2013 年度卒業論文 散開星団までの距離 明星大学総合理工学部総合理工学科天文学研究室 10s1-010 大枝克弥 10s1-004 阿久津貴晃 1
要旨 星の距離を求めることは天文の基礎として興味があり 本学の先輩が撮像を行い 距離を求める卒業論文を出していたことを知った 私たちも自分で撮影を行い 距離を求めたいと思う 前回の卒業論文の M38 星団までの距離はあまりいい結果がでなかったとのことで 今回はそのデータの改善 それに加え M34 は自分たちで撮影を行い 距離を求めていく 2
目次 はじめに... 4 第 1 章星団... 5 1.1 星団... 5 1.2 星団の種類... 5 1.2-1 OB アソシエーション... 5 1.2-2 球状星団... 5 1.2-3 散開星団... 5 1.3 目標天体の散開星団について... 7 第 2 章距離の求め方... 9 2.1 原理... 9 2.1-1 距離を求める... 9 2.3-2 HR 図... 10 2.1-2 UBV 測光系... 11 2.1-3 ポグソンの式... 11 2.1-4 標準星... 12 2.2 観測と処理... 13 2.2-1 撮像... 13 2.2-2 画像合成... 13 2.2-3 測光... 15 第 3 章観測結果... 16 3.1 M34... 16 3.2 M38... 18 第 4 章計算結果... 21 4.1 M34... 21 4.2 M38... 22 4.3 2012 年度の生田目さんの卒論との比較... 23 4.4 他のデータとの比較... エラー! ブックマークが定義されていません 第 5 章考察... 24 引用文献... 25 謝辞... 26 3
はじめに 星団は恒星の集まりであり一つの天体ではないが 見かけ上一点の星に見える 視野角が大きく広範囲に広がって見える星団もあるが 肉眼ではその様子を確認することは難しい 望遠鏡を覗き 星団を眺めると数多くの星がいろんな形をして分布している様子がわかる そんな星までの距離を求めることは 天文学を学ぶ上での基本である 撮影した星団の恒星分布図を HR 図と比較することで距離を求めることができる 4
第 1 章星団 1.1 星団ほとんどの星形成領域で 恒星は集団で生まれる こうして生まれた恒星が相互の重力によって集団化したものを星団と言う 星団は 同じ分子雲から同時期に生まれた恒星の集まりで 見かけの集団の具合や星の数によって 3 種類に分けられている 1.2 星団の種類 1.2-1 OB アソシエーション生まれた恒星の中で スペクトル型 ( 恒星の分類法の一つで だいたい O 型星は 3 ~6 万 K B 型星は 1 万 ~3 万 K の表面温度を持つ ) が O 型星や B 型星は温度が高いので水素の消費が激しく寿命が短い このような若い恒星は部分的に集まったり 固有運動が同じだったりする 星団と言うほど密集はしてはいないが 起源は同じものと考えられている さそり座やはくちょう座など天の川付近に存在している 1.2-2 球状星団数十万 ~ 数百万個程度の恒星が半径 10~50 光年に球状に密集している星団のことである 望遠鏡で個々を観測するのが難しいほど 中心に行くほど星の密度が急速に高くなる 銀河を取り巻くハローに広く分布している あまりに密集しているため星同士が衝突や合体をして若返り まれに青い星が存在するが ほとんどは初期の銀河に形成された 生誕 100 億歳を超えるような古い星々の集団と考えられている 有名な球団星団は ヘラクレス座 M13 やオメガ星団などがある しかし 球状星団の中にはブラックホールが見つかることもあり 星団ではなく小型銀河ではないかと言われるものもある ( 図 1 参照 ) 1.2-3 散開星団数十 ~ 数百個ほどの星が 銀河系のディスクに数十光年の範囲にわたり比較的緩やかに分布している 星の年齢は球状星団と異なり数百万 ~ 数億年程度の若い星が多い星団である 銀河円盤内を移動中に誕生後数億年も経つとばらばらに分解してしまう 有名な星団にはおうし座のヒアデス星団やプレアデス星団 (M45) がある ( 図 2 参照 ) 5
図 1B.H 球状星団オメガ宇宙の小さな旅コスモス ビジョン惑星テラ見聞録引用 図 2 M45 星団 国立天文台理科年表オフィシャルサイトより引用 6
1.3 目標天体体の散開開星団について M34 星座距離赤経赤緯視等級視直径直径 ペルセウス座 1400 光年 2h42. 1m(J2000.0) +42 46 (j2000.0) + 5.5 等級 35.0 15 光年 図 3 M34 7
