第 4 章保全に係る基準の設定 保全に係る基準の設定フロー 前章の老朽化状況の把握からの保全に係る基準の設定フローを以下に示します 老朽化状況の把握 1 躯体の健全性調査 2 躯体以外の劣化状況調査 残存耐用年数 躯体の健全性調査による残存耐用年数 構造別の目標耐用年数の設定 ( 長寿命化 ) 長寿

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2 目標使用年数目標使用年数は 建築物の耐久計画に関する考え方 ( 日本建築学会 ) を参考とし 構造別に以下のように設定します ただし 鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造は 構造躯体の健全性の評価結果に基づき 80 年未満となる建物があります また 体育館等の鉄骨造の建物についても 災害

構造 用途 鉄筋コンクリート造鉄骨 鉄筋コンクリート造 高品質の場合 普通の品質の場合 高品質の場合 重量鉄骨 鉄骨造 普通の品質の場合 軽量鉄骨 ブロック造れんが造 木造 学校庁舎 Y 100 以上 Y 60 以上 Y 100 以上 Y 60 以上 Y 40 以上 Y 60 以上 Y 60 以上

(3) 中規模改修工事費 建設年代別にm2単価を設定する 大規模改修後及び改築後は 水準別にm2単価を設定し 冷房設備ありの場合は別途m2単価を設定して加算する 表 中規模改修工事費 大規模改修前 大規模改修後 改築後 中規模改修建設年代改築後改築後大規模改修後円 / m2従来改築一般施

保全の基本方針

青文字は、長谷川が修正したものです

イ使用年数基準で更新する施設 ( ア ) 使用年数基準の設定使用年数基準で更新する施設については 将来の更新需要を把握するためにも 更新するまでの使用年数を定める必要がありますが 現時点では 施設の寿命に関する技術的な知見がないことから 独自に設定する必要があります このため あらかじめ施設を 耐久


第 1 公共施設の保全 1. 公共施設の現状と課題 1 2. 公共施設の実態把握 1 (1) 対象施設 (2) 調査項目 (3) 評価基準 (4) 施設調査カルテ 第 2 公共施設の長寿命化 3 1. 目標耐用年数の設定 3 (1) 更新時期 (2) 耐用年数 (3) 目標耐用年数 2. 維持管理

改訂履歴施行年月日 改訂理由 内容 平成 25 年 10 月 22 日 制定 平成 27 年 5 月 29 日 一部改正 第 1 項 2 項 3 項及び4 項に空調施設の整備に関 する内容を追加

福岡県立ももち文化センター 個別施設計画 平成 30 年 5 月 施設類型 県民向け施設 整理番号 20 施設所管課 文化振興課

1 個別施設計画の基本的な考え方本計画は 公共施設等総合管理計画の内容を基本とし 同計画に示す類型のうち中分類を基本に現状の施設管理者を勘案して個別に策定した 計画の基本的考え方として 個別具体の方向性を示し 原則 長寿命化を推進し 鉄筋コンクリート造の建築物は目標供用年数を 80 年とし 長寿命化

第 3 回検討会でご意見を頂いた内容に対する対応方針 ( 案 ) 中長期保全計画の策定において 更新 修繕 といった言葉の使い分けは明確にすべき その際 部位による使い分けや ライフサイクルコストの視点を踏まえた 更新 修繕 のレベル設定にも留意すること 建物を 使える 状態に維持するという観点から

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3-1 2 修繕工事の実態 ( ヒアリング ) 計画修繕は 定期点検等で明らかになった建物の劣化の補修のため 調査 診断 修繕計画の作成 工事の実施へと 区分所有者の合意を形成しつつ 進められる 当勉強会で実施したヒアリングより 管理会社による点検 定期点検は 1 回 / 年の頻度で行っている 目視

第3章 長寿命化改修と併せて検討したいこと

施工技術者認定制度

第 4 章公共施設の老朽化状況の把握 建築物の老朽化状況については 1 躯体の健全性把握調査と 2 躯体以外の劣化状況把握 調査の 2 つの調査を実施し 実態を把握の上 評価しました 1 公共施設の保有状況公共施設の保有状況 築年別用途別規模別築年別用途別規模別 躯体の健全性の把握 3

