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3 尿意切迫感 : 急に起こり抑えられない強い尿意で我慢することができないという愁訴である. 水に触れたり, 流れる音を聞いたり, 水の流れを見たりすると誘発されることが多い. 正常者が感じる排尿を我慢していて徐々に増強する強い尿意とは異なり, 予測できない突然起こる強い尿意である. 4 切迫性尿失

Microsoft PowerPoint - 18年10月15日舛森先生(排尿機序).pptx

目 次 CONTENTS 1. はじめに 3 2. 下部尿路症状 4 3. 疫学 5 4. 排尿の仕組み 6 5. 下部尿路機能の分類 7 6. 蓄尿障害の疾患 病態 治療 8 1 腹圧性尿失禁 8 2 切迫性尿失禁と過活動膀胱 10 Ⅰ. 抗コリン薬 13 1 トルテロジン 13 2 ソリフェナシ

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前立腺と下部尿路の生理

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Microsoft PowerPoint クリニックで泌尿器科医が行う治療の実

国立病院機構京都医療センター  泌尿器科 医療連携のための排尿障害診療ガイドライン

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京都医療センター排尿障害診療パス【第5版_ 改訂】 

頻尿の原因 石原順就 泌尿器科部長

背部痛などがあげられる 詳細な問診が大切で 臨床症状を確認し 高い確率で病気を診断できる 一方 全く症状を伴わない無症候性血尿では 無症候性顕微鏡的血尿は 放置しても問題のないことが多いが 無症候性肉眼的血尿では 重大な病気である可能性がある 特に 50 歳以上の方の場合は 膀胱がんの可能性があり

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症例 80 歳女性 l 高血圧や心不全で当院通院中. 最近物忘れが始まったとのことで ドネペジルを開始した. l 1 ヶ月後のフォロー外来で 尿取りパットが必要になった とのことで長女さんと一緒に来院. l 内服薬 : ドネペジル 10mg/ 日 エナラプリル 2.5mg/ 日 フロセミド 20mg

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健康た?よりNo109_健康た?より

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経支配は副交感神経優位に切り替わる10) 排尿を決意すると, 副交感神経終末からアセチルコリンが放出され, 膀胱はムスカリン (M) 受容体を介した作用により収縮し, 尿が排出される7) 抗コリン薬はこのアセチルコリンのムスカリン (M) 受容体への結合を遮断することで, 膀胱の異常収縮を抑制する

在宅医療における尿路管理

尿失禁とはご自分の意思に反して 尿が漏れてしまう症状のことです 尿漏れは目に見えない症状で生命に関わりが少ないこと 何よりも羞恥心があり受診されないケースもあります 当院では排泄ケアに関する専門の看護師もいます お困りの方はお1 人で悩まず 是非ご相談ください 名鉄病院皮膚排泄ケア認定看護師 いちか

前立腺の変化を知る

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

腹腔鏡下前立腺全摘除術について

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

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骨盤臓器脱の診断と治療 産業医科大学若松病院産婦人科 吉村 和晃

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平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

卒前総括講義 泌尿器科①

基本料金明細 金額 基本利用料 ( 利用者負担金 ) 訪問看護基本療養費 (Ⅰ) 週 3 日まで (1 日 1 回につき ) 週 4 日目以降緩和 褥瘡ケアの専門看護師 ( 同一日に共同の訪問看護 ) 1 割負担 2 割負担 3 割負担 5, ,110 1,665 6,

ヘルスケア・スクエア(仮称)設立に向けて

はじめに 近年 がんに対する治療の進歩によって 多くの患者さんが がん を克服することができるようになっています しかし がん治療の内容によっては 造精機能 ( 精子をつくる機能のことです ) が低下し 妊娠しにくくなったり 妊娠できなくなることがあります また 手術の内容によっては術後に性交障害を

