Microsoft Word - 02 H28肝炎対策推進基本指針改訂(溶け込み)

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京都府がん対策推進条例をここに公布する 平成 23 年 3 月 18 日 京都府知事山田啓二 京都府条例第 7 号 京都府がん対策推進条例 目次 第 1 章 総則 ( 第 1 条 - 第 6 条 ) 第 2 章 がん対策に関する施策 ( 第 7 条 - 第 15 条 ) 第 3 章 がん対策の推進

歯科中間報告(案)概要


目次 1. 肝臓の病気 2. 肝炎ウイルスとは 3. ウイルス性肝炎とは 4. 急性肝炎 5. 慢性肝炎 6. 肝硬変 7.A 型肝炎 8.B 型肝炎 9.C 型肝炎 10.B 型肝炎の治療 11.C 型肝炎の治療 12. 予防方法 13. 肝炎の医療費助成制度 14. おわりに 1

始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

平成13年度税制改正(租税特別措置)要望事項(新設・拡充・延長)

要旨 平成 30 年 2 月 21 日新潟県福祉保健部 インターフェロンフリー治療に係る診断書を作成する際の注意事項 インターフェロンフリー治療の助成対象は HCV-RNA 陽性の C 型慢性肝炎又は Child-Pugh 分類 A の C 型代償性肝硬変で 肝がんの合併のない患者です 助成対象とな

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介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

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資料 4 医療等に関する個人情報 の範囲について 検討事項 医療等分野において情報の利活用と保護を推進する観点から 医療等に関する個人情報 の範囲をどのように定めるべきか 個別法の対象となる個人情報としては まずは 医療機関などにおいて取り扱われる個人情報が考えられるが そのほかに 介護関係 保健関

も少なくありません こうした状況に鑑み 舞鶴市は 言語としての手話の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進を図ることにより 全ての市民が障害の有無によって分け隔てられることなく 自分らしく安心して暮らすことができる地域社会を実現するため この条例を制定するものです 2. 条例の

このような現状を踏まえると これからの介護予防は 機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく 生活環境の調整や 地域の中に生きがい 役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど 高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた バランスのとれたアプローチが重要である このような効果的

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り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの

多くの大学においては 新入生のオリエンテーション時やサークルの代表者に 未成年者の飲酒の防止と イッキ飲み 等過剰飲酒の禁止に関する指導や啓発が行われています また 平成 27 年度からは 県保健所 精神保健福祉センター等が中心となり 大学生向けのアルコール健康障害や適正飲酒の知識に関する出前講座を

01_県実施要領

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特定健康診査等実施計画 ( 第 2 期 ) ベルシステム 24 健康保険組合 平成 25 年 3 月 1 日

背景及び趣旨我が国は国民皆保険のもと世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきた しかし 急速な少子高齢化や国民の意識変化などにより大きな環境変化に直面しており 医療制度を持続可能なものにするために その構造改革が急務となっている このような状況に対応するため 高齢者の医療の確保に関する法律に


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2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

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01 【北海道】

はじめての子どもが生まれる前に 赤ちゃんの世話をしたことがある割合 (25 年度と 20 年度の 比較 ) 利用ニーズ把握のための調査 ( 平成 20 年 ( 市民意識調査 ) 25 年 ( 未就学児 )) < 平成 20 年 > 無回答 2.9% < 平成 25 年 > 無回答 %

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肝炎は こんな病気です 肝臓は 人間の体内で最大の臓器 消化管から取り込んだ栄養を利用しやすい形に変えたり 毒物を分解したり 体内の物質のバランスを維持したりなど 生命を支えるために重要な多くのはたらきを担っています この肝臓の細胞が壊れてしまった状態が 肝炎です 肝炎には 原因により ウイルス性

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童部会小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会において検討がなされることから その検討の結果を踏まえ 別途通知することとする なお 都道府県内の難病医療提供体制に関する情報は 住民に分かりやすい形で公表し その進捗状況を周知する必要がある また 各医療機関が診療可能な難病のリスト等を公表

