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DEWS2008 C5-5 認知機能データベースの開発と そのデータ解析による認知症の早期診断 児玉直樹 竹内裕之 川瀬康裕 高崎健康福祉大学健康福祉学部 370-0033 群馬県高崎市中大類町 37-1 川瀬神経内科クリニック 955-0823 新潟県三条市東本成寺 20-8 E-mail: {kodama, htakeuchi}@takasaki-u.ac.jp, yasuhiro@kawase-nc.or.jp あらまし本研究では認知機能データベースの開発の現況について報告するとともに データベースに蓄積された認知機能 検査データをもとに 認知症の早期診断について検討を行なった 認知機能データベースは各種認知機能検査結果の入力に加え 時系列データ表示などができる さらに 認知機能データベースに蓄積された認知機能検査データをもとに 認知症の客観的診断について検討したところ 認知症の診断感度は 86.7% 特異度は 96.6% であった 従来の方法では 認知症の診断感度は 71.9% 特異度は 74.3% であることから 本手法の認知症の診断精度は非常に高いものであり 臨床で用いることも可能である キーワード認知症 データベース 認知機能 診断 Development of Cognitive Database and Examination of the Dementia Diagnostic Technique in Data Analysis Naoki KODAMA Hiroshi TAKEUCHI and Yasuhiro KAWASE Faculty of Health and Welfare, Takasaki University of Health and Welfare 37-1 Nakaohrui-machi, Takasaki city, Gunma, 370-0033 Japan Kawase Neurology Clinic 20-8 Higashi-Honjyoji, Sanjyo city, Niigata, 955-0823 Japan E-mail: {kodama, htakeuchi}@takasaki-u.ac.jp, yasuhiro@kawase-nc.or.jp Abstract In this study, we report development of the cognitive function database. And we examined an early diagnosis of dementia with the cognitive function data in the database. The cognitive function database can input a cognitive function data. And this database can display Time-series data. Furthermore, based on cognitive function data accumulated in the cognitive function database, we examined an objective diagnosis of dementia. As a result, the sensitivity was 86.7% and the specificity was 96.6%. In Kana pick-out test, the sensitivity was 71.9%, and the specificity was 74.3%. These results indicate that, this diagnostic technique can be used as an objective diagnostic technique for dementia. Keyword Dementia, Database, Cognitive function, Diagnosis 1. はじめに認知症疾患の診断もしくは重症度判定にはさまざまな認知機能に関する評価スケールが存在している これら評価スケールは大きく 2 つに分類することができる 一定の課題や質問を対象者に行い その結果をスコア化し その多寡で判断を行う質問式検査と 対象者の行動を詳細に観察して行う観察式検査である 前者には Mini-Mental State Examination( MMSE) かなひろいテストなどがあり 後者には Clinical Dementia Rating( CDR) Functional Assessment Staging( FAST) などがある [1]-[3] これら認知機能検査は現在のところ紙ベースで実 施されており 統計処理や時系列解析を行うことが困難であるという問題点が指摘されている また 脳リハビリなどの非薬物療法や塩酸ドネペジルなどによる薬物療法における介入による効果判定を行うためにも これら認知機能検査結果の電子化が必要である [4] そのため 我々は MMSE や CDR などの評価スケールを電子化し 介入効果判定を行うことが可能な認知機能データベースを開発した [5] 本研究では認知機能データベースの開発の現況について報告するとともに データベースに蓄積された認知機能検査データをもとに 認知症の早期診断について検討を行なった

