研究ノート

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平成27年度公立小・中学校における教育課程の編成実施状況調査結果について

平成 28 年度大分大学入学者選抜における実施教科 科目等について ( 予告 ) 平成 27 年 8 月大分大学 平成 28 年度入学者選抜 ( 一般入試 大学入試センター試験を課す推薦入試及びAO 入試 ) における大学入試センター試験の利用教科 科目及び個別学力検査等の出題教科 科目については,

人間関係を深めるとともに, 児童が自己の生き方についての考えを深め, 家庭や地域社会との連携を図りながら, 集団宿泊活動やボランティア活動, 自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない その際, 特に児童が基本的な生活習慣, 社会生活上の

資料7 新学習指導要領関係資料

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236390恵泉女学園大学2018年度学生生活ハンドブック.indd

授業概要と課題 第 1 回 オリエンテェーション 授業内容の説明と予定 指定された幼児さんびか 聖書絵本について事後学習する 第 2 回 宗教教育について 宗教と教育の関係を考える 次回の授業内容を事前学習し 聖書劇で扱う絵本を選択する 第 3 回 キリスト教保育とは 1 キリスト教保育の理念と目的

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

昼夜開講制 リーズナブルな学費 充実の奨学金制度 教育訓練給付制度

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3-2 学びの機会 グループワークやプレゼンテーション ディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加 この8 年間で グループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイント プレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0

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27年センター試験実施概要|旺文社教育情報センター

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平成16年度小学校及び中学校教育課程研究協議会報告書

学部名教育学部一般入試 学科 課程等名 選抜方法 大学入試センター試験の利用教科 科目名 学校教育課程学校教育課程教科科目 ( 注 2) 国語 国語 小論文 音楽の実技 美術の実技 総合問題 音楽の実技 美術の実技 地 理 歴 史 世界史 B 日本史 B 地理 B 体育の実技から1 教科 200 点

調査の概要調査方法 : インターネットによる調査調査対象 : 全国のイーオンキッズ保護者様 598 名 < お子様の年齢 > 未就学児 232 名 / 小学校低学年 (1~2 年生 )155 名 / 中学年 (3~4 年生 )123 名 / 高学年 (5~6 年生 )88 名 調査実施期間 :201

1 大学等を卒業して小学校教諭普通免許状を取得する ( 免許法別表第 1) 基礎資格 種類 基礎資格 専修 修士の学位 ( 大学 ( 短期大学を除く ) の専攻科又は大学院に1 年以上在学し,30 単位以上修得した場合を含む ) 一種 学士の学位 ( 学校教育法第 102 条第 2 項により大学院へ

教育学科幼児教育コース < 保育士モデル> 分野別数 学部共通 キリスト教学 英語 AⅠ 情報処理礎 子どもと人権 礎演習 ことばの表現教育 社会福祉学 英語 AⅡ 体育総合 生活 児童家庭福祉 英語 BⅠ( コミュニケーション ) 教育礎論 音楽 Ⅰ( 礎 ) 保育原理 Ⅰ 英語 BⅡ( コミュニ

現課程の高校生の実態

平成 25 年度教育課程普通科 教科科目 標準単位数 1 年 平成 25 年入学生 2 年 3 年 文系生物理系創造文化系 文系生物理系創造文化系 平成 24 年入学生 平成 23 年入学生 1 年 2 年 3 年 1 年 2 年 3 年 国語 国語表現 Ⅰ 2 E 2 E 2 E 2 E 2 国語

平成 29 年度 全国学力 学習状況調査結果と対策 1 全国学力調査の結果 ( 校種 検査項目ごとの平均正答率の比較から ) (1) 小学校の結果 会津若松市 国語 A は 全国平均を上回る 国語 B はやや上回る 算数は A B ともに全国平均を上回る 昨年度の国語 A はほぼ同じ 他科目はやや下