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, 地域包括支援センターの組織と人材 2. 1 福祉専門職の歴史と特性

C 型感染者の撲滅を目指すには 病院で肝臓の治療をしている人は肝臓専門医で治療できる 肝疾患以外で病院へ通院している人は病院内で掘り起し 拾い上げる工夫が必要である 全く病院へ通院していない人は広報活動 検診活動が有効である かかりつけ医に肝障害の治療をしている人 かかりつけ医に肝疾患以外で通院して


1 ジカウイルス感染症の認知度 問 1 あなたは, ジカウイルス感染症, いわゆるジカ熱を知っていますか この中から 1 つだけお答えください どのような病気か詳しく知っている 9.1% どのような病気かある程度知っている 44.9% 名前だけ知っているが, どのような病気かは知らない 37.7%

いる 〇また 障害者の権利に関する条約 においては 障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとされている 〇一方 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度 ( いわゆる欠格条項 ) については いわゆるノーマライゼーションやソーシャルインクルージョン ( 社会的包摂 ) を基本理念とする成年

第2次「健康くるめ21」計画

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肝炎対策と今後の方向性について

Transcription:

島根県肝炎対策推進基本指針 島根県 平成 29 年 3 月

島根県肝炎対策推進基本指針 指針策定 改訂の趣旨 我が国の肝炎ウイルスの持続感染者 ( ウイルス性肝炎から進行した肝硬変又は肝臓がんの患者を含む 以下 肝炎患者等 という ) は 国の第 13 回肝炎対策推進協議会公表資料 ( 平成 27 年 2 月 26 日開催 ) によると 平成 23 年時点では B 型が 110 万人から 125 万人 C 型が 100 万人から 150 万人存在すると推定されており ウイルス性肝炎は国内最大の感染症である さらに 肝がん発生原因の約 70% が肝炎ウイルス感染によるとされており B 型肝炎ウイルス及び C 型肝炎ウイルスに係る対策は 重要な課題となっている 平成 26 年の肝臓がんによる粗死亡率 ( 人口 10 万人対 ) は 全国平均が 23. 2 人に対し 島根県においては 34.3 人で 全国第 4 位である そのため 島根県では B 型肝炎ウイルス及び C 型肝炎ウイルスに係る対策について 島根県肝炎対策推進基本指針 ( 平成 24 年 3 月策定 ) に基づき 様々な取組を行っている 最近では C 型肝炎の治療が著しく進展し さらに肝炎治療医療費助成制度等の患者支援の取り組みが進められている一方で 感染したことを自覚していない人や肝炎ウイルス検査で陽性であるが精密検査や肝炎ウイルスに起因する疾患に係る医療 ( 以下 肝炎医療 という ) を受けていない人がいる等 早期発見 早期治療が引き続き重要な課題となっている さらに 肝炎ウイルス検査を受ける必要性に関する知識や認識が十分でなく 肝炎ウイルス検査が陽性でも適切な医療提供に十分結びついていないことや 肝炎の感染経路等について理解が十分でないため 一部での肝炎患者等に対する不当な差別が存在すること等が指摘されている これらのことから更なる肝炎に係る啓発活動が必要である このような状況のなかで 肝炎対策の推進に関する基本的な指針 ( 平成 23 年厚生労働省告示第 160 号 ) が平成 28 年 6 月 30 日付け健発 0630 第 1 号厚生労働省健康局通知により改訂されたことを受け 上記の 島根県肝炎対策推進基本指針 の策定から 5 年間が経過することに鑑み この度 それを見直し 改訂するものとし これを基に 国 県 市町村のみならず 県が指定した肝疾患診療連携拠点病院である島根大学医学部附属病院 ( 以下 拠点病院 という ) や肝炎情報センター等のあらゆる関係者と一層連携し 肝炎ウイルス検査から精密検査の受診へ そして肝炎医療へとつなげる取り組みを推進する 1

