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発電技術特集技術論文 2 1600 級 J 形技術を適用した発電用高効率ガスタービンの開発 High Efficiency Gas Turbine Development applying 1600 class J Technology *1 由里雅則 *2 正田淳一郎 Masanori Yuri Junichiro Masada *3 塚越敬三 *4 伊藤栄作 Keizo Tsukagoshi Eisaku Ito 羽田哲 *5 Satoshi Hada 当社は, 豊富な運転実績と先端技術研究に基づいたガスタービン開発により, 地球環境保全及びエネルギーの安定供給に貢献し続けている 最近では 2004 年から参画した国家プロジェクト 1700 級超高温ガスタービン要素技術開発 の開発成果を活用して, 世界初のタービン入口温度 1600, ガスタービンコンバインドサイクル (GTCC) 熱効率 61.5% 以上も達成可能となる M501J 形を開発し, 実証に成功した さらに,M501J 形 (60Hz 機 ) に採用した中核技術を基に,J 形の 50Hz 機となる M701J 形を開発した また, 空冷燃焼器を採用し運用性を改善させた M501JAC 形の開発も進めている 本稿では, これら最新鋭の高効率ガスタービンの運用状況と開発状況について紹介する 1. はじめに 化石燃料を利用する発電設備の中でも最も高効率かつクリーンな発電設備であるガスタービンコンバインドサイクル (GTCC) 発電は, その優れた負荷追従能力から再生可能エネルギーとの親和性も高い また, 世界的な電力需要の拡大と, シェールガス田開発などによる天然ガス供給源の拡大を背景に, ますますその存在感を増してきている GTCC の高効率化にはガスタービンの高温化が重要な役割を果たしているが, 当社は,1980 年代に 1150 級大容量ガスタービン M701D 形を開発, その後 1989 年にタービン入口温度 1350 の M501F 形,1997 年に蒸気冷却式燃焼器を採用したタービン入口温度 1500 の M501G 形を開発し, 高いプラント熱効率と信頼性及び低公害性を実証してきた ( 図 1) その後当社では, ガスタービンの更なる高効率化を目指し,2004 年から国家プロジェクト 1700 級超高温ガスタービン要素技術開発 に参画して高温 高効率化に必要となる最新技術の開発に取り組み, その開発成果を活用して, 世界初のタービン入口温度 1600,GTCC 熱効率 61.5% 以上も達成可能となる M501J 形を開発, 実証した さらに,M501J 形 (60Hz 機 ) に採用した中核技術を基に,J 形の 50Hz 機となる M701J 形を開発した また,J 形の技術に加えて空冷燃焼器を採用し, J 形ガスタービンと同レベルの性能を保ちながら運用性を改善させた M501JAC 形の開発も並行して進めている 表 1にガスタービン性能と主要目を示す 本稿では, これらの最新鋭の高効率ガスタービンの開発状況と運用状況について紹介する *1 原動機事業本部ガスタービン技術部グループ長 *2 原動機事業本部ガスタービン技術部長 *3 原動機事業本部技監 技師長 *4 原動機事業本部ガスタービン技術部次長工博 *5 原動機事業本部ガスタービン技術部主席技師工博技術士 ( 機械部門 )

3 図 1 ガスタービン機種開発の変遷 表 1 ガスタービン性能 (ISO, 標準条件 ) と主要目 60Hz 機 50Hz 機 型式 M501J 形 M501JAC 形 M701J 形 回転数 3 600rpm 3 600rpm 3 000rpm GTCC 出力 ( 発電端 ) 470MW 450MW 680MW GTCC 効率 ( 発電端, 低位発熱量基準 ) 61% 以上 61% 以上 61% 以上 圧縮機 / 圧力比 15 段 /23 燃焼器 蒸気冷却式 16 缶 空気冷却式 16 缶 蒸気冷却式 22 缶 タービン 1~4 段動翼空気冷却 1~3 段静翼空気冷却 4 段静翼無冷却 2. M501J 形ガスタービンの開発と検証 2.1 M501J 形ガスタービンの開発 M501J 形は, 豊富な運転実績のあるタービン入口温度 1400 級 F 形,1500 級 G 形 H 形で実証済みの要素技術を集大成するとともに, 国家プロジェクトで開発された 1700 級の最先端の技術開発の成果を適用することにより, タービン入口温度 1600 が達成可能となった ( 図 2) 図 2 M501J 形ガスタービンの設計コンセプト

