FOLFOXに関しては 1990 年代終わり頃から2000 年にかけて 2つの臨床試験が実施された そのひとつであるStageⅡ/Ⅲ 結腸癌症例を対象とした5-FU/LV(de Gramont 法 ) とFOLFOX4のRCTであるMOSAIC では 5 年 DFS(67.4% vs. 73.3%

Similar documents
後補助化学療法において CPT-11 の併用は推奨されていない 以上より 現在の欧米における StageⅢ 結腸癌に対する術後補助化学療法としては 5-FU/LV+L-OHP (FOLFOX FLOX) Capecitabine 5-FU/LV が標準的治療とされている 日本における大腸癌術後補助化

ベバシズマブ併用 FOLFOX/FOLFIRI療法

埼玉医科大学倫理委員会

研究課題:「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌患者に対する CapeOx間欠投与+ベバシズマブ(BV)療法多施設共同第Ⅱ相臨床試験‐VOICE試験‐」に関する計画書

研究課題:「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌患者に対する CapeOx間欠投与+ベバシズマブ(BV)療法多施設共同第Ⅱ相臨床試験‐VOICE試験‐」に関する計画書

埼玉医科大学倫理委員会

1)表紙14年v0

様式1

0. 試験概要 0.1. シェーマ 手術 対象 StageⅢ 結腸癌 *1 直腸 S 状部癌治癒切除症例 (CurA) PS 歳以上 8 週間以内 文書による説明と同意の取得 登録とランダム化割付割付調整因子 N 因子 *2 (N1/N1 以外 ) 施設 レジメン(mFOLFOX6/X

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

がん化学(放射線)療法レジメン申請書

<4D F736F F F696E74202D2096F295A897C A837E B947A957A8E9197BF2E B93C782DD8EE682E890EA97705D>

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

研究課題 : Niti-S 大腸ステント多施設共同前向き安全性観察研究 に関する計画書 申請者 ( 実施責任者 ) 所属埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科氏名松澤岳晃 1. 背景, 意義, 目的背景 : これまで, 本邦では大腸狭窄に対する金属ステントは薬事認可も保険収載もなかったため,

JCOG0910総括報告書

減量・コース投与期間短縮の基準

「             」  説明および同意書

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 の相対生存率は 1998 年以降やや向上した 日本で

3. 本事業の詳細 3.1. 運営形態手術 治療に関する情報の登録は, 本事業に参加する施設の診療科でおこなわれます. 登録されたデータは一般社団法人 National Clinical Database ( 以下,NCD) 図 1 参照 がとりまとめます.NCD は下記の学会 専門医制度と連携して

当院外科における 大腸癌治療の現況

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

課題名

する 研究実施施設の環境 ( プライバシーの保護状態 ) について記載する < 実施方法 > どのような手順で研究を実施するのかを具体的に記載する アンケート等を用いる場合は 事前にそれらに要する時間を測定し 調査による患者への負担の度合いがわかるように記載する 調査手順で担当が複数名いる場合には

15 氏 名 し志 だ田 よう陽 すけ介 学位の種類学位記番号学位授与の日付学位授与の要件 博士 ( 医学 ) 甲第 632 号平成 26 年 3 月 5 日学位規則第 4 条第 1 項 ( 腫瘍外科学 ) 学位論文題目 Clinicopathological features of serrate

1.3 試験治療の設定根拠このような背景を踏まえ 本研究では 被験者の背景や治療が均一であるJACCRO GC-07 第 Ⅲ 相試験の登録症例を対象として 胃癌化学療法の予後因子および副作用リスクマーカーの探索を目的とした付随研究を実施することとした 本研究では 治療開始前の臨床検査値等の各種の因子

膵臓癌について

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

研究課題:「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌患者に対する CapeOx間欠投与+ベバシズマブ(BV)療法多施設共同第Ⅱ相臨床試験‐VOICE試験‐」に関する計画書

