ポイント 藻類由来のバイオマス燃料による化石燃料の代替を目標として設立 機能性食品等の高付加価値製品の製造販売により事業基盤を確立 藻類由来のバイオマス燃料のコスト競争力強化に向けて 国内の藻類産業の規模拡大と技術開発に取り組む 藻バイオテクノロジーズ株式会社 所在地 茨城県つくば市千現 2-1-6

Similar documents
ポイント 心地よい風 とは何かを分析して商品開発を開始 カモメの羽形状を応用して 心地よい風 静音性 省エネ を実現 商品開発における技術的な課題を他社との連携により克服 株式会社ドウシシャ 所在地東京都港区 輪 従業員数 1,652 (2017/03 期連結 ), 796 (201

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

スライド 1

090108

タベルモの技術 タベルモは ちとせグループが蓄積してきた生き物 ( 微生物 藻 動物細胞など ) を育種 培養する技術に加え スピルリナを加工する技術を開発し タンパク質が豊富で栄養価の高いスピルリナの特徴を最大限に活かした 生スピルリナ という商品の開発にも成功しています 培養においては 従来 藻

npg2018JP_1011

平成 27 年度調査結果概要 (1) 大学発ベンチャー設立状況等調査平成 27 年度調査において存在が確認された大学発ベンチャー ( 以下 VB ) は 1,773 社と微増 ( 平成 26 年度調査で確認されたのは 1,749 社 ) また 平成 26 年度調査時は黒字化した VB の割合が 43

資料7(追加) 「データで見る産学連携の現状と分析」

Microsoft Word - 基本計画(バイオジェット)_

資料 3 ー 1 環境貢献型商品開発 販売促進支援事業 環境省市場メカニズム室

事例2_自動車用材料

02 IT 導入のメリットと手順 第 1 章で見てきたように IT 技術は進展していますが ノウハウのある人材の不足やコスト負担など IT 導入に向けたハードルは依然として高く IT 導入はなかなか進んでいないようです 2016 年版中小企業白書では IT 投資の効果を分析していますので 第 2 章

<4D F736F F F696E74202D F43444D838D815B D B988C493E089F090E08F91816A5F8CF68EAE94C5>

untitled

(2) 技術開発計画 1 実施体制 環境省 明和工業株式会社 ( 共同実施者 ) 国立大学法人東京工業大学 (2) ガス利用システムの技術開発エンジン発電機の試験運転における稼働状況の確認 評価 (3) 軽質タール利用技術開発エンジン発電機を用いた燃焼試験 (4) トータルシステムの技術開発物質 熱

資料 5 総務省提出資料 平成 30 年 12 月 21 日 総務省情報流通行政局


P00041

様式第一六(第12条関係)

Microsoft PowerPoint - 5th3E_watanabe_web.ppt [互換モード]

により 都市の魅力や付加価値の向上を図り もって持続可能なグローバル都 市形成に寄与することを目的とする活動を 総合的 戦略的に展開すること とする (2) シティマネジメントの目標とする姿中野駅周辺や西武新宿線沿線のまちづくりという将来に向けた大規模プロジェクトの推進 並びに産業振興 都市観光 地

第 3 章隠岐の島町のエネルギー需要構造 1 エネルギーの消費量の状況 ここでは 隠岐の島町におけるエネルギー消費量を調査します なお 算出方法は資料編第 5 章に詳しく述べます (1) 調査対象 町内のエネルギー消費量は 電気 ガス 燃料油 ( ガソリン 軽油 灯油 重油 ) 新エ ネルギー (

海外における主たるバイオジェット燃料製造事業者の動向について 資料 7

Microsoft Word - ③調査仕様書.doc

貿易特化指数を用いた 日本の製造業の 国際競争力の推移

スライド 1

住友化学レポート2018

untitled

ダイバーシティ100選目次.indd

はじめに は 日本中の中小企業が今よりもっと容易に海外進出を果たす為の仕組みづくりとして 海外進出コンソーシアムを結成します このコンソーシアムは 当社と大手貿易支援企業のパートナー関係を中核とし 貿易に関して得意分野を持つ企業とのコラボレーションにより構成されます Copyright(C) 201

