第 Ⅱ 部 ジョブ カード編
第 Ⅱ 部は ジョブ カードの作成支援に関わる ジョブ カード作成アドバイザーを 養成するために ジョブ カード制度の内容 ジョブ カードの作成支援や就職支援 キャリア形成支援の仕方などについて理解していただくために編纂されたものです 第 Ⅱ 部 ジョブ カード編 では 1 ジョブ カード制度の目的と仕組みを理解する 2 ジョブ カードを効果的に機能させる実務力 ( ジョブ カードを活用したキャリアコンサルティングにより 相談者の能力開発意識と就業意識を高める力 ) を習得する 3 関連制度について理解することを主たる目的とし 受講者の皆さんがジョブ カード制度について理解し 有効に活用していただけるように簡潔にまとめています 52
第 1 章ジョブ カード制度の概要 1. ジョブ カード制度とは ジョブ カードは 個人のキャリアアップや 多様な人材の円滑な就職等の促進を目的とした 生涯を通じたキャリア プランニング 及び 職業能力証明 のツールです ジョブ カードの活用により 相談者のキャリアの振り返りやキャリア プランの検討などをきめ細かく行うことができ また 各様式の作成を通して職業能力の棚卸しや職業生活設計等を行うことができます その結果 職業能力を見える化することができ 求職活動時や訓練受講時等に職業能力証明のツールとして活用することができます ジョブ カードは 労働市場インフラとして 一般の求職者 ~ 在職者 ~ 学生など幅広い方を対象に 求職活動 職業能力開発などさまざまな場面で用いることができます また 電子化することによって これまでの職業経験や 職業能力証明などの情報を蓄積 管理しやすくなることから 求職活動時等にその情報を自らが抽出 編集して職業能力証明に活用するなど 活用の幅が広がることが期待されています 2. ジョブ カード活用のメリット キャリアコンサルティングを受けながらジョブ カードを作成していくことにより 主に以下のような効果が期待できます 自分の大事にしたい価値観に気づく なぜ自分はこの仕事を選んだのだろうか これからどのような働き方がしたいのだろうか とは 誰もが考えたことのあるテーマではないでしょうか そのカギとなるのは 皆さん一人一人が大事にしてきた ( 大事にしている ) 価値観 です まだ 自分でも気づいていない ( 明確に意識していない ) 価値観があるかもしれません その価値観に気づくチャンスでもあります 自分の強みに気づく 強み というと何か特別な資格や特技のことだと考える人が多いようですが 皆様がそれぞれ積んでこられたキャリアはすでに立派な 財産 であり 強み なのです まずそのことに気づいていただきます これからどのようにキャリアを重ねていくのか ( キャリア プラン ) がはっきりする 以上で 気づき を得た 価値観 や 強み に加えて 社内 ( 上司 同僚 部下 ) や社外 ( 顧客 取引先 ) さらにはご家族といった 皆様を取り巻く人々からの 期待 までも考え合わせて 相談者一人一人に合ったキャリア プランを作成します 将来目指す働き方を実現するために これからどのような能力開発をしていけばいいのか 具体的にどのようにやればいいか等もはっきりさせていきます 能力開発は 資格取得ばかりではありません キャリアすべてが大事な能力開発の機会です キャリア プラン ( 職業生活設計 ) とは 職業生活における将来の目標を定めたうえで それを実現するための計画のことです このキャリア プランを作成することを キャリア プランニング といいます 53
3. ジョブ カード制度総合サイト の活用とジョブ カードの管理 電子化等 1 ジョブ カード制度総合サイトについて ジョブ カード制度総合サイトは ジョブ カードを利用してキャリアアップしたい方や求職活動を行いたい方などをサポートするためのサイトです ジョブ カード様式や記入例のダウンロード ジョブ カード作成支援ソフトウェア ジョブ カード情報登録 検索ソフトウェア キャリア プラン作成のための質問などジョブ カードを作成する上で参考となる情報を掲載しているので ご活用ください ( 以下 ホームページ掲載内容 ) 54
2 ジョブ カードの管理 電子化について 作成したジョブ カードは作成者本人が所有 管理します データは電子化 ( パソコン クラウドストレージ等 ) を用いて本人が管理し 本人の責任の下で必要な情報を抽出 編集し活用します ジョブ カード作成の流れ ジョブ カードを作成する方法を決定 ジョブ カード作成支援ソフトウェ アを使って作成 ご自分の PC にインストールすることで ジョブ カード 作成支援機能や 履歴書出力機能を使用できます 様式 (PDF) を使って作成 印刷して手書きで作成するための様式です 様式 (Excel) を使って作成 特別なソフトを PC にインストールせずに Microsoft Excel を使ってジョブ カードを作成するための様式です ジョブ カード作成を支援する情報など このサイト ( ジョブ カード制度総合サイト ) の各種の情報 ジョブ カード記入例 ジョブ カード作成支援ソフトウェアの記入支援機能 ジョブ カード作成アドバイザーへの相談 55
4. ジョブ カード制度の普及促進 方策等 ジョブ カードは 広く求職者 在職者 学生等を対象として普及を図ることとし ジョブ カード取得者数を平成 32 年までに 300 万人に到達させること等を目標としています 普及促進方策等について ( 目標 ) 個人のキャリアアップや 多様な人材の円滑な就職等を促進するため ジョブ カードが 生涯を通じたキャリア プランニング 及び 職業能力証明 の機能を担う労働市場インフラとして活用されることを目指して 下記を目標とする 1 ジョブ カード取得者数 ( 注 ) を 2020 年に 300 万人にする こと ( 注 : 見直し前のジョブ カード取得者とジョブ カードの新規取得者 ( 見直し前のジョブ カード取得者を除く ) の合計数 ) 2 新たなジョブ カードの取得が自らの職業能力の向上などに貢献するとした者の割合を 7 割以上とすること 3 