はじめに 前立腺癌に対する永久留置法による小線源療法は一口で言うと 弱い放射線を出す小さな線源を前立腺内に埋め込み 前立腺内部から癌の治療を行うものです ただし すべての前立腺癌に適応できるものではありません この説明書は小線源療法についての概説です よくお読みになった上で ご不明の点があれば担当医

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腹腔鏡補助下膀胱全摘除術の説明と同意 (2) 回腸導管小腸 ( 回腸 ) の一部を 導管として使う方法です 腸の蠕動運動を利用して尿を体外へ出します 尿はストーマから流れているため パウチという尿を溜める装具を皮膚に張りつけておく必要があります 手術手技が比較的簡単であることと合併症が少

限局性前立腺がんとは がんが前立腺内にのみ存在するものをいい 周辺組織やリンパ節への局所進展あるいは骨や肺などに遠隔転移があるものは当てはまりません がんの治療において 放射線療法は治療選択肢の1つですが 従来から行われてきた放射線外部照射では周辺臓器への障害を考えると がんを根治する ( 手術と同

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

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前立腺癌

適応病名とレセプト病名とのリンクDB

尿失禁とはご自分の意思に反して 尿が漏れてしまう症状のことです 尿漏れは目に見えない症状で生命に関わりが少ないこと 何よりも羞恥心があり受診されないケースもあります 当院では排泄ケアに関する専門の看護師もいます お困りの方はお1 人で悩まず 是非ご相談ください 名鉄病院皮膚排泄ケア認定看護師 骨盤底

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院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

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主な手術実績根治的前立腺全摘除術 85 ( ロボット支援手術 85) 膀胱全摘除術 12 ( 腹腔鏡下手術 12) 腎摘除術 23 ( 腹腔鏡下手術 21) 腎部分切除術 18 ( ロボット支援手術 18) 腎尿管全摘除術 26 ( 腹腔鏡下手術 26) ドナー腎摘出術 17 ( 腹腔鏡下手術 17

デベルザ錠20mg 適正使用のお願い

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ふくじゅおもて面1

本文/開催および演題募集のお知らせ

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

Transcription:

日本泌尿器科学会排尿機能検査士講習会 初級コース 下部尿路機能障害をきたす主な疾患 東北医科薬科大学泌尿器科学講座 海法康裕 2018 年 5 月 12 日福井

本日の話題 下部尿路症状とは? 下部尿路症状を起こす主な疾患 排尿管理 過活動膀胱 前立腺肥大症 神経因性膀胱 骨盤臓器脱

下部尿路症状 (LUTS) とは? *LUTS:Lower Urinary Tract Symptoms 症候 愁訴 (LUTS) 外的要因 ( 環境 習慣 ) 心理的要因 機能障害 ( 全身機能障害 + 下部尿路機能障害 ) 生理的老化 疾病 病的老化 ( 合併疾患 )

正常な排尿 1) 尿意がわかる 2) 尿意を感じてからもある程度我慢できる 3) 膀胱容量が十分にある 4) 尿失禁がない 5) 排尿を意図すればいつでも排尿できる 6) 排尿に関し 特別な努力を要しない 7) 残尿がない 低圧蓄尿 低圧排出

日常よくみられる症状 ちかい! ( 頻尿 ) 出にくい! ( 排尿困難 ) 出ない! ( 尿閉 ) もれる! ( 尿失禁 )

下部尿路機能 ( 蓄尿と尿排出 ) < 蓄尿 > < 排尿 ( 尿排出 )>

日常よくみられる症状 蓄尿症状 ちかい! ( 頻尿 ) もれる! ( 尿失禁 ) 排出症状 出にくい! ( 排尿困難 ) 出ない! ( 尿閉 )

下部尿路症状 (LUTS) とは? *LUTS:Lower Urinary Tract Symptoms 下部尿路症状 (LUTS) 蓄尿症状 排尿 ( 排出 ) 症状 排尿後症状 昼間頻尿 夜間頻尿 尿意切迫感 切迫性尿失禁 尿勢低下 尿線途絶 腹圧排尿 残尿感 排尿後尿滴下 下部尿路症状 (LUTS) とは 蓄尿 ( 尿をためる ) と排尿 ( 尿を排出する ) の異常によって生じる症状 LUTS は 蓄尿症状 排出症状 排尿後症状の 3 つに大別

