大型の捕虫網 ( 径 42cm) を使用し 1 地区 5 地点の払い落し法により調査する 越冬後の5~6 月の指標植物としては結実しているクワ サクラ ヒイラギ及び開花中のミカン 新梢伸長中のキリが適しており また 新成虫が出現する7 月以降の好適な指標植物として結実したスギ ヒノキ サワラ ヒイラ

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バンカーシート 利用マニュアル 2017年版(第一版)

病害虫発生予察情報(11月予報)

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「公印省略」

平成19年度事業計画書

2 ブドウの病害虫

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隔年結果

本日のお話 つなぐことの意味 技術の効果 ( 第一期実用技術開発事業 ) 現地実証と産地への実用化 適用樹種拡大研究への発展 更なる共同研究 実用化に向けて

試験中 試験中 試験中 12 月下旬 試験中 試験中 試験中 12 月下旬 試験中 試験中 試験中 1 月中旬 試験中 試験中 試験終了 12 月中旬 試験中 試験中 試験中 1 月上旬 試験中 試験中 試験中 1

わかっていること トマトすすかび病について

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また 被害拡大の速度も速く 防除を怠ると くり園周辺の広葉樹林にも容易に被害が広がる (2) 発生消長平成 24 年 岩手県一関市で行った粘着板による調査では 1 齢幼虫の発生は 7 月 10 月の年 2 化であった (3) 防除試験マシン油乳剤やDMTP 乳剤による防除が知られているが 平成 24

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0.45m1.00m 1.00m 1.00m 0.33m 0.33m 0.33m 0.45m 1.00m 2


○H29-3 表紙_バジルべと病(案2)

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PowerPoint プレゼンテーション

炭疽病並並やや少 (-) やや多 ~ 並 降水並 ~ 少 (-) 8 月降水量多 チャ カンザワハダニ並並並 やや多 ~ 少 気温並 茶研予察ほ降水並 ~ 少少 (-) クワシロカイガラムシ 並並やや少 (-) 並 ~ やや少 気温並 降水並 ~ 少 カンキツ 黒点病並やや多少 (-) ミカンハダニ

平成22年度農作物有害動植物発生予察情報

あら

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までの間, 毎月 回の頻度でシャットネラ属プランクトン調査を実施し, 本種の同定及び水質観測を行なった また, 湾内の 点 ( 図 ) においてシャットネラ属プランクトンのシスト分布調査を 6 月と 月に実施し, 採取した試泥をフ 6 AKA 8 FT FN 千葉 BC 8 FT BC FN 千葉

**************************************** 2017 年 4 月 29 日 日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会 耐性菌対策のための DMI 剤使用ガイドライン 一般的な耐性菌対策 1. 薬剤防除だけに頼るのではなく 圃場や施設内を発病しにくい環境条件にする 1)

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圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

Ⅰ 収穫量及び作柄概況 - 7 -

コスジマグソコガネ捕獲個体 (6/16) 17 個体 ライトトラップ BOX15 糞トラップ 2 任意 - 獣糞内 -0 移動例 (6/16) オオコオイムシ捕獲個体 (6/21) 105 個体 ( 成虫 : 子持ち 16 子無し 38 幼虫 51) コスジマグソコガネ捕獲個体 (6/22-23)

( ウ ) 薬剤散布後の状況 マシン油乳剤 3 通りの倍率でマシン油乳剤を散布し 定期的に状況を観察した 本種はチョコレート色の蝋物質 ( 殻 ) に覆われており 外観は月日の経過とともに少しずつ黒ずんできたように思われたが 内部の成虫の生死や産卵の有無などの判断は難しく 防除効果の確認は幼虫発生期

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本年 10 月 11 日 ~11 月 10 日の間に登録登録されたされた新農薬 ( 適用拡大を含む は 次の通りですりです 下線部が適用拡大適用拡大になりましたになりました 登録日 薬剤名 10/24 テルスタ - フロアブル 登録内容 ( 適用拡大を含む のあらまし 対象作物内容 もも 対象害虫の