<303491E592B BC92B08AE02E786C73>

要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

研究課題:「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌患者に対する CapeOx間欠投与+ベバシズマブ(BV)療法多施設共同第Ⅱ相臨床試験‐VOICE試験‐」に関する計画書

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

研究課題名 臨床研究実施計画書 研究責任者 : 独立行政法人地域医療推進機構群馬中央病院 群馬県前橋市紅雲町 1 丁目 7 番 13 号 Tel: ( 内線 )Fax: 臨床研究期間 : 年月 ~ 年月 作成日 : 年月日 ( 第 版

研究課題:「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌患者に対する CapeOx間欠投与+ベバシズマブ(BV)療法多施設共同第Ⅱ相臨床試験‐VOICE試験‐」に関する計画書

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

9 中止基準 ( 研究対象者の中止 研究全体の中止について ) 10 研究対象者への研究実施後の医療提供に関する対応 通常の診療を超える医療行為 を伴う研究を実施した場合 研究実施後において 研究対象者が研究の結果より得られた利用可能な最善の予防 診断及び治療が受けられるように努めること 11 研究

資料1_事業実施計画書

患者さんへの説明書

Microsoft PowerPoint - 印刷用 DR.松浦寛 K-net配布資料.ppt [互換モード]

外来在宅化学療法の実際

糖尿病経口薬 QOL 研究会研究 1 症例報告書 新規 2 型糖尿病患者に対する経口糖尿病薬クラス別の治療効果と QOL の相関についての臨床試験 施設名医師氏名割付群記入年月日 症例登録番号 / 被験者識別コード / 1/12

(別添様式1)

様式1

は関連する学会 専門医制度と連携しており, 今後さらに拡大していきます. 日本外科学会 ( 外科専門医 ) 日本消化器外科学会 ( 消化器外科専門医 ) 消化器外科領域については, 以下の学会が 消化器外科データベース関連学会協議会 を組織して,NCD と連携する : 日本消化器外科学会, 日本肝胆

要望番号 ;Ⅱ-24 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 8 位 ( 全 33 要望中

0. 概要 0.1 臨床試験課題名標準化学療法に不応 不耐の切除不能進行 再発大腸癌に対する TFTD( ロンサーフ ) +Bevacizumab 併用療法の RAS 遺伝子変異有無別の有効性と安全性を確認する第 II 相試験 0.2 区分 非ランダム化第 II 相試験 0.3 目的 5-FU 系薬

手術を支持する根拠とされていた また 非治癒因子が 1 つである患者が減量手術の良い対象と報告された しかしながら それらの報告には PS が良く合併症が少なく腫瘍量が少ない患者に好んで減量手術が行われている selection bias が明らかに存在し 化学療法単独でも か月の予後が

平成 30 年 8 月 15 日作成第 1.2 版 ホームページ公開文書 本研究は大分大学医学部倫理委員会で審議され, 大分大学医学部長の許可を得ています 倫理委員会では 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 に基づき, 外部委員を交え, 倫理的 科学的観点から審査を行います 1. 研究の名称

STEP 1 検査値を使いこなすために 臨床検査の基礎知識 検査の目的は大きく 2 つ 基準範囲とは 95% ( 図 1) 図 1 基準範囲の考え方 2

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

医師主導治験 急性脊髄損傷患者に対する顆粒球コロニー刺激因子を用いたランダム化 プラセボ対照 二重盲検並行群間比較試験第 III 相試験 千葉大学大学院医学研究院整形外科 千葉大学医学部附属病院臨床試験部 1

29-28

がん登録実務について

フッ化ピリミジン

料 情報の提供に関する記録 を作成する方法 ( 作成する時期 記録の媒体 作成する研究者等の氏名 別に作成する書類による代用の有無等 ) 及び保管する方法 ( 場所 第 12 の1⑴の解説 5に規定する提供元の機関における義務 8 個人情報等の取扱い ( 匿名化する場合にはその方法等を含む ) 9