日常よくみられる症状 ちかい! ( 頻尿 ) 出にくい! ( 排尿困難 ) 出ない! ( 尿閉 ) もれる! ( 尿失禁 )

頻尿の原因 糖尿病 尿崩症 多尿 夜間多尿 心不全 腎不全 一回排尿量低下 睡眠障害 過活動膀胱神経因性膀胱前立腺肥大症膀胱炎 萎縮膀胱心因性頻尿前立腺炎膀胱結石

頻尿の原因 多尿 習慣性多飲 夜間多尿 一回排尿量低下 睡眠障害

頻尿の原因 多尿 夜間多尿 一日尿量 40ml/kg 以上 夜だけ尿量が多い ( 全体の 1/3 以上 ) 一回排尿量低下 睡眠障害

頻尿の原因 下部尿路機能障害 多くは多尿が原因 診療は一日尿量のチェックから

多飲は心筋梗塞や脳梗塞の 予防に有効って本当?? 脱水はあきらかに増悪因子ではあるが 多飲に予防効果があるというエビデンスはない ( 岡村菊夫他日老医誌 2005) 脱水はだめとりすぎても尿がちかいだけ!

適当な飲水量とは!? 飲水指導の目安として 24 時間尿量が有用 正常成人の平均 :23 ± 2 ml/kg 体重 20 ml/kg 以下では脱水の可能性?? 30 ml/kg 以上は夜間多尿の危険因子 20~25mL/kg ( 体重の 2~2.5%) が適当!

頻尿に対する原因別治療法 多尿 (1 日尿量 40ml/kg 以上 ) 夜間多尿 (1 日尿量の 33% 以上 (65 歳以上 )) 明らかな蓄尿上の問題 膀胱に関連する蓄尿障害 睡眠障害 基礎疾患の治療尿崩症 糖尿病 生活指導飲水制限など 生活指導飲水制限弾性ストッキングなど デスモプレシン水中毒に注意 利尿薬 ( 夕方 ) NSAIDs メカニズム不明 呼吸障害治療 抗コリン薬残尿に注意 α 1 ブロッカー BOO が存在する場合 イミプラミン 夜尿症の治療? ( エビデンスなし ) 睡眠薬 (low grade evidence) 生活指導夕方の歩行 軽運動

日常よくみられる症状 ちかい! ( 頻尿 ) 出にくい! ( 排尿困難 ) 出ない! ( 尿閉 ) もれる! ( 尿失禁 )

原因疾患 尿道の抵抗のため前立腺肥大症尿道狭窄 膀胱が収縮しない神経因性膀胱低活動膀胱

ちかい! ( 頻尿 ) 出にくい! ( 排尿困難 ) 出ない! ( 尿閉 ) もれる! ( 尿失禁 )

切迫性尿失禁 腹圧性尿失禁 機能性尿失禁 我慢できずにもれる 咳やくしゃみでもれる トイレに行けずにもれる 溢流性尿失禁 出せずにあふれ漏れる 本来の膀胱

切迫性尿失禁 我慢できずにもれる 尿意切迫感を伴います 急に強い尿意に襲われる 我慢できずにもれてしまう 昼も夜もおしっこがちかい 男 女

切迫性尿失禁 我慢できずにもれる 原因は膀胱にある 過活動膀胱 膀胱炎 脳 脊髄のトラブル 治療 : 内服薬が有効 抗コリン剤 1 ヶ月 膀胱リラックス

腹圧性尿失禁 咳やくしゃみでもれる 尿意がなく不意に腹圧でもれる 咳 くしゃみ 笑う 寝ていると漏れない 女 >> 男 重い物を持ち上げる 走る

腹圧性尿失禁 咳やくしゃみでもれる 原因は尿道にある 尿道の筋肉が緩む 骨盤の筋肉が緩む 増強因子 出産 加齢 尿道 膀胱 骨盤の筋肉

腹圧性尿失禁 咳やくしゃみでもれる 治療 薬物療法はあまり効かない 骨盤底筋体操 尿道吊り上げ手術 ( 主に女性 ) 人工尿道括約筋 ( 主に男性 )