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート等を有し就職活動を行う者のうち 当該シート等を応募書類として活用した者の割合を 2020 年までの間増加させること ( 推進体制 ) 1 国 ( 文部科学省 厚生労働省 経済産業省 ) : 関係者に対する周知 理解の促進 電子化のためのソフトウェアの提供 サイトによる情報提供 ジョブ カード制度推進会議 の運営等 2 都道府県労働局 : 関係機関から構成される地域のジョブ カード運営本部の運営 業界団体 教育訓練機関等の関係者に対する役割 活用方法 助成金における活用のインセンティブ措置 ジョブ カードを活用した雇用型訓練に係る助成金 ジョブ カードセンターでの援助 サイト等における関係情報の提供などの支援措置等の説明等 3 公共職業安定所 : まとまった時間をかけて職業相談 紹介を行う求職者へのジョブ カードの活用 公共職業訓練等の受講指示等に際してのジョブ カードを活用したキャリアコンサルティングの促進 ジョブ カードを活用する雇用型訓練の実施企業に係る積極的な求人開拓等 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シートを有する求職者への応募書類としての活用 必要に応じた応募先企業の活用促進 4 ジョブ カードセンター ( 委託事業 : 各都道府県及び主要都市等に合計約 110 センター ): 制度の周知 広報 雇用型訓練実施企業の開拓 支援 ジョブ カードを応募書類等として活用する企業の開拓等 ジョブ カードを活用した在職労働者の実務経験の評価 キャリアコンサルティング等を実施する企業の開拓 支援 5 ( 独 ) 高齢 障害 求職者雇用支援機構 都道府県 委託訓練 求職者支援訓練実施機関 : ジョブ カードを活用したキャリアコンサルティングの実施及び訓練成果の評価 応募書類としてのジョブ カード活用を訓練生及び応募先企業に対して説明 6 その他の教育訓練機関 : 職業能力形成プログラム以外の教育訓練における訓練成果のジョブ カードへの記入の促進 7 大学等 : 必要に応じた学生のキャリア プランニングのツールとしての活用 8 企業 : 必要に応じたキャリア プランニング及び職業能力証明のツールとしての活用 9 地域若者サポートステーション等 : 必要に応じたジョブ カードを活用したキャリアコンサルティング等の実施 10 特定地方公共団体及び職業紹介事業者 : 必要に応じたジョブ カードの応募 採用時の書類としての活用 56
5. 各種助成金との関連 ジョブ カード制度に関連する各種助成金制度には 下記のようなものがあります キャリアアップ助成金等の教育訓練関係の助成金申請の提出書類では 当該訓練の受講が確かに必要かどうかについて ジョブ カード作成アドバイザー等による確認及びジョブ カードへのコメントの記入が必須です 下記図表および トピックス ジョブ カード制度関係の助成金リンク を参照してください ジョブ カードを活用する助成金について 平成 29 年 9 月現在 < トピックス > ジョブ カード制度関係の助成金リンク ジョブ カード制度に関連する各種助成金については 下記の WEB サイトを参照してください キャリアアップ助成金 ( 人材育成コース ) http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html 人材開発支援助成金 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html ジョブ カードセンター https://www.jc-center.jp/center.html なお 情報は変更 更新されている場合がありますので 最新の情報を確認してください 57
第 2 章ジョブ カードを活用した支援 1. ジョブ カードを活用した支援とは (1) 概要 ジョブ カードは 基本的に 本人が記入します ただし 能力評価に関わる様式は 教育訓練機関や企業等の評価担当者が記入することになります 作成したジョブ カードは作成者本人が所有 管理します 応募書類として活用する場合にどの情報を企業等に提出するかは 原則本人の意思に委ねられることになります (2) ジョブ カード作成アドバイザーの役割 位置づけ ジョブ カード作成アドバイザー は ジョブ カードを活用したキャリアコンサルティングを実施することができる方のことです ジョブ カードはあくまで作成者本人が作成 所有するものですが より有益な内容とするために必要なアドバイスを行い ジョブ カードの作成支援を行うことが期待されます なお ジョブ カード作成アドバイザーであって キャリアコンサルタントではない方は キャリアコンサルタントと同等以上のキャリアコンサルティングのスキル 知識等を有していない状況にあることから ジョブ カードの作成支援をより効果的に行うため キャリアコンサルタントになることを目指すことが望まれます ジョブ カード作成アドバイザー は 以前は 登録キャリア コンサルタント という名称でしたが 職業能力開発促進法におけるキャリアコンサルタントと区別するため 平成 27 年 10 月に ジョブ カード作成アドバイザー に名称変更されました キャリアコンサルティング関連の資格については 参考資料 14(219 ページ ) を参照してください (3) キャリアコンサルタントの役割 位置づけ キャリアコンサルタントとは 職業能力開発促進法における キャリアコンサルタント を指します キャリアコンサルタント国家資格を取得した方は ジョブ カード作成アドバイザーとして登録しなくてもジョブ カードの作成支援を行うことが可能です キャリアコンサルタントになるためには キャリアコンサルタント試験に合格し 登録をすることが必要です (4) その他 ( 企業担当者や大学等の教員等 ) ジョブ カードは在職者や学生などにも活用することができます 従前のジョブ カード制度では ジョブ カードを活用するためには登録キャリア コンサルタントによるキャリアコンサルティングを受けることが必要でしたが 平成 27 年 10 月以降のジョブ カード制度におけるジョブ カードは あくまでジョブ カード作成アドバイザーによるキャリアコンサルティングはジョブ カードの作成を支援するものとして位置づけられています このため 本人の希望によりキャリアコンサルティングを実施します 58
