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経済見通し

現代資本主義論

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中国 資金流出入の現状と当局による対応

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中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか

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経済学でわかる金融・証券市場の話③

国際与信は再び中国へ向かう


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ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

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経済変動論 0

平成23年11月1日

Microsoft Word ECB利下げ.doc

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ピクテ・インカム・コレクション・ファンド(毎月分配型)

エコノミスト便り【欧州経済】ユーロ圏はどのように財政を再建したか

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

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第1章

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

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2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

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エコノミスト便り

企業活動のグローバル化に伴う外貨調達手段の多様化に係る課題

Microsoft PowerPoint - Pictet_Market_Flash_ (直近の下落).pptx

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サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

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おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

【42】今日から使える「債券・金利」_1704.indd

Microsoft Word - intl_finance_09_lecturenote

先進国、新興国向けともに国際与信は増加

為替:マーケット・フォーカス

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(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

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2013 年 8 月 19 日号

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< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

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Microsoft Word - 20年度資産運用状況.doc

平成11年度決算:計数資料

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

Microsoft PowerPoint - CSIS 【三井住友銀行】 FOMC後のスペシャルレポート(USHY).pptx

日本の低金利の状況が続く中 外貨の好金利で運用し 当面の間 なるべく ふやす 外貨への関心が高まっているのをご存知ですか そして将来は たくわえた資産を 実は 家計における外貨資産は20年で約4倍に増加しています 商商商商品品品品パパパパンンンンフフフフレレレレッッッットトトト 詳細は P.25-2

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ブラジル中国インド インドネシア ロシア 図表 新興国の消費者物価上昇率 ( 単位 :%)( 資料 :IMF 世界経済見通し ) 通常であれば 成長率が低下すれば 国内の需給バランスが緩和し むしろ物価は低下するのが自然である しかし 中国以外の カ国は逆に物価上

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

重要な注意事項

中国におけるインフレの行方 中国経済は減速しているものの 過熱の解消にはまだ至っていない 年 9 月のリーマン ショックを受けて 中国は輸出が大幅に落ち込み 景気後退を余儀なくされたが 兆元に上る内需拡大策や 金利と預金準備率の大幅な引き下げをはじめとする拡張的財政 金融政策が実施されたことを受けて

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【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

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実際 ドル円相場と日米金利差の推移をみると概ね相関していると言え その相関係数は振れを伴いながらもとりわけ高い相関を示している時期もあることが確認できる ( 前頁図表 1 2) 一方 最近みられる傾向として注目されるのがドル円相場と日本株の相関の高さである 2. ドル円相場と日本株の関係 (1) 高

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

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各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

目 次 1. 平成 27 年度 ( 平成 27 年 4 月 ~ 平成 28 年 3 月 ) における運用環境について 2. 平成 27 年度 ( 平成 27 年 4 月 ~ 平成 28 年 3 月 ) のポートフォリオ別の運用状況 3. ベンチマーク インデックスの推移 ( 参考 ) 被保険者ポート

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2012 年 10 月 15 日号

中国の不動産市場 158

28 GCC UAE GCC (2) 大きく上昇した食料価格と住居費 GCC GCC GCC 図表 2 湾岸協力会議 (GCC) 諸国の消費者物価上昇率 (28 年 ) 図表 3 湾岸協力会議 (GCC) 諸国の消費者物価指数に占める食料品と住居費の割合

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Microsoft Word - 21年度資産運用概況.doc

リンギ安進むマレーシア~原油安による経済への影響~

グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

短期均衡(2) IS-LMモデル

ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

平成30年度第1四半期における運用状況等

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第 79 回 2017 年 5 月投資家アンケート調査結果 アンケート調査にご協力下さりました皆様 今年 5 月に実施致しましたアンケート調査にご回答下さり誠にありがとうございます このたび調査結果をまとめましたのでお送りさせていただきます ご笑覧賜れましたら幸 いです 今後もアンケート調査にご協力

