158 消化器 タにて呼吸性移動を確認することが望ましい PETCTもGTV 決定に有用であり, 可能であれば併用する GTV 原発巣 : 食道バリウム造影,CT, 食道表在癌の場合には色素内視鏡によりGTVを決定する 多発病変あるいはスキップ病変のある場合はこれもGTVに含める 画像的に病変を描出

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32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する

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はじめに 前立腺癌に対する永久留置法による小線源療法は一口で言うと 弱い放射線を出す小さな線源を前立腺内に埋め込み 前立腺内部から癌の治療を行うものです ただし すべての前立腺癌に適応できるものではありません この説明書は小線源療法についての概説です よくお読みになった上で ご不明の点があれば担当医

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大川智彦 教授 殿

9章 その他のまれな腫瘍

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消化器 157 消化器 Ⅰ. 食道癌 1. 放射線療法の目的 意義従来は手術や内視鏡的粘膜切除術 (EMR) の適応外の症例を主体に治療が行われて きたが, 近年では表在癌, 局所進行癌両者で放射線治療 ( 特に化学放射線療法 ) が標準 治療の一つとなりつつある 補助療法としての放射線治療は, メタアナリシスにて術 前化学放射線療法が 3 年生存率を改善する可能性は示唆されてはいるが 1), 術後照射 と併せてその有効性は確立されておらず, 術後明らかに残存がある場合に用いられる ことが多い 2. 病期分類による放射線療法の適応 食道癌に対しては種々の治療が用い 表 1. 病期別食道癌の治療選択 られるが, 最適な治療は癌の進行度, 全身状態, 合併症, 年齢などにより大 Stage EMR Surgery RT CRT m きく異なっており, 症例毎に適切な治 Ⅰ 療法を選択することが大切である 現 sm 時点で病期毎に選択されるべき治療法 Ⅱ を表 1に示す は第一選択として広 non T4 Ⅲ く受け入れられている治療法, は代 T4 替治療として考慮されてもよい治療, Ⅳ A は他の治療が困難な場合に選択される治療, または一般的ではないが選択の余地がある治療である 近年, 化学 EMR:endoscopic mucosal resection RT:radiation therapy CRT:chemoradiation therapy 放射線療法は救済手術を前提としてⅠ Ⅲ 期食道癌で標準治療の一つとして認識されつつある 3. 放射線治療 1) 標的体積 CTを用いた治療計画が普及してきているが,X 線シミュレータを用いる場合もある 下部食道の病変では呼吸性移動を加味した治療計画が必要であるが,CTを用いた治療計画では呼吸のどの位相で撮像されたものか分からない場合が多く, 必要以上に照射野の上下マージンを大きく設定することが多い 可能であればX 線シミュレー