星座距離赤経赤緯視等級視直径直径 M38 ぎょしゃゃ座 4200 光年 05h28..7m(J2000.0) +35 50 (j2000.0) + 6.4 等級 24 21 光年 図 4 M38 8
第 2 章距離の求め方 2.1 原理 2.1-1 距離を求める恒星までの距離を求めるには 見かけの等級と絶対等級の関係より m- M = 5 log(r/10) (1.1) m: 天体の見かけの等級 M: 天体の絶対等級 r: 天体までの距離 (pc) と表すことができる 見かけの等級観測した時に観測点で見える明るさのことで その明るさは距離の 2 乗に反比例する ただし 途中にある星間物質による光の吸収などの影響も受けているので 多少暗く見えることもある 絶対等級天体を 10pc(32.6 光年 ) の距離から見たときの明るさのこと たとえば 太陽の見かけの等級は -26.7 等級なのに対して 絶対等級は +4.8 等級である 今回は星団の恒星が HR 図上で主系列星に位置すると考え 絶対等級一般に知られている主系列星見かけの等級観測時の得られた等級を用いて距離を導いていく 9
2.3-2 HR 図ヘルツシュプルング ラッセル図 (Hertzsprung-Russell diagram) の通称で 縦軸に絶対等級 横軸にスペクトル型をとった恒星分布図のことである ( 図 5 参照 ) スペクトル方は表面温度などを指し示す 縦軸と横軸の指し示すものによって CM 図と言うこともある CM 図 (Color-Magnitude 図 ) とは 横軸に色指数を用いた図である 色指数は天体の色を表す指標であり 恒星の場合はその星の表面温度の目安にもなる 色指数の測光方法には特定の波長域の光のみを透過するバンドパスフィルターを用いる UBV 測光系がある 図 5 HR 図 10
2.1-2 UBV 測光系 2 種類の異なるフィルターを用いて撮影を行い その等級の差を用いる そのため 冷却 CCDカメラに内蔵されているフィルターを使って撮影する 今回使うフィルターはBフィルターとVフィルターである フィルターは各々通しやすい波長を持ち その差を使って撮影する フィルターの色領域は紫外域 :U バンドフィルター青色 :B バンドフィルター緑 ~ 黄色 :V バンドフィルターであり U B 色指数 :U バンドと B バンドの等級差 B V 色指数 :B バンドと V バンドの等級差があり 各フィルターの等級をだす計算にはポグソンの式を用いる 2.1-3 ポグソンの式 1 等級と 6 等級の明るさの差を 100 倍として 星の明るさを定義したもの 2 つの星の明るさの比と等級差の関係を示すので この式からその星自体の等級は定義できない ポグソンの式は次のように表す m=n-2.5 log(im/in) (1-2) m: 目標星団の等級 Im: 目標星団内の恒星のカウント数 n: 標準星の等級 In: 標準星のカウント数 ポグソンの式より V フィルターと B フィルターそれぞれの見かけの等級を求めることで B-V 色指数を求めることができる 11
2.1-4 標準星適当に指定した一群の恒恒星を選び 等級 色指数などの指指標として使使う星のことである 標標準星の等等級は Aladin に示されている数値を用いた 以下は 今回使使用した標準準星である M38 M34 12
2.2 観測と処理 星団までの距距離を求めるための手順順は 1 目標天体を撮像する 2 天体画像処処理ソフトウェア : ステライメージを用いて画像像処理を行う 3 天体教育画画像解析ソフト : マカリを用いて測測光をする 4 エクセルでポグソンの式より色指指数を求め CM 図上にプロットする 5 主系列星と比較し距離離を求める である 2.2-1 撮像 使使用カメラ: 冷却 CCD 撮像ライトフレーム撮影枚数 :BB フィルター 100 枚 V フィルター 100 枚露出時間 : 4~8 秒 ダークフレーム 撮影枚数 : ライトフレーーム 10 枚ごとに 1 枚 フラットフレーーム 5 枚ごとに 1 枚 フラットレーム撮像枚数 :BB フィルター 50 枚 V フィルター 50 枚露出時間 : 10 秒 2.2-22 画像合成 BフィルターーとVフィルターそれぞれの画像にダーク補正正 フラット補正 を行い 加加算平均で 1 枚の画像像にする 画画像の合成は画像処理ソフト makalli を使って行う ( 図 7,8 参照 ) 図 7,8 M38 の画像で左左がBフィルター 右がVフィルター 13