第 1 肝炎の予防及び肝炎医療の推進の基本的な方向 (1) 基本的な考え方 〇肝炎ウイルス陽性者を早期発見し 早期治療をすることによって肝硬変又は肝がんへの移行を減らし 肝がん罹患率をできるだけ減少させる 全ての県民が 肝炎に対する理解を深め 肝炎患者等に対する差別を解消し 肝炎患者等が安心して生活できる環境づくりに取り組む 肝炎患者等や家族等の不安の軽減を図るため 情報提供や相談支援の充実に取り組む 県は 目標値を設定し 定期的にその達成状況を把握し その結果を施策に反映させ 肝炎対策を進める 肝炎患者等を含む関係者が連携し 県民の理解を得ながら 総合的な肝炎対策を進める 新たな感染者を増やさない (2) 肝炎ウイルス検査の推進 肝炎ウイルスの感染経路は様々であることから 多くの人が感染している可能性がある また 肝炎ウイルスに感染した場合 自覚症状がないまま肝炎が進行し 慢性肝炎 肝硬変 肝がんへと重症化する可能性がある 感染していても重症化するまで自覚症状が現れにくいため 県民だれもが 少なくとも 1 回は肝炎ウイルス検査を受け その結果を確認することが大切である 特に 肝炎ウイルス検査を受けたことのない人が 肝炎ウイルスの感染について 自らの健康や生命に関係する重要な問題であると認識し 出来る限り早期に検査を受けるとともに 検査結果が陽性であった場合は その意味を正しく認識し 精密検査等の受診につなげることが重要である このため 肝炎ウイルス検査の体制を整備し 精密検査の受診勧奨を推進する 特に 職域での肝炎ウイルス検査について 検査を受けられる機会を確保するとともに 検査結果が陽性であった人に対して早期かつ適切な受診を促すためのフォローアップ体制整備の取り組みを進めていく (3) 適切な肝炎医療の推進 肝炎ウイルスに感染した場合 上記で記したとおり重症化する可能性があることから 肝炎ウイルス検査で陽性であった人に 早期治療の重要性を伝え 出来る限り早期に画像検査を含む精密検査を受診することが大切である さらに 定期的に精密検査を受診することが重要である そのために 県は 拠点病院 関係機関と連携し 確実に精密検査を受診するよう 受診の勧奨や検査助成制度のさらなる周知等に取り組む また 肝炎患者等に対し 病態に応じた適切な肝炎医療を提供するためには 2

専門的な知識と経験が必要であり 個々の肝炎患者等は肝疾患専門医療機関 ( 以下 専門医療機関 という ) において治療方針の決定を受け 継続した適切な治療を受けることが重要である そのためには 拠点病院が中心となって 専門医療機関の治療水準の向上を図り 適切な医療を受けられるように 専門医療機関とかかりつけ医との連携強化を推進する 肝炎ウイルスを排除し又はその増殖を抑制する抗ウイルス療法 ( 肝炎の根治目的で行うインターフェロン治療及びインターフェロンフリー治療又は B 型肝炎の核酸アナログ製剤治療をいう 以下同じ ) については 肝硬変や肝がんといった より重篤な病態への進行を予防し 又は遅らせることが可能である そのため 県は 抗ウイルス療法を中心とした肝炎医療を円滑に進められるように 市町村 関係機関と連携し 医療費助成制度のさらなる周知等に取り組む (4) 肝炎に関する正しい知識の更なる普及啓発 新たな感染を予防するために 肝炎患者等及び家族等に対して 感染経路や感染した場合の日常生活における注意事項等についての正しい知識の普及啓発に取り組む さらに 肝炎ウイルスに感染しても自覚症状が乏しいことがあることから 感染に気づきにくく 早急な治療の必要性が認識しにくいため 県民一人一人が感染によるリスクを自覚した対応が図れるよう 正しい知識の普及啓発に取り組む また 肝炎患者等に対する不当な差別を解消するため 職域や地域において 肝炎の感染経路や症状 治療方法等についての正しい知識の普及啓発に取り組む (5) 肝炎患者等及び家族等への情報提供や相談支援の充実 肝炎患者等及び家族等は 肝炎が肝硬変や肝がんといった より重篤な病態へ進行することへの不安を抱いている また 治療における副作用等 精神的な負担も多い こうした肝炎患者等及び家族等の不安や精神的負担の軽減を図るため 情報提供や相談支援を行う必要がある そのためにも 県 市町村 拠点病院等関係団体が連携し 肝炎患者等及び家族等を含む県民へ 最新情報の提供に努めるとともに不安等を軽減するための相談窓口の充実を図る 3