Microsoft Word - Oxaliplatin HP掲載用修正9-8.docx

臨床試験の実施計画書作成の手引き

日本の方が多い 表 2 は日本の癌罹患数の多い順の第 7 位までの部位とそれに対応する米国の数値と日 米比を示す 赤字と青字の意味は表 1 と同じである 表 2: 部位別の癌罹患数 : 日 米比較日 / 米 0.43 部位 罹患数 ( 日 ) (2002)( 人 ) 罹患数 ( 米 ) 罹患数比日本

医科_第20次(追加)審査情報提供(広報用)

同意説明文書(見本)

日本内科学会雑誌第96巻第4号

未承認の医薬品又は適応の承認要望に関する意見募集について

データの取り扱いについて (原則)

大腸癌術前化学療法後切除標本を用いた免疫チェックポイント分子及び癌関連遺伝子異常のプロファイリングの研究 

群馬大学人を対象とする医学系研究倫理審査委員会 _ 情報公開 通知文書 人を対象とする医学系研究についての 情報公開文書 研究課題名 : がんサバイバーの出産の実際調査 はじめに近年 がん治療の進歩によりがん治療後に長期間生存できる いわゆる若年のがんサバイバーが増加しています これらのがんサバイバ

(別添様式)

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

6. 研究対象者として選定された理由 当科を受診された各種慢性肝疾患の方が研究対象者に含まれます 7. 研究対象者に生じる利益 負担および予想されるリスクノベルジン錠の国内臨床試験に置ける安全性評価対象例 74 例中 23 例 (31.1%) に副作用が認められ 主な自覚症状では悪心 4 例 (5.

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

速報 海外で行われた CLASSIC 試験 国内で行われた J-CLASSIC-PII 試験および胃癌術後補助化学療法におけるオキサリプラチン併用療法に関する日本胃癌学会ガイドライン委員会のコメント 試験名 :CLASSIC 試験文献 : Adjuvant capecitabine and oxal

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

医療事故防止対策に関するワーキング・グループにおいて、下記の点につき協議検討する

JCOG1404

がん化学(放射線)療法レジメン申請書

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

がん化学(放射線)療法レジメン申請書

C 型慢性肝炎に対するテラプレビルを含む 3 剤併用療法 の有効性 安全性等について 肝炎治療戦略会議報告書平成 23 年 11 月 28 日

(目的)

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx


D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

認定議事概要10月分(固定版).docx

心房細動1章[ ].indd

1-0 治験実施計画書の要約

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

橡

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

博士学位申請論文内容の要旨

血液 尿を用いたライソゾーム病のスクリーニング検査法の検討 に関する説明書 一般財団法人脳神経疾患研究所先端医療研究センター 所属長衞藤義勝 この説明書は 血液 尿を用いたライソゾーム病のスクリーニング検査法の検討 の内容について説明したものです この研究についてご理解 ご賛同いただける場合は, 被

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

Microsoft Word - JONIE-TR 患者説明書.docx

H26大腸がん

H27_大和証券_研究業績_C本文_p indd

最終解析と総括報告書

現況解析2 [081027].indd

Transcription:

研究課題 : 再発危険因子を有する Stage II 大腸癌に対する UFT/LV 療法の臨 床的有用性に関する研究に関する計画書 研究実施責任者埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科傍島潤 1. 背景と根拠 1.1 対象疾患の背景本邦では大腸癌罹患率が年々漸増しており 2020 年には大腸癌罹患数は約 15 万人に達し 胃癌 肺癌を抜いてがん死因の第 1 位になると推測されている 大腸癌に対しては外科的切除が第一選択肢と考えられており その治療成績の向上を図る目的で種々の術後補助化学療法が検討されている StageⅡに関する治療成績として 大腸癌研究会の全国集計 (1991 年 -1994 年 ) では 大腸癌根治手術症例の5 年生存率は 81.2% と報告されている また 大腸癌研究会 プロジェクト研究のデータによると 大腸癌治癒切除後のStageⅡの再発率は12.5% と報告されている 一方 StageⅡ 大腸癌の中には再発高リスク要因の存在が欧米において報告されており ASCO2004ガイドラインでは 郭清リンパ節個数 12 個未満 T4 症例 穿孔例 低分化腺癌 印環細胞癌 粘液癌症例 ESMOガイドラインでは T4 低分化腺癌または未分化癌 脈管侵襲 リンパ管侵襲 傍神経浸潤 初期症状が腸閉塞または腸穿孔 郭清リンパ節個数が12 個未満 高 CEAレベル NCCNガイドラインでは T4 郭清リンパ節個数 12 個未満 低分化癌 未分化癌 穿孔例 腸閉塞 脈管侵襲 リンパ管侵襲 断端陽性が規定されている また 米国のSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results) に登録されている全米の結腸腺癌患者 119,363 名のデータによると AJCC 第 6 版におけるStageⅡB(T4,N0) の患者の予後は StageⅢA(T1-2,N1) よりも悪いことが報告されている [1] 1.2 本研究の対象の標準治療について StageⅡ 大腸癌に対する補助化学療法の有効性に関しては 肯定的な報告と否定的な報告がともに存在し 明確なコンセンサスは得られていない 本邦における大腸癌治療ガイドラインにおいても Stage Ⅱ 大腸癌に対する術後補助化学療法の有用性は確立しておらず すべてのStageⅡ 大腸癌に対して一律に補助化学療法を適応することは妥当ではない と記載されている しかしながら 上記のような再発高リスクと考えられている対象に対して 前向きに検証した試験は存在せず 補助化学療法を実施するか否かは担当医師の裁量に委ねられているのが現状である 以上のことから 本研究の対象に対しては術後補助化学療法が原則的に実施されておらず 現在のところStageⅡ 大腸癌に対する標準治療は 手術療法 と考えられる 1.3 試験治療 (UFT/LV 療法 ) の設定根拠 StageⅢ 結腸癌に対する術後補助化学療法については日本におけるエビデンスは乏しいが 欧米における臨床試験の結果から 5-FU/LV UFT/LV capecitabine FOLFOX4 療法またはmFOLFOX6 療法で 投与期間は6ヶ月が標準的治療として位置づけられている

FOLFOXに関しては 1990 年代終わり頃から2000 年にかけて 2つの臨床試験が実施された そのひとつであるStageⅡ/Ⅲ 結腸癌症例を対象とした5-FU/LV(de Gramont 法 ) とFOLFOX4のRCTであるMOSAIC では 5 年 DFS(67.4% vs. 73.3% HR=0.80; 95% CI,0.68-0.93; p=0.003) および6 年 OS(76.0% vs. 78.5% HR=0.80; 95% CI,0.65-0.97; p=0.023) におけるL-OHPの上乗せ効果が確認された しかし Stage 別に見ると StageⅢ 結腸癌ではFOLFOX4 群が5 年 DFSおよび6 年 OSにおいて有意に良好であったが StageⅡ 結腸癌では5 年 DFSおよび6 年 OSにおいて有意差は認められていない [2] 日本では StageⅢ 結腸癌 直腸 S 状部 (RS) 癌 上部直腸 (Ra) 癌を対象として 5-FU/LVとUFT/LV の非劣性を検証するJCOG0205が現在進行中である UFT/LVは 大腸癌術後補助化学療法として経口剤が好んで用いられているわが国において頻用されている治療法であり また StageⅡ/Ⅲを対象とした NSABP C-06 試験 [3] において5-FU/LVとUFT/LVの同等性が確認されていることから 手術単独群を対照群 UFT/LV 療法群を試験治療群に設定することとした 1.4 本試験の目的以上より 今回我々は 治癒切除後のStageⅡ 大腸癌 (Ra Rb 除く ) において再発高リスクと考えられる症例を対象に 手術単独に対して本邦における術後補助化学療法の標準治療の一つであり日本において最も繁用されているUFT/LV 術後補助化学療法を施行し その有用性を比較検討する 2. 方法 試験の全体的デザイン ランダム化による治療方法決定の選択肢を含む患者選択による非ランダム化比較試験 登録後は選択群を変更しない 対象となる StageⅡ 大腸癌 (Ra Rb 除く ) 再発高リスク症例に関しては 明らかに術後補助化学療法を