2. ジョブ カードの様式について ジョブ カードの様式は 大きく 様式 1 キャリア プランシート 様式 2 職務経歴シート 様式 3 職業能力証明シート の3つに分かれています ジョブ カード様式一覧様式名称キャリア プランシート ( 就業経験がある方用 ) 様式 1-1 様式 1-2 様式 2 様式 3-1 様式 3-2 様式 3-3-1-1 様式 3-3-1-2 様式 3-3-2-1 様式 3-3-2-2 様式 3-3-2-3 様式 3-3-3 様式 3-3-4 キャリア プランシート ( 就業経験のない方 学卒者等用 ) 職務経歴シート 職業能力証明 ( 免許 資格 ) シート 職業能力証明 ( 学習歴 訓練歴 ) シート 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート ( 企業実習 OJT 用 ) 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート ( 在職労働者の実務経験の評価用 ) 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート ( 離職者訓練 ( 高齢 障害 求職者雇用支援機構 ) 用 ) 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート ( 離職者訓練 ( 都道府県等 ) 用 ) 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート ( 学卒者訓練用 ) 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート ( 求職者支援訓練用 ) 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート ( 科目ごとに評価している教育訓練用 ) 59
3. ジョブ カード各様式の活用方法 キャリア プランニングでの活用 < キャリア プラン関係 > 様式 1-1 様式 1-2 キャリア プランシート 目標や習得すべき能力等を記入 < 職務経験関係 > 様式 2 職務経歴シート 記入して職業経験の棚卸しに活用 様式 3-3 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート 実務経験 ( 仕事ぶり ) の評価 作成したシートを自己理解の際に活用 < 免許 資格関係 > 様式 3-1 職業能力証明 ( 免許 資格シート ) 記入して自己理解等に活用 < 学習 訓練関係 > 様式 3-2 職業能力証明 ( 学習歴 訓練歴シート ) 記入して自己理解等に活用 様式 3-3 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート 訓練等の成果の評価 作成したシートを自己理解の際に活用 < 評価関係 > 様式 3-3 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート 作成したシートを自己理解の際に活用 応募書類としての活用 < 職務経験関係 > 様式 2 職業経歴シート 職務経験関係 + 企業確認 情報を編集して 履歴書 (JIS 規格等 ) の一部や 職務経歴書 ( 一般の様式 ) に活用 様式 3-3 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート < 免許 資格関係 > 様式 3-1 職業能力証明 ( 免許 資格シート ) 免許 資格関係 + 免許等の証明書類 ( 写 ) を添付 情報を編集して 履歴書 (JIS 規格等 ) の一部に活用 < 学習 訓練関係 > 様式 3-2 職業能力証明 ( 学習歴 訓練歴シート ) 学習 訓練関係 + 修了の証明書 ( 写 ) を添付 情報を編集して 履歴書 (JIS 規格等 ) の一部に活用 様式 3-3 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート 訓練等の成果の評価 < 評価関係 > 様式 3-3 職業能力証明 ( 訓練成果 実務成果 ) シート 実務経験 訓練等の成果の評価を自己 PR に活用 60
このシートは就業経験のある方が 自身のキャリア プラン ( 職業生活設計 ) 等を記入します 個人の希望により ジョブ カード作成アドバイザー等がキャリアコンサルティングを行った場合 その結果等を記載する キャリアコンサルティング実施者記入欄 があります なお 助成金の中には ジョブ カード作成アドバイザー等によるキャリアコンサルティングの結果等を記入したジョブ カードが申請書類として必須になるものもあります 61
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このシートは就業経験のない方等が 学校等でもこれまでの経験やそこから得られたことを踏まえて自身のキャリア プラン ( 職業生活設計 ) 等を記入します 個人の希望により ジョブ カード作成アドバイザー等がキャリアコンサルティングを行った場合 その結果等を記載する キャリアコンサルティング実施者記入欄 があります 63
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このシートには自身の職務経歴を記入します キャリア プランニングのために職業経験の棚卸しを行うためのツールであるとともに 必要に応じて 自身が記入した内容を企業の担当者に確認 署名 押印を依頼することにより 職業能力証明 のツールとして活用することもできます なお 企業の担当者の署名 押印がなくても 応募書類に追加添付する等の活用ができます また ジョブ カード作成支援ソフトウェアにおいて作成した場合は 入力情報を抽出 編集し JIS 規格の様式例に基づいた履歴書 職務経歴書を作成するために用いることもできます なお 職務経験のない方は記載する必要はありません 66