2. 認知機能データベースと認知機能検査 2.1. 認知機能データベースの概要本認知機能データベースの目標を図 1に示す まず 検査者により認知機能検査を実施し 認知機能データベースにデータを登録することでデータが蓄積される その後 脳リハビリもしくは薬物療法が実施され その実施日時等を認知機能データベースに登録する データが蓄積されると介入効果があったかどうかを判定するための時系列データが医師に表示される この時系列データを基に介入効果を判定することができる さらに 患者および患者家族へ時系列データをレポートとして提示することができるようになっており 患者および患者家族への介入効果説明が可能である 患者および家族時系列データ提示認知機能データベースデータ登録介入効果判定 た MMSE の参照 CDR の参照 VSRAD の参照を行なうことができ これにより時系列データを表示することが可能である また 脳リハビリ実施歴および薬剤使用歴について入力することが可能であるので 薬物や脳リハビリの長期追跡調査が可能となり 介入効果の判定に用いることが可能である 時系列結果表示画面を図 2に示す 患者 ID を入力することにより MMSE など検査結果の時系列データを表示することが可能である これにより 医師が患者への現状説明 および将来の認知機能の予測を立てるために使用することができる さらに この時系列結果表示画面では 脳リハビリ実施群と脳リハビリ非実施群の回帰曲線が表示されるため 医師は容易に脳リハビリの効果もしくは薬物療法の効果を判定することができる また 薬物療法と非薬物療法の併用効果についても判定することが可能である この時系列結果表示画面を用いて 患者もしくは患者家族への介入効果の説明に用いるだけでなく 印刷することも可能であるため 患者もしくは患者家族へ渡すことができ 患者もしくは患者家族の介入効果への理解を深めるとともに 精神的な負担を軽減することができる 認知機能検査者 医師 図 1 認知機能データベースの目標 Fig.1 Objective of a cognitive function database 認知機能データベースは院内にホストコンピュータを設置し ホストコンピュータ内に各種データベースを作成した 本データベースは Microsoft Visual Basic を用いて作成し ユーザ管理用データベース MMSE 用データベース CDR 用データベース かなひろいテスト用データベース 脳波記録用データベース VSRAD( Voxel-Based Specific Regional Analysis System for Alzheimer's Disease: 早期アルツハイマー型認知症診断支援システム ) 用データベース 投薬記録用データベース 脳リハビリ記録用データベースの8つのデータベースをホストコンピュータ内に設置した 本データベースの大きな特徴の一つは 認知機能検査のみならず 院内で検査を実施している脳波 ( DIMENSION) や MRI 画像による解析 (VSRAD) についてもデータ登録ができるよう設計しているところである ユーザは本システムを起動すると ID 認証画面が表示される ID 認証を行うとメインメニュー画面が表示される メインメニュー画面には MMSE の入力 CDR の入力 かなひろいテストの入力 脳波 (DIMENSION) の入力 VSRAD の入力のほか 投薬情報の入力 脳リハビリデータの入力の各メニューが表示される ま 図 2 時系列データの表示 Fig.2 Time-series data display 2.2. 認知機能検査 2.2.1. MMSE MMSE は認知機能を簡便に評価する方法として 1976 年に米国で開発された認知機能テストであり 日本においても認知機能を臨床的に評価する方法として

