第 4 章保全に係る基準の設定 65
第 4 章保全に係る基準の設定 保全に係る基準の設定フロー 前章の老朽化状況の把握からの保全に係る基準の設定フローを以下に示します 老朽化状況の把握 1 躯体の健全性調査 2 躯体以外の劣化状況調査 残存耐用年数 躯体の健全性調査による残存耐用年数 構造別の目標耐用年数の設定 ( 長寿命化 ) 長寿命化によるライフサイクルコストの縮減 劣化状況等の集計 分析 評価 ( 建物各部の劣化 ) 経年による物理的劣化 保全に係る基準の設定 長寿命化を具体化するための整備レベル 維持管理レベル等の基準を検討 現行の基準の把握 現行の基準の把握今後の基準の設定 これまでの使用年数 長寿命化 修繕 改修サイクル 修繕 改修サイクル 見直し 整備レベル 整備レベル ( 現状の仕様 性能 ) 維持管理レベル 維持管理状況 ( これまでかけてきたコスト ) ( 修繕 改修内容 ) これまでの予算 ( 投資的経費 ) 整備レベル 整備レベル ( ライフサイクルコストの削減 ) ( 環境向上に資する仕様 性能 ) 維持管理レベル 維持管理状況 ( 計画的な維持 修繕 ) ( 施設を常に良い状況で使える ) 今後の予算 ( 投資的経費 ) 66
1 節目標耐用年数の設定 (1) 躯体の目標耐用年数の設定目標使用年数は 建築物の耐久計画に関する考え方 ( 日本建築学会 ) を参考とし 構造別に以下のように設定します ただし 鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造は 構造躯体の健全性の評価結果に基づき 80 年未満となる建物があります また 体育館や幼稚園等の鉄骨造の建物についても 災害時の避難場所として整備されていることから 実際は柱脚 仕口の状況を把握し 長寿命化の可能性を確認する必要がありますが 現時点では鉄筋コンクリート造の校舎と同様に 80 年の長寿命化が可能と想定します 木造等は小規模な建物のため 50 年で更新することとします [ 鉄筋コンクリート造 鉄骨鉄筋コンクリート造の目標使用年数 ] 80 年 [ 鉄骨造の目標使用年数 ] 80 年 [ 木造の目標使用年数 ] 50 年 表建築物全体の望ましい目標耐用年数の級 用途 構造種別 鉄筋コンクリート造鉄骨鉄筋コンクリート造 高品質の場合 普通の品質の場合 高品質の場合 重量鉄骨 鉄骨造 普通の品質の場合 軽量鉄骨 ブロック造れんが造 木造 学校 官庁 Y100 以上 Y100 以上 住宅 事務所 病院 Y100 以上 Y100 以上 店舗 旅館 ホテル Y100 以上 Y100 以上 工場 Y25 以上 Y25 以上 Y25 以上 Y25 以上 Y25 以上 出典 : 建築物の耐久計画に関する考え方 ( 日本建築学会 ) 表目標耐用年数の級の区分の例 級 目標耐用年数代表値範囲下限値 Y150 150 年 120 ~ 200 年 120 年 Y100 100 年 80 ~ 100 年 80 年 Y60 60 年 50 ~ 80 年 50 年 Y40 40 年 30 ~ 50 年 30 年 Y25 25 年 20 ~ 30 年 20 年 出典 : 建築物の耐久計画に関する考え方 ( 日本建築学会 ) 構造別の望ましい耐用年数 鉄筋コンクリート造 鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄骨造 木造 80 年 80 年 50 年 67