骨盤底筋体操

尿道スリング手術 30 分程度で終了する安全で簡便な経膣式手術 TVT 手術 /TOT 手術 膣壁を 2-3cm 切開して テープを挿入して尿道を支える 治療成績 ( 治癒 / 改善 ) は 84~95 % と良好

人工尿道括約筋 (AMS-800) 男性の重症腹圧性尿失禁に対する手術 主に前立腺全摘術後の重 症尿失禁が対象 バルーン 膀胱 尿道 カフ ポンプ 陰嚢

症状 尿が近い ( 頻尿 ) 尿が出にくい ( 排尿困難 ) 出ない ( 尿閉 ) 尿が漏れる ( 尿失禁 ) 代表的な原因 膀胱炎 前立腺炎結石過活動膀胱多尿 ( 糖尿病 習慣性 ) 前立腺肥大症神経因性膀胱 etc. 前立腺肥大症神経因性膀胱低活動膀胱骨盤臓器脱 etc. 過活動膀胱尿道括約筋の脆弱 加齢 骨盤手術骨盤臓器脱神経因性膀胱萎縮膀胱 etc.

本日の話題 下部尿路症状とは? 下部尿路症状を起こす主な疾患 排尿管理 過活動膀胱 前立腺肥大症 神経因性膀胱 骨盤臓器脱

過活動膀胱 (Overactive Bladder: OAB) 過活動膀胱は症状症候群である 尿意切迫感を必須とした症状症候群であり 通常は頻尿と夜間 頻尿を伴うものである 切迫性尿失禁は必須ではない 診断のためには 局所的な病態 ( 膀胱腫瘍 膀胱結石 尿路感染など ) を除外する 正式な名称は過活動膀胱症候群であるが Urge-syndrome( 尿意切迫症候群 ) または Urgency-frequency syndrome( 尿意切迫 頻尿症候群 ) とも呼ばれる

過活動膀胱の症状 頻尿 ( トイレが近い ) 夜間頻尿 ( 夜 就寝時間中にトイレに何度も起きる ) 尿意切迫感 ( 突然 トイレがしたくなってたまらない ) 切迫性尿失禁 ( トイレまで尿が間に合わずに漏れる )

OAB の分類 OAB OAB dry OAB wet 切迫性尿失禁を伴わない 切迫性尿失禁を伴う

過活動膀胱の有病率 ( 排尿機能学会 ) % 40 35 30 25 20 15 10 5 0 男女 有病率 12.4% 40s 50s 60s 70s 80s 過活動膀胱の条件 排尿回数 1 日 8 回以上 尿意切迫感週 1 回以上

過活動膀胱症状スコア (OABSS) 質問票 以下の症状がどれくらいの頻度でありましたか この 1 週間のあなたの状態にもっとも近いものをひとつだけ選んで下さい 質問症状点数頻度 0 7 回以下朝起きた時から寝る時までに 1 1 8~14 回何回くらい尿をしましたか 2 15 回以上 2 3 4 夜寝てから朝起きるまでに 何回くらい尿をするために起きましたか 急に尿がしたくなり 我慢が難しいことがありましたか 急に尿がしたくなり 我慢できずに尿をもらすことがありましたか 合計点数 0 0 回 1 1 回 2 2 回 3 3 回以上 0 なし 1 週に1 回より少ない 2 週に1 回以上 3 1 日 1 回くらい 4 1 日 2~4 回 5 1 日 5 回以上 0 なし 1 週に 1 回より少ない 2 週に 1 回以上 3 1 日 1 回くらい 4 1 日 2~4 回 5 1 日 5 回以上 点 OAB の診断基準 質問 3 の尿意切迫感 スコアが 2 点以上 かつ 合計が 3 点以上 重症度判定 合計スコアが 5 点以下を軽症 6~11 点を中等症 12 点以上を重症 過活動膀胱診療ガイドライン : 日本排尿機能学会過活動膀胱ガイドライン作成委員会編, ブラックウェルパブリッシング,2005.