なお, 図 2に示すH 形はタービン動静翼にも蒸気冷却を採用した 1500 級ガスタービンであり, 圧力比 25 の高圧力比圧縮機を採用し実証されている タービン入口温度の上昇及び最新の要素技術の採用により,GTCC 発電端熱効率は従来機と比べて大きく上昇し,M501J 形では 61.5% 以上 (ISO, 標準条件, 低位発熱量基準 ) も達成可能となる ( 表 1) また,CO 2 排出量は, 従来型石炭焚き火力発電所を天然ガス焚きJ 形コンバインドサイクル発電所に置き換えた場合, 約 6 割の削減が可能となる 以下では, 図 3に示す M501J 形の技術的な特徴について紹介する 4 図 3 M501J 形ガスタービンの特徴 (1) 全体構造 M501J 形の基本構造は, 実績のあるF 形,G 形をベースとした設計としており,1 発電機との接続は, 熱伸びなどの影響が小さく, フレキシブルカップリング等が不要な圧縮機軸端駆動方式,2ロータは, 圧縮機側軸受とタービン側軸受に支えられた2 軸受構造,3GTCC プラントの配置に最適な軸流排気タービン,4 圧縮機ロータはトルクピンを挟んだディスクをボルト結合, タービンロータはカービックカップリングを持つディスクをボルトで結合し, トルクを確実に伝えるロータ構造, などの特徴を継承している (2) 圧縮機 M501J 形圧縮機は圧力比 23 の 15 段軸流方式であり, 圧力比 25 のH 形圧縮機の技術を基に設計された 性能向上のために,3 次元先進設計を適用し, 前方段の衝撃波損失及び中後方段での摩擦損失を低減している このコンセプトは3 次元 CFD にて評価後, 実機スケールモデルでの高速試験圧縮機 (HSRC, 図 4) にて検証を行った また, 圧縮機の起動中は, 低圧 中圧 高圧の3 段から抽気が行われ, 入口案内翼 (IGV) と前方 3 段の可変静翼 (VV) を制御することにより, 起動中の旋回失速の発生を抑え, かつ GTCC の部分負荷性能の改善を図っている 図 4 高速試験圧縮機 (HSRC) 外観

(3) 燃焼器 M501J 形燃焼器は,G 形にて実績のある回収型蒸気冷却方式を採用した タービン入口温度はG 形の 1500 から 1600 に 100 上昇しているが, 燃料と空気のより均質な混合を目的とした燃焼器ノズル周りの改良 ( 図 5) により, 燃焼領域の局所火炎温度を低減するなどの低 NO X 化技術を適用し,G 形と同等レベルの NO X 排出濃度に抑えている 燃焼器は, 気流試験, 大気圧燃焼試験, 高圧燃焼試験にて性能及び信頼性を検証し詳細設計に反映している 5 図 5 燃焼器ノズル周りの改良 (4) タービンタービンは, 軸流形 4 段の高負荷 高性能タービンである 性能向上のためにG 形に採用してきた完全 3 次元設計に加え, 国家プロジェクト 1700 級ガスタービンにて開発されたタービン空力技術を適用した すなわち, 流れ場の干渉や翼前縁からの馬蹄渦の影響などを考慮し, エンドウォール部で発生する二次流れを抑制する3 次元エンドウォール形状を採用した G 形からの温度上昇に対しても, 国家プロジェクトにて開発された技術を適用することで, 従来機並のメタル温度を保つことが可能となった ガス温度 100 上昇のうち, 高性能冷却技術により約 50, 先進遮熱コーディング ( 先進 TBC) により約 50 のガス温度上昇に寄与している ( 図 6) 図 6 タービン入口温度 1600 実現のための要素技術タービン1~4 段動翼及び1~3 段静翼には空冷翼を採用している G 形の4 段動翼は無冷却翼であったが,J 形ではタービン入口温度上昇に伴い冷却翼とした 翼材料は, 動翼に MGA1400(Mitsubishi Gas Turbine Alloy 1400), 静翼に MGA2400 を採用,1~3 段動翼は一方向凝固翼 (DS) としている なお,MGA1400/2400 は既にF 形,G 形に採用している 図 7に示すとおり冷却構造は,F 形,G 形と年々高度化され,J 形は先述のとおり国家プロジェクトにて開発された高性能冷却技術である高性能フィルム冷却や先進 TBC を採用している 高性能フィルム冷却については, 平板での要素試験にて最適なフィルム形状を絞込み ( 図 8), 大型低速回転試験や中圧翼列試験にてフィルム効率の検証を実施した後,T 地点の M501G 形に採用し有効性を確認した これらの試験結果を反映してJ 形のタービン翼は設計され, 実圧高温翼列試験を実施後,M501J 形初号機にて最終試験を行った また, 先進 TBC においても,T 地点 M501G 形のタービン翼に施工し長期実機検証した後,J 形タービン翼の実圧高温翼列試験にて検証した