Slide 1

新興国市場開拓事業平成 27 年度概算要求額 15.0 億円 (15.0 億円 ) うち優先課題推進枠 15.0 億円 通商政策局国際経済課 商務情報政策局生活文化創造産業課 /1750 事業の内容 事業の概要 目的 急速に拡大する世界市場を獲得するためには 対象となる国 地

( 参考様式 1) ( 新 ) 事業計画書 1 事業名 : 2 補助事業者名 : 3 事業実施主体名 : Ⅰ 事業計画 1 事業計画期間 : 年 月 ~ 年 月 記載要領 事業計画期間とは 補助事業の開始から事業計画で掲げる目標を達成するまでに要する期間とし その期限は事業実施年 度の翌年度から 3

中小機構の概要 設立 : 平成 16 年 7 月 1 日 たかだ 中小機構の支援機能 ひろし 役職員 : 理事長高田坦史 ( 役員 13 名 職員 784 名 ) 主要拠点 : 本部 ( 東京 ) 地域本部 (9 地域本部 + 沖縄事務所 ) 中小企業大学校 (9 校 ) ~ 創業 新事業展開から成

国立大学法人佐賀大学農学部佐賀県生産振興部株式会社オプティム 三者連携協定調印式 rev.3 Copyright 2015 OPTiM Co. All Rights Reserved. 1

平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-

北杜市新エネルギービジョン

輸入バイオマス燃料の状況 2019 年 10 月 株式会社 FT カーボン 目 次 1. 概要 PKS PKS の輸入動向 年の PKS の輸入動向 PKS の輸入単価 木質ペレット

2015 年度 ~2017 年度中期経営経営計画 14 中計 1. 当社が目指すもの企業理念と Vision E 2.11 中計 中計 (2nd STAGE / 2012~ 年度 ) の成果 - Vision E における 11 中計の位置づけと成果 - 1

untitled

書き方 ( 例 ) 別記第 17 号様式 農業生産法人報告書 自 至 平成 年 月 日平成 年 月 日 伊達市農業委員会会長様 平成年月日 主たる事務所の所在地伊達市 町 番地 法人の名称株式会社 代表者氏名 印電話番号 次のとおり農地法第 6 条第 1

資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

第1章

<4D F736F F F696E74202D E58A7794AD B81458CA48B B EC091D492B28DB85F8B4C8ED294AD955C977

宮城の将来ビジョン 富県宮城の実現 ~ 県内総生産 10 兆円への挑戦 ~ 富県宮城の実現 ~ 県内総生産 10 兆円への挑戦 ~ 認知度集計表 ( 回答者属性別 ) 内容について知っている 言葉は聞いたことがある 効知らない ( はじめて聞く言葉である ) 県全体 度数 ,172

中期経営計画の前提となる環境認識 1 日本経済の予測 年初からの円高や株安の進行により 消費マインドは伸び悩み 景気動向は停滞している 今後は 消費税増税による駆け込み需要の発生とその反動減による景気縮小が予想される 中長期的には成熟社会として 多様な価値観とともに これまでとは異なる市場が生まれる

番号文書項目現行改定案 ( 仮 ) 1 モニタリン 別表 : 各種係 グ 算定規程 ( 排出削 数 ( 単位発熱量 排出係数 年度 排出係数 (kg-co2/kwh) 全電源 限界電源 平成 21 年度 年度 排出係数 (kg-co2/kwh) 全電源 限界電源 平成 21 年度 -


バイオテクノロジーを利用した省エネ・資源循環技術

ポイント 医療 医薬品業界における長年の経験と金属製注射針に対する問題意識 蚊の針の構造をヒントに世界初の生分解性プラスチック医療デバイスを開発 数多くの協力者を巻き込み 超微細精密加工技術と量産体制を確立 株式会社ライトニックス 所在地兵庫県 宮市甲東園 従業員数 創業年