使用されている MMSE は言語性テスト 5 項目と動作 性テスト 6 項目からなる 11 項目によって構成され 問 診形式で実施される 検査時間は約 20 分である 2.2.2. かなひろいテスト かなひろいテストは 対象者にかなで書かれたおと ぎ話の文章を読ませ その意味を覚えてもらうと同時に あ い う え お の 5 文字が出てくるごとにマルをつけてもらうテストである その意義は かなをひろう という課題に注意を集中しながら 同時に文の意味を読み取り 覚え 再生するという前頭前野の複合機能を調べている 2 分間にかなを何個拾えたかにより成績を判定し 不合格の場合は認知症の疑いがあると判定する なお かなひろいテストの年代別境界値を表 1に示す 正答数が表 1 に示された年代別境界値以上であれば 合格 と判定し 年代別境界値を下回っていたら 不合格 と判定する かなひろいテスト不合格の場合 前頭前野の機能低下が疑われ 認知症の可能性が高い 表 1 かなひろいテストの境界値 Table 1 Border value of Kana pick-out test 年代 境界得点 40 歳代 21 50 歳代 15 60 歳代 10 70 歳代 9 80 歳以上 8 2.2.3. CDR CDR は臨床認知症評価尺度と呼ばれ 記憶 見当識 判断力と問題解決 社会適応 家庭状況 趣味 関心 介護状況のそれぞれの項目について 患者およびその家族などから聞き取り調査により5 段階の評価を行う 5 段階とは CDR0( 正常 ) CDR0.5( 軽度認知障害 ) CDR1( 軽度認知症 ) CDR2( 中程度認知症 ) CDR3( 重度認知症 ) である この CDR は患者およびその家族からの聞き取りが必須であるため 判定するために多くの時間と労力がかかる 3. 対象と方法本研究の対象は 物忘れを主訴として医療法人社団川瀬神経内科クリニックを受診し MMSE かなひろいテスト CDR を実施し 認知機能データベースにデータ登録された 276 名である なお 276 名のうち 148 名は軽度認知障害 (Mild Cognitive Impairment: MCI) であり 128 名は認知症であった 認知症患者は神経内科医により NINCDS-ADRDA 基準で probable AD と診断され CDR が 1 であった患者を対象とした [6] 軽 度認知障害患者は Petersen の診断基準により軽度認知障害と診断され CDR が 0.5 であった患者を対象とした [7] 対象の詳細については表 1に示す MMSE かなひろいテストは十分にトレーニングを受けた同一の者が実施し 検査者バイアスがかからないように配慮した 表 2 対象者の詳細 Table 2 Study subjects 人数平均年齢男女比 MCI 148 76.6±5.8 73/ 75 Dementia 128 79.5±5.6 38/ 90 CDR は臨床認知症評価尺度であり CDR 0.5 を軽度認知障害 CDR 1 を軽度認知症と判定している 軽度認知障害は認知症ではないが 認知症の前段階として考えられ 軽度認知障害の約半数はアルツハイマー型認知症に移行するといわれている 臨床現場において 軽度認知障害は認知症と診断されないが 軽度認知障害と軽度認知症を認知機能検査のみで診断することは難しいといわれている この2つを正確に診断することは認知症の早期診断にとって極めて重要であり 臨床におけるニーズが非常に高い 統計学的検討として 2 群間の比較には Mann-Whitney U 検定を用いた また 2 群の分類にはステップワイズ法による判別分析を用いた 診断の精度として 感度 特異度を算出した 感度は疾患のある患者で検査結果が陽性となる割合のことであり 特異度は疾患のない患者で検査結果が陰性となる割合のことである なお 感度 特異度は次式により算出することができる TP = TP + FN Sn (1) TN = TN + FP Sp (2) ここで Sn( Sensitivity) は感度 Sp( Specificity) は特異度を表し TP( True Positive) は真陽性 FN( False Negative) は偽陰性 TN( True Negative) は真陰性 FP( False Positive) は偽陽性である 4. 結果認知症および軽度認知障害におけるかなひろいテストの得点を表 3に示し MMSE 各項目の得点を表 4 に示す また MMSE 各項目別の正答率をグラフにしたものを図 3および図 4に示す

