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18 第11節/心疾患による障害

受給者番号 ( ) 患者氏名 ( ) 告示番号 72 慢性心疾患 ( ) 年度小児慢性特定疾病医療意 書 新規申請用 経過 ( 申請時 ) 直近の状況を記載 2/2 薬物療法 強心薬 :[ なし あり ] 利尿薬 :[ なし あり ] 抗不整脈薬 :[ なし あり ] 抗血小板薬 :[ なし あり

概要 214 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症 215 ファロー四徴症 216 両大血管右室起始症 1. 概要ファロー四徴症類縁疾患とは ファロー四徴症に類似の血行動態をとる疾患群であり ファロー四徴症 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖 両大血管右室起始症が含まれる 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症は ファ

Microsoft PowerPoint - ①140303(文書室意見反映)⑥「障害年金(心疾患の障害)」を作成される医師の皆さまへ(HP・広報誌用)

臨床所見 ( 申請時 ) 直近の状況を記載症状告示番号 72 慢性心疾患 ( ) 年度小児慢性特定疾病医療意 書 継続申請用 病名 1 洞不全症候群 受給者番号受診日年月日 受付種別 継続 転出実施主体名 転入 ( ) ふりがな 氏名 (Alphabet) ( 変更があった場合 ) ふりがな以前の登

障害程度等級表 心臓機能障害 1 級 心臓の機能の障害により 自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 - 3 級 心臓の機能の障害により 家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 心臓の機能の障害により 社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

循環器 Cardiology 年月日時限担当者担当科講義主題 平成 23 年 6 月 6 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 17 日 ( 金 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 20 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 1

d 運動負荷心電図でSTの低下が0.1mV 以上の所見があるもの ( イ ) 臨床所見で部分的心臓浮腫があり かつ 家庭内での普通の日常生活活動若しくは社会での極めて温和な日常生活活動には支障がないが それ以上の活動は著しく制限されるもの又は頻回に頻脈発作を繰り返し 日常生活若しくは社会生活に妨げと

188-189

更生相談・判定依頼のガイド

直接還流するように血行動態を修正する手術 ) を施行する ただ 順調なフォンタン循環であっても通常の慢性うっ血性心不全状態であるため いつかは破綻していくこととなる フォンタン型手術は根治的手術ではない また フォンタン型手術適応外となった群には 効果的な薬物治療はなく ACE 阻害薬 利尿薬の効果

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心臓血管外科カリキュラム Ⅰ. 目的と特徴心臓血管外科は心臓 大血管及び末梢血管など循環器系疾患の外科的治療を行う診療科です 循環器は全身の酸素 栄養供給に欠くべからざるシステムであり 生体の恒常性維持において 非常に重要な役割をはたしています その異常は生命にとって致命的な状態となり 様々な疾患

心不全とは?(Fig.3) 心機能低下に起因する循環不全 と定義され 心臓が全身の組織における代謝の必要量に応じて 血液を十分駆出できない状態です 発症の仕方により 急性心不全 (acute heart failure:ahf) と慢性心不全 (chronic heart failure:chf)

胸痛の鑑別診断持続時間である程度の鑑別ができる 数秒から1 分期外収縮筋 骨格系の痛み 心因性 30 分以内 狭心症食道痙攣 逆流性食道炎 30 分以上 急性心筋梗塞 解離性大動脈瘤 肺塞栓症 急性心膜炎自然気胸 胸膜炎胃 十二指腸潰瘍 胆嚢炎 胆石症帯状疱疹 急性心筋梗塞の心電図変化 R P T

第6章 循環器系

臨床調査個人票 新規 更新 189 無脾症候群 行政記載欄 受給者番号判定結果 認定 不認定 基本情報 姓 ( かな ) 名 ( かな ) 姓 ( 漢字 ) 名 ( 漢字 ) 郵便番号 住所 生年月日西暦年月日 * 以降 数字は右詰めで 記入 性別 1. 男 2. 女 出生市区町村 出生時氏名 (