<4D F736F F F696E74202D F955D89BF8AEE8F AEE8F CC8A F E B835794D48D8693FC82E8816A2E >

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【配布資料】

環境・設備からみたLCCM住宅へのアプローチ

参考資料1 地方公共団体における長寿命化改修の取組事例

美里町学校施設長寿命化計画 ( 案 ) 検討資料編 平成 30 年 月 美里町教育委員会

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長寿命住宅(200年住宅)税制の創設 (登録免許税・不動産取得税・固定資産税)

目次 1 目的と定義 2 2 鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造における残存使用年数の目安の算定方法 3 (1) 新耐震基準の施設 3 (2) 旧耐震基準の施設 3 ア過去の耐震診断結果を活用した判断 4 ( ア ) 残存耐用年数の目安の算定 4 ( イ ) 目標使用年数の設定 4 ( ウ

真空ガラス スペーシア のご紹介 一般に使用されている一枚ガラスの約 4 倍の断熱効果を発揮!! お部屋全体を快適にします オフィスやパブリックスペースの環境は 冷房や暖房に常に取付専用グレチャン気を配らなければなりません 高断熱 Low-Eガラスしかし一方で経営者の方々にとっては節電対策も重要な項

耐震等級 ( 構造躯体の倒壊等防止 ) について 改正の方向性を検討する 現在の評価方法基準では 1 仕様規定 2 構造計算 3 耐震診断のいずれの基準にも適合することを要件としていること また現況や図書による仕様確認が難しいことから 評価が難しい場合が多い なお 評価方法基準には上記のほか 耐震等

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【HP公表 最終版の公表前確認修正有り】 北陸取組み(個票)

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60 年超土地長期優良住宅の認定制度 長期優良住宅の認定制度 長期優良住宅の普及の促進に関する法律 (H21.6 施行 ) に基づく長期優良住宅に係る認定制度の創設 長期優良住宅の建築 維持保全に関する計画を所管行政庁が認定 認定住宅は 税制 融資の優遇措置や補助制度の適用が可能 認定基準 <1>

目次 ( )

また ユーザーの意識向上 光熱水費の節減を図るため 光熱水使用量をエリア毎に見える化し 建物単位毎に計量可能な計画とする ( 各設備の計画 ) 6. 電気設備 1) 電力設備 1 特高受変電設備 : 最大電力の増大に伴い用途の異なるに特別高圧受変電設備を新設し 波及事故範囲の分散及び電源供給の信頼性

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給水管 給湯管又は排水管の維持管理又は更新の容易性を高める工事 木造 鉄骨 RC イ 給水管又は給湯管を維持管理上有効な位置に取り替える工事 ロ 排水管を維持管理上又は更新上有効なもの及び位置に取り替える工事 ハ 給水管 給湯管又は排水管の主要接合部等を点検し又は排水管を清掃するための開 口を床 壁

スライド 1

資料 5 公共施設更新コスト試算 1 試算ケース ケース1: 旧耐震基準のうち 築 60 年以上は建替え それ以外は大規模改修 新耐震基準は老朽箇所修繕 耐用年数を 60 年と想定した場合 旧耐震基準の施設のうち 築 60 年以上の施設は 築 60 年が経過した施設から建替える 建替え対象以外の旧耐

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見直し後11 基準相当1.64GJ/ m2年hh11 基準相当見直しH11 基準と見直し後の省エネ基準の比較について 住宅 建築物判断基準小委員会及び省エネルギー判断基準等小委員会平成 24 年 8 月 31 日第 2 回合同会議資料 1-1 より抜粋 設備機器の性能向上により 15~25% 程度省

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24 7 団地の修繕 改良UR 都市機構では 主に昭和 40 年代から 50 年代前半に管理開始した賃貸住宅について 居住水準の向上に資することを目的として お住まいの方からのお申し込みに基づき 浴室 設備の改良 ( シャワー付ふろがま 大型浴槽 ( シャワー付 ) の設置 ) を行っています なお

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橋 梁 長 寿 命 化 修 繕 計 画

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間にその者の居住の用に供したときに 一定の要件の下で そのバリアフリー改修工事等にあてるために借り入れた住宅借入金等の年末残高 (1,000 万円を限度 ) の一定割合を5 年間所得税の額から控除できます なお 53ページの増改築に係る住宅ローン控除制度との選択適用になります 1 控除期間 5 年間