158 消化器 タにて呼吸性移動を確認することが望ましい PETCTもGTV 決定に有用であり, 可能であれば併用する GTV 原発巣 : 食道バリウム造影,CT, 食道表在癌の場合には色素内視鏡によりGTVを決定する 多発病変あるいはスキップ病変のある場合はこれもGTVに含める 画像的に病変を描出できない場合には内視鏡的に病変の近位, 遠位端に金属クリッピングを行う その際には色素散布は必須である クリップはしばらくすると脱落することも多く, 照射野変更に備えてX 線写真はクリップ装着後すぐに撮影する リンパ節 : 触診,CT,MRIの結果から総合的に見て転移があると判定されたリンパ節 転移を画像のみで正確に評価するのは困難であるが, 短径 5 mm以上のリンパ節はgtvは転移巣とみなし治療すべきとの報告もある 2) これ以下のサイズであっても総合的にみて転移が疑われる場合にはGTVと見なす場合もある ( 特に #106) CTV CTV1 1 予防域がない場合原発巣については原発巣 GTVに頭尾側方向に 2 4 cmを加えたものとする 転移リンパ節についてはリンパ節のGTVと同一とする 表 2.CTV1に含まれるリンパ節領域の例 食道癌取り扱い規約第 10 版 N1 食道癌取り扱い規約第 10 版 N2 CTV1 に含めるリンパ節 ( 例 ) Ce-Ut 105( 胸部上部食道傍 ), 104( 鎖骨上 ), 106-tbL( 気管気管支 101,104,105,106, 101( 頸部食道傍 ), 106 rec( 反回神経周囲 ) 左 ), 107( 気管分岐部 ), 108( 胸部中 107,108 部食道傍 ), 109( 主気管支下 ) Mt 108( 胸部中部食道傍 ), 101( 頸部食道傍 ), 105( 胸部上部食 101,104,105,106, 106rec( 反回神経周囲 ) 道傍 ), 106tbL( 気管気管支左 ), 107 107,108,110,1,2 ( 気管分岐部 ), 109 ( 主気管支下 ), 110 ( 胸部下部食道傍 ), 1( 右噴門 ), 2( 左噴門 ), 3( 小弯 ),( 左胃動脈幹 ) Lt-Ae 110( 胸部下部食道傍 ), 1( 右噴門 ), 2( 左噴門 ) 106rec( 反回神経周囲 ), 107( 気管 105,106,107, 108, 分岐部 ), 108( 胸部中部食道傍 ), 109 110,1,2,3,7,9( 腹 ( 主気管支下 ), 111( 横隔上 ), 112 腔動脈周囲 ) ( 後縦隔 ), 3( 小弯 ), 7( 左胃動脈幹 ), 20( 食道裂孔部 )

消化器 159 2 予防域がある場合所属リンパ節に対する予防照射領域を設定する場合の局在別のCTVに含まれるリンパ節領域の例を表 2に示すが, 特に胸部中部食道原発 (Mt) の予防域に関しては, 一定のコンセンサスはない CTV2: 原発巣については食道全周に頭尾側方向に 2 cmを加えたものとする 転移リンパ節についてはリンパ節のGTVと同一とする PTV PTV1 CTV1にそれぞれ呼吸性移動, 患者固定再現性の誤差などを見込んで適切なマージン ( 左右背腹方向 0.5 1 cm程度, 頭尾側方向 1 2 cm程度 ) を加えたものを PTVとする 胸部下部, 腹部食道などは呼吸性移動が大きいため, 治療計画後にX 線シミュレータで確実にPTVの範囲に含まれていることを確認することが望ましい PTV 2 CTV2にそれぞれ呼吸性移動, 患者固定再現性の誤差などを見込んで適切なマージン ( 左右背腹方向 0.5 1 cm程度, 頭尾側方向 1 2 cm程度 ) を加えたものを PTVとする 2) 放射線治療計画照射野の設定は,X 線シミュレータあるいは三次元治療計画装置を用いる X 線シミュレータを用いて位置決めを行う場合には,CT 所見を参考にX 線透視上で標的体積を決定する 食道表在癌, 多発病変あるいはスキップ病変がバリウム造影にてわかりにくい場合は, 色素散布の後, 病変の近位, 遠位端に内視鏡的にクリッピングを行いCT,X 線透視にて病変の範囲を同定可能とする 表在癌の場合, 前後対向二門照射が終了する頃には腫瘍の局在が不明確になる場合があるので, 追加照射の照射野は腫瘍の局在が明確な内に治療計画を行っておいた方が良いこともある 3) 照射法食道癌では部位, 進行度, 全身状態により種々の照射野が用いられている PTV1 に対する照射法の代表的な例を図 1に示す すべて対向二門照射である あくまで参考例であり, リンパ節転移がある場合には適宜その領域全体を含めるように照射野が拡大される リンパ節領域の予防照射の意義は明らかにされていない また, 標準的標的体積に関するコンセンサスは得られていない 近年, 心臓などのリスク臓器への線量を低減させるために多門照射の試みも報告されている ( 図 2) 40Gy 46Gy 以降ではPTV2に対し, 脊髄をさける照射法に変更する 斜め対向二門照射が一般的であるが ( ガントリーは30 45 度振る必要がある ), リンパ節転移が広範囲な場合など定型的な治療ができない場合も多い Ceでは前方二門照射が用いられる場合がある 線源は 6 10MVのX 線を推奨する