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

<4D F736F F D2095BD90AC E937890AC92B DC58F4995F18D908F915F66696E202D F78F4390B D E646F6378>

Microsoft Word - 作成中.doc

技術ロードマップから見る2030年の社会

3 特許保有数 図表 Ⅰ-3 調査対象者の特許保有数 Ⅱ. 分析結果 1. 減免制度 (1) 減免制度の利用状況本調査研究のヒアリング対象の中小企業が利用している法律別の減免制度の利用状況を 図表 Ⅱ-1 に示す 企業数は延べ数でカウントしている 図表 Ⅱ-1 減免制度の利用状況 この結果から 産業

資料 3 産総研及び NEDO の 橋渡し 機能強化について 平成 26 年 10 月 10 日経済産業省

White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

目次 1. 奈良市域の温室効果ガス排出量 温室効果ガス排出量の推移 年度 2010 年度の温室効果ガス排出状況 部門別温室効果ガス排出状況 温室効果ガス排出量の増減要因 産業部門 民生家庭部門

東洋インキグループの環境データ(2011〜2017年)

トヨタの森づくり 地域・社会の基盤である森づくりに取り組む

<4D F736F F F696E74202D A A F193B994AD955C28834B838A836F815B29817A837C E E >

2017 年 1 月 18 日 植物由来プラスチック 合成繊維を対象に含む商品類型における 認定基準の部分的な改定について 公益財団法人日本環境協会 エコマーク事務局 1. 改定の概要エコマークでは 植物由来プラスチック 合成繊維に関して 2014 年から調査を行い 2015 年 4 月に エコマー

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF342D315F91E6338FCD323190A28B498ED089EF82C982A882AF82E BD82C889BA908593B982CC >

資料1-1 株式会社阿波銀行提出資料(HP用)

中小企業支援ツール 中小企業支援ツール は 金融機関における中小企業支援の一助となることを目的に 自社製品開発などにより下請脱却に取り組んだものづくり中小企業の知財活用を調査 分析し 経営 事業上の課題を事業ライフステージごとに整理するとともに その課題解決に向け 知財活用の観点から考えられるアクシ

Microsoft PowerPoint Q決算説明会.pptx

未利用原油 ( 含む非在来型原油 ) の国内製油所での精製時の課題に関する調査 (JX リサーチ株式会社 ) 青木信雄 細井秀智 茂木章 1. 調査の目的我が国の原油調達における中東依存度は約 83% 次いでロシアが約 8%(2014 年 ) となっており すべての燃料の中で石油は調達リスクが最も高

<4D F736F F F696E74202D FED979D D817A F836F BF82D682CC8EE DD82C689DB91E82E B8CDD8AB B83685D>

次 1. 社是 2. 第 9 次中期経営計画の振り返り 3. 三洋化成のありたい姿 4.New Sanyo for 227

Microsoft Word - PR doc

2015 TRON Symposium セッション 組込み機器のための機能安全対応 TRON Safe Kernel TRON Safe Kernel の紹介 2015/12/10 株式会社日立超 LSIシステムズ製品ソリューション設計部トロンフォーラム TRON Safe Kernel WG 幹事

** M1J_02-81

スマートセルインダストリーが拓く世界 BD AI による 第 4 次産業革命 との融合により 健康 医療から 工業 エネルギー 農業まで 大きなパラダイムシフト 地球規模の諸問題を解決する 第 5 次産業革命 に発展する可能性 < 生物情報 (BD)> DNA RNA タンパク質 代謝物等 生物機能

調査の目的 全国の自動はかりの設置 使用状況等の実態把握 この度の計量制度見直しにより 平成 年 月より順次 取引又は証明に使用される自動はかりを検定の対象とすることとなった 検定システムを構築するには これらの 自動はかり の全国的な設置状況の実態を把握し 検定に必要なリソースを検討するため 全国

バイオ燃料

はじめに 本書は NEDO 技術委員 技術委員会等規程第 32 条に基づき研究評価委員会において設置された 太陽光発電多用途化実証プロジェクト ( 事後評価 ) の研究評価委員会分科会 ( 平成 29 年 10 月 16 日 ) 及び現地調査会 ( 平成 29 年 9 月 4 日於株式会社カネカ未来