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このシートは作成者本人が取得している免許や資格について記入します キャリア プランニングのための自己理解等の際に活用するとともに 職業能力証明 のツールとして応募書類に追加添付する等の活用もできます また ジョブ カード作成支援ソフトウェアにおいて作成した場合は 入力情報を抽出 編集し JIS 規格の様式例に基づいた履歴書 職務経歴書を作成するために用いることもできます 68
このシートは作成者本人の学校等での学習実績や職業訓練等の訓練実績を記入します キャリア プランニングのための自己理解等の際に活用するとともに 職業能力証明 のツールとして応募書類に追加添付する等の活用もできます また ジョブ カード作成支援ソフトウェアにおいて作成した場合は 入力情報を抽出 編集し JIS 規格の様式例に基づいた履歴書 職務経歴書を作成するために用いることもできます 69
このシートは訓練受講者や在職者に対して 教育訓練の成果の評価 職場での仕事の振返りの評価を 教育訓練期間 企業の評価担当者が記入します キャリア プランニングのための自己理解等の際に 個人が本シートにより自己チェックを行います また 職業能力証明 のツールとして応募書類に追加添付する等の活用もできます ( 対象者別全 7 種類 ) 70
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第 3 章対象者別ジョブ カードを活用した支援の詳細 対象者別ジョブ カード作成支援の実際 (1) ジョブ カード作成アドバイザーの心構え相談者自身が自己理解を深め 自らの職業意識やキャリア形成上の問題点を明確にし 今後の職業選択やキャリア形成の方向付けが可能となるような支援を行うことが期待されています 様式 2( 職務経歴シート ) 様式 3-1( 免許 資格シート ) 様式 3-2( 学習歴 訓練歴シート ) で 過去のキャリアを振り返りながら現在の状態を確認し 様式 1-1 1-2( キャリア プランシート ) で未来への展望を明らかにしていくプロセスがジョブ カードを用いたキャリアコンサルティングです キャリアビジョンとは未来予想図 ( 計画 ) 組織に短期 (1 年以内 ) 中期 (5 年以内 ) 長期 (5 年以上 ) の事業計画があるように 個人にも必要なのではないでしょうか 過去と他人は変えられないが 未来と自分は変えられる ( エリック バーン ) を相談者とともに考えてまいりましょう そのためには 相談者が話すことを傾聴し 相談者が今何を感じ 何を求め どうしたいのかをしっかりと理解し 本人が自己理解を深め 考えを整理し 自らの将来への希望や目標に向かって主体的な行動を取ることができるような支援を行うことが重要です ただし 誘導し過ぎて相談者の自発性や主体的な判断を妨げることがないようくれぐれもご留意ください 支援の参考までに理論を紹介してありますが これはその対象者だけに限定したものではありません みなさんのキャリア支援の参考になれば幸いです ( 対象者別に見やすいように 解説が重複していることがあります ) (2) ジョブ カード作成支援の流れジョブ カードを作成するのは ジョブ カードを利用する本人になります キャリアコンサルティングを受けに来る段階では 本人による様式の記入は終了していることが基本となりますが 自己理解や仕事理解などがうまくいかず ジョブ カードの記入に困っている人も多いため 場合に応じた支援が求められます 1 回の面談でジョブ カードの作成が終了しない場合は 次回面談日を予約し 次回までに記載すべき事項を伝えたうえで 様式 1 キャリアコンサルティング実施者の記入欄 に 途中経過および次回までの約束事項等を記入します 面談時間内で キャリアコンサルティング実施者の記入欄 が書けなかった場合は ジョブ カードを本人に返し 記入できる時刻を伝えます 1) ジョブ カード制度に関する説明 理解促進ジョブ カードを通じて自分自身の経験を振り返り 将来の希望や目標等をともに考えていくという趣旨 目的を相談者に伝え 理解を促すことが大切です 一度作成した後も研修や資格取得など自己研鑽について 仕事内容が変わったときに追加していくなど 生涯を通じたキャリア プランニングのツール として継続活用を進めていくよう伝えてください 2) キャリアコンサルティングの実施様式 3-1( 免許 資格シート ) 3-2( 学習歴 訓練歴シート ) 2( 職務経歴シート ) から自己理解 職業理解を進め 様式 1( キャリア プランシート ) でキャリアビジョンをまとめていく作成支援が一般的です 記入された項目が少ない場合 適切な質問 (5W3H を使ったオープン クエスチョン ) を用いながら自己理解を促していきます 実務においては ご自身で 質問集 などを作っておかれるといいでしょう 3) キャリアコンサルティング記入欄 の記載キャリアコンサルティングを行った実施日時 所属 ( 個人の場合は記載不要 ) 氏名 電話番号 登録番号を記入します 77
コメントの記載内容は助成金等の申請書類として活用する場合とそうでない場合で異なってきます 申請書類とする場合は 当該訓練の必要性にかかるコメントを記入します 記入例 : 訓練受講に支障がない場合 分野への就業につき 本人の自己理解 職業理解 ならびに訓練への強い意志を確認できたため 訓練を受講し 目指す技能を習得していただきたい 記入例 : 訓練受講に支障がある場合 分野に関する職業理解はあるが 訓練を終了するまでの意志が確認できなかった 受講については保留とし 次回判断する 分野に関する職業理解が十分とは言えず 訓練を受講する事は現段階では難しいと思われる 訓練受講に支障がある場合のコメントは 本人が望んだ場合に記入します 本人が記入を望まないケースは 口頭で行うことが一般的です 受講希望者の意欲をそがないよう丁寧なフィードバックを行ってください 通常のキャリアコンサルティングの場合は