MMSE 各項目のうち 物品および文章に関する項目 では有意差は認められなかったが それ以外の項目については有意な差が認められた また かなひろいテストにおいては誤答数で有意差は認められなかったが 正答数 見落数 意味把握において統計的に有意な差が認められた MMSE 各項目の正答率についてであるが 図 3 4からも分かるように MMSE の時の見当識 計算 想起の項目は軽度認知障害の段階で既に正答率が低下している 認知症においては時の見当識 計算 想起の正答率は著しく低下しており 想起の項目については正答率が 10% を割っている 次に かなひろいテストの合否を表 5 に示す 表 5 より かなひろいテストの感度および特異度を算出したところ 感度は 71.9% 特異度は 74.3% であった ステップワイズ法による判別分析を行なった結果 軽度認知障害と認知症を分類のために投入された変数は MMSE では時の見当識 場所の見当識 計算 想起 図形の 5 変数であり かなひろいテストでは正答数の 1 変数であった この6 変数を用いて軽度認知障害と認知症を分類した結果を表 6に示す 表 6より 判別分析による分類をした際の感度 特異度を算出したところ 感度は 86.7% 特異度は 96.6% であり 感度 特異度ともに診断精度が向上した 正答数誤答数見落数意味把握 時見当識場所見当識復唱計算想起物品文章命令指示書字図形 表 3 かなひろいテストの結果 Table 3 Results of Kana pick-out test MCI Dementia P-value 13.1±7.91 0.57±1.23 9.52±9.40 0.91±0.83 6.08±6.37 0.68±1.56 15.5±15.7 0.37±0.66 表 4 MMSE 項目別の結果 Table 4 Results of MMSE subscale 0.843 0.008 MCI Dementia P-value 4.33±0.95 4.78±0.48 2.99±0.12 3.87±1.22 1.37±1.13 2.00±0.00 0.99±0.12 2.80±0.44 0.99±0.08 0.79±0.41 0.84±0.37 2.36±1.53 3.24±1.44 2.84±0.48 1.96±1.65 0.25±0.62 1.97±0.22 0.95±0.25 2.31±0.76 0.95±0.23 0.53±0.50 0.56±0.50 0.063 0.141 0.019 正答率 (%) 正答率 (%) 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 95.5% 99.5% 86.6% 77.4% 45.7% 100.0%98.6% 93.2% 99.3% 79.1% 83.8% 時場所復唱計算想起物品文章命令指示書字図形 図 3 軽度認知障害患者の正答率 Fig.3 Correct answer rate of MCI patients 47.2% 64.8% 94.8% 39.2% 8.3% 98.4% 95.3% 76.8% 94.5% 53.1% 55.5% 時場所復唱計算想起物品文章命令指示書字図形 図 4 認知症患者の正答率 Fig.4 Correct answer rate of dementia patients 表 5 かなひろいテストの合否 Table 5 Admission decision of Kana pick-out test 合格 不合格 MCI 110 38 Dementia 36 92 表 6 判別分析による結果 Table 6 Results of discriminant analysis MCI Dementia MCI 143 5 Dementia 17 111 5. 考察認知機能を客観的に評価するためには 認知機能のデータベース化は有効な手段であると考えられるが 我々が開発した認知機能データベースには改良を加えなければいけない点がある 改良を加える際には 開発者が考える分かりやすさもしくは使いやすさだけではなく ユーザの意見を取り入れ 患者のためにどうすればよいかを考えたシステムとなるように設計しな

ければならないと考えられる MMSE 検査結果の入力では 図形の描出能力の項目において 一度紙に書いてもらった図形を検査者が判断し 得点を入力している 認知機能データベースでは 判定した点数を入力することは可能であるが 描いた図形のデータを登録することができていない そのため 図形を直接取り込みことができるようなデータベースに改良する必要がある また 検査者の主観によって図形の点数が異なってしまうことが問題となるため 図形の得点を自動判定できるようなシステムを開発し データベースに組み込む必要があると考えられる また かなひろいテストにおける意味把握の項目についても 検査者の主観に基づいた評価が行なわれている この意味把握についても 客観的な評価方法を確立する必要があると考えられる 認知機能検査にはデータベース登録の対象となっている検査のほかにも多数あり そのすべてが紙ベースで検査が行われているのが現状である 今後 他の認知機能検査をデータベース化し 統計処理や時系列解析から得られたデータを検査データに反映させることで 薬物療法 非薬物療法などの介入効果を自動的に判定することが可能であると考えられる 認知症の診断いついては 