Research Report 政 700, , , , ,252 図表 1 ウクライナの乗用車販売台数 ( 単位台 ) 400, , , , , , , ,322 1

Similar documents
Research Report 台にすぎなかった (Autoconsulting 発表の数字 ) ウクライナの自動車販売関係者の多くは このような極端な不振が1 年を通し続くとみており たとえば プジョー シトロエン ウクライナ社のシブラカ社長は 2015 年のウクライナの新車販売台数は5 万 5,

特集 NIS 諸国と対外経済関係 試練にさらされる NIS 諸国の乗用車市場 ロシア NIS 経済研究所次長坂口泉 はじめに /26 1. ウクライナ /26 2. ベラルーシ /33 3. カザフスタン /36 4. ウズベキスタン /38 おわりに /40 はじめに NIS 諸国の乗用車市場でも

特集 ロシア自動車産業とサプライチェーン 図表 1 ブランド別自動車買い替えサイクル ブランド名 買い替えサイクル ( 月 ) ブランド名 買い替えサイクル ( 月 ) UAZ 71 ボルボ 48 LADA 65 シボレー 48 三菱 53 ホンダ 48 スズキ 52 オペル 46 現代 51 シト

目 次 Ⅰ. 総括編 1. 世界各地域の人口, 面積, 人口密度の推移と予測およびGDP( 名目 ) の状況 ( 1) 2. 世界の自動車保有状況と予測 ( 5) 3. 世界の自動車販売状況と予測 ( 9) 4. 世界の自動車生産状況と予測 ( 12) 5. 自動車産業にとって将来魅力のある国々 (

Data Bank Data Bank 年 1~9 月期のロシアの乗用車市場 2005 年 1~9 月期もロシアの乗用車市場では 外国車の販売の好調さが目立った 一方 ロシア最大の純国産メーカーであるAvtoVAZ( ヴォルガ自動車工場 ) も 年初以来の不振から脱却し 9 月の生産量

Microsoft Word - レポート2016年8月29日自動車関連株

Microsoft Word - フランス自転車市況-2011.doc

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

調査結果 自動車購入時重視点で カ国共通して高いのは 燃費の良さ 次いで重視される 安全性能 今後自動車を購入する際に重視する点をつまで を聞いたところ 燃費の良さ と回答した人がマレーシア (%) インドネシア(%) フィリピン(%) インド(%) で最も多く タイで 番目 (%) ベトナムで 番

おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

パレスチナとイラン―ハマースを中心に

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

(Microsoft Word \224N\203\215\203V\203A\213\311\223\214\223\212\216\221.doc)

Microsoft Word - 5_‚æ3ŁÒ.doc

第9章 タイの二輪車産業-好調な国内市場と中国の影響-

【ロシア最新経済金融週報】

RW ppt

【No

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

特集 ビジネス視点から見たロシア社会 ロシア ビール市場の予期せぬ不振 MINI REPORT ロシア ビール市場の予期せぬ不振 はじめにロシアでは1990 年代の後半ごろからビールの消費量と生産量が急増し始め 同国は早晩世界有数のビール大国になるとみられていた ところが 2008 年ごろからロシア

ディーラー数 75 社以上 (GM ウズベキスタン傘下に発展した販売網 ) が 新車を販売している AvtoVAZ VIS GAZ UAZ( ロシア ) ZAZ( ウクライナ ) キアモーターズ ヒュンダイ ( 韓国 ) メルセデスベンツ フォルクスワーゲン ( ドイツ ) トヨタ ( 日本 ) 等

Microsoft Word - 20_2

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

平均車齢 平均車齢 ( 軽自動車を除く ) とは 平成 30 年 3 月末現在において わが国でナンバープレートを付けている自動車が初度登録 ( 注 1) してからの経過年の平均であり 人間の平均年齢に相当する 平均車齢は 新車販売台数が減少し 自動車が長く使われると高齢化が進む 逆に新車販売台数が

[000]目次.indd

Microsoft PowerPoint _FY162Q決算説明会プレゼン資料QQ_final_web

年 車種 主な車種の平均車齢推移 乗用車貨物車乗合車 乗用車計普通車小型車貨物車計普通車小型車乗合車計普通車小型車 昭和 52 年 (1977 年 ) 昭和 53 年 (1978 年 )

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

個人消費活性化に対する長野県内企業の意識調査

年 車種 主な車種の平均車齢推移 乗用車貨物車乗合車 乗用車計普通車小型車貨物車計普通車小型車乗合車計普通車小型車 昭和 53 年 (1978 年 ) 昭和 54 年 (1979 年 )

輸送量 (kg) 海上分担率 図 1 に 07~14 年の日本発米国向けトランジスタ輸送の海上 航空輸送量と海上分担 率の推移を示す 800, , , , , , , ,

特集 ロシア NIS 圏で存在感を増す中国特集 ロシアの消費市場を解剖する Data Bank 中国の対ロシア NIS 貿易 投資統計 はじめに今号では ロシア NIS 諸国と中国との経済関係を特集しているが その際にやはり貿易および投資の統計は避けて通れないであろう ただ ロシア NIS 諸国の側

第 1 四半期の売上収益は 1,677 億円となり 前年からプラス 6.5% 102 億円の増収となりました 売上収益における為替の影響は 前年 で約マイナス 9 億円でしたので ほぼ影響はありませんでした 事業セグメント利益は 175 億円となり 前年から 26 億円の減益となりました 在庫未実現

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

本日の説明内容 総括 2019 年 3 月期第 1 四半期実績 2019 年 3 月期通期見通し 主要施策の進捗 1

特集 特集 自動車市場はいかに苦境を乗り切るか Research Report 経済統合と通貨安が促すロシアの自動車輸出 ロシア NIS 経済研究所調査部長服部倫卓 はじめに 2000 年代から世界の主要乗用車メーカーが相次いでロシアでの現地生産に乗り出したが 外国メーカーはロシア国内市場への供給に

1

調査結果の概要 1. 自社チャンネルの加入者動向について 横ばい との見方が拡大自社チャンネルの全体的な加入者動向としては 現状 では 減少 (40.0%) が最も多く 続いて 横ばい (35.6%) 増加 (23.3%) の順となっている また 1 年後 については 横ばい (41.1%) が最も

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

<4D F736F F D EA993AE8ED48E598BC682CC8CBB8FF EC A834A816A2E646F6378>

ロシア乗用車市場における明と暗 ロシア東欧経済研究所調査部次長 坂口泉 はじめに 1. ロシア乗用車市場の特性と市場規模 2. 国産中古車市場 3. 国産新車市場 4. 輸入中古車市場 5. 輸入新車市場 6. 国内メーカーの動き 7. 外国メーカーによる国内生産の動きまとめにかえて はじめに最近

表 1 GDP 及び主要経済指標の見通し 2013 年 2014 年 2015 年 ( 実績 ) ( 予測 ) ( 予測 ) 実質 GDP * 個人消費支出 * 民間設備投資 * 住宅投資 * 民間在庫変

固定資産税の課税のしくみ < 評価額と課税標準額と税額の推移 > ( 土地編 ) 課税標準額 評価額 税 額 なぜ, 地価が下落しているのに, 土地の固定資産税が上昇するの!? 2 なぜ, 平成 6 年評価額が急激に上昇したの!? 3 < 公的土地評価相互の均衡と適正化 > < 地価公示価格の一定割

< 図表 1> 米国の仕出し国 地域別自動車部品輸入実績 ( 単位 :100 万ドル ) 輸出国 シェア 1 メキシコ 11,740 13,692 16,045 17,056 19, % 2 カナダ 7,638 8,253 8,932

Microsoft PowerPoint - Jpn_final_media_FY15 1Q announcement

エコノミスト便り

2017年第3四半期 スマートフォンのグローバル販売動向 - GfK Japan

第13章 インドネシアの自動車産業と二輪車産業-中国の影響と分業再編の展望-

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

平成10年7月8日

統計から見た三重県のスポーツ施設と県民のスポーツ行動

Master_0103_Pdf.xls

3_2

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

平成 26 年度海外市場探求奨学金報告書 機械創造工学課程 4 年高桑勇太 探求テーマ スペインにおける自動車市場の探求 実務訓練期間 2014 年 9 月 1 日 2015 年 2 月 7 日 実務訓練先 スペイン ( バルセロナ ): カタルーニャ工科大学 概要近年, 日本の自動車企業の海外進出

1. 自社の業況判断 DI 6 四半期ぶりに大幅下落 1 全体の動向 ( 図 1-1) 現在 (14 年 4-6 月期 ) の業況判断 DI( かなり良い やや良い と回答した企業の割合から かなり悪い やや悪い と回答した企業の割合を引いた値 ) は前回 ( 月期 ) の +19 から 28 ポイ

Microsoft PowerPoint - Jpn_final_analyst_FY15 1Q announcement


Microsoft PowerPoint - 3rdQuarterPresentations2013_J03.ppt

Microsoft Word - intl_finance_09_lecturenote

TCS_AI_STUDY_PART201_PRINT_170426_fhj

ピクテ・インカム・コレクション・ファンド(毎月分配型)

Microsoft Word - アルパーゲイタス_ALPA4_

1 食に関する志向 健康志向が調査開始以来最高 特に7 歳代の上昇顕著 消費者の健康志向は46.3% で 食に対する健康意識の高まりを示す結果となった 前回調査で反転上昇した食費を節約する経済性志向は 依然厳しい雇用環境等を背景に 今回調査でも39.3% と前回調査並みの高い水準となった 年代別にみ

Microsoft Word - 49_2

平成 29 年 7 月 地域別木質チップ市場価格 ( 平成 29 年 4 月時点 ) 北東北 -2.7~ ~1.7 南東北 -0.8~ ~ ~1.0 変動なし 北関東 1.0~ ~ ~1.8 変化なし 中関東 6.5~ ~2.8

ロシア企業クローズアップ 今月のラインナップ 1. アフトヴァズ言わずと知れたロシアの乗用車最大手 2002 年秋 中古車の輸入関税引き上げ前の中古車駆け込み需要で大きな打撃を受けたが その後回復を遂げる ロシア国内の好景気を背景に 高価格の車種へのシフトをめざす 2. サン インターブリューベルギ

輸入動向平成 29 年の横浜税関における 自動車の輸入実績は 数量が 153,835 台 ( 対前年同期比 0.7% 増 ) 金額が 6,154 億 19 百万円 ( 同 12.5% 増 ) でした また 全国においては 数量が 359,907 台 ( 対前年同期比 2.4% 増 ) 金額が 1 兆

untitled

Microsoft Word - 18_2

<81798A6D92E8817A F925093C682C6834E838D83582E786C7378>

現代資本主義論

総括 3 総括 (1) 年 3 月期実績 2 月公表に対して 売上高及び全ての利益レベルで上回る 売上高は 2 兆 2,53 億円 営業利益は 539 億円 当期純利益は 343 億円 CX-5 新型 Mazda6/ アテンザなど SKYACTIV 搭載車両が 業績改善に大きく貢献 グロ