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6.2.2 断熱省エネルギーと快適な居住環境の実現のためには 断熱性能の向上が重要となる 断熱性能は戸建住宅に準じて 各地域区分における次世代省エネ基準の等級 4を標準とし できればひとつ上の地域レベルを目指したい 断熱は切れ目 ( 断熱断点 ) をつくらないことが原則だが やむを得ず断熱断点が生ず

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第 4 章保全に係る基準の設定 65

第 4 章保全に係る基準の設定 保全に係る基準の設定フロー 前章の老朽化状況の把握からの保全に係る基準の設定フローを以下に示します 老朽化状況の把握 1 躯体の健全性調査 2 躯体以外の劣化状況調査 残存耐用年数 躯体の健全性調査による残存耐用年数 構造別の目標耐用年数の設定 ( 長寿命化 ) 長寿命化によるライフサイクルコストの縮減 劣化状況等の集計 分析 評価 ( 建物各部の劣化 ) 経年による物理的劣化 保全に係る基準の設定 長寿命化を具体化するための整備レベル 維持管理レベル等の基準を検討 現行の基準の把握 現行の基準の把握今後の基準の設定 これまでの使用年数 長寿命化 修繕 改修サイクル 修繕 改修サイクル 見直し 整備レベル 整備レベル ( 現状の仕様 性能 ) 維持管理レベル 維持管理状況 ( これまでかけてきたコスト ) ( 修繕 改修内容 ) これまでの予算 ( 投資的経費 ) 整備レベル 整備レベル ( ライフサイクルコストの削減 ) ( 環境向上に資する仕様 性能 ) 維持管理レベル 維持管理状況 ( 計画的な維持 修繕 ) ( 施設を常に良い状況で使える ) 今後の予算 ( 投資的経費 ) 66

1 節目標耐用年数の設定 (1) 躯体の目標耐用年数の設定目標使用年数は 建築物の耐久計画に関する考え方 ( 日本建築学会 ) を参考とし 構造別に以下のように設定します ただし 鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造は 構造躯体の健全性の評価結果に基づき 80 年未満となる建物があります また 体育館や幼稚園等の鉄骨造の建物についても 災害時の避難場所として整備されていることから 実際は柱脚 仕口の状況を把握し 長寿命化の可能性を確認する必要がありますが 現時点では鉄筋コンクリート造の校舎と同様に 80 年の長寿命化が可能と想定します 木造等は小規模な建物のため 50 年で更新することとします [ 鉄筋コンクリート造 鉄骨鉄筋コンクリート造の目標使用年数 ] 80 年 [ 鉄骨造の目標使用年数 ] 80 年 [ 木造の目標使用年数 ] 50 年 表建築物全体の望ましい目標耐用年数の級 用途 構造種別 鉄筋コンクリート造鉄骨鉄筋コンクリート造 高品質の場合 普通の品質の場合 高品質の場合 重量鉄骨 鉄骨造 普通の品質の場合 軽量鉄骨 ブロック造れんが造 木造 学校 官庁 Y100 以上 Y100 以上 住宅 事務所 病院 Y100 以上 Y100 以上 店舗 旅館 ホテル Y100 以上 Y100 以上 工場 Y25 以上 Y25 以上 Y25 以上 Y25 以上 Y25 以上 出典 : 建築物の耐久計画に関する考え方 ( 日本建築学会 ) 表目標耐用年数の級の区分の例 級 目標耐用年数代表値範囲下限値 Y150 150 年 120 ~ 200 年 120 年 Y100 100 年 80 ~ 100 年 80 年 Y60 60 年 50 ~ 80 年 50 年 Y40 40 年 30 ~ 50 年 30 年 Y25 25 年 20 ~ 30 年 20 年 出典 : 建築物の耐久計画に関する考え方 ( 日本建築学会 ) 構造別の望ましい耐用年数 鉄筋コンクリート造 鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄骨造 木造 80 年 80 年 50 年 67

