平成 29 年度 全国学力 学習状況調査結果報告書 ( 公開 ) 平成 29 年 11 月 大崎市教育委員会 - 0 -
Ⅰ 調査のあらまし 1 調査の目的 (1) 義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から, 全国的な児童生徒の学力や学習状 況を把握 分析し, 教育施行の成果と課題を検証し, その改善を図る (2) 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる (3) そのような取組を通して, 教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する 2 調査の内容 (1) 教科に関する調査 ( 国語, 算数 数学 ) ア主として 知識 に関する問題 ( これ以降 A 問題 と表記 ) イ主として 活用 に関する問題 ( これ以降 B 問題 と表記 ) (2) 生活習慣や学習環境等に関する質問紙調査 3 調査月日 平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) 4 調査対象学年 教科及び対象校数 対象者数 (1) 大崎市立の各 29 小学校 6 学年当日実施児童数国語 A:1,116 名, 国語 B:1,116 名算数 A:1,116 名, 算数 B:1,115 名 (2) 大崎市立の各 11 中学校 3 学年当日実施生徒数国語 A:1,093 名, 国語 B:1,092 名数学 A:1,091 名, 数学 B:1,091 名 5 結果評価に当たっての基本的な考え方 全数調査であることから, 次の観点から全国 宮城県の結果と比較し, 考察していくこととする (1) 平均正答率の比較 (2) 設問ごとの平均正答率などの状況 (3) 生活習慣や学習環境等に関する質問紙調査 - 1 -
Ⅱ 調査結果について 1 教科に関する調査 ( 国語, 算数 数学 ) 大崎市における正答率及び正答数の傾向 (1) 大崎市の小学校国語 算数それぞれの A 問題 B 問題及び, 中学校国語 数学それぞれの A 問題 B 問題の平均正答率において, 全国 県を下回る結果であった (2) 大崎市立小学校全体の状況として,A 問題 B 問題ともに, 全国 県との平均正答率の差は, 昨年度とほぼ変わらない (3) 大崎市立中学校全体の状況として, 全国 県との平均正答率の差は, 国語 A でマイナスに広がったが, それ以外は昨年度とほぼ変わらない (4) 全国もしくは県の平均正答率を上回る問題の数 ( 同平均正答率を含む ) は, 小学校国語 A において 3 問, 小学校国語 B において 1 問, 小学校算数 A において 1 問, 小学校算数 B において 1 問, 中学校国語 A において 1 問, 中学校国語 B において 0 問, 中学校数学 A において 1 問, 中学校数学 B において 1 問であった 2 教科について 小学校国語 (1) 国語 A( 主として 知識 に関する問題 ) 平均正答率は, 全国 県と大きな差は見られない 全 15 問中, 平均正答率が 80% 以上の設問は 4 問で,50% 以下の設問は 2 問であった 全国もしくは県を 5% 以上下回った設問は 3 問であった 平均正答率が 8 0 % 以上の 4 問のうちの 3 問は, 学年別漢字配当表に示されている 漢字を正しく読む の設問である 残りの 1 問は, ことわざの意味を理解して, 自分の表現に用いる の設問である 領域別の平均正答率が一番低いのは, 昨年度に引き続き 書くこと 領域であったが, 全国 県と大きな差は見られない 領域別の平均正答率が一番高いのは 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 領域であった (2) 国語 B( 主として 活用 に関する問題 ) 平均正答率は, 全国 県より下回った 全 9 問中, 平均正答率が 80% 以上の設問はなかった 50% 以下の設問は 5 問であった このうち,3 問が記述式である 