42

データバンク Data Bank 1.CIS 諸国における外資参加企業の設立 活動状況 CIS 統計委員会の発行する CIS 統計通報 (2003, No.16) に CIS 諸国における外資参加企業 (100% 外資企業および合弁企業 ) の設立および活動状況に関する最新データが掲載されているので

Master_0103_Pdf.xls

タイトル

新車販売台数のシェア 分析の前提条件 燃費 [km/l] 燃料種別新車販売台数のシェアは 自動車産業戦略 の平成 42 年度のシェアに向かって線形に変化し 技術開発等により乗用車販売平均燃費も改善すると仮定 2 この仮定を踏まえつつ 平成 27 年度燃費基準と平成 32 年度燃費基準の

ロシア工場からの乗用車の輸出動向 一般社団法人ロシアNIS 貿易会ロシアNIS 経済研究所服部倫卓 2000 年代までは ロシアから外国への乗用車輸出は AvtoVAZ 社のラーダなどのロシア地場ブランドに限られていた ロシアでの現地生産に乗り出した外国自動車メーカーは ロシア国内市場への供給に特化

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

2018年度 第3四半期累計 1-9月 実績 2017年 19月期 2018年 19月期 増減 () 9,302 9, % +4.1% 営業利益 % 0.0% % +9.7% 親会社の所有者に 帰属する四半期利

マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

月別の売上でみると 百貨店については 夏物衣料が好調だった 7 月と一部店舗で閉店セールを行った 9 月を除いて前年同月を下回っています 一方 スーパーについては 台風の影響があった 8 月を除いて 前年同月を上回っています 1,2 1-3 平成 28 年百貨店 スーパー販売額合計 ( 北海道 :

2007年12月10日 初稿

別紙2

2018 Brother Industries, Ltd. All Rights Reserved 年度第 3 四半期連結業績概要 16Q3 増減 増減率 () は為替影響 除く増減率 売上収益 1,878 1, % (+6.4%) 事業セグメント利益 224

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

<4D F736F F F696E74202D A4A8EA A F AFA96968C888E5A90E096BE89EF C835B83938E9197BF5F5A5A35>

及び必要性 低税率を適用して需要者に安価な輸入品の供給を確保する一方 一定数量を超えた輸入分については高税率を適用することにより 国内の皮革産業及び革靴産業の保護を目的としている 2 政策目的達成時期我が国皮革産業及び革靴産業が構造改善を行い アジア諸国からの低価格品及び欧州からの高価格品と対抗しう

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

トラック運送事業の経営実態 全日本トラック協会は全国のトラック運送事業者 2,188 社 ( 有効数 ) の平成 25 年度事業報告書に基づき集計 分析した 経営分析報告書 ( 平成 25 年度決算版 ) をまとめた 全日本トラック協会が平成 4 年度から発行しているこの報告書は 会員事業者が自社の

3 流動比率 (%) 流動資産流動負債 短期的な債務に対する支払能力を表す指標である 平成 26 年度からは 会計制度の見直しに伴い 流動負債に 1 年以内に償還される企業債や賞与引当金等が計上されることとなったため それ以前と比べ 比率は下がっている 分析にあたっての一般的な考え方 当該指標は 1

山口銀行:アジアニュース>釜山支店>韓国自動車産業戦国時代 ~第2 弾~

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

展開 3 ヶ月前の レクサス ブランドの認知率は 70% 以上!! ~ レクサス ブランド成功の兆し男性ユーザーの注目度高い ~ メディアで紹介される機会が増えたものの まだまだその中身を理解しているユーザーは少ないと予想される そこで レクサス ブランドの認知率を測るべく調査を行ったところ 正式展

Master_0103_Pdf.xls

Microsoft Word - 報告書.doc

Transcription:

特集 安定成長を模索するNIS 経済特集 安定成長を模索するNIS 経済 Research Report ロシア NIS 経済研究所嘱託研究員坂口泉 はじめに本稿では NIS 諸国のうちウクライナ ベラルーシ カザフスタン ウズベキスタンの4カ国を取り上げ それぞれの乗用車市場の現状と今後の見通しを紹介するが ウクライナに関しては 新車市場の質的変化と ヨーロッパナンバー と呼ばれている中古車群の存在に着目しながらその状況を紹介したい また ベラルーシとカザフスタンに関しては新車のブランド別 モデル別の販売と自動車生産の動向などに留意しながら その現状と今後の展望を紹介する そして ウズベキスタンに関しては 同国唯一の乗用車メーカーであるGMウズベキスタンと市場の特殊性に焦点をあてながら その現状を紹介する 1. ウクライナ (1) 市場の状況概況ウクライナの新車市場 ( 小型商用車を含む ) の規模はピーク時の2008 年には62 万台以上に達していたが 経済状況の悪化の影響を受け翌 2009 年には前年の4 分の1の約 16 万台にまで一気に落ち込んだ その後 状況が若干改善され 2011 年から2013 年までは年間 20 万台以上の販売水準が維持されていたが 政情不安の影響でグリブナ安が急激に進行し自動車のグ リブナ建ての販売価格が急上昇したことや 内戦の影響でウクライナ東部の一部地域で自動車販売が事実上停止したことが影響し 2014 年春ごろから輸入車を中心に極端な販売不振が続くようになり 同年の通年の数字は前年比 54.5% 減の9 万 7,020 台にとどまった ( 図表 1) 2015 年に入ってからも政情不安を背景とするグリブナ安には歯止めがかからず不振はさらに深刻化し 通年の販売台数は底と思われた前年をさらに52% も下回る4 万 6,546 台にとどまった ただ 2015 年 11 月ごろから状況改善の兆しが見え始め 2016 年は1 年を通して月間販売台数が前年の数字を大幅に上回る状態が続いた その結果 同年の通年販売台数は前年比約 40% 増の6 万 5,562 台に達した 市場関係者の大方の予想通り 販売の回復傾向は2017 年に入ってからも続き 通年の数字は前年を約 25% 上回る8 万 2,248 台に達した ただ 2017 年の秋ごろから市場の回復テンポが減速し始めているのも事実で 2018 年 3 月にはほぼ2 年ぶりに月間販売台数が前年の数字を下回る ( 前年同月比 9% 減の6,283 台 ) という事態が生じている ( ロシアの調査会社 Autostat 発表の数字 ウクライナの調査会社 Autoconsulting によれば 2017 年 11 月の時点ですでに前年同月の数字を下回ったことになっている ) 2016 年 2017 年の市場の回復傾向を下支えし 16 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号

Research Report 政 700,000 600,000 500,000 542,332 623,252 図表 1 ウクライナの乗用車販売台数 ( 単位台 ) 400,000 371,019 300,000 200,000 100,000 207,453 237,602 213,322 162,291 162,595 97,020 46,546 65,562 82,248 0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 ( 出所 )ASM ホールディング ていたのは 市場が急激に縮小した2014 年と 2015 年の2 年間に蓄積された 繰り越し需要 であったと判断されるが わずか2 年でそのストックが使い果たされた可能性も排除しきれない 春以降に再び市場の回復傾向が顕著になることも十分に考えられるが 2018 年通年の新車販売台数が危機前の2013 年の数字 ( 約 20 万台 / 年 ) を上回ることはまずないであろう 実際 ウクライナの市場関係者たちも同様の見解を有しており たとえば エヴロカーのヤコヴリョワ社長は 2018 年の新車市場の伸び幅が前年比 20% 以上に達することはないだろう との見解を示している また ルノー ウクライナのミネンコ社長は2018 年の新車の市場規模 (LCV を含む ) は 9 万 ~11 万台にとどまると予測している なお ウクライナの2016 年末時点での人口 1,000 人当たりの乗用車保有台数は178 台と非常に低く かつ 平均車齢も21 年と非常に高いので 少なくとも理論上は 同国の乗用車市場には大幅な拡大ポテンシャルが存在すると言ってよいであろう ただ現時点では そのポテ ンシャルが具現化される時期を予測するのは困難となっている ブランド別販売動向 ( 図表 2) かつてウクライナの新車市場では低価格車を主力とするブランドが圧倒的な強みを発揮していた しかし グリブナ安の急激な進行に伴い ( グリブナ建ての ) 新車販売価格が急上昇したことを受け低価格車の購買層の多くが中古車市場に流出したこともあり 2014 年以降は低価格車を主力とするブランドの苦戦と比較的高価なモデルを主力とするブランドの健闘ぶりが目立つようになっている 2017 年も 前年の2016 年 8 月に中古車を輸入する際の物品税率が大幅に引き下げられたこともあって 引き続き同様の傾向が観察された 比較的高価なモデルを主力とするブランドの中でも2017 年に特に強い存在感を示したのはトヨタで 前年に引き続きブランド別新車販売台数ランキングのトップの座を守ることに成功した 2 位以下の顔ぶれを見ても比較的高価なモデルを主力とするブランドやプレミア ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号 17

特集 安定成長を模索する NIS 経済 ムブランドの好調さが目立つが 中でもアウディの数字が突出しており 前年比で70% 近く販売台数を伸ばした また 日本ブランドの存在感も全般的に強く トヨタの他に日産 マツダ スズキ 三菱自動車 レクサス スバルが上位 25 位以内に入っている 一方 低価格車を主力とするブランドの中ではルノー ( ロシア同様にウクライナでもロガン サンデロ等の低価格車を主力としている ) と RAVON(GMウズベキスタンが立ち上げた新ブランドだが モデルのラインナップは旧ブランド名 <シボレーもしくは大宇 >の時とほとん ど変わらない ) が大幅に販売台数を伸ばしたものの 価格の安さを最大のセールスポイントとしているウクライナのZAZ( ザポロジエ自動車工場 ) とロシアのLADAは大幅に販売台数を減少させた その他 低価格車の代名詞的存在である中国ブランドの不振も目立った たとえば かつてウクライナ市場で高い人気を誇り2014 年時点ではブランド別販売ランキングで第 2 位となっていたGeelyは前年に引き続き大幅に販売台数を減少させ 30 位以下にまで順位を落とした 30 位以内に入っているのは707 台の販売を記録したCheryのみという惨状で 2014 年 図表 2 ウクライナの新車市場 ( 乗用車 ) でのブランド別販売台数 ( 単位台 ) ブランド名 2016 年 2017 年増減率 % 1. トヨタ 2. ルノー 3.VW 4. シュコダ 5. 起亜 6. 現代 7. 日産 8. フォード 9. メルセデスベンツ 10.BMW 11. アウディ 12. マツダ 13. スズキ 14.RAVON 15. 三菱自動車 16. プジョー 17.ZAZ 18. レクサス 19. シトロエン 20. ランドローバー 21. シボレー 22.LADA 23. ボルボ 24. スバル 25. フィアット 7,668 6,389 5,001 4,145 3,982 3,396 3,444 3,612 2,464 3,073 1,674 2,342 1,767 285 1,028 1,273 2,758 1,164 850 913 1,203 1,533 663 603 400 9,698 8,671 6,525 5,675 5,320 4,356 4,324 3,524 2,897 2,832 2,822 2,765 2,496 2,367 2,091 1,894 1,708 1,371 1,256 819 813 789 769 721 707 26.5 35.7 30.5 36.9 33.6 28.3 25.6 2.4 17.6 7.8 68.6 18.1 41.3 830.5 103.4 48.8 38.1 17.8 47.8 10.3 32.4 43.5 16.0 19.6 76.8 ウクライナ全体 65,562 82,248 25.5 ( 出所 )ASMホールディング 18 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号