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平成28年度「英語教育実施状況調査」の結果について

グローバル化に対応した英語教育改革実施計画

ライフプランニング学科ライフデザインコース 学科 専攻名ミッション ( 教育目標 ) 到達目標到達目標に対応する授業科目 年 年 3 年授業科目春春春春組織のミッション到達目標 ( 綱 ) 到達目標 ( 細 ) 科目区分 科目区分 科目区分 3 家庭を経営する専門的知識と能力を身につけている に関す

商業科 ( 情報類型 ) で学習する商業科目 学年 単位 科目名 ( 単位数 ) 1 11 ビジネス基礎 (2) 簿記(3) 情報処理(3) ビジネス情報(2) 長商デパート(1) 財務会計 Ⅰ(2) 原価計算(2) ビジネス情報(2) マーケティング(2) 9 2 長商デパート (1) 3 プログ

グローバル化に対応した英語教育改革実施計画

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(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

5. 政治経済学部 ( 政治行政学科 経済経営学科 ) (1) 学部学科の特色政治経済学部は 政治 経済の各分野を広く俯瞰し 各分野における豊かな専門的知識 理論に裏打ちされた実学的 実践的視点を育成する ことを教育の目標としており 政治 経済の各分野を広く見渡す視点 そして 実践につながる知識理論

2018 年 9 月 3 日 このリリースは文部科学記者会でも発表しています 報道関係各位 株式会社イーオンイーオン 中学 高校の英語教師を対象とした 中高における英語教育実態調査 2018 を実施 英会話教室を運営する株式会社イーオン ( 本社 : 東京都新宿区 代表取締役 : 三宅義和 以下 イ

言語は人とコミュニケーションを取るためにあるものだが 実際に使うために学んでいるのではなく受験で格差をつけるために日本人は英語を学習している 日本人で英語を話せる人がより増えるようにするためには 実際に使える英語 を学び 英語を学ぶ目的を明確にさせれば良い 3 方法 日本 韓国 中国 ( 都市部 )

受付番号 宮城県小牛田農林高等学校長殿 平成 年 月 日 志願する課程, 学科, コース 部 : 全日制課程農業技術科農業科学コース 次の 1,2 のうち, 満たしている条件の にチェックをすること 2 の場合 (1)~(3) のいずれか 1 1~3 年生の全教科の評定平均値が4.0 以上の者 2

メディアデザイン学科ディプロマ ポリシー メディアデザイン学科は 科学的市民 の育成という教育理念のもとに以下の資質や能力を身につけ 所定の授業 科目を履修して卒業に必要な単位を修得した学生に 学士 ( 工学 ) の学位を授与します 1. コミュニケーション力論理的な思考力 記述力 発表と議論の能力

市中学校の状況及び体力向上策 ( 学校数 : 校 生徒数 :13,836 名 ) を とした時の数値 (T 得点 ) をレーダーチャートで表示 [ ] [ ] ハンドボール ハンドボール投げ投げ H29 市中学校 H29 m 走 m 走 表中の 網掛け 数値は 平均と同等または上回っているもの 付き

Ⅳ 電気電子工学科 1 教育研究上の目的電気電子技術に関して社会貢献できる能力と物事を総合的に判断し得る能力を養うと共に, 課題解決のためのチームワーク力と論理的思考力を身に付けることによって, 今後の社会環境の変化により生じる新たな要望に対して良識ある倫理観をもって対応でき, かつ国際的視野に立っ

平成30年度シラバス作成要領

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

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別紙様式7

教養教育科目の小計 () () () () () 外国語科目 外国語科目の小計 (2) (2) (2) (2) (2) 初期教育科目門科目商学部卒業所要単位 ( 留学生教育プログラム ) 科目区分 養教育科目第 1 群 ~ 第 10 群およびの任意科目 学科経営国際ビジネス会計 コース 経営 経営情

外国語学部15生~18生

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

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科目の履修について 履修にあたって いくつか注意すべき点があります 第一は 心理 コミュニケーション学科コミュニケーション専攻の 7 科目が必修であるというこ とです ( 第二言語習得基礎論 A B は 心理 コミュニケーション学科と国際英語学科の共有 ) 第二は 必修科目が段階履修になっていること