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H27年度2月表紙チンゲンサイ白さび病

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展示圃要領1


常緑_虫30.smd

(11) 主要機器 計測及びデータ作成に使用した機器は下表のとおりである 表 Ⅱ-5-(11)-1 主要機器一覧 作業工程 名称 数量 計測 撮影用固定翼機レーザ測距装置 GPS/IMU 装置 セスナ社製 208 型 LeicaGeosystems 社 ALS70 LeicaGeosystems 社

DNA 抽出条件かき取った花粉 1~3 粒程度を 3 μl の抽出液 (10 mm Tris/HCl [ph8.0] 10 mm EDTA 0.01% SDS 0.2 mg/ml Proteinase K) に懸濁し 37 C 60 min そして 95 C 10 min の処理を行うことで DNA

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【WNI】第二回花粉飛散傾向2018

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1 著者が長い間研究してきた核果類(モモ スモモ オウトウ)のうち スモモとオウトウは結実が不安定で いかに安定して結実させるかが大きな課題になっている これに対し モモの結実確保は比較的容易だが 食味のばらつき を指摘されることが多い 品質の揃った果実を安定してとる モモではこれが課題であり 実現

(2) 新系統の発生状況平成 28 年 4~10 月にかけて府内 19 地点のネギ キャベツ及びタマネギほ場から採集したネギアザミウマの次世代を一頭飼育法 ( 十川ら, 2013) により調べた結果 南丹市以南の16 地点で新系統 ( 産雄性生殖系統 ) を確認した 山城地域では 産雄性生殖系統が優

情報01-1.xlsx


表 (2) カワラハンミョウ成虫 ヤマトバッタ調査ラインの状況 区域ライン設置場所植生の状況 4 不安定帯 ~ 半安定帯 コウボウムギ群落 植被率 5% 程度 2 5 半安定帯コウボウムギ群落 植被率 10% 程度 6 半安定帯 ~ 安定帯 ビロードテンツキが混じるコウボウムギ群落 植被

令和元年度 (2019 年度 ) 病害虫発生予察情報第 5 号 6 月予報北海道病害虫防除所令和元年 (2019 年 )5 月 29 日 Tel:0123(89)2080 Fax:0123(89)2082 季節予報 ( 付記 )


殺虫数(頭(2) 京田辺市におけるフェロモントラップへの誘殺虫数 (7 月第 6 半旬 ~8 月第 5 半旬の合計値 ) は81.0 頭で 平年の22.4 頭を上回っている (+)( 図 1) また 本年度からフェロモントラップを設置した亀岡市および京丹後市でも 8 月第 4 半旬から誘殺数が急増し

イ農作物の野生鳥獣被害とりまとめ ( 調査対象期間平成 28 年 4 月 ~ 平成 29 年 3 月 ) 総被害面積 (ha) 総被害金額 ( 千円 ) ,152 ( 鳥害 獣害 ) ( 鳥害 34,673 獣害 133,479) ウ肥料に関する業務 (

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奈良農研セ研報 (Bull. Nara. Agr. Res. Cen.) 46: 原著論文 奈良県におけるカキ樹幹害虫ヒメコスカシバとフタモンマダラメイガの発生消長と防除対策 藤田博之 林良考 Seasonal Prevalence and Control of Synanthedo

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令和元年度 (2019 年度 ) 病害虫発生予察情報第 13 号 8 月予報北海道病害虫防除所令和元年 (2019 年 )7 月 29 日 Tel:0123(89)2080 Fax:0123(89)2082 季節予報 ( 付記

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ネギ 防除法

Ⅲ-2-(1)施設野菜

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研究情報 渋ガキ 刀根早生 果実の海外輸出流通技術の開発 かき もも研究所主任研究員 岩橋信博 これまでかき もも研究所ではカキの海外輸出のため 改良ダンボールや 1 メチルシクロプロペン (1-MCP) を活かした出荷技術の確立に取り組んできました 改良ダンボールは水分ストレスを抑制し 1-MCP