第 2 肝炎の予防のための施策 (1) 現状の取組 県は ホームページや新聞 ラジオ等の広報媒体を活用し 肝炎検査の必要性 肝炎の正しい知識と日常生活での感染予防等について情報発信をしている B 型肝炎の感染予防策として 平成 28 年 4 月 1 日以降に生まれた生後 1 歳に至るまでの乳児に対して B 型肝炎ワクチンの定期接種がはじまり 市町村と連携して取り組みを進めている また 任意接種を希望される方のために 接種できる医療機関のリストをホームページで情報提供している (2) 今後の取組の方針 感染経路についての正しい知識の不足による新たな感染を予防するため 市町村 各種団体等と連携し 肝炎に関する正しい知識について 対象者に合わせた効果的な普及啓発を行う 感染症予防の観点から ワクチン接種は有効な手段であるため B 型肝炎ワクチンの普及を図り 生後 1 歳に至るまでの乳児への定期接種や希望者に対する任意接種を推進する (3) 今後の取組事項 市町村 学校等の協力を得て 若年層を対象とした普及啓発に取り組む 事業者団体等の協力を得て 職域での普及啓発に取り組む 医師会の協力を得て 肝炎検査実施医療機関での普及啓発に取り組む 市町村と連携し B 型肝炎ワクチンの定期接種を積極的に進めていく 感染リスクの高い医療従事者に対しては B 型肝炎ワクチンの接種を強く推奨する 感染リスクのある若年層や教育関係者 介護 福祉関係者等に対し B 型肝炎ワクチンを広く周知し 接種を推奨する 4

第 3 肝炎ウイルス検査の実施体制の充実 (1) 現状の取組 県は ホームページ等を活用し 肝炎ウイルス検査を受けるよう 啓発に取り組むとともに 県が委託した医療機関と保健所で無料検査を実施している 市町村が実施主体で行う健康増進法に基づく肝炎ウイルス検診については 市町村広報誌等で啓発や受診勧奨を実施している 肝炎ウイルス検査においては 県 市町村で実施しており 平成 24 年 3 月に島根県肝炎対策推進基本指針を策定してから 検査体制を拡充しており 過去 5 年間で検査件数は約 2 倍に増加している現状がある また 拠点病院では 県民や医療従事者を対象とした広報活動などを実施している (2) 今後の取組の方針 全ての県民が少なくとも 1 回は肝炎ウイルス検査を受けるよう 周知する 職域で実施される健診時に 肝炎ウイルス検査をまだ受けたことがない人について 少なくとも 1 回は肝炎ウイルス検査を受けることができる体制を整備し 検査実施の促進に取り組む 検査と治療の連携について検討し 検査体制等の見直しを行う (3) 今後の取組事項 全ての県民が 少なくとも 1 回は肝炎ウイルス検査を受けるよう 引き続き県 市町村の事業を周知する 職域において多くの人が肝炎ウイルス検査を受けられるように 医療保険者 事業主等関係者の理解を得ながら 利便性を考慮した検査体制を構築する 県 市町村 職域等で肝炎ウイルス検査を受けた状況の把握と分析を継続し 効果的に肝炎ウイルス検査を勧める方法を検討する 肝炎ウイルス検査を受け易くするため 医師会や医療機関の協力を得て 県の委託医療機関での検査を推進する 肝炎医療コーディネーター ( 1) を活用し 肝炎ウイルス検査を受けるよう 勧奨等を進める 県は 肝炎情報センター及び拠点病院 市町村 保健所と連携し 医療機関に対し 肝炎ウイルス検査を実施した場合 受検者に検査結果を確実に説明し 精密検査等の受診につなげるよう働きかける 肝炎情報センター及び拠点病院と連携し 市町村や保健所 医療機関の従事者に対し 肝炎の疫学や肝炎の病態 肝炎ウイルス検査 肝炎医療に関する研修会を実施する 5