実施した方が良いというエビデンスはない その一方で再発のリスクは高いことが明らかである 大腸癌診療ガイドラインでも StageⅡの中でも予後不良なサブグループに的を絞って補助化学療法を行う戦略は現時点では妥当 とされている [2] また 同意取得が困難となることが予想され ランダム化比較試験のデザインで実施しても症例登録が極めて困難になることが予想される 以上のことから ランダム割付による治療法の決定という選択肢だけではなく 手術単独あるいは試験治療のいずれかの治療法を患者自身が選択可能とする治療法選択型の非ランダム化試験を実施することとした 解析はランダム化部分 (C 群 vs. D 群 ) と非ランダム化部分 (A 群 vs. B 群 ) を分けて実施する 非ランダム化部分 (A 群 vs. B 群 ) の解析にあたっては 交絡の調整として プロペンシティスコアを用いたマッチングにより比較検討する 統計解析および解析計画詳細な解析計画は別途解析計画書に記載するが主な解析方針として以下のように計画する 本試験ではランダム化部分 (C 群 D 群 ) と非ランダム化部分 (A 群 B 群 ) の解析を別々に実施する 非ランダム化部分 (A 群 B 群 ) の解析においては 交絡の調整としてプロペンシティスコアを用いたマッチングを行い各群の患者背景を出来るだけそろえた上で群間比較を行う さらに 主要評価項目である無病生存期間の結果をもって結果を公表するが 全生存期間の解析結果も違いがないことを確認するために 全ての症例について登録後 5 年間の追跡調査を行い そのデータに関する解析も行う 3. 研究期間 登録期間 : 倫理委員会承認後 ~2015 年 4 月 試験期間 : 倫理委員会承認後 ~2020 年 4 月 4. 予定症例数 目標集積症例数 :1720 例 ( 手術単独群 570 例 UFT/LV 群 1150 例 ) 当センター予定症例数 :10 例 ( 手術単独群 5 例 UFT/LV 群 5 例 ) 5. 患者選択基準 除外規準 5.1 患者選択基準 1) 組織学的に大腸癌 ( 腺癌 ) と診断された症例 2) 組織学的病期 StageⅡ(T3-4 N0 M0)(TNM 分類 UICC 第 7 版 2009) の結腸癌 (C A T D S) および直腸癌 (Rsのみ) 症例である 3) 以下のいずれかの因子に該当する症例 T4 穿孔 穿通 低分化腺癌 粘液癌 郭清リンパ節個数が12 個未満である 4) R0の手術がなされている 5) 登録時年齢が20 歳以上 80 歳以下である

6) PS(ECOG) が0あるいは1である 7) 対象疾患に対して手術以外の治療が行われていない 8) 経口摂取可能である 9) 登録前 14 日以内 ( 登録日 2 週間前の同一曜日の検査は可 ) の臨床検査により主要臓器機能が保持されている 1 白血球数 : 3,000/mm3 かつ <12,000/mm3 2 好中球数 : 1,500/mm3 3 血小板数 : 100,000/mm3 4 ヘモグロビン : 9.0g/dL 5 総ビリルビン : 2.0mg/dL 6 AST(GOT): 100IU/L 7 ALT(GPT): 100IU/L 8 血清クレアチニン :<1.5mg/dL 10) 術後 8 週以内に治療が開始できる 11) 患者本人から文書による同意が得られている 5.2 除外基準 1) ユーエフティ ホリナートカルシウムに対して投与禁忌である症例 2) 無病期間が5 年未満の活動性の多重がんを有する ( 治癒した皮膚基底細胞癌と子宮頸癌 あるいは内視鏡的粘膜切除により治癒した胃癌 食道癌 大腸 pm 癌の症例は登録可とする ) 3) 重篤な術後合併症を有する ( 登録時に回復していない重篤な術後感染症 縫合不全 消化管出血など ) 4) 以下のいずれかの併存疾患がある 1 コントロール不良の糖尿病 2 コントロール不良の高血圧症 3 肝硬変 肝不全 4 腎不全 5 間質性肺炎 肺線維症 高度の肺気腫 6 活動性の感染症 7 6ヶ月以内の心不全 心筋梗塞 狭心症や著しい心電図異常 5) 重篤な下痢を有する 6) 重篤な薬剤過敏症の既往歴を有する 7) 妊婦あるいは妊娠している可能性のある女性 パートナーの妊娠を希望する男性 8) 精神病または精神症状を合併しており 臨床試験への参加が困難と判断した 9) その他 医師が本試験の登録には不適当と判断した