(2) 長寿命化の修繕 改修周期 これからは 建替えから長寿命化改修による建物の長寿命化に切り替え 部位改修を併用した整備を 行います 以下に長寿命化改修を実施した場合の修繕 改修周期を示します 長寿命化改修は行わず 劣化状況に応じた部位ごとの修繕 改修を行い 50 年程度で建て替える 従来 竣工 20 40 部位改修 ( 機能回復 ) 建替え 屋上防水 外壁改修 窓枠改修 内部トイレ改修 空調設置 耐震改修 体育館非構造部改修 等 中間年で大規模改修を行い 機能向上を図る 長寿命化のパターン 竣工 20 経年による機能 性能の劣化 機能回復 ( 中規模修繕 ) 40 60 機能向上 ( 大規模改修 ) 機能回復 ( 中規模修繕 ) 80 年 解体 参考 : 工事内容 築 20 年目中規模修繕 経年劣化による損耗 機能低下に対する機能回復工事 築 40 年目長寿命化模改修 経年劣化による機能回復工事と 社会的要求に対応するための機能向上工事 築 60 年目中規模修繕 経年劣化による損耗 機能低下に対する機能回復工事 屋上防水改修 外壁改修 内部トイレ改修 プール槽 ろ過設備 グラウンド不陸調整 等 防水改修 ( 断熱化 ) 外壁改修 開口部改修 内部改修 ( 床 壁 天井 ) 受変電設備改修 照明設備改修 通信 防災設備改修 給排水衛生設備改修 空調設備改修 プールろ過設備 グラウンド不陸調整等 屋上防水改修 外壁改修 受変電設備 給排水ポンプ交換 給湯設備 プールろ過設備等 68

2 節維持管理 整備レベルの設定 (1) 学校のこれまでの整備内容 大分市のこれまでの改修の取り組み状況を以下に示します 現在は 耐震改修が完了し 屋上 屋根 外壁 体育館の改修等を一定の建物数で改修を実施しています これまで 建物の長寿命化を目的とし た学校全体の仕上げや設備の改修は実施していません : 躯体改修 : 外部改修 : 内部改修 : 設備改修 1975 (S50) 1985 (S60) 1995 (H7) 外壁改修 2005 (H17) 多い時は 12 件 / 年 近年は 4 件 / 年実施 2015 (H27) 近年の実施状況 小 1 中 1 窓枠改修 1996 (H8) 校舎体育館 1986 (S61) 1990 (H2) ( 大規模改修 ) 年 2~3 件 / 年 平均 3 万円 / m2 1998 (H10) * エレヘ ーター改修は H26 261 件のみ 屋上防水 4~10 件 / 年 2003 (H15) 2003 (H15) 耐震改修 3 建物 / 年 内部 トイレ改修 ( トイレは縦管も ) H15 9 件 ( 最多 ) 2014 (H26) 体育館屋根改修 2005 (H17) 3 建物 / 年 2007 (H19) 空調設置図書室 音楽室 3 建物 / 年 2009 (H21) 21 建物 / 年 小 2 中 2 特別教室 ( 理 家 ) 小 2 中 2 トイレ小 2 中 2 体育館床塗装改修照明改修 2013 (H25) 体育館非構造耐震改修 2015 (H27) 体育館照明落下防止 69

(2) 長寿命化改修の整備レベルの設定 1 校舎 長寿命化において配慮すべき性能に対して 各部の整備レベルを設定し コストと関連付けて最適な仕様を設定します そうすることで 将来の社会的要求水準の高まりへの対応 建物の整備レベルの統一を図ります 校舎 省エネ型長寿命化改修 長寿命化改修 (40 年目 ) 現状の整備レヘ ル 部位 高 改修メニュー ( 整備レベル ) 低 屋根 屋上 外断熱保護防水 ( 断熱材 20mm) ( 既存撤去 ) 外断熱シート防水 ( 断熱材 25mm) ( 既存の上 ) シート防水塗膜防水 ( 断熱なし ) 外部仕上げ 外壁 外部開口部 内断熱 サッシ交換 ( カバー工法 ) ( 複層ガラス等 ) 外壁塗装 ( 防水型複層塗材 ) 断熱なし 既存サッシのガラス交換 ( 複層ガラス等 ) 外壁塗装 ( 複層薄塗材 ) その他外部 日射抑制措置 ( ライトシェルフまたは庇 ) 庇等を設置しない 手すり等の鉄部塗装 内部仕上げ 内部仕上げ ( 教室等 ) 便所 内装の全面撤去 更新 ( 木質化 ) 内装の全面撤去 更新ドライ化 節水型便器に交換 床補修壁 天井塗替え ( 部分改修 ) 床補修壁 天井塗替え 既存のまま 既存のまま 既存便器のまま 電気設備機械設備 受変電設備照明器具給水設備空調設備 自家発電設備 雨水 中水利用 受変電設備交換 ( 容量 UP) LED 照明に交換 ( 人感センサー 照度センサー付 ) 給水設備改修 ( 加圧給水方式に変更 ) パッケージ (GHP/EHP) 換気扇交換 蛍光灯照明 ( センサーなし ) 22 万円 / m2 長寿命化において実施する機能向上 学習環境の向上 生活環境の向上 多様な学習の場 トイレのト ライ化 ICT 等 木質化等 長寿命化において配慮すべき項目 17 万円 / m2 防災 防犯機能向上 自家発電 防犯監視等 環境性能向上 太陽光発電 高断熱高気密化 等 ユニバーサルデザイン ELV 点字フ ロック等 可変性更新性耐久性メンテナンス性省エネ 省資源 70