特に 書くこと 領域における 目的や意図に応じ, 必要な内容を整理して書く ( 記述式 ) の設問は, 平均正答率が低く, 全国 県より下回った また, 読むこと 領域における 自分の考えを広げたり深めたりするための発言の意図を捉える ( 選択式 ) の設問は, 平均正答率がさらに低く, 全国より下回った 目的や意図に応じて読んだり, それらを整理して書いたりする学習を意図的に取り入れていく必要がある 小学校算数 (1) 算数 A( 主として 知識 に関する問題 ) 平均正答率は, 全国 県より下回った 全 15 問中, 平均正答率 80% 以上の 6 問中 4 問は 数と計算 の領域であった 図形, 数量関係 の設問で平均正答率 80% を超えたのは, 各 1 問ずつであった 数と計算 領域の 加法と乗法の混合した整数と小数の計算 及び 商を分数で表すこと では, 全国と比べて大きく下回ったことから, 計算の順序や決まり, 割り算の式から商を分数にするなど基本を確実に身に付けさせることが必要である 量と測定 では, 示された平行四辺形の面積の, 半分の面積である三角形を正しく選ぶ 設問において全国 県と比べて下回った 図形の面積をその性質とともに理解できるようにすることが必要である - 2 -
(2) 算数 B( 主として 活用 に関する問題 ) 平均正答率は, 全国 県より下回った 全 11 問中, 平均正答率が 70% 以上の設問は 2 問で,50 % 以下の設問は 7 問であった 特に記述式で回答する設問の平均正答率が大きく下回っており, 無解答率も高い 数と計算 領域の 問題に示された二つの数量の関係を一般化して捉え, そのきまりを記述 する設問では, 全国 県と比べて大きく下回った また 量と測定 の領域の 仮の平均を用いた考えを解釈し, 示された数値を基準とした場合の平均の求め方を記述 する設問では, 平均正答率が低く, 全国と比べて大きく下回った どちらの設問においても, 児童の数学的な考え方に対する課題が見られることから, 問題場面での数量関係を考察し, 一般化して表現したり, 例として示された方法を自分なりに解釈し, 表現したりする学習の充実が求められる 中学校国語 (1) 国語 A( 主として 知識 に関する問題 ) 平均正答率は, 全国 県より下回った 全 32 問中, 平均正答率が 80% 以上の設問は 13 問,50% 以下の設問は 5 問であった 全国もしくは県を 5% 以上下回った設問は 12 問であった 領域別の平均正答率が一番低いのは, 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 領域であり, 全国 県と比べて下回った 各学校では, 言語活動の充実が図られた実践が行われているが, 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 領域の基礎 基本の定着を図るための指導時間を確保していく必要がある 特に, 漢字の読み書きや行書の基本的な書き方について繰り返し練習する機会を設定するとともに, 古典作品に親しむ指導の工夫をする必要がある (2) 国語 B( 主として 活用 に関する問題 ) 平均正答率は, 全国 県より下回った 全 9 問中, 平均正答率が 80% 以上の設問は 2 問,50% 以下の設問は 1 問であった 全国もしくは県を 5% 以上下回った設問は 3 問であった この 3 問はいずれも 書くこと 領域の問題であり, 問題形式は記述式であった 課題に応じて情報収集をする学習やそれらに基づいて自分の考えをまとめる学習の機会を増やす必要がある また, 実際に書いた文章を発表し, 互いに助言し合う機会を設定することで, 良さを取り入れさせたり自己の振り返りをさせたりしていく必要がある 中学校数学 (1) 数学 A( 主として 知識 に関する問題 ) 平均正答率は, 全国 県より下回った 全 36 問中, 全国や県を平均正答率で上回った設問はなく, 全設問で下回った 平均正答率が 50% 以下の問題は 14 問と昨年より増えている 特に全国 