6. 期待される利益及び不利益 本試験における化学療法は StageⅢ 結腸癌において推奨されている化学療法であるため 特に期待さ れる不利益はない 7. 有害事象への対応本試験の実施に起因して 何らかの健康被害が生じた場合は 適切な治療 その他必要な措置を受けることができるように担当医師 参加施設が対応する ただし 提供される治療には健康保険を適用し 金銭での補償は行わない 8. 費用負担について本試験は 通常の健康保険の範囲内で行われ 試験期間中の観察 検査 使用薬剤等は患者の健康保険が適用される なお 通常診療範囲外の CEA mrna 測定に要する費用は ( 財 ) がん集学的治療研究財団が負担する 9. 試料の取扱い 本試験では 術後 24 時間以降の末梢血中 CEA mrna を測定するために 採血を施行し速やかに SRL に外部測定発注とする この時点で匿名化しており 試料廃棄時には同定不可能となっている 10. 個人情報の取扱い患者の識別には 患者識別コードで特定するなど第三者が直接その患者を識別できないよう十分に配慮する すなわち 登録患者の同定や照会は 各施設で任意に付した患者識別コードと登録時に発行される施設症例番号を用いて行う 11. 利益相反本試験では 利害関係が想定される企業 団体からの経済的な利益やその他の関連する利害などについては 適切な利益相反マネージメントを経ているため問題はない 各施設においても 利益相反について IRB および利益相反委員会等において検討を行い その結果を書面に残す 12. 知的財産権本試験の結果および知的財産権は試験に参加した全施設の共有のものとする 研究成果の公表とは学会発表および医学専門雑誌への論文掲載を指す 試験結果の公表に関しては 互いに協議し決定することとし 患者の秘密は保全する 研究成果の公表については ( 財 ) がん集学的治療研究財団の臨床試験審査委員会の承認を得るものとする 発表者及び執筆者については 各参加施設の登録症例数を考慮した上で 研究代表者とプロトコール調整委員等が協議し 決定する 論文掲載は英文とする

13 研究代表者 当センター研究責任者 実施者 < 研究代表者 > 東海大学消化器外科教授貞廣荘太郎 < 当センター研究責任者 > 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科教授石田秀行 < 研究実施者 > 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科 准教授 石橋敬一郎 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科 講師 隈元謙介 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科 助教 傍島潤 ( 実施責任者 ) 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科 助教 桑原公亀 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科 助教 松澤岳晃 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科 助教 幡野哲 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科 助教 天野邦彦 参考文献 1) O Connell JB. et al. : Colon cancer survival rates with the new American Joint Committee on Cancer sixth edition staging. : J Natl Cancer Inst, 2004; 96:1420-1425 2) Thierry Andre. et al. : Adjuvant chemotherapy with oxaliplatin, in combination with fluorouracil plus leucovorin prolongs disease-free survival, but causes more adverse events in people with stage II or III colon cancer : N Engl J Med2004; 350: 2343-51 3) Lembersky BC. et al. : Oral uracil and tegafur plus leucovorin compared with intravenous fluorouracil and leucovorin in stage II and III carcinoma of the colon: results from National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project Protocol C-06. : J Clin Oncol. 2006; 24(13): 2059-2064