3. 一般入試における大学入試センター試験の利用教科 科目及び個別学力検査等の出題教科 科目について 教科 科目名等大学入試センター試験の利用教科 科目名個別学力検査等 ( 前期日程 ) 個別学力検査等 ( 後期日程 ) 学部 学科 課程等教科科目名等 注 教科科目名等教科科目名等国語 国語 人間形

家庭における教育

別紙様式7

3-1. 新学習指導要領実施後の変化 新学習指導要領の実施により で言語活動が増加 新学習指導要領の実施によるでの教育活動の変化についてたずねた 新学習指導要領で提唱されている活動の中でも 増えた ( かなり増えた + 少し増えた ) との回答が最も多かったのは 言語活動 の 64.8% であった

博士前期課程 (1) 地域文化形成専攻 1 記録情報教育研究分野ア. 記録情報教育研究分野が求める入学者世界の諸地域に文字として蓄積されてきた, 歴史 文学等に関する記録情報を文化資源として維持し活用するための総合的 実践的な研究を行い, 専門的知識と国際感覚を身に付けた研究者, または高度専門職業

推薦試験 ( 公募制 ) 募 集 人 員 296 名 出 願 資 格 高等学校若しくは中等教育学校を平成 31 年 3 月に卒業見込みの者で 次の 1~6の条件のいずれかを満たし かつ 学校長の推薦を受けたもの 1 全体の評定平均値が3.3 以上の者 2 皆勤の者 3 課外活動 ( 文化活動 体育活

履修モデル 1 短期大学士 ( ) 二種免許状 保育士 認定ベビーシッター の区分 資格 単位数保育士 資格必要単位数 保育士 認定ベビーシッター 卒修業科選目択必 個々の学生の得意な分野を伸ばし 魅力のある保育者を育てる 子どもの保健 Ⅰ 1 必修 必修 4 保育原理 1 必修 必修 2 児童家庭

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

2019 年度 コース履修の手引 教職コース 司書教諭コース 学芸員コース

教科 大学入試センター試験の利用教科 科目名個別学力検査等 科目名等教科等科目名等 前期国国語国現代文 古典人文学類地歴世 A, 世 B, 日 A, 日 B, 地理 A, 地理 B 地歴世 B, 日 B, 地理 B 人文 文化公民現社, 倫, 政経, 倫 政経公民倫 学 群 数 数 Ⅰ 数 A 外

Microsoft Word 第2報2020年度以降の大学入学者選抜‐山梨大

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2.3.事前に調べておこう

2015年度 SCスケジュール0401(一覧).xls

文化庁平成 27 年度都道府県 市区町村等日本語教育担当者研修 2015 年 7 月 1 日 生活者としての外国人 に対する日本語教育の体制整備に向けた役割分担 日本語教育担当者が地域課題に挑む10のステップ よねせはるこ米勢治子 ( 東海日本語ネットワーク )

2017 年 9 月 8 日 このリリースは文部科学記者会でも発表しています 報道関係各位 株式会社イーオンイーオン 中学 高校の英語教師を対象とした 中高における英語教育実態調査 2017 を実施 英会話教室を運営する株式会社イーオン ( 本社 : 東京都新宿区 代表取締役 : 三宅義和 以下 イ

別紙様式7


(4) 自己評価書及び提出された根拠資料 データは 原則として公開します 公表された著作物等を根拠資料とするときには著作権に配慮してください 公表にふさわしくないものには その旨を記載してください (5) 上記 (1) から (4) に関する具体的な資料 データの示し方等については 当該年度の自己評

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WEB履修登録について

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2016 年 8 月 19 日 報道関係各位 株式会社イーオンイーオン 中学 高校の英語教師を対象とした 中高における英語教育実態調査 2016 を実施 英会話教室を運営する株式会社イーオン ( 本社 : 東京都新宿区 代表取締役 : 三宅義和 以下 イーオン ) は 中学 高校で英語を教えている現

成績評価を「学習のための評価」に

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学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