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平成11年東京都におけるスギ・ヒノキ科花粉飛散状況

スダチ栽培におけるマイナー害虫の被害と防除 徳島県立農林水産総合技術支援センター病害虫防除所兼田武典 Takemichi Kaneda はじめに スダチ (Citrus sudachi Hort.ex Shirai; 図 1) は徳島特産の緑色が美しい小型の香酸カンキツである 近年の食生活の多様化と

石原の農薬登録情報 2 登録変更に関するお知らせ 2016 年 4 月 12 日 5 月 13 日までの間に登録された弊社の新農薬 ( 適用拡大を含む ) は 次の通りです ( 下線部が適用拡大になりました ) 4/20 付け適用拡大トアロー 和剤 CT 作物名適用病害虫名希釈倍数 10a 当り散布

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平成16年度農作物有害動植物発生予察情報

H17防除指針記入用ファイル

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(c) (d) (e) 図 及び付表地域別の平均気温の変化 ( 将来気候の現在気候との差 ) 棒グラフが現在気候との差 縦棒は年々変動の標準偏差 ( 左 : 現在気候 右 : 将来気候 ) を示す : 年間 : 春 (3~5 月 ) (c): 夏 (6~8 月 ) (d): 秋 (9~1

果樹の生育概況

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長さの問題 本文ではこの虫は 4c m ~ lo cm とある.

スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採

きのことキノコバエと線虫の三者関係

Transcription:

ⅩⅩⅩⅩⅡ キウイフルーツの病害虫 A カメムシ類果樹を加害するカメムシ類としてはチャバネアオカメムシ ツヤアオカメムシ クサギカメムシが主要種であるが 地域により また 果樹の種類により優占種が異なるので注意する いずれも加害期間が長く しかも発生変動が大きいので発生予察は難かしいが 越冬密度及び成幼虫の発生飛来消長の把握に重点をおく 1 調査ア越冬密度調査越冬成虫の密度を調査し 発生量の予察に利用する クサギカメムシは建造物の隙間等て越冬するので 10 月までに簡易小屋トラップを設置するか 果樹園の作業舎等の壁面にむしろを張り その中に侵入する成虫数を調査する また 作業舎 神社 仏閣等の越冬場所について単位時間当たりの成虫数を調査してもよい チャバネアオカメムシは主として落葉中で越冬しているので 1 地区について1m2範囲内の落葉を3 地点から集めて調査する その際 11mm 目の金網節を使用すると調査が簡便となり見落しも少なくなる また 落葉が少ない地域では単位面積当たりの落葉を見取り調査してもよい なお 本種は越冬中は体色が赤褐色となっており 落葉とよく似ているので注意して調査する イ クサギカメムシは越冬場所ヘの移動がほぼ完了した11 月下旬 ~12 月上旬と越冬あけ前の3 月中旬 ~4 月上旬に各 1 回行う チャバネアオカメムシは11 月下旬 ~3 月に1 回行う 指標植物による調査主な餌植物上における寄生状況を調査し 発生時期及び発生量を予察する