Research Report 政 時点で14% を超えていた中国ブランド車の市場シェアは1% 強にまで落ち込んだ LADA ZAZ 中国車の不振の主因は ライバルである中古車に顧客を奪われたことにあると推測される なお 法人需要の割合が比較的高い (2017 年上半期の実績で32%) というのもウクライナの新車市場の特徴であるが 数字が特に高いブランドとしては LADA(84%) 三菱自動車(58% アウトランダーがウクライナの警察用車両として採用されたため ) シボレー(57%) シュコダ (54%) ルノー(47%) の名を挙げることができる 逆に法人需要の割合が10% 未満と低くなっているブランドとしては RAVON Chery スズキ マツダ 起亜の名を挙げることができる (autoconsulting.com.ua 2017.7.26) モデル別販売動向 ( 図表 3) 上述の通り ウクライナの新車市場では2014 年ごろから低価格車を主力とするブランドの苦戦と比較的高価なモデルを主力とするブランドの健闘ぶりが目立つようになっているが その傾向はモデル別の販売動向にも反映されており 2013 年時点では上位 10 位がすべて低価格モデルで占められていたものが 2014 年にはその数が7に 2017 年には2に ( ダスターとロガン ) それぞれ減少した 新車市場における高級志向の強まりの結果 廉価モデルが中心となっている国産車 ( 現地生産の外国ブランド車も含む ) のプレゼンスも急激に低下しており 2014 年時点では10 位以内に 7モデルも入っていたものが 2017 年に10 位以内に入った国産車はシュコダ オクタヴィアだ 図表 3 ウクライナの新車乗用車市場でのモデル別販売台数 ( 単位台 ) モデル名 2016 年 2017 年増減率 % 起亜スポーテージルノー ダスタールノー ロガントヨタRAV4 シュコダ オクタヴィア現代タクソントヨタ カローラ RAVON R2 トヨタ カムリ日産キャシュカイ VWポロ VWゴルフマツダCX5 ルノー サンデロ日産エクストレイルスズキ ビターラ VWティグアンベンツGLEクラス日産ジュークフォード フィエスタ ( 出所 )Autoconsulting 2,736 2,032 2,074 1,889 1,913 1,140 1,824 285 1,384 1,043 1,219 217 803 1,027 858 1,003 390 981 627 1,534 3,715 2,983 2,802 2,747 2,566 1,834 1,761 1,601 1,582 1,511 1,422 1,355 1,319 1,314 1,300 1,274 1,253 1,201 1,161 1,153 35.8 46.8 35.1 45.4 34.1 60.9 3.5 461.8 14.3 44.9 16.7 524.4 64.3 28.0 51.5 27.0 221.3 22.4 85.2 24.8 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号 19

特集 安定成長を模索する NIS 経済 けにとどまった 高級志向の強まりは全般的に価格の高いSUVの人気の高まりという現象にもつながっており 2015 年時点では42% 程度であった市場シェアが2017 年には50% を越えた ウクライナで人気の高いSUVとしては 起亜スポーテージ ルノー ダスター トヨタRAV4 現代タクソン 日産キャシュカイ 日産エクストレイル スズキ ビターラ 日産ジューク メルセデスベンツGLEクラス等の名を挙げることができる (2) 特別関税の導入 見直し WTO 加盟に伴い ウクライナでは2008 年 5 月中旬より移行期間が設けられることなく 新車の輸入関税率が25% から10% に一挙に引き下げられた しかし そのような急激な関税率の引き下げに危機感を抱いたウクライナの国内メーカーのロビー活動の結果 2009 年 3 月 6 日から6ヵ月間 新車に対し23% の暫定輸入関税率が適用されることとなった WTOからの是正勧告もあり6か月後には再び10% の関税率が適用されることとなったが ウクライナの国内メーカーによる執拗なロビー活動はその後も続けられ その結果 2011 年の夏に 省庁間貿易委員会 ( 担当省庁は経済発展 貿易省 ) が 1,000~1,500ccの車については33.4% 1,500 ~2,200ccの車については47% の特別関税を最長で4 年間導入すること を視野に入れた特別調査を開始するという事態が生じた そして 2013 年 3 月中旬になり省庁間貿易委員会は 2013 年 4 月 15 日より3 年間 1,000~1,500ccのガソリン車には6.46% 1,500~2,200ccのガソリン車には12.95% の特別関税 ( 追加関税 ) をそれぞれ課すことを公式発表した ( ヴェードモスチ 紙 2013.3.15) 1) 当然ながら特別関税は輸入車の価格の高騰につながり 一般市民や輸入業者から強い反発の声が上がったため ウクライナ政府はその半 年後の2013 年秋ごろより早くも特別関税を廃止する方向での検討を開始した そして 2014 年 2 月になり省庁間貿易委員会が 2014 年 4 月 14 日よりそれまでの税率を3 分の2に低減し さらに2015 年 4 月からは (2014 年 4 月 14 日以前の水準の )3 分の1に低減すること を発表した この発表後も省庁間貿易委員会は 特別関税の廃止の方向での検討を続け 2015 年 9 月初旬になり9 月 30 日より特別関税を全面的に廃止する意向を表明した ただ その直後より乗用車の輸入障壁を設けているとウクライナ側が認識していたウズベキスタン ならびに ウクライナとEUの自由貿易協定の発効を受け2016 年初頭よりウクライナ産食品の輸入を禁止することなどを発表していたロシアへの対抗措置として両国製の乗用車に対し特別関税を課すことが検討され始めた そして ウズベキスタン製の乗用車に関しては 2015 年 11 月より12.2% の特別関税が課せられることとなった 2) また ロシア製の乗用車に関しては 2016 年 1 月 3 日より5 年間 特別関税が課せられることになった 関税率はメーカーにより異なり ソラーズ極東工場で生産された乗用車と生産者が特定できない乗用車には17.66% の税率が LADAの乗用車には14.57% の税率が その他のロシアの工場で生産された乗用車には10.41% の税率がそれぞれ課せられることとなった このことが 2017 年のLADA 車のウクライナ市場での不振の主因となった可能性も十分に考えられる なお この特別関税導入の結果 ロシア製の乗用車のウクライナ市場での価格競争力が低下する可能性が高まったため ルノーやフォードはロシアからの輸入を中止し欧州からの輸入に切り替えることを発表している 20 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号

Research Report 政 (3) 中古車市場の状況中古市場 ( 転売市場 ) 規模ウクライナの中古車市場 ( 転売市場 ) に関する2017 年通年の数字は入手できなかったが ウクライナの調査会社 Autoconsulting によれば 2017 年 1~10 月期の中古乗用車市場の規模は36 万 5,000 台 ( 前年同期比 5% 減 ) 中古 LCV 市場の規模は7 万 4,000 台だった とされている 中古乗用車市場で最も人気の高いブランドはLADAで 以下 大宇 VW トヨタ ZAZ シボレー シュコダ オペル 現代 三菱自動車と続いている また 最も人気の高いモデルは大宇ラノスで 以下 シュコダ オクタヴィア VWパサート シボレー アベオ 大宇センス 三菱ランサー オペル ベクトラ VWゴルフ トヨタ カムリ シボレー ラセッティと続いている 中古車の輸入の状況 2000 年代の初めに輸入中古車に適用される物品税率が大幅に引き上げられ それ以降ウクライナの自動車 ( 新車 + 中古車 ) 市場における輸入中古車のプレゼンスは急激に低下し そのシェアは2~4% にまで落ち込んでいた ところが 2016 年になりウクライナ政府は突然 高価な新車を購入できない一般の人々に 比較的品質の良い車を安い価格で獲得する可能性を与えるため という名目を掲げ 輸入中古車の物品税率を大幅に引き下げることを検討し始め 同年春にその旨を規定した法律が採択された 新法は2016 年 8 月 1 3) 日より発効し 一定の条件を満たした上で輸入される中古車に関しては物品税率がそれまでの7~28 分の1に低減されることになった ( 低減幅は車の排気量等により異なる ) その結果 8 月 1 日以降中古車の輸入台数が急増し始め 年末までの5か月間で約 1 万 5,000 台に達した 2016 年初頭から7 月末までの中古車の輸入台数は5,600 台だったので 8 月以降の月間の中古車輸入台数の平均値はそ れまでのほぼ4 倍に達したことになる さらに 2017 年に入ってからも同様の状態が続いており 1~10 月期の中古車の輸入台数は前年同期の約 3 倍の4 万 6,000 台以上に達した この輸入中古車を対象とする物品税率の低減措置は 2018 年末まで続けられることになっているので それまでは中古車の輸入台数が高い水準で推移することになるであろう なお 輸入中古車の中で最も人気の高いブランドはルノーで 以下 VW シュコダ オペル 日産と続いている ヨーロッパナンバーの車ウクライナでは輸入関税を支払わず保税状態で国内にヨーロッパナンバーの車 ( 欧州諸国で登録された中古車 ) を持ち込み 一定期間国内で使用することが認められている そのような形で持ち込まれる車は 1 個人利用目的のトランジット車 ( ウクライナを横断して他国に移動する車 最大で5 日 ~10 日 ウクライナ国内に滞在できる ) 2 個人利用目的で持ち込まれる車 ( この場合は ウクライナ人が共同保有者になっていること ウクライナ国外の車検を通っていること といった条件を満たしていれば1 年間ウクライナ国内に滞在できる ちなみに 外国側の共同保有者の国籍を見ると ポーランド人とリトアニア人が圧倒的に多い ) 3 所与の車を保有する会社と契約を締結した上でウクライナに一時的 ( 期間は最大で1 年間 ) に持ち込まれる車 ( 商用車であることが多い ) 4 人道支援 ( 障害者等が対象となる ) 目的で持ち込まれる車 の 4 つのタイプに大別される ウクライナの関税局が発表している公式の数字によれば 毎年 50 万台前後のヨーロッパナンバーの車がウクライナ国内に持ち込まれており 2017 年秋時点で約 2 万 5,000 台がウクライナ国内に留まっていた とされている ただ 多くの業界関係者はこの数字に疑問を抱いて ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号 21