福祉科の指導法 単位数履修方法配当年次 4 R 2 年以上 科目コード EC3704 担当教員佐藤暢芳 ( 上 ) 赤塚俊治 ( 下 ) 2017 年 11 月 20 日までに履修登録し,2019 年 3 月までに単位修得してください 2014 年度までの入学者が履修登録可能です 科目の内容 福祉科

補足説明資料_教員資格認定試験

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() カリキュラムおよび履修上の指示継続履修について シラバスにも記載があるとおり 授業科目のうち 心理学研究法演習 Ⅰ Ⅱ は 異なる年度に複数回 履修することが可能です さらに同じ年度においても 異なる教員が担当している科目であれば 平行 して履修できます なお 授業科目担当者一覧の備考欄に 継

平成20年度AO入試基本方針(案)

例 1) 日系人の A さんの場合 1 域内の外国人の状況 ニーズ, 地域のリソース等の把握 (1) 対象とする学習者の属性や数の把握 レディネス( 日本語学習をどの程度行っているか ) 家族形態 来日 3か月で日本語学習経験はなし 妻, 子供 ( 小学生 ) 漢字圏かどうか 在留資格 非漢字圏 定

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第 2 部 東京都発達障害教育推進計画の 具体的な展開 第 1 章小 中学校における取組 第 2 章高等学校における取組 第 3 章教員の専門性向上 第 4 章総合支援体制の充実 13

Transcription:

韓国教育政策の変化と中等日本語教師の課題 - 2009 改定教育課程 を中心に 金美珍 ( 蔚山中央女子高校 ) 1. 韓国の日本語教育の現状 1.1 外国語教育の現状 第一外国語 : 英語は小学校から始まり 高校に至るまで英語中心の教育となっている 第二外国語 : 中学校から選択科目として 表 1の外国語から 1~2 つの外国語が学校別 に開設されている 表 1 韓国の教育機関で開設されている外国語 言語 教育機関 第一外国語 英語 小 中 高校 第二外国語 日本語 中国語 ドイツ語 フランス語 スペイン語 ロシア語 アラブ語 ( ベトナム語 2009 改定教育課程 から中学校で新設 ) 中 高校 1.2 日本語の位置づけ 学習者 : 現在 日本語学習者の数は表 2 の通りで 全世界で一番多い 学習者の 9 割が高校 ( 一部中学校 ) で選択科目として学習している 第二外国語での日本語の割合 : 図 1 を見ると 日本語が 63% 中国語が 27% となって いる 他の外国語と比べると日本語は圧倒的な割合を占めている しかし 最近 教 育政策の変化や中国語に対する社会的ニーズの増加に押され 日本語を選択する学習 者の数は減少しつつある 表 2 韓国の日本語学習者 教師の数 人数 世界での順位 参考 日本語学習者数 964,014 人 第 1 位 全体学習者の 3 割 日本語教師数 6,577 人 第 2 位 1 位は中国 図 1 韓国の高校生の第二外国語の選択状況 (2006~2010)

1.3 教師の現状 資格 中等 2 級正教師 : 日本語教育学科 ( 全国に 6 校 ) を卒業 あるいは日本語関連学科で教職課程を履修した者 中等 1 級正教師 : 教育経歴 3 年以上で 中等 1 級正教師教育研修 を修了した者 授業時間週当たり約 16~19 時間の授業を担当する 日本語授業時間の縮小による問題日本語以外 1 の授業を担当する教師が 4 割以上を占める ( Kim misuk 2010 ) 1 人の教師が 2 校以上の授業を担当する 巡回教師 の数が増えつつある 1.4 学習者の現状 日本語学習の動機 : 1 学校に日本語科目が開設されているため (56.6%) 2 日本文化への興味 (15.6%)( Kim misuk 2010 ) 大学入試の受験勉強の負担で 非受験科目の日本語はほとんど勉強しない 学習者は日本文化への興味が高く 目標言語を身につけるために 文化 を取り入れた授業活動を好む ( 鄭恩愛 2008 ) 日本文化に対しては友好的な態度を持ちながらも 日本や日本人に対しては歴史的な問題から抵抗感を感じている生徒もいる 1.5 日本語教育の問題点 問題日本語学習者数の減少 学習動機の低下 原因外国語科目の特性上 社会的 経済的な変化や学習者のニーズの影響を受ける 日本語教育は従来 選択必修科目で国家政策に依存しすぎていた 結果社会的 経済的変化や学習者のニーズへの認識不足 対応能力の不足により 教育政策の変化に大きく左右される教育環境になる 2009 改定教育課程 では必修科目から取り除かれ 学習者の減少が予想される 2. 2009 改定教育課程 について 2011 年新入生から適用される 2009 改定教育課程 は 教育現場に及ぼす変化が大きいと予想される 2.1 目標創意に富むグローバルな人材の育成が目標とされている