県を大きく下回っている設問は 数と式 の領域では連立方程式の設問であった 加減法と代入法を確実に理解させるとともに, それぞれの解き方の良さを実感させる場面の設定をするなどの指導過程の工夫が必要である 図形 の領域では, 昨年度より平均正答率は向上しているものの, 扇形の弧の長さを求める 設問において, 平均正答率が低く, 全国と比べて大きく下回った 操作活動を多く取り入れるとともに, 弧の長さや面積とその中心角との関係を捉えさせる学習活動の工夫が必要である 関数 の領域においては, 全体的に全国や県を大きく下回った 特に 与えられた比例のグラフから,x と y の関係を y=ax の式で表す 設問においては, 全国 県と比べて大きく下回った 1 学年の基礎的な内容でのつまずきであり, 比例の意味の定着と, それが y=ax の式で表せることやグラフの向きの意味などの定着が課題と言える 資料の活用 においては, 記録の範囲 を求める問題において全国や県と比べて大きく下回った - 3 -
全体的に基礎的な内容の定着が図られていないことと, 無回答率の高さが課題となっている 基礎的内容の理解と定着のために, 生徒と共に学習内容をまとめたり, 学習内をまとめる授業感想を書かせたり, さらに家庭学習を意図的に活用し定着を図っていく必要がある また, 課題解決的な学習形態を工夫し, 生徒それぞれが自分の考えをもち, 解決方法などを伝え合う場面を多く取り入れることも重要である そして, 生徒の実態把握に努め, きめ細かい個への支援が重要である (2) 数学 B( 主として 活用 に関する問題 ) 平均正答率は, 全国 県より下回った 平均正答率が 70% 以上の設問は 3 問 ( 昨年度 2 問 ),50% を以下の設問は 11 問 ( 昨年度も 11 問 ) であった 記述式の設問は 5 問あり, その平均正答率は低く, 全国 県に比べて下回っている 最も正答率の低かった設問は, 資料の傾向を的確に捉え, 判断の理由を数学的な表現を用いて説明する 設問で, 記述式であった 資料の傾向を数学的な表現で説明することに課題があると考えられる 次に平均正答率が低かった設問は 2 つの図形の関係を回転移動に着目して捉え, 数学的な表現を用いて説明する 設問で, 記述式であった この問題についても, 日常的な事象について, 数学的な見方考え方に基づき表現することに課題が見られた 全国と比べて最も大きく下回ったのは, 付加された条件の下で, 図形の性質を用いる 設問であった 図形の性質を理解し, それに基づいて設問の図形の性質を見出すことに課題が見られた 数学 B においても, 生徒の基礎的な内容の定着ができていなければ, それを基に考察していくことは難しい まずは基礎的な内容を定着させるための指導方法の工夫をしていく必要があると考える また, 学んだことを自分の言葉でまとめたり, 互いに話し合ったり, さらに, 解決方法などについて主体的に話し合ったりする学習形態の工夫も必要である また, 数学的な見方, 考え方を高めるために, 数学用語を意識させた日々のノート指導や学習感想の記述について助言を行ったり, 家庭学習での学習方法の指導, 課題の内容の充実を図ったりすることも大切であると考える 3 学習状況調査 ( 質問紙調査 ) について 基本的な生活習慣について 朝食を毎日食べることについては, 小学校では昨年よりも下がっており, 全国平均と比べても下がっている 中学校では昨年よりも改善が見られるが, 全国, 県と比較しても若干下回っている 家庭への働き掛けが必要である 普段 1 日にテレビやビデオを観たり, ゲームをしたりする時間は全国や県と比較して多くなっている 特に小学校ではゲームをする時間が長くなっている 携帯電話やスマートフォンの扱いとともに家庭生活を振り返る機会を設定し, 改善につなげていく必要がある また, 児童 生徒への指導だけではなく家庭との連携も必要である 授業の予習 復習をする児童生徒について, 小学校では全国比を上回っているものの, 昨年度と比べて予習, 復習ともに大きく下回った しかし, 中学校では予習や復習をする生徒が全国比を大きく上回っている 