01 表紙

虎ノ門医学セミナー

認定看護師教育基準カリキュラム

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

心臓静脈動脈体循環 心臓の働き 肺循環 心臓は 全身に血液を送り出すポンプの働きをしています 生命維持に必要な酸素や栄養素などを含む血液を 拍動によって肺や全身へめぐらせます 肺循環心臓と肺のあいだをめぐる血液循環です 肺で酸素を取り入れ 二酸化炭素を放出します 体循環心臓と全身のあいだをめぐる血液

TAVIを受ける 患者さんへ

エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管

心臓弁膜症とはどんな病気 心臓にある弁の異常による病気の総称です 心臓には4つの部屋があり 各部屋の間には血液が 一方向に流れるよう片開きの扉の働きをする弁 逆流防止弁 があります 弁膜の異常は狭窄と逆 流 閉鎖不全 の2つがあります 狭窄は扉の開きが悪くなり 心臓の次の部屋や動脈に血液が送 り出さ

印刷用1

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大学教職員の心臓検診の現状 * 和井内由充子 大学保健管理センターの主要業務のひとつに 健康診断とそれに基づく健康管理がある 突然 死にもつながる心疾患の早期発見と管理は重要 である 大学生の心疾患管理に関しては以前報 告 1-6) した 大学のもうひとつの主要構成員で ある教職員の管理の現状を今回

第1 総 括 的 事 項

心疾患患による死亡亡数等 平成 28 年において 全国国で約 20 万人が心疾疾患を原因として死亡しており 死死亡数全体の 15.2% を占占め 死亡順順位の第 2 位であります このうち本県の死亡死亡数は 1,324 人となっています 本県県の死亡率 ( 人口 10 万対 ) は 概概ね全国より高

058 肥大型心筋症

埼玉医科大学電子シラバス

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心臓血管外科・診療内容

8. 胸部 X 線写真 (4 月 11 日 ) 心臓 大血管陰影 ( 右第 1 2 弓 左第 1 4 弓 ) X 線像 : 拡大 の意義 左房拡大所見 心臓の血行力学的回転 心胸郭比の求め方と正常値 心不全における X 線写真の肺野所見 ( 血流の再分布 間質性肺水腫 肺胞性肺水腫 ) 9. 心臓超

平成 30 年度循環ブロック講義重要ポイント 1. 循環器疾患の症候学 (2 月 1 日 ) 狭心症の問診のポイント (Nitroglycerin SAVES angina.) 不整脈の問診のポイント 心不全の重症度を表す NYHA の重症度分類 起座呼吸 発作性夜間呼吸困難 中心性チアノーゼと末梢

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別様式診断書 呼吸器の機能障害の状況及び所見 の所見欄に記載された内容は適宜省略してよいが 現状の固定 永続性の認定の参考となる治療内容等についても具体的に記載すること (4) 総合所見 について経過及び現症から障害認定に必要な事項 特に換気の機能 動脈血ガス値 活動能力の程度を明記し 併せて 障害

自動車運送事業者における 心臓疾患大血管疾患 対策ガイドライン 概要版 本ガイドラインのポイント 実践 業者が実施スクリーニング検査事医療機関が実施事業者が実施知識 健康起因事故の原因となる心臓疾患 大血管疾患 疾患の原因と予防 ( 参考 ) 関係法令について 心臓疾患 大血管疾患の早期発見と発症予

CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

心房細動1章[ ].indd

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平成 26 年 ₇ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 579 号付録 ) 2.NT-proBNP の臨床的意義 1 心不全 ( 収縮及び拡張機能障害 ) で早期より測定値が上昇するため 疾患の診断や病状の経過観察さらには予後予測等に活用できます 2NT-proBNP の測定値は疾患の重症度

第5章 体液

循環器系疾患 特発性拡張型心筋症 1. 概要拡張型心筋症は 心筋収縮と左室内腔の拡張を特徴とする疾患群であり 高血圧 弁膜性 虚血性 ( 冠動脈性 ) 心疾患など原因の明らかな疾患を除外する必要がある 2. 疫学 1998 年に施行された厚生省の特発性心筋症調査研究班による全国調査では 拡張型心筋症