【11】ゼロからわかる『債券・金利』_1704.indd

野村資本市場研究所|タイの為替・資本取引規制を巡る最近の動き(PDF)

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ファンドマネージャーのコメント 現時点での投資判断を示したものであり 将来の市況環境の変動等を保証するものではありません < 投資環境 > 第 5 期の米国債券市場では 国債や社債の金利が上昇 ( 債券価格は下落 ) しました 期首より 追加利上げの可能性の高まりや税制改革法の成立などを背景に 金利

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

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MONEX 個人投資家サーベイ 2018年3月調査

Transcription:

三井住友信託銀行調査月報 213 年 7 月号 ASEAN 各国の海外資金流出への耐性 < 要旨 > 米国における債券購入措置 (QE3) の規模縮小観測の高まりを受け これまで資金流入が進んできた ASEAN 各国では一転して資金流出による国内経済への影響が懸念されている もっともアジア通貨危機の震源地となったや 現在景気下振れリスクが懸念されるでは 過去に比べて1 海外からの短期与信依存度の低下と 2 為替リスクを回避できる現地通貨建て与信比率の上昇が観察されている これにより 外国銀行から外貨で短期資金を借り入れ 地場企業に現地通貨で長期資金を貸出すという 満期と通貨のダブルミスマッチ により国内信用収縮に見舞われるリスクへの耐性は以前よりも高まっている ただし 近年の金融市場の発展により国債の海外投資家保有割合は上昇しており 急激な資金流出による国債価格急落が格下げリスクを高めることや 海外長期金利の上昇が国内に伝播しやすくなるなどグローバル化に伴う金融変動に注意する必要がある 1. 高まる米国 QE3 縮小による資金流出懸念 ここにきて米国の債券購入措置 (QE3) に対する規模縮小観測が高まっている バーナンキ米連邦準備理事会 (FRB) 議長は 5 月 22 日の議会証言後の議員との質疑応答において 資産購入の縮小検討もありうる と発言 さらに 6 月 19 日には年内開始の可能性にも言及している この発言を機に リーマンショック後の世界的な金融緩和の中で資金流入が進んできた ASEAN 各国では一転して自国通貨安が進んでおり 資金流出による国内経済への影響が懸念され始めている ( 図表 1) 中でも懸念されるのは 経常赤字国であるで 既に 211 年半ばから自国通貨安が続いており 6 月に輸入物価上昇の緩和を目的に利上げも実施されている 今後もガソリンへの燃料補助金削減で更なるインフレ圧力上昇が見込まれており この状況下での QE 縮小は資金流出リスクのみならず 自国通貨安圧力を緩和するための利上げを通じて 同国経済への悪影響が大きくなる恐れもある 11 (211 年 1 月 =1) 図表 1 対ドル為替レート (ASEAN 各国 ) 自国通貨高 フィリピン 15 1 95 マレーシア 9 211 年 212 年 ( 資料 )CEIC より三井住友信託銀行調査部作成 213 年 ( 月次 ) 1