フラット補正フラットフレーム ( 図 9 参照 ) を用いて 撮影画像に生じた周辺減光を処理すること B フィルター V フィルターで撮影したフラット画像は加算平均し ダーク補正を行ったフラットフレームを使用する 図 9 フラットフレーム ダーク補正撮影時に生じるノイズを除去することである 遮光空間を撮影する ダークフレームもライトフレームと同様に加算平均を行い 1 枚の画像にする ( 図 10 参照 ) 図 10 ダークフレーム 14
2.2-3 測光星団の対象となる恒星をパソコン上で一つ一つ選びカウント値を求める ( 図 11 参照 ) 画像上で指定した半径内のカウント値を積算してから 背景光を減算する 開口測光 を使用する 図 11 測光画面 次に エクセル上にカウント値を出力して B-V 色指数を求める ( 図 12 参照 ) 図 12 エクセルに出力したウント値最後に 求めた色指数を使って CM 図上にプロットし 主系列との等級差を求める 今回 CM 図の縦軸に V 等級 横軸に色指数を用いたものを使用する 15
第 3 章観測測結果 3.1 M34 撮影影画像 観測日 :2013/12/3 時間 :21:00~22:00 Bフィルター V フィルター 測光光した恒星 測光光恒星数 :24 個 16
測光したカウント値 B のカウント値 1 2954 2 2720 3 3359 4 5157 5 2827 6 3806 7 4243 8 1556 9 4447 10 5170 11 1712 12 6077 13 5040 14 2121 15 4177 16 2485 17 1154 18 588 19 1415 20 922 21 2517 22 847 23 694 24 2010 V のカウント値 1 4137 2 2628 3 2307 4 3241 5 2308 6 2847 7 2892 8 1360 9 2576 10 1555 11 1501 12 4522 13 3475 14 1759 15 2684 16 1784 17 1173 18 1301 19 1200 20 889 21 1950 22 940 23 1734 24 2051 17
3.2 M38 撮影影画像 ( 生田目氏撮撮像 ) 観測日 :2012/12/10 時間 :19:00~ ~22:00 Bフィルター V フィルター 測光光した恒星 測光光恒星数 :100 個 18
測光したカウント値 B のカウント値 1 122765 26 32767 51 7451 76 5221 2 16802 27 13680 52 9006 77 3106 3 27761 28 5811 53 7213 78 8327 4 29133 29 6772 54 7788 79 7370 5 33898 30 70745 55 4870 80 5577 6 23558 31 36438 56 6581 81 8090 7 25680 32 22479 57 5097 82 10123 8 40781 33 36505 58 4911 83 11982 9 18866 34 5448 59 4705 84 6501 10 8349 35 6010 60 5334 85 8005 11 9310 36 6297 61 6452 86 7172 12 5652 37 9645 62 6067 87 22394 13 12224 38 6293 63 5909 88 29583 14 7140 39 8017 64 4076 89 44182 15 6906 40 7926 65 4409 90 17800 16 24234 41 8170 66 5830 91 9688 17 15558 42 8585 67 8911 92 13890 18 12371 43 26681 68 12048 93 5062 19 13119 44 33512 69 85467 94 4878 20 16901 45 41510 70 27664 95 5173 21 31185 46 12988 71 12085 96 6632 22 28725 47 25605 72 13119 97 3803 23 43853 48 15957 73 10646 98 9353 24 15704 49 11671 74 29652 99 10184 25 27194 50 7783 75 10246 100 26717 19