各種認知機能検査 MRI などの画像検査などの結果を総合的に判断し 診断を下している 認知症の診断は熟練した医師の主観に頼る部分が多く 経験の短い医師にとっては診断が難しい そのため 認知症のスクリーニング手法の開発が行なわれている なかでも かなひろいテストは手間や時間も短くて済み 認知症のスクリーニングに用いられている 今回の我々のデータではかなひろいテストの感度は 71.9% 特異度は 74.3% であった この診断精度は認知症の診断精度として決して高い数字であるとはいえない そのため 我々は認知症の診断精度を向上させるため かなひろいテストと MMSE を組み合わせて判断することにより 認知症の診断精度を向上させようと考えた かなひろいテストと MMSE から認知症の診断にとって有効な項目を抽出し 診断をおこなったところ 感度は 86.7% 特異度は 96.6% であり 認知症の診断精度が大幅に向上した これらのことから かなひろいテストと MMSE を組み合わせることにより 認知症の診断を行なうことができることが示唆された 橋爪は認知症重症度別に MMSE の平均得点を算出したところ CDR0.5 で 24.1±2.0( n=33) CDR1 で 20.9 ±1.9( n=30) であったと報告している [8] 今回の対象者の MMSE 平均得点は CDR0.5 で 25.8±2.2 CDR1 で 18.9±5.3 であった 対象者の数は異なるが 概ね同様の結果であったといえる さらに 橋爪は MMSE の項 目別得点において 時の見当識 場所の見当識 想起の 3 項目は CDR0.5 と CDR1 との間で有意な差が認められたと報告し 我々の結果と一致している 我々の結果においては 軽度認知障害と認知症を分類するためには 時の見当識 場所の見当識 計算 想起 図形が重要な項目であることが示唆されており これにかなひろいテストの正答数を加えることにより 認知症の診断を正確に行なうことができるものと考えられる 現在 我々は本研究成果をもとに MMSE とかなひろいテストの結果を認知機能データベースに入力すると 認知症かどうか自動的に判定することが可能なシステムを開発中である これにより 本認知機能データベースが医師の診断を支援し 医師の負担軽減と認知症の客観的な診断が可能になるものと考えられる 6. まとめ開発した認知機能データベースに蓄積された認知機能検査データをもとに 認知症の客観的診断について検討したところ 認知症の診断感度は 86.7% 特異度は 96.6% であり 認知症の診断精度は非常に高く 臨床で用いることが可能であることが示唆された 今後 認知機能データベースに新たな認知機能検査データの入力を可能とするだけではなく 本研究成果をもとに 認知機能データベースに診断のための知識を蓄え 認知症の診断支援システムに発展させていく予定である 謝辞本研究の一部は財団法人三井住友海上福祉財団研究助成金により行われました 文献 [1] Folstein MF, Folstein SE, McHugh PR: Mini-mental state ; A practical method for grading the cognitive state of patients for the clinician, J Psychiatr. Res., Vol.12, No.3, pp.189-198, 1975 [2] 金子満雄 : かなひろいテスト, 老年期痴呆, Vol.10, No.3, pp.78-91, 1996 [3] C.P. Hughes, L. Berg, W.L. Danziger, L.A. Coben & R.L. Martin: A new clinical scale for the staging of dementia, Br J Psychiatry, vol.140, pp.566-572, 1982 [4] 川瀬康裕, 児玉直樹 : 実践脳リハビリ- 早期認知症の診断と介入 -, pp.31-41, 真興交易医書出版部, 東京, 2007 [5] 児玉直樹, 川瀬康裕 : 介入効果判定のための認知機能データベースの開発, 日本早期認知症学会論文誌, vol.1, pp.29-33, 2007 [6] McKhann G, Drachman D, Folstein M, Katzman R, Price D, Stadlan EM : Clinical diagnosis of Alzheimer's disease: report of the NINCDS-ADRDA work group under the auspices of department of

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