2.2 改定の背景従来の教育課程は国家が一律に決めていた しかし 多様化する社会や学習者のニーズに対応することができないため 学習者の選択権や学校の自律権を増やす方向に教育課程を改定する必要があった それで 学校別に特性を生かし 個人に合わせた教育課程ができるような環境を整える目的から 第 7 次教育課程 を改定することになった 表 3 教育課程の変遷 (1997 年 ~2011 年 ) 名称適用時期 ( 年 ) 特徴と方向性 第 7 次教育課程 1997 ~ 2007 選択中心教育課程 レベル別教育課程 非教科活動の重視 2007 改訂教育課程 2008 ~ 2010 第 7 次教育課程 の欠点を補充する程度で小幅改編 2009 改定教育課程 2011 ~ 教育現場で実現できるように大幅改編 2.3 2009 改定教育課程 の特徴 2.3.1 学習負担の縮小と効率化 : 集中履修制 履修科目数の縮小 : 学期当たりの科目数を 従来 10~13 科目から改定後 8 科目以下に 集中履修制 : 2 学期に渡って行った授業を 1 学期に 2 3 年に渡って行った授業を 1 年に集中して行うようにする制度 これにより 1 科目の 1 週当たりの授業時間が増えるので 2~4 時間を 1 コマとして運営する Block Time 制 を導入した 学年群 : 小学校 1 2 年 3 4 年 5 6 年をまとめて 3 つの 学年群 にし 中学校と高校は 3 つの学年をそれぞれ 1 つの 学年群 と設定すること 教科群 : 関連性のある教科を一つの 群 にまとめること結果 学習者が 教科群 の中から科目を選択し 学年群 の中で決められた時期に 集中履修 することができるようになった 2.3.2 学校の自律権の拡大従来の 最小授業時間 を 基準授業時数 に改定し 基準時間の 20% 以内での増減が許容される 学校は各科目の履修時間を最終的に決めることになる 2.3.3 選択教育課程 の拡大 共通教育課程 は全学生が共通で必ず履修すべき基本教科中心の教育課程で 選択教育課程 はより細分化された 学生の進路に沿って選択履修する教育課程である 従来 高校 2 年から適用した 選択教育課程 を高校全過程へと拡大した 選択授業科目は学生のレベル別 教科の領域別に再構造化され 進路に沿って履修できる選択の幅が広くなった 表 4 共通教育課程と選択教育課程の改編従来改定後共通教育課程小 1~ 高 1 (10 年間 ) 小 1~ 中 3 (9 年間 )