1. 期外収縮 正常なリズムより早いタイミングで心収縮が起きる場合を期外収縮と呼び期外収縮の発生場所によって 心房性期外収縮と心室性期外収縮があります 期外収縮は最も発生頻度の高い不整脈で わずかな期外収縮は多くの健康な人でも発生します また 年齢とともに発生頻度が高くなり 小学生でもみられる事もあ

障害程度等級表 級別じん臓機能障害 1 級 じん臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 3 級 じん臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 じん臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

千葉県身体障害認定基準

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第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

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循環器疾患の理学療法評価 心不全

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恒久型ペースメーカー椊え込み術

心臓カテーテル検査についての説明文

狭心症と心筋梗塞 何を調べているの? どのように調べるの? 心臓の検査虚血チェック きょけつ の きょうさく狭窄のチェック 監修 : 明石嘉浩先生聖マリアンナ医科大学循環器内科

2019/7/9 市民公開講座 2019 健やかな高齢社会を生きるために心臓を守ろう ~ 心不全を知るコトから始めよう ~ 藤枝市立総合病院循環器内科渡辺明規 2019 年 7 月 7 日藤枝市民会館 1

2005年 vol.17-2/1     目次・広告

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

死亡率(人口10 万対1950 '55 '60 '65 '70 '75 '80 '85 '90 ' 心血管系疾患 ( 動脈硬化による ) とがんが死亡の大 部分を占める 脳血管疾患 悪性新生物 結核 心疾患 )肺炎 50 不慮の事故自殺 0 肝疾患昭和

心臓血管外科手術説明書 国立病院機構東京医療センター心臓血管外科 様

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報道機関各位 2017 年 9 月 26 日 東北大学大学院医学系研究科 慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する新規治療 - バルーン肺動脈形成術は効果的で安全な治療法である - 研究のポイント 注 国の指定難病である慢性血栓塞栓性肺高血圧症 (CTEPH) 1 は 肺の動脈に血栓が生じて血管が狭くなる

1 経 緯


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ここが知りたい かかりつけ医のための心不全の診かた

要件の判定に必要な事項 1. 患者数 ( 平成 24 年度医療受給者証保持者数 ) 3,144 人 2. 発病の機構不明 ( 心筋収縮蛋白の遺伝子異常が主な病因であると考えられている ) 3. 効果的な治療方法未確立 ( 根治治療なし ) 4. 長期の療養必要 ( 心不全などの治療の継続が必要である

図表 1 1,000 万円以上高額レセプト上位 100 位 ( 平成 28 年度 ) 注 : 主傷病名欄の ( ) は調剤レセプト ( 単位 : 円 ) 順位月額医療費 主傷病名 順位月額医療費 主傷病名 順位月額医療費 主傷病名 順位月額医療費 主傷病名 1 106,941,690 フォンウィルブ

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循環器疾患診療実態調査組織 IT/Database 委員会委員長小川久雄 委員 小野稔東京大学大学院医学系研究科 委員 香坂俊慶應義塾大学病院 委員 興梠貴英自治医科大学附属病院 委員 斎藤能彦奈良県立医科大学 委員 宍戸稔聡国立循環器病研究センター研究所循環器病統合情報センター 委員 筒井裕之九州

CPX・運動療法ハンドブック 改訂4版

老衰 2% 日本における主な死因 : 動脈硬化性疾患は 25% その他 33% 悪性新生物 ( ガン ) 26% 自殺 3% 不慮の事故 3% 肺炎 8% 脳血管疾患 ( 脳卒中など ) 11% 脳心血管系疾患 25% 心疾患 ( 心筋梗塞など ) 14% 厚生労働省 平成 15 年度人口動態統計

年301 番 循環器系の疾患 (Cardiovascular Disease) 責任者: 石原正治主任教授 坂口太一主任教授 内科学循環器内科 朝倉正紀教授 峰隆直特任准教授 内藤由朗講師 赤堀宏洲講師 奥原祥貴講師 織原良行助教 正井久美子助教 増山理特別招聘教授 伊賀幹二非常勤講師 駒村和雄非常