特集 安定成長を模索する NIS 経済 おり たとえば ウクライナのAutoconsulting 社は 2017 年秋時点でウクライナ国内に滞在していたヨーロッパナンバーの車の数は少なくとも30 万台以上に達しており しかもその7~ 8 割が滞在期限切れの 不法残留車 である との見解を示している (autoconsulting.com.ua 2017.8.21) 一部には この不法残留車の数の多さが 2017 年秋以降の新車市場の伸びの鈍化の一因になっているのではないか との見方も存在する (4) 商用車市場ウクライナの総重量 3.5t 以上のトラックの市場は2017 年に急激に回復し 前年比 84% 増の 3,844 台に達した これは 危機前の2013 年 (3,978 台 ) にほぼ匹敵する数字である ブランド別の状況を見ると2017 年時点で最も売れ行きがよかったのはMAZで 同年の販売台数は 761 台に達した 以下 MAN:512 台 フォード : 337 台と続いているが その他 年間販売台数が300の水準を超えたブランドとしてはスカニアとメルセデスベンツの名を 200の水準を超えたブランドとしてはボルボ GAZ DAFの名をそれぞれ挙げることができる タイプ別に見て最も人気が高かったのはトレーラーヘッドで 全体の31% を占めた その他 ダンプカーの人気も高く そのシェアは28% に達した ウクライナの中大型バス市場の規模は小さく 2017 年の数字は前年比 17.6% の1,520 台であった ブランド別の状況を見ると最も人気が高かったのはATAMAN( ウクライナ ) で 363 台の販売を記録した 以下 PAZ( ロシア ):213 台 ETALON(BAZ-2215とも呼ばれるモデル ウクライナのETALON 社傘下のチェルニゴフ自動車工場で生産されている ):152 台 MAZ: 137 台 フォード :136 台と続いている 2017 年のウクライナのLCV( 総重量 3.5t 未満の小型商用車 ) の市場規模は前年比 38.2% 増 の1 万 1,549 台であったが 最も人気が高かったブランドはルノーで 2,147 台の販売を記録した 以下 フィアット :1,173 台 フォード : 1,126 台 GAZ:962 台 VW:911 台 メルセデスベンツ :815 台 MAZ:757 台 プジョー :544 台 MAN:495 台 シトロエン :353 台 と続いている (5) ウクライナの主要乗用車メーカーウクライナの乗用車生産部門は1990 年代後半から2001 年ごろまで輸入中古車の攻勢に苦しみ瀕死の状態にあったが 輸入中古車の物品税率が大幅に引き上げられたことなどもあって2002 年ごろから急激に活性化し 2008 年には生産台数が40 万台を突破した ( 図表 4) しかし 経済危機の影響が色濃く出始めた翌年の 2009 年には状況が一気に悪化し それ以降は低迷が続いている 特に2014 年夏以降は生産の不振が危機的な様相を呈し始め 同年の7~12 月期の生産台数は3,380 台にまで落ち込んだ 新車市場での低価格車の人気低迷 ( 国産車の大半が低価格車である ) の影響を受けその後不振の度合いは強まる傾向にあり 2015 年の生産台数は最悪だと思われた2014 年の数字をさらに70% 以上も下回る5,654 台にとどまった 2016 年に入ってからも好転の兆しは全く見えず 同年の生産台数は前年比 23.2% 減の4,340 台にとどまった 2017 年は若干状況が改善され 7,296 台に達したが それでも全盛期の2008 年の40 万台と比較すると大きく見劣りする その分 ウクライナの乗用車工場の稼働率は大幅に低下しており どの工場も赤字経営を強いられていると考えてよいであろう 恐らく 累積債務額も大きく膨らんでいるものと推定される 滅亡の危機に直面しているといっても過言ではないウクライナの主要な乗用車メーカーの概要は以下の通りとなっている ( 各メーカーのここ数年の生産動向は図表 5に示してある ) 22 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号

Research Report 政 450 400 350 図表 4 ウクライナの乗用車生産台数の推移 380 406 ( 単位 1,000 台 ) 300 250 200 174 192 267 150 98 98 100 64 75 70 46 50 26 5.7 4.3 7.3 0 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 ( 出所 )2003~2008 年はウクライナ統計国家委員会 2008~2017 年はASMホールディング 100,000 90,000 80,000 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 ( 出所 )ASM ホールディング 図表 5 ウクライナの主要メーカー別乗用車生産台数 ( 単位台 ) 0 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 合計 97,580 69,687 45,758 25,941 5,654 4,340 7,296 ユーロカー 11,656 14,556 11,494 3,649 2,030 3,937 6,145 KrASZ 6,329 3,180 9,049 7,514 0 0 0 ボグダン 20,240 12,034 5,958 1,999 0 0 0 AvtoZAZ 59,355 39,917 19,257 12,779 3,624 403 1,151 AvtoZAZ ボグダン KrASZ ユーロカー ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号 23

特集 安定成長を模索する NIS 経済 ウクルアフト 1969 年に設立された会社で AVTOZAZ<ザポロジエ自動車工場 > イリチェフスクの自動車組立工場 ( 年間生産能力 4 万台でバスの生産が行われていたが 市場の縮小を受け2015 年夏に閉鎖されている ) 約 10の自動車部品工場 200 近くのサービスセンター 約 400の自動車販売店等を傘下におさめている AvtoZAZでは かつて複数のオリジナルモデルが生産されていたが 乗用車に関しては 2007 年にタヴリアというモデルの生産が中止されたのを皮切りに 2010 年末までにすべてのオリジナルモデルが生産中止となった その後は外国メーカーの旧式モデルの生産が細々と続けられており 2015 年にはシボレーのラノス ラノスをベースとするZAZセンス 旧型のシボレー アベオをベースとするZAZ VIDA 中国のCheryのA13をベースとするZAZ Forzaが合計で3,624 台生産された しかし 2016 年は極端な販売不振の影響で事実上の休止状態に追い込まれ 通年の生産台数はわずか403 台にとどまった 2017 年は若干生産台数が増加し1,151 台に達したが 生産モデル数は大幅に減少し 同年末時点で生産が続けられていたのはZAZ センスとZAZラノス カーゴの2モデルのみであった 同工場の生産能力は15 万台 / 年であるが 現在の生産水準では当然ながら黒字を出すのは不可能となっており 2017 年の損失額は約 3 億グリブナに達した 累積債務額も30 億グリブナ以上に達しており 同工場の再建は不可能に近いとみられている 親会社のウクルアフトもそのことを認識しており 工場の売り先を模索しているようだが 今のところ買い手が出現したという情報は出ていない もっともAvtoZAZの関連会社すべてが瀕死の状態にあるわけではなく 中には好調な業績を維持している会社も存在する たとえば 2005 年にBosalとの間で設立された排気システム ( マフラー ) を製造する合弁工場は安定した 生産水準を維持することに成功しており 2017 年には約 25 万個の排気システムを製造している ( そのうちの92% が輸出に供された ) ボグダン企業グループ ウクルプロムインベスト 4) の総帥であったポロシェンコ現ウクライナ大統領と同氏のビジネスパートナーであったスヴィナルチュクが2005 年に設立した会社だが ポロシェンコはボグダンの業績が悪化した2009 年に保有する同社の株式をすべてスヴィナルチュクに売却しており 現時点ではスヴィナルチュクがボグダンの株式の100% を保有している ( ただし 今もスヴィナルチュクとポロシェンコ一族は良好な関係にあるといわれている ) ボグダンは 第 1 自動車工場 ( 旧ルツク自動車工場 ) 第 2 自動車工場 第 3 自動車工場を傘下におさめているが それらの工場の現状は以下の通りとなっている 第 1 自動車工場はソ連時代から存在する工場で 元々はオリジナルの小型 SUVを生産していた ボグダンの傘下に入った2000 年ごろからロシアのUAZ( ウリヤノフスク自動車工場 ) と LADAのモデルのSKD( セミノックダウン : 組立てラインだけを装備した生産施設での生産 ) を開始し その後現代車と起亜車のSKDも開始した さらに 2005 年からはバスとトロリーバスの生産も開始した しかし 2008 年 6 月に下記の第 2 工場が稼動を開始した後 第 1 工場での乗用車の生産は中止され 現在は小型バスだけが生産されている ( 年間生産能力は8,000 台だが 2017 年の生産台数はわずか110 台にとどまった ) 第 2 自動車工場は2008 年 6 月より稼動を開始した年間生産能力 10 万台以上の新しい工場で チェルカッスィに所在する 同工場では LADA2110をベースとしたボグダン ブランドのモデルの生産が行われていたが ( その他 一時はLADA 車や起亜車の生産も行われていた ) 24 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号

Research Report 政 ロシアとの関係悪化の影響を受け 2014 年秋に生産が中止された その影響もあり 2014 年の通年の生産台数は前年の約 3 分の1の1,999 台にとどまった それ以降 現在 (2018 年春 ) に至るまで生産は中止されたままとなっており このままでは生産の再開は難しいとみられている その関係でボグダン側は工場の売却を検討しており 複数の外国メーカーとの間で交渉を行っているようだが 2018 年春時点では取引が成立したとの情報は出ていなかった 第 3 自動車工場も2008 年 9 月から稼動を開始した新しい工場で やはりチェルカッスィに所在する 年間生産能力 1 万 5,000 台の同工場では いすゞの小型および中型トラック 現代のトラック等のSKDが行われていたが 2016 年以降現在 (2018 年春 ) に至るまで生産が中止されたままとなっている ( ロシアのASMホールディング発表の数字 ) その他 ボグダンはかつて チェルカッスィ アフトブス というバス工場も傘下におさめていたが 2011 年春に外部企業に売却している ( 同バス工場では ATAMAN というブランド名のバスが生産されている ) 上に列挙した生産の数字からもわかる通りボグダンの生産部門も上記のウクルアフト同様に非常に厳しい状況に置かれており 2017 年 1~9 月期の損失額は4 億グリブナ強に達した また累積債務額も年々増加しており 2017 年 9 月末時点で71 億 6,000 万グリブナに達していた ( そのうちの44 億が銀行からの借入金となっている ) カルパチエ州ソロモノヴォ村の自由経済ゾーン ザカルパチエ に所在する 同工場では 2001 年末にシュコダ車の試験生産が開始され 2002 年春から量産に移行した その後 一時 VW 車やセアト車の生産も行われていたが 2010 年からはシュコダのモデルしか生産されておらず 2017 年には オクタヴィア ファビア イエティ スペルブ ラピッド等が合計で 6,145 台生産された その他 2018 年 3 月からはコディアックというシュコダの大型 SUVの生産も開始されている 同工場の生産能力については諸説があるが 10 万台 / 年を超えているのはほぼ確実で 現在の生産水準では黒字を出すのは非常に難しいと判断される 実際 同工場も巨額の債務を抱えており その総額は2018 年 2 月時点で約 27 億グリブナに達していた なお ウクライナでは欧州から輸入される新車の関税率が2017 年時点で5~8.2% という低い水準に抑えられており ( 中古車は7.3%) しかも 今後段階的にさらに引き下げられ2023~ 2026 年を目処に新車に関しても中古車に関しても関税率がゼロになることが見込まれている 関税率が低い関係で 現時点でもユーロカーで現地生産されるシュコダ車と同ブランドの輸入車との間にはほとんど価格差はないといわれているが ( 時には後者の方が価格が安くなることもあるといわれている ) 今後 計画通りに関税率が引き下げられることになれば ユーロカーの経営環境は今よりもさらに厳しいものとなるであろう 非公開株式会社 ユーロカー オレグ ボヤリンという人物が率いる持ち株会社 アトル ホールディング の傘下に入っている会社 同社が保有する工場は 2001 年にドイツのVWの技術支援を受けて完成した近代的な工場で スロバキアおよびハンガリーとの国境近くのザ AIS( アフトインベストストロイ ) KrASZ( クレメンチュグ自動車組立工場 ) の他 UAZをはじめとするロシアの複数のブランド 双竜 Geely 等の輸入 販売会社や シトロエン アウディ 現代 シボレー ルノーの販売会社などを傘下におさめる企業グループ KrASZでは 2000 年 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号 25