(2) 長寿命化の修繕 改修周期 これからは 建替えから長寿命化改修による建物の長寿命化に切り替え 部位改修を併用した整備を 行います 以下に長寿命化改修を実施した場合の修繕 改修周期を示します 長寿命化改修は行わず 劣化状況に応じた部位ごとの修繕 改修を行い 50 年程度で建て替える 従来 竣工 20 40 部位改修 ( 機能回復 ) 建替え 屋上防水 外壁改修 窓枠改修 内部トイレ改修 空調設置 耐震改修 体育館非構造部改修 等 中間年で大規模改修を行い 機能向上を図る 長寿命化のパターン 竣工 20 経年による機能 性能の劣化 機能回復 ( 中規模修繕 ) 40 60 機能向上 ( 大規模改修 ) 機能回復 ( 中規模修繕 ) 80 年 解体 参考 : 工事内容 築 20 年目中規模修繕 経年劣化による損耗 機能低下に対する機能回復工事 築 40 年目長寿命化模改修 経年劣化による機能回復工事と 社会的要求に対応するための機能向上工事 築 60 年目中規模修繕 経年劣化による損耗 機能低下に対する機能回復工事 屋上防水改修 外壁改修 内部トイレ改修 プール槽 ろ過設備 グラウンド不陸調整 等 防水改修 ( 断熱化 ) 外壁改修 開口部改修 内部改修 ( 床 壁 天井 ) 受変電設備改修 照明設備改修 通信 防災設備改修 給排水衛生設備改修 空調設備改修 プールろ過設備 グラウンド不陸調整等 屋上防水改修 外壁改修 受変電設備 給排水ポンプ交換 給湯設備 プールろ過設備等 68
2 節維持管理 整備レベルの設定 (1) 学校のこれまでの整備内容 大分市のこれまでの改修の取り組み状況を以下に示します 現在は 耐震改修が完了し 屋上 屋根 外壁 体育館の改修等を一定の建物数で改修を実施しています これまで 建物の長寿命化を目的とし た学校全体の仕上げや設備の改修は実施していません : 躯体改修 : 外部改修 : 内部改修 : 設備改修 1975 (S50) 1985 (S60) 1995 (H7) 外壁改修 2005 (H17) 多い時は 12 件 / 年 近年は 4 件 / 年実施 2015 (H27) 近年の実施状況 小 1 中 1 窓枠改修 1996 (H8) 校舎体育館 1986 (S61) 1990 (H2) ( 大規模改修 ) 年 2~3 件 / 年 平均 3 万円 / m2 1998 (H10) * エレヘ ーター改修は H26 261 件のみ 屋上防水 4~10 件 / 年 2003 (H15) 2003 (H15) 耐震改修 3 建物 / 年 内部 トイレ改修 ( トイレは縦管も ) H15 9 件 ( 最多 ) 2014 (H26) 体育館屋根改修 2005 (H17) 3 建物 / 年 2007 (H19) 空調設置図書室 音楽室 3 建物 / 年 2009 (H21) 21 建物 / 年 小 2 中 2 特別教室 ( 理 家 ) 小 2 中 2 トイレ小 2 中 2 体育館床塗装改修照明改修 2013 (H25) 体育館非構造耐震改修 2015 (H27) 体育館照明落下防止 69
(2) 長寿命化改修の整備レベルの設定 1 校舎 長寿命化において配慮すべき性能に対して 各部の整備レベルを設定し コストと関連付けて最適な仕様を設定します そうすることで 将来の社会的要求水準の高まりへの対応 建物の整備レベルの統一を図ります 校舎 省エネ型長寿命化改修 長寿命化改修 (40 年目 ) 現状の整備レヘ ル 部位 高 改修メニュー ( 整備レベル ) 低 屋根 屋上 外断熱保護防水 ( 断熱材 20mm) ( 既存撤去 ) 外断熱シート防水 ( 断熱材 25mm) ( 既存の上 ) シート防水塗膜防水 ( 断熱なし ) 外部仕上げ 外壁 外部開口部 内断熱 サッシ交換 ( カバー工法 ) ( 複層ガラス等 ) 外壁塗装 ( 防水型複層塗材 ) 断熱なし 既存サッシのガラス交換 ( 複層ガラス等 ) 外壁塗装 ( 複層薄塗材 ) その他外部 日射抑制措置 ( ライトシェルフまたは庇 ) 庇等を設置しない 手すり等の鉄部塗装 内部仕上げ 内部仕上げ ( 教室等 ) 便所 内装の全面撤去 更新 ( 木質化 ) 内装の全面撤去 更新ドライ化 節水型便器に交換 床補修壁 天井塗替え ( 部分改修 ) 床補修壁 天井塗替え 既存のまま 既存のまま 既存便器のまま 電気設備機械設備 受変電設備照明器具給水設備空調設備 自家発電設備 雨水 中水利用 受変電設備交換 ( 