1 肝炎医療コーディネーターウイルス性肝炎の早期発見 早期治療の促進のため 肝炎ウイルス検査を受けていない人に対し肝炎ウイルス検査を勧めたり 要治療者等に助言を行うことで適切な医療へとつなげるための平成 27 年度から県が認定している人材 第 4 肝炎医療を提供する体制の確保 (1) 現状の取組 精密検査においては 啓発チラシを作成し 市町村や県が委託した医療機関 拠点病院等の関係機関と連携し 肝炎ウイルス検査陽性者に対し 受診するように周知している しかし 全国的には 肝炎ウイルス検査により陽性が判明し 精密検査等の受診が必要と診断されたにも関わらず 医療機関を受診しない人が 7 割いると推定されている 肝炎医療においては 拠点病院により 医療従事者研修や肝炎医療に対する技術的支援を行っている 専門医療機関においては 肝炎ウイルス検査後の検査結果の説明 治療方針等のフォローアップに努めている 市町村及び保健所において 肝炎医療コーディネーターを配置し 専門医療機関同様 肝炎ウイルス検査後の検査結果の説明 検査陽性者に対する精密検査等の受診へのフォローアップに努めている 肝炎治療医療費助成制度 ( 2) や肝炎等精密検査費用助成制度 ( 3) については 啓発チラシを作成し 保健所のほか市町村や医療機関に配布するとともに 市町村の広報により周知を行っている (2) 今後の取組の方針 肝炎ウイルス検査陽性者が確実に精密検査を受診するよう 啓発に取り組む 肝炎ウイルス検査後の受診勧奨や情報提供等を行うフォローアップを肝炎医療コーディネーターが中心となって推進する 肝炎患者等が適切な肝炎の医療を住み慣れた地域で継続的に受けられるようにするため 拠点病院や専門医療機関と一般医療機関との連携強化を図る 肝炎治療医療費助成制度 ( 2) や肝炎等精密検査費用助成制度 ( 3) についても 一層の普及啓発に取り組む 6

(3) 今後の取組事項 最新の知見に基づく肝炎支援手帳やリーフレット等を作成し 引き続き市町村 県が委託した医療機関 拠点病院等の関係機関と連携し 肝炎ウイルス検査陽性者が確実に精密検査を受診するよう 周知する 肝炎ウイルス検査後のフォローアップに取り組む肝炎医療コーディネーターの養成を推進し 肝炎患者等が個々の病態に応じた適切な肝炎医療を受けられるよう 地域や職域 医療機関で その実情にあった情報提供や相談支援 フォローアップなどを行える体制を構築する 県は 市町村と連携し 肝炎ウイルス陽性者に対し 精密検査の受診や適切な医療を受けられるように受診勧奨等のフォローアップを行う 拠点病院が行う研修会等により 専門医療機関とかかりつけ医との連携強化を図るとともに 肝炎支援手帳などの普及を図り 適切な医療受診と健康管理の促進を図る 拠点病院は 肝炎対策に従事する者のスキルアップを図るため 一般医療機関や市町村へも広く呼びかけ 研修会等を実施する 肝炎治療医療費助成制度や肝炎等精密検査費用助成制度について 市町村 医師会 関係医療機関等への説明を行うとともに 肝炎患者等に対して肝炎支援手帳などを活用して さらなる制度の周知を図る 2 肝炎治療医療費助成制度 B 型 C 型肝炎のインターフェロン治療及びC 型肝炎のインターフェロンフリー治療並びにB 型肝炎の核酸アナログ製剤治療に対する医療費を助成 3 肝炎等精密検査費用助成制度 B 型 C 型肝炎ウイルス検査における陽性者に対して精密検査 ( 初回精密検査 定期検査ともに対象 ) の受診費用を助成 第 5 肝炎に関する啓発及び知識の普及並びに肝炎患者等の人権の尊重 (1) 現状の取組 肝炎に関する正しい知識の普及啓発を行うため 県ホームページや新聞 ラジオ等の広報媒体を活用した広報を行っているほか 肝炎に関する相談窓口を設置している 肝炎患者等の人権については 島根県人権施策推進基本方針 ( 平成 12 年策定 平成 20 年 10 月第一次改定 ) における人権課題のひとつとしている 平成 28 年に実施した島根県人権問題県民意識調査の結果からは 7 割弱の人が 周囲の人たちの 病気についての認識や理解が十分でないこと が問題だと回答している 7