過活動膀胱 (OAB) の原因 神経因性 (10~20%) 脳幹部橋より上位の中枢の障害 脳血管障害 パーキンソン病 多系統萎縮症 認知症 ( 痴呆 ) 脳腫瘍 脳外傷脳炎 髄膜炎 脊髄の障害 脊髄損傷 多発性硬化症 脊髄小脳変性症 脊髄腫瘍 頸椎症 後縦靱帯骨化症 脊柱管狭窄症 脊髄血管障害 脊髄炎 二分脊椎 非神経因性 (80% 以上 ) 下部尿路閉塞 ( 前立腺肥大症, 骨盤臓器脱, 尿道狭窄など ) 骨盤底の脆弱化 ( 腹圧性尿失禁, 骨盤臓器脱など ) 加齢特発性 過活動膀胱診療ガイドライン : 日本排尿機能学会過活動膀胱ガイドライン作成委員会編, ブラックウェルパブリッシング,2005. 吉田正貴他 :Pharma Medica. 24(2):21,2006.

下部尿路閉塞に伴う過活動膀胱の発生メカニズム 膀胱伸展 高圧 虚血 尿道伸展 膀胱壁の部分徐神経 膀胱平滑筋の変化 上皮細胞より ATP NO PG 放出 仙髄 膀胱壁 NGF の増加 尿道求心路の活動亢進 ACh に対する収縮反応増加 平滑筋間隙低下平滑筋易刺激性 C 線維求心路の活動亢進 求心路 遠心路の神経肥大 C 線維を介した排尿反射経路の再構築 過活動膀胱 (OAB) ATP: アデノシン三リン酸 NO: 一酸化窒素 PG: プロスタグランジン NGF: 神経成長因子 ACh: アセチルコリン 日本排尿機能学会 : 過活動膀胱診療ガイドライン,2005.

大脳 脳幹部排尿中枢 膀胱 下腹神経 骨盤神経 脊髄排尿中枢 括約筋 括約筋 陰部神経

大脳 脳幹部排尿中枢 膀胱 下腹神経 骨盤神経 脊髄排尿中枢 括約筋 括約筋 陰部神経

過活動膀胱の治療 : 生活療法 & 行動療法 膀胱訓練 排尿したい と思った時にすぐにしない 排尿したくなってから まず 15 分我慢する 我慢の時間を 30 分 45 分と延ばしていく 骨盤底筋体操 肛門 膣口周囲をすばやく絞めて 5 秒間維持 そしてリラックス 腹圧性尿失禁にも効きます!!

過活動膀胱の薬物療法 排尿 副交感神経 抗コリン薬 抑制 ( ー ) 3 作動薬 刺激 (+) 蓄尿 交感神経 蓄尿 体性神経 骨盤神経 骨盤神経節 収縮 ACh (M2,3) 膀胱弛緩 弛緩 NA ( 3) 下腹神経 陰部神経 外尿道括約筋 ACh: アセチルコリン,NA: ノルアドレナリン

過活動膀胱の薬物療法 具体的な薬剤名 抗コリン薬 オキシブチニン プロピベリン トルテロジン フェソテロジン ソリフェナシン イミダフェナシン β3 作動薬 ミラベグロン ポラキス ネオキシテープ バップフォー デトルシトール トビエース ベシケア ( 貼付剤 ) ウリトス ステーブラ ベタニス

過活動膀胱の治療方法 ( その他 ) ボツリヌストキシン膀胱内注入療法 ( 臨床治験段階 ) ボツリヌスが神経週末からのAch 放出を阻害 200 単位を20mlで溶き 1.0 mlを20 箇所に注入軟性 硬性膀胱鏡で容易な手技局麻 外来での注入が可能およそ6-9 ヶ月持続