コンサルティングの過程や今後の展開についてコメントを記入します 本人の成長を促すポジティブなコメントを記入してください 記入例 いままでの仕事を振り返ることでご自身の強みについて改めて確認が出来た 今後就業する職務について 次回面談までに情報収集を進めることを約束した 4) キャリアコンサルティングの終了今回のキャリアコンサルティングを通じて感じたことや気付いたことを共有します 次回面談の希望がある場合は 予約を受け付け 次回までの課題 ( 負担にならない範囲での宿題 ) を伝え 本人の主体的な行動を促します なお ジョブ カードの管理は利用者本人が行うことを再度説明し 電子情報として保存する場合はパスワード設定を促すなど 適切な管理方法についても伝えます (3) 様式別の作成支援ポイント 1) 様式 1-1 キャリア プランシート ( 就業経験がある方用 ) 様式 2~3 の客観的事実を踏まえ 本人の強み ( 能力 価値観 適性 ) について具体的 に記入できるように支援する 今後の課題や能力開発の目標を記入するとともに 受講したい教育訓練があれば具体 的に記入できるように支援する 応募書類などに活用する場合は 文章は出来るだけ簡潔に 3 行程度で改行し 1 行空 けるなど 読み手を意識させることが大切 否定的な表現は避け 肯定的な表現に置き換える ジョブ カード作成支援ソフトをダウンロードし利用すると 画面上の質問に回答入力することで 様式 1-1 に反映します ただし機械的な処理のため 文のつながりなどは加除修正する必要がありますが たたき台として活用できます 2) 様式 1-2 キャリア プランシート ( 就業経験のない方 学卒者等用 ) 本人の強み ( 興味 能力 価値観 性格 適性 ) を具体的に記入できるように支援す る 書けていないようであれば いままでの経験から何を得て これからどう活かしたい かを 深掘り質問をしながら記入できるように支援する 78
3) 様式 2 職務経歴シート インターンシップやアルバイト経験も含めて 雇用期間 雇用形態を記入する 就業期間が長い場合 部署ごとに記入してもよい 職務内容や得られた知識 スキルを整理することが出来る 雇用期間や正式な会社名がわからない場合 ハローワークで雇用保険履歴 年金事務所で年金加入履歴を照合することが出来る 職務内容が書けない場合は 1 日の流れ を聴いていくと整理しやすい 職務の中で得られたことは 誉められたこと 達成できた目標 を聴いていくと整理しやすい ヒト モノ カネ 情報 時間 の視点で 個人で行っていたのか チームとして行っていたのかを質問するとまとめやすい チームとして行っていたのであれば 役割 についても記入すると応募時などの PR ポイントになる JIS 規格の履歴書には 6 か月以上の職務 を記載することとあるが ジョブ カード上は 短いものも記入する 今後の就業に活かせる経験かもしれない 4) 様式 3-1 職業能力証明 ( 免許 資格 ) シート 免許 資格の内容につき 不明点はインターネットなどで調べるよう伝える 応募書類などに活用する場合は 今後は活かせないものは記載しない 多種多様な資格保有は却って PR ポイントが曖昧になってしまうこともある 5) 様式 3-2 職業能力証明 ( 学習歴 訓練歴 ) シート 中学校卒業以降の学歴を記入する 高等学校の学歴がある場合は 高等学校からでよい 中退でも記入できる 社内外の研修 セミナー受講歴を記入する ジョブ カードを用いてキャリアビジョンを相談者とともに考えていくプロセスで 押えておきたい基本的な理論に触れておきます ロジャーズ理論 ロジャーズは来談者中心療法を提唱した 1 受容的態度 - 無条件に相談者の人格を肯定的に受け入れること 2 共感的理解 - 相談者の私的なその人自身であるかのように捉え 相談者に伝えること 3 自己一致 - 相談者から感じ取り 自分の中に生じたものと行動と態度が忠実に一致していることこれらを実践し 相談者との関係を確立することがカウンセリングにおいて重要となる エリス理論 エリスは人間は特定の考えや価値観を自分自身の考えや価値観として取り入れ 独自の信念を作りあげ その信念に基づいて判断と行動をすると提唱した 相談者は非合理的な信念 ( イラショナル ビリーフ 思い込み ) のために不安な感情を抱え 悩むことがある 相談者からこの単なる思い込みや考え過ぎを取り除き 押し付けや説得にならないように心掛けながら 新たな判断と行動に繋がるように支援することが重要となる エリクソン理論 エリクソンは人間が誕生から死までに 社会的な人との関わりの中で どう発達するかというライフサイクル理論を提唱した また 人間の発達段階を 8 つに区分し 達成しなければならない課題と課題が達成されなかった場合に陥る心理的な危機を唱えた 特に思春期青年期の課題を アイデンティティの確立 危機を アイデンティティの拡散 同様に成人期を 親密性 と 孤立性 壮年期を 世代性 と 停滞性 老年期を 統合性 と 不信感 とするなど 発達段階の特性を区分した 79
1. 在職者 (1) 支援のポイント 対象年齢が若年者か中高年者か 性別が男性か女性か等によっても 現在の就業に肯定的か否定的かによっても変わってきます 正解はありませんが 現在の仕事に 意味づけ を行い 誇りを持って就業し続けられるよう 場合によってはプライベート面での充実を図ることを提案するなどします 悩んでいるときには 現在の職場の悪い面ばかりに目がいきがちです メリットについても目を向け 悔いのない意思決定ができるように支援することが重要です キャリア ミスト ( 将来に霧がかかって良く見えない状態 ) からどうしたら霧が晴れるのか アドバイスが出来れば理想的です 年配の方には 長所 短所と言うと若年者向けの印象があるかもしれません おそらく社内研修等で用いた SWOT 分析 をしてみましょう と言うとしっくりくるかもしれません 強み (Strengths) 弱み (Weaknesses) 機会 (Opportunities) 脅威 (Threats) (2) 質問例 今までされてきた仕事についてお聞かせください どのような役割 ( 責任 チーム ) でしたか? 