160 消化器 図1 腫瘍部位別照射野の例 4 線量 分割 分割法は通常分割照射または加速過 分 割 照 射 が 用 い ら れ る 海 外 で は 50Gy 25 28回 5 6 週程度を化学 放射線療法における標準的放射線量と する考えもあるが3 わが国では化学放 射線療法の場合60Gy 30回 6 8 週 程度 放射線単独療法では60 70Gy 30 35回 6 7 週が標準的である 加速過分割照射は食道癌に対する放射 線単独治療の際に その有効性に関す 図2 4門照射の線量分布図 心臓の照射体積 低減のため用いられる場合がある る報告がある4 食道表在癌に関してはJASTRO研究グループが放射線単独治療の際 のガイドラインを作成しており5 これに準ずることが推奨される 表3 特に放射 線治療単独の場合 治療期間の延長により治療成績の低下をきたす可能性があり 過 度の治療期間の延長は避ける 腔内照射の至適線量については外照射線量とも関連す るため明確なコンセンサスはないが 合併症に関しては 1 回線量が大きいと食道潰瘍 の危険が高くなるため 高線量率で 1 回 4 Gy 低線量率で 1 回 6 Gyを超えないこと が推奨されている5 5 併用療法 化学療法 最近のいくつかのランダム化試験により 局所進行食道癌に対する根治的放射線 治療では 放射線単独治療よりもシスプラチン 5FU同時併用化学放射線療法がよ

消化器 161 表 3. 食道表在癌治療のガイドライン (JASTRO 研究グループ ) m1 m2 (mucosal cancer) m3 sm3 EMR (residual tumor) EMR (complete resection) EXRT alone Highdose rate ICRT alone EXRT alone EXRT+high doserate ICRT EXRT+low doserate ICRT EXRT alone EXRT 60 66Gy/30 33fx/ 6 6.6w 60 70Gy/conventional fractionation or (accelerated) 50 60Gy/25 30fx/ 5 6 w 60Gy/30fx/ 6 w any of the treatment above 50Gy/conventional fractionation ICRT 28 32Gy/7 8fx/ 2 times a week Total dose 60 66Gy 28 32Gy 32.5 35Gy/13 14fx/4 times a week 35Gy 8 12Gy/3 4 fx/ 1 4times a week 12Gy/3fx/ 2 times a week 60 70Gy 58 72Gy 72Gy 50Gy EXRT:external beam radiation therapy ICRT :intra-cavitary radiation therapy w :week fx :fraction り有効であることが確認されており, メタアナリシスでも化学放射線療法が放射線治療単独に比べて優れているとされている 6) 薬剤はシスプラチン+5FUが標準であるが, 実際の治療内容は施設毎に微妙に異なっており, 統一されたものはない 一方で高齢や合併症のため高リスクな症例に対しては, 放射線単独治療を用いる場合が多い 腔内照射外照射のブースト照射として, または粘膜癌に対して腔内照射単独で治療を行う場合もある その際にはアプリケータの径が小さいと線源から外側に向かっての線量勾配が急になるため, 使いやすさも考慮しつつ15 20 mmの径のものを用いる 7) 線量評価点は照射範囲の粘膜下 5 mmとするのが一般的である 4. 標準的な治療成績食道表在癌では JASTRO 研究グループの多施設集計データでは, 粘膜癌の 5 年生存