選択教育課程高 2~ 高 3 (2 年間 ) 高 1~ 高 3 (3 年間 ) 2.3.4 非教科活動の重視 : 創意的体験活動 の導入 目標 : 配慮と助け合いを実践できる人材を養成する 構成 : 自律活動 2 サークル活動 ボランティア活動 進路活動 インターネットサイト 創意的体験活動の総合支援システム が設けられ 活動結果を生徒が入力されたものは教師の確認を経て上級学校への進学時 入学査定の資料として活用される 3. 2009 改定教育課程 の日本語教育現場への影響 3.1 教育制度 必修選択科目 選択科目 従来の必修選択科目から除外され 生活 教養科目群 の 漢文 進路と職業 技術 家庭 第二外国語 の 4 教科の中で必要単位数を選択履修することになる 選択教育課程 の高校全過程への適用 従来 日本語科目は 選択教育課程 が適用される高校 2 3 年生を対象にした しか し 大学入試が迫っている高校 3 年生の授業は 自習などで運営する場合も多かった 改定により 日本語科目は 高校全過程の中で学校別に必要とされる時期に開設できる ようになった 集中履修制 蔚山女子高校 の場合 2 3 年生の時に週 2 コマであった授業時間が 2 年生の 1 学 期に 4 コマ 3 年生の 1 学期に 4 コマとなる 週当たりの授業時間数は増加するが 2 年生 2 学期の 1 学期間 授業の空白ができる結果になる 3.2 教育内容 2007 改訂教育課程 により 言語の下位項目であった文化が言語から独立した 2009 改定教育課程 により 2012 年から導入される新教科書でも文化セクションの量的増加と文化 の細分化 3 が目立っている 4. 日本語教師が直面している課題 教育政策の変化に左右されずに日本語学習を継続させるには どのような動機付けが必要か 2009 改定教育課程 の教育理念であるグローバルな人材の育成と 創意力 の向上を教育現場でどのように実現し 授業を多様化するか 2009 改定教育課程 で選択科目となった日本語は 同一の 教科群 の他科目とどのように差別化するか

5. 提言 5.1 真の学生中心 の授業日本語は受験に結び付かないため 学習の過程で日本語を 学ぶ楽しさ を動機付ける必要がある 真の学生中心 の授業とは学習の計画から評価にいたるまでの全過程を学習者主導のもとで行うことで 学習者の主体的な学習能力を導き出すことである ( 李徳奉 2003) その内容は 学習の計画時 学習者の参加率を上げるだけでなく 学習者のニーズや属性 学習スタイル 好きなメディア 教育環境などを考慮して考える必要がある また 評価時 レポート 発表 ポートフォリオなどで学習過程を重視する 遂行評価 (Performance Assessment) 4 を積極的に活用することを提案したいと思う 5.2 文化理解教育 の一環としての日本語授業従来 文化は日本語学習者の動機付けとして取り入れられたにすぎなかった グローバルな人材に求められているのは語学力だけではなく 社会的環境 脈略を考慮した上で文化を理解する能力である その能力を養うためには 具体的な教授法や教室活動を開発し 授業の多様化を試みることが必要だと思われる 5.3 非教科活動の 創意的体験活動 と授業の連携 創意力 を養うと共に 日本語を 教科群 の他科目と差別化するため 日本語 文化理解をテーマとした 創意的体験活動 を企画 運営することを提言したい 例えば 校内日本語スピーチ大会 日本の歌コンテスト 韓日交流行事などが考えられる 注 1 日本語教師が日本語以外に担当する科目は 進路と職業 創意的体験活動 漢文 など である 2 自律活動 の構成 : 適応活動 ( 相談 礼儀教育など ) 自治活動 ( 学生委員会活動 ) 行事活動 ( 体育大会 学芸会など ) 創意的特色活動 ( 学校別 地域別特色活動 ) 3 文化を言語行動文化 日常生活文化 大衆文化 伝統文化と細分化し 母国との比較 理解を試みた 4 遂行評価は学習者が学んだ知識を利用し 課題をどう 実行 遂行 するかを評価する方 法をいう 韓国では 1999 年 創意力 と問題解決能力を養うために導入された 現在 全教科の 30% は遂行評価の項目を入れることになっている