大型の捕虫網 ( 径 42cm) を使用し 1 地区 5 地点の払い落し法により調査する 越冬後の5~6 月の指標植物としては結実しているクワ サクラ ヒイラギ及び開花中のミカン 新梢伸長中のキリが適しており また 新成虫が出現する7 月以降の好適な指標植物として結実したスギ ヒノキ サワラ ヒイラギ キササゲ ウメモドキ ナンキンハゼ及びキリ ( 結実してなくてもよい ) があるので 手近にあるこれらの植物を対象として調査する なお 寄生状況は地区による密度差が大きいので なるべく多くの地区で実施することが望ましい 5 月から10 月まで10~15 日ごと ウ予察灯による調査予察灯により成虫の誘殺状況を把握し 防除要否及び防除時期を予察する 高圧水銀灯 (100W 乾式 ) 又はブラックライト (20W 乾式 ) を使用し 誘殺虫数を種類別に調査する 4 月から10 月まで毎日又は5 日ごと エ果実の被害調査果実の被害状況を調査し 発生時期と発生量の予察に資する 着果した枝にラベルをつけ 100 果について被害状況を調査する 9 月又は10 月 年 1 回 2 予察法果樹カメムシ類は発生量の年次変動が非常に大きく 増殖地が果樹園から遠く離れているという特性から 発生量や被害時期の長期的な予察が重要となる (1) チャバネアオカメムシでは成虫及び幼虫の主要な餌植物であるヒノキ スギ球果の結実量が各樹種の被害状況に大きく影響するので これにより長期の予察を行なう 具体的には 球果の結実が多い年には離脱が遅くなるために 秋の加害時期が遅くなる傾向にある 一方 越冬密度が高くなるため翌年の春から初夏にかけての加害が多発する傾向にある 逆に 結実が少ない年には8 月以降の加害が早期化するが 越冬密度は少なくなる傾向にある (2) スギ ヒノキ球果量との間の相関が見られる花粉飛散数と発生量や果実被害率 時期との間にも相関がみられる場合がある この場合には両者の関係式を作成して 長期の予察を行う

また チャバネアオカメムシでは 越冬世代成虫が春から初夏に餌を求めて樹木類の花 新梢やサクラ クワ果実など盛んに移動する過程で果樹園にも飛来する 越冬世代の主な加害樹種はビワ ウメ モモであるが 多発生時には それらに加えてナシ カキ カンキツの幼果等 あらゆる樹種を加害し 被害が7 月 ~8 月上旬まで長期化する傾向にある 夏以降はスギ ヒノキなどの針葉樹林で球果を餌として発育した当年世代成虫が 餌が枯渇すると針葉樹林を離脱し 果樹園に飛来する 当年世代の主な加害樹種はナシ カキ カンキツ等である 各世代の予察におけるポイントは以下の通りになる (1) 越冬世代 : 越冬密度 越冬場所近傍に設置したフェロモントラップへの誘殺消長 及び5~6 月の指標植物上での密度と5~7 月の果実加害量との関係が高いのでこれにより被害量を予察する (2) 当年世代 : ヒノキ スギ等針葉樹林に設置したフェロモントラップによる当年世代の誘殺量および消長から 夏 ~ 秋のカメムシの離脱時期を予察する フェロモンに誘殺される幼虫は餌不足により栄養状態が悪い個体なので 3 齢以降幼虫の誘殺開始時期と成虫の針葉樹林離脱時期との関連が深い また 新世代成虫の誘殺数のピーク後に針葉樹林離脱が起こる傾向にある ヒノキ球果の口針鞘数の増加状況により ヒノキ林からの当年世代成虫の離脱時期を予察する 口針鞘数が球果あたり25 本を超えると 餌の劣化によりヒノキ林からの成虫の離脱がはじまる これらの点に留意した上で 予察灯および果樹園周辺に設置したフェロモントラップによる成虫の誘殺消長から短期の予察を行う

キウイの巡回調査実施方法 キウイ園における巡回調査の方法は 総論のⅡのB 及び次に示す方法によるものとする 1 調査点 調査樹 調査部位の抽出方法 調査点数は 地図上において系統抽出法等により 労力の許容範囲内でできるだけ多く抽出する 調査樹は 各調査園からできるだけ多く抽出することが望ましいが 1 園当たりの調査樹を多くする よりも 調査園の抽出数を多くするように努める 調査部位は 抽出された調査樹から任意に100 果穂を選ぶ 2 調査時期及び間隔 9 月又は10 月に1 回 3 時期別調査項目 病 害 虫 名 調 査 項 目 時 期 カメムシ類 被 害 果 率 9 月又は10 月 4 発生程度別面積の算定方法 予察対象単位の面積と調査点数及び次に示す発生程度基準から発生程度別面積を求める ア カメムシ類 程 度 被 害 果 率 (%) 無 0 少 1 ~ 2 中 3 ~ 5 多 6 ~ 10 甚 11 以 上