2 体育館体育館の屋根 外壁の改修は 既存の仕上げや劣化の状況より 葺き替えまたはカバー工法を選択します 利用面からは 災害時の避難所としての機能や 地域開放 市民との共用化等を考慮した整備が求められます 体育館 省エネ型長寿命化改修長寿命化改修現状の整備レヘ ル 部位 高 改修メニュー ( 整備レベル ) 低 屋根 屋上 ステンレス鋼板 ガルバリウム鋼板 スチール鋼板 RC 部 外壁塗装 ( 防水型複層塗材 ) 外壁塗装 ( 複層薄塗材 ) 外部仕上げ 外壁 鉄骨部 断熱 セメント系ボード葺替え 内断熱 外壁ボード塗装 ( 複層薄塗材 ) 断熱なし 外部開口部 サッシ交換 ( カバー工法 ) ( 複層ガラス等 ) 温度差換気 既存サッシのガラス交換 ( 複層ガラス等 ) その他外部 鉄部塗装 内部仕上げ 内部仕上げ 便所 内装の全面撤去 更新 ( 木質化 ) 内装の全面撤去 更新ドライ化 節水型便器に交換 床補修 ( 部分改修 ) 床補修壁 天井塗替え 既存のまま 既存のまま 既存便器のまま 電気機械設備 照明器具 給水設備 シャワールーム 雨水 中水利用 LED 照明に交換 衛生器具 配管交換 照明交換 衛生器具交換 空調設備 冷暖房 空調設備なし 24 万円 / m2 長寿命化において実施する機能向上 避難所としての機能充実 生活環境の向上 冷暖房設備 自然採光 通風 自家発電等 木質化等 長寿命化において配慮すべき項目 18 万円 / m2 市民との共用化 開放 更衣室 シャワー室 等 環境性能向上 太陽光発電 高断熱高気密化 等 ユニバーサルデザイン みんなのトイレ スロープ等 可変性更新性耐久性メンテナンス性省エネ 省資源 71

③ 校舎の整備レベルの向上とLCC 従来型整備の 従来型整備の 50 50 年建替え と 今回設定した省エネ型改修と長寿命化改修の 80 年間のL CCコストを比較すると 従来型より両案ともメリットが出てきます また このシミュレーシ ョンでは 学校は元々エネルギー使用量が少ないため 省エネ型改修は整備コストに見合わない 状況となっています 72

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3 維持管理 維持管理レベルの設定 レベルの設定 ① 現状の維持管理状況 維持管理レベルの 維持管理レベルの現状と 現状と見直しとして各部の修繕 改修周期と実施内容を以下に示します 施設の長 見直しとして各部の修繕 改修周期と実施内容を以下に示します 施設の長 寿命化を図るためには 耐用年数の中間年で実施する長寿命化改修に加え 中規模改修を実施し 経常 寿命化を図るためには 耐用年数の中間年で実施する長寿命化改修に加え 中規模改修を実施し 経常 修繕費で緊急修繕 機能回復に対応する事で 建物を常に良い状態で使用する事が可能となります 74

② 維持管理の見直し 40 年目の長寿命化改修と 年目の長寿命化改修と 20 20 60 年目の中規模改修を計画的に実施し 途中で劣化の著しい 部位が発生した場合等の修繕は 状況に応じて対応する事で 常に建物を良い状態に保って使い続 けることが可能となります 75

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