三菱重工技報 Vol.50 No.3 (2013) 6 図7 タービン冷却構造の変遷 1段静翼 図8 高性能フィルム冷却の検証 2.2 T地点実証発電設備での検証 M501J 形の開発においては 基本設計段階において各要素の検証試験を実施し その結果 を詳細設計に反映し 最終的に実証発電設備にて実機検証後 商用機を製作している 図9は当社高砂製作所内にあるガスタービン複合サイクル発電プラント実証設備 通称T地点 の外観である T地点は M501G ガスタービン 蒸気タービン 排熱回収ボイラ HRSG を備えた 実証設備複合サイクル発電所として建設され 1997 年1月から 2010 年 10 月まで 39 253 時間 起動回数 2301 回の運転を行い M501G 形の性能向上及び信頼性向上に大きく寄与した ①ガスタービン建屋 ②排熱回収ボイラ ③蒸気タービン建屋 ④空冷復水器 図9 当社高砂製作所実証設備 複合サイクル発電所 通称T地点

2010 年 10 月より M501G 形から M501J 形への換装工事を実施し,2011 年 2 月より M501J 形初号機の試運転を開始した 試運転は予定どおり進められ,2 月 2 日の初スピン,2 月 7 日に初着火, その後わずか7 回の起動後にタービン入口温度 1600 に到達した ( 図 10) 7 図 10 T 地点実証設備検証状況その後 4 月末まで各種の試験を行い, 開放点検を実施, 各部品の健全性が確認された この初号機に対しては,2300 点にわたる特殊計測を実施し, 性能, 機械特性, 燃焼特性が目標値を満足することを確認した 例として図 11にタービン1 段静翼の翼面メタル温度分布を示す また, タービン1 段動翼のプラットフォーム及び翼面については, パイロメータを使用して表面メタル温度分布計計測を実施した 動翼プラットフォームのメタル温度計測結果を図 12に示す 図 11 タービン 1 段静翼翼面メタル温度計測結果 図 12 パイロメータによるタービン 1 段動翼プラットフォームメタル温度分布計測結果 なお, 近年のガスタービンの開発設計では, 要素試験や実機検証試験に加えて,CFD をはじめとした大規模解析を適用した最適化設計を行っている M501J 形の開発設計及び検証結果の分析にも, これらの設計ツールが有効に活用されており, その結果は, 本稿で紹介する高効率ガスタービンの開発にも反映され, 性能及び信頼性の改善に大きく貢献している 図 13 及び図 14 は圧縮機及びタービンの全段 CFD 解析結果の一例であり,CFD 解析結果が実機の状態を精度良くとらえていることが分かる 図 13 実機圧縮機の全段 CFD 解析と全圧分布 ( 左 :5 段静翼入口, 右 : ディフューザ入口 )