容量 UP) LED 照明に交換 ( 人感センサー 照度センサー付 ) 給水設備改修 ( 加圧給水方式に変更 ) パッケージ (GHP/EHP) 換気扇交換 蛍光灯照明 ( センサーなし ) 22 万円 / m2 長寿命化において実施する機能向上 学習環境の向上 生活環境の向上 多様な学習の場 トイレのト ライ化 ICT 等 木質化等 長寿命化において配慮すべき項目 17 万円 / m2 防災 防犯機能向上 自家発電 防犯監視等 環境性能向上 太陽光発電 高断熱高気密化 等 ユニバーサルデザイン ELV 点字フ ロック等 可変性更新性耐久性メンテナンス性省エネ 省資源 70
2 体育館体育館の屋根 外壁の改修は 既存の仕上げや劣化の状況より 葺き替えまたはカバー工法を選択します 利用面からは 災害時の避難所としての機能や 地域開放 市民との共用化等を考慮した整備が求められます 体育館 省エネ型長寿命化改修長寿命化改修現状の整備レヘ ル 部位 高 改修メニュー ( 整備レベル ) 低 屋根 屋上 ステンレス鋼板 ガルバリウム鋼板 スチール鋼板 RC 部 外壁塗装 ( 防水型複層塗材 ) 外壁塗装 ( 複層薄塗材 ) 外部仕上げ 外壁 鉄骨部 断熱 セメント系ボード葺替え 内断熱 外壁ボード塗装 ( 複層薄塗材 ) 断熱なし 外部開口部 サッシ交換 ( カバー工法 ) ( 複層ガラス等 ) 温度差換気 既存サッシのガラス交換 ( 複層ガラス等 ) その他外部 鉄部塗装 内部仕上げ 内部仕上げ 便所 内装の全面撤去 更新 ( 木質化 ) 内装の全面撤去 更新ドライ化 節水型便器に交換 床補修 ( 部分改修 ) 床補修壁 天井塗替え 既存のまま 既存のまま 既存便器のまま 電気機械設備 照明器具 給水設備 シャワールーム 雨水 中水利用 LED 照明に交換 衛生器具 配管交換 照明交換 衛生器具交換 空調設備 冷暖房 空調設備なし 24 万円 / m2 長寿命化において実施する機能向上 避難所としての機能充実 生活環境の向上 冷暖房設備 自然採光 通風 自家発電等 木質化等 長寿命化において配慮すべき項目 18 万円 / m2 市民との共用化 開放 更衣室 シャワー室 等 環境性能向上 太陽光発電 高断熱高気密化 等 ユニバーサルデザイン みんなのトイレ スロープ等 可変性更新性耐久性メンテナンス性省エネ 省資源 71
③ 校舎の整備レベルの向上とLCC 従来型整備の 従来型整備の 50 50 年建替え と 今回設定した省エネ型改修と長寿命化改修の 80 年間のL CCコストを比較すると 従来型より両案ともメリットが出てきます また このシミュレーシ ョンでは 学校は元々エネルギー使用量が少ないため 省エネ型改修は整備コストに見合わない 状況となっています 72
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3 維持管理 維持管理レベルの設定 レベルの設定 ① 現状の維持管理状況 維持管理レベルの 維持管理レベルの現状と 現状と見直しとして各部の修繕 改修周期と実施内容を以下に示します 施設の長 見直しとして各部の修繕 改修周期と実施内容を以下に示します 施設の長 寿命化を図るためには 耐用年数の中間年で実施する長寿命化改修に加え 中規模改修を実施し 経常 寿命化を図るためには 耐用年数の中間年で実施する長寿命化改修に加え 中規模改修を実施し 経常 修繕費で緊急修繕 機能回復に対応する事で 建物を常に良い状態で使用する事が可能となります 74
② 維持管理の見直し 40 年目の長寿命化改修と 年目の長寿命化改修と 20 20 60 年目の中規模改修を計画的に実施し 途中で劣化の著しい 部位が発生した場合等の修繕は 状況に応じて対応する事で 常に建物を良い状態に保って使い続 けることが可能となります 75
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