6. 参考文献 (1) 李徳奉 (2003) 転換期を迎えた日本語教育に求められるもの 日本語教育 第 119 号 1-10. (2) 日本国際交流基金 (2009) 海外の日本語教育の現状 52-53. (3) Kim dongwon (2009) 教育課程のパラダイムの変化による 2009 改定教育課程 <http://cutis.mest.go.kr> (4) Kim misuk (2010) 田南での中等日本語教育の現状と課題 ( 修士論文 ) (5) Kim sungik (2009a) 2009 改定教育課程 どう変わるか <http://cutis.mest.go.kr> (6) (2009b) 学校教育の自律性の拡大と 2009 改定教育課程 <http://cutis.mest.go.kr> (7) 鄭恩愛 (2008) 韓国高校の日本語教育の現状と問題点に対する考察 ( 修士論文 ) (8) 洪善美 (2008) 高校日本語教育に関する研究 ( 修士論文 ) (9) 韓国教育科学技術部 (2009) 第二外国語課の教育課程 (2011.10.11) (10) 韓国教育科学技術部 教育課程 教科書サービス <http://cutis.mest.go.kr> (2011.10.11)

参考資料 資料 1 韓国の日本語教育課程の変遷 教育課程 期間 特徴 以前 1973 高校で日本語科目の導入 第 3 次教育課程 1974 ~ 1981 口頭訓練の重視 第 4 次教育課程 1982 ~ 1987 文化理解について具体的な目標提示 第 5 次教育課程 1988 ~ 1995 コミュニケーション能力 第 6 次教育課程 1996 ~ 2001 正確性より流暢性 理解技能と表現技能 第 7 次教育課程 1997 ~ 2007 機能シラバス インターネットによる検索 2007 改訂教育課程 2008 ~ 2010 学習内容の独立した構成要素としての文化 2009 改定教育課程 2011 ~ 新教科書の導入 資料 2 高校での日本語授業の時間数と目標 高校の日本語授業 週 2 コマの場合 週 3 コマの場合 年間授業時間の数 約 68 コマ (1 コマ 50 分 ) 約 102 コマ 漢字 約 733 字 語彙 約 500 語彙 目標 日常生活で使われる易しい日本語を理解し 簡単な日本語で意志疎通できる基礎 能力を養う 資料 3 韓国の教育における最近の動向 目的 特徴 日本語教育への影響 教科教室制度 生徒が専用教科教室に移動科目別に個人レベルに合わせ クラス別に複数のシラバス 評価法案などを工夫 たクラス分け 最適化された教室環境の完備 日本文化を体験できる日本語の教室を作る 私教育費の節約効果が目的 教 科 集中履修制度 科目間 学年間の区別なく 特定学期に集中履修 授業の空白期間が与える影響を最小化する方法を工夫 内 生徒 学校のニーズによって教 Block Time 制 を考慮したカ

育課程の選択権の拡大 リキュラム作りと発表 グルー プワークを取り入れた授業モデ ルの導入 デジタル教科書 情報の量的 質的拡大 オン オフライン授業 私教育費の節約効果 教室の空間的な限界を克服 多様なデジタル教育コンテンツ が利用できる 学習者中心の授業 問題解決能力の養成 ( 知識伝達 だけでは意味がない ) 教 創意的体験活 教科外の特別活動の内容をイ 多様な体験活動企画 推進の必 科 総合システム ンターネットサイトに記入し 要性が増加 ( 日本語スピーチコ 外 の運営 学校生活記録簿と連動 ンテストなど ) 創意 人性教育 ( 道徳 ) の 生徒の進路指導やポートフォリ 強化及び学生多面評価 オ作成指導 教科教室制 : 学生が自分のレベルに沿って教科別の専用教室に移動し 授業を受ける方式 2009 年に 導入され 2011 年現在 15% の 806 学校で運営されている 2014 年までにすべての高校で実施する予定 資料 4 真の学生中心 授業の 5 段階 ( 李徳奉 2003) 段階 1 授業における学習者の活動を増やすレベル 内容 指示による学習者の繰り返しや発表時間など を増やすこと 2 問題解決における学習者の自律性を拡大するレベル 3 学習者の発達レベルや学習文化のような個別性を重んじるレベル 4 学習に寄せる学習者のニーズを授業に反映するレベル 発見学習 体験学習など個別学習 レベル別学習 プログラム学習 学習スタイル別学習など学習科目 教材 学習内容などに対する学習 者の選択権を広めること 5 学習過程における学習者の主体性を最大化したレベル 学習の計画から評価にいたるまでの全過程を 学習者主導のもとで行うこと