仕事を通じて得られたものは何でしょうか? これからどのような仕事をしていきたいですか? 周囲からどのようなことを期待されていると思いますか? そのために足りない知識やスキルはありますか? これからのキャリアを考える際に不安なことはありますか? スーパー理論 スーパーは人間の職業活動は生涯発達し続けるとの考えを基に キャリアの生涯発達 を論じ ライフキャリアレインボー を提唱した キャリアを段階 ( ライフステージ ) と役割 ( ライフロール ) の 2 つの視点で捉え 段階を 1 成長期 2 探索期 3 確立期 4 維持期 5 衰退期 ( 解放期 ) に区分し 役割を 1 子供 2 学生 3 余暇人 4 市民 5 勤労者 6 配偶者 7 家庭保持者 8 親 9 年金受給者に区分した またライフキャリアレインボーは 個人は皆 生涯を通じて 役割や環境が変化するため 個人が様々な役割や環境に身を置くことを虹として視覚化した この役割と環境をどう組み合わせ 役割の変化から相談者のやり甲斐を見い出すことで 相談者の全生涯を通じたキャリア支援が効果的に行えるとしている シャイン理論 シャインは人間のキャリア開発には個人のニーズと併せ 組織のニーズと関係性も重視する キャリア サバイバル - 職務 役割の戦略的プランニング - を提唱した 仕事は日々 急激な変化を遂げ 複雑な人間関係の中で行われるものであることから 1 現在の職務と役割の棚卸し 2 環境の変化の識別 3 環境の変化が利害関係者の期待に与える影響を評価 4 職務と役割に対する影響を確認 5 職務要件の見直し 6 プランニング エクササイズの輪の拡張という 6 項目を考慮し 個人のニーズと組織のニーズの双方を尊重し マッチングしていくことが 職場で生き残り 個人のキャリア開発をするうえで重要だと唱えた 80
(3) 制度面での補足セルフ キャリアドック制度 訓練休暇等制度 技能検定合格報奨金制度などを会社に導入することで助成金が得られる場合があります 従業員の方自らが自己研鑽をされる場合 教育訓練受講に支払った費用の一部が支給される教育訓練給付制度を利用できる場合があります (4) 北海太郎さんへの具体的支援 中高年に見られがちなキャリア プラトー ( 停滞 ) を感じました 長く 1 社で務めあげ 出向 転籍で給与も下がりかなり落ち込んでいるようでした 様式 2 職務経歴シート を使って 過去を振り返る中で徐々に誇りを取り戻していきました 残された会社員生活を後輩の育成に捧げる いままで築き上げたネットワークを紹介する と意欲的になりました プライベートでもお子さんたちが社会に出られ 余裕も出来たそうなので 専門実践教育給付金を利用して経営大学院進学も視野に入れました 今までの経験をアカデミックに解析し 業界 後進の発展に寄与したいとのことです ただ年齢のこともありますので 健康面には十分配慮するようお願いしました 81
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2. 求職者 ( 就業経験がある方 ) (1) 支援のポイント 自ら望んだ離職か 会社都合等による離職かによって 相談者の感情は違います まずは相談者の気持ちに寄り添いながら キャリアの棚卸をする中で 就業に向けて客観的に優先順位をつけていきましょう 時間的に余裕がある場合は資格取得など ご自身の武器を作っていくことも自信につながります 就職活動は自分と言う商品を売るマーケティング活動でもあります 4C(Company, Client, Competitor, Channel) を自分自身 応募先 ライバル 労働市場ととらえ 調査分析を進めていくことが大切です (2) 質問例 今までされてきた仕事についてお聞かせください どのような役割 ( 責任 チーム ) でしたか? 仕事を通じて得られたものは何でしょうか? これからどのような仕事をしていきたいですか? そのために足りない知識やスキルはありますか? これからのキャリアを考える際に不安なことはありますか? シュロスバーグ理論 シュロスバーグは人生の中での人間関係 役割 生活などの変化を 転機 と捉え 転機をイベント (1 予期していたことが起きる 2 予期していなかったことが起きる ) とノンイベント ( 予期していたことが起こらない ) に分類した この人生の転機に対処するために 4 つのリソース 1 状況 (Situation 役割の変化や期間など )2 自己 (Self 対処能力 年齢 健康など )3 支援 (Support 支援者 公的 私的組織 団体サービスなど )4 戦略 (Strategies 行動 戦略の選択など ) の点検と強化を行い 転機に遭遇した相談者に最善の方策で支援できるとした (3) 東京平さんへの具体的支援 大学卒業後 非正規ばかりの仕事が続いたため かなり自己効力感が下がっていた 単調な仕事 誰にでも出来る仕事と仰っておられたが 様式 2 の作成過程で 丁寧にお話を聞いていくと 真面目な性格で コツコツと仕事をこなし どこでもリーダーシップを発揮されていた 40 歳を超えたことで年齢的なギャップ 特に体力面での不安を口にされていた すぐに現場マネジャーに就くのは難しいかもしれないが 職業訓練などでメンテナンス関係の資格を取得されるのもよいのではとアドバイスをした また 現在は実家にお住まいだが 将来的に両親の介護も予想されるとのことであったので 介護関係の資格取得の提案を行った キャリアコンサルティングを受けるのは初めてだったそうだが 将来への展望が開けたことでかなりホッとされていた 88