過活動膀胱の治療方法 ( その他 ) 仙骨神経電気刺激 療法 ( 保険適用 )

前立腺肥大症 (BPH) 前立腺の働き : 前立腺液を分泌して 精子の運動 保護に関与

前立腺肥大症 (BPH) 正常時 前立腺肥大症 膀胱 膀胱 正常 20cc 未満 移行領域 中心領域 辺縁領域 30cc 以上 前立腺肥大症 通常通りの排尿が可能 ( 尿道は圧迫されていない ) 前立腺 ( 移行領域 ) が肥大し尿道を圧迫 精液の一部となる前立腺液を分泌 精子の運動 保護に関与 男性ホルモン依存性

BPH における下部尿路閉塞の発生機序 機械的閉塞 機能的閉塞 交感神経 腺腫の増大 平滑筋成分の増加 α1 受容体の発現亢進

前立腺肥大症の症状 排尿症状 : 排尿に時間が掛かる, 尿勢低下, 切れが悪い 蓄尿症状 : 頻尿 夜間頻尿, 尿意切迫感, 切迫性尿失禁

加齢と前立腺肥大症 ( 自然史 ) 下部尿路症状

前立腺肥大症の患者数の推移

BPH 患者における過活動膀胱有病率 OAB(+) 群 :OABSS 合計スコア 3 点かつ尿意切迫感スコア (Q3) 2 点 OAB(-) 群 49 例 44.1% OAB(+) 群 62 例 55.9% 辻村晃他 : 泌尿器外科 23(3): 301-308, 2010.

BPH のウロダイナミクス所見 BPH/LUTS 患者の 20~35 % には BOO を認めない BPH/LUTS 患者の 40~70 % に DO が合併 BPH/LUTS 患者の 30~40 % に DU が存在 加齢に伴って DO DU が増加 (Ameda et al, 1999; Abarbanel et al, 2007) 排尿筋過活動 (40~70 %) 排尿筋収縮不全 (30~40 %) 下部尿路閉塞 (65~80 %)

前立腺肥大症診療アルゴリズム 前立腺肥大症 手術適応 α 遮断薬 PDE5 阻害薬などの薬物療法 あり なし 30ml 以上の前立腺腫大 過活動膀胱症状 手術療法 その他の治療法 5α 還元酵素阻害剤の併用 変更 抗コリン薬が β 作動薬の併用 男性下部尿路症状 前立腺肥大症診療ガイドライン.2017 より一部抜粋

前立腺肥大症の治療薬 1 遮断薬 PDE5 阻害剤と抗男性ホルモン薬 (5 還元酵素阻害薬など ) α 1 遮断薬の作用機序 5AR の作用機序 交感神経の緊張を緩和して 機能的閉塞を緩和 ハルナール ユリーフ フリバス ザルティア 肥大した前立腺を縮小させて 機械的閉塞を緩和 アボルブ

経尿道的前立腺切除術

経尿道的前立腺切除術 (TUR-P)

ホルミウムレーザー前立腺核出術 (HoLEP)

神経因性膀胱 神経疾患による排尿機能障害の総称 神経の傷害部位により 排尿障害の程度と種類も異なる 脊髄損傷 脳梗塞 脳出血 アルツハイマー 多発性硬化症 多系統萎縮 糖尿病性神経障害 脊柱管狭窄症 椎間板ヘルニア...