今後のがん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会の進め方とスケジュールについて

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り ( 狭窄といいます ) 血管が急にけいれんして狭くなったり( 攣縮 ) 血の塊( 血栓 ) が出来て詰まってしまうことがあります 冠動脈が狭く十分に心臓の筋肉に血液が供給されない状態で 胸が締め付けられるような感覚 痛みなどを伴った場合 狭心症とよび 循環器専門施設で冠動脈の状態をカテーテルで調

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認定看護師教育基準カリキュラム改正(案)の概要

2011/8/18 祐勉強会 心不全

医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会の進め方(案)

要件の判定に必要な事項 1. 患者数 ( 平成 28 度医療受給者証保持者数 ) 4,667 人 2. 発病の機構不明 ( 心筋収縮蛋白の遺伝子異常が主な病因であると考えられている ) 3. 効果的な治療方法未確立 ( 根治治療なし ) 4. 長期の療養必要 ( 心不全などの治療の継続が必要である

運動療法の効果 運 動療 法は 心 臓手 術を受けるに至った 冠 動脈 疾 患の危険因子を減らす2次予防だけでなく 手術を受けたことによるいろいろな問題点を改善します 1 運動能力 体力が向上します 心臓手術後の運動療法は運動能力を改善させます 弁膜症の場合 弁置換術によって心機能は正常化しま すが

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

PowerPoint プレゼンテーション

( 参考 ) 国民年金法施行令別表 厚生年金保険法施行令別表第 及び第

案とれ 「機能区分コード」(事務連絡)

循環器6) 冠動脈バイパス術 A C 141 循環器 知識 技術 技能 症例 11. 循環器疾患の生化学的診断 ( 新しいバイオマーカーを含む ) A B 135 Ⅳ. 治療 危険因子矯正法 ( 生活習慣変容 ) 135 1) 減塩 A A 136 2) 減量 A A 136 3) 禁

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肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

第6 呼吸器機能障害

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第 11 節 / 心疾患による障害 心疾患による障害の程度は 次により認定する 1 認定基準 心疾患による障害については 次のとおりである 令別表障害の程度障害の状態 国年令別表厚年令別表第 1 1 級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって 日常生活が著しい制限を受けるか 又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの身体の機能に 労働が制限を受けるか 又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの 心疾患による障害の程度は 呼吸困難 心悸亢進 尿量減少 夜間多尿 チアノーゼ 浮腫等の臨床症状 X 線 心電図等の検査成績 一般状態 治療及び病状の経過等により 総合的に認定するものとし 当該疾病の認定の時期以後少なくとも1 年以上の療養を必要とするものであって 長期にわたる安静を必要とする病状が 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを 1 級に 日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものをに また 労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものをに該当するものと認定する 2 認定要領 (1) この節に述べる心疾患とは 心臓だけではなく 血管を含む循環器疾患を指すものである ( ただし 血圧については 本章 第 17 節高血圧症による障害 で述べるので除く ) 心疾患による障害は 弁疾患 心筋疾患 虚血性心疾患 ( 心筋梗塞 狭心症 ) 難治性不整脈 大動脈疾患 先天性心疾患に区分する (2) 心疾患の障害等級の認定は 最終的には心臓機能が慢性的に障害された慢性心不全の状態を評価することである この状態は虚血性心疾患や弁疾患 心筋疾患などのあらゆる心疾患の終末像である 慢性心不全とは 心臓のポンプ機能の障害により 体の末梢組織への血液供給が不十分となった状態を意味し 一般的には左心室系の機能障害が主体をなすが 右心室 - 64 -