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3. 求職者 ( 就業経験がない方 ) 学生等 (1) 支援のポイント 社会人経験が少ないため どうしても近視眼的な思い込みでキャリアを決める傾向があります 自身の興味 能力 価値観 性格など自己理解を深め 同時に世の中にどのような職業があるのか仕事理解をしたうえで 職業選択をしていくことが望まれます 職場見学 インターンシップ等を通じて 思っていたことと違う というリアリティショックを最小限にする支援が望まれます 短大生や専門学生の場合 4 年制大学生へのコンプレックスがある場合もあります 選択したコースへの不安感があるかもしれません 丁寧に現在の状況を聴き 自信を持たせる支援が求められます (2) 質問例 学生時代に頑張ったことはどんなことでしょうか? どのような役割 ( 責任 チーム ) でしたか? 長所や短所をお聞かせください 経験を通じて得られたものは何でしょうか? これからどのような仕事をしていきたいですか? これからのキャリアを考える際に不安なことはありますか? ホランド理論 ホランドは 特定の職業環境にいる者は 類似した性格特性を持つ者が多い との経験法則から 同じ性格類型の人間が特定の職業環境を選ぶことが安定した職業選択 職業適応をもたらすという 職業選択理論 を確立した また性格を 1 現実的 2 研究的 3 芸術的 4 社会的 5 企業的 6 慣習的という 6 つのタイプに分類した 相談者の適職の発見 自己理解 仕事理解を深める支援をするうえで 効果的である シャイン理論 シャインは生涯を通してキャリアが組織内でどのように発達するかというキャリア サイクルを 1 成長 空想 探究 2 仕事世界へのエントリー 3 基本訓練 4 キャリア初期 5 キャリア中期 6 キャリア後期 ( 非指導者 )7 キャリア後期 ( 指導者 )8 衰え及び離脱の 8 つの段階に区分して提唱した また 個人がキャリアの選択をする際 放棄しない価値観 能力などをキャリア アンカーと名付け 1 専門能力 2 経営管理能力 3 保障 安定 4 起業家的創造性 5 自律 独立 6 奉仕 社会貢献 7 生活様式 8 挑戦の 8 つに分類し 提案した レヴィン理論 レヴィンは B=f(P.E) の概念式で 場の理論 を提唱した 人間の行動 (B behabior) は 個人の特性 (P personarity) と環境条件 (E environment) の両方の相互作用によって影響を受けることになる 社会の中での人間行動の背景に 環境による影響もあることをふまえ 相談者の環境 ( 労働条件 労働環境 心理的環境など ) を捉え 支援することが必要である (3) 制度面での補足 就業するにあたり知識やスキルが不足している場合 その習得のため職業訓練を受講することができる場合があります 95
(4) 大阪華子さんへの具体的支援ご両親から大手企業の一般事務に勤めるよう勧められていましたが 大学時代の興味を聞いていく中で スペイン語をなぜ専攻したのかをとても楽し気に話してくれました 様式 1-2 を書いていくうちに スペインへの短期語学留学や 駅での案内というインターンシップ アルバイトの輸入雑貨店での販売を通じて得ることがたくさんあったことを思い出されました 就職はご自身がするものと意識を変えられたようです ご両親との話し合いの中で 先輩訪問や企業研究を通してキャリアビジョンを決めていかれることと思います 96
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4. 訓練受講者 ( 訓練前 雇用型訓練 専門実践教育訓練等 ) (1) 支援のポイント 職業訓練を通じて自己のスキルを向上させたいという意欲は素晴らしいことですが 働いている自分像をイメージして訓練を選択しているかがポイントになります 自己理解 仕事理解とともに訓練への意欲が求められます 残念ながら途中で訓練を止めてしまう例もあり この場合訓練機関への影響もありますが 本人の自己効力感が下がることがその後のキャリア発達に不安を生じさせます (2) 質問例 今までされてきた仕事についてお聞かせください どのような役割 ( 責任 チーム ) でしたか? 仕事を通じて得られたものは何でしょうか? これからどのような仕事をしていきたいですか? そのために足りない知識やスキルはありますか? 職業訓練を続けるモチベーションは維持できそうですか? 訓練終了後の就業イメージについてお聞かせください これからのキャリアを考える際に不安なことはありますか? グラッサー理論 グラッサーは幸せな人間関係を築くために 自分の人生に責任を持って生きることを 選択理論 で提唱した 人間の行動は多くが選択され 生存 所属 力 自由 楽しみを満たすことが動機になる その選択基準は 1Right( 社会正義に反しないこと )2Reality( 現実的であること )3Responsibility( 自己責任と考えられること ) と唱えた (3) 制度面での補足 雇用型訓練には 有期契約労働者を対象に 正社員化を目指す 有期実習型訓練 15 歳以上 45 歳未満を対象に企業の中核人材の育成を目指す 実践型人材養成システム 直近 2 年以内に継続して新規雇用されたことがない 45 歳以上を対象にした 中高年齢者雇用型訓練 があります なお 学校等の卒業 修了予定者はジョブ カードの作成は必須ではありませんが 職業選択やキャリア形成の一環としてできる限りジョブ カードの作成やキャリアコンサルティングを行うことが望まれます 作成希望者には作成支援を行ってください また 専門実践教育訓練受講前にキャリアコンサルティングを実施する 訓練対応キャリアコンサルタント は 1 国家資格キャリアコンサルタントであること 2 専門実践教育訓練の実施機関に雇用されている者または当該機関の役員でないこと 3 訓練対応キャリアコンサルタントに係る研修を受けていること が必要です (4) 愛知洋二郎さんへの具体的支援 プログラミング 経営を 2 つの専門学校で学び 将来起業したいという目標にしっかりと向かっておられることを 確認し 支持をした ただ信念をしっかり持ってらっしゃるがゆえに 周りとの軋轢も懸念された チームで仕事をする中でコミュニケーションが重要なこと リーダーになったときのイメージなどを伝え 現在の課題も共有が出来た 中長期の目標が設定できているので スキルアップの職業訓練は大いに役立つのではないだろうか 102