実践研修排尿機能検査 p32 より

病巣部位と病型 大脳 ( 中脳 ) (1) 排尿筋過活動 (2) 排尿筋低活動 (3) 尿道過活動 (4) 尿道低活動 (5) 低コンプライアンス膀胱 小脳 (1)or (2) 橋排尿中枢 仙髄副交感神経核 (1) (2) 過活動が中心 (1)(3) (2) 核上型 仙髄 (Th12-L2) (5) (2)(4) 下部尿路 ( 膀胱 尿道括約筋 ) 核下型 低活動が中心

神経因性膀胱を来たす疾患 大脳レベル 脳血管障害 Parkinson 病 多系統萎縮症 認知症など脊髄レベル ( 仙髄排尿中枢 ; 境界 :Th12 - L2) 脊髄損傷 多発性硬化症 脊柱管狭窄症 ( 頚椎症 後縦靭帯骨化症 ) 椎間板ヘルニア 二分脊椎 HAM 脊髄腫瘍など 末梢レベル 糖尿病 骨盤腔内手術 ( 直腸 子宮 ) など

診断手段 問診 : 下部尿路症状 既往歴, 内服薬 理学的 神経学的所見 排尿記録 残尿測定 画像診断 : 超音波 X 線 MRI ウロダイナミクス検査 : 尿流測定 排尿筋圧 尿流測定 尿道括約筋筋電図 尿道内圧測定

既往歴 神経疾患の有無脳血管障害 脊椎疾患 神経変性疾患など 手術歴の有無尿路系手術 骨盤腔内手術など 服用薬剤の確認総合感冒薬 抗コリン薬 抗ヒスタミン薬 向精神薬 抗不整脈薬など

下部尿路症状を起こす可能性のある薬剤 排尿症状を起こす可能性のある薬剤 オピオイド 抗不安薬 抗不安薬 蓄尿症状を起こす可能性のある薬剤 筋弛緩薬 三環系抗うつ薬 中枢性筋弛緩薬 ビンカアルカロイド系薬剤 抗パーキンソン病薬 抗癌剤 頻尿 尿失禁 過活動膀胱治療薬 抗めまい メニエール病薬 アルツハイマー型認知症治療薬 鎮痙薬 中枢性筋弛緩薬 抗アレルギー薬 消化性潰瘍薬 気管支拡張薬 交感神経 α 受容体遮断薬 抗不整脈薬 総合感冒薬 勃起障害治療薬 抗アレルギー薬 低血圧治療薬 狭心症治療薬 抗精神病薬 抗肥満薬 コリン作動薬

骨盤臓器脱 (Pelvic Organ Prolapse: POP) 正常 膀胱瘤 直腸瘤 子宮脱 膣から骨盤内の臓器が脱出してくる

骨盤臓器脱 (Pelvic Organ Prolapse: POP) 膀胱 直腸 > 子宮 膣前壁 : 尿道瘤膀胱瘤 ( 脱 ) 膣後壁 : 直腸瘤 膣上端 ( 頂部 ) 子宮が存在 : 子宮脱 子宮摘出後 : 膣断端脱 ( 小腸瘤 )

女性骨盤臓器脱には排尿障害が高頻度に合併する! 蓄尿障害 40~66 %: 腹圧性尿失禁潜在性腹圧性尿失禁 ( 重度 POPの 27~68 %) 56~66 %: 過活動膀胱切迫性尿失禁 (15~30 %) 尿排出障害約 33 % : 下部尿路閉塞約 15 % : 排尿筋収縮不全

骨盤臓器脱の治療法 骨盤底筋体操 軽症例? 膣内ペッサリー ( リング ) 3 ヶ月毎の交換 手術療法

TVM (Tension-free Vaginal Mesh) 手術 手術療法 ( メッシュ状シートを用いた経膣式骨盤底形成術 ) 膀胱 膣 直腸 メッシュを用いた手術法の開発 (TVM 法 ) 再発率の著明な改善 (10 % 以下 ) 低侵襲 ( 子宮の温存, 手術時間の短縮 ) 膣前壁 膣後壁および頂部

TVM (Tension-free Vaginal Mesh) 手術 手術療法 ( メッシュ状シートを用いた経膣式骨盤底形成術 ) 骨盤臓器脱に対する新しい手術 LSC 手術腹腔鏡下仙骨腟固定術 (LSC) は腹腔鏡下に骨盤臓器脱を治療する方法

本日の話題 下部尿路症状とは? 下部尿路症状を起こす主な疾患 排尿管理 過活動膀胱 前立腺肥大症 神経因性膀胱 骨盤臓器脱

排尿管理の方法 1 自排尿 2 清潔間歇自己導尿 3 留置カテーテル

1. 自排尿 自然排尿のこと 排尿管理の基本 ( 目標 )! 内服で補助

1. 自排尿 しかし 自排尿には限界がある 残尿があると自排尿は不可全体の 20% 以上 or 50 ml ( 基礎疾患があれば100 ml) 以上の残尿はダメ!