162 消化器 率,5 年原病生存率はそれぞれ62%,81%, 粘膜下層癌の 5 年生存率,5 年原病生存率はそれぞれ42%,64% であり 5), 放射線治療単独の標準的な治療成績である 近年の報告されている進行癌の化学放射線療法治療成績は, 切除可能なⅡ~Ⅲ 期 (T4 除く ) では 3 年生存率 40 50% 前後,T4/M1/LYMでは 3 年生存率 20% 程度である 5. 合併症 1) 早期有害事象放射性皮膚炎, 放射性食道炎, 放射性肺臓炎が代表的である 食道炎はほぼ必発であるが, 食道真菌症や逆流性食道炎の可能性も常に考慮しておく 放射性肺炎も時に重篤になるが, 感染症や癌性リンパ管炎との鑑別が必要である 2) 晩期有害事象食道穿孔, 出血は放射線治療症例の数パーセントに発生する T4 症例ではさらに頻度が高くなる 高線量率腔内照射を併用した際には食道潰瘍の発生には特に留意する必要がある 7) 近年治療成績が改善するに伴い, 広い照射野を用いた場合には, 高率に心, 肺の重篤な晩期合併症 ( 心嚢液 胸水貯留など ) が発生することがわかってきている 8) 心筋へのFDGアップテイクを示す症例の報告がなされており 9), 心筋障害の可能性があるが, その長期予後は不明である 照射前にステントを併用すると高率に重篤な合併症が発生するとする報告があり, 根治照射前のステント挿入は避けるべきである 10) * 付記食道癌の放射線治療計画に際しては, すでに日本食道学会編の食道癌診断 治療ガイドラインが発刊されており 10), 本ガイドラインでも食道癌診断 治療ガイドラインとの整合性を考慮した記載を行っているが, 併せて参照されることを推奨する 6. 参考文献 1)Fiorica F, Di Bona D, Schepis F, et al. Preoperative chemoradiotherapy for oesophageal cancer : a systematic review and meta-analysis. Gut 53 : 925-930, 2004. 2)Mizowaki T, Nishimura Y, Shimada Y, et al. Optimal size criteria of malignant lymph nodes in the treatment planning of radiotherapy for esophageal cancer : evaluation by computed tomography and magnetic resonance imaging. Int J Radiat Oncol Biol Phys 36 : 1091-1098, 1996. 3)Minsky BD, Pajak TF, Ginsberg RJ, et al. INT 0123 (Radiation Therapy Oncology Group 94-05)phase Ⅲ trial of combined-modality therapy for esophageal cancer : high-dose versus standard-dose radiation therapy. J Clin Oncol 20 : 1167-1174, 2002.

消化器 163 4)Shi XH, Yao W, Liu T. Late course accelerated fractionation in radiotherapy of esophageal carcinoma. Radiother Oncol 51 : 21-26, 1999. 5) 山田章吾, 根本建二, 高井良尋, 他 : 食道表在癌に対する標準的放射線治療法. 日放腫会誌 12 : 169-176, 2000. 6)Wong R, Malthaner R. Combined chemotherapy and radiotherapy (without surgery)compared with radiotherapy alone in localized carcinoma of the esophagus (Cochrane Review). In : The Cochrane Library, 4, 2001. Oxford : Update Software. 7)Yorozu A, Dokiya T, Oki Y, et al. Curative radiotherapy with high-dose-rate brachytherapy boost for localized esophageal carcinoma : dose-effect relationship of brachytherapy with the balloon type applicator system. Radiother Oncol 51 : 133-139, 1999. 8)Ishikura S, Nihei K, Ohtsu A, et al. Long-term toxicity after definitive chemoradio therapy for squamous cell carcinoma of the thoracic esophagus. J Clin Oncol 21 : 2697-2702, 2003. 9)Jingu K, Kaneta T, Nemoto K, et al. The utility of (18)F-fluorodeoxyglucose positro nemission tomography for early diagnosis of radiation-induced myocardial damage. Int J Radiat Oncol Biol Phys 66 : 845-851, 2006. 10)Nishimura Y, Nagata K, Katano S, et al. Severe complications in advanced esophageal cancer treated with radiotherapy after intubation of esophageal stents : a questionnaire survey of the Japanese Society for Esophageal Diseases. Int J Radiat Oncol Biol Phys 56 : 1327-1332, 2003. 11) 食道癌診断 治療ガイドライン. 2007 年 4 月版, 日本食道学会編, 東京, 金原出版, 2007. ( 山形大学医学部放射線腫瘍学分野根本建二, 東北大学大学院放射線腫瘍学分野山田章吾 )