特集 安定成長を模索する NIS 経済 ごろからLADA GAZ( ゴーリキー自動車工場 ) UAZ 中国のGreat Wall Geely FAW 等のSKD 方式での生産が開始され 最盛期の2004~2008 年には年間 2 万台前後の生産を記録していたが 販売不振の影響で2009 年より数字が急激に悪化し始め2014 年夏についに生産を中止することを余儀なくされた その後 破産申請が 2015 年秋に裁判所により認められ KrASZは正式にその活動を停止した 2. ベラルーシ (1) 新車市場の状況概況ベラルーシではかつて輸入中古車が乗用車市場の核を形成しており 正規ディーラー経由の新車の販売台数は年間 1 万台未満となっていた しかし 2005 年末に中古車の輸入関税率が大幅に引き上げられたのを契機に 2006 年以降新車販売の数字が伸び始め 2008 年には約 2 万 5,000 台の販売を記録することに成功した その後 販売が低迷する年が続いたが 2013 年になり急激に市場が活性化し同年の販売台数は前年比 39.5% 増の2 万 8,810 台に達した ( ベラルーシ ディーラー協会発表のLCVも含めた数字 ) 同年の新車市場の好調さを牽引した要因としては 1 付加価値税が事実上値上がりした関係で 5) 2012 年は車の買い控え現象が生じたが そのことと関連する繰り越し需要が2013 年に顕在化した可能性 2 秋ごろから2014 年にリサイクル税が導入されるとの情報が出始め駆け込み需要が生じた ( リサイクル税は2014 年 3 月に導入された ) 3ロシア製の低価格外国ブランド車の販売台数が急激に伸び そのことが市場全体の活性化につながった 等が考えられる 列挙した要因に支えられる格好で 正規ディーラー経由の新車の販売の堅調さは 2014 年初秋まで続いたが 10 月半ばごろから急激な落ち込 みを示し始め LCVを含めた通年の数字は前年比 14.4% 減の2 万 4,650 台にとどまった 秋口から正規ディーラー経由の新車販売台数が落ち込んだのは ベラルーシの運び屋によりロシアから並行輸入される車の数が急増したためであったが その背景にはベラルーシ ルーブルのレートが比較的安定していたためロシア ルーブルに対して強くなり ロシアで車を購入しベラルーシで転売すると大幅な利益を得ることができるようになったという事情が存在した 2015 年に入ってからもしばらくはロシアから運び屋により持ち込まれた並行輸入車の攻勢に苦しみ正規ディーラー経由の新車販売の低迷は続いたが ベラルーシ ルーブル安の進行を受け年後半にロシアからの並行輸入台数が減少したこともあり 2015 年の通年の数字は前年を若干上回る2 万 6,190 台に達した ( 乗用車が2 万 3,640 台 小型商用車が2,550 台 ) 諸外国から個人により持ち込まれる車に課せられるリサイクル税の税率を2016 年 2 月 4 日からそれまでの8.25 倍の水準に引き上げることを規定した政府決定が採択されたこともあり 2016 年は並行輸入台数が前年の約 2 万 4,000 台から6,731 台にまで激減し その結果正規ディーラー経由の新車の販売台数は前年を若干上回る2 万 6,808 台に達した 2017 年は 並行輸入される車の数がさらに減少したことに加え 秋以降に2018 年初頭より新車の販売価格が上昇するという情報を各マスコミが一斉に流した関係で12 月に駆け込み需要が発生したこと (2017 年 12 月の新車販売台数は 前月の11 月の数字を48% も上回った ) もあり 通年の新車販売台数は前年比 27.7% 増の3 万 4,255 台に達した (atuoconsulting.com.ua 2018.1.18) ブランド別販売状況 2017 年のブランド別販売ランキング ( 正規ディーラー経由のLCVも含 26 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号

Research Report 政 めた数字に基づくランキング ) で前年に引き続きトップにたったのはロシアで現地生産されている サンデロ ステップウェイ ロガン ダスターといった低価格モデルの売れ行きが好調であったルノーで 前年比 24% 増の8,420 台の販売を記録することに成功した VWはベラルーシで伝統的に根強い人気を誇っているが 最近は常にルノーの後塵を拝しており 2017 年も前年比 25.7% 増の5,591 台の販売を記録することに成功したものの 2 位の座に甘んじることとなった VWはベラルーシ市場に小型商用車も含めれば10 以上のモデルを投入しているが ロシア製の低価格車 ポロ セダン の人気が圧倒的に高く 総販売台数の 7 割以上を占めている 2012 年の時点でトップであったロシアの LADAは ルノーやVWの低価格車の攻勢を受け年々プレゼンスを低下させており 2017 年の順位は前年同様 3 位にとどまった LADAの 2017 年の販売台数は前年比 61% 増 ( 数字が大きくなっているのは前年の2016 年の数字が前年比 8% 減と低調だったためである ) の3,509 台であったが 最も人気の高いモデルはラルグスで1,192 台の販売を記録した その他 4 4: 637 台 ベスタ :601 台などとなっている 4 位には ロシアで現地生産されているアルメーラやエクストレイルの販売が好調であった日産が前年比 13.0% 増の1,971 台の販売を記録し食い込んだ 5 位には やはりロシアで現地生産されているラピッドやオクタヴィアを主力とするシュコダが1,952 台の販売を記録し入った 6 位から10 位までの顔ぶれを紹介すると GAZ:1,807 台 ( すべてLCV) 起亜:1,741 台 (SUVのスポーテージの販売が非常に好調であった ) 現代:1,586 台 (SUVのクレタの販売が好調であった ) トヨタ:820 台 (2016 年時点で主力だったRAV4 の販売が不振で ブランド 全体の数字も前年比で35.0% 減少した ) フォード :680 台となっている 11 位以下に目を転じるとプレミアムブランドと日本ブランドの存在感が強くなっており BMW(11 位 :2017 年の販売台数は537 台 ) マツダ(13 位 :407 台 ) メルセデスベンツ (13 位 :407 台 ) アウディ(15 位 :395 台 ) 三菱自動車(20 位 :201 台 ) ランドローバー (21 位 :187 台 ) ボルボ(22 位 :169 台 ) スズキ(23 位 :85 台 ) スバル(24 位 :78 台 ) ジャガー(25 位 :43 台 ) といったブランドが25 位以内に入っている モデル別販売動向ベラルーシでも他の多くのNIS 諸国同様にロシア製の低価格車と SUVの人気が高く 2017 年に最もよく売れたモデルはVWのロシア製低価格車 ポロ セダン であった ( 販売台数は3,926 台 ) 以下 2 位から15 位までの顔ぶれを見ても ルノー サンデロ ステップウェイ :2,940 台 ルノー ロガン : 2,298 台 ルノー ダスター (SUV):2,253 台 ルノー キャプチャー (SUV):1,821 台 シュコダ ラピッド :1,365 台 LADラルグス :1,197 台 起亜スポーテージ (SUV):1,117 台 現代クレタ (SUV):845 台 LADA4 4:637 台 現代アクセント ( ロシアではソラリスと呼ばれている ):621 台 LADAベスタ :601 台 VWティグアン (SUV):582 台 起亜リオ :573 台 ルノー サンデロ :572 台となっており やはりロシア製の低価格車とSUVのプレゼンスが圧倒的に強いことがわかる (2) 生産の状況ベラルーシでは ベラルーシ 英国合弁企業 ユニゾン ( 旧フォード ユニオン ) および ベラルーシのBelAZと中国のGeelyの合弁企業であるBelGeがSKD 方式で乗用車の生産を行っている ユニゾンでは1997 年春よりフォード トランジットとエスコートの生産が開始さ ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号 27

特集 安定成長を模索する NIS 経済 れたが 販売が伸び悩んだことなどもあり2001 年にフォードはプロジェクトから撤退した その後 ユニゾンでは一時イランのホドロ社のサマンドというプジョー 405をベースとしたモデルのSKDが行われていたが 2013 年 6 月に生産中止となった それ以降 同工場では複数のブランドのモデルのSKDが実施されるようになり 2014 年にはプジョー / シトロエンと中国の Zotyeのモデル (Z300) が合計で217 台生産された 2015 年に入りZotyeのZ300の生産は中止されたが その替わりにGM( オペル シボレー キャデラック ) のモデル ( オペル モッカ シボレー トラックス シボレー タホ等 ) のSKD が新たに開始され 同年にはプジョー / シトロエンのモデル ( シトロエンC-Elysee プジョー 301 プジョー パートナー等) と合わせて全部で4,403 台が生産された 2016 年はプジョー / シトロエンのモデルの生産は大幅に縮小されたが GMのモデルと同年に生産が開始されたZotyeのT600というモデルが合計で5,140 台生産された 2017 年は GM 側が 2017 年 7 月までにローカルコンテンツを50% にまで高める というベラルーシ政府から課せられた義務を遂行できず生産量を減少させた関係で 工場全体の生産量も前年比 34.5% 減の3,367 台にとどまった なお GMはローカルコンテンツ 50% の達成は不可能と認識しており 2018 年 1 月よりユニゾンでの現地生産を正式に中止している ( それによる損失を補うためユニゾンは 2018 年より中国のZotyeの生産モデル数を増やす意向を示している ) BelGeはボリソフの アフトギドロウシリチェリ という工場の敷地内に建設した年間生産能力 3 万台の組立工場において2013 年から Geely 車のSKDを開始しており 2014 年には SC7 EX7 LC CROSSの3モデルを合計で9,133 台生産した 2015 年は生産車種の切り替え準備という名目で夏頃から工場の稼働時間を大幅 に減らしたため ( 在庫調整のための計画的減産だったという説もある ) 通年の生産台数は前年比 55.5% 減の4,066 台にとどまった 2016 年は若干状況が改善され 前年比 21.7% 増の4,950 台が生産された ちなみに 2016 年の同工場の出荷台数は5,721 台で そのうちの4,745 台がロシア市場に 976 台がベラルーシ市場にそれぞれ供給された しかしながら 2017 年の年初に同工場は閉鎖された 工業アセンブリ措置に関するロシアおよびカザフスタンとの取り決めに従い ベラルーシでは2017 年より工業アセンブリ措置の適用対象となっている工場でのSKDの実施が原則的に不可能となったからである 当該の状況を受けBelGeは ボリソフとジョジノの境界付近に確保した約 120haの敷地において溶接ラインと塗装ラインを装備した新工場 すなわち CKD( コンプリートノックダウン 組立てラインの他 溶接 塗装ライン等を装備した工場での生産を意味する ) が可能な工場の建設を開始していたが 1 期工事分 ( 年間生産能力 6 万台 / 年 ) が2017 年 9 月に完成した その後 Geely アトラスというSUVの量産が開始され 年末までに213 台が生産された (ASMホールディング発表の数字 ) (3) 商用車の生産状況 2017 年にベラルーシでは前年比 45.1% 増の 8,703 台のトラックが生産されたが 主要メーカー別の内訳は MAZ:6,828 台 BelAZ:824 台 ミンスク トレーラーヘッド工場 :509 台 その他 ( ユニゾン MAZ-MAN テフノツェントル等 ):542 台となっている 2017 年のベラルーシのバスの生産台数は前年比 2.1% 減の1,145 台であったが 主要メーカー別の内訳は MAZが1,038 台 ミンスク トレーラーヘッド工場が97 台 その他 :10 台となっている 28 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号