寺島木工株式会社事業概要 商号 代表者 創業 所在地 連絡先 環境管理責任者 担当者 事業内容 取扱商品 機械設備 資本金 従業員数 主要取引銀行 主な納品先 所属組合 敷地面積 建築面積 寺島木工株式会社 代表取締役社長寺島秀雄 昭和 22 年 3 月 31 日 本社 : 工場

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D2095BD90AC E937890AC92B DC58F4995F18D908F915F66696E202D F78F4390B D E646F6378>

問題意識 民生部門 ( 業務部門と家庭部門 ) の温室効果ガス排出量削減が喫緊の課題 民生部門対策が進まなければ 他部門の対策強化や 海外からの排出クレジット取得に頼らざるを得ない 民生部門対策において IT の重要性が増大 ( 利用拡大に伴う排出量増加と省エネポテンシャル ) IT を有効に活用し

PowerPoint プレゼンテーション

2002年3月期中間決算 補足資料

2018 年度事業計画書 Ⅰ 基本方針 1. 健康関連分野を取り巻く環境と直近の動向 健康医療分野が政府の日本再興戦略の重点分野に位置づけられ 健康 医療戦略が策定されるなど 予防や健康管理 生活支援サービスの充実 医療 介護技術の進化などにより 成長分野としてマーケットは大きく拡大することが期待さ

PowerPoint プレゼンテーション

電解水素製造の経済性 再エネからの水素製造 - 余剰電力の特定 - 再エネの水素製造への利用方法 エネルギー貯蔵としての再エネ水素 まとめ Copyright 215, IEEJ, All rights reserved 2

競争優位の獲得

次世代エネルギーシステムの提言 2011 年 9 月 16 日 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター Copyright (C) 2011 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved.[tv1.0]

概要 1. 概観 2. 中小企業向け事業分野における位置 3. 営業戦略 4. 要約 Seite 2

概要:プラスチック製容器包装再商品化手法およびエネルギーリカバリーの環境負荷評価(LCA)

58

平成 29 年 7 月 地域別木質チップ市場価格 ( 平成 29 年 4 月時点 ) 北東北 -2.7~ ~1.7 南東北 -0.8~ ~ ~1.0 変動なし 北関東 1.0~ ~ ~1.8 変化なし 中関東 6.5~ ~2.8

(3) 企業像農業情勢や経営環境の変化に的確に対応することが求められるなか 統合効果をさらに追及し競争力を強化します 2020 年に創立 100 周年を迎え 1 研究開発型企業 2 地域貢献型企業 3 環境共生型企業として 真に顧客から信頼される存在感のある企業を目指します (4) 資本政策の基本的

を増加させる際 当該グループ会社の中の他の一の特定石油精製業者は その増加させた数量に相当する数量を自らの利用の目標量から減少させることができる 2 特定石油精製業者が他の一の特定石油精製業者 ( 当年度におけるバイオエタノールの利用の目標量を達成できない正当な理由がある者に限る ) との契約に基づ

<4D F736F F D F193B994AD955C817A C A838A815B83582E646F6378>

様式第十二 ( 第 10 条関係 ) 認定経営資源再活用計画の内容の公表 1. 認定した年月日平成 24 年 1 月 31 日 2. 認定事業者名富士フイルムイメージテック株式会社 3. 認定経営資源再活用計画の目標 (1) 経営資源再活用に係る事業の目標認定事業者は 富士フイルム株式会社コンシュー

Microsoft Word - 東京文化資源区構想最終報告書 docx

当社グループによるフィリピンたばこ会社の資産取得に関する契約締結について

バイオマス資源としての微細藻類

20 21 The Hachijuni Bank, LTD.