ⅩⅩⅩⅩⅢ スモモの病害虫 A スモモヒメシンクイ 1 調 査 (1) 定点における調査 ア フェロモントラップによる成虫発生消長調査 総論に準じて果樹園内にフェロモントラップを設置し 雄成虫の誘殺状況を調査する 4~10 月まで5~7 日ごと イ 予察ほ場における発生状況調査 ( 被害果率 ) 1ほ場当たり3~5 樹の調査樹を選定し 各樹 100 果について寄生の有無を調査し 被害果率 を求める ( 発生程度別基準 ) 程 度 無 少 中 多 甚 被害果率 (%) 0 1~2 3~5 6~10 11 以上 幼果期から収穫期まで月 1 回 (2) 巡回による調査 予察ほ場における発生状況調査 ( 被害果率 ) 1ほ場当たり3~5 樹の調査樹を選定し 各樹 100 果について寄生の有無を調査し 被害果率を 求める ( 発生程度別基準 ) 程 度 無 少 中 多 甚 被害果率 (%) 0 1~2 3~5 6~10 11 以上 幼果期から収穫期まで月 1 回 2 予察法 フェロモントラップへの誘殺状況や 前月まで及び歴年同期の発生状況調査結果から発生時期及び発 生量を予察する

ⅩⅩⅩⅩⅣ びわの病害虫 A カメムシ類果樹を加害するカメムシ類としてはチャバネアオカメムシ ツヤアオカメムシ クサギカメムシが主要種であるが 地域により また 果樹の種類により優占種が異なるので注意する いずれも加害期間が長く しかも発生変動が大きいので発生予察は難かしいが 越冬密度及び成幼虫の発生飛来消長の把握に重点をおく 1 調査ア越冬密度調査越冬成虫の密度を調査し 発生量の予察に利用する クサギカメムシは建造物の隙間等て越冬するので 10 月までに簡易小屋トラップを設置するか 果樹園の作業舎等の壁面にむしろを張り その中に侵入する成虫数を調査する また 作業舎 神社 仏閣等の越冬場所について単位時間当たりの成虫数を調査してもよい チャバネアオカメムシは主として落葉中で越冬しているので 1 地区について1m2範囲内の落葉を3 地点から集めて調査する その際 11mm 目の金網節を使用すると調査が簡便となり見落しも少なくなる また 落葉が少ない地域では単位面積当たりの落葉を見取り調査してもよい なお 本種は越冬中は体色が赤褐色となっており 落葉とよく似ているので注意して調査する クサギカメムシは越冬場所ヘの移動がほぼ完了した11 月下旬 ~12 月上旬と越冬あけ前の3 月中旬 ~4 月上旬に各 1 回行う チャバネアオカメムシは11 月下旬 ~3 月に1 回行う

イ指標植物による調査主な餌植物上における寄生状況を調査し 発生時期及び発生量を予察する 大型の捕虫網 ( 径 42cm) を使用し 1 地区 5 地点の払い落し法により調査する 越冬後の5~6 月の指標植物としては結実しているクワ サクラ ヒイラギ及び開花中のミカン 新梢伸長中のキリが適しており また 新成虫が出現する7 月以降の好適な指標植物として結実したスギ ヒノキ サワラ ヒイラギ キササゲ ウメモドキ ナンキンハゼ及びキリ ( 結実してなくてもよい ) があるので 手近にあるこれらの植物を対象として調査する なお 寄生状況は地区による密度差が大きいので なるべく多くの地区で実施することが望ましい 5 月から10 月まで10~15 日ごと ウ予察灯による調査予察灯により成虫の誘殺状況を把握し 防除要否及び防除時期を予察する 高圧水銀灯 (100W 乾式 ) ブラックライト(20W 乾式 ) 又は白熱電球 (60W) を使用し 誘殺虫数を種類別に調査する 4 月から10 月まで毎日又は5 日ごと エ果実の被害調査果実の被害状況を調査し 発生時期と発生量の予察に資する 予察ほ場において 1ほ場当たり2~10 樹を任意に選び 各樹のそれぞれ10~50 果 ( 房 ) 合計 100 果 ( 房 ) について 寄生状況を調査する 4 月から収穫期 月 1 回 2 予察法果樹カメムシ類は発生量の年次変動が非常に大きく 増殖地が果樹園から遠く離れているという特性から 発生量や被害時期の長期的な予察が重要となる (1) チャバネアオカメムシでは成虫及び幼虫の主要な餌植物であるヒノキ スギ球果の結実量が各樹種の被害状況に大きく影響するので これにより長期の予察を行なう 具体的には 球果の結実が多い年には 越冬密度が高くなるため翌年の春から初夏にかけての加害が多発する傾向にある (2) スギ ヒノキ球果量との間の相関が見られる花粉飛散数と発生量や果実被害率 時期との間にも相関がみられる場合がある この場合には両者の関係式を作成して 長期の予察を行う