8 3 段静翼 : CFD 計測値 翼高さ (%) 4 段静翼 : CFD 計測値 ターヒ ン出口 : CFD 計測値 入口全温度 図 14 全段タービンの実機 CFD 解析と計測値の比較 T 地点では 2011 年 7 月より M501J 形の長期信頼性実証運転を行っており,2013 年 3 月末時点で起動回数 120 回, 運転時間 10548 時間に達し, 順調に実証運転を継続している 図 15は, 2013 年 3 月の本格点検結果を示しており, 各部品の健全性を確認した 図 15 T 地点 M501J 形解放点検結果 (2013 年 3 月, 運転時間 10548 時間, 起動回数 120 回 ) 3. J 形の技術を適用したガスタービン開発 T 地点で実証した M501J 形の商用機は これまでに合計 16 台を受注して順次出荷されており,2012 年より試運転を開始した ( 図 16) 当社では, このように優れた性能と高い信頼性が実証された M501J 形で採用した中核技術を基に, 継続して高効率ガスタービンの開発を行っている その一つが 1600 級 J 形の 50Hz 機となる M701J 形であり, 現在初号機の製作が進んでいる また, 空冷燃焼器を採用し運用性を改善させた M501JAC 形の開発も進めている 以下ではこれらの高効率ガスタービンの特徴について紹介する

9 図 16 運転スケジュール 3.1 M701J 形ガスタービン M501J 形 ( 回転数 3600rpm,60Hz) のスケール機である M701J 形 ( 回転数 3000rpm,50Hz) は, 回転数比の逆数である 1.2 倍をスケール比とした完全スケール設計コンセプトを適用し開発した ( 図 17) すなわち,M701J 形の寸法を M501J 形の 1.2 倍スケールとすることで相似設計則が成立し,M701J 形の各部の応力, 温度等の特性を M501J 形と同等に保っている 一方, 風量及び出力はスケール比の二乗に比例するので,M701J 形の GTCC 出力は M501J 形の約 1.44 倍の 680MW となる ( 表 1) 初号機の出荷は 2014 年を予定している 図 17 M701J 形ガスタービンのスケール設計コンセプト 3.2 M501JAC 形ガスタービン M501JAC 形は, 燃焼器に蒸気冷却を採用している M501J 形をベースに,M501GAC 形で実績のある空気冷却燃焼器を採用し,M501J 形と同レベルの性能を保ちながら, 起動時間を短縮化するなど運用性の改善を図ったガスタービンである ( 図 18) 図 18 M501JAC 形ガスタービンの設計コンセプト

図 19に M501JAC 形の特徴を示す 圧縮機は M501J 形と同一である タービン部のフローパス形状も同じであるが 空冷燃焼器に合わせてタービン動静翼の冷却構造を最適化している 燃焼器は M501GAC 形で実績のある空気冷却方式とし,J 形で検証した低 NO X 技術を適用した M501JAC 形は 2015 年の初号機出荷を目指して開発中であり,2014 年にT 地点実証設備で空冷燃焼器の検証を行う予定である 10 圧縮機 (J) 501J から変更なし 燃焼器 (J+GAC) 蒸気冷却 空気冷却燃焼器 タービン (J) M501J の翼をベースに冷却最適化 GAC 形技術 図 19 M501JAC 形ガスタービンの特徴 4. まとめ ガスタービンコンバインドサイクル発電 (GTCC) は化石燃料を使用する最もクリーンかつ高効率な発電設備として, 環境, 経済の両面に優れ, 社会での期待が大きい 当社は,2004 年から参画した国家プロジェクト 1700 級超高温ガスタービン要素技術開発 の開発成果を活用して, 世界初のタービン入口温度 1600,GTCC 熱効率 61.5% 以上も達成可能となる M501J 形を開発, 実証に成功した さらに, その中核技術を基に,M701J 形及び M501JAC 形の開発 製作を進めている これらのガスタービンは, 高い性能と運用性を兼ね備えた高効率機として, 今後電源の多様化 分散化が進む中で, 世界の電力安定供給に貢献していく 参考文献 (1) Hada, S., Masada, J., Ito, E. and Tsukagoshi, K., Evolution and Future Trend of Large Frame Gas Turbine for Power Generation - A new 1600 degree C J class gas turbine -, ASME Turbo Expo, GT2012-68574 (2) 羽田ほか, 世界初の 1600 級 M501J 形ガスタービンの実証発電設備における検証試験結果, 三菱重工技報 Vol.49 No.1 (2012) (3) 塚越, 発電用ガスタービンの高温 高効率化の進展と将来展望,GTSJ Vol.41 No.1 (2013-1) (4) 伊藤, ガスタービンの主要コンポーネントや吸排気の CFD と最適化,GTSJ Vol.40 No.1 (2012-11)