経管栄養食 アイソカル RTU アイソカルプラス EX ネスレヘルスサイエンス ネスレヘルスサイエンス 1.0kcal/ml の流動食さらにやさしく より確かな安全を 1.5kcal/ml の高濃度流動食 アルギニン配合 アイソカルプラス アイソカル 1K ネスレヘルスサイエンス ネスレヘルスサイエ

Transcription:

藻バイオテクノロジーズ株式会社 ( 茨城県 ) File 15 バイオ樹脂 燃料 藻類の活 により 油依存からの脱却を 指す 藻バイオテクノロジーズ株式会社 ( 以下 同社 ) は 筑波大学藻類バイオマス エネルギーシステム開発研究センターの渡邉教授が代表取締役会長を務めており 藻類の生産及び加工並びに培養方法及び加工方法の研究開発を行う企業である 同社は 燃料 化学製品 化粧品などの原料である石油を藻から抽出した油に代替することで CO2 排出量の削減と石油依存からの脱却を目指している 同社は 藻類バイオマス研究において世界トップクラスの地位を持つ筑波大学と連携しながら研究開発 製造を行っている 現在 同社は機能性食品の原料や健康 美容用品の原料を生産しており 今後はバイオプラスティックや低コストのバイオ燃料の生産を目標としている 137

ポイント 藻類由来のバイオマス燃料による化石燃料の代替を目標として設立 機能性食品等の高付加価値製品の製造販売により事業基盤を確立 藻類由来のバイオマス燃料のコスト競争力強化に向けて 国内の藻類産業の規模拡大と技術開発に取り組む 藻バイオテクノロジーズ株式会社 所在地 茨城県つくば市千現 2-1-6 B-5 従業員数 8 (2016 年 11 現在 ) 創業年 - ( 設 年 2008 年 8 ) 資本 ( 百万円 ) 76 売上 ( 百万円 ) 連結ベース 2015 年 7 60 2015 年 12 25 2016 年 12 50 1 製品の特徴 同社は筑波大学が保有 生産する 藻類バイオマスオイル を活用し 現在は他企業との連携により機能性食品や化粧品などの原料を生産している 藻類オイルの保湿作 を活 したハンドクリーム藻類は保湿作用のある油脂を多く含んでいる 同社は 筑波大学と共同で ボトリオコッカス という藻の特許を取得しており 多くの藻類は植物系オイルを生産するが ボトリオコッカスが光合成により生産するボトリオコッセンというオイルは炭化水素に分類される石油系オイルである このオイルは ガソリンの代替燃料として利用できるほか 高い保湿性能があることを特徴としている 同社は 株式会社デンソーとの連携によりこの藻から抽出されたボトリオコッセンの保湿効果を明確にして デンソーのハンドクリームの開発につなげた一方で 同社によるフェイスクリームやボデイクリームの開発 販売を計画している ボトリオコッカスは 藻類の中でもオイルの生産能力と増殖能力のバランスが良いという特徴がある 2013 年時点で 1 年間で 1 ヘクタールあたり 10 トンのオイルが生産できると試算されて 138

おり この 10 倍の生産効率を達成することができれば 燃料用途として石油と同価格での供給が可能となり 実用化が期待されている 図 59 藻類由来の原料を使った化粧品のイメージ出所 ) 藻バイオテクノロジーズ株式会社 ではなく 藻類から直接 DHA を摂取 DHA(Docosahexaenoic acid) や EPA(Eicosapentaenoic acid) には 血液流動性の向上や脳機能の活性化など 様々な効用がある 我々人間は これらの栄養素を青魚などから摂取している しかし 青魚の DHA は 藻類が作る DHA を食物連鎖により蓄積したものであること 昨今は 青魚などの漁穫量や消費量が減少し 養殖魚の生産量と消費量が増えていることから 水産飼料に人為的に DHA を添加しないと養殖魚の DHA 含量は低下し 人々の間で DHA 等の摂取不足が起こっている そこで 同社は DHA/EPA を藻類から直接高濃度で生産し 錠剤または家畜用の肥料として生産する技術を開発した この技術を利用して 藻類由来の DHA のサプリメントを開発 販売する計画にある 139