Research Report 政 3. カザフスタン (1) 新車市場の状況概況数年前までカザフスタンの自動車市場でも中古車のプレゼンスが非常に強く 新車の販売台数は低迷していたが 個人に適用される中古車の輸入関税率が2011 年 7 月 1 日以降大幅に引き上げられたことを契機に 市場での中古車のプレゼンスが低下する一方で 新車の販売台数が急激に増加し 2011 年時点で4 万 5,302 台だったものが 2013 年には16 万 5,730 台に達した ( 図表 6) ただ 急成長は長続きせず 1 秋口から石油の国際価格が急落したこと ( 周知の通り カザフスタンはロシアに次ぐ旧ソ連諸国第 2 位の産油国である ) 2 不良債権問題に起因する流動性不足の影響で多くの銀行が自動車ローンの貸し出し条件を厳格化したこと 3ロシア ルーブル安の急激な進行に伴いテンゲがルーブルに対し強くなったこと を受けカザフスタンの人々がロシアの近隣エリア ( クルガン州やオレンブルグ州 ) に出向きそこの自動車販売店で新車を購入するケースが急増したこと等の否定的要因が重った翌 2014 年の販売台数は前年比 1.31% 減の16 万 3,561 台にとどまった 2015 年に入ってから状況はさらに悪化し 同年の正規ディーラー経由の新車販売台数は前年を約 40% も下回る9 万 7,446 台にとどまった そして 油価下落を背景とする不況は2016 年に入ってからも続き 自動車ローンの金利の一部を国が負担するという販売促進措置が講じられたにもかかわらず ( 国産車のみが対象 ) 販売台数は不振だった前年の数字をさらに52% も下回る4 万 6,712 台にまで落ち込んだ ただ 油価が回復傾向を見せ始めた2017 年春ごろから状況がやや好転し始め 2017 年の新車販売台数は 前年比 5.0% 増の4 万 9,051 台となった もっとも この数字はピーク時の2013 年の3 分 図表 6 カザフスタンの新車 (LCV を含む ) 販売台数の推移 ( 単位台 ) 180,000 160,000 165,730 163,561 140,000 120,000 100,000 80,000 98,242 97,469 60,000 40,000 20,000 19,099 32,906 22,867 16,424 21,686 45,302 46,712 49,051 0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 ( 注 ) 正規ディーラー経由の販売台数 ( 出所 ) カザフスタン自動車ビジネス協会 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号 29

特集 安定成長を模索する NIS 経済 の1 以下にすぎず カザフスタンの新車市場では今も不況が続いているといえよう なお カザフスタン自動車ビジネス協会は油価の上昇に伴い景気も徐々に回復するとの認識を有しており 2018 年の新車販売台数は前年を15~ 20% 上回る可能性が高い との予測を発表している (kapital.kz 2018.1.17) ちなみに カザフスタン自動車ビジネス協会の他にカザフスタン自動車関連企業連盟 カズアフトプロム も新車販売の数字を発表しているが それによれば2017 年の正規ディーラー経由の新車販売台数は前年比 5.8% 増の4 万 6,377 台 ( うち3 万 484 台が輸入車 ) で 金額ベースの市場規模は前年比 28.6% 増の11 億 2,000 万ドルだったとされている 以下 ブランド別ならびにモデル別の販売状況に関しては カズアフトプロムの方の数字をベースに説明させていただく ブランド別販売動向 2017 年の新車市場のブランド別の販売状況を見ると 日本のトヨタが 9,252 台の販売を記録し 前年に引き続きトップとなった さらに トヨタは中古車市場 ( 中古車転売市場 ) でも人気が高く 同市場でもトップシェアを獲得している トヨタのカザフスタン新車市場における主力はロシアで生産されているカムリとRAV4 で 2モデルの販売台数の合計値は 2017 年のカザフスタン新車市場での同ブランドの総販売台数の過半を占めた LADAは長年にわたりブランド別新車販売ランキングの首位の座を維持していたが 人気モデル サマラ の生産が中止されたことなどが響き2014 年ごろから人気に陰りが見え始めた さらに 2016 年には 同年初頭よりカザフスタンで導入されることになったリサイクル税の影響を直接的に受け ( リサイクル税の影響は低価格車ほど大きくなる ) 販売が激減し ついに1 位の座をトヨタに譲ることになった 2017 年は前年の数字を約 20% 上回る8,792 台の販売を記録したが 年間数万台の販売を記録していた全盛期の数字には遠く及ばず 前年同様に2 位の座に甘んじることになった カザフスタン市場のおけるLADAの主力は 4 4 ラルグス および グランタで LADAの総販売台数に占めるシェアは3モデル合計で7 割以上に達する ちなみに LADAの場合は アルマトィやアスタナといった大都市部でのプレゼンスは低いものの ( 逆にトヨタは それら比較的購買力の高い大都市部でのプレゼンスが強くなっている ) アティラウ コスタナイ カラガンダといった地方都市の市場では強みを発揮している 3 位には ネクシアとR4( コバルト ) を主力として4,621 台の販売を記録したRAVON (GMウズベキスタンが展開するブランド) が食い込んだ 4 位以下に目を転じると 現代 (4 位 :3,624 台 ) GAZ(5 位 :2,611 台 ) ルノー (6 位 :2,486 台 ) 起亜(7 位 :2,301 台 ) UAZ (8 位 :1,900 台 ) といった カザフスタンもしくはその他の旧ソ連諸国で生産されている低価格車を主力とするメーカーの存在感が目立つが 日本メーカーも健闘しており 日産 (9 位 :1,683 台 ) レクサス(12 位 :1,177 台 ) スバル (16 位 :495 台 ) 三菱自動車(18 位 :291 台 ) マツダ(24 位 :165 台 ) が25 位以内に名を連ねている モデル別販売動向等 2017 年の新車市場で最も良く売れたモデルはトヨタ カムリで 3,334 台の販売を記録した 以下 LADA4 4: 3,029 台 RAVON ネクシア :2,486 台 LADAグランタ :1,772 台 LADAラルグス :1,658 台 トヨタRAV4:1,488 台 RAVON R4( コバルト ): 1,412 台 トヨタ ランドクルーザー :1,215 台 ルノー ダスター :1,119 台 VWポロ セダン : 1,017 台 現代クレタ :957 台 LADAベスタ : 30 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号

Research Report 政 952 台 トヨタ カローラ :950 台 現代エラントラ :878 台 現代タクソン :845 台 現代アクセント :704 台 ルノー サンデロ :677 台 トヨタ ハイラックス :611 台 レクサスLX:537 台 RAVON R2( マチス ):525 台と続いている 般的に高く 20 年以上が36.2% 11~20 年が 29.4% 8~10 年が9% 4~7 年が16.6% 1~3 年が7.6% 1 年未満が1.1% となっている 一方 新規に登録された車 ( 新車 + 輸入中古車 ) の総数は6 万 9,900 台であった 主要ディーラー別販売状況カザフスタンの主要な販売会社としては LADA UAZ シボレー 起亜 シュコダ等を取り扱うBIPEK-Avto グループ GAZ UAZ スバル トヨタ 日産 現代 BMW 等を取り扱うKMK アスタナ モータース RAVON UAZ シボレー等を取り扱うヴィラジュ トヨタ車を取り扱うトヨタ シティ アルマトィ 三菱自動車 スズキ RAVON フィアット 双竜 ZAZ 等を取り扱っているAllur Auto VW アウディ ポルシェ 三菱自動車 スズキ等を取り扱うメルクル アフト等の名を挙げることができる 列挙した会社の中で2017 年の新車販売台数が最も多かったのは 人気ブランドのLADAを中心に取り扱うBIPEK-Avtoグループで 1 万 3,554 台の販売を記録した もっとも 2~3 年前から観察されているLADAの人気の低迷に伴い同グループの市場シェアは縮小傾向にあり 2012 年時点では50% を超えていたものが 2017 年は29.2% にとどまった 以下 2017 年のカザフスタンの新車市場で販売台数が多かった会社を列挙すると KMK アスタナ モータース :7,834 台 ( 市場シェアは16.9%) ヴィラジュ :4,204 台 (9.1%) トヨタ シティ アルマトィ :2,248 台 (4.9%) Allur Auto:1,956 台 (4.2%) メルクル アフト:1,386 台 (3.0%) 等となる 中古車市場 2017 年に登録された ( 中古車転売分を含む ) の車の総数は117 万 584 台で そのうちの110 万 684 台が転売された中古車であった 2017 年に転売された中古車の平均車齢は全 (2) 生産の状況現在カザフスタンではアジア アフト Allur Auto( コスタナイにアグロマシホールディングとサリアルカアフトプロムの2 工場を保有 ) の 2 社が乗用車の現地生産を行っているが それら2 社の概要は以下の通りとなっている アジア アフトカザフスタン最大の自動車販売会社であるBIPEK-AvtoとロシアのAvtoVAZ の合弁企業で ( 出資比率は前者が75% 後者が 25%) 2002 年よりウスチカメノゴルスク市に所在する設計生産能力 4 万 5,000 台 / 年の工場で現地生産を開始した 当初はLADAの1モデル (4 4) だけを生産していたが その後生産モデルを大幅に増やし 2015 年時点では4 4の他に 起亜の14モデル ( ソレント セラト スポーテージ等 ) シボレーの6モデル( キャプティバ アベオ クルーズ等 ) シュコダの 4モデル ( ラピッド オクタヴィア イエティ等 ) をSKD 方式で生産していた しかし 2016 年はシュコダとシボレーのモデルの生産が中止された他 起亜車の生産量も大幅に減少した ( 同年の起亜車の生産台数は前年比 96% 減のわずか129 台にとどまった ) ただ 2016 年秋よりLADAの生産モデル数を増やすという措置が実施された他 ( グランタ カリーナ プリオラ ベスタ XRAYのSKDが新たに開始された ) 2017 年初頭からはシボレーとシュコダの車の SKDも再開されたので 2017 年には2015 年とほぼ同じ数のモデルが生産された 同工場の生産台数は 2007 年 :6,000 台強 2009 年 :1,000 台弱 2010 年 :3,099 台 2011 年 : ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号 31