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5. 訓練受講者 ( 訓練期間中 求職者支援訓練 委託型訓練等 ) (1) 支援のポイント 訓練の途中で止めてしまいたくなることはよくあることです 止めたくなった理由を丁寧に聴きながら 訓練当初の決意 訓練後の展望を確認していくことが大切です 自信がなくなってしまっている場合 バンデューラの自己効力感の強め方を参考になさってください 動機づけ がとても大切な時期です 主婦の方など 長く就労から遠ざかっている場合 面接での不安があることが多いです 面接練習の回数を増やすなどして一歩踏み出す勇気を持たせる支援が求められます (2) 質問例 職業訓練の状況はいかがでしょうか? 職業訓練を続けるモチベーションは維持できそうですか? 訓練終了後の就業イメージについてお聞かせください 採用面接などが不安な場合 面接練習をしましょうか? これからのキャリアを考える際に不安なことはありますか? バンデューラ理論 バンデューラは自己効力感 ( 自分が上手くやれそうだという期待感 自信 ) を提唱した 自己効力感を高める要因を 1 成功体験 ( 過去に成功した体験 )2 代理経験 ( 自分以外の上手くできている経験者をモデルとして見る )3 言語的説得 ( 周囲から能力があると言語的説得や励ましを受ける )4 情動的喚起 ( リラックスするなど生理的な状況をつくり喚起する ) の 4 つに区分した また 個人がある選択行動をするかどうかを規定する主な要因は 機会に遭遇するかどうかが重要である との機会遭遇理論を提唱した (3) 制度面での補足 求職者支援訓練 委託型訓練の場合は キャリアコンサルティングが 3 回以上必要 ( 訓練開始時 中間時点 修了間際 ) です すべての回でジョブ カードを作成する必要はありませんが 訓練の経過を受講者が理解する際には有効です 訓練期間が 3 か月に満たない場合は 月 1 回以上のキャリアコンサルティング実施となります (4) 福岡真実さんへの具体的支援 訓練受講開始時に思い描いた目標を再確認することで 訓練継続の意欲が増したように感じました 支援者としては 福岡さんが何に悩まれているのか 不安をしっかりと傾聴することが求められます 自分一人で抱え込まずに もっと周囲に相談をするようアドバイスを行いました 109
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訓練におけるジョブ カードの位置づけ一覧 ジョブ カードは 訓練場面において 作成が必須とされていることがあります 訓練受講前のキャリアコンサルティングの実施は 訓練受講者のキャリア プラン ( 職業生活設計 ) の整理 ひいては 訓練受講の必要性をより明確にする効果が 訓練受講中のキャリアコンサルティングは 訓練受講者の職業意識や訓練効果を向上させる効果が 訓練終了後のキャリアコンサルティングは 円滑な就職を促進する等の効果が期待できます 各訓練におけるジョブ カードの位置づけは 以下のとおりです 平成 29 年 9 月現在ジョブ カード作成訓練名訓練の概要訓練の対象者 ( 必須 / 任意 ) 雇用型訓練 ( 有期実習型訓練 ) 雇用型訓練 ( 実践型人材養成システム ) 訓練実施企業が訓練受講者と雇用契約を結び 企業実習と教育訓練機関等における座学とを組み合わせて実施する訓練 訓練実施企業が訓練受講者と雇用契約を結び 中核人材を育成するために企業実習と教育訓練機関等における座学とを組み合わせて実施する訓練 1 新たに雇い入れた有期契約労働者等 2 既に雇用している有期契約労働者等 15 歳以上 45 歳未満の方で 1 新たに雇い入れた正規雇用労働者 2 訓練開始日までに正社員に転換する既に雇用している有期契約労働者等 3 既に雇用している正規雇用労働者 ( 建設業又は製造業又は情報通信業の事業主が実施する場合に限る ) 1 訓練実施企業への求人応募前までに作成必須 ( ただし 学校等の卒業 修了予定者は任意 ) 2 訓練実施企業の訓練計画届提出前までに作成必須 1 訓練実施企業への求人応募前までに作成必須 ( ただし 学校等の卒業 修了予定者は任意 ) 2 3 訓練実施企業の大臣認定申請前までに作成必須 雇用型訓練 ( 中高年齢者雇用型訓練 ) 訓練実施企業が訓練受講者と雇用契約を結び 中高年齢者の人材育成等を図るために企業実習と教育訓練機関等における座学とを組み合わせて実施する訓練 45 歳以上の方であり かつ 直近 2 年間に継続して新規雇用されたことがない方で 1 新たに雇い入れた者 2 既に雇用している短時間等労働者 1 訓練実施企業への求人応募前までに作成必須 2 訓練受講前までに作成必須 公共職業訓練 ( 日本版デュアルシステム ) 公共職業能力開発施設や民間教育訓練機関等で実施する座学と企業実習を組み合わせて実施する訓練 実践的な職業能力の習得が必要な求職者 一部の訓練は年齢制限あり 訓練開始前までに作成必須 公共職業訓練 ( 日本版デュアルシステムを除く ) ハローワークの求職者等を対象に 再就職の実現にあたって実施する訓練 ハローワークの求職者等高等学校卒業者等 訓練期間中に作成必須 求職者支援訓練 雇用保険を受給できない求職者に対して実施する訓練 雇用保険が受給できない求職者であって 職業訓練その他就職支援を行う必要があるとハローワーク所長が認める者 訓練期間中に作成必須 専門実践教育訓練 業務独占資格 名称独占資格の取得を目標とする養成施設の講座 専門学校の職業実践専門課程の講座 専門職学位課程の講座 職業実践力育成プログラム (BP) の講座 一定レベル以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とする講座のうち 厚生労働大臣が指定する講座 一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者 ( 在職者 ) または一般被保険者であった方 ( 離職者 ) 専門実践教育訓練給付金の受給を希望する場合 訓練開始前までに作成必須 ( 訓練受講について雇用する事業主の承認を得た場合を除く ) 各訓練の内容や対象者の詳細については 都道府県労働局または最寄りのハローワークにお尋ねください 115
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