系の障害も考慮に入れなければならない 左心室系の障害により 動悸や息切れ 肺うっ血による呼吸困難 咳 痰 チアノーゼなどが 右心室系の障害により 全身倦怠感や浮腫 尿量減少 頚静脈怒張などの症状が出現する (3) 心疾患の主要症状としては 胸痛 動悸 呼吸困難 失神等の自覚症状 浮腫 チアノーゼ等の他覚所見がある 臨床所見には 自覚症状 ( 心不全に基づく ) と他覚所見があるが 後者は医師の診察により得られた客観的症状なので常に自覚症状と連動しているか否かに留意する必要がある ( 以下 各心疾患に同じ ) 重症度は 心電図 心エコー図 カテーテル検査 動脈血ガス分析値も参考とする (4) 検査成績としては 血液検査 (BNP 値 ) 心電図 心エコー図 胸部 X 線 X 線 CT MRI 等 核医学検査 循環動態検査 心カテーテル検査 ( 心カテーテル法 心血管造影法 冠動脈造影法等 ) 等がある (5) 肺血栓塞栓症 肺動脈性肺高血圧症は 心疾患による障害として認定する (6) 心血管疾患が重複している場合には 客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定する (7) 心疾患の検査での異常検査所見を一部示すと 次のとおりである 区分異常検査所見 A B C D E F G H I 安静時の心電図において 0.2mV 以上のSTの低下もしくは 0.5mV 以上の深い陰性 T 波 (avr 誘導を除く ) の所見のあるもの負荷心電図 (6Mets 未満相当 ) 等で明らかな心筋虚血所見があるもの胸部 X 線上で心胸郭係数 60% 以上又は明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大 弁膜症 収縮能の低下 拡張能の制限 先天性異常のあるもの心電図で 重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見のあるもの左室駆出率 (EF)40% 以下のもの BNP( 脳性ナトリウム利尿ペプチド ) が 200pg/ml 相当を超えるもの重症冠動脈狭窄病変で左主幹部に 50% 以上の狭窄 あるいは 3 本の主要冠動脈に 75% 以上の狭窄を認めるもの心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり かつ 今日まで狭心症状を有するもの ( 注 1) 原則として 異常検査所見があるもの全てについて それに該当する心電図等を提出 ( 添付 ) させること ( 注 2) F についての補足心不全の原因には 収縮機能不全と拡張機能不全とがある 近年 心不全症例の約 40% はEF 値が保持されており このような例での心不全は左 - 65 -

室拡張不全機能障害によるものとされている しかしながら 現時点において拡張機能不全を簡便に判断する検査法は確立されていない 左室拡張末期圧基準値 (5-12mmHg) をかなり超える場合 パルスドプラ法による左室流入血流速度波形を用いる方法が一般的である この血流速度波形は急速流入期血流速度波形 (E 波 ) と心房収縮期血流速度波形 (A 波 ) からなり E/A 比が 1.5 以上の場合は 重度の拡張機能障害といえる ( 注 3) G についての補足心不全の進行に伴い 神経体液性因子が血液中に増加することが確認され 心不全の程度を評価する上で有用であることが知られている 中でも BNP 値 ( 心室で生合成され 心不全により分泌が亢進 ) は 心不全の重症度を評価する上でよく使用されるNYHA 分類の重症度と良好な相関性を持つことが知られている この値が常に 100 pg/ml 以上の場合は NYHA 心機能分類でⅡ 度以上と考えられ 200 pg/ml 以上では心不全状態が進行していると判断される ( 注 4) H についての補足すでに冠動脈血行再建が完了している場合を除く (8) 心疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである 一般状態区分表区分一般状態 アイウエオ 無症状で社会活動ができ 制限を受けることなく 発病前と同等にふるまえるもの軽度の症状があり 肉体労働は制限を受けるが 歩行 軽労働や座業はできるもの例えば 軽い家事 事務など歩行や身のまわりのことはできるが 時に少し介助が必要なこともあり 軽労働はできないが 日中の 50% 以上は起居しているもの身のまわりのある程度のことはできるが しばしば介助が必要で 日中の 50% 以上は就床しており 自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの身のまわりのこともできず 常に介助を必要とし 終日就床を強いられ 活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの ( 参考 ) 上記区分を身体活動能力にあてはめると概ね次のとおりとなる 区分アイウエオ 身体活動能力 6Mets 以上 4Mets 以上 6Mets 未満 3Mets 以上 4Mets 未満 2Mets 以上 3Mets 未満 2Mets 未満 - 66 -