家庭学習の時間は 小学校 中学校ともに全国比を下回っている 小学校では平日の学習時間が大幅に下回った 中学校では改善傾向があるが, まだ全国比より大きく下回っている テレビを視聴する時間, ゲームをする時間が長いことも学習時間が短くなる要因の一つであると考える 学習時間が長ければいいというものではないが, 家庭における学習の在り方について進路指導等と関連付けて指導していくこととともに家庭への働き掛けも重要となる 学習の理解度 小学校では授業のねらいについて示されていると感じている生徒が, 全国, 昨年と比べて下回っている 中学校では, 全国, 昨年と比較して大きく改善が見られる しかし, 学校質問紙 - 4 -
では職員の意識として児童 生徒に目標をもたせようとする取組, 意識とのかい離があることから, 今後も一人一人に課題意識をもたせられるよう学習計画の提示, 導入の工夫などを十分に行う必要がある 振り返る活動については小学校では, 全国, 昨年と比べて下回った 中学校では昨年と比較して 10 ポイント以上改善が見られる しかし, ねらいの提示とともに教師の意識とのかい離が見られる より一層, 学習過程の見直しを含め, 教科の特性に応じた振り返りの在り方を検討していく必要がある 授業内容については, 中学校の国語, 小学校算数 中学校数学について よく分かる と答えた児童 生徒は全国比とほぼ同じである しかし, 実際の正答率とのかい離がある より分かる授業づくりを意識して, 指導力向上を目指し, 教材研究等を行うことが求められる 補充的な学習について, 国語では昨年と比較して小学校では改善が見られる 中学校では昨年に引き続き上回っている 算数 数学においては小 中ともにほぼ全国比と同じである 発展的な学習においては, 国語では小 中ともに下回っている 算数 数学では中学校では大きな改善が見られるが, 小学校では全国と比べると大きく下回っている 授業の振り返りに適用問題取り組むとともに, 習熟度に合わせて, 発展的な課題に取り組む機会などを多く設けるようにする必要がある 8 教育委員会の対応 (1) 学校の状況に応じて, 以下のような授業改善を図り, 指導の工夫を行う 1 学力向上に向けた 5 つの提言 を意識 徹底した授業づくりを行うとともに, 自校化や重点の設定を行う 算数 数学においては 算数 数学ステップアップ 5 を参考にした授業改善を図り, 分かる できる授業づくり を工夫する 基礎 基本の定着を図るために, 授業の中で繰り返し学習する場を設定する また, 家庭学習との関連を意識した指導を行い, 補充的学習, 発展的学習に積極的に取り組ませる 小学校においては発展的な学習の一環として, 算数チャレンジの問題を積極的に取り組ませる 身に付けさせたい力を明確にし, 授業のねらいを達成させるための学習課題 ( 内容, 提示の仕方等 ) の設定を工夫する 学習課題解決に向けて, 自分の考えをもたせたり, ペア, グループ, 全体での学び合いの機会を設定したりすることにより, 探究的な学習を展開していく 学びの実感を持たせる学習の振り返り ( 適用問題, 学習感想, 自己評価や相互評価等 ) をさせる 学習環境を整備するとともに, 一人一人が体験的に学べる場を設定する 2 標準学力検査 CRT ( 小 4), 全国学力 学習状況調査 ( 小 6, 中 3) の調査結果を活用し, 指導の改善を図る (2) 指導主事学校訪問, 学力向上サポートプログラム事業, マンパワー活用事業等を推進し, 校内研究と関連付けた取組を行う 1 指導主事学校訪問や各種事業における訪問を校内研究に関連付け, 協働での授業づくりを計画的に実施することで, 授業改善や指導力向上を図る 2 小 中連携事業の中で, 相互授業参観, 合同授業研修などを実施する (3) 研究指定校, 市研究協力校の成果普及を図る 1 市研究員制度を活用し, 指導法の改善を図り, 成果普及を行う 2 各種研究協力校が自主公開等を行い, 成果普及を行う (4) 家庭と連携し, 下校後の生活時間の使い方の検証と改善を図り, 家庭学習を促す - 5 -