V のカウント値 1 302097 26 42896 51 10118 76 8528 2 24604 27 18257 52 12848 77 6248 3 47056 28 9379 53 10943 78 11557 4 82947 29 8289 54 10962 79 10370 5 43290 30 87640 55 7555 80 9041 6 31020 31 45507 56 9366 81 11899 7 77012 32 36429 57 7968 82 14918 8 54815 33 47565 58 7090 83 15508 9 83647 34 16977 59 7917 84 9877 10 11805 35 7243 60 7505 85 11008 11 12900 36 13418 61 8855 86 10625 12 7533 37 12596 62 7560 87 30414 13 15796 38 9447 63 7549 88 38722 14 10305 39 11046 64 8702 89 54122 15 6574 40 11884 65 5889 90 71853 16 31082 41 11603 66 9226 91 14879 17 20343 42 12830 67 12358 92 46500 18 15817 43 49445 68 14669 93 17385 19 23425 44 44171 69 112176 94 7525 20 23756 45 53430 70 37107 95 17436 21 39314 46 17315 71 17158 96 9302 22 37539 47 32050 72 18545 97 5875 23 57617 48 22558 73 31822 98 15212 24 20515 49 15861 74 42965 99 13755 25 77255 50 11026 75 16163 100 37829 20
第 4 章計算結果 4.1 M34 (1.1) 式より m:m34 の等級 9~10 等級 M: 主系列星の等級 0~2 等級 として m-m=8.5 等級とした M34 までの距離は 500pc 1630 光年 -10.00-5.00 Mv ( 等級 ) 0.00 5.00 10.00 15.00 20.00-0.50 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 B-V ( 色指数 ) CM 図にプロットした M34 データ元今回の観測理科年表メシエ天体ガイド 距離 1630 光年 1434 光年 1450 光年 等級 5.5 等級 5.2 等級 5.5 等級 21
4.2 M38 (1.1) 式より m: M38 の等級 10~12 等級 M: 主系列星の等級 0~1.5 等級として m-m=10.5 等級とした M38 までの距離は 1300pc 4240 光年 -10.00-5.00 0.00 Mv ( 等級 ) 5.00 10.00 15.00 20.00-1.00 0.00 1.00 2.00 3.00 B-V ( 色指数 ) CM 図にプロットした M38 データ元今回の観測理科年表その他論文 距離 4240 光年 4610 光年 4566 光年 等級 10.5 等級 11 等級 11.5 等級 22
4.3 M38 の生田目目氏卒論 (2012 年度 ) との比較 昨年度の生田田目氏の測光光は 暗い星星を選択して測光した傾傾向があり 数値が小小さい結果となっている 今回 私たちは明るい星星が星団に属属する星であると判断したため 明るい星を選択して測光を行った その結果 既既知の値により近い値が得られた 1300pc 4240 光年 今回の測光 6300pc 20567 光年 生田目氏測光 23
第 5 章考察 今回は昨年の考察を踏まえて 明るい星を選択して測光し その結果現在知られている値に近い距離を求めることができた 他のデータとの比較の距離の違いは 観測者の技術 データ量 処理技術の差により生じたと考えた 24
引用文献 M38 星団までの距離 明星大学卒業論文 09s1-027 生田目旭 恒星 銀河系内 渡部潤一 メシエ天体ガイド AstroArts 天体おまかせガイド.net お気楽天体観望 25
謝辞 今回の論文作成において 数多くのアドバイスをくださいましてありがとうございました 祖父江先生 小野寺先生 日比野先生 津田さん 内間さん お世話になりました 天文台やその他の機材を使わせていただきました 終わりになるにつれて慌ただしくなっていく僕らを温かい目で見守ってくださり 感謝です 学部生として今までありがとうございました 26