Athena Wealth Management 2016 年 10 月 Investment Research Report インベストメントリサーチレポート
サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が先進国を上回るパフォーマンスとなりました 最も上昇を遂げたのはブラジル株式市場となり 米ナスダック市場が最も大きく下落しています 米国債利回りは徐々に上昇し 1.8% 水準となっています 利回りがマイナス圏に下がった債券残高は最高水準の 12.2 兆米ドルから 10.7 兆米ドルに減少しています 金価格については米大統領選を控え 1 オンス =1,270 米ドル水準を維持しています ドル指数は米連邦準備制度理事会 (FRB) による政策金利の引き上げが 12 月に期待されていることを背景に強含んでいます 原油価格は 1 バレル =46 米ドル水準を推移しています 表 1 株式市場比較
ドナルド トランプ氏 ヒラリー クリントン氏どちらも支持しない米国民が多数いることから 大統領選の行方が丌透明となっており 大統領選後は更に市場が荒れた展開になることが予想されます 短期的には先進国市場が新興国市場を上回るパフォーマンスになることが予想されています 先物市場では FRB が 12 月の定例会議において政策金利の引き上げに踏み切る可能性を 70% 以上と見ており 強含んだ米ドルが新興国市場にとって圧力となっています 世界債券市場については利回りの上昇が見込まれ 特に先進国国債は現在非常に割高な水準にある為 一層の利回りの上昇が見込まれます 金価格については米大統領選の結果に左右されることが予想されます 表 2 ドル指数 2
ユーロ圏市場 3 マリオ ドラギ欧州中央銀行 (ECB) 総裁は理事会後の会見において 現行の量的緩和政策の資産買い入れを 2017 年 3 月まで続けることを示しました インフレ率がほとんど上昇せず 景気回復基調は依然として脆弱と言えます アナリストの多くは ECB の債券購入プログラムの延長を予想しており その決定時期は 12 月の会合になる可能性が高いと見込んでいます 表 1 ECB 量的緩和延長決定見込み 表 2 ECB 資産買取額縮小のタイミング
12 月にイタリアでは議会制度を見直す憲法改正案を問う国民投票が実施される予定で 可決されれば上院と地方政府の権限が大幅に制限されることとなります 結果が否決となった場合は銀行業界再編プロセスが行き詰まり 政局丌安や欧州連合 (EU) およびユーロ圏の先行きの丌透明感が増す可能性があります 表 3 イタリア国民投票世論調査 - 反対派が若干のリード 4 表 4 ユーロ圏消費者物価指数
米国市場 米大統領選挙は世論調査ではヒラリー クリントン氏とドナルド トランプ氏の支持率は拮抗しており 選挙結果を受けても市場は変動の高い展開が続くと予想されます S& P500 種株価指数は 2180 の上値が重い展開となっています 恐怖指数と呼ばれる VIX 指数は上昇傾向にあり 米株式市場は短期的に調整局面を迎えると見ています FRB が 12 月に政策金利の引き上げに踏み切ることが予想されており 米ドル指数は更に上昇する可能性があります 表 1 VIX 指数 5 表 2 S&P500 種株価指数
金利の上昇は債券市場にとってマイナスの作用が働く為 債券の利回りが上昇すると見られています 特に国債の利回り上昇が見込まれ 10 年物国債の利回りは近い将来 2% 以上になると見ています また クリントン氏 トランプ氏共にインフラ事業への投資拡大を公約に揚げていることから インフレが加速する可能性があります このことから FRB が来年の金利引き上げペースを速める可能性が出てきています 我々は FRB の 12 月定例会議において来年の利上げペースについて言及がないか注意深く観察していく予定です 表 3 FRB 利上げの可能性 6 表 4 米 10 年物国債利回り
中国市場 表 1 中小企業景況感指数 中国経済は年初より停滞が続いていますが 一部の指標において年間では経済回復が伺えます 10 月は 9 月のペースを維持しており 全体的にプラスの兆候があると言えます 7 10 月の中小企業景況感指数および製造業購買担当者景気指数 (PMI) は安定を維持しており 家計 耐久消費財及び雇用の安定が反映されていると言えます 製造業 PMI は 10 月 51.2 に上昇 製造業において生産 受注 雇用の健全が伺えます また 非製造業 PMI についても 9 月の 53.7 から 54 へ上昇しています 製造業の改善により 9 月の生産者物価指数 (PPI) は前年比 0.1% の上昇と 2012 年 1 月以来初めて前年比でプラスとなりました 表 2 中国製造業 非製造業購買担当者景気指数
表 3 中国生産者物価指数 これらプラスの兆しは中央銀行が政策金利を年間を通して過去最低水準に維持することが予想されます しかしながら 現在の中国経済には依然として懸念が残っています PPI の上昇は賃金や原料費の上昇を意味し ひいては世界的な需要減に繋がります また 外貨準備高の減少も懸念され 実際 10 月は 3.12 兆米ドルと 9 月の 3.166 兆米ドルから減少 市場予想の 3.132 米ドルを下回る結果となりました 通貨安もあわせ中央銀行にとって更なる圧力となっています 8 表 4 中国外貨準備高推移
9 日本経済 10 月の日本株式市場は主要株式市場の中でも高い上昇率を記録 MSCI 世界株価指数のマイナス 2.01% 新興国株式指数の 0.18% に対して 5.93% と 米大統領選を目前に控えながらも良い結果となりました 9 月の鉱工業生産指数は前月比 0.0% と 8 月の同比 1.3% 増の横ばい 小売業販売額についても前月比で横ばいとなり 市場予想の 0.2% 増を下回る結果となり 日本経済に対して依然として懸念が残る状況となっています また 9 月の家計調査報告によると消費支出は前年同月比 2.1% の減少を記録 過去 12 ヶ月間において 11 ヶ月減少を記録しており 消費の脆弱さと物価の下落が続いていることで 日銀による経済刺激策への期待が更に高まる可能性があります 表 1. 日本株式パフォーマンス 世界株価指数 新興国株価指数との比較 表 2. 日本鉱工業生産指数
表 3 日本消費支出 10 しかしながら日銀は新たな経済刺激策を講じるのではなく現行の政策を据え置くと見られています 金融緩和の新しい枠組みとして長短金利操作 ( イールドカーブコントロール ) の効果を見極めるというのが表面的な理由と言えますが タイミングの問題とも見られています 米国は大統領選を控え政策リスクがあるものの 12 月の政策金利の引き上げ期待は高まっていることから 米ドルに対して日本円安が進み 10 月は 1 米ドル 101 円から 105 円水準まで下落 日本経済にとってプラスの効果をもたらすと見られています 表 4. 対米ドル日本円相場
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