( 注 ) Mets とは 代謝当量をいい 安静時の酸素摂取量 (3.5ml/kg 体重 / 分 ) を1Mets として活動時の酸素摂取量が安静時の何倍かを示すものである (9) 疾患別に各等級に相当すると認められるものを一部例示すると 次のとおりである 1 弁疾患障害の程度障害の状態病状 ( 障害 ) が重篤で安静時においても 心不全の症状 (NYHA 心機能分類 1 級クラスⅣ) を有し かつ 一般状態区分表のオに該当するもの 1 人工弁を装着術後 6 ヶ月以上経過しているが なお病状をあわらす臨床所見が 5 つ以上 かつ 異常検査所見が 1つ以上あり かつ 一般状態区分表のウ又はエに該当するもの 2 異常検査所見のA B C D E Gのうち 2 つ以上の所見 かつ 病状をあらわす臨床所見が 5 つ以上あり かつ 一般状態区分表のウ又はエに該当するもの 1 人工弁を装着したもの 2 異常検査所見のA B C D E Gのうち 1 つ以上の所見 かつ 病 状をあらわす臨床所見が 2 つ以上あり かつ 一般状態区分表のイ又はウに該当するもの ( 注 1) 複数の人工弁置換術を受けている者にあっても 原則 相当とする ( 注 2) 抗凝固薬使用による出血傾向については 重度のものを除き認定の対象とはしない 2 心筋疾患障害の程度障害の状態病状 ( 障害 ) が重篤で安静時においても 心不全の症状 (NYHA 心機能分類 1 級クラスⅣ) を有し かつ 一般状態区分表のオに該当するもの 1 異常検査所見のFに加えて 病状をあらわす臨床所見が 5 つ以上あり かつ 一般状態区分表のウ又はエに該当するもの 2 異常検査所見のA B C D E Gのうち 2 つ以上の所見及び心不全の病状をあらわす臨床所見が 5 つ以上あり かつ 一般状態区分表のウ又はエに該当するもの 1 EF 値が 50% 以下を示し 病状をあらわす臨床所見が 2 つ以上あり かつ 一般状態区分表のイ又はウに該当するもの 2 異常検査所見のA B C D E Gのうち 1 つ以上の所見及び心不全の病状をあらわす臨床所見が 1 つ以上あり かつ 一般状態区分表のイ又はウに該当するもの ( 注 ) 肥大型心筋症は 心室の収縮は良好に保たれるが 心筋肥大による心室拡張機能障害や左室流出路狭窄に伴う左室流出路圧較差などが病態の基本となっている したがってEF 値が障害認定にあたり 参考とならないことが多く 臨床所見や心電図所見 胸部 X 線検査 心臓エコー検査所見なども参考として総合的に障害等級を判断する - 67 -

3 虚血性心疾患 ( 心筋梗塞 狭心症 ) 障害の程度 障 害 の 状 態 1 級 病状 ( 障害 ) が重篤で安静時においても 常時心不全あるいは狭心症状を有し かつ 一般状態区分表のオに該当するもの 異常検査所見が 2 つ以上 かつ 軽労作で心不全あるいは狭心症などの症状をあらわし かつ 一般状態区分表のウ又はエに該当するもの 異常検査所見が 1つ以上 かつ 心不全あるいは狭心症などの症状が 1 つ以上あるもので かつ 一般状態区分表のイ又はウに該当するもの ( 注 ) 冠動脈疾患とは 主要冠動脈に少なくとも1ヶ所の有意狭窄をもつ あるいは 冠攣縮が 証明されたものを言い 冠動脈造影が施行されていなくとも心電図 心エコー図 核医学検 査等で明らかに冠動脈疾患と考えられるものも含む 4 難治性不整脈障害の程度障害の状態病状 ( 障害 ) が重篤で安静時においても 常時心不全の症状 (NYHA 心機能 1 級分類クラスⅣ) を有し かつ 一般状態区分表のオに該当するもの 1 異常検査所見のEがあり かつ 一般状態区分表のウ又はエに該当するもの 2 異常検査所見のA B C D F Gのうち2つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が 5 つ以上あり かつ 一般状態区分表のウ又はエに該当するもの 1 ペースメーカー ICDを装着したもの 2 異常検査所見のA B C D F Gのうち 1 つ以上の所見及び病状を あらわす臨床所見が 1 つ以上あり かつ 一般状態区分表のイ又はウに該当するもの ( 注 1) 難治性不整脈とは 放置すると心不全や突然死を引き起こす危険性の高い不整脈で 適切な治療を受けているにも拘わらず それが改善しないものを言う ( 注 2) 心房細動は 一般に加齢とともに漸増する不整脈であり それのみでは認定の対象とはならないが 心不全を合併したり ペースメーカーの装着を要する場合には認定の対象となる 5 大動脈疾患 障害の程度障害の状態 1 胸部大動脈解離 (Stanford 分類 A 型 B 型 ) や胸部大動脈瘤により 人工血管を挿入し かつ 一般状態区分表のイ又はウに該当するもの 2 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に 難治性の高血圧を合併したもの - 68 -

