立地している 標高は 980 mである 耕作により縄文時代中期中葉から末葉までの土器が採集されているが 未発掘の遺跡である 近年 遺跡北西で行った平成 19 年の宅地造成工事に伴う発掘調査で縄文時代早期の陥し穴や土坑 近世以降の溝址が発見され 縄文時代中期を主体とする中沢遺跡とは別の遺跡として新たに林上遺跡として分離された 調査の概要遺跡範囲の東端に個人住宅と駐車場造成工事が計画され立ち会うこととした 計画では住宅部分は建物周囲を布堀りで幅約 60cm 深さ約 60cm 駐車場部分は幅 7m 奥行き 13m のスロープ状に深い場所では約 80cmの掘削を伴う 工事は先ず駐車場部分の造成が開始され立会を行った 施工業者の協力で先に任意の場所 2 箇所を試掘していただけることとなった 道に接続する場所は最も掘削深度の深い場所であり まずはその部分を広く掘った所 地表より 80cmの深さで地山が検出された 約 3m 四方で掘削していったが 遺構や落ち込み 遺物等は何 も見られなかった そこで 場所を変えて約 2m 4m 四方で試掘したところ 地表下約 60cmの所で地 第 21 図中沢遺跡調査位置図 (1/300) 0 5-15-

山を確認した この場所でも遺構 遺物は検出されず 工事による掘削が徐々に浅くなることから工事による遺跡への影響はないと判断した 建物部分は後日の工事ということで立会を終了した 建物部分については 後日連絡を受け立会を行った 掘削された基礎部分を注意深く観察すると 北側で土坑と考えられる掘り込みが 1 基確認できた そこで 業者に連絡を取り 掘削と遺構の検出状態の写真撮影と図面作成をお願いし 了解を得たため 作業員を動員し 遺構周辺の精査と写真撮影 平面図 断面図の作成を行い 調査を終了した 基礎部分より下には 遺構が残され保存されている 調査時に 基礎掘り下げに伴って掘り上げられた土砂を精査したが 遺物の出土は全くなく したがって遺構の時期も不明である 図版 23 調査風景 ( 北から ) 図版 24 1 土検出状況 ( 北から ) 3 上原城下町遺跡 第 22 図調査地点図 (1/5,000) 遺跡番号 224-190 所在地茅野市ちの字片羽 734 番 2 調査原因個人住宅調査期間平成 27 年 1 月 12 日 ~16 日調査面積 27.04m2遺構平安 ~ 中世住居址 4 小竪穴 1 溝址 1 土坑 20 遺物弥生土器 土師器 須恵器 黒色土器 陶器 白磁整理箱 1 箱 0 4 第 23 図上原城下町遺跡調査位置図 (1/300) -16-

1 2 3 5 4 7 10 13 20 1 1 17 14 12 11 21 1 15 22 23 住居址 3 住居址 2 土坑 4 土坑 5 土坑 2 焼土址土坑 13 土坑 3 土坑 16-1~3 土坑 15 土坑 12 土坑 14 住居址 1 土坑 1 土坑 11 小竪穴址土坑 6 土坑 9 土坑 10 土坑 7 土坑 17 土坑 8 土坑 18 0 4 第 24 図上原城下町遺跡遺構平面図 断面図 (1/100) 調査の概要遺跡範西端にあたる位置に個人住宅が建築されることとなった これまでの周辺での調査では平成 24 年に 当該計画地の北約 100m の場所での個人住宅建築工事及び擁壁設置工事の際に 確認できたものだけでも古墳後期の住居址ほか 4 軒以上が検出され 弥生から古墳 平安 中世と幅広い土器が出土している 工事の計画では建物基礎工事として 80cmの深さで傾斜に沿って段差をつくり総堀り さらに擁壁工事として建物基礎から道に向かって設置するために 幅 150cm 深さ 80cmの掘削を必要とした 掘削面積が広く 遺跡への影響が考えられたため 事業者と協議した上で初めから本発掘調査を行うこととした 施工業者の協力の下 重機で 3 箇所試掘してみた所 建物基礎での一段高い東側では盛土造成土内で納まることが確認できた 他 2 箇所からは造成土の下に弥生 ~ 中世にわたる土器類が多数出土し 炭化物が多く入る土層が確認できた 工事の計画深 -17-

度はさらに深く 地山まで到達することから 部分的な試掘であったが 造成土下は遺構が残されているものと判断し 建物基礎の段下の部分と擁壁工事について発掘調査を行うこととした 土器や炭の混じる層までを重機で掘り下げた所 ほぼ全面に続くことがわかった そのため 遺構の把握が難しく サブトレンチを設定することとした しかし 遺物包含層の下はすぐに黄褐色土地山であった やむを得ず 全面を掘り下げた所 地山まで達した辺りでようやく土坑等の遺構をわずかに捉えることができた 再度 断面と平面を精査した所 3 軒の住居址を想定できた いずれも遺構立ち上り等は確認できず 地山面の平坦面や断面での僅かな立ち上りのみである 遺構が相当重複しているとみられ 遺構が調査区外に大きく延びるため 断定することはできなかった さらに調査区北西隅付近ではプランは捉えられなかったが住居址の可能性が考えられる 住居址以外では 小竪穴 1 軒 溝址 1 条 土坑が 20 基検出した 検出された遺構は写真と図面によって記録し 調査を終了した 今回未調査の建物東側建物基礎下には遺構が残されている いずれの遺構も時期の特定は難しいが 試掘調査からは弥生中期 ~ 後期の土器片 ( 第 25 図 1) や古墳後期の有段坏 ( 第 25 図 3) 須恵器瓶( 第 25 図 2) 古代土師器甕( 第 25 図 4) 宋銭( 第 25 図 6) が出土しているほか 3 土からは大窯 1 ~ 2 段階の灰釉端反小皿 ( 第 25 図 5) が出土している 出土遺物の多くは古墳後期の土師器 須恵器である 1: 弥試掘時 2: 須試掘時 3: 土 3 区 5: 灰 3 土 6: 銭 4: 土 3 区 第 25 図上原城下町遺跡出土遺物 (1 ~ 5 は 1/3 6 は 1/1) 図版 25 調査前全景 ( 南東から ) 図版 26 完掘状況状況 ( 南東から ) -18-

-19- 図版 27 完掘状況 ( 北西から ) 図版 28 1 小竪穴 溝址検出状況 ( 南西から )

市内遺跡 10 - 平成 27 年度埋蔵文化財発掘調査報告書 - 平成 29 年 3 月 23 日印刷平成 29 年 3 月 29 日発行 編集茅野市教育委員会発行長野県茅野市塚原二丁目 6 番 1 号 (0266)72-2101( 代 ) 印刷永明社印刷所長野県茅野市塚原 2 丁目 12 番 30 号