残尿の測定方法 下腹部エコー横断像矢状断像 残尿量 = 0.5 a b c

簡易残尿測定器

1. 自排尿 自排尿は排尿管理の基本 自排尿には限界がある 残尿はダメ! 手術清潔間欠自己導尿留置カテーテル

排尿管理の方法 1 自排尿 2 清潔間歇自己導尿 3 留置カテーテル

3. 留置カテーテル いれっぱなしで楽ですが 繋がられている感じで自由が奪われる 感染必発 ( 膀胱炎は必発 前立腺炎 精巣上体炎 ) 結石形成潰瘍形成

尿道カテーテル長期留置による合併症 オールシリコンカテーテル留置 1 年後の膀胱結石 留置カテーテル長期留置による結石形成

尿道カテーテル長期留置による合併症 尿道留置カテーテル長期留置による尿道の脱落 尿道の脱落が進行

尿道カテーテル長期留置による合併症 42 歳 男性 脊髄損傷 間欠自己導尿の適応であったが 尿道留置カテーテルを希望 尿道皮膚瘻と会陰部褥瘡の交通 尿道皮膚瘻 尿道褥瘡瘻

3. 留置カテーテル いれっぱなしで楽ですが 繋がられている感じで 自由が奪われる 感染必発 ( 膀胱炎は必発 前立腺炎 精巣上体炎 ) 結石形成 潰瘍形成 やむをえずの場合のみ

さらに 長期留置がやむを得ない場合 膀胱瘻

膀胱瘻 膀胱瘻の 利点 尿道合併症がない 経路が短い 経路が真直ぐ 交換が楽

膀胱瘻 膀胱瘻の 欠点 麻酔下に作製 抜けたままでほっとくと閉鎖してしまう 交換してもらえる施設が少ない

排尿管理の方法 1 自排尿 2 清潔間歇自己導尿 3 留置カテーテル

2. 清潔間歇自己導尿 やり方 尿を取る時だけ管 ( カーテテ ル ) を挿入 5 回 / 日から開始 滅菌操作ではない ( 清潔操 作 )

2. 清潔間歇自己導尿

2. 清潔間歇自己導尿 欠点 面倒 利点 袋をぶら下げなくてよい 留置しっぱなしよりは生理的 感染や結石形成において有利

Ozawa et al. Nippon Hinyoukika Gakkai Zasshi, 96(5),541,2005.

排尿管理の方法 1 自排尿 2 清潔間歇自己導尿 3 留置カテーテル

排尿管理の目的

適切な排尿管理の欠如 残尿があるのに自排尿導尿をサボって膀胱パンパン留置カテーテルで繰り返しの膀胱炎 膀胱の変形 機能障害 頻尿 尿失禁 排出障害 水腎 逆流腎盂腎炎 z 生活の質が低下 腎機能低下

腎機能低下 透析 生活制限 食事制限 週 3 回の通院

排尿管理の目的 = 腎臓をまもる ( 生活 )

まとめ 疾病 老化は全身および下部尿路の機能障害を起ご清聴ありがとうこし 蓄尿症状 排出症状 排尿後症状といった下部尿路症状 (LUTS) の原因となる ございました 下部尿路障害をきたす疾患に 過活動膀胱 前立腺肥大症 神経因性膀胱 骨盤臓器脱などがある 下部尿路機能障害 特に神経因性膀胱が原因の場合には 将来の腎機能温存のため適切な排尿管理が必要である