( 注 1) Stanford 分類 A 型 : 上行大動脈に解離がある Stanford 分類 B 型 : 上行大動脈まで解離が及んでいないもの ( 注 2) 大動脈瘤とは 大動脈の一部がのう状又は紡錘状に拡張した状態で 先天性大動脈疾患や動脈硬化 ( アテローム硬化 ) 膠原病などが原因となる これのみでは認定の対象とはならないが 原疾患の活動性や手術による合併症が見られる場合には 総合的に判断する ( 注 3) 胸部大動脈瘤には 胸腹部大動脈瘤も含まれる ( 注 4) 難治性高血圧とは 塩分制限などの生活習慣の修正を行った上で 適切な薬剤 3 薬以上の降圧薬を適切な用量で継続投与しても なお 収縮期血圧が 140 mmhg 以上又は拡張期血圧が 90mmHg 以上のもの ( 注 5) 大動脈疾患では 特殊な例を除いて心不全を呈することはなく また最近の医学の進歩はあるが 完全治癒を望める疾患ではない 従って 一般的には 1 には該当しないが 本傷病に関連した合併症 ( 周辺臓器への圧迫症状など ) の程度や手術の後遺症によっては さらに上位等級に認定する 大動脈瘤の定義 : 嚢状のものは大きさを問わず 紡錘状のものは 正常時 (2.5~3cm) の 1.5 倍以上のものをいう (2 倍以上は手術が必要 ) 人工血管にはステントグラフトも含まれる 6 先天性心疾患 障害の程度障害の状態 1 級 病状 ( 障害 ) が重篤で安静時においても 常時心不全の症状 (NYHA 心機能分類クラスⅣ) を有し かつ 一般状態区分表のオに該当するもの 1 異常検査所見が 2 つ以上及び病状をあらわす臨床所見が 5 つ以上あり かつ 一般状態区分表のウ又はエに該当するもの 2 Eisenmenger 化 ( 手術不可能な逆流状況が発生 ) を起こしているもので かつ 一般状態区分表のウ又はエに該当するもの 1 異常検査所見のC D Eのうち 1 つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が 1 つ以上あり かつ 一般状態区分表のイ又はウに該当するもの 2 肺体血流比 1.5 以上の左右短絡 平均肺動脈収縮期圧 50mmHg 以上のもので かつ 一般状態区分表のイ又はウに該当するもの 7 重症心不全心臓移植や人工心臓等を装着した場合の障害等級は 次のとおりとする ただし 術後は次の障害等級に認定するが 1~2 年程度経過観察したうえで症状が安定しているときは 臨床症状 検査成績 一般状態区分表を勘案し 障害等級を再認定する - 69 -

心臓移植 1 級 人工心臓 1 級 CRT( 心臓再同期医療機器 ) CRT-D( 除細動器機能付き心臓再同期医療機器 ) (10) 心臓ペースメーカー 又はICD( 植込み型除細動器 ) 又は人工弁を装着した場合の障害の程度を認定すべき日は それらを装着した日 ( 初診日から起算して 1 年 6 月を超える場合を除く ) とする (11) 各疾患によって 用いられる検査が異なっており また 特殊検査も多いため 診断書上に適切に症状をあらわしていると思われる検査成績が記載されているときは その検査成績も参考とし 認定時の具体的な日常生活状況等を把握して 総合的に認定する - 70 -