(2) 今後の取組の方針 肝炎の予防 病態及び治療に係る正しい理解が進むよう普及啓発及び情報提供に取り組む 肝炎患者等一人一人の人権を尊重し 不当な差別を受けることなく 社会において安心して暮らせる環境づくりに取り組む (3) 今後の取組事項 働き世代の健康づくりを推進するために設置されている島根県地域 職域連携健康づくり推進協議会等において 国が事業者向けに作成したチラシを使って事業主の方々に呼びかけるなど 肝炎に関する正しい知識の普及啓発に取り組む 最近では心身等の負担がより少ない治療が可能となったことから 肝炎患者等が働きながら治療が行えるよう 事業主に理解を求める 肝炎に関する正しい知識の普及啓発を行うほか 肝炎に関する相談窓口についても周知を行う 毎年 7 月の世界肝炎デー 日本肝炎デー及び肝臓週間において 肝炎に関する集中的な普及啓発を実施する 母子感染や乳幼児期の水平感染に加え ピアスの穴開けやタトゥー ( 刺青 ) 性行為による感染の可能性があることから 市町村 学校等の協力を得て 若年層を対象とした普及啓発に取り組む 第 6 その他肝炎対策の推進に関する重要事項 (1) 肝炎患者等及びその家族等に対する支援の強化及び充実 拠点病院に設置している肝疾患相談センターや保健所の相談窓口の周知を行う 相談窓口においては 肝炎医療コーディネーター等を中心として 治療方法 肝炎治療医療費助成制度 日常生活の注意点などに関する最新情報の提供を行い 肝炎患者等及びその家族等の不安の解消を図る (2) 肝硬変及び肝がん患者に対する更なる支援 肝がん等患者に対する支援については 肝炎治療医療費助成制度の拡充が行われているが 肝炎から肝硬変及び肝がんに進行した場合 医療費の助成を十分に受けられない人がおり 患者等の高齢化も進んでいる 肝機能障害は一定の条件の下 身体障害者手帳の交付対象となることから 身体障害者手帳制度の周知を行うとともに 早期治療へとつなげるための肝炎等精密検査費用助成 8

制度についても 引き続き普及啓発を行う なお 身体障害者手帳制度については 平成 28 年 4 月から肝機能障害の認定対象が拡大され 等級の要件についても緩和されている (3) 肝炎に関する調査 市町村や職域での肝炎ウイルス検診の実施状況 肝炎に関する偏見等の実態調査を行う また それらの調査結果を分析し それに基づき有効な対策を検討し 具体的な事業 推進方法に反映させる 第 7 肝炎対策の推進及び進行管理 肝炎対策の具体的な事業 推進の方法等については 常に 現状を把握しながら島根県肝炎対策協議会で協議 検討及び評価し 関係機関が連携し対策を進める 本指針は 5 年ごとに 島根県肝炎対策協議会において 検討を加え 必要があるときは これを見直すものとするが 5 年を経過する前でも 肝炎対策の推進状況や国の指針 制度の変更等により 本指針の見直しが必要な場合においても 島根県肝炎対策協議会で協議 検討することとする 9