三井住友信託銀行調査月報 213 年 7 月号 本稿では QE 縮小観測が高まった 5 月以降 自国通貨安に転じてきた ASEAN 各国の中でもアジア通貨危機の震源地となり急激な資本流出に見舞われたと 景気下振れリスクの高いの 2 国に着目し 米国 QE 縮小による資金流出が金融システムを通じて両国に与える影響についてみてみた 2. 資金流出による影響度合い BIS 国際与信統計では外国銀行による各国への与信残高の推移が確認できる これをみるとと両国では 199 年代半ばまで高成長への期待から大量の資金が流入していたことがわかる しかし 1997 年に発生したアジア通貨危機を境に両国は急激な資金流出に見舞われ 海外からの与信残高は大幅に減少した ( 図表 2) 14 12 1 8 6 4 2 ( 億ドル ) 図表 2 海外からの与信残高 1985 199 1995 2 25 21 ( 資料 )BISより三井住友信託銀行調査部作成 この時に事態悪化に拍車をかけた要因として 満期と通貨のダブルミスマッチ の存在が挙げられる アジア通貨危機以前のやでは 地場銀行が外国銀行から短期資金を借り入れ 地場企業に長期で貸し出す 満期のミスマッチ が生じていた この最中 アジア通貨危機により外国銀行が短期資金を一斉に引き上げたため 地場銀行はたちまち流動性不足に陥ることとなった またこれら外国銀行からの短期資金の大半は外貨建てであった一方 貸出は現地通貨建てという 通貨のミスマッチ も抱えていた このため固定相場制の維持が難しくなり自国通貨が暴落したことで 自国通貨建ての借入額が大きく膨らみ事態をさらに悪化させることになった アジア通貨危機以降 減少に転じていた海外からの与信残高は 2 年代半ばからの世界景気の拡大で再び増加基調を取り戻す 28 年のリーマンショックによる影響も限定的であり その後の世界的な金融緩和によって資金流入はさらに加速することとなった 結果として海外からの与信残高は足元でアジア通貨危機前のピーク時 1996-97 年頃を上回る規模にまで拡大している 2

三井住友信託銀行調査月報 213 年 7 月号 しかしながら海外からの与信残高自体は増えているものの 経済規模との比較でみれば影響度は低下している 図表 3 はと両国の海外からの与信残高を対名目 GDP 比で見たものである これをみるとでは棒グラフの高さがアジア通貨危機時の 4-5% 台から 足元の 3% 前後にまで低下している も同様に足元 1% 台にまで下がっており 海外資金の流出が両国経済に与える影響が弱まっていることが確認できる 図表 3 海外からの与信残高の内訳 ( 対名目 GDP 比 ) ( ) ( ) 6 5 4 3 2 ( 対名目 GDP 比率 %) 現地通貨建て与信 外貨建て与信 現地通貨建て与信比率 ( 右目盛 ) 7 6 5 4 3 2 6 5 4 3 2 ( 対名目 GDP 比率 %) 現地通貨建て与信 外貨建て与信 現地通貨建て与信比率 ( 右目盛 ) 7 6 5 4 3 2 1 1 1 1 1985 199 1995 2 25 21 1985 199 1995 2 25 21 次にアジア通貨危機で事態を悪化させた 満期と通貨のダブルミスマッチ の問題が足元の 両国にどの程度残っているかについて見てみる まず通貨のミスマッチについて海外からの与信残高を示す棒グラフの内訳をみると アジア通貨危機までは外貨建て与信が大半を占め 現地通貨建ての与信は両国とも海外からの与信残高全体の 1% 程度に留まっていた その後現地通貨建て与信が増加を続け では現地通貨建て与信比率が6% 近くまで も 3% 近くまで上昇し 逆に海外からの与信残高に占める外貨建て与信の割合は低下している その結果 海外からの与信残高の構成自体が通貨のミスマッチによる影響を受けにくく変化してきたといえる そして海外からの与信残高全体の対 GDP 比率自体も低下してきているため 経済そのものが通貨ミスマッチの影響を受けにくくなっているとみられる ( 図表 3 の濃い棒線 ) 次に図表 3 でみた外貨建て与信のうち 満期のミスマッチが生じやすい短期与信がどの程度含まれているのかをみてみる 図表 4 は外貨建て与信を期間別に分けたものである 期間 1 年未満の短期与信残高の対 GDP 比は との両国ともアジア通貨危機の 2% 台から足元では 1% 未満と 満期のミスマッチ による影響も小さくなっている 3