図 60 機能性食品の原料イメージ出所 ) 藻バイオテクノロジーズ株式会社 2 事業参 の経緯 設 経緯藻バイオテクノロジーズ株式会社の母体は 当時新日本製鐵株式会社の取締役かつ昭和シェル石油株式会社の顧問であった落合俊雄氏が会長を務める 環境とエネルギーに関する勉強会 であった 同勉強会は 2003 年に発足し その後 2008 年には勉強会のメンバーを中心として 大学や研究所の成果を社会に還元する事業を行うため 新産業を創造する技術移転機関 (Technology Licensing Organization:TLO) である株式会社新産業創造研究所を創立した 2008 年から 2013 年までは 筑波大学と連携し 藻類を利用したエネルギー開発などを実施した 2014 年には新産業育成期間が終了し 組織体制を株式会社へ移行することとなり 2015 年に社名を藻バイオテクノロジーズ株式会社に変更した 140

藻類を起点とした製品開発の経緯バイオマス燃料等の開発は 第一世代の原料としてトウモロコシ 大豆 サトウキビ また第二世代として森林資源 農業廃棄物 エネルギー作物が研究されてきた しかし いずれの原料も 食糧との競合や森林伐採による環境破壊という問題が残されている そこで 藻類研究者でもある渡邉氏は それらの問題を解決するため 藻類由来のバイオマス燃料の研究開発を開始する 3 成功 差別化要因 機能性 品等の 付加価値製品の製造販売により事業基盤を確 渡邉氏は 燃料の代替実現へ向けたより低コストのバイオマスオイルの抽出方法を継続して研究する一方 前述した化粧品やサプリメントといった高付加価値型製品を製造販売する計画にある その他にも 欧州最大の応用研究機関であるフラウンホーファー研究機構との連携により藻類バイオマスオイルを活用した潤滑油の生産を目指した研究を実施 事業化間近であるという このように同社は 藻類バイオマスオイルによる石油燃料の代替を長期的な目標としながらも 短期的にコスト競争ではなく 高付加価値を切り口とした事業を先行実施させることで 同社の事業基盤構築に成功している 間企業 政府と連携した案件獲得渡邉氏は藻類産業の創生への寄与 政府の進める低炭素社会の実現への貢献を目的として 2010 年に 7 名の研究者と 15 の法人によって 藻類産業創成コンソーシアム を創立し 現在は約 70 社が参加するコンソーシアムのネットワークを活用して案件を獲得している 前述のハンドクリームの事業化は コンソーシアムに参加する株式会社デンソーとの連携によって事業化に至っており また民間企業に限らず 各省庁による補助事業も活用し 研究ノウハウの蓄積と事業運営資金の獲得に成功している 学の研究データを最 限に活 筑波大学藻類バイオマス エネルギーシステム開発研究センターは 産学連携の橋渡しの役割を担っている 渡邉氏も 藻類の研究テーマの情報収集を同センターの産学連携機能を活用して行うという このように 同社は産学連携によって大学の研究データを最大限に活用することで 研究及び事業運営の効率化を図っている 141

4 事業ビジョン 展望 バイオ原油のコスト競争 強化同社の長期目標である藻類を活用したバイオ燃料の生産による石油依存の脱却に向け 渡邉氏は FIT 適用を見据えたバイオ原油の限界コストを 200 円 /l 以下と想定している 前述のコンソーシアムの活性化により国内における藻類産業の規模拡大を図ることでスケールメリットを創出してバイオ原油のコストを低減 また生産効率の高いバイオマスオイルの抽出プロセスの研究 開発を進めていくという 5 政府への要望 産学連携機能の強化前述の通り 筑波大学藻類バイオマス エネルギーシステム開発研究センターは 日本でも数少ない大学からの外部資金などのみで組織を運営する 開発研究センター 制度の第一号であり 新たな産学連携形態である 渡邉氏は同センターのような大学とベンチャー企業が連携し 新規事業の立ち上げに貢献するような仕組みづくりが重要だと感じている 142

藻バイオテクノロジーズ株式会社代表取締役会 渡邉信さん 筑波 学藻類バイオマス エネルギーシステム開発研究センターの教授も務める 同社と筑波 学の産学連携の役割を担いながら 藻類バイオマス燃料による化 燃料代替を 指した研究開発を進める 143