また チャバネアオカメムシでは 越冬世代成虫が春から初夏に餌を求めて樹木類の花 新梢やサクラ クワ果実など盛んに移動する過程で果樹園にも飛来する 越冬世代の主な加害樹種はビワ ウメ モモであるが 多発生時には それらに加えてナシ カキ カンキツの幼果等 あらゆる樹種を加害し 被害が7 月 ~8 月上旬まで長期化する傾向にある 夏以降はスギ ヒノキなどの針葉樹林で球果を餌として発育した当年世代成虫が 餌が枯渇すると針葉樹林を離脱し 果樹園に飛来する 当年世代の主な加害樹種はナシ カキ カンキツ等である (3) 越冬密度 越冬場所近傍に設置したフェロモントラップへの誘殺消長 及び5~6 月の指標植物上での密度と5~7 月の果実加害量との関係が高いのでこれにより被害量を予察する びわの巡回調査実施方法 びわ園における巡回調査の方法は 総論のⅡのB 及び次に示す方法によるものとする 1 調査点 調査樹 調査部位の抽出方法調査点数は 地図上において系統抽出法等により 労力の許容範囲内でできるだけ多く抽出する 調査樹は 各調査園からできるだけ多く抽出することが望ましいが 1 園当たりの調査樹を多くするよりも 調査園の抽出数を多くするように努める 調査部位は 抽出された調査樹から任意に100 果穂を選ぶ 2 調査時期及び間隔 4 月から収穫期 月 1 回 3 時期別調査項目病害虫名調査項目時期カメムシ類寄生果 ( 房 ) 率 4 月から収穫期 4 発生程度別面積の算定方法予察対象単位の面積と調査点数及び次に示す発生程度基準から発生程度別面積を求める ア カメムシ類程 度 被 害 果 率 (%) 無 0 少 1 中 2 ~ 3 多 4 ~ 10 甚 11 以 上

ⅩⅩⅩⅩⅤ ブロッコリーの病害虫 A アブラムシ類 1 調 査 (1) 定点における調査 ア 黄色水盤による有翅虫の飛来消長調査 総論に準ずる 3 月から10 月又は栽培期間中 5~7 日ごと イ ほ場における発生消長調査 1ほ場あたり25~50 株を任意に選び 種類ごとに寄生株率を調査する なお 発生の程度は次 の基準により評価できる ( 発生程度別基準 ) 程 度 無 少 中 多 甚 寄生株率 (%) 0 1~25 26~50 51~75 76 以上 定植後から月 1~2 回 (2) 巡回による調査発生状況調査 なるべく多くのほ場を抽出し 1ほ場から25~50 株を任意に選び 種類ごとの寄生株率を求め 次の基準によって程度別発生面積を算出する ( 発生程度別基準 ) 程 度 無 少 中 多 甚 寄生株率 (%) 0 1~25 26~50 51~75 76 以上 定植後から月 1~2 回 2 予 察 法 (1) 暖冬年には越冬量が多く 3~4 月の気温が高いと 増殖時期が早まり 寄生数も多くなる (2)9 月の降水量が少なく 日照時間が多いと 秋期有翅虫の発生は多くなる