三井住友信託銀行調査月報 213 年 7 月号 図表 4 外貨建て与信残高の内訳 ( 対名目 GDP 比 ) 6 5 4 3 ( 対名目 GDP 比 %) ( ) ( ) 6 ( 対名目 GDP 比 %) その他 5 2 年超 1 年超 2 年以内 4 1 年以内 3 その他 2 年超 1 年超 2 年以内 1 年以内 2 2 1 1 1985 199 1995 2 25 21 1985 199 1995 2 25 21 3. 外貨準備高からみる通貨暴落の可能性 これに加えて通貨暴落を招いた外貨準備の枯渇に対する懸念もかなり小さくなっている 図表 5 をみるとアジア通貨危機以降 と両国では経常黒字が続き 資本収支も流入超となっている このため経常収支と資本収支を合わせた総合収支は黒字となっており これは同時に外貨準備高が増加してきたことを意味している 図表 5 総合収支の推移 ( ) ( ) ( 億ドル ) ( 億ドル ) 4 4 3 誤差脱漏資本収支経常収支総合収支 3 2 2 1 1-1 -1-2 誤差脱漏 資本収支 経常収支 総合収支 -2-3 1991 1996 21 26 211 1991 1996 21 26 211 ( 資料 )CEIC IMFより三井住友信託銀行調査部作成 ( 資料 )CEIC IMFより三井住友信託銀行調査部作成 このため短期与信に対する外貨準備高の比率はアジア通貨危機時に 1 倍を下回り短期与信の流出を外貨準備では補えない状況にあったものが 足元で 1 倍前後 でも 2 倍程度まで高まっている ( 図表 6) ゆえに急激な資金流出が発生した場合でも 為替暴落への危険性は低下しているといえる 4

三井住友信託銀行調査月報 213 年 7 月号 14 12 1 8 6 4 2 ( 倍 ) 図表 6 外貨準備高 /1 年以内の短期与信 1995 2 25 21 ( 資料 )BIS ADB より三井住友信託銀行調査部作成 4. 金融面での脆弱性はないか 以上見てきたようにやでは 1 経済規模に対する海外からの短期与信残高の割合低下や 2 為替リスクを伴わない現地通貨建て与信比率の上昇によって 外貨建て短期資金流出により国内信用収縮に見舞われる ダブルミスマッチ の問題への耐性は以前よりも高まっている さらに自国通貨の暴落を防ぐ十分な外貨準備の蓄積もあり アジア通貨危機と同様の事態を引き起こす要素はかなり小さくなったといえる しかし これら以外にも金融面のリスクは存在する 例えば現地通貨建て国債市場では外国人保有比率が急激に上昇していることがある ( 図表 7) 特にでは 25 年に 5% 以下であった外国人保有比率が 213 年には 3% 台にまで 図表 7 現地通貨建て国債の外国人保有比率 4 35 3 25 2 15 1 5 24 26 28 21 212 ( 四半期 ) ( 資料 )Asian Bonds Onlineより三井住友信託銀行調査部作成 5

三井住友信託銀行調査月報 213 年 7 月号 高まっている はとともにソブリン格付けが投資適格級の下位に留まるため QE 3 縮小による急激な資金流出や 景気の悪化などによって投機的等級へ格下げされれば 他の市場へ連鎖する可能性がある また 近年の金融市場の発展による国債の海外投資家保有割合上昇は 海外での金利上昇が国内に伝播しやすいことを示しており 実際に両国の国債利回りはここにきて明らかに上昇している ( 図表 8) 図表 8 1 年物国債金利の推移 8. 7. 6. 5. 4. 3. 2. 212/1 212/7 213/1 ( 資料 )Bloomberg より三井住友信託銀行調査部作成 ( 日次 ) 先進国の政策金利がほぼゼロの状態が数年間続いた後に そこからの脱却が近付いているというのはこれまでにない局面にあるだけに 過去の経験則だけではリスクを正確に判断できない可能性がある したがって過去に問題の原因となった部分以外にも 様々な視点からリスク発生に注意を払っておく必要があろう ( 経済調査チーム鹿庭雄介 :Kaniwa_Yuusuke@smtb.jp) 本資料は作成時点で入手可能なデータに基づき経済 金融情報を提供するものであり 投資勧誘を目的としたものではありません 6