特集 安定成長を模索する NIS 経済 7,326 台と伸び悩んでいたが 2012 年は市場の急激な拡大という追い風を受け前年比 125.4% 増の1 万 6,513 台を記録することに成功した 2013 年も急激な拡大フェーズが続き 生産台数は前年比 87.8% 増の3 万 1,005 台にまで達したが 2014 年はシボレー車とLADA 車の生産が不振であったことが響き 前年比 7.1% 減の2 万 8,803 台にとどまった さらに ロシアから並行輸入される競合車の攻勢とテンゲ安を背景とする生産コストの上昇に苦しんだ2015 年は4 ブランド (LADA 起亜 シボレー シュコダ) のすべてで大幅に生産台数が減少し 合計の数字は前年を実に76.1% も下回る6,882 台にまで急落した 2016 年はLADA 以外のブランドの生産が事実上すべて中止された関係もあり 生産台数がさらに落ち込み 前年比 57% 減の2,962 台にとどまった ただ 2017 年は 既述の通り年初からシボレーとシュコダの生産が再開された他 LADA 車と起亜車の生産台数も大幅に増加したので 通年の数字は前年の4 倍近い1 万 1,412 台にまで回復した なお アジア アフトで生産されているモデルの中で2017 年の販売台数が最も多かったのはLADA4 4で 4,238 台の販売を記録した 以下 グランタ : 1,766 台 ラルグス :1,637 台 ベスタ :931 台と続いている ( 恐らく 輸出分も含めた数字だと推測される ) アジア アフトは現時点ではSKDしか行っていないが 工業アセンブリ措置に関するロシアおよびベラルーシとの取り決めに従いカザフスタンでも今後 SKDの実施が不可能になることを踏まえ 戦略的パートナーであるAvtoVAZ およびカザフスタンの政府系企業 Eptic と共同で プレス 塗装 溶接の各ラインを装備した新工場の建設プロジェクトに取り組んでいる 当初の計画では1 期工事は2017 年に完成し 年産 6 万台規模でLADAのベスタやXRAYなどのCKD 方式での生産が開始される予定となっ ていたが 用地の買収に手間取ったため作業は遅れ気味となっており 現時点の見通しでは 1 期工事の完了は早くても2021 年ごろになるとみられている (autostat.ru 2018.3.6) ただ 1 期工事の完成に必要となる資金の調達の目処がいまだに立っていないという事実 (1 期工事の総額は3 億 8,000 万ドルと評価されているが 2018 年初頭時点の累積投資額は6,200 万ドル弱にとどまっていた ) を勘案すると 完成時期がさらに大幅に遅れる可能性も十分に考えられる 1 期工事完成後に2 期工事を実施し生産能力を12 万台 / 年にまで増強するという計画も検討されているようだが こうした状況なので 2 期工事の着工時期は今のところ未定となっている なお 新工場で生産される車はカザフスタン国内で販売される他 ロシアのシベリア地方や他の中央アジア諸国等に輸出される見込みとなっている Allur Auto 2009 年 12 月に 自動車販売会社 Allur Auto アグロマシホールディング カザフスタン社 韓国の自動車メーカー 双竜 の3 社は アグロマシホールディング社が保有するコスタナイのディーゼル エンジン工場に 1,600 万ドル以上を投下して年間生産能力 2 万 5,000 台の乗用車組立ラインを設置し 双竜の SUV4モデル (Kyron Acyton Acyton Sports Rexton) のSKDを開始するという計画を発表した そして 2010 年 8 月より試験生産が開始され 年末までに合計で77 台の双竜車が組立てられた 当初の計画では2011 年には約 1,500 台が生産されることになっていたが 実際の生産台数は869 台にとどまった 2012 年からは 双竜車の他にウクライナのZAZチャンスのSKDも開始され 同年の生産台数は2,581 台に達した 2013 年は春からZAZ VIDAの生産が 夏からプジョーの複数のモデル (301 3008 508 等 ) の生産がそれぞれSKD 方式で開始され ZAZ 双 32 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号

Research Report 政 竜 プジョーの3ブランド合計で前年の倍以上の6,464 台が生産された 2014 年は 6 月からコスタナイの年間生産能力 3,000 台の新工場 ( サリアルカアフトプロム ) でトヨタ フォーチュナーと双竜 Nomadの CKDが開始され ( その一方で ZAZのモデルの生産は中止された ) 2 工場合計で8,354 台が生産された その後 生産車種の大幅な見直しが実施され 2015 年からは トヨタ 双竜 プジョーのモデルの他 中国のGeely JAC および 現代の複数のモデルの生産も開始されたが どのモデルも販売が伸び悩み 同年のAllur Auto 傘下の2 工場の生産台数の合計値は前年比 33.3% 減の5,571 台にとどまった 2016 年からは起亜やシュコダのモデルの生産も開始されたが状況を変えるまでには至らず 同年の生産台数は前年の数字をさらに下回る5,435 台にとどまった 2017 年にはRAVONネクシアの生産が開始されたが やはり状況に大きな変化をもたらすことはできず 2 工場合計の生産台数はほぼ前年並みの5,377 台となった (ASMホールディング発表の数字 ) なお コスタナイの年間生産能力 3,000 台の新工場 ( サリアルカアフトプロム ) で2014 年から開始されていたトヨタ フォーチュナーのCKD 方式での生産は 販売の不振を受け2016 年末で打ち切られたが 2014 ~2016 年の累積の生産台数は約 1,100 台であった (bnews.kz 2016.12.29) Allur Auto 傘下の2 工場で現地生産されているモデルの中で最も市場での人気が高いのは現代エラントラで 2017 年の販売台数は871 台に達した 以下 現代タクソン :842 台 JACS 3:474 台 シボレー トラッカー :441 台と続いている ( その他 起亜の複数のモデルが合計で1,895 台売れた他 シュコダの複数のモデルが合計で331 台 双竜の複数のモデルが合計で 289 台それぞれ売れた : カズアフトプロム発表の数字 ) 商用車の生産 2017 年にカザフスタンでは 1,634 台のトラックが生産されたが 工場別の内訳は KAMAZインジニリング ( アクモラ州 ):807 台 現代アウトトランス ( アルマトィ州 ):477 台 セミパラチンスク自動車工場 :249 台 Allur Auto:96 台 その他 :5 台となっている 2017 年のカザフスタンのバスの生産台数は 648 台であったが 工場別の内訳は Allur Auto: 410 台 大宇バス カザフスタン ( セミパラチンスク市 ):148 台 現代アウトトランス :69 台 KAMAZインジニリング :21 台となっている (3)WTO 加盟に伴う税制の変化 2015 年 12 月にカザフスタンはWTOに正式加盟し 2016 年より乗用車の輸入関税率がそれまでの30~35% から19% に引き下げられることになった この措置をそのまま実行すればただでさえ疲弊している国内自動車産業が壊滅的打撃を受けるのは明白なので カザフスタン政府は法律の改定を実施し輸入車の新規登録手数料の引き上げとリサイクル税の導入を決定した 当該の2つの措置の具体的内容は以下の通りとなっている 新規登録手数料の値上げカザフスタン政府は2015 年秋に それまで月次算定指標 ( カザフスタンで適用されている指標で 2017 年の値は2,269テンゲに設定されていた ちなみに 2018 年の当該の値は2,405テンゲとなっている ) の一律 25% に設定されていた輸入車 ( ユーラシア経済連合加盟国から輸入される車も含む ) の新規登録手数料を2016 年 1 月 1 日より変更することを発表した たとえば 乗用車の場合は車齢 1 年未満の輸入車の場合は従来通り月次算定指標の25% に相当する手数料が徴収されるが 1~3 年の車齢の輸入車には月次算定指標の50 倍の手数料が 3 年以上の輸入車には 500 倍の手数料がそれぞれ課せられることにな ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号 33

特集 安定成長を模索する NIS 経済 った 商用車に関しては車齢 1 年を超す輸入車への対応がさらに厳しいものとなっており 1 ~3 年が月次算定指標の240 倍 3~5 年が350 倍 5 年超が500 倍にそれぞれ設定されている (1 年未満の輸入車には従来通り月次算定指標の25% という値が適用される ) 月次算定指標の50 倍は2017 年の平均レート換算で約 340ドル 500 倍は約 3,400ドルに相当し この措置の導入は中古車の輸入台数の大幅減につながった リサイクル税の導入自動車 タイヤ バッテリー エンジンオイル等を対象とする税金で 自動車に関しては新規登録の際に徴収される 輸入車のみならず国産車も対象となり 輸入車の場合は輸入業者もしくは車を輸入する個人から徴収され 国産車の場合はメーカーから徴収されることになっている この税金の導入は当初 上記の新規登録料の値上げ措置と同時に ( すなわち 2016 年 1 月 1 日より ) 実施される予定であったが 税率の再検討が行われたため 実際には2016 年 2 月 1 日から導入されることになった 月次算定指標に50を乗じ導き出される数字が基本税額となり そこにさらに所与の係数を乗じることにより最終的な税額が決められることになっている 乗用車の場合は 係数はエンジンの排気量によって差別化されており 排気量 1,000cc 以下が3( すなわち 月次算定指標の150 倍に相当する額がリサイクル税として徴収されることになる ) 1,001~2,000cc が7 2,001~3,000ccが10 3,001cc 以上が23となっている カザフスタン国内で生産されている乗用車の大半は排気量 2,000cc 未満であるため 一部には リサイクル税も国内自動車産業保護の側面を有しているとの指摘も存在する その他 カザフスタンではこれまで 国産車に関しては付加価値税 ( カザフスタンでは税率が12% となっている ) を免除するという措置が 講じられてきたがWTO 加盟に伴い2017 年 1 月 1 日より当該の措置が廃止されることになった 4. ウズベキスタン (1) 生産の状況ウズベキスタン唯一の乗用車メーカーであるGMウズベキスタンは 1996 年にウズベキスタンの ウズアフトサノアト ( ウズベキスタン自動車協会 ) と韓国の大宇自動車の対等出資で設立された ( 当時の名称はUZ-Daewoo) 大宇自動車破綻後はウズアフトサノアトが大宇側のシェアを買い取り株式の100% を保有していたが 2007 年末にGMがそのうちの25% を買い取るという形で新会社 GMウズベキスタン が設立され現在に至っている GMウズベキスタンの自動車組立工場 ( 年間生産能力 25 万台 ) はアクサイ市に所在するが その周辺には合弁の部品工場が20 以上存在し 組立工場に部品を供給している モデルによりローカルコンテンツの値は異なるが 一部のモデルでは6~8 割程度に達している 残りの部品は輸入されているが その多くにつき特恵的な輸入関税率が適用されている GMウズベキスタンの生産台数は2003 年までは3~5 万台前後で推移していたが 2004 年以降に生産台数が急激に増加し始め 2009 年にはついに年産 20 万台を突破した その後も2014 年までは20 万台以上の水準が維持されていたが 2015 年は主要市場であるロシアでの販売が不振で輸出量が激減したことの影響を受け 生産台数は前年比 24.5% 減の18 万 5,400 台にとどまった 2016 年は 輸出の不振が続いたことに加え在庫の整理を行なった関係もあり 生産台数は前年の半分以下の8 万 8,152 台にとどまった しかし 2017 年は RAVON という新しいブランド名が浸透し輸出をめぐる状況が若干 34 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号

Research Report 政 改善されたこともあり 通年の生産台数は前年比 59.1% 増の14 万 247 台にまで回復した ちなみに 2017 年時点のモデル別生産台数は ネクシア :3 万 4,544 台 ダマス :2 万 7,272 台 スパーク :2 万 2,360 台 ラセッティ :1 万 9,164 台 コバルト :1 万 8,014 台等となっている 2017 年時点でウズベキスタンではトラックの生産は行われてなかったが 2017 年秋にロシアのKAMAZとウズアフトサノアトが締結した契約に基づき サマルカンド州のUzAuto Trailerという工場で2018 年 3 月よりKAMAZのトラックのSKDが開始された 当該工場の生産能力は2,000 台 / 年で ( 状況次第で5,000 台 / 年に増強される可能性もある ) 2018 年には約 1,500 台のトラックが生産される予定となっている (autostat.ru 2018.3.19) (2) 輸出の状況ウズベキスタン政府はGMウズベキスタンの自動車を貴重な外貨獲得源と位置付けており 国内販売よりも輸出を重視している ( 輸出の大半はロシア向け ) その関係で GMウズベキスタンで生産されるモデルの輸出価格は国内価格よりも低く設定されている たとえば 2016 年春時点でのラセッティ ( ロシアではジェントラというモデル名で販売されている ) のロシアでの販売価格は約 6,500ドルとなっていたが 国内価格の方は最も安いタイプでも1 万 3,000ドル近くに達していた また コバルトに関しても同様の状況が生じており ロシアでの販売価格が6,000ドルであるのに対し ウズベキスタンでの販売価格は1 万 2,000ドルに達していた ( しかも 国内価格はさしたる根拠もなく定期的に引き上げられる傾向が強く たとえば 2016 年初頭には一部のモデルで30% 弱もの値上げが実施された ) もっとも 破格の安値にもかかわらず 主要な輸出相手国であるロシアでのGMウズベキ スタン車の人気は2012 年にロシアがリサイクル税を導入した頃より低迷し始め 2013 年の同国市場での販売台数は前年比 31% 減の6 万台強にとどまった その後 新モデルへの切り替えに失敗したことなどもありロシア市場での不振は加速し 2016 年の同市場での販売台数は全盛期だった2008 年 ( 同年のロシア市場での販売台数は約 9 万 6,000 台で 総輸出台数は約 11 万台に達した ) のほぼ50 分の1の1,881 台にとどまった 2017 年に入り状況は若干改善されたが ロシア市場での苦戦は続いており同年の販売台数は全盛期の6 分の1 程度の1 万 5,078 台にとどまった ( 他の国々も含めた総輸出台数は全盛期の約 4 分の1の2 万 6,822 台だった ) (3) 国内市場の状況ウズベキスタンではGMウズベキスタンを保護するために極端に高い輸入関税率が導入されている 排気量 2,000ccの新車を例にとれば 関税額は通関価格の30%+1cc 当たり2.5 ドルに設定されている ( ドル建て部分の値は排気量により異なっており 最大で3ドル /ccに達する ) その他 物品税( 排気量により値は異なるが新車の場合は1cc 当たり2.4~3.1ドル ) 付加価値税(20%) 通関手数料を支払う必要があり 実質の関税率は100% を超えてしまう 中古車には新車よりもさらに高い関税が課せられることになっており ( 中古車の関税率は40%+1cc 当たり3ドルで 物品税率は4.8~ 7.2ドルとなる ) いわゆる 遠い外国 製の乗用車を輸入することは極めて困難となっている 政府間協定に従い ロシア製 ウクライナ製 カザフスタン製の車は原則無関税で輸入できることになっているが ( その他 それらの車には特恵的物品税率が適用されることになっている ) 輸入業者による決済用の外貨購入額を制限するという措置をウズベキスタン側が講じていることに加え 輸出国側が純国産モデル ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号 35

特集 安定成長を模索する NIS 経済 (LADA UAZ ZAZ 等 ) にしか原産地証明 (ST 1と呼ばれている証明書 ) を出さないケースが多いこともあり 6) それらの国々からの車の輸入も少量にとどまっている その他 輸入車 ( 特に輸入中古車 ) に関しては 国産車と比較して車検が通り難いという情報も存在する 以上のような事情が存在するため 同国の新車市場における輸入車 ( その大半がLADA 車 ) のシェアは5~6% 程度で 残りはすべてGM ウズベキスタンの車により占められている ASMホールディングのデータによれば 2017 年のGMウズベキスタンの国内出荷台数は11 万台強とされているが その数字を信じれば 同年のウズベキスタンの新車市場の規模は12 万台前後だったということになる しかし ウズベキスタンの新車に対する需要はそれよりも遥かに大きく GMウズベキスタン製の新車を購入するには通常数ヵ月もしくはそれ以上待つ必要があるといわれている また 順番待ちをせずに新車を購入したければ 販売店に対し 追加料金 7) を支払う必要があるといわれている もっとも 追加料金 を支払っても多少は待たされるので それよりも急ぐ客は中古車市場で1~2 年落ちの中古車を購入することが多くなっている このため ウズベキスタンでは1~2 年落ちの中古車の価格が新車の正規販売価格 ( 追加料金 を考慮しない価格 ) を上回ることが珍しくないといわれている おわりにウクライナの新車市場は一時急激な伸びを示し注目されていたが リーマンショック以降低迷期に入り 2014 年以降は政情不安を背景に極端な不振が続いている 2015 年の秋ごろから状況改善の兆しが見え始めてはいるが 2017 年の新車市場の規模は全盛時の2008 年の7 分の 1 程度にすぎず 少なくとも当面は同国の乗用 車市場に多くを期待することはできないであろう ただ 中高価格帯のモデルの販売は比較的堅調なので 日本メーカーの場合は そのブランド力を活かし利幅の大きな中高価格帯のモデルを少量であっても確実に販売するという戦略をとることが同国市場への最適なアプローチ方法だといえよう ベラルーシの乗用車市場は安定しているものの市場規模は3 万台未満と小さく しかも低価格車が市場の核を形成している 同国の経済状況を勘案すると 今後 購買力が上昇し市場規模が急激に拡大したり 高価格帯の車のプレゼンスが強まったりすることは恐らくないだろう したがって 日本メーカーの同国市場への関心は全般的に低いと判断されるが ユーラシア経済連合に加盟している国なので ロシアで現地生産しているモデルの販売先として一応視野にいれておくべきであろう カザフスタンはロシア同様に産油国なので 新車販売動向が石油の生産量や油価に左右される傾向が強くなっているが カシャガンの開発の本格化に伴い石油生産量が伸びる可能性があることや 油価が比較的高値で安定していることを勘案すると 同国の自動車市場の回復傾向は今後も続く公算が高い また 同国では日本ブランドのプレゼンスが全般的に強いので 特にロシア製の日本ブランド車の販売市場としての注目度が今後さらに高まる可能性が考えられる ウズベキスタンの自動車市場は非常に特殊なので 現時点では日本メーカーにとっての魅力は乏しいといえるが 同国は人口が多く潜在的なポテンシャルが大きな市場であるので その動向に関するウォッチを継続する必要はあるといえよう 36 ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号

Research Report 政 注 1) この特別関税の導入は 輸入車の価格の高騰という現象の他 課税対象から外されたディーゼル車のプレゼンスの強化という現象も生んだ 調査会社 Autoconsulting によれば 2013 年 3 月の時点で14% 程度であったディーゼル車の市場シェアが6 月には20% を超え (2013 年通年の平均値は24%) さらに2014 年には31% に達した 特別関税が廃止された後もディーゼル車の人気は衰えておらず 2017 年時点では市場シェアが40% 近くに達していた セグメント別に見た場合 最もディーゼル車の割合が大きいのはSUVで 約 50% に達している また 新車販売台数に占めるディーゼル車の割合が大きいブランドとしては アウディ (76.35%) ルノー (73.53%) メルセデスベンツ(70.89%) 起亜 (57.75%) VW(57.44%) 等の名を挙げることができる (2017 年 6 月末時点の数字 ) 列挙したブランドのうちアウディとVWに関しては いわゆる ディーゼルゲート事件 の余波で両ブランドの新車が割引価格でウクライナ市場に持ちこまれたことが数字の高まりに直結したのではないかとの見方も存在する ちなみに ディーゼル車の他に 排気量 1,000cc 未満の車と 2,200ccを超える車も特別関税の対象外となったが 該当するモデルの販売台数が顕著に伸びることはなかった 2) ただし ウズベキスタン側が改善措置を講じたとの理由で 2016 年 3 月中旬にウズベキスタン製の乗用車を対象とする特別関税は撤廃された 3) 具体的には 1 輸入される中古車は2010 年以降に製造されたユーロ5 準拠の車でなければならない 2 低減税率を適用して輸入された中古車は1 年間転売してはならない 31 主体が輸入できる低減税率対象の中古車は年 1 台に限定される 4 侵略国 ( ロシアのことを指す ) からの中古車の輸入はできない等の条件 4) 自動車部品生産部門 ( ウクルアフトザプチャスチという会社が統括 ) 農業部門( ウクルプロム インベスト アグロ社が統括 ) 造船 機械製造部門 ( クズニツァ ナ ルィバリスコム< 旧レーニンスカヤ クズニャ> 社が統括 ) 製菓部門 (ROSHEN 社が統括 ) 等で構成されている 5) すなわち それまで車の小売価格と卸売価格の差額分 ( つまり 小売店の利益分 ) だけが付加価値税 ( 税率は20%) の課税対象となっていたものが 車の小売価格全体が課税対象になった その結果 車購入時の消費者の負担額は16~ 20% 増加した 6) 当該の原産地証明を獲得するにはローカルコンテンツ50% 以上を達成することが必要となるが その基準を満たしていても外国ブランド車には原産地証明が交付されないことがあるといわれている 7) ウズベキスタンでは シャプカ と呼ばれているようである その額はモデルによって異なり 人気の高いモデルほど 追加料金 も大きくなる 一説によれば それほど人気の高くないジェントラの場合は1,500ドル程度だが 品薄感の強いキャプティバ (SKD 方式での生産が行われている ) の場合は5,000ドル程度の 追加料金 が必要になるとされている ちなみに ウズベキスタンの自動車販売店のマージンは平均で 2% 程度にすぎないが この 追加料金 のおかげでどの販売店も巨額の利益をあげているといわれている